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1 The Elements of Stroke Rehabilitation Robert Teasell MD, Norine Foley MSc, Sanjit Bhogal MSc, Mark Speechley PhD

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The Elements of Stroke Rehabilitation

Robert Teasell MD, Norine Foley MSc, Sanjit Bhogal MSc,

Mark Speechley PhD

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Table of Contents

KEY POINTS….……………………………………………………………………………………..3

6.1 FUNCTIONAL IMPROVEMENTS AND NEUROLOGICAL RECOVERY........................4

6.2 HEMORRHAGIC VS. ISCHEMIC STROKE.....................................................................5

6.3 ELEMENTS OF A STROKE UNIT ASSOCIATED WITH IMPROVED OUTCOME.........8

6.3.1 DIFFICULTIES ASSOCIATED WITH DEFINING THE ELEMENTS OF

REHABILITATION THAT WORK..................................................................................8

6.3.2 PROCESSES OF CARE.............................................................................................10

6.4 IMPACT OF CARE PATHWAYS AND GUIDELINES...................................................12

6.5 TIMING OF STROKE REHABILITATION......................................................................16

6.6 INTENSITY OF THERAPY.............................................................................................20

6.6.1 INTENSITY OF PHYSIOTHERAPY AND OCCUPATIONAL THERAPY....................20

6.6.2 INTENSITY OF APHASIA THERAPY POST-STROKE...............................................30

6.7 DURABILITY OF REHABILITATION GAINS................................................................34

6.8 HOSPITAL READMISSIONS FOLLOWING STROKE REHABILITATION..................40

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Key Points

Care pathway は脳卒中リハビリテーションアウトカムを改善しない,またはコストを

軽減しない。

適応となる脳卒中患者は可能な限り早期に,リハビリテーションユニットあるいはリハ

ビリテーション施設へと参加(入院)されるべきである。

高強度での理学療法および作業療法の実施は機能的アウトカムを改善させる。

低強度ではなく,高強度での言語療法が失語症を改善させることが示されている。

他職種による脳卒中リハビリテーションユニットによってもたらされるより大きな機

能的改善は長期間にわたって認められる。

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6.1 Functional Improvements and Neurological Recovery

機能的改善と神経学的回復

数人の著者は、脳卒中後の機能的な回復の大部分は、神経学的な機能障害の自然回復が

単に関与しているとしている(Lind 1982,Dobkin1989)。脳卒中専門ユニットとリハビリテ

ーションの強度(後述)が改善した機能の結果に関連性があるという事実は、神経学的な

回復のみでは脳卒中リハビリテーションで見られる機能の改善の程度を説明することがで

きない。脳卒中後の脳の組織の回復に対するアプローチの多くの基礎科学は、section2 に示

している。脳卒中後の予測できる回復経過の期間について、Yagura(2003)らは機能的な回

復は 3 か月で 80%、6 か月で 95%、12 か月で 100%に達すると述べている。

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脳卒中後の impairment と disability との関係性の評価において、Roth(1998)らは「脳卒中

に関する impairment と disability は大きな相互関係があるが、impairment level の改善のみ

では、リハビリテーション中に起こる disability の改善を十分に説明することができないと

している。十分な impairment の改善のない患者でさえも、リハビリテーション中に disability

の改善が示していることは、リハビリテーションが神経学的回復のみによっては説明する

ことのできない、機能の改善において独立した役割があるということを示している。」

Kwakkel(2006)らは修正された回帰分析の方法を用いて、時間因子のみで脳卒中後 6~10 週

間での多くのパラメーターで観察された改善の 16~42%が説明可能であると評価した。しか

しながら、著者らは回復における時間の効果は、患者が治療的介入を受けたということも

あるので、過大評価がされているかもしれないという仮説を立てた。

Conclusions Regarding Functional Improvement and Neurological Recovery

機能的な改善と神経学的な回復に関する結論

1 件の uncontrolled study の結果に基づくと、脳卒中リハビリテーションでみられる

disability の改善は、神経学的な impairment の自然回復のみでは説明することができない

という限定的根拠がある(Level 2)。

6.2 Hemorrhagic vs. Ischemic Stroke 脳出血 VS 脳梗塞

脳卒中患者の約 10%は脳出血(ICH)である(Kelly et.al 2003,Paolucci et al.2003)。脳出血

になる患者の比率は、未治療である高血圧の患者数が多い西ヨーロッパやアジアの国々で

高い傾向にある (Kalra&Langhorne)。脳出血初期は、急性期により重篤な神経学的な

impairment やより高い死亡率に関係する(脳出血初期のほぼ半数の患者は最初の 1 か月で

死亡する)けれども,一般的に脳出血の患者は、虚血性脳卒中患者と比べて回復がよいと

信じられている。

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Discussion

Jorgensen(1995)らは、交絡要因をコントロールした後,脳卒中のタイプ(脳梗塞と脳出

血)は死亡率、神経学的な回復の経過、神経学的アウトカムや disability からの回復経過に

影響しないことを報告した。脳出血の患者の poor アウトカムは,脳卒中初期が重度なもの

であった。

Paolucci(2003)らは、初期脳卒中重症度、年齢、性別、発症後期間に基づいてマッチさせ

た患者において、脳出血患者が優れたリハビリテーションアウトカムであり、ADL におい

て高い治療的反応を示したと報告した。脳出血の患者は、Canadian Neurological Scale

scores でより高い数値を示し、Rivermead Mobility scores も同様にかなり高い数値を示し

た。在院日数はグループ間で同様であった。著者は、虚血性脳卒中患者では脳圧解除に関

係する神経学的回復の結果であると考えた。Kelly らは同様の結果を報告した。リハビリテ

ーション病院に入院した脳出血患者は、脳梗塞の患者に比べて有意に低い FIM のスコアだ

ったけれども、グループ間で退院時 FIM スコアには差がなかった。脳出血患者は、高い FIM

スコアの変化がみられた。当初の disability では、リハビリテーションによる回復程度を有

意に予測できないが、脳卒中初期の重症度は退院時の機能的状態の強い予測因子である。

Lipson(2005)らもまた、脳出血と脳梗塞の患者の退院時 FIM スコアに有意差がないと報告

しており,しかしながら脳出血患者はリハビリテーション病棟への入院が、虚血性脳卒中

患者に比較して有意に遅いという事実があるにもかかわらず、入院時 FIM スコアに有意差

はない。

Conclusions Regarding Hemorrhagic versus Ischemic Stroke

脳出血 VS 脳梗塞に関する結論

リハビリテーションを行う脳出血患者は、虚血性脳卒中患者よりも、より重度であり、よ

り早く改善するという限定的根拠がある(Level2)。

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6.3 Elements of a Stroke Unit Associated with Improved Outcome

アウトカム改善に関係する脳卒中ユニットの構成要素

6.3.1 Difficulties Associated with Defining the Elements of Rehabilitation that Work

リハビリテーションの構成要素を定義することは困難

急性期およびケア段階のリハビリテーションにおける脳卒中ユニットが死亡率および依

存性の減少に関係しているということが確立されている中,これらの良い結果がみられた

正確なメカニズムは十分には理解されていない。治療アプローチにおける変動性に加え,

Whyte と Hart(2003)は脳卒中リハビリテーションの効果的要素を明らかにする試みにおい

て,困難な問題となっているいくつかの因子を明らかにしている。

・ 論文にて述べられている治療の広範性および治療の不十分な定義が,治療の再現性と普

及を困難にしている。

・ 同様の治療に対する評価を行うときでさえ,提供する治療強度や治療の構成が研究によ

り異なっている。

・ 患者の参加,モチベーション,取り組み(関心,契約)の重要性を捉えることが困難で

あり,この重要性は,その他の因子が研究間において一定であったとしても,結果に影

響を与える。

・ 各セラピスト間における治療の変動性が,治療中の患者からの反応および合図(手がか

り)に対して反応した結果として生じる可能性がある。この変動性も,よく似た治療間

におけるとらえにくい違いとして研究結果に影響を与える。

・ セラピストによる影響として,非特異的効果であるセラピストの個性(性格),言語的

コミュニケーション技術,思いやり,感情(共感)が関連する。

脳卒中リハビリテーションでは,研究の範囲が広く,複雑なケアシステムの実験が含まれ

ている。さらには,同様の介入を提供しているような研究の比較でさえ,ケアシステムが

全く異なっている可能性がある。例えば,脳卒中ユニットの定義は研究間において幅広く,

異なる可能性がある。これら双方の要因が,ケアの効果的な要素を明らかにするための試

みを複雑にしている。最近の脳卒中リハビリテーションユニットの効果に関する Cochrane

review(2001)では,この異種性が認められ,以下の脳卒中ユニットまたは脳卒中病棟に

おける 3 つのサブグループが明らかにされた。

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1. 急性期脳卒中ユニットでは,急性の患者を受け入れるが早期退院である(通常 7 日以

内)。このモデルは重要(強調)すべて点として,持続的な監視と看護スタッフの高い

レベルが関係している。

2. リハビリテーション脳卒中ユニットでは,通常 7 日以上経過した患者が受け入れられ,

リハビリテーションに集中される。

3. 包括的(急性期およびリハビリテーションを組み合わせたような)な脳卒中ユニット

では,急性期の患者を受け入れるだけでなく,必要であれば数週間に渡ってリハビリ

テーションを提供する。リハビリテーションユニットと包括的モデルの両方とも,リ

ハビリテーション期間の延長が行われる。

このような脳卒中ユニットにおける幅広い定義は,一般病棟のような他のケア形態と比較

して,よりよいアウトカムを十分に証明するための要素の確立を妨げる。双方のケア形態

が発症後数ヶ月の時点での死亡率減少に貢献しているものの,急性期に提供される介入の

種類は亜急性期に提供される介入とは明らかに異なっている。

例として,table 6.3 は組織化された脳卒中ユニットを評価した最近の Cochrane review

(2001)に含まれる 23 トライアル中,ケアの変動性に関する 13 トライアルを掲載してい

る。これらの研究のすべてにおいて述べられている介入は,“献身的な脳卒中ユニット”で

ある。“脳卒中ユニット”へ入院した患者の入院時期および入院期間は幅広いものであった。

提供された各種治療の説明は,その強度および期間とともに不十分な記述である。

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6.3.2 Processes of Care ケアプロセス

Evans ら(2001)は,死亡率および依存性の減少に関連した急性期脳卒中ケアの特定的

な要素には血栓溶解,生理的恒常性,心房細動を伴った非凝固作用,早期からのアスピリ

ン使用そして早期からの体動を含むであろうと示唆した。ケアプロセスは,急性期および

リハビリテーションサービスの両方,そして一般病棟のような組織化されていない脳卒中

ユニットと“献身的な脳卒中ユニット”間において評価された。入院後最初の 7 日間にお

いて,脳卒中ユニットにおける患者は神経学的なより注意深い観察が行われた。多くの割

合の患者が酸素療法,経鼻栄養そして誤嚥防止のための評価を受けた。リハビリテーショ

ン期間として定義された期間中(発症から最初の 4 週間以内),多くの割合の患者が 7 日間

以内に形式的なベッドサイド嚥下機能評価,社会福祉および作療法評価を,リハビリテー

ションゴールの根拠そして退院に向けたリハビリテーションプラン作成のために受けた

(表 6.4)。両ケアともに包括的な評価と調査が行われたが,脳卒中ユニットにおいて治療

された患者では意識,嚥下,コミュニケーションの評価について多大な注意が払われた。

医学的な合併症については,一般病棟への入院患者においてより共通してみられ,脳卒中

ユニットにてケアを受ける患者においてはアウトカムの改善に最も関連した因子として現

れた。しかしながら,この因子と他の明確にされない因子がアウトカムに寄与する程度に

ついてはわかっていない。

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Indredavik(1999)らもまた,発熱を減少させるための生理食塩水の静脈注射,酸素療法,へ

パリンとパラセタモールの使用を含む積極的な内科的治療が,一般病棟にて治療を受ける

患者と比較して,脳卒中ユニットにおける患者管理においてより頻繁に行われていたとい

うことを明らかにした。早期からの体動は,深部静脈血栓や肺炎などの合併症を軽減させ

るためか,または良好な心理的効果をもたらすためかは不明であるが,6 週経過時点におけ

る自宅への退院に関わる最も重要な因子であった。各ケアグループが受けた作業療法およ

び理学療法の合計平均時間には差が見られず,さらなる重要点として,脳卒中ユニットの

明確にしがたい要素がよりよいアウトカムに対する説明となりうる可能性がある。

後ろ向き調査研究においては,Ang ら(2003)が,総合的な脳卒中ユニットによる治療を

受けた患者では入院期間の短縮および機能的アウトカムの好結果をもたらしたと報告して

いる。彼らはこの改善の主な理由として,集中的なリハビリテーション治療が開始される

前に,他の施設への転院またはベッドの空きを待つなどの必要がないといったケアの連続

性によるものであると推測している。しかしながら,この報告には,ケアプロセスにおけ

る相違を評価するための 2 つのケアグループに提供された介入において不十分な項目が含

まれており,観察された違いに原因がある(影響している)可能性がある。

流動的な脳卒中チームの確立に続き,1996 年から 2001 年(脳卒中ユニットが確立される

以前)にかけて,Auckland 病院での脳卒中ケアにおける変化について論評され, Barber

ら(2004)らは新しい脳卒中サービスの完成として脳卒中ケアプロセスにおける変化が存

在したが,その変化に対応するような死亡率の低下は認められなかったと報告している

(14% in 2001 VS 17% in 1996)。しかしながら,患者の多くは入院から 24 時間以内にア

スピリン投与を受け,抗凝固療法により退院となった。患者の 24%のみが 24 時間絶食であ

り,1996 年では 46%であった。

Rudd ら(2005)は,National Stroke Audit(England Wales Northern Ireland) の 2001-2002

におけるデータから,脳卒中に対する組織化,ケアプロセス,アウトカムについて評価を

行った。彼らはケアプロセスにおいて,脳卒中ユニットによってより頻回なケアとなり,

そして死亡のリスクをかなり減少させるということを明らかにした。脳卒中ユニットで治

療を受けた患者の死亡率は,非脳卒中ユニットによる治療を受けた患者の死亡率の 75%で

あったと見積もられた。

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これらの研究のすべてが,好結果に関連して治療または介入の多様性の個々の寄与を明ら

かにすることに注目している中,Wade(2001)は,このような方向性をたどることによる

“typeⅢエラー(複雑な介入における相互作用によって不当な実験仮説の拒否が検討されな

い)”を招く危険性を警告している。彼は専門化された脳卒中リハビリテーション治療の要

素を分解しようという試み,すなわち構成要素を区別するための努力は,脳卒中リハビリ

テーションの学際的で補足的な性質を明らかにすることが困難であるため無駄であるかも

しれないと示唆している。Ballinger ら(1999)は脳卒中患者を治療する 4 施設において,

13 名の理学療法士および作業療法士によって提供される治療の種類および期間は,施設間

およびセラピスト個人間において異なり多様であると結論づけている。通常の臨床へと反

映させようとした場合,臨床研究結果からケアによってもたらされた同様の効果を得るこ

とは困難である。Kalra と Langhorne(2007)は,“多くの脳卒中ユニットは地域の患者の

必要性,優先事項そしてサービスへの応答に対して展開し,他のセッティング(地域)に

おいては応答していないかもしれない”と記している。

Conclusions Regarding the Components of Stroke Units as They Relate to Improved

Outcome

アウトカムの改善に関与する脳卒中ユニットの構成要素に関する結論

組織化された脳卒中ユニットケアを評価した最近の Cochrane Review に基づくと,“脳卒

中ユニット”チームとは幅広く,脳卒中発症直後あるいは数週間に受ける病棟において提

供されるサービスとされるかもしれない。

改善されたアウトカムが脳卒中ユニットを評価したトライアルから報告されているが,原

因となるメカニズムは明らかにされておらず,多様である。1 つの RCT の結果に基づくと,

脳卒中ユニットにて治療される患者は医学的合併症を伴いにくいという中等度の根拠があ

る(Level 1b)。

2 つの RCT の結果に基づくと,脳卒中ユニットの要素である早期体動は,アウトカムの改

善に関与するという強い根拠がある(Level 1a)。

6.4 Impact of Care pathways and Guidelines

Care pathway とガイドラインの影響

近年,統合された care pathway(ICP)が脳卒中リハビリテーションケアの質と一貫性の

改善への試みとして紹介されている。この pathway は,国際ガイドラインを地域へ推し薦

めるという意味合いが含められている。そのいくつかの中心要素として,コストを減少さ

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せるための入院期間の短縮が含まれる。ICP は“care mapping”とも呼ばれている(Falconer

ら.1993)。Care pathway の定義は施設によって異なる可能性があるが,いくつかの共通

した要素があり,患者中心であること,科学的根拠に基づいていること,多くの専門分野

からなるということ,臨床における細部まで記録されているということ,アウトカムの検

証を促進するような方法が構築されていることが含まれる(Edwards ら.2004)。しかしな

がら,ICP の発達と成功の実現には時間に見合ったコスト以上の配慮が必要であった。Sulch

ら(2000)は,“適切な職種間の協調性の促進,退院計画の向上そして入院期間短縮という

明確な目標とその時間管理された組織化されたプラン”として ICP の発展を説明した。そ

の他として,一定の形式だったシステムに,ケアプロセスにおけるチェックリストを含め

ているものもある(Cadilhac ら.2004)。Kwan ら(2007)は,care pathway の発展として

は,他職種チームによって円滑なサービスが提供されるリハビリテーション期よりもむし

ろ,ケアの複雑なプロセスを改善させるより大きな潜在性のある急性期脳卒中管理に対し

て適切であるべきであると示唆している。

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直感的に care pathway は脳卒中ケアの質を向上させるべきであるが,これに至る根拠は

ない。Care pathway とは,日常業務を変えるというよりはむしろ,単に強化するものであ

るかもしれない。治療を個別化させるというよりは,ケアの詳細な計画を強要することが

アウトカムの改善をもたらさないとも考えられるかもしれない。それゆえ,他職種によっ

て組織化された脳卒中リハビリテーションユニットがアウトカムを改善させると示されて

いるが,care pathway として,これらの結果をもたらしたとされる構成要素が明らかにさ

れていない。Care pathway を用いることが,実際には乏しい患者の満足度および生活の質

と関連しているという証拠がある。

Discussion

最近の 3 つのランダム化比較試験と 12 の非ランダム化比較試験の報告を含めた

Cochrane review(Kwan and Sandercock 2004)では,care pathway は通常のケア以上に

リスク,死亡,退院日の変更を軽減させるに役立たないと示唆している。事実,care pathway

を受けた患者は,尿路感染および再入院が少なく,神経画像上良好であったにも関わらず,

退院時により依存度が強いようであった。患者の満足度および生活の質に関しては,care

pathway を受けたグループにおいて有意に低いものであった。この著者らは“脳卒中リハビ

リテーションにおいて,care pathway のルーチンな実行を正当化する根拠は不十分である”

としている。このことは,ケアの構造(系統的な組織,スタッフの専門性および高度な技

術が機能的アウトカムの改善に関与していないという構造)を明らかにした Hoeing ら

(2002)によっても確認されている。しかしながら,興味深いことに,AHCR(医療政策

研究機構)による脳卒中後のリハビリテーションガイドラインの順守では,同様のアウト

カムを改善させた。この明らかな矛盾は用いる根拠,または“すべての患者に対してある 1

つのアプローチを適応させる”とは対照的に,脳卒中患者のリハビリテーション個別性と

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いうリハビリテーション臨床家へのアシストのために,ガイドラインが重要であるという

ことを意味しているのかもしれない。

Sulch ら(2000,2002)は,152 名の脳卒中患者を ICP(退院計画の向上そして入院期間

短縮という明確な目標とその時間管理された組織化された)リハビリテーションプログラ

ムと,伝統的な他職種チーム(MDT)によるリハビリテーションプログラムへと無作為に

割り当てた。MDT ケアを受けた患者では,4〜12 週にかけて有意に早期な改善を示し

(barthel index における平均変化:6 vs 2, p<0.01),6 ヶ月の時点でより高い QOL スコア

を示した(EQ-VAS による評価:72vs 63, p<0.005)。

Foster と Young(2002)は“非常に孤立している流行の中において,特異的な治療アプ

ローチを試みることと,評価することに対してバランスが必要である。臨床においては,

患者個々に対して効果を示す方略を決定するための施行と失敗をもたらすことから,効果

的なアプローチの多様性がよくみられる”としている。Wade(2001)はリハビリテーショ

ンの“ブラックボックス”を過度に分解することの危険性について警告している。

Conclusions Regarding the Impact of Care Pathways

Care pathway の影響に関する結論

3 つの RCT に基づくと,care pathway の実施が脳卒中リハビリテーションアウトカムを

改善しないということに強い根拠(Level 1a)がある。Care pathway の実施は病院コスト

を軽減しない,または入院期間を短縮しないという中等度の根拠(Level 1b)がある。

脳卒中リハビリテーションガイドラインによる追従,およびケアの過程(プロセス)への

忠実な実施は,アウトカムを改善させるという弱い根拠(Level 2)がある。

6.5 Timing of Stroke Rehabilitation 脳卒中リハビリテーションの時期

いくつかの研究結果(Feigenson ら:1977,Hayes and Carrol:1986,Wertz:1990)に

おいて,最適な結果をもたらすためには

発症後直ちに開始されるべきであるとされ

ている。CifuとStewart(1999)による review

では,脳卒中後の早期のリハビリテーショ

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ン介入と機能的アウトカムの改善には正の相関関係が認められたという中等度の根拠があ

る 4 つの研究を報告している(table 6.6)。彼らは“概して,論文ではリハビリテーション

の早期介入が機能的アウトカムの改善に強く関連している”と記している。Ottembacher

と Jannell(1993)は脳卒中患者 3,717 名による 36 の研究についてメタアナリシスを行い,

リハビリテーションの早期介入と機能的アウトカムの改善に正の相関関係を認めた(表

6.7)。

最近では,Maulden ら(2005)が,アメリカにおける 6 つのリハビリテーション施設に

おける 1,291 名の患者を対象とした前向きな観察研究である Post-Stroke Rehabilitation

Outcome Project(PSROP)にて報告している。これによると,脳卒中発症からリハビリテ

ーションを受けるまでの時間が長いほど,中等度および重度な患者における退院時 FIM ス

コアの低下および入院期間の増大と関連していた。また,リハビリテーションを受ける日

数についても,回帰分析によって,退院時の FIM スコア(合計,運動項目,移動項目それ

ぞれ)および入院期間の予測変数となり得た。このリハビリテーション早期介入と機能的

アウトカムにおける強い相関関係は,最も重度な患者において認められた。しかしながら,

Diserens ら(2006)による review では,早期体動の潜在的な効果に関する研究(非ランダ

ム化)が,早期(発症後 3 日以内)と遅延(発症後 3 日以上)による効果の比較を可能に

するとしている。

Individual Studies

リハビリテーション介入の時期の効果を調査したいくつかの非ランダム化比較試験が明

らかにされている(表 6.8)。

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Discussion

個々の実験およびメタアナリシスによって示されているように,リハビリテーション早

期介入と機能的アウトカムにおいて強い相関関係が認められているが,この相関関係は,

その原因と効果における唯一のものでない可能性がある。重度(高機能の障害)な脳卒中

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患者では合併症を有していることが多く,あるいはリハビリテーションへの参加も障害さ

れ脳卒中リハビリテーションユニットへの遅れが生じている可能性がある。対照的に,合

併症のほとんどない軽度から中等度な患者では,リハビリテーションユニットへの早期の

参加が可能となることが多い。個々の研究結果からは,集団におけるバリエーションのた

め比較が困難である。Paolucci ら(2000)と Gagnon ら(2006)による研究では,結果は

対立したものであったが,発症からの期間の分類は同様であった。早期患者において,

Paolucci ら(2000)の報告ではより大きな回復率を示したものの,Gagnon ら(2006)の

報告では認められなかった。

Yagura ら(2004)は,発症からリハビリテーション開始までの期間にて分類した 3 群に

おおて歩行と ADL における違いを比較し,91 日から 180 日以内または 180 日以上に開始

した患者群と比較して,90 日以内に開始した患者群において歩行,上肢機能そして ADL の

より大きな獲得をもたらしたと報告している。しかしながら,早期にリハビリテーション

を開始した患者はより良好な結果となったと同時に,開始時期に関わらず,すべての患者

においてリハビリテーションによる有意な効果がもたらされた。Shah ら(1990)は,発症

時期とリハビリテーション開始時期とのインターバルが,脳卒中初発から回復段階である

258 名の患者においてリハビリテーションの可能性(効果)の指標であるとし,発症から開

始までのインターバルが短いことが機能的アウトカムの改善と関連しているとしている。

同様に,Salter ら(2006)は,患者の年齢を調整した上で,リハビリテーションへの早期

の参加は FIM による ADL 能力における改善に関連しているということを報告している。最

近の臨床ガイドライン(Duncan et al.2005)では“医学的な安定に達した時点で,可能な

限り早期のリハビリテーション治療の開始が推奨される”としている。

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Conclusions Regarding the Timing of Stroke Rehabilitation

脳卒中リハビリテーションの時期に関する結論

脳卒中リハビリテーションの早期開始は,機能的アウトカムの改善に関連しているという

限られた根拠がある(Level 2)。このことは,メタアナリシスの結果により支持されている。

RCT による他の結果が示されるまでは,脳卒中患者は医学的安定が得られた時点から出来

るだけ早期にリハビリテーション治療を受けるべきである。

6. 6 Intensity of Therapy 治療の強度

6. 6. 1 Intensity of Physiotherapy and Occupational Therapy 理学療法と作業療法の強度

専門的脳卒中リハビリテーションに関連する改善した機能的アウトカムに寄与する因子

を決定するための試みにおいて,リハビリテーション治療の強度はしばしば重要な要素と

して挙げられる.より長期間,またはより高水準の強度で治療を受ける患者は,標準的な

ケアを受ける患者と比較してより大きな利益を実感するだろうか.この仮説について,広

範囲に調査,研究されてきたが,治療強度は改善した機能的アウトカムと弱い相関のみ認

められることが分かってきた.しかしながら,Kalra と Langhorne は(2007),「リハビリ

テーション治療における強度の増大は,この治療が伝える機能に関連した領域のより大き

な活性化をもたらしたという神経画像研究からの根拠がある.」ということを示している.

普遍的に認められた「強度」という用語の定義が存在しない間は,通常,1 日の治療時間

や連続的な治療の時間として定義づけられる.治療強度の増加による効果を評価する研究

は,通常,より少ない量と比較し,実施した治療全体での時間以上の治療を提供する.

この弱い関連性は,時間と持続期間,提供された治療の構成や,または研究における脳卒

中患者の特徴の相違によって説明できる可能性がある(Module 6 参照).Page は(2003),

治療の強度が過度に強調されていることに対し,患肢による低強度(30-45 分/日)の課題

特異的な訓練方法は,皮質の再組織化,相関性,重要な機能的改善をもたらすことが可能

であると反論している.Turton と Pomeroy(2002)は,上肢のリハビリテーションにおい

て,早期からの量的に過剰な活動や誤った様式は,特に痙縮のような誤った結果を生じる

という広く持たれている臨床的信念を認めている.

提案されるリハビリテーション治療の総合的な強度もまた考慮される必要がある.患者

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21

がリハビリテーションに費やす時間の合計は,ユニットや施設,国の間でかなり変化する.

Lincoln ら(1996)は,脳卒中リハビリテーションユニットの患者は,彼らの時間の 25%

しか相互作用的な行動をしていなかったということを観察した.De Weerdt ら(2000)は,

2 つのリハビリテーションユニット,1 つはベルギー,もう 1 つはスイスで治療活動に患者

が費やす時間を定量化するために行動マッピングを使用した.ベルギーにおける患者は,

スイスの患者よりも 1 日の中でより大きな割合でリハビリテーションに従事していた(45%

対 27%).De Wit ら(2005)はまた,ヨーロッパの 4 カ国(ベルギー,イギリス,スイス,

ドイツ)で,患者がリハビリテーション活動に費やした時間の総量に有意な違いを観察し

た.ドイツの患者は,治療時間に 1 日の中でより大きな割合(23.4%)を費やした.一方,

イギリスの患者は,最も少ない 1 日の治療時間の割合(10.1%)であった.治療時間は,イ

ギリスでの 1 時間/日からスイスの約 3 時間/日まで及んだ.全てのセンターにおいて,

患者は治療活動に時間の 72%を費やした.さらに落胆させることは,オーストラリアの 5

カ所の急性期脳卒中ユニットにおける 64 人の患者の集団で観察された A Very Early

Rehabilitation Trial(AVERT)(Bernhardrt ら 2004, 2007)の結果である.患者は,治療日

の 12.8%だけを中等度,または高度の水準の活動に費やしていた.53%の時間を患者はベ

ッド上で費やし,60%の時間を一人で過ごしていた.脳卒中の重症度と活動の間には直接

的な関係があるが,軽度の脳卒中患者でさえ,11%だけを日中の歩行に費やした.患者の

麻痺側上肢は,患者がセラピストと一緒にいるか 1 人でいるかに関わらず,33%の時間だ

け動かしていることが観察された.

Duncan ら(2005)は,今までに発表されている改善した機能的結果における強度の効果

を研究している全てのランダム化比較試験とメタアナリシスをレビューし,その根拠は弱

いと結論づけた.彼らは,全ての患者の集団が平等に利益を得ない,そしてリハビリテー

ション治療の強度や期間について明確な基準が提言されていないと示唆している.

Previous Reviews and Meta-Analyses 過去の総説とメタアナリシス

4 つのメタアナリシスの結果では,治療の強度の増加は有益であることが示唆される.

Langhorne ら(1996)は,理学療法の異なる強度の効果を研究し,より高強度の治療によ

り ADL 機能と機能障害の軽減において有意な改善を示した.Kwakkel ら(1997)は,8 つ

のランダム化比較試験と 1 つの非ランダム化試験を含め,小さいが統計的に有意な ADL の

強度効果と機能的結果の要因を発見した.しかしながら,Cifu と Stewart(1999)は,リハ

ビリテーションサービスの強度と機能的結果の研究について,3 つの中等度の質の研究と1

つのメタアナリシスのみ確認した.(Table 6.9 参照)そして,リハビリテーションサービス

における強度は,脳卒中後の改善した機能的結果と弱い関連のみ認められることを報告し

た.Kwakkle ら(2004)は,彼の先行研究のメタアナリシスを伸展させ,作業療法(上肢)

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22

や理学療法(下肢),レジャー治療,在宅ケア,感覚運動訓練などの多くの介入を評価した

20 の報告を含み,増加する理学療法の利益を評価した.治療強度の差異を調整した後,増

加した治療は,ADL と歩行速度の結果の治療効果と統計的に有意に関連した.しかし,Action

Research Arm test を使用した上肢の治療は評価されていない.脳卒中発症後の最初の 6 ヶ

月間での 16 時間の治療時間増加は有益な結果と関連した.

Chen ら(2002)は,アメリカの 20 ヶ所の亜急性期リハビリテーション施設の後ろ向き

研究において,治療の強度と機能的獲得との関係性を研究した.もし,入院時のセルフケ

アレベルが低いとしても,発症直後からリハビリテーション施設への入院がなく,運動や

認知機能が良好であり,長期的により強度なリハビリテーション治療を受けた場合,より

大きなセルフケアを獲得することができた。運動改善の決定因子はより若い年齢,損傷後

すぐに入院すること,より高いレベルのセルフケアと認知指標を含んだ.入院時の機能と

入院期間,治療強度はより大きな機能の獲得に寄与するものの,入院期間と治療強度はい

つも獲得を予測するわけではない。このセルフケアと運動・認知機能には,セルフケアの

欠如をともなった患者が運動や認知機能が障害されていない,あるいは比較的に軽症であ

るときに大きな改善をもたらすような相互依存性がある。Wodchis ら(2005)はオハイオ

州とミシガン州,オンタリオ州におけるナーシング施設へ入院した大規模な脳卒中患者

(n=23,824)について研究した。入院時に不確かな予後である患者では,リハビリテーシ

ョン治療の強度は,自宅復帰への可能性の増大と関連していた。しかしながら,1 回/週の

治療では一般的に強度があるとは考えられないとすべきである。(最高カテゴリーは 500+

分/週)

Individual Studies 個々の研究

23 の研究が治療強度の増加の有効性と改善した機能的結果の関係性を評価した.結果は

Table 6.10 に示す.

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Discussion 考察

11 の良質な研究は,異なったレベルの強度で理学療法を受けるため,患者を無作為化し

た.これらの研究の結果は Table 6.11 に要約する.

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専門的なリハビリテーションサービスの特性は,治療の強度増大を含む.しかし,この

事実は必ずしも立証されてはいない.さまざまな研究で,脳卒中リハビリテーションでの

治療強度の寄与を究明する試みがなされてきた.しかしながら,機能的アウトカムにおい

て,より大きな治療強度の効果を明らかにすることは,提供された治療,提供された時期

と期間,評価されるアウトカムの変動性のため困難である.治療強度はまた,患者側の能

力と意欲に依存する.アウトカムが改善に至ったメカニズムは十分に述べられていない.

Fang ら(2003)は,より大きな強度の理学療法プログラムは,必ずしも神経学的な改善で

はなくむしろ,単純に非麻痺側肢の代償を通して,より早期に ADL の改善や自立へ到達で

きるということを示唆している.

11 の“good”な研究のうち,6 は少なくとも 1 つの検査で有益性を示しているが,時期ま

たは異なった脳卒中の亜型という視点において伝統的な治療と比較した場合,その違いは

十分示されていない.これらの研究の多くは,初期評価で有意な改善を示したが,この有

益性は後日,消失した.3 つのメタアナリシスの全ての結果では,治療強度の増加の有益性

が示された.有益性は統計学的に有意であるが,臨床的有益性は小さい.

Conclusions Regarding the Intensity of Physiotherapy and Occupational Therapy 理

学療法と作業療法の強度に関する結論

理学療法と作業療法のより大きな強度が,機能な結果に改善をもたらすという強い根拠

(Level 1a)がある.しかしながら,全体の有益な効果は中等度であり,より大きな治療

強度と関連する肯定的な有益性は,時間とともに維持されない.より短期間で集中的に提

供された同様の治療は,より早期の回復とより早期の退院をもたらすというシングルスタ

ディの結果に基づいた中等度の根拠(Level 1b)がある.

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6. 6. 2 Intensity of Aphasia Post-Stroke 脳卒中後の失語症治療の強度

脳卒中後の失語症治療の強度の影響もまた研究されている.脳卒中後の失語症治療の最

も有効な手段は未だ確定されておらず,脳卒中後の失語症に苦しむ患者への言語聴覚療法

の有効性を調査した研究は,矛盾した結果をもたらしている.研究による知見での観察さ

れた不均一性に対する可能性のある解釈の一つは,治療強度の相違である.我々は,高強

度の治療が肯定的な結果をもたらしたという報告がある一方で,効果がないとする報告に

おいて提供された言語聴覚療法が低強度のために,一定した効果をもたらすことができな

かったと示されている(Poeck ら 1989).

Individual Studies of the Intensity of Language Therapy Post-Stroke 脳卒中後の言語療法

の強度についての個々の研究

失語症治療の強度を検証した研究の詳細は,Table 6.12 に示される.

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Discussion 考察

我々は,訓練を受けたセラピストによって遂行された言語聴覚療法(SLT)と治療なし,

または言語聴覚療法なしの場合を比較した 8 つの RCT を確認できた.4 つは肯定的な研究

で,残りの 4 つの研究は否定的な研究であった(Table 6.13 参照).

Bhogal らは(2003),有意な治療効果は,22.9 週間で 1 週間に約 2 時間だけの治療の提

供と比較し,11.2 週間で 1 週間に平均 8.8 時間の治療を提供する研究において達成された

ということ認めた.平均して,肯定的な研究は合計 98.4 時間の治療を提供し,一方,否定

的な研究は合計 43.6 時間の治療を提供した.したがって,治療時間の合計の長さは,Porch

Index of Communication Abilities(PICA) scores における平均的変化と有意に逆相関し

た.1 週間あたりの治療提供時間は,PICA と Token Test において,より大きな改善に有意

に相関した.そして最後に,治療の合計時間は,PICA と Token Test におけるより大きな

改善と有意に相関した.筆者は,短時間の集中治療は,失語症のある脳卒中患者への言語

聴覚療法の結果を改善することができると結論づけた(Bhogal ら 2003).それにもかかわ

らず,規定された基準に基づいた場合,これは相反する根拠を構成する.

Conclusions Regarding the Intensity of Language Therapy 言語療法の強度に関

する結論

言語療法は脳卒中後の失語症の治療において,有効であるかどうかに関し,矛盾する根

拠(Level 4)がある.否定的な試験はかなり長期間に低強度の治療が提供されたことに対

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し,肯定的な試験では,比較的短期間に高強度の治療が提供された.短期間(11 週間)で

の,より集中的な治療(週 8-9 時間)で,有効性が示されてきている.

6. 7 Durability of Rehabilitation Gains リハビリテーションの利益の持続性

機能的回復(機能障害にも関わらず活動を遂行する能力)とコミュニケーションにおけ

る改善は,神経学的回復の完了後,数ヶ月持続するかもしれない(Stineman と Granger

1998).脳卒中発症後 6 ヶ月と 3 年の間では,機能的能力の平均的水準は持続される

(Dombovy ら 1987,Borucki ら 1992).3 から 5 年を過ぎて,きわめて少量の低下が指摘

され,おそらく,増加する年齢と合併症の影響と関連している(Stineman と Granger 1998).

それゆえ,新しい事象がない場合に,脳卒中患者は長期間にわたり,リハビリテーション

による利益を持続する傾向にあると長い間考えられてきた.

6. 7. 1 Previous Reviews 先行研究

Evans ら(1995)は,リハビリテーション治療を評価した 1980 年から 1993 年の間に発

表された 11 の研究を再検討した.それは非治療のコントロール群を含めた(Table 6.14).

死亡率と退院場所,機能的能力のアウトカムが評価された.3 つの研究論文は,脳卒中以外

の能力低下のある個々人のリハビリテーションを評価した.彼らの分析は,リハビリテー

ション施設での治療が,8 から 12 ヶ月間の経過観察で,より大きな生存率と,より高い自

宅への退院率,より高い在宅率,そして,退院時の機能的能力のより高い結果を示した.

しかしながら,12 ヶ月間の経過観察で消失する生存と機能的自立の違いは,リハビリテー

ションを終了した多くの患者は,医学的や身体的,機能的に悪化するということを示唆す

る.Bagg(1998)は,この所見は,長期間の施設収容が必要な脳卒中患者への維持療法の

役割と同様に,入院患者のリハビリテーションプログラム終了後,治療に基づく外来患者

と在宅患者の有効性の評価の必要性を強調するという意見を述べた.このことは社会復帰

の最後の項目でより詳しく考察される.

Gresham ら(1995)は,長期的にアウトカムを検査した研究では,混合した結論に達し

たと指摘した.機能的な利益に関していくつかの研究は,維持され(Indredavik ら 1991,

Smith ら 1991 , Strand ら 1985 ),一方では維持されなかった( Garraway ら

1980a,1980b,1981,Sivenius ら 1985,Steven ら 1984,Sunderland ら 1992,1994,Wade

ら 1992).

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Individual Studies on the Durability of Rehabilitation Gains リハビリテーションの利益の持

続性における個々の研究

14 の研究は専門的なリハビリテーションを通して獲得した利益の持続性を評価した.結

果は Table 6.15 に示される.

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Discussion 考察

4 つの“good”な質の研究(PEDro>6)はリハビリテーションの利益の持続性を評価した.

結果は Table 6.16 に要約される.

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これらの研究の全ては,脳卒中後 12 ヶ月から 10 年の範囲において,コントロール群(一

般医療病棟)と比較して脳卒中リハビリテーション患者の機能的アウトカムにおける改善

を報告した.脳卒中リハビリテーションに起因する関連する有益性は,非常に強いように

思われる.しかしながら,脳卒中リハビリテーションを通して到達された明白な有益性は,

それほど強くないと思われる.Stevens ら(1984)は,4 から 12 ヶ月の改善が選択的に継

続することを発見した.対照的に,コントロール群の患者は事実上,機能が低下した.

Indredavik ら(1997,1999)は,脳卒中後,5 から 10 年の間に機能的アウトカムと関連す

るスコアにおいて低下を報告した.しかし,脳卒中ユニットにおいて治療された患者の

Barthel Indexのスコアはコントロール群の患者と比較してより高かった.Davidoffら(1991)

は,リハビリテーション終了時と1年の間の ADL スコアにおける有意な改善を報告した.

Leonard ら(1998)は,FIM のスコアは最初の1年間で改善し,その後,次の 4 から 5 年

に割たって有意ではないが低下を伴って,頭打ちになることを発見した.

Conclusions Regarding the Durability of Rehabilitation Gains リハビリテーショ

ンの利益の持続性に関する結論

より大きな機能的改善は,一般的な医療施設と比較し,専門的な脳卒中ユニットにおい

てリハビリテーションを施行された患者によりなされ,効果は短期間と長期間の両方に持

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続するという強い根拠(Level 1a)がある.

脳卒中リハビリテーションを通して獲得された機能の成果は持続され,実際に1年にわ

たって改善するという強い根拠(Level 1a)がある.脳卒中後5年までに機能的な結果は

頭打ちとなり,低下する可能性があるという中等度の根拠(Level 1b)がある.10 年まで

に,全体的な機能的結果のスコアは,どの程度自然の老化と合併症がこれらの低下に寄与

しているか明確でないが,有意に低下する.

6. 8 Hospital Readmissions Following Stroke Rehabilitation 脳卒中リハビリテー

ション後の再入院

入院の脳卒中リハビリテーションプログラムを終了した患者の一部は,多様な医学的理

由により再入院となる.再入院のための共通の危険因子を同定することにより,取り組み

は再入院減少を目的として,危険の減少に狙いを定めることができる.報告される再入院

の割合は,含まれる脳卒中の集団と追跡される時間枠により 9.9%から 51%とかなり変化す

る.(Tu と Gong 2003,Classen ら 2002)(Table 6.17) .

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Conclusions Regarding Readmission Rates Following Discharge 退院後の再入

院の割合に関する結論

再入院の割合は,評価された脳卒中の標本と観察期間の長さによって 10%から 50%と幅

広く変化する.