suicaにおけるデータとサービスの在り方...(全国10の交通系ic...
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Suicaにおけるデータとサービスの在り方
~オンラインとオフラインのハイブリッド~
決済の未来フォーラム デジタル通貨分科会
東日本旅客鉄道株式会社MaaS・Suica推進本部
決済事業部門 祖山 智幸
2020年7月30日
1.Suicaとは
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1.Suicaとは
Suicaは当初乗車券として誕生したが、サービス開始前より電子マネー構想があり、乗車券の準備と並行して検討・準備を実施
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
2019
2020
▲2001.11 Suicaの本サービス開始(424 駅)
▲2002.04 東京モノレール㈱と相互利用
▲2002.12 東京臨海高速鉄道㈱と相互利用
▲2004.08 「ICOCA」と相互利用
▲2007.03 「PASMO」と相互利用
▲2008.03 「TOICA」と相互利用
▲2009.03 「Kitaca」と相互利用
▲2010.03「SUGOCA」「nimoca」「はやかけん」と相互利用
▲ 2013.03 「manaca」「PiTaPa」と相互利用(全国10の交通系IC カード相互利用開始)
▲2016.03 「icsca」と相互利用(仙台エリア限定)
▲2003.07 「ビュー・スイカ」カードサービス開始▲2004.03 Suica電子マネーサービス開始
▲2006.01 モバイルSuicaサービス開始
▲2016.10 Apple PayでのSuicaサービス開始
▲2018.04 「タッチでGo!新幹線」サービス開始▲2018.05 Google PayでのSuicaサービス開始
▲2018.08 みずほwalletでのSuicaサービス開始
▲2019.09 Welcome Suica発売▲2019年度末 新幹線IC乗車サービス開始
▲2003.10 仙台エリアへSuica拡大
▲2006.01 新潟エリアへSuica拡大
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▲2011.07AndroidスマートフォンでのモバイルSuicaサービス開始
▲2020.05 楽天ペイのSuicaサービス開始
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1.Suicaとは
Suicaは各事業者横断の交通系ICに発展し、全国の鉄道事業者と「鉄道分野」、「流通事業分野」で相互利用が可能
9つのカードブランド(Suicaを除く)
電子マネーはPiTaPaを除く8つのブランド
発行枚数 8,343万枚
537万人
969万人
Suica
(2020年6月末)
Suica付きクレジットカード会員数
モバイルSuica会員数
全国交通系IC
鉄道 約5,000駅バス約30,000台
利用可能店舗数
100万店舗
利用件数(最高)2.53億件/月(最高) 958万件/日
(2019年12月)
相互利用
JR東日本利用可能駅:840駅利用率 : 約9割
等
電子マネー利用交通利用
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1.Suicaとは
Suicaは、様々なニーズに応じて、多様な媒体・端末でサービスを提供
Suica
モバイルSuica
多機能Suica クレジットカード一体型Suica
交通系電子マネー専用端末
電子マネーマルチ端末
シンクライアント端末
2.Suicaのシステムスキームと考え方
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2.Suicaのシステムスキームと考え方
鉄道事業・流通事業を併せ持つJR東日本グループが、自らシステムを設計し構築
鉄道事業 流通事業
JR東日本は、鉄道事業に加え流通事業分野をグループ内に有し、双方の分野における実事業に基いた課題が把握可能
カード事業を擁しており、決済分野の知見が存在
鉄道事業分野に加えて、駅などの特殊環境下における流通事業分野への対応が必要
乗車券であるSuicaを電子マネー利用する為には?
Suicaは決済事業者・メーカーが用意したのではなく、事業者が自らの運用に耐えうるよう構築した決済手段であることが特徴
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2.Suicaのシステムスキームと考え方
各フィールドごとに求められる条件は様々であり、それら条件を満たすことが必要
処理スピード
鉄道紛失・再発行
長い運用時間
電子マネー
十分ではない回線環境
鉄道以上に不十分な回線環境
新規ネットワークの用意は非現実
分野 条件
ICチップにバリューを保持し、ICチップ内のデータを正とする
先行してサービスを開始した鉄道分野の条件に基づく、Suicaの基本的な考え方
オンライン主体としつつオフラインも考慮
背景
・磁気切符以上のサービスレベルの要求・24時間365日運用・ラッシュ時等の多客対応・鉄道が運行する限り、回線障害時もサービス継続が必要
・鉄道施設ならではの工事制約(光ケーブルが引きずらい等)
・自販機などのスタンドアローン環境・3G全盛の通信環境※2000年当時
・残額管理の関係上、オンラインによるデータ収集も必須
オフライン主体としつつオンラインも考慮
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2.Suicaのシステムスキームと考え方
各フィールドごとに求められる条件に対応し、その組み合わせにより現在のSuicaの考え方を構築
展開局面ごとに、オンライン・オフラインどちらを主体とするかを定め、主体でないもう片方の手法で補足
鉄道・電子マネー双方の分野の条件から構築したSuicaの基本的な考え方
鉄道は紛失・再発行等のためにオンラインが必須、電子マネーはネットワーク環境の弱さからオフラインでの稼働が必要
要件1
一方、鉄道においても回線障害を想定しオフラインでの稼働を視野に入れる必要があり、電子マネーにおいてはデータ収集の為、オンラインの活用も必須
要件2
双方の事業分野で展開可能とする為、ICカード内のバリューが正であることを活用するとともに、局面ごとに適切な手法を採用する結果として、サービス全体としてはオンラインとオフラインのハイブリッド型とする
要件3
鉄道・電子マネー双方の条件を満たすためにSuicaに求められる要件
3.各フィールドに応じた条件のクリア手法
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3.各フィールドに応じた条件のクリア手法
鉄道分野においてはオンラインを基本とするが、改札処理及び耐障害性の担保はオフラインでの運用により対応
オンラインを基本とするが、一定のオフライン化での運用を可能とする
鉄道分野における条件クリア手法
データの種別によっては完全オンラインでデータをハンドリング、また一定の間隔ごとにセミリアルタイムでのデータ収集を実施
回線障害時は、駅務機器における鉄道運用に必須な機能について独立で稼働可能
Suicaセンターサーバ(ID管理システム)
Suica
ID管理ネットワーク
自動券売機
簡易Suica改札機導入駅
簡易Suica改札機
Suica発行機・入金機
駅収POS マルス 多機能券売機
自動精算機
ID管理駅サーバ
駅構内LAN
自動改札機導入駅
自動改札機
窓口精算機
:利用データ
:ネガデータ
自動券売機
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3.各フィールドに応じた条件のクリア手法
電子マネー分野は「自律分散」を採用し、センターシステムや各機器類は一部が故障しても全体には影響しない
Suicaセンターサーバ(ID管理システム)
:利用データ
:ネガデータ
電子マネーセンターサーバ
中継サーバ端末
自動販売機等
POSサーバ
店舗
自動販売機
店舗内ネットワークネットワーク
Suica
ID管理ネットワーク
オフラインを基本とし、オンラインを組み合わせることで様々な環境下での運用を可能とする
電子マネー分野における条件クリア手法
端末は一定の条件を満たすことによりオフラインで稼働
一定のロジックでオンラインでデータ配信・収集を行い、その結果セキュリティが担保できないと判断した場合、利用が不可
データ収集や配信はリアルタイムでなく、一定のロジックに基づくセミバッチで実施
ロジックやデータ収集・配信タイミングは端末種別、更には端末個別ごとに様々とし、その多様さが産み出すランダム性によりセキュリティを向上
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3.各フィールドに応じた条件のクリア手法
全国相互利用により、事業分野だけでなく事業体を跨いだ仕組みへと発展
事業分野や企業を跨ったデータを様々な経路で収集、一連のデータとして集約
事業分野や企業を跨ったデータの管理手法
複数の決済データを媒体のIDごとに集約し、決済時間及び決済順番の組み合わせにより整列
整列したデータを基に残高の整合性を持って管理
これらデータを基にネッティングを行い、鉄道系ICの事業分野間での利用や事業者間での相互利用を実現
Suica
Suicaセンターサーバ(ID管理システム)
相互利用センターシステム
ICカード相互利用センター
駅他エリアID管理システム
PASMO、ICOCA等駅務機器等
電子マネー加盟店他エリア電子マネー加盟店
PASMO、ICOCA等 電子マネーセンターサーバ
ID管理ネットワーク
店舗端末
4.Suicaを取り巻く環境の変化
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4.Suicaを取り巻く環境の変化
Suica構築当時からの環境の大きな変化を活用した、従来とは異なる仕組みの採用により、様々な対応が可能に
回線のリッチ化変化① 媒体のモバイル化変化②
Suicaを取り巻く環境の構築時からの変化
Suica媒体の常時通信を前提としたリッチなサービス、決済端末のシンクラ化などが可能になり、媒体や端末種別によっては、従前のオンライン・オフラインの考え方から解放された
上記変化により・・・
環境によってはオンラインを前提と考えることが可能に
媒体が通信可能なことにより、媒体上でのカード発行や媒体上でのチャージ等が可能に
3G
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4.Suicaを取り巻く環境の変化
環境が整っている場合には、その環境を活用した各種レベル向上に取り組んでいる
環境等が整っている場合はよりリッチなサービスや安価な端末による導入、そうでない場合は従前の考え方に基づく耐久性の高いサービス
Suicaの基本的な考え方によって、根幹サービスの耐久性を高いレベルで維持しつつ、環境等が整っている場合は、よりリッチなサービスや安価な導入が可能になった
例:モバイルSuicaについて、Suica媒体としてはオフラインでも利用可能、通信が通っていればクレジットカード等からのチャージ、グリーン券の購入、JRE POINTのチャージやグリーン券への交換が可能
環境の変化により実現したサービス
5.本日のまとめ
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5.本日のまとめ
まとめ
1.Suicaとは
Suicaは交通乗車券として誕生、当初より電子マネー構想があり、交通乗車券と並行して準備を開始
2.Suicaのシステムスキームと考え方
鉄道事業・流通事業を併せ持つJR東日本グループが、自らのフィールドで運用上の問題が無いものとするのが必須
Suicaは決済事業者・メーカーが用意したのではなく、事業者が自らの運用に耐えうるよう構築した決済手段
鉄道、電子マネー各フィールドごとに求められる条件に対応し、その組み合わせにより現在のSuicaの考え方を構築
3.各フィールドに応じた条件のクリア手法
鉄道分野はオンラインを基本とするが、耐障害性やスピードを担保するためオフラインでの運用も視野に入れる
電子マネー分野はオフラインを基本とし、オンラインを組み合わせることで様々な環境下での運用を可能とする
相互利用を実現する為、事業分野や企業体を跨ったデータを様々な経路で収集、一連のデータとして集約
4.Suicaを取り巻く環境の変化
常時通信を前提としたリッチなサービス媒体や端末種別によっては、従前のオンライン・オフラインの考え方から解放
環境が整っている場合は、「よりリッチなサービス」や「安価な端末提供」が可能に
ご清聴、まことにありがとうございました