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OPEN EYE 24 vol. 2016 September オープンソースの 新 時 代 を 築く、サクセスストーリー Success story for your business Red Hat K.K. EDITORIAL 2016 INDEX ユーザー事例 Success Story 顧客向け IaaS の基盤に レッドハット OpenStack を採用。 信頼性を高め、 SDS で高可用性も確保 NHN テコラス株式会社 ユーザー事例 Success Story 国内初! Red Hat の組込みソリューションを採用、 クレジット決済用 アプライアンス レッドハット 製品を導入 株式会社インテリジェント ウェイブ 今年もいよいよレッドハット・フォーラムの開催が近づいてまい りました。本年度のテーマは「The power of participationアイ デアとテクノロジーが生むオープンイノベーションの破壊力」。 IT の役割や可能性が大きく変化している今、日本経済の持続的成 長や地域社会の変革、さらにはグローバル市場における日本企 業の成長に、レッドハットのビジネスの根幹であるオープンソース ソフトウェアがどのように貢献できるのか。すべての成長や変革の 原動力である「人」が持つ創造力(アイデア)とITとを融合すること で、企業の成長や変革を最大化させる手法や可能性について、 余すところなくご紹介いたします。 RED HAT FORUM 2016 Tokyo The power of participation - アイデアとテクノロジーが生むオープンイノベーションの破壊力 - redhatforum.jp お申込みはこちら ウェスティンホテル東京 2016.10.5 WED 米国レッドハット 社長兼CEO ジム・ホワイトハスト  レッドハット株式会社 代表取締役社長 望月 弘一 中国電力株式会社 執行役員 情報通信部門(情報システム)部長 丹治 邦夫 ゼネラルセッション パナソニック株式会社 全社CTO室 技術戦略部 ソフトウェア戦略担当理事 梶本 一夫 米国レッドハット シニアバイスプレジデント アプリケーション プラットフォームビジネス クレイグ・ムジラ RED HAT FORUM 2016 Tokyo 開催! The power of participation レッドハット 最新レポート コンテナ はデプロイと運用を再発明する」 OpenShiftリブランドで、企業システムにおける コンテナ利用を推進 お申込みはこちら ▶▶▶ redhatforum.jp

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Page 1: Success story for your business Red Hat K.K. EDITORIAL 2016 … › openeye_online › pdf › RedHat_OpenEye... · 2017-01-12 · OPEN EYE vol. 24 2016 September オープンソースの新時代を築く、サクセスストーリー

OPEN EYE 24vol.2016 September

オープンソースの新時代を築く、サクセスストーリー

Success story for your business Red Hat K.K. EDITORIAL 2016

INDEX

ユーザー事例 Success Story

顧客向けIaaSの基盤にレッドハットのOpenStackを採用。信頼性を高め、SDSで高可用性も確保

NHN テコラス株式会社

ユーザー事例 Success Story

国内初!Red Hatの組込みソリューションを採用、クレジット決済用アプライアンスにレッドハット製品を導入

株式会社インテリジェント ウェイブ

 今年もいよいよレッドハット・フォーラムの開催が近づいてまいりました。本年度のテーマは「The power of participation― アイデアとテクノロジーが生むオープンイノベーションの破壊力―」。ITの役割や可能性が大きく変化している今、日本経済の持続的成長や地域社会の変革、さらにはグローバル市場における日本企業の成長に、レッドハットのビジネスの根幹であるオープンソースソフトウェアがどのように貢献できるのか。すべての成長や変革の原動力である「人」が持つ創造力(アイデア)とITとを融合することで、企業の成長や変革を最大化させる手法や可能性について、余すところなくご紹介いたします。

RED HAT FORUM 2016 TokyoThe power of participation-アイデアとテクノロジーが生むオープンイノベーションの破壊力-

redhatforum.jpお申込みはこちらウェスティンホテル東京2016.10.5

WE

D

米国レッドハット社長兼CEO

ジム・ホワイトハースト 

レッドハット株式会社代表取締役社長

望月 弘一

中国電力株式会社執行役員情報通信部門(情報システム)部長

丹治 邦夫 氏

ゼネラルセッション

パナソニック株式会社全社CTO室 技術戦略部ソフトウェア戦略担当理事

梶本 一夫 氏

米国レッドハットシニアバイスプレジデントアプリケーションプラットフォームビジネス

クレイグ・ムジラ

RED HAT FORUM 2016 Tokyo開催!The power of participation

○レッドハット 最新レポート

「コンテナはデプロイと運用を再発明する」OpenShiftのリブランドで、企業システムにおけるコンテナ利用を推進

お申込みはこちら ▶▶▶ redhatforum.jp

Page 2: Success story for your business Red Hat K.K. EDITORIAL 2016 … › openeye_online › pdf › RedHat_OpenEye... · 2017-01-12 · OPEN EYE vol. 24 2016 September オープンソースの新時代を築く、サクセスストーリー

レッドハットのソリューションは、大きな変革を求められている企業のITインフラ戦略を支援し、ビジネスの拡大に貢献します。● オープンソースソフトウェアによる次世代の仮想化技術やクラウド基盤で ITインフラを刷新。● コンテナアーキテクチャやxPaaSを駆使したDevOpsにより、アジャイルな IT開発を実現。● さまざまなデバイスやチャネルで取得したビッグデータ/IoTをビジネスに 迅速に活用することで「攻める経営に貢献するIT」を実現。

午後のブレイクアウトセッションでは、これらのソリューションを以下の5つのカテゴリに分け、導入事例やデモ、パネルディスカッションを交えながら幅広い内容でご紹介します。

RED HAT FORUM 2016 Tokyo

2 OPEN EYE

Success story for your business

時代は、コンテナ活用へ。注目のコンテナテクノロジーをプラットフォームから支えるRed Hat OpenShift Container Platform。最新技術のご紹介からマイクロサービスアプリケーションを実現するためのDevOpsへのアプローチ、なぜ企業はコンテナアプリケーションが必要なのか等、国内外の最新事例を多数交えながらお伝えします。さらに、昨年人気No.1だったコンテナパネルセッションも再び登場。お楽しみに!

category 2コンテナ/DevOps

category 1OpenStack/クラウド

本格的な運用が始まったRed Hat OpenStack Platform。見どころは、言うまでもなくユーザー導入事例です。また、次世代のアジャイル基盤としてOpenStack環境とコンテナ環境の関係を紐解きます。さらにRed Hat Enterprise Linux(RHEL)のテクノロジーや最新ロードマップ、注目度が高いNFVセッションなどもご用意しています。

● 本格運用時代を迎えたOpenStackについて、ユーザーの生の声が聴ける● 信頼できるクラウドのコアとなるRHELの最新動向がわかる● NFVの意義や、それにともなう通信事業の変革を把握できる

POINT

● コンテナは本当に使えるのか?エンタープライズで使えるのか?どこで使えるのか?が理解できる● コンテナやDevOpsがもたらす開発とデプロイ、運用の新しいモデルがわかる● DevOpsの事例について、道具だけでなくプロセスやカルチャーの変革を交えた話が聴ける

POINT

OpenStackがユーザーへ提供するコンピューティング環境

クラウドユーザー外部ネットワーク

■ プロジェクト環境仮想ルータ

仮想スイッチ

OS領域仮想マシンインスタンス

ブロックボリュームデータ領域

事例セッション【CLD305】 NHNテコラス株式会社/レッドハット:OpenStack 事例紹介ーOne Command デプロイへの挑戦ー【CLD302】 フリービット株式会社/レッドハット:最新事例から考えるRed Hat OpenStack Platform

おすすめセッション【CLD502】 レッドハット:先駆け情報!Red Hat Enterprise Linux 8と未来を占う。【CLD103】 日本マイクロソフト株式会社:エンタープライズ企業がAzureを選ぶ理由、お教えします【CLD403】 レノボ・ジャパン株式会社:SDSでストレージのコストと運用リソースを解放せよ!【CLD205】 日本電気株式会社:クラウドネイティブに向けたOpenStack最前線【CLD404】 デル株式会社:Dell Red Hat Cloud Solutions ~OpenStack基盤はデルにおまかせ!

事例セッション【CNT202】 NECソリューションイノベータ株式会社:NECクラウドサービスへのOpenShift導入の道のり - コンテナ技術を企業のアプリケーション開発に活かすには

おすすめセッション【CNT105】 パネルディスカッション:来たるコンテナ時代に向けて【CNT203】 レッドハット:実践DevOps【CNT204】 アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社:進化し続けるAWSクラウドで実現する、デジタルトランスフォーメーション【CNT405】 ネットアップ株式会社:ステートフルコンテナ実現のためのベストプラクティス【CNT402】 株式会社日立製作所:ミッションクリティカルな基幹システムの開発に革新を!

Red Hatのコンテナポートフォーリオ

コンテナアプリケーションハイパーコンバージドコンテナアプリケーション

Red Hat JBossApplication Services

Red Hat組合せソリューション

CloudForms(クラウド管理)

Ansible(自動構成管理)

Storageストレージサービス

Satellite(RHEL管理)

DeveloperStudio

(開発ツール)

CDK(開発環境キット)

BRMS/BPM

コンテナ

Fuse

コンテナ

EAP/Grid

コンテナ

Mobile

コンテナ

ISV

コンテナ

コンテナ管理(監視、容量、ポリシー)

Red Hat Enterprise Linux

DevOps支援サービスセルフサービス、CI/CD、イメージストリーム

コンテナ基盤サービスオーケストレーションとスケジューリング、ストレージ、

レジストリ、セキュリティ、ネットワーク

Physical Virtual Private Public

Paa

SIa

aSCo

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Caa

S)

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OPEN EYE 3

Red Hat K.K. EDITORIAL 2016

待ちに待ったRed Hat JBoss Enterprise Application Platform(JBoss EAP)7。最新の技術仕様についてご紹介するだけでなく、マイクロサービスアプリケーションのための実行基盤とOpenShiftとの関係を紐解いていきます。また、すっかり定着したBRMS(ビジネスルールエンジン)の最新導入事例や、注目度、高まるRed Hat Mobile Application Platformの最新動向もあわせてご紹介します。

category 3アプリケーションプラットフォーム

依然として関心度が高いビックデータ/IoTの世界。本年は、具体的なIoT事例のお客様講演を予定しています。レッドハットが提案するリアルタイムな世界でビッグデータをどのように処理するのか、導入実績で証明されたアーキテクチャをご紹介します。また、今まさに注目のソフトウェア・デファインド・ストレージの世界。CephやGlusterの最新情報、ロードマップもあわせてご紹介します。

category 5ビッグデータ/IoT

ソフトウェア・デファインド・インフラストラクチャが現実味を帯びているなか、注目はやはりAnsible。企業のIT基盤の構築からアプリケー ション開発、環境メンテナンスまで、いかにオートメーション化するか。また、APIの活用が今後のビジネスのポイントに。今年の夏にRed Hatが買収したAPI管理製品の3scaleをご紹介します。レッドハット製品や オープンソースソフトウェアを多数導入している方に向けて、さまざまなお役立ち情報をご提供します。

category 4オートメーション/マネジメント

管理者

ユーザー

ユーザー

Job管理

権限管理 ネットワーク

サーバー

クラウド

API

モジュール

インベントリ

作成&登録Playbook

ダッシュボード

● 約4年ぶりのメジャーバージョンアップとなるRed Hat JBoss EAP 7の最新情報がわかる● Red Hat JBoss BRMSやRed Hat JBoss Fuseによるデータ連係の使いどころが学べる● Red Hat Mobile Application Platformによる企業モバイルアプリケーション開発の事例が聴ける

POINT

● リアルタイム・ビッグデータ分析による具体的なビジネスメリットがわかる● IoTを現実のビジネスに活用している最新ユーザー事例が聴ける● IoTのデータを収集し、保存し、分析するためのアーキテクチャとプラットフォームについて学べる

POINT

POINT● システムの構成を自動化するAnsibleについて理解できる● なぜAPI管理が必要なのか?が具体的に理解できる● 海外での3scaleの導入事例が聴ける

お申込みはこちら ▶▶▶

事例セッション【APP304】 アサヒビジネスソリューションズ株式会社:アサヒグループが実現!経営を支えるデータベースをスピーディーに統合できた理由とは?【APP201】 ソフトバンク株式会社:ソフトバンクの携帯事業を支えるBRMSの適用事例【APP104】 株式会社日立製作所:コンテナテクノロジーを活用した大規模アプリケーションの開発

おすすめセッション【APP601】 レッドハット:最新のJava EE 7仕様準拠 、クラウドレディアーキテクチャJBoss Enterprise Application Platform7紹介【APP503】 レッドハット:「つなぐ」「ひろげる」「考える」これからのアプリケーションプラットフォーム【APP300】 レッドハット:モバイルファースト時代のアプリ開発/実行基盤 Red Hat Mobile Application Platform

おすすめセッション【AUT306】 レッドハット:Ansible Towerで実現する自動化【AUT506】 レッドハット:APIで加速する新しいビジネス~3scale by Red Hat API管理ソリューションの全貌

事例セッション【BGD602】 旭鉄工株式会社/レッドハット:IoTで実現したリアルタイムの生産管理による設備投資削減【BGD303】 株式会社IDCフロンティア:行動分析プラットフォームとOpenShiftを活用した探索的開発環境

おすすめセッション【BGD206】 レッドハット:コンテナとIoT【BGD406】 レッドハット:ビッグデータ/IoTを支えるSDS第2章とは【BGD101】 日本ヒューレット・パッカード株式会社:スケールアップとはこういうことだ! ~HPEだから出来る新しいLinuxの世界~【BGD401】 ウイングアーク1st株式会社:誰もが情報活用できる理想の統合情報活用基盤の実現に向けて

外部サービス

レッドハット製品で構築するIoTスタック

業務システム

docker

パブリック/プライベートクラウドクライアント

IoTデバイス

フロント バックエンド

モバイル端末

連携システム

Web Server asRED HAT JBOSS

WEB SERVER

Message Broker asRED HAT JBOSS A-MQ

HTTPMQTTetc..

etc.

ESB asRED HAT JBOSS FUSE

MBaaS as RED HAT MOBILE

APPLICATION PLATFORM

Application BI Tool

RED HATOPENSTACKPLATFORM

OPENSTACK AWS MicrosoftAzure

Google CloudPlatform

RED HATENTERPRISE

LINUX

リアルタイム処理

RED HAT JBOSSENTERPRISE

APPLICATION PLATFORM Hadoop F/Wアプリケーション

実行基盤

RED HATJBOSS BRMS

RED HATJBOSS BRMS

ルール解析エンジン

RED HAT JBOSSDATA GRID

Hadoopデータ・分散実行基盤

製品のアプリケーション

分析(逐次)処理

RED HAT OPENSHIFT CONTAINER PLATFORM

Apple

Microsoft

Google通知

紙とペンで行っている点検(チェック)業務、設備点検、検針、在庫チェック、検品、作業報告、事故対応、店頭販売・接客、アンケート収集、現場―本社間の情報連携・意思決定

効率化、迅速化可能な現場業務の例

既存システム

Salesforce / SAP

既存Database

Red Hat MobileApplication

Platform

迅速開発ライフサイクル管理

通知

JBoss BPMSuite

JBoss BRMS

プロセス管理・自動化

JBoss Fuse

既存または外部システムと連携

3scaleのAPIプラットフォーム

3ScaleAPI利用者

開発者顧客

モバイルアプリアフィリエイトパートナー社内システム

API提供システム

API

バックエンドのコンテンツ/

データ/サービス

トラフィック管理

API管理システム

アクセス制御 & セキュリティ

APIの規約 & 流量制限

分析とレポート機能

開発者向けポータルとドキュメンテーション

課金 & 支払い

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 NHNテコラスは、法人向けITインフラサービスを提供する企業だ。2015年1月に3つのグループ組織が統合したもので、前身の1社であるデータホテルは、特にゲーム業界におけるデータセンター事業者としての高いポジションを確立していた。その理由について、NHNテコラス株式会社 取締役の平井壮氏は、次のように説明する。 「2010年頃から世の中でソーシャルゲームの利用が始まり、それに伴ってゲーム業界のお客様企業に私たちのデータセンターをご利用いただく機会が増えてきました。その最大の理由は、お客様ニーズに合ったさまざまなプランをご提案できていたからだと思います。例えばゲームビジネスを始めるにあたって必要となるインフラ周りのメニューを分かりやすくご提示したり、キャパシティの変動の大きさにも柔軟に対応できる課金モデルをご提供したりといった点です。こうした取り組みを、お客様に評価いただいたのだと思います」。 ただしNHNテコラスは、ゲーム業界のみに注力しているわけではない。平井氏の話からも分かるように、ユーザー企業に支持されたのは、世の中のトレンドを踏まえた上で、顧客ニーズを十分に汲み取った提案の結果だ。 こうした実ビジネスの展開と併せて、同社は2011年からIaaSサービスの提供検討を始め、コミュニティ版OpenStackへの取り組みに着手した。

 同社は本来、顧客に提供するデータセンター環境を、UNIXベースの物理マシンを連携させて提供することを得意としていた。しかし世の中では、クラウドサービスの普及が始まっていた。そこで顧客企業に提

供するサービスメニューの1つとして、IaaSをラインナップすることを検討し始める。当時の状況について、NHNテコラス株式会社 データホテル事業本部の黒澤隆史氏は次のように説明する。 「今までのデータセンター事業では、VPS(Virtual Private Server:仮想専用サーバー)をメインとするサービスメニューを提供していたのですが、4~5年前の段階では、まだAWSのようなIaaSのサービスには進出していませんでした。そこで2011年に、まずはIaaSを構築する要素技術として、コミュニティ版のOpenStackを研究するところから始めました」(黒澤氏)。 主なOSSのクラウドプラットフォームとしては、ほかにもCloudStackがあり、同社ではCloudStackについても研究していたというが、コミュニティのサポートや関連情報、関連ツールの豊富さなどから、社内のエンジニア主導でOpenStackへと舵を切った。 「長期的にはもちろんOpenStackベースで顧客企業向けのIaaSサービスを構築するという経営的な見通しがありました。一方、エンジニアの視点としては、そもそもOpenStackとはどんなものか、私たちのビジネスで利用できるのか、という点を明らかにする必要がありました」(黒澤氏)。

 同社では、入社したエンジニアに1人1台ずつ、物理マシン(=IAサーバー)を貸し与える制度がある。社内的には“賄いサーバー”と呼ばれるものだ。顧客システムのテストを同社側で吸収するために始めた制度だが、例えば複数のインスタンスが通信する際の挙動を見たい時は、個々のマシンを物理的に繋ぐという作業を行わなければならなかった。1人1台では、不自由な状況だった。 「コミュニティ版OpenStackの利用は、賄いサーバーを繋いで作っていた環境をIaaSに置き換える、というところから検討が始まりました。そしてこの先、IaaSサービスとしてお客様にご提供することも見据え

て、OpenStackで構築したプラットフォーム上に、アプリケーションとして社内の情報共有ポータルやコンテンツ管理システムなどを載せて検証したのです」(平井氏)。 顧客向けIaaSサービスの提供も視野に入れて、OpenStackへの取り組みを開始した同社だが、一方でコミュニティ版には限界も感じていたという。それが”信頼性をいかに確保し続けるか”、”サービスを市場投入するまでの時間をいかに短縮するか”、ということだ。

 2011年からコミュニティ版のOpenStackを使い始めていた同社には、言うまでもなく相応のノウハウが蓄積されていた。そのまま自社で商用版IaaSサービスを完成させることも不可能ではなかった。しかし、それには時間が必要だった。 「私たちはデータセンター事業を展開していますが、本来強みを発揮できるのは、オンプレミス向けなのか、クラウドサービス利用なのかというインフラの選定から構成の設計、導入後の運用管理までを代行するマネージドサービスです。そこで商用版IaaSサービスについては、OpenStackの知見を持った外部パートナーの力を借りて信頼性を担保しつつ、できるだけ早く市場に投入し、私たちはマネージドサービスに注力していきたいと考えたのです」(平井氏)。 また技術的な観点からは、“SDS(Software-Defined Storage)のコントロールが可能かどうか”が最重要の要件だったという。 「IaaSサービスでは、柔軟なストレージ環境をお客様にご提供することが求められます。しかしストレージには億単位の投資が必要で、一方どれだけのニーズがあるかまだ分からないサービスに、多額の投資を行うことはできません。そこで私たちはSDSを選択し、実際のストレージ製品としてEMC ScaleIOを採用しました」(黒澤氏)。

 同社では商用ディストリビューションを採用するに当たり、レッドハット製品だけでなく、MirantisやCanonicalなど他の製品も検討したという。しかしいずれも同社の要件に叶うものではなかった。 「技術的な一番のポイントは、先にも述べた通り、SDSを搭載した上で動かせるかどうか、さらにはHA(ハイアベイラビリティ)機能を提供しているかどうかという点でした。具体的には、インスタンスが稼働しているいずれかの物理マシンが落ちたとしても、OpenStack環境の集中管理機能を提供するクラウドコントローラー側で異常を検知して、フェイルオーバーしてくれる機能が必要だったということです。このHA機能を技術的に実装できている商用ディストリビューションは、Red Hat OpenStack Platform以外にありませんでした」(黒澤氏)。 「お客様に提供するIaaSサービスには、高い信頼性と柔軟性が求められます。またビジネスの観点では市場投入までのスピード感も必要でした。適正な範囲であれば、きちんとコストを投下して商用ディストリビューションを利用しようというのが経営側の判断です。その意味でもRed Hat OpenStack Platformは、私たちのニーズを満たしてくれるソリューションでした」(平井氏)。

 今回のOpenStackを採用したIaaS基盤の構築プロジェクトでは、サービスのリリース前からファーストユーザーとして想定していた顧客企業のオンプレミス環境と、今回提供するIaaS環境とを連携することが顧客要件として提示されていた。 「もちろんIaaSサービスは、将来的に複数のお客様にご利用いただくものですが、リリース前から採用を想定していたそのお客様には、自社のオンプレミス

環境と新しいクラウド環境とを連携してご提供する必要がありました。この両環境の繋ぎ込みも私たちにとっては重要なテーマだったのです」(黒澤氏)。 Webサーバーは新たなクラウド環境に置くが、データベースやロードバランサーはオンプレミス環境にある。2つの環境が1つのシステムとして機能するためには、クラウド環境とオンプレミス側のデータベースやロードバランサーとが、シームレスに繋がる必要がある。 「Red Hat OpenStack Platformを採用し、レッドハットの知見を得たことで物理環境との繋ぎ込みを実現することができました。またネットワーク接続の方式も、レッドハットと意見交換できたことで最適な選択ができました。いずれもレッドハットの支援があってこそ、クリアできたポイントです」(黒澤氏)。 実際のプロジェクトは2016年1月にスタートし、構築に約4カ月、テストに約2カ月を費やし、2016年6月にHA機能を含む完全版がリリースされた。

 NHNテコラスは今回のプロジェクトでRed Hat OpenStack Platformを採用したが、同社が利用する全てのOpenStackがレッドハット製品というわけではない。当初研究対象となったコミュニティ版は今でも利用しており、コミュニティ版OpenStackをベースとしたIaaSもサービスメニューとして提供している。 「その理由は、リソースはそれほど潤沢でなくてもいい、利用コストが最優先、といったお客様のニーズに主にお応えするものです。反面、高い信頼性を担保した上で、キャパシティの増減にも柔軟に対応したいというお客様には、Red Hat OpenStack PlatformベースのIaaSサービスをご提供する。今回のプロジェクトによって、私たちのサービスメニューの幅が拡がり、より充実させることができたと考えています」(黒澤氏)。 「さらに言えば、今回リリースしたIaaSサービスが多くのお客様の評価を得て広がっていけば、ハードウェアを調達し、保守をする、という従来のビジネス

モデルが淘汰されていくでしょう。私たちの事業ポートフォリオも大きく変わり、お客様とより長い期間にわたるお取引も可能となります。事業収益を堅固にする、新たなモデルも期待できると考えています」(平井氏)。

 今後ITインフラの世界は、どんどんソフトウェア寄りになっていく。それを象徴するのがSDSであり、あるいはSDN(ソフトウェア・デファインド・ネットワーキング)といったテクノロジーだ。 「さらに昨今ではOpenShiftなど、サーバーレスアーキテクチャと呼ばれる考え方が出てきています。私たちが注力するデータセンター事業やマネージドサービスにも、こうした最先端のテクノロジーを取り込んで、サービスとしてリリースするためにはどうすればいいかを考えていく必要がある。その過程の中で適用できるOSSやレッドハット製品があれば、随時検討していきたいですね」(黒澤氏)。 「グローバルに展開しているレッドハットには、より先進的なユーザー事例が集まってきています。また各分野のOSSも、コミュニティを介してどんどん品質が改善されていくでしょう。そうした最先端の事例やテクノロジーの中で、私たちのサービスに有用なものがあれば、ぜひご紹介していっていただきたいですね。私たちユーザー企業にニーズに合致した最新情報を提供できるのも、レッドハットならではの強みだと思います」(平井氏)。

 法人向けのITインフラサービスを提供するNHNテコラスは2016年、OpenStackを利用したIaaSサービスを構築するとともに、既存顧客企業向けのオンプレミス環境とIaaSとを連携するプロジェクトに着手した。求めた要件は信頼性に加えて“SDS(ソフトウェア・デファインド・ストレージ)のコントロールまで可能かどうか”。複数の商用ディストリビューションを比較し、最終的に選択したのが「Red Hat OpenStack Platform」だ。

背景IaaSサービスの提供を想定し、OpenStackの検討を開始

課題クラウドプラットフォームの選択:OpenStackか、CloudStackか

システム要件信頼性が高くリリースまでの時間を短縮できるもの

OpenStackによるIaaS基盤構築の流れ

01 背景 02 課題 03 システム要件 04IaaSサービスの提供を想定し、OpenStackの検討を開始

クラウドプラットフォームの選択:OpenStackか、CloudStackか

信頼性が高くリリースまでの時間を短縮できるもの

・社内アプリケーションも載せて検証を行う

・サービスの市場投入までの時間短縮も重視

IaaS基盤としての信頼性に加えSDSのコントロールも可能

・キャパシティの増減に対応するためにSDSを選択

・IaaS基盤ではSDSがコントロールできることが必須

・関連情報の豊富さなどからOpen-Stackへ舵を切る

・OpenStackのビジネスでの有用性をクリアに

・顧客向けIaaSサービスの提供を検討開始

・コミュニティ版OpenStackへの取り組みに着手

レッドハット製品を選んだ決め手

レッドハット製品を選んだ決め手IaaS基盤としての信頼性に加えSDSのコントロールも可能

顧客向けIaaSの基盤にレッドハットのOpenStackを採用。信頼性を高め、SDSで高可用性も確保

4 OPEN EYE

Success story for your business

ユーザー事例Success Story

NHNテコラスOpenStackによるIaaS基盤の構築

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 NHNテコラスは、法人向けITインフラサービスを提供する企業だ。2015年1月に3つのグループ組織が統合したもので、前身の1社であるデータホテルは、特にゲーム業界におけるデータセンター事業者としての高いポジションを確立していた。その理由について、NHNテコラス株式会社 取締役の平井壮氏は、次のように説明する。 「2010年頃から世の中でソーシャルゲームの利用が始まり、それに伴ってゲーム業界のお客様企業に私たちのデータセンターをご利用いただく機会が増えてきました。その最大の理由は、お客様ニーズに合ったさまざまなプランをご提案できていたからだと思います。例えばゲームビジネスを始めるにあたって必要となるインフラ周りのメニューを分かりやすくご提示したり、キャパシティの変動の大きさにも柔軟に対応できる課金モデルをご提供したりといった点です。こうした取り組みを、お客様に評価いただいたのだと思います」。 ただしNHNテコラスは、ゲーム業界のみに注力しているわけではない。平井氏の話からも分かるように、ユーザー企業に支持されたのは、世の中のトレンドを踏まえた上で、顧客ニーズを十分に汲み取った提案の結果だ。 こうした実ビジネスの展開と併せて、同社は2011年からIaaSサービスの提供検討を始め、コミュニティ版OpenStackへの取り組みに着手した。

 同社は本来、顧客に提供するデータセンター環境を、UNIXベースの物理マシンを連携させて提供することを得意としていた。しかし世の中では、クラウドサービスの普及が始まっていた。そこで顧客企業に提

供するサービスメニューの1つとして、IaaSをラインナップすることを検討し始める。当時の状況について、NHNテコラス株式会社 データホテル事業本部の黒澤隆史氏は次のように説明する。 「今までのデータセンター事業では、VPS(Virtual Private Server:仮想専用サーバー)をメインとするサービスメニューを提供していたのですが、4~5年前の段階では、まだAWSのようなIaaSのサービスには進出していませんでした。そこで2011年に、まずはIaaSを構築する要素技術として、コミュニティ版のOpenStackを研究するところから始めました」(黒澤氏)。 主なOSSのクラウドプラットフォームとしては、ほかにもCloudStackがあり、同社ではCloudStackについても研究していたというが、コミュニティのサポートや関連情報、関連ツールの豊富さなどから、社内のエンジニア主導でOpenStackへと舵を切った。 「長期的にはもちろんOpenStackベースで顧客企業向けのIaaSサービスを構築するという経営的な見通しがありました。一方、エンジニアの視点としては、そもそもOpenStackとはどんなものか、私たちのビジネスで利用できるのか、という点を明らかにする必要がありました」(黒澤氏)。

 同社では、入社したエンジニアに1人1台ずつ、物理マシン(=IAサーバー)を貸し与える制度がある。社内的には“賄いサーバー”と呼ばれるものだ。顧客システムのテストを同社側で吸収するために始めた制度だが、例えば複数のインスタンスが通信する際の挙動を見たい時は、個々のマシンを物理的に繋ぐという作業を行わなければならなかった。1人1台では、不自由な状況だった。 「コミュニティ版OpenStackの利用は、賄いサーバーを繋いで作っていた環境をIaaSに置き換える、というところから検討が始まりました。そしてこの先、IaaSサービスとしてお客様にご提供することも見据え

て、OpenStackで構築したプラットフォーム上に、アプリケーションとして社内の情報共有ポータルやコンテンツ管理システムなどを載せて検証したのです」(平井氏)。 顧客向けIaaSサービスの提供も視野に入れて、OpenStackへの取り組みを開始した同社だが、一方でコミュニティ版には限界も感じていたという。それが”信頼性をいかに確保し続けるか”、”サービスを市場投入するまでの時間をいかに短縮するか”、ということだ。

 2011年からコミュニティ版のOpenStackを使い始めていた同社には、言うまでもなく相応のノウハウが蓄積されていた。そのまま自社で商用版IaaSサービスを完成させることも不可能ではなかった。しかし、それには時間が必要だった。 「私たちはデータセンター事業を展開していますが、本来強みを発揮できるのは、オンプレミス向けなのか、クラウドサービス利用なのかというインフラの選定から構成の設計、導入後の運用管理までを代行するマネージドサービスです。そこで商用版IaaSサービスについては、OpenStackの知見を持った外部パートナーの力を借りて信頼性を担保しつつ、できるだけ早く市場に投入し、私たちはマネージドサービスに注力していきたいと考えたのです」(平井氏)。 また技術的な観点からは、“SDS(Software-Defined Storage)のコントロールが可能かどうか”が最重要の要件だったという。 「IaaSサービスでは、柔軟なストレージ環境をお客様にご提供することが求められます。しかしストレージには億単位の投資が必要で、一方どれだけのニーズがあるかまだ分からないサービスに、多額の投資を行うことはできません。そこで私たちはSDSを選択し、実際のストレージ製品としてEMC ScaleIOを採用しました」(黒澤氏)。

 同社では商用ディストリビューションを採用するに当たり、レッドハット製品だけでなく、MirantisやCanonicalなど他の製品も検討したという。しかしいずれも同社の要件に叶うものではなかった。 「技術的な一番のポイントは、先にも述べた通り、SDSを搭載した上で動かせるかどうか、さらにはHA(ハイアベイラビリティ)機能を提供しているかどうかという点でした。具体的には、インスタンスが稼働しているいずれかの物理マシンが落ちたとしても、OpenStack環境の集中管理機能を提供するクラウドコントローラー側で異常を検知して、フェイルオーバーしてくれる機能が必要だったということです。このHA機能を技術的に実装できている商用ディストリビューションは、Red Hat OpenStack Platform以外にありませんでした」(黒澤氏)。 「お客様に提供するIaaSサービスには、高い信頼性と柔軟性が求められます。またビジネスの観点では市場投入までのスピード感も必要でした。適正な範囲であれば、きちんとコストを投下して商用ディストリビューションを利用しようというのが経営側の判断です。その意味でもRed Hat OpenStack Platformは、私たちのニーズを満たしてくれるソリューションでした」(平井氏)。

 今回のOpenStackを採用したIaaS基盤の構築プロジェクトでは、サービスのリリース前からファーストユーザーとして想定していた顧客企業のオンプレミス環境と、今回提供するIaaS環境とを連携することが顧客要件として提示されていた。 「もちろんIaaSサービスは、将来的に複数のお客様にご利用いただくものですが、リリース前から採用を想定していたそのお客様には、自社のオンプレミス

環境と新しいクラウド環境とを連携してご提供する必要がありました。この両環境の繋ぎ込みも私たちにとっては重要なテーマだったのです」(黒澤氏)。 Webサーバーは新たなクラウド環境に置くが、データベースやロードバランサーはオンプレミス環境にある。2つの環境が1つのシステムとして機能するためには、クラウド環境とオンプレミス側のデータベースやロードバランサーとが、シームレスに繋がる必要がある。 「Red Hat OpenStack Platformを採用し、レッドハットの知見を得たことで物理環境との繋ぎ込みを実現することができました。またネットワーク接続の方式も、レッドハットと意見交換できたことで最適な選択ができました。いずれもレッドハットの支援があってこそ、クリアできたポイントです」(黒澤氏)。 実際のプロジェクトは2016年1月にスタートし、構築に約4カ月、テストに約2カ月を費やし、2016年6月にHA機能を含む完全版がリリースされた。

 NHNテコラスは今回のプロジェクトでRed Hat OpenStack Platformを採用したが、同社が利用する全てのOpenStackがレッドハット製品というわけではない。当初研究対象となったコミュニティ版は今でも利用しており、コミュニティ版OpenStackをベースとしたIaaSもサービスメニューとして提供している。 「その理由は、リソースはそれほど潤沢でなくてもいい、利用コストが最優先、といったお客様のニーズに主にお応えするものです。反面、高い信頼性を担保した上で、キャパシティの増減にも柔軟に対応したいというお客様には、Red Hat OpenStack PlatformベースのIaaSサービスをご提供する。今回のプロジェクトによって、私たちのサービスメニューの幅が拡がり、より充実させることができたと考えています」(黒澤氏)。 「さらに言えば、今回リリースしたIaaSサービスが多くのお客様の評価を得て広がっていけば、ハードウェアを調達し、保守をする、という従来のビジネス

モデルが淘汰されていくでしょう。私たちの事業ポートフォリオも大きく変わり、お客様とより長い期間にわたるお取引も可能となります。事業収益を堅固にする、新たなモデルも期待できると考えています」(平井氏)。

 今後ITインフラの世界は、どんどんソフトウェア寄りになっていく。それを象徴するのがSDSであり、あるいはSDN(ソフトウェア・デファインド・ネットワーキング)といったテクノロジーだ。 「さらに昨今ではOpenShiftなど、サーバーレスアーキテクチャと呼ばれる考え方が出てきています。私たちが注力するデータセンター事業やマネージドサービスにも、こうした最先端のテクノロジーを取り込んで、サービスとしてリリースするためにはどうすればいいかを考えていく必要がある。その過程の中で適用できるOSSやレッドハット製品があれば、随時検討していきたいですね」(黒澤氏)。 「グローバルに展開しているレッドハットには、より先進的なユーザー事例が集まってきています。また各分野のOSSも、コミュニティを介してどんどん品質が改善されていくでしょう。そうした最先端の事例やテクノロジーの中で、私たちのサービスに有用なものがあれば、ぜひご紹介していっていただきたいですね。私たちユーザー企業にニーズに合致した最新情報を提供できるのも、レッドハットならではの強みだと思います」(平井氏)。

今後の展望/レッドハットへの期待ニーズに合致した情報提供もレッドハットならではの強み

05 レッドハット製品を導入したメリット1 06 レッドハット製品を

導入したメリット2レッドハット製品を導入したメリット307 08 今後の展望/

レッドハットへの期待

マシンが落ちてもフェイルオーバーするHA機能を提供

・HA機能を実装していたのはRed Hat OpenStack Platformのみ

・適正コストの商用ディストリビューションとして採用

オンプレミス環境との繋ぎ込みもレッドハットの支援で実現

・レッドハットの知見により物理的な繋ぎ込みを実現

・レッドハットとの意見交換でネットワーク接続方式も選定

レッドハット製品を利用したIaaSで提供メニューも充実

・サービスメニューをより充実させる一助となった

・新たなビジネスモデルの誕生を期待

ニーズに合致した情報提供もレッドハットならではの強み

・適用可能な製品は随時検討していきたい

・有用な事例や技術を紹介してほしい

レッドハット製品を導入したメリット2オンプレミス環境との繋ぎ込みもレッドハットの支援で実現

レッドハット製品を導入したメリット3レッドハット製品を利用したIaaSで

提供メニューも充実

レッドハット製品を導入したメリット1マシンが落ちてもフェイルオーバーする

HA機能を提供

平井 壮 氏NHNテコラス株式会社

取締役

黒澤 隆史 氏NHNテコラス株式会社データホテル事業本部

▼ OpenStack環境とオンプレミス環境を接続

OverCloud×3(Controller)

OverCloud×15(Compute)

L2SW(for Controller) L2SW(for Compute)

NAT

Cinder Backend(Block Storage)

Swift(Object Storage)

OpenStack環境

オンプレミス環境

採用したコンポーネント

NOVA

GLANCE

NEUTRON

CINDER

HEAT

KEYSTONE

SWIFT

Internet

OPEN EYE 5

Red Hat K.K. EDITORIAL 2016

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Red Hat Embedded Program採用の流れ

01 背景 02 課題 03 システム要件 04海外市場を視野に入れたアプライアンス製品を発売

開発コストを抑えつつ高いセキュリティを確保したい

コミュニティベースのOSSで進めていたOnCoreの開発準備

“実績と信頼に裏付けされたOS S ”を求めてRed H a t Embedded Programを採用・万一の障害発生時に相談できるパートナーが必要

・既存製品ではRHELを採用済み・顧客の導入実績からJBoss EAPへの信頼感も高まる

・高いセキュリティと安定した稼働性が必要

・OSSはコスト面も含めて有用

・海外市場に向けたゲートウェイ製品を開発

・既存製品の技術ノウハウも結集して製品化

レッドハット製品を選んだ決め手

ユーザー事例Success Story

インテリジェント ウェイブRed Hat Embedded Programの採用

 今回インテリジェント ウェイブが発売した「OnCore」は、クレジット業界における各プレイヤーのシステムを繋ぐゲートウェイ処理に特化したアプライアンス製品だ。OnCore開発の狙いについて、株式会社インテリジェント ウェイブ 取締役 BPM本部担当 兼 第二システム開発本部担当 兼 第一システム開発本部長の立野岡健一氏は、次のように説明する。 「当社には国内大手クレジットカード会社でトップシェアを持つNET+1(ネットプラスワン)という製品があります。これはクレジットカードやATMのネットワーク接続、カードの使用認証を行うパッケージソフトです。個々のお客様のカスタマイズ要件にも対応できるものですが、今後、海外市場への展開も視野に入れており、その際にお客様ご自身で設定ができ、コンパクトに導入していただけるような製品を開発しようと考えました」(立野岡氏)。 またOnCoreの詳細について開発全体を統括した第一システム開発本部 副本部長の増子和哉氏は、次のように説明を加える。 「クレジット業界には、クレジットカードを発行するイシュアーや各カード加盟店といったプレイヤーが存在しますが、OnCoreはクレジット決済用のトランザクションデータを、カード決済用ネットワークを介して各プレイヤー間でやり取りすることを可能にするデータ連携用のアプライアンス製品です。いわばNET+1の技術ノウハウも結集して製品化したのが、OnCoreだと言えます」(増子氏)。

 アプライアンス製品として提供するOnCoreには、顧客が購入しやすい価格を実現し、またクレジット業界向けの製品であることから、高いセキュリティと安定し

た稼働が求められる。一方、システムインテグレーターでありパッケージベンダーでもある同社では、以前からオープンソースソフトウェア(OSS)を利用して実績を積み重ねていた。こうしたことから同社では、OnCoreの開発でOSSを採用することを最初から決めていたという。この点について、OnCoreのアーキテクチャ設計に携わった第一システム開発本部 開発第一部 第二課 兼 BPM本部 システムサービス部 第一課 上席SEの今井克典氏は、次のように説明する。 「私たちはNET+1のLinux版でもRHELを採用しており、また社内では他のOSS製品を使う実績も増えてきていました。コスト面も含めてOSSの有用性は社内で十分に実証されており、今回もOSSを使っていこうというのはごく自然な流れでした」。

 同社は2014年12月にOnCoreの要件定義に着手し、2015年1月から実際の開発プロジェクトを開始したが、その準備段階では、OSとしてCentOS、アプリケーションサーバーとしてGlassFishを使っていたという。 「初期段階では、開発環境の検証などいろいろと準備が必要になるのでまずはCentOSとGlassFishを使って進めました。OSについては、既にNET+1でRHELを採用していたこともあり、本番開発ではRHELを使おうと決めていたのですが、アプリケーションサーバーについては、検討結果次第ではそのままGlassFishを使用することも考えていました。しかしそんな折にレッドハットのWebサイトを見る機会があり、最近ではRed Hatのミドルウェア製品の動きが活発になってきていることを知ったのです」(増子氏)。 増子氏は製品ラインナップや機能が拡充されていることを認識し、さらに最近では顧客先で“Red Hat JBoss Middlewareを採用した”という話もよく耳にしていたという。 「ニュースリリースで発表される導入事例なども目にしていましたが、お客様から直接Red Hat JBoss

Middlewareを採用したというお話を伺ったことで、レッドハット製品に対する信頼感や安心感が、さらに高まりました」(増子氏)。

 OnCoreの開発でOSSを採用するにあたり、増子氏は「やはり実績と信頼に裏付けされたOSSを選択することが、極めて大切なことだと考えた」と強調する。 「私たちはシステムインテグレーターなので、コミュニティベースのOSSだけでパッケージを組み上げることは可能です。しかしOnCoreは金融業界に向けた製品であり、OSS自体の動作をきちんと保証し、万一何か障害が発生した時には、すぐに相談できて問題解決に当たって

もらえるパートナーが必要不可欠だと考えました。そしてそれは事実上、レッドハットしかありませんでした」(増子氏)。 そこで同社が採用したのが、Red Hat Embedded Programだ。これはITベンダーが、自社のデバイスやデータセンターサービスなどにRHELやJBoss EAPを組み込んで提供することを可能にするプログラムで、レッドハットのEmbedded Distributor Partnerを通じて提供される。今回は国内初のEmbedded Distributor Partnerである株式会社SRAを通じて提供され、インテリジェント ウェイブは国内第一号の“Embedded Partner”となった。

 2015年1月から始まったOnCoreの開発プロジェクトは、1次開発と2次開発に分けて進められた。その背景について、プロジェクトマネジャーを務めた第一システム開発本部 開発第一部 第一課 サブリーダーの熊倉利幸氏は、次のように説明する。 「元々OnCoreは海外市場をターゲットにした製品でしたが、1次開発を進めていく過程で、国内にもゲートウェイ製品に対するニーズがあることがわかってきました。そこで国内のお客様ニーズも盛り込むために実施したのが2次開発で、これが完了したのが2015年12月です」(熊倉氏)。 2016年5月の時点でOnCoreは4社(約20台)の採用が決定しており、現在導入作業が進められている状況だ。 続いて今井氏は、レッドハットの最大の評価ポイントとして、高いサポート力とセキュリティ対策を挙げる。 「レッドハットはOSSコミュニティに対するアップストリームに積極的に取り組んでおり、中でもセキュリティの脆弱性に対する修正は特に迅速に提供しています。こうした実績はサポート面での高いノウハウに直結しており、大きな安心感にも繋がっています」(今井氏)。 アップストリームファーストとは、オープンソースソフトウェアのバグや機能拡張などを自分の手元でのみ加えるのではなく、開発コミュニティの上流(アップストリーム)で必ず開発、反映することを指す。全製品がオープンソースであるレッドハットでは、ビジネス戦略とオープンソースコミュニティの発展の両面から、変更をコミュニティに提供/修正してから自社製品にバックポートするというプロセスを徹底しており、ユーザーが将来にわたってその変更を利用できることを担保しているのだ。 また増子氏も自身の過去の体験からレッドハットに対する強い信頼感を口にする。 「約6年前にお客様のRHELベースのシステムでメモリリークが発生したのですが、原因がわかりませんでした。その際にレッドハットに調査を依頼し、カーネルの中のメモリの動作まで調べた上でレポートを提出してもらったことで原因を突き止めることができました。

この先、サポートコストを抑えつつお客様のシステムの安定稼働を担保するためには、レッドハットの力が必要不可欠です」(増子氏)。

 システムインテグレーションサービスやパッケージ製品を提供しているインテリジェント ウェイブは、言うまでもなく自社自身も高い技術力を有している。RHELとJBoss EAPを採用した今回のOnCore開発も、自社だけで進めたという。 「既にNET+1でRHELを採用していたこともあり、RHELについては一定水準の知見がありました。JBoss EAPは今回初めて採用しましたが、RHELで培かったOSSに対するノウハウをベースに、後はレッドハットのWebサイト(カスタマーポータル)で提供されていた技術情報を調べるなどして必要な情報を入手できました。ちなみに我々は今、定期的に同サイトをチェックして、最新のセキュリティパッチがどうなっているかを調べています」(熊倉氏)。

 今回インテリジェント ウェイブは、OnCoreのデータベースにもOSSのPostgreSQLを利用している。 「私たちは製品コストの圧縮を第一に、安定性と品質を十分に考慮した上で製品選定を行っていきます。今回のOnCoreは金融業界に向けた製品ではありますが、お客様のミッションクリティカルなトランザクションデータを保存するという要件はなく、ゲートウェイ処理を行う製品なので、必要となるのはどこから来たデータか、それをどこに出すか、といった情報です。その結果、現段階ではPostgreSQLが最適だと判断しました」(増子氏)。 このデータベース領域をサポートした株式会社SRA 産業第一事業部 営業部 課長の山口大介氏は、自社の果たした役割を次のように説明する。 「今回、PostgreSQLを得意とする弊社がEmbedded Distributor Partnerとしてレッドハットとのシナジー効果を発揮することで、OSからアプリケーションサーバー、データベースまで一気通貫でOnCoreの開発をご支援させていただくことができたと考えています。またRHELとJBoss EAPのご提供で、製品コストの低減にも寄与できたのではないかと思います」(山口氏)。

 今回の実績を踏まえ、取締役の立野岡氏は、今後もレッドハットの高いサポート力に期待していると

強調する。 「私たちのお客様の多くは金融業界で、担当させていただくシステムもミッションクリティカルな領域が多い。レッドハットには、これからもテクニカル面でのサポートに加えて、さまざまなシーンでぜひ相談にのってもらいたいと思います」(立野岡氏)。 「今まで通りの高い品質、高いセキュリティを維持するための活動に期待しています。先にも話が出ましたが、最近は技術情報も充実していて、問い合わせするまでもないというレベルにきています。これは今後も継続していただきたいですね」(増子氏)。 「OSSは既に、今のシステムに必要不可欠な要素になっています。その反面、解決すべき課題も持ち上がってくる。レッドハットにはコミュニティとより深く結び付くことで、OSSをさらにいいものにしていっていただきたい。私たちとお客様との懸け橋となるような役割を果たして欲しいですね」(今井氏)。 「万一お客様のシステムに障害が発生した時には、スピード感のある対応が求められます。これからも今まで通り、迅速な対応をお願いしたいと思います」(熊倉氏)。

 主に金融機関を対象としたシステム開発やパッケージ製品の提供を行うインテリジェント ウェイブは2016年1月、クレジット決済用のアプライアンス製品として「OnCore」をリリースした。このOnCoreで採用されたのが、Red Hat Enterprise Linux(以下RHEL)とRed Hat JBoss Enterprise Application Platform(以下JBoss EAP)。これは、組込みソリューションを提供する「Red Hat Embedded Program」を通じてレッドハット製品が採用された国内初のケースとなる。

背景海外市場を視野に入れたアプライアンス製品を発売

課題開発コストを抑えつつ

高いセキュリティを確保したい

システム要件コミュニティベースのOSSで進めていた

OnCoreの開発準備

レッドハット製品を選んだ決め手“実績と信頼に裏付けされたOSS”を求めてRed Hat Embedded Programを採用

国内初! Red Hatの組込みソリューションを採用、クレジット決済用アプライアンスにレッドハット製品を導入

Red Hat Embedded Program RHELやJBoss Middleware、最近ではStorageなどを、組込みデバイス、コントローラ、データセンターサービスなどに組み込んで提供するプログラム。Embedded Distributor Partnerからサブスクリプションを購入したITベンダー(=Embedded Partner)は、自社製品にレッドハット製品を組み込んで販売することが可能となる。

エンドユーザー

Embedded Partner

Red Hat

Embedded DistributorPartner

Red Hat組込み製品サポート

組込み製品販売(Red Hat製品搭載)

Red Hat製品販売

Red Hat製品提供セールス情報、資料提供

Red Hat製品サポート

ソフトウェア修正等の提供

問い合わせ対応

6 OPEN EYE

Success story for your business

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05 レッドハット製品を導入したメリット1 06 レッドハット製品を

導入したメリット2レッドハット製品を導入したメリット307 08 今後の展望/

レッドハットへの期待

アップストリームファーストと、迅速で安心感のある修正リリース

豊富な技術情報をベースに自社で開発を進める

SRAとレッドハットの協業でデータベース領域もカバー

コミュニティと深く結び付き顧客との懸け橋に・高い品質、高いセキュリティを維持する活動に期待

・従来通りのスピーディーな対応を引き続きお願いしたい

・データベースにもOSSのPostgreSQLを採用

・SRAとレッドハットのシナジー効果で開発を支援

・既存製品でのRHEL採用で一定水準以上の知見を獲得

・最新のセキュリティ修正も定期的にチェック

・アップストリームファーストは高いノウハウに直結・迅速な修正リリースも大きな安心感

 今回インテリジェント ウェイブが発売した「OnCore」は、クレジット業界における各プレイヤーのシステムを繋ぐゲートウェイ処理に特化したアプライアンス製品だ。OnCore開発の狙いについて、株式会社インテリジェント ウェイブ 取締役 BPM本部担当 兼 第二システム開発本部担当 兼 第一システム開発本部長の立野岡健一氏は、次のように説明する。 「当社には国内大手クレジットカード会社でトップシェアを持つNET+1(ネットプラスワン)という製品があります。これはクレジットカードやATMのネットワーク接続、カードの使用認証を行うパッケージソフトです。個々のお客様のカスタマイズ要件にも対応できるものですが、今後、海外市場への展開も視野に入れており、その際にお客様ご自身で設定ができ、コンパクトに導入していただけるような製品を開発しようと考えました」(立野岡氏)。 またOnCoreの詳細について開発全体を統括した第一システム開発本部 副本部長の増子和哉氏は、次のように説明を加える。 「クレジット業界には、クレジットカードを発行するイシュアーや各カード加盟店といったプレイヤーが存在しますが、OnCoreはクレジット決済用のトランザクションデータを、カード決済用ネットワークを介して各プレイヤー間でやり取りすることを可能にするデータ連携用のアプライアンス製品です。いわばNET+1の技術ノウハウも結集して製品化したのが、OnCoreだと言えます」(増子氏)。

 アプライアンス製品として提供するOnCoreには、顧客が購入しやすい価格を実現し、またクレジット業界向けの製品であることから、高いセキュリティと安定し

た稼働が求められる。一方、システムインテグレーターでありパッケージベンダーでもある同社では、以前からオープンソースソフトウェア(OSS)を利用して実績を積み重ねていた。こうしたことから同社では、OnCoreの開発でOSSを採用することを最初から決めていたという。この点について、OnCoreのアーキテクチャ設計に携わった第一システム開発本部 開発第一部 第二課 兼 BPM本部 システムサービス部 第一課 上席SEの今井克典氏は、次のように説明する。 「私たちはNET+1のLinux版でもRHELを採用しており、また社内では他のOSS製品を使う実績も増えてきていました。コスト面も含めてOSSの有用性は社内で十分に実証されており、今回もOSSを使っていこうというのはごく自然な流れでした」。

 同社は2014年12月にOnCoreの要件定義に着手し、2015年1月から実際の開発プロジェクトを開始したが、その準備段階では、OSとしてCentOS、アプリケーションサーバーとしてGlassFishを使っていたという。 「初期段階では、開発環境の検証などいろいろと準備が必要になるのでまずはCentOSとGlassFishを使って進めました。OSについては、既にNET+1でRHELを採用していたこともあり、本番開発ではRHELを使おうと決めていたのですが、アプリケーションサーバーについては、検討結果次第ではそのままGlassFishを使用することも考えていました。しかしそんな折にレッドハットのWebサイトを見る機会があり、最近ではRed Hatのミドルウェア製品の動きが活発になってきていることを知ったのです」(増子氏)。 増子氏は製品ラインナップや機能が拡充されていることを認識し、さらに最近では顧客先で“Red Hat JBoss Middlewareを採用した”という話もよく耳にしていたという。 「ニュースリリースで発表される導入事例なども目にしていましたが、お客様から直接Red Hat JBoss

Middlewareを採用したというお話を伺ったことで、レッドハット製品に対する信頼感や安心感が、さらに高まりました」(増子氏)。

 OnCoreの開発でOSSを採用するにあたり、増子氏は「やはり実績と信頼に裏付けされたOSSを選択することが、極めて大切なことだと考えた」と強調する。 「私たちはシステムインテグレーターなので、コミュニティベースのOSSだけでパッケージを組み上げることは可能です。しかしOnCoreは金融業界に向けた製品であり、OSS自体の動作をきちんと保証し、万一何か障害が発生した時には、すぐに相談できて問題解決に当たって

もらえるパートナーが必要不可欠だと考えました。そしてそれは事実上、レッドハットしかありませんでした」(増子氏)。 そこで同社が採用したのが、Red Hat Embedded Programだ。これはITベンダーが、自社のデバイスやデータセンターサービスなどにRHELやJBoss EAPを組み込んで提供することを可能にするプログラムで、レッドハットのEmbedded Distributor Partnerを通じて提供される。今回は国内初のEmbedded Distributor Partnerである株式会社SRAを通じて提供され、インテリジェント ウェイブは国内第一号の“Embedded Partner”となった。

 2015年1月から始まったOnCoreの開発プロジェクトは、1次開発と2次開発に分けて進められた。その背景について、プロジェクトマネジャーを務めた第一システム開発本部 開発第一部 第一課 サブリーダーの熊倉利幸氏は、次のように説明する。 「元々OnCoreは海外市場をターゲットにした製品でしたが、1次開発を進めていく過程で、国内にもゲートウェイ製品に対するニーズがあることがわかってきました。そこで国内のお客様ニーズも盛り込むために実施したのが2次開発で、これが完了したのが2015年12月です」(熊倉氏)。 2016年5月の時点でOnCoreは4社(約20台)の採用が決定しており、現在導入作業が進められている状況だ。 続いて今井氏は、レッドハットの最大の評価ポイントとして、高いサポート力とセキュリティ対策を挙げる。 「レッドハットはOSSコミュニティに対するアップストリームに積極的に取り組んでおり、中でもセキュリティの脆弱性に対する修正は特に迅速に提供しています。こうした実績はサポート面での高いノウハウに直結しており、大きな安心感にも繋がっています」(今井氏)。 アップストリームファーストとは、オープンソースソフトウェアのバグや機能拡張などを自分の手元でのみ加えるのではなく、開発コミュニティの上流(アップストリーム)で必ず開発、反映することを指す。全製品がオープンソースであるレッドハットでは、ビジネス戦略とオープンソースコミュニティの発展の両面から、変更をコミュニティに提供/修正してから自社製品にバックポートするというプロセスを徹底しており、ユーザーが将来にわたってその変更を利用できることを担保しているのだ。 また増子氏も自身の過去の体験からレッドハットに対する強い信頼感を口にする。 「約6年前にお客様のRHELベースのシステムでメモリリークが発生したのですが、原因がわかりませんでした。その際にレッドハットに調査を依頼し、カーネルの中のメモリの動作まで調べた上でレポートを提出してもらったことで原因を突き止めることができました。

この先、サポートコストを抑えつつお客様のシステムの安定稼働を担保するためには、レッドハットの力が必要不可欠です」(増子氏)。

 システムインテグレーションサービスやパッケージ製品を提供しているインテリジェント ウェイブは、言うまでもなく自社自身も高い技術力を有している。RHELとJBoss EAPを採用した今回のOnCore開発も、自社だけで進めたという。 「既にNET+1でRHELを採用していたこともあり、RHELについては一定水準の知見がありました。JBoss EAPは今回初めて採用しましたが、RHELで培かったOSSに対するノウハウをベースに、後はレッドハットのWebサイト(カスタマーポータル)で提供されていた技術情報を調べるなどして必要な情報を入手できました。ちなみに我々は今、定期的に同サイトをチェックして、最新のセキュリティパッチがどうなっているかを調べています」(熊倉氏)。

 今回インテリジェント ウェイブは、OnCoreのデータベースにもOSSのPostgreSQLを利用している。 「私たちは製品コストの圧縮を第一に、安定性と品質を十分に考慮した上で製品選定を行っていきます。今回のOnCoreは金融業界に向けた製品ではありますが、お客様のミッションクリティカルなトランザクションデータを保存するという要件はなく、ゲートウェイ処理を行う製品なので、必要となるのはどこから来たデータか、それをどこに出すか、といった情報です。その結果、現段階ではPostgreSQLが最適だと判断しました」(増子氏)。 このデータベース領域をサポートした株式会社SRA 産業第一事業部 営業部 課長の山口大介氏は、自社の果たした役割を次のように説明する。 「今回、PostgreSQLを得意とする弊社がEmbedded Distributor Partnerとしてレッドハットとのシナジー効果を発揮することで、OSからアプリケーションサーバー、データベースまで一気通貫でOnCoreの開発をご支援させていただくことができたと考えています。またRHELとJBoss EAPのご提供で、製品コストの低減にも寄与できたのではないかと思います」(山口氏)。

 今回の実績を踏まえ、取締役の立野岡氏は、今後もレッドハットの高いサポート力に期待していると

強調する。 「私たちのお客様の多くは金融業界で、担当させていただくシステムもミッションクリティカルな領域が多い。レッドハットには、これからもテクニカル面でのサポートに加えて、さまざまなシーンでぜひ相談にのってもらいたいと思います」(立野岡氏)。 「今まで通りの高い品質、高いセキュリティを維持するための活動に期待しています。先にも話が出ましたが、最近は技術情報も充実していて、問い合わせするまでもないというレベルにきています。これは今後も継続していただきたいですね」(増子氏)。 「OSSは既に、今のシステムに必要不可欠な要素になっています。その反面、解決すべき課題も持ち上がってくる。レッドハットにはコミュニティとより深く結び付くことで、OSSをさらにいいものにしていっていただきたい。私たちとお客様との懸け橋となるような役割を果たして欲しいですね」(今井氏)。 「万一お客様のシステムに障害が発生した時には、スピード感のある対応が求められます。これからも今まで通り、迅速な対応をお願いしたいと思います」(熊倉氏)。

今後の展望/レッドハットへの期待コミュニティと深く結び付き顧客との懸け橋に

レッドハット製品を導入したメリット1アップストリームファーストと、迅速で安心感のある修正リリース

レッドハット製品を導入したメリット2豊富な技術情報をベースに自社で開発を進める

レッドハット製品を導入したメリット3SRAとレッドハットの協業でデータベース領域もカバー

立野岡 健一 氏

株式会社インテリジェント ウェイブ取締役 BPM 本部担当 兼

第二システム開発本部担当 兼第一システム開発本部長

増子 和哉 氏

株式会社インテリジェント ウェイブ第一システム開発本部

副本部長

今井 克典 氏

株式会社インテリジェント ウェイブ第一システム開発本部開発第一部 第二課 兼

BPM 本部 システムサービス部第一課 上席SE

熊倉 利幸 氏

株式会社インテリジェント ウェイブ第一システム開発本部

開発第一部 第一課 サブリーダー

山口 大介 氏

株式会社SRA産業第一事業部 営業部

課長

OPEN EYE 7

Red Hat K.K. EDITORIAL 2016

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OPEN EYE Vol.242016年9月 発行

発行:レッドハット株式会社東京都渋谷区恵比寿4-1-18tel:03(5798)8500

Copyright 2016 Red Hat Inc. All Rights Reserved. "Red Hat"、"Red Hat Enterprise Linux"、"JBoss"、"OpenShift"および"Shadow Man"ロゴは、米国およびその他の国における Red Hat, Inc. の登録商標です。Linuxは、Linus Torvalds氏の登録商標です。OpenStackR Word MarkとOpenStackのロゴは、米国とその他の国における OpenStack Foundation の登録商標/サービスマークまたは商標/サービスマークのいずれかであり、OpenStack Foundation の許諾の下に使用されています。Red Hat は、OpenStack FoundationやOpenStack コミュニティの系列企業ではなくまた、支持や出資を受けていません。Microsoft, Encarta, MSN, および Windows は、米国 Microsoft Corporation の、米国およびその他の国における登録商標または商標です。その他全ての登録商標及び商標の所有権は、該当する所有者が保有します。本誌に掲載された内容の無断複製・転載を禁じます。

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 OpenSh i f t は、製品が登場した当時はPaaS(Platform as a Service)のプラットフォームとして位置づけられていた。しかし、2015年に発表されたOpenShift Enterprise 3は、DockerとKubernetesをベースとして作り変えられ、「Dockerを知らなくてもDockerを使える」製品とされた。そして今回は、OpenShiftを中心とするコンテナプラットフォームの製品と戦略が発表された。 記者発表の冒頭、レッドハット プロダクト・ソリューション本部 本部長の岡下浩明は「コンテナは、デプロイと運用を再発明」という言葉を掲げた。 「JavaEEがエンタープライズシステムの様相を大きく変えたように、仮想化技術が企業のデータセンターの仮想化を促進したように、コンテナ技術は企業アプリケーションのデプロイと運用に統一手法を提供し、シンプル化する。これは企業システムの開発と運用のあり方に大きな変化をもたらすものだ」。最近注目されているコンテナ技術とは、アプリケーションと必要なリソースを標準的なフォーマットにパッケージ化し、それぞれのアプリケーションを独立させたプロセス空間で動作させるものだ。開発者はさまざまなアプリケーションをコンテナフォーマットにアーカイブし、コンテナの実行環境を提供するホストOSにデプロイ

するだけで簡単に動かすことができる。従来と異なる最大の利点は、システム管理者がコンテナ内のアプリケーションの言語や動作環境を理解していなくとも、コンテナとしてパッケージされたアプリケーションを統一的な手法で運用管理できる点だ。さらにコンテナアプリケーションは、デファクトスタンダードとしてDockerフォーマットの採用が主流になってきている。現在、Dockerフォーマットのコンテナアプリは、物理・仮想・クラウド環境で同じように動くポータビリティ性があることもその特徴だ。最近ではRed Hat JBoss M i d d l ew a r e 各製品をはじめ、日立製作所の「Justware」、クオリカの「ATOMS QUBE」などの製品やサービスもコンテナ化されている。 またコンテナ利用の進化形として、岡下はGoogleの例を紹介。Googleでは、毎週2億個という、とても人間の作業では管理できない量のコンテナアプリがデプロイされているという。そこで重要になってくるのが、その自動運用だ。コンテナプラットフォームは、デプロイされたコンテナアプリを自動的にクラスタ環境に割り当て、起動させることができる。また、障害時の自動復旧や高負荷時のスケールアウトなど、さまざまな運用オペレーションを自動化する。このような機能をコンテナオーケストレーションという。このコンテナオーケストレーションの仕組みを提供しているのが、Googleで培われたコンテナ管理のノウハウを基にGoogleとレッドハットが中心となって開発

を進めているKubernetesプロジェクトである。レッドハットのOpenShiftは、このKubernetesが提供するコンテナオーケストレーションの環境下で、デファクトスタンダードのコンテナフォーマットであるDockerを自動的に運用させることができる、まさに企業システムのコンテナ化を促進するプラットフォームなのである。

 新発表の内容としてはまず、製品名を「OpenShift Enterprise by Red Hat」から「Red Hat OpenShift Container Platform」とリブランドし、コンテナプラットフォームとしての位置付けを明確にした。9月にはマイナーバージョンアップしたOpenShift Container Platform 3.3がリリース予定だ。 さらに、用途を「開発者(個人利用)」「開発/テスト」「プロダクション」「データセンター」の4フェーズに分けた。そして、開発者として個人利用を目的とした「OpenShift Container Local」(無償)、開発/テストとしてチーム内で1年間安価で利用できる「OpenShift Container Lab」の2製品を新しく発表。なお、プロダクションにはOpenShift Container Platformが、データセンターにはRed Hat Cloud Suiteが対応する。 2つめの発表は、コンテナの脆弱性などをホストからスキャンする技術だ。スキャナとしては、従来からあるOpenSCAPと、新しく協業したBlack Duckの2つが対応する。 最後に、企業のアジャイル開発導入を支援する「DevOpsディスカバリーワークショップ」と「DevOpsコンサルティングサービス」の国内提供開始も発表。DevOps専任としてレッドハット サービス事業統括本部 DevOpsリード シニアアーキテクトの山田義和が就任、各製品コンサルタントも含め対応するという。

 1年前のOpenShift Enterprise 3発表の時点では、エンタープライズでコンテナをどう使うかまだ明確ではなかった。今回の発表によって、レッドハットの製品群や事業戦略とコンテナとの結びつきが明らかになってきたと言えるだろう。

○ レッドハット最新レポート

「コンテナはデプロイと運用を再発明する」OpenShiftのリブランドで企業システムにおけるコンテナ利用を推進 2016年8月5日、レッドハットはコンテナにおける同社の戦略とコンテナ関連の新製品を発表した。OpenShiftの位置付けをPaaSプラットフォームからコンテナプラットフォームへとシフトするとともに、アプリケーションやストレージなど各種製品をコンテナと関連づけた。これにより、オンプレミスから仮想環境、プライベートクラウド、パブリッククラウドまでを一貫してサポートする体制が整ったといえる。

コンテナの魅力、それはアプリケーションのデプロイと運用に統一手法を提供すること

リブランドから新製品、ワークショップまで、全面的にコンテナを進める

レッドハットが新製品&サービスを発表

Success story for your business Red Hat K.K. EDITORIAL 2016

レッドハット プロダクト・ソリューション本部 本部長 岡下浩明

レッドハット サービス事業統括本部 DevOpsリード シニアアーキテクト 山田義和(右)とプロダクト・ソリューション本部 ミドルウェア シニアビジネスデベロップメントマネージャー 中澤陽彦(左)

Dockerコンテナはアプリのデプロイと運用に統一手法を提供

既存、新規の様々なタイプのアプリケーションをコンテナにパッケージでき、ホストOSにデプロイ

運用管理者は、アプリケーションの

種類に関わらず統一手法で管理できる。アプリケーションも小さいため、デプロイも高速。

APP

RUNTIME

OS

CONTAINER

APP

RUNTIME

OS

CONTAINER

HOST OS

SERVER

Java+JBoss

Database

ポータビリティ

高い互換性能

OpenShiftのリブランドと、用途に合わせた新製品

様々なシーンでコンテナ環境を提供し、普及を加速

オンプレミス

[NEW]Red Hat

OpenShiftContainer Local

[NEW]Red Hat

OpenShiftContainer Lab*

Red HatOpenShift

Container Platform*旧称:

OpenShiftEnterprise

Red HatCloud Suite

パブリッククラウド

[UPDATED]Red Hat

OpenShiftOnline

Red HatOpenShiftDedicated

Red HatOpenShiftDedicated

* RHELのアドオンの形でも提供 [NEW]

開発者

用途

開発/テスト

プロダクション

データセンター

PHP, C++,Ruby

PHYSICAL PRIVATE CLOUD PUBLIC CLOUDVIRTUAL