蓮沼執太のスタディーズ studies for asahi art square チラシ 4月
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Asahi Art Square Grow up!! Artist Project 2012
Shuta Hasunuma STUDIES
18蓮沼執太のスタディーズ
「非線形的なアイデアを許すような関係」裏面へ☞
水曜
Wednesday
赤 口
4月A
pril
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今月のステイトメント
「蓮沼執太のスタディーズ」のステイトメント
今月のステイトメント
ア:ア、イ、ウ、エ、オ。以上、これらのパラグラフにはすべて共通するアイデ
アが内包されている。
イ:夜中。電話中。どこか遠くの相手と話しながら、ペンをもった右手は考えも
しないような線を描き、ある形を作っていたりする。メモ帳に絵とも言えな
い落書きが描かれる。自分の思考は相手との会話へ向いているはずなのに、
身体はなぜか全く意図しない動きをする。この現象がおもしろくて仕方がない。
このメモ帳が人に書かれる行為をアフォードする、と単純に言ってもよいの
だけど、僕はこの現象もひとつの即興なんじゃないかと思う。美術、音楽、建築、
小説でも近代以降の諸分野に共通するべき他律的なコンテクストの上で成立
するものとは少し異なる解義かもしれないが、個人的には即興という言葉の
意味が持つ土壌を広げるような拡大解釈が可能だと思っている。
ウ:コンテクストの位置について。大きな恣意性が入った活動や作品には、それ
を受け入れるために(ほぼ同義でそれを隠蔽するために)作家性が招聘される。
では、それはどこへ応じているのだろうか。たとえば、時間というものがある。
そこには当然いま生きている現代というものも同じ感覚で存在しているはず
である。さまざまな事柄が複雑に絡み合って立ち現れるはずのコンテクスト
から、現代という時代だけを取り出して、そこから特殊解ではなくより受け
入れ幅の広い一般解を作りあげようという姿勢がある。その一般解の場所へ
向かって、恣意性や作家性が応じていると僕は思っている。音楽でいう一聴
して誰が作曲したのかがわかる、小説でいう一読して誰が書いた文章かがわ
かる、絵画でいう一目見て誰がその線を描いたのかわかる、建築でいう一目
見て誰がそれを設計したのかわかる、このような特徴的なスタイルが専売特
許のごとく作り出される、採用され続ける。
エ:取材の時にインタビュアによく問われることがある。
インタビュア「他ジャンルの方とのコラボレーションを活発に行っていますよね。
またそのご自身の音楽性も1枚のアルバムや1回のコンサートだけでは方向
性は判断出来ませんよねー。ホント色々な手法をお持ちですね。」
蓮沼「ありがとうございます。あぁ、そうですねぇ、コラボレーション…んー、そう
ですねぇ、手法…うーん…時間と場所も違えば、関わる人も常に変わってくるの
で、作品の結果がちがうのは当たり前と言えば、当たり前かもしれませんね。」
3
主催:アサヒ・アートスクエア協賛:アサヒビール株式会社お問合せ:アサヒ・アートスクエア事務局Tel. 090-9118-5171 / E-mail [email protected]
http://asahiartsquare.org
*内容・時間などの詳細は決まり次第ホームページに掲載します。
STUDIES(for Asahi Art Square)
4 月 18日
map次回のスタディ
Asahi Art Squar Grow up!! Artist Project 2012とはすでに発表実績のあるアーティストが自らの表現ともう一度向き合い、多角的な視点からじっくりと「考える」機会を提供するプロジェクト。公募で選ばれたサポート・アーティストに、アサヒ・アートスクエアの会場の無償提供、資金サポートなどを行う。2012 年は蓮沼執太が毎月公開で録音+撮影を行い、2013年2月のアサヒ・アートスクエアでの展覧会に向けてサイトスペシフィックな作品制作に取り組んでいる。
浅草駅 浅草駅
本所吾妻橋駅
東京メトロ銀座線
隅田川
東武伊勢崎線
都営地下鉄浅草線
吾妻橋
アサヒビール ←アサヒアートスクエア
東京都墨田区吾妻橋 1-23-1(アサヒスーパードライホール 4F)東京メトロ銀座線「浅草駅」4・5番出口より徒歩 5分都営地下鉄浅草線「本所吾妻橋駅」A3出口より徒歩 6分
東武伊勢崎線「浅草駅」より徒歩 6分
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Asahi Art Square Grow up!! Artist Project 2012
Shuta Hasunuma STUDIES
蓮沼執太のスタディーズ
水
インタビュア「あー…???…なるほどー。蓮沼さんは共通するスタイルという
ものを持っていないような雰囲気がありますものねー。」
蓮沼「たとえば、同じレシピを使っているのに、東京で作ったものとパリで作っ
たもの。食材や調理道具などの環境が違うのだから、結果である食事の味も
共通するものなんて無いですよね。その土地に育まれた文化や…(略)」
インタビュア「あー、料理、環境ですよね。素敵ですね。普段は料理されたりす
るんですかぁ?」
という感じで、とにかく僕はわかりにくい方法で表現をしているんだな、と
つくづく感じる一面である。こういうシーンが本当に少なく無い。(インタビュ
アは全く悪く無い。表現を伝えきれていない自分に圧倒的に負がある。)
さらに当然、歴史の再アレンジを反復とその継続によってより広く合理的な
一般解への考えと表現があってからこそ、ジャンル横断することや共通スタ
イルを持つ作家像、という固定概念を植え付け、染み込んでいるんだと思う。
これは受け手だけではなく、作家本人にもそういった既成概念が先ずあって
からの意識が多くあると思っている。(もちろん制作方法とその結果への考え
に対するネガティヴな指摘ではない。)それらをふまえてみても、僕自身は毎
回同じようなスタイルや方法で表現が出来ないタイプである。どちらかと言
えば、特殊解のまま一般解へ応えることで多くの誤解を生じさせてしまい、
どうしようもなく解釈の幅が広くなってしまう。結果、表現に関して上記の
問答のような雰囲気を持つことになる。それでも、いま対象を捉えにくい表
現が僕の最大の関心事である。
オ:他律的でもあり自律的でもあることについて。最初の段階から矛盾を孕んで
いる表現への自他律をひとつの器に内包させること。この軋轢を取っ払い融
解させるのは、コンテクストとの関係を一回無かったことにして、もっともっ
と別レヴェルの舞台を自分で作りあげてしまうことである。「あるコンテクス
トがここに在ったからこそ、この作品が出来上がった。」という答え方では無
く「そもそもこの作品がこの環境に無ければならなかった。」といったような
強固なスタンスが例である。しかし、合理的な分業制作ではなく、より他領
域に踏み込み合いアマチュアリズムをも許容出来るような、ある対象とコン
テクストとの関係から離脱したような制作は他律的であり自律的でもありえ
るように思う。僕はこんなように常に矛盾を内包している道を探っていくこ
とが、柔らかく形を持たない、もしくは様々に形を変えていけるような、具
体かつアブストラクトな表現に繋がっていけると思っている。
2012 年 4月 蓮沼執太