ssc-ild診療 今後 の展望 皮膚科の立場から future …...ssc-ild...
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主催 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 開催日 2019年9月30日(月) 開催地 大阪府吹田市
今後の展望SSc-ILD診療 皮 膚 科 の 立 場 か らFuture Prospects
大阪大学医学部附属病院の皮膚科では、皮膚疾患全般を診療の対象としています。膠原病診療に関しては、膠原病外来において、全身性エリテマトーデス、全身性強皮症(SSc)、皮膚筋炎、シェーグレン症候群を中心に、診断・治療を行っています。今回は同科の診療科長であり、オフェブのSSc-ILDに関するアドバイザリーボードメンバーである藤本学先生に、SScおよびSSc-ILD診療の今後の展望などについてお話しいただきました。
大阪大学大学院医学系研究科情報統合医学講座 皮膚科学教室 教授
藤本 学 先生
INDEX
当科における SSc および SSc-ILD 診療
SSc-ILD 診療の今後の展望
今後の課題
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今後の展望SSc-ILD診療 皮 膚 科 の 立 場 か ら Future Prospects
当科(皮膚科)で診ているSSc患者の多くは、診断あるいは治療を目的とした他の医療機関からの紹介例です。SScの
代表的な皮膚症状として、レイノー現象と皮膚硬化があげられます。レイノー現象は手指や足趾の細動脈が発作性に収
縮することで、皮膚の色調が白(虚血)→紫(チアノーゼ)→赤(過灌流、血流の増加)に変化し、SSc患者の90%以上に発
現して初発症状の約半数を占める重要な症状です1)。また、皮膚硬化は浮腫期→硬化期→委縮期といった3つの病期を
経過し、各病期に特徴的な症状がみられます(図1)2)。前述の紹介例の大部分がレイノー現象、皮膚硬化の浮腫期にみ
られる手指の腫脹を契機に当科受診となっています。
当院では、免疫・呼吸器内科にもSSc患者が多数通院しており、当科は免疫・呼吸器内科の先生方と積極的に連携し
て診療を行っています。当科のSSc患者は、病型はびまん皮膚硬化型SSc(dcSSc)が約30%、限局皮膚硬化型SSc(
lcSSc)が約70%を占めています。
当科における SSc および SSc-ILD 診療
大阪大学大学院医学系研究科 情報統合医学講座 皮膚科学教室 教授 藤本 学 先生
皮膚硬化の臨床経過
沖山奈緒子, ほか. Ⅴ-1-1 皮膚硬化. 佐藤伸一編. 強皮症の基礎と臨床. 大阪: 医薬ジャーナル社; 2016: 178-186. より改変
浮腫期手指・手背が浮腫性に腫脹ソーセージ様手指とよばれる、白っぽい浮腫性硬化をきたす
硬化期皮膚は硬化・肥厚し、次第に皮下組織と結合していく仮面様顔貌や潰瘍を呈する皮膚の毛根・汗腺が消失、光沢が増し色素沈着や脱失をきたす
萎縮期皮膚は萎縮して薄くなり、一見軽快したようにみえることもある色素沈着・脱失が進行し、斑様の皮膚を呈する手指の屈曲拘縮がみられる
図1
1)松下貴史. Ⅳ-1 皮膚. 佐藤伸一編. 強皮症の基礎と臨床. 大阪: 医学ジャーナル社; 2016: 118-1262)沖山奈緒子, ほか.Ⅴ-1-1 皮膚硬化. 佐藤伸一編. 強皮症の基礎と臨床. 大阪: 医学ジャーナル社; 2016: 178-186
dcSScとlcSScでは、皮膚硬化の進行、臓器病変の有無やその発現時期や重症度などが異なり、dcSScの場合は発症
早期からILDなどの臓器病変が高率に認められます(図2)3)。また、SScの臨床症状と関連する自己抗体のうち、抗トポ
イソメラーゼI抗体はILDと強く関連することがわかっています。こうしたことから、特に抗トポイソメラーゼI抗体陽性の
dcSSc患者はILDのハイリスク群として、早期から慎重にモニタリングを行う必要があります。当科では、自覚症状、胸部
X線検査、高分解能CT(HRCT)、呼吸機能検査(FVC、DLcoなど)、血清マーカー(KL-6、SP-Dなど)の評価を定期的に
行っています。画像検査や呼吸機能検査は半年~1年ごと、血清マーカーは病初期の患者では毎月測定して変動の傾
向をみています。線維化による肺の機能障害は不可逆性であることからも、予後不良の進行例を見逃さずに、適切なタ
イミングで治療を開始することが重要と考えており、治療導入の判断が難しい患者に関しては、免疫内科との合同カン
ファレンスでディスカッションしながら決めることもあります。
なお、皮膚硬化の程度はmRSS(スキンスコア)などで評価することもありますが、その際には患者の全身の皮膚を確
認するため、患者の診療に対する安心感や満足度の向上にもつながると思います。
SScの臨床経過(病型別)
長谷川稔. Ⅲ-4 病型分類と自然経過. 佐藤伸一編. 強皮症の基礎と臨床. 大阪: 医薬ジャーナル社; 2016: 100-107. より改変
■ 病型別にみたSScの臨床経過
ILD、PH、消化管病変
呼吸不全心不全
ILD、心臓病変、腎クリーゼ、PH、消化管病変、手指屈曲拘縮
(12~18ヵ月)
皮膚の厚さ
罹患期間
dcSSc
lcSSc
5 10 (年)3
図2
3)長谷川稔. Ⅲ-4 病型分類と自然経過. 佐藤伸一編. 強皮症の基礎と臨床. 大阪: 医学ジャーナル社; 2016: 100-107
大阪大学大学院医学系研究科 情報統合医学講座 皮膚科学教室 教授 藤本 学 先生
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大阪大学大学院医学系研究科 情報統合医学講座 皮膚科学教室 教授 藤本 学 先生
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SSc-ILD 診療の今後の展望
これまでSSc-ILDを適応症として承認されている薬剤はありませんでした。そのため、当科ではSSc-ILDに対しては、
主に免疫抑制薬による治療を行ってきましたが、リスクとベネフィットを勘案して慎重に患者を選択する必要があり、結
果的に治療導入のタイミングが遅れてしまったり、患者の同意が得られず治療導入に至らなかったケースもありました。
そうした状況の下、抗線維化薬のオフェブがSSc-ILDの治療薬として承認されることで、ILDの進行のリスクのあるSSc患
者に対して、なるべく早期に治療を開始することが可能となり、ILDを軽度に維持し、進行抑制が期待できると考えてい
ます。また、SSc-ILDに対する有効な治療法が登場したことで、患者の治療へのモチベーションが高まることを期待して
います。
今後の課題
オフェブがSSc-ILD治療に使用できるようになることで、これまで以上にSScおよびSSc-ILDを早期に正しく診断し、必
要に応じて専門医に紹介することが重要になると思います。SScを見逃さないためには、レイノー現象や皮膚硬化の観
点から診察を行うことが大切です。レイノー現象は診察時に視認できないことも少なくありませんが、患者は日常的に
症状を経験しているため、問診のほか、患者にスマートフォンなどで撮影してもらい、それを確認するというのも、ひとつ
の方法かと思います。皮膚硬化に関しては、指が初発部位のため、患者の指を触って、「厚ぼったい感じ」がするかどうか
調べることが重要です。また、「指輪が入りにくくなった」、「指が曲げにくい感じがする」などの自覚症状を含めて評価す
ることも大切です。SSc-ILDに関しては、画像所見と血清マーカーの評価がポイントとなり、KL-6値などに上昇傾向がみ
られた場合は早期に治療導入が必要になることが多いため、速やかに専門医に紹介していただきたいと思います。
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2019年12月作成