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Fig. 1 Binary phase diagram of Sm Co. 日本金属学会誌 第 76 巻第 1 号(2012)96 106 特集「永久磁石材料の現状と将来展望」 解説論文 Sm 2 Co 17 系磁石の現状と将来展望 大橋 信越化学工業株式会社 J. Japan Inst. Metals, Vol. 76, No. 1 (2012), pp. 96 106 Special Issue on Recent Progresses of Materials Science of Rare Earth Permanent Magnet Materials and Their Perspectives 2012 The Japan Institute of Metals OVERVIEW Present and Future of Sm 2 Co 17 Magnets Ken Ohashi Shin Etsu Chemical Co., Ltd., Tokyo 100 0004 Sm 2 Co 17 magnets have high thermal resistivity and corrosion resistance with over 240 kJ/m 3 of (BH ) max , which are well balanced ones. But as NdFeB magnets are superior to both magnetic properties and costs, the Sm 2 Co 17 magnets are used in severe circumstance such as automobile applications. The magnetic property of Sm 2 Co 17 magnets are reviewed at first and its coercive force mechanism is discussed. As follow, some applications are introduced. (Received July 7, 2011; Accepted October 27, 2011; Published January 1, 2012) Keywords: 2 17 samarium cobalt magnet, maximum energy products, coercive force, zirconium additive, Z value, cellular structure, pinning type coercivity, magnetic wall energy, variable flux motor, thermal flux loss, radiation effect 1. Sm 2 Co 17 系磁石(以降,2 17SmCo 磁石と呼ぶ)は希土類磁 石におけるスタープレーヤではなくなっているが,耐熱性, 対候性,マイナーカーブ特性などの特徴から,バイプレーヤ として特色のある用途で使われ続けている.磁気特性の向上 という点では,Co に対する Fe 置換量の頭打ちや Cu 量減少 の限界,Zr に代わる有効な添加物が見出されない現状か ら,今後の大幅な改善や向上を見込むことは難しい.原料の Co 価格がレアメタル一般の動向として上昇傾向にあり,Sm も中国問題から入手が難しくなっている.しかし,Sm は磁 石用途以外にはあまり使い道がないため,基本的に Dy のよ うに資源的に逼迫している訳ではない.用途によってうまく 使い分けることが望ましい.永久磁石の材料という観点に留 まらない,使い方に対する発想転換があり得るかもしれな い.保磁力機構という観点から見ると,2 17SmCo 磁石の 保磁力に真の理解が得られているとは言えない. ここ 10 年以上,2 17SmCo 磁石の新しい組成提案や磁気 特性の向上がなされていないため,磁石材料開発の現状は以 前に書かれたものに付け加える点は多くはない 1) .本レビ ューは通常とは少し異なるスタイルで,2 17SmCo 磁石の 開発経緯に触れながら,磁石材料の基礎と磁気特性や著者の 推測も交えた保磁力機構と磁石応用について述べていく. 2. R Co 系金属間化合物の磁性および相図と結晶構 Fig. 1 に永久磁石として重要な Sm Co 2 元相図を示

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Fig. 1 Binary phase diagram of SmCo.

日本金属学会誌 第 76 巻 第 1 号(2012)96106特集「永久磁石材料の現状と将来展望」

解説論文

Sm2Co17 系磁石の現状と将来展望

大 橋 健

信越化学工業株式会社

J. Japan Inst. Metals, Vol. 76, No. 1 (2012), pp. 96106Special Issue on Recent Progresses of Materials Science of Rare Earth Permanent Magnet Materials and Their Perspectives 2012 The Japan Institute of MetalsOVERVIEW

Present and Future of Sm2Co17 Magnets

Ken Ohashi

ShinEtsu Chemical Co., Ltd., Tokyo 1000004

Sm2Co17 magnets have high thermal resistivity and corrosion resistance with over 240 kJ/m3 of (BH)max, which are wellbalanced ones. But as NdFeB magnets are superior to both magnetic properties and costs, the Sm2Co17 magnets are used in severecircumstance such as automobile applications. The magnetic property of Sm2Co17 magnets are reviewed at first and its coerciveforce mechanism is discussed. As follow, some applications are introduced.

(Received July 7, 2011; Accepted October 27, 2011; Published January 1, 2012)

Keywords: 217 samarium cobalt magnet, maximum energy products, coercive force, zirconium additive, Z value, cellular structure,pinning type coercivity, magnetic wall energy, variable flux motor, thermal flux loss, radiation effect

1. は じ め に

Sm2Co17 系磁石(以降,217SmCo 磁石と呼ぶ)は希土類磁

石におけるスタープレーヤではなくなっているが,耐熱性,

対候性,マイナーカーブ特性などの特徴から,バイプレーヤ

として特色のある用途で使われ続けている.磁気特性の向上

という点では,Co に対する Fe 置換量の頭打ちや Cu 量減少

の限界,Zr に代わる有効な添加物が見出されない現状か

ら,今後の大幅な改善や向上を見込むことは難しい.原料の

Co 価格がレアメタル一般の動向として上昇傾向にあり,Sm

も中国問題から入手が難しくなっている.しかし,Sm は磁

石用途以外にはあまり使い道がないため,基本的に Dy のよ

うに資源的に逼迫している訳ではない.用途によってうまく

使い分けることが望ましい.永久磁石の材料という観点に留

まらない,使い方に対する発想転換があり得るかもしれな

い.保磁力機構という観点から見ると,217SmCo 磁石の

保磁力に真の理解が得られているとは言えない.

ここ 10 年以上,217SmCo 磁石の新しい組成提案や磁気

特性の向上がなされていないため,磁石材料開発の現状は以

前に書かれたものに付け加える点は多くはない1).本レビ

ューは通常とは少し異なるスタイルで,217SmCo 磁石の

開発経緯に触れながら,磁石材料の基礎と磁気特性や著者の

推測も交えた保磁力機構と磁石応用について述べていく.

2. RCo 系金属間化合物の磁性および相図と結晶構

Fig. 1 に永久磁石として重要な SmCo の 2 元相図を示

97

Fig. 2 Crystal structure of R Co5 andR2Co17 compounds.1)

Table 1 Magnetic properties of RCo5, Y2Co17 and Sm2Co17.

CompoundSaturation

magnetization,Js/T

Curietemperature,

Tc/K

Magnetocrystallineanisotropy,Ku/MJm-3

Maximumenergy

products,(BH)max/kJm-3

YCo5 1.09 903 5.5 223

LaCo5 0.91 840 6.3 161

CeCo5 0.77 653 6.4 118

PrCo5 1.20 893 8.1 287

NdCo5 1.22 910 0.24 296

SmCo5 1.07 1000 17.2 229

GdCo5 0.363 1008 4.6 26

TbCo5 0.236 980 11

DyCo5 0.437 966 38

HoCo5 0.606 1033 3.6 72

ErCo5 0.727 1053 3.8 105

TmCo5 0.75 1020 112

Y2Co17 1.25 1167 -0.34

Sm2Co17 1.20 1190 3.3 287 Fig. 3 4f orbital shapes of rareearth atoms.5)

97第 1 号 Sm2Co17 系磁石の現状と将来展望

す1).いくつもの金属間化合物が存在するが,このうち永久

磁石として重要な金属間化合物は SmCo5 と Sm2Co17 である.

Table 1 に RCo5 と R2Co17(R希土類元素)のうち今後の議

論に重要な Y2Co17, Sm2Co17 の磁気特性を2),Fig. 2 に RCo5

と R2Co17 の結晶構造を示す1).R2Co17 の結晶構造は,RCo5

の R の一部を CoCo ペアで規則的に置換した近縁のもので

あり,その詳細は後で説明する.

RCo5 と R2Co17 の磁性に寄与するのは R と Co の両方であ

り,R 副格子と Co 副格子に分けて考えるのがよい3).磁性

を担っているのはそれぞれ 4f 電子と 3d 電子であるが,強相

関な電子系ではないので 3d 電子の詳細に立ち入らなけれ

ば,その磁性の理解は比較的単純である.永久磁石材料の 3

要件(必要条件)は,キュリー点(Tc),結晶磁気異方性(Ku)

と飽和磁化(m0M )が大きいことで,その中でも結晶磁気異

方性は永久磁石候補材料で 重要な要件である.

RCo 系化合物の結晶磁気異方性は R 副格子と Co 副格子

からの足し合わせである.Co 副格子からの結晶磁気異方性

は YCo5 から見積もることができ,Co 副格子の結晶磁気異

方性は 5.5×106 J/m3 の大きな値を示す4).この値だけでも

通常は磁石候補材料の資格がある.R2Co17 の Co 副格子は負

の異方性を有していて,ほとんどの化合物の異方性は負の値

となっている.R 原子間の相互作用は弱いが,RCo 副格子

間相互作用により R 副格子の磁性は室温以上まで保持され

るので,R 副格子の結晶磁気異方性が支配的となる.その理

由は,R 原子の 4f 電子は 5d, 6s 電子の内殻側に位置し,軌

道角運動量がよい保存量となっていて,周囲の結晶場の影響

を受けて 4f 軌道が 3d 軌道と重ならない特定の方向に向きや

すいためである3).R の 4f 電子雲を Fig. 3 に示す5).RCo5

化合物では細長い 4f 電子雲をもった R 原子(Stevens 因子が

正)の場合に,結晶磁気異方性が大きくなる.SmCo5 化合物

の異方性が取り分け大きい理由は,Sm の 4f 電子が上位の

準位とのミキシングを起こしているためである.R2Co17 で

は Co 副格子の影響を受けて,ほとんどの化合物は負の異方

性を示すが,Sm2Co17 だけは Sm の異方性が非常に強いため,

3.2×106 J/m3 の正の値を示す.

もう 1 つの重要な要件であるキュリー温度(Tc)は主に遷

移金属により担われており,Co 副格子による寄与でほぼ決

まる3).非磁性 R 原子である YCo5 や LuCo5 が,ベースとな

る Co 副格子の磁性を反映している.それに R と Co 副格子

間の磁気的相互作用が重畳されて,RCo5 や R2Co17 の Tc は

R 原子の種類により少し変化する.R 原子間の 4f 電子間交

換相互作用(sf 相互作用)は弱いので,Tc にはあまり寄与し

9898 日 本 金 属 学 会 誌(2012) 第 76 巻

ない.

飽和磁化(m0M もしくは飽和自発分極 Jc)も Co 副格子が支

配的ではあるが,R 副格子の寄与もある.Tc と状況が少し

異なるのは両者の単純な足し算にならない点である.RCo

間は伝導電子を媒介とした sd,sf 相互作用が働く.スピン

間は平行となるが,R の磁性は J=L+S で決まるので( J

合成角運動量,L軌道角運動量,Sスピン角運動量),

Eu を含むより原子番号の小さい軽希土類 LRE と Co 間の磁

気モーメントは平行,Gd より原子番号の大きい重希土類

HRE と Co 間の磁気モーメントは反平行なフェリ磁性とな

る3).Co の磁気モーメントは HRE の磁気モーメントで減じ

られるので,永久磁石材料候補として望ましいのは,LRE

Co 系の化合物である.

Fig. 2 に RCo5 と R2Co17 の結晶構造を示す.基本となる

RCo5 は R, Co よりなる面と Co のみからなる面を c 軸方向

に積層したものである.RCo5 と R2Co17 の結晶系は異なる

が,近縁の構造である1).

3RCo5R+2Co=R2Co17

上記の式で示すように,RCo5 の 3 ユニットから R を 1 つ抜

いて,Co ペアで置換したのが R2Co17 化合物である.R を

Co ペアで置換する時,Co ペアは c 軸方向にダンベルを形成

する形で入るため,R2Co17 は RCo5 より a 軸が縮み c 軸が伸

びる.Co ペアが c 軸に沿って A, B, C, A, B, C と置換すれば

Th2Zn17 型菱面体晶構造となり,A, B, A, B と置換すれば

Th2Ni17 型六方晶構造となる.磁石として重要な Sm2Co17 は

Th2Zn17 型菱面体晶構造をとる.後で触れるが,217SmCo

磁石が 15 相と 217 相の微細なセル組織に分離するのは,

両方の結晶構造が非常に近縁の関係にあって,格子不整合が

小さくなるような面が存在するためである1).217SmCo 磁

石と類似の 2 相分離微細構造を他の材料系に展開できてい

ないのは,上記のような条件を満たしかつ少なくとも一方の

結晶磁気異方性が大きいような化合物系が見つかっていない

ためである.

RCo5 と R2Co17 で磁石候補として望ましいのは,R が軽

希土類側の Stevens 因子が正のもので,結晶磁気異方性の特

に大きい SmCo5 や相対的に値の大きい Sm2Co17 である2).

ただ,SmCo5 の異方性が飛び抜けて大きいため,Sm を Pr

や Nd(Stevens 因子が負)で一定程度置換することは可能で

ある.Pr や Nd は磁気モーメントが Sm より大きいため,

飽和磁化の増大に寄与する.

3. 217SmCo 希土類磁石の磁気特性と推移

217SmCo 磁石の開発は組成で示すと便宜的に次の 4 つ

の世代に分けられる1).組成中の遷移金属はその構成のみ

で,実際の組成比率を示すものではない.

第 1 世代      R(CoCu)5 R=Ce, Sm

第 2 世代      R(CoFeCu)7 R=SmCe, Sm

第 3 世代      Sm(CoFeCuM)7.5 M=Ti, Zr, Nb, Ta, etc.

(主に遷移金属)

第 4 世代      Sm(CoFeCuZr)7.5~8 低 Cu

第 1 世代の R(CoCu)5 磁石は析出硬化型の磁石を目指し

て検討され,結果として全く異なる保磁力機構の異なる磁石

ではあったが磁石特性を示すものが得られた6).当初は鋳造

磁石で検討されていたが,磁石の脆性や c 軸配向の問題を改

善するため,磁粉配向と粉末焼結法を標準製造工程として,

焼結磁石が開発されるようになった.俵や Nesbitt などの少

数の研究者が開発を行っていただけで,あまり注目されてい

なかった6,7).その原因は Co を Cu で置換することによる飽

和磁化の減少であった.当時の研究の主流は Strnat の提唱

に始まる SmCo5 金属間化合物の磁石化で8),ほとんどの研

究者や開発者はこちらの磁石化を競っていた.R(CoCu)5 磁

石化開発の経緯について, 近俵が大変興味深い話しを書い

ているので,そちらを是非お読みいただきたい9).俵による

と R(CoCu)5 の開発を続けていたのは,Cu 置換系では資源

的に有利な Ce(CoCu)5 が磁石化できることと,Co を一定程

度 Fe で置換可能なためである.Ce(CoCuFe)5 組成で Cu 置

換による磁性の希薄化を若干補償できた10).SmCo5 磁石で

は Co の Fe 置換ができない.これは SmFe5 化合物が相図上

で存在していないためであるが,Cu 置換により一定比率の

Fe の固溶が可能になることは,Cu 置換系の大きな利点の 1

つである.

1970 年前後では希土類元素(R)は今日ほど一般的でな

く,せいぜい混合希土類金属であるミッシュメタル(MM)が

ライターの火打ち石として用いられている程度であった.当

然,Sm は用途もなかったので,国内で分離精製製造してい

るメーカは皆無であった.Ce はサンプル的にではあるが入

手が可能であったのと,相対的に値段が安かったことは利点

の 1 つである.磁気特性が低いとはいえ Ce(CoCuFe)5 磁石

で達成された 96 kJ/m3(12MGOe)の特性は10),当時の主流

であったアルニコ磁石やフェライト磁石に比較すると 3 倍

以上の磁気特性である.典型的な CeCo 磁石の組成を下記に

示す.

Ce(CoresFe0.14Cu0.14)5 ( 1 )

当時の応用分野から見た欧米の状況と日本の状況を比較し

て見ることは興味深い.欧米,特にアメリカにおける希土類

磁石開発の目的・目標は,軍需用途を目指していたことは明

らかである.それは希土類磁石の創始者である Strnat が,

初 US Air Force Laboratory に所属していたことからも分

かる.また,希土類元素のイオン交換分離や溶媒抽出などに

よる分離精製はアメリカの Ames Laboratory などで精力的

に開発されたが,この技術の基礎は U の分離精製に由来し

ている.したがって,軍需用途の観点からはコストより特性

優先であり,高磁気特性が期待できる SmCo5 の開発に注力

することは当然の選択であった.一方,太平洋戦争に負けた

日本には軍需用途の選択はありえず,勃興期にあった家電や

民生用電子機器がターゲットであった.この用途でまず優先

されるのはコストであり,用途に見合った磁気特性である.

Ce(CoCuFe)5 磁石が,当時松下電器に所属していた俵らに

より開発されたことは偶然ではない.この日米の応用分野へ

の指向の差が,その後の希土類磁石ビジネスにおける明暗を

分ける要因の 1 つになる.

Ce(CoCuFe)5 や Sm(CoCu)5 で注目されるのは,初磁化

曲線である.希土類磁石の保磁力機構にはピンニング型保磁

99

Fig. 4 Relationship between initial curve and coercive forcemechanism: (a)Pinning type and (b)Nucleation type.

Fig. 5 Hysteresis loop of SmCe(CoFeCu)7 magnet.13)

Fig. 6 Schematic cell structure in 217SmCo magnet. (a) cplane and (b) plane including c axis.

99第 1 号 Sm2Co17 系磁石の現状と将来展望

力と核発生成長型保磁力があり,Fig. 4 に模式的に示すが,

初磁化曲線により区別される1).ピンニング型保磁力は Cu

置換 R(CoCu)5 磁石や 217SmCo 磁石で発現し,核発生成

長型保磁力は SmCo5 磁石や NdFeB 磁石で発現している.

ピンニング型保磁力の磁石は,磁壁が何らかのピン止めサイ

トにトラップされているため,外部磁場による磁壁駆動エネ

ルギがピン止めによるポテンシャルエネルギの利得を上回る

までは,磁壁移動による磁化の変化は起きない.そのため

Fig. 4(a)のような初磁化曲線を示す.ところが開発された

当時も,微細組織の観察手段がもっと進んだ 近でも,

R(CoCu)5 磁石内に磁壁ピン止めのサイトになる明瞭な微細

組織は見つけられていない11).TEM で微細構造の観察をし

ても均質な組織が見えるだけである.この事実は深く追求さ

れることもなく,材料開発の歴史の中に埋もれてしまってい

るが,この点は後に 4 節で議論する.

第 2 世代は R(CoFeCu)7 磁石(R=SmCe, Sm)の開発

で12),下記の組成が典型的である13).

Sm(CoresFe0.06Cu0.15)6.8 ( 2 )

SmCo5 はラインコンパウンドではなく,Co に対してある幅

の固溶限があることは分かっていた.R と T(ここでは Fe,

Co や Cu を含む遷移金属部を T で表す)の比を Z で表すと,

R2T17 に相当する Z 値が 8.5 である.RTZ の T 中の Cu 量

を適切に選択することにより,Z~7 付近に,六方晶 TbCu7

型 RT7(以降,化合物を 17 相と呼ぶ)という高温で安定な

均質相が存在する.RT7 は Fig. 2 に示す R2T17 の TT ダン

ベルペアを R 位置にランダムに置換した結晶構造で,高温

準安定相のため徐冷により低温では RT5 と R2T17 に分離す

る.T が Fe の場合,RFe5 化合物は存在しないが R2Fe17 化

合物は存在し,R2(CoFe)17 は全域で相互に固溶可能である.

Cu で安定化された RT7 では Fe を一定程度置換することが

可能である.磁化の大きさを主に担っている遷移金属の比率

を増やすことができ Fe 置換も可能なため,飽和磁化が大幅

に上昇し SmCo5 石の値を超えた12).Sm2T17 化合物(ここで

は T=Co や CoFe, Z=8.5)は Strnat により開発されるべき

高特性磁石の候補と提唱されていたので8) ,俵らの

Sm(CoFeCu)7 磁石は 217 磁石と認識されるようになった.

Fig. 5 は俵らにより得られた 17 磁石のヒステリシス曲線で,

(BH)max=160 kJ/m3(20MGOe)である13).

R(CoCu)5 磁石と Sm(CoFeCu)7 磁石の大きく異なるの

は,数十 nm のセル状微細組織が観察された点である.Fig.

6 に 2 相分離したセル状組織の模式図を示す.c 面と c 軸を

含む面での断面形状は少し異なっており,c 軸方向に少し引

き延ばされた形状をしている.微細組織は Sm(CoCu)5(以

降,15 相と呼ぶ)と Sm2(CoFe)17(以降,217 相と呼ぶ)よ

りなり,217 相の周囲を薄い 15 相が包むようなセル状組

織を示す14).

Sm(CoFeCu)7 磁石は初磁化がピンニング型保磁力の特徴

を示すため,このセル組織から結晶磁気異方性が大きい 15

相に磁壁がピン止めもしくは磁壁移動が阻止されると考える

のは自然である.15 相と 217 相に相分離後,Fe は主に

217 相に拡散濃縮され,Cu は 15 相に拡散濃縮される.磁

壁ピン止めに寄与する 15 相と磁化の増大に寄与する 217

相という,絶妙な微細組織の組み合わせを持つ磁石である.

この基本スキームが認識されると,低 Cu・高 Fe・高 Z 値

組成が目指された.RCoCu(Fe)多元相図の複雑さから,

第 5 元素の添加により前記の目標を達成しようとして,数

多くの研究者が添加物の探索に参入した.R(CoFeCu)7 磁石

はこの流れを作り出した源流であり,以後の希土類磁石開発

のメインストリームとなった12,13).

第 3 世代は Sm(CoFeCuM)Z 磁石の 適添加物 M と 適

添加量を検討することにより,Cu 置換量の低減と Fe 置換

量の増大,Z 値の向上(8.5 を上限として)を達成することが

研究の焦点となった.置換元素 M には種々のものが検討さ

れ,Ti, Ta, Nb, Mo, Zr, Hf など 4d,5d 遷移金属が主に試行

されて効果が確認され,Mn, Cr などの 3d 遷移金属も一定

程度効果のあることが分かった15,16).種々の添加物は 17 相

の高 Z 値・低 Cu・高 Fe 領域への拡大に寄与する17).

これらの中で Zr と Hf が一番効果のある添加物で,資源

的によりレアな Hf ではなく Zr が添加物として一番適して

いることが分かった15).Zr がなぜ一番効果的であるのかは

不明だが,一つの仮説としてサイズ効果が考えられる.Zr

100

Fig. 7 Interdiffusion of iron and copper at aging heat treat-ment in 217SmCo magnets.1)

100 日 本 金 属 学 会 誌(2012) 第 76 巻

は原子サイズが Co・Fe・Cu より大きいが,R よりは小さ

い.そのため当初,Zr が Co サイトを置換するのか R サイ

トを置換するのかがはっきりしなかった.今でも Zr 置換サ

イトを明確に同定した報告はなされていないが,一般的には

Co サイトを置換すると考えられている.素朴な考えとして,

Zr 置換によるサイズ効果で格子が膨らむことにより,Co を

Fe が置換しやすくなるのであろう.尾島,米山らによる下

記の組成が標準組成として知られている15).

Sm(CoresFe0.20Cu0.10Zr0.01)7.5 ( 3 )

第 2 世代の Sm(CoFeCu)7 組成比較で,Fe 量増加・Cu 量減

少・Z 値の向上が見て取れる.

セル状微細組織の比較では,セルの形状が第 2 世代に比

べて大きくなっている18).高温安定の 17 均一相から 15

相と 217 相セル状組織に相分離した後,Fe が 217 相に,

Cu が 15 相に相互に拡散しながら各々濃縮する.Zr は主に

217 相に置換されている.Z 値が更に 8.5 に近くなったた

め 217 相の割合が増える.従来のセルサイズのままでは 1

5 相と 217 相の格子界面歪みエネルギが増大するので,セ

ルサイズを大きくすることによってセル界面の比率を下げる

のではないか考えられる.また,Zr 添加はセルと境界相間

における Fe/Cu 相互拡散を促進する方向で働いているので

あろう.

第 3 世代の磁石の製造プロセスにおいて,焼結・時効条

件の 適化は重要である.第 2 世代の磁石は焼結溶体化段

階でほぼ保磁力が決まってしまい,時効熱処理は行われてい

たがあまり重要ではなかった.しかし,第 3 世代の磁石で

は焼結溶体化後の時効熱処理が重要で,米山らは高温からの

多段時効(徐冷)が保磁力増大に効果的であることを見出し

た15).焼結直後は 17 均質相のため保磁力は非常に低く,

多段時効の過程で前述のように 15 と 217 相間における

Cu/Fe の相互拡散が生じ,徐々に保磁力が増加する.多段

時効の開始温度と保持時間や冷却速度・時効終了温度は保磁

力の値を左右する重要なパラメータである.Fe/Cu の相互

拡散による濃度の開きを Fig. 7 に示す(但し,磁石組成は第

4 世代のものに対してである)1).15 相は薄く EDX 解析が

難しいので,217 相の組成変化を示している.

これら組成や粉末冶金法による諸条件の 適化(粒度分

布,粉末酸化程度,磁場配向条件,圧粉成形条件,焼結・時

効熱処理条件,等)の結果,(BH )maxで 240 kJ /m3 ( 30

MGOe)を超えるようになり15),SmCo5 磁石を大きく超える

磁気特性が得られるになった.

俵による第 2 世代磁石の開発以降,217SmCo 磁石の本

質的なブレークスルーは日本においてなされた.これはいく

つかの要因が考えられる.大学や研究所における磁性材料研

究の伝統,数多くの磁性材料メーカが存在していて国内で切

磋琢磨していく環境が存在していたこと,磁石材料のユーザ

である電機・電子機器メーカが右肩上がりの成長の中で高価

で高特性な磁石材料を使いこなし,新規な応用製品を開拓す

る力を持っていたことなどが挙げられる.もう 1 つ磁石開

発の研究者・開発者コミュニティーを要因に挙げてもよいか

もしれない19).217SmCo 磁石開発の本質部分の多くが民

間メーカの開発技術者により行われた.これは磁石原料価格

や焼結磁石製造装置の規模の点で,大学での実験に適さなか

ったことも一因である.通常,民間メーカの技術者間では大

学研究者間におけるような自由な意見交換はなされない.そ

れは特許の問題であり,製造プロセスのノウハウの問題であ

り,各社の利益に直結するため,社外の壁を越えての議論は

当然限られたものにならざるを得ない.しかし,日本の希土

類磁石開発においては会社間の制約は厳守しながらも,学会

や研究会・国際会議などの集まりを通じて,基礎的な部分で

民間技術者間の議論や大学研究者との共同研究が活発になさ

れた.この関係は NdFeB 磁石開発においてより加速され,

NdFeB 磁石開発と希土類金属間化合物の基礎磁性研究の非

常に好ましい正のフィードバックが実現された.

第 4 世代の磁石は一見第 3 世代の単純な改良のように見

えるが,Zr 添加量の増加という形で提案された20).第 3 世

代の磁石は保磁力が概ね 800 kA/m(10 kOe)以下で,BH ヒ

ステリシス曲線の第 3 象限(減磁曲線)にクニックが生じ

る.これは磁気回路設計の上で制約となるため,減磁曲線が

直線的になるように,残留磁束密度(Br)の値を超える保磁力

(HcJ)を有する磁石が望まれていた.下田らによる提案は,

従来組成より Zr 添加量を倍増し,それを補償するため Cu

量を半分に減らし Fe 量と Z 値を高くするもので,長時間の

時効熱処理も必須要件であった20).Zr 添加量増加の効果は

顕著で,1.6MA/m(20 kOe)を超える大きな保磁力(HcJ)が

得られた.彼らはボンド磁石用の溶解合金に対して前記の結

果を得ていたため,粉末冶金法による焼結磁石での検討が直

ちになされた.当初,ヒステリシス曲線の角形性が悪く,

HcJ が大き過ぎて電磁石の磁場ではマイナーループしか測定

できなかった.組成や製造条件を 適化した結果,おおよそ

下記のような組成に収斂した.

Sm(CoresFe0.20~0.30Cu0.05~0.055Zr0.02~0.025)7.5~7.7 ( 4 )

下田らの提案組成から Z 値は小さい方に若干ずれたが,基

本的には Zr 量の倍増・Cu 量の半減と長時間の時効熱処理

が本質的であった.熱処理の各段階における保磁力変化につ

いて一例を Fig. 8 に示す21).

時効開始温度と保持時間により 2 相分離のセルサイズと

その分布が決まり,冷却速度によりセル間の相互拡散濃度差

が決まる.保磁力やヒステリシス曲線の角形性が左右される

101

Fig. 8 Aging condition and coercive force dependence inSm(CoresFe0.20Cu0.055Zr0.025)7.5 magnet.21)

Fig. 9 Magnetic curve of 217Sm(CoFeCuZr)Z magnets at4th generation (ShinEtsu Chemical. R32H).23)

101第 1 号 Sm2Co17 系磁石の現状と将来展望

ので,時効熱処理の条件は詳細に検討する必要がある.2 相

分離のプロセスについて Ray が詳細な議論をしている22).

第 4 世代の磁石は,Cu 濃縮度合いにより 2.4 MA/m(30

kOe)を越えるような非常に大きな保磁力を発現することも

可能である.しかし,HcJ を大きくし過ぎるとヒステリシス

曲線の角形性が悪化して,非常に大きな着磁磁場が必要にな

ってしまう.セルサイズやセル間濃度差に分布ができてしま

い,結果として保磁力の分布や角形性の悪化の原因となるの

であろう.

下田らによるボンド磁石と焼結磁石における Z 値のズレ

に関しては,製造法の違いによる.希土類焼結磁石の粉末冶

金法では,合金をジェットミルにより数 mm 程度の微粉末に

するので,微粉末の表面酸化は避けられない.217SmCo

磁石微粉においては酸素量で 0.1mass前後の酸化が生じ,

Sm が酸化されやすいので組成を予め Sm リッチ側にしてお

く必要がある.例えば Z 値が 7.5 の組成の場合,微粉の酸

化によりすべて Sm2O3 となると仮定してそれ以外の組成を

補正計算すると,実質的な Z 値はおおよそ Z~8.0 になる.

一方,ボンド磁石では合金を粗粉砕したものを樹脂と混練

し,磁場中で配向・成形する.焼結磁石のような微粉化は必

要なく,数十 mm 程度の粗粉でよいためその酸化程度は低

い.磁性に寄与する実質的な組成だけで比較すると,ボンド

磁石と焼結磁石の組成差はあまり大きくない.現在量産され

ている 高グレードの 217SmCo 磁石のヒステリシス曲線

を Fig. 9 に示す23).Fe 量が高くなっているため(組成式(4)

を参照),焼結や時効熱処理の制御が大変難しく,角形性は

少し低下している.

217SmCo 磁石で磁気特性向上の余地があるかどうか考

察してみる.今日,NdFeB 焼結磁石で行われている無酸素

雰囲気で微粉取り扱いを行えば,酸化防止ができて Z 値を 8

前後まで向上できる.磁気特性向上は見込めるが,製造コス

トを上げることになる.一方,更に低 Cu と高 Fe 組成の可

能性は,Zr 添加物系では難しい.17 相の安定領域がそち

ら側に拡がっていないためである.その他添加物系で検討の

余地はあるかもしれないが(例えば Hf),膨大な検討が必要

となるであろう.Sm を磁気モーメントの大きな Pr, Nd で

置換することは,10~20at程度は可能である.しかし,結

晶磁気異方性が低下するため,部分置換にとどまる.現在,

飽和磁化の高い NdFeB 磁石が存在しているため, 2

17SmCo 磁石の磁気特性向上要求は市場ニーズの点からはな

い.現在の組成と磁気特性がこの磁石系の 終到達点であろ

う.

第 4 世代磁石の微細構造はセル構造を有する点では従来

と同じであるが,セルサイズが肥大化している点と c 面方向

にプレートレットと呼ばれる Zr リッチな板状組織がセルを

貫いて走っている点が異なる21,26).Fig. 10 に TEM 観察に

よる微細構造を示すが,(a)は c 面,(b)は c 軸を含む面であ

る.また,Fig. 10(c)に第 3 世代の c 軸を含む面の微細構造

を示すが,セルサイズが大きくなっていることが分かる.Z

値が高くなって,2 相分離時に 217 相の比率が上昇するた

めセル組織が肥大化する.セル肥大化により Fe/Cu の相互

拡散距離は第 3 世代のものより長くなる.これが第 4 世代

磁石において時効熱処理が長時間化した要因であろう.プ

レートレット相は非常に薄いため,その組成と結晶構造の同

定は容易ではない21,26).プレートレット相は c 面方向にセル

を貫いて延びており,Fe/Cu 相互拡散のパスの 1 つになっ

ているのではないかと推測されている.セルサイズが大きく

なってもプレートレット相を通して相互拡散が効率的に進む

ので,高い保磁力が得られるのであろう.拡散パスの仮説を

直接検証することが望ましいが,プレートレット相は非常に

厚みが薄いため解析は容易ではない.

第 4 世代の磁石は Fe/Cu 相互拡散に長時間かかるため,

従来の時効熱処理条件では不十分であった.下田らは溶解合

金で実験を行っていたため,均質化や時効熱処理に長時間か

けたのであろう20).217SmCo 磁石の保磁力は,組成と熱

処理が磁壁ピン止めサイトとなるセル組織と Fe/Cu 相互拡

散に直結しているため,どちらかが適切でなければ十分な保

磁力は得られない.第 3 世代の 217SmCo 焼結磁石開発に

102

Fig. 10 Microstructure of 217SmCo magnets by TEM.1)(Arrows in figures show c axis.) (a) C plane of 217SmCo mag-net at 4th generation. (b) Plane including c axis of 217SmComagnet at 4th generation. (c) Plane including c axis of 217SmCo magnet at 3rd generation.

Fig. 11 Magnetic wall observations of 217SmCo magnet ateach stage in aging process by Lorentz TEM.21) (a), (b), (c)and (d) correspond to ◯, ◯, ◯ and ◯ at aging process in Fig.8.

Fig. 12 Schematic potential models of magnetic wall energydifference in 2 17SmCo magnet micro structure.1)(a) Potential barrier model, (b) potential well model and(c) double potential model.

102 日 本 金 属 学 会 誌(2012) 第 76 巻

おいて Zr の 適添加量を特定するため,上記の添加量範囲

状を検討していた開発者は著者を含め多くいた.しかし,そ

の下に豊かな鉱脈があることは気付かず見逃してしまった.

第 4 世代磁石開発の経緯は,材料開発における 1 つの教訓

を与えてくれる.材料開発においてすべての場合をやり尽く

す訳にはいかないが,狭い範囲の極小値に落ち込まないよう

に,パラメータを大きく振るような意識的な試行を開発に盛

り込む必要があろう.

4. 217SmCo 磁石の保磁力機構

217SmCo 磁石は磁壁ピンニング型保磁力を示すものと

して,核発生成長型保磁力を示す NdFeB 磁石や SmCo5 磁

石と対比される.磁壁ピンニング型と核発生成長型は,Fig.

4 に示すように初磁化曲線の違いで判別される.ここでは

217SmCo 磁石とその議論に必要な Sm(CoCu)5 磁石の磁壁

ピンニング型保磁力について考える1).

217SmCo 磁石の微細構造は Fig. 10 に示されるようなセ

ル構造をしている.既に述べたようにセル内部が 217 相,

セル境界が 15 相である.15 相・217 相共に強磁性相で

あるので,単磁区粒子型の保磁力でないことは明らかである.

15 相が非常に薄いため,217 相と 15 相は交換結合して

いる.熱磁気曲線を測定しても 15 相に相当するキュリー

点のクニックは測定されず,217 相単相のようなカーブを

示すだけである.一般的には下記の簡単な式で示されるよう

に 15 相と 217 相の磁壁エネルギの差で,保磁力が発現す

ると認識されている24).

HcJ=|g15-g217|

m0Msd

g磁壁エネルギ,d磁壁厚み,m0Ms飽和磁化

2 相分離は焼結粒内で概ね均一に起きるので,磁壁はどこで

ピン止めされてもほぼ同じ保磁力を与える.また,磁壁がピ

ン止めされた個所から磁場を印加して移動させるには,一定

以上の外部磁場を印加させる必要があるので,既に述べたよ

うに Fig. 4(a)のような初磁化曲線を与えることは容易に想

像できる.

217SmCo 磁石のセル組織の生成と上記のピンニング保

磁力の描像が,矛盾なく整合しているかどうかにつき考えて

みる.踏まえるべき実験事実は,次の 3 点である.

焼結後は TbCu7 構造の 17 均質相であるが,時効熱

処理初期の高温保持段階で 15 相と 217 相の 2 相に分離し

てセル構造が生成される.この段階でセルは形成されるが,

有意な保磁力は発現していない.

時効熱処理の徐冷過程で 217 セル相と 15 セル相間

で Fe/Cu の相互拡散が進行し,保磁力が徐々にかつ単調に

増大する.

熱消磁状態で磁壁は 15 相にピン止めされ,Fig. 11

のローレンツ TEM による観察結果が示すように磁壁は 15

相に沿ってジグザグな形状となる21).着磁や減磁過程で磁

壁はある 15 相のピン止め個所からはずれて,別な 15 相

の個所にピン止めされる.

磁壁のピンニング機構については,Fig. 12(a)(b)に示す

2 つのモデルが 初に提案されていた1).仮に(a)をポテンシ

103

Fig. 13 Atom probe observation of Sm(CoCu)5 rapid quenchmagnet.27) (a) atom maps and (b) composition profiles.

Fig. 14 Coercive force and magnetization dependence againstcopper content.7)

103第 1 号 Sm2Co17 系磁石の現状と将来展望

ャルバリアモデル14),(b)をポテンシャル井戸モデル18)と呼

ぶ.

結晶磁気異方性の値を比較すると,SmCo5 化合物(セル境

界)の方が Sm2Co17 化合物(セル内部)より圧倒的に大きいの

で,ポテンシャルバリアモデルが合理的に思える.時効初期

の高温保持段階でセル組織が形成されるので,セル形成が起

きれば磁壁エネルギ差により直ちに保磁力が発現するはずで

ある.しかし,実際は時効熱処理の徐冷により徐々に保磁力

が増加する.また,Fig. 11 のローレンツ TEM による磁壁

観察の結果は21),熱消磁状態で磁壁は 15 境界相に境界に

沿ってジグザグな形でピン止めされていることを示してい

る.磁壁エネルギから見ると不利なはずの 15 相に磁壁は

ピン止めされている.ポテンシャルバリアモデルは実験事実

と矛盾している.

では,ポテンシャル井戸モデルは実験事実と整合するだろ

うか.15 相に磁壁がピン止めされること,冷却過程で徐々

に保磁力が増大する事実は,Fe/Cu の相互拡散による濃度

差増大によりポテンシャル井戸が深くなること整合している

ようにみえる.しかし,元々結晶磁気異方性定数(Ku)が

Ku15>Ku217 であるから 初はポテンシャルバリアであり,

Fe/Cu の相互拡散により Ku15=Ku217 を経て,Ku15<

Ku217 となってポテンシャル井戸に変化する必要がある.時

効により直ぐに大きな保磁力が発現し,それに続く徐冷過程

で減少し,更に徐冷すると再度保磁力が増大するという挙動

を示すはずである.実験事実はこれに反して,冷却過程で保

磁力は単調に増大するだけである.つまり単純なポテンシャ

ルバリアモデルもポテンシャル井戸モデルも実験事実と矛盾

している.

Kronmuller らは両者の複合案である Fig. 12(c)のような

2 重ポテンシャルバリアモデルを提唱している25).高温保持

段階(通常 800°C 以上)でセル組織形成が形成されても,15

相と 217 相のキュリー点(Tc)の違いにより,冷却過程でま

ず 217 相が磁性を回復する.15 相は冷却温度が Tc 以下

になったら磁性を回復するが,Tc 直下ではもっと高温で既

に磁性を回復した 217 相の結晶磁気異方性の方が大きいの

で,15 相がポテンシャル井戸になってここに磁壁がピン止

めされる.更に冷却することにより 15 相の結晶磁気異方

性は回復して行くが,その段階では Cu が 15 相に濃縮され

厚み中央部で一番高濃度になっている.Fig. 12(c)のように

15 相のポテンシャルバリア中に Cu 濃縮により井戸が形成

され,磁壁はこの 15 相にピン止めされて動けなくなる.

更なる徐冷により 2 重バリア間のポテンシャル井戸は更に

深くなって,保磁力は単調に増加する.このモデルは一見実

験事実を無理なく説明しているように思える.では,時効初

期の高温保持段階で熱処理を中断してそこから急冷すれば,

Cu 濃縮が進んでいないので 15 相内にポテンシャル井戸は

形成されていない.室温において,磁壁は結晶磁気異方性の

小さくエネルギ的に有利な 217 相にいて,217 相と 15

相間のポテンシャルバリアにより大きな保磁力が発現するは

ずであるが,これは実験事実と反する21).また必要十分な

時効熱処理を行った磁石で,着磁もしくは減磁過程で磁壁は

15 相のピン止め個所からはずれて,よりエネルギ的に安定

な 217 相内に落ち着くはずである.つまり磁壁は 15 相に

沿ったジグザク状にならず,主に 217 相内を走って比較的

ストレートになるはずである.しかし,進藤らによる電子線

ホログラフィー観察で,磁壁移動後も 15 相にピン止めさ

れることが観察されている21).Kronmuller らは時効初期段

階で形成されたセル境界相は 15 相ではなく,構造の乱れ

た相のため結晶磁気異方性が小さいという提案もしている.

岡部,進藤らは電子線回折により時効各段階(高温での等温

保持初期と徐冷終期)の試料を測定し,セル形成時の境界相

も 15 相であることを示した21).2 重ポテンシャルバリアモ

デルを更に修正したモデルも提案されているが26),磁壁ピ

ンニングに対する各種ポテンシャル差のモデルで実験事実を

矛盾なく説明できるものはない.

著者は磁壁ピンニングモデルに固執することなく,原点で

ある R(CoCu)5 の保磁力機構を解明することが重要である

と考える1).Sm(CoCu)5 磁石に微細組織が存在せずしかも

本質的に均質であるかどうかを,宝野らは TEM とアトムプ

ローブで調べた.アトムプローブによる解析結果の一例を

Fig. 13 に示すが,Co, Cu に濃度揺らぎや微細組織は見られ

ない27).SmCo5 では Sm+Co 面と Co 面が c 軸方向に交互

に積層するが,その Sm 面が atom map で見えていることに

注意願いたい.この分解精度で見ても Cu に濃度揺らぎは認

められない.

104

Fig. 15 Rotation sensor for ABS in automobile use. (ABSmeans antirock braking system.)

Fig. 16 Thermal irreversible loss of 217SmCo magnet withHcJ=1.6 MA/m and 0.5 to 2.0 of permeance coefficients at200°C.23)

104 日 本 金 属 学 会 誌(2012) 第 76 巻

Fig. 14 は Nesbitt ら に よ り 随 分 昔 に 報 告 さ れ た

Sm(CoCu)5 磁石における Cu 量と保磁力の関係である7).1

5 相への Cu 濃縮により保磁力がある濃度以上で急に増大し

ており,しかもピンニング型保磁力を示す.

217SmCo 磁石は 2 相分離組織を有するため磁壁エネル

ギ差のポテンシャルモデルは考えやすい.しかし,Cu があ

る量以上置換された 15 相自体に,磁壁がピン止めされる

とするのが実験事実を一番無理なく説明できる1).セル形成

の初期段階において小さい保磁力しか示さないのは,15 相

に Cu 濃縮があまり起きていないためである.時効冷却によ

り Cu が 15 相に濃縮されるにつれ,保磁力は増加する.1

5 相自体がピン止めサイトになるので,熱消磁や着磁・減磁

処理を行ってもピン止め点が 15 相のある個所から別な個

所に移るだけで,磁壁は 15 相に沿ってジグザグ状にな

る21).

217SmCo 磁石において Sm(CoCu)5 セル境界相自身が磁

壁ピンニングサイトになるという考えが一般に受け入れられ

ていないのは,従来の素朴な保磁力機構では均質相による磁

壁ピンニングという事実の説明ができないためである.また,

R(CoCu)5 磁石は磁気特性が低く,初期に少数の研究者しか

検討していなかったので,問題が共有されなかったこともあ

るであろう.R(CoCu)5 磁石の保磁力機構が解明される前に,

217SmCo 磁石が開発されそのセル構造が観察されたの

で,考えやすい磁壁エネルギ差のポテンシャルモデルが受け

入れられた,という歴史的経緯も影響している.

Zijlstra は磁壁が非常に薄くなって結晶のユニットセルに

近い連続体モデルが成り立たないような場合,磁壁が結晶格

子のどこに位置するかで磁壁エネルギに差が生じ,保磁力の

起源になることを論じて28),これを“Intrinsic pinning”と

呼んでいる.つまり非常に薄い磁壁では,結晶格子の不均質

を磁壁が感じると言い換えることができる.R(CoNi)5 化合

物(R=Y, Th, La)の極低温における高い保磁力をこの機構

で説明している.

Sm(CoCu)5 磁石に同じ議論が成り立つかどうかは定かで

はないが,定性的に議論してみたい.磁壁幅は下記の式で表

される.

d=pAKu

d磁壁幅,A交換スティフネス定数

Ku結晶磁気異方性定数

上記の式に当てはめると,SmCo5 化合物の磁壁幅は 5 nm 程

度と見積もられている1).Sm(CoCu)5 磁石で Co を Cu で置

換していった場合,結晶磁気異方性定数 Ku は Cu 置換に対

して一定量まで比例して低下せず,減少程度は緩やかであ

る.これは Sm 原子が回りの結晶場全体の影響により異方性

を生じているため,Co 副格子に属する Cu 置換の影響を受

けにくいため(ただし置換量の少ない場合)であろう.一方,

交換スティフネス定数 A は Co 副格子サイトに主に依存して

いて,交換相互作用定数 J に比例するため,Cu 置換の局所

的影響を受けて置換量に比例するかそれ以上に減少するであ

ろう.その結果,磁壁幅 d は減少し,Cu 置換の格子不均質

により低温でなくても“Intrinsic pinning”が成立するので

はないかと考えている.ただし,Cu 置換による A の変化は

分かっていないため,著者の推測にとどまる.

室温において発現する均質組織での磁壁ピンニング型保磁

力は,SmCo5 化合物のように大きな結晶磁気異方性を有し

ていて,非常に薄い磁壁が発現する場合に成立する保磁力機

構であろう.著者らは前記のような定性的イメージを持って

いるがお話のレベルにとどまるので1),物理系の磁性研究者

の出番ではないだろうか明確なピン止めサイトがなくても

磁壁移動が難しくなる,つまり磁壁移動に対する磁気的粘性

が非常に高くなるような定量的理論の構築が必要とされてい

る.

5. SmCo 系希土類磁石の応用展開

217SmCo 磁石は(BH)maxから見て NdFeB 磁石より低く,

Co が重量比で 50以上なので原料コスト面で不利である.

そのため,応用分野は現在では限定的である.しかし,Co

が主元素であるためキュリー点(Tc)が高く保磁力の温度変

化も相対的に小さく,熱安定性と耐食性が優れている.

Nd2Fe14B の Tc~310°C に対して,Sm2Co17 の Tc~800°C で

ある.現在は耐熱性・耐食性が要求される用途で主に使用さ

れていて,例えば車載用の ABS 用回転センサーはその代表

例である.Fig. 15 に回転センサーの模式図を示す.コイル

と磁石が一体となった磁気回路により,回転体突起部が対峙

した時に強く励磁され,その磁束変化をコイルで検出する.

磁束変化の時間間隔から回転数が検出される.現在では

NdFeB 磁石が使用される場合もあるが,高い耐熱性と耐食

性を要求される応用で,217SmCo 磁石は 適な選択であ

105

Fig. 17 Schematic structure of a variable flux motor (a)posi-tive flux state and (b)negative flux state.29)

Fig. 18 Schematic minor hysteresis loop of 217SmComagnet.

Fig. 19 Proton radiation effects for Rareearth magnets.31)

NdFeB magnet (N48; HcJ=950 kA/m, N32Z; HcJ=2.4 MA/m). 217SmCo magnet (R26H; HcJ=1.8 MA/m).

105第 1 号 Sm2Co17 系磁石の現状と将来展望

る.

Fig. 16 に HcJ~1.6 MA/m の 217SmCo 磁石の経時変化

例を示す.200°C で熱減磁せず使用に耐える23).

近,東芝や堺らにより 217SmCo 磁石のモータにおけ

る非常に興味深い使い方が提案された29).永久磁石を用い

た同期モータにおいて,ロータ磁石によりステータ電機子に

誘起される逆起電圧と界磁の電圧が釣り合うところまでしか

回転数を上げられない限界がある.実用上もっと高回転領域

まで使いたい場合,ロータ磁石に界磁コイルで逆磁場を印加

し,磁石の磁束を弱めて逆起電圧を下げることにより高回転

数領域まで伸ばす制御方法があり,これを弱め界磁という.

実際に HEV に搭載されている同期モータにおいて,車を高

速領域までモータ駆動する場合に弱め界磁が用いられてい

る.しかし,弱め界磁は磁石に逆磁場を与えて磁力を弱める

制御を行うため,モータ効率が悪くなる.

堺らによる可変磁力モータのロータ概略図を Fig. 17 に示

す.ロータ磁石に NdFeB 磁石と 217SmCo 磁石を混合使用

し,回転数に応じてロータ磁石の磁束を可変にするものであ

る29).第 3 世代 217SmCo 磁石のような保磁力の少し低い

もの(例えば HcJ~500 kA/m 程度)を使う.低回転数のトル

クの要求される領域ではどちらもフル着磁された状態で磁石

を使用する.高回転になったら 217SmCo 磁石に電機子コ

イルで逆磁場を与えて反対方向に着磁し,磁石からの界磁磁

束を弱めてやる.界磁磁束が減少した分だけ,逆起電圧が下

がって回転数を高くできる.高回転域ではモータトルクは小

さくてもよいので,磁石からの磁束が減少しても問題ない.

通常の弱め界磁制御と異なるのは,磁石を逆方向に着磁する

ため一度逆磁場をかけるだけでよい.

磁束可変としての使い方であれば低保磁力の NdFeB 磁石

と併用すればよいようにも思えるが,堺らは 217SmCo 磁

石の磁石特性を巧みに利用している.217SmCo 磁石の磁

化マイナーループは Fig. 18 のように,保磁力はほとんど変

わらずに磁化だけが低下したような形になる.ある磁場範囲

で,印加磁場に応じて磁化の値と形がほぼリニアに変化する.

217SmCo 磁石に適切な逆磁場を与えて,その磁束をリニ

アに何段階にも制御することが可能である.一方,NdFeB

磁石の逆磁場に対する減磁曲線は非線形な挙動を示すため,

正逆どちらかの方向にフルに着磁する使い方しかできない.

また,217SmCo 磁石は保磁力の温度変化が小さいため,

保磁力が小さくても高温領域まで熱減磁を起こさず使用可能

な点も可変磁束という使い方に適している.トルクの大きい

低回転領域とトルクが小さく高回転領域の両方で効率よく

モータを使用したい EV/HEV 駆動用や洗濯機用モータに適

用可能な技術である.

217SmCo 磁石は MeV オーダーの放射線や粒子線に対す

る耐性も良好である.奥田ら30)や伊藤らにより31,32)希土類磁

石の放射線・粒子線照射の影響が調べられた.Fig. 19 に a

線(p+)による照射効果を示す31).希土類磁石の減磁は g 線

照射の方が小さく,a 線や b 線のような粒子線照射の場合大

きい.NdFeB 磁石は特に粒子線に対して照射耐性が低く容

易に減磁が起きるが,217SmCo 磁石は g 線にも粒子線に

対してもかなり高い耐性を示す.核発生成長型保磁力機構の

磁石の方がピンニング型保磁力機構の磁石より放射線耐性が

低い.累積照射量と減磁の間には相関があり,照射量が大き

いほど減磁は大きく,保磁力の大きい方が相対的に減磁量は

小さい.また,照射エネルギが高いと減磁が大きい.放射線

や粒子線による減磁のメカニズムは解明されていない.照射

実験の例が少ないので一般化できないかもしれないが,照射

エネルギを温度,累積照射量を経時時間と読み替えれば,熱

減磁とよく似た挙動を示す.

伊藤らの照射実験では被照射磁石は金属ブロックに接触し

ており,照射により磁石が昇温しないようにしているので

(熱電対で測温もしている),熱減磁との相乗的な影響は小さ

い31).減磁メカニズムとして,放射線・粒子線照射により

106106 日 本 金 属 学 会 誌(2012) 第 76 巻

磁石内部で核への衝突やエネルギ吸収により非常に局所的な

加熱減磁が広範に起こることが考えられる.また,核への衝

突や励起により電子間の交換相互作用が阻害分断され,逆磁

区が発生して減磁することも考えられる.ただ実験の困難さ

から,放射線・粒子線による照射減磁のメカニズムを詳細検

討することは容易ではない.永久磁石をフルに着磁した状態

は熱消磁状態より反磁場が大きくなる分,静磁エネルギが高

くなってしまう.つまり準安定な状態であるため,熱的励起

であれ放射線による励起であれ,局所的なポテンシャル井戸

から離脱できる何らかのエネルギが与えられれば,より安定

な熱消磁状態向かって減磁が進行する.

現在起きている福島原発の事故では,高温・高湿のみなら

ず高放射線量下での作業の困難性が大きな問題となってい

る.放射線暴露環境では人体に対する影響ばかりでなく,無

人ロボットを稼動させるにしても,半導体チップやモータな

ど駆動部品の耐放射線性が大きな問題である.また,人工衛

星などの宇宙環境においてはヴァンアレン帯や大気などの粒

子線遮蔽が存在しないので,宇宙線照射による部品動作への

影響を考慮する必要がある.代替えのきかない機器の信頼性

確保は非常に重要である.このような過酷な環境下で,永久

磁石を用いる同期モータで機器を駆動したり,位置センシン

グに磁石を用いたりするのであれば,NdFeB 磁石ではなく

放射線性耐性に優れた 217SmCo 磁石を用いるのが望まし

い.過酷環境下で使用される機器は,部品コストだけで使用

の可否を判断する訳にはいかない.

6. ま と め

217SmCo 磁石は熱安定性や耐食性に優れた高特性な磁

石であるが,現在は NdFeB 磁石の補完的な使われ方に止ま

っている.現状と今後は次のようにまとめられる.

2 17SmCo 磁 石 は Zr 添 加 の 第 4 世 代

Sm (CoresFe0.20~0.30Cu0.05~0.055Zr0.02~0.025 )7.5~7.8 組成に収斂

し,クニックのない減磁曲線と 240 kJ/m3(30 MGOe)以上

の高い特性の磁石が量産されている.

更に高特性が実現できる添加物や組成は見つかってい

ない.また,応用ニーズ面からも NdFeB 磁石が存在するた

め 217SmCo 磁石の高特性化要求は出ていない.現行の組

成と特性がこの磁石系の到達点となるであろう.

217SmCo 磁石の保磁力機構は磁壁ピンニングモデ

ルで未だ十分に理解されているとは言えず,R(CoCu)5 系を

含めた保磁力機構の本質的理解が望まれる.

217SmCo 磁石は熱安定性や耐食性に優れ,保磁力

機構やヒステリシス曲線の挙動も NdFeB 磁石とは異なるた

め,その特徴を活かした使用方法が今後も提案されるであろ

う.

アトムプローブのデータを使用させていただいた宝野和博

教授(独物質材料研究機構・つくば大学),TEM のデータを

使用させていただいた進藤教授(東北大学),217SmCo 磁

石を共に開発させてもらった俵好夫氏に感謝します.

文 献

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