scj第 21 期230915-21910000-004国際協力のあり方検討委員会 標題...

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記 録 文書番号 SCJ第 21 期 230915-21910000-004 委員会等名 日本学術会議自然災害軽減のための 国際協力のあり方検討委員会 標題 「自然災害軽減のための国際協力のあり方」 - 中間報告(記録)- 作成日 平成23年(2011年)9月15日 ※ 本資料は、日本学術会議会則第二条に定める意思の表出ではない。掲載されたデータ 等には、確認を要するものが含まれる可能性がある。

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記 録

文書番号 SCJ第 21期 230915-21910000-004

委員会等名 日本学術会議自然災害軽減のための

国際協力のあり方検討委員会

標題 「自然災害軽減のための国際協力のあり方」

- 中間報告(記録)-

作成日 平成23年(2011年)9月15日

※ 本資料は、日本学術会議会則第二条に定める意思の表出ではない。掲載されたデータ

等には、確認を要するものが含まれる可能性がある。

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序 文

世界的に自然災害が多発している。多様で深刻な数々の災害を乗り越え、経済発展を成

し遂げた日本に対する期待は、アジアを中心に極めて高い。この期待に応えることを、わ

が国の国際支援の基本に位置付けなければならない。防災分野の国際支援は、社会、経済、

農業、環境、科学技術、教育等の活動とシームレスに関連しており、密接な連携が不可欠

である。しかしながら、これまで防災分野の支援は、関連省庁、JICA、公的研究機関、大

学および NPO 等の各機関により個別に行われて来ているが、国全体としての国際支援戦略

が明確に示されていないため、効果的な成果を挙げてきたとは言い難い状況である。

日本学術会議が 2010 年5月に設置した課題別委員会「自然災害軽減のための国際協力

のあり方検討委員会」では、防災分野の国際協力に関わる基本戦略、分野横断による自然

災害軽減と被災地支援のあり方、人材育成と防災のための国際ネットワーク形成の方策、

および国際機関・国際プログラム間の連携のあり方、を主要な審議事項とし、審議結果を

踏まえ政策提言、国際社会への宣言をまとめ、発信することを目指し、「自然災害軽減のた

めの国際協力のあり方検討委員会」提言(素案)を 2011年2月に取りまとめた。

2011年3月 11日、東日本大震災が発災した。2011年7月の段階で、津波等被災地域の

復旧・復興活動が開始されているとはいえ、未だ緒についたばかりであり、また福島原子

力発電所原子炉の低温停止による安全確保にはなお時間を要するものと考えられる。この

ような状況で、わが国の防災分野の国際協力に関する提言を当初の予定通りにとりまとめ、

社会に発信することは時期尚早と考えられる。東日本大震災の全容が明らかにされ、震災

の総括が行われた段階で、それをもとに防災分野でのわが国の国際協力を改めて検討しな

おす必要がある。一方、本課題別委員会の設置期間は日本学術会議の第 21期が終了する9

月末日までであり、東日本大震災を踏まえた十分な検討を行うことは難しい。このため、

上記「自然災害軽減のための国際協力のあり方検討委員会」提言(素案)を記録として残

し、第 22期(2011年 10月~2014年9月)へ引き継ぐこととした。

東日本大震災はわが国にとって極めて深刻な災害であり、その影響は長く続くものと考

えられるが、この苦難を乗り越え、今回の数々の教訓をもとに世界の自然災害の軽減にわ

が国が主要な役割を果たす時期が必ず来るものと考える。その一助となることを期待し、

本課題委員会の審議内容を記録として上梓するものである。

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i

日本学術会議自然災害軽減のための国際協力のあり方検討委員会

委員長 濱田 政則 (第三部会員) 早稲田大学理工学術院社会環境工学科教授

副委員長 小松 利光 (連携会員) 九州大学大学院工学研究院教授

幹 事 市村 強 (特任連携会員) 東京大学地震研究所准教授

幹 事 塚原 健一 (特任連携会員) 国立大学法人九州大学大学院工学研究院環境

都市部門教授

直井 優 (第一部会員) 大阪大学名誉教授

南 裕子 (第二部会員) 高知県立大学学長

池田 駿介 (第三部会員) 建設技術研究所池田研究室長

浅岡 顕 (連携会員) (財)地震予知総合研究振興会副首席主任研究員

今村 文彦 (連携会員) 東北大学大学院工学研究科附属災害制御研究

センター教授

大町 達夫 (連携会員) (財)ダム技術センター理事長・東京工業大学

名誉教授

小谷 俊介 (連携会員) 東京大学名誉教授

川島 一彦 (連携会員) 東京工業大学教授

佐竹 健治 (連携会員) 東京大学地震研究所地震火山情報センター教授

寶 馨 (連携会員) 京都大学防災研究所教授

竹内 邦良 (連携会員) (独)土木研究所水災害リスクマネジメント国際センタ

ー(ICHARM)センター長・山梨大学名誉教授

田村 幸雄 (連携会員) 東京工芸大学工学部教授

春山 成子 (連携会員) 三重大学大学院生物資源学研究科教授

福和 伸夫 (連携会員) 名古屋大学大学院環境学研究科都市環境学専攻教授

和田 章 (連携会員) 東京工業大学教授

是澤 優 (特任連携会員) アジア防災センター所長

佐々 恭二 (特任連携会員) 特定非営利活動法人アイシーエル(国際斜面災害研究機

構)理事長

中埜 良昭 (特任連携会員) 東京大学生産技術研究所教授

中邨 章 (特任連携会員) 明治大学名誉教授・地方公務員安全衛生推進協議会理事

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ii

林 勲男 (特任連携会員) 大学共同利用機関法人人間文化研究機構・国立

民族学博物館准教授

林 春男 (特任連携会員) 京都大学防災研究所巨大災害研究センター教授

防災分野の国際協力に関わる基本戦略分科会

委員長 池田 駿介 (第三部会員) 建設技術研究所池田研究室長

副委員長 浅岡 顕 (連携会員) (財)地震予知総合研究振興会副首席主任研究員

幹 事 市村 強 (特任連携会員) 東京大学地震研究所准教授

幹 事 塚原 健一 (特任連携会員) 国立大学法人九州大学大学院工学研究院環境

都市部門教授

直井 優 (第一部会員) 大阪大学名誉教授

南 裕子 (第二部会員) 高知県立大学学長

濱田 政則 (第三部会員) 早稲田大学理工学術院社会環境工学科教授

今村 文彦 (連携会員) 東北大学大学院工学研究科附属災害制御研究

センター教授

沖村 孝 (連携会員) 神戸大学名誉教授

小松 利光 (連携会員) 九州大学大学院工学研究院教授

中邨 章 (特任連携会員) 明治大学名誉教授・地方公務員安全衛生推進協議会理事

林 勲男 (特任連携会員) 大学共同利用機関法人人間文化研究機構・国立民族学博

物館准教授

林 春男 (特任連携会員) 京都大学防災研究所巨大災害研究センター教授

防災分野の国際協力に関わる基本戦略分科会 政策検討小委員会

池田 駿介 (第三部会員) 建設技術研究所池田研究室長

岡田 義光 (連携会員) 独立行政法人防災科学技術研究所理事長

池内 幸司 国土交通省河川局河川計画課長

石井 弓夫 (株)建設技術研究所相談役

江島 真也 (独)国際協力機構 地球環境部長

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iii

河原 節子 外務省国際協力局緊急・人道支援課長

五道 仁実 国土交通省河川局情報企画室長

斉藤 大樹 (独)建築研究所 国際地震工学センター上席

研究員

鷺坂 長美 環境省水・大気環境局長

斎藤 雅一 防衛省運用企画局国際協力課長

重川 希志依 富士常葉大学環境防災学部教授

鈴木 光一 特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム事務局

鈴木 良典 文部科学省研究開発局地震・防災研究課長

田中 茂信 (独)土木研究所水災害リスクマネジメント国際センタ

ーグループ長

永井 智哉 内閣府政策統括官(防災担当)付参事官(災害予防担当)

朴 恵淑 三重大学人文学部教授

藤原 直樹 (株)建設技術研究所東京本社水システム部長

古川 信雄 (独)建築研究所研究専門役

望月 常好 公益社団法人日本河川協会専務理事

吉倉 廣 国立感染症研究所名誉所員

技術協力・被災地支援分科会

委員長 和田 章 (連携会員) 東京工業大学教授

幹 事 千木良 雅弘 (連携会員) 京都大学防災研究所教授

今村 文彦 (連携会員) 東北大学大学院工学研究科附属災害制御研究

センター教授

入倉 孝次郎(連携会員) 京都大学名誉教授・愛知工業大学

客員教授

川島 一彦 (連携会員) 東京工業大学教授

小松 利光 (連携会員) 九州大学大学院工学研究院教授

田村 幸雄 (連携会員) 東京工芸大学工学部教授

福和 伸夫 (連携会員) 名古屋大学大学院環境学研究科都市環境学専攻教授

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人材育成・国際ネットワーク分科会

委員長 中埜 良昭 (特任連携会員) 東京大学生産技術研究所教授

幹 事 斉藤 大樹 (特任連携会員) (独)建築研究所国際地震工学センター上席研究員

今村 文彦 (連携会員) 東北大学大学院工学研究科附属災害制御研究センター

教授

大町 達夫 (連携会員) (財)ダム技術センター理事長・東京工業大学名誉教授

小谷 俊介 (連携会員) 東京大学名誉教授

田村 幸雄 (連携会員) 東京工芸大学工学部教授

田中 茂信 (特任連携会員) (独)土木研究所水災害リスクマネジメント国際センタ

ー水災害研究グループ長

国際プログラム連携分科会

委員長 竹内 邦良 (連携会員) (独)土木研究所水災害リスクマネジメント国際センタ

ー(ICHARM)センター長・山梨大学名誉教授

副委員長 林 春男 (特任連携会員) 京都大学防災研究所巨大災害研究センター教授

幹 事 是澤 優 (特任連携会員) アジア防災センター所長

幹 事 佐竹 健治 (連携会員) 東京大学地震研究所地震火山情報センター教授

小松 利光 (連携会員) 九州大学大学院工学研究院教授

寶 馨 (連携会員) 京都大学防災研究所教授

春山 成子 (連携会員) 三重大学大学院生物資源学研究科教授

佐々 恭二 (特任連携会員) 特定非営利活動法人アイシーエル(国際斜面災害研究機

構)理事長

石井 弓夫 (株)建設技術研究所相談役

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要 旨

1986 年からの統計によれば、この四半世紀で 1000 人以上の犠牲者を出した自然災害は

世界で 60回発生し、約 120万もの生命が失われている。地球規模での気候変動に起因して

いると考えられる巨大暴風雤、異常気象などのハザードの増大とハザードに対する人間社

会構造の脆弱化が相まって自然災害が世界で特にアジア地域で急激に増大している。持続

可能な人類社会を構築し、安全で安心な平和世界を創生するためには、科学者のみならず

世界の人々が強い絆と友愛のもとに自然災害の軽減に取り組まなければならない。

古来より地震や風水害などの自然災害に見舞われながら、安全な国土を形成するために

先人たちがたゆまない努力を続け、様々な知見と技術を蓄積したわが国は、世界の自然災

害を軽減するために国際社会において主導的な役割を果さなければならない。そのことが

世界においてわが国が「真に尊敬される国」になる道へつながるものと考えられる。

日本学術会議は 2010 年5月に課題別委員会「自然災害軽減のための国際協力のあり方

検討委員会」を組織し、防災分野でのわが国の国際協力の基本戦略、技術協力と被災地支

援のあり方、国際協力のための人材育成への取組と人的ネットワークの整備の方策、およ

び国際機関と国際プログラムへのわが国の参画のあり方、について審議を行った。それぞ

れの課題に対する委員会の審議結果の要旨は以下の通りである。

(1) 防災分野における国際協力の基本戦略

国際社会において、尊敬される国として名誉ある地位を築くことは、ソフトパワーを発

揮するための重要な政策として先進諸国において広く認識されつつある。わが国が戦後一

貫して取り続けたこのような政策は、世界の平和構築に貢献するとともに、翻ってわが国

自身の安全保障にも多いに貢献して来た。

防災分野の国際協力では、災害の予防対策、救急対応および復旧・復興対策にいたるま

での一貫した切れ目のない支援が重要である。しかし、それぞれの段階における担当機関・

団体の意思決定や実施プロセスに十分な連携がとられておらず、統合性のとれた国際協力

になっていない。

以上の現状を踏まえ、わが国の防災分野の国際協力の基本戦略として以下の事項を提言

する。

1) 世界の自然災害軽減に貢献することをわが国の国際協力の中核とし、政府・自治体、

産業界、学界、NGO等の連携のもとにこれを推進する。防災分野の国際協力に関わる

広範な機関・団体が参加した「自然災害軽減国際戦略協議会(仮称)」を創設し、わ

が国の国際協力の連携化を進め、統合化を進める。

2) 兵庫行動枠組(HFA)に見られるような防災分野の国際的枠組をわが国がさらに主導

的に策定し、それに沿った国際協力プログラムを推進する。

3) 相手国の宗教、文化、歴史、民生、社会制度、自然環境、地理、災害の特性、防災技

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術と知見の実状を考慮し、相手目線での国際協力を展開する。

4) 防災のための技術協力、防災基盤施設整備への協力のみならず、社会、経済、制度、

農業、環境、教育など多分野の有機的連携のもとに国際協力を展開する。

5) 適切かつ十分な社会への情報発信により、防災分野の国際協力への公的資金と人材の

投入について、国民の理解を得、合意形成を図る。

6) 防災分野の国際協力に関するわが国の基本姿勢と基本方針を国際社会と国際機関に

発信する。

(2) 災害予防協力と被災地支援

わが国は、世界で自然災害が発生する度に、緊急支援団を派遣し、被災民の保護・医療

に貢献するとともに、被災地の復旧・復興にも大きく寄与して来た。また、学協会、大学

等は災害予防のための国際共同研究の推進および国内外の若手人材の育成に貢献して来た。

これらのわが国の活動は国際的にも大きな評価を受けており、また、自然災害軽減のため

のわが国の貢献に対する、世界の災害多発国、特にアジア諸国からの期待は極めて高い。

これらの災害予防協力と被災地支援をより実効性の高いものとするため、以下の事項を提

言する。

1) 自然災害の予防、発災後の緊急支援および復旧・復興支援を、連携性、継続性かつ一

貫性のあるものとするため、官・学・産・民の参加による「災害予防協力と被災地支

援のための統合プラットフォーム」を設置し、防災分野の支援のための情報の共有化

と各団体・機関の役割の明確化を図る。

2) 被災地の状況を一早く正確に把握し、より効果的な支援方策を策定して速やかな支援

を始動させるため、平常時からの相手国の災害のリスクと特性および防災体制等に関

するデータベースを「統合プラットフォーム」で構築し共有する。

3) 災害軽減のための技術支援および被災者救援のみならず、地域社会の災害レジリエン

スの強化、社会制度の整備など相手国の災害軽減能力、緊急対応能力の向上に資する

国際協力を展開する。

4) わが国での災害経験、国際協力の実績さらに先進的防災技術を活用して、国際機関と

国際プログラムによる災害予防活動と被災地支援を主導し、国際社会で主要な役割を

果す。

5) 災害予防と被災地支援のためのツールを整備(自然災害軽減のため技術・指針・知見

の英文化および現地語化等)するとともに、効果的な被災地支援のため、相手国政府

から地域社会に及ぶ人的ネットワークを整備し共有化する。

(3) 人材育成と人材ネットワークの形成

わが国は、大学、研究機関、企業を中心に、防災分野の国際協力の主要な柱として人材

育成を行って来ており、これらの人材の多くはそれぞれの出身国において主要な役割を担

って来ている。これらの国内外の人材育成をさらに促進し、自然災害軽減のための世界的

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人材ネットワークを構築するため、以下の事項を提言する。

1) 防災分野の人材育成に関し、政府・自治体、大学、研究機関および NGO等の関係機関

間の連携を図るため、「人材育成統合プラットフォーム」を設置する。

2) 国際機関と国際プログラムにおいて、災害予防から緊急対応、復旧・復興に至る自然

災害軽減のための基本戦略の策定、国際プログラムの推進に主導的役割を果たす国内

外の若手人材を育成する。

3) 災害軽減のための技術と知見のみならず、政策、財政、社会制度等にわたる広分野に

精通した国内外の人材を育成するとともに、効果的な国際協力推進のため国内外の人

材データバンクを整備する。

4) 海外からの研修生、卒業生の人材ネットワークの構築および帰国後の継続学習とフォ

ローアップを支援する体制、ツールを整備する。

(4) 国際プログラムへの対応

わが国は自然災害の軽減を目的として国際機関および国際プログラムにこれまでも積

極的に参画し、主要な役割を果すとともに、相応の財政的負担を担って来た。特に、わが

国が主導した「兵庫行動枠組」は世界レベルでの政策、戦略に貢献し、評価を受けて来て

いる。一方、様々な国際機関により多数の国際プログラムが提案、実行されている。わが

国としてすべてに十分な対応をとることは限られた資金、人的資源から見て不可能であり、

また不要でもある。また、防災分野の国際共同研究は大学、公的研究機関、民間等により

推進されて来ているが、必ずしも統合性、一貫性のとれた状況にはない。わが国が参画す

べき国際プログラムの選択とその運営への積極的参画、および国際共同研究の効果的推進

のため以下の事項を提言する。

1) 防災分野の国際協力の基本戦略に沿った国際プログラム推進のため、政府・自治体、

大学、研究機関、産業、NGO等による「国際プログラムへの対応のための統合プラッ

トフォーム」を創設する。

2) 国際協力の基本戦略に沿い、かつ分野横断の学際的な防災分野の国際研究を推進する

ための「国際共同研究中核拠点」を創設する。

3) 国際機関と国際プログラムにおいて中核的役割を担い得るわが国の人材への支援と

支援のための社会的枠組を整備する。

4) 自然災害が集中しているアジア地域のモデル都市を対象とした「国際モデル都市災害

リスク軽減実践研究」を、政府・自治体、大学、研究機関、産業、NPO等の協働のも

と、理学、工学、人文科学、情報科学、医療分野等の学際的連携で推進する。

「自然災害軽減国際戦略協議会」、「災害予防と被災地支援のための統合プラットフォー

ム」、「人材育成統合プラットフォーム」、「国際プログラムへの対応のための統合プラット

フォーム」および「国際共同研究中核拠点」を以下の図のような枠組で創設することを提

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viii

言する。

災害予防協力と被災地支援

のための統合プラットフォ

ーム(仮称)

人材育成統合

プラットフォーム(仮称)

国際プログラム対応のため

の統合プラット

フォーム(仮称)

・災害予防と被災地支援に関

わる情報の共有化、国際協

力における役割分担の明確

・災害多発地域の災害リスク

等に関するデータベースの

構築と共有

・災害予防と被災地支援のた

めのツールの整備と共有

・防災に関わる広分野に精通

し、国際的活動を主導する

国内外の人材の育成

・国内外の人材データベース

と人材ネットワークの構築

共有

・継続教育のための体制・組

織・ツールの整備

・国際プログラムの策定と推

・国際機関・国際プログラム

の選定と適正な資金・人材

の投入

・「国際共同研究中核拠点」に

おける共同研究の策定と推

・国際モデル都市災害リスク

軽減実践研究の推進

・自然災害軽減のための国際戦略の策定

・国際的行動枠組の策定と主導

・多分野、多機関・団体の有機的連携

・社会への発信と国民の合意形成

自然災害軽減国際戦略協議会(仮称) 国際機関・

国際プログラム

連携

図 自然災害軽減国際戦略協議会の組織と役割

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目 次

1 序論 ...................................................................... 1

2 国際協力の現状と課題 ...................................................... 2

(1) 国際協力の基本戦略に関する現状と課題 .................................. 2

① 基本認識 .............................................................. 2

② 統合的国際協力と関係機関の連携 ........................................ 2

③ 組織・人材・資金の現状 ................................................ 3

④ 効果の評価と国民の合意形成 ............................................ 3

(2) 自然災害軽減のための技術協力と被災地支援 ............................... 3

① 基本認識 .............................................................. 3

② 統合的技術協力と被災地支援 ............................................ 4

③ 組織・人材・資金の現状 ................................................ 4

④ 効果の評価と国民の合意形成 ............................................ 5

(3) 自然災害軽減のための人材育成と人的ネットワークの構築 ................... 5

① 基本認識 .............................................................. 5

② 支援の現状と課題 ...................................................... 6

(4) 自然災害軽減のための国際プログラム ..................................... 6

① 基本認識 .............................................................. 6

② 戦略的国際プログラム対応の欠如 ........................................ 7

③ 国際プログラム推進のための人材の不足 .................................. 7

3 解決のための方策 .......................................................... 9

(1) 基本戦略 ............................................................... 9

① ハード・ソフト施策のバランスのとれた協力 .............................. 9

② 国際標準作成の主導と国際社会への発信 ................................. 10

③ 継続的な人的交流による信頼関係の構築 ................................. 10

④ 国民の合意形成のための広報 ........................................... 10

⑤ 継続的な支援活動が可能な仕組みの構築と適正な資金配分 ................. 10

(2) 災害予防協力と被災地支援 .............................................. 11

① 災害予防協力と被災地支援のための統合プラットフォームの構築 ........... 11

② 自然災害とその特性等に関するデータベースの構築と活用 ................. 11

③ 相手国の災害予防能力、緊急対応能力の向上に資する国際協力の展開 ....... 11

④ わが国の災害経験と防災技術を生かした被災地支援と災害予防協力の主導 ... 12

(3) 人材育成と人材ネットワークの形成 ...................................... 12

① 防災分野の国際協力を主導する人材育成と教育組織の創設 ................. 12

② 相手国における人材の育成 ............................................. 12

③ 海外の人材育成のための教育プログラムとフォローアップ ................. 13

④ 人的ネットワークの整備と維持 ......................................... 14

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(4) 国際プログラムへの対応 ................................................ 15

① 国際プログラム対応のための統合プラットフォームの構築 ................. 16

② 戦略的・学際的な国際研究を推進する中核拠点の形成 ..................... 16

③ 基本戦略に対応した国際プログラムへの重点的参画 ....................... 16

④ 主要な国際プログラムの選択と戦略的資金投入 ........................... 17

⑤ 兵庫行動枠組 2005~2015の推進と 2015年以降の国際的枠組の策定 ......... 17

⑥ 国際プログラムへの積極的参画を促す組織的・制度的条件整備 ............. 17

⑦ 国際モデル都市災害リスク軽減統合実践研究の開始 ....................... 18

4 提言 ..................................................................... 19

<参考文献> ................................................................. 20

<参考資料> 自然災害軽減のための国際協力のあり方検討委員会・分科会審議経過 . 23

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1

1 序論

地球規模で地震・津波災害や風水害など自然災害が増大している。1986年からの過去四

半世紀間の統計によれば、1000 人以上の犠牲者を出した自然災害は世界全体で 60 回発生

し、約 120万もの生命が失われている。

地球規模での気候変動に起因していると考えられる巨大暴風雤、異常気象などハザード

の増大とハザードに対する人間社会構造の脆弱化が相まって世界的に、特にアジア地域に

おいて自然災害が増大している。持続可能な人類社会を構築し、安全で安心な平和世界を

創生するためには、科学者のみならず世界の人々が強い絆と友愛のもとに自然災害の軽減

に取り組まなければならない。

古来より地震や風水害などの自然災害に見舞われながら、安全な国土を形成するために

先人たちがたゆまない努力を続け、様々な知見と技術を蓄積したわが国は、世界の自然災

害を軽減するために国際的に主導的な役割を果たさなければならない。そのことが世界に

おいて「真に尊敬される国」づくりにつながると考えられる。

日本学術会議は、自然災害の軽減に関し、わが国がとるべき政策・施策に関し、勧告「大

都市における地震災害時の安全の確保について」(2005年4月)、答申「地球規模の自然災

害の増大に対する安全・安心社会の構築」(2007年5月)、および提言「地球環境の変化に

伴う水災害への適応」(2008 年6月)等を社会に表出してきており、国内外の自然災害軽

減のための政策・施策の提言を主要な社会的役割の一つとして取り組んできている。

アジア地域等の開発途上国を中心に、自然災害軽減に関し、わが国に寄せる期待は極め

て高く、このため、日本政府、自治体、研究機関、大学、産業界および NGOが自然災害分

野での国際協力に取り組んできており、自然災害の軽減に関する一定の効果と国際社会に

おける評価を得てきている。

しかしながら、防災分野の国際協力では、災害の予防対策、緊急対応および復旧・復興

対策にいたるまでの一貫した切れ目のない支援が重要であるが、それぞれの段階における

担当機関・団体の意思決定や実施プロセスに十分な連携がとられておらず、統合性のとれ

た国際協力になっていないのが現状である。

このため、日本学術会議は、会員、連携会員のみならず、政府、大学、研究機関および

NGO等から防災分野の国際協力に関わる関係者の参画を得て、2010年5月に課題別委員会

「自然災害軽減のための国際協力のあり方検討委員会」を組織し、わが国の国際協力の基

本戦略、技術協力と被災地支援のあり方、国際協力のための人材育成への取組と人的ネッ

トワークの整備の方策、および国際機関と国際プログラムへのわが国の参画のあり方につ

いて審議を行った。これらの審議成果を踏まえ提言「自然災害軽減のための国際協力のあ

り方」をまとめた。

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2

2 国際協力の現状と課題

(1) 国際協力の基本戦略に関する現状と課題

① 基本認識

国際社会において、尊敬される国として名誉ある地位を築くことは、ソフトパワー

を発揮するための重要な政策として先進諸国において広く認識されつつある。わが国

が戦後一貫して取り続けたこのような政策は、世界の平和構築に貢献するとともに、

翻ってわが国自身の安全保障にも大いに貢献してきた。古来より地震や水害などの自

然災害に見舞われながら、安全な国土を形成するために先人たちがたゆまない努力を

続け、様々な知見・技術を蓄積して来たわが国への自然災害多発国、特にアジア諸国か

らの期待は極めて高く、防災分野での貢献をわが国の国際協力の中核とすべきである。

このように、わが国の防災分野の国際協力の目的は明確であるものの、国際協力に

携わる組織が有機的に機能しているか、人的資源が十分であるか、防災分野の国際協

力が国家戦略として重要であることの認識が国民に広く共有されているか、さらに効

果的な国際協力が行われているか、などについては、以下に述べる課題がある。

② 統合的国際協力と関係機関の連携

大規模自然災害発生後の国際協力では、被災直後の人命救助のような緊急対応だけ

でなく、復旧・復興、さらには将来に向けた防災・減災対策にいたるまで切れ目のな

い対応が必要である。しかし、これらそれぞれについて国際協力の意思決定や実施プ

ロセスが異なっており、担当機関間において必ずしも十分な連携が取れていない状況

が見受けられ、連携強化の必要がある[1]。

特に復旧期(発生から数ヶ月以降)の段階においては、これまでわが国の国際協力

では経験や知識の蓄積が十分でなく、課題となっている[2]。また、応急対応から予防

まで総合的な支援を実現するためには相手国政府関係者だけでなく、支援を受ける住

民や地域組織を幅広く巻き込んだ統合的な視野に立った支援が必要であるが、従来は

そのような事例は例外的であった[3]。

しかしながら、2004年インド洋津波災害時の国際協力においては、これらの課題の

解決が試行的に行われており、この経験を踏まえて、統合的国際協力を実施していく

必要がある。

これまでのわが国の防災分野での協力では、わが国の先進的な技術による防災基盤

施設整備に重点が置かれていたが、被支援国側がそれを維持管理し活用できていない

事例が多く見られた。相手国の防災力向上のためには、社会基盤施設や建築物等を対

象としたハード対策支援のみならず、政府や地域社会の災害対応能力の改善に対する

支援も重要である。そのためには、相手国の文化、歴史等を踏まえた協力が重要であ

る[4]。わが国は防災対策に関する研究成果や技術の蓄積を十分に有しており、それら

を有効に活用しつつ相手国の状況に応じて国際協力の質的向上を図る必要がある。

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3

③ 組織・人材・資金の現状

政府開発援助においては、わが国は資金協力や国際機関への拠出等で 2004~2008

年の5年間で約 4,300億円の援助を行い、国際的にも最高水準の協力を行って来た[5]。

一方、防災分野の国際協力では、社会、経済、農業、環境、科学技術、教育等の活動

が有機的に機能しなければ十分な効果が発揮できない。しかしながら現状ではそれぞ

れの分野で所管府省、関係法令が異なることもあり、連携の取れた適切な対応がなさ

れているとは言いがたい状況にある[6]。

また、組織的対応の不備だけでなく、わが国には国際協力のための中核的人材が不

足しており、十分な国際的存在感を示すことができていない[7]。大規模自然災害に対

する国際協力はわが国だけでなく、多くの国際機関や関係国との協力調整のなかで実

施されるものであり、そのなかでリーダーシップを発揮できる人材が必要である。

大規模災害発生の際には、国際機関が合同して復旧・復興支援の最上流としてニー

ズアセスメント調査が実施されるが、これまでの大規模災害において、このニーズア

セスメント調査への日本の参加は活発ではなかった。2010年のハイチ大地震の際には、

国際協力機構がニーズアセスメント調査に人材を派遣したが、事例としては未だ不十

分であり、人材確保とともに派遣について今後更なる体制つくりの努力が必要である。

④ 効果の評価と国民の合意形成

近年の世界的な自然災害の増大から、防災分野の国際協力の必要性はますます高ま

ることが予想される。一方、政治や国民の意識が全体として内向き指向となりつつあ

り、海外での出来事や国際貢献そのものへの関心と支持が低下している状況が生まれ

ており、国際協力そのものに対する国民の共感が低下している。このため、外務省で

は 2010年にわが国の国際協力の理念「開かれた国益の増進-世界の人々とともに生き、

平和と繁栄をつくる-」を提示し、官民の人、知恵、資金、技術を結集したオールジ

ャパンの体制で国際協力にあたる必要性を提言している[8]。

防災分野での国際協力においてもその必要性について国民の合意形成を図ってい

くためには、国際協力による効果を正しく評価しつつ、日本国民及び相手国の国民に

対しても広くアピールしていく努力が求められる。

(2) 自然災害軽減のための技術協力と被災地支援

① 基本認識

わが国は、引き続く世界の大災害に対し、常に緊急支援を実施し、被災国の国民の

保護・医療、災害からの復旧・復興に貢献してきた。また、学協会・大学等は学術的

な立場から、長期的な災害防止をも視野に入れた国際共同研究を実施してきている。

このような経験に照らして、技術協力と被災地支援にあたっては、災害予防、緊急支

援、復旧・復興支援を時系列で継続的に進め、相手国の国情、歴史、文化、資源等に

適合した協力、教育、技術移転によって、相手国の防災力向上につながる支援を目的

とすることが必要である。また、国際的に過不足のない支援を実施するために、長期

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4

的・国際的支援の体系化をはかることも重要である。

上述のように、わが国は被災国に対して多くの支援を行ってきており、それは高く

評価されているが、これらの被災地支援をより実動性の高いものとするためには、そ

の効果的な実施にあたっては、以下のような課題がある。

② 統合的技術協力と被災地支援

わが国では、技術協力や被災地支援にあたって、各省庁、NPO、大学などが個別に

活動している傾向がある。そのために、全体としての効果が低減し、また、予防、応

急対応、復旧・復興の時系列的・総合的対応が不足している。

支援がわが国の水準や状況から妥当であっても、必ずしも現地の状況、つまり現地

の災害特性、現地の文化、社会制度、および現存技術に即していない場合があり[9]、

このことは、支援が単発的・短期的になって、長期的な防災力向上につながらないこ

との一因になっている。このために、水準の高い防災基盤施設が建設されても、時間

とともに利用されなくなる場合がある。また、土木構造物、建築構造物などが被災し

た場合、第一に緊急被災地支援における危険度判定、原因究明や復旧・復興の支援が

実施されるが、この支援が現地の状況に即していなければ、効果的な防災力向上に結

びつくことは難しい[10,11]。一例を挙げれば、Non-Engineered 構造物の耐震性は最

も取り残されている課題の一つであり、現地の様々な状況を勘案の上、我国でも早急

に進める必要がある。

技術協力や被災地支援にあたっては、インフラストラクチャ、ライフライン、建築

物などハード面での技術支援が重要視され、情報システム、予報、避難指示、医療、

メンタルケアーなどのソフト面の支援が不十分である場合があるが、防災力向上のた

めには、ハードとソフトのバランスのとれた支援が不可欠である。

途上国では、都市化に伴う脆弱性の増加が、災害リスクの増加をもたらしている場

合が多いが、一方で、災害後の緊急支援は一時的で、このような脆弱性を克服すると

ころまでの支援になりにくい。真に相手国の防災力向上に資するためには、開発に係

る制度等に、脆弱性の増加防止の観点を組み込むことが重要であり[12]、そのために

は、リスク評価技術や制度設計等の支援が重要となる。その支援にあたっては、社会

基盤制度・整備などの国際協力や、災害リスクを考慮した国際プログラムのとの連携

が必要である。

被災地において技術協力や被災地支援を行う者に対するインセンティブの付与、向

上方策を確立していくことも、継続的な実施にとって重要な要素である。官・学によ

る支援だけでなく、企業ボランティアなど産による積極的な支援も重要で、産・官・

学が連携し支援の幅を広げていかなければならない。

③ 組織・人材・資金の現状

わが国では、各省庁、NPO、大学などの支援を統合する組織がなく、日本全体とし

て情報を共有して連携を強め、緊急支援を迅速化し、また、継続的支援活動を効果的

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5

にする仕組みが欠如している点が問題である。技術協力等を通じた人材育成について

も、学術、行政等の連携が十分とはいえず、日本が培った人材が、相手国の防災対策

の中枢を担うことはまだまだ尐ない。

国際連携についてみると、被災国には多くの国から支援団が派遣されるため、被災

地支援に当たって、国連などの機関との連携、各協力機関間の連携と情報共有化が必

要であるが、これが不十分であるために支援の効果が半減している。また、準備時間

が尐ない中で迅速な派遣が求められることから、国際的に過不足の無い支援団を構成

し派遣するのは難しい状態にある。

わが国は、JICA 等の国際協力や WMO、UNESCO、UNISDR、UNESCAP 等の国際機関のプ

ログラムと協力し、組織、人材、資金面からの技術支援を続けてきた。しかしながら、

結果として、災害被害軽減に向けた継続的な対策に必要な組織制度、人材や技術基準、

対策実施資金の確保が開発投資の後回しとなり、災害後の人道支援の繰り返しや災害

に強い社会インフラの復旧、地域作り等に長い期間と多大なコストを要することとな

っている。また、NPO等の活動資金は慢性的に不足している。

④ 効果の評価と国民の合意形成

わが国は多くの被災地支援と技術協力を実施してきたにもかかわらず、その効果が

あまり目に見えず、国内外から必ずしも高く評価されていない場合がある。また、被

災地支援と技術協力については、心情的には国民の合意を得られているように思われ

るものの、どの程度合意形成ができているかは明確ではない。被災地支援は、やはり

目に見え評価されることが重要である。緊急に第一陣を派遣し、その情報をもとにし

て第二陣を派遣するといった二段階支援が効果的と思われるが、第一陣の派遣が遅れ

る事態がしばしば発生している。迅速な緊急支援によってわが国の存在感を国内外に

アピールできれば国民の誇りにもつながってくる。日本の援助が目に見え、評価・感

謝されてくれば技術協力と被災地支援に対するインセンティブも高揚し、国民の支持

も強くなると思われる。なお、支援のために国費を使うのであるから国益につながる

ことを求める声もあるが、このような姿勢はかえって逆効果を生むことがあることを

念頭に置くべきである。

(3) 自然災害軽減のための人材育成と人的ネットワークの構築

① 基本認識

地球規模で発生する自然災害の軽減には、防災先進国相互のあるいはこれと潜在的

危険国や地域との協調による防災・減災研究とその実践が鍵となる。自然災害対策の

研究や実践に関する防災先進国であるわが国に対しては、その先進・先端技術、国内

外における災害とその復旧・復興・予防に関する経験・ノウハウに基づく支援が期待

されている。これらの情報を真に効果的・効率的に提供し技術移転を成功させるため

には、以下に示すような多様かつ広範囲の活動のための人材育成と人的ネットワーク

の構築が必須である。

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1) 突発災害時の緊急援助(医療、食糧、仮設住宅、テント、救援活動ボランティア

の組織、国際的な援助体制の組織と整備)

2) 災害発生後の応急復旧(心のケア、被災構造物の安全性の判定、応急補強の方法)

3) 恒久復興支援(災害に強い街づくり、災害を起こりにくくする防災対策)

4) 災害の予防(地震災害、台風災害、水災害、地盤変動、干ばつ、気候変動、突発

災害に対応する組織体制、互助のための社会体制などの整備、コミュニティの防

災力向上)

② 支援の現状と課題

上記の広範囲の活動を効果的に推進するためには、正しい科学的知識と技術のみな

らず、それぞれの国や地域の実情を理解する国際感覚と高度なコミュニケーション能

力を持った人材を国内外に育成すること、また発災前から発災後にわたり連続的かつ

迅速な国際連携を可能とする人的ネットワークを整備すること、が重要となる。

これらの重要性はこれまでも指摘されてきており、関係機関において独自に努力と

工夫がなされてきているが、その体系的かつ継続的な人材育成やネットワークの組織

化は十分とはいえず、戦略性を持った展開がなされてきたとは言い難いのが実情であ

る。そのため、以下の事項に取り組む必要がある。

1) 国際社会において先導的に活躍できる、わが国の特に次世代の若手人材育成

2) 技術だけでなく社会制度、文化、慣習等を考慮した実効的な支援を実践するため

に海外支援国において協力を求める人材の育成

3) その人材育成のための国際社会と連携した教育プログラムの整備とそのフォロ

ーアップ

4) より高度な連携と機動的な活動を可能とする、育成された人材のネットワーク整

備とその維持

(4) 自然災害軽減のための国際プログラム

① 基本認識

自然災害は国際協調を必要とするローカルな事象であり、その経験や知見、資源の

交換は、いずれの国や地域にとってもメリットのある、必要不可欠の課題である。加

えて、ここ四半世紀の顕著な自然災害の増加、激化に伴い、また国際交流の拡大に伴

い、災害分野の国際プログラムは重要性を増し、その数は増加し、内容は多様化し、

組織は多層化、ネットワーク化してきている。

そのような中で我が国は、絶え間なく見舞われる悲惨な自然災害を乗り越えて経済

発展を遂げた数尐ない国として、貴重な経験を活かすことが期待され、多くの国際プ

ログラムで重要な役割を果たしてきた。国際防災の十年(IDNDR)における横浜戦略、

国際防災戦略(ISDR)における兵庫行動枠組(HFA)などはその代表であり、これらを

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通じ我が国が世界に果たした貢献には高く評価されており、多くの国際プログラムで、

我が国は世界の注視と期待を受けて活動していると言える。そのためにわが国の人的

資源、資金が投入されてきた。

しかしながらこれまでの貢献は、科学技術と経済支援という本体部分はさておき、

国際戦略の企画や合意形成、ネットワーク作りという点からは決して十分なリーダー

シップを果たしてきたとは言えない。会場やロジの提供という点からの国際的プレゼ

ンスの確保に比べ、戦略、政策策定上のリーダーシップ、影響力の発揮は弱く、投入

に見合った実績が得られているとは言えない。以下に指摘する事項は、わが国の国際

プログラムへの貢献の質を高め、貴重な資源の投入効果を、今以上に有効で、国際的

期待に一層こたえるものとするために必要な、具体的課題である。

② 戦略的国際プログラム対応の欠如

防災部門の国際プログラムには、わが国の政府や機関が中心になって呼び掛けてい

るものを含めて、国連、学会、政府間、NGOを主体とするもの、その合成のものなど、

主体も性質も多岐にわたり、それらの関係を明確に把握し、フォローしている組織が

わが国には存在していない。

また、わが国の各機関・団体の対応は戦略性を欠き、関心のある個人や海外主催者

からの偶然の勧誘などに対応が左右されているところがある。また、プログラム相互

の協力体制が欠落する結果にもなっており、わが国の国際プログラムへの全体的投入

資源に比べ、貢献効果を過小なものにしている。特に研究と実践のパートナーシップ

には、諸外国に比べ、連携の欠落が著しい。

さらに、全体把握、戦略の欠如は、活動のための資金の確保面で特に顕著である。

申請されたプログラムは個別に審査され、個別の評価や判断で採否が決められ、全体

としてのわが国の国際貢献方針などには係わりなく、いわゆるメリットベースで決め

られている。このため、全体としては決して尐なくない資金が、総合力発揮に結びつ

いていない。

国際プログラム連携を通じて国際貢献を果たし、国際社会の尊敬と信頼を得るため

には、プログラム運営上、ロジスティクスよりサブスタンスでの貢献をする必要があ

るが、我が国の現状は依然ロジスティクス中心と言わざるを得ない。すなわち国際会

議などのイベントの場所の提供、運営支援、資材の提供などの貢献は大きいが、戦略

や政策の構想、企画、論理づけ、説得や根回しによる合意形成などでの貢献は欧米に

比べ著しく尐ない。国際学会の役員や、国際プログラムのプロジェクトオフィスが尐

ないのが、その直接の原因と言えるが、その背景である言葉の壁、人材不足を解決す

る施策、制度などが十分検討されていない。

③ 国際プログラム推進のための人材の不足

国際プログラムをリードできる人材の不足はより深刻な課題である。国際会議で、

オピニオンリーダーとして発言するためには、科学的知見や政策等に関する知見、国

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際的議論展開の経過の認識に加えて、発言を実行できる発言者ないしその組織のコミ

ットメントが必要であるが、このような人材が決定的に不足している。

人材不足の基本的原因は、言語の壁だけではなく、より本質的には日常の国内活動

と国際活動のかい離である。防災分野に携わる多くの人が世界と結びつきなしに仕事

をし、国際的プレゼンスの必要を感じていないことである。また必要性を感じても言

語の壁のため簡単には行動できない人も多く、できる人に仕事が集中してオーバーロ

ードになり十分な役割は果たせなくなる。また国際的に活躍できる人材の現在の活動

を支援する体制も弱体であり、中長期的にそうした人材を充実させるための人材育成

体制も不十分である。こうした第一線で活動する人材だけでなく、だれが、どのプロ

グラムを担当するのかの判断能力を持った経営的人材を育てる体制も弱体である。こ

うした状況が国全体として定常化し悪循環を生んでいると言える。

国内活動と国際活動のかい離を縮小するには、高等教育が重要である。小中学校か

らの英語教育だけではなく、大学・大学院における専門分野での英語による、発表、

意見交換の経験が必要である。このような機会は大学、職場での日常活動を通じて与

えられ、訓練されねばならないが、一部の活発な、また余裕のある機関を除いて、世

界水準からは大きく遅れている。

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3 解決のための方策

(1) 基本戦略

防災分野の国際貢献は、わが国の経済が従来ほどの活力を保てない状況下においても、

ソフトパワーの発揮のための重要な政策であり推進すべきであり、そのためには、国際

協力の目標や目的をより明確にすることが求められる。

防災分野での目的としては、2000年のミレニアム宣言にあるように「自然災害及び人

によってもたらされる災害の数とこれによる被害を削減する」ことである。すなわち、

緊急支援と予防軽減のあり方、確保すべき安全性のレベルの合理的な設定、などが重要

となる。

この中では、2005年1月に神戸で開催された国連防災世界会議(World Conference on

Disaster Reduction)においてわが国がリーダーシップを発揮して採択された、以後 10

年間の国際社会における防災活動の基本的指針となる「兵庫行動枠組」(HFA)を踏まえ

た国際協力が一つの具体的指針となる。この活動の中では、災害の分野、地震予知、水

災害予防、耐震建築、危機管理等、ごとに具体的にフォーカル・ポイントを決めるべき

である。

国際協力を強力に推進するためには、効率的な組織・協力に携わる有能な人材・適切

な資金が欠かせない。わが国では、それぞれの関係省庁がその枠組みの中で国際協力の

努力と実績を重ねてきた。上で述べたように、経済活力の低下と尐子化が同時進行する

わが国が、これまで同様あるいはそれ以上に防災分野において国際貢献を果たすには、

様々な関係機関の情報を収集・配信し、協働して効果的に活動を推進できるよう、官・

学・民が参加した「自然災害軽減国際戦略協議会(仮称)」のような中核的機関の設立

が不可欠である。

この中核的機関には、政府・自治体、産業界、学界、NPO 等が参画し、自然災害軽減

のための国際戦略の策定、国際的行動枠組みの策定と主導、多分野・他機関間の有機的

連携、社会への発信と国民の合意形成がその主要な役割となる。

これらの活動において、財政的措置の重要性は言うまでもない。わが国を取り巻く厳

しい国際状況の中で、災害軽減支援への国際協力を通して持続可能な平和世界構築に貢

献するため、国家的戦略の観点からの財政的措置が必要である。

以上述べた基本戦略を具現化するために、自然災害に対する予防、応急対応、復旧・

復興、というそれぞれの過程での統合的・継続的支援体制の構築や、国内活動がそのま

まスムーズに国際貢献につながる国内外のシームレスな国際協力が求められる。国際機

関との連携の強化が是非とも必要であり、この中では先述の中核機関はリーダーシップ

を発揮し、国際プログラムの企画・実施においてイニシアティブを取らなければならな

い。

以上のような政策・施策の実施に当たっては、以下の事項に特に留意する必要がある。

① ハード・ソフト施策のバランスのとれた協力

従来、わが国の国際支援は施設建設が中心のハード支援が多くを占めていた。この

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傾向は改善されつつあるものの、各国の実情に即した基準作り、計画、人材育成など

のソフト的施策とのバランスのよい支援が必要である。

② 国際標準作成の主導と国際社会への発信

わが国は、よいものは黙っていても認められるという誤解が、いまだに存在する場

合がある。先進諸外国、特にヨーロッパ諸国では、ISO に見られるように先ずルール

作りを重視する。例えば、わが国が精度よく測定したと思っている河川の流量測定で

も、国際標準に則らない測定方法でのデータは認められないことを認識すべきである。

主に国内に顔が向いていた行政の国際標準作成への積極的参加とリーダーシップの発

揮が重要である。

わが国は先進的な技術を有しているにも関わらず、その発信が十分にできていない。

救助、医療、復旧等において、わが国が果たすことのできる貢献の内容やこれまでの

経験・実績を明確化し、戦略的な広報戦略を策定して、効果的・継続的な情報発信を

行っていく必要がある。

③ 継続的な人的交流による信頼関係の構築

自然災害多発国との継続的な人的交流を推進し、信頼関係の構築を図る必要がある。

そのためには、課題解決を国際的に先導できる国内外の指導者の育成とそのための教

育組織の創設、被害発生国や地域における行政官、研究者、技術者、技能者、地域指

導者の育成、迅速かつ継続的な国際連携を可能とする人的ネットワークの整備と維持

が重要となる。

④ 国民の合意形成のための広報

国際協力を継続するには、その重要性に関する国民の理解増進のために戦略的な広

報を行う必要がある。国際協力が、わが国にとって国際社会で名誉ある地位を占め、

さらには国際的安全保障上重要な役割を果たすことを、政治家をはじめ国民に訴え続

けることが大切である。そのためには、多くの国民の賛同が得るため、支援の効果に

関する客観的評価指標が必要である。

また、支援を受ける相手国のガバナンス能力、災害に対するレジリエンス能力や自

助能力、などの向上についても効果の評価が必要である。

同時に、日本の技術をアジアなどの国々に広く展開していくためには、日本の技術

の英文化・現地語化等、国際協力のためのツール整備も不可欠である。

⑤ 継続的な支援活動が可能な仕組みの構築と適正な資金配分

わが国の政府・自治体、学協会、NPO 等の果たす役割を明確化し、効果的に連携す

るために、わが国全体として継続的な支援活動が可能な仕組み作りが必要である。国

の予算が厳しい中、容易なことではないが、資金、資金の配分などが適正でなければ

ならない。

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(2) 災害予防協力と被災地支援

① 災害予防協力と被災地支援のための統合プラットフォームの構築

従来、ややもするとわが国の協力・支援の効果を半減させていた支援の遅延や、一

過的な協力、連携・調整不足を解消し、被災地支援の即応性と、継続的かつ一貫性の

ある技術協力、国内外の組織の連携・調整を実現するために、統合プラットフォーム

の構築が必要である。このプラットフォームに、官・学・産・民が参加することによ

り、多面的な災害予防協力と被災地支援のための情報共有化と、各団体・機関の役割

の明確化が可能になる。

② 自然災害とその特性等に関するデータベースの構築と活用

被災地に対して速やかな支援を開始し、また、それを継続的な協力の枠組みに位置

付けて実施するために、相手国の災害特性、災害リスク、自然環境、防災体制等に関

するデータベースを「統合プラットフォーム」で構築し、共有する。さらに、相手国

のハザードについての研究を進め、その成果を相手国と共有する。これによって、し

ばしば大災害を引き起こす再現期間の長いハザードについても相手国の人々の注意

を喚起することが可能となる。また、過去に相手国の防災に関する技術協力や研究等

に関与した経験を有する人材の情報をデータベース化し、災害が発生した場合の技術

者派遣時など、人的資源の活用に資することも重要である。

これらのデータベースに基づいて、相手国の諸条件に応じた有効かつ迅速な国際協

力を実施するため、必要情報を含んだ支援カルテを予め作成しておき、迅速に必要事

項が取り出せる情報ストックや仕組を準備することが有効である。

③ 相手国の災害予防能力、緊急対応能力の向上に資する国際協力の展開

緊急支援においては、単なる物質の支援だけでなく、ハードウェア等の危険度判定

や損傷物の除去、仮設構造物の建設など、2次災害防止のための支援をいち早く行い、

また、そのノウハウを移転して、相手国の災害緊急対応能力向上に協力する必要があ

る。さらに、応急復旧にあたっては、再発防止をも考慮に入れて、相手国の災害予防

能力向上に資することが重要である。緊急対応や防災力の向上が継続的に進められる

ために、相手国の国状、国民の経済力、国内で調達できる材料、施工技術などに応じ

て、現地で安価に利用できる材料を用いて、現地の建物を耐震的にする技術の開発・

移転が必要である。耐風構造、土砂災害、洪水などについても同様の考え方による防

災技術の開発・移転が必要である。

相手国に根付く災害予防や緊急対応の能力向上のためには、国民一人一人の意識の

改善に協力する必要がある。そのためには、初等中等教育での防災教育が重要となる。

また、災害情報の収集・伝達や災害伝承の仕組み作り、防災のための体制作りへの協

力、被害判定技術者養成と判定マニュアル作りなど、ソフト面の整備への協力が重要

となる。その上で、開発や発展に応じた災害リスク軽減へのハード・ソフト一体とな

った取組の実施を支援していくことが重要である[13,14]。

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④ わが国の災害経験と防災技術を生かした被災地支援と災害予防協力の主導

わが国は世界が出会うであろうほぼすべての自然災害に遭遇し、これらに対処して

きた経験を有しており、緊急災害対応のノウハウとともに、防災のためのハードウェ

ア、社会システム、情報システム、警報システムなどの進んだソフトウェア技術があ

る。これらの技術輸出を考え、災害予防協力のリーダーシップを発揮すべきである。

途上国では、気象・水文情報等の観測体制が不十分であるとともに、確実な観測体

制を継続的に維持していくことには困難が伴う。海外の技術支援にあたっては、この

ような現状を十分に踏まえる必要がある。観測体制の構築の困難さを克服する手段と

して、わが国の有する先進的技術の海外導入の検討も必要と考えられる[15,16]。

(3) 人材育成と人材ネットワークの形成

① 防災分野の国際協力を主導する人材育成と教育組織の創設

わが国は自然災害軽減に関する研究、施策に関する世界的防災先進国であり、その

先進的・先端的研究成果、知見、経験、事例等を最大限に活用して、世界の自然災害

軽減に国際的に協力し貢献することが期待されている。この使命を今後も積極的・継

続的に果たしてゆくためには、被災国や地域に対する「緊急対応」「復旧・復興計画」

「防災対策・体制整備とその実施」に対する先導的な貢献を担うわが国の人材、特に

若手の人材を戦略的に育成・確保することが重要である。

国際的に活躍できる日本人指導者を育成するためには、語学の障害を越える必要が

ある。国内に留まらず海外で積極的に活躍できる人材をいかに育成するかが重要で、

そのためには、国際貢献に高い意識を持つとともに優れた資質・能力を有する学生、

若手研究者や技術者を対象とした継続的な海外留学・派遣支援制度や帰国後における

活躍の場の提供などの環境整備に加えて、国内においても優秀な留学生との混合教育

により、わが国および他国や地域の文化に対する理解や柔軟な対応を含む国際感覚の

涵養と高度な論理思考に基づく語学力やコミュニケーション能力を習得できる魅力あ

る教育プログラムを競争原理に基づき選定された中核拠点大学等に創設すること(e.g.

学科の新設等)が考えられる。

② 相手国における人材の育成

人材育成の対象は最先端研究・技術やそれを担う研究者、技術者のみではない。例

えば、地震に対して最も弱いアドベ造住宅は、高度教育機関を卒業した技術者によっ

て建設されるのではなく、建設の経験に基づき育まれた地域の技能者によって建設さ

れるのが通例である[17]。地震時にアドベ造住宅の崩壊を防ぐためには、行政が地震

に対する性能を向上させる補強技術の開発を助成し、建設を担う技能者に正しい技術

を提供し、正しい技術を習得した技能者のみに建設する資格を与えるなどの社会制度

の見直しが求められる。そのためには、現実に住宅を建設する技能者の教育と技術向

上、その指導・監督を担当する行政官に対する適切な教育が求められる。

またこれらのプログラムを強力に推進するためには、各国の閣僚レベル等の政策決

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13

定担当者を対象としたハイレベル会議の開催により、自然災害軽減の重要性に加え、

その実現に向けたトップダウンの施策により、技術的対応から政策・社会制度等に至

るまでそれぞれの分野を担当できるよう多様な人材を育成するとともにその具現化の

ための体制を整備することの重要性を啓発することが有効である。

大規模な自然災害発生後は、一時的にこの種の国際協力が活発となる傾向がこれま

で繰り返されてきている。しかしながら、途上国において災害が頻発する背景には貧

困や教育体制に起因する問題が内在しているため、支援各国が短期的あるいは一時的

協力では問題が解決しないことを理解し、被支援国や地域の自助努力を支援可能な教

育・啓発体制の長期的で継続的な対応を実現することが、実効的な人材育成に不可欠

である。自然災害の危険度の高い国々や地域においては以下の事項を実現可能となる。

1) 自然災害軽減に関する基礎的情報・研究成果の提供・利用

2) 自然災害軽減に有効な事前対策の立案、教育、普及とその継続的活動による防災

文化の醸成

3) 防災計画を実施する組織の設立と技術援助

4) 国際的な防災計画の立案と各国の実施状況の評価

③ 海外の人材育成のための教育プログラムとフォローアップ

わが国では、発展途上国の災害軽減に向けた海外の人材育成として以下のような研

修が行われている。

1) わが国に招へいし実施する長期または短期研修

2) わが国に招へいし実施する集団または個人研修

3) 相手国で行う地域研修

これらの研修では、最終の論文研究に重点が置かれその実施に必要な講義を選択的

に受講する一般的な大学における留学生教育とは異なり、主として国立あるいは独法

系研究機関が中心となり、大学等の教育・研究機関とも協力・連携しながら、比較的

研修テーマを絞った自然災害を対象にこれを理解するために必要となる広範なカリキ

ュラムを提供している[18,19]。しかしながら、わが国で行う研修は、受け入れ可能な

人数・期間とも限られるため、研修効果に限界があるのが実情である。そこで、個々

の知識の習得を目的とした通常の研修形態だけではなく、一部で既に試みが始められ

ているように、研修生が帰国後において自国の人材育成のための講師として従事でき

るような研修プログラムの提供[20]、また長期研修においては修士号などの学位取得

につながる教育プログラム・制度の整備による研修生へのインセンティブの提供[21]、

などわが国の研修プログラムに創意工夫を加えることが考えられる。一方、相手国で

行う研修においては、現地の人材育成機関(大学、研究機関等)と連携した技術移転・

協力が重要で、その実効的展開には人材育成のための海外拠点の形成と連携機関の整

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備が有効であろう。いずれの人材教育においても研修材料や技術資料の英語化、現地

語化などの地道な努力とそのための対応機関に対する経済的支援が必須である。

これらの研修はやり放しで終わるのではなく、フォローアップによる継続的な情報

提供・相談などを行い、さらに学ぶための機会・手段を与えることが重要である。フ

ォローアップにより、以下の事項が可能となる。

1) 新しい研修課題の発見と将来の研修への反映

2) 研修生の直面する問題に対する解決方法の指導およびその経験の研修生同士で

の共有

フォローアップの方法としては、Web を利用した遠隔講義などの活用が考えられる

が、一方で IT技術の進化は著しく、上記のようなシンプルな利用に留まらず、より広

くボーダーレスに教育が可能で、オンデマンド学習が可能となるような利用形態など、

更なる教育・研究資源の開発や発展・展開の可能性も積極的に検討されるべきである。

これらの候補としては、例えば、世界に分散した実験施設、解析ツール、知識・デー

タベース、人材の共有・相互補完を可能とする教育研究機関・施設をサイバーインフ

ラ技術により結合した教育研究プラットフォームの創設と運営などが考えられる

[22,23]。

④ 人的ネットワークの整備と維持

自然災害の軽減には多様かつ広範囲にわたる研究成果、技術や経験が必要とされる

のが一般的で、教育された個々の人材あるいは単独の組織の活動だけではその実現は

不可能である。したがってわが国において国際協力を実施する政府機関や NPO/NGOの

担当者、災害軽減や復旧対応への協力経験を有する研究者や技術者、ならびに自然災

害が予想される国や地域における行政機関、研究機関、関連機関それぞれの担当者や

研究者とのネットワークを組織し、非常時における迅速な真の連携が機能しうるよう

平常時からの人的交流や情報交換を定期的・継続的に実施するネットワーク体制を整

備し、その機能を維持することが極めて重要である。またそのネットワークは、単な

る情報の共有ではなく、対象国や地域、解決すべき課題やテーマに応じた国際的分業

体制により地球規模で頻発する自然災害の軽減に向けて実効的に対応可能な形態・態

勢を目指すべきである。

わが国においては大学、独法系や国立研究機関等の卒業生や修了生による海外ネッ

トワークにより、事前の防災対策や発災時の被災地調査団派遣などにおける迅速な国

際協力活動に成功している例がある[24-28]。これらの活動はそれぞれの機関の長年に

わたる独自の努力により整備・維持されているのが一般的で、教育・研修機関やネッ

トワーク相互の情報共有や集約がなされていないため、必ずしもその全体像が一元的

に把握されているわけではない。ネットワークが有効に機能し、より高度な連携や機

動的な活動を可能とするためには、その全体像が把握できる仕組みが必要である。ま

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たハリケーンやサイクロンのような複合的に災害が発生する傾向の高い災害において

は、学術分野間の国際的ネットワークの構築が特に重要となるが、さらに、国際的な

機関や組織からの呼び掛けに対して即応できるように日本を代表する活動組織とその

担当者を配置するとともにその存在を対外的にアピールし迅速な対応を実践すること

が重要である。これらを実現するためには、以下のような対応が有効であると考えら

れる。

1) 国内の関連学協会、機関に所属する国際協力経験の豊富な支援側人材に関するデ

ータバンクの整備

2) 研修修了生や卒業生を対象とした海外協力側人材に関するデータバンクの整備

と彼らの帰国後の活動把握

3) 国内および海外ネットワークならびにその源泉となる教育・研修プログラムに関

する情報共有と集約の強化による全体像把握を担う情報プラットフォームの創

4) 複合災害発生時に対応しうる学術分野間の国際的ネットワークの構築

5) 日本側ネットワークの代表組織とその担当者の対外的明示

ここでのネットワークは、海外における災害軽減に対してわが国がいかに国際的に

協力すべきかを想定したものであるが、この実現の過程において強化されたネットワ

ークは不幸にもわが国に自然災害が発生し海外からの協力を受けるケースが生じた場

合の基盤となりうることを付言したい。

なお、従来の防災活動参加機関は、国連関係機関、各国政府・自治体機関、NGO/NPO、

学術団体などが主であり、営利を追求する企業の積極的参加を期待することはあまり

なかったように思われる。しかしながら、社会を構成する主要因であり、現実の社会

活動や経済活動の大きな担い手である企業による協力はその意義が大きいと考えられ

る。

特に中国、インド、インドネシアをはじめとするアジア地域は、今後も日本が経済

活動・発展を継続するうえで極めて重要な地域であるが、同時にこれらの地域は自然

災害の多発地域とも重複している。したがって、ネットワークには企業の積極的な参

加を促進するための工夫とシステムつくりが今後検討されるべきであり、その活動成

果による企業のパブリシティへの貢献、現地における資材・人材の安定調達と事業展

開への貢献など、災害リスクの低減がいかに企業活動に有益であり、メリットをもた

らすかの啓発活動や、参加企業に対する税制度や保険制度などの社会制度を含め、防

災活動への積極的な参加を促進するようなインセンティブの設定やその具体的な活動

方策の研究が展開される必要がある。

(4) 国際プログラムへの対応

多数のプログラムがあり、それぞれに国際貢献としては重要な面を持っているが、す

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べてに十分な対応をとることは、限られた資源から見て不可能でありまた不要でもある。

すなわち選択的にプライオリティをつけて対応する必要がある。基本的には、兵庫行動

枠組など世界レベルでの政策、戦略に貢献し評価を得ているものの継続、IPCC、IRDR [29]、

Grand Challenges [30,31]など世界の研究・政策動向の主流に、コンセプトづくりから

参加するもの、わが国が、リーダーシップを発揮してきたもの、できるものということ

になる。

さらに、これら選択したプログラムを効率よく、実効あるものとして行うためには、

情報のクリアリングハウス、戦略拠点の設置が必要である。またそれをサポートできる

プロジェクトの企画、プロジェクトオフィスの誘致、そのための予算・体制の確保、さ

らに国際的リーダーの育つ人事体制、評価体制の導入が必要である。

① 国際プログラム対応のための統合プラットフォームの構築

戦略的で連携の取れた国際プログラムの展開のためには、既存の国際プログラムに

関する体系的な情報収集と情報共有が不可欠である。したがって、現存しているすべ

ての国際プログラムがそれぞれの情報をインプットできる、共通のプラットフォーム

を確立することが必要である。そのようなプラットフォームへの情報のインプット及

び利用を促進するしくみの構築は別途必要であるが、まず共通情報サイトの構築が不

可欠である。

② 戦略的・学際的な国際研究を推進する中核拠点の形成

共通情報サイトを育て、そこから戦略的に国際プログラムを展開させるためには、

それを担う常設の組織が必要である。したがって、防災分野の国際研究プログラムの

推進には、それを中心的に推進する中核研究拠点が設置されていることが望ましい。

現在、防災の研究機関としては、独立行政法人防災科学技術研究所、土木研究所、建

築研究所、国立大学法人京都大学防災研究所、東京大学地震研究所、など多数が存在

している。また、防災に関する政策提言や人材育成等を実施している機関としては、

国際協力機構(JICA)、アジア防災センター等が存在している。これらの機関はいずれ

も独自の事業計画に基づいて活動をしているため、国際研究プログラム推進の拠点と

して機能するために十分な人事体制、資源体制を備えていない。新たな機関の設立と

いう選択肢も含め、そのための体制の充実、確立が早急に必要である。

③ 基本戦略に対応した国際プログラムへの重点的参画

国連、学会、政府間、NGO などの主体とする既存の国際プログラムのうち、わが国

は国連防災の十年や国際防災戦略などの国連等によるグローバルな取り組み、ICSUな

ど学会連合の活動に対して重点的に貢献してきた経緯がある。その結果が 1994年の横

浜戦略、2005年の兵庫行動枠組であり、IGBP、WCRP、IPCC、GEOSSなどもその路線上

の重要な活動である。これらの活動は、世界各国が参加し、広い支持基盤に基づく活

動であり、今後も継続すべきである。現在防災研究の中心をなす地球システム科学分

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野では、ICSUや ICCSを中心に、最近の Grand Challengesに代表されるような、自然

科学と社会科学の融合研究が進められようとしている。その中で災害研究はその最前

線に位置づけられている。そのような大きな世界的な防災研究戦略の流れは、わが国

が志向する実践的防災支援戦略(JICAの現地主義など)とも一致するものであり、こ

のような流れに沿って国際研究プログラムを推進すべきである。

④ 主要な国際プログラムの選択と戦略的資金投入

特に国際プログラムには継続性が重要である。限られた人材、資金を、戦略的選択

的に投入し、国際貢献の効率を確保するためには、プログラム選定を、完全に第三者

による競争的選定制度に任せるのは不適当である。したがって、国際防災プラグラム

の推進という戦略的観点からさまざまなプロジェクトを評価する新たなファンディン

グメカニズムを構築し、選択委員の主観や偶然に左右されない、中長期的な視野を持

つ政策的選定制度が必要である。

⑤ 兵庫行動枠組 2005~2015の推進と 2015年以降の国際的枠組の策定

兵庫行動枠組は、防災面でのわが国の国際貢献の中心であり、その中間年を過ぎて、

残り期間での目標の達成とともに、2015年以降の取組に向けた議論が既に始まってい

る。特に 2015年以降の枠組みに向けて、今一度わが国のイニシアティブを期待する声

がある一方で、防災分野での近年活発な国際的取り組みを実施している国も多数ある

ことも事実である。こうした状況を踏まえると、ポスト兵庫行動枠組の構築とその成

果の世界への発信はわが国の国際防災プロアグラムの中核に置くべき戦略的な課題で

ある。その実現を上に提案した常置組織の中核的な達成課題とすえ、十分な時間と体

制をとって、国内外のステイクホルダーの参画を得て、戦略的アプローチで、新たな

枠組み構築の中心的な役割を果たすべきである。

⑥ 国際プログラムへの積極的参画を促す組織的・制度的条件整備

国際プログラムへの積極参加は、大学、研究機関、行政機関、民間会社など、どの

分野でも進めなくてはならない。そのためには、以下のような組織の意識改革、制度

変革が必要である。

1) 国内活動が国際活動になる、あるいは国際活動が国内活動にもなるプロジェクト

企画の基本的な考え方の変革

2) 国際的なメンバー構成による活動の実施

3) 資源配分の国内、国外の一体化

4) 国際プログラム担当が、組織の亜流ではなく、主流に位置づけられる人事体制

5) 組織を超えたプログラムへの参加が、キャリアーや長期保険上の不利にならない

制度設計

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⑦ 国際モデル都市災害リスク軽減統合実践研究の開始

近隣諸国からの信頼を中心に世界貢献を図る戦略は、あらゆる国際活動の基本であ

るが、特に防災部門においては、厳しい自然条件の中から、世界経済の中心になり、

社会的脆弱性がいよいよ高まっているアジア地域で、その条件に即したプロジェクト

を企画することが重要である。

特に防災部門にあっては、研究は進んでも、災害が減らない実態に直接取り組むプ

ログラムの企画が重要である。この点では、中国、韓国をはじめアジアの発展著しい

中、日本は長兄ではなく、一メンバー国であり、同格のパートナーとしてチームを組

むことが重要である。

具体的なプロジェクトとしては、防災問題に直面したモデル都市を選び、その問題

解決のために、政府、自治体(都市行政)、大学、研究機関、民間会社、NGOなど、全

プレーヤーが連携して、一体的に研究する国際チームを組み、研究成果が行政施策に

反映される実践型研究プロジェクトを企画すべきである。この実践型統合研究プロジ

ェクトこそ、現在世界が、特にアジアが必要としている災害リスク低減の現実策であ

る。

実践研究プロジェクトには、組織上の全プレーヤーだけではなく、全専門分野のプ

レーヤーが参加する必要がある。これが、ICSU、ISSCなどが主唱する Grand Challenges

の精神であり、IRDRの基本構想であって、世界の研究界の大きな流れである。

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4 提言

提言1:世界の自然災害軽減に貢献することをわが国の国際協力の中核とし、政府・自

治体、産業、学界、NPO等の連携のもとにこれを推進する。防災分野の国際協力に関わ

る広範な機関・団体が参加した「自然災害軽減国際戦略協議会(仮称)」を創設し、わが国

の国際協力の連携化を進め、統合を進める。

提言2:自然災害の予防、発災後の緊急支援および復旧・復興支援を、連携性、継続性

かつ一貫性のあるものとするため、上記「協議会」の下に、「災害予防協力と被災地支援の

ための統合プラットフォーム」を組織し、防災分野の支援のための情報の共有化と各団体・

機関の役割の明確化を図る。

提言3:国際機関での防災に関する世界戦略の策定と国際プログラムの推進、災害国に

おける予防、緊急対応および復旧・復興に至る広範な国際協力を担う国内外の人材を育成

し、かつ人材データを共有するため、上記「協議会」の下に、「人材育成統合プラットフォ

ーム」を組織する。

提言4:防災分野の国際協力の基本戦略に沿った国際プログラム推進のため、上記「協

議会」の下に、「国際プログラムへの対応のための統合プラットフォーム」を組織するとと

もに、戦略的かつ学際的な防災分野の国際研究を推進するための「国際共同研究中核拠点」

を創設する。

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20

<参考文献>

[1] 参議院国際・地球温暖化問題に関する調査会、『国際問題及び地球温暖化問題に関する

調査報告案』(P61)、2010年.

[2] 国際協力事業団、『防災と開発』(P63)、2003年.

[3] 国際協力機構、『インド洋大津波災害復旧レビュー報告書』(P1)、2007年

[4] 国際協力事業団、『防災と開発』(P47および P63)、2003年.

[5] 外務省ホームページ、防災分野の援助実績より

[6] 参議院国際・地球温暖化問題に関する調査会、『国際問題及び地球温暖化問題に関する

調査報告案』(P63)、2010年.

[7] 参議院国際・地球温暖化問題に関する調査会、『国際問題及び地球温暖化問題に関する

調査報告案』(P62)、2010年.

[8] 外務省、『ODAのあり方に関する検討の結果』、(P4および P7)、2010年.

[9] 川原尚行、『スーダンでの NGO活動』、学子会会報 No.886、2011-Ⅰ.

[10] T. Boen, Reconstruction of houses in Aceh post disaster mitigation opportunities,

ISWE4, Cooperative Actions for Disaster Risk Reduction, March 4 - 6, 2009, UN

University, Tokyo, Japan.

[11] 中村哲、『医者、用水路を拓く』、pp.243-247、石風社、2007年 11月.

[12] World Conference on Disaster Reduction 1-22 January 2005, Kobe, Hyogo, Japan,

“Hyogo Framework for Action 2005-2015: Building Resilience of Nations and

Communities to Disasterserence on Disaster Reduction”, p.4.

[13] UNESCO, IWRM guidelines at river basin level, Part 2.2: Flood Management, 2009.

[14] WFEO-CEE/DRM;Draft GUIDELINE FOR WATER-RELATED DISASTER RISK MANAGEMENT

(FUNDAMENTALS, FLOODS, TSUNAMIS), 2009.

[15] 国土交通省ホームページ、Xバンド MPレーダより

(http://www.mlit.go.jp/report/press/river03_hh_000243.html).

[16] 杉浦ほか,『人工衛星観測雤量を利用した洪水予測システム(IFAS)の開発』,平成 21

年度国土交通省国土技術研究会,2009.10.

[17] 途上国のノンエンジニアド住宅の地震被害軽減に関する国際シンポジウム資料集

(http://www.kenken.go.jp/japanese/research/lecture/h21/pdf/h22-3.pdf)

[18] 独立行政法人建築研究所、国際地震工学センターホームページ

(http://iisee.kenken.go.jp)

[19] 独立行政法人建築研究所「えぴすとら Vol.45 国際地震工学研修の役割」

(http://www.kenken.go.jp/japanese/contents/publications/epistura/pdf/45.pdf)

[20] 独立行政法人国際協力機構 中華人民共和国 耐震建築人材育成プロジェクト

(http://www.jica.go.jp/china/activities/project/24.html)

[21] 政策研究大学院大学 Disaster Management Policy Program

(地震防災コース及び津波防災コース GRIPS-BRI Joint Program および水災害リス

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21

クマネジメントコース GRIPS-PWRI Joint Program)

(http://www.grips.ac.jp/jp/pstudents/inter_programs/disaster.html)

[22] 住宅・建築物の地震防災に関する国際データベース UNESCO-IPRED Database

(http://www.ipred-iisee.org/database/index.html)

[23] Web site of a Virtual Organization to reduce the toll of extreme winds on society

(https://www.vortex-winds.org/drupal/)

[24] 斉藤大樹、河野 進、楠 浩一、金 裕錫、松井智哉、谷 昌典、日比野陽、Carlos Zavala、

Patricia Gibu, 『2010 年チリ地震・津波災害の現地調査―建物被害調査と被害要因

の分析―』, 第 13 回日本地震工学シンポジウム, pp. 1111-1118, Tsukuba, Japan,

2010.11.

[25] 大学研究・教育機関の卒業生ネットワークによる若手研究者の各国の情報・活動共有

のための活動報告例

・ ICUS REPORT 2008-02, 2009-01, 2010-1/ Joint student seminar on civil

infrastructures, International Center for Urban Safety Engineering, ICUS,

Institute of Industrial Science, the University of Tokyo

[26] 大学研究・教育機関の海外研究者ネットワーク(RNUS)を活用したタイおよびその周

辺諸国における自然災害調査報告例(いずれも International Center for Urban

Safety Engineering, ICUS, Institute of Industrial Science, the University of

Tokyoによる)

・ ICUS REPORT2004-01/ SEISMIC RISK MANAGEMENT FOR COUNTRIES OF THE ASIA PACIFIC

REGION -Proceedings of the 3rd WSSI International Workshop-

・ ICUS REPORT2007-01/Report on Inspection of Marine Reinforced Concrete

Structures in Thailand

・ ICUS REPORT2008-01/ RNUS ANNUAL REPORT 2007, ICUSREPORT2009-04/RNUS Annual

Report 2008 Seismic Hazard Assessment in Thailand

[27] 大学研究・教育機関の海外研究者ネットワーク(BNUS)を活用したバングラデシュに

おける防災に関する取り組みの報告例(いずれも International Center for Urban

Safety Engineering, ICUS, Institute of Industrial Science, the University of

Tokyoによる)

・ ICUS REPORT2006-07/ Evaluation of The Seismic Vulnerability of Bangladeshi

Buildings Using Non-Destructive Testing,

・ ICUS BNUS Annual Reprot-2007, 2008, 2009

[28] 大学研究・教育機関の海外研究者・卒業生ネットワークを活用した災害調査報告の例

・ ICUS NEWSLETTER Vol.1~Vol.10 それぞれ Number 1~4, International Center for

Urban Safety Engineering, ICUS, Institute of Industrial Science, the University

of Tokyo

[29] ICSU (2008) A Science Plan for Integrated Research on Disaster Risk: Addressing

the challenge of natural and human-induced environmental hazards. International

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22

Council for Science.

[30] ICSU (2010) Earth System Science for Global Sustainability: The Grand Challenges.

International Council for Science.

[31] Reid, Chen et al. (12 Nov 2010) Earth System Science for Global Sustainability:

Grand Challenges, SCIENCE, VOL 330.

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23

<参考資料> 自然災害軽減のための国際協力のあり方検討委員会・分科会審議経過

自然災害軽減のための国際協力のあり方検討委員会

平成 22年

4月 22日 日本学術会議幹事会(第95回)

自然災害軽減のための国際協力のあり方検討委員会設置承認

6月2日 自然災害軽減のための国際協力のあり方検討委員会(第1回)

委員長など選任、委員会設置趣旨説明、審議の進め方について

話題提供「日本の国際防災協力について」

7月 12日 自然災害軽減のための国際協力のあり方検討委員会(第2回)

及び分科会合同会議

拡大役員会報告、委員会・分科会の進め方について

話題提供「国際環境協力 -環境省の取組-」

話題提供「ICHARMの国際貢献」

8月6日 自然災害軽減のための国際協力のあり方検討委員会(第3回)

分科会及び小委員会合同会議

委員会の進め方について、分科会活動報告

話題提供「防災分野での研究開発における国際協力について」

話題提供「地震災害軽減のための国際協力:建築研究所の取り組

み」

話題提供「JICAの防災分野の国際協力」

話題提供「水害による被害の軽減に向けた日本からの貢献につい

て」

9月 13日 自然災害軽減のための国際協力のあり方検討委員会(第4回)

分科会及び小委員会合同会議

分科会活動報告

話題提供「ジャパン・プラットフォームの活動」

話題提供「アジア防災センターにおける国際防災協力の推進」

10月 15日 自然災害軽減のための国際協力のあり方検討委員会(第5回)

分科会及び小委員会合同会議

分科会活動報告

話題提供「防災科学技術研究所における国際協力の取組」

話題提供「国際斜面災害研究計画」

12月6日 自然災害軽減のための国際協力のあり方検討委員会(第6回)

分科会及び小委員会合同会議

拡大役員会報告、分科会活動報告、報告書目次案の検討、

委員会設置期間延長について

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(1) 防災分野の国際協力に関わる基本戦略分科会

平成22年

6月2日 防災分野の国際協力に関わる基本戦略分科会(第1回)

委員長選出、役員指名、今後の審議の進め方

7月 12日 防災分野の国際協力に関わる基本戦略分科会(第2回)

役員指名、基本戦略の検討

8月6日 防災分野の国際協力に関わる基本戦略分科会(第3回)

基本戦略の検討

9月 13日 防災分野の国際協力に関わる基本戦略分科会(第4回)

基本戦略の検討

12月6日 防災分野の国際協力に関わる基本戦略分科会(第5回)

基本戦略の検討

(2) 技術協力・被災地支援分科会

平成 22年

6月2日 技術協力・被災地支援分科会(第1回)

委員長・幹事選出、意見交換

7月 12日 技術協力・被災地支援分科会(第2回)

新委員の紹介、技術協力・被災地支援への取り組みに関する議論、

次回分科会までの整理

8月6日 技術協力・被災地支援分科会(第3回)

技術協力・被災地支援への取り組みに関する暫定とりまとめと議

9月 13日 技術協力・被災地支援分科会(第4回)

技術協力・被災地支援への取り組みに関する議論

9月 29日 技術協力・被災地支援分科会(第5回)

報告書目次案の議論

11月9日 技術協力・被災地支援分科会(第6回)

報告書目次の検討と執筆準備

(3) 人材育成・国際ネットワーク分科会

平成22年

6月2日 人材育成・国際ネットワーク分科会(第1回)

委員構成について、分科会の活動について

7月 12日 人材育成・国際ネットワーク分科会(第2回)

Page 37: SCJ第 21 期230915-21910000-004国際協力のあり方検討委員会 標題 「自然災害軽減のための国際協力のあり方」 - 中間報告(記録)- 作成日

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人材育成・国際ネットワークに関する意見交換

8月6日 人材育成・国際ネットワーク分科会(第3回)

人材育成・国際ネットワークに関する意見交換、

風防災に関する人材育成・国際ネットワークについて

9月 13日 人材育成・国際ネットワーク分科会(第4回)

人材育成・国際ネットワークに関する意見交換

10月 15日 人材育成・国際ネットワーク分科会(第5回)

人材育成・国際ネットワークに関する意見交換

11月 15日 人材育成・国際ネットワーク分科会(第5回)

人材育成・国際ネットワークに関する意見交換

(4) 国際プログラム連携分科会

平成 22年

6月2日 国際プログラム連携分科会(第1回)

委員長選出、幹事指名、審議の進め方について

7月 12日 国際プログラム連携分科会(第2回)

分科会での検討内容について、

国際プログラムのリストアップとマッピング

8月6日 国際プログラム連携分科会(第3回)

国際プログラムに関する意見交換

9月 13日 国際プログラム連携分科会(第4回)

IRDRについて、Forensic Investigations について、

課題別委員会へのインプットについて

10月 15日 国際プログラム連携分科会(第5回)

Gordon Mcbean 教授との協議経過報告、

Forensic investigation 経過報告

12月6日 国際プログラム連携分科会(第6回)