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No. 22 January 2016 [ 巻頭 ] ・ご挨拶 寺尾 允男 1 [ 特別寄稿 ] ・健康・医療産業の育成に向けて 土屋 裕弘 2 [ 薬学への期待 ] ・臨床現場と連携した研究の推進 北河 修治 5 ・時代が変わっても大学教育に必要なことは 小林 資正 6 ・創薬研究教育を志向した大学院制度拡充への期待 菅原 一幸 7 [ 薬学研究への道 ] ・これまでを振り返って 川島 博人 8 ・薬学研究での成長と志を胸に 倉永英里奈 9 ・「へんてこりん」Driven Research 高須 清誠 10 ・スケッチ 「桜」 山崎 幹夫 ・平成 26 年度事業報告概要 ・編集後記

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Page 1: RFPS No.22 H1 - yakusho.org–¬奨... · 大村先生、ノーベル生理学・医学賞受賞おめでとうございます。 昨年10月、2015年のノーベル生理学・医学賞を大村

No. 22January 2016

[ 巻頭 ]・ご挨拶 寺尾 允男   1

[ 特別寄稿 ]・健康・医療産業の育成に向けて 土屋 裕弘   2

[ 薬学への期待 ]・臨床現場と連携した研究の推進 北河 修治   5

・時代が変わっても大学教育に必要なことは 小林 資正   6

・創薬研究教育を志向した大学院制度拡充への期待 菅原 一幸   7

[ 薬学研究への道 ]・これまでを振り返って 川島 博人   8

・薬学研究での成長と志を胸に 倉永英里奈   9

・「へんてこりん」Driven Research 高須 清誠   10

・スケッチ

「桜」 山崎 幹夫

・平成 26 年度事業報告概要

・編集後記

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昭和39年 東京大学大学院化学系研究科薬学専攻博士課程修了 薬学博士

東京大学薬学部助教授 国立衛生試験所部長(放射線化学部、機能生化学部、薬品部)

国立衛生試験所副所長 国立医薬品食品衛生研究所長を歴任

(財)日本公定書協会会長 (社)日本薬学会監事 厚労省薬事食品衛生審議会会長 内閣府食品安全委員会委員 歴任

現在、(一財)医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団(旧日本公定書協会)会長

巻 頭

大村先生、ノーベル生理学・医学賞受賞おめでとうございます。

昨年10月、2015年のノーベル生理学・医学賞を大村 智 北里大学特別栄誉教授に、物理学賞を

梶田 隆章 東京大学教授に授与するという発表があり、日本中が喜びに沸きました。

大村先生は、平成15年から8年間、当財団の理事を務められ、財団の運営にご尽力いただくと

ともに、個人的にも財政的に支えてくださいました。先生には、心からお祝いとお礼を申し上げ

ます。

WHOは、2012年にNTDs(Neglected Tropical Diseases)10疾患を、2020年までに撲滅するとい

うロードマップを掲げました。先生が発見され、開発にかかわられました「イベルメクチン」は、

このロードマップの対象となっているアフリカや中南米など熱帯地方に流行するオンコセルカ症

(河川盲目症)の薬として投与され、何百万人という患者を失明から救い、また、リンパ性フィ

ラリアの治療薬として用いられるなど、人類の福祉に計り知れない貢献をしています。

わが国は、国立大学の独立法人化を行い、現在、産業力強化に向けた更なる大学改革を進めよ

うとしています。しかし、国や産業界が望んでいる産業に役立つ研究は、直ちに産業化に結びつ

くとは考えられない研究を含め、それまでに蓄積された多くの基礎研究のうえに成り立っている

ことは申し上げるまでもないことであります。

大村先生の研究も病に苦しむ多くの人々を救うという、人類に直接利益をもたらすものであり

ますが、先生の研究業績もそれまでの多くの研究者の研究の蓄積のうえになされたものであるこ

とは言うまでもないことであります。

当財団は設立以来、微力ながら薬学分野の研究者を支援するための研究助成金の授与を主要な

事業の1つとして行ってきました。特に最近は、若い研究者を育て研究のすそ野を広げることを

目指し、これまで研究実績はなくても優れたアイデアで将来を期待させる研究に支援するよう心

がけています。当財団が支援した若い研究者が、将来、立派に大成し、わが国の研究を支えてく

れることを期待して、私どもはこれからも頑張りたいと思いますのでご支援をよろしくお願いい

たします。

皆様方にとりまして、今年も良い年であることを心よりお祈り申し上げます。

ご 挨 拶

公益財団法人 薬学研究奨励財団理事長 寺 尾 允 男

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特別寄稿

(1)はじめに:健康・医療産業における医

薬品産業の位置づけと現状

日本は長い間、世界屈指の長寿国の地位を

保ち続けています。その要因として、国民一

人ひとりの高い健康意識、国民皆保険制度、

充実した医療提供体制、衛生環境の向上、そ

して、世界トップレベルの創薬力と高品質な

医薬品の安定的な供給体制などが挙げられま

す。このような日本の医療システムは世界か

ら注目されており、政府の「健康・医療戦

略」では、『世界最先端の医療技術・サービ

スを実現し、健康寿命世界一を達成すること、

それと同時に、健康・医療分野に係る産業を

戦略産業として育成し、我が国経済の成長に

寄与すること』がうたわれています。具体的

には、医薬品・医療機器・健康科学製品など

で構成される健康・医療産業を戦略産業とし

て育成するとされています。

医薬品産業は、知識集約型で高付加価値型

の我が国に適した産業と言えます。日本は世

界で米国に次ぎ第2位、アジアで唯一の創薬

国です。革新的新薬を創出するためには、他

産業に比べて、多額の研究開発投資が必要と

なります。そして、その成果として新薬が世

界の人々の健康に貢献するなど、高い付加価

値を提供し、景気に左右されにくい、高い担

税力に結びついています。

医薬品産業が国内外において、今後とも高

い創薬力と産業競争力を維持することが、日

本が目指す健康長寿社会の実現に向けたソ

リューションの提供につながるものと考えま

す。しかしながら、医薬品産業の足下の経営

環境は年々厳しいのが現状です。世界の患者

さんに対して、これまで多くの疾患に対して

治療満足度の向上に貢献してきましたが、そ

の一方で、がんや認知症、あるいは難病など、

新薬開発が困難な疾患領域に対する創薬が求

められるようになっています。これらのアン

メット・メディカル・ニーズに応える新薬を

創出するためには、創薬の成功確率が年々低

下する厳しい環境のなかでも、より多くの研

究開発費を長期にわたって継続的に投入し続

けることが必須です。

先進国では薬剤費抑制策が強化されており、

我が国でも、薬価引き下げや後発医薬品の使

用促進によって、次の新薬創出に向けた研究

開発費の回収が困難になってきています。も

ちろん、社会保障制度の持続性確保のために

は、医療費適正化が必要であることは十分理

解するところです。一方で、新たな医療ニー

ズに応え、新薬を開発・提供し続けることが、

国民の健康寿命の延伸に貢献し、その結果、

医療費、社会保障費の削減につながることに

なります。製薬企業は、各社とも、国際化に

よって収益拡大を図るとともに、構造改革、

事業改革を推し進めていますが、これらには

限界があります。我が国の医薬品産業の強

化・振興なくして、政府の健康・医療戦略の

推進はあり得ません。

(2)「健康長寿社会」の実現に向けた、健

康・医療産業の役割と可能性

健康・医療戦略では『世界に先駆けて超高

齢社会を迎えつつある我が国が、健康・医療

分野の課題解決先進国として、超高齢社会を

乗り越えるモデルを世界に拡げなければなら

ない』としており、そのために『健康・医療

分野に係る産業を戦略産業として育成するこ

健康・医療産業の育成に向けて

田辺三菱製薬株式会社 代表取締役会長 土 屋 裕 弘

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とによって世界最先端の医療技術・サービス

を実現し、健康寿命世界一を達成する』と宣

言しています。このように、世界でいち早く

高齢社会を迎える日本では、医薬品産業だけ

でなく、広義の健康・医療産業を基幹産業と

して育成する意義は大きいと考えます。

ここでキーワードとなる「健康寿命」の延

伸のためには、病気やけがなどの治療に加え

て、いかに心身ともに健やかに生きるか、す

なわち、Quality of Lifeを重視した「トータル

ヘルスケア・ソリューション」という考え方

が必要になってきます。

具体的な製品としては、医薬品については

従来型の治療薬から、早期診断、予防・予後、

さらに健康増進まで対象を広げ、ワクチンな

どの予防薬、診断薬、再発予防薬、QOL改

善・健康増進薬などへ拡大します。それに加

えて、個別化医療に対応した医薬品と診断薬、

機器の融合、さらには、細胞治療や人工組

織・臓器など再生医療関連製品が挙げられま

す。その他にも、遺伝子情報や医療ビッグ

データを活用した健康・医療ICTサービス、

医食同源に通ずる機能性食品・健康食品、

フィットネス事業など、拡大・発展したヘル

スケア・ソリューション製品、サービスへの

展開が考えられます。

これらの新しいヘルスケア・ソリューショ

ン製品・サービスの提供には、医薬品産業と

他の関連産業の“協奏”による新たな価値の

提供が必要となり、その結果、新しい健康・

医療産業が、システムとして発展拡大してい

くことが期待されます。従って、医薬品産業

も、今後は、治療薬の創製で培った専門的能

力を人々の健康に貢献する事業の展開に幅広

く活用していくことが必要となります。

(3)健康・医療イノベーションの創出

イノベーションは「新たな結合」から生ま

れます。そのためには、異才や異業種などの

プレーヤーの集積と、そういった人々が切磋

琢磨し“協奏”する「場」が必要となるとと

もに、それを後押し、強化していく仕組みが

必要です。

特に医薬品産業や医療機器産業においては、

「日本医療研究開発機構」(AMED)の役割に

大いに期待しています。これからの医薬品・

医療機器の開発にあたっては、医学・薬学に

加え、工学、農学、理学、情報学など、既存

の学問の枠組みを超え、学際領域・融合領域

での研究・技術開発が一層必要となります。

そのための産学官連携や異業種連携の推進に

向けて、AMEDを軸とした厚労省、経産省、

文科省の連携の下での産業振興が、強力な推

進力になると考えています。

さらに、健康・医療イノベーションを担い

支える専門人材・学問横断的人材の育成も大

きな課題です。健康・医療産業においては、

生物統計分野や知的財産分野の人材が特に不

足しており、これらの分野を中心に人材育成

を効率的に進める仕組みの導入が求められま

す。また、医薬品や再生医療等製品では研究

開発期間が長く製品化までに長期間かかるこ

とが、医療医薬系ベンチャー企業の事業継続

を困難にしている一因となっています。従っ

て、必要とされるリスクマネーを必要なとこ

ろへ、適切なかたちとタイミングで配分する

仕組みの導入も望まれます。

(4)おわりに

健康・医療分野の発展では、産学官連携や

異業種間連携の拡大・深化を図ることが、こ

れまで以上に重要です。異業種間連携に関す

る横断的な提言の取り纏めや実効性の確保な

ど、システムとしての健康・医療という視点

から、新しい枠組みでの取り組みが必要です。

このような取り組みが健康・医療イノベー

ションと関連産業の発展に結びつき、健康寿

命の延伸や医療費等社会保障費の抑制をもた

らすと考えます。

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『桜』(F6号 麻布キャンバス・油彩)

ある日、総武線の市川駅から江戸川沿いにバスで10分ばかりをさかのぼったところで、それほど広くはないけれども、あふれるように咲き誇る桜に囲まれた川べりの公園を見つけてバスを降りた。平日の午後だっただけに、散策する近所の方らしい数人のほかには桜見物をする人たちの気配もなく、暖かな陽光を浴びながら咲き誇る桜をゆっくりと楽しむ幸せをえた。大勢の人々に鑑賞されながら咲く名所での花見にも捨てがたい魅力はあるが、その姿を人の群れに悩まされることなく愛でるひと時には他に代えがたい喜びがある。あらためて、桜のある国に生まれた幸せをかみしめる時間となった。 山崎幹夫

<山崎幹夫先生 プロフィール> 昭和29年千葉大学薬学部卒業、35年東京大学大学院薬学博士課程修了、薬学博士。国立放射線医学研総合究所主任研究官、千葉大学教授、薬学部長を経て平成16年新潟薬科大学学長。厚労省中央薬事審議会委員、日本薬学会ファルマシア編集、広報、創薬セミナー委員会等の委員長、日本医薬品情報学会会長等を歴任。『薬と日本人』、『毒薬の誕生』、『毒の話』等、薬と毒に関する著書が多い。

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薬学への期待

私は、第15回(平成6年度)研究助成で「生体膜

流動性の非対称性と薬物輸送」の研究課題で助成金

をいただきました。当時は、前任地の新潟薬科大学

で、平成6年4月に薬剤学研究室の教授に昇任した

ばかりで、研究費も潤沢でなく助成金をいただいた

ことはありがたかったです。以来、20年の月日が流

れ、平成28年3月31日をもって、現在の神戸薬科大

学製剤学研究室教授の任を終了し、4月からは1年

の任期を残す学長職に専念することになります。私

の大学教員人生は、昭和51年8月に徳島大学薬学部

助手として始まり、今年40年目を迎えます。紆余曲

折の中で、ここまでたどり着くことができましたの

は、40年の間に出会った多数の先生方のご支援の賜

物だと感謝しています。

その間、研究内容も随分と変わって来ました。京

都大学薬学部薬品物理化学研究室でコロイド界面化

学がご専門の故中垣正幸先生のご指導を受けた私で

すが、助成金をいただいた当時は、血小板を対象に

膜流動性と血小板機能発現との関係を研究し、平成

6年度薬学会奨励賞をいただいたときでした。その

後、平成18年4月より、神戸薬科大学へ製剤学研究

室教授として移り、現在に至っています。この10年

間は、主に経皮吸収に関する研究を行って来ました。

特に、この数年は、軟膏剤のレオロジー特性に関す

る研究へと軸足を移しています。そのきっかけは、

病院実習担当学生の訪問指導で薬剤部を訪問したと

きに、軟膏剤とクリーム剤とを混合する際に混ざり

やすい組み合わせと混ざりにくい組み合わせがある

ことを聴いたことでした。以来、軟膏剤に大変興味

をもちました。

軟膏剤の研究は、基剤である白色ワセリンの粘度、

展延性、硬さ、粘着性に関する研究から始めました。

ワセリンは炭素数の異なる炭化水素の混合物で、直

鎖のものに加えて、分岐鎖をもつもの、環状のもの

が混在しています。そのため、室温では、液体状で

存在するものと固体で存在するものとがあり、固体

部分はネットワーク構造を形成しています。この構

造が、チキソトロピー性や展延性をもたらす大きな

原因となっています。研究を進めるうちに、強い混

合操作によって、この構造は不可逆的に崩壊し、粘

度、展延性が減少し、チキソトロピー性も大きく減

少することがわかりました。現在は、ステロイド軟

膏剤に注目して研究を進めています。ステロイド軟

膏剤では、基剤であるワセリンに対するステロイド

の溶解性を改善するためにプロピレングリコールが

少量添加され、それを分散させるために界面活性剤

が、やはり少量加えられています。先発品と後発品

とで添加されている界面活性剤が異なるために、硬

さ、粘着性、展延性が異なるとともに、クリーム剤

との配合変化が異なることを明らかにしています。

研究生活の最後になりまして、恩師にご指導いた

だいた界面化学の知識を活かして臨床現場の問題に

直結する研究課題に取り組み、研究成果に基づいた

情報提供を臨床現場に行える状況になりました。こ

のことで恩師に恩返しができたような気がして大変

嬉しく思っています。臨床現場には多数の問題が未

解決で埋もれています。医療薬学分野の先生方はも

ちろんのこと、薬学基礎の研究を行なっておられる

先生方にも是非とも臨床現場の課題に目を向けてい

ただき、現場と連携して研究を進め、得られた

evidenceを臨床現場に戻していただければと願う次

第です。このことは、現場の薬剤師にとっても力強

いバックアップとなり、患者さんから薬剤師を見る

目が変わり、薬剤師、引いては薬学の魅力向上に繋

がるものと信じています。臨床現場と協力して課題

を解決し、日本の医療への薬学の貢献度を高めるこ

とが私の「薬学への期待」です。

臨床現場と連携した研究の推進

神戸薬科大学 学長・製剤学研究室 教授 北 河 修 治

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寄稿のご依頼があってから、私が薬学研究奨励財

団の研究助成金をいただいたのはいつだったかと財

団のホームページを覗いてみたら、昭和63年の第9

回だった。「あれから30年……」の綾小路きみまろ

のセリフではないが、若くてはつらつとしていたこ

ろの自分がいたことが今少しずつ思い起こされてき

た。

その当時の私は、博士課程の半ばで運良く助手

(教務職員)にしていただいてから10年程経った頃

で、研究することに活き活きとし、毎日、元気に頑

張っていたかと思う。どなたから吹き込まれたのか

は忘れたが、「日本薬学会の奨励賞と薬学研究奨励

財団の助成金は、将来、教授になるための登龍門で、

これをとれるぐらいでないと教授にはなれないんだ

よ」ということから、私も気合いを入れて申請させ

ていただき、なんとか頂戴することができた。その

頃に助成金を獲得された方々のリストを拝見すると、

確かに、後に大変ご高名になられた方もたくさんお

られ、「ああそうだったんだ」と懐かしく思えた。

大学紛争の終わり頃に大学に入学した私は、ひた

すら大学入試の勉強にために費やしてきた高校時代

を取り返すために、休みになったらあちこち旅行に

出かけ、授業が休講になったら友達と麻雀して遊ん

でいた並(なみ)の学生だった。したがって、私が

うけた講義については、もうほとんど何も記憶に

残っていないが、3年次の毎日午後にあった基礎実

習が楽しかったことだけが思い起こされる。ガラス

細工に始まり、化学合成、ネズミの解剖、電気配線

など色々と科学実験を経験させていただいたが、い

つも誰よりも早くその日に課された項目の実験を達

成しようと一人競争心を燃やしたものだった。4年

生になると研究室に配属されて、結果の見えない研

究テーマをいただいて研究者の仲間入りをさせてい

ただいた。結果が導き出されることが分かっている

学生実習と違い、研究というのは単純な作業の積み

重ねだけでは展開せず、試行錯誤の繰り返しにより

見出した工夫が成果を生むことから、興奮し面白さ

を体感することができた。次第に、このまま卒業し

たのではつまらないと思うようになり、もっと研究

がしたくて大学院に進学することを決意し、入試前

の夏休みには友人と信州のスキー場の民宿に泊まり

込んで勉強した。

それから、毎日が研究の大学院生時代を経て、さ

らに大学に居残って大学教員となり、あと1年で定

年退職を迎えようとしている。長い研究生活を経て

少しずつ成長してきた今の自分があると思うし、ま

た研究生活を通して若い後輩達を育成してきたと思

う。その間、色々な制度の改革があり、大学教育制

度も大きく見直されてきた。薬学部薬学科が6年制

になり、共用試験制度や実務実習制度が構築された。

ほとんどが薬学科学生の私立薬科大学では、どうい

うわけか年ごとに難しくなってしまった薬剤師国家

試験に合格させるための講義や演習に明け暮れ、問

題解決能力を養うための長期課題研究は貧相な内容

となっていると聞く。私の経験からは、6年間かけ

て講義で色々なことを習っても日々使わないことは

すぐに忘れてしまうので、国家試験の前や薬剤師と

して実務に就く前に必死に勉強すればいいのではな

いかと思う。むしろ、問題解決能力を養うための充

実した長期課題研究の実施を課して学生を育成する

ことが、大学教育には必要ではないだろうか。

時代が変わっても大学教育に必要なことは

大阪大学大学院薬学研究科 教授 小 林 資 正

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言うまでもなく、薬学の使命は「薬剤師の養成」

だが、大きな観点からは「薬を通した国民の健康増

進」と言え、「薬剤師の養成」と、「創薬への貢献」

や「研究者の育成」の2つに大別できよう。今日の

薬学は6年制に大きく傾斜したので、「6年制の導

入」と言うよりは「移行」と言うべき現状である。

本稿執筆の機会は、薬学の歴史と現状を熟知し、

私の経歴もご存知の先輩である佐藤公道・京大名誉

教授(薬学)から頂戴した。現行の6年制の薬学教

育に直接には関与していない小生からの独断と偏見

に満ちた私見になる心配を恐れながら、あえてお引

き受けした。私は、京都大学薬学部を卒業し、博士

課程修了後、米国に6年間研究留学し、京大薬学部

で8年間助手を務め、神戸女子薬大・神戸薬科大学

に異動し、4年制時代の教育と研究に助教授・教授

として13年間携わった。2006年度からは、北海道大

学大学院・先端生命科学研究院で創薬と病態生化学

の研究に携わり、今春退職した。私立薬科大学での

教育にも10年以上携わったが、この間、一貫して糖

鎖生物科学の研究をし、研究歴は足掛け45年になっ

た。現在も、名城大薬学部病態生化学研究室で研究

を継続させていただいている。ここでは、「薬学の

基礎研究への期待」に焦点を絞りたい。

6年制に移行してからの実務教育の必須化と高度

化の結果、「基礎薬学」のレベルの維持や推進は困

難に瀕している。特に、4年制を廃止した薬科系大

学では大学院は崩壊し、薬剤師養成に専念している。

研究レベルの低下に危機を抱く国公立大学では、基

礎研究の維持、促進および研究者の養成を目指して

いると理解している。名古屋大学では、薬学部のな

い薬学系大学院のみを発足させたと聞くが、その典

型の一つであろう。4年制薬学部を残している大学

でも修士・博士課程を設けたが、優秀な学生(特に

女子学生)の多くが、6年制コースに進むと聞く。

以前は、製薬関連企業の基盤を多くの男女薬学出身

者が支えていたが、その基盤は弱体化すると危惧し

ている。薬学出身の優秀な研究員(女性を含む)は

大きな戦力であったが、近く激減するのではないか。

2008年にノーベル化学賞を受賞された下村修博士

は旧制長崎医科大学附属薬学専門部(長崎大学薬学

部の前身)を卒業され、自分の研究の原点は長崎大

学・薬学部にあると自ら語っておられる。名古屋大

学・理学部の故江上不二夫教授の下で分子生物学、

同理学部の故平田義正教授の下で有機化学の薫陶も

受けられたが、広い薬学分野の基礎があったからで

あろう。32歳からプリンストン大学で3年間研究し、

ノーベル化学賞の対象になったGFPの発見もされ、

一旦、名大・助教授として日本に戻られた。しかし、

研究に専念すべく、2年後再び渡米し、長い米国で

の研究の道を選ばれた。今年は、北里大学の薬学部

教授や生命科学研究所長も務められた大村智博士が、

微生物を利用した創薬研究によって、ノーベル医学

生理学賞を受賞された。博士の研究には、多くの薬

学部出身の大学院生も関わったのではないだろうか。

国民の健康増進は、医療費問題とも関連し、国策

と捉えるべき大問題として構造的解決策を模索すべ

きだが、個々の薬科大学や薬学部においては、博士

研究員、留学生、研究補助員などを、男女の別なく

積極的に活用し、基礎薬学の教育に力を注ぐべきで

あろう。基礎研究なしには応用研究も考えられない。

個人的には、生薬成分の活性発現の機作の研究

(ファイトケミストリー)などは薬学に適した未開

拓の分野と考えている。

創薬研究教育を志向した大学院制度拡充への期待

北海道大学 名誉教授

名城大学薬学部 研究員 菅 原 一 幸

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薬学研究への道

私は平成17年度に「新規ムチン型糖鎖分析技術の

開発とIgA腎症早期発見への応用」という研究テー

マで薬学研究奨励財団25周年記念特別研究助成金を

いただきました。当時の私は、平成17年4月に米国

留学から帰国し、静岡県立大学助教授として研究を

開始したばかりで、研究を始めようにも資金がなく

困っておりました。その年の7月末日が応募締め切

りだったと思いますが、迅速な審査をしていただき、

秋には助成金を執行することができましたことは本

当に大きな救いでした。帰国後初めにいただくこと

のできた助成金が貴財団のものであり、その後なん

とか研究を続けることができたのもこの助成金のお

かげと心より感謝致しております。

これまでを少し振り返ってみたいと思います。昭

和63年3月、東京大学薬学部を卒業。平成5年3月

に東京大学大学院薬学系研究科で学位を取得。所属

した生体異物免疫化学教室では、大澤利昭教授と後

任の入村達郎教授の御指導のもと、レクチンの糖結

合特異性に関する研究および糖転移酵素の精製を行

いました。実験では山本一夫先生に博士3年を出る

まで直接御指導いただきました。美味しそうなトマ

トを買ってきてトマトレクチンを精製し、レクチン

アフィニティーカラムを作って赤血球膜から調製し

た様々な糖鎖に対する結合特異性を調べました。こ

れは私のその後の研究の原点です。平成5年4月か

ら東京都臨床医学総合研究所免疫研究部門・宮坂昌

之部長のもとに研究員として職を得て、リンパ球の

体内動態(リンパ球ホーミング)に関する研究を開

始致しました。平成6年8月から約7年間は大阪大

学大学院医学系研究科(宮坂昌之研究室)、平成13

年10月から3年半は米国The Burnham Institute(福

田穣研究室)、平成17年4月から約9年間は静岡県

立大学薬学部(今井康之研究室)。その後、約1年

間は星薬科大学薬学部。昨年8月からは千葉大学大

学院薬学研究院と研究の実施場所は変わりましたが、

リンパ球ホーミングの研究は一貫して私の主要な研

究テーマです。東京都臨床医学総合研究所および大

阪大学大学院医学系研究科で行いました一連の研究

では、リンパ球の体内動態に関与する主要なレセプ

ターであるL-セレクチンとCD44の共通のリガンド

としてコンドロイチン硫酸プロテオグリカン・バー

シカンを同定し、第7回 日本炎症・再生医学会奨

励賞をいただきました。その後、The Burnham

Instituteの福田穣先生の研究室に留学し、硫酸基転

移酵素欠損マウスを用いた解析により、リンパ球

ホーミングにおいて硫酸化糖鎖が必須の役割をはた

すことを明らかにしました。この研究成果はNature

Immunology 誌に掲載され、同誌の表紙を飾りまし

た。帰国後、今井康之先生の主宰される静岡県立大

学薬学部・免疫微生物学分野に助教授として着任。

貴財団の助成金をはじめとして、科学技術振興機構

(JST)の「さきがけ」、科学研究費補助金基盤研究

(B)等の外部資金を獲得して研究設備を整備し、

リンパ球ホーミングを媒介する特殊な血管である高

内皮細静脈特異的に遺伝子を改変する技術や特定の

糖鎖に特異的に結合するモノクローナル抗体を高い

効率で作製する技術等の開発をすることができまし

た。今井先生は私が独自にテーマを展開することを

許して下さるとともに的確な助言をして下さいまし

た。その後、昨年5月に星薬科大学薬学部・教授、

本年8月に千葉大学大学院薬学研究院・教授に着任

し、自分の研究室を持つことができました。これま

で御指導いただきました全ての先生方、同僚、学生、

そして貴財団をはじめとする研究資金のご援助をい

ただきました関係機関に深く感謝致します。今後は

各地を転々とする中で学んだ様々な経験を生かしな

がら、腰を落ち着けて地道に教育・研究に取り組ん

でいきたいと思います。

これまでを振り返って

千葉大学大学院薬学研究院 教授 川 島 博 人

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私は、平成18年度に「カスパーゼが関与する生理

機能の可視化と遺伝学的解析」という研究テーマに

て研究助成金を賜りました。研究テーマは、蛋白質

分解酵素であるカスパーゼの生理機能とダイナミク

スを解明するという内容です。カスパーゼは線虫か

らほ乳類まで保存されたシステインプロテアーゼで、

細胞生理機能の出力では主に細胞死が知られていま

すが、それ以外にも、炎症性サイトカインの放出、

上皮系細胞の分化、免疫系細胞の増殖や分化への関

与も知られています。しかしながら、カスパーゼが

どのように制御されて細胞死以外の機能を発揮する

のか、その機序は明らかにされていませんでした。

私は、ショウジョウバエ遺伝学とカスパーゼ活性の

生体内可視化技術を駆使して、活性化レベルの違い

によって細胞生理機能が調節されるメカニズムを解

明しました。その研究の中で、カスパーゼを抑制す

るタンパク質(IAP)の量的制御によって、非細胞

死機能に関わるカスパーゼの活性化が制御されるこ

とが判りました。IAPは、ウイルスから見つかった

細胞死抑制タンパク質で、各種がん細胞においてそ

の変異が報告されています。IAPの量的変動はIAP

自身のE3リガーゼ活性に依存することから、生体

内におけるIAP量の可視化を解析することで、IAP

やカスパーゼの関与する生命現象や疾患の理解に貢

献すると考えました。私たちは生きた個体で、単一

細胞レベルの解像度で可視化するプローブを開発し

ました。ショウジョウバエ中胸背毛の発生過程をイ

メージングしたところ、IAP量は、細胞系譜の運命

決定、非対称分裂、最終分化過程においてダイナ

ミックに変動し、そのプロセスに関与することが判

りました。この変動はカスパーゼの非細胞死機能の

スイッチとして働き、細胞骨格制御を介して細胞伸

長と細胞移動を調節することが明らかになりました。

IAP可視化プローブの開発と解析は、当時の薬学

研究科大学院生である古藤日子さん(現東大薬学部

助教)と一緒に行いましたが、古藤さんの研究にか

ける情熱と努力の甲斐あって、本研究テーマの完了

と成果発表に至りました。古藤さんは、綺麗なライ

ブイメージング画像を撮るためなら徹夜も厭わない

というガッツのある子でした。こういったバイタリ

ティ溢れる若者が、薬学の世界で飛躍していく様子

を楽しみにできるようになって自分自身の成長(と

老い?)を感じるとともに、まだまだこれからと奮

い立たずにはおれません。古藤さんと、私たちの研

究を暖かく励まし導いて下さった三浦正幸教授に、

この場を借りて感謝申し上げます。

また、この研究がきっかけで、細胞の枠内で理解

していたシグナルが個体発生に展開していくプロセ

スを深く追求したいと思うようになり、平成23年よ

り理化学研究所の発生・再生科学総合研究センター

のチームリーダーとして独立しました。ちょっと

「薬学研究の道」からはずれてしまったようにもみ

えますが、今は発生過程における器官形成の「正

常」なしくみを理解することで、疾患における「異

常」の理解を目指して研究を行っています。常に頭

の中には、創薬のターゲットを提示する、という薬

学研究で培った志を忘れずに、ますます研究に猛進

していきたいと思います。

最後になりましたが、基礎研究を奨励いただき、

私たちの研究を支援してくださいました薬学研究奨

励財団様に厚く御礼申し上げます。

薬学研究での成長と志を胸に

理化学研究所 多細胞システム形成研究センター

チームリーダー 倉 永 英里奈

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なぜ薬学部に入学したかと問われれば、私の高校

では薬学に進学する人がほとんどおらず情報が少な

かったため「よく知らない小さい学部なので、何か

変わった研究ができるかもしれないと思った」と答

えることがある。なぜ有機化学の研究を続けている

かと問われると、「へんてこりんな構造、反応性や

機能を示す分子を作るのが楽しいから」と答えるよ

うにしている。研究テーマを選択する時の動機も

「他の大多数がやろうとしないことのほうが、変

わった景色(結果)がみえるかもしれない」と考え

る。ちなみに私のひいきの球団は楽天ゴールデン

イーグルスで、演奏できる楽器はウクレレで、大学

時代にしていたスポーツはフェンシングであり、な

んだか少し王道からずれた考えや嗜好をしているよ

うに思える。というか、本質的にへそまがりなので

ある。

私が薬学奨励財団の研究助成をいただいたのは第

28回(平成19年度)のことで、「軸性不斉をもつア

ミジンの触媒的不斉合成法の開発とキラル合成素子

としての活用」という研究テーマだった。他領域の

薬学研究者からは「それってどのあたりが薬学な

の?」とか、有機化学の研究者にとっても「ずいぶ

んマイナーな化合物を対象にしていて、どのような

展開があるの?」と聞かれてもおかしくなさそうで

ある。しかし、東北大学から京都大学に異動してど

んなことをしようか考えあぐねている私には、大変

興味が持たれた研究であったと記憶する。東北大か

ら学生として一緒に京大についてきてくれた進藤直

哉君(現 九大院薬・特任助教)が見出した奇妙な

反応と生成物に端を発したものである。全く予想し

ていなかった反応機構(触媒的[2+2]環化付加

-電子環状反応)を理解できた時は興奮したし、さ

らに生じた化合物は軸性不斉を持つことが明らかに

なったこともうれしかった。軸性不斉は比較的なじ

みのあるものであるが、非芳香環に挟まれた単結合

の軸性不斉は珍しくまさに「へんてこりん」な化合

物であった。そのような「へんてこりん」な化合物

や反応は、多くの人に馴染みがなく興味を持たれに

くいかもしれないが、そこには誰も知らなかった発

見や展開が隠れている。申請書の計画ではかなりの

夢物語を書いた(しかも最終的には主目的を実現で

きなかった。スイマセン)と思うが、幸いにも本研

究の延長線上でさらなる「へんてこりん」な現象に

遭遇できた。その成果はJ. Am. Chem. Soc.誌に報告

できた。また、全く異なる研究テーマから、最近こ

の研究とリンクする発見が起こりつつある。現在当

研究室でホットなトピックとして研究を展開してお

り、新たな「へんてこりん」な発見や化合物合成を

期待しているところである。

さて、戦略的に重点研究を推進するためにトップ

ダウン型の大型競争的研究資金の意義が大きいが、

社会に受け答えしやすいテーマに対して過度に敏感

なプロジェクトが最近特に多くなったような気がす

る。20年・30年後の学術を予測することは極めて難

しく、パラダイムシフトは時として「へんてこり

ん」な基礎研究から生まれるのではないかと信じて

いる。そのような萌芽研究に対してご理解を示され

る貴財団は極めて意義深い。

いまだ、採択していただいた研究課題の「へんて

こりん」な反応や化合物は、薬学のパラダイムシフ

トや発展に直結する成果には変貌を遂げていないが、

もしかするといつかは少しぐらい寄与するかもしれ

ない。予定調和の結果よりも「へんてこりん」な発

見を探しながら研究の道を進み、どこかでちょっと

は薬学に恩返ししたいなと考えている。

「へんてこりん」Driven Research

京都大学大学院薬学研究科 教授 高 須 清 誠

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平成26年度事業報告概要

1 研究助成金の授与

薬学及び関連諸分野の基礎並びに応用研究に関し、将来有望な若い研究者に対して、助成金を授与した。

グループA:化学系、物理系、生物系、医療系の各分野及びこれらの複合分野の基礎的研究から合計10

件(1件100万円)(応募件数128件)

グループB:調査・統計研究を含む以下の各分野の研究、すなわち医療現場(薬剤部・薬局)における

研究、伝統医薬に関連した研究、衛生化学•環境化学を指向した研究、医薬品•医療分野に

おける分析を対象とした研究、社会薬学•レギュラトリーサイエンス研究及びこれらの複

合分野の応用研究から合計10件(1件40~80万円)(応募件数48件)

2 国際学術交流補助金の授与

1) 研究者の海外派遣補助金の授与

今年度応募者なし

2) 海外からの研究者招聘補助金の授与

授与件数2件(1件40万円)(応募件数4件)

3) 国際会議開催補助金の授与

授与件数3件(1件50万円)(応募件数3件)

3 刊行物

1) 「薬学研究の進歩-研究成果報告集31」の刊行

2) 機関誌「薬奨ニュースNo.19、No.20」の発行

平成26年度正味財産増減計算書より(※詳細は当財団HPに掲載されています)

科目 当年度 前年度 増減

一般正味財産増減の部

1.経常増減の部

(1)経常収益

経常収益計 33,986,370 33,501,985 484,385

(2)経常費用

事業費 24,750,684 24,457,322 293,362

管理費 9,273,479 9,087,362 186,117

経常費用計 34,024,163 33,544,684 479,479

当期経常増減額 -37,793 -42,699 4,906

2.経常外増減の部

当期一般正味財産増減額 -37,793 -42,699 4,906

指定正味財産増減の部

当期指定正味財産増減額 -1,500,000 -3,000,000 1,500,000

正味財産期末残高 288,764,375 290,302,168 -1,537,793

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[編集後記]

平成10年から長年にわたって本薬奨ニュースの編集をご担当戴きました後藤佐多良先生に感謝

申し上げます。誠にご苦労様でした。後藤先生の後任として本号から編集を担当させて頂くのは

佐藤公道です。新米の担当者からの執筆依頼をご快諾くださり、ご多忙中にも拘らずご執筆戴き

ました皆様に厚く御礼申し上げます。

特別寄稿を今回初めて医薬産業界から、かつて本財団評議員として、現在は維持費対策委員と

してご尽力下さっている田辺三菱製薬(株)代表取締役会長・土屋裕弘氏にご執筆戴き、医薬品

産業の位置づけ、役割、進むべき方向等に関する貴重なご意見を頂戴しました。日頃は自らの専

門領域の研究に没頭している研究者も、少なくとも時々は、このような大きな視点に立って考え

ることが社会に役立つ研究方向を探る上で必要であろうと思う次第です。

今年は、本財団にとっても大変喜ばしいことがありました。本財団で、北川理事長時代から長

年にわたって理事をお務めくださり、また多額の賛助金をお寄せ下さいました大村 智先生が

ノーベル生理学・医学賞を受賞されました。大村先生は若い薬学研究者にも大きな支援を心掛け

られ、また夢を与えて下さいました。本財団としても重ねて心からのお祝いを申し上げます。今

後とも、本財団へのご高配を頂戴出来れば幸甚に存じます。

本財団では、若い研究者、女性研究者への支援に注力したいと考えています。その意味でも、

本号の「薬学研究への道」に「薬学研究での成長と志を胸に」をご執筆戴いた倉永さんのような

若く溌剌とした将来有望な女性研究者を助成出来たことを嬉しく思います。女性研究者への助成

が拡大し、この薬奨ニュースで女性研究者特集号が組める日が来ることを楽しみにしています。

(2015年11月、佐藤公道記)

表紙写真:白鷺の舞

散歩中、求愛するような美しいポーズをとる白鷺に出会い、思わず

シャッターを押しました。1,2分後、一緒に飛び去って行きました。

さいたま市・芝川にて 村瀬清志 撮影

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役 員 等 の 名 簿

平成27年12月1日現在

名誉会長 柴田 承二 日本学士院会員・東京大学名誉教授

野島 庄七 東京大学名誉教授

会 長 北川 勲 大阪大学名誉教授

参 与 相澤 登 (公財)持田記念医学薬学振興財団名誉理事

池川 信夫 東京工業大学名誉教授

理 事 長 寺尾 允男 (一財)医薬品医療機器レギュラトリーサイエンス財団会長

理 事 池浦 義典 武田薬品工業(株)医薬研究本部本部長室長

市川 和孝 日本製薬工業協会前理事長

海老塚 豊 東京大学名誉教授

北田 光一 (一社)日本病院薬剤師会会長 千葉大学名誉教授

佐藤 公道 京都大学名誉教授

関谷 剛男 (公財)佐々木研究所附属佐々木研究所所長

辻 勉 星薬科大学教授

平井 功一 第一三共(株)元顧問

増田 典之 アステラス製薬㈱研究本部研究統括部長

監 事 後藤佐多良 順天堂大学大学院客員教授

村瀬 清志 山之内製薬(株)元取締役

評 議 員 赤池 昭紀 名古屋大学大学院創薬科学研究科教授・京都大学大学院薬学研究科客員教授

石川征四郎 三共(株)元取締役

久保 陽德 明治薬科大学顧問

小林 利彦 東京大学薬友会会長

長友 孝文 新潟薬科大学名誉教授

林 正弘 高崎健康福祉大学薬学部教授・薬学部長

増保 安彦 東京理科大学薬学部嘱託教授

宮田 直樹 名古屋市立大学創薬基盤科学研究所特任教授

吉松賢太郎 エーザイ(株)シニアサイエンティフィックアドバイザー

ロドニー スティーブンス 大正製薬(株)医薬研究本部副本部長

事務局長 藤田 雅子 (公財)薬学研究奨励財団

注:役員等は全て非常勤

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(公財)薬学研究奨励財団

〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-12-15

日本薬学会長井記念館2F

TEL 03-3407-4047 FAX 03-3407-4162 発 行 人 寺 尾 允 男

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