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50 Stage4.派遣労働の終了 Q22 契約期間途中の退職 親の介護のため、退職しなければならなくなりました。契約期間は まだ残っているのですが、退職することはできるでしょうか。 登録型派遣労働者の場合、派遣元と期間の定めのある労働契約を結ぶこ とが多いようですが、この場合には、派遣元も派遣労働者も、その契約期 間を誠実に守る義務があります。契約期間の満了前に退職することは契約 違反になりますので、派遣労働者は勝手に退職することはできません。就 業規則等に契約期間途中であっても退職できる定めがある場合には、それ に従って退職することができますが、特段の定めがない場合にも、退職が 必要な場合は合意解約ができるよう、十分話し合うことが大切です。 残念ながら派遣元の理解が得られなかった場合であっても、やむを得な い事情があるときには契約の解除を申し入れることができますが、それが 労働者の過失による場合には、派遣元から損害賠償請求をされる可能性が あります(民法第628条)。もし損害賠償請求をされた場合は、その請求 内容が適切なものか、損害賠償に応じるべき範囲はどこまでなのかなど、 お互いに納得できるまで十分に話し合うことが必要です。 ただし、実際の労働条件が労働契約を結ぶ際に明示された労働条件と異 なっていたことを理由に労働者が退職を申し出る場合には、労働契約を解 除できる場合があります。 契約期間の定めがある労働契約で、中途解除が認められる のは、どうしても働き続けられないやむを得ない事情があ る場合に限られます。

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Page 1: Q22契約期間途中の退職 - TOKYOはたらくネット...Q22契約期間途中の退職 親の介護のため、退職しなければならなくなりました。契約期間は

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Stage4.派遣労働の終了

Q22 契約期間途中の退職 親の介護のため、退職しなければならなくなりました。契約期間はまだ残っているのですが、退職することはできるでしょうか。

登録型派遣労働者の場合、派遣元と期間の定めのある労働契約を結ぶことが多いようですが、この場合には、派遣元も派遣労働者も、その契約期間を誠実に守る義務があります。契約期間の満了前に退職することは契約違反になりますので、派遣労働者は勝手に退職することはできません。就業規則等に契約期間途中であっても退職できる定めがある場合には、それに従って退職することができますが、特段の定めがない場合にも、退職が必要な場合は合意解約ができるよう、十分話し合うことが大切です。

残念ながら派遣元の理解が得られなかった場合であっても、やむを得ない事情があるときには契約の解除を申し入れることができますが、それが労働者の過失による場合には、派遣元から損害賠償請求をされる可能性があります(民法第628条)。もし損害賠償請求をされた場合は、その請求内容が適切なものか、損害賠償に応じるべき範囲はどこまでなのかなど、お互いに納得できるまで十分に話し合うことが必要です。

ただし、実際の労働条件が労働契約を結ぶ際に明示された労働条件と異なっていたことを理由に労働者が退職を申し出る場合には、労働契約を解除できる場合があります。

契約期間の定めがある労働契約で、中途解除が認められるのは、どうしても働き続けられないやむを得ない事情がある場合に限られます。

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Stage4.派遣労働の終了

派遣元 派遣先

労働者

労働者派遣契約

Q23 解雇と中途解除 派遣元から突然、解雇を言い渡されました。派遣先から「事業計画を変更したので、もう労働者を派遣してもらう必要はない」と言われたとのこと。6か月間の労働契約を結んでいたのに、3か月間で契約打ち切りでは納得がいきません。

派遣元は、派遣先から派遣契約を中途解除されたからと言って、即座に派遣労働者を解雇することはできません。

解雇とは、会社の意思で一方的に労働契約を終了させることですが、いつでも自由に行えるものではありません。

Q22「契約期間途中の退職」で示したとおり、期間を定めて労働契約を結んだ場合には、派遣元も派遣労働者も契約期間を誠実に守る義務がありますので、やむを得ない事情がない限り、派遣元が契約期間の途中で派遣労働者を解雇することはできません。

派遣元と派遣先との労働者派遣契約が中途解除された場合であっても、派遣元と派遣労働者との労働契約はそのまま存続します。派遣元は、①派遣先と連携して派遣先の関連会社での就業のあっせんを受ける、②派遣元において他の派遣先を確保するなど、派遣労働者の新たな就業機会の確保を図らなければなりません(派遣元指針第2の2(3))。

労働契約

労働者派遣契約と労働契約は別。

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Stage4.派遣労働の終了

派遣契約が中途解除されても、派遣労働者と派遣元とは雇用期間満了までは労働契約が継続しており、派遣元は派遣労働者に賃金を支払う必要があります(民法第536条第2項)。

派遣労働者を休業させる場合には、休業手当として、平均賃金の6割以上の手当を支払わなければなりません(労働基準法第26条)。

派遣元だけではなく派遣先も、派遣先の都合で派遣契約を解除する場合には、派遣労働者の新たな就業機会の確保や休業手当等の支払いに要する費用を負担する等、派遣労働者の雇用の安定に必要な措置を講じるよう義務付けられています(派遣法第29条の2)。

なお、上記のような、派遣先の都合による中途解除時に派遣元・派遣先が講じる措置については、派遣契約締結時に定め、書面に記載しておかなければなりません(同法第26条第1項、同法施行規則第21条第3項)。

前述のとおり、期間を定めて労働契約を結んだ場合には、やむを得ない事情がない限り、派遣元が契約期間の途中で派遣労働者を解雇することはできません。やむを得ない事情で派遣労働者を解雇しようとする場合は、少なくとも解雇日の30日前に解雇の予告を行うか、平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払わなければなりません(労働基準法第20条)。

なお、雇用期間が2か月以内の労働者は解雇予告の対象から除外されますが、契約期間が2か月以内であっても、契約を更新し2か月を超えて雇用されている場合には、継続的な雇用関係があるとみなされて、上記の手続きが必要になります。

また、試用期間中の労働者については、解雇予告は必要とされませんが、14日を超え引き続き使用されるようになった場合は、解雇予告(少なくとも30日前)か、解雇予告手当(平均賃金の30日分以上)の支払いが必要です(労働基準法第20条、第21条)。

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Stage4.派遣労働の終了

Q24 雇止め 3か月契約を更新しながら、同じ派遣元で3年以上働いてきましたが、「次回の更新はしない」と派遣元から言われてしまいました。受け入れるしかないのでしょうか。

「雇止め」が簡単には認められない場合もあります。

有期労働契約において雇用期間の満了時に更新を拒否することを雇止めと呼んでいます。契約である以上、期間満了により契約は終了となるのが原則です。しかし、契約更新を繰り返し、一定期間雇用を継続した場合や、期間満了後の継続雇用について労働者の合理的な期待があると認められるような場合には、解雇の場合と同様、合理的理由と手続きが必要となります(労働契約法第19条)。厚生労働省は、「雇止め」をめぐるトラブルを未然に防止するため、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」を次のように示しています。

【有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(概要)】(平成25年4月1日から適用)

◇雇止めの予告(第1条) 使用者は、期間の定めのある労働契約(3回以上更新し、又は雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係るものに限り、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。)を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約の期間の満了する日の30日前までに、その予告をしなければならない。

◇雇止めの理由の明示(第2条) 使用者は、契約を更新しない又は更新しなかった理由について労働者が証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。

◇契約期間についての配慮(第3条) 使用者は、期間の定めのある労働契約(当該契約を1回以上更新し、かつ、雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務しているものに限る。)を更新しようとする場合においては、当該契約の実態及び当該労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければならない。

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Stage4.派遣労働の終了

同一の派遣元で5年を超えて有期労働契約を更新している派遣労働者は、無期雇用に転換できます。

平成25年4月1日以降に契約期間の初日を迎える有期労働契約が、同一の使用者(派遣元)との間で、5年を超えて反復更新された場合に、その契約と同じ条件で期間の定めのない労働契約を結ぶ権利が労働者に発生します。労働者が申込むと、使用者(派遣元)は、自動的に申込みを承諾したものとみなされます(労働契約法第18条)。

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Stage4.派遣労働の終了

Q25 雇用安定措置 労働契約を更新して、通算3年間働くことが決まりましたが、その後はどうなるのでしょうか。

同一の組織単位(課など)に継続して3年間派遣される見込みのある方には、派遣終了後の雇用継続のために、派遣元から以下の措置(雇用安定措置)が講じられます。

派遣元は、同一の組織単位(課など)に継続して3年間派遣される見込みのある派遣労働者等に対し、派遣後の雇用継続のため、以下の措置(雇用安定措置)を講じなければなりません(派遣法第30条)。義務は、派遣元によって適切に履行されるか、派遣労働者が就業継続を希望しなくなるまで、効力が持続します。

雇用安定措置の対象者は、以下の図のとおりです。雇用安定措置の対象者 派遣元事業主の責務の内容

A:同一の組織単位に継続して3年間派遣される見込みがある方(※1)

上記①~④のいずれかの措置を講ずる義務(※3)

B:同一の組織単位に継続して1年以上3年未満派遣される見込みがある方(※1)

上記①~④のいずれかの措置を講ずる努力義務

C:(上記以外で)派遣元に雇用された期間が通算1年以上の方(※2)

上記②~④のいずれかの措置を講ずる努力義務

【雇用安定措置の内容】①派遣先への直接雇用の依頼② 新たな派遣先の提供(派遣労働者の居住地やこれまでの待遇等に

照らして合理的なものに限る)③派遣元での(派遣労働者以外としての)無期雇用④その他安定した雇用の継続を図るための措置  ※雇用を維持したままの教育訓練、紹介予定派遣等

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Stage4.派遣労働の終了

※1 いずれも、本人が継続して就業することを希望する場合に限られます。※2 現在、いわゆる「登録状態」にある方も、この対象者の中に含まれ

ます。※3 ①の措置を講じた結果、派遣先での直接雇用に結びつかなかった場

合には、派遣元は、②~④のいずれかの措置を追加で講じる義務があります。

派遣元は、対象となる派遣労働者に対し、派遣終了の前日までに、キャリア・コンサルティングや労働契約更新時の面談等の機会を通じて、継続就業の希望の有無と、希望する雇用安定措置の内容を確認することになっています。

派遣元は、派遣労働者の希望を尊重し、本人が希望する措置を講じるよう努めなければなりません。また、特に本人が派遣先での直接雇用を希望する場合には、派遣元は派遣先への直接雇用の依頼を行い、直接雇用が実現するように努めなければなりません。

派遣元は、派遣元管理台帳に「派遣先へ直接雇用の依頼を行った」等の講じた雇用安定措置の内容を記載する必要があります。

雇用安定措置に関して何か疑問があれば、労働相談情報センター(P72)へ相談しましょう。