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1 T echnical Cooperation for Landslide Mitigation Project Project Brief Note 国際協力機構 (JICA) スリランカ民主社会主義共和国 プロジェクト期間: 2014 Oct. – 2018 Oct. スリランカにおいて、土砂災害は主な自然災害の一 つとなっている。土砂災害に脆弱なスリランカ中央部 の山岳地域は国土の 20%近くを占め、総人口の約 30% が居住している。 モンスーン期の多量の降雨が土砂災害の引き金とな り多くの災害が発生する一方、急傾斜地が多いという 地形的要因や地盤が脆いという地質的要因も、スリラ ンカにおいて土砂災害が多発している理由である。 パイロット地域図 Nov. 2016

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1 Technical Cooperation for Landslide Mitigation Project Project Brief Note

国際協力機構 (JICA)

スリランカ民主社会主義共和国

プロジェクト期間: 2014 Oct. – 2018 Oct.

スリランカにおいて、土砂災害は主な自然災害の一

つとなっている。土砂災害に脆弱なスリランカ中央部

の山岳地域は国土の 20%近くを占め、総人口の約 30%

が居住している。

モンスーン期の多量の降雨が土砂災害の引き金とな

り多くの災害が発生する一方、急傾斜地が多いという

地形的要因や地盤が脆いという地質的要因も、スリラ

ンカにおいて土砂災害が多発している理由である。

パイロット地域図

Nov. 2016

2 Technical Cooperation for Landslide Mitigation Project Project Brief Note

近年(2003、2007、2010、2011)に発生した土砂災

害では、約 300 の人命が失われている上、広大な土地

やインフラ等にも損害が出ており、大きな経済的損失

を被っている。

被災記録によれば、地すべりは他の土砂災害(斜面崩

壊・落石・土石流)よりも頻発しており、それらへの

対策は重要であると言える。

国家建築研究所(The National Building Research

Organization、以下 “NBRO"と称す)はスリランカにお

いて土砂災害の軽減策の実施と早期警報に関する重

要な役割を担っている。また、NBRO は道路開発庁

(RDA)の国道沿いにおける土砂災害対策に対する助

言も行っている。

NBRO は 1985 年に研究プロジェクト "Study of

Landslides in Sri Lanka"を開始し、同プロジェクトは地

すべりが国家的に重要な自然災害問題として認識さ

れる端緒となった。そして、土砂災害軽減のための国

家レベルにおける統合・協調的取り組みが進められる

こととなった。これ以降、スリランカ政府は様々な土

砂災害抑止軽減策(地すべりハザードマッピング、土

地利用規制、急傾斜地開発規制、土砂災害関連機関の

能力向上、土砂災害に関する啓蒙活動と土地利用者・

開発者に対する教育、救急救援・災害復旧復興の強化、

被災者の移住)を実施してきた。

2013 年 3 月 14 日、本プロジェクト対象サイトも含

む 7 県を対象にした円借款事業 "Landslide Disaster

Protection Project of the National Road Network" に関す

る合意が取り交わされた。この円借款事業においては、

主要国道沿いの地すべりリスクの高い斜面に対する

対策工の施工、災害リスクの軽減、道路ネットワーク

及び近隣住民の安全化が実施される予定である。

このような状況の下、スリランカ政府は土砂災害対

策強化プロジェクト(以下”本プロジェクト”と称す)

の立ち上げを日本国政府へ要望し、日本国政府もこれ

を受諾した。本プロジェクトでは、OJT を通じた NBRO

スタッフの能力強化、技術ガイドラインの作成、及び

パイロットサイトにおける土砂災害対策工施工が実

施される。本プロジェクトの対象地域は、中央州のキ

ャンディ県、マタレ県、ヌワラエリヤ県及びウバ州の

バドゥッラ県である。

(1) プロジェクトの目的と期待される成果

本プロジェクトの目的は、NBRO への技術協力を通じ

た、土砂災害に関連する構造物/非構造物対策能力(調

査・設計・施工監理・警報・避難・土地利用規制)の

強化である。

期待されるプロジェクト成果

成果 1: 土砂災害対策のための調査、評価に係る能

力が強化される.

成果 2: 地すべり対策の設計、施工監理及びモニタ

リング能力が強化される

パイロットサイト: バドゥッラ県・ヌワラエリヤ県

成果 3: 斜面崩壊対策の設計、施工監理及びモニタ

リング能力が強化される

3 Technical Cooperation for Landslide Mitigation Project Project Brief Note

パイロットサイト: キャンディ県

成果 4: 落石対策の設計、施工監理及びモニタリン

グ能力が強化される

パイロットサイト:マタレ県

Output 5: 土砂災害軽減対策(非構造物対策を含む)

の知識とノウハウが改善される

(2) 実施組織体制

(3) 基本方針

1) 円 借 款 事 業 “Landslide Disaster Protection

Project” との連携による効果的かつ多様な技術

移転

2) 日本の土砂災害分野の知見を生かした技術移転

3) 持続発展を可能にする能力開発への支援

4) 持続性を考慮した地形情報の取得と、解析および

住民啓発への活用

5) 住民を巻き込んだパイロットプロジェクト運営

と警戒避難活動の推進

6) 警戒避難体制及び工事中の安全管理とリンクし

た警戒避難基準(案)の設定

7) パイロットプロジェクトのステージごとの適切

な運営

(4) プロジェクト活動フローチャート

4 Technical Cooperation for Landslide Mitigation Project Project Brief Note

パイロットサイトにおける現地調査 パイロットサイトにおける対策⼯設計のための調査

キャンディ斜⾯崩壊パイロットサイト現地調査

2014 年 12 ⽉にキャンディ県パイロットサイトで起きた斜⾯崩壊

ドローンによる空撮と 3 次元地形データ作成

ドローンにて撮影した空撮写真を元に、3 次元地形データを作成

Kandy Nurseʼs Training School

Uva Wellassa University

バドゥッラ県パイロットサイトにおけるボーリング及び標準貫⼊試験

ボーリングコアサンプル

NBRO の協⼒の下、JICA 専⾨家チームによる対策⼯設計のための現地調査を 2014 年 10 ⽉から 2015 年 5 ⽉にかけて実施

← キャンディのパイロットサイトにて斜⾯崩壊が発⽣2014 年 12 ⽉に JICA 専⾨家チームと NBRO が現地調査を実施

NBRO と JICA 専⾨家協⼒の下、ボーリング・標準貫⼊試験・コアの採取を実施 現場での掘削作業を通じ、コアの採取等に関わる技術移転が⾏われた

5 Technical Cooperation for Landslide Mitigation Project Project Brief Note

パイロットサイトにおけるモニタリング調査 パイロットサイトにおける継続的なモニタリングの実施

対策⼯設計と事業費積算 現地調査実施及び観測データに基づいた安定解析の実施 対策⼯設計及び事業費積算の実施 上記対策事業に関する⼊札図書の作成と、⼊札の実施

データ収集

バドゥッラ県パイロットサイトに設置された地盤伸縮計

地下⽔位計と孔内傾斜計の設置

対策⼯設計会議の様⼦

- 地下⽔位計、孔内傾斜計、地盤伸縮計、パイプ歪み計がパイロットサイトに設置された

- 観測データの収集は NBRO スタッフにて⾏われている - データ収集間隔は、2 週間〜1 ヵ⽉に 1 回 - 観測データは安定解析及び対策⼯設計に活⽤された

データ収集

現地調査とモニタリングの結果を⽤いて安定解析が⾏われ、各サイトに適した対策⼯の検討が NBRO と協働でなされた 決定された対策⼯の設計及び事業費積算、⼊札図書の作成が進められ、2016 年 1 ⽉に⼊札が実施された結果、各サイトの施⼯業者が決定した

6 Technical Cooperation for Landslide Mitigation Project Project Brief Note

パイロットサイトにおける対策⼯施⼯監理 ヌワラエリヤ県ウダマドゥラ地区 (地すべり)

バドゥッラ県バドゥルスリガマ地区 (地すべり)

マータレ県アラグマレ地区 (落⽯)

2016 年 1 ⽉の⼊札を経て、2016 年 5 ⽉からパイロットサイトの⼯事が本格稼働しており、プロジェクトチームは NBRO と協働で施⼯監理にあたっている

対策⼯ 設計図⾯

横ボーリングPVC パイプの挿⼊と

集⽔状況

⼩規模ダム周辺の状況

⽔路⼯施⼯進捗状況

⼀部完成

対策⼯ 設計図⾯

対策⼯ 設計図⾯

施⼯現場の状況

7 Technical Cooperation for Landslide Mitigation Project Project Brief Note

コスランダ地すべりに関するアクションレビュー調査 コスランダ地すべりに関するアクションレビュー調査の実施

アクションレビュー調査結果報告セミナー

ヘリによる空中視察

被災地現地調査

コスランダ地すべりに関するセミナー

地すべりの概要

2014 年 10 ⽉ 29 ⽇ 7:30 頃、バドゥッラ県コスランダにて地すべりが発⽣した。37 名の死者⾏⽅不明者が出るなど、被害甚⼤であった。 被災状況の把握と地すべり発⽣メカニズム把握のため、ヘリによる空中視察と現地調査が JICA 専⾨家チーム、NBRO 及び DMC 協⼒の下実施された。 上記調査に引き続き、被災時の各機関/住⺠緊急対応状況に関するアクションレビュー調査が⾏われた。この調査の⽬的は、早期警報体制と緊急対応の間のギャップを明らかにし、より良い災害対応体制の構築に資する提⾔を⾏うことである。

8 Technical Cooperation for Landslide Mitigation Project Project Brief Note

セミナー/研修

ドローンを⽤いた現場調査と 3次元地形モデル作成に関するOJT

本邦研修

短期専⾨家によるワークショップ(下)と 地すべり現場視察(左)

NBRO 職員の能⼒向上を⽬的とした、⼟砂災害対策に関する各種セミナーやワークショップの開催

5 名の NBRO スタッフが来⽇し、本邦研修に参加した(2015 年 4 ⽉19 ⽇〜28 ⽇) 研修参加者は、まず国交省やその関連機関において⼟砂災害対策に関する講義を受け、それに引き続いて実際の⽇本の⼟砂災害対策現場を視察した

⽇本からの短期専⾨家派遣に合わせ、⼟砂災害対策のための⼟地利⽤規制や、早期警戒及びリスク情報伝達⼿法に関するワークショップを⾏ったのに加え、NBRO 職員と共に現地視察も実施した

実際の地すべり被災地でのUAV による空撮と、その後の解析による 3 次元データ作成に関する OJT が実施され、NBRO 職員に技術の紹介が⾏われた