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フィリピンの例に見るCSRによる森林再生の意義、課題
株式会社パスコ 森 尚
(NPO環境修復保全機構 国際環境協力専門家)1
パスコの森林関連コンサルタント・サービスn 国内では 森林GISのデザイン、データベース構築などにより、主として地方自治体
の需要に応えている
n 海外では
途上国を対象に、REDD+のための森林インベントリーの設計、国家森林資源調査、バイオマス推定、森林土地利用区分調査を行っている。
そしてこれからは NGOや民間企業にも、わかりやすい森林の維持管理にかかる情報システム等のサポートを充実したい ・・・・・・・・・・・ CSRの後押し、ドローンの活用も視野に
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Ø CSRによる植林プロジェクトをとりまく社会経済的環境を、実際の地域住民の立場から見つめること。
Ø 植林活動と再生森林の継続性を担保するための課題を探り、CSR活動の成功のカギを見出すこと。
研修参加の目的
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地域の生計向上における森林再生の意義• FLUP(Forest Land Use Plan:森林土地利用計画)に沿って森林
再生・維持を図ることに行政の財政的支援が得られる
LGU(Local Government Unit: 地方自治体)の森林土地利用計画(FLUP: Forest Land Use Plan) が後押し
NGP(National Greening Program)では政府予算が地域の植林活動に大きく貢献している
• インセンティティブとなるものがある -苗木生産、販売はメインのファクター -その他、生物多様性がもたらす産物の商品化 -NGPの果樹を含む コモディティ・ロードマップを考慮
• 森林の持続的維持管理によって、副産物(コベネフィット)が期待できる
但し、その仕組みをCSRの戦略に組み入れることがポイントとなる。
• 農村の生活水準の向上に寄与するアグロビジネスに期待 Rainforestation Farming による希少価値フルーツ等 4
Rainforestation Farming とは
Rain Forestation Restoration Intiative(RFRI) に基づき、フィリピン国内の荒廃地を在来自然樹種によって森林を再生させる手法でその目的は:”RFRI aims to rehabilitate degraded landscapes and restore key ecosystem services and functions while providing forest-dependent communities an alternative source of livelihood.”土地所有者に代替的、より持続可能な土地利用が可能となる森林農法で、森林に依存している農村住民に代替生計手段として農作物等の収穫を可能とし、生態系サービスの恩恵をもたらそうとするものである。
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森林は農村社会と共存してこそ維持管理が担保される
農牧業の営み
森林の再生・維持
村民生活
バランスのとれた森林との依存関係が保たれる生態系連鎖を強化するような企業の介在が求められる
Rain Forestationによる森林回復による生態系サービスの創出
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植林の成功率を高めるための留意事項 -三つの要因
■社会的要因 フィリピンで見るように、PO(People's Organization)といった コミュニティ組織が森林の維持管理を、地方政府の支援を得て住
民参加によって実現しており、こういった社会的地盤が育っていることが、企業による植林活動と森林の維持に欠かせない。
■自然的要因 植林の対象になる山地では、20度以上の急傾斜地や、カヤ科の
草本がほとんどの「オープン・フォレスト」が多く、乾季(明確なドライシーズンがある場合)では苗木の活着が困難であることが予想され、時期の選択、土壌条件等適地選定がカギになる。
資料: Mangatarem "Critical Habitat Managemet Plan"
Slope Approximate Area (Hectares) Percentage (%)
1. Undulating to Rolling (8-18%) 20.076 0.39
2. Rolling to Hilly (18-30%) 1,476.713 28.58
3. Hilly to Mountainous (30-50%) 1,455.474 28.17
4. Mountainous (Above 50%) 2,214.813 42.86
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地域の在来種である白ラワン
やナラ(Shorea属)の苗木は植
栽後3,4年で樹高が5mを超え
ていることも。これらはDENRが
かって植えた外来種の成木の
樹陰を利用して植栽されており、
地域固有の森林植生(潜在的
熱帯降雨林)へと移行すること
が期待される。
■技術的要因*既存樹の疎林を利用して、被陰地に在来種(陰樹が多
い)を植栽することで、苗木の乾燥化を防ぐ *菌根菌の導入による生育の優れた苗木の普及 → DENR(Department of Environment and Natural Resources)でも政策的に推奨
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森林の維持管理のインセンティブ
活動のテーマ リソースとなる
森林タイプ
企業等の支援によるコミュニティ活動の可能性
森林劣化防止と質の向上によるカーボンストックの保持、市場価値付与
原生森林への誘導 劣化広葉樹林 在来樹種の再生
造林技術支援ー
育苗・林地肥培(竹肥の活用)
森林副産物の商品化 RainforestationFarmingの実践
オープンフォレスト
(プロダクションゾーン)
・木質燃料の生産林造成
・ペレット、木炭・木質バイオマスエネルギーの利活用による森林保全への逆転的発想
特殊林産物の収穫を目的としたプランテーション経営
住民による管理運営のノーハウを追及
オープンフォレスト(新規森林造成)
高付加価値林産物(Agarwood:沈香木)新規植林→マーケットの開発と一体化
研究・体験学習の機会提供
生態系サービスによる自然共存空間の実践
天然広葉樹林(閉鎖林・Protected Zone)
エコツアーの企画、ビジターセンターの設置と住民による運営・管理(森林インストラクターの育成)
生物多様性、持続的維持管理を目指したコミュニティ主体の森林の活用、植林の展望
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CSRとしての植林活動サポートの重要性
• 維持管理における企業サイドの支援
森林生育のモニタリング手法とその実践
• 現地研究機関等の専門家による現地セミナー開催
森林の造成、維持に関するリーダーの育成
• 活動成果の情報発信、イベントの企画
新しい技術を取り入たるためのワークショップ 森林オーナー制度による都市住民の取り込み
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ま と めv フィリピンの農村地域では森林依存社会が 人口比で大きなウエイトを占めている(約45%)
v 森林との共存を可能とする中央政府・地方政府の制度、法律は整備されている
v これらに整合した森林再生、保全がCSRとし
ての植林支援の理念とすべき
v 造林技術の基礎は備わりつつあるが、更なる技術的開発、改良を現地ステークホルダーと手を携えていくことも課題となる
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今後、自社で取り組みたいこと
• CSRで行う森林再生を支援 植林の適地選定 植林後の生育モニタリング• CSR活動による森林保全のパートナーの
可能性を検討する 「森から世界を変える REDD+プラットフォーム」 のなかで、企業によるREDD+の一環にか
かわりたい
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