pabalan and pitzer (1988)の塩化カリウム水溶液に関する...

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兵庫教育大学 澁江靖弘 (シブエ ヤスヒロ) 塩化カリウム水溶液の Pitzer 1 Pabalan and Pitzer (1988)の塩化カリウム水溶液に関する Pitzer 本サイト内で「電解質水溶液の熱力学(Pitzer式)」と題する文書をアップロードしている(http:// www.hyogo-u.ac.jp/sci/yshibue/solution.html)。この文書は,Pabalan and Pitzer (1988)が与えた塩化カ リウム水溶液の熱力学的性質を表す式を解説する。 1. はじめに Pabalan and Pitzer (1988)は塩化カリウム水溶液の様々な熱力学的性質を計算する式(PP式)を求 めた。PP式の適用可能範囲は,温度が0°Cから325°C,圧力が飽和蒸気圧から500 bar,塩化カリウ ムの濃度が6 mol kg 1 までである。ただし, 220°C以上では3 mol kg 1 以下の濃度条件での定圧熱容 量の測定報告値だけが計算式を求める時に使用されている。さらに,50°C以上では4.5 mol kg 1 下の測定結果だけが密度の計算式を求める時に使用されている。 Pabalan and Pitzer (1988)中で示さ れている計算結果は6 mol kg 1 までであるが,高濃度領域における計算結果には不確かさが大きい。 このことと関連して, Mao and Duan (2008)573 K4.0 mol kg 1 4.5 mol kg 1 の水溶液の密度を PP式で計算し,計算結果を圧力に対してプロットすると圧力の増加に伴って水溶液の密度が小さく なることを記している。これは,高濃度領域でPP式が正確ではないことを示している。そこで,こ の解説では, PP式を用いて密度を計算する時に適用可能な濃度上限を温度と圧力に関して検討した 結果を後半で記す。 PP式を導くためにPabalan and Pitzer (1988)は次のような手順を取った。 (1)塩化カリウム水溶液の密度に関する測定値を回帰して,1 kgの水にmモルの塩化カリウムが溶解 している水溶液の体積を表すPitzer式を求めた。 (2)様々な圧力条件で測定されてきた定圧熱容量の値を(1)で求めたPitzer式を用いて圧力補正を加え 179 barにおける定圧熱容量に換算した。 (3)(2)で求めた定圧熱容量の値をPitzer式として表した。この際に,圧力を179 barに固定して標準状 態における塩化カリウムの定圧熱容量とPitzerパラメータ(β (0)J β (1)J ,およびC J )を温度の関数と して表した。 (4)(3)で求めた定圧熱容量に関するPitzerパラメータの計算式を温度に関して積分することで見かけ の相対モルエンタルピーを計算する式を求めることができる。圧力条件は179 barである。この計算 式に25°C179 barにおけるPitzerパラメータ(β (0)L β (1)L ,およびC L )が必要となる。Pabalan and P itzer (1988)は文献値から25°C1 barにおけるPitzerパラメータを求めた後で,圧力補正を加えて17 9 barにおける値を計算している。 (5)(4)で求めた相対モルエンタルピーに関するPitzerパラメータの計算式を温度に関して積分するこ とで浸透係数やイオンの平均活量係数を計算する式を求めることができる。圧力条件はやはり179 barのままである。この計算式に25°C179 barにおけるPitzerパラメータ(β (0) β (1) ,およびC)が必 要となる。Pabalan and Pitzer (1988)は文献値から25°C1 barにおけるPitzerパラメータを求めた後 で,圧力補正を加えて179 barにおける値を計算している。 PP式では純水の性質をHaarGallagherKellの式(Haar et al., 1984)を用いて計算している。本サイ ト内の別の文書(「純水のヘルムホルツエネルギーを与えるHaarGallagherKellの式」)でこの式に ついて解説しているので,ここでは繰り返さない。また,PP式はPitzer式を塩化カリウム水溶液に 適用したものであり,本サイト内の別の文書(「電解質水溶液の熱力学(Pitzer式)」,「Pitzer達が与 えた塩化ナトリウム水溶液に関するPitzer式」)における解説との重複をできる限り避けることにす る。付録1として本文書で使用している記号を一覧にして示す。なお,PP式ではデバイ―ヒュッケ ルのパラメータをBradley and Pitzer (1979)の式から求めている。標準状態を任意の温度・圧力にお いて溶質が無限希釈状態の時として, PP式から標準状態における塩化カリウムの部分モルギブスエ ネルギー,部分モルエンタルピー,部分モルエントロピー,部分モル定圧熱容量,部分モル体積を 計算することができる。さらに,適用可能濃度範囲内で水溶液のギブスエネルギーと過剰ギブスエ ネルギー,エンタルピーと相対モルエンタルピー,エントロピーと過剰エントロピー,密度,浸透 係数,イオンの平均活量係数,定圧モル熱容量を計算することができる。

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兵庫教育大学 澁江靖弘 (シブエ ヤスヒロ)

塩化カリウム水溶液の Pitzer 式 1

Pabalan and Pitzer (1988)の塩化カリウム水溶液に関する Pitzer 式

本サイト内で「電解質水溶液の熱力学(Pitzer式)」と題する文書をアップロードしている(http://www.hyogo-u.ac.jp/sci/yshibue/solution.html)。この文書は,Pabalan and Pitzer (1988)が与えた塩化カ

リウム水溶液の熱力学的性質を表す式を解説する。 1. はじめに

Pabalan and Pitzer (1988)は塩化カリウム水溶液の様々な熱力学的性質を計算する式(PP式)を求

めた。PP式の適用可能範囲は,温度が0°Cから325°C,圧力が飽和蒸気圧から500 bar,塩化カリウ

ムの濃度が6 mol kg−1までである。ただし,220°C以上では3 mol kg−1以下の濃度条件での定圧熱容

量の測定報告値だけが計算式を求める時に使用されている。さらに,50°C以上では4.5 mol kg−1以

下の測定結果だけが密度の計算式を求める時に使用されている。Pabalan and Pitzer (1988)中で示さ

れている計算結果は6 mol kg−1までであるが,高濃度領域における計算結果には不確かさが大きい。

このことと関連して,Mao and Duan (2008)は573 Kで4.0 mol kg−1と4.5 mol kg−1の水溶液の密度を

PP式で計算し,計算結果を圧力に対してプロットすると圧力の増加に伴って水溶液の密度が小さく

なることを記している。これは,高濃度領域でPP式が正確ではないことを示している。そこで,こ

の解説では,PP式を用いて密度を計算する時に適用可能な濃度上限を温度と圧力に関して検討した

結果を後半で記す。 PP式を導くためにPabalan and Pitzer (1988)は次のような手順を取った。

(1)塩化カリウム水溶液の密度に関する測定値を回帰して,1 kgの水にmモルの塩化カリウムが溶解

している水溶液の体積を表すPitzer式を求めた。 (2)様々な圧力条件で測定されてきた定圧熱容量の値を(1)で求めたPitzer式を用いて圧力補正を加え

て179 barにおける定圧熱容量に換算した。 (3)(2)で求めた定圧熱容量の値をPitzer式として表した。この際に,圧力を179 barに固定して標準状

態における塩化カリウムの定圧熱容量とPitzerパラメータ(β(0)J,β(1)J,およびCJ)を温度の関数と

して表した。 (4)(3)で求めた定圧熱容量に関するPitzerパラメータの計算式を温度に関して積分することで見かけ

の相対モルエンタルピーを計算する式を求めることができる。圧力条件は179 barである。この計算

式に25°Cで179 barにおけるPitzerパラメータ(β(0)L,β(1)L,およびCL)が必要となる。Pabalan and Pitzer (1988)は文献値から25°Cで1 barにおけるPitzerパラメータを求めた後で,圧力補正を加えて179 barにおける値を計算している。 (5)(4)で求めた相対モルエンタルピーに関するPitzerパラメータの計算式を温度に関して積分するこ

とで浸透係数やイオンの平均活量係数を計算する式を求めることができる。圧力条件はやはり179 barのままである。この計算式に25°Cで179 barにおけるPitzerパラメータ(β(0),β(1),およびC)が必

要となる。Pabalan and Pitzer (1988)は文献値から25°Cで1 barにおけるPitzerパラメータを求めた後

で,圧力補正を加えて179 barにおける値を計算している。 PP式では純水の性質をHaar−Gallagher−Kellの式(Haar et al., 1984)を用いて計算している。本サイ

ト内の別の文書(「純水のヘルムホルツエネルギーを与えるHaar−Gallagher−Kellの式」)でこの式に

ついて解説しているので,ここでは繰り返さない。また,PP式はPitzer式を塩化カリウム水溶液に

適用したものであり,本サイト内の別の文書(「電解質水溶液の熱力学(Pitzer式)」,「Pitzer達が与

えた塩化ナトリウム水溶液に関するPitzer式」)における解説との重複をできる限り避けることにす

る。付録1として本文書で使用している記号を一覧にして示す。なお,PP式ではデバイ―ヒュッケ

ルのパラメータをBradley and Pitzer (1979)の式から求めている。標準状態を任意の温度・圧力にお

いて溶質が無限希釈状態の時として,PP式から標準状態における塩化カリウムの部分モルギブスエ

ネルギー,部分モルエンタルピー,部分モルエントロピー,部分モル定圧熱容量,部分モル体積を

計算することができる。さらに,適用可能濃度範囲内で水溶液のギブスエネルギーと過剰ギブスエ

ネルギー,エンタルピーと相対モルエンタルピー,エントロピーと過剰エントロピー,密度,浸透

係数,イオンの平均活量係数,定圧モル熱容量を計算することができる。

兵庫教育大学 澁江靖弘 (シブエ ヤスヒロ)

塩化カリウム水溶液の Pitzer 式 2

2. 標準状態における塩化カリウムの部分モル量 Pabalan and Pitzer (1988)は,温度がTで圧力がpの条件で塩化カリウムの標準状態における部分モ

ル体積を次式のように表した。

係数(q1からq15)の値を表1に示す。

さらに,Pabalan and Pitzer (1988)は定圧熱容量の測定値に圧力補正を加えて179 barにおける値

に換算した後で,179 barにおいて標準状態での塩化カリウムの部分モル定圧熱容量を次式のように

表した。

係数(u1からu7)の値を表2に示す。179 bar以外での圧力条件における標準状態での塩化カリウム

の部分モル定圧熱容量の計算には次の関係式を用いる。

関係式(3)を用いると部分モル定圧熱容量の計算を次のように行うことができる。

積分の計算は,求めようとしている温度における部分モル体積の値を用いて行う。ここで,式(1)と式(2)をそれぞれ式(4.2)の右辺の第二項と第一項に代入すると次式を得ることができる。

式(5)が標準状態における塩化カリウムの部分モル定圧熱容量の計算式である。 標準状態における塩化カリウムの部分モル定圧熱容量と部分モル体積を用いて,高温・高圧にお

( )2 6 72

, KCl 1 3 4 5 2( , 179bar) ln (2)227 647

pu uuC T u u T u T u T

T T T= + + + + + +

− −

2 25 7 102KCl 1 3 4 6 8 9

2 1512211 13 14

( , )647 647

(1)647

q q qqV T p q q T q T p q q T q TT T T T

qqp q q T q TT T

= + + + + + + + + + − −

+ + + + + −

2, KCl KCl

2 (3)p

pT

C VTp T

∂ ∂ = − ∂ ∂

( )

( )( )

( )

( )( )

2 6 72, KCl 1 3 4 5 2

5 7 102 2 24 92 3 2 3

15123 3142 3

( , ) ln227 647

2( 179) 179647 647

2 179 (5)3 647

pu uuC T p u u T u T u T

T T T

q T q q Tqp q T p q TT TT T

q Tqp q TT T

= + + + + + +− −

− − + + − − + + − −

− − + + −

, KCl, KCl KCl

179

2KCl

KCl 2

179

( , ) ( , 179bar) d (4.1)

= ( , 179bar) d (4.2)

p

pp p,

T

p

p,

p

CC T p C T pp

VC T T PT

⌠⌡

⌠⌡

∂ = + ∂

∂ − ∂

兵庫教育大学 澁江靖弘 (シブエ ヤスヒロ)

塩化カリウム水溶液の Pitzer 式 3

ける塩化カリウムの部分モルエンタルピー,部分モルエントロピー,および部分モルギブスエネル

ギーを計算することができる。これを次に示していく。 まず,Pabalan and Pitzer (1988)では指定されていないエンタルピーの基準状態を次のように取る。

水については0 Kの理想気体,溶質については298.15 Kで1.01325 barの時とおき,基準状態の時に

エンタルピーの値が0であるとおく。つまり,次の式(6)を考える。

以下では,298.15 KをT0,1.01325 barをp0と表すことにする。標準状態における塩化カリウムの定圧モ

ル熱容量を用いて標準状態における部分モルエンタルピー KClH

を以下のようにして求めることがで

きる。まず,179 barで次の関係式が成り立つ。

右辺の第二項は,温度を298.15 Kに取った時の積分値を示す。この項の計算方法は後で示す。右辺の第

三項は,式(2)を代入して計算することができる。

式(7)の左辺の値を求めることができれば,温度がTで圧力がpの時の標準状態における部分モルエンタ

ルピーを次式で求めることができる。

式(9)の右辺の第二項は,求めようとしている温度における積分値である。 ここで,式(7)の右辺の第二項と式(9)の計算で必要となる部分モルエンタルピーの圧力微分について

記す。この計算は次に示す関係式を用いて部分モル体積から求めることができる。

右辺に式(1)を代入して整理すると次式を得ることができる。

KCl KClKCl (10)

T p

H VV Tp T

∂ ∂ = − ∂ ∂

KClKCl KCl

179

( , ) ( , 179bar) d (9)

p

T

HH T p H T pp

⌠⌡

∂ = + ∂

( )

( ) ( ) ( ) ( ) ( )

( ) ( ) ( )

0

0

2 6 72, KCl 1 3 4 5 2

2 21 0 2 0 3 0 0 0 4 0

3 35 0 6 0 7

0

( , 179bar) d ln d (8.1)227 647

1ln ln ln ln2

1 1 1ln 227 ln 227 3 647 647

TT

pT

T

u uuC T T u u T u T u T TT T T

u T T u T T u T T T T T T u T T

u T T u T T uT T

⌠⌡

= + + + + + +

− −

= − + − + − − − + −

+ − + − − − + − − −

(8.2)

( )KCl 298.15K, 1.01325bar 0 (6)H ≡

( )0

0

179

KClKCl KCl , KCl0 0( , 179bar) , d ( , 179bar) d (7)

T

pTT

p

HH T H T p p C T Tp

⌠ ⌠ ⌡⌡

∂ = + + ∂

兵庫教育大学 澁江靖弘 (シブエ ヤスヒロ)

塩化カリウム水溶液の Pitzer 式 4

したがって,式(7)の右辺の第二項は次式のようになる。

また,式(9)の右辺の第二項は次式のようになる。

そこで,式(12)と式(8.2)の右辺の値を式(7)に代入すれば179 barで標準状態での塩化カリウムの部分

モルエンタルピーを求めることができる。次に,この値と式(13)の右辺の値を式(9)の右辺に代入す

れば,高温・高圧条件における標準状態での塩化カリウムの部分モルエンタルピーを求めることがで

きる。計算式をまとめると次のようになる。

( )( )

( )( )

( )( )

KCl 5 102 2721 4 6 92 2

15212211 14 2

647 2 647 222

647 647

647 22 (11)647

T

q T q TqqH q q T p q q Tp T TT T

q Tqp q q TT T

− −∂ = + − + + + − + ∂ − −

− + + − + −

( )( )

( )

( )( )

( )

( )( )

( )

KCl 5221 4 2

179

1027 2 26 9 2

15212 3 311 14 2

647 22d 179647

647 221+ 1792 647

647 221+ 179 (13)3 647

p

T

q TqH p q q T pp T T

q Tqq q T pT T

q Tqq q T pT T

⌠⌡

−∂ = + − + − ∂ −

− + − + − −

− + − + − −

( )( )

( )

( )( )

( )

( )( )

( )

0

179

KCl 5 0221 4 0 02

0 0

10 02 2 276 9 0 02

0 0

15 02 3 31211 14 0 02

0 0

647 22d 179647

647 221+ 1792 647

647 221+ 179 (12)3 647

Tp

q TqH p q q T pp T T

q Tqq q T pT T

q Tqq q T pT T

⌠⌡

−∂ = + − + − ∂ −

− + − + − −

− + − + − −

兵庫教育大学 澁江靖弘 (シブエ ヤスヒロ)

塩化カリウム水溶液の Pitzer 式 5

エンタルピーと同様に,Pabalan and Pitzer (1988)ではエントロピーの基準状態が指定されていな

い。そこで,溶媒と溶質のいずれについても0 Kで0とおく。Archer (1999)は1.0 barで298.15 Kの時

の標準状態における塩化カリウムの部分モルエントロピーを157.9349 J mol−1 K−1と与えた。そこで,

圧力補正して1.01325 barで298.15 Kにおける部分モルエントロピーの値(157.9384 J mol−1 K−1)を求めた。圧力補正の方法については後で記す。

このようにおくと,標準状態における塩化カリウムの定圧モル熱容量を用いて高温・高圧で標準状態

における部分モルエントロピーを以下の関係式から求めることができる。まず,179 barの時の値を次

式から求めることができる。

右辺の第二項は,温度をT0に取った時の積分値を示す。この項の計算方法は後で示す。式(16)の左辺の

値を求めることがでれば,高温・高圧における部分モルエントロピーを次式で求めることができる。

( ) -1 -1KCl 0 0, 157 9384 J mol K (15)S T p .=

( ) ( )

0

179

KClKCl KCl0 0 0, 179bar , d (16)

Tp

SS T S T p pp

⌠⌡

∂ = + ∂

( ) ( ) ( ) ( ) ( )

( ) ( ) ( )

( )( )

( )

( )( )

2 2KCl 1 0 2 0 3 0 0 0 4 0

3 35 0 6 0 7

0

5 0221 4 0 02

0 0

10 0276 9 0

0 0

1( , ) ln ln ln ln2

1 1 1ln 227 ln 2273 647 647

647 22 179647

647 221+2 647

H T p u T T u T T u T T T T T T u T T

u T T u T T uT T

q Tqq q T pT T

q Tqq q TT T

= − + − + − − − + −

+ − + − − − + − − −

− + + − + − −

−+ − +

( )

( )( )

( )

2 202

15 02 3 31211 14 0 02

0 0

179

647 221+ 1793 647

p

q Tqq q T pT T

− + − + − −

( )( )

( )

( )( )

( )

( )( )

( )

5221 4 2

1027 2 26 9 2

15212 3 311 14 2

647 22 179647

647 221+ 1792 647

647 221+ 179 (14)3 647

q Tqq q T pT T

q Tqq q T pT T

q Tqq q T pT T

− + + − + − −

− + − + − −

− + − + − −

兵庫教育大学 澁江靖弘 (シブエ ヤスヒロ)

塩化カリウム水溶液の Pitzer 式 6

右辺の第二項は式(2)を代入して計算することができる。右辺の第三項は,求めようとしている温度に

おける積分値である。 さて,式(16)と式(17)の右辺に現れる部分モルエントロピーの圧力微分は部分モル体積の計算式を用

いて次の関係式から求めることができる。

式(18)の右辺を式(1)を用いて表すと次のようになる。

したがって,式(16)の右辺の第二項を次のように求めることができる。

式(15)で示した1.01325 barにおける部分モルエントロピーの値は,式(20)を用いて求めている。

同様に,式(18)を用いて式(17)の右辺の第三項を次のように求めることができる。

次に,式(17)の右辺の第二項の計算式を示す。

( )0

, KCl KClKCl KCl 0

179

( , 179bar)( , ) , 179bar d d (17)

pT

p

TT

C T SS T p S T T pT p

⌠⌠ ⌡ ⌡

∂ = + + ∂

KCl KCl (18)T p

S Vp T

∂ ∂ = − ∂ ∂

( ) ( )

( )

KCl 5 7 1023 4 8 92 2 2 2

2

1512213 142 2

2 2647 647

2 (19)647

p

q q qqV q q T p q q TT T TT T

qqp q q TT T

∂ − = − − − + − − − ∂ − −

+ − − − −

( )( )

( )( )

( )( )

KCl 523 42 2

179

7 10 15122 2 3 38 9 13 142 2 2 2

d 2 179647

1 12 179 2 179 (21)2 3647 647

P

T

qqS p q q T pp T T

q q qqq q T p q q T pT TT T

⌠⌡

∂ = − − − − ∂ −

+ − − − − + − − − − − −

( )( )

( )( )

( )( )

0

179

KCl 523 4 0 02 2

0 0

2 2 3 37 10 15128 9 0 0 13 14 0 02 2 2 2

0 00 0

d 2 179647

1 12 179 2 179 (20)2 3647 647

Tp

qqS p q q T pp T T

q q qqq q T p q q T pT TT T

⌠⌡

∂ = − − − − ∂ −

+ − − − − + − − − − − −

兵庫教育大学 澁江靖弘 (シブエ ヤスヒロ)

塩化カリウム水溶液の Pitzer 式 7

したがって,式(20)の右辺の値を用いて温度がT0で圧力が179 barの時の部分モルエントロピーを式

(16)から求めることができる。この計算値と式(21)と式(22)の右辺の値を式(17)の右辺に代入すれば,

高温・高圧条件において標準状態における塩化カリウムの部分モルエントロピーを計算することが

できる。計算式をまとめると次のようになる。

標準状態における部分モルエンタルピーと部分モルエントロピーを求めることができれば,標準

状態における部分モルギブスエネルギー KClG

を次式で計算することができる。

長くなるので計算式は省略する。

KClKCl KCl (24)G H T S= −

( ) ( )

( ) ( )

0

22, KCl1 2 3 0

0 0

2 2 04 0 5 0 6

0

7 02

( , 179bar) 1 1 1 d ln ln ln2

1 1 ln ln2 227 227 227

12941 1294ln ln(647 ) ln +647647

T

p

T

C T TT u u u T TT T T T

TTu T T u T T uT T

Tu T T TT

⌠⌡

= − − + −

+ − + − − − − −

−− + + − − − −

( )00

0ln 647 (22)

647T TT

− − −

( )

( ) ( )

( ) ( )

KCl KCl 0 0

221 2 3 0

0 0

2 2 04 0 5 0 6

0

07 02

( , ) ,

1 1 1ln ln ln2

1 1 ln ln2 227 227 227

12941 1294ln ln(647 ) ln +647 647647

S T p S T p

Tu u u T TT T T

TTu T T u T T uT T

TTu T T TT T

=

+ − − + −

+ − + − − − − −

−− + + − − − − −

( )

( )( )

( )( )

( )( )

( )( )

00

523 4 0 02 2

0 0

2 2 3 37 10 15128 9 0 0 13 14 0 02 2 2 2

0 00 0

523 42 2

ln 647

2 179647

1 12 179 2 1792 3647 647

2 179647

T

qq q q T pT T

q q qqq q T p q q T pT TT T

qq q q T pT T

− −

+ − − − − −

+ − − − − + − − − − − −

+ − − − − −

+( )

( )( )

( )7 10 15122 2 3 38 9 13 142 2 2 2

1 12 179 2 179 (23)2 3647 647

q q qqq q T p q q T pT TT T

− − − − + − − − − − −

兵庫教育大学 澁江靖弘 (シブエ ヤスヒロ)

塩化カリウム水溶液の Pitzer 式 8

3. 塩化カリウムの見かけのモル体積と見かけの定圧モル熱容量 塩化カリウムの見かけのモル体積φVKClは,標準状態における塩化カリウムの部分モル体積 KClV

,体

積に関するデバイ-ヒュッケルのパラメータAV,イオン強度I,気体定数R,見かけのモル体積を表すPitzer式のパラメータ(β(0)Vとβ(1)VとCV)を用いて次式で表すことができる。

Pabalan and Pitzer (1988)はβ(1)VとCVの両方を0とおき,β(0)Vを次式で与えた。

表3に係数q16からq30の値を示す。標準状態における部分モル体積を与える式(1)と式(26)を式(25)に代

入して見かけのモル体積を次式のように求めることができる。

塩化カリウムの見かけの定圧モル熱容量φCp, KClは,標準状態における塩化カリウムの部分モル定圧熱

容量 , KClpC

,定圧モル熱容量に関するデバイ-ヒュッケルのパラメータAJ,見かけの定圧モル熱容量

を表すPitzer式のパラメータ(β(0)Jとβ(1)JとCJ)を用いて次式で表すことができる。

Pabalan and Pitzer (1988)は,179 barにおけるβ(0)Jとβ(1)JとCJの計算式を同一の関数形に取った。この

関数形をfcと記す。

表4に係数u1からu7の値を示した。 高温・高圧におけるβ(0)Jとβ(1)JとCJの値を求めるために,β(0)Vとβ(1)VとCVの計算式を用いて圧力補正を

行う。浸透係数やイオンの平均活量係数に使用するPitzerパラメータ(β(0)とβ(1)とC)とβ(0)Jとβ(1)JとCJの

( ) ( ) ( )(1)

1 2 2 (0) 1 2 1 2, KCl, KCl

2 2

ln 1 1 2 2 1 1 2 exp 21 2 2

2 (28)

J/ J / /J

pp

J

AC C . I mRT I I. I

m RT C

φ ββ = + + − + − + −

( ) ( ) ( )(1)

1 2 (0) 1 2 1 2KClKCl

2

ln 1 1 2 2 1 1 2 exp 21 2 2

2 (25)

V/ V / /V

V

AV V . I mRT I I. I

m RTC

φ ββ = + + + + − + −

+

(0) 2 217 20 252216 18 19 21 23 24

227 30226 28 29

647 647

(26)647

V q q qqq q T q T p q q T q TT T T T

q qp q q T q TT T

β = + + + + + + + + + − −

+ + + + + −

( )

2 25 7 102KCl 1 3 4 6 8 9

2 1 21512211 13 14

2 217 20 252216 18 19 21 23 24

2

q647 647

ln 1 1 2647 1 2

2 2647 647

2

/V

q q qqV q q T q T p q T q TT T T T

q Aqp q q T q T . IT T .

q q qqmRT q q T q T mpRT q q T q TT T T T

mp R

φ = + + + + + + + + + − −

+ + + + + + + −

+ + + + + + + + + + − −

+ 227 3026 28 29 (27)

647q qT q q T q TT T

+ + + + −

( )2 6 72

1 3 4 5 2ln (29)227 647

cu uuf u u T u T u T

T T T= + + + + + +

− −

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塩化カリウム水溶液の Pitzer 式 9

間には式(30)から式(32)で示す関係式が成り立ち,β(0)Vとβ(1)VとCVの間には式(33)から式(35)で示す関係式

が成り立つ。

式(30)と式(33)で示した関係式を用いて,β(0)Jの圧力微分を次のように表すことができる。

式(26)を式(36.3)の右辺に代入することで,β(0)Jの圧力微分を表す式を次のように求めることができる。

式(37)より温度がTで圧力がpにおけるβ(0)Jの値(β(0)J(T, p)の値)を次式から求めることができる。

(0) 2 (0)(0)

2

(1) 2 (1)(1)

2

2

2

2 (30)

2 (31)

2 (32)

J

p p

J

p p

J

p p

T T T

T T T

C CCT T T

β ββ

β ββ

∂ ∂= + ∂ ∂

∂ ∂= + ∂ ∂

∂ ∂ = + ∂ ∂

(0)(0)

(1)(1)

(33)

(34)

(35)

V

T

V

T

V

T

p

p

CCp

ββ

ββ

∂= ∂

∂= ∂

∂= ∂

(0) 2 (0) 3 (0)

2

(0) 2 (0)

2

(0) 2 (0)

2

2 (36.1)

2 (36.2)

2 (36.3)

J

T

T Tp p

V V

p p

p T p T p T

T T p pT

T T T

β β β

β β

β β

∂ ∂ ∂= + ∂ ∂ ∂ ∂ ∂

∂ ∂ ∂ ∂ = + ∂ ∂ ∂∂

∂ ∂= + ∂ ∂

( ) ( )

( )

(0)18 20 23 25

19 243 3

28 30229 3

647 6472 3 2 3647 647

6472 3 (37)647

J

T

q q q qq p qp T TT T T T

q qp qT T T

β ∂ = + + + + + ∂ − −

+ + + −

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塩化カリウム水溶液の Pitzer 式 10

β(0)J(T, 179bar)の計算式は,式(29)に表4で示した係数を代入して求めることができる。 式(31)と式(34)よりβ(1)Vに関しても式(36.3)と同じ関係式が成り立ち,式(32)と式(35)よりCVに関しても

式(36.3)と同じ関係式が成り立つ。ただし,β(1)VとCVの両方を0とおいているので,β(1)JとCJの圧力微分

は0である。つまり,圧力依存性はないとしているので,式(29)より求められるβ(1)JとCJの値をそのまま

高温・高圧条件に使用する。 標準状態における塩化カリウムの部分モル定圧熱容量を式(5)より求め,式(29)と式(38.2)からβ(0)J

の値を求め,式(29)からβ(1)Jの値とCJの値を求めることができるので,これらを式(28)に代入することで

見かけの定圧モル熱容量を計算することができる。長くなるので計算式は省略する。 4. 塩化カリウムの見かけの相対モルエンタルピー 塩化カリウムの見かけの相対モルエンタルピーφLを与える式は,エンタルピーに関するデバイ-ヒュ

ッケルのパラメータAH,見かけの相対モルエンタルピーを表すPitzer式のパラメータ(β(0)Lとβ(1)LとCL)

を用いて次式で表すことができる。

見かけの相対モルエンタルピーは過剰モルエンタルピーとも呼ぶ。β(0)Lとβ(0)J,β(1)Lとβ(1)J,CJとCLの間

には次の関係式が成立している。

そこで,β(0)Jとβ(1)JとCJを与える式からβ(0)Lとβ(1)LとCLを求める。まず,式(29)から179 barにおけるβ(0)L

とβ(1)LとCLを与える式を求める。 β(0)Lとβ(1)LとCLを与える関数をfLと表すと,式(40)あるいは式(41)あるいは式(42)のいずれからでも次式

を得ることができる。

( )

( )( )

( )( )

(0)(0) (0)

179

(0) 18 2019 3

23 25 28 302 2 3 324 293 3

( , ) ( , 179bar) d (38.1)

647( , 179bar) 2( 179) 3647

647 6472179 3 179 33647 647

pJ

J J

T

J

T p T Tp

q qT p qT T T

q q q qp q p qT TT T T T

ββ β

β

⌠⌡

∂= + ∂

= + − + + −

+ − + + + − + + − −

(38.2)

( ) ( ) ( )(1)

1 2 2 (0) 1 2 1 2

2 2

ln 1 1 2 2 1 1 2 exp 21 2 2

2 (39)

L/ L / /H

L

AL . I mRT I I. I

m RT C

φ ββ = + − + − + −

(0)(0) (0)

(1)(1) (1)

2 (40)

2 (41)

2 (42)

LJ L

p

LJ L

p

LJ L

p

T T

T T

CC CT T

ββ β

ββ β

∂= + ∂

∂= + ∂

∂= + ∂

( )2 6 72

1 3 4 5 22 ln (43)

227 647L

Lp

u uf uf u u T u T u TT T T T T

∂ + = + + + + + + ∂ − −

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塩化カリウム水溶液の Pitzer 式 11

右辺をいったん0とおいて微分方程式を解くと,fLを積分定数(K)を用いて次のように表すことができる。

次にKをTの関数A(T)に置き換えて,式(43)を満足するA(T)を求めることを考える。A(T)T−2をfLに代入す

ると,式(43)より次式を得ることができる。

したがって,fLの計算式は次のようになる。

両辺をT 2倍すると次のようになる。

T = T0の時のfLの値をfL(T0)と表して,fLの温度変化を考えると次式を得ることができる。

さて,式(45)の右辺を積分した結果を表すと次のようになる。

式(49)では積分定数を省略している。u6にかけあわせているブラケット内に定数を加えても定積分の計

算結果に影響がない。そこで,454Tを454(T − 227)に置き換えた結果をA(T)と表す。

−A(T 0)をK1と表し,式(48)の両辺をT 2で割った後で式(50)として得た結果を代入する。そして整理する

と次式を得ることができる。

2 (44)Lf KT −=

( )

2 22 2 3 4 6 7

1 2 3 4 5 2d ( ) ln (45)

d 227 647

u T u TA T u T u T u T T u T u TT T T

= + + + + + +− −

( )

2 22 2 3 4 6 7

1 2 3 4 52 21 ln d (46)

227 647L

u T u Tf u T u T u T T u T u T TTT T

⌠⌡

= + + + + + +

− −

( )

3 2 3 4 51 2 3 4 5

22 2

6 7

1 1 1 1 1(ln 1 3)3 2 3 4 5

1 647227 454 227 ln( 227) (647 ) 1294ln(647 ) (49)2 647

u T u T u T T / u T u T

u T T T u T TT

+ + − + +

+ − + + − + − − + − + −

( )

3 2 3 4 51 2 3 4 5

2 26

2

7

1 1 1 1 1( ) (ln 1 3)3 2 3 4 5

1 227 454( 227) 227 ln( 227)2

647(647 ) 1294ln(647 ) (50)647

A T u T u T u T T / u T u T

u T T T

u T TT

= + + − + +

+ − + − + −

+ − − + − +

( )

2 22 2 2 3 4 6 7

1 2 3 4 5 2ln d (47)227 647

Lu T u TT f u T u T u T T u T u T T

T T

⌠⌡

= + + + + + +

− −

( )( )

0

2 22 2 2 2 3 4 6 7

0 0 1 2 3 4 5 2ln d (48)227 647

T

L L

T

u T u TT f T f T u T u T u T T u T u T TT T

⌠⌡

− = + + + + + +

− −

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塩化カリウム水溶液の Pitzer 式 12

式(51)は179 barにおけるβ(0)L,β(1)L,CLの計算式に相当する。u1からu7の値は表4に示した値である。K1

の値は式(50)を用いてu1からu7の値より求めることができる。残っているfL(T0)の値(298.15 Kで179 barにおけるβ(0)L,β(1)L,CLの値)をPabalan and Pitzer (1988)は298.15 Kで1 barにおけるβ(0)L,β(1)L,CLの値

を求めた後で179 barの値に補正して求めた。補正計算の方法を先に示す。 式(40)から式(42)を式(30)から式(32)と比較すれば明らかなように,β(0)L,β(1)L,CLはβ(0),β(1),Cと次式

で関係付けることができる。

そこで,β(0)Lの圧力依存性をβ(0)Vを用いて次のように表すことができる。

同様にしてβ(1)LとCLの圧力依存性をβ(1)VとCVを用いて次のように表すことができる。

ただし,β(1)VとCVの両方を0とおいているので,β(1)LとCLの圧力微分は0である。つまり,圧力依存性は

ないとしているので,298.15 Kで1 barの時のβ(1)LとCLの値を179 barの時の値として使用する。 β(0)Lの圧力依存性に戻る。式(26)で与えたβ(0)Vの計算式より,式(55.3)を次のように表すことができる。

(0)(0)

(1)(1)

(52)

(53)

(54)

L

p

L

p

L

p

T

T

CCT

ββ

ββ

∂= ∂

∂= ∂

∂ = ∂

(0) 2 (0)

(0)

(0)

(55.1)

(55.2)

(55.3)

L

T

T p

V

p

p p T

T p

T

β β

β

β

∂ ∂= ∂ ∂ ∂

∂ ∂ = ∂ ∂

∂= ∂

(1) (1) (56)

(57)

L V

T p

L V

T p

p T

C Cp T

β β ∂ ∂= ∂ ∂

∂ ∂= ∂ ∂

( )

( )

2 31 2 3 4 5

2 262

227 01

02 2 2

1 1 1 1 1(ln 1 3)3 2 3 4 5

1 227 454( 227) 227 ln( 227)2

647(647 ) 1294ln(647 ) + + (51)647

L

L

f u T u u T T / u T u T

u T T TT

u TKT T f TTT T T

= + + − + +

+ − + − + −

+ − − + − +

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塩化カリウム水溶液の Pitzer 式 13

したがって,次式を得ることができる。

表4に298.15 Kで1 barの時のβ(0)Lとβ(1)LとCLの値,298.15 Kで179 barの時のこれらの値,そしてK1の

値を示した。ここで,1 barにおける値をSilvester and Pitzer (1978)が求めた値と比較する。Silvester and Pitzer (1978)は,β(0)L = 5.794·10−4,β(1)L = 10.71·10−4,CL = −5.095·10−5と求めた。Pabalan and Pitzer (1988)が求めた値は,β(0)L = 6.77136·10−4,β(1)L = 9.67854·10−4,CL = −4.12364·10−5である。Pabalan and Pitzer (1988)はSilvester and Pitzer (1978)が求めた値について触れていないが,Pitzer (1995)はSilvester and Pitzer (1978)の値を収録している。このような事情から,表4で示した298.15 Kで1 barの時のβ(0)L

とβ(1)LとCLの値はPabalan and Pitzer (1988)の式を用いる時だけに使用した方がよさそうである。 高温・高圧条件における計算ではβ(0)Lの値を式(58)より次式で計算する。

式(51)と式(60)から計算したβ(0)Lと式(51)から計算したβ(1)LとCLの値を式(39)に代入することで見かけの

相対モルエンタルピーを求めることができる。 5. 浸透係数とイオンの平均活量係数 塩化カリウム水溶液の浸透係数φとイオンの平均活量係数γ±を与える式は,浸透係数に関するデバイ

-ヒュッケルのパラメータAφとPitzer式のパラメータ(β(0)とβ(1)とC)を用いて次式で表すことができる。

( ) ( )1 2

(0) (1) 1 2 21 2

1 exp 2 2 (61)1 1 2

//

/

A Im I m C

. Iφφ β β − = − + + − +

+

( ) ( )

( )

(0)17 20 2522

18 19 23 242 2 2 2

27 30228 292 2

2 2647 647

2 (58)647

L

T

q q qqq q T p q q Tp T TT T

q qp q q TT T

β ∂ = − + + + + − + + + ∂ − −

+ − + + + −

( )

( )( )

( )

( )( )

(0) (0)0 0

2 217 20 252218 19 0 23 24 02 2 2 2

0 00 0

3 3 27 3028 29 02 2

0 0

, 179bar ( , 1bar)

1(179 1) 2 179 1 22647 647

1 179 1 2 (59)3 647

L LT T

q q qqq q T q q TT TT T

q qq q TT T

β β=

+ − − + + + + − − + + + − −

+ − − + + + −

( )

( )( )

( )

( )( )

(0) (0)

17 20 25222 218 19 23 242 2 2 2

27 303 328 292 2

, ( , 179bar)

1( 179) 2 179 22647 647

1 179 2 (60)3 647

L LT p T

q q qqp q q T p q q TT TT T

q qp q q TT T

β β=

+ − − + + + + − − + + + − −

+ − − + + + −

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塩化カリウム水溶液の Pitzer 式 14

式(52)から式(54)で示したようにβ(0)Lとβ(1)LとCLを温度に関して積分することでβ(0)とβ(1)とCの計算式

を求めることができる。179 barにおけるβ(0)Lとβ(1)LとCLを式(51)として与えたので,この右辺を温度に

関して積分する。179 barにおける計算式をfGと表す。積分定数を省略すると次式のようになる。

次に,T = T0の時のfGの値をfG(T0)と表して,fGの温度変化を考える。

ここで,式(63)の右辺中でu7にかけあわせているブラケット内の1を取っても定積分に影響がないので

取り去って,右辺をAG(T)と表す。

( )( ) ( ) ( )

1 21 2 (1)(0) 1 2 1 2

1 2

2

2ln 1 1 2ln 2 1 1 2 2 exp 2

1 2 21 1 2

3 (62)

/// /

/

. IIA m I I I. I. I

m C

φβγ β±

+ = − + + + − + − − +

+

( )

( )

2 31 2 3 4 5

2 262

227 01

02 2 2

21 2

1 1 1 1 1(ln 1 3) d3 2 3 4 5

1 227 454( 227) 227 ln( 227) d2

647(647 ) 1294ln(647 ) + + d647

1 1 16 2 3

L

u T u u T T / u T u T T

u T T T TT

u TKT T f T TTT T T

u T u T

⌠⌡

⌠⌡

⌠⌡

+ + − + +

+ − + − + −

+ − − + − + −

= + +

( )

2 3 43 4 5

2

6

20 01

7

1 5 1 1ln2 12 12 20

1 3 227 227( 227)ln( 227)2 2

2(647 )ln(647 )1 ln(647 ) (63)L

u T T u T u T

T Tu TT T

T f TKT Tu TT T T

− + +

⋅ − −+ + +

− − − + + − − −

( )

( )

( )

0

0

0

2 30 1 2 3 4 5

2 262

227 01

02 2 2

1 1 1 1 1(ln 1 3) d3 2 3 4 5

1 227 454( 227) 227 ln( 227) d2

647(647 ) 1294ln(647 ) + + d647

T

G G

T

T

T

T

L

T

f f T u T u u T T / u T u T T

u T T T TT

u TKT T f TTT T T

⌠⌡

⌠⌡

⌠⌡

− = + + − + +

+ − + − + −

+ − − + − + −

(64)T

兵庫教育大学 澁江靖弘 (シブエ ヤスヒロ)

塩化カリウム水溶液の Pitzer 式 15

そして,−AG(T0)をK2と表すとfGの計算式を次のように求めることができる。

式(66)は179 barにおけるβ(0),β(1),Cの計算式に相当する。u1からu7の値は表4に示した値である。K2の

値は式(65)を用いて求めることができる。fG(T0)の値(298.15 Kで179 barにおけるβ(0),β(1),Cの値)をPabalan and Pitzer (1988)は298.15 Kで1 barにおけるβ(0),β(1),Cの値を求めた後で179 barの値に補正し

た。補正計算の方法を先に示してから,これらの値を示すことにする。 β(0),β(1),Cの圧力依存性はβ(0)V,β(1)V,CVを用いて表すことができることを式(33)から式(35)で示した。

そして,β(0)Vの計算式を式(26)で与えた。したがって,179 barにおけるβ(0)の値を次式で求めることがで

きる。

なお,β(1)VとCVを0とおいているので,298.15 Kで1 barの時のβ(1)とCの値を179 barの時の値として使用

する。 表4に298.15 Kで1 barの時のβ(0)とβ(1)とCの値,298.15 Kで179 barの時のこれらの値,そしてK2の値

を示す。ここで,表4で示した1 barにおける値をPitzer and Mayorga (1973)が求めた値と比較する。Pitzer and Mayorga (1973)は,β(0) = 4.835·10−2,β(1) = 2.122·10−1,CL = −8.4·10−4と求めた。Pabalan and Pitzer (1988)は,β(0) = 4.8080·10−2,β(1) = 2.18752·10−1,CL = −3.94·10−4である。Pabalan and Pitzer (1988)はPitzer and Mayorga (1973)が求めた値について触れていないが,Pitzer (1995)は,Pitzer and Mayorga (1973)の値を収録している。このような事情から,表4で示した298.15 Kで1 barにおけるβ(0)とβ(1)とCの値はPabalan and Pitzer (1988)の式を用いる時だけに使用した方がよさそうである。 高温・高圧条件における計算ではβ(0)の値を次式で計算する。

( )

2 2 3 41 2 3 4 5

2

6

20 01

7

1 1 1 1 5 1 1( ) ln6 2 3 2 12 12 20

1 3 227 227( 227)ln( 227)2 2

2(647 )ln(647 ) ln(647 ) (65)

G

L

A T u T u T u T T u T u T

T Tu TT T

T f TKT Tu TT T T

= + + − + +

⋅ − −+ + +

− − − + − − −

( ) ( )

2 2 3 41 2 3 4 5

2

6

20 01

7 2 0

1 1 1 1 5 1 1ln6 2 3 2 12 12 20

1 3 227 227( 227)ln( 227)2 2

2(647 )ln(647 ) ln(647 ) (66)

G

LG

f u T u T u T T u T u T

T Tu TT T

T f TKT Tu T K f TT T T

= + + − + +

⋅ − −+ + +

− − − + − − − + +

( ) ( )

( ) ( )

( )

( )

179(0) (0) (0)

0 01

(0) 217 200 16 18 0 19 0

0 0

2 2 2 252221 23 0 24 0

0 0

3 3 227 3026 28 0 29 0

0 0

, 179bar , 1bar d (67.1)

, 1bar 179 1647

1 179 12 647

1 179 13 647

VT T p

q qT q q T q TT T

qqq q T q TT T

q qq q T q TT T

β β β

β

= +

= + − + + + + −

+ − + + + + −

+ − + + + + −

(67.2)

兵庫教育大学 澁江靖弘 (シブエ ヤスヒロ)

塩化カリウム水溶液の Pitzer 式 16

式(66)と式(68)から計算したβ(0)と式(66)から計算したβ(1)とCの値を式(61)に代入することで浸透係数を

求めることができる。さらに,式(62)に代入することでイオンの平均活量係数を求めることができる。 6. 水溶液の過剰ギブスエネルギー,ギブスエネルギー,エンタルピー,過剰エントロピー,

エントロピー,密度,および定圧熱容量 水1 kg中にmモルの塩化カリウムが溶解している水溶液の性質(過剰ギブスエネルギー,ギブスエネ

ルギー,エンタルピー,過剰エントロピー,エントロピー,密度,および定圧熱容量)の計算式を以

下に示していく。水溶液の過剰エンタルピーは相対モルエンタルピーに質量モル濃度をかけあわせた

値になるので,計算式を示すことは省略する。 まず,過剰ギブスエネルギーGEは次式の通りである。

高温・高圧条件におけるβ(0)とβ(1)とCの計算方法は既に示しているので省略する。 水溶液のギブスエネルギーG totalは,水のモル質量Mwと標準状態における部分モルギブスエネルギー

wG ,標準状態における塩化カリウムの部分モルギブスエネルギー,過剰ギブスエネルギーを用いて,

次式で求めることができる。

標準状態における水の部分モルギブスエネルギーは,純水のモルギブスエネルギーと等しい。そこで,

部分モル量を記す「¯」を付けていない。同じ理由で,以下に示す標準状態における部分モル量にも「¯」を付けていない。

水の水溶液のエンタルピーH totalは,標準状態における水の部分モルエンタルピー ,塩化カリウム

の標準状態における部分モルエンタルピー ,相対モルエンタルピーを用いて次式で求めること

ができる。

塩化カリウムのモル質量をM KClと表すと水溶液の質量(g)は1000 + mMKClであるので,H totalの値を1000 + mM KClで割って水溶液1 g当たりのエンタルピーを求めることができる。 この水溶液の過剰エントロピーSEは式(39)で求められる見かけの相対モルエンタルピーと式(69)で求

められる過剰ギブスエネルギーを用いて次式で求めることができる。

水溶液のエントロピーS totalは,標準状態における水の部分モルエントロピー ,塩化カリウムの標準

状態における部分モルエントロピー ,過剰エントロピーを用いて次式で求めることができる。

totalKClw

w

1000 (71)H H mH m LM

φ = + +

total EKClw

w

1000 2 (1 ln ) (70)G G mG G mRT mM

= + + − −

( ) ( ) ( )(1)

E 1 2 2 (0) 1 2 1 2 34ln 1 1 2 2 1 1 2 exp 2 2 (69)

1 2 2/ / /A IRT

G . I m RT I I m RTC. Iφ ββ

= − + + + − + − +

EE (72)m L GS

T

φ −=

( ) ( ) ( )

( )

( )

(0) (0) 217 2016 18 19

2 25222 221 23 24

227 303 326 28 29

, , 179bar 179647

1 1792 647

1 179 (68)3 647

q qT p T p q q T q TT T

qqp q q T q TT T

q qp q q T q TT T

β β = + − + + + + −

+ − + + + + −

+ − + + + + −

wH

KClH

wS

KClS

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塩化カリウム水溶液の Pitzer 式 17

そして,S totalの値を1000 + mM KClで割って水溶液1 g当たりのエントロピーを求めることができる。 水溶液の体積V totalは,標準状態における水の部分モル体積 と塩化カリウムの見かけのモル体積か

ら次式で求めることができる。

そして,水溶液の密度daqは1000 + mM KClをV totalの値で割って求めることができる。 最初にPP式で求められる密度の計算値が高温・高濃度領域で不正確になることを記した。そこで,

密度の逆数(つまり,Vtotalを水溶液の質量で割った値)の圧力・温度依存性について検討した結果を記

す。等温・等濃度条件下で圧力が大きくなると水溶液の密度は大きくなる。これは,濃度が0である時

でも成り立つ。したがって,密度の逆数は圧力が大きくなると小さくなるはずである。また,等圧・

等濃度条件下で温度が高くなると水溶液の密度は一部の領域を除いて小さくなる。1 atmでは純水の密

度が277 K付近で最大になるので,密度の温度依存性が273.15 K付近では複雑になる。そこで,ここで

は278.15 K以上で,温度が高くなると密度の逆数は大きくなるはずである。これは,濃度が0である時

でも成り立つ。 温度・圧力・濃度条件を次のように設定して,上記二条件の両方(273.15 Kの時は圧力依存性に関す

る条件だけ)を満足する最大の濃度を求めた。(1)温度条件を273.15 Kから598.15 Kまで5 K刻みに取る。

(2)圧力条件は,飽和水蒸気圧(373.15 K未満では1.01325 bar)から500 barまで10 bar刻みに取る。飽

和水蒸気圧あるいは1.01325 barの次に高い圧力は10 barの整数倍の値に取っている。(3)濃度条件は,0.0001 mol kg−1,0.001 mol kg−1,0.01 mol kg−1,および0.1 mol kg−1から6.0 mol kg−1まで0.1 mol kg−1

刻みで取る。 計算結果を得た後で,1.0 mol kg−1刻みで整理して図1に示す。したがって,図1中で,例えば,2 mol kg−1以下の領域の中には2.1 mol kg−1でも条件を満足している場合がある。ただし,3 mol kg−1以下で

の計算では条件を満足しなくなる。 水溶液の定圧熱容量Cpは,標準状態における水の定圧モル熱容量 , wpC と塩化カリウムの見かけの定

圧モル熱容量から次式で求めることができる。

そして,Cpの値を1000 + mM KClで割って水溶液1 g当たりの定圧熱容量を求めることができる。 文献 Archer, D. G. (1999) Thermodynamic properties of the KCl + H2O system. J. Phys. Chem. Ref. Data, 28,

1−17. Bradley, D. J. and Pitzer, K. S. (1979) Thermodynamics of electrolytes. 12. Dielectric properties of

water and Debye–Hückel parameters to 350°C and 1kbar. J. Phys. Chem., 83, 1599–1603. Haar, L., Gallagher, J. S., and Kell, G. S. (1984) NBS/NRC Steam Tables. 320pp, Hemisphere

Publishing, New York. Mao, S. and Duan, Z. (2008) The P, V, T, x properties of binary aqueous chloride solutions up to T = 573 K

and 100 MPa. J. Chem. Thermodyn., 40, 1046–1063. Pabalan, R. T. and Pitzer, K. S. (1988) Apparent molar heat capacity and other thermodynamic properties

of aqueous KCl solutions to high temperatures and pressures. J. Chem. Eng. Data, 33, 354−362. Pitzer, K. S. and Mayorga, G. (1973) Thermodynamics of electrolytes. II. Activity and osmotic

coefficients for strong electrolytes with one or both ions univalent. J. Phys. Chem., 77, 2300–2308.

Silvester, L. F. and Pitzer, K. S. (1978) Thermodynamics of electrolytes. X. Enthalpy and the effect of

total EKClw

w

1000 2 (1 ln ) (73)S S mS S mR mM

= + + + −

, w , KClw

1000 (75)p p pC C m CM

φ = +

totalw KCl

w

1000 (74)V V m VM

φ = +

wV

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塩化カリウム水溶液の Pitzer 式 18

temperature on the activity coefficients. J. Soln. Chem., 7, 327−337.

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塩化カリウム水溶液の Pitzer 式 19

表 1 式(1)の係数

q1 1.56152·103

q2 −1.69234·105

q3 −4.29918

q4 4.59233·10−3

q5 −3.25686·104

q6 −6.86887

q7 7.35220·102

q8 2.02245·10−2

q9 −2.15779·10−5

q10 1.03212·102

q11 5.34941·10−3

q12 −5.73121·10−1

q13 −1.57862·10−5

q14 1.66987·10−8

q15 −7.22012·10−2

表 2 式(2)の係数 u1 3.71110·104 u2 0.0

u3 −7.90247·103

u4 3.30367·10

u5 −1.76733·10−2

u6 −2.91950·104

u7 −5.92362·106

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塩化カリウム水溶液の Pitzer 式 20

表 3 式(26)の係数

q16 0.0

q17 0.0

q18 9.45015·10−8

q19 −2.90741·10−10

q20 3.26205·10−3

q21 8.39662·10−7

q22 0.0

q23 −4.41638·10−9

q24 6.71235·10−12

q25 −4.42327·10−5

q26 −7.97437·10−10

q27 0.0

q28 4.12771·10−12

q29 −6.24996·10−15

q30 4.16221·10−8

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塩化カリウム水溶液の Pitzer 式 21

表 4 式(29),式(51)および式(66)の係数*

β(0)J (kg mol−1 K−2) β(0)L (kg mol−1 K−1) β(0) (kg mol−1)

β(1)J (kg mol−1 K−2) β(1)L (kg mol−1 K−1) β(1) (kg mol−1)

CJ (kg2 mol−1 K−2) CL (kg2 mol−1 K−1) C (kg2 mol−1)

u1 −2.10289·10−2 2.20813·10−1 0.0

u2 6.03967·10−1 −4.61849 7.64891·10−4

u3 3.67768·10−3 −4.10116·10−2 0.0

u4 −7.05537·10−6 1.10445·10−4 −1.12131·10−8

u5 1.97968·10−9 −4.73196·10−8 1.72256·10−11

u6 −2.47588·10−3 −2.74120·10−2 0.0

u7 1.44160·10−1 3.32883·10−1 −5.71188·10−3

fL(298.15K, 1bar) 6.77136·10−4 9.67854·10−4 −4.12364·10−5

fL(298.15K, 179bar) 6.56838·10−4 9.67854·10−4 −4.12364·10−5

fG(298.15K, 1bar) 4.8080·10−2 2.18752·10−1 −3.94·10−4

fG(298.15K, 179bar) 5.0038·10−2 2.18752·10−1 −3.94·10−4

K1 −2931.268116 6353.355434 28.172180

K2 −33.953143 193.004059 −0.125567 *β(0)J と β(1)J と CJ は式(29)を用いて計算し,β(0)Lと β(1)Lと CLは式(51)を用いて計算し, β(0)と β(1)と C は式(66)を用いて計算する。

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塩化カリウム水溶液の Pitzer 式 22

• 6 mol kg−1まで

○ 5 mol kg−1以下

■ 4 mol kg−1以下

□ 3 mol kg−1以下

◆ 2 mol kg−1以下

◇ 1 mol kg−1以下

図 1 PP 式で求めた密度の逆数が,(1)圧力が大きくなると小さくなり,(2)温度が高くなると

大きくなる条件を満足する最大濃度を示す。(2)の条件は 278.15 K 以上で適用した。計算は 5 K刻み,10 bar 刻みで行い,圧力の最小値は 373.15 K 未満では 1.01325 bar,373.15 K 以上では

飽和水蒸気圧である。濃度(mol·kg−1)を 10−4,10−3,10−2,10−1 および 1.0 から 6.0 まで 0.1 刻

みに取って計算して,適用可能な濃度を超えない整数値で結果を表している。

温度(°C)

圧力

(bar

)

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塩化カリウム水溶液の Pitzer 式 23

付録 1 記号一覧 A(T) fC を積分した式 A(T0) fC を積分した式に T = T0を代入した値 AG(T) fLを積分した式 AG(T0) fLを積分した式に T = T0を代入した値 AH エンタルピーに関するデバイ-ヒュッケルのパラメータ(J kg1/2

mol−3/2) AJ 定圧モル熱容量に関するデバイ-ヒュッケルのパラメータ(J kg1/2

mol−3/2) AV 体積に関するデバイ-ヒュッケルのパラメータ(cm3 kg1/2 mol−3/2) Aφ 浸透係数に関するデバイ-ヒュッケルのパラメータ(kg1/2 mol−1/2)

C 3イオン間の相互作用を表しギブスエネルギーと関係するパラメータ(kg2 mol−2)

CL 3 イオン間の相互作用を表しエンタルピーと関係するパラメータ(kg2 mol−2 K−1)

CJ 3 イオン間の相互作用を表し定圧熱容量と関係するパラメータ(kg2 mol−2 K−2)

Cp 水 1 kg に m モルの塩化カリウムが溶解している水溶液の定圧熱容量(J K−1)

, KClpC

標準状態における塩化カリウムの部分モル定圧熱容量(J mol−1 K−1)

, KCl ( , 179bar)pC T

温度が T で 179 bar における標準状態における塩化カリウムの部分モ

ル定圧熱容量(J mol−1 K−1)

, KCl ( , )pC T p

温度がTで圧力が pにおける標準状態における塩化カリウムの部分モ

ル定圧熱容量(J mol−1 K−1)

, wpC 標準状態における水の部分モル定圧熱容量(J mol−1 K−1)

CV 3 イオン間の相互作用を表し体積と関係するパラメータ(kg2 mol−2 bar−1)

, KClpCφ 塩化カリウムの見かけの定圧モル熱容量(J mol−1 K−1)

daq 塩化カリウム水溶液の密度(g cm−3) fC β(0)J,β(1)J,CJ を表す式 fG β(0),β(1),C を表す式 fG(T0) fGに T = T0を代入した値 fL β(0)L,β(1)L,CLの値 fL(T0) fLに T = T0を代入した値 GE 過剰ギブスエネルギー(J) Gtotal 水溶液のギブスエネルギー(J)

KClG

標準状態における塩化カリウムの部分モルギブスエネルギー(J mol−1)

wG 標準状態における水の部分モルギブスエネルギー(J mol−1) H total 水溶液のエンタルピー(J)

KClH

標準状態における塩化カリウムの部分モルエンタルピー(J mol−1)

KCl (298.15K, 1.01325bar)H

298.15 K で 1.01325 bar において標準状態における塩化カリウムの部

分モルエンタルピー(J mol−1)

KCl ( , 179bar)H T

温度が T で 179 bar において標準状態における塩化カリウムの部分モ

ルエンタルピー(J mol−1)

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塩化カリウム水溶液の Pitzer 式 24

KCl ( , )H T p

温度がTで圧力が pにおける標準状態における塩化カリウムの部分モ

ルエンタルピー(J mol−1)

KCl 0 0( , )H T p

温度が T0で圧力が p0における(298.15 K で 1.01325 bar における)標

準状態における塩化カリウムの部分モルエンタルピー(J mol−1)

wH 標準状態における水の部分モルエンタルピー(J mol−1) I イオン強度(mol kg−1) K 式(44)で用いる積分定数 K1 式(51)と式(66)で用いる定数 K2 式(66)で用いる定数 φL 見かけの相対モルエンタルピー(J mol−1) MKCl 塩化カリウムのモル質量( = 74.555 g mol−1) Mw 水のモル質量( = 18.0152 g mol−1) m 質量モル濃度(mol kg−1) p 圧力(bar) p0 1.01325 bar q1, …, q15 KCl ( , )V T p

を求めるための係数 q16, …, q30 β(0)の圧力微分を求めるための係数 R 気体定数( = 8.31441 J mol−1 K−1) SE 過剰エントロピー(J K−1) S total 水溶液のエントロピー(J K−1)

KClS

標準状態における塩化カリウムの部分モルエントロピー(J mol−1 K−1)

KCl ( , )S T p

温度がTで圧力が pにおける標準状態における塩化カリウムの部分モ

ルエントロピー(J mol−1 K−1)

KCl 0( , 179bar)S T

温度が T0で圧力が 179 bar における標準状態における塩化カリウムの

部分モルエントロピー(J mol−1 K−1)

KCl 0 0( , )S T p

温度が T0で圧力が p0における標準状態における塩化カリウムの部分

モルエントロピー(J mol−1 K−1)

wS 標準状態における水の部分モルエントロピー(J mol−1 K−1) T 温度(K) T0 298.15 K u1, …, u7 温度が T で 179 bar での標準状態における塩化カリウムの部分モル定

圧熱容量を求めるための係数 V total 水溶液の体積(cm3)

wV 標準状態における水の部分モル体積(cm3 mol−1)。純水のモル体積に等

しい。

KClV

標準状態における塩化カリウムの部分モル体積(cm3 mol−1)

KCl ( , )V T p

温度がTで圧力が pでの標準状態における塩化カリウムの部分モル体

積(cm3 mol−1) φVKCl 塩化カリウムの見かけのモル体積(cm3 mol−1) β(0), β(1) 2 イオン間の相互作用を表すパラメータ(kg mol−1) β(0)(T, 179bar), β(1)(T, 179bar)

温度が T で 179 bar において 2 イオン間の相互作用を表すパラメータ(kg mol−1)

β(0)(T, p), β(1)(T, p)

温度が Tで圧力が pにおける 2イオン間の相互作用を表すパラメータ(kg mol−1)

β(0)(T0, 1bar), β(1)(T0, 1bar)

温度がT0で 1 barにおいて 2イオン間の相互作用を表すパラメータ(kg mol−1)

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塩化カリウム水溶液の Pitzer 式 25

β(0)(T0, 179bar), β(1)(T0, 179bar)

温度が T0で 179 bar において 2 イオン間の相互作用を表すパラメータ(kg mol−1)

β(0)J, β(1)J 2 イオン間の相互作用を表し定圧熱容量と関係するパラメータ(kg mol−1 K−2)

β(0)J(T, 179bar), β(1)J(T, 179bar)

温度が T で 179 bar において 2 イオン間の相互作用を表し定圧熱容量

と関係するパラメータ(kg mol−1 K−2) β(0)J(T, p), β(1)J(T, p)

温度が Tで圧力が pにおける 2イオン間の相互作用を表し定圧熱容量

と関係するパラメータ(kg mol−1 K−2) β(0)L, β(1)L 2イオン間の相互作用を表し見かけの相対モルエンタルピーと関係す

るパラメータ(kg mol−1 K−1) β(0)L(T, 179bar), β(1)L(T, 179bar)

温度が T で 179 bar において 2 イオン間の相互作用を表し見かけの相

対モルエンタルピーと関係するパラメータ(kg mol−1 K−1) β(0)L(T, p), β(1)L(T, p)

温度が Tで圧力が pにおける 2イオン間の相互作用を表し見かけの相

対モルエンタルピーと関係するパラメータ(kg mol−1 K−1) β(0)L(T0, 1bar), β(1)L(T0, 1bar)

温度が T0で 1 bar において 2 イオン間の相互作用を表し見かけの相対

モルエンタルピーと関係するパラメータ(kg mol−1 K−1) β(0)L(T0, 179bar), β(1)L(T0, 179bar)

温度が T0で 179 bar において 2 イオン間の相互作用を表し見かけの相

対モルエンタルピーと関係するパラメータ(kg mol−1 K−1) γ± イオンの平均活量係数 φ 浸透係数