土壌汚染とリスクコミュニケーション ―事例を中心に― ·...
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(株)大林組 環境技術第一部
日笠山徹巳
2014年12月4日 土壌汚染対策セミナー環境省・(公財)日本環境協会
1
土壌汚染とリスクコミュニケーション― 事例を中心に ―
本日の説明内容1.土壌汚染問題
1.1 土壌汚染とは
1.2 我が国における土壌汚染と対策の歴史
2.リスクコミュニケーション2.1 土壌汚染問題のリスクコミュニケーション
2.2 リスクコミュニケーションの進め方
2.3 リスクコミュニケーション(周知)のツール
3.土壌汚染対策の実施例3.1 都市部再開発事業の例3.2 小規模事業の例
4.まとめ2
1.土壌汚染1.1 土壌汚染とは
3
重金属・農薬等
揮発性有機化合物
油類
ダイオキシン類
①人為的原因による土壌汚染
工場等の操業に伴い、有害物質を含む液体を地下に漏洩等して、土壌に有害物質が蓄積されている状態
②自然由来の土壌汚染
自然状態の地層にもともと蓄積されている状態
人為的原因による土壌汚染のメカニズム
1.2 我が国の土壌汚染と対策の歴史
4
1880~足尾銅山鉱毒事件
1950~イタイイタイ病
1970~土呂久砒素汚染
1975 東京都六価クロム土壌汚染
1997 能勢町ダイオキシン土壌汚染
2003 神栖市有機砒素地下水汚染
2007 豊洲埋立地土壌汚染
1970 水質汚濁防止法の制定:9項目
1991 土壌環境基準の設定:10項目
1994 土壌環境基準の改正:25項目
1997 地下水環境基準の改正:23項目
1999 地下水環境基準の改正、土壌・地下水汚染対策指針運用基準の策定
2000 ダイオキシン類環境基準の設定
2002 土壌汚染対策法の制定
2010 改正土壌汚染対策法の施行(自然由来の有害物質の取扱)
2012 調査措置ガイドライン改訂第2版
1880
1900
1920
1940
1960
1980
2000
2.リスクコミュニケーション
現代社会
複雑化・国際化
社会の福祉に資す
多種多様なリスクの顕在化リスクゼロ説明が難解
住民等関係者の関心リスクの多様化
国等・学者等一方的安全宣言では同意取得難解
民主的考え方知る権利説明責任(アカウンタビリティ)
納得治療(インフォムドコンセント)
情報公開
リスクコミュニケーションが必要5
米国で発展したリスクコミュニケーションの概念※1
「行政、事業者、国民、NGO等のすべての者が化学物質による環境リスクに関する情報を共有しつつ相互に意思の疎通を図ること」
具体的に土壌汚染問題では※2
「住民、事業者、自治体といったすべての関係者が、化学物質の健康リスク、生活環境リスク、地価の下落等社会的リスクに関する情報の共有を行い、相互に意思疎通を図ることであり、土壌汚染問題対応を円滑に進めていくための手段」
【参考文献】※1:環境省調査報告書2001:平成12年度リスクコミュニケーション調査事例等報告書※2:土壌地下水汚染「環境共生をめざした修復と再生」、古市徹 監修、オーム社
2.1 土壌汚染問題のリスクコミュニケーション
6
土壌汚染問題のリスクコミュニケーションの契機
2.2 リスクコミュニケーションの進め方
7
土壌汚染問題の契機 リスクコミュニケーションの契機
土壌汚染対策法(関連条例等)
第3条調査
有害物質を使用している特定施設において使用・廃止等に伴う調査で汚染を発見した場合や人への曝露の可能性がある場合
第4条調査一定規模の土地の形質の変更に伴う調査で土壌汚染を発見した場合や人へ曝露する可能性がある場合
第5条調査健康リスクがある地下水汚染源と推定される事業所等の場合
事業者の自主調査
環境マネージメント(ISO1400s等) 土壌汚染を発見した場合や人へ暴露す
る可能性がある場合土地取引関連
リスクコミュニケーションとして自治体と事業者の住民説明事項例※3
【参考文献】※3:自治体職員のための土壌汚染に関するリスクコミュニケーション
(平成16年7月、(社)環境情報科学センター) 8
① 自治体が中心となって住民説明・情報提供を行う場合に説明する事項
汚染原因事業者の概要
基準値を超過した物質と濃度の範囲(最大・最小値)
基準を超過した物質の使用履歴と現在の状況(用途・工程等の説明)
土壌汚染が発生した原因
周辺の土壌・河川・井戸等への影響調査結果(汚染範囲と濃度)
汚染物質の有害性、健康リスクの有無
事業者への指導内容(健康への配慮、住民意見の反映、情報の公表)
今後の短期的・長期的対応計画
自治体としての指導方針
事業者への指導内容(健康への配慮、住民意見の反映、情報の公表)
自治体の対応体制と窓口(ホットライン等)
リスクコミュニケーションとして自治体と事業者の住民説明事項例※3
【参考文献】※3:自治体職員のための土壌汚染に関するリスクコミュニケーション
(平成16年7月、(社)環境情報科学センター) 9
② 事業者が中心となって行う住民説明及び情報提供事項
事業所の概要(製造している製品紹介等)
事業所の歴史(航空写真、昔の写真、古い地図、レイアウト図等)
土壌汚染調査を実施した契機など(公表とのタイムラグの説明に注意)
土壌汚染が判明した地点の位置(周辺の家等との関係がわかる図)
基準値を超過した物質と濃度の範囲(最大・最小値)
基準を超過した物質の使用履歴と現在の状況(用途・工程等の説明)
土壌汚染が発生した原因(調査中なら調査中と説明)
周辺への影響を評価するためのモニタリング地点(観測井の位置等)
周辺への影響の可能性(特に地下水)
周辺の井戸の分布、水質調査結果(自治体の調査結果を自治体に説明依頼)
今後の短期的・長期的対応計画
対応体制と窓口(ホットライン等)
リスクコミュニケーションとして自治体と事業者の住民説明事項例※3
【参考文献】※3:自治体職員のための土壌汚染に関するリスクコミュニケーション
(平成16年7月、(社)環境情報科学センター) 10
③ 事業者の説明会で自治体に説明をお願いできる事項
周辺の土壌・河川・井戸等への影響調査(汚染範囲と濃度)
汚染物質の有害性とリスク
健康リスクの有無
自治体としての指導方針
事業者への指導内容(健康への配慮、住民意見の反映、情報の公表)
今後の対応
住民の不安への対応方法
自治体の対応体制と窓口(ホットライン等)
土壌汚染のリスクコミュニケーション場面※3
学識者専門家
都道府県 市区町村指定区域台帳等の情報提供・技術支援
○日常的リスクコミュニケーションによる汚染情報の共有○住民説明会を通じたコミュニケーションの実施
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【参考文献】※3:自治体職員のための土壌汚染に関するリスクコミュニケーション
(平成16年7月、(社)環境情報科学センター)
事業者
対応相談・飲用井戸等の情報提供・技術支援
住 民
自治体
※必要に応じ相談
❐各戸へのビラ配布・回覧板
❐住民説明会の開催
❐個別訪問による説明
❐メディア公表(記者クラブ発表、記事のみ提供等)
❐インターネットによる公表(HP等)
❐案内看板
❐広報雑誌等周知についてタイミングが重要
住民説明の前のメディア公開は、住民の信頼を遺失するので注意が必要
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2.3 リスコミュニケーション(周知)のツール
リスクコミュニケーションのチェック項目ー 説明会事前準備に当たって- ※4
13
専門用語は難解であり、理解できない言葉も多々ある
外来語も同様に日常使用し難い、理解不足で説明が必要
【参考文献】※4:環境省調査報告書2001:平成12年度リスクコミュニケーション調査事例等報告書
❐わかりやすい資料を準備したか
❐予想される質問事項の回答を準備したか
❐会議の到達点について内部で事前調整したか
❐公表できる資料を事前に決めたか
❐役割分担を明確にしたか
❐事前に内部で確認やチエックを済ませたか
リスクコミュニケーションのチエック項目※4
ー 会議の進行状況 -
14
ー 会議の結果 -❐住民の意見が理解できたか
❐住民に企業の意見を理解してもらえたか
❐初期の目的を達成できたか
❐次回の開催について明確にしたか
【参考文献】※4:環境省調査報告書2001:平成12年度リスクコミュニケーション調査事例等報告書
❐リラックスした雰囲気で、会議が進行したか
❐相手方に十分に発言してもらえたか
❐相手の不安感を十分受け止める姿勢を示せたか
❐一方的な主張に終わらなかったか
3.土壌汚染対策の実施例3.1 都市部再開発事業の例
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❐ 中高層の建築に関わる案件
❐ 説明会の開催が条例で定められている
❐ 説明対象の関係住民
隣接関係住民
・敷地境界から10m以内・敷地境界線から2倍の水平距離内・規定時間内に日影が及ぶ範囲の居住者
近隣関係住民
・敷地境界線から2倍の水平距離内・電波障害の影響を著しく受ける者
3町内会の住民を対象に建築計画とともに土壌汚染問題について説明
3.1 都市部再開発事業の例
≪住民説明内容≫
16
(1) 汚染土壌対策方針
(2) 土壌調査のフロー
(3) 土壌対策のフロー
(4) 汚染土壌平面分布概要
(5) 土壌調査の結果
(6) 施工中の環境保全
6-1 飛散防止
6-2 工事に伴う排水の流出防止
6-3 関連設備配置概要
(7) 周辺環境管理計画
3.1 都市部再開発事業の例
≪想定問答例示 その1≫ポイント:住民が何にリスクを感じているか知ること
分 類 質 問 回 答
1説明会(責任者)
今回の説明会の責任者は誰か。
・土地所有者○○の●●です。
2説明会(説明者)
本日の説明者、回答者はどのような立場の者か。
・先程、出席者紹介で紹介させて頂いた者が、この計画の責任者と担当者です。
3説明会
(位置付け)今回の説明会の位置付けは?
・ご近隣の皆様方に土壌浄化工事についてご説明し、正しくご理解していただくためのものです。
4説明会
(案内範囲)
今回(土壌浄化)の説明会に案内を出した範囲は何を根拠にして決めたのか。
・近接する地域にお住まいの皆様に加え、線路、A道路、B川で囲まれたひとまわり広い範囲、及び説明のご要望がありました●●の業務棟、住宅棟にご案内させて頂きました。
5説明会
(説明範囲)
個別に説明しているようだが、その範囲は何を根拠にして決めたのか。
・ご近隣へのご説明については、条例等に定められた説明範囲が無く、当社としてもどのような対応をすべきか当初より模索しておりました。一先ず近接する地域にお住まいの皆様にご案内をさせて頂きました。
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3.1 都市部再開発事業の例
≪想定問答例示 その2≫分 類 質 問 回 答
6説明責任(説明時期)
なぜ、浄化工事に着手する前に説明を行わなかったのか。もっと早く説明すべきだったのでは。
・近隣の皆様方への今回の説明会は特に条例等には定められていませんでしたので、個別にご挨拶に伺った次第です。(マンションの各戸及びご不在のお宅等については、不在のお宅等はご挨拶状を投函させて頂きましたが)・先だって建物保有者会社様が実施された新築工事に係る説明会の際、皆様方から土壌対策工事についてのご質問が多数寄せられたことを伺い、今回の場を設けさせて頂くことになりました。・なお、本説明会は、「土壌汚染対策法」並びに「〇〇〇条例」 の主旨に基づいて行っています。
7説明責任(同意)
住民全員が完全に納得するまで、浄化工事をストップして欲しい。
・全員の同意を得るまで工事を中断するとのお約束は致しかねますが、皆様にご理解を賜わるよう最大限の努力をして参ります。
8 健康被害
(解体等)工事が始まってから体調が悪くなった。汚染の影響ではないのか。
・土壌汚染対策工事は6月より開始する予定です。工事期間中は周辺環境の悪化を防止するため、〇〇〇市の指導に基づき排水及び大気中の特定有害物質等について定期的にモニタリングを行い、周辺への影響が認められる場合には、原因を究明し、環境保全対策を改善することとします。・それ以前に汚染土壌が飛散することはありません。 18
[対象法令]
◎□□県「○○○環境に関する条例」 (H△△.△△施行)
1)3,000m2以上の土地の形質の変更
2)工場若しくは指定作業場を廃止、除去
[汚染土壌措置方法]
○汚染土壌の全量掘削及び健全土埋戻し
・「汚染拡散防止計画書」(H△△.△△受理)に基づく
3.1 都市部再開発事業の例
≪土壌汚染対策工事 近隣説明会資料≫(1) 汚染土壌対策方針
19
資料等調査(土地利用の履歴等調査)
調査計画の立案
測量・位置出し
土壌ガス調査 表層土壌調査
井戸採水
地下水調査
汚染が認められるか?
ボーリング調査
汚染範囲の確定
END
[概況調査]
[詳細調査]
汚染の有無・平面分布の把握
汚染の鉛直分布の把握
(揮発性有機化合物)
「土壌汚染状況調査報告書」H○年○月○日□□県受理
「汚染拡散防止計画書」H△年△月△日□□県受理
(重金属等)
□□県「○○○環境に関する条例」(H△△.△△施行)
・3,000m2以上の土地の形質の変更
Yes
No
20
3.1 都市部再開発事業の例
(2) 土壌調査のフロー
対策工の検討
山留め支保工
掘削・積込み工
未汚染土の埋戻し工
山留め撤去工 埋立て処分
「汚染拡散防止計画書」H○年○月○日□□県受理
中間処理(不溶化・固形化)
[施工計画]
汚染拡散防止計画の作成
[施工]
「汚染拡散防止措置完了報告書」(提出予定)セメント製造施設
-基本方針-全量掘削撤去及び未汚染土埋戻し
□□県「○○○環境に関する条例」(H△△.△△施行)
3.1 都市部再開発事業の例
(3) 土壌処理のフロー
21
搬出工
◎汚染状態に関する基準を超過した物質
鉛、六価クロム、ひ素、総水銀、シアン、フッ素、(ベンゼン)
汚染状態に関する基準を超過したエリア
3.1 都市部再開発事業の例
(4) 汚染土壌平面分布概要
22
◎基準を超過した物質 : 鉛、六価クロム
◎地下水基準を超過した物質: なし (観測井8箇所)
◎要対策土量 : 約5,700m3
3.1 都市部再開発事業の例
(5) 土壌調査の結果 その1
23
超過最大濃度 超過最小濃度 基準値
溶出量(mg/l) 110 0.06 0.05
含有量(mg/kg) 4400 450 250
溶出量(mg/l) 0.13 0.011 0.01
含有量(mg/kg) 13000 160 150
指定基準超過項目
六価クロム
鉛
[敷地全体]最大深さ ;8.5m平均深さ ;1.8m
[A-A断面]
基準を超過した範囲
図 汚染土壌断面概要
3.1 都市部再開発事業の例
(5) 土壌調査の結果 その2
24
6-1 飛散防止
[全般]○敷地境界の仮囲い壁○コンクリート解体後、シート養生
[掘削]○場内散水処置○大気モニタリング[運搬]○土砂のシート養生○タイヤ洗浄ヤード
3.1 都市部再開発事業の例
(6) 施工中の環境保全 その1
25
6-2 工事排水の流出防止
[掘削ヤード]○井戸や釜場から湧水を揚水し、水処理設備において基準以下に処理し、○○川に放流(基準;排水基準、○○川放流基準)
[洗浄ヤード]○タイヤ及びコンクリートガラ洗浄ヤードから排出される洗浄水は、水処理設備にて処理
タイヤ洗浄装置
水処理設備
ガラ洗浄装置
仮囲い;安全鋼板 工事用車輌出入口
6-3 関連設備配置概要
26
3.1 都市部再開発事業の例
(6) 施工中の環境保全 その2
7-1 定期管理:測定項目
27
3.1 都市部再開発事業の例
(7) 周辺環境管理計画 その1
測定頻度 測定項目
施工前 施工中
管理値
管理方法 測定箇所
粉 塵 1回 4回/年
(1回/3 ヵ月)
1時間値の 1日平均
値が 0.10mg/m3であ
り、かつ、1時間値
が 0.20mg/m3以下で
あること。 大 気
ベンゼン 1回 4回/年
(1回/3 ヵ月)
1年平均値が、
0.003mg/m3以下で
あること。
騒音・振動 -
該当作業前・
中
1回ずつ
騒音:85dB
振動:75dB
-特定建設業 規制
値-
騒音・振動
加熱処理施設稼動
昼夜,朝
夕4回 1回/月
昼間:50dB
朝・夕、夜間:45dB
-特定工場 騒音規
制値-
第1種区域として
悪 臭
臭気指
数(濃
度)
1回 4回/年
(1回/3 ヵ月)
臭気指数(濃度)
30以下
敷地境界
原水 処理水 測定方法
排 水 41項目 1回
1回/月
原水超過項目
のみ
環告第 17号と同様
(大阪市下水道条
例)
油類 1回 1回/月 n-ヘキサン抽出重量法
水処理設
備排出口
振動測定器
ハイボリュームサンプラー:環境モニタリング場所
28
7-1 定期管理:モニタリング場所等
3.1 都市部再開発事業の例
(7) 周辺環境管理計画 その2
7-2 日常モニタリング
騒音測定器 デジタル粉塵測定器
※ 「大気(ベンゼン)」は換気設備排気口及び水処理設備活性炭槽排気口の2個所で測定します
※ 「排水」は水処理設備 放流部にて測定します
※ 「作業環境」はテント内で測定します
29
3.1 都市部再開発事業の例
(7) 周辺環境管理計画 その3
測定頻度 測定項目 (対象)
施工前 施工中
管理値
管理方法
粉 塵 1回 1回/月
1 時間値の 1 日平均値が
0.10mg/m3であり、かつ、1 時間
値が 0.20mg/m3 以下であるこ
と。 大 気
ベンゼン 1回 2回/日 10ppm
pH 連 続 計 測 5.8~8.6
瞬時流量 〃 記 録
積算流量 〃 記 録
シアン 1回 1回/週 0.1 mg/L
砒素 〃 〃 0.2 mg/L
COD 〃 〃 120 mg/L
排 水
溶解鉄 〃 〃 10 mg/L
悪 臭 健康状態での
感覚 - 2回/日 巡回 確認
特定建設工事 - 2回/日 85dB
騒 音 加熱処理施設
昼夜、朝夕
4回
1回/週
朝昼夕夜4回
昼間:50dB
朝・夕、夜間:45dB -特定工場 騒音規制値-
第1種区域として
ベンゼン 1回 2回/日 10ppm
トルエン 〃 〃 100ppm
キシレン 〃 〃 100ppm
酸素 〃 〃 18%
作業環境
一酸化炭素 〃 〃 25ppm
3.土壌汚染対策の実施例3.2 小規模事業の例
30
❐ 稼働中の事業所における旧工場跡の土壌汚染対策
❐ 事業者の自主事業
土地の形質の変更範囲は、3,000m3以下
自主調査の結果と対策を行政に報告したところ、土壌汚染対策法と同等以上の調査及び適切な措置を講じるよう指導あり
❐ 説明対象の関係住民
近隣関係住民
3.2 小規模事業の例
≪住民説明内容≫
31
(1) これまでの経緯説明
(2) 土壌汚染調査の方法
(3) 土壌ガス調査の結果
(4) 表層土壌調査の結果
(5) 土壌汚染対策の範囲
(6) 土壌汚染対策方法
(7) 連絡先
(8) 質疑応答
3.2 小規模事業の例
≪土壌汚染対策工事 近隣説明会資料≫(1) これまでの経緯
32
(株)□□社旧工場跡地の土壌・地下水汚染に関しては、平成○年○月〇日、□□市に報告を行い、その後、近接するお宅について、 □□市立ち会いのもとに表層土壌の採取・分析を実施して、旧工場跡地の土壌汚染の敷地外への影響がないことを確認しています。また、 □□市の指導に基づき、旧工場跡地を含め敷地全体に
わたって、土壌汚染対策法に準拠した土壌ガス調査、表層土壌調査、深度調査(ボーリング調査)及び地下水調査を実施しました。このたび、その結果が判明しましたので、これまでの調査結果と
合わせた敷地全体の土壌汚染状況と、今後の土壌汚染対策について報告します。なお、土壌汚染対策の詳細については、施工業者である(株)◇◇建設が報告します。
3.2 小規模事業の例
(2) 土壌汚染調査の方法<土壌ガス調査>
33
①ハンマードリルにより、表層部と地盤に孔をあける。②深さ1m程度のガス採取孔を作る。③採取孔内の土壌ガスを採取し、分析する。
▲ ▲
▲
▲
▲
▲ ▲ ▲
▲
▲
▲
▲
▲
▲ 10m
10m
10m
10m
【凡例】
汚染のおそれが比較的多い
汚染のおそれが少ない
▲ 試料採取地点
3.2 小規模事業の例
(2) 土壌汚染調査の方法<表層土壌調査>
34
①必要に応じて、アスファルト面を削孔する。②ダブルスコップで土壌を採取する。③地表から深さ5cmまでの土壌と、深さ5~50cmの土壌を、同じ重量で混合して試料とする。
■
■
■
■
■
■
■ ■
■ ■ ■
■ ■ ■
■ ■ ■
■ ■ ■ ■ ■
10m
10m
【凡例】
汚染のおそれが比較的多い
汚染のおそれが少ない
■ 試料採取地点
3.2 小規模事業の例
(2) 土壌汚染調査の方法<深度調査>
35
表層土壌調査の結果、必要に応じて深度調査(ボーリング調査)を実施
ボーリングマシン:自走式ボーリングマシン:ロータリー式
3.2 小規模事業の例
(3)土壌ガス調査の結果 (4)表層土壌調査の結果
36
△ △
△ △ △
△ △ △
△ △ △
△ △ △
10m
10m
10m
10m
□ □ □
□ □ □ □
■ ■ ■ □ □
■ ■ ■ □ □
■ ■ ■ □ □
10m
10m
【凡例】
汚染のおそれが比較的多い
汚染のおそれが少ない
▲ 土壌ガス検出
△ 土壌ガス不検出
第一種特定有害物質:土壌汚染なし 第二種特定有害物質:土壌汚染あり〇六価クロム(土壌溶出量)〇砒素(土壌溶出量)
【凡例】
汚染のおそれが比較的多い
汚染のおそれが少ない
■ 基準不適合
□ 基準適合
1m
10m
10m 10m 10m
3.2 小規模事業の例
(5) 土壌汚染対策の範囲
37
表層土壌調査において基準不適合を確認した区画で深度調査(ボーリング調査)を実施し、土壌汚染対策範囲を決定した。
なお、事業地内の観測井において地下水調査を行った結果、当該土壌汚染に起因した地下水汚染は生じていなかった。
[汚染物質]・六価クロム・砒素※
※自然由来汚染土壌
●応急措置(恒久措置までの期間)・封じ込め措置(遮水鋼矢板、アスファルト舗装)
●恒久措置・掘削除去措置(汚染土壌の場外搬出、清浄土の埋戻し)
(土壌対策範囲)10m
5m
アスファルト舗装
遮水矢板
(清浄土)10m
(冬季養生)
3.2 小規模事業の例
(6) 土壌汚染対策方法6-1 基本方針
38
3.2 小規模事業の例
6-2 対策工事の施工フロー
39
(1)準備工
(2)土留工(鋼矢板設置)
(3)舗装撤去部養生
(4)掘削・土留支保工設置
(5)埋戻・土留支保工撤去
(6)土留工(鋼矢板撤去)
(7)復旧工
先行削孔・オーガー同時圧入
掘削汚染土壌場外搬出
清浄土置き換え
油圧式杭引抜工法
(冬期養生)
応急措置(封じ込め)
恒久措置(掘削除去)
【準備工計画図】
②仮囲い設置
③既存舗装撤去(矢板打設箇所)
①支障物撤去(柵、ゲート)
(事業所敷地)
対策工事範囲
市道
【仮囲い設置詳細図】
万能鋼板(H=3m)
出入口(敷鉄板養生)
3m
40
3.2 小規模事業の例
6-3 施工方法1) 準備工
①支障物撤去(柵、ゲート)②仮囲い設置③既存舗装撤去
【鋼矢板の打設事例】【鋼矢板の設置場所及び作業概要】
・鋼矢板Ⅳ型 L=13.5m
市道
先行削孔
鋼矢板打設
鋼矢板搬入
鋼矢板取り卸し
出入口
3.2 小規模事業の例
2) 山留工
41
〇土壌対策範囲内における融雪水の地下浸透防止
・鋼矢板打設箇所にはアスファルト舗装(t=5cm)
・現況舗装面をアスファルト舗装(t=3cm)
(土壌対策範囲)
アスファルト舗装 t=5cm
10m鋼矢板(遮水材塗布)
(降雪期は、雪置き場) アスファルト舗装 t=5cm
アスファルト舗装 t=3cm
現況舗装試料採取跡埋戻し
※試料採取跡はその都度埋戻し
鋼矢板(遮水材塗布)
42
3.2 小規模事業の例
3) 舗装撤去部養生
〇掘削機(バックホウ)により、地面を掘り下げていく。
バックホウ 10t ダンプトラック
H.W.L-5m
L.W.L-8m
1.5m
3m
3m
2.5m
10m
5m
15m
掘削・土留支保工(1段目)
3.2 小規模事業の例
4) 掘削・土留支保工設置 ①表層部
43
〇掘削機(パイプクラム)により掘削する。・土留支保工 3段架設
10t ダンプトラックパイプクラム
H.W.L-5m
L.W.L-8m
1.5m
3m
3m
2.5m
10m
5m
15m掘削・土留支保工(2段目)
掘削・土留支保工(1段目)
掘削・土留支保工(3段目)
3.2 小規模事業の例
4) 掘削・土留支保工設置 ②深層部
44
○セメントの原料として利用(資源の有効利用)※セメント製造過程で高温焼成され、適正処理
3.2 小規模事業の例
5) 汚染土壌場外搬出処理
45
○所定の深度を掘削除去後、土留支保工を撤去しながら、土壌汚染のないことを確認した土壌にて埋め戻す。
H.W.L-5m
L.W.L-8m
1.5m
3m
3m
2.5m
10m
5m
15m
埋戻し(1段梁下)
埋戻し(2段梁下)
埋戻し(3段梁下)
土留支保工撤去(1段目)
3.2 小規模事業の例
6) 埋戻・土留支保工撤去
46
② 露出汚染土壌のシート養生
① 敷地境界に仮囲い壁 ③ 散水による飛散防止
④ ダンプトラックのシートカバー※
※ダンプトラックは、タイヤに付着した土砂を取り除いた後に一般道へ出ることとする。
3.2 小規模事業の例
6-4 施工中の環境保全 1) 土壌の飛散防止
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①工事に伴う排水処理
・ 工事に伴う湧水を、水処理設備において下水排水基準値以下に処理した後に、下水道に放流
②騒音・振動対策
・ 低騒音型工事機械の使用
3.2 小規模事業の例
2) その他の環境対策
48
バックホウ
10t ダンプトラック
水処理設備
※地下水が出る前に水処理設備を設置
出入口
仮囲い塀
市
道掘削
3.2 小規模事業の例
3) 環境保全設備配置
49
搬入経路
搬出経路
3.2 小規模事業の例
6-5 工事用車両走行経路
汚染土壌除去場所
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3.2 小規模事業の例
(7) 連絡先
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(1)工事に対するご意見、ご要望等がございましたら下記までご連絡下さい
施 工 会 社 : 株式会社 〇〇建設現場代理人 : □□□□T E L : 000-111-2222
(2)その他 連絡・問い合わせ先
工事発注者 :株式会社 〇〇社
担 当 者 : □□□□T E L : 000-111-3333F A X : 000-111-4444
3.2 小規模事業の例
(8) 質疑応答
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〇住民説明会の出席者・近隣住民の皆さま
・事業者
・施工業者
・〇〇市環境局
〇主な質疑事項・掘削した汚染土壌の運搬経路
・汚染土壌の飛散防止措置
・自然由来重金属等含有土壌の対策の妥当性
・住民説明会の内容の周知
土壌汚染調査の結果、自然由来重金属等含有土壌が確認された。住民説明会では、その調査結果
及び対策の妥当性について見解を求められることが想定されたため、事業者より担当部署に出席を依頼した。
3.2 小規模事業の例
(参考)
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〇住民説明会翌日、新聞記事が掲載された。
□□市・■■社六価クロム問題:会社側が住民に除去手順を説明
□□市の■■社の敷地から環境基準値の〇〇倍の六価クロムが検出された問題で、同社は○○日、住民説明会を開き、「土を搬出するトラックの荷台をシートで覆い、飛散を防ぐ」などと、汚染土壌除去工事の手順を説明した。説明会は○○月○○日に続いて2回目。近隣住民13人が出席し、大手ゼネコン「◇◇建設」の担当者が手順を説明した。工事は、年内に■■社の土壌を金属板等で囲い、地下水に六価クロムが溶け出さないようにした上で、来年○○月末までに汚染土壌をすべて搬出する。住民からは「土の飛散をどう防ぐのか」などの質問が寄せられ、■■会社の担当者が「ダンプの荷台をシートで覆い、タイヤを洗浄してから搬出する」と答えた。親会社の■■会社広報室は「周辺住民の安全と安心を最優先して工事を行う。」と話している。【****】
4.まとめ
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リスクコミュニケーションの基本原則※5
①市民団体・地域住民等を正当なパートナーとして受け入れ、連携する
②コミュニケーション方法を注意深く立案し、そのプロセスを評価する
③人々の声に耳を傾ける
④正直、率直、オープンになる
⑤他の信頼できる人々や機関と協調、協働する
⑥メディア(マスコミ)の要望を理解して応える
⑦相手の気持ちを受け止め、明瞭に話す
【参考文献】 ※5:EPA(米国環境保護庁)
ご清聴、ありがとうございました。
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