文化を活かした地域再生 ~鳥取と倉吉での取り組み...

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指導教員 野田邦弘・榎木久薫 【鳥取班】 小川龍太郎 立山郁 田中亜紗美 西村直子 廣澤咲 二岡瞳 山岡歩 目次 1.はじめに 2.イベントの企画 -1.企画に向けた話し合い -2.街中探索の結果 -3.私たちの考察 -4.イベントの提案 -5.イベントのねらい -6.イベントの内容 -7.モザイクアートの材料 -8.モザイクアートの原画 -9.私たちの目指した参加者 -10.イベント会場 3.イベント実施に向けた活動 4.イベントの様子 -1.1日目 -2.2日目 -3.イベントを終えて -4.作品の展示 5.アンケート -1.アンケート結果 -2.アンケート結果の考察 6.まとめ -1.反省と今後に向けて -2.結論 私たちは、鳥取市の中心市街地商店街の活性化の試 みとしてイベントを開催することにした。そこでまず、 イベントを企画する前に、企画に向けた話し合いをし た。そして、実際に街中を探索し、鳥取中心市街地の 現状を見て、どのような問題点があるのかを話し合い、 それらの問題点を解決するために、まず住民の声を聞 くことが重要であると考え、ヒアリングを兼ねたイベ ントを行うことにした。 -私たちのグループには県内出身者が多いにもかかわ らず、大型ショッピングモールばかり利用していたり、 そもそも駅前や商店街が生活範囲になっていなかった り、利用していても、利用するお店や商店街がパター ン化していた。そのため、鳥取の商店街のことについ て知っているようで知らないことが多いのではないか と考え、実際に街中を探索することにした。 街中探索の様子(川端銀座通り) 街中探索の様子(太平線通り)

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Page 1: 文化を活かした地域再生 ~鳥取と倉吉での取り組み …...デコ!-みんなで作ろう1つの絵!-」というイベン トである。2-5.イベントのねらい

2010 年度 地域文化調査成果報告書

- 1 -

文化を活かした地域再生

~鳥取と倉吉での取り組みから~

指導教員 野田邦弘・榎木久薫

【鳥取班】

トリデコ! みんなで作ろう1つの絵!

小川龍太郎 立山郁 田中亜紗美 西村直子 廣澤咲

二岡瞳 山岡歩

目次

1.はじめに

2.イベントの企画

2-1.企画に向けた話し合い

2-2.街中探索の結果

2-3.私たちの考察

2-4.イベントの提案

2-5.イベントのねらい

2-6.イベントの内容

2-7.モザイクアートの材料

2-8.モザイクアートの原画

2-9.私たちの目指した参加者

2-10.イベント会場

3.イベント実施に向けた活動

4.イベントの様子

4-1.1日目

4-2.2日目

4-3.イベントを終えて

4-4.作品の展示

5.アンケート

5-1.アンケート結果

5-2.アンケート結果の考察

6.まとめ

6-1.反省と今後に向けて

6-2.結論

1.はじめに

私たちは、鳥取市の中心市街地商店街の活性化の試

みとしてイベントを開催することにした。そこでまず、

イベントを企画する前に、企画に向けた話し合いをし

た。そして、実際に街中を探索し、鳥取中心市街地の

現状を見て、どのような問題点があるのかを話し合い、

それらの問題点を解決するために、まず住民の声を聞

くことが重要であると考え、ヒアリングを兼ねたイベ

ントを行うことにした。

2.イベントの企画

2-1.企画に向けた話し合い

私たちのグループには県内出身者が多いにもかかわ

らず、大型ショッピングモールばかり利用していたり、

そもそも駅前や商店街が生活範囲になっていなかった

り、利用していても、利用するお店や商店街がパター

ン化していた。そのため、鳥取の商店街のことについ

て知っているようで知らないことが多いのではないか

と考え、実際に街中を探索することにした。

街中探索の様子(川端銀座通り)

街中探索の様子(太平線通り)

− � −

Page 2: 文化を活かした地域再生 ~鳥取と倉吉での取り組み …...デコ!-みんなで作ろう1つの絵!-」というイベン トである。2-5.イベントのねらい

- - 3 - -

1日目と2日目の対象と、イベント会場を変えること

にした。これは、会場を変えることで、参加者層や参

加人数などを比較することがねらいである。

対象は、1日目を親子限定、2日目を世代・性別を

問わない一般の人に設定した。親子と限定したのは、

子どもの頃から商店街に馴染みをもつ機会があまりな

いという私たちの意見と、街中探索を行った際に、親

子の姿がほとんど見られなかったので、イベントを目

的に足を運んでくれる人が増えるのではないかと考え

たからである。そして、幅広く意見を聞くため、2日

目は一般の人に対象を変えることにした。

2-10.イベント会場

イベント会場について話し合った結果、人通りの多

さや場所の分かりやすさ、雰囲気などの全く異なる以

下の2か所に決定した。

① 1日目:空き家 bar@RMS

② 2日目:びぎん3号館

会場周辺地図

RMS 入口

(上)RMS 入口

(下)RMS 建物内の様子

RMS 建物内の様子

RMSは川端通りのカフェnoppoさんの主導で行われ

た「空き家再生プロジェクト」によって誕生したバー

である。もともと空き家だった場所を改装して 2010

年 11 月に営業を開始したばかりの新しい店舗で、

noppo さんの裏手に位置する。入口が建物と建物の間

の狭い路地のため、場所はすこし分かりにくく、隠れ

スポットといった雰囲気である。

びぎん3号館 入口

びぎん3号館 建物内の様子

びぎん3号館は若桜街道沿いにあるチャレンジショ

ップである。チャレンジショップとは商店街の活性化

などを目的に空き店舗を有効活用するという取り組み

で、店舗を学生や店舗経営希望者に格安で貸し出して

2010 年度 地域文化調査成果報告書

- - 2 - -

2-2.街中探索の結果

街中探索を行った結果、商店街には以下のような問

題点があると考えた。

・人が歩いていない

・中高年の方が多い

・お店が若い世代向けでない

・使われていないシャッターが閉まった店舗が多い

・広場などの自由な空間や、良いお店の場所が分かり

にくい

そして、何よりもまず、歩いている人が少ないとい

うことが1番の問題であると考えた。

2-3.私たちの考察

次に、なぜこのような現状があるのかについて考察

を行った。話し合いの結果、

・商店街に馴染みがない

・人を惹きつけるお店が少ない

・無料の駐車場が少ない

・遊べるところが少ない

以上の理由により、商店街に人が少ないのではない

かという考察に至った。

2-4.イベントの提案

私たちは、鳥取の街中を活性化するためには、まず

中心市街地の特色を検証し、問題点をはっきりさせる

必要があると考えた。

そのため、イベントを単発で行い、人を呼び込み、

成功させることだけではなく、このイベントで得られ

た中心市街地の情報や特色を、鳥取の地域の人たちや、

イベントを主催する団体に提供するということを目的

に設定した。つまり、イベントの結果を中心市街地に

提示することで、今後の街づくりや、中心市街地の活

性化の材料にしてもらうことが私たちの最終的な目標

になるということである。

これらの考えをふまえ、企画したイベントが「トリ

デコ!-みんなで作ろう1つの絵!-」というイベン

トである。

2-5.イベントのねらい

トリデコ!のねらいを以下の通りに設定した。

・地域の人が地域のものを使う

・個人の作業ではなく、みんなで作り上げる

・地域の人たちとのコミュニケーションの機会を提供

する

・参加していない人にも楽しさを感じてもらう

・商店街を明るくする

・商店街のリピーターをつくる

2-6.イベントの内容

私たちは、イベントに参加していない人にもイベン

トの楽しさを感じてもらいたいという思いと、イベン

トを開催したことで、鳥取市の中心市街地が少しでも

明るくなったなと地域の人に目で見て感じてもらいた

いという思いが強くあった。

そのため、3メートル×3メートルの大きなモザイ

クアートを作り上げることをイベント内容に設定し、

完成した作品を中心市街地に展示することに決めた。

作業内容は、誰にでも簡単に作ることができるよう

に、3メートル×3メートルのモザイクアートを A3

サイズに切り、88 枚のパーツに分け、そのパーツの指

定されたところに、指定された色の和紙をちぎって貼

っていく。そして完成したパーツを繋げて、ふたたび

大きな1つのモザイクアートにするというものだ。

2-7.モザイクアートの材料

地域の人たちが地域のものを使うというねらいから、

材料の和紙にはあおや和紙工房の因州和紙を使い、地

産地消をアピールした。

2-8.モザイクアートの原画

モザイクアートの原画は、鳥取県出身のアーティス

ト渡部紘巳さんに依頼した。絵の中に鳥取を感じられ

るものをたくさん入れて欲しいというお願いをし、協

力していただいた。

モザイクアートの原画

2-9.私たちの目指した参加者

イベントは 2010 年 12 月4日と5日の2日間行い、

20�0 年度 地域文化調査成果報告書

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Page 3: 文化を活かした地域再生 ~鳥取と倉吉での取り組み …...デコ!-みんなで作ろう1つの絵!-」というイベン トである。2-5.イベントのねらい

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1日目と2日目の対象と、イベント会場を変えること

にした。これは、会場を変えることで、参加者層や参

加人数などを比較することがねらいである。

対象は、1日目を親子限定、2日目を世代・性別を

問わない一般の人に設定した。親子と限定したのは、

子どもの頃から商店街に馴染みをもつ機会があまりな

いという私たちの意見と、街中探索を行った際に、親

子の姿がほとんど見られなかったので、イベントを目

的に足を運んでくれる人が増えるのではないかと考え

たからである。そして、幅広く意見を聞くため、2日

目は一般の人に対象を変えることにした。

2-10.イベント会場

イベント会場について話し合った結果、人通りの多

さや場所の分かりやすさ、雰囲気などの全く異なる以

下の2か所に決定した。

① 1日目:空き家 bar@RMS

② 2日目:びぎん3号館

会場周辺地図

RMS 入口

(上)RMS 入口

(下)RMS 建物内の様子

RMS 建物内の様子

RMSは川端通りのカフェnoppoさんの主導で行われ

た「空き家再生プロジェクト」によって誕生したバー

である。もともと空き家だった場所を改装して 2010

年 11 月に営業を開始したばかりの新しい店舗で、

noppo さんの裏手に位置する。入口が建物と建物の間

の狭い路地のため、場所はすこし分かりにくく、隠れ

スポットといった雰囲気である。

びぎん3号館 入口

びぎん3号館 建物内の様子

びぎん3号館は若桜街道沿いにあるチャレンジショ

ップである。チャレンジショップとは商店街の活性化

などを目的に空き店舗を有効活用するという取り組み

で、店舗を学生や店舗経営希望者に格安で貸し出して

2010 年度 地域文化調査成果報告書

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2-2.街中探索の結果

街中探索を行った結果、商店街には以下のような問

題点があると考えた。

・人が歩いていない

・中高年の方が多い

・お店が若い世代向けでない

・使われていないシャッターが閉まった店舗が多い

・広場などの自由な空間や、良いお店の場所が分かり

にくい

そして、何よりもまず、歩いている人が少ないとい

うことが1番の問題であると考えた。

2-3.私たちの考察

次に、なぜこのような現状があるのかについて考察

を行った。話し合いの結果、

・商店街に馴染みがない

・人を惹きつけるお店が少ない

・無料の駐車場が少ない

・遊べるところが少ない

以上の理由により、商店街に人が少ないのではない

かという考察に至った。

2-4.イベントの提案

私たちは、鳥取の街中を活性化するためには、まず

中心市街地の特色を検証し、問題点をはっきりさせる

必要があると考えた。

そのため、イベントを単発で行い、人を呼び込み、

成功させることだけではなく、このイベントで得られ

た中心市街地の情報や特色を、鳥取の地域の人たちや、

イベントを主催する団体に提供するということを目的

に設定した。つまり、イベントの結果を中心市街地に

提示することで、今後の街づくりや、中心市街地の活

性化の材料にしてもらうことが私たちの最終的な目標

になるということである。

これらの考えをふまえ、企画したイベントが「トリ

デコ!-みんなで作ろう1つの絵!-」というイベン

トである。

2-5.イベントのねらい

トリデコ!のねらいを以下の通りに設定した。

・地域の人が地域のものを使う

・個人の作業ではなく、みんなで作り上げる

・地域の人たちとのコミュニケーションの機会を提供

する

・参加していない人にも楽しさを感じてもらう

・商店街を明るくする

・商店街のリピーターをつくる

2-6.イベントの内容

私たちは、イベントに参加していない人にもイベン

トの楽しさを感じてもらいたいという思いと、イベン

トを開催したことで、鳥取市の中心市街地が少しでも

明るくなったなと地域の人に目で見て感じてもらいた

いという思いが強くあった。

そのため、3メートル×3メートルの大きなモザイ

クアートを作り上げることをイベント内容に設定し、

完成した作品を中心市街地に展示することに決めた。

作業内容は、誰にでも簡単に作ることができるよう

に、3メートル×3メートルのモザイクアートを A3

サイズに切り、88 枚のパーツに分け、そのパーツの指

定されたところに、指定された色の和紙をちぎって貼

っていく。そして完成したパーツを繋げて、ふたたび

大きな1つのモザイクアートにするというものだ。

2-7.モザイクアートの材料

地域の人たちが地域のものを使うというねらいから、

材料の和紙にはあおや和紙工房の因州和紙を使い、地

産地消をアピールした。

2-8.モザイクアートの原画

モザイクアートの原画は、鳥取県出身のアーティス

ト渡部紘巳さんに依頼した。絵の中に鳥取を感じられ

るものをたくさん入れて欲しいというお願いをし、協

力していただいた。

モザイクアートの原画

2-9.私たちの目指した参加者

イベントは 2010 年 12 月4日と5日の2日間行い、

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2010 年度 地域文化調査成果報告書

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いる。鳥取市では「チャレンジショップ Begin」が 2004

年にオープンし、2011 年2月現在で4号館まで存在す

る。3号館は大通り沿いに位置しているので、人通り

も多く比較的分かりやすい場所である。

3.イベント実施に向けた活動

イベントの詳細が決定した後、私たちはイベント

当日に向けて主に以下の3つの活動を行った。

・広報活動

・材料や備品の調達

・完成した作品の展示場所の確保

広報活動では、鳥取市内へ向けてイベントのチラ

シ・ポスターの配布を行った。その際、配布先を、会

場である鳥取市中心市街地の商店街、スーパーや娯楽

施設が多く人が集まりやすい湖山周辺、そしてイベン

ト1日目の対象が親子であることを意識した幼稚園・

保育園などの託児施設の3つのカテゴリに分けた。チ

ラシ・ポスターの配布先は以下の通り。

〈会場周辺〉

空き家 bar@RMS,びぎん3号館,noppo,

よねむら硝子店,さーびす呉服店,わらべ館

〈湖山周辺〉

鳥取大学,湖山ストア,マルイ

〈親子向け〉

鳥取大学附属幼稚園,愛真幼稚園,

修立幼稚園,小さき花園幼稚園,

鳥取第二幼稚園,ルーテル幼稚園,

湖山保育園,久松保育園,

めぐみ保育園,COMODO

鳥取商工会議所、鳥取市役所、鳥取県庁の方々には

鳥取市内への配布をしていただいた。

また、今回のイベントは 2010 年 11 月から 12 月にか

けて実施された「鳥取街なか・賑わいのまちづくり実

証事業」のタイアップイベントの1つとしてチラシに

掲載していただいた。

4.イベントの様子

4-1.1日目

日時 12 月4日 (土) 13:00~16:00

場所 空き家 bar@RMS

対象 親子

会場は少し奥まった場所にあるためわかりやすいよ

うに入口に看板を設置し、室内は子供たちが座って作

業しやすいようにパズルマットを敷き、休憩できるよ

うに机や椅子を設置するなど参加者のために工夫した。

また、より多くの人々に参加して頂くために通行人

の方や近くの公園に来ていた親子にチラシを配り呼び

掛けた。

空き家 bar@RMS 入口

室内準備の様子

初めに参加してくれたのは、呼び込みによる参加の

中学生であった。

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Page 5: 文化を活かした地域再生 ~鳥取と倉吉での取り組み …...デコ!-みんなで作ろう1つの絵!-」というイベン トである。2-5.イベントのねらい

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その後もチラシを見て興味を持って来てくれた方、

呼び込みで来てくれた方など多くの人に参加して頂き、

学生も作業の仕方を説明しながら参加者と一緒に楽し

く作業を行った。

当日の様子

4-2.2日目

日時 12 月5日 (日) 11:00~16:00

場所 びぎん3号館

対象 一般

会場は若桜街道に面していて比較的分かりやすいだ

けでなく、ガラス張りになっているため外から作業の

様子が見やすくなっている。

1日目と違い、通行人や商店街を利用するあらゆる

人々にチラシを配布し、呼び込みを行った。通りかか

った小中学生や、一般の方の参加があった。

小学生には学生がやり方を説明しながらともに制作

したが、少し退屈な作業だったようだ。参加者は1日

目と同じく親子連れが多く、2日連続参加してくださ

った方もおられた。

4-3.イベントを終えて

イベント2日間を通して感じたことは、歩行者が少

なく、自転車や車で商店街を通過していく人々が多く

見られることであり、呼び込みをしようにも難しい面

があった。しかし少し場所を変え公園に行くと、子供

を遊ばせている親子が多くいた。そして2日間とも参

加してくれたのは親子連れが多く、1日目・2日目と

場所を変えたことによる参加者の変化はあまりなかっ

た。

4-4.作品の展示

文化を活かした地域再生 〜鳥取と倉吉での取り組みから〜

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2010 年度 地域文化調査成果報告書

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(前頁)川端銀座通りでの展示

(上)若桜街道での展示

完成した作品は、1日目・2日目の各会場でお世話

になった川端銀座通り(2010 年 12 月 19 日~2011 年

1月 21 日)と、若桜街道沿いの島根銀行壁面(2011

年1月 23 日~2月 28 日)に展示した。

5.アンケート

5-1.アンケート結果

ここから当日に行ったアンケートの結果をみる。

実施方法はイベントに来場した小学生以上を対象に

作業終了後、アンケート用紙を配布し記入してもら

った。22 人の方からの回答があった。

まず、回答者数だが、30 代、40 代はほぼ父親、母親

世代である。10 代とそれ以下はアンケートに答えても

らった方のみのため、園児や未就園児は含まれていな

い。50 代、60 代が男女とも0人という結果だった。親

子を対象とした1日目では母親が多いだろうと予想し

ていたが、休日ということもあってか、父親の参加も

目立った。祖父母世代の参加がなかったのは、イベン

トが知られていないということも考えられるだろう。

参加したきっかけで1番多いのはチラシだった。続

いて通りがかりが 23%だがそれは私たちが声をかけ

て誘ったことも含まれる。また事前の宣伝活動も必要

だが、通りがかりでこのように参加してくれる人がい

るのであれば、当日の宣伝活動も重要だということが

分かる。

交通手段は商店街に自家用車で来られる所が少ない

ので自家用車が 23%になっているが、徒歩と自転車で

8割になっている。バス利用者0%に関しては、中心

市街地沿いにはバスが運行しており商店街を利用する

には便利だと思われたが、利用者がいなかったのは、

商店街沿いという便利さより、自宅近くのバス利用の

不便さに問題があったからかもしれない。

商店街の利用頻度である。毎日とそれ以下が同じ割

合で2極化している。毎日利用すると回答した人は商

店街近辺に自宅がある人が多く、それ以外の人の利用

はどうしても週 1、2 回やそれ以下になってしまうよう

だ。

20�0 年度 地域文化調査成果報告書

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今回のイベントで完成したモザイクアートを見に来

ることと、イベント時だけでなく今後も引き続き商店

街に足を運んでもらいたい、という狙いがあったため、

上の2つのグラフを見ると、はいと答えてくれた人が

多く、大変良い結果であった。完成したモザイクアー

トは約2か月にわたって2か所に展示したが、通りか

かったときにモザイクアートが目にとまり、参加した

ときの様子を思い出してもらえたら良いと思った。

今後どのようなイベントをしてほしいか。

・お寺、駅前の広場などの場所も使ってほしい

・B 級グルメ

・親子で遊べるイベント(未就園児も含む)

・砂絵

・音楽イベント

・Drift Wood Art の様な自然が体感できるもの

ちなみに Drift Wood Art とは、流木を使った作品のこ

とである。鳥取砂丘をアピールした砂像のイベントは

これまでにもあったが、同じ砂を使ったものでも砂絵

という発想もあったようだ。

鳥取中心市街地に希望する施設、サービスは?

・雨の日でも子どもが無料で遊べる室内施設

・おむつ交換や授乳ができるスペース

・スーパーマーケット

・新しい感覚の店

・無料駐車場とそれが分かりやすい案内表示

・くつろげる場所

・ミニコンサートなどが気軽に行ける所

・ハンドクラフト製品の展示

参加した感想

・完成を見に行くのが楽しみです。

・新しい試みでよいと思います!形に残るものは

うれしいですね☆

・和紙は幼い子にはちぎるのが難しいみたいでした。

子育て支援センターや保育園、幼稚園にチラシが置

いてあればもっと多くの人がきてくれていたかも。

5-2.アンケート結果の考察

回答の中で目立つのは、商店街に用事があり、頻繁

に利用する人がいる一方で、まったく商店街を利用し

ていない人もいるという、商店街利用の2極化が見ら

れることであった。また、「気軽に停留しやすい」「無

料の駐車場がほしい」などの交通の問題を指摘する声

もあった。そして参加者に親子が多かったため、育児

に関する回答を多くいただいた。

アンケート結果を踏まえ、最初に行った私たちの考

察を振り返った。なぜ商店街が今の状態になってしま

っているのかという問いに対して、私たちは「商店街

に馴染みがない、人を惹きつけるお店が少ない、無料

の駐車場が少ない、遊べるところが少ない」などのこ

とが原因ではないか、という考察を行った。アンケー

ト結果を見ても分かるように、無料の駐車場や遊び場

所を求める声が多く見られた。よって、私たちの考察

は的を射ていた部分も多かったが、今回のイベントを

行うことによって現状を打破することはできなかった。

また、私たちの気が付かなかった Dorift Wood Art や

砂絵に関連したイベントを求める意見もあり、このよ

うな要望に応えたイベントが少ないということも、商

店街に人が集まらない要因であるように思われた。

6.まとめ

6-1.反省と今後に向けて

(広報の方法)

当日に公園などで行った呼び込みで、参加者の大半

を募ることができた。また「2日開催だと知っていれば、

どちらも参加したかった」との声もあった。アンケート

にももっと色んなところにチラシを置くべきだったの

では?という指摘もあり、これらから広報が不十分だ

ったことがわかる。当日の呼び込みで参加された方が

事前に知っておられていたら、また別の方々をさらに

呼び込むことができたのではないだろうか。もっと広

報する対象を研究分析して、それに合った広報を展開

するべきだった。

− � −

文化を活かした地域再生 〜鳥取と倉吉での取り組みから〜

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2010 年度 地域文化調査成果報告書

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(会場の選択はターゲットにあっていたか?)

1日目の会場は、裏通りの少し分かりにくい場所で

あり、近くにスーパーがあるとはいえ、子育てに追わ

れる方々には知名度の低さがあったようだった。「親

子」というターゲットにあわせて、もっと気軽に訪れ

る場所を会場にするべきだったかもしれない。しかし、

会場の雰囲気などは参加者の方々には好評だったため、

「市街地の魅力あふれる場所の宣伝」は成功したといえ

ると思われる。

2日目は「対象が大通りを歩く方で、年齢・性別等問

わない」という前提で会場を決めた。実際に様々な層の

方に声をかけることができたが、興味を持ってくださ

る方はいても参加にまで踏み切る方は少なく、実際に

参加してくださったのは、親子もしくは子どものみで、

大人の方のみの参加はほぼなかったといえる。ガラス

張りでイベント内容が分かりやすいとはいえ、大人の

方に「参加したい」と思っていただくまでの魅力は伝わ

らなかった。実際に参加してみると、大人の方が子ど

もたちよりも作業に集中されていたので、第一歩を踏

み出してもらえる工夫を考えることは今後の課題であ

る。

また会場を変えることで参加者の層に変化が表れる

と推測し、まったく別の会場を用意した。しかし結果

はどちらも親子連れ、もしくは子どものみでの参加が

メインだった。今回の結果から考えると「場所」には大

きな集客要素がないように感じられる。「場所」という

「枠」ではなく、次は「イベント内容」という「中身」を変

化させて検証する必要がある。

(商店街の方々とのコミュニケーション)

会場を借りたり、作品の設置に当たっては各商店街

の方々と連携が取れていた。しかしイベントが単発で

終わらず継続することが可能なためにも、もっとつな

がりを強める要素はなかったのか。

市街地(商店街)に通ってもらうためのアピールもで

きなかった。参加者からヒアリングするだけではなく、

今回ご協力いただいたお店やオススメのお店などを、

こちらからもっと発信できたのではないか。また、市

街地には最近人気のB級グルメのお店や様々な魅力あ

ふれる専門店などがある。もっとこの面を生かしたイ

ベントをしてもよかった。

(長期開催のイベントの可能性)

作品の展示をすることで、少しの間はイベントのこ

とを参加者の方や商店街の利用者に覚えていてもらう

ことができた。しかし、人が集まったのは一時的であ

り、今後にどう継続していくべきか考える必要がある。

2日とも参加してくださった方がおられ、イベント

に通っていただくことができた。今回はたった2日間

の開催だったが、イベントの開催期間を延ばすことで

イベントのリピーターを増やし、市街地に通ってもら

う。そこから市街地に通うことを日常に変化させるこ

とができるのではないか。単発、年に1~2度ではな

く、1~3ヶ月など少し長めの開催にして、通うこと

を日常にすることはできるのではないだろうか。

6-2.結論

・町の人が求める商店街活性化のためには町の人々の

声を聞き、人々の求める人々のための商店街である

のがよい。

・その需要を把握する機会としてよりよい商店街にす

るためにもイベントを定期的に行うべきである。

今回の調査では、中心市街地を利用する人々の生の

声を集めることができた。その声の中身は私たちが事

前に予想していたものよりも様々な内容であり、住民

がたくさんのことを中心市街地に求めていることがわ

かった。しかし、こういった声は普段から聞こえてく

るものではないと思う。今回のように「声を聞く機会

作り」をしなければなかなか聞こえてはこないものな

のではないだろうか。人々の需要を聞くためにも、そ

の機会作りとしてのイベントを頻繁に行っていくべき

なのではないかと私たちは感じた。

とりぎん文化会館にて

※本文中の写真は筆者撮影

− � −

20�0 年度 地域文化調査成果報告書

Page 9: 文化を活かした地域再生 ~鳥取と倉吉での取り組み …...デコ!-みんなで作ろう1つの絵!-」というイベン トである。2-5.イベントのねらい

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【倉吉班】

天まで届け、メイリントーン

~旧明倫小学校円形校舎~

安藤みなみ 河本茉莉那 中垣縁 中島健太

渡辺真弓 パク・ヘギョン

目次

1.倉吉市、明倫地区について

~歴史、産業と文化~

1-1.倉吉市とは

1-2.倉吉の歴史

1-3.倉吉の産業

1-4.明倫地区について

2.明倫地区の現状と課題

2-1.鳥取県の人口推移

2-2.倉吉市の人口

2-3.打吹地区と上井地区の人口推移

2-4.明倫地区の人口推移

2-5.現状と課題

3.旧明倫小学校について

3-1.旧明倫小学校

3-2.円形校舎

3-3.坂本鹿名夫

3-4.丹下健三

3-5.倉吉市庁舎

3-6.旧明倫小学校の利用履歴

4.鳥取大学とのかかわり

4-1.円形校舎と鳥取大学とのかかわり

4-2.2008 年度

4-3.2009 年度

4-4.2010 年度

5.メイリントーンとは

5-1.AIR とは

5-2.なぜAIRか

5-3.メイリントーンの実施体制

6.メイリントーンの活動

6-1.アーティストについて

6-2.イベントの趣旨

6-3.イベントの概要

6-4.第1期(7~8月)

6-5.第2期(11 月1日~13日)

6-6.イベント当日

6-7.まとめと考察

1.倉吉市、明倫地区について

~歴史、産業と文化~

1-1.倉吉市とは

倉吉市は鳥取県中部に位置する市で、白壁土蔵群の

街として有名である。打吹玉川をはじめ、打吹公園、

関金温泉など多くの名所を持ち、また倉吉市営野球場

は日本で唯一ラッキーゾーン(その区域にボールが入

ると本塁打扱いになる)が現存している球場である。

1-2.倉吉の歴史

奈良時代、平安時代倉吉には伯耆の国の国府、国分

寺、国分尼寺が置かれ、伯耆の国での政治、宗教の中

心であった。室町時代~戦国時代にはその勢力範囲が

日本の6分の1に達したことから「六分の一殿」と呼

ばれ権勢を誇った山名氏の守護所が置かれ、打吹城、

田内城が倉吉周辺の防衛の拠点となった。1603 年、江

戸時代に入り、幕府直轄領となった後、1632 年に鳥取

藩に編入され、城下町として栄えたが一国一条令で打

吹城が廃城となった後、鳥取藩家臣の陣屋が設けられ、

陣屋町として栄えた。その後、1953 年から 2005 年の

間、周辺の町村との合併を経て今の倉吉市に至る。

1-3.倉吉の産業

江戸時代、稲扱千歯(いなこきせんば)の生産が盛

んで、倉吉の千歯は全国に流通していた。山陰の3大

絣と言われた倉吉絣は江戸時代の稲扱千歯商人により

稲扱千歯と共に全国に広まっていったとも言われてい

る。明治に全盛を迎えた倉吉絣であったが大正期の工

業化の流れの中で衰退してしまった。倉吉絣は戦後に

なってから染織家の吉田たすく氏が数少ない資料に苦

戦しつつも 20 年の歳月をかけて復活させた。

現在の倉吉の主産業となっているのは小売、サービ

ス業などの第3次産業である。

[各産業別従事者数]

※数値の差により第1次産業のグラフが見難くなっているので数値を記載した。

2010 年度 地域文化調査成果報告書

- - 8 - -

(会場の選択はターゲットにあっていたか?)

1日目の会場は、裏通りの少し分かりにくい場所で

あり、近くにスーパーがあるとはいえ、子育てに追わ

れる方々には知名度の低さがあったようだった。「親

子」というターゲットにあわせて、もっと気軽に訪れ

る場所を会場にするべきだったかもしれない。しかし、

会場の雰囲気などは参加者の方々には好評だったため、

「市街地の魅力あふれる場所の宣伝」は成功したといえ

ると思われる。

2日目は「対象が大通りを歩く方で、年齢・性別等問

わない」という前提で会場を決めた。実際に様々な層の

方に声をかけることができたが、興味を持ってくださ

る方はいても参加にまで踏み切る方は少なく、実際に

参加してくださったのは、親子もしくは子どものみで、

大人の方のみの参加はほぼなかったといえる。ガラス

張りでイベント内容が分かりやすいとはいえ、大人の

方に「参加したい」と思っていただくまでの魅力は伝わ

らなかった。実際に参加してみると、大人の方が子ど

もたちよりも作業に集中されていたので、第一歩を踏

み出してもらえる工夫を考えることは今後の課題であ

る。

また会場を変えることで参加者の層に変化が表れる

と推測し、まったく別の会場を用意した。しかし結果

はどちらも親子連れ、もしくは子どものみでの参加が

メインだった。今回の結果から考えると「場所」には大

きな集客要素がないように感じられる。「場所」という

「枠」ではなく、次は「イベント内容」という「中身」を変

化させて検証する必要がある。

(商店街の方々とのコミュニケーション)

会場を借りたり、作品の設置に当たっては各商店街

の方々と連携が取れていた。しかしイベントが単発で

終わらず継続することが可能なためにも、もっとつな

がりを強める要素はなかったのか。

市街地(商店街)に通ってもらうためのアピールもで

きなかった。参加者からヒアリングするだけではなく、

今回ご協力いただいたお店やオススメのお店などを、

こちらからもっと発信できたのではないか。また、市

街地には最近人気のB級グルメのお店や様々な魅力あ

ふれる専門店などがある。もっとこの面を生かしたイ

ベントをしてもよかった。

(長期開催のイベントの可能性)

作品の展示をすることで、少しの間はイベントのこ

とを参加者の方や商店街の利用者に覚えていてもらう

ことができた。しかし、人が集まったのは一時的であ

り、今後にどう継続していくべきか考える必要がある。

2日とも参加してくださった方がおられ、イベント

に通っていただくことができた。今回はたった2日間

の開催だったが、イベントの開催期間を延ばすことで

イベントのリピーターを増やし、市街地に通ってもら

う。そこから市街地に通うことを日常に変化させるこ

とができるのではないか。単発、年に1~2度ではな

く、1~3ヶ月など少し長めの開催にして、通うこと

を日常にすることはできるのではないだろうか。

6-2.結論

・町の人が求める商店街活性化のためには町の人々の

声を聞き、人々の求める人々のための商店街である

のがよい。

・その需要を把握する機会としてよりよい商店街にす

るためにもイベントを定期的に行うべきである。

今回の調査では、中心市街地を利用する人々の生の

声を集めることができた。その声の中身は私たちが事

前に予想していたものよりも様々な内容であり、住民

がたくさんのことを中心市街地に求めていることがわ

かった。しかし、こういった声は普段から聞こえてく

るものではないと思う。今回のように「声を聞く機会

作り」をしなければなかなか聞こえてはこないものな

のではないだろうか。人々の需要を聞くためにも、そ

の機会作りとしてのイベントを頻繁に行っていくべき

なのではないかと私たちは感じた。

とりぎん文化会館にて

※本文中の写真は筆者撮影

− � −

文化を活かした地域再生 〜鳥取と倉吉での取り組みから〜

Page 10: 文化を活かした地域再生 ~鳥取と倉吉での取り組み …...デコ!-みんなで作ろう1つの絵!-」というイベン トである。2-5.イベントのねらい

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この2つの地区の人口推移の様子を比べてみると、

打吹地区は上井地区に比べ全体的な人口減少が進んで

おり、平成19年には昭和30年の約半数となっている。

2-4.明倫地区の人口推移

明倫地区では、年少人口と生産年齢人口の減少、老

年人口の増加が見られる。平成 15 年から平成 22 年ま

での7年間において、老年人口の増加は 60 人だが、年

少人口は 200 人減少、生産年齢人口は 470 人減少とな

っている。

[明倫地区人口集計表]

634 610 600 580 539 519 475 434

2694 2624 2548 2457 2361 2309 2280 2227

1391 1394 1407 1439 1454 1459 14451451

H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22

0~14歳 15~64 65歳以上

倉吉市住民記録等人口集計より

2-5.現状と課題

以上より、明倫地区の現状として地区全体の人口減

少、そして年少・生産年齢人口の減少というこがあげ

られる。よって、今後の課題として人の集まる地域づ

くりをする、人口減少の防止対策を考える、といった

ことが必要だと思われる。

3.旧明倫小学校について

3-1.旧明倫小学校

明倫小学校は 1909 年鍛治町1丁目に開校し、1955

年、旧明倫小学校が完成した。これは坂本鹿名夫によ

る設計で、鉄筋コンクリート3階建て、直径 27m の円

形状の校舎である。全国で 100 以上造られた円形校舎

のうち、4番目に造られた。また、小学校校舎として

は日本初の円形校舎である。

[旧明倫小学校]

明倫小学校ホームページより

3-2.円形校舎

円形校舎を創案、推進したのは建築家、坂本鹿名夫

とされている。円形校舎の特徴としては中央に螺旋階

段(ホール)があり、囲むように放射状に扇形の教室

が配置されている。

廊下と階段を中央に集約した円形の校舎は、

・狭い敷地面積に有効

・材料が少なく、総工費も安い

・施行が容易

等という経済性にすぐれ合理的でもあるという利点が

あった。昭和 30 年代に数多くつくられたが、その背景

には、戦後の復興期を経ての第2次ベビーブームによ

り生徒の過剰収容という問題があった。しかし、復興

期の終焉とともに、経済性を強調した円形校舎は衰退

していった。

3-3.坂本鹿名夫

1911 年生まれの建築家である。坂本鹿名夫は、円形

校舎を創案・推進し、円形校舎の特許も取得した人物

である。1954 年、建築綜合計画研究所を設立し、同年、

円形校舎の実質的な第1作目として山崎学園富士見高

等学校を設計した。坂本鹿名夫氏が旧明倫小学校を建

設したのは、44 歳の時のことである。

坂本鹿名夫と同時期に丹下健三という建築家がいる

が、彼もまた倉吉とのつながりがある。

3-4.丹下健三

1913 年生まれの建築家である。「世界のタンゲ」と

して、日本人建築家として最も早く国内外で活躍し、

[左]螺旋階段 [右]螺旋階段天井

2010 年度 地域文化調査成果報告書

- - 10 - -

一方で、第1次、第2次産業は減少しており、従業

者数で見ると、特に第2次産業は昭和 56 年の3分の1

にまで減少している。第3次産業は比較的安定してい

るものの、各産業とも、人口減少による従業者数減少

が起きている。

1-4.明倫地区について

倉吉の旧市街地の中心地区で、隣の成徳地区と合わ

せて通称「打吹地区」と呼ばれている。1868 年の明治

維新まで打吹城下、陣屋町として栄えた。古くから鍛

冶職人の町として栄えた名残として鍛冶町などの地名

が残っているが、職人の町として栄えた明倫地区も官

公庁の移転などで今は住宅地となっている。明倫小学

校では古い教科書に感謝する教科書祭りがあり、伝統

行事として今も続いている。また、全国に残っている

天女伝説であるが、倉吉では、倉吉、打吹山の地名の

由来と言われている打吹天女伝説がある。

2.明倫地区の現状と課題

2-1.鳥取県の人口推移

鳥取県では、近年、特に老年人口の増加が目立ち、

年少人口の減少が進んでいる。

[鳥取県年齢区分別人口の推移]

鳥取県公式サイト鳥ネットより

2-2.倉吉市の人口

倉吉市の人口は、平成 22 年1月1日現在で、5万

1,364 人(外国人登録 304 人含む)。明倫地区の人口は

4,019 人となっている。

[倉吉市]

倉吉市ホームページより

2-3.打吹地区と上井地区の人口推移

明倫地区と、隣接する成徳地区を合わせて打吹地区、

上井地区と西郷地区を合わせて上井地区と言う。

[打吹地区と上井地区の人口推移]

倉吉市住民基本台帳より

20�0 年度 地域文化調査成果報告書

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この2つの地区の人口推移の様子を比べてみると、

打吹地区は上井地区に比べ全体的な人口減少が進んで

おり、平成19年には昭和30年の約半数となっている。

2-4.明倫地区の人口推移

明倫地区では、年少人口と生産年齢人口の減少、老

年人口の増加が見られる。平成 15 年から平成 22 年ま

での7年間において、老年人口の増加は 60 人だが、年

少人口は 200 人減少、生産年齢人口は 470 人減少とな

っている。

[明倫地区人口集計表]

634 610 600 580 539 519 475 434

2694 2624 2548 2457 2361 2309 2280 2227

1391 1394 1407 1439 1454 1459 14451451

H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22

0~14歳 15~64 65歳以上

倉吉市住民記録等人口集計より

2-5.現状と課題

以上より、明倫地区の現状として地区全体の人口減

少、そして年少・生産年齢人口の減少というこがあげ

られる。よって、今後の課題として人の集まる地域づ

くりをする、人口減少の防止対策を考える、といった

ことが必要だと思われる。

3.旧明倫小学校について

3-1.旧明倫小学校

明倫小学校は 1909 年鍛治町1丁目に開校し、1955

年、旧明倫小学校が完成した。これは坂本鹿名夫によ

る設計で、鉄筋コンクリート3階建て、直径 27m の円

形状の校舎である。全国で 100 以上造られた円形校舎

のうち、4番目に造られた。また、小学校校舎として

は日本初の円形校舎である。

[旧明倫小学校]

明倫小学校ホームページより

3-2.円形校舎

円形校舎を創案、推進したのは建築家、坂本鹿名夫

とされている。円形校舎の特徴としては中央に螺旋階

段(ホール)があり、囲むように放射状に扇形の教室

が配置されている。

廊下と階段を中央に集約した円形の校舎は、

・狭い敷地面積に有効

・材料が少なく、総工費も安い

・施行が容易

等という経済性にすぐれ合理的でもあるという利点が

あった。昭和 30 年代に数多くつくられたが、その背景

には、戦後の復興期を経ての第2次ベビーブームによ

り生徒の過剰収容という問題があった。しかし、復興

期の終焉とともに、経済性を強調した円形校舎は衰退

していった。

3-3.坂本鹿名夫

1911 年生まれの建築家である。坂本鹿名夫は、円形

校舎を創案・推進し、円形校舎の特許も取得した人物

である。1954 年、建築綜合計画研究所を設立し、同年、

円形校舎の実質的な第1作目として山崎学園富士見高

等学校を設計した。坂本鹿名夫氏が旧明倫小学校を建

設したのは、44 歳の時のことである。

坂本鹿名夫と同時期に丹下健三という建築家がいる

が、彼もまた倉吉とのつながりがある。

3-4.丹下健三

1913 年生まれの建築家である。「世界のタンゲ」と

して、日本人建築家として最も早く国内外で活躍し、

[左]螺旋階段 [右]螺旋階段天井

文化を活かした地域再生 〜鳥取と倉吉での取り組みから〜

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2010 年度 地域文化調査成果報告書

- - 12 - -

認知された1人である。従三位勲一等瑞宝章、文化勲

章受章。ローマ法王庁聖グレゴリオ大勲章受章。フラ

ンス政府よりレジオンドヌール勲章受章。

代々木体育館、東京都庁舎、国際連合大学、広島平

和記念館、東京大学本部庁舎、シンガポールOUBセ

ンタービル、クウェート国際空港、等は彼の作品であ

る。彼は倉吉市庁舎も設計している。

3-5.倉吉市庁舎

丹下健三・岸田日出刀によって設計され、1956 年に

竣工した。現在、国登録有形文化財(建造物)に登録

されている。丹下健三は、この作品で日本建築学会作

品賞を受賞し、倉吉市庁舎と同年に旧東京都庁舎を設

計している。

[倉吉市庁舎]

倉吉市庁舎や円形校舎は同時期に造られており、倉

吉市は当時、全国的に見てもモダンな都市だったので

はないかと考えられる。

3-6.旧明倫小学校の利用履歴

小学校初の円形校舎ということで、様々な研修会・

会合が行われた。昭和 31・32 年度は、2年間で 22,185

名もの来校者があった。しかし、明倫小学校は昭和 51

年に現在の明倫小学校へと校舎が移転し、旧明倫小学

校の円形校舎は中央公民館として利用されるようにな

った。

その後、明倫・成徳・上灘の各地区に地区公民館が

出来たため、「ふれあい会館」という名称で、各種団体

の事務所として平成 18 年度まで利用されていた。

4.鳥取大学とのかかわり

4-1.円形校舎と鳥取大学とのかかわり

地域文化学科の学生と円形校舎との関わりが始まっ

たのは、2008 年度の倉吉打吹地区の地域文化調査がき

っかけである。2007 年に、老朽化と耐久性の問題のた

め、2009 年度までに解体される方針が出されていた円

形校舎だが、その珍しい建築物は明倫地区の文化財と

して保存していく価値のあるものであると考えた学生

が地域住民の方々と行動を起こす。

4-2.2008 年度

この文化財を保存し活用していくための活動の第一

歩として、円形校舎周辺の草刈りを行った。地域住民

の方にもチラシを配って呼びかけ、当日の作業には学

生3人を含む 10 人ほどが参加した。この活動は、日本

海新聞に掲載された。

草刈り作業を行った3か月後、2008 年 12 月に、円

形校舎の解体方針は当面撤回されることになる。長谷

川前市長は、日本海新聞で「校舎が残っていることへ

の評価が高くなっているように思っている。」「どうま

ちづくりに役立てるか、残すべきという人も市として

も考えるべき」と述べている。

日本海新聞 2008 年9月 15 日

日本海新聞 2008 年 12 月 11 日

4-3.2009 年度

明倫小学校が創立 100 周年を迎えたことを記念して、

「円形校舎ケーキ化プロジェクト」が行われた。「円形

校舎ケーキ化プロジェクト」とは、3階建ての校舎を

紅白の布で包み、屋上にはろうそくのオブジェを設置

しケーキに見立て、ライトアップするというイベント

である。

このプロジェクトは、地域住民によって結成された

「円形校舎ケーキ化プロジェクト実行委員会」と鳥取

倉吉市ホームページより

20�0 年度 地域文化調査成果報告書

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大学生が協力して行った。

円形校舎がライトアップされた様子

ケーキ化のイベントと並行して、校舎内では他の取

り組みもされていた。明倫小学校 100 年の歴史を写真

とともに展示したり、イベントに訪れた方々に給食を

ふるまうなどの取り組みは地域住民の方々に大変好評

で、最近は足を運ばなくなってしまった円形校舎に訪

れてもらうための、良いきっかけづくりになったと言

える。

明倫 100 年展のポスター

展示の様子

給食をふるまう様子

4-4.2010 年度

そして今回も地域住民の方々と鳥取大学生が協力し

て、円形校舎を拠点とした活動を行った。活動 3 年目

となる今回、私たちが取り組んだのは「メイリントー

ン」というプロジェクトである。

5.メイリントーンとは5-1.AIR

AIR とは Artist In Residence の省略語である。一般的

なアーティスト・イン・レジデンス事業は、公募によ

って世界中からアーティストを招聘し、作品制作を行

うものである。アーティストに滞在用のスタジオを提

供することによって創作活動を促し、同時に地域住民

との交流の機会を提供する試みである。

言い換えてみると、地域の活性化に向けて地域の歴

史資産を活用した地域再生のための社会実験であり、

今回は、地域住民と鳥取大学が組織する「地域資産と

アートによるまちづくり事業実行委員会」が実施主体

となった。

北海道教育大学の学生アーティストである中村絵美

さんが明倫地区に滞在し、鳥取大学、地元のまちづく

り活動団体、アートプロデューサー小田井真美さんの

協働のもと、住民と交流しながら明倫小学校の教室で

作品を制作した。

5-2.なぜ AIR か

円形校舎と鳥取大学とのかかわりでも説明したが、

2008 年に明倫地区で鳥取大学生が草刈りをして、明倫

地区住民とのかかわりが始まった。

2009 年は旧明倫小学校の創立 100 周年であり、円形

校舎を残したいと思う方々が円形校舎を守るための活

動を積極的に始めた。

小田井さんは明倫地区出身で ARCUS(アーカス)の

所属である。アーカスプロジェクトは、1995 年から茨

城県が主催するアーティスト・イン・レジデンス事業

である。アーティスト・イン・レジデンス事業を中心

文化を活かした地域再生 〜鳥取と倉吉での取り組みから〜

− �� −

Page 14: 文化を活かした地域再生 ~鳥取と倉吉での取り組み …...デコ!-みんなで作ろう1つの絵!-」というイベン トである。2-5.イベントのねらい

- - 15 - -

書くなど尽力した。

日付 人数 日付 人数

7月 30 日 2 8 月 10 日 2

7 月 31 日 4 8 月 11 日 1

8 月 1日 2 8 月 12 日 2

8 月 2日 1 8 月 13 日 4

8 月 3日 1 8 月 14 日 2

8 月 4日 1 8 月 15 日 1

8 月 5日 1 8 月 16 日 2

8 月 6日 2 8 月 17 日 2

8 月 7日 2 8 月 18 日 2

8 月 8日 1 8 月 19 日 4

8 月 9日 1

(学生 スタッフ参加表 一覧)

装飾した旧明倫小学校

地元のお祭りでの宣伝活動

広告看板:スーパーめいりんにて

近隣の小学生との交流

6-5.第2期(11 月1日~13 日)

第2期である 11 月においては本番に向けての作業

を手伝い、また当日もスタッフとしてサポートを行っ

た。

日付 人数 日付 人数

11月 3日 4 11 月 11 日 2

11 月 7日 4 11 月 12 日 2

11 月 9日 2 11 月 13 日 6

(学生 スタッフ参加表 一覧)

6-6.イベント当日

当日のイベントは、手作り楽器での演奏にあわせ、

踊りを踊るものとなった。楽器を演奏する班と、踊り

を担当する班の2つのグループに分かれ、それぞれの

練習場所から倉吉の明倫地区を移動し、最終的に合流

して合奏と踊りを合わせて上演する流れであった。演

奏する曲は倉吉の西中学校に音楽教師として勤めてい

る大上先生が作曲、踊りは藤下久美子さん・松下育子

さんによるダンスユニット「ぷ・みつなみ」によって

作られた。

また、この2つの要素に加え、祭りの時に明倫地区

の山車2台の内の1つで、太鼓と鐘を叩く伝統的なお

囃子も合わせた。

演奏の班は、円形校舎から長谷の西坂広場、そして

明倫地区を移動し、踊りの班は倉吉未来中心から研屋

町公園へと合流した。楽しい演奏を行いつつ移動した

ため、町では注目の的となり、公園での一般観光客の

飛び入り参加もあった。地域住民、スタッフ、観光客

を巻き込んだイベントとなった。本番はわずかな時間

であったが、合奏、踊り、お囃子が組み合わさり素晴

らしいイベントの締めくくりであった。

2010 年度 地域文化調査成果報告書

- - 14 - -

に展覧会、ワークショップ、レクチャー、コンサート、

映像上映会など数多くのプログラムを展開している。

2010 年には明倫 NEXT100 が設立した。今回は小田

井さんが明倫 NEXT100 の一連の事業であるメイリン

トーンのプロデューサーとして就任した。

その結果、旧明倫小学校を保存・活用する方法の1

つとして AIR を選択することができた。

5-3.メイリントーンの実施体制

アーティストとして中村絵美さんを中心に、地元の

まちづくり活動団体として明倫 NEXT100、AIR のアド

バイザーとアートプロデューサーとして小田井さん、

コーディネーターとして鳥取大学生が集まった。

ちなみに、明倫 NEXT100 は 2010 年の 8 月正式に

NPO法人になった。現在は鳥取大学生も明倫NEXT100

の会員となっている。

6.メイリントーンの活動

6-1.アーティストについて

今回の事業で活動することとなったのは、北海道教

育大学岩見沢校美術コース在籍の学生、中村絵美さん

である。

アーティスト:中村 絵美さん

彼女は北海道の三方を山に囲まれた過疎化・少子高

齢化に悩む町で 18 年間育つ。大小さまざまなアートプ

ロジェクトのサポーターとして国内を飛び回り「美術」

と「社会」の関係について模索。土や雪、植物などの

自然物を主な素材にして作品制作を行う。近年は土地

が持っている歴史や自然環境から地域を見つめ直し、

自己と地域との繋がりを体感できるような表現活動を

求めている。

今回彼女は、地域の暮らしを体験しながら、明倫地

区に保存される貴重な、そして通常は内部に入ること

ができない「円形校舎」の旧教室を拠点に日夜制作を

行った。

6-2.イベントの趣旨

この事業では、日頃、特に日本では公開される機会

の少ない「アーティストが働く現場、仕事場」「作品が

できあがる過程」を訪問し、みたり、触れたり、また

アーティストと直接話したりすることができるのが特

徴だ。

この地域で実施されるAIRの性格は、暮らしの中の、

生きているということそのものから美しさを再発見す

ること。人々とアーティスト、アートとの交流「AIR」

のもたらす効能のひとつを最大限に拡張していくこと

であった。地域の中から、いくつ、そしてどんな場面

で新しい、また古めかしい「美」を見つけることがで

きるのか、アーティストと地域の方々が対戦するおも

しろおかしい「発見ゲーム」のようなものととらえる

ことができる。「AIR」は、実に生活臭に満ちた人々の

生活に身近な文化事業なのだ。

6-3.イベントの概要

イベントとしての内容は、明倫地区の神話を元に明

倫と呼び鈴を表すリントーン(ringtone)をあわせメイ

リントーンと題し、呼び鈴のイメージから鉄の打楽器

を制作し、それを用いて演奏会を行うというものだ。

神話とは打吹山周辺に伝わる「打吹天女伝説」を指す。

天女の子供たちが空に届くように笛や太鼓を合奏した

ことから、中村さんがイベントのイメージを固めた。

普通の楽器を用いるのではなく、地域の方々から金属

性の不用品を回収、それを中村さんが楽器に加工し、

100 個作って演奏するのだ。活動の流れは、大まかに

2期に分かれた。

6-4.第1期(7~8月)

まず第1期ではスタジオにて楽器づくりを主とした

活動を行った。

地域住民にむけての宣伝は、近隣のスーパーや小学校、

また夏祭りや文化祭等地域のイベントを中心に行った。

また、円形校舎自体を明倫 NEXT100 の活動で装飾し

ていただくことでも効果を上げた。夏の活動で目標で

あった 100 の手作り楽器を作り上げることができた。

その、鳥取大学の学生はサポートするため、ほぼ毎日

倉吉で活動を共にし、それらの活動をブログに記事を

20�0 年度 地域文化調査成果報告書

− �� −

Page 15: 文化を活かした地域再生 ~鳥取と倉吉での取り組み …...デコ!-みんなで作ろう1つの絵!-」というイベン トである。2-5.イベントのねらい

- - 15 - -

書くなど尽力した。

日付 人数 日付 人数

7月 30 日 2 8 月 10 日 2

7 月 31 日 4 8 月 11 日 1

8 月 1日 2 8 月 12 日 2

8 月 2日 1 8 月 13 日 4

8 月 3日 1 8 月 14 日 2

8 月 4日 1 8 月 15 日 1

8 月 5日 1 8 月 16 日 2

8 月 6日 2 8 月 17 日 2

8 月 7日 2 8 月 18 日 2

8 月 8日 1 8 月 19 日 4

8 月 9日 1

(学生 スタッフ参加表 一覧)

装飾した旧明倫小学校

地元のお祭りでの宣伝活動

広告看板:スーパーめいりんにて

近隣の小学生との交流

6-5.第2期(11 月1日~13 日)

第2期である 11 月においては本番に向けての作業

を手伝い、また当日もスタッフとしてサポートを行っ

た。

日付 人数 日付 人数

11月 3日 4 11 月 11 日 2

11 月 7日 4 11 月 12 日 2

11 月 9日 2 11 月 13 日 6

(学生 スタッフ参加表 一覧)

6-6.イベント当日

当日のイベントは、手作り楽器での演奏にあわせ、

踊りを踊るものとなった。楽器を演奏する班と、踊り

を担当する班の2つのグループに分かれ、それぞれの

練習場所から倉吉の明倫地区を移動し、最終的に合流

して合奏と踊りを合わせて上演する流れであった。演

奏する曲は倉吉の西中学校に音楽教師として勤めてい

る大上先生が作曲、踊りは藤下久美子さん・松下育子

さんによるダンスユニット「ぷ・みつなみ」によって

作られた。

また、この2つの要素に加え、祭りの時に明倫地区

の山車2台の内の1つで、太鼓と鐘を叩く伝統的なお

囃子も合わせた。

演奏の班は、円形校舎から長谷の西坂広場、そして

明倫地区を移動し、踊りの班は倉吉未来中心から研屋

町公園へと合流した。楽しい演奏を行いつつ移動した

ため、町では注目の的となり、公園での一般観光客の

飛び入り参加もあった。地域住民、スタッフ、観光客

を巻き込んだイベントとなった。本番はわずかな時間

であったが、合奏、踊り、お囃子が組み合わさり素晴

らしいイベントの締めくくりであった。

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文化を活かした地域再生 〜鳥取と倉吉での取り組みから〜

Page 16: 文化を活かした地域再生 ~鳥取と倉吉での取り組み …...デコ!-みんなで作ろう1つの絵!-」というイベン トである。2-5.イベントのねらい

2010 年度 地域文化調査成果報告書

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研屋町公園でのフィナーレ

6-7.まとめと考察

今回のイベントを通してイベントの核であった中村

さんは、「第一期の滞在時には生徒のモチベーションの

低さや困惑に、プロジェクト実現の困難を感じていた。

スタッフとしてどのように振る舞えばいいのか誰も、

彼等自身も、が把握していなかったため、行動が彼等

自身にとってつかみ所の無い部分が多かったのではと

思う。私にとっても人とのコミュニケーション部分で

の力不足を本当に痛感した部分である。実践に入る前

の予行機会をもう少し与えておくことが、いくつかの

課題をクリアする手だてにもなりうるのではないか。

スタッフとして彼等が作業の手伝いをしてくれなけ

れば、100 個の楽器と最後の音楽会実現まで保てなか

ったと思う。」と語っていただけた。

イベント開催地であった明倫地区の方においては、

「これで終わらせる訳にはいかない」「ビジネスにつな

げたい」という意見が主であった。確かに、この活動

はブログやテレビ、新聞などのメディアに取り上げら

れ明倫地区の注目度を上げることにつながった。しか

し、アートはあくまでなにか新しい動きが生まれるき

っかけ作りとして捉えるべきである。メイリントーン

プロジェクトは、アーティストのアイデア、思いつき

が多くの人を巻き込み、音楽会となり、町歩きとなり、

いろんな意味で、ボーダーを超えあのような形で終わ

った。それに関わったことを励みにこれからの活動を

考えていくべきである。

また、それは今回プロジェクトに参加した学生にお

いても言えることである。地域文化調査を通して、「地

域とのかかわり」を学んだ。地域にとって必要なもの

とはなにか、それを自分たちはどういった形で追及し

ていくべきか。地域文化調査において、その点に触れ

ることができた。イベントに関わり、実際どういった

ことが問題で、動くことによって結果が生まれること

を経験した私たちは今後より多様な側面をとらえつつ、

「地域」についての研究に取り組んでいく次第である。

参考資料

・鳥取県倉吉市立明倫小学校 HP

http://cmsweb1.torikyo.ed.jp/kmeirin-e/modules/menu/mai

n.php?page_id=49&op=change_page

・倉吉観光情報

http://www.apionet.or.jp/kankou/index.htm

・とっとり Web マップ

http://www2.wagamachi-guide.com/pref-tottori/index.asp

・打吹商事株式会社 HP

http://www.utsubukidouji.com/tennyo.html

・2009年度版倉吉市市政要覧

http://www.city.kurayoshi.lg.jp/p/gyousei/div/sogoseisaku/j

ouhou/toukei1/

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20�0 年度 地域文化調査成果報告書