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SHIBUYA100 Report
�June 22, 2017 三菱総合研究所 レガシー共創協議会・渋谷区
渋谷民 100 人 未来共創プロジェクト レポート vol.2
「Laboratory」から「世界を驚かすアイディア」を生み出そう!
未来の東京、そして日本にどのようなレガシーを残すべきか−−これからの日本を左右する重要な課題を考えるために、�8 歳〜 29 歳の若者が渋谷に集い、アイディアを創出する「渋谷民�00 人未来共創プロジェクト」。記念すべき第1回目のワークショップが 6 月 �3 日、「美竹の丘しぶや」で開催されました。 このプロジェクトは「健康・スポーツ」「文化・エンタメ」「共生」「コミュニティ」の 4 つのチームに分かれ、それぞれのテーマに即したアイディアを考えていくもので、この日は「健康・スポーツ」チームの第1回目のワークショップを開催。スポーツに関心の高い学生や社会人など、29 名の若者が参加。彼らをファシリテーションするのは、元ラクロス日本代表で、現在はコーチングを行う村松圭子氏(Bloom Life)と、特定非営利活動法人スポーツコーチング・イニシアチブの代表などを務める小林忠広氏(慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科)の 2 人です。初回は参加者の自己紹介やプロジェクトの進め方の説明などのセットアップに加え、渋谷区基本構想担当課長の山崎善広氏による渋谷区基本構想の紹介、そして、実際にアイディアを創出していくためのワークショップが行われました。
積極的な会話が “ちがいをちからに” する
6 月 6 日に行われた全体会議で「話し合いを通してちがいをちからにした関係性の構築を実現したい」と挨拶をした村松氏。その言葉通り、第1回目のワークショップの冒頭でも積極的に会話を交わすことを推奨しました。
「このワークショップはたった 4 回だけ。時間は限られているので、ワークショップ外の時間でも積極的に話をしてもらいたい。それが “ ちがいをちからに ” することにつながっていく」(村松氏) 積極的な会話を促すためにまず行われたのが、参加者同士が「このプロジェクトに期待すること」を話し合うウォーミングアップ(ミングル)。村松氏の思いに呼応するように積極的に会話を交わし、わずか数分間で会場の熱量は一気に高まっていきました。 続いてファシリテーターの両氏が自己紹介。普段「リーダーシップ」をテーマにワークショップを展開する村松氏は、「全員がリーダーであることを意識している。この場でも、みなさん自身がリーダーと思って接していきたいと思っている」と語りかけます。一方、ラグビーのプレイヤー、コーチでもある小林氏は「僕の人生のモットーは“One for All, All for One” という言葉。このワークショップでも、チームで高みを目指していきたい。そしてみんなと共に未来を作っていくことに、僕自身が超ワクワクしている」と、参加者に負けない情熱を感じさせました。
「Laboratory」という世界観でゴールに進む
次に行われたのはプロジェクトの概要説明。全体会議の場でもアナウンスがあったように、本プロジェクトのゴールは「2020 年を契機にして、世界を驚かす SHIBUYA にするレガシーの創出」というものです。この日集まった面々は「健康・スポーツ」という観点からアイディアを考え、全4 回のワークショップを通してアウトプットとフィードバックを繰り返し、その精度を高めていきます。3回目のワークショップの後には他分野のチームとのマッチングイベントを実施。刺激を
<健康・スポーツ> 第 1回ワークショップ 2017 年 6月 13日(火) 美竹の丘しぶや
ミングルの様子。 最初の取り組みでありながら参加者は気後れすることなく積極的に会話を交わした
ファシリテーターの村松圭子氏
同じく小林忠広氏
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SHIBUYA100 Report 渋谷民 100 人 未来共創プロジェクト レポート vol.2 <健康・スポーツ> 第 1回ワークショップ 2017 年 6月 6日(火)美竹の丘しぶや
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与え合うとともに、分野を横断した協力体制を築く機会を設け、アイディアを磨き上げていきます。そして �0 月 3� 日にプレコンテストを行い、優れたアイディアを考えた 8 チームを選出。その 8チームが �2 月 9 日の最終コンテストに進むことになります。 期間にすると約半年間のプロジェクトですが、その実、ワークショップ自体は 2 時間 �5 分×4 回、つまり 9 時間しかありません。そのため、物事を素早くサイクルを回しながら検討していくことが求められます。こうした背景を説明した上で、「健康・スポーツ」分野では「Laboratory(研究室)」という世界観を大事にしたいと村松氏と小林氏は話しました。
「このワークショップでは “ ちがいをちからに ”ということを大事にしたいと思っている。そのためにはいろいろな人の意見を吸収し、考えながら動いていく。考えては練り直す、あるいはアイディアを壊して進んでいくことが必要。そうやって、ここに集まった仲間とのちがいを生かして形にしたいからこそ、“Laboratory” という世界観を設定させてもらった」(村松氏)
「“ 実験室 ” なので、“ それは本当にできるの? ”ではなく、“ それは面白そうだからやってみよう ”、“ このメンバーならこういう形にもできるよね ”と、ポジティブに考える場にしてもらいたい」(小林氏)
自分の源泉と DPA を確認
今後の流れを周知したところで、参加者それぞれの自己紹介へと移りました。ここでは「このプロジェクトを通じてどんな自分になりたいか」ということについて、一人あたり 30 秒ほどで発信していきます。「これまでは限られたコミュニティの人としか関わりがなかったので、このプロジェクトを通じていろいろな人の意見を吸収し、自分
を高めていきたい」という考えで参加した人が多くいました。これは、この場に集まった若者たちが自ずと「ちがいをちからに」することを欲している証左とも言えるでしょう。 自己紹介が終わった後で、村松氏はなぜこの問いを投げかけたのか、その意図を説明しました。
「このワークショップは、それぞれ学校や仕事がある中で進めていくので、ヘビーに感じることもあると思う。そうなったときに、自分はなんのためにここにいるのかということを振り返ってもらうために、まず発信してもらった」(村松氏)
「今話してもらったことが各自の源泉になる。その思いは途中で変わっても構わないが、たまにシェアをして、なりたい自分になれているかを考えてもらいたい」(同氏) 続いて、より良いワークショップを進めていくための「DPA(Design Partnership Alliance)」を考えるフェーズに移ります。これは「意図的に協働関係を築く上で必要な合意」という意味の言葉で、つまり「このワークショップを進める上で、参加者がどのような雰囲気を大事にし、困難や対立が生じたときにどのように対処すべきかを定めた場のルール」のようなものです。 村松氏からは(�)お互いにオープン(自己開示)に接する、(2)YES AND で議論を進める、
(3)行動しながら考えるという 3 つが提示されました。(�)は、場の雰囲気や他のメンバーに流されず、自分として大事にしたい考えを開示していくことです。(2)は、「そのアイディアはいいかもしれないけれど、現実的には…」という
「YES BUT」で進めるのではなく、「それはいいアイディアだ。さらにこういうアイディアを加えれば…」というように話を進めていくことです。こ
DPA を決める際にも、 各自は積極的に考えを発信した
「健康 ・ スポーツ」 分野では 「Laboratory(研究室)」 という世界観を大事にしたいと両氏
「健康 ・ スポーツ」 分野第 1回目のワークショップの DPA
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渋谷民 100 人 未来共創プロジェクト レポート vol.2 <健康・スポーツ> 第 1回ワークショップ 2017 年 6月 6日(火)美竹の丘しぶや
のワークショップは各自のアイディアを増幅するためのものでもあるので、「YES AND」を大事にしたいと、村松氏は説明しました。そして(3)は、
「Laboratory」という世界観を体現するものです。 この三点に加え、参加者からも DPA を募ります。ここでも参加者は積極的に発言し、次の 7つが加えられました。(4)議論が終わればノーサイド、(5)みんなが意見を言えるような雰囲気をつくる、(6)相手の話を聴くときは相槌を打ったり相手の目を見て、聴いている姿勢を示す、
(7)壁をつくらないように “ タメ語 ” で話す、(8)議論を停滞させないために、とりあえず話をする、
(9)ユーモアを大事にする、(�0)はじめのうちは名乗ってから意見を言う。 この DPA は毎回変わっていくものですが、この日は、この�0の考えを持ちながらワークショップをしていくことになりました。
「ちがいをちからに変える街」のために
休憩を挟んで始まった後半は、渋谷区基本構想担当課長の山崎善広氏より、インスピレーショントークとして、渋谷区基本構想を紹介いただくことから再開しました。 渋谷民 �00 人未来共創プロジェクトを行うきっかけの一つでもある渋谷区基本構想は 20�6年 �0 月に 20 年ぶりに改訂されたものです。改訂の背景には、かつてと今では渋谷区を取り巻く環境が大きく変わったことがあります。変化の最たるものは「人口の増加」です。渋谷区の人口は�995 年時点で �8 万 8,472 人でしたが、20�5年には 2� 万 8,09� 人に増加。その一方で、�5歳〜 34 歳までの若い層の転入が目立っており、
同時に世帯平均人口は減少の一途を辿っています。つまり渋谷区は、多種多様な単身者が増えているということです。多様な人が増えるということは、区民一人ひとりが「ちがう」ことを意味します。「ちがい」は、新たな変化やイノベーションを生むためには重要な要素ですが、一方で「ちがう」まま放っておくとコミュニティは生まれず、一人ひとりの力は活かされません。 そこで渋谷区は、「ちがい」を持った一人ひとりがお互いに認め合い、交じり合えるような街をつくり、さらにそれが持続的に続いていく、ロンドンやパリ、ニューヨークのような成熟した国際都市を目指すことになりました。それがこの渋谷区基本構想の価値観であり、その未来像を「ちがいをちからに変える街。渋谷区」というキャッチコピーで表現しています。 では、「ちがいをちからに変える街」をどのように実現するか。そのために渋谷区は「区民生活の暮らしやすさの視点」「協働型まちづくりの視点」「未来への戦略的な視点」という 3 つの視点を持ち、さらに(A)子育て・教育・生涯学習、
(B)福祉、(C)健康・スポーツ、(D)防災・安全・環境・エネルギー、(E)空間とコミュニティデザイン、(F)文化・エンタテインメント、(G)産業振興という 7 つの政策分野に細分化しました。それぞれの分野で地域を盛り上げ、渋谷区に関わる人々に有益なアイディアを生み出すことで、成熟した国際都市に近くことができるというのです。この渋谷民 �00 人未来共創プロジェクトは、渋谷区の未来をつくるための端緒となるものでもあるのです。 その中でも健康・スポーツ分野は「思わず身体を動かしたくなる街」を目指すことで、人々の健康を保ち、スポーツを取り巻く環境の整備を図り、それとともにスポーツを通じて地域コミュニティを活性化させることを基本計画として策定しています。 山崎氏は最後に「スポーツに関わらない人はいないという考えのもと、誰に対してもスポーツの機会を与え、同時にスポーツを “ 見る ”、“ する ”、“ 支える ” というそれぞれの楽しみ方を導くための環境整備をしていきたいと考えている」と話し、インスピレーショントークを締めくくりました。
“YES AND” で世界を驚かすアイディアを
山崎氏のインスピレーショントークを受けて、本格的にワークショップがスタートしました。こ渋谷区基本構想について説明をする山崎善広氏
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こで行われたのは、3 人1組になって「健康・スポーツで世界を驚かす 2050 年の SHIBUYA」を考えるというもの。ワークを始めるにあたり、村松氏からは「アイディアを広げるために “YES AND” で会話をする」ことと「遊び心を持って発言し、どんなに “ ぶっ飛んだ ” アイディアでも肯定する」という 2 つの要望が出されました。この 2 つを持ってワークを進めることで、
「Laboratory」が形成されていくというのです。 実際にワークがスタートすると、会場は参加者が醸し出す熱気に包まれていきます。そうしてメンバーを入れ替えながら 2 回ワークを実施したところで、村松氏と小林氏からは次のような言葉がかけられました。
「ここまでいろいろなアイディアが出たと思うが、意識してもらいたいのは “2050 年 ” という未来のこと。今はまだ現実路線になっているので、既存のアイディアを壊して欲しい」(村松氏)
「30 年後には、いま日常的に使っているアイテムもなくなっているかもしれない。そもそも、渋谷区はスクランブル交差点周辺だけを指すわけではない。もっと広い視点で考えてもらいたい」(小林氏) 両者からのアドバイスを受けて、3 回目のワークはさらに盛り上がりを見せます。そして「2050年には自動車も空を走るようになっているかもしれない。それなら道路をすべて芝生にしてしまって、至る所でスポーツができるようにしたい」「未来では人が自由に空を飛べるアイテムがあるかもしれない。それを使って、天空を舞台にしたスポーツを繰り広げたい」といったような驚きのアイディアが続々と出て来ました。早速固定観念を打ち破った様子を見せる参加者に、「こうやってアイディアが広がり続けるのが “YES AND” のエネルギー。人と会話し、それを肯定し合うことで普段だったら考えつかないようなアイディアが生
まれてくる。健康・スポーツチームでは、この感覚を大事にしていきたい」と、村松氏も満足げな表情を浮かべました。
「このアイディアは、必ず誰かの役に立つ」
4 回目のワークに入るためにグループを組み直したところで、村松氏より、そのグループが次回までのチームになることが発表されました。次回までにすべきことは「2020 年を契機として世界を驚かせる渋谷にするためのプロジェクト案」と、そのプロジェクトを形にする上で「20�7 年の渋谷はどのような現状なのか」を探り、そして「2030年の渋谷はどのようになっていて欲しいのか、ビジョンを描く」という 3 つです。次回までの宿題が周知されると、参加者は早速話し合いを開始しますが、残念ながらこの日のワークはここでタイムアップ。最後に村松氏からは、「今日作ったグループで次回以降アイディアを考えていくことになる。この中から最終コンテストに進むチームが出てくるかもしれないが、たとえ最終コンテストに進めなくとも、自分たちが出したアイディアが他のチームにインスピレーションを与えることになるので、無駄になることはない。自分たちのアイディアが必ず誰かの役に立つと信じて進めてもらいたい」という言葉が投げかけられました。
終了後、初のワークショップの手応えを村松氏に聞くと、「全体会で中竹氏が話した “ 主体性 ”が浸透していると感じた」と話しています。
「スポーツが好きな人が集まり、“ まず動こう ” というチームの主旨にフィットしているとも感じて、これからが楽しみ」(村松氏) また、スポーツ好きが集まったためか、「チー
ワークは1回につき約 3分間。 メンバーを入れ替えながら 4回行った
積極的にワークを進める参加者たち
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5June 22, 2017 三菱総合研究所 レガシー共創協議会・渋谷区
渋谷民 100 人 未来共創プロジェクト レポート vol.2 <健康・スポーツ> 第 1回ワークショップ 2017 年 6月 6日(火)美竹の丘しぶや
ム志向が強いのも特徴かも」とも指摘。「つながりを持ちたい、関係を広げたい、というモチベーションを持っている人が多く、自分が前に出ることよりも、チームで考えることを大切にする気持ちが見られた」(同) ワークショップごとにメンバーの傾向も異なり、まさに「ちがいがちからに」なる現場となりそうな予感があります。第 � 回目から非常に白熱した「健康・スポーツ」分野のワークショップ。次回以降、どのようなアイディアが飛び出してくるのか楽しみでなりません。
この日参加した感想を一言ずつ発信し、 「1、 2、 3 ! GO! SHIBUYA !」 の掛け声でワークを締めくくった