横浜市ヒートアイランド対策取組方針 ―――やさし …...2018/08/23  ·...

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横浜市ヒートアイランド対策取組方針 ―――やさしい木かげ 風そよぎ 夕涼む街 横濱 ――― 平成 18 年 3 月 横浜市環境創造局

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横 浜 市 ヒ ー ト ア イ ラ ン ド 対 策 取 組 方 針

―――やさしい木かげ 風そよぎ 夕涼む街 横濱 ―――

平成 18 年 3 月

横 浜 市 環 境 創 造 局

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目 次

第1章 取組方針策定の趣旨 1

第2章 横浜市におけるヒートアイランド現象の現状 2

(1) ヒートアイランド現象とは /2

(2) ヒートアイランド現象の現状 /4

ア 市内の平均気温および熱帯夜日数の分布

イ 都市化による年平均気温の上昇

ウ 熱帯夜および極端に暑い日の増加

(3) ヒートアイランド現象の影響 /7

ア 市民の日常生活への影響

イ 熱中症の増加

ウ 植物への影響

第3章 ヒートアイランド現象に係わる横浜の地域特性 9

(1) 横浜市の都市化(経年変化) /9

ア 土地利用状況の推移

イ エネルギー消費量の増大

(2) 現在の都市化状況 /10

ア 建物の高密化

イ 建物の高層化

ウ 緑地の分布

エ 特別緑地保全地区等に指定されている緑地

オ 建物(業務・住宅)のエネルギー消費量

カ 人工排熱の状況

(3) 横浜市の風向・風速 /14

第4章 ヒートアイランド対策の目的と目標、基本的な考え方 15

(1) ヒートアイランド対策の目的 /15

(2) ヒートアイランド対策の目標 /17

ア 目標設定にあたっての基本的な考え方

イ 目標とする時期と指標

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ウ 全市域における目標

(3) 施策への展開と取組方針の体系 /20

(4) 4つの対策の視点 /22

① 排熱の抑制

② 地表面の改良

③ 都市形態の改善

④ 適切な情報発信と啓発の推進

(5) 5つの取組方針 /23

取組方針1 地域特性にあわせた適切な施策の推進

取組方針2 市民・事業者・行政の協働による積極的な施策の推進

取組方針3 総合的な施策の展開

取組方針4 最新の調査研究と対策技術の活用

取組方針5 都市景観や市民の安らぎに配慮した施策の展開と啓発の促進

(6) ヒートアイランド現象の緩和に向けた対策メニュー /36

第5章 重点推進地域におけるヒートアイランド対策 38

(1) 重点推進地域の考え方 /38

(2) シミュレーションおよび類型化 /38

(3) 類型化にあたっての代表データの分布図 /38

(4) 重点推進地域の設定 /41

(5) 重点推進地域における目標 /43

(6) 重点推進地域の目標達成に向けた具体的施策 /44

第6章 今後の推進に向けて 46

(1) モデル地域及び重点推進地域での対策の推進 /46

(2) 市民・事業者の取組みの推進 /46

(3) ライフスタイルの改善 /46

(4) 熱帯夜を減らすようなまちづくり /47

(5) 効果の検証 /48

(6) 今後の課題 /48

【資料編】

(1) 施策の具体的事例 /49

(2) 用語集 /57

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- 1 -

第1章 取組方針策定の趣旨

ヒートアイランド現象は、都心部の気温が郊外部に比べて高くなる現象であり、近年、

大都市において顕著にみられる環境問題として注目を集めている。

都市の高温化は、夏期の生活環境の快適性を損なうだけでなく、熱中症やストレスの増

加などの人への健康や、植物の開花時期の早期化など、生態系へも影響を及ぼすことが懸

念されている。さらには、局所的な集中豪雨や光化学オキシダント等の大気汚染との関係

も指摘されている。

このため横浜市では、平成 15 年度から市内で詳細な気温観測を行い、市の都心部と郊

外部では夏期の平均気温で約2℃の差が生じていることを確認した。また、ヒートアイラ

ンド現象を緩和するための先行的モデル事業として、港北区役所での屋上緑化や、保水性

舗装等を中心とした「すず風舗装整備事業」などの施策も一部で実施しているところであ

る。

しかし、ヒートアイランド現象は、過去数十年にもわたる都市化の結果として生じてき

た環境問題であるだけに、対策に取り組むに当たっては、長期的視野に立ち、街づくり全

体に視野を広げ、総合的な対策を効果的に進めていくことが必要である。また、ヒートア

イランド問題は、都市に生活するすべての市民に係わる問題であるため、その対策には市

民や事業者、行政各々が共通の認識の基に、連携して取り組んでいく必要がある。

このような観点から、平成 16 年度に、有識者、市民、事業者からなる「横浜市ヒート

アイランド対策検討委員会」を設置し、対策を効果的に推進するための基本方針や取り組

むべき具体的施策などの取組方針について、横浜市のヒートアイランド現象の現状や影響、

地域特性などをもとに検討を開始した。検討に際しては、市民を対象としたアンケート調

査を行い、市民の意識が取組方針に反映されるよう図るとともに、全庁的な実効性のある

取組みになるよう庁内に運営ワーキングを設置した。

本取組方針はそれらの検討結果をとりまとめ、横浜市のヒートアイランド対策の方向性

を示したものである。今後は、この方針をもとに、市民、事業者、行政が協働して各種施

策を着実に進めていく必要がある。

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第2章 横浜市におけるヒートアイランド現象の現状

(1) ヒートアイランド現象とは

ヒートアイランド現象とは、地表面の人工化(建物、舗装等)やエネルギー消費に伴

う人工排熱の増加により、地表面の熱収支が変化し、都心部の気温が郊外部に比べて島

状に高くなる現象である。

ヒートアイランド現象の発生メカニズムの概要を図2-1に示した。都市化が進んだ地域

では、緑地や水面の減少により水分の蒸発量が減少し、気化熱による地表面の冷却が進まな

くなっている。代わりに、建物や舗装面の増加は地表面の熱吸収量を増加させ、地表面の高

温化を招くと同時に、夜間にその蓄えた熱を放出し、夜間の気温の低下を妨げている。また、

建物や自動車、工場などから発生する人工排熱は直接大気を暖め、さらに、周辺建物の高層

化や凹凸の増加が熱放射や風通を妨げ、暖められた空気を都市内に滞留させている。このよ

うに多くの複雑な要素が絡み合い、都市部の高温化が生じている。

建物の高温化

熱吸収量の増加

人工排熱量の増加

反射率の低下、地表面の熱吸収量の増加

地表面からの大気への熱輸送量増大

輻射熱の増大

地表面の高温化

輻射熱の増大

地表面からの水分の蒸発量減少

人工物・舗装面の増加、緑地・水面の減少

都市部の大気の高温化

エアコンの使用増大

海風

反射率の低下、放射冷却の減少

建物の高温化

熱吸収量の増加

人工排熱量の増加

反射率の低下、地表面の熱吸収量の増加

地表面からの大気への熱輸送量増大

輻射熱の増大

地表面の高温化

輻射熱の増大

地表面からの水分の蒸発量減少

人工物・舗装面の増加、緑地・水面の減少

都市部の大気の高温化

エアコンの使用増大

海風

反射率の低下、放射冷却の減少

出典:「ヒートアイランド対策の推進のために」(環境省 平成 12 年 12 月)図2-1 ヒートアイランド現象の発生メカニズムの概要

- 2 -

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ヒートアイランド現象の主な要因としては、(1)地表面の人工化、(2)人工排熱の増

加があげられるが、その根本的な原因として(3)ライフスタイル、事業スタイルの変

化があげられる。

ヒートアイランド現象の主な要因と影響を図2-2に示した。ライフスタイル・事業ス

タイルの変化は、市民の生活様式や事業活動様式の変化であり、「地表面の人工化」や「人

工排熱の増加」の根本的な原因といえる。

ヒートアイランド現象の直接的な影響としては、熱帯夜日数や真夏日の増加、冬期の最

低気温の上昇があげられる。また、光化学オキシダントの生成など、都市の大気汚染の助

長にも関与していると言われている。二次的な影響としては、冷房用消費電力の増大、熱

中症など人体への影響、都市の乾燥化があり、生態系への影響も懸念されている。さらに

は、冷房用消費電力の増大が、人工排熱の増加につながるという悪循環が生じている。

ヒートアイランド現象

冷房用消費電力の増大都市の乾燥化

生態系への影響

熱帯夜、真夏日の増加

影響・結果

ライフスタイル・事業スタイルの変遷 

都市の大気汚染の助長

冬季の最低気温の上昇

原因群

建物等のエネルギー消費の増大

排熱の増加

人工排熱の増加

緑地、水面等の減少

アスファルト、コンクリート等の増大

建物による地表面の凹凸の増大

地表面温度の高温化 地表面の蓄熱増加 都市内空気の滞留

地表面の人工化

懸念されている影響

明らかな影響

人体への影響

ヒートアイランド現象

冷房用消費電力の増大都市の乾燥化

生態系への影響

熱帯夜、真夏日の増加

影響・結果

ライフスタイル・事業スタイルの変遷 

都市の大気汚染の助長

冬季の最低気温の上昇

原因群

建物等のエネルギー消費の増大

排熱の増加

人工排熱の増加

緑地、水面等の減少

アスファルト、コンクリート等の増大

建物による地表面の凹凸の増大

地表面温度の高温化 地表面の蓄熱増加 都市内空気の滞留

地表面の人工化

懸念されている影響

明らかな影響

懸念されている影響

明らかな影響

人体への影響

図2-2 ヒートアイランド現象の要因と影響

- 3 -

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(2) ヒートアイランド現象の現状

ア 市内の平均気温・熱帯夜日数の分布

横浜市環境科学研究所では、平成15年度に市内30カ所に温度計を設置し、平成17年度か

らは63カ所に増加させ、市内の気温分布について詳細に観測している。

平成16年夏期の平均気温分布についてみると(図2-3左)、市街化の進んでいる西区、

中区などの中心部及び鶴見区、港北区など北東部に著しい高温域がみられ、一方、大規模な

緑地のある北西部や南東部には低温域がみられた。高温域と低温域との差は約2.0℃であり、

ヒートアイランド現象が市内においても生じていることが確認された。また、熱帯夜日数の

分布についても(図2-3右)、臨海部が最も多く、西に向かうに従って減少し、最大で29

日の差が生じていた。

図2-3 平成 16 年夏期(7/1~8/31)の平均気温分布(左)、と熱帯夜日数分布(右)

(横浜市環境科学研究所資料)

次に、平成17年夏期の平均気温分布についてみると(図2-4左)、市街化の進んでいる

西区、中区などの中心部及び鶴見区、港北区など北東部に著しい高温域がみられ、一方、大

規模な緑地のある北西部や南東部には低温域がみられた。これは平成16年度の結果と同様

である。高温域と低温域との差は2.1℃であった。

また、熱帯夜日数の分布についても(図2-4右)、臨海部が最も多く、西に向かうに従

って減少し、最大で24日の差が生じていた。

- 4 -

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(横浜市環境科学研究所資料)

図2-4 平成 17 年夏期(7/1~8/31)の平均気温分布(左)、と熱帯夜日数分布(右)

イ 都市化による年平均気温の上昇

横浜市の経年的な年平均気温の変化を図2-5に示した。横浜市の年平均気温は100年間

あたり約2.6℃上昇している。都市化の影響が少ない中小都市の年平均気温が約1.0℃(気象

庁より)上昇していることから、その差「約1.6℃」は、横浜市の都市化、つまりヒートア

イランド現象により生じていると考えられる。

12.5

13.5

14.5

15.5

16.5

1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000

(年)

年平

均気

温(℃

中小都市( 1.0℃/100年)

横浜 ( 2.6℃/100年)

(5年移動平均)

図2-5 横浜市と中小都市の年平均気温の

経年変化(気象庁データより作成) 備考1) 中小都市の平均気温は、都市化の影

響が少ない 17 地点のデータから算出した(気象庁)。

備考2) 横浜市の平均気温は、現在の観測所

(山手町)で測定を開始した 1928 年から 2000年までのデータを用い、100 年間の気温上昇量は、そのデータから回帰直線を求め算出した。

- 5 -

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ウ 熱帯夜および極端に暑い日の増加

横浜市の熱帯夜日数の経年変化を図2-6(左)に示した。横浜の熱帯夜日数は増加傾向

にあり、この40年間で約14日増えている。また、最高気温が35℃以上の極端に暑い日につ

いても、1990年代以降急激に増えている(図2-6右)。これらは、年平均気温の上昇と関

連していると考えられる。

0

1

2

3

4

5

1960年 1970年 1980年 1990年 2000年最

高気

温35℃

以上

の日

極端に暑い日

0

10

20

30

40

50

1960年 1970年 1980年 1990年 2000年

最低

気温

25℃

以上

の日

数 熱帯夜

図 2-6 横浜市の熱帯夜日数(左)及び極端に暑い日の日数(右)の経年変化

(横浜地方気象台データの 1961 年から 2003 年アメダスデータより作成)

備考1)左図における棒グラフは年間日数を、実線は5年間の移動平均をした値である。 備考2)熱帯夜の増加率は、この間の熱帯夜日数の回帰直線を求め算出した。

- 6 -

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(2) ヒートアイランド現象の影響

都市の年平均気温の上昇については、「(2) イ 都市化による年平均気温の上昇」で述べた

ように、地球温暖化による影響も含まれている。ヒートアイランド現象による影響を検討す

るに当たっては、両者を明確に区分することは困難であるため、都市の気温上昇による影響

として検討する。

ア 市民の日常生活への影響

ヒートアイランド現象に関して、平成16年11月に市民アンケート調査を行った。対象人

数は188名で、回収率は74%であった。その結果を下記に示す。

質問4

2%

3%

62%

18%

34%

2%

54%

44%

43%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

9.無回答

8.その他

7.夏に道路の舗装面から熱気を感じる

6.以前より冬の暖房使用が減った

5.夏に建物から熱気を感じる

4.熱中症と診断されたことがある

3.以前より夏の夜が寝苦しくなった

2.以前より涼風を日常感じなくなった

1.以前より夏の冷房使用が増えた 日 常 的 に 感 じ て い る

ものとしては、

・ 「道路からの熱気」

・ 「夏の夜の寝苦しさ」

・ 「涼風を感じない」

・ 「冷房使用の増加」

・ 「建物からの熱気」

が多く挙げられている。

夏に「暑くて困る」時間帯に

ついては、回答者の 64%が「夜

間」、38%が「昼間」を挙げて

いる。

夏に「暑くて困る」場所

としては、回答者の 81%

が「歩道や道路」を挙げて

おり、次いで「建物が密集

している場所」「家屋内」

が多い。

質問4

2%

4%

64%

38%

0%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

5.無回答

4.特にない

3.夜間

2.昼間

1.朝

質問6

4%

1%

0%

4%

41%

81%

9%

36%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

8.無回答

7.その他

6.特に暑い場所はない

5.校庭や広場

4.建物が密集している場所

3.歩道や道路

2.家以外の建物内

1.家屋内

- 7 -

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イ 熱中症の増加

ヒートアイランド現象は、熱中症など人の健康に影響を与えることが懸念されている。そ

こで、市内の熱中症による救急搬送人数の経年変化を図2-7に示す。この図に、最高気温

35℃以上の極端に暑い日の日数を重ね合わせると、日数の多い年には搬送人数が多く、極

端に暑い日と熱中症との間には相関があると推察される。

なお、本市健康福祉局では、熱中症予防に関する情報をホームページ等で紹介している

(http://www.city.yokohama.jp/me/kenkou/jikoyobou/topics0508_2.html)。

0

50

100

150

200

250

1994

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

(年)

搬送

人数

(人

0

1

2

3

4

5

日数

熱中症人数

最高気温35℃以上

- 8 -

ウ 植物への影響

ヒートアイランド現象は、人間だけでなく、動植物などの生態系にも影響を及ぼしている

と考えられている。図2-8に、横浜地方気象台で観測された桜の開花日の経年変化を示す。

桜の開花は1980年代終わりから早くなってきており、1985年~2004年までの開花日を

平均すると、平年より3日程度早くなってきている。都市の気温上昇がサクラの開花に影響

を与えていると考えられる。

図2-8 ソメイヨシノの開花日の経年変化 (横浜地方気象台データより作成)

備考1)開花とは、サクラの花が一枝に数輪

咲いた状態を指す。 備考2)横浜地方気象台が観測しているサク

ラ(ソメイヨシノ)の標本木は、中区の元町公園内にある。

備考3)平年の開花日とは、1971 年から 2000

年までを平均したものである。

図2-7 熱中症人数と気温の経年変化

(横浜市消防局提供資料より作成) 備考1) 熱中症とは、暑さで起こる症状

(日射病、熱中症、熱けいれんなど)の総称として使用されている。

備 考 2) 搬 送 人 数 は、統 計 を開 始 した

1994 年から 2004 年の 6 月から 9 月に搬送された患者数であり、搬送した医療機関の医師が、熱中症に関する所見を記載したもの。

3/14

3/21

3/28

4/4

4/11

1950 1960 1970 1980 1990 2000

ソメイヨシノの開花日5年移動平均

(年)

(日)

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第3章 ヒートアイランド現象に係わる横浜の地域特性

(1) 横浜の都市化(経年変化)

ヒートアイランド現象は、都市化の進展による地表面被覆の人工化や、エネルギー消費に

伴う人工排熱の増加により引き起こされている。横浜市域における土地利用状況の推移とエ

ネルギー消費量の推移について以下に示す。

ア 土地利用状況の推移

横浜市域の土地利用状況の推移を図3-1に示す。「山林・原野」、「田・畑」、「河川・池沼」

など自然的被覆の割合が経年的に減少している一方で、「道路」、「宅地」は増加しており、

地表面の人工化が進んでいることがわかる。

イ エネルギー消費量の増大

横浜市のエネルギー消費量の推移を図3-

2に示す。電灯、都市ガスの消費量の伸びが

大きく、両者とも2000年度は1975年度の

3倍に増えている。

2000年度のエネルギー消費量全体では、

1975年度に比べ約1.4倍となっており、エ

ネルギー消費に伴う人工排熱が増加してい

るといえる。

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

1975 1980 1985 1990 1995 2000(年度)

(103Gcal)

重油

灯油

軽油

揮発油

ガス

電力

電灯

図3-1 横浜市の土地利用状況の推移

備考)「道路」面積は横浜市統計書による。「宅

地」、「田・畑」、「山林・原野」面積は、固定資産概要調書(財政局提供資料)の評価総地積と非課税地積を合計したものである。「河川・池沼」面積は、神奈川県土地利用現況把握調査の河川・水面・水路を合計したものである。 「その他」面積は横浜市面積(横浜市統計書) から各面積を差し引いたものである。

図3-2 横浜市のエネルギー消費量の推移

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

1975 1980 1985 1990 1995 2000(年度)

(面積 ha)

道路

宅地(商業・工業・住宅地)

山林・原野田・畑

河川・池沼

その他

備考1)「電灯・電力」、「ガス」は横浜市統計書(東京電力の販売量、東京ガスの消費量)による。但し家庭用ガス消費量

は、家庭への普及率を 100%と換算して補正した。

備考2)石油系燃料については、エネルギー・生産需給統計年報の神奈川県販売量を用いた。「ガソリン」「軽油」は「横浜

市内の自動車台数(横浜市統計書)/神奈川県の自動車台数(県の統計データ)」の比を乗じて補正し、「灯油」は「市内

の世帯数(横浜市統計書)/神奈川県の世帯数(神奈川県白書)」の比を乗じて、「重油」は「市内の製造品出荷額/神

奈川県の製造品出荷額(工業統計調査)」の比を乗じて補正した。

備考3)エネルギー消費量は、各販売量等に各発熱量(総合エネルギー統計)を乗じて算出した。ただし、「電灯・電力」

は、消費時の電力発生熱量を用いた。都市ガスは 1980 年度までは 5000kcal/m3、それ以降は 11000kcal/m3 とした。

備考4)電灯とは一般家庭・街灯などであり、電力とは事務所ビル、学校、工場などに供給される。

- 9 -

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(2) 現在の都市化状況

横浜市の現在の都市化状況について以下に示す。

ア 建物の高密化

旭区

緑区

戸塚区

泉区

青葉区

港北区

金沢区

中区

都筑区

栄区

鶴見区

港南区

磯子区

南区

神奈川区

瀬谷区

保土ヶ谷区

西区

44

47

39

65

57

46

6834

31

63

54

64

52

37

37

10687

183

0 5 10 km

N

EW

S

単位:%

30 - 5051 - 7071 - 9091 - 110111 - 200

凡 例

旭区

緑区

戸塚区

泉区

青葉区

港北区

金沢区

中区

都筑区

栄区

鶴見区

港南区

磯子区

南区

神旭区

緑区

戸塚区

泉区

青葉区

港北区

金沢区

中区

都筑区

栄区

鶴見区

港南区

磯子区

南区

神奈川区

瀬谷区

保土ヶ谷区

西区

44

47

39

65

57

46

6834

31

63

54

64

52

37

37

10687

183

0 5

建築物の過密化状況を、各区の建物延床面積密

度で見ると(図3-3)、市の東部で密度が高く、

中でも西区は183%と他の区と比較して突出して

高い。一方、市の西部は密度が低く、最も低い区

は泉区の31%である。

図3-3 各区の建物延床面積密度

イ 建物の高層化

建築物の高層化の状況として、各区の6

階以上の建物棟数密度を図3-4に示す。

市の東部で密度が高く、中でも西区は 182

棟/km2、中区が 139 棟/km2と突出して

高い。一方、旭区、栄区、泉区、瀬谷区の

6階以上 の建築物 棟数の密 度は 10 棟

/km2を下回っている。

備考)延床面積密度は、各区の建物の延床

面積を区面積で除し、パーセンテージで示したもの。面積は横浜市統計書による。

図3-4 各区の6階以上の建物棟数密度

10 km

N

EW

S

単位:%

30 - 5051 - 7071 - 9091 - 110111 - 200

凡 例

旭区

緑区

戸塚区

泉区

青葉区

港北区

金沢区

中区

都筑区

栄区

鶴見区

港南区

磯子区

南区

神奈川区

瀬谷区

保土ヶ谷区 西区

9

5

7

13

11

3

34

15

22

2413

41

24

19

17

13958

182

0 5 10 km

N

EW

S

単位:棟/k㎡

0 - 2021 - 4041 - 6061 - 200

凡 例

備考)建物棟数密度は、各区の6階以上の建

物棟数を区面積で除したもの。建物棟数は横浜市統計書による。

- 10 -

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E

F

G

ウ 緑地の分布

緑地の分布状況を図3-5に示す。主に市域の

北部から南部に連なる丘陵部において緑地がまと

まって見られ、分断されながらも残存している。

「横浜市緑の基本計画」では、こどもの国周辺

地区(図中 A)、三保・新治地区(図中 B)、川井・

矢指地区(図中 C)、大池・今井・名瀬地区(図

中 D)、舞岡・野庭地区(図中 E)、小柴・富岡地

区(図中 F)及び円海山周辺地区(図中 G)の 7

地区を「緑の七大拠点」として、それらの保全に

努めることとしている。

エ 特別緑地保全地区等に指定されている緑地

まとまっている緑地は、図3-6に示す

「特別緑地保全地区」や「農用地」など、

法により保全が図られているもののほか、

条例・要綱に基づいて指定される「市民の

森」がある。一方、それらの緑地に連続し

て一体となった樹林地の形成に寄与してい

るにもかかわらず、法などによる制度的な

保全が図られていない緑地もまだ多く残さ

れている。

図3-6 特別緑地保全地区等に指定されている緑地

備考)都市計画局都市計画決定データ(平成 15 年度)、

緑政局農政課データベース(平成 12 年度)より作成

図3-5 緑地の分布 備考)都市計画局 都市基礎調査(平成9年)より作成

近郊緑地保全区域緑地保全地区 特別緑地保全地区

生産緑地地区 都市計画公園(街区公園を除く)農用地

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オ 建物(業務・住宅)のエネルギー消費量

建物(業務・住宅)のエネルギー消費量は、横浜市全体のエネルギー消費量の38.8%と最

も多くを占め(平成13年度)、また、平成2年度以降一貫して増加傾向にある。そこで、各

区の業務・住宅のエネルギー消費量を用途別に図3-7に示す。

業務・住宅のエネルギー消費量の合計は、中区、港北区、鶴見区が多い。業務については

中区、西区が多く、住宅については港北区、鶴見区、青葉区が多く消費している。

用途別の消費量については、業務では主に照明・動力等として、住宅では主に給湯として、

次いで照明・動力等、暖房として使用されている。

(1400)

(1000)

(600)

(200)

200

600

1000

1400

鶴見

神奈川

西中南港南

保土

ヶ谷

旭磯子

金沢

港北

緑青葉

都筑

戸塚

栄泉瀬谷

(業)暖房

(業)冷房

(業)その他熱需要

(業)照明・動力等

(住)暖房

(住)冷房

(住)給湯

(住)厨房・煮炊

(住)照明・動力等

(106Mcal/年)

業務

住居

業務

住宅

図3-7 各区の業務・住宅部門のエネルギー消費量(用途別) 備考) 業務部門のエネルギー消費量は、各建物用途の延床面積に単位面積当たりのエネルギー消費量

原単位を乗じて算出した。住宅部門については、世帯数に、世帯当たりのエネルギー消費原単位を乗じて算出した。エネルギー消費原単位は、「民生部門のエネルギー実態調査」(日本エネルギー経済研究所、平成 16 年1月)のうち、地理的に最も近いと思われる東京の値を用いた。延床面積は、横浜市財政局提供資料、及び横浜市統計書による。

カ 人工排熱の状況

大気中に熱を放出している熱源は、人工排熱と地表面からの反射による熱(対流顕熱)の

2種類に大別される。人工排熱は、建物からの排熱や自動車からの排熱、事業所からの排熱

の3種類に分類される。図3-8に全熱(建物・自動車・事業所)からの人工排熱(顕熱+

潜熱)の日平均の分布状況を示す。

市全域の中では、都心部や臨海部において排熱量が大きく、鉄道沿いや幹線道路沿いでも

大きくなっている。また、清掃工場、火力発電所などの施設からも、局所的な人工排熱が見

られる。これは、都心部や臨海部、鉄道沿いでは建物からの排熱が、幹線道路沿いでは自動

車と沿道建物からの排熱が主と考えられる(図3-9、図3-10)。

- 12 -

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図3-8 建物・自動車・事業所からの人工排熱(日平均;顕熱+潜熱) (横浜市環境科学研究所資料;夏期8月を対象に、市全域を 500m メッシュに区切り、推計した。)

図3-9 建物からの人工排熱(日平均;顕熱+潜熱)

全熱(建物+自動車+事業所)

自動車建物

図3-10 自動車からの人工排熱(日平均;顕熱+潜熱)

- 13 -

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横浜市では、一般環境大気測定局20地点において風向・風速のデータを観測している。 横浜市では、一般環境大気測定局20地点において風向・風速のデータを観測している。

平成 16 年夏期の風配図を図3―11 に示す。卓越風向(最も出現率が高い風向)は、最

も北(東京湾奥)に位置する鶴見区潮田交流プラザを除き、昼・夜間ともに相模湾から吹

き込む南~南西の風である。一方、鶴見区潮田では、昼は南南東の風が卓越している。

平成 16 年夏期の風配図を図3―11 に示す。卓越風向(最も出現率が高い風向)は、最

も北(東京湾奥)に位置する鶴見区潮田交流プラザを除き、昼・夜間ともに相模湾から吹

き込む南~南西の風である。一方、鶴見区潮田では、昼は南南東の風が卓越している。

01020

30

0

10

20

30

0102030

0

10

20

30

0

10

20

30

0

10

20

30

0

10

20

30

0

10

20

30

0

10

20

30

0

10

20

30

0

10

20

30

0

10

20

30

010

2030

0

10

20

30

0

10

20

30

0

10

20

30

0

10

20

30

0

10

20

30

0

10

20

30

0

10

20

30

0

10

20

30

N

NNE

NE

ENE

E

ESE

SE

SSE

S

SSW

SW

WSW

W

WNW

NW

NNW

0

10

20

30

0

10

20

30

0102030

0102030

0

10

20

30

0102030

0102030

0

10

20

30

0102030

010

2030

0102030

0

10

20

30

010

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0

10

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30

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01020

30

0

10

20

30

0

10

20

30

0102030

昼:6-18時 夜:19-5時

図3-11 夏期の昼・夜間の風配図(横浜市大気環境月報(速報値)平成 15 年、平成 16 年の 7-8 月)

鶴見区潮田交流プラザ

各測定地点の平均風速は2~4m/s の範

囲であり、風速が最も大きい時間帯は 13

時~15 時(風速約 3~5m/s)、最も小さ

い 時 間 帯 は 早 朝 5 時 周 辺 ( 風 速 約 2~

3m/s)である。図3-12に、一例として、

鶴見川流域の測定地点の観測結果を示す。

各測定地点の平均風速は2~4m/s の範

囲であり、風速が最も大きい時間帯は 13

時~15 時(風速約 3~5m/s)、最も小さ

い 時 間 帯 は 早 朝 5 時 周 辺 ( 風 速 約 2~

3m/s)である。図3-12に、一例として、

鶴見川流域の測定地点の観測結果を示す。

鶴見川流域

0

1

2

3

4

5

6

7

1時 2時 3時 4時 5時 6時 7時 8時 9時 10時 11時 12時 13時 14時 15時 16時 17時 18時 19時 20時 21時 22時 23時 24時

鶴見区潮田交流プラザ 港北区総合庁舎 鶴見区生麦小学校

緑区三保小学校 青葉区総合庁舎 都筑区総合庁舎

図3-12 平均風速の時刻別の変動

(横浜市大気環境月報(速報値)

平成 16 年 7、8 月、鶴見川流域の測定地点)

- 14 -

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- 15 -

第4章 ヒートアイランド対策の目的と目標、基本的な考え方

(1) ヒートアイランド対策の目的

市民を対象としたアンケート調査の結果、以前に比べ「夏の夜が寝苦しくなった」人が54%、

「涼風を感じなくなった」人が44%と、夏の生活環境が悪くなっていると感じている人が増

え、また、暑くて困る時間帯としては64%の人が「夜間」をあげ、夏に暑くて困る場所とし

ては、81%の人が「歩道や道路」をあげている。

また、横浜市の気温上昇について解析した結果、横浜市の年平均気温は100年間あたり

2.6℃上昇し、そのうちの1.6℃はヒートアイランド現象によるものと考えられる。市街化の

進んでいる地域は郊外に比べて相対的に気温が高く、平成16年夏期においては、平均気温で

2.0℃、熱帯夜日数で最大29日の差が生じている。また、平成17年夏期においても、平均気

温で2.1℃、熱帯夜日数で最大24日の差が生じている。これら気温の上昇は、熱中症やスト

レスの増加など人への健康や、植物の開花時期の早期化など生態系へ影響を及ぼすことが懸念

されている。

そこで、ヒートアイランド対策の目的としては、市民の生活環境に視点を置き、市民が健康

で快適に夏を過ごせるよう「夏の暑さの緩和を図る」とともに、長期的視点に立ち、ヒートア

イランド現象による気温上昇をこれ以上進行させず、緩和させることにより、「市民が安らい

でくらせる街づくり」を目指すこととする。

横浜市では、政策の基本的な指針を定めた「中期政策プラン」(平成 14 年 12 月)におい

て、「次代に受け継ぐ地球環境を守っていくために、都市環境問題を総合的に捉えて、具体的

な行動を起こし、『環境行動都市』の創造を目指す」としている。

ヒートアイランド施策についても、都市全体を通じた「熱管理の必要性」を、市民・事業

者・行政各々が認識し、協働して多面的な対策に取り組むことにより、効果的・効率的な展

開を図っていくこととする。

本取組方針においては、「都市スケール」のヒートアイランド対策を念頭に、対策の「視点」

及び「取組方針」を設定することにより、取り組む対策を体系化するとともに、施策の方向

性までを示すものである。加えて、ヒートアイランド現象が顕著に見られ、かつ今後積極的

に対策に取り組む「重点推進地域」を選定するものである。

一方、具体的な対策の実施あたっては、「街区・建物スケール」に相当する個別の地域等に

よって実施する対策のメニュー・内容が異なる。

それぞれの地域等に対応した具体的な対策の選定及び短期的な目標については、今後策定

する「行動計画(アクションプラン)」において示すものとする。具体的な対策等については、

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ヒートアイランド対策取組方針

・ 中長期的な目標の提示

・ 「対策の視点」、「取組方針」の設定

対策の体系化、施策の方向性の提示、重点推進地域の選定

ヒートアイランド対策行動計画(アクションプラン)

・ モデル地域(街区・建物スケール)の選定

・ 重点推進地域・モデル地域に対応した対策の選定

・ 重点推進地域・モデル地域に対応した短期的な目標の提示

前記の「重点推進地域」とともに、先行的かつ実験的に対策を実施する「モデル地域」にお

いて設定することとする。

本取組方針と、今後策定する行動計画の位置付けを図4-1に示す。また、「都市スケール」、

「街区スケール」および「建物スケール」の位置付けを図4-2に示す。

なお、重点推進地域やモデル地域以外のその他の地域においては、その地域の発意などにより、

モデル地域での施策事例を活用し対策を実施して、全市的な展開につなげていくこととする。

図4-1 取組方針と行動計画(アクションプラン)の位置付け

図4-2 都市・街区・建物スケールの位置付け

平成 16 年度~平成 17 年度

平成 18 年度~

都市スケール: 大規模緑地の保全

土地利用に係る対策

交通システムに係る対策

街区スケール: 公園や街路空間の緑化 エネルギー供給システムの導入

建物スケール: 省エネ建築物の普及 建物緑化による高温化抑制 他

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(2) ヒートアイランド対策の目標

ア 目標設定にあたっての基本的な考え方

「第1章 取組方針策定の趣旨」でも触れたように、ヒートアイランド現象は、何十年にも

わたる都市化の結果として生じてきた環境問題であるだけに、対策に取り組むに当たっては、

長期的視点が必要となる。一方で、各主体が具体的な対策に取り組みやすいよう、短期的な視

点も同時に必要となる。ここで、短期的な視点に基づく目標については、今後設定する予定で

ある「モデル地域」等において、当該地域に即した具体的な目標を個別に検討することから、

ここでは中長期的な視野からの目標を設定する。

なお、中長期的な視点からの目標といえども、ヒートアイランド対策として実現可能性があ

るものであるとともに、実施主体が分かりやすく取り組みやすいもの、行政として達成状況を

評価できるものであることが求められる。また、目標の設定にあたっては、当然ながら、横浜

市におけるヒートアイランドの現状(気温、熱帯夜日数等)及び特徴(地域的な差異等)を踏

まえなければならない。

これらを踏まえ、下記の考え方に従ってヒートアイランド対策に係る目標を設定する。

(目標設定にあたっての基本的な考え方)

❏ ヒートアイランド現象の形成過程を踏まえ、中長期的な観点から、

実現可能性を踏まえ設定する。

❏ 市民にとって分かりやすく、かつ達成状況を評価できる目標を設定す

る。

❏ 市域全体を範囲とした目標と、シミュレーションや観測結果などに

より、ヒートアイランド現象が顕著にみられる地域を対象とした数

値目標を設定する。

❏ 「ヒートアイランド対策大綱」を踏まえ、横浜市として適切な対応

が可能なものとする。

イ 目標とする時期と指標

ヒートアイランド対策は長期間にわたる対策が求められることから、「中長期目標」を設定

する。他の地方自治体の事例を見ると、目標とする時期については5年から20年程度となっ

ている(表5-1)。また、目標とする指標については、現象としてのヒートアイランドの効

果を示す熱帯夜日数を採用している事例が多い(表5-2)。

そこで、目標とする時期については、概ね2025年(平成37年)頃、現在から約20年間を

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展望する横浜市の「長期ビジョン」や他の事例を参考に、20年後の平成37年(2025年)頃

とする。また、目標とする指標については、アンケートの結果、市民の関心が高いことが明ら

かとなり、他の事例でも多く採用されているとともに、今までの「街のあり方」を改善するた

めには本質的な部分を改善するという考えから、「熱帯夜日数」とする。

表5-1 他の地方自治体の目標とする時期の事例

策定年月 目標とする時期 備 考

平成 14 年 1 月 平成 27 年(2015 年) 東京都環境基本計画

平成 16 年 6 月 平成 37 年(2025 年) 大阪府ヒートアイランド対策推進計画

平成 16 年 12 月 平成 22 年度(2010 年度) 東大阪市ヒートアイランド対策率先推進計画

平成 17 年 3 月 平成 32 年度(2020 年度) 大阪市ヒートアイランド対策推進計画

平成 17 年 8 月 平成 22 年度(2010 年度) 兵庫県ヒートアイランド対策推進計画

表5-2 他の地方自治体の目標とする指標の事例

目標とする指標 備 考

熱帯夜日数

東京都環境基本計画

大阪府ヒートアイランド対策推進計画

大阪市ヒートアイランド対策推進計画

東大阪市ヒートアイランド対策率先推進計画

夏の夜間の気温 大阪府ヒートアイランド対策推進計画

年平均気温 大阪市ヒートアイランド対策推進計画

夏季最高気温

真夏日の日数

極端に暑い日の日数(最高気温が 35℃以上の日)

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ウ 全市域における目標

横浜市におけるヒートアイランド現象として熱帯夜日数(横浜地方気象台における気温観測

値による)に着目すると(第2章 (2) ウ)、1970年までは5日前後でほぼ安定しているもの

の、1970年代以降では約10日前後と増加の傾向が見られる。さらに、1990年代では20日

前後に達しており、ヒートアイランド現象が特に顕著に現れていると言える。一方、横浜市環

境科学研究所による気温観測値(第2章 (2) ア)によると、都心部での熱帯夜日数は約30日

となっているのに対し、郊外部でのそれは約20日となっており、ヒートアイランド現象が都

心部で顕著となっていることを示している。なお、横浜地方気象台の観測値を勘案すると、郊

外部においても熱帯夜日数が増加しており、都心部にとどまらず郊外部においてもヒートアイ

ランド現象が顕在化していると推測される。

上記のように横浜市では、市域全体でヒートアイランド現象が現れていること、特に都心部

においてはヒートアイランド現象が顕著に現れていることから、市民の視点から分かりやすい

「熱帯夜日数」を指標とし、下記のように目標を設定する。目標とする期間は「長期ビジョン」

を踏まえ、20年後の平成37年(2025年)頃とする。ただし、市域全体でのヒートアイラン

ド対策に対する効果を定量的に算定することは困難であることなどから、市域全体での目標設

定については、以下のとおりとする。

(市域全体での目標設定)

● 市域全体において、ヒートアイランド現象による熱帯夜日数の減少を図る。

● 特に都心部及び都心部周辺において、熱帯夜数の減少を図る。

備考)横浜市域における熱帯夜日数は、第2章(2)(4~5ページ)を参照

また、横浜市の都市将来像の一つとして、総合的な街づくりを進めていくという観点

から、市域全体での目標を設定するとともに、市民・事業者が親しみやすく、横浜市の

ヒートアイランド現象の特徴を踏まえたキャッチフレーズ的な目標を設定することとす

る。

(キャッチフレーズ的な目標設定)

● やさしい木かげ 風そよぎ 夕涼む街 横濱

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- 20 -

(3) 施策への展開と取組方針の体系

ヒートアイランド現象は、自然環境や土地利用、市民一人ひとりのライフスタイルなど、地

域特性と深くかかわっている。本市の現状と要因分析の結果を踏まえた対策手法を抽出し、さ

らに、効果的に施策を進めるため5つの取組方針を掲げ、それに基づいて施策を実施・展開し

ていく。

図4-3に、横浜市におけるヒートアイランド対策の施策への展開イメージを示す。横浜市

におけるヒートアイランド現象の要因としては、直接的な要因として「地表面の人工化」や「人

工排熱の増加」などが挙げられる。

また、諸現象の根本的な要因として「ライフスタイルや事業スタイルの変化」がある。対策

手法については、要因分析を基に4つの対策の視点から整理し、さらに、5つの取組方針に基

づき、横浜市の特性に応じた具体的な施策へと展開する。

図4-3 横浜市におけるヒートアイランド対策の施策へ展開するイメージ

環境行動都市の創造

対策手法の抽出

対策を効果的に進めるための

5つの取組方針

① 地域特性にあわせた適切な施策の

推進

② 市民・事業者・行政の協働によ

る積極的な施策の推進

③ 総合的な施策の展開

④ 最新の調査研究と対策技術の活

⑤ 都市環境や市民の安らぎに配慮

した施策の展開と啓発の促進

○地表面の改良

○風の道の確保

○排熱の抑制

4つの対策の視点

○適切な情報発信

と啓発の推進

1)人工排熱の増加

・排 熱 の 増 加

2)地表面の人工化

・地表面温度の高温化

・地表面の蓄熱増加

・都市内空気の滞留

ライフスタイル等の変化

現状把握と要因分析

国・先行自治体等の既存知見・対策事例

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- 21 -

これらの「4つの対策の視点」および「5つの取組方針」についての詳細を(4)以降で

述べるにあたり、それらの体系を図4-4に示す。

市民が生活に安らぎや潤いを感じられるよう配慮して施策を展開していきます。また、市民・事業者の自発的行動と協調的な取り組みに向けて多様な啓発活動を推進していきます。

② 市民・事業者・行政の協働による積極的な施策の推進② 市民・事業者・行政の協働による積極的な施策の推進

③ 総合的な施策の展開③ 総合的な施策の展開

④ 最新の調査研究と対策技術の活用④ 最新の調査研究と対策技術の活用

⑤ 都市景観や市民の安らぎに配慮した施策の展開と啓発の促進⑤ 都市景観や市民の安らぎに配慮した施策の展開と啓発の促進

① 地域特性にあわせた適切な施策の推進① 地域特性にあわせた適切な施策の推進

都心部地域(商業・業務地区)

・省エネ設備の導入・省エネ建築物の普及・自動車・交通流対策・省エネ行動の実施・地表面の高温化抑制・風の道の確保・屋根面・壁面の高温化抑制

都心部周辺地域(商業・住宅地区)

・家庭での省エネライフの推進・屋根面・壁面の高温化抑制・地表面の高温化抑制・水と緑のネットワークづくり・風の道の確保・自動車・交通流対策

郊外部地域(住宅・農地緑地)

・家庭での省エネライフの推進・郊外の緑地・農地の保全・水と緑のネットワークづくり・大規模緑地の保全・風の道の確保・地表面の高温化抑制

工業地域(工業・業務地区)

・省エネ設備の導入・設備機器の排熱形態の転換・エネルギー供給システムの選択・自動車・交通流対策・省エネ行動の実施

市民・事業者・行政の各主体の役割を明確にした上で、現状や対策技術に関する情報を共有し、協働による取り組みを推進していきます。

既存の施策と新たに展開する施策を体系化し、より効果的・効率的に推進していきます。また、広域的な視点を取り入れ、国や他の自治体等とも連携して対策に取り組みます。

ヒートアイランド現象の発生状況や影響について、モニタリング及び調査研究を進めます。また、対策技術等について情報収集を行い、効果的な施策が図れるよう活用していきます。

( 地 域 別 の 主 な 対 策 )

<ヒートアイランド対策重点推進地域>熱環境マップ、気温分布等から地域を類型化

・業務集積地域 ・建物密集地域 ・複合要因地域 ・高排熱地域 ・緑地地域

市民が生活に安らぎや潤いを感じられるよう配慮して施策を展開していきます。また、市民・事業者の自発的行動と協調的な取り組みに向けて多様な啓発活動を推進していきます。

② 市民・事業者・行政の協働による積極的な施策の推進② 市民・事業者・行政の協働による積極的な施策の推進

③ 総合的な施策の展開③ 総合的な施策の展開

④ 最新の調査研究と対策技術の活用④ 最新の調査研究と対策技術の活用

⑤ 都市景観や市民の安らぎに配慮した施策の展開と啓発の促進⑤ 都市景観や市民の安らぎに配慮した施策の展開と啓発の促進

① 地域特性にあわせた適切な施策の推進① 地域特性にあわせた適切な施策の推進

都心部地域(商業・業務地区)

・省エネ設備の導入・省エネ建築物の普及・自動車・交通流対策・省エネ行動の実施・地表面の高温化抑制・風の道の確保・屋根面・壁面の高温化抑制

都心部周辺地域(商業・住宅地区)

・家庭での省エネライフの推進・屋根面・壁面の高温化抑制・地表面の高温化抑制・水と緑のネットワークづくり・風の道の確保・自動車・交通流対策

郊外部地域(住宅・農地緑地)

・家庭での省エネライフの推進・郊外の緑地・農地の保全・水と緑のネットワークづくり・大規模緑地の保全・風の道の確保・地表面の高温化抑制

工業地域(工業・業務地区)

・省エネ設備の導入・設備機器の排熱形態の転換・エネルギー供給システムの選択・自動車・交通流対策・省エネ行動の実施

市民・事業者・行政の各主体の役割を明確にした上で、現状や対策技術に関する情報を共有し、協働による取り組みを推進していきます。

既存の施策と新たに展開する施策を体系化し、より効果的・効率的に推進していきます。また、広域的な視点を取り入れ、国や他の自治体等とも連携して対策に取り組みます。

ヒートアイランド現象の発生状況や影響について、モニタリング及び調査研究を進めます。また、対策技術等について情報収集を行い、効果的な施策が図れるよう活用していきます。

( 地 域 別 の 主 な 対 策 )

<ヒートアイランド対策重点推進地域>熱環境マップ、気温分布等から地域を類型化

・業務集積地域 ・建物密集地域 ・複合要因地域 ・高排熱地域 ・緑地地域

図4-4 横浜市におけるヒートアイランド対策取組方針の体系図

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(4) 4つの対策の視点

対策手法について、以下に示す3つの発生要因別の視点と、推進支援の視点から整理する。

① 排熱の抑制

市民一人ひとりのライフスタイルや、事業者のオフィス環境のあり方や輸送手段な

どのビジネススタイルが変化した結果、家庭や事業所におけるエネルギー使用機器の

長時間稼動、密閉性が高く通気性の低い居住空間の増加、屋外への無秩序な排熱形態、

自動車からの排熱の増加等によって、「人工排熱の増加」が生じている。

これらについては、エネルギー消費の制御による排熱量の抑制および排熱形態の転

換があげられることから、「排熱の抑制」を対策の視点として設定する。

② 地表面の改良

緑地、緑陰、水面の減少、舗装面や建物壁面の増加に伴う輻射熱の増加などにより、

「地表面温度の高温化」や「地表面の蓄熱量の増加」が生じている。

これらについては、表面被覆の制御による主に夜間の気温上昇の抑制があげられる

ことから、「地表面の改良」を対策の視点として設定する。

③ 風の道の確保

緑地・水面等の減少や建物の存在による地表面の凹凸の増大、建物形状などによっ

て「都市内空気の滞留」が生じていると考えられる。また、横浜市に特有の南からの

卓越風や、河川・郊外部の緑地に起因すると思われる冷気のにじみ出しなどから、対

策の視点として、「風の道の確保」を設定する。

④ 適切な情報発信と啓発の推進

ヒートアイランド対策を推進するためには、地域におけるヒートアイランド現象の

詳細を把握し、適切な対策を講じる必要がある。また、市民や事業者との協働を進め

る上でも、ヒートアイランド現象の情報や対策の効果などに関する情報を積極的に公

開し、熱管理に関する認識の向上を図る必要がある。

現象と対策の効果を適切に把握し、啓発を通じて対策実施の普及やライフスタイル

の改善を促すことを目指して、「適切な情報発信と啓発の推進」を対策の視点として設

定する。

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(5) 5つの取組方針

ヒートアイランド現象は、因果関係が複雑で、要因となる行動が多岐にわたること、さら

に関係する主体が多様で、市民一人ひとりのライフスタイルにまで関わるなど、対象範囲が

広い点に特徴がある。また、横浜市は地域による地理的特性や都市機能的特性が多様であり、

地域特性を考慮した効果的な施策の展開が求められる。このことから、ヒートアイランド現

象の現状とその要因を踏まえ、下記に示す5つの取組方針に基づき施策を展開することとす

る。

《5つの取組方針》

① 地域特性にあわせた適切な施策の推進

② 市民・事業者・行政の協働による積極的な施策の推進

③ 総合的な施策の展開

④ 最新の調査研究と対策技術の活用

⑤ 都市景観や市民の安らぎに配慮した施策の展開と啓発の促進

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◆取組方針1 地域特性にあわせた適切な施策の推進

○ 横浜市内の気温観測結果に基づく市内の平均気温分布状況や熱帯夜日数などととも

に、都市機能的特性(地表面の人工化や人工排熱量等)や地理的特性(地形、緑被、

風況等)などに着目し、地域の特性に応じて、地表面の改良、風の道の確保、排熱の

抑制などの対策を推進する。

○ また、ヒートアイランド対策を重点的に推進する地域を適切に選定するとともに、森

林や河川等の持つ、クールスポットとしての機能を活用する。

◇ 施策の方向性

横浜市内には多様な自然的地形と土地利用があり、ヒートアイランド現象の要因とな

る行為や関係する主体の幅も広い。このため、横浜市内の平均気温分布状況や熱帯夜日

数、ヒートアイランド現象の要因分析の結果とともに、地域の特性を①都市機能的特性

と②地理的特性との観点から類型し(図4-5)、それぞれの類型に応じて適切な対策手

法を実施する。

図4-5 横浜市の地理的・都市機能的地域特性

A:こどもの国周辺地区 E:舞岡・野庭地区

B:三保・新治地区 F:小柴・富岡地区

C:川井・矢指地区 G:円海山周辺地区

D:大池・今井・名瀬地区

A

B

C D

E

F

G

都市部周辺

都市部

都市機能的特性

地理的特性

工業地区

郊外

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① 都市機能的特性

市街化の進んだ中心部・北東部は郊外部に比べて気温が高い状況にある。要因分析の

結果、気温の高い地域は建物の過密化・高層化が進み、エネルギー消費量も高く、人工

排熱も多い地域である。これらの要因と、土地利用や対策の導入しやすさなどを踏まえ、

「都心部」、「都心部周辺」、「郊外」、「工業地区」ごとに施策の展開を図ることが有効と

考えられる。

保水性・透水性舗装の設置、

【都心部】「横浜駅から関内・関外にいたる地域」や「新横浜駅周辺」

とする。

特徴:主に業務地と、それに付随する都心商業地として利用されているこの地域は、建物の高度

化・過密化が進み、またエネルギー消費量や人工排熱が顕著に多い。

対策の方向性:

建物スケール:省エネ建築物の普及、省エネ設備機器の導入、建物

緑化など

街区スケール以上:街路空間の緑化、水面の確保・創出、公園・緑

地の整備、保水性舗装等の整備、地域冷暖房システムの導入など

【都心部周辺】「都心周辺の台地、平坦部の住宅地や一部風致地区」や

「郊外の駅周辺の既成市街地で住宅や商店が混在した建物密度が

高い地域」とする。

特徴:主に住宅地、業務、商業といった土地利用からなるこの地域では、都心と共に、建物の過

密化・高度化が進み、エネルギー消費量、人工排熱も多い地域である。

対策の方向性:

建物スケール:省エネ建築物の普及、省エネ設備機器の導入、建物

緑化、家庭での省エネライフの推進など

街区スケール以上:街路空間の緑化、水と緑のネットワークづくり、

保水性舗装等の整備など

【郊外】「土地区画整理の手法などにより計画的に市街地が形成されつ

つある地域」および「比較的早い段階で市街地化し、農地や緑地が

小規模に残り基盤整備も不十分な地区もある地域」、並びに「市街

化調整区域」とする。

特徴:主に住宅地としての利用が多く、また、農地・緑地が残っている。

対策の方向性:

建物スケール:建物緑化、家庭での省エネライフの推進など

街区スケール以上:郊外の緑地・農地の保全、保水性舗装等の整備、

大規模緑地の保全など

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② 地理的特性

横浜市では、鶴見区の一部を除き、夏期は相模湾方向から吹き込む南~南西方向の季

節風が卓越しており、鶴見区の鶴見川河口付近では、南南東の海風の影響も受けている

と考えられる。また、河川沿いや斜面緑地では、低地に向かって冷気が流下している可

能性もある。

一方、大規模な緑地が残る市の西部は、東部に比べ昼・夜ともに気温が低く、クール

スポットとして機能していると考えられる。これらと地形特性から「臨海部」、「沿川部」、

「台地・丘陵部」、「緑の拠点」ごとに施策の展開を図ることが有効と考えられる。

【工業地区】「臨海部の大規模な工業地帯・港湾物流地」や「内陸部の

幹線道路沿線やインターチェンジ周辺にある工業地域・工業専用地

域」とする。

特徴:工場や関連業務施設からの人工排熱が多い。

対策の方向性:

建物スケール:敷地内緑化の推進、省エネ設備の導入、省エネ建築

物の普及、設備機器の排熱形態の転換など

街区スケール以上:エネルギー供給システムの選択、街路空間の緑

化など

【臨海部】海風(又は陸風)による都市の冷却効果が期待される。この

ため、「海側より内陸に向かって最初に台地・丘陵の斜面にぶつか

るエリアまで」を臨海部とする。

対策の方向性:

建物形状・配置による効果的な風誘導、街路空間の緑化、公園・緑

地の整備など

【沿川部】開放水面の存在による潜熱の確保や、風の移動経路としての

効果が期待される。河川(開放水面)による効果範囲については、

鶴見川の低地の最大幅が概ね片側 400m 程度であることを踏まえ、

「河川から約 400m(両側 800m)の範囲」を沿川部とする。

対策の方向性:

建物形状・配置による効果的な風誘導、水面の確保・保全、河川護岸

の緑化、公園・緑地の整備など

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③ 横浜市全域及び地域特性類型ごとの対策手法

地域特性に応じて適切な対策を展開すると同時に、ヒートアイランド現象が起こりに

くい街づくりを長期的視野に立って進めていくためには、公共交通機関の利用促進や敷

地内緑化の推進、水面の確保・創出、公園・緑地の整備などの対策を横浜市全域で有機

的に取り組む必要がある。また、対策を推進するためのヒートアイランド調査や新規技

術の開発などについても市全域で行っていく必要がある。

横浜市全域で取り組むべき対策、および都市機能的・地理的特性から類型化した地域

特性類型に応じて取り組む主要なヒートアイランド対策手法を表4-1に示す。

【台地・丘陵部】風の移動経路としての効果などが期待される。従って

台地・丘陵部は、「臨海部、沿川部以外の台地と丘陵」とする(た

だし、後述の緑の拠点は除く)。

対策の方向性:

郊外の緑地・農地の保全など

【緑の拠点】クールスポット効果が期待される緑の拠点は、郊外部や市

街地の周辺に位置する「『緑の七大拠点』など」とする。

対策の方向性:

大規模緑地の保全など

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表4-1 全市域及び地域特性類型に応じて取り組むべきヒートアイランド対策

全市域で取り組むべき対策

・ヒートアイランド現象の実態調査(市内の温度観測、熱環境マップの作成・公開)

・対策手法・採用技術の実証実験(導入対策による効果の測定、市民の体感効果調査の実施)

・新規技術の開発(特性に応じたシミュレーション手法や対策技術の開発)

・ヒートアイランド現象に関する情報の発信(リーフレットの作成・配布、シンポジウム等の開催など)

地域特性類型に応じて主要に取り組むべき対策 都心部

(商業・業務地区) 都心部周辺

(商業・住宅地区) 郊外

(住宅・農地緑地) 工業地区

(工業・業務地区)

共通の対策

・省エネ設備の導入 ・省エネ建築物の普及 ・設備機器の排熱形態の転換 ・エネルギー供給システムの選択 (地域冷暖房システムの導入による排熱源のコントロールなど) ・自動車・交通流対策 (交通流対策・物流の効率化など) ・省エネ行動の実施 (事業所での環境マネジメントの推進など) ・屋根面・壁面の高温化抑制 ・地表面の高温化抑制 (保水性舗装等の整備など) ・公園の整備 ・街路空間の緑化

・省エネ建築物の普及 ・家庭での省エネライフの推進 ・屋 根 面 ・壁 面 の高 温化抑制 ・地表面の高温化抑制(保水性舗装等の整備など) ・自動車・交通流対策 (交通流対策・物流の効率化など) ・街路空間の緑化 ・水と緑のネットワークづくり

・屋 根 面 ・壁 面 の高 温化抑制 ・地表面の高温化抑制(保水性舗装等の整備など) ・家庭での省エネライフの推進 ・郊 外 の緑 地 ・農 地 の保全 ・水と緑のネットワークづくり ・大規模緑地の保全 ・公園の整備 ・街路空間の緑化

・屋 根 面 ・壁 面 の高 温化抑制 ・敷地内の緑化 ・省エネ設備の導入 ・省エネ建築物の普及 ・設備機器の排熱形態の転換 ・エネルギー供給システムの選択 (地域冷暖房システムの導入による排熱源のコントロールなど) ・自動車・交通流対策 (交通流対策・物流の効率化など) ・省エネ行動の実施 (事業所での環境マネジメントの推進など) ・街路空間の緑化 ・公園の整備

臨海部

・風の道の確保 (建物形状・配置による風誘導)

・水と緑のネットワークづくり ・大規模緑地の保全

・風の道の確保 (建物形状・配置による風誘導)

沿川部

・風の道の確保 (建物形状・配置による風誘導 ・水面の確保・保全 ・護岸の緑化 ・公園や緑地の整備

・風の道の確保 (建物形状・配置による風誘導) ・水面の確保・保全 ・護岸の緑化 ・公園や緑地の整備

・水と緑のネットワークづくり ・大規模緑地の保全

・風の道の確保 (建物形状・配置による風誘導) ・護岸の緑化

台地 ・ 丘 陵部

・省エネ建築物の普及 ・家庭での省エネライフの推進 ・水と緑のネットワークづくり

・省エネ建築物の普及 ・家庭での省エネライフの推進 ・郊 外 の緑 地 ・農 地 の保全 ・水と緑のネットワークづくり

・水面の確保・保全 ・公園や緑地の整備 ・街路空間の緑化 ・風の道の形成 (建物形状・配置による風誘導)

地理的特性に応じて取り組むべき対策

緑の拠点

・大規模緑地の保全

注)斜線部は、横浜市内に該当の地域特性類型がほとんどないと思われるため対象外とした。また、対策手法のうち、

一部の対策内容が該当する場合は( )内に例示した。

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◆取組方針2 市民・事業者・行政の協働による積極的な施策の推進

○ ヒートアイランド現象は多様な要因が考えられ、その対策も多岐にわたることから、

市民、事業者、行政それぞれの役割を明確にした上で、現状や対策技術に関する情報

を共有し、協働による取組みを推進することが重要である。

○ その際、土地利用計画、道路計画、都市部における緑地保全など、都市スケールに近

い対策については、主に行政が主体となって市民・事業者の協力を得ながら取り組む。

また、建築物の屋上緑化など街区・建物スケールに近い対策については、主に市民、

事業者が主体となって実現を図る取組み体制を目指す。

◇ 施策の方向性

ヒートアイランド現象は多様な要因が考えられ、その対策も多岐にわたる。そのため、

市民、事業者、行政がそれぞれの役割を明確にした上で、現状や対策技術に関する情報

を共有し、協働して取り組む。

【① 市民に望まれる取組み】

対策の方向性:

建物スケールでは、敷地・建物緑化の推進、省エネ行動の実施や省

エネ建築の建設推進などが望まれる。また、宅地内の樹林などを保

全・管理していくことが望まれる。

街区スケール以上では、低燃費車の購入や、歩道・道路・校庭等へ

の打ち水などにおいて、市民の主体的な取組みが望まれる。

さらに、区などと協働して、公共施設の屋上等の敷地・建物緑化を

推進することが望まれる。

【② 事業者に期待される取組み】

対策の方向性:

建物スケールでは、敷地・建物緑化の促進や建物外装の反射性改良、

省エネ機器や CASBEE(建築物総合環境性能評価システム)の導

入などの対策のほか、市民と同様の省エネ行動や、環境マネジメン

トの推進などが期待される。

街区スケール以上では、工業団地等、複数の事業所が協働して、敷

地内の保水性・透水性舗装の活用、設備機器の排熱形態の転換、総

合的・効率的なエネルギー供給システムの選択、自動車・交通流の

対策推進などが重要な取組みとして期待される。

また、事業者は、業界団体等や横浜市が提供する各種の技術情報、

ビジネスチャンス、支援策を積極的に活用し、経費削減や事業拡大

に生かすことが期待される。

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表4-2 ヒートアイランド対策の取組み主体と適用スケール

適用 スケール

取組み主体

建物スケール 街区スケール 都市スケール

市 民

・敷地・建物緑化の推進 ・省エネ行動の実施 ・省エネ建築の建設の推進

など

・歩道・道路・校庭等への打ち水 ・公共施設の協働による緑化の推進

など

・低燃費車の購入 など

事業者

・保水性舗装等の整備 ・設備機器の排熱形態の転換 ・総合的・効率的なエネルギー供給システムの選択

など

・自動車・交通流の対策推進 ・低燃費車の購入

など

行政

・敷地・建物緑化の促進 ・建物外装の反射性改良 ・省エネ機器の導入 ・省エネ行動の実施 ・環境マネジメントの推進 ・CASBEE の導入

など

・ヒートアイランド対策に配慮した街区整備等の誘導 ・公共施設における市民と協働した取組みの推進

など

・ヒートアイランド対策を推進する仕組みづくり ・国や近接自治体との連携 ・モニタリング体制の整備

など

【③行政に期待される取組み】

対策の方向性:

横浜市は、市内最大の事業者の1つとして、民間の事業者に期待さ

れる取組みを率先して実施する。

また、横浜市は、都市スケールの対策を率先して進めることができ

る唯一の主体として、都市形成における「地表面の改良」への配慮、

大規模緑地の保全などを進める誘導策等を積極的に実施する。

街づくりにおいては、ヒートアイランド対策に配慮した街区整備や

開発計画を誘導する。また、地域の特性に応じた屋上緑化の推進な

ど、市民と協働した取組みを推進する。

市民や事業者が建物緑化や敷地内緑化、ヒートアイランド対策技術

の新規開発などに取組みやすくするための仕組みづくり(マニュア

ルづくりなど)を行う。

さらに、国や神奈川県、川崎市、東京都など近隣の自治体と連携を

図り、広域的な取組みを行う。

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◆取組方針3 総合的な施策の展開

○ ヒートアイランド対策の効果が明らかとなっている、緑地保全事業や雨水の地下浸透

対策などを推進するとともに、これらの既存の施策と新たに展開する施策を体系化

し、相互連携や複合的な実施を図り、より効果的・効率的に推進する。

○ また、広域的な視点を取り入れ、国や近隣の自治体とも適切に連携しながら対策に取

り組むと同時に、地球温暖化対策、都市政策、交通政策、エネルギー政策、福祉政策

などの関連分野との連携を図る。

◇ 施策の方向性

地球温暖化対策、都市政策、交通政策、エネルギー政策、福祉政策など、行政の施

策の中でも特に関連する分野の施策との連携により、ヒートアイランド現象の緩和を

図る。特に地球温暖化防止対策については、現象と影響の規模などが異なるものの、

省エネルギー対策の推進など共通する対策が多いことから、連携・協調を図りながら

対策を推進する。

また、広域的な視点を取り入れ、国や近隣の地方自治体と緊密に連携しながら、「自

動車・交通流対策の推進」や「ヒートアイランド現象の実態調査」などの取組みを推

進する。

ヒートアイランド対策との関連があると考えられる横浜市の既存計画等を、表4-

3に整理した。今後、これら諸計画の中で、ヒートアイランド対策を反映させていく

ことが望ましい。

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表4-3 横浜市の既存計画とヒートアイランド対策との関連

既存計画等 ヒートアイランド対策との関連 立案年 更新

予定年

横浜市環境管理計画・

環境配慮指針

横浜市が目指す都市環境像を示す中で、自然環境の保全及び

快適環境の創造、少負荷型都市の形成などに向けた市、市民、事

業者の連携による環境配慮への取組、事業別・地域別の配慮指針

等を整理しており、総合的にヒートアイランド対策を推進する。

1996

(2004

改訂)

2010

(目標)

地球温暖化対策地域

推進計画

地球温暖化防止のためのエネルギー消費量削減、新エネルギー

導入の観点から排熱抑制等の対策を総合的に進める。 2001

2010

(目標)

横浜市自動車公害防

止計画

自動車の発生源対策をはじめ,物流対策,道路対策,沿道対策

などを通し、沿道大気質の浄化とともに、ヒートアイランド対策を推

進する。

1998 2010

(目標)

水環境管理計画

治水機能も配慮しつつ河川や海域の水質のみではなく、流量、

水辺及び周辺環境を含んだ「水環境」の保全・創造の視点から水

辺空間の保全、開放水面の拡大を図る。

1994 2010

(目標)

都市マスタープラン

市全体の都市の将来像を示す中で、商業・業務機能や交通機

能の配置や、都市づくりにおける環境への配慮の方向性などを示

す。

2000 区別に

作成中

緑の基本計画

市全体の緑地の保全・創造の方針・手法と、緑地の配置を示

す。屋上緑化の推進、農地の保全なども本計画に位置づけられ

る。

1997 2010

(目標)

水環境マスタープラン

河川・水路・海域の将来像や、市民の水辺との関わりの将来像

を流域ごとに示す。雨水浸透施設や護岸の緑化や水路の開渠化

などの対策に関係する。

2010

(目標)

建築構造設計指針 建築物の建設にあっての環境配慮を義務付ける。業務・住宅に

おける省エネルギー対策などを推進する。 2004

2010

(目標)

建築物環境配慮指針

延床面積 5,000m2 以上の建築物について、事業者の自主的な環

境配慮を促すための届出を義務付ける。重点項目のひとつにヒート

アイランド対策に関する項目があげられている。

2004 2005

道路局取組方針 すず風舗装等の整備の推進。 2004

横浜市住宅基本計画 景観・環境に配慮した住宅地づくりを示す。 1995

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◆取組方針4 最新の調査研究と対策技術の活用

○ ヒートアイランド現象については未解明な部分が多く、開発中の対策技術も多くあ

る。施策を適切に立案、推進していくために、市内におけるヒートアイランド現象の

発生状況や影響について、より一層の情報収集とモニタリング及び調査研究を進め

る。

○ また、開発が進んでいる対策技術の効果等についても積極的に情報収集を行い、効果

的な施策が図れるよう最新の知見を活用する。

◇ 施策の方向性

ヒートアイランド現象については未解明な部分が多く、開発中の対策技術も多くある。

横浜市では、気温観測網の充実や街区スケールでの熱収支調査などにより、ヒートアイ

ランド現象の発生状況や影響調査について、より一層の調査研究やモニタリング、情報

収集を積極的に進める。また、壁面緑化や遮熱性舗装など、現在開発されている対策技

術については、その効果の実証を行っていく。

ヒートアイランド対策について、技術の成熟度や調査研究の進展状況を表4-4に整

理する。保水性・透水性舗装材、地域冷暖房システムなど、すでに実用段階にあり製品

化が進められている技術については積極的に導入し、ヒートアイランド現象の早期緩和

を目指す。

一方で、光触媒を用いた外装技術など、効果を実証することが必要と考えられる技術

については研究開発を進めるとともに、関連する民間事業者への開発支援等を行ってい

く。具体的な実施例や手法が未確立であり、今後の開発や調査研究が必要な技術につい

ては技術動向等に注意し、積極的な情報収集等を行っていく。

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表4-4 ヒートアイランド対策の技術的な動向

技術動向 対策の視点

実用段階にある技術 (実用段階)

実証実験が必要な技術 (実証段階)

情報が不足していると 思われる技術・データ

(情報不足)

排熱の抑制

・地域冷暖房システムの導入 ・下水処理水・廃棄物焼却等から発生する熱のカスケード利用 ・省エネルギー住宅の採用 ・ETC による渋滞緩和 など

・水冷システムによる排熱、顕熱の潜熱化

・省エネルギー行動の実施による効果

など

・都市排熱処理システムの構築

・都市キャノピー層外への排熱など

地表面の改良

・舗装材の保水性・透水性の改良 ・大規模緑地が持つ緩和効果・敷地内緑化・建物緑化

など

・光触媒等の効果 ・高温時の水撒きの効果 ・建物外装材の改良 ・水面の確保・創出による効果

など

風の道の確保

・風の道を活かした都市づくりの計画立案

・街路空間等の緑化による風の道の確保

など

- -

調査・情報公開

・啓発

・熱環境マップの作成 ・市内の温度・風環境調査の継続・拡大 ・市民の体感効果調査の実施

など

・対策による効果の測定 ・シミュレーションで予想される対策効果の実証

など

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◆取組方針5 都市景観や市民の安らぎに配慮した施策の展開と啓発の促進

○ ヒートアイランド対策を行うにあたっては、横浜らしい歴史的な街並みなどの都市景

観や、水辺や豊かな緑陰の確保など市民が生活に安らぎや潤いを感じられるよう配慮

する。

○ ヒートアイランド対策における熱管理の必要性について、市民・事業者の理解を深め、

横浜市全体の排熱抑制や風の道の確保を進めるために、市民・事業者が熱管理の必要

性について理解を深め、自発的行動と協調的な取組みが普及するよう、シンポジウム

の開催や環境教育・生涯教育プログラムにおける情報発信など多様な啓発活動を推進

する。

◇ 施策の方向性

ヒートアイランド対策の立案と施策の実施にあたっては、横浜市の持つ歴史的な街並

みなどの特徴ある都市景観や、水辺や豊かな緑陰の確保など、来街者、就業者、居住者

など多様な人々に安らぎや潤いを与える空間づくりに配慮した内容とする。例えば、河

川を活用した風の道の形成では、市民の憩いの場となる空間の整備とともに河川の適正

管理にも配慮する。

また、宅地や街路の緑化や、建物形状による市街地の粗度改善にあたっては、連続性

のある緑陰の形成、整った都市景観づくりにつながるように配慮する。街路の緑化や歩

道舗装材改善などによる高温化抑制の対策については、歩いて楽しいまちをつくる関連

施策と複合的に実施するとともに、街路樹の適正管理についても配慮する。

さらに、大規模緑地の保全、水面の確保・保全にあたっては、横浜市の在来の陸域生

態系、生物多様性の保全に配慮するとともに、自然と人間の共生する都市づくりにも配

慮する。

○ 施策を実施するにあたっての配慮事項

居住空間の環境を改善する

大気・騒音環境を改善する

歩いて楽しいまちを形成する

涼しく歩けるまちを形成する

自然とのふれあいを目指す

都市景観を改善する

潤いや憩いの空間を創出する

在来の生態系を保全する

自然と人間との共生を目指す

環境教育・生涯教育を促進する

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(6)ヒートアイランド現象の緩和に向けた対策メニュー

ヒートアイランド現象に緩和に向けた対策メニューと取組方針との関係について一覧表に整理した。

取組方針4 取組方針5

№ 対策内容 都心都心周辺

郊外工業地区

臨海 沿川台地丘陵

緑の拠点

市民 事業者 市

1 高効率・省エネルギー型機器の導入 ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ○ ○ ○ ○ ESCO事業の導入促進及び既存施設の導入促進 ◎

ESCO事業の導入促進及び既存施設の導入促進(再掲)

焼却工場での高効率発電

3 生産設備の省エネルギー化 ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ○ ○ ○ ○ ◎

ESCO事業の導入促進及び既存施設の導入促進(再掲)

省エネ診断の実施

5 発電所等における高効率発電 ○ ○ ○ ◎ ○ ○ ◎

学校のエコ改修のあり方検討 居住環境改善

建築物環境配慮制度(CASBEE)居住環境改善都市景観改善

7 自然通風・換気・日射遮蔽効果に考慮した建物の普及 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ◎ ◎ ○ ○ 建築物環境配慮制度(CASBEE)(再掲) ◎居住環境改善都市景観改善

8 蓄熱(システムの採用)による(熱排出)時間帯シフト ○ ○ ○ ○ ◎ ○ ○ ○ 建築物環境配慮制度(CASBEE)(再掲) ◎居住環境改善都市景観改善

9 高効率空調機器の導入 ○ ○ ○ ○ ◎ ○ ○ ○ ◎

10 水冷(システム採用)による排熱、顕熱の潜熱化 ○ ○ ○ ○ ◎ ○ ○ ○ ○

11 都市排熱処理システムの構築 ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ○ ○ ○ ×

12 都市キャノピー層外での排熱 ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ○ ○ × 大気・騒音環境改善

13 ヒートポンプ式給湯器の普及促進 ○ ○ ○ ○ ◎ ○ ○ ○ ○ 地中熱利用ヒートポンプシステム ◎ 大気・騒音環境改善

14 地域冷暖房システムの導入による排熱源のコントロール ○ ○ ○ ○ ◎ ○ ○ ○ ○ 地域冷暖房システムの導入 ◎ 大気・騒音環境改善

下水汚泥消化ガスによる発電

余熱利用設備の整備

太陽光発電など新エネルギーの導入

太陽光発電の率先導入

民間事業者所有の車両の低公害化

公用車の低公害化

低公害車の導入義務

エコカーワールド

アイドリングストップの普及促進

共同配送の推進大気・騒音環境改善歩いて楽しいまち形成

ETC の普及による交通環境の改善

スムーズ交差点プラン

都市内物流の効率化

市民ニーズに対応したバスサービスの推進バス走行環境の改善

エコライフチケット

みなとぶらりチケット

「地球に優しい市営交通」の積極的なPR

20 道路緑地の設置(NOXの抑制対策として) ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ○ ○ ○ ◎大気・騒音環境改善歩いて楽しいまち形成

温暖化推進アクションプランの推進自然と人間との共生生態系の保全

環境学習の推進

環境ボランティア育成事業

ECO+横浜普及事業自然と人間との共生生態系の保全

横浜型企業の温暖化対策率先行動事業自然と人間との共生生態系の保全

23 自動車利用の抑制 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ◎ ◎ ○ ○ ○ 共同配送の推進(再掲) ◎大気・騒音環境改善歩いて楽しいまち形成

バス運行に係る燃料費の削減大気・騒音環境改善歩いて楽しいまち形成

エコドライブの普及促進 大気・騒音環境改善

G30プランの推進

資源集団回収の促進

生ごみ資源化の推進

屋上・壁面緑化助成事業

市民向け「壁面緑化マニュアル」作成

建築物環境配慮制度(CASBEE)(再掲)涼しく歩けるまち形成都市景観改善

学校のエコ改修のあり方検討(再掲)自然とのふれあい改善歩いて楽しいまち形成

28 保水性建物外装材等の利用 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ◎ ○ ○ ○ ○ 涼しく歩けるまち形成

公共施設等の緑化計画の策定

公共施設の緑化

京浜の森づくり事業

身近な公園の整備、再整備・改良

30 庇やピロティ等の建物形状による日陰形成 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ◎ ◎

○○ ○ ○ ○○○

○○

○○

○公共交通機関の利用促進

低燃費車・低公害車の普及

太陽光発電の導入、太陽熱利用

建物外装における高反射性仕上げ・光触媒の活用

○○○

交通流対策・物流の効率化

○◎◎○ ○○○○○○

○○ ○

都市景観や市民の安らぎに配慮した施策の展開と啓発の促進

取組方針2

地球温暖化

大気汚染

水質・水環境

緑地

市民・事業者・行政の協働による積極的な施策の推進

(◎:中心となる主体、○:率先して取組むことが期

待される主体)建築 施策内容

取組方針3

2.地表面の改良

(4)エネルギー供給システムの選択

(8)地表面の高温化抑制

対策分類

(7)屋根面・壁面の高温化抑制

(2)省エネ建築物の普及

発生要因

対策手法

対策の視点

(3)設備機器の排熱形態の転換

(5)自動車・交通流対策の推進

(6)省エネ行動の実施

16

17

1.排熱の抑制

21

18

(1)省エネ設備の導入等

27

港湾

自然的特性

交通

○○○◎ ○

対策メニュー

6

4

15 未利用エネルギーの活用

2 機器の高効率運転

建物の断熱性・遮熱性の向上

エネルギー消費モニタリングの推進

取組方針1

景観

地域特性にあわせた適切な施策の推進

適用スケール

建物

街区

都市

総合的な施策の展開

  都市的特性

29 敷地内緑化(企業緑地、校庭や駐車場を含む)の推進

○○○○○

○ ○ ○ ○○

○ ○○○○

○○○

○○

◎◎

○ ○ ○ ○ ○ ◎

○○ ◎

○○ ○ ○ ○ ○ ○◎ ◎

○○○○○

○ ○

○○○○

○ ○ ○

○ ◎◎○○

◎ ○

○○

○ ○ ○

26 建物緑化(屋上・壁面緑化)の推進

○○

○ ○

事業所での環境マネジメントの推進

○ ○ ○ ○ ○

◎○○ ◎○○○○

○ ○○○○ ○ ○ ○ ○

自然と人間との共生

大気・騒音環境改善歩いて楽しいまち形成

大気・騒音環境改善

大気・騒音環境改善

自然とのふれあい改善

自然とのふれあい改善歩いて楽しいまち形成

大気・騒音環境改善

自然とのふれあい改善歩いて楽しいまち形成生態系保全

25 廃棄物焼却工場等からの排熱の抑制

22

エコドライブの推進24

家庭での省エネライフの推進 ○ ◎○○○○○

○○

19

◎○

○○ ◎

○ ◎ ◎

◎◎

○○ ○ ○ ○

○ ○

○ ◎ ◎ ○

○○

○◎

最新の調査研究と対策技術の活用

◎○ ○ ○ ○

◎実用段階 ○実証段階×情報不足

-36-

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取組方針4 取組方針5

№ 対策内容 都心都心周辺

郊外工業地区

臨海 沿川台地丘陵

緑の拠点

市民 事業者 市

都市景観や市民の安らぎに配慮した施策の展開と啓発の促進

取組方針2

地球温暖化

大気汚染

水質・水環境

緑地

市民・事業者・行政の協働による積極的な施策の推進

(◎:中心となる主体、○:率先して取組むことが期

待される主体)建築 施策内容

取組方針3

対策分類

対策手法

対策の視点

港湾

自然的特性

交通

対策メニュー

取組方針1

景観

地域特性にあわせた適切な施策の推進

適用スケール

建物

街区

都市

総合的な施策の展開

  都市的特性

最新の調査研究と対策技術の活用

◎実用段階 ○実証段階×情報不足

大規模な公園の整備

市民の森制度

特別緑地保全地区等の指定

河川環境整備事業自然とのふれあい改善涼しく歩けるまち形成生態系保全

せせらぎ緑道の整備自然と人間との共生潤いをあたえる空間づくり

雨水浸透ますの設置 涼しく歩けるまち形成

33 保水性・透水性舗装の活用 ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ◎ ○ ○ ○ すす風舗装の推進 ◎ 涼しく歩けるまち形成

34 遮熱性舗装の活用 ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ◎ ○ ○ ◎ 涼しく歩けるまち形成

(9)冷却作用の利活用

35 散水・打ち水の励行 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ◎ ◎ ○ ○ ハマロードサポーターによる打ち水 ○ 涼しく歩けるまち形成

(10)市街地の粗度改善

36 建物形状・配置による効果的な風誘導 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ◎ ○ ○ ○ 建築物環境配慮制度(CASBEE)(再掲) ○涼しく歩けるまち形成都市景観改善

37 水面の確保・創出 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ○ ○ ○ ○ せせらぎ緑道の整備(再掲) ○自然と人間との共生潤いをあたえる空間づくり

38 河川護岸の緑化 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ○ ○ ○ 河川環境整備事業(再掲) ○自然とのふれあい改善涼しく歩けるまち形成生態系保全

39 街路空間の緑化 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 街路樹の整備・維持管理 ○自然とのふれあい改善涼しく歩けるまち形成生態系保全

京浜の森づくり事業(再掲)都市景観改善自然とのふれあい改善

大規模な公園の整備(再掲)

市民の森制度(再掲)

特別緑地保全地区の指定(再掲)

緑のオープンスペースの確保(再掲)

水と緑の回廊事業(再掲)

市民の森制度(再掲)

緑のオープンスペースの確保(再掲)

恵みの里事業

市民の森制度(再掲)自然と人間との共生自然とのふれあい改善

水と緑の回廊事業(再掲)自然と人間との共生自然とのふれあい改善

43 市内の温度・風環境調査の継続・拡大 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ◎ 気温分布測定調査 ◎

44 熱源マップ(仮称)の作成・公開 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ◎ 熱環境に影響する物理量の調査 ○

45 導入対策による効果の測定 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ◎ 屋上緑化・壁面緑化の効果測定 ○

46 市民の体感効果調査の実施 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ◎ 市民アンケートの実施 ◎

47 横浜市の地域特性に即したシミュレーション手法の開発 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ◎ シミュレーションの実施 ○

ヒートアイランド対策取組方針策定

ヒートアイランド対策の研究

横浜・地域エネルギー政策基本構想の検討

省エネ運転に係る技術的支援を実施

49 シンポジウム等の開催 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ◎ ヒートアイランド対策シンポジウムの開催 -

環境教育アクションプランの策定

環境ボランティア育成事業

こども緑の体験学習、こども植物教室事業

ふれあい環境学習塾

こどもエコフォーラム

環境学習の普及・啓発に向けた職員研修の実施

区環境行動プランの策定

水辺愛護会活動の推進

環境まちづくり協働事業

環境活動フォーラムの開催

ヒートアイランド対策に関するホームページ

環境情報提供サービス

○○○ ○

×

(13)ヒートアイランドの実態調査

3.風の道の確保

4.調査・情報公開・啓発

48

(14)対策手法・採用技術

32

推進支援

(16)ヒートアイランド情報の発信

(15)新規技術の開発

(12)郊外風による冷気の誘導

(11)風の道の形成

水面の確保・創出

51 Web等におけるヒートアイランド情報の発信

郊外の緑地・農地の整備(郊外風の活用)

緑の拠点づくり・ネットワーク化42

41

横浜市に適した対策技術開発

学校教育・生涯教育プログラムにおける情報発信50

公園・緑地の整備40

◎ ○

○ ○

○○◎

○ ◎○○○○○

○○○○

○ ○

○ ○○○

○ ○

○ ○ ○ ○ ◎ ○ ○

○ ○○○○○○○

○○○○○○○

○○○○○○○ ◎

◎○○

自然と人間との共生生態系の保全

環境教育・生涯教育

自然とのふれあい改善

自然と人間との共生自然とのふれあい改善

自然と人間との共生自然とのふれあい改善

◎◎

○○

○○ ○ ◎自然とのふれあい改善歩いて楽しいまち形成

(8)地表面の高温化抑制

○ ○ ○ ○31 大規模緑地の保全

-37-

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- 38 -

第5章 重点推進地域におけるヒートアイランド対策

(1) 重点推進地域の考え方

ヒートアイランド対策には市域全体で取り組むべきものもあるが、より効果的・効率的に

進めていくには、「どの地域」に「どのような対策」を行うかが重要となる。地域ごとにヒー

トアイランド現象の要因が異なるため、それによって効果の高い対策が求められてくる。

そこで、後述するシミュレーション結果から、横浜市域を人工排熱が多い地域など、ある一

定の特徴を指標としていくつかの地域に分類した(以下「類型化」という。)。その類型化の結

果および気温観測の結果などから、今後、ヒートアイランド対策を重点的に推進していく地域

(以下「重点推進地域」という。)を抽出・選定する。

(2) シミュレーションおよび類型化

類型化を行うため、独立行政法人 建築研究所が開発した「都市気候予測モデル」(UCSS

(Urban Climate Simulation System)モデル)を使用し、典型的な夏日である平成16年

8月12日の24時間シミュレーションを行い、市域を500mメッシュに分割した上で、ヒ

ートアイランド現象の発生要因となる人工排熱や土地利用、地表面被覆に関するデータから、

温度分布の変化を算出した。

そして、シミュレーション結果による典型的な夏日の平均気温、人工排熱として事業所・建

物・自動車排熱の総量(顕熱)、土地利用・地表面被覆に関して天空率および裸地緑地面積比

率を代表データとして採用し、作業フロー(図5-1)に従い、市域を8つの地域に分類した。

(3) 類型化にあたっての代表データの分布図

類型化にあたって採用したデータは、ヒートアイランド現象の実態を代表するデータとして

は、①シミュレーションより得られた平均気温、②対策に係わるデータとして人工排熱、③自

然の残存度に関するデータとして裸地緑地面積比率、④都市化及び開発に関するデータとして

天空率(天空率が小さいほど建物密集度は大きく都市化が進んでいる)がある。これらの代表

データの分布図を図5-2に示す。なお、人工排熱については図3-8をもとに作成した。図5

-2で示した各図より、各地域の代表データの値が推測できる。

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図5-1 類型化のフロー図

注)上図に示す類型化フロー中の数値はそれぞれの累積度数分布より以下のように設定した。

平均気温は全メッシュ数の内、面積割合で高位 80%(27.0℃)と低位 20%(26.4℃)で分けた。

天空率は 20%(0.55)で分け、裸地緑地面積率は 80%(0.49)で分けた。人工排熱は分布が

著しく偏っているため 95%(40W/m2)で分けた。

- 39 -

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(℃) (W/m2)

①気温分布 ②人工排熱

(無次元)(無次元)

③裸地緑地面積率 ④天空率

図5-2 代表データの分布図

- 40 -

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(4) 重点推進地域の設定

重点推進地域の抽出にあたっては、横浜市環境科学研究所による観測結果から判明した平均

気温や熱帯夜日数、真夏日日数の分布等を踏まえ、平均気温が高い地域あるいは熱帯夜日数が

多い地域を抽出するとともに、シミュレーションの結果、ヒートアイランド現象が生じやすい

と考えられる地域を抽出した。

抽出された地域を、「Ⅰ類型:業務集積地域」では横浜駅周辺地区、関内地区および新横浜

駅周辺地区の3地区、「Ⅱ類型:建物密集地域」では都心部周辺地区および鶴見駅周辺地区、

「Ⅲ類型:複合要因地域」では港北区北部地区、「Ⅳ類型:高排熱地域」では鶴見区南部地区

および磯子区・金沢区臨海地区、「Ⅴ類型:緑地地域」では大規模緑地が残る郊外の7地区の

計5類型15地区を重点推進地域とし(図5-3)、熱環境マップにこれらを示す(図5-4)。

Ⅰ類型:業務集積地域 横浜駅周辺地区

Ⅲ類型:複合要因地域

Ⅱ類型:建物密集地域

Ⅳ類型:高排熱地域

都心部周辺地区

港北区北部地区

舞岡・野庭地区

大池・今井・名瀬地区

三保・新治地区

鶴見区南部地区

鶴見駅周辺地区

磯子区・金沢区臨海地区

こどもの国周辺地区

川井・矢指地区

小柴・富岡地区

円海山周辺地区

Ⅴ類型:緑地地域

新横浜駅周辺地区

関内地区

図5-3 類型化による重点推進地域の選定

- 41 -

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- 42 -

こどもの国周辺地区

(緑地地域)

三保・新治地区

(緑地地域)

川井・矢指地区

(緑地地域)

大池・今井・名瀬地区

(緑地地域) 舞岡・野庭地区

(緑地地域)

円海山周辺地区

(緑地地域)小柴・富岡地区

(緑地地域)

新横浜駅周辺地区

(業務集積地域) 港北区北部地区

(複合要因地域)

鶴見駅周辺地区

(建物密集地域)

関内地区

(業務集積地域)

鶴見区南部地区

(高排熱地域)

横浜駅周辺地区

(業務集積地域)

都心部周辺地区

(建物密集地域)

磯子区・金沢区臨海地区

(高排熱地域)

図5-4 重点推進地域の位置(熱環境マップ)

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(5) 重点推進地域における目標

ア 業務集積地域等における目標

第4章(2)で述べたように、市域全体の目標との整合性を保つため、各地区においても「熱

帯夜日数」を目標の指標とする。また、目標時期は、全市域の目標と同様の平成 37 年(2025

年)頃とする。

次に、熱帯夜日数の削減割合として、「ヒートアイランド対策効果計算ツール 簡易計算シ

ステム」(環境省報告書※1)を用いて、業務集積地域、建物密集地域、複合要因地域および

高排熱地域に個別対策を一定量実施したと仮定して算出した値と、横浜気象台の観測結果か

ら算出した最低気温と熱帯夜日数の相関をもとに、熱帯夜日数の減少率を求めたところ、各

地区で概ね1割程度の削減が見込まれることから、共通の目標として「熱帯夜日数を現状か

ら 1 割程度の減少」とする。

(重点推進地域における目標設定①)

● 業務集積地域、建物密集地域、複合要因地域および高排熱地域において、平成

37 年(2025 年)頃までに、熱帯夜日数を現状から 1 割程度減少させる。

備考)横浜気象台の観測結果から、最低気温を 0.1℃減少させることは熱帯夜日数を 1 日減少させるこ

ととなり、熱帯夜日数を 3 日程度減少させるには、最低気温を 0.3℃程度減少させることが必要と

なる。

世界の年平均地上気温は、長期的には 100 年あたり 0.7℃の割合で上昇している※2。これは地

球温暖化の影響によるものと考えられる。

地球温暖化の結果、「100 年で 0.7℃の上昇」ということは、「20 年で 0.1℃の上昇」というこ

ととなり、今後も地球温暖化現象が続く場合、ヒートアイランド対策による効果が若干減少されて

しまう可能性がある。

イ 緑地地域における目標

郊外部は都心部に比べて相対的に気温が低いこともあり、業務集積地域等と同様に熱帯夜日

数を指標とすることは困難である。郊外部は樹林地などの大規模緑地が点在しており、クール

スポットとして活用するという観点から、これらの維持・保全に主眼をおいた目標を設定する。

※1 平成 14 年度 ヒートアイランド現象による環境影響に関する調査検討業務報告書(環境省 平成 15 年 3 月)

※2 気象庁記者発表資料(平成 16 年 12 月 16 日)

- 43 -

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(重点推進地域における目標設定②)

● 既存の大規模な樹林地などの緑地をクールスポットとして維持・保全し、周

辺地域も含めたヒートアイランド現象の緩和に役立てる。

(6) 重点推進地域の目標達成に向けた具体的施策

各重点推進地域で有効と考えられるヒートアイランド対策について、計算結果や他の事例な

どを参考に定性的に整理する(表5-1)。

建物階数が高くかつ裸地面積比率の低い「業務集積地域」においては、省エネ設備の導入や

自動車交通流対策、緑化や保水性舗装等の整備などが有効な対策である。

一方、建物階数が低くかつ裸地面積比率が低い「複合要因地域」及び「建物密集地域」にお

いて、相対的に緑化や保水性舗装等の整備が有効である。また、高排熱地域では、省エネ設備

の導入や自動車交通流対策などの人工排熱の抑制が有効である。緑地地域においては、大規模

緑地の保全が有効と言える。

なお、重点推進地域における取り組みは、地域特性を踏まえた対策を基本としているが、他

の地域との相互影響も考慮しながら、具体的施策を進める必要がある。

表5-1 重点推進地域に有効と考えられるヒートアイランド対策の事例

人工排熱の抑制 地表面の改良

類 型 省エネ設備

等の導入

自動車交

通流対策 屋上緑化 壁面緑化 敷地緑化

保水性

舗装等

大規模緑地

の保全

業務集積地域 ◎ ◎ ◎ ◎ ○ ◎ △

建物密集地域 ◎ ○ ◎ ◎ ○ ◎ △

複合要因地域 ◎ ○ ○ ◎ ◎ ◎ △

高排熱地域 ◎ ◎ ○ ○ ◎ ○ △

緑地地域 △ △ △ △ △ △ ◎

◎:対策効果が大きく見込めるメニュー、○:対策効果が見込めるメニュー、△:一定の対策効果が見込めるメニュー

緑化については、建物の密集状況や施工の可能性等を勘案して整理した。

業務集積地域:大規模な商業施設や業務施設が集積しているため人工排熱が多く、また地表面の人工化も著しい

地域である。あらゆる対策を総合的に推進していく必要がある。

- 44 -

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- 45 -

建物密集地域:主に都心部の周辺や鶴見駅周辺に拡がっており、商業施設や住宅の混在地域である。家庭での

省エネ設備の導入や屋上・壁面緑化、保水性舗装等などの対策を進めていく必要がある。

複合要因地域:港北区北部地区などは、市内でも最も高温となりやすい地域である。この地域は主に住宅地域で

あり、人工排熱源が比較的少ない。家庭での省エネ設備の導入や建物緑化、敷地緑化、保水性舗

装等などの施策を進めていく必要がある。

高排熱地域:鶴見区南部や磯子区・金沢区の臨海工業地帯に近接しており、省エネ設備の導入や自動車交通流

対策を進めていく必要がある。また、比較的敷地面積の広い事業所も多いことから、敷地緑化も有効な

対策として進めていく必要がある。

緑地地域:市域西部にある樹林地や緑地などの緑の七大拠点は、「クールスポット」としての活用が期待されるため、

維持・保全していく必要がある。

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- 46 -

第6章 今後の推進に向けて

(1) モデル地域及び重点推進地域での対策の推進

今後実施する具体的なヒートアイランド対策について、「街区・建物スケール」に相当する

個別の地域等によって、対策のメニューや内容が異なる。また、横浜市全域において、多様

な対策を並行して実施することは現実的ではない。従って、ヒートアイランド現象が顕著に

見られ、かつ今後積極的に対策に取り組むために選定した「重点推進地域」とともに、「街区

スケール」での実現可能性、実効性等を勘案した「モデル地域」を選定し、当該地域におい

て先行的かつ実験的に対策を実施するものとする。

なお、「モデル地域」における取組みに関して、積極的に情報提供を行うことにより、市

民や事業者の関心を高めるよう配慮する。

(2) 市民・事業者と協働した取組みの推進

ヒートアイランド対策はその実施主体が行政だけにとどまらず、市民や事業者も実施主体

となる。加えて、実施主体が市民・事業者・行政にまたがることが想定される。従って、今

後の対策の推進にあたっては、市民・事業者・行政が相互の役割分担を明確にし、実施主体

間の協働体制を確立することが肝要である。

また、協働体制に関する他の事例を参考にするとともに、特に「モデル地域」等における

個別の対策において協働体制を確立し、対策を的確かつ強力に推進することが望まれる。な

お、取組みに当っては、地球温暖化対策における全市的な推進体制を有効に活用することな

ども考えられる。

(3) ライフスタイルの改善

市民のライフスタイルや事業者の事業スタイルの変遷は、市民の生活様式や事業活動様式

の変化であり、「人工排熱の増加」の根本的な問題となっている。言い換えれば、これらのラ

イフスタイルや事業スタイルの改善がヒートアイランド現象の発生の防止に大きく貢献する

と言える。ただし、市民の生活様式や事業者の事業活動様式は、時間を積み重ねてつくりあ

げられたものであり、一朝一夕に変更できるものではない。

今後の対策の推進にあたっては、重点推進地域及びモデル地域において、いわば早期に取

り組む対策だけでなく、ライフスタイルや事業スタイルの改善といった長期的な視点の対策

についても継続的に取り組むものとする。

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(4) 熱帯夜を減らすようなまちづくり

「安らぎと憩い、潤いのある、安全・安心な 都市よこはまの環境を、市民や事業者、行

政の連携・協働により創造する」ことを基本目標とした以下のような施策と連携することに

より、熱帯夜を減らすようなまちづくりを進めていくことが重要である。

水・緑の総合的な取組の推進

緑の総量の維持

身近な水・緑空間の充実

市民とともに水・緑をつくる

水辺に親しめる場や賑わいと交流の場づくり

水際線の整備と水域の利用活性化・環境にやさしいみなとづくり

持続可能な都市農業の効率

市民との多様な連携

魅力的な農的環境の創出

総合的な浸水対策の推進

地震対策の推進

日常生活における安全確保

誰もが安心して利用しやすいみちづくりの推進

都市整備の着実な推進

都市計画法・建築基準法などを一体的に運用し、土地利用の規制・誘導を戦略的に展開

安全なまちづくりを推進

良好な居住環境の形成を促進

長寿命化・省エネ化などにより人にやさしく豊かな公共建築物づくり

都市生活型環境対策の推進

有害化学物質対策等の推進

低公害車の普及促進

環境行動を支える人材の育成

環境活動との連携・支援

環境情報の収集と発信

ごみの減量・リサイクルの推進

協働による地域まちづくりの推進

地球温暖化対策の推進

新エネルギーの導入活用推進

環境マネジメントの取組推進

循環型社会に向けた取組推進

ETCの普及による交通環境の改善

道路の渋滞緩和による環境改善

3-1環境活動の推進

3-2地球温暖化対策等の推進

3活発な地域の

環境活動を支援する

2-2環境保全の強化

1豊かな

水・緑環境をまもり・つくり・

そだてる

2安全・安心な生活環境を確保する

1-2農のあるまちづくり

2-1安全な都市づくり

1-1身近な水・緑の創造

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(5) 効果の検証

横浜市では、方針の策定にあたって、市域内のヒートアイランド現象の実態把握やシミュ

レーションなどによる評価方法の検証について実施しているところであるが、今後も、ヒー

トアイランド対策を効果的・効率的に推進していくためには、引き続き、ヒートアイランド

現象の実態把握や対策実施後の効果について検証・評価することとする。特に、先行的に対

策を実施する重点推進地域及びモデル地域においては、対策実施後の効果を検証・評価する

ことにより、これらの地域に引き続いて実施される他の地域での対策に反映させるものとす

る。

また、観測結果や検証結果については速やかに公表することとし、方針に掲げた目標の達

成状況の評価等に用いることとする。さらに、市民や事業者に対しては、今後もアンケート

調査を実施するなどして意識の把握に努めるとともに、引き続き啓発を推進していくことと

する。

(6) 今後の課題

ヒートアイランド現象の緩和は全市をあげて取り組むべき課題であり、目標の達成のため、

今後は関係部局において、熱帯夜を減らすようなまちづくりを進めていくという視点から、

適切なヒートアイランド対策を実施していくこととなる。

平成18年度には、庁内関係部局の行動計画をまとめ、「ヒートアイランド対策行動計画」

(アクションプラン)を策定し、モデル地域や重点推進地域などを中心に、それぞれの地域

に対応した対策を、効果的に実施していくことが期待される。

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施策の具体的事例

ア 横浜市建築物環境配慮制度

対策の視点:排熱の抑制

対策手法:省エネ建築物の普及

建築物は、その建設から長期にわたる供用期間から解体・撤去にいたるまで、環境に対し

て様々な負荷を与える。建築物環境配慮制度は、建築物が環境に与える負荷の軽減などを目

的に、建築物の建築に際して、建築主の総合的な環境配慮の取組を促す制度である。

① 制度の概要

・ 建築主は、建築物を建築する祭には、市長の定める建築物環境配慮指針に基づき、環境

への負荷の低減に努めなければならない。

・ 床面積(増築または改築の場合にあっては、当該増築または改築に係る部分の床面積)の

合計が5,000m 2 を超える建築物を建築する建築主は、環境配慮の取組計画等を記載し

た建築物配慮計画を作成し、工事着手の予定の日の21日前までに市長に届け出ること

が義務付けられている。

・ 市長は届けられた建築物環境配慮計画の概要を、横浜市のホームページで公表する。

・ 建築物総合環境性能評価システム(CASBEE)のツール群のうち、「CASBEE-新築(簡

易版)」を基本として、横浜市の制度用に「CASBEE 横浜」としてシステムを編集し

た。この枠組みで環境配慮の取組を自己評価する。

② 制度の目的

建築物は、建設から長期にわたる供用期間、解体撤去にいたるまで、環境への様々な負

荷を与えている。建築物環境配慮制度は、建築物が環境に与える負荷の軽減などを目的に、

建築物の建築に際して、建築主の総合的な環境配慮の取組みを促す制度である。

③ 建築物環境配慮指針に掲げる環境配慮項目

・ エネルギー使用合理化(建物の熱負荷抑制、自然エネルギーの利用、設備システムの効

率化等)

・ 資源の適正な利用(水資源保護、低環境負荷材の使用等)

・ 敷地外環境の保全(大気汚染防止、温熱環境悪化の改善等)

・ 室内環境の向上(室温制御、空気室環境の向上)

・ サービス性能の向上(耐震性の向上、更新性の向上等)

・ 室外環境(敷地内)保全・向上への配慮(生物環境の保全と創出、まちなみ及び景観へ

の配慮等)

④ 環境配慮の重点項目(横浜市の重点項目)

多数の環境配慮項目のうち、横浜市の特性を踏まえて、4つの重点項目を設けている。

・ 「地球温暖化」に関する項目

・ 「ヒートアイランド」に関する項目

・ 「長寿命化対策」に関する項目

・ 「まちなみ・景観」に関する項目

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イ 地域冷暖房システムの導入 対策の視点:排熱の抑制

対策手法:エネルギー供給システムの選択

地域冷暖房システムとは、一定地域内の建物群に熱供給設備(地域冷暖房プラント)

から、冷水・温水・蒸気などの熱媒を、地域導管を通して供給し、冷房・暖房・給湯な

どを行うシステムである。みなとみらい21地区においては、みなとみらい21熱供給

(株)により平成元年から熱供給が開始され、現在23施設に熱供給されている。

(1)地域冷暖房システムを構成する設備

● 大規模潜熱蓄熱システム:STL (Storage of Latent Heat)方式

省スペースで大容量、高効率な蓄熱を実現する。

蓄熱能力は、30,000冷凍t(3,000冷凍t×10時間)を確保する。

放熱時は5,000冷凍トン×6時間の能力を発揮できるよう設計されている。

● コージェネレーションシステム

環境性、省エネルギー性、経済性に優れたエネルギーシステムである。

ガスタービンにより発電機を稼動させ電力を供給するとともに、従来は排出

されていた排熱を回収し熱供給システムへ有効活用。

● 集中監視システム

複数プラントを集中管理し、効率的で安定した熱製造を行っている。

● 大型吸収冷凍機

単体効率、省スペース性、保守管理などに優れ、ノンフロンの吸収冷凍機を

併用している最新鋭システムである。

(2)共同溝/地域導管ルート

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ウ 屋上緑化推進事業 対策の視点:地表面の改良

対策手法:屋根面・壁面の高温化抑制

(1) 港北区役所の屋上緑化

港北区役所では、区民自らが緑の創出・活用・保全の推進を図る「港北グリーンプロ

グラム」を策定している。その先行的モデル事業として、平成15年度に屋上緑化を区

役所屋上(550m 2 )で実施した。この事業は、計画づくりから参加し屋上緑化の維持

管理を行う区民ボランティアと、港北区役所、緑政局、環境保全局(緑政局と環境保全

局は現在、環境創造局)の協働事業である。屋上には全体で約300本の樹木と草花が植

裁され、来庁者に親しまれる憩いの場として、またヒートアイランド現象の意識啓発も

踏まえて一般公開されている。一階ロビーには、屋上緑化による温度低減効果が見られ

るよう、温度数値がリアルタイムでパネル表示されている。また、緑政局では、屋上緑

化等の設置に対する助成制度を実施するとともに、「緑の環境をつくり育てる条例」を

一部改正し、工場以外の一般建築物も緑化協議の対象としており、緑化にあたっては屋

上緑化や壁面緑化など多様な緑化手法の活用を推進している。

- 51 -

(2) 屋上緑化助成事業

横浜市では、都市環境の向上を目的として、都心における建築物の屋上及び壁面緑化

を推進するため、緑化等の設置にかかる経費の一部を助成している。

対 象 建 築 物 市 内 の 建 築 物( 建 築 予 定 及 び 建 築 中 の も の を 含 む )で 、建 築 基 準 法 等 の 法 令 に 適 合 す る

も の 。

対 象 用 途 地 域 建 築 敷 地 の 用 途 地 域 が 商 業 地 域 ま た は 近 隣 商 業 地 域 で あ る も の 。

対 象 緑 化 建 築 物 の 屋 上 の 緑 化 、 ま た は 壁 面 の 緑 化 。

対 象 面 積 建 築 物 の 屋 上 の 緑 化 と 壁 面 の 緑 化 の 合 計 が 1 0 ㎡ 以 上 。

対 象 植 栽 屋 上 の 緑 化:原 則 と し て 樹 木 。た だ し 、緑 化 面 積 の 3 / 5 ま で は 草 類 の 使 用 を 可 と す る 。

壁 面 の 緑 化 : ツ ル 植 物 。 た だ し 、 草 類 は 多 年 性 の み 。

対 象 植 物 及 び 植 栽

密 度 別 に 定 め る 緑 化 等 の 基 準 に 適 合 す る も の 。

対 象 工 事 期 間 平 成 17 年 度 内 に 緑 化 工 事 の 完 了 が 可 能 な も の 。

普 及 啓 発 へ の 協 力 屋 上 等 緑 化 の 普 及 啓 発 へ 協 力 が 可 能 な も の 。

助 成 金 額

対 象 経 費 の 額 の 1 / 2 。

た だ し 、緑 化 工 事 費 を 3 万 円 / ㎡ と し て 算 出 し た 額 、ま た は 1 件 あ た り 5 0 万 円 の い ず

れ か 少 な い 額 を 上 限 と す る 。

募 集 件 数 約 1 0 件 ( 先 着 順 に 予 算 の 範 囲 内 で 募 集 す る )

( 上 表 は 平 成 17 年 度 の 主 な 助 成 条 件 ・ 内 容 )

この他、(財)横浜市緑の協会では、地域における緑化事業を推進するため、助成事業

や普及啓発事業、調査研究事業等を実施している。

区民の憩いの場に生まれ変わった港北区役所屋上(パノラマ全景)

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エ 市民の森制度

対策の視点:地表面の改良

対策手法:地表面の高温化抑制

「市民の森」は、緑を守り育てるとともに、山林所有者の方々のご協力により、市民

の憩いの場として利用させていただく制度である。

また、山林所有者のご好意により、市が土地をお借りし森の中を散策できるように簡

単な整備をしたのち、一般に公開をしているものである。

平成 17 年5月までに市内に 26 カ所、約 415.8haを指定している。

No. 名 称 No. 名 称

1 飯 島 市 民 の 森 14 豊 顕 寺 市 民 の 森

2 上 郷 市 民 の 森 15 ま さ か り が 淵 市 民 の 森

3 下 永 谷 市 民 の 森 16 ウ イ ト リ ッ ヒ の 森

4 三 保 市 民 の 森 17 矢 指 市 民 の 森

5 釜 利 谷 市 民 の 森 18 綱 島 市 民 の 森

6 峯 市 民 の 森 19 旭 区 矢 指 町

7 獅 子 ヶ 谷 市 民 の 森 20 南 本 宿 市 民 の 森

8 瀬 谷 市 民 の 森 21 荒 井 沢 市 民 の 森

9 氷 取 沢 市 民 の 森 22 新 治 市 民 の 森

10 小 机 城 址 市 民 の 森 23 寺 家 ふ る さ と の 森

11 瀬 上 市 民 の 森 24 舞 岡 ふ る さ と の 森

12 称 名 寺 市 民 の 森 25 関 ヶ 谷 市 民 の 森

13 熊 野 神 社 市 民 の 森 26 鴨 居 原 市 民 の 森

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三 保 市 民 の 森

矢 指 市 民 の 森

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オ すず風舗装の整備 対策の視点: 地表面の改良

対策手法: 地表面の高温化抑制

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気温の経時変化(平成15年8月24日 ベイスターズ通り)

気温の経時変化(平成15年8月24日 ベイスターズ通り)

横浜市内の道路の舗装面積は、市域全面積の

約 11%を占めており、日差しの強い夏の昼間

には、路面温度は 60℃に達することもある。

道路局では、ヒートアイランド抑制策の一つと

して、平成 15 年度より保水性舗装などを中心

とした「すず風舗装整備事業」を、舗装補修等

の箇所に合わせて実施している。保水性舗装は

雨の日に降った水分などを舗装内に保水し、その水

が蒸発する際の気化熱により路面温度の上昇を抑制

する効果がある。

平成 15 年度は中区の本町線、関内中通りなど6

箇所で実施し、通常の舗装に比べ7℃~16℃表面温

度 が低 減して いた という 効果 を得て いる 。平成 16

年度は、打ち水が期待できる商店街などを対象に7

箇 所 で 実 施 し た ( 整 備 予 定 面 積 2 万 m 2 /年 )。 平 成

17 年度は 10 箇所で整備する予定である。

【 平 成 1 5 年 度 の 整 備 実 績 】 N 整 備 実 施 箇 所 種 別 区 名 実 施 延 長 整 備 面 積 1 ベ イ ス タ ー ズ 通 り ( 全 線 ) 商 店 街 中 区 4 2 0 m 2 5 3 6

㎡2 山 下 長 津 田 線 ( 関 内 駅 南 側 ) 4 車 道 路 中 区 3 4 3 m 6 7 6 2㎡3 横 浜 駅 根 岸 線 ほ か ( 長 者 町 一 丁 目 交 差 点 付

)4 車 道 路 中 区 4 5 5 m 5 7 1 3

㎡4 横 浜 駅 根 岸 線 ( 西 平 沼 橋 交 差 点 付 近 ) 4 車 道 路 西 区 5 1 5 m 2 8 0 5㎡5 保 土 ヶ 谷 宮 元 線 ( 鶴 巻 橋 付 近 ) 4 車 道 路 南 区 1 9 7 m 3 0 7 9㎡6 本 町 線 ( 日 本 大 通 付 近 ) 4 車 道 路 中 区 2 1 8 m 2 3 4 9㎡

【 平 成 1 6 年 度 の 整 備 実 績 】 N 整 備 実 施 箇 所 種 別 区 名 実 施 延 長 1 藤 棚 久 保 町 通 り 商 店 街 西 区 8 0 0 m 2 弁 天 通 り 商 店 街 中 区 2 1 0 m 3 三 渓 園 通 り 生 活 道 路 中 区 6 0 0 m 4 本 町 線 そ の 2 ( 日 本 大 通 り 付 近 ) 4 車 道 路 中 区 2 4 0 m 5 保 土 ヶ 谷 宮 元 線 そ の 2 ( 鶴 巻 橋 付 近 ) 4 車 道 路 南 区 2 5 0 m 6 関 内 桜 通 り 商 店 街 中 区 4 0 0 m 7 大 倉 山 レ モ ン ロ ー ド 商 店 街 港 北 区 2 7 0 m

【 平 成 1 7 年 度 の 整 備 予 定 】

No 整 備 予 定 箇 所 種 別 区 名 予 定 延 長 1 鶴 見 商 店 街 商 店 街 鶴 見 区 3 8 0 m 2 六 角 橋 商 店 街 商 店 街 神 奈 川 区 3 7 0 m 3 紅 梅 通 り 商 店 街 西 区 4 6 0 m 4 弁 天 通 り 商 店 街 中 区 2 0 0 m 5 関 内 桜 通 り 商 店 街 中 区 2 0 0 m 6 笹 山 商 店 会 商 店 街 保 土 ヶ 谷 3 6 0 m 7 す ず ら ん 通 り 商 店 街 金 沢 区 1 6 0 m 8 綱 島 駅 西 側 付 近 生 活 道 路 港 北 区 2 7 0 m 9 中 山 商 店 街 商 店 街 緑 区 2 2 0 m

10 あ ざ み 野 駅 西 側 付 近 商 店 街 青 葉 区 4 5 0 m

すず風舗装のイメージ

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カ 打ち水大作戦の実施

対策の視点:地表面の改良

対策手法:冷却作用の利活用

「夏は夏らしく過ごそう!2005」の取り組みの一環として、夏を涼しく過ごす日本人の知恵

でもある「打ち水」の実施を広く呼びかけると共に、取り組みの支援等を行なった。

・取組期間は、平成 17 年 8 月 10 日から 8 月 31 日までの間

で実施団体等の事情やイベント等に合わせて、自由に設定す

ることとした(毎日でも、平日や休日だけでも実施できるこ

ととした)。

・打ち水に使う水は、水道水は使わず、雨水や風呂水、わき水、

地下水、再生水などの利用を呼びかけた。

・再生水は、事前申し込みにより無償で神奈川水再生センター

または港北水再生センターで提供した。

・職員が作成したポスターを、市のホームページからダウンロ

ードし、自由に利用できることとした。

8 月 10 日: 鶴見銀座商店街(鶴見駅東口)

横浜美術館

らびすた新杉田

8 月 17 日: 新横浜町内会(新横浜のレンガ通り)

8 月 20 日: ハウススクエア横浜

8 月 23 日:和田町商店街及び和田町西部町内会等

規模は各々違うものの、いずれも再生水を1t 前後使用し、数

十人~百数十人規模にて実施した。

また、綱島の商店街、高島屋港南台店、日水コン㈱、初黄・

日ノ出町環境浄化協議会などでも実施し、団体によっては区役

所からも協力を得て取り組んだ。

なお、新横浜のレンガ通りでは、打ち水実施前後の温度測定

を行い、気温の低下を確認した

散水前の歩道の画像撮影時間 13:07

散水後の歩道の画像撮影時間 13:12

散水前後の赤外線画像

水が溜まっている水色の部分については、39℃前後まで温度が低下した。

また、黄色から黄緑色の部分については42~47℃前後となり約5℃~最大10℃の温度の低下が見られた。

散水前の歩道の画像撮影時間 13:07

散水後の歩道の画像撮影時間 13:12

散水前後の赤外線画像

水が溜まっている水色の部分については、39℃前後まで温度が低下した。

また、黄色から黄緑色の部分については42~47℃前後となり約5℃~最大10℃の温度の低下が見られた。

【打ち水ポスター(職員によるデザイン)】

【らびすた新杉田の打ち水の様子】

【再生水の提供(神奈川水再生センター)】

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キ ヒートアイランド対策モデル実験事業

赤で囲った区域がモデル地域の位置(左)、モデル地域の一部の写真(右)赤で囲った区域がモデル地域の位置(左)、モデル地域の一部の写真(右)

【和田町商店街の打ち水の様子】

対策の視点:適切な情報発信と啓発の推進

対策手法:地表面の高温化抑制

保土ヶ谷区の和田町商店街では、「ヒートアイランド対策モデル実験事業」として、横浜国立大

学・和田町商店街・和田町西部町内会などとの協働で、概ね3年間かけて打ち水や緑化推進などの

ヒートアイランド対策を進めることとした。

8月23日の打ち水に加え、数日間にわたり商店街周辺の道路へ

の散水とその効果測定を実施した。

■ 省エネ行動の啓発・推進(講習会の開催など)

■ 公共施設の緑化の推進(歩道、河川護岸など)

■ 宅地内緑化の啓発・推進(講習会、助成事業による実施)

■ 再生水の散水・配水(散水効果測定など)

■ モデル実験事業の評価(風の道、効果測定、意識調査など)

■ 省エネ行動の啓発・推進(講習会の開催など)

■ 公共施設の緑化の推進(歩道、河川護岸など)

■ 宅地内緑化の啓発・推進(講習会、助成事業による実施)

■ 再生水の散水・配水(散水効果測定など)

■ モデル実験事業の評価(風の道、効果測定、意識調査など)

■ 家庭内、事業所内の省エネ実施(環境家計簿、エネルギー使用量の把握)

■ 宅地、壁面、屋上など緑化実施(助成事業の活用、斜面地緑化含む)

■ 道路の打ち水の実施(地元、子供たち、学生など)

■ 意識調査などの実施協力(宅地内温度計設置を含む)

■ 家庭内、事業所内の省エネ実施(環境家計簿、エネルギー使用量の把握)

■ 宅地、壁面、屋上など緑化実施(助成事業の活用、斜面地緑化含む)

■ 道路の打ち水の実施(地元、子供たち、学生など)

■ 意識調査などの実施協力(宅地内温度計設置を含む)

横 浜 市横 浜 市 保土ヶ谷区和田町地区保土ヶ谷区和田町地区

横浜国立大学横浜国立大学

支 援(アドバイス)

《和田町タウンマネージメント協議会》

【和田町タウンマネジメント協議会】

和田町商店街・和田西部町内会横浜国立大学・横浜商工会議所

約22ha 1,350世帯

協 働

●排熱の抑制

●地表面の改良

●風の道の確保

●適切な情報発信と

啓発の推進

対策の4つの視点対策の4つの視点

視点

横浜市ヒートアイランド対策検討委員会

横浜市ヒートアイランド対策検討委員会

■ 省エネ行動の啓発・推進(講習会の開催など)

■ 公共施設の緑化の推進(歩道、河川護岸など)

■ 宅地内緑化の啓発・推進(講習会、助成事業による実施)

■ 再生水の散水・配水(散水効果測定など)

■ モデル実験事業の評価(風の道、効果測定、意識調査など)

■ 省エネ行動の啓発・推進(講習会の開催など)

■ 公共施設の緑化の推進(歩道、河川護岸など)

■ 宅地内緑化の啓発・推進(講習会、助成事業による実施)

■ 再生水の散水・配水(散水効果測定など)

■ モデル実験事業の評価(風の道、効果測定、意識調査など)

■ 家庭内、事業所内の省エネ実施(環境家計簿、エネルギー使用量の把握)

■ 宅地、壁面、屋上など緑化実施(助成事業の活用、斜面地緑化含む)

■ 道路の打ち水の実施(地元、子供たち、学生など)

■ 意識調査などの実施協力(宅地内温度計設置を含む)

■ 家庭内、事業所内の省エネ実施(環境家計簿、エネルギー使用量の把握)

■ 宅地、壁面、屋上など緑化実施(助成事業の活用、斜面地緑化含む)

■ 道路の打ち水の実施(地元、子供たち、学生など)

■ 意識調査などの実施協力(宅地内温度計設置を含む)

横 浜 市横 浜 市 保土ヶ谷区和田町地区保土ヶ谷区和田町地区

横浜国立大学横浜国立大学

支 援(アドバイス)

《和田町タウンマネージメント協議会》

【和田町タウンマネジメント協議会】

和田町商店街・和田西部町内会横浜国立大学・横浜商工会議所

約22ha 1,350世帯

協 働

●排熱の抑制

●地表面の改良

●風の道の確保

●適切な情報発信と

啓発の推進

対策の4つの視点対策の4つの視点

視点

横浜市ヒートアイランド対策検討委員会

横浜市ヒートアイランド対策検討委員会

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ク ESCO事業

対策の視点:排熱の抑制

対策手法:高効率・省エネルギー型機器の導入、機器の高効率運転

ESCO事業(民間資金活用型)とは、既存建築物の設備改修において、民間の資金とノウハ

ウを活用しながら、設備更新に係る初期投資なく省エネルギー化と維持管理費の低減を図ること

ができる事業手法である。

1 ESCO事業とは

ESCO事業とは、Energy Service Company の略称であり、工場やビルの省エネに関する

包括的なサービス※1 を提供し、今までの環境を低下させることなく省エネルギーを行い、その結

果得られる省エネルギー効果を保証する事業である。

ESCOサービス料は省エネルギー削減額の一部から支払われます。

※1 包括的なサービスとは、以下の全ての業務を一括して行います。

(1)省エネルギー方策調査のための診断・コンサルティング

(2)方策導入のための計画立案、設計・施工、施工管理

(3)導入後の省エネルギー効果の計測・検証

(4)導入した設備やシステムの保守・運転管理

(5)事業資金の調達(ファイナンス)

2 ESCO事業の経費と利益配分

3 事業方式について

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用 語 集

あ行

● アイドリングストップ

停車中など、車のエンジンを必要としないときにエンジンを止める行為のこと。これにより、

自動車からの粒子状物質(PM)や窒素酸化物(NOx)などの排出を抑制できるとともに、燃費

の改善にも効果があるとされている。

● 雨水の地下浸透対策

近年、都市の開発等により、市街地では雨水の浸透する面積が減少しており、降水が短時間

のうちに下水道施設に集まり、浸水被害の原因となっている。また、平常時の河川・水路の水

量が減少し、水辺の潤いが少なくなってきている。そこで、雨水の流出抑制や地下水涵養を図

るため、雨水浸透ますなどによる雨水の地下浸透対策が取られている。

● 打ち水

涼を得たり、土ぼこりが舞い上がるのを防ぐため昔から行われてきた日本人の知恵の一つ。

地面に撒いた水の蒸発効果で地面の温度が下がり、気温の低下を促すことができる。

● エコドライブ

省エネルギーや大気汚染物質の排出削減など、環境負荷の低減を考慮した自動車の運転技術

や利用などをさす概念。関係する様々な機関がドライバーに実施の呼びかけをしている。

主な内容としては、アイドリングストップの励行や経済速度の遵守、急発進や急加速、急ブ

レーキを控えめにする、適正なタイヤ空気圧の点検などがあげられる。

● エネルギー消費量原単位

「一世帯あたりのエネルギー消費量」や「自動車一台あたりのエネルギー消費量」など、単

位数量あたりのエネルギー消費量のこと。

● 屋上緑化

建築物等によって自然の地盤から離された構造物の表層に人工の地盤をつくり、そこに植物

を植えて緑化すること。通常、軽量骨材によって排水層を設け、その上に土壌を盛って植栽す

る。

緑化によって、大気の浄化やヒートアイランド現象の緩和、冬季の暖房費や夏季の冷房費の

削減等の効果が期待できるが、植物の生育に必要な土壌量を確保しつつ、建築物にかかる荷重

をいかに減らすことができるかが課題となっている。

か行

● 風の道

元々は、ドイツのシュトゥッガルト市郊外の森林地帯から発生する冷気を、市中心部に取り

込んで大気を浄化する大気汚染対策として、市の都市計画の中で用いられた概念。ドイツでは

山谷風の活用が前提であるが、日本では海陸風が念頭に置かれることが多い。

気温の低い大気を風として都市内部に導くことで気温の上昇を緩和するという考え方に基

づき、風が通りやすいように、建物配置の工夫や道路幅の拡張等の対策を計画的に実施する必

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要がある。

● 環境マネジメント

事業者が自主的に環境保全に関する取組みを進めるに当たり、環境に関する方針や目標等を

自ら設定し、これらの達成に向けて取り組んでいくこと。

● 共同配送

共同配送とは、個別の配送を行ってきた複数の事業者が共同化することにより、荷物を積合

わせして配送コスト削減を図る配送方法のこと。実施には様々な課題があるが、積載効率の向

上や環境負荷の低減を図る点から、その普及が望まれている。

● 近郊緑地保全区域

「首都圏近郊緑地保全法」(昭和41年)に基づき指定されたものと、「近畿圏の保全区域

の整備に関する法律」(昭和42年)に基づき指定されたものがある。いずれも大都市圏に存

在する良好な緑地を保全するため国土交通大臣により指定されるもので、指定された緑地の管

理(行為規制、土地の買い上げ等)は都道府県(一部は市町村)が行う。

また、近郊緑地保全区域内でこれらの効果が、特に著しい地域等については、都道府県知事

が都市計画に近郊緑地特別保全地区を定めることができる。

● 顕熱

物質が温度変化を起こす際に物質から放出されたり、あるいは物質に吸収されたりする熱エ

ネルギー。熱エネルギーが物質表面に現れているため、直接、温度計で測定することができる。

それに対する用語を「潜熱」という。(「潜熱」の項を参照)

● 下水汚泥消化ガス

下水処理場内の水処理の過程で発生する下水汚泥を、嫌気性消化法により発酵・分解するこ

とで発生する、メタンガスや二酸化炭素などを主成分とした気体。汚泥消化ガス発電では、こ

れらを燃料として利用して発電する。一般的な下水処理場においては、場内で必要な電力量の

約30%をまかなうことが可能である。

● 光化学オキシダント

自動車の排気ガスや工場等からの煙などに含まれる窒素酸化物(NOx)や炭化水素(HC)

などが、太陽光に含まれる紫外線で光化学反応を起こし生成する、酸化力が非常に強い物質の

総称。主成分はオゾン(O3)やPAN(パーオキシアセチルナイトレート)であり、目やのどの

痛み、吐き気を起こすなど、人間への健康影響だけでなく植物にも被害を及ぼす。光化学オキ

シダントによる大気汚染を光化学大気汚染という。

● 公共車両優先システム(Public Transportation Priority System:PTPS)

バスなどの公共性の高い自動車の定時運行と利便性を確保して、マイカー通勤などからバス

利用への振替を促進させるための施策。バス専用・優先レーン設定等の交通規制や、バスがな

るべく停止しないような信号制御を行う「バス優先信号」などがある。バス優先信号では、バ

スに光ビーコン対応の車載器を搭載し、交差点に設置されている信号機制御装置と通信して、

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バスの交差点通過を円滑にするとともに、交差点での停車時間を短くすることができる。

● 高効率散水システム

放熱外装建材の表面に水の薄膜を作り、水の蒸発による気化熱で建物を冷却する技術のこと。

単なる流水による水冷と異なり、部材全体に水が薄く広がり、蒸発するときの気化熱で冷却す

る。

● コージェネレーション

コージェネレーション(システム)とは、熱と電気を同時に供給することができる熱電併給

システムのことで、ガスエンジン、ガスタービン、ディーゼルエンジンなどの原動機を使って

発電を行いながら、同時に発生する排熱を給湯、暖房、冷房などに利用するシステムである。

● 高反射性仕上げ

反射材は主に塗料で、屋上や屋根などに塗布し、太陽光の赤外線を反射させて蓄熱をおさえ

るもの。

さ行

● 市民の森制度

昭和46年度から実施している横浜市独自の緑地を保存する制度。緑を守り育てるとともに、

山林所有者の協力により、市民の憩いの場として利用されている。

● 資源集団回収

地域の自治会や町内会、子供会、PTAなどが、これらの資源を集めて、資源回収業者に引き

渡す自主的な活動のこと。

● 遮熱性舗装

太陽エネルギーの約50%を占めるといわれる近赤外線を効率的に反射する舗装のこと。路面

温度の上昇を抑制し、舗装体への蓄熱を減らすことでヒートアイランド現象の緩和に資するこ

とができる。

● 省エネ建築物

暖房、通風、空調、照明、給水などのエネルギー消費を削減する建築設計を施すことで、建

築物のエネルギー利用率を上げるというもの。

● 省エネルギー設備機器

省エネルギー設備系ネットワーク(エアコン、換気扇、照明、ブラインド等の協調省エネ制

御システム) 等のように、導入または更新により、今まで使用していたエネルギーが直接的

に削減できる設備機器のこと。

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● 新エネルギー

エネルギー資源の主力として現在利用されている石炭や石油などの化石燃料や核エネルギ

ー、大規模水力発電などに対して、新しいエネルギー源や供給形態の総称。「新エネルギー利

用等の促進に関する特別措置法」(平成9年)では、「技術的に実用化段階に達しつつあるが、

経済性の面での制約から普及が十分でないもので、石油代替エネルギーの導入を図るために特

に必要なもの」を、新エネルギーとして政策的に定義している。具体的には、太陽光発電や風

力発電、廃棄物発電、燃料電池などがあげられる。

● 人工排熱

空調など建物に起因して発生する建物排熱、自動車の走行に伴う自動車排熱、工場などの生

産活動に伴うエネルギー消費によって生ずる工場排熱など、人間活動によって外気に排出され

る熱の総称をいう。

● すず風舗装整備事業

舗装に吸水性の高い物質(鉱物質系物質や高分子ポリマーなど)を配合し保水させ、その蒸

発により気化潜熱を奪い路面温度の上昇を抑制するようにするため、横浜市では平成15年度

より、保水性舗装などを中心に整備している。(「保水性舗装」の項を参照)

● 潜熱

物質が相転移(固体から液体、液体から気体、固体から気体、あるいはその逆の変化のこと)

の際に物質から放出されたり、あるいは物質に吸収されたりする熱エネルギー。相転移のため

に利用されるエネルギーのため、温度変化となって表面に現れてこない。融解熱や蒸発熱、昇

華熱、凝固熱、凝縮熱などがある。それに対する用語を「顕熱」という。(「顕熱」の項を参

照)

● せせらぎ緑道

横浜市では、水辺を活かしたアメニティ都市の創造を図るため、雨水や湧水などを活用し、

それらを中小河川へ導水するとともに、周囲に緑道を整備して地域の憩いの場として提供して

いる。

た行

● 太陽光発電

自然エネルギーを利用した発電方式のうち、太陽光エネルギーを利用した発電方式を太陽光

発電という。太陽エネルギーの利用には、太陽熱を利用する温水器のシステムと、太陽電池を

使い、太陽光を電気に変換して利用する太陽光発電があり、これらは区別して理解する必要が

ある。

● 太陽熱利用

太陽エネルギーの利用方法には、太陽電池を使って光エネルギーを直接電気に変換して利用

する方法と、太陽熱温水器やソーラーシステム(集熱器と貯湯槽が完全に分離されたもの)を

使って太陽光がもたらす熱を利用する方法がある。

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● 卓越風

ある地点で月ごと、または年間を通して一番吹きやすい風のこと。

● 建物延床面積密度

単位面積あたりの建物延床面積のこと。建物延床面積とは、建物の各階の床面積の合計のこ

と。床のない吹き抜け部分は床面積に含まれない。バルコニーも先端から2メートルまでの部

分は床面積に含まれない。

● 建物棟数密度

単位面積あたり、何棟建物があるかを表す密度のこと。

● 地域冷暖房システム

一箇所又は数箇所の熱源システム(熱源プラント)で製造した冷水や温水、蒸気などを、地域

配管を用いて供給区域内の複数のビルや住宅等に送り、冷房や暖房、給湯を行うシステム。エ

ネルギーの有効利用や快適な生活環境の提供等、多くのメリットを持つ新しい都市インフラと

して、都市の再開発やニュータウン、リゾート開発等において導入がされつつある。課題とし

ては、配管の敷設や初期投資が大きい、管路が長い場合の維持管理や熱の搬送費用の増大など

がある。

● 地中熱利用ヒートポンプ

通常のエアコンは、夏季においては外気に熱を捨てて冷房を行い、冬季においては外気から

熱を奪い暖房を行う。それに対して地中熱ヒートポンプは、外気の代わりに、夏季においては

地中に熱を捨てて冷房を行い、冬季においては地中から熱を奪い暖房を行う。

● 地表面の人工化

コンクリートやアスファルトなどによる地表面の人工的な被覆。これにより、緑地や水面な

どの自然空間が減少する。

● 低公害車(低燃費車を含む)

従来の自動車よりも燃費性能や排出ガス性能に優れた、環境負荷の少ない自動車のこと。「低

公害車開発普及アクションプラン」(平成13年)では、「電気自動車」、「圧縮天然ガス(C

NG)自動車」、「メタノール自動車」、「ハイブリッド自動車」および「低燃費かつ低排出

ガス認定車」の5種類を「実用段階にある低公害車」として、また燃料電池自動車などを「次

世代低公害車」としている。これら低公害車の普及のため、補助制度や税制優遇などの支援策

が展開されている。

なお、「低燃費車」とは、「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネルギー法)」

(昭和54年)に基づく燃費基準(トップランナー基準)の早期達成車をいい、「低排出ガス

認定車」とは、「低排出ガス車認定実施要領」(平成12年)に基づく低排出ガス認定を受け

ている自動車をいう。これら2つの基準を満たした自動車を「低燃費かつ低排出ガス認定車」

という。

● 天空率

地表面から天空を眺めたとき、視界の中で遮るもののない割合をいい、高層の建物などが

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密集しているほど天空率は低い。

● 透水性舗装

道路や歩道を間隙の多い素材で舗装して、舗装面上に降った雨水を地中に浸透させる舗装方

法をいう。地下水の涵養や集中豪雨等による都市型洪水を防止する効果があるため、主に、都

市部の歩道に利用されることが多い。また、コンクリート舗装に比べて太陽熱の蓄積をより緩

和できるため、ヒートアイランド現象の抑制の効果もあるとされている。舗装の素材として、

高炉スラグ、使用済みガラス等のリサイクル材料を利用する工法も開発されている。

● 特別緑地保全地区

都市緑地法第12条に規定されており、都市計画区域内において、樹林地、草地、水沼地な

どの地区が単独もしくは周囲と一体になって良好な自然環境を形成しているもので、無秩序な

市街化の防止や公害又は災害の防止となるもの、伝統的・文化的意義を有するもの、風致景観

が優れているもの、動植物の生育地等となるもののいずれかに該当する緑地が指定の対象とな

る。平成17年5月現在、市内では25カ所(約150.4ha)が指定されている。

● 都市環境気候図(クリマアトラス)

都市・気候特性を踏まえて、都市の熱環境等の改善方法を検討するために作成される地図群

のことで、要素図や熱汚染図、熱環境評価図等より構成される。

なお、都市環境気候図の作成はドイツで普及したので、ドイツ語のクリマアトラス

(Klimaatlas)が使われることがある。

● 都市キャノピー層

大気境界層(対流圏の中で地表面に近い層)の 下層に位置し地表面上の建物・樹木の高さ

より低い層をキャノピー層といい、都市地域で主に建物で構成されたキャノピー層を都市キャ

ノピー層という。

● 都市の乾燥化

都市において、地表面の改変に伴って、水分の蒸発量が減少すること。

な行

● 夏日

日中の 高気温が25℃以上の日のこと。

● 日射病

暑い所で直射日光に長時間さらされ、動きまわった時に起こる。体がだるくなり、頭痛、吐

き気、めまい、低血圧等が起こり、ひどい場合は失神する。

● 熱環境マップ

人工排熱や天空率、裸地緑地面積比率、シミュレーションから得られた平均気温などのヒー

トアイランド要因により分類された地図であり、都市環境気候図(クリマアトラス)により作

成された一連の地図群の1つのこと。(「都市環境気候図」の項を参照)

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● 熱けいれん

大量に汗をかき、水だけを補給して血液の塩分濃度が低下したときに起こる、足や腕、腹部

の筋肉に痛みを伴ったけいれんのこと。

● 熱帯夜

夜間の 低気温が25℃以上の夜のこと。

● 熱中症

高温多湿の気象条件下で、長時間直射日光にさらされた時に起きる、熱性障害の総称。専門

的には、「暑熱環境下にさらされる、あるいは運動などによって体の中でたくさんの熱を作る

ような条件下にあった者が発症し、体温を維持するための生理的な反応より生じた失調状態か

ら、全身の臓器の機能不全に至るまでの、連続的な病態」されている。

は行

● ハマロードサポーター(道路の里親制度)

身近な道路を守り育てていくことを目的として、道路の清掃や美化活動等を行う、地域住民

が主体となったボランティア活動のこと。ゴミの処分や清掃用具の提供など、活動が円滑に実

施できるよう、横浜市内各区の土木事務所が支援することとしている。

● 光触媒

太陽や蛍光灯などの光の下で、それ自身は変化することなく化学反応を促進させる物質。光

触媒は、あるエネルギー以上の光(紫外線)が当たることにより、表面で強力な酸化力を生み

出し、それにより接触してくる有害物質を分解することができる。

光触媒の一般的機能としては、脱臭、防汚、抗菌などがあげられる。これらの機能を利用し

て、空気清浄機、キッチン関連の防汚・抗菌などに応用されている。

● ヒートポンプ

物質が液体から気体に変化する現象を「気化」と呼ぶが、この際、気体に変化する物質は周

囲から熱を奪う。周囲の物体は熱を奪われるので、冷却される。これとは逆に、物質が気体か

ら液体へ変化する現象を凝固と呼ぶ。液体へ変化する物質は状態が変化する際に周囲へ放熱し、

周囲の物体は熱を与えられるため、加熱される。ヒートポンプとは、この仕組みを使って、大

気中の熱を圧縮機(コンプレッサ)を利用して効率よくくみあげ、移動されることにより冷却や

加熱を行うシステムである。

● 標本木

気象庁では、桜の観測などで基準となる木(「標本木」という。)を選定し、毎年同じ標本

木により開花と満開を確認している。

● 風致地区

都市計画法(昭和43年)および関連法令の規制を受けるべき土地として指定される「都市

計画区域」のうち、自然的要素に富んだ良好な景観を形成しており、都市の土地利用計画上、

また都市環境の保全を図るため、風致の維持を図ることが必要な地区であって、「地域地区」

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Page 67: 横浜市ヒートアイランド対策取組方針 ―――やさし …...2018/08/23  · 横浜市ヒートアイランド対策取組方針 ―――やさしい木かげ 風そよぎ

のひとつとして市町村が都市計画に定めた地区(都市計画法第8条)。風致地区内の建築制限

等の規制内容は、各自治体の条例に委ねられている。

● 風配図

方位別の風の出現頻度を百分率で現し、放射状のグラフで表示したもの。

● 輻射熱

暖かい物体から冷たい物体へ、熱線による熱移動が行われる現象をいう。

● 壁面緑化

建築物壁面の緑化によって、大気の浄化、ヒートアイランド現象の緩和、冬季の暖房費や夏

季の冷房費の削減等の効果がある。植物の生育に必要な土壌量を確保しつつ、建築物にかかる

荷重を減らすことができるかが課題になっている。

● 放射冷却

気温は、日射のある昼間に上昇し、夜は下降する。これは、昼間は太陽からの強い日射によ

り地面が温められ、地面から空気に熱が伝わって温まるためである。一方、夜間は、日射がな

くなることで地面から一方的に熱が奪われ、地表面温度が下がる。これは、地面と接している

空気が冷やされるからである。地面から熱が大気中に逃げていくことを放射冷却と呼ぶ。昼間

でも、地表面から熱は大気中に逃げているが、太陽からの日射による加熱の方が地面からの熱

の放出より大きいので、全体として加熱となる。

● 保水性舗装

舗装体内に保水された水分が蒸発し、水の気化熱により路面温度の上昇を抑制する性能をも

つ舗装。一般の舗装よりも舗装体内の蓄熱量を低減するため、歩行者空間や沿道の熱汚染環境

の改善、ヒートアイランド現象の緩和が期待されている。

ま行

● 真夏日

日中の 高気温が30℃以上の日のこと。

● 水と緑の回廊

森林生態系保護地域を中心に他の保護林とのネットワークの形成を図るため、これらの保護

林間を連結する野生動植物の移動経路のこと。野生動植物の移動経路を確保し、生息・生育地

の拡大と相互交流に資することを目的として管理を行うことにより、分断化された個体群の保

全と個体群の遺伝的多様性の確保、生物多 様性の保全が期待されている。

● 未利用エネルギー

今までほとんど利用されていなかったエネルギー(生活排水や下水の熱、工場からの廃熱、

雪氷熱など)の総称。都市内部、工場等における生活・業務・生産活動の結果として生じ、有

効に回収されることなく環境中に放出されている各種温度レベルの熱エネルギーならびに自

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然に、かつ豊富に存在するもので、その活用が都市環境に対し生態学的に有意の影響を与えな

いと考えられる自然エネルギーをいう。

● 恵みの里事業

「農のある街づくり」を進めるための横浜市独自の農業政策。地域の農家や農協等が主体と

なり、市民の参加・協力を得て、地域ぐるみで取り組む地域農産物の生産振興や農体験の場の

整備などの事業に対し、横浜市が支援する制度。

ら行

● 裸地緑地面積比率

地表面被覆面積のうち、裸地や草地、田畑、森林などの樹木の多い地域の面積の割合。この

比率が大きいほどヒートアイランド負荷は小さい。

C

● CASBEE (Comprehensive Assessment System for Building Environmental Efficiency:キャスビー)

「建築物総合環境性能評価システム」という。建築物の環境品質・性能と環境負荷を同時に

評価する全国共通のモノサシとして、国の支援を受け、産・官・学共同で研究・開発された評

価システムのこと。

国レベルでは、このシステムの開発にあたり、環境と建築物に関わる具体的な政策の根幹で

ある「国土交通省環境行動計画」などにおいて、その開発・普及の意義が明確に位置づけられ

ている。

E

● ETC (Electronic Toll Collection)

「ノンストップ自動料金収受システム」の略称、愛称はイーテック。有料道路における料金

所渋滞の解消等を目的に、料金所ゲートと通行車との間の無線通信により自動的に料金の支払

いを行い、料金所を停止することなく通行可能とするシステムのこと。

● ESCO(Energy Service Company:エスコ)事業

ビルや工場の省エネ化に必要な「技術」・「設備」・「人材」・「資金」など全てを包括的

に提供するサービス。ESCO事業では、省エネ効果をESCOが保証するとともに、省エネルギ

ー改修に要した投資・金利返済・ESCOの経費等が、すべて省エネルギーによる経費削減分で

まかなわれるため、導入企業における新たな経済的負担はなく、契約期間終了後の経費削減分

はすべて顧客の利益となる。

G

● G30プラン

平成22年度における横浜市のゴミ排出量を、平成13年度に対して30%削減するという目

標のもと取り組まれている、ゴミの減量・リサイクル促進計画。「Gomi(ローマ字のゴミ)」

の「G」、「Garbage(英語のゴミ」」の「G」、ごみを減量していくという「減量(Genryou)」

の「G」、そして、「ゴミ削減目標の30%」の「30」を表す。また、「G30」で「ゴミゼ

ロ」の意味も込められている。

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P

● PTPS

「公共車両優先システム」の項を参照。

S

● STL(大規模潜熱蓄熱システム)

潜熱蓄熱システムの蓄熱材の一種。ノジュール(若しくはカプセル)内に充填した蓄熱材の相

変化(例えば、液体から固体)に伴う潜熱を利用している。

参考資料等

・ 平成 17 年度版環境白書(環境省)

・ 図解・何かがおかしい 東京異常気象(洋泉社 MOOK)

・ 環境省ホームページ(http://www.env.go.jp)

・ 国土交通省ホームページ(http://www.mlit.go.jp/)

・ 気象庁ホームページ(http://www.jma.go.jp/jma/index.html)

・ 資源エネルギー庁ホームページ(http://www.enecho.meti.go.jp/)

・ 横浜市ホームページ(http://www.city.yokohama.jp/front/welcome.html)

・ 東京都ホームページ(http://www.metro.tokyo.jp)

・ 大阪府ホームページ(http://www.epcc.pref.osaka.jp)

・ NEDO ホームページ(http://www.nedo.go.jp/)

・ 省エネルギーセンターホームページ(http://www.eccj.or.jp/)

・ EICネット環境用語集ホームページ(http://www.eic.or.jp/ecoterm/?gmenu=1)

・ 物流用語ホームページ(http://www.buturyu.net/)

・ 打ち水大辞典ホームページ(http://www.uchimizu.jp/jiten.html)

・ 東京電力ホームページ(http://www.tepco.co.jp/)

・ 日揮株式会社ホームページ(http://www.jgc.co.jp/jp/index.html)

・ 日新火災ホームページ

(http://www.nisshinfire.co.jp/library/nisshin_station/ns_20010801.html)

・ 気象用語集ホームページ(http://kobam.hp.infoseek.co.jp/meteor/top.html)

・ 医学用語辞典ホームページ(http://www.geocities.jp/emsorder/yougo.html)

・ (財)エネルギー総合工学研究所(http://www.iae.or.jp/index.html)

・ 日本道路株式会社ホームページ(http://www.nipponroad.co.jp/index.htm)

・ 地球環境パートナーシッププラザホームページ(http://www.geic.or.jp/)

・ ALLABOUT住宅用語

(http://kw.allabout.co.jp/glossary/g_house/w005288.htm)

・ 日本地域冷暖房協会ホームページ(http://www.dhcjp.or.jp/qa.html)

・ 三菱地所ホームページ(http://csr.mec.co.jp/index.html)

・ 三菱化学エンジニアリングホームページ(http://www.mitsubishi-chem-eng.co.jp/)

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