「モデル的整備ルート」のコンセプトおよび必要施策 ·...
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「モデル的整備ルート」のコンセプトおよび必要施策
1.「基幹ルート」の考え方
前回研究会までの要約として示す。
(1)目的
本事業では、NAGANOモビリティの環境整備やプロモーション等の施策を進めるために、
その基軸となる「基幹ルート」を設定する。このルートに沿って、各種の施策を展開する。
(2)設定の方針
「基幹ルート」は、全県で 10 ルート程度を設定する。「基幹ルート」は以下の考えに
基づいて設定する。
①インパクトがあり達成感のあるものとする
・県内を縦断・横断する大きな移動につながる中長距離のルートとする
・国内外にアピールできる強いインパクトを持つものとする
・「国道の最高地点を踏破」「分水嶺を●㎞歩く」等の達成感が味わえるものとする
②何をどう楽しむかを明確化する
・ターゲット、アクティビティの種類、楽しみ方等を明確に定める
③ルート上の基点で公共交通に接続させる
・始点や終点、途中の宿泊地点等は、基本的に鉄道駅との接続させる
④地域の観光消費につなげることを想定する
・市街地散策への連結、既存のアウトドアアクティビティの活用、オプションコース
の設定等で、幅広い地域に消費効果を波及させることを想定して設定する。
なお本事業では、「基幹ルート」のうち3つを、全県的なモデルとしての成果をめざす
「モデル的整備ルート」として定め、まずはこのルートでの施策実施を重点的に行う(※)。
※本事業は、平成 25年度の長野県「世界水準の山岳高原観光地づくり構想」を踏まえたものである。同
構想では、県内で3つの「重点支援地域」を定めている。NAGANO モビリティの開発も、この重点
支援地域と重なるルートを「モデル的整備ルート」とし、ここで重点的に整備を進めることで他のル
ートのモデルとしての成果を出すことを目指す。
資料2
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(3)想定ルート
現時点における事務局の想定ルートを以下に示す。いずれのルートも未確定であり、今
後の研究・調査等を踏まえて検討していく。
(4)詳細な検討
3つの「モデル的整備ルート」については、現場の取材や試走を行いながら、以下2つ
について詳細に検討する。
検討する事項 主な内容
A:各ルートのコンセプト 想定する楽しみ方、ターゲット、アクセス方法等が、適
切なものかどうか
B:「基幹ルート」に
必要な施策
そのルートで必要となる施策(プロモーション、受入環
境整備、商品開発等)はどのようなものか
想定する「基幹ルート」
凡例
モデル的整備ルート
・北アルプスルート(自転車)
・木曽路ルート(自転車)
・千曲川ルート(自転車+カヌー)
その他の基幹ルート
・飯山~白馬ルート(自転車)
・善光寺街道ルート(徒歩)
・塩の道ルート(徒歩)
・中山道ルート(徒歩)
・分水嶺ルート(徒歩)
・八ヶ岳ルート(自転車)
・伊那谷ルート(自転車)
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2.各ルートの考え方
(1)北アルプス・パノラマサイクルルート
① 主な検討内容
■アドバイザーとの設計
鈴木雷太氏(※)を本ルートのアドバイザーに迎え、前回研究会の内容も踏まえて、
NAGANOモビリティの考え方に沿う形で詳細なルートを設計した。
なお松本~白馬間のエリアは、例年開催されるロングライドイベント「アルプスあづ
みのセンチュリーライド」の舞台でもあり、年間を通して多くのサイクリストが走って
いるため、顧客ニーズや走りやすいルート等の情報は既存のものを活用できた。
※ 鈴木雷太氏……自転車競技選手。2000 年シドニー五輪 MTB クロスカントリー日本代表、MTB 全
日本王者(2002年、2005年)。現在松本市内で自転車ショップを経営。例年開催さ
れる「アルプスあづみのセンチュリーライド」のプロデューサーとして、松本~白
馬の自転車コースを設計している。
■試走の実施
往路:ロードバイク、復路:JR大糸線(輪行袋を利用)の1日の観光ツアーを企画
し、一般参加者を募集したうえで実施した。当日は鈴木氏の案内のもとで、ロードバイ
クによるツアーを行った。
・日時:9月9日(火)
・参加者:下記5名で実施した
参加者 主な役割
①アドバイザー
(鈴木雷太氏)
・詳細なルート設計(魅力・難易度・利便性等を考慮)
・コンセプト設計、必要となる整備施策等へのアドバイス
②一般参加者
(3名)※
・顧客としての意見、感想
③調査員
(SCOP)
・調査設計、管理
・NAGANOモビリティ開発における必要施策の検討
※一般参加者の詳細は次の通り。54歳女性(スポーツバイク歴1年)、63歳男性(スポーツバイク
歴4年)、66歳男性(スポーツバイク歴8年)
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② ルートについての考え方
■ルートマップ
(試走時の休憩ポイントを示した)
A:コンセプト
■検討の経緯
・本ルートはアルプスの景観という分かりやすい魅力があり、かつ難易度も低いこと
から、性別や年齢、経験年数の違いに関わらず、幅広い顧客に楽しんでもらえるル
ートというのが当初の想定であった。
・しかし距離が短い、アップダウンが少ない等の点で、中級以上のサイクリストにと
っては物足りなさがあるという考えも示された。経験者でも、アスリート志向タイ
プと観光志向タイプではニーズに大きな違いがあり、両方を対象としたプロモーシ
ョンは効果的とはいえないため、ターゲットを絞る必要があるといえる。
・魅力的な飲食スポットが多いこと、文化的・芸術的な雰囲気を味わえることについ
ても、本ルートの魅力として評価された。これらは初級者や観光志向タイプのサイ
クリストに訴求しやすいコンテンツといえる。
・輪行袋によって大糸線を利用できるアクセスの利便性は高く評価されたが、同時に
輪行袋の利用は初級者にとっての高いハードルになることも指摘された。
【基礎データ】
・アクセス:JR松本駅~白馬駅
(区間中、全 30駅)
・総距離:約 65㎞
・移動時間:ロードバイクで約5~6時間
(休憩含む)
始点: 松本城
休憩: かぼちゃやま農場
休憩: 穂高神社
休憩: 大町温泉郷
休憩: 温泉「みみずくの湯」
終点:白馬駅 ※終点後の顧客の動きは以下を想定 ①白馬村で1泊して、翌日は小谷方面まで走るか、白馬村内を観光してから帰る
②白馬駅から帰る(日帰り旅行)
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■検討を踏まえて定めたコンセプト
魅力と楽しみ方
・北アルプスの雄大な姿と四季折々の里山の景観を眺めながら、気持ちよく走れるサイ
クルルート。
・高低差が少なく、自分のペースで気軽に楽しめる。
・ルート上に飲食スポットが多く、休憩して美味しい食べ物を味わいながら移動できる。
ターゲット
・スポーツバイクを始めたばかりの初級者。初めて、数時間かけて走る本格的なロング
ライドに挑戦してみたい方。景色や食事を楽しみながら、気軽に走ってみたい方。
・スポーツバイクの経験はほとんどないものの、白馬や安曇野に憧れがあり、美味しい
食事や景観、芸術等に触れる旅に関心のある方。
・主な顧客として女性を想定する。
※以上を踏まえると、本ルートは自分の力で中長距離を移動する旅行スタイルをこれか
ら始めようとする新顧客獲得のための入門用ルートと位置づけることができる。ルー
ト整備の各種施策は、この考えのもと進めることが重要といえる。
アクセス方法
・松本周辺までは、車等で自転車を持ち込み、そこから自転車で白馬間を移動する。初
心者は一日での往復は難しいので、途中どこかで宿泊しての一泊二日となる。
・輪行袋を使って松本駅へ到着。白馬まで自転車で走り、帰りは再び輪行袋で鉄道移動。
※いずれも、初級者としては難しい側面がある。
※将来的に、信濃大町駅や松本駅等から白馬駅までのレンタサイクル乗り捨てが実現で
きる見込みがある。こうしたサービスが実現すれば、身ひとつで電車で訪れるという
アクセスが想定できる。
B:必要な施策
上記の検討およびコンセプト設定を踏まえて、本ルートで特に必要となる施策の主な
ものを以下に示す。
(なお、すべての基幹ルートに共通して必要な施策は資料3にとりまとめた)
■既存イベントを通じた PR
本エリアでは、「アルプスあづみのセンチュリーライド」や「北アルプス山麓グラ
ンフォンド」といった著名なサイクルイベントが例年開催されている。これらのイ
ベントは初級者の割合が多いことでも知られており、ルートのプロモーションにお
いてはこうしたイベントと連携することは不可欠といえる。
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■ビューポイントの設定
本ルートの最大の魅力は景観だが、初級者では走行中に確実にビューポイントに
気づけるとは限らない。マップや現地案内サイン等において、顧客にビューポイン
トを明確に示すことが重要である。
■飲食店との連携
本ルートの魅力のひとつにレストランやカフェがある。連携店舗でのプロモーシ
ョン、マップ等への店舗掲載、連携店舗をめぐるツアー商品の開発等、ルート整備
においてこうした店舗との連携は重要といえる。
■より気軽に楽しめる簡易版ルートの設定
初心者を顧客として引き込むためには、ルートの一部を活かしながら、より気軽
に楽しめる簡易版ルートを設定し、合せてプロモーションすることが効果的といえ
る。例えば、安曇野の美術館周遊ルート、仁科三湖~白馬ルート等の、20 ㎞程度の
簡易ルートが想定できる。
■レンタサイクルの広域乗り捨てサービスの実現
初心者層を取り込むにはレンタサイクルの整備が不可欠である。県として事業者
に何らかの支援等を働きかけることで、全県の先進モデルとして本ルートでの広域
乗り捨てサービスを実現していくことが求められる。
(理想的には松本駅~白馬駅の乗り捨てとなるが、試験的にルートの一部(信濃大
町駅~白馬駅等)で実施していくことも考えられる)
■サイクルトレインの実現
大糸線のサイクルトレインが実現すれば、初級者にハードルの高い輪行袋を使わ
なくとも大糸線を利用できるようになる。大糸線では、すでにロングライドイベン
ト時のみのサイクルトレインは実現されており、今後これを夏休みや週末、特定の
ダイヤ等に広げていくことを模索することは重要である。
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(2)木曽路・旧街道サイクルルート
① 主な検討内容
■現地有識者へのヒアリング
木曽エリアのサイクリングルートの詳細は、自転車チームや自転車観光振興の活動を
行う「イナーメ木曽プロジェクト」がある程度把握している。このプロジェクト事務局
を運営するとともに木曽エリアで多くのサイクリングガイドを手がける川合克巳氏にヒ
アリングを行い、NAGANOモビリティとしてのルート開発に必要な基礎的情報を把握し
た。
■アドバイザーとの検討
三谷寛志氏(※)を本ルートのアドバイザーに迎え、NAGANOモビリティの考え方に
沿う形でどのようなルートを設計できるかについて検討した。
※三谷寛志氏……元自転車競技選手でロードレース、トラックレース、MTB等の様々なスタイルをこな
し、3種目で計7回世界選手権に出場経験がある(日本人唯一)。監督としても2回参
加経験がある。現在、松本市内で自転車ショップを経営。
■試走の実施
中級者向けという設定で、塩尻駅~中津川駅までの1泊2日のルートを仮設計したう
えで、このルートの道筋やコンセプト等を現地を試走しながら検討した。試走は現地に
詳しい川合氏の案内のもとに、三谷氏が詳細なルートを検討しながら進めた。
・日時:9月2、3日(火・水)
・参加者:下記5名で実施した
参加者 主な役割
①アドバイザー
(三谷寛志氏)
・詳細なルート設計(魅力・難易度・利便性等を考慮)
・コンセプト設計、必要となる整備施策等へのアドバイス
②現地有識者
(川合克巳氏)
・ルート案の提示
・ルートの現地案内(危険地域、水分補給ポイントの説明等)
③一般参加者
(2名)※
・顧客としての意見、感想
⑤調査員
(SCOP)
・調査設計、管理
・NAGANOモビリティ開発における必要施策の検討
※一般参加者の詳細は次のとおり。30 歳前半(スポーツバイク歴 3~4 年)、20 歳後半(スポーツバ
イク歴 0年)。なお、後者は9月2日のみの参加。
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② ルートについての考え方
■ルートマップ
(試走時の休憩ポイントを示した)
A:コンセプト
■検討の経緯
・本ルートは、全国的にも古い町並みが多く残されている木曽路(中山道)を自転車
で楽しむことを想定したルートであった。
・実走によっても、宿場町において間近に古い建造物をみられることが高く評価され
た。また自然環境として、狭い山間部や峡谷の特徴的な地形を体感できることも魅
力として評価された。
・しかし歴史の魅力を充分に味わうには、何らかのガイドが必要という見解も出た。
・狭い道や国道を走る部分等では、安全な走行のためにある程度の経験が求められる
ところもあり、奈良井ダムと馬籠峠という大きな坂もあることから、中級者向けの
ルートとみなせる。
始点: 塩尻駅
休憩:奈良井宿
休憩:奈良井ダム
宿泊:木曽福島駅周辺
休憩:寝覚めの床
休憩:定勝寺 休憩:南木曽町
休憩:妻籠宿
休憩:馬籠宿
終点:中津川駅
【基礎データ】
・アクセス:JR塩尻駅~中津川駅
(区間中、全 21駅)
・総距離:約 110㎞
・移動時間:ロードバイクで
合計約 14時間(2泊3日)
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■検討を踏まえて定めたコンセプト
魅力と楽しみ方
・奈良井・妻籠・馬籠をはじめとする古い町並みの残る宿場町を次々とめぐりながら、
山と渓谷に囲まれた旧街道の歴史的な雰囲気を味わうサイクルルート。
・奈良井ダムの登坂および馬籠峠越えという山場があり、サイクルルートとして充分な
走りごたえがある。
ターゲット
・中級以上のサイクリスト。その中でも、走行距離より走りごたえのある坂を求めるサ
イクリスト。
・旅の楽しみをメインとして自転車に乗る「ランドナー」タイプの顧客。特に、歴史街
道に興味のある層。
アクセス方法
・始点(塩尻駅)までと終点(中津川駅)からの帰りについては、当面輪行袋での移動
を想定する。
B:必要な施策
上記の検討およびコンセプト設定を踏まえて、本ルートで特に必要となる施策の主な
ものを以下に示す。
(なお、すべての基幹ルートに共通して必要な施策は資料3にとりまとめた)
■楽しみ方の案内
奈良井宿のように目立った宿場町以外では、走行中にルート上の歴史的魅力に気
づきにくい。ガイドや案内版、マップ等で、こうした魅力を顧客に伝えることが重
要である。
■宿泊の工夫
本ルートがターゲットとする中級以上のサイクリストにとっては、本ルートは宿
泊しなくても1日で移動できる距離といえる。プロモーションや情報案内において
は、木曽福島や妻籠等で宿泊することで、より旅が楽しめるという顧客への提案が
必要といえる。
■国道 19号の整備
本ルートはできる限り旧道等の車通りの少ない道を設定しているが、全体の3割
程度は国道 19号を通ることになる。ここでは安全性確保の面からも、自転車が通り
やすい道にするための整備が求められる。
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■トンネルを通過する際の注意事項の周知
鳥居トンネルのような危険性が見込まれるトンネルはできる限りはずしたルート
を設定しているが、姥神トンネルのように走行に比較的注意を要するトンネルもい
くつかある。ルート上のトンネルをどのように扱うかは要検討である。
・本ルートアドバイザーによると、トンネル内の走行は、ある程度スポーツバイク
の経験者であれば問題は少ないとのこと。ただし、安全に走行するための注意喚
起を行う必要がある。
・経験の少ない顧客に対しては、次のような扱いが検討できる。
a) トンネル内は自転車を降りて歩道を押して歩くことを推奨する
b) トンネルを通らないルートを設定する(本ルートの場合は、鳥居峠という急
斜面かつ舗装の悪いルートを越える必要がある)
c) トンネルを通るルートを「基幹ルート」として定めない(ルートが全県的に
つながらなくなる)
なお国道やトンネルのルートでは、顧客だけではなく、車のドライバーに対して
自転車に配慮するよう注意喚起することも求められる。
■水分補給ポイントの整備
本ルートはできる限り国道をはずしていることから、コンビニ等の水分補給ポイ
ントが極端に少ない。休憩するだけでなく、水分を補給できるポイントを多く設置
することが必要である。
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(3)千曲川・ダウンリバールート
① 主な検討内容
■現地リサーチを踏まえた再検討
当初に想定した「飯山~軽井沢ルート」(飯山~湯田中温泉~志賀高原~渋峠~菅平高
原~軽井沢)について、第1回研究会において「難易度が高すぎて呼び込める顧客数が
少ないのでは」「大きな経済波及効果が望めないのでは」といった疑問が出されたため、
再検討を行った。
再検討に際しては、第1回研究会での議論、現地状況の再リサーチ、飯山・北信地区
の「おおぞら自転車クラブ」、上田・軽井沢地区の「千曲川サイクリングクラブ」「サイ
クリングクラブ グランペール」等の現地サイクリングクラブへのヒアリング等を踏まえ
た。
そのうえで、「日本最長の川」である千曲川(信濃川)を上流から下流まで下る「千曲
川・ダウンリバールート」を新ルート案として設定した。これは、自転車を中心としな
がら、川のアクティビティ(カヌー等)も利用できるルートとして想定するものである。
■アドバイザーとの検討
山岸惇氏(※1)、屋田翔太氏(※2)を本ルートのアドバイザーに迎え、NAGANO
モビリティの考え方に沿う形でどのようなルートを設計できるかについて検討した。
※1 山岸惇氏………長野県アウトドアレジャー総合サイト「goat」運営代表。県内全域で、各種アウト
ドアレジャーの取材・紹介およびイベント企画等を行っている。
※2 屋田翔太氏……白馬ライオンアドベンチャー常務執行役員。白馬を中心に、長年アウトドアレジャ
ー商品の企画・開発を手がけ、現状のアウトドアレジャーの顧客動向やニーズ等を
熟知する。軽井沢地区でも同様の事業を展開している。
■現地事業者へのヒアリング
川のアクティビティを活用できる可能性を検討するために、「POWERDRIVE R117」
「白馬ライオンアドベンチャー」等のアクティビティ提供事業者にヒアリングを行ない、
ルート上における着艇ポイント、移動可能区間、顧客ニーズ等の情報を収集した。
■試走(予定)
以上の検討をふまえ、関係者によるルートの試走を予定している(軽井沢駅~飯山駅
までの1泊2日のルートを予定)。試走では、「日本最長の川を下る」というコンセプト
の魅力や、自転車と川のアクティビティを組み合わせた旅行に対する楽しみ方や利便性
等について把握する。
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② ルートについての考え方
■ルートマップ(現在の想定)
1日目
2日目
想定ルート 試走の予定ルート
至 日本海
【ルート設定の考え方】
・千曲川最上流である「信濃川上駅」を始点とする。
・交通アクセスの利便性等を考慮し、このうち「軽井沢駅」を第2の始点として合流すること
を想定する。
・終点は日本海となるが、県内では「飯山駅」をひとつの基点として想定する。
・試走については、新幹線を利用して「軽井沢駅」~「飯山駅」までを楽しむケースを想定し
て、該当部分のみで実施する予定。
軽井沢駅
信濃川上駅
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A:コンセプト(現状の想定)
魅力と楽しみ方
・日本最長の河川である千曲川(信濃川)を上流から河口まで下ることで、自然環境の
ダイナミックな変化を体感するルート。上流の渓谷や峻厳な地形が、徐々に雄大で広々
とした景観に移り変わっていく様を楽しむ。
・基本的に自転車によるルートであるが、川沿いを走るため、途中で川の水を活かした
アクティビティ(カヌー等)によっての移動も楽しめる。
ターゲット
・ロングトレイル、マウンテンバイク、カヌー、ラフティング等の様々なアクティビテ
ィの経験が豊富なアウトドアレジャーファン。
・アウトドアレジャーの経験は少ないものの、目新しいアクティビティに挑戦する意欲
の高い「ヤングアクティブ」層。
アクセス方法
・始点は小梅線「信濃川上駅」だが、「軽井沢駅」~「飯山駅」(2015年 3月より新幹線
駅開通)間の移動を交通アクセスの主軸として想定する。
・川のアクティビティを利用する場合、自力で移動する顧客については自転車を積んだ
サポートカーでのアクセスも想定する必要がある(各基点に駐車場が必要)。
B:必要な施策(現時点で想定される主なもの)
■河川上の移動可能区画の設定
千曲川には、ダムや漁業区画があることや安全性の点から、カヌー等で移動でき
ない部分がある。河川上のどの区間が移動可能かどうかを明示する必要がある。
■「川の駅」の設置
本ルートでは、移動中できるだけ自由に川のアクティビティを利用できる環境が
求められる。従って川沿いに陸路~川路を入れ替えることのできるポイントとして
の「川の駅」(仮称)の設置が必要となる。具体的にどのような設備が必要かについ
ては試走等を踏まえて検討するが、自転車のサポートカーへの積み降ろしのできる
空間、カヌー等を着水しやすいスペース等が必要といえる。
■川のアクティビティ事業者との連携
川のアクティビティを幅広い顧客に提供するには、事業者との連携が不可欠であ
る。事業者には、川を移動中に自転車を運送するといった NAGANO モビリティな
らではのサービス提供が求められる。
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【補足資料】ルート試走時に把握した主な意見
(1)北アルプス・パノラマサイクルルート
■A:コンセプトについて
魅力と
楽しみ方
○北アルプスの雄大な景観が何よりの魅力だ(モ)
○自然と生活が一体になった里山の景観が魅力だ(モ)
○おそらく季節ごとに違う景観があるのだろうから、春・夏・秋のそれ
ぞれで走ってみたいと思う(モ)
○安曇野や白馬という著名な地名を走るという点に強い魅力を感じる
(ア)
○信号が少なく、車の走行もさほど多くないのが魅力だ(ア・モ)
○休憩ポイントで美味しい食事が楽しめるのが嬉しい(モ)
ターゲット ○初級者や女性には楽しみやすいルートだ(ア・モ)
○景観の魅力があるので、上級者が軽く走るにも楽しめる(モ)
○安曇野等は文化・芸術的に洗練されたイメージがあり、それに関心の
ある人が「ちょっと自転車で走ろう」と思うのではないか(モ)
×ある程度の経験者にとっては簡単すぎる(ア)
×グループは同じ志向・レベルの人でまとめないと楽しめない。初級者
と上級者が同時に楽しむことはない(モ)
アクセス方法 ○大糸線が通っているので、輪行袋を使えば復路に電車が使えるのは大
きなメリット。白馬の温泉で汗を流して帰ることもできる。途中でや
めて電車に乗ることもできる。帰りの体力を気にしないでもよい(ア・
モ)
×輪行袋の利用は非常に面倒で、かつ技術も必要。機材を傷つける恐れ
もある。初級者には向かない(ア・モ)
×大糸線は通勤通学の乗客も多く、夕方以降には混み合うので、輪行袋
は利用しにくい。またエレベーターがない駅では持ち運びが大変(ア・
モ)
■B:必要な施策について
プロモー
ション
・同エリアで開催される「アルプスあづみのセンチュリーライド」等
のイベントで PR することで周知できる(ア)
・地元の自転車ショップに定期的なルート走行会をやってもらうとよ
いきっかけになる。Webを通じた PRにもつながる(モ)
・自転車やアウトドアの専門誌ではなく、女性誌等一般の雑誌で紹介
してもらったほうがよい(モ)
○…好意的な意見、×…疑問、否定的な意見
(ア)…アドバイザーの意見、(モ)…一般モニターの意見
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・いいコースは趣味人同士の口コミで広まる。ショップの店員やブロ
グ等を介して PR するとよい(モ)
受入環境整備 ・ルート上に休憩ポイントを設置することが重要だ。空気入れや水の
提供、スタンドの設置等に対応する必要がある。理想的には、この
ルートで3~4つは欲しい(今回のツアーで休憩したぐらいの間隔)
(ア)
・道路を拡幅して、車道と歩道の間に自転車が安全に走れるだけのス
ペースを確保することが理想的だ。本ルートでは歩道ばかりが広く
て車道が狭い道も多い(ア)
・大きな道路を右折するポイントは安全面で問題がある。ここには複
数の自転車が二段階右折できるだけのスペースがあれば安全だ(ア)
・道路ペイントで案内するときは、途中で途切れることなく始点・終
点をつなぐことが大切だ。途切れたカ所があると迷ってしまう(ア)
・地図だけではひとりで移動するのが不安。現地に看板が欲しい(モ)
・道路の凹凸の修繕や、川沿い等のガードレールの整備等をしてほし
い(モ)
・絶景ポイント、立ち止まって観るべきポイントを教えてほしい(モ)
商品開発 ・ロードバイク経験者はすでに自分たちで来ているが、そうではない
観光志向の顧客を新たに取り込みたいのなら、より簡易で移動しや
すいルート開発が必要だろう。安曇野を中心にした美術館周遊ルー
トや、仁科三湖を中心にした大町~白馬ルート等は、幅広い顧客に
受けるのではないか(ア)
・初心者が自転車観光をはじめるきっかけ作りとして、ガイドツアー
の開発が効果的だろう。しかし自転車ツアーをガイドできる人材は
ほとんどいない。こうした人材育成に行政の支援があればよいのだ
が(ア)
・このルートでは飲食店が多く、連携するとよい。「スイーツライド」
「グルメライド」等のルートを作ったり、そうしたテーマのイベン
トを企画すると顧客がつかめるのではないか(ア)
・自転車に乗る格好のままで気軽に立ち寄れる飲食店がもっとあると
よい。またそういう店の情報を集約して欲しい(モ)
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(2)木曽路・旧街道サイクルルート
■A:コンセプトについて
魅力と
楽しみ方
○奈良井・妻籠・馬籠につきる。こうした宿場町の古い街並みを見なが
ら山間の特徴的なロケーションを走るのは楽しい(ア・モ)
○奈良井ダムや馬籠峠が山場になっていて走りごたえは充分(ア・モ)
○観光スポットにいちいち立ち寄るより、町並みや景色を見ながら移動
に徹する楽しみ方がよい(現・モ)
○宿場町から宿場町を渡っていく旅のイメージが楽しい(ア・現)
○木曽川の下流へと下っていく感覚が楽しい(モ)
×奈良井・妻籠・馬籠では自転車から降りて歩かなければならない。こ
こが休憩ポイントなので大きな問題はないが、顧客にはその注意喚起
をする必要があるだろう(モ)
×旧道を中心としたルートなので、コンビニ等の水分補給地点が非常に
少ないことは難点だ(現・モ)
ターゲット ○ふたつの山場の登りがきつく、中級以上のサイクリスト向け(現・モ)
○歴史探究が好きな人には良いコースだろう(モ)
×スポーツツーリングを求める人にとっては、国道 19 号の歩道を走る
部分の走りにくさ(雑草や凹凸等による路面状況の悪さ、道幅の狭さ
等)がネックとなる可能性がある(モ)
×中級者にとっては、一泊するまでもなく、1日で走ってしまいたい距
離である(ア・モ)
アクセス方法 ○JR中央本線が通っているので、トラブルや途中で疲れても電車を利用
できる安心感がある。輪行袋に慣れていれば、アクセスしやすいルー
トといえる(ア・モ)
○始点・終点の塩尻駅・中津川駅は特急がとまるので便利(ア・モ)
■B:必要な施策について
プロモー
ション
・自転車やアウトドアの専門誌等で紹介してもらうと興味を引くので
はないか(現)
・人気のあるコースは SNSを通じて広まることが多いため、ルート走
行者に積極的にブログ掲載をお願いするとよい(モ)
受入環境整備 ・国道 19号では歩道を走らざるを得ない部分がある(全ルートの2割
程度)。道幅の狭さ、路面の悪さ等が問題で、自転車で通りやすい道
を作る等の整備が必要だ(ア)
・細かい道への分岐が多いルートであり、直感的に選ぶと間違う部分
○…好意的な意見、×…疑問、否定的な意見
(ア)…アドバイザーの意見、(現)…現地有識者の意見
(モ)…一般モニターの意見
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も多くある。こうしたところでは看板が必須(ア・モ)
・奈良井ダムから国道 19号に合流する間にある姥神トンネルは路面状
態が悪く、センターポールが立っていて道幅が狭いといった問題が
あり、下りでスピードも出るため何らかの対策が必要(ア・現・モ)
・旧道をメインとしたルートなので水分補給ポイントが極端に少なく、
水分を補給できる場所を何らかの方法で設置すべき(モ)
・中山道の歴史が感じられるスポット等、走りながら観るべきポイン
トを看板やマップ等で示してほしい(モ)
商品開発 ・主なターゲットは中級者以上だが、彼らの多くは1日で走ってしま
う距離なので、宿泊してもらう工夫が必要だろう(ア)
・馬籠峠の移動はかなりハードな為、体力に自信がない人には妻籠辺
りでもう一泊するプランの提示も必要か(現)
・あまり立ち止まらずに、走りながら町並みや景色を楽しめるような
ルート設計が望ましい(現・モ)