国内在住外国人のメディア環境と メディア行動 - nhk ·...
TRANSCRIPT
70 AUGUST 2010
1.はじめに
放送文化研究所では今年3月,国内在住の外国人を対象に,彼らのメディア環境やメディア利用動向について聞くアンケート調査を実施した。本稿では,その結果を報告するとともに,今後に向けた課題や可能性について考えたい。
法務省によると外国人登録者の数は約221万人(2008年末現在)で,過去40年以上にわたって増え続けており1),今後も一層の増加が予想されている。そして場所によっては住民の1~ 2割以上が外国人であるような自治体,地域も出現し,日本も欧米並みの本格的な「多文化社会」になるのではないかという見方がリアリティを持ち始めている。
そうした「多文化社会化」の中で,メディア,とくに放送や新聞などマス・メディアはどのような役割・機能を果たすべきだろうか。これまで各メディアは,日本社会の相対的に高い文化的,言語的な同質性を前提にその活動を展開してきた。しかし,予測される外国人の持続的
増加は,そのような日本のメディアのドメスティックな体質や事業内容,メンタリティを大きく変容させる可能性がある。
多文化社会におけるメディアの役割・機能を考えるうえでは,外国人のメディア環境,メディア行動に関する現状の把握は不可欠であるが,方法論的に困難であるという問題もあって現状把握を目的とした量的調査はこれまでほとんど行われていない。今回のアンケートは,後述するように通常の世論調査のようなランダムサンプリングを行っていないため代表性こそないものの,外国人のメディア環境やメディア行動をテーマにしたものとしては国内初の大規模なアンケート調査である。
以下では,日本における外国人の現状と多文化社会化が進む中でのメディアのあり方をめぐる研究や議論の動向を概観したうえで(第2節),アンケートの概要と主要な結果を紹介しながら,いくつかの角度から分析を行う(第3,4節)。そして分析結果から浮かび上がる課題について考察する(第5節)。
国内在住外国人のメディア環境とメディア行動 ~ 4 国籍の外国人向け電話アンケート調査から~
メディア研究部(メディア史) 米倉 律 / (番組研究) 谷 正名
71AUGUST 2010
2.多文化社会化とメディアをめぐる 先行研究と諸議論
(1)国内在住外国人の概況国内在住の外国人登録者の数は先述のよう
に約221万人である(08年末現在)。この221万人という数は長野県の総人口(約218万人)や岐阜県の総人口(約210万人)を凌ぐ規模となっている。
人口が増えているだけでなく,出身国籍の多様化も進んでいる。1970年代までは国内の外国人の大半は韓国・朝鮮人であったが,1980年代以降多様な国々からの流入が活発化,特に1990年の「出入国管理及び難民認定法(=入管法)」改正により日系南米人の来日が促進されたほか,アジア諸国からは「研修生・技能実習生」の受け入れが拡大してきた(NIRA, 2001; 梶田孝道ほか,2005)。
現在では外国人登録者の出身国は実に190か国におよんでいる。国籍別では「中国」が最も多く約65万人(29.6%),続いて「韓国・朝鮮」約59万人(27.2%),以下,「ブラジル」約31万人(14.7%),「フィリピン」約21万人(9.1%),
「ペルー」約6万人(2.7%),「アメリカ」約5万人(2.4%)などとなっている。
一方,都道府県別では,外国人登録者数が最も多いのは東京都の約40万人で外国人登録者全体の約18%を占めている。以下,愛知県22万8,000人(同10%),大阪府21万1,000人(9.6 %), 神 奈 川 県17万1,000人(7.8 %),埼玉県12万1,000人(5.5%)などとなっており,上位5 都府県だけで全体の過半数を占めている。ただし最近では,いわゆる「外国人集住エリア」は地方都市やその近郊地域にも広がっている。こうしたエリアは特に,愛知
県,岐阜県,群馬県,長野県など製造業の工場や関連の事業所などが立地する地域に多い。そしてこうした地域では,外国人の滞在が長期化し定住化が進むにつれて,独自のコミュニティも形成されてきている。
(2)エスニック・メディア研究外国人の増加に伴い,彼らを主たる受け手と
する,いわゆる「エスニック・メディア」の数も急増してきた。「エスニック・メディア」は,「エスニック・マイノリティの / による / のためのメディア」(アンジェロ・イシ, 2002)などと定義されており,その「送り手」や「受け手」を対象とする調査や研究が蓄積されてきた。
これらの研究の多くはフィールドワークをベースにしつつ,エスニック・メディアの現状(使用言語,発行形態,規模,販売方法)や,その利用・受容の実態などを明らかにしてきた(白水編,1996)。また,いわゆる「オールドタイマー」「ニューカマー」2)など,滞日年数の長短によるエスニック・メディアへの接触状況の差異や,地域コミュニティやエスニック・コミュニティにとってエスニック・メディアがどのような役割・機能を果たしているかといった点についてフィールドワークに基づく知見が蓄積されてきた(白水編,1996; 白水,2004)。
しかし,こうしたエスニック・メディア研究には固有のジレンマがあるという見方もある。エスニック・メディアやエスニック・マイノリティが固定的,実体的に捉えられてしまうことで,かえって現状におけるメディアや情報のゲットー化
(孤立・分断化)や「顔の見えない定住化」(梶田ほか,2005)が孕む問題性が見えにくくなってしまうのではないかという指摘である。
例えば,アンジェロ・イシ(2002)は「ブラジ
72 AUGUST 2010
ル人コミュニティが主たる情報源としてもっぱらエスニック・メディアに頼るという現状が健全とはいいがたい」として日系ブラジル人のエスニック・メディアが当該コミュニティの内部だけで閉鎖的・排他的に再生産されることの問題性を示唆している。また,町村敬志(1997)も「エスニック・メディアもありようによっては,そのエスニックな境界線の両側に頑迷なナショナリズムを蔓延させ,民主的な議論の場の形成が妨げられるジレンマもある」とし,エスニック・メディア研究の射程を拡大する必要性を指摘している。
(3)多文化的な公共圏とメディアの関係性一方,国内の既存マス・メディア(新聞,放
送など)が多文化社会化にどのように対応しているか,外国人にどのように利用・受容されているのかといった点についての調査・研究はほとんど蓄積がない。
既存マス・メディアの中でも,多言語サービスを行っている例(例えば NHKのラジオ放送や,広域,またはコミュニティ型のFM放送など)は少なくないし,一定以上の語学力を持つ外国人のあいだでは日本語の新聞や放送が日常的に利用されている実態もある。しかしこれらについては,外国人の多い自治体等による一般的な生活実態調査(静岡県,2008; 浜松市,2007など)や,対象が限定されたケーススタディ(RITE,1998)のような参考資料は存在するものの,全体状況やメディア相互の関係性といった点が明らかにされているとは言い難い。また,いわゆる「市民メディア研究」の領域において,コミュニティFM等による多言語放送などの事例を多文化共生社会の実現に向けた実践として紹介した文献もあるが
(松浦さと子,2006;日比野純一,2002など),
本格的研究はこれからという状況である。しかし「顔の見えない定住化」を回避しな
がら真の多文化共生社会を実現していくうえでは,外国人の「メディアを通じた参加と帰属」
(岩渕功一,2009)を促進していくことが重要だとする社会的な議論は活発化しつつある 3)。
例えば,総務省が2005 年に研究者や自治体関係者を集めて立ち上げた「多文化共生の推進に関する研究会」では,行政情報,災害情報などを含めた多言語メディアサービスの重要性が強調されたほか(総務省,2006,2007),NHK会長(当時)の諮問委員会である「デジタル時代のNHK 懇談会」の最終報告書(2006)も,NHKは国内に住む外国人の意見や立場を放送に反映し,相互理解や交流を促進するような「多文化的な公共の広場」を形成するべきであると指摘している。
以上のような先行研究や議論を踏まえ,今回のアンケート調査では,エスニック・メディアと既存マス・メディアの別を問わず,外国人がどのようなメディアをどのように利用しているのか,また彼らの性・年層,日本滞在年数,日本語能力といった属性との関係はどうか,さらにメディア及びメディア表象(記事や番組での表現や取り上げられ方等)に対する意識,公共放送NHKに対する意向・ニーズはどのようなものかといった点などを質問する設計とした。
3.アンケートの概要と回答者の特徴
(1)概要今回のアンケート調査の概要は以下のとおり
である。○実施:2010 年 3 月○方法:電話アンケート
73AUGUST 2010
○ 対象:国内在住外国人1,000人(中国,韓国,ブラジル,フィリピンの 4 か国 4),各 250 人)
○質問数:23 問○ 実施委託:在日外国人情報センター(特定
非営利活動法人)対象を中国,韓国,ブラジル,フィリピンと
したのは,これが国籍別人口の上位4か国であり,国内の外国人全体の約8割を占めているためである。なお,外国人を対象とする場合,住民基本台帳のような名簿が存在せず,通常の世論調査のようなランダムサンプリングを行うことはできないため,今回のアンケート調査では,実施委託先の在日外国人情報センターと関係のあるエスニック・メディア(計7社)が所有する顧客名簿から抽出を行うという形をとった 5)。従って,今回の回答者には世論調査におけるような代表性はなく,回答結果はあくまでも一定の傾向や課題を見出すための参考データとして扱う必要がある。
(2)回答者の特徴表1は,回答者の基本属性のうち,代表的
なものをまとめて示したものである。これを見ると,各国籍の間で基本属性の構
成に大きな差異があることが分かる。例えば,性別を見ると,ブラジル人では男性の割合が高く(67%),フィリピン人では逆に女性の割合が高い(83%)。また在留資格を見ると,中国人,韓国人では「留学」が最も高い割合になっているが,ブラジル人では「定住」が,フィリピン人では「配偶者」が最も高くなっている。日本滞在年数も国籍ごとにある程度のばらつきが見られる。一方,年層を見ると,中国,韓国では20 ~ 30代が,ブラジル,フィリピンでは30 ~40代がボリューム層となっている。
ただし,このような国籍別の属性構成の差異を含む特徴は,国内在住外国人の全体状況
(=法務省の統計データ)と極端に異なっているわけではない(表2参照)。今回の回答者と法務省の統計を比較すると,例えば,韓国やフィリピンでは性別の割合はほぼ同程度であるほか,表には示していないが在留資格別でも中国,韓国で「留学」が多いこと,フィリピンでは
「配偶者」が非常に多いことなど,一定の共通点がある6)。
回答者の日本語および英語の語学能力についても触れておきたい。表3は,日本語能力,
中国 韓国 ブラジル フィリピン
性別男 36 45 67 17 女 64 55 33 83
年層
10 代 7 3 0 020 代 50 34 30 330 代 26 44 36 5340 代 12 14 28 4150 代 4 6 3 1それ以上 0 0 0 0
在留資格
労働 16 17 4 4 研修 7 5 0 2 留学 35 36 0 1 配偶者 21 24 18 77 定住 7 7 75 2 永住 11 9 3 8 帰化 3 2 0 1
日本滞在年数
1 年未満 8 1 0 2 1~ 3 年 21 18 2 2 3 ~ 5 年 26 33 41 4 5 ~10 年 26 36 37 72 10 ~ 20 年 15 6 20 18 20 年以上 4 4 0 0
中国 韓国 ブラジル フィリピン
性別男 42 46 55 21 女 58 54 45 79
年層
10 代 6 7 9 6 20 代 43 15 26 25 30 代 25 8 23 38 40 代 13 16 17 20 50 代 5 16 9 4 それ以上 2 22 5 1
表1 アンケート回答者の基本属性
表 2 法務省統計における外国人登録者の基本属性
(%)
(%)
74 AUGUST 2010
英語能力について質問した結果である。ここでも国籍によって大きな違いがある。日本語能力は中国,韓国,フィリピンでは一定程度以上できる割合が高いのに対して,ブラジルは「少しだけ聞いたり,話したりできる」「ほとんどできない」という割合が合わせて51%である。英語能力は,フィリピンで高いのに対し7),その他では「何とか意思疎通できる」というレベル以下の割合が高くなっている。
以上のように,ひとくちに「外国人」といっても,その属性構成(性・年層,在留資格)や滞在年数,語学能力などは国籍によって大きく異なっている。このような大きな差異の存在は,アンケートの各質問に対する回答傾向にも深くかかわっているはずであり,従ってデータ分析・理解においては十分な注意が必要である。これらの諸点を踏まえながら,以下では,アンケートで得られた主要な結果を順に検討していく。
4.結果
(1)日本語のテレビへの高い接触まず,テレビをはじめとする日本語のメディア
の利用状況について概観する。
表4は,「ふだん利用するメディア」について質問した結果である。これを見ると,「日本語のテレビ」が,どの国籍の人でも90%以上と,非常に多く利用されていることがわかる。これに匹敵するのが「日本語のインターネット」で,ブラジル人を除く3国籍の人たちのあいだで高い割合となっている。ただし,韓国人を除く3国籍では,「日本語のテレビ」の方が利用者の割合がより高い。これに対し「日本語の新聞・雑誌」は,一定程度利用者がいる中国人を除き
(有料25%,無料37%),相対的にテレビやインターネットより利用者の割合は低い。
では,日本語のテレビの利用状況について,少し細かく見ていこう。図1は,日本語のテレビの利用頻度について聞いたものである。「毎日2時間以上」「毎日1時間程度」を合わ
せると,各国籍とも70%以上の人が毎日1時間以上,日本語のテレビ放送に接触していることになる。中でも,ブラジル人とフィリピン人は,毎日2時間以上利用する人がそれぞれ52%,
中国 韓国 ブラジル フィリピン
日本語
込み入った会話や読み書きができる 47 63 11 14 日常会話ができる 39 28 21 81 何とか意思疎通できる 14 8 15 5 少しだけ聞いたり,話したりできる 2 1 39 0 ほとんどできない 0 0 12 0 全くできない 0 0 2 0
英語
込み入った会話や読み書きができる 15 4 6 52 日常会話ができる 14 7 9 42 何とか意思疎通できる 13 34 15 4 少しだけ聞いたり,話したりできる 13 20 26 0 ほとんどできない 30 32 28 0 全くできない 15 2 16 0
表 3 「日本語能力」と「英語能力」 表 4 ふだん利用するメディア(複数回答)
中国 韓国 ブラジル フィリピン
日本語のテレビ 94 90 95 98
母国語のテレビ 32 17 10 22
英語のテレビ(CNN やBBC,NHKの英語放送など) 4 2 0 3
日本語の新聞・雑誌(有料) 25 17 10 5
日本語の新聞・雑誌(無料) 37 3 9 2
母国語の新聞・雑誌(有料) 1 2 89 52
母国語の新聞・雑誌(無料) 50 3 88 100
英語の新聞・雑誌(有料・無料) 4 4 0 8
日本語のラジオ 16 5 3 62
母国語のラジオ 6 0 3 1
英語のラジオ 2 5 0 12
日本語のインターネット 79 92 14 86
母国語のインターネット 86 92 48 90
英語のインターネット 9 59 8 79
(%) (%)
75AUGUST 2010
75%と最も多くなっており,日本語のテレビの利用率が非常に高いことが特徴的である。
ところで,こうした日本語のテレビ放送の利用状況と,彼らの日本語能力とは単純な相関関係にあるわけではない。先に確認したように
(表3参照),少なくとも今回の回答者のあいだでは,中国人・韓国人には日本語能力が高い人が多く,ブラジル人,フィリピン人には日本語能力が相対的に低い人が多い。このような日本語能力の差にもかかわらず,日本語のテレビ放送は,どの外国人にとっても極めて身近で日常的なメディアとして機能していることがうかがわれる。
一方,テレビでどんな情報を取得しているかという利用内容の面においては,国籍や日本語能力による差異が顕著である。表5は,「日本語のテレビ」によってどのような情報を得ているかについて質問した結果である。質問では,メディアによって取得するニュースや情報を,市町村など身近な情報から,母国や世界のニュース・情報など6つの階層に分類した形で聞いている。
この結果を見ると,日本語能力が相対的に高い中国や韓国の人々は,国内の情報はもちろんのこと,国際的な情報や国内のローカルな情
報など比較的幅広い情報を日本語のテレビから得ていることが分かる。これに対して,ブラジル人やフィリピン人は,日本語のテレビからは相対的に限定された情報しか得ていない。
さらに「NHKでよく見る番組ジャンル」を質問した結果(表6)を見ると,ここでも国籍によって,よく見るテレビ番組のジャンルに大きな違いがあることがわかる。表5で「この中にはない」を選択した人が多いブラジル人は,
「ニュース・情報番組」「ドキュメンタリー」などの比較的高度な日本語が飛び交う情報性の高い番組はあまり視聴しておらず,「スポーツ番
表 5 日本語のテレビによって得ている情報(複数回答)
表 6 NHKでよく見る番組ジャンル(複数回答)
0 20 40 60 80 100%
ほとんど / 全く見ていない週 1日程度
週 2~3日毎日20~30 分程度
毎日1時間程度毎日2時間以上
フィリピン
ブラジル
韓国
中国
0 20 40 60 80 100
ほとんど / 全く見ていない
週 1日程度
週 2~3日
毎日20~30 分程度
毎日1時間程度
毎日2時間以上フィリピン
ブラジル
韓国
中国
n=000
27 43
15 3 1368
52 224
75 19 6
20
8 7132
2 2
図 1 「日本語のテレビ」の視聴頻度
中国 韓国 ブラジル フィリピン住んでいる市町村の(衣医食職住など)身近な情報 24 2 0 4
住んでいる都道府県のニュースや情報 40 6 2 3
同じ国出身の仲間,知りあいの動向に関する情報 0 0 0 1
日本国内で起きているニュースや情報 93 75 19 93
母国のニュースや情報 12 10 4 16
日本,母国以外の世界のニュースや情報 38 70 7 14
この中にはない 9 25 67 3
中国 韓国 ブラジル フィリピン
ニュース・情報番組 50 33 27 66
天気予報 18 4 29 78
ドキュメンタリー 46 41 7 16
スポーツ番組 4 8 71 13
ドラマ 16 12 7 18
歌番組 4 3 73 78
お笑い,クイズ,トークなどの娯楽番組 3 2 6 8
語学,芸術,趣味などの教養番組,実用番組 16 22 5 8
アニメーション,子供向け番組 10 13 59 89
その他 7 28 8 0
(%)
(%)
76 AUGUST 2010
組」「歌番組」「アニメーション,子供向け番組」などの娯楽番組を好んで視聴していることがわかる。これに対し中国・韓国人は(「NHK」に限定した設問のせいもあるかもしれないが)
「ニュース・情報番組」「ドキュメンタリー」など情報性の高い番組ジャンルを視聴している。一方,フィリピン人は,情報性の高い番組,娯楽性の高い番組の双方に接触が高い,いわば
「オールラウンド型」のテレビ視聴となっている。このように国内の外国人にとって日本語のテレ
ビ放送は,かなり日常的で身近なメディアであるが,その一方でその利用のされ方,利用内容は,国籍によってかなり異なっており,そこには日本語能力等が深く関係している可能性が高い。
(2)エスニック・メディアの利用状況では,母国語のメディア=「エスニック・メディ
ア」は,どのように利用されているのだろうか。前掲の表4の中から,母国語メディアの利用
状況を見てみると,比較的利用の割合が高いのは「母国語のインターネット」であり,特に中国人,韓国人にとっては,インターネットが最も利用割合の高い母国語メディアとなっていることがわかる。一方ブラジル人では,普段利用するメディアとして「母国語のインターネット」をあげた人が約半数にとどまっており,他国とは状況が大きく異なっている。これは「パソコンを持っていない」人がブラジル人回答者では41%に上っており,インターネットが彼らの間に十分に普及していないことが要因と思われる。ブラジル人にとっては,「新聞・雑誌」が母国語メディアとして大きな位置を占めている。
一方「母国語のテレビ」は,必ずしも母国語メディアの中で中心的な地位を占めていないことがわかる。また「日本語のテレビ」と比較し
てもその利用者の割合は著しく少ない。今回の質問における「母国語のテレビ」とは,そのほとんどがケーブルテレビや衛星放送に加入することで視聴可能となる有料チャンネルを意味している8)。これらの有料チャンネルを視聴するためには月額3,000 ~ 5,000円以上の利用料金が必要となり,その経済的負担は小さくない。こうした事情もあり,簡単に母国語の情報が得られるインターネットの普及とあいまって,利用割合がかなり低くなっていると考えられる(谷正名・米倉律,2009)。
では,母国語メディアを利用の度合いと,その人の日本語能力との間には相関関係はあるのだろうか。
図2は,各メディアの利用者の日本語能力がどの程度であるかを示したものである。これを見ると,特に「新聞・雑誌」において,日本語能力の有無と利用との間に高い相関関係があることがわかる。すなわち,「日本語の新聞・雑誌」の利用者では日本語能力の高い人の割合が高く,逆に「母国語の新聞・雑誌」の利用者では日本語が「あまり・ほとんどできない」割合が高くなっている。このことは,日本語能力の低い外国人のあいだでは「母国語の新聞・雑誌」
0 20 40 60 80 100
あまり・ほとんどできないまあまあできるよくできる
ほとんど・全く利用していない
週 1日程度
週 2~3日
毎日 20~30 分程度
毎日 1時間程度
毎日 2時間以上
あまり・ほとんどできない
まあまあできる
よくできる
n=000
0 20 40 60 80 100%
あまり・ほとんどできないまあまあできるよくできる
ほとんど・全く利用していない
週 1日程度
週 2~3日
毎日20~30 分程度
毎日1時間程度
毎日2時間以上 110
89
41 753
67 923
33 4422
41 4514
27 676
0 20 40 60 80 100%
あまり・ほとんどできない
まあまあできる
よくできる
ネット(母国語)
ネット(日本語)
新聞・雑誌(母国語)
新聞・雑誌(日本語)
TV(母国語)
TV(日本語)
あまり・ほとんどできないまあまあできるよくできる
40 2733
26 2053
11 21 475
40 4416
48 547
46 1341
0 20 40 60 80 100%
あまり・ほとんどできない
まあまあできる
よくできる
ネット(母国語)
ネット(日本語)
新聞雑誌(母国語)
新聞雑誌(日本語)
TV(母国語)
TV(日本語)
合計
あまり・ほとんどできないまあまあできるよくできる
40 2733%
40 2733
26 2053
11 21 475
40 4416
48 547
46 1341
図 2 日本語能力とメディア接触(普段利用するメディア)
77AUGUST 2010
が重要なメディアであり続けていることを示している。一方テレビでは,「日本語のテレビ」「母国語のテレビ」のどちらを見るかは,日本語能力とはあまり関係がない。
(3)外国人における情報デバイドすでに見たように国内の外国人にとって,イ
ンターネットは,(日本語,母国語を問わず)メディアとしてきわめて大きい存在となっている。しかし,この現象は必ずしも全ての外国人にあてはまるものではないことも,また重要な論点として押さえておかねばならない点だろう。
たとえば,前掲の図2に見られるように,日本語能力の劣る外国人にとって,「インターネット」は,既存の「新聞・雑誌」「テレビ」といったメディアに比べて,いまだにやや敷居の高いメディアであると思われる。言い換えれば,少なくとも現時点においてインターネットは,あくまでも日本語能力が高い外国人のあいだで利用されているメディアにとどまっている。
この傾向は,インターネットの利用頻度と日本語能力のクロス集計結果(図3,4)を見るとさらに顕著である。インターネットで利用される言語が「日本語」であるか「母国語」であるかにかかわらず,日本語能力が高い人ほど,インターネットの利用時間が長いのである。ここで重要なのは,日本語能力が高い人は「母国語のインターネット」の利用時間も長い点である。これらの結果から推定されるのは,今回のアンケート調査における「日本語能力の高い人」とは,インターネット接続サービスを利用し得るような「収入の多さ」や,「日本語能力」に象徴されるような「学力・学歴の高さ」(それは「メディアリテラシー」の高さにも通じるものかもしれない)を備えた人たちではないかということであ
る。言い換えれば,国内の外国人の中には収入や学歴,日本語能力など様 な々「格差」が存在しており,こうした「格差」が,「インターネット利用の有無」,あるいはそれに伴う利用可能な情報の質や量という形で,メディア利用実態にも反映している可能性が高いのである。
インターネットについては,その利用時間においても国籍別に大きな違いがある。表7は,
「日本語のインターネット」の利用時間を示したものである。中国や韓国では,利用時間が相対的に長く,ブラジル人,フィリピン人の利用時間は相対的に短いことがわかる。特にブラジル人では「ほとんど / 全く利用していない」という割合が77%に上っている。
0 20 40 60 80 100
あまり・ほとんどできないまあまあできるよくできる
ほとんど・全く利用していない
週 1日程度
週 2~3日
毎日 20~30 分程度
毎日 1時間程度
毎日 2時間以上
0 20 40 60 80 100%
あまり・ほとんどできないまあまあできるよくできる
ほとんど・全く利用していない
週 1日程度
週 2~3日
毎日20~30 分程度
毎日1時間程度
毎日2時間以上
n=000
1189
41 753
67 923
33 4422
41 4514
27 676
0 20 40 60 80 100
あまり・ほとんどできないまあまあできるよくできる
ほとんど・全く利用していない
週 1日程度
週 2~3日
毎日 20~30 分程度
毎日 1時間程度
毎日 2時間以上
0 20 40 60 80 100%
あまり・ほとんどできないまあまあできるよくできる
ほとんど・全く利用していない
週 1日程度
週 2~3日
毎日20~30 分程度
毎日1時間程度
毎日2時間以上
n=000
48 27
58 24
22 70
26 65
29 57
7 21 72
14
10
8
18
25
図 3 日本語インターネット利用頻度と「日本語能力」
図 4 母国語インターネット利用頻度と「日本語能力」
78 AUGUST 2010
さらに,インターネットで得ている情報の質も,国籍によって大きく異なっている。表8は,母国語および日本語のインターネットで得ている情報について質問した結果である。中国や韓国の人々が,身近な情報から国際的な情報に至るまで,かなり幅広いレベルの情報をインターネットによって取得しているのに対し,ブラジル人やフィリピン人では,取得している情報に大きな偏りがあることがわかる。
(4)表象・コンテンツに関する意識今回のアンケートでは,日本のマス・メディ
アにおける外国人の扱い・表象について,彼らがどう考えているか,どう受け止めているのか,についての質問も行った。表9は,「自分たち外国人の意見や置かれた
状況を日本のマス・メディアが十分に伝えているかどうか」について尋ねた結果である。
これを見ると,「十分に伝えている」「まあまあ伝えている」という割合は,どの国籍でもかなり低くなっている。中国人,韓国人では「わからない」と回答を留保する人も比較的多いが,ブラジル人やフィリピン人では,「あまり伝えていない」という回答が圧倒的に多くなっている。彼らの多くが,日本のメディアによる自分たち外国人の取り上げ方に関して,不十分であると感じていると見ることができる。
一方,表10は,「日本のマス・メディアが外国人のことを差別的に報道したり,誤ったイメージで取り上げていると感じることがあるか」について尋ねたものである。これについての回答も国によって大きな違いがあるが,中国,韓国の人
中国 韓国 ブラジル フィリピン
母国語のインターネット
住んでいる市町村の(衣医食職住など)身近な情報 2 5 0 0
住んでいる都道府県のニュースや情報 6 13 1 0
同じ国出身の仲間,知りあいの動向に関する情報 44 33 9 2
日本国内で起きているニュースや情報 3 24 2 6
母国のニュースや情報 84 86 33 90
日本,母国以外の世界のニュースや情報 57 84 12 3
この中にはない 13 15 60 7
日本語のインターネット
住んでいる市町村の(衣医食職住など)身近な情報 23 10 1 47
住んでいる都道府県のニュースや情報 31 16 1 2
同じ国出身の仲間,知りあいの動向に関する情報 25 3 0 4
日本国内で起きているニュースや情報 77 87 7 86
母国のニュースや情報 17 11 6 7
日本,母国以外の世界のニュースや情報 43 74 1 2
この中にはない 2 10 46 10 中国 韓国 ブラジル フィリピン
十分に伝えている 2 0 0 0 まあまあ伝えている 4 2 0 11 あまり伝えていない 36 33 88 65 ほとんど/全く伝えていない 18 28 8 2 わからない 41 38 4 18
中国 韓国 ブラジル フィリピンよくある 10 29 0 3 ときどきある 38 36 0 30 あまりない 38 20 89 59 ほとんど/全くない 8 8 10 6 わからない 6 6 0 2
中国 韓国 ブラジル フィリピン
毎日2 時間以上 9 4 2 0
毎日1 時間程度 20 8 4 4
毎日20 ~ 30 分程度 28 37 11 80
週 2 ~ 3日 10 25 4 4
週 1日程度 4 19 3 2
ほとんど/全く見ていない 17 8 77 10
表 7 日本語インターネット利用頻度
表 8 インターネットで得ている情報(複数回答)
表 9 日本のマス・メディアは,「自分たちの意見や置かれている状況を十分に伝えているか」
表 10 「日本のマス・メディアが自分たちのことを差別的に報道したり誤ったイメージで取り上げていると感じることがある」
(%)
(%)
(%)
(%)
79AUGUST 2010
たちでは「よく / ときどきある」という割合が相対的に高い(中国48%,韓国65%)。また,フィリピンでもほぼ三人に一人(33%)の割合で「よく / ときどきある」と回答している。このように少なくない割合の人たちが,日本のマス・メディアの中に差別的な表現や取り上げ方があると感じていることには注目しておく必要があるだろう。
(5)NHKへの要望では,外国人たちは,公共放送NHKには
どのような意向を持っているのだろうか。表11は,「NHKに対する要望や希望」を質
問した結果である。これをみると,NHKに対するニーズも国籍によってかなり異なっていることが分かる。日本語能力が高くインターネットの利用頻度も高い中国・韓国人では,「特に無い/わからない」という回答が最も多く,その他,「母国についてのニュース・情報」や「地震や災害など非常時のニュース・情報の母国語での放送」「外国人も楽しめる娯楽番組」などへの要望・希望の割合がやや高くなっている。
これに対して,ブラジル人やフィリピン人のニーズはかなり明確である。ブラジル人は「ふだん
のニュースを母国語の音声や字幕で放送する」「簡単な日本語でニュースを放送する」ことへの希望が群を抜いて多い。ブラジル人の多くが言語的な障壁を感じている中で,公共放送には,そうした現状をふまえたサービスの提供を求めていると言えそうである。また,フィリピン人で多いのは「母国についてのニュース・情報を取り上げる」「英語の放送を増やす」ことであり,これもまた,国柄を反映したニーズと見ることができる。そんな中で,「外国人も楽しめる娯楽番組を放送する」ことへのニーズが,各国とも押しなべて高めだったことは,注目すべき結果だろう。
5. 課題と展望
以上,今回のアンケート結果を概観しながら,いくつかの主要な結果について検討してきた。最後に,これらの結果を踏まえつつ,今後に向けていくつかの課題を整理し,考察しておきたい。
(1)国内在住外国人の“多様性”第一に,今回のアンケートの回答者において
もそうであるように,国内の外国人のあいだには,性・年層,在留資格,日本語能力など彼らの基本的な属性に関わる部分において大きな差異がある。アンケートの各質問に対する回答傾向で国籍による大きな違いが見られたのは,この差異によるところが大きいと考えられる。
今後,多文化社会化が進む中でマス・メディアが果たすべき役割・機能について考える場合にも,こうした差異の存在を考慮に入れる必要があるだろう。「外国人向けのメディアサービス」などとひと括りにすることが,かえってこの差異の存在を覆い隠してしまう可能性のあることには十分に自覚的であるべきだろう。
中国 韓国 ブラジル フィリピンふだんのニュースを母国語の音声や字幕で放送してほしい 1 11 73 7
母国についてのニュース・情報を取り上げてほしい 26 12 26 80
もっと英語の放送を増やしてほしい 2 5 4 55
地震や災害など非常時のニュース・情報を母国語で放送してほしい 14 8 12 13
自分達の意見や置かれている状況を取り上げてほしい 11 11 3 4
日本人が自分達に対してどう思っているのかについて取り上げてほしい 15 7 0 4
外国人も楽しめる娯楽番組を放送してほしい 26 10 55 33
簡単な日本語でニュースを放送してほしい 6 8 78 16
特にない/わからない 42 37 2 1
表11 NHKへの要望、希望(複数回答)(%)
80 AUGUST 2010
そして,国籍ごとの属性構成や言語能力の差異が,彼らのメディア環境や情報行動とどのように関わっているのか,より詳細に把握しながらどのようなサービスを提供していくべきかを考えていく必要がある9)。その際には,諸外国の放送事業者などによる先進的な多言語型サービスの状況やその課題等についても参照する必要があるだろう10)。
(2)テレビとインターネットの関係性第二に,インターネットが,外国人の日常生活
において不可欠な情報インフラとなっている点も注目される。そして多文化社会におけるマス・メディアの役割を考えるうえで,このインターネットとの関係をどう考えるかは重要な論点である。
今回のアンケート結果からは,外国人がメディアを通じて取得する情報のうち,自らが居住する市町村レベルの地域情報や,都道府県レベルの情報については,質・量ともに十分ではない状況がある可能性が見えてきた(表5,8参照)。この次元の情報には,例えば地震や台風などの災害情報や,事件・事故など緊急性の高い情報も含まれる。しかし言語能力の問題等もあって,日本の既存マス・メディアにアクセスしづらい人々にとっては,この次元の情報において深刻なディスアドバンテージが生じ,二次災害など生死にかかわるような事態が生じる可能性もある。
従って,放送や新聞を始めとするマス・メディアは,外国人による利用割合の高いインターネットでの情報提供,あるいはインターネットを伝送路としているエスニック・メディアやNPOなどの関係組織との連携や協力体制の構築も,必要に応じて模索されていくべきであると思われる。
もちろん,インターネット関連の質問の結果
が示すように,外国人のあいだにはネットユーザーと非ネットユーザーとの間に,接触し得る情報の格差(=情報デバイド)が生じている可能性がある。従って,多文化社会における情報インフラの軸足をインターネットのみに置くことには危険性もあるように思われる。
一方,日本語のテレビは,外国人にとって,その日本語能力や日本滞在年数などに関わらず,極めて身近で日常的なメディアとなっている。日本語のテレビは,4国籍のすべての人々の間でインターネットと同等か,それ以上に利用されるメディアである。こうした状況を踏まえながら,インターネットを含めたメディア環境全体の中でテレビがどのような位置を占めているのか,そして放送はどのような役割・機能を果たすべきか,改めて検討していく必要があるだろう。
(3)外国人と放送のジャーナリズム機能第三に,今回のアンケート結果を見る限り,多
くの外国人の目には,テレビを含む日本のマス・メディアは「自分達の声や立場を代弁してくれる存在」として映っておらず,逆に,時として自分達を差別的に取り上げたり,ステレオタイプな形で表現したりすることがあると受け止められている。自分達の声や置かれている状況がマス・メディアで取り上げられ,広く伝えられることは,外国人にとって自分達の存在がホスト社会から正当に認知され,承認されているという感覚を生み出すだろう。こうした感覚は,彼らの社会的,文化的なアイデンティティの構成にとって死活的に重要であり,彼らの日本社会への参加と帰属を促進していくうえでも第一歩となるはずである。
彼らが日本社会の中でどのような環境におかれ,どのような意見をもっているのか,また逆にホスト社会側(日本)の人々は彼らの存在をど
81AUGUST 2010
のように感じ,どのように受け止めているのか。こうしたことを放送を通じて双方に伝えながら,どう相互の理解や交流を促進していけるか,最も基本的な意味における放送のジャーナリズム機能が問われていると言える。
上記いずれの課題も,その解決には多くの時間とエネルギー,そしてコストを要する。しかし日本の多文化社会化の進行はおそらく不可逆的なものである。社会の多文化化は,放送を含むマス・メディアの多文化化をも要請している。
(よねくら りつ / たに まさな)
注 :1)法務省入国管理局「平成 20 年末現在における
外国人登録者統計について」(2009 年 7 月発表),なお法務省によると,このほかにいわゆる「不法残留者」が約 11 万人いるとされる
2)一般に「ニューカマー」とは 1980 年代後半以降に来日した外国人を指し,それ以前から定住していた人達(=「オールドタイマー」)と区別される(白水編,1996)
3)ここに挙げた以外にも自民党(2008)や経団連(2008)など,政財界でも議論が活発化している
4)「中国」には台湾,香港出身者が含まれており,また「韓国」は正確には「韓国・朝鮮」であるが,本稿ではそれぞれ「中国」「韓国」と略記する
5)外国人を対象として調査を行う場合には,インターネットモニターを利用する調査会社もあるが,モニター数が少ない。今回のような 1,000人規模の調査を行う場合には,利用し得る名簿や方法は極めて限られている
6)ただし,今回の回答者のほとんどはエスニック・メディアの利用者であることからいわゆる「ニューカマー」であると推定される。従って年層構成は,
「オールドタイマー」を含む法務省統計とはやや異なっている。また,在留資格は調査時に単純化したカテゴリーと法務省統計のカテゴリーが異なっているので単純な比較は難しい
7)フィリピンではマニラ地域の地域語であるタガログ語を標準化したフィリピン語と英語がともに公共語となっている
8)例えば CS 放送の「スカパー! HD」には,「TVグローボ・インターナショナル」(ポルトガル語チャンネル)や「チャンネル中国」「TVB 大富」「CCTV 大富」(以上,中国語チャンネル),
「ザ・フィリピノ・チャンネル」(フィリピン語チャンネル)などの外国語チャンネルがある。
9)例えば,日本の放送業界においては,多言語型サービスよりも日本語と英語によるバイリ
ンガル放送が先行する傾向があるが,実際には国内の外国人における英語人口は極めて限られている。
10)エスニック・マイノリティ向けの放送サービスについては諸外国の先進例が参考になる。例えばオーストラリアの公共放送 SBS の取り組みについては,Ang. I, et. al,(2009),台湾の事例については,山田賢一(2005)など参照。
<文献>・Ang, I., Hawkings, G., Dabboussy, D., (2009)The
SBS Story: The Challenge of Cultural Diversity , New South Wales Univ Pr Ltd
・アンジェロ・イシ(2002)「エスニック・メディアとその役割」宮島喬・加納弘勝編『国際社会② 変容する日本社会と文化』(東京大学出版会)
・岩渕功一(2009)「グローバル化とメディア文化再考」NHK 放送文化研究所編『放送メディア研究』第 6 号
・梶田孝道・丹野清人・樋口直人(2005)『顔の見えない定住化~日系ブラジル人と国家・市場・移民ネットワーク』(名古屋大学出版会)
・静岡県多文化共生室(2008)「静岡県外国人労働実態調査報告書」
・自民党・外国人材交流推進議員連盟(2008)「人材開国!日本型移民政策の提言」
・白水繁彦編著(1996)『エスニック・メディア~多文化社会日本をめざして』(明石書店)
・白水繁彦(2004)『エスニック・メディア研究~越境・多文化・アイデンティティ』(明石書店)
・総務省(2006)(2007)「多文化共生の推進に関する研究会・報告書」
・谷正名・米倉律(2009)「「多文化社会化」に放送はどう向き合うべきか②」『放送研究と調査』12月号
・デジタル時代の NHK 懇談会(2006)「最終報告書」http://www3.nhk.or.jp/pr/keiei/kondankai/pdf/houkoku2.pdf
・日本経団連(2008)「人口減少に対応した経済社会のあり方」
・NIRA・シティズンシップ研究会編著(2001)『多文化社会の選択』(日本経済評論社)
・浜松市国際課(2007)「浜松市における南米系外国人の生活・就労実態調査 報告書」
・日比野純一(2002)「多民族社会を拓くコミュニティ放送局『FM わいわい』」津田正夫・平塚千尋編『パブリック・アクセスを学ぶ人のために』(世界思想社)
・町村敬志(1997)「エスニック・メディアのジレンマ」奥田道大編著『都市エスニシティの社会学』
(ミネルヴァ書房)・松浦さと子(2006)「民主的コミュニティ放送の
可能性とデジタル社会~社会運動を接地させる地域社会のメディア環境」『社会学評論』57(2)
・RITE / 国際通信経済研究所(1998)「放送の多チャンネル化とエスニック放送メディアの可能性」
・山田賢一(2005)「台湾における“少数派住民”向け放送」『放送研究と調査』2 月号