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「満足度・生活の質に関する調査」に関する第1次報告書 令和元年5月24日 内閣府 政策統括官(経済社会システム担当)

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「満足度・生活の質に関する調査」に関する第1次報告書

令和元年5月24日

内閣府 政策統括官(経済社会システム担当)

Page 2: 「満足度・生活の質に関する調査」に関する第1次 …0 「満足度・生活の質に関する調査」に関する第1次報告書 令和元年5月24日 内閣府

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要 旨

近年、国際連合や OECDといった国際機関において、幸福度指標の作成を通じて、幸福の

全体図を描き出そうとする試みが進められている。我が国においても、「人々の幸福感・効

用など、社会のゆたかさや生活の質(QOL)を表す指標群(ダッシュボード)の作成に向け

検討を行い、政策立案への活用を目指す」(骨太方針 2017)、「国民の満足度、生活の質が向

上されるよう、満足度・生活の質を示す指標群を構築するとともに、各分野の KPIに関連す

る指標を盛り込む」(骨太方針 2018)こととされた。

これらを受け、内閣府では、GDP といった数量的な側面だけではなく、満足度という質的・

主観的尺度も活用することで我が国の経済社会の構造をより多面的に「見える化」し、政策

運営に活かしていく予定である。こうした観点から、まずは、「満足度・生活の質に関する

指標群(ダッシュボード)」を構築することを目指し、2018 年度に(株)サーベイリサーチ

センターの下で、生活満足度について 1万人を対象とした WEB調査を実施した。

本調査では、生活全体の満足度、生活分野別の満足度や属性及び生活実態等を調査するこ

とで、ダッシュボードを体系的に構築するための豊富な情報を入手できた。本報告書は、「第

1次報告書」としてひとまず、生活全体の満足度と属性及び生活実態の結果を用いた分析を

行い、調査から判明したことの一部を公表するものである。

また、今夏を目途に、他の調査結果等を用いて、より様々な角度から詳細に分析した第2

次報告書を公表し、ダッシュボードの試案を示すとともに、3年ごとにダッシュボード改定

のための調査を行うことで、時代に即した指標群の構造に改善を続けていく予定である。

主なポイントとしては、①我が国の総合主観満足度の平均点は 5.89点となったこと、②

女性の方が満足度は高いこと、③年齢別では「谷型」(45 歳~59 歳が最も低く、60 歳以降

で最も高くなること)、④世帯年収・資産別では「山型」(年収は 2000 万円~3000 万円で、

資産は 1 億円~3 億円で頭打ち。それ以上は満足度が低下すること)、⑤健康状態がよいほ

ど満足度が高く、また、「よい」か「よくない」かで満足度に大きな差が生じること、⑥頼

りになる人の数やボランティア活動の頻度等(ソーシャル・キャピタル)が増加するほど満

足度が高いこと、⑦趣味や生きがいの有無で満足度の差が大きいことなどが判明した。

また、総合主観満足度の回答分布は、先行研究では、中間値の「5点」と「7~8点」に回

答する割合が多い双山型という特徴を持っていたが、今回の結果も同様であることが確認

された。属性別に回答分布を見ると、年齢別では高齢者(60 歳以上)の回答分布が他の年

齢のものと形状が異なり、「8 点」の回答割合が突出して高くなっており、双山型に影響し

ている。一方で、性別、地域別、都市規模別でも双山型がみられる。また、頼りになる人や

ボランティアの有無などの「社会とのつながり」や趣味・生きがいなどの「生活の楽しさ・

面白さ」の有無によって、満足度の分布が異なることから、こうした属性の違いが双山型に

影響を与えることが確認された。

頼りになる人の有無が総合主観満足度にどう影響するのかを検証したところ、①頼りに

なる人が多数(5人以上)いる場合、「世帯年収 100万円未満」「不健康」のような総合主観

満足度を大きく引き下げる要因があったとしても総合主観満足度は大きく引き下がってい

ないこと、②頼りになる人が全くいない場合でも、ボランティア活動を行っている場合には

総合主観満足度が高くなることが判明した。「社会とのつながり」が満足度に与える効果に

ついては引き続き検証していく。

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1.「満足度・生活の質に関する指標群」の構想

(1)「満足度・生活の質」から経済社会構造を捉える

人間は誰しもが幸福になりたいと願っている。どうすれば皆が幸福感や日々の生活に満

足感を得ることができる社会を実現できるのかは全世界共通の課題と言えるだろう。近年

では、国際連合 1や OECD といった国際機関において幸福度指標の作成を通じて、GDPという

側面だけでは捉えられない幸福の全体図を描き出そうとする試みが活発化している 2。

我が国においては、「経済財政運営と改革の基本方針 2017」(2017 年 6月閣議決定)にお

いて、「従来の経済統計を補完し、人々の幸福感・効用など、社会のゆたかさや生活の質(QOL)

を表す指標群(ダッシュボード)の作成に向け検討を行い、政策立案への活用を目指す」こ

ととされ、「経済財政運営と改革の基本方針 2018」(2018年 6月閣議決定)では、「国民の満

足度、生活の質が向上されるよう、満足度・生活の質を示す指標群を構築するとともに、各

分野の KPIに関連する指標を盛り込む」こととされた。

これらを受け、内閣府では、我が国の経済社会の構造を GDPといった数量的な側面だけで

はなく、満足度という質的・主観的尺度も活用することで我が国の経済社会の構造をより多

面的に「見える化」し、政策運営に活かすため、「満足度・生活の質に関する指標群(ダッ

シュボード)」を構築する試みを開始している。

「ダッシュボード」の原義は自動車などの「計器盤」であり、複数の多面的な情報源から

指標を集め、その全体像の一覧表示を行う仕組みのことを意味している。人が自動車の計器

盤を見て、速度計や警告灯・表示灯等の様々な表示を確認しながら運転するように、ダッシ

ュボードとして一覧表示された満足度・生活の質を説明する様々な指標を確認し、満足度・

生活の質を向上するための政策運営に活かしたいと考えている。

ダッシュボードを構築するためには、生活満足度を構成する分野や要素とその影響度を

捉えることが重要である。そこで、満足度について、生活分野別の満足度及びその分野のも

つ影響度について掘り下げるため、「満足度・生活の質に関する調査」として約1万人に対

してWEB調査を実施した。(検討体制・調査概要は参考資料を参照。以後、「SRC調査」とも呼ぶ。)

(2)本報告書の位置づけと今後のスケジュール

「満足度・生活の質に関する調査」では、WEB調査ではあるものの、①生活全体の主観

的満足度、②生活分野別の重要項目、③生活分野別の主観的満足度、④各生活分野の重要度、

1 国際連合事務総長の後援により 2012 年から運営されているネットワークである「持続可能な開発ソリューションネットワーク(Sustainable Development Solution Network:SDSN)」が実施主体となっている。 2 2008 年 2 月、サルコジ仏大統領(当時)のイニシアティブに基づき、ジョセフ・スティグリッツ教授、アマルティア・セン教授らの著名な経済学者をメンバーとして「経済実績と社会進歩の測定に関する委員会(Commission on the Measurement of Economic Performance、通称「スティグリッツ委員会」)が設立され、2009 年 9 月に同委員会からの報告書(Mismeasuring Our Lives:Why GDP Doesn’t Add Up)が発表されるなど、GDP 以外で経済社会の進歩を測定する議論が国際的に活発化している。

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⑤属性及び生活実態を調査することで、ダッシュボードを体系的に構築するための豊富な

情報を入手できた。本報告書は、「第1次報告書」として、ひとまず、①と⑤の調査結果を

用いた分析を行い、調査から判明したことの一部を公表するものである。

今後、今夏を目途に、上記②~④などの結果も用いて、より様々な角度から詳細に分析し

た第2次報告書を公表するとともに、「満足度・生活の質に関する指標群(ダッシュボード)」

(試案)を示すことを予定している。また、3年ごとにダッシュボード改定のための調査を

実施し、より時代に即した指標群の構造に順次改定していく予定である。

具体的には、より満足度や不満足度と密接な関係性を持つ客観指標の精査等の分析を通

じて、ダッシュボードの精緻化を進め、満足度・生活の質から経済社会構造を把握するとと

もに、満足度・生活の質を向上させる政策立案につなげていきたい。また、ダッシュボード

は、内閣府の『経済・財政と暮らしの指標「見える化」ポータルサイト』からも見られるよ

うにしていくことで、地方公共団体をはじめとして、地域ごとの満足度を分析する上でも広

く役立つ形となるようにしていきたい。

2.「満足度・生活の質に関する調査」の結果

(1)総合主観満足度の平均点

「満足度・生活の質に関する調査」の集計結果では、総合主観満足度 3の全国平均は 5.89

点 4となった。直近に公表された国際連合の「World Happiness Report 2019」では、日本の

幸福度は 5.886点とあり、数値としては極めて近い結果となった 5。

図表1 総合主観満足度(全体)

3 「満足度・生活の質に関する調査」では、「現在の生活にどの程度満足しているか」について、0 点から 10 点の 11段階で満足の度合を質問し、「全く満足していない」を 0 点、「非常に満足している」を 10 点として調査を実施。4 総合主観満足度の全国平均は、「満足度・生活の質に関する調査」(SRC)の単純集計結果ではなく、平成 27 年国勢調査の構成比(性別・年齢・地域)で調整(ウエイトバック集計)を行っている。 5 「World Happiness Report 2019」では、1位フィンランド(7.769点)、2位デンマーク(7.600点)、3位ノルウェー

(7.554点)、15位英国(7.054点)、17位ドイツ(6.985点)、19 位米国(6.892 点)、24 位フランス(6.592 点)、36位イタリア(6.223 点)、54 位韓国(5.895 点)、58 位日本(5.886 点)、93 位中国(5.191 点)。

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(2)属性別で見た総合主観満足度の特徴

今回の調査から、属性別にその特徴を見ると、①女性の方が満足度は高いこと、②年齢別

では「谷型」となること、③世帯年収・資産別では「山型」となること、④健康状態がよい

ほど満足度が高く、また、「よい」か「よくない」かで満足度に大きな差が生じること、⑤

頼りになる人の数やボランティア活動の頻度等(ソーシャル・キャピタル)が増加するほど

満足度が高いこと、⑥趣味や生きがいがある人ほど満足度が高いこと、が判明した。詳細は

以下のとおり。

(a)性別×年齢

性別で見ると、女性の方が男性よりも総合主観満足度が高いことがわかる。

「45歳~59 歳」までは男女ともに年齢とともに、総合主観満足度が低下していくが、「60

歳以上」になると急激に上昇する。

図表2 性別×年齢別の総合主観満足度

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(b)地域・都市規模

地域別では、東海地方・近畿地方が比較的高かったものの、大きな特徴は見出せなかった。

都市規模別では大きな差異はない。

図表3 地域ブロック別の総合主観満足度

図表4 都市規模別の総合主観満足度

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(c)世帯年収・金融資産残高・学歴

世帯年収別では、「山型」となる。世帯年収が「2000 万円~3000 万円」までは年収の上昇

に応じて総合主観満足度が高まるが、ここで頭打ちし、それ以上の年収があっても、総合主

観満足度はゆるやかに逓減する。特に、年収 300 万円を境に総合主観満足度が約 0.5 ポイ

ント上昇するなど、それ以降の年収の増加と満足度に比して大きく上昇する。

なお、世帯年収別の人口構造は図表6のとおりである。客観指標(国民生活基礎調査の平

均所得金額 6)では、年収が「100万円~300万円」、今回のSRC調査では「300万円~500

万円」であると回答する所得層をピークとする人口構造となっている。

図表5 世帯年収別の総合主観満足度

図表6 世帯年収別の人口構造(SRC調査と国民生活基礎調査)

6 厚生労働省「平成 28 年国民生活基礎調査」より。平成 27 年 1 月 1 日~12 月 31 日までの1年間の全世帯の所得

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世帯金融資産残高別では、世帯収入と同様に「山型」が存在し、「1億円~3億円」までは

資産残高の上昇に応じ総合主観満足度が高まるが、ここで頭打ちし、「3 億円以上」は低下

している。また、資産 100万円未満と 100万円以上では、約 0.6ポイント差の大きな総合主

観満足度の違いが発生している。

なお、世帯資産残高別の人口構造は図表8のとおりである。客観指標(国民生活基礎調査

の平均貯蓄額 7)では、資産残高が「100万円未満」が最も多く、「700万円~1000 万円」が

最も少ない人口構造となっている。

図表7 世帯金融資産残高別の総合主観満足度

図表8 世帯資産残高別の人口構造(SRC調査と国民生活基礎調査)

7 厚生労働省「平成 28 年国民生活基礎調査」より。平成 28 円 6 月末日時点の平均貯蓄残高。

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学歴は高いほど総合主観満足度は上昇する。ただし、高学歴(大学院修了)であったとし

ても総合主観満足度は6点程度で頭打ちとなっており、学歴の差による総合主観満足度の

差は他の属性項目と比べて違いが少ない。

学歴が高くなれば、所得の上昇を通じて、総合主観満足度を高めている可能性があり、所

得要因とそれ以外の要因を区別するため、学歴別かつ所得階層別にクロス集計を行ったも

のが図表 10 である。その結果、所得階層が同じであっても、高学歴になるほど総合主観満

足度が高くなる傾向が見て取れる。

図表9 学歴と総合主観満足度

図表 10 「学歴別」×「所得別」の総合主観満足度

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(d)健康状態

健康状態はよいほど総合主観満足度は上昇する。健康状態は、「よい」か「よくない」か

で総合主観満足度に大きな差(約4ポイント)が生じており、今回調査した中では最も満足

度に差が生じる属性項目であった。

図表 11 健康状態と総合主観満足度

(e)社会とのつながり

「友人との交流頻度」、「頼れる人の人数」、「ボランティアの頻度」など、社会とのつなが

りを強くしたり、「共助」を強化する属性については、総合主観満足度を増加させる傾向が

確認できる。つながりの中でのセーフティーネットが機能していると考えられる。

特に、友人との交流頻度や頼れる人の人数別の総合主観満足度を見ると、交流頻度や頼れ

る人数の多寡によって満足度に大きく差が出ている。社会とのつながりや共助を担う環境

と満足度との関係性が高いことが伺える。

(※「頼りになる人」による総合主観満足度への効果については Boxを参照。)

図表 12 友人との交流頻度別の総合主観満足度

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図表 13 頼れる人の人数別の総合主観満足度

図表 14 ボランティアの頻度別の総合主観満足度

(f)趣味・生きがい

「趣味・生きがい」の有無では総合主観満足度に約 1.8ポイントの大きな差が出る。

「趣味・生きがい」など、生活の楽しさ・面白さにつながる要因は、総合主観満足度を大

きく高めると考えられ、引きつづき、その構造や影響について分析をしていきたい。

図表 15 趣味・生きがいの有無と総合主観満足度

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(3)総合主観満足度の回答分布は「双山型」

総合主観満足度の回答分布を見てみると、図表 16のとおり、中間値の「5 点」と「7点~

8点」に回答する者が多い「双山型」となっている特徴が確認できる。

図表 16 総合主観満足度(全体)8(総数=10,293)

(4)総合主観満足度が「双山型」である理由(検証)

総合主観満足度が「双山型」であることについて、過去調査との比較や属性別による比

較で説明できないかの検証を行った。暫定的な結果として以下のとおり紹介する。

なお、今回の検証では、前述のとおり、アンケート調査結果のうち、「生活全体の主観

的満足度」と「属性及び生活実態」を用いた分析を行っているが、今後、「生活分野別の

主観的満足度」による違いやその他の要因によっても説明できないかを引き続き検討して

いきたい。

8 総合主観満足度の全国平均は、「満足度・生活の質に関する調査」(SRC)の単純集計結果ではなく、平成 27 年国勢調査の構成比(性別・年齢・地域)で調整(ウエイトバック集計)を行っている。

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(a)過去調査との比較(内閣府「国民選考度調査」「生活の質に関する調査」)

内閣府(旧経済企画庁)では、1970 年代以降、暮らしに関する指標(社会指標や国民生活

指標など)がこれまでも検討されてきた。近年では、「国民生活選好度調査」(2009年~2011

年)や「生活の質に関する調査」(2012年~2014年)を通じて、個人の幸福感の現状や主観

的幸福度について調査するなどの実績があるとともに、「国民生活に関する世論調査」では

毎年、現在の生活に対する満足度などの調査を行っている。

ここでは、内閣府において直近に実施した「国民選好度調査」、「生活の質に関する調査」

と今回の調査との形状の比較を試みたところ、これら調査時期や調査方法に違いがあるに

も関わらず、いずれも「双山型」となっている。

内訳を見ると、今回の調査の方が、「0~4 点」と回答する者が多く、「5 点」や「10 点」

と回答した者が少ない結果となっているものの、過去の調査においても、「5 点」と「7~8

点」に回答する者が多い。

なお、過去の調査においては、「幸福度」を調査 9しているのに対し、今回は、「生活満足

度」を調査していることに留意が必要である。「幸福度」と「生活満足度」は似てはいるが、

異なる概念なので、単純比較はできない。仮説にすぎないが、「幸福度」の方がより人生そ

のものの評価を根源的に問われているよう感じ、「0 点」などの低い点数をつけづらくなる

など、より漠然と楽観的に捉えている可能性はある。他方で「生活満足度」の方が、ある一

定の条件や基準を超えると満足なのか不満なのかを判断し、より現実的なものとしてシビ

アに採点している可能性がある。

図表 17 「国民選好度調査」及び「生活の質に関する調査」との比較

9「あなたは現在、どの程度幸せですか。「とても幸せ」を 10 点、「とても不幸」を 0 点とすると、何点くらいになると思いますか。」への回答。

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(b)属性別での比較

総合主観満足度の「双山型」を属性別の山の形状の違いによって説明できないかを検証

した。その結果、年代別では、「高年齢層」による回答分布が「双山型」に影響を与えて

いることが判明した。また、頼りになる人やボランティアの有無などの「社会とのつなが

り」や趣味・生きがいなどの「生活の楽しさ・面白さ」の有無が双山型に影響を与えてい

ることが判明した。検証の詳細は以下のとおり。

①性別

性別で総合主観満足度を比較すると、図表 18のとおりである。女性の方が「8点」を

つける割合が高く、男性が「7点」をつけることが多いという違いはあるものの、どち

らもほぼ同じ形状の「双山型」であるため、総合主観満足度(全体)の双山型に影響し

ていないと考えられる。

図表 18 男女別の総合主観満足度の回答分布

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②年齢別

年齢別では高齢層(60~89 歳)では「8点」と回答する割合が突出して高い特徴があ

る。若年層(15~24 歳、25~34歳)では、「6点」や「7点」の回答割合が比較的多

く、「ひと山型」に近くなる特徴があった。また、中年層(35~44歳、45~59歳)で

は、大きな山が「5点」にある「双山型」になっており、年齢別で総合主観満足度の山

の形状に違いが見られた。

特に、若年層が「ひと山型」に近い形状であるとともに、高齢層の「8点」が突出し

て多い(かつ「6点」が少ない)形状が総合主観満足度(全体)の双山型に影響してい

る。

図表 19 年齢別の総合主観満足度の回答分布

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③地域別・都市規模別

地域別においても、総合主観満足度(全体)の「双山型」とほぼ重なる形状が見て取

れる。なお、総合主観満足度の形状に少し違いが見られるのは、「北陸地方」であり、

他地域と比べると、「6点」を回答する割合が高くなっている。しかしながら、北陸地方

のシェアは小さいことから総合主観満足度(全体)の双山型の形状への影響は小さい。

図表 20 地域別の総合主観満足度の比較

都市規模別に見ても、全体の「双山型」とほぼ同様の形状となっており、総合主観満

足度(全体)の双山型の形状への影響はないと考えられる。

図表 21 都市規模別の総合主観満足度の回答分布

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④「頼りになる人」の人数

「頼りになる人」の人数別の総合主観満足度の回答分布を見てみると、「頼りになる

人がいない」場合は、「総合主観満足度を 5点」と回答する人が多い「ひと山型」の傾

向があるとともに、総じて満足度が低く、5点以下の人が 74%を占める。頼りになる人

が増えれば増えるほど、「0~4点」や「5点」を回答する割合が減少し、「7点~8点」

を中心に人数割合が増えていく傾向が見て取れる。

特に、頼りになる人が「0人又は 1人」の場合と「2人以上」の場合を比較すると、

「0 人又は 1人」の場合には「5点」と回答する人が多く、「2人以上」の場合には「7

点~8点」に回答するのが多数となり、こうした形状の差異が全体の双山型に影響して

いる。

図表 22 頼りになる人の人数別の総合主観満足度の回答分布

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⑤「ボランティア」活動

ボランティア活動の有無別で総合主観満足度の形状の違いを見たところ、ボランティ

アを行っていない人が「5点」、ボランティアを行っている人が「7点~8点」にピーク

がある形状となっており、全体の「双山型」に影響している。

図表 23 ボランティア活動と総合主観満足度

⑥趣味・生きがい

「趣味・生きがい」の有無で総合主観満足度の分布を見ると、趣味・生きがいがない

場合、総合主観満足度を「5 点」と回答する人が多く、「ひと山型」の傾向がある。

他方で、趣味・生きがいがある場合においては、「7点~8点」に回答するのが多数と

なっている。こうした差異により全体が双山型に影響している。

図表 24 趣味・生きがいと総合主観満足度

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Box. 総合主観満足度を用いた分析事例(頼りになる人の総合満足度への影響)

属性別の総合主観満足度を用いた分析事例として、「頼りになる人」が総合主観満足度

にどう影響するのかについて紹介する。

(1) 頼りになる人が多い場合

頼りになる人の人数が多いほど、総合主観満足度が高まることは前述のとおりだが、こ

こでは、頼りになる人が多い場合、他の条件で総合主観満足度を向上させたり、悪化させ

たりする要因があった場合の影響度について、クロス集計の結果から検証した。

図表 26 頼りになる人が「0 人又は 1人」と「5人以上」の場合

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図表 26のとおり、世帯年収が「100万円未満」と「1000 万円以上」、世帯資産「100万

円未満」と「1000万円以上」、「健康」と「不健康」で比較した。

すべての場合において、「頼りになる人が多い(5人以上)」場合には総合主観満足度を

引き上げ、「頼りになる人が少ない(0人又は 1人)」場合には、総合主観満足度を引き下

げることがわかる。特に、頼りになる人が多数(5人以上)いる場合、「世帯年収 100万円

未満」「不健康」のような総合主観満足度を大きく引き下げる要因があったとしても総合

主観満足度は大きく引き下がっていないことがわかる。

(2)頼りになる人がいなくても総合主観満足度が高くなる場合

頼りになる人がいないと回答した者(総数:990人)の属性的な特徴を調べたところ、

①男性の数が女性の約2倍(男性 66%、女性 34%)であり、中でも男性の 45~59歳が全

体の 18%を占めていること、②世帯年収、資産については低い人が多い(特に世帯

年収 100万未満、世帯資産が 100 万円未満と回答する割合が多い)傾向があった。

他方で、頼りになる人がいない人であっても、総合主観満足度が高い傾向がある人はど

ういう属性なのかを調べたところ、「ボランティア活動の有無」について顕著な違いが見

られた。頼りになる人がいなくても、ボランティア活動を行っている人の場合、総合主観

満足度を 0点と回答する割合が少なくなるとともに、6点~8点に回答する割合が多くな

り、全体として総合主観満足度が高くなることがわかる。

図表 27 頼りになる人がいない×ボランティアの有無

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「満足度・生活の質に関する調査」の調査体制と概要

(1)調査体制

内閣府では、2018 年 9 月に(株)サーベイリサーチセンター(以下「SRC」)への業務委

託を行い、SRC の下で、「満足度・生活の質指標群に関する研究会」を立ち上げ、約 1 万人

規模の WEB調査(満足度・生活の質に関する調査)を行った。

(2)「満足度・生活に質に関する調査」の概要

項目 内容

目的 総合的な主観的満足度及び分野別満足度を調査し、客観指標との関係性を明らかにする。

調査方法 WEB調査

対象者 日本国内に住む 15歳~89歳のインターネットパネル登録モニター

回収数 10,293件(約 1万件と設定し、下段の割当数の算定において端数処理を行った結果、10,293件とした)

回収数の割当※ 地区別、性別、年齢階層別に割当を実施した。

※割当にあたっては、母集団をできるだけ反映するとともに、都道府県別結果の標準誤差を抑え

るため、均等割当と人口比に応じた割当を組み合せた。

○地域区分:47都道府県に 7050件を均等割当し、3243件を人口比に応じて割当

(1県当たり 169~477件:均等 150件+人口比 19~327件)

○性別区分:47都道府県に男女各 3525件を均等割当し、3243件を人口比に応じて割当

①男性(1県当たり 84~235件:均等 75件+人口比 9~160件)

②女性(1県当たり 85~242件:均等 75件+人口比 10~167件)

○年代区分:①15~24歳(1県当たり 32~68件:均等男女各 15件+人口比男女計 2~38件)

②25~34歳(1県当たり 32~82件:均等男女各 15件+人口比男女計 2~52件)

③35~44歳(1県当たり 34~91件:均等男女各 15件+人口比男女計 4~61件)

④45~59歳(1県当たり 34~105件:均等男女各 15件+人口比男女計 4~75件)

⑤60~89歳(1県当たり 37~131件:均等男女各 15件+人口比男女計 7~101件)

調査期間 平成 31年1月 25日(金)~2月 7日(木)

質問数・項目 ○質問数:合計 35問(質問が分岐するため、実質の質問数は増減する)

○項 目:①生活全体の主観的満足度、②生活分野別の重要項目、③生活分野別の主観的満足度、

④各生活分野の重要度、⑤属性及び生活実態

参考資料

満足度・生活の質指標群に関する研究会 構成員一覧

猪狩 廣美 聖学院大学政治経済学部特任教授、荒川区自治総合研究所理事

大守 隆(座長) 科学技術振興機構 社会技術研究開発センター

領域総括(多世代領域)

小塩 隆士 一橋大学経済研究所 教授

白石 小百合 横浜市立大学 国際総合科学部 教授

土屋 隆裕 横浜市立大学 データサイエンス学部

データサイエンス推進センター 教授

(50音順、敬称略)

※回収数の割当は下記の手順で行った。

①n=1万人のうちE人を 47 都道府県に均等割当(都道府県内では性・年齢層に均等割当)、残りのP人を 47 都道府県に比例割当(都道府県内では性・年齢層に比例割当)とする。

②都道府県・性・年齢層に割当てたときの、1万人各々のウェイト(抽出調査では抽出率の逆数にあたるもの:wi)を求める。

③求めたウェイト wiの不等加重効果(UWE)を求める。 UWE = nΣwi2/ (Σwi)

2

④人口が最少の鳥取県の標準誤差(SE)を求める。 SE =1/2√n

⑤E の値を 0 から徐々に大きく変えていくと、鳥取県の SE が小さくなる一方で UWE は大きくなっていく。この過程で、UWE が小さく収まる時(1.5 未満)の E は 7,000 であったことか

ら、E=7,000 として割当を行った(E(均等割当):7,000、P(比例割当):3,000、計 10,000)。