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「小中一貫教育・地域学校園」制度 検証報告書 平成26年10月20日 宇都宮市教育委員会

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「小中一貫教育・地域学校園」制度

検証報告書

平成26年10月20日

宇都宮市教育委員会

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目 次

Ⅰ 検証の趣旨・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

Ⅱ 現行「小中一貫教育・地域学校園」制度の概要・・・・・・・・・・・2

1 本制度導入の経緯と全体概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2

2 全国的な小中一貫教育の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4

Ⅲ 主な取組の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5

1 小中一貫教育カリキュラム(4・3・2 制カリキュラム)の実施・・・ 6

2 授業時数の増加・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7

3 中学校教員の小学校への乗り入れ授業・・・・・・・・・・・・・・・8

4 小学校教員の中学校への乗り入れ授業・・・・・・・・・・・・・・10

5 会話科の実施・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12

6 教科横断的教育活動の実施・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14

7 小学校6年生の進学先中学校訪問・・・・・・・・・・・・・・・・16

8 児童生徒の交流活動・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18

9 教職員の連携した取組と推進のための運営体制・・・・・・・・・・20

(含 授業力向上に向けた取組)

10 小中一貫教育推進主任業務・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22

11 地域の教育力を活用した教育活動・・・・・・・・・・・・・・・・23

Ⅳ 本市の現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25

1 本市児童生徒の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25

2 学習指導等の状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31

3 地域との連携状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33

4 現状のまとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34

Ⅴ これまでの総括・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35

Ⅵ 持続可能な制度とするために・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36

1 基本的な考え方・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36

2 基本方針・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・36

3 平成27年度以降の

「小中一貫教育・地域学校園」制度 全体構想・・・・・・・・・・ 37

4 具体的な取組の改定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 38

Ⅶ 持続可能な制度の推進にあたって・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43

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1

Ⅰ 検証の趣旨

本市においては,すべての児童生徒の学力保障と学校生活適応を目指すとともに,学校

教育の充実を図る「小中一貫教育・地域学校園」制度を平成22年度からのモデル実施を

通して平成24年度から全市で導入した。

この「小中一貫教育・地域学校園」制度は,各地域学校園においてほぼ円滑に進められ

たが,制度実施に伴う教職員の業務増加により多忙化が進むとともに,全市一斉実施のた

めに学校が主体性を十分に発揮しながら取組を進めることが難しい状況も見られた。

そこで,本制度を本市の実情に応じた持続可能な制度とするため,本制度の取組の成果

や課題等を児童生徒,教職員,そして保護者,地域の状況等から把握するなどして,平成

26年度中を目途に検証を行うこととした。また,本検証を踏まえて,平成27年度も持

続可能な「小中一貫教育・地域学校園」制度となるよう今後の方向性を明らかにするとと

もに,具体的な取組についても検討を行うものである。

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Ⅱ 現行「小中一貫教育・地域学校園」制度の概要

1 本制度導入の経緯と全体概要

(1) 本制度導入の経緯

本市においては,本制度導入以前から習熟度別学習・少人数指導など様々な取組を

進め,義務教育終了段階における学力が向上するなどの成果が見られてきた。このよ

うな中,小学校から中学校への進学時に学習内容が難しくなることなどにより,学習

や学校生活にうまく適応できない生徒などが見られるなど,いわゆる中1ギャップが

明らかになってきた。

このため,平成19年度には「学校教育制度基本計画」を策定し,義務教育9年間

を一体として捉え,児童生徒の発達の段階に応じた系統的な指導により,本市全ての

児童生徒の学力保障と学校生活適応を目指した「小中一貫教育・地域学校園」制度を

既存の施設を活用した施設分離型で実施することとした。また,平成20年度には,

一つの中学校と複数の小学校を組み合わせた25地域学校園を設定し,平成22年度

より先行実施する6モデル地域学校園を指定した。

平成24年度の全市実施にあたっては,市内25地域学校園の全教職員が本制度や

取組の目的について共通理解を図りながら「小中一貫教育・地域学校園」制度を進め

られるよう,市教育委員会がモデルの実施状況を踏まえて作成した「手引書」に基づ

きながら,全市一斉の取組と各地域学校園独自の活動を行い,2年余が経過している

ところである。

25地域学校園の組合せ(網掛けは,モデル地域学校園)

NO 中学校 小学校 NO 中学校 小学校

1 一条 西 西原 宮の原 14 国本 国本中央 国本西 晃宝

2 陽北 東 錦 豊郷南 15 城山 城山中央 城山西 城山東

3 旭 中央 簗瀬 城東 16 晃陽 富屋 篠井

4 陽南 陽南 緑が丘 横川西 陽光 17 姿川 姿川中央 姿川第一

5 陽西 桜 宝木 18 雀宮 雀宮中央 雀宮東 雀宮南

6 星が丘 戸祭 昭和 上戸祭 19 鬼怒 御幸 平石中央 平石北 御幸が原

7 陽東 峰 石井 陽東 20 宝木 細谷 西が岡

8 泉が丘 今泉 泉が丘 21 若松原 五代 新田

9 宮の原 富士見 明保 姿川第二 22 上河内 上河内東 上河内西 上河内中央

10 清原 清原中央 清原南 清原北 清原東 23 古里 白沢 岡本北

11 横川 横川中央 横川東 24 田原 田原 田原西

12 瑞穂野 瑞穂野北 瑞穂野南 瑞穂台 25 河内 岡本 岡本西

13 豊郷 豊郷中央 豊郷北 海道

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(2) 本制度の全体概要

ア 制度の目的

「小中一貫教育・地域学校園」制度は,義務教育9年間を通した系統的な指導に

より,児童生徒の学力保障と学校生活適応を目指すとともに,地域の教育資源を活

用した特色ある教育活動や学校支援を行いながら,子どもを育みながら大人も学ぶ

地域教育活動を推進することを目的として実施した。

イ 制度における取組の概要

小中一貫教育については,小中学校の連携の強化により,義務教育 9 年間を「基

礎期」「活用期」「発展期」の 4・3・2 に分けた小中一貫教育カリキュラムの実施

や相互乗り入れ授業,小学校6年生の進学先中学校訪問などの取組を実施した。ま

た,地域学校園については,小中一貫教育をはじめとした教育活動に地域の教育力

を活用して取組を進めてきた。

幼稚園・保育所等

中学校 小 学 校 小 学 校

中 学 校 商店・農家等

高等学校等

小中一貫教育

「小中一貫教育・地域学校園」制度の全体概要

地 域 学 校 園

小中学生の学校生活適応と

学力保障を目指す

学校教育の充実

企業・事業所等

子どもを育みながら,

大人も学ぶ

地域教育活動

地域教育力を結集した

学校支援

「街の先生」 PTA 宮っ子ステーション等

生涯学習

センター 地域各種施設(図書館・美術館等)

大学等

地域の自然環境

地域の伝統文化

ボランティア団体等

NPO等

地域スポーツ クラブ等

子ども会 育成会等

まちづくり組織・自治会等

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2 全国的な小中一貫教育の状況

・ 平成17年度の中央教育審議会答申「新しい義務教育を創造する」の中で,義

務教育においては学校種間の連携・接続の在り方に大きな課題があり,設置者の

判断で9年制の義務教育学校を設置することの可能性やカリキュラム区分の弾力

化など,学校種間の連携・接続を改善するための仕組みについて検討する必要性

が指摘された。

・ この頃から,全国において小中一貫教育に取り組む自治体が増加し,東京都の

品川区や三鷹市,京都市,奈良市,呉市などが全市区で実施するとともに,小中

一体型の施設を建設して小中一貫教育を行う自治体も見られるようになった。

・ 平成22年度に文部科学省が行った調査によると,72.8%の自治体が,小

中一貫した教育課程の編成や乗り入れ授業の実施,小中教職員の合同会議など,

小中一貫教育のいずれかの取組を行っており,全国的な広がりも見せているとこ

ろである。

・ また,平成24年7月13日に中央教育審議会初等中等教育分科会において「小

中連携,一貫教育に関する主な意見等の整理」がとりまとめられ,小中一貫教育

を進めることで,義務教育期間において児童生徒の資質,能力,態度をよりよく

育めるようになったり,中学生の不登校出現率の減少や学習状況調査等の平均正

答率の上昇などの効果等が明らかになり,県内においても小中一貫教育を実施す

る自治体が増加している。

・ さらに,教育再生実行会議では,平成25年10月から「学制の在り方」を議

題に学校種間の円滑な移行や小中一貫教育の意義や効果などについて検討してお

り,文部科学省は,この教育再生実行会議での検討結果を踏まえ,自治体が9年

間の義務教育期間を弾力的に運用したカリキュラムを実施する一体型の「(仮称)

小中一貫教育学校」の設置を,国の制度として正式に位置づけるよう,学校教育

法の改正に向けた検討を進めているところである。

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Ⅲ 主な取組の状況 ○は成果,●は課題

本章では,「小中一貫教育・地域学校園」制度における具体的な取組の目的や内容を

示すとともに,平成25年度に実施した「全教職員対象アンケート」や,抽出実施に

よる「児童生徒アンケート」「保護者アンケート」,学校訪問や校長会との意見交換会

などを通して取組の状況をまとめた。

【アンケート調査について】

1 「小中一貫教育・地域学校園」制度 小中学校教職員対象アンケート

(1)実施時期:平成25年12月16日~24日

(2)対 象:全小中学校教職員 2,582名

2 「小中一貫教育・地域学校園」制度 児童,生徒,保護者対象アンケート

(1)実施時期:平成26年2月12日~18日

(2)対 象:6地域学校園(清原,横川,姿川,鬼怒,田原,河内)

児 童 1,063名

生 徒 954名

保護者 1,771名

【校長会との意見交換会等について】

1 校長会との意見交換会(小中学校長代表12名)

(1)実施日 平成25年5月,8月

平成26年5月,7月

(2)内 容 ○小中一貫教育の実施状況と課題について

○検証と今後の取組について

2 小中一貫教育推進主任連絡会(各地域学校園推進主任1名)

(1)実施日 平成25年6月,10月

平成26年1月

(2)内 容 ○各地域学校園の取組について

○推進主任業務について

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1 小中一貫教育カリキュラム(4・3・2 制カリキュラム)の実施

(1)目的

児童生徒の学力保障を目指し,小中一貫教育カリキュラムモデルプランに基づき,

地域学校園において系統性のある教育活動の展開を図る。

(2)取組内容

義務教育9年間を「基礎期」「活用期」「発展期」の4・3・2に分けた「小中一貫教育カリキュラムモデルプラン」を,各地域学校園の部会や教科分科会などを通して地域学校園化や自校化を行い,授業を実施してきた。

各地域学校園においては,「活用期」を中心にカリキュラムの見直しを行うとともに,小学校においては,教科指導の充実を図るとともに,中学校教育への円滑な接続を目指して,専科教員の活用や担任の授業交換等により,学校の実情に応じた高学年教科担任制を実施してきた。

(3)アンケート結果等

【全教職員対象アンケート】

○ 小中一貫教育導入以前は,小中学校双方の学習内容等を意識して指導する教員は少なかったが,半数以上の教員が双方の学習内容を意識して指導するようになった。

○ 小中学校の接続部分である「活用期」(小学校5年生~中学校1年生)に重点を置いて学習指導を進めた教員が多い。

● 「発展期」におけるカリキュラムの地域学校園化,自校化は十分に進められていない。

(4)その他の状況から(学校訪問,校長会からの意見 等) ● 小中一貫教育カリキュラムを各学校の教育課程に十分生かせているとは言えない。 ● モデル地域学校園実施前には,小学校高学年の教科担任制の推進を取組の一つと

して示したが,全市実施においては,学校の自主的な取組に任せてきた。

(5)まとめ

○ 「活用期」に重点を置いて取組を進めた結果,小中学校の教職員の約6割が,4・3・2 制カリキュラムの実施を通して,双方の教育活動を意識して指導できた。

● 「基礎期」「発展期」は目標設定にとどまっている地域学校園が多く,今後,より一層の学力の定着を図るため,小中一貫教育カリキュラムを踏まえた教育課程編成や,小中学校教員が双方の学習内容を意識し,学年や発達の段階などに応じた系統的な指導を充実させることが必要である。

● 教科指導の充実を図り,中学校教育との円滑な接続を目指した高学年教科担任制を,各小学校の実情に応じてより一層推進する必要がある。

アンケート 項目 H25(%)

・小中学校双方の学習内容等を意識して指導した。 56.4

・4-3-2カリキュラムの3期の学習指導で重視した時期

・基礎期(4年間)

・活用期(3年間)

・発展期(2年間)

36.7

46.3

10.2

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7

2 授業時数の増加

(1)目的

児童生徒のつまずきやすい内容に時間をかけて指導するなど,小中一貫教育カリキュラムの実効性を一層高めるため,特定教科の授業時数を国の標準時数より増加する。

(2)取組内容 国語,算数・数学,英語,会話科において,国の標準時数より各学年で15~20

時間授業時数を増加させ,本市児童生徒の学力保障に向けた授業を実践した。

【本市増加時数】

(3)アンケート結果等

【全教職員対象アンケート】

○ 6割近くの教員が授業時数増は学力向上に効果があると考えている。 ● 7割の教員が授業時数を増加する教科や具体的時数は学校裁量で決定した方が学

力向上に効果があると考えている。

(4)その他の状況から(学校訪問,校長会からの意見 等) ● 授業時数増加のため,特に中学校において教育課程や時間割が組みにくい。 ● 授業時数増加を含めた小中一貫教育の業務により,放課後等に児童生徒と向き合

う時間が持ちにくいと考える教職員がいる。

(5)まとめ ○ 授業時数の増加は,教職員の半数以上が学力向上に期待できる取組として評価し

ている。 ● 授業時数増加により,特に中学校において教育課程が組みにくい。また,放課後

に小中一貫教育実施に係る打合せ等の時間が持ちにくい。 ● 多くの教職員は,授業時数増を学校裁量で決定したほうが良いと考えている。

学年 国語 算数・数学 外国語 会話科 増加時数

合計 ことば 英会話

中3 5 5 5 15

中2 5 5 5 15

中1 5 5 5 5 20

小6 10 10 20

小5 10 10 20

小4 5 5 5 5 20

小3 5 5 5 5 20

小2 5 5 5 5 20

小1 5 5 5 5 20

アンケート 項目 H25(%)

授業時数の増加は学力向上のため有効に活用されている。 59.5

授業時数を増加する教科や具体的時数は,学校裁量で決定した方が学力向上に効果がある。

70.0

□ 教職員対象アンケートからの意見

● 特定の教科の授業時数を増加すると,特定教員の業務が過重になる。

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8

3 中学校教員の小学校への乗り入れ授業

(1)目的

中1ギャップを踏まえ,児童の学力保障や学校生活適応を図るとともに,小・中学校の教職員が相互理解を深め,それぞれのよさを取り入れながら,小中の円滑な指導の継続を図ることで,義務教育9年間全体の指導を充実する。

(2)取組内容 本市全ての小学校6年生が,国語,算数,会話科(英会話の時間)の3回を含め,

中学校教員による計6回の授業を受けられるようにした。この取組を円滑に進めるため,「学力向上非常勤講師(乗り入れ授業後補充)」を配置し,後補充授業等を実施した。

(3)アンケート結果等

【児童対象アンケート】

○ 小学校6年生の8割以上が,中学校教員による小学校への乗り入れ授業により,中

学校の学習への不安が軽減され,教科への意欲が高まったと考えている。

【全教職員対象アンケート】

【乗り入れ授業実施教員アンケート(平成25年度 508 人)】

小中学校間での教員の相互理解が深まった。 85.0

アンケート 項目 H25(%)

中学校の先生による小学校への乗り入れ授業を行うことにより,中学校の学習や生活についての不安が減ったと思う。

81.1

中学校の先生による小学校への乗り入れ授業を行うことにより,中学校の教科についての意欲が高まったと思う。

81.5

アンケート 項目 H25(%)

中学校教員による小学校への乗り入れ授業は,子どもの学力保障に効果がある。

50.3

中学校教員による小学校への乗り入れ授業は,子どもの学校生活適応に効果がある。

67.9

中学校教員による小学校への乗り入れ授業は,実施教科拡大により,教職員の相互理解に効果があった。

63.9

乗り入れ授業に係る事前,事後の打合せなど,乗り入れ授業を実施するための業務が過重である。

72.7

□ 児童生徒対象アンケートからの意見

○ 中学校教員の乗り入れ授業で,中学校でどんな勉強をしているのがわかって目標

を立てやすかった。

○ わかりやすい解説や実験があり,学習内容がよくわかった。

○ 主に中学校の先生とのかかわりについての不安が解消された。

○ 中学校の先生が小学校に来ることで,中学校に行っても先生との関わりがよくな

ると思った。

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9

○ 全教職員アンケートでは,5割以上の教員が,児童の学力保障や学校生活適応に効果があると考えており,乗り入れ授業を実施した8割以上の教員は,相互理解が深まったと考えている。

● 中学校教員の小学校への乗り入れ授業では,6割以上の教員が地域学校園の実情に応じた教科を実施したことで,相互理解に効果があったと考えている。また,7割以上の教員が,乗り入れ授業に係る事前,事後の打合せなどの業務が過重であると感じている。

【全教職員対象アンケート】

○ 8割以上の教職員が,市費の「学力向上非常勤講師(乗り入れ授業後補充)」の必要性を感じている。

【保護者対象アンケート】

○ 7割程度の保護者は,小中相互乗り入れ授業は,学力保障や学校生活適応に効果があると思っている。

(4)その他の状況から(学校訪問,校長会からの意見 等)

● 乗り入れ授業の目的を学力保障とすることについて,疑義がある教員が多い。

(5)まとめ

○ 乗り入れ授業により,教職員は相互理解を深め,児童は中学校の学習や生活についての安心感を高めた。

○ 乗り入れ授業の後補充を行う学力向上非常勤講師は有効に活用され,教職員はその必要性を強く感じている。

● 全教職員が乗り入れ授業の目的を十分に把握し,有用感を感じられるような工夫が必要である。また,乗り入れ授業の目的については見直す必要がある。

アンケート 項目 H25(%)

相互乗り入れ授業や推進主任の後補充授業,習熟度別学習を行うために,学力向上非常勤講師の役割は必要である。

86.6

アンケート 項目 H25(%)

小中相互乗り入れ授業は,「小中一貫教育・地域学校園」制

度の目的を達成するために効果があると思う。 67.7

□ 保護者対象アンケートからの意見

○ 乗り入れ授業は新しい環境に適するために大切であると思う。

● 数回しかない乗り入れ授業や交流では,ただ目新しいだけで,特別よい効果が

得られるとは思わない。

□ 教職員対象アンケートからの意見

○ 平成25年度から複数教科の乗り入れ授業となり,中学校の素晴らしい授業を見せていただけたことは,小学校にとって大変参考になった。

○ 中学校教員の小学校への乗り入れ授業で,子どもは中学校進学への安心感と期待感が高まった。

● 乗り入れ授業が中学校の特定の教員に偏っている。全ての教科の先生が何年間の間には必ず乗り入れ授業をすることが必要である。

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4 小学校教員の中学校への乗り入れ授業

(1)目的

中学校入学後の生徒の学校生活適応を図ると

ともに,小・中学校の教職員が相互理解を深め,

それぞれのよさを取り入れながら,小中の円滑な

指導の継続を図ることで,義務教育9年間全体の

指導を充実する。

(2)取組内容

中学校1年生の生徒が年2回,出身小学校の教員の授業を受けられるようにした。

この取組を円滑に進めるため,「学力向上非常勤講師(乗り入れ授業後補充)」が後補

充授業等を実施した。

交流型地域学校園においては,地域学校園以外に進学する生徒の学校生活適応を

図るため,出身小学校の教員による年1回の授業参観等を行った。

(3)アンケート結果等

【生徒対象アンケート】

○ 中学校1年生の8割以上が,小学校教員による中学校への乗り入れ授業を良かったと感じている。

【全教職員対象アンケート】

【〔再掲〕乗り入れ授業実施教員アンケート(平成25年度 508 人)】

小中学校間での教員の相互理解が深まった。 85.0

アンケート 項目 H25(%)

小学校教員による中学校への乗り入れ授業を受けて,「すごく良か

った」「まあ良かった」と感じた。 83.7

アンケート 項目 H25(%)

小学校教員による中学校への乗り入れ授業は,子どもの学校生活

適応に効果がある。 50.9

小学校教員による中学校への乗り入れ授業は,子どもの学力保障

に効果がある。 35.7

□ 生徒対象アンケートからの意見

○ 先生たちが、小学校に比べて良くなったなどと、ほめてくれたので自信が

ついた。また,分からなかったり,理解に時間がかかる人の学習について,

小学校の先生が優しく教えていた。

○ 中学校に入って,小学校で学んだ基礎が重要になっているので,小学校で

の勉強を活用することができた。小学校で学習したことを思い出せるので,

中学生には良い。

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11

○ 小学校教員の中学校への乗り入れ授業は,5割以上の教員が,学校生活適応に

効果があると考えており,乗り入れ授業を実施した8割以上の教員は,相互理解

が深まったと考えている。

● 小学校教員の中学校への乗り入れ授業が学力保障に効果があると考える教職員

は3割程度である。

【保護者対象アンケート】

○ 7割程度の保護者は,小中相互乗り入れ授業は,学力保障や学校生活適応に効

果があると思っている。

(4)その他の状況から(学校訪問,校長会からの意見 等)

● 打合せの時間等が十分に確保できないことや,小学校教員の役割が明確でないこ

となどから,十分に趣旨に応じた乗り入れ授業を実施できない場合もあった。

(5)まとめ

○ 乗り入れ授業の取組を通して,生徒の中学校での学習や生活への不安解消や教職

員の相互理解の深化につながっている。

● 教職員は,小学校教員の中学校への乗り入れ授業の目的や実施方法を明確にする

ことが必要であると考えており,中学校教員の小学校への乗り入れ授業と併せた検

討が必要である。

アンケート 項目 H25(%)

小中相互乗り入れ授業は,「小中一貫教育・地域学校園」制度

の目的を達成するために効果があると思う。 67.7

□ 保護者対象アンケートからの意見

○ 乗り入れ授業は,先生が各個人を理解してくれるなら効果がある。

● 小学校教員の中学校への乗り入れ授業は,必要ないと思う。

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12

5 会話科の実施

(1)目的 日本語と英語を活用して積極的に相手にかかわ

るとともに,自分の考えをわかりやすく表現することを通して,国際社会の中で生きる実践的コミュニケーション力を身に付けられるようにする。

(2)取組内容

日本語による「ことばの時間」と ALT を活用した「英会話の時間」からなる「会話科」を実施した。

【本市会話科の授業時数】

(3)アンケート結果等

【児童対象アンケート】

【生徒対象アンケート】

○ 児童生徒の9割程度が,会話科の授業はコミュニケーション力が身に付き,生活

に役立つと思っている。また,ALTの指導によりコミュニケーション力が身に付

いたり,日常生活や学校行事の場面で外国人と話をしてみたいと思う児童生徒は7

割程度である。

学年 会話科

合計 ことばの時間 英会話の時間

中1 5 5 10 小6 17 35 52 小5 17 35 52 小4 15 15 30 小3 15 15 30 小2 5 5 10 小1 5 5 10

アンケート 項目 H25(%)

会話科の授業は,友達や地域の方々とかかわるためのコミュニケーション力が身に付き,生活に役立つと思う。

91.6

ALTの先生に教えてもらうことにより,英語のコミュニケーション力が身に付き,日常生活や学校行事の場面で外国人と話をしてみたいと思う。

69.6

会話科の授業は,友達や地域の方々とかかわるためのコミュニケーション力が身に付き,生活に役立つと思う。

89.4

ALTの先生に教えてもらうことにより,英語のコミュニケーション力が身に付き,日常生活や学校行事の場面で外国人と話をしてみたいと思う。

74.6

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13

【全教職員対象アンケート】

○ 小中学校で会話科を実施した7割以上の教員は,会話科がコミュニケーション

力を身に付けるために有効と考えており,また,約7割の教員は,「ことばの時間」

と「英会話の時間」を合わせて行うことも有効であると考えている。

【保護者対象アンケート】

(4)その他の状況から(学校訪問,校長会からの意見 等)

● 中学校1年生の会話科は,教育課程の編成や評価について課題があり,実施の検

討が必要であると考える教職員がいる。

(5)まとめ

○ 会話科を実施した教員の7割以上は,コミュニケーション力を身に付けるために

有効であると考えており,会話科実施のための ALT も有効に活用されている。

● 中学校1年生の会話科には教育課程の編成や評価に課題があり,教員や保護者か

らは,会話科の改善を求める声がある。小学校の会話科については,今後,国の動

向を見据えながら実施学年,時数についての検討が必要である。

アンケート 項目 H25(%)

ことばの時間は,日本語によるコミュニケーション力を身に付

けるために有効である。 70.3

英会話の時間は,英語によるコミュニケーション力を身に付け

るために有効である。 85.6

「ことばの時間」と「英会話の時間」を合わせて行うことは,

コミュニケーション力を身に付けるために有効である。 71.4

□ 保護者アンケートからの意見

○ 会話科はとても重要だと思う。人と人とがコミュニケーションする

ために会話は重要なツールである。グループ別になり状況設定して会

話力をつける訓練などが必要ではないか。

○ 英会話も重要と思うが,基礎となる母国語でのコミュニケーション

のとり方も重要であると考える。 ● 会話科は英語の授業時数がまったく足りていない。また,日本語を

用いた会話科についても目標がはっきりとしているとは感じられず,

子どもたちが明確な達成感を持っているとは思えない。

● 会話科について,小学校で今以上に時間を取って,中学校への準備

をしてほしい。

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14

6 教科横断的教育活動の実施

(1)目的

社会や地域とのかかわりを重視しながら,教科や道徳,特別活動,総合的な学習の時間で横断的に学習することで,健康・体力,豊かな心,社会人としての基礎など,生きる力を身に付けられるようにする。

(2)取組内容

平成20年度に市で作成したモデルプランに基づき,以下の教育を実施した。

□元気アップ教育 ⇒ 運動や健康についての理解を通して,生涯にわたって運動に親しむ資質や能

力を育てるとともに,食を通した健康の保持増進のための実践力の育成など,自己管理能力を育成する教育

□宮っ子心の教育

⇒ 道徳の時間を核として教育活動,学級経営,児童生徒指導などを有機的に結び付けながら,人・自然・社会とのかかわりを通した体験活動などを充実し,児童生徒の豊かな心を育む教育

□宮・未来キャリア教育

⇒ 児童生徒一人一人が勤労観・職業観を自ら形成できるよう,社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる基礎的・汎用的能力とともに働くこと,学ぶことへの主体的な態度を育む教育

(3)アンケート結果等

【全教職員対象アンケート】

○ 6割以上の教職員が,「元気アップ教育」「宮っ子心の教育」「宮・未来キャリア教育」である教科横断的な教育活動の効果を感じている。

【保護者対象アンケート】

アンケート 項目 H25(%)

元気アップ教育は,体力向上や健康の保持・増進についての理解や,自己管理能力の育成に効果がある。 69.8

宮っ子心の教育は,児童生徒に模範意識や思いやりの心などの豊かな心をはぐくむために効果がある。 66.9

宮・未来キャリア教育は自己理解を深めるとともに,将来への夢や目標の実現に向けてよりよく課題を解決する能力の育成に効果がある。

67.9

アンケート 項目 H25(%)

そう思う わからない

元気アップ教育は,体力の増強や健康の管理,食育の推進を柱とした健康教育の目的を達成するために効果がある。

71.0 19.6

宮っ子心の教育は,道徳の授業と,人・自然・社会とのかかわりを重視した体験活動を関連付けながら,児童生徒の豊かな心をはぐくむ教育の目的を達成するために効果がある。

75.5 18.3

宮・未来キャリア教育は,勤労観や職業観などを身に付け,将来への夢や希望をもって生活できるようにするための教育の目的を達成するために効果がある。

76.7 16.8

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15

○ 7割以上の保護者が,元気アップ教育,宮っ子心の教育,宮・未来キャリア教育

である教科横断的な教育活動の効果を期待している。

● 反面,教育活動の内容が十分にわからない保護者も2割程度いる。

(4)その他の状況から(学校訪問,校長会からの意見 等)

● 元気アップ教育は,「元気アップ教育内容一覧表」や「小中学校 9 年間の食に関

する指導計画」により,9年間の系統的な教育活動が進みつつあるが,今後,学校

安全も含めた内容の検討が必要である。

● 宮っ子心の教育や宮・未来キャリア教育については,「宮っ子心の教育指導事例集」

や今後作成する「キャリア教育推進のための指導資料」等による推進が必要である。

(5)まとめ

○ 約7割の教職員が,教科横断的な教育活動の効果について共通理解を図り,それぞ

れの目的を達成するために効果があると考えている。

● 9年間を見通したカリキュラムの見直しと実践とともに,家庭や地域と十分に連携

した教育活動の推進が必要である。また,元気アップ教育については,学校安全も含

めた内容が必要となる。

□ 保護者対象アンケートからの意見

○ 宮っ子心の教育は,子どもが社会に出る前の準備知識としてとても大切なこと

だと思うので,より深めて頂きたい。

● 元気アップ教育は,実際の体力づくりには不十分な感じがする。

● 宮・未来キャリア教育では,宮っ子チャレンジなど社会体験学習の回数

を増やしてほしい。

● 教科横断的教育活動に関しては,時間数も不明で,特に効果を感じられない。

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7 小学校6年生の進学先中学校訪問

(1)目的

小学校卒業を間近に控えた小学校6年生によ

る進学先中学校訪問により,児童の中学校進学へ

の自覚を深めたり期待を高めたりするとともに,

不安解消を図る。

(2)取組内容

小学校6年生が自分の進学する中学校で授業参観,部活動見学などを行う。全市一

斉日を設定して私立学校とも連携して実施した。

(3)アンケート結果等

【児童生徒対象アンケート】

○ 8割の児童が,進学先中学校訪問により中学校の生活や学習についての不安が減

ったと感じている。特に,中学校の部活動見学は,7割以上の児童が見学して良

かったと考えている。

【全教職員対象アンケート】

○ 小学校6年生の進学先中学校訪問は,8割以上の教職員が小6の進学時における

不安を解消するために有効であると考えている。

アンケート 項目 H25(%)

進学先中学校訪問により,中学校の生活や学習についての不

安が減ったと思う。 80.0

体験して良かったと思う取組〔複数回答〕

・部活動見学

・授業参観

・全体説明

71.8

46.1

42.9

アンケート 項目 H25(%)

小学校6年生による中学校訪問などを通して,中学校進学前の不安の解消が図られている。

83.5

小 6 の進学先中学校訪問の実施日は,地域学校園で自由に設定したほうがよい。

72.2

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【保護者対象アンケート】

○ 9 割程度の保護者が,小6の進学先中学校訪問は学校生活適応に役立ったと感じ

ている。

(4)その他の状況から(学校訪問,校長会からの意見 等)

○ ほとんどの地域学校園において円滑に取組が進められており,各中学校における

特色ある取組の工夫により,児童の中学校生活への不安解消等に効果が表れている。

(5)まとめ

○ 小学校6年生の進学先中学校訪問は,児童の中学校生活に対する不安を解消する

ために役立つ取組であり,バス等の配車により効率的に中学校訪問を実施すること

ができた。

○ 全市一斉日の設定により,私立学校とも連携しながら本市のほとんどの児童が自

分の進学する中学校を訪問できた。

アンケート 項目 H25(%)

小6の進学先中学校訪問は,「小中一貫教育・地域学校園」制

度の目的を達成するために効果があると思う。 88.8

□ 保護者対象アンケートからの意見

○ 小6の中学校訪問は,実際に見学することによって中学校生活を身近に感じ

ることできて良かった。

○ 新しい環境に適するために大切であると思う。

● 1 日の短い時間だったので効果があるか分からない。

● 6年生の終わりになって数時間だけ中学校へ行っても意味がない。

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261

229

283

32

397

0 50 100 150 200 250 300 350 400

あいさつ運動やクリーン活動

冒険活動センターでの交流活動

運動会などや総合など授業活動

音楽祭など地域イベント活動

その他

(人)

8 児童生徒の交流活動

(1)目的 異学年児童生徒や他校児童との交流により,他者を思いやる豊かな心やコミュニケーション力を育成する。

(2)取組内容

全地域学校園で小中学校の交流活動を実情に応じて実施した。また,地域学校園

の規模に応じて冒険活動センターにおいて,小小,小中の交流活動を実施した。

【平成 25 年度 冒険活動センターにおける小小,小中交流活動実施状況】

実施状況 地域学校園

地域学校園の小中学校が合同

で実施 ○6地域学校園 瑞穂野・城山・晃陽・上河内・田原・河内

地域学校園内小学校のみで同

日利用 ○5地域学校園 一条・陽西・姿川・宝木・古里

地域学校園内小学校の一部で

同日利用 ○10 地域学校園 陽北・旭・陽南・星が丘・宮の原・清原・豊郷 国本・雀宮・鬼怒

単独または他地域学校園と同

日利用 ○4地域学校園 陽東・泉が丘・横川・若松原

(3)アンケート結果等

【児童生徒対象アンケート】

〔中学校の先生の授業や小学校6年生の中学校訪問以外に中学校進学への不

安を減らした活動(複数回答)1063 人中〕

○ 小学校6年生の多くの児童が,中学校進学への不安軽減に役立った取組として冒険活動センターでの取組を挙げており,次に,地域のイベント,あいさつ運動やクリーン活動と続いている。

□ 生徒対象アンケートからの意見 ● 授業だけでなく,もっと中学校のことを小学生に教えたほうが安心して入学でき

る。 ● 中学校に招いて小学生の学習内容を教える等,小中学生で一緒に行う活動があった

ら良いと思う。 ● 中学生や他の学校の小学生と交流する機会が増えると良い。

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【全教職員対象アンケート】

○ 交流活動は,8割以上の教職員が小学生の進学への期待を高めたり,中学生の思

いやりの心を育成したりするために効果的であると感じている。

【保護者対象アンケート】

○ 7割以上の保護者が,児童生徒の交流活動は新たな人間関係づくりに効果がある

と感じている。

(4)その他の状況から(学校訪問,校長会からの意見 等)

○ 地域学校園によっては,趣旨や目的を明確にした特色ある取組が進められてい

る。また,地域団体や高校,企業などに協力参画を得て交流活動を実施した地域

学校園もある。

(5)まとめ

○ 地域での交流活動により,小学生は友達関係の不安を解消し,中学校への期待

を高めた。また,中学生は思いやりなど豊かな心を育んだ。

○ 冒険活動教室では,地域学校園の小中学校交流活動を通して,中学生は上級生

としての自覚と責任をもって活動に取り組み,小学生は中学校生活に対する期待

を高めた。

● 地域学校園の実情に応じてより一層交流活動を進めるとともに,冒険活動セン

ターにおいては,小小,小中の交流の取組を継続する必要があるが,施設の収容

人数や日程確保の観点から拡大は難しい。

アンケート 項目 H25(%)

小中交流活動(あいさつ運動や清掃活動など)は,小学生の進

学への期待を高めたり,中学生の思いやりの心を育成したりす

るために効果的である。

84.6

アンケート 項目 H25(%)

児童生徒の交流活動は,「小中一貫教育・地域学校園」制度の

目的を達成するために効果があると思う。 78.0

□ 保護者対象アンケートからの意見

○ 縦割り班活動はとても良いと思う。少子化の中,他学年の子供同士の交流が

できることは有意義である。

○ 小中交流はとても良いことだと思う。子ども一人一人の個性を大切に,人を

思いやる心やいたわる心などを育てたら,いじめなど無くなると思う。

○ 小学校と中学校の交流があればいいと希望してため,実現して嬉しい。

● 小学生と中学生の交流や先輩,後輩の交流をもう少し増やして欲しい。

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9 教職員の連携した取組と推進のための運営体制

(含 授業力向上に向けた地域学校園の取組)

(1)目的

各地域学校園において,義務教育9年間を見通して効果的に教育活動を進めるとともに,学校間の交流・相互支援や地域との連携を深める取組を推進するための体制を構築する。また,学校一人配置教職員が,地域学校園内で連携することで,相互支援体制の確立,事務の効率化や平準化などを行えるようにする。

(2)取組内容

・ 地域学校園ごとに小中学校長と推進主任等からなる「運営会議」を行い,教育ビジョンの設定や地域学校園の運営全般について話し合った。

・ また,「学力向上部会」「学校生活適応支援部会」などの「部会」,地域学校園の実情に応じて部会のもとに「分科会」を設置し,義務教育 9 年間を通した効果的な教育活動について検討した。

・ 制度の趣旨や地域学校園の教育ビジョンの共通理解やその実現に向けて効果的な取組を推進できるようにする「合同研修会」を実施した。

・ 一人配置教職員(学校事務職員,学校図書館司書,栄養職員,養護教諭)の業務について地域学校園で連携することで相互支援体制の確立,事務の効率化などを行った。

・ 地域学校園において,交付金を活用するなどして授業力向上に向けた取組を進めた。

(3)アンケート結果等

【全教職員対象アンケート】

<中1ギャップ解消に向けた指導方法>

○ 学習面の中1ギャップ解消等に向けた指導方法の見直しが進んだと考える教職員は約6割であり,平成24年度の 48.4%から約1割増加した。

<教職員の負担>

● 「小中一貫教育・地域学校園」制度に係る新たな業務が過重であると考える教

職員は8割以上で,平成24年度も 82.2%であったことから,年度が経過しても負担感は変わらない。

<部会等の取組>

○ 部会や分科会などを通して,6割以上の教職員が,小中一貫した学び方の指導

や生活指導のための検討や取組が進んだと感じている。

アンケート 項目 H25(%)

学習面の中1ギャップ解消に向けた指導方法の見直しや改善が進んだ。 60.1

アンケート 項目 H25(%)

地域学校園の取組を進めるための新たな業務が過重である。 82.2

アンケート 項目 H25(%)

部会等での検討などにより,「学習のきまり」など,小中一貫した学び方の指導の検討や取組が進んだ。 68.5

部会等での検討などにより,「学校生活のきまり」など,小中一貫した生活指導のための検討や取組が進んだ。 65.8

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<合同研修会>

○ 合同研修会では,講師を招聘しての講演会等の実施や教科別研修など,年1回以上

開催し,約7割の教職員が効果があると考えている。

<一人職種の連携>

○ 一人配置職員の連携した取組は,どの職種も9割を超えて実施しており,昨年度も9割を超えていたことから,2年連続で継続的な取組が進められている。

(4)その他の状況から(学校訪問,校長会からの意見 等)

○ 地域学校園ごとに,地域の実情に応じて独自の部会,分科会などを設置して9年

間の系統性を重視した教育活動を推進している。

● 3年間の実践を通して,小中一貫教育の取組の重要性を理解する教職員が増えた

が,打合せや児童生徒と向き合う時間の確保が困難であると考える教職員もいる。

● 地域学校園ごとに,打合せの日や時間の確保状況に差がある。

(5)まとめ

○ 各地域学校園において,運営会議や部会,分科会,合同研修会などを通して,小

中学校教職員の相互理解が深まるとともに,一人配置教職員の連携が促進され,地

域学校園ならではの創意ある取組が行われた。

○ 授業力向上の取組などにより,地域学校園で特色ある研究が進められた。

● 教職員には,本制度を進める上での業務の負担が大変大きい状況である。

● 地域学校園ごとに,打合せの日や時間の確保状況に差があり,全市で日や時間を

確保する環境整備が必要である。

アンケート 項目 H25(%)

合同研修会は,地域学校園の教職員が「小中一貫教育・地域学校園」制度の趣旨や地域学校園が目指すものを理解し,その実現に向けての取組を進めるために効果的である。

70.3

アンケート 項目 H25(%)

〔事務職員〕地域学校園での連携により,相互支援や予算・業務の効果的な執行を実施することができた。 92.6

〔養護教諭〕地域学校園での連携により,小中学校の健康指導の充実や地域の保健・安全等に係る情報の共有化を図ることができた。 93.3

〔学校栄養職員〕地域学校園での連携により,食育や学校給食に関する充実が図られた。 98.0

〔学校図書館司書〕地域学校園での連携により,読書教育や学校図書館運営に関する充実が図られた。 96.7

□ 保護者対象アンケートからの意見

● 教師の体制を整えず,制度ばかりが先走りして疲労感ばかりが心配される現状だと保護者も感じる。専任の教諭を増員する必要がある。

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10 小中一貫教育推進主任業務

(1)目的 中学校に「小中一貫教育推進主任」を置き,小中教職員が相互に理解を深め合いな

がら,小中一貫教育の趣旨に応じた取組が円滑に進められるよう,地域学校園全体のコーディネートを行う。

(2)取組内容

全地域学校園に「小中一貫教育推進主任」を1名選任し,以下の業務を実施した。

①運営会議の事務局 ②「小中合同研修会」の運営

③乗り入れ授業の準備,実施への連携 ④小6中学校訪問の準備,実施への連携

⑤周知・啓発 ⑥効果的な取組に向けた評価と活用

⑦地域学校園事業交付金の取りまとめ ⑧小中一貫教育に係る会議への参加

その他,学校園長の監督を受け,学校園全体の連絡調整,指導助言を行った。

業務を円滑に進めるため,各地域学校園あたり一人「学力向上非常勤講師(推進主任後補充)」を配置し,後補充授業等を実施できるようにした。

(3)アンケート結果等

【全教職員対象アンケート】 <推進主任の役割>

○ 9割近い教職員が,小中学校のコーディネートを行う役割の推進主任の必要性を

感じている。

<学力向上非常勤講師(推進主任後補充)>

○ 市費の「学力向上非常勤講師(推進主任後補充)」が推進主任の業務を補助しており,8割以上の教員が本講師の必要性を感じている。

(4)その他の状況から(学校訪問,校長会からの意見 等) ● 小中学校間や教員間の意識差,温度差の解消に苦慮する推進主任もいた。また,

交流型地域学校園の推進主任の業務は基本型と比較して過重である。

(5)まとめ

○ 推進主任が,地域学校園のコーディネート業務を進めることで,小中学校が連携した取組がほぼ円滑に進められた。

○ 推進主任業務の補助を行う学力向上非常勤講師は有効に活用され,教職員は必要性を強く感じている。

● 推進主任の業務は,会議の運営や小中学校間の教職員の調整など多岐にわたり,小中一貫教育の推進のために多くの時間を費やしており,授業時数の軽減を図っている状況である。

アンケート 項目 H25(%)

小中一貫教育を円滑に行うために,推進主任の役割は必要である。 87.6

アンケート 項目 H25(%)

相互乗り入れ授業や推進主任の後補充授業,習熟度別学習を行うために,学力向上非常勤講師の役割は必要である。

86.6

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11 地域の教育力を活用した教育活動

(1)目的

地域の自然,文化,伝統などの高い価値を持つ教育資源を有効に生かすとともに,地域人材をはじめとして,団体,企業,教育機関等の協力・参画を得ながら,学校教育の支援の充実と地域で子どもも大人も学ぶ教育活動の活性化を図る。

(2)取組内容

小中学校の「魅力ある学校づくり地域協議会」が一体となった「地域学校園協議会」において取組の情報交換をするなどして,地域学校園で取組を進めた。

また,平成24年度より,各小中学校において,保護者・地域による授業参観やゲストティーチャーを活用した授業などを土曜日に行う「土曜授業」を年2回以上10回以下で実施した。

(3)アンケート結果等

【全教職員対象アンケート】 <土曜授業>

アンケート 項目 H25(%)

土曜授業は,家庭や地域との連携を深め,「地域とともにある学校づくり」を推進するために有効である。

55.1

土曜授業の全市一斉実施は,今後どうするべきか。 ア 現在のままでよい。 イ 増やしたほうがよい。 ウ 全市一斉実施を廃止し,自由に設定できるようにする。

40.9

2.2

56.2

● 土曜授業は「地域とともにある学校づくり」を推進するために有効であると,5

割以上の教職員が考えており,土曜授業の全市一斉実施を増やしたほうがよいと考

える教職員は 2.2%のみである。

【魅力ある学校づくり地域協議会に関する実績報告】

<地域学校園内の魅力協が連携して取り組んだ活動状況>

項目 H23(回) H24(回) H25(回)

(1)魅力ある学校づくり地域協議会が連携した会議

26 32 31

(2)学校教育の充実のための支援 10 15 21

(3)地域ぐるみの児童生徒の健全育成・安全確保の取組

53 64 56

(4)学校施設や地域の教育資源を活用した家庭・地域の教育力向上のための取組

87 99 97

□ 教職員対象アンケートからの意見

● 中学生を出身小学校に派遣してのボランティア清掃など,土曜授業を地域学校園あげての行事とできないか。

● 地域学校園協議会の役割が不明確であり,中学校の魅力ある学校づくり地域協議会との違いがわからない。

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○ 「小中一貫教育・地域学校園」制度全市実施前から小中学校の魅力ある学校づく

り地域協議会の会議における情報交換など,連携した取組が進められている。

【保護者対象アンケート】

アンケート 項目 H25(%)

土曜日に公開授業や行事があることは,参加しやすいと思いますか。 75.8

土曜授業の実施により,家庭や地域の学校に対する理解が深まると

思いますか。 54.5

○ 7割以上の保護者が,土曜日に公開授業や行事があることは,参加しやすいと感じ

ている。

● 一方で,土曜授業の実施により,家庭や地域の学校に対する理解が深まると感じて

いる保護者は5割程度であり,今後,内容の充実が必要である。

(4)その他の状況から(学校訪問,校長会からの意見 等)

○ それぞれの魅力ある学校づくり地域協議会の活動の充実が図られており,地域の

教育力を生かした学校教育支援や学校支援ボランティアの活動が充実している。

○ 土曜授業を通して,地域と連携した活動が進められた。

● 魅力ある学校づくり地域協議会が十分に機能していない学校もあり,取組に違い

が見られる。

● 地域や保護者の参画を促進するため,「小中一貫教育・地域学校園」制度の趣旨及

び取組の周知をより一層図る必要がある。

● 土曜授業や土曜学習の在り方については,今後,国の動向を踏まえながら検討す

る必要がある。

(5)まとめ

○ 各学校や地域学校園において「魅力ある学校づくり地域協議会」や土曜授業など

を通して,学校と地域が連携した取組が進められている。

○ 本市全ての学校において土曜授業が行われ,多くの保護者や地域住民が授業参観

等を行った。

● 子どもを育みながら大人も学ぶ地域教育活動については,「小中一貫教育・地域

学校園」制度実施の中では,効果の見取りが困難であった。

● 地域学校園協議会については,その役割について整理が必要である。

□ 保護者対象アンケートからの意見

○ 9 年間という長い期間を見据えた取組で,変化の大きい小学生から中学生

という時期を,学校・家庭・地域で見守っていくことはとても良い考え方だ

と思う。

● 地域学校園において小中学校が同日に土曜授業を設定した場合は,小中学

校双方に子どもがいる保護者は時間を気にして参加する必要がある。

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Ⅳ 本市の現状

1 本市児童生徒の状況

(1)制度設計時に取り上げた項目

ア 学力に係る中 1 ギャップの状況

国語

〔考察〕 国語については,中1ギャップ解消の顕著な状況は見られていないが,それ

は,国語が日常の言語活動や読書など,児童生徒の生活状況の影響を強く受ける教科であるという特性があり,系統的な指導の成果がすぐには表れにくいためであると考えられる。また,平成24-25年度は,平成 24 年度の小学校6年生の定着率が十分でなかったことも一因であると考えられる。 【H20-25 学習内容定着度調査 小6,中1 50%未満の児童生徒の割合(国語)】

算数・数学

〔考察〕 算数・数学の中1ギャップについては,制度導入前と比較して,4.3倍から2.9倍に減少しており,特に中学校 1 年生の定着率 50%未満の生徒の割合が着実に減少傾向を示している。 【H20-25 学習内容定着度調査 小6,中1 50%未満の児童生徒の割合(算数・数学)】

※各年度における小6と中1は同じ児童生徒

3.0

4.84.23.9

2.8 3.23.6

3.5

3.5

7.9

0

2

4

6

8

10

12

14

H20-21 H21-22 H22-23 H23-24 H24-25

(年度)

(%)

中1

小60.4 倍

1.1倍

12.5

10.311.3

6.7

4.6

2.9 2.81.8 1.5 1.60

2

4

6

8

10

12

14

H20-21 H21-22 H22-23 H23-24 H24-25

(年度)

(%)

中1

小6

4.3 倍

2.9 倍

学習内容定着度調査における50パーセント未満の児童生徒の割合(国語)

学習内容定着度調査における50パーセント未満の児童生徒の割合(算数・数学)

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26

各期の学習内容の定着状況

〔考察〕 「基礎期」の定着率50%未満の児童は,どの年度も3%以上おり,この時

期の定着を図ることにより,学年が進むにつれての定着率の向上につながるものと考えられる。【H23,24 学習内容定着度調査50%未満の生徒の割合(国語,算数・数学)】

「勉強が好きか」の状況

〔考察〕 小中学校間の開きは残っているものの,中学校において教科の学習が好きな生

徒が増えている。平成20年度と比較すると,中学校で 10P以上上昇している。

【H20・25 学習と生活のアンケート】

71.2

42.1

84.8

78.573.5

41

87.889.5

49.4

83.377.8

72.969.5

28.7

86.887.2

38.6 28.6

20

30

40

50

60

70

80

90

100

小1 小2 小3 小4 小5 小6 中1 中2 中3

H25

H20

(%)

(学年)

0

5

10

15

20

H23 H24 H23 H24

国語 算数・数学

4.7

11.9

4.334.1

6.4 5.3 4.54.9 5.8

14.5 15.3

学習内容定着度における正答率50%未満

の児童生徒の割合

基礎期

活用期

発展期

(%)

(年度)

「勉強が好き」と答えた児童生徒の割合

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27

イ 学校生活適応に係る中1ギャップの状況

不登校の状況

〔考察〕 本市の中 1 の不登校は減少傾向にあり,小中学校間のより丁寧な引継ぎの成果

が表れている。【H20-25 不登校に関する実態調査 小6中1】

いじめの状況

〔考察〕 いじめの認知件数についての中1ギャップは解消が図られつつあるが,小6,

中1ともにいじめの認知件数の減少を目指すことが必要である。【H21-25 児童生徒

の問題行動等 生徒指導上の諸問題に関する調査 小6中1】

中1ギャップ(不登校)の状況

939497103

34323334

0

20

40

60

80

100

120

H21-H22 H22-H23 H23-H24 H24-H25

中1

小6

(人)

(年度)

3.0 倍 2.7 倍

中1ギャップ(いじめ)の状況

24

47

37

64

45

1513

16

0

10

20

30

40

50

60

70

H21-H22 H22-H23 H23-H24 H24-H25

中1

小6

(件)

(年度)

4.0 倍 1.9 倍

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28

4.9

12.8

0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0

H25

H20

(年度)

(%)

15.6

10.3

0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0

H25

H20

(年度)

(%)

21.8

5.7

0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 25.0

H25

H20

(年度)

(%)

(2)その他の状況 ここでは,制度設計時に取り上げた項目以外の,本市の児童生徒の学習や生活,健

康・体力の状況についての状況を示す。

中学校3年生の学力の状況(国,数,英の定着率50%未満の生徒)

・国語 H20 12.8%

7・9P 減少

H25 4.9%

・数学 H20 15.6%

5・3P 減少

H25 10.3%

・英語 H20 21.8%

16・1P 減少

H25 5.7%

〔考察〕 中学校3年生の国語,数学,英語50%未満の定着率の生徒が5ポイント以上

減少しており,中学校卒業時の学力の底上げが図られている。

【H20 25 学習内容定着度調査 中3 50%未満の生徒の割合(国語,数学,英語)】

-7.9P

-5.3P

-16.1P

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29

中学校3年生の学力の状況(国,県との比較)

・中学校第3学年の状況

平均正答率 宇都宮市 県 全国 市-全国

平成

25

年度

国語A(主に知識) 77.7% 77.2% 76.4% 1.3

国語B(主に活用) 69.2% 68.0% 67.4% 1.8

数学A(主に知識) 65.0% 63.8% 63.7% 1.3

数学B(主に活用) 42.3% 41.1% 41.5% 0.8

平成

26

年度

国語A(主に知識) 80.0% 79.3% 79.4% 0.6

国語B(主に活用) 53.8% 51.4% 51.0% 2.8

数学A(主に知識) 68.7% 66.9% 67.4% 1.3

数学B(主に活用) 61.5% 59.3% 59.8% 1.7

・国語 A(主に知識) 平成 26 年度32問中26問以上(8 割以上)正答した生徒の割合

・数学 A(主に知識) 平成 26 年度36問中29問以上(8 割以上)正答した生徒の割合

〔考察〕 中学校の国語,数学の平均正答率は,2年連続で全国及び県平均を上回っており,中学校国語,数学8割以上の正答率の生徒は,ほぼ全国及び県を上回っている。【H25 26 全国学習状況調査】

国語A(主に知識)

0

2

4

6

8

10

12

14

26 27 28 29 30 31 32

宇都宮市

栃木県

全国

数学A(主に知識)

0

1

2

3

4

5

6

7

29 30 31 32 33 34 35 36

宇都宮市

栃木県

全国

(%)

(%)

(問)

(問)

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30

思いやりの心で接する生徒の割合

〔考察〕 「思いやりの心で接する」生徒の割合は増加しており,これは,小中学校にお

ける心の教育や小中交流活動の実施による成果が表れたものとも考えられる。

【H21-25 学習と生活についてのアンケート 中3】

生徒の体力の状況

〔考察〕 新体力テストにおける中学校3年生のA段階は年度を追うごとに増え,E段階

は減少しており,これは,小中学校を通した体力向上の取組の成果が表れてきた

ものとも考えられる。【H21-25新体力テスト 中学3年生】

81.883.5

85.987.8 88.7

60.0

65.0

70.0

75.0

80.0

85.0

90.0

H21 H22 H23 H24 H25

(年度)

(%)

17.9 19.5 22.0

25.1 26.2

1.64

5.57 4.86 4.24

1.74

0

5

10

15

20

25

30

H21 H22 H23 H24 H25

A段階

E段階

(人)

(年度)

誰に対しても思いやりの心を持って接している生徒の割合

新体力テスト

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31

2 学習指導等の状況

小中教職員の学習指導方法の状況 (グラフの凡例: 「よく行った」, 「どちらかといえば行った」, 「あまり行っていない+全く行っていない」)

A 群:全ての教科の平均正答率が5ポイント以上上回る学校

◆ 授業の冒頭で目標(めあて・ねらい)を児童生徒に示す活動を計画的に取り入れた

◆ 学習方法(適切にノートをとる,テストの間違いを復習するなど)に関する指導をした

◆ 児童生徒の発言や活動の時間を確保して授業を進めた

◆ 児童生徒の様々な考えを引き出したり,思考を深めたりする発問や指導をした

◆ 家庭学習の取組として,調べたり文章を書いたりする宿題を出した(国,算・数共通)

〔考察〕 全国学習状況調査における教科の平均正答率と指導方法をクロス集計すると,

指導方法を工夫した学校は,平均正答率が高い。本市の中学校では,目標を児童生徒に示す活動を計画的に取り入れ,小学校では,学習方法に関する指導や発言や活動の時間を確保し,A 群より高い良好な状況にある。一方,小中学校において全国平均を下回る項目や小中学校間に開きがある項目もあり,学習指導では依然として小中学校間の違いが見られる。 【「平成25年度全国学力・学習状況調査」の学校質問紙調査・児童生徒質問紙調査】

24

29.6

38.4

72

63.7

58.4

4

6.6

3.2

宇都宮市

全国

A群

中学校

20

22.4

35.4

68

69.4

60.6

12

8

3.8

宇都宮市

全国

A群

中学校

55.9

45.3

54.7

44.1

52

43.5

0

2.6

1.8

宇都宮市

全国

A群

小学校

17.6

18.1

23.2

55.9

57

60.1

26.5

24.7

16.7

宇都宮市

全国

A群

小学校

41.2

34.5

47.5

57.4

60.5

49.7

1.5

4.9

2.8

宇都宮市

全国

A群

小学校

12

10.4

16.7

48

48.9

52.3

40

40.2

29.4

宇都宮市

全国

A群

中学校

小学校

64.7

60.4

64.7

35.3

36.1

32.5

0

3.4

2.8

宇都宮市

全国

A群

中学校

56

43.7

48.3

40

48.9

45.1

4

7.3

6.6

宇都宮市

全国

A群

小学校

72.1

56.3

63.9

25

41.4

34.7

2.9

2.1

1.5

宇都宮市

全国

A群

中学校

48

48.4

65.2

52

49

34.2

0

2.4

0.6

宇都宮市

全国

A群

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32

先生は自分のことを認めてくれていると思う児童生徒の割合

〔考察〕 小中学校で認め励ます教育が推進されており,小学校の割合が若干高い。

【H25 学習と生活のアンケート】

学習指導,児童生徒指導に係る相互理解が進んだ教職員の割合

〔考察〕 学習指導や児童生徒指導における小中教職員の相互理解が進んだ割合が,平

成24年度と比較して8%程度増えている。【H24,25 教職員アンケート】

8681.682

74.271.3

74.784

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

小3 小4 小5 小6 中1 中2 中3

(%)

(学年)

75.3

67.4

65.5

73.7

60

62

64

66

68

70

72

74

76

78

H24 H25

学習指導

児童生徒指導

(%)

(年度)

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3 地域との連携状況

学校と,家庭,地域,企業等が連携して,教育活動や学校運営の充実を図っていると考える保護者,地域住民の割合

〔考察〕 学校と家庭,地域が連携して教育活動や学校運営の充実を図っていると考え

ている保護者や地域住民が増えている。

【H21-25 うつのみや学校マネジメントシステム】

魅力ある学校づくり地域協議会の連携した取組の状況

〔考察〕 それぞれの地域学校園において魅力ある学校づくり地域協議会が連携して

様々な取組が進められた。【H25 魅力ある学校づくり地域協議会 報告】

A地域学校園 B地域学校園 C地域学校園

・ あいさつ運動

・ 小学校との清掃活動

・ ネットワーク会議の実施

・ 小中への学習支援

・ 先進校視察

・ あいさつ運動

・ 河川清掃

・ 公園清掃

・ 講演会実施

・ あいさつ運動

・ 古墳清掃

・ 地域行事カレンダー発行

92.2

87.2 87.7

88.6

95.596.1

90.6

86.785.4

85

78

80

82

84

86

88

90

92

94

96

98

H21 H22 H23 H24 H25

地域住民

保護者

(年度)

(%)

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34

4 現状のまとめ

「小中一貫教育・地域学校園」制度の取組はおおむね順調に進められ,本市が

本制度導入以前から進めてきた学力向上や学校生活適応の取組等と併せて,各学

校において創意工夫された教育活動や指導支援が展開されたことにより,児童生

徒に学習や生活面などの成果が表れてきているが,今後の課題も明らかになった。

【学習について】

学習面の中 1 ギャップ解消が図られつつあるが,基礎・基本の定着を図

る取組の充実が必要である。

これまで本市が進めてきた習熟度別学習や学校教育スタンダード等と「小中一貫

教育・地域学校園」制度の取組があいまって,小学校6年生の中学校の学習への不

安解消などに効果をあげ,学習面における中1ギャップの解消と学力向上が図られ

つつあるが,各期ともに基礎・基本の定着には課題がある。

【学校生活適応等について】

中学校1年生の不登校,いじめが減少しつつあるが,豊かな心や健やか

な体を育てる取組の一層の推進が必要である。

これまで本市が進めてきたスクールカウンセラーの配置や,児童生徒指導強化連

絡会における小中教職員の話し合いに加え,「小中一貫教育・地域学校園」制度の

取組により,中学校1年生の不登校,いじめが減少しつつある。また,思いやりな

ど豊かな心の涵養や体力向上など健やかな体の育成に努める必要がある。

【教職員の連携について】

小中教職員の相互理解が深まっているが,学習指導や児童生徒指導にお

ける系統的な指導が十分ではない。

小中教職員が連携した会議や小中一貫教育の取組を進める上での話し合いにより,

小中学校教職員の相互理解が深まりつつあるが,学習指導や児童生徒指導面におい

て,9年間の系統的な指導では相互理解が十分ではない。また,小中一貫教育の取

組の重要性を理解する教職員が増えたが,取組を進めるための打合せを行う時間の

確保が困難であると考える教職員もいる。

【地域との連携について】

学校と地域が連携し教育活動の充実を図っているが,地域学校園により

取組に違いが見られる。

これまで本市が進めてきた「魅力ある学校づくり地域協議会」の取組に加え,「小

中一貫教育・地域学校園」制度により,学校と家庭,地域が連携した教育活動や学

校運営の充実が図られつつあるが,活動内容などには,取組に違いが見られる。

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35

Ⅴ これまでの総括

「小中一貫教育・地域学校園」制度の取組はおおむね順調に実施され,特に以下の点

について成果が見られた。

○ 児童生徒の学習や生活面における中1ギャップの解消

○ 小中教職員の相互理解の深化

○ 地域学校園内の小中及び小小連携した取組の充実

今後は,以下のことを着実に解決しながら具体的な取組等の一層の充実や見直しを

行い,より実効性を高めた持続可能な制度にしていく必要がある。その際,教職員の

業務負担にも配慮して進めていく。

・小中一貫教育カリキュラムのより一層の充実が必要である。

義務教育9年間を見通してより一層の学力の定着を図るため,本制度の目的や効果

を踏まえながら,地域学校園や学校においてカリキュラムの地域学校園化,自校化な

どをより一層推進していく必要がある。また,4・3・2制カリキュラムによる小中

学校の系統的な指導や教科横断的な指導の充実を図る。

・小中教職員の連携を通したさらなる相互理解と資質向上が必要である。

各地域学校園における運営会議や部会,合同研修会,小中学校教員の相互乗り入れ

授業の取組等により,小中教職員が相互理解を深め,異校種を意識した学習指導,生

活指導が進められてきた。今後とも,教職員が取組を進めるための時間の確保に努め

ながら,小中教職員の連携を通して,さらなる相互理解と資質向上が必要である。

・地域学校園や学校で主体的に取組を進められるようにすることが必要である。

平成24年度からの全市実施では,本市が設定した具体的な取組を進めるに当たり,

教職員は,取組を実施することに多くの労力を費やしてきた感があった。今後は,「小

中一貫教育・地域学校園」制度の目標等を踏まえながら,地域学校園や学校において

取組を主体的に進められるようにするとともに,教職員が多忙感や負担感よりも充実

感を味わえるようにすることが必要である。さらには,「魅力ある学校づくり地域協議

会」の学校運営や教育活動への参画機能を生かし,学校,家庭,地域等が連携・協力

した教育をより一層推進する必要がある。

・制度を推進するための教育環境の再検討が必要である。

全市実施にあたっては,推進に必要な教育環境を整備することで各取組が順調に実

施された。特に,相互乗り入れ授業や推進主任の後補充授業等を行う「学力向上非常

勤講師」の配置や,小学校6年生の進学先中学校訪問のためのバス等の配車,地域学

校園事業交付金の交付等については制度を進める上で必要な環境整備であった。今後

の制度においても,教育環境の整備は必要であり,持続可能な制度となるよう,具体

的な取組の改定を勘案しながら再検討する必要がある。

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36

Ⅵ 持続可能な制度とするために

本制度を今後も引き続き実施し,必要な取組については全市一斉で継続して行うが,

取組によっては地域学校園や学校が裁量を生かしながら主体的に進められるようにす

る。

1 基本的な考え方

制度立上げの時期においては,教職員の制度への理解促進とその定着を図るため,市

が示した取組を全市一斉に実施してきたが,持続可能な制度とするためには,地域学校

園や学校がその実情や課題等を踏まえて,本制度を教育課程編成や学校運営の充実に無

理なく組み込み,普段の授業や取組の質を継続的に高めることが大切である。

また,地域学校園や学校の教育目標達成のため,小中学校教職員が本制度の成果を実

感しながら日頃の教育に取り組めるよう,9年間の系統的な教育課程の編成や指導の工

夫をするとともに,教職員の業務負担にも配慮することで,実効性を高められるように

する。

2 基本方針

①【小中一貫教育カリキュラムの充実により,教育活動の一層の充実を目指す。】

小中一貫教育の中核はカリキュラムであるという教職員の共通認識を深めるとともに,

教育活動とカリキュラムを有機的に関連づけながら「地域学校園化」「自校化」などを行

うことにより,各学校における9年間を見通した系統的な教育課程編成の工夫改善と教

育活動の充実を目指す。

②【教職員の相互理解を一層深めることにより,教職員の資質向上を図る。】

小中教職員が「乗り入れ授業」や「交流活動」等の実践を通した相互理解を一層深め

ることにより,教職員が本制度の成果を実感し,さらなる資質向上を図れるようにする。

③ 【地域教育力の活用をさらに進めることにより,学校支援の充実を図る。】

魅力ある学校づくり地域協議会等との連携を一層強化することにより,地域にある教

育資源を結集した学校支援の充実を図る。

④【自主的・自律的な学校運営の推進により,「地域とともにある学校づくり」を進める。】

学校が裁量権を生かし地域との連携を図りながら自主的,自律的な学校運営を行うこ

とにより,地域と一体となって子どもを育む「地域とともにある学校づくり」を進める。

※ 地域学校園の捉え方について 地域学校園とは,小中一貫教育を進める上での小中学校の組合せであり,地域人材

をはじめ自然,文化,伝統などを教育活動に生かすとともに,学校,家庭,地域,企業等が連携しながら,地域ぐるみで子どもを育む取組を進めるためのものである。

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37

3 平成27年度以降の「小中一貫教育・地域学校園」制度 全体構想

(1) 目的

義務教育9年間を通した系統的な指導と,地域の教育資源を活用した特色ある教

育活動や学校支援により,児童生徒の学力保障と学校生活適応を目指す学校教育の

充実

(2) 基本的な制度設計

従来の制度と変更しない。

○ 小中学校を組み合わせた25の地域学校園において実施

○ 既存の学校施設を活用した施設分離型で実施

(3) 期待される効果

○ 9年間の系統的な指導による教育活動の充実

○ 教職員の相互理解の深化と資質向上

○ 地域の教育力を結集した学校支援の活性化

○ 地域と連携した自主的・自律的な学校運営の推進

(4) 全体構想図

幼稚園・保育所等

中学校 小 学 校 小 学 校

中 学 校 商店・農家等

高等学校等

小中一貫教育

地 域 学 校園

企業・事業所等

各小・中学校 魅力ある学校づくり

地域協議会

生涯学習センター

大学等

地域の自然環境

地域の伝統文化街の先生 ボランティア団体等 NPO等

地域スポーツ クラブ等

子ども会 育成会等

まちづくり組織・自治会等

小中教職員の 相互理解の深化と資質向上

9 年間の系統的な指導による教育活動の充実

地域の教育力を結集した 学校支援の活性化

児童生徒の学力保障と学校生活適応を目指す学校教育の充実

「 小 中 一 貫 教 育 ・ 地 域 学 校 園 」 制 度 の 全 体 構 想

PTA 宮っ子ステーション

地域と連携した 自主的・自律的な学校運営の推進

地域各種施設(図書館・美術館等)

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38

4 具体的な取組の改定

(1)方向性

これまでの全市一斉型の取組を見直し,学校裁量を拡大するなどして,カリキュラム

の充実や学校・地域学校園の主体性をより一層高める。併せて,現行の取組の縮小,変

更などにより業務の量的なスリム化を図り,教職員の児童生徒と向き合う時間の充実と

教育活動の質的向上を目指す。

また,本制度の推進に不可欠な小・中学校における推進主任・担当教員固有の業務の

見直しを行うとともに,取組を効果的に進めるための教育環境について併せて検討する。

さらに,学習指導要領の改訂の方針や今後の学校教育の方向性を見据え,教科化が予

定されている道徳や小学校英語の実施に向けた対応は課題であり,このことを踏まえて

取組の改定にあたる必要がある。このため,平成27年度以降も国の動向を注視し,一

部の具体的取組についても継続的に検討する。

ここでは,これまで実施してきた取組を縮小,変更,充実,新規,継続の5観点から

再整理した。

(2)具体的な取組

〔 一部縮小,廃止する3つの取組 縮小 〕

①会話科の実施←基本方針①

中学校1年生の会話科を取りやめ,会話科で取り上げていた内容を各中学校におい

て教科や総合的な学習の時間等に生かして実施する。

教育課程の編成や実施方法,評価に課題があるため,中学校1年生の会話科実施を

取りやめ,小学校の実施のみにする。また,小学校会話科は,今後の国の英語教育や

学習指導要領改訂を見据えながら,本市英語教育の在り方の検討と併せて再検討する。

②地域の教育力を生かした教育活動(土曜授業の実施)←基本方針③④

全市実施1回は継続し,他は学校裁量で回数等を決定する。

土曜授業の実施は1回~10回とし,そのうち1回は全市一斉に実施して地域と連携

した活動を行い,他は学校裁量で回数等を決定する。

③教職員の連携した取組と推進のための運営体制(フロンティア地域学校園)←基本方針①

フロンティア地域学校園を廃止する。

これまでの取組を継続する場合は,地域学校園推進事業に含める。

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39

〔 地域学校園または学校裁量に変更する4つの取組 変更 〕

①授業時数の増加←基本方針①

小学校の特定教科の授業時数増加は10時間に縮減し,中学校の特定教科の授業時

数増加はとりやめ,学校裁量としながら総授業時数は同様の時数を計画に位置づける。

小学校の授業時数増加は,特定教科〔1~4 年⇒会話科,5,6 年⇒国算各 5時間〕の 10

時間を含め,総授業時数で国の標準時数より 20時間以上増加するものとする。また,中

学校の特定教科の授業時数増加をとりやめ,総授業時数で国の標準時数より 15 時間以上

増加するものとする。

②地域の教育力を生かした教育活動(地域学校園協議会の役割)←基本方針④

地域学校園協議会の役割を精査し,情報交換(年1回以上)のみにする。

全市一斉の取組は,小中学校魅力ある学校づくり地域協議会の情報交換のみにする。

「地域学校園協議会」の名称の使用は,地域学校園裁量とする。

③中学校教員の小学校への乗り入れ授業←基本方針①②

小中教職員の相互理解や指導の工夫・改善を目指して実施し,さらには,小学校6

年生の中学校の学習に対する不安解消を図るものとする。中学校教員による2回目の

乗り入れ授業の教科枠は,引き続き学校裁量とする。

中学校教員の小学校への乗り入れ授業は,平成25年度に変更したとおり,国語,算

数,会話科(英会話の時間)で各1回,2回目以降を学校裁量とし,回数は現行の総計

を最低とする。

④小学校教員の中学校への乗り入れ授業←基本方針①②

小中教職員の相互理解や指導の工夫・改善を目指して実施し,さらには,中学校1年

生の学校生活適応の支援に資するものとする。小学校教員による乗り入れ授業は,年2

回以上とする。

小学校教員の中学校への乗り入れ授業は,2回のうち1回は乗り入れ授業を行ってい

ない教員が優先的に授業を行う。小学校教員は,これまで通りT2を中心に授業に参画

するが,小学校で教科化が予定される英語の授業には,重点を置いて指導することが望

ましい。

交流型地域学校園の地域学校園外の中学校への授業参観は継続する。

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〔 内容を充実する4つの取組 充実 〕

①小中一貫教育カリキュラム(4・3・2制カリキュラム)の実施←基本方針①②③

小中一貫教育カリキュラムを中核ととらえ,各学校の教育課程編成や年間指導計画

を充実する。

・各教科等における4・3・2制カリキュラムの充実

「基礎期」「活用期」「発展期」の 4・3・2に分けて年間指導計画の見直しを図ると

ともに, 各教科等におけるカリキュラムの地域学校園化,自校化とそれに基づく学習

指導をより一層進める。

このため,市がカリキュラム改善の考え方を明確にし,これを踏まえて各地域学校園

の教科等分科会では,小中一貫教育の視点で重点的に指導する内容等を設定するなど

して,小・中教職員が9年間を系統的に指導できるようにする。

・特別支援教育での小中一貫した指導,支援の充実

各教科の特別支援学級用カリキュラムや個別の支援計画により,一人一人に応じ

た小中9年間を見通し,指導支援を継続して行う。

②教科横断的教育活動の実施←基本方針①②③

3つの教科横断的教育活動をより一層充実する。

・「元気アップ教育」の推進

学校保健と体力増強,食に関する指導の取組に,新たに学校安全の取組を加え,

9年間を総合的,系統的にとらえた取組を進める。

・「宮っ子心の教育」の推進

「宮っ子心の教育指導事例集」を参考に,各地域学校園において,道徳の時間を核

として人・社会・自然とのかかわりを通した体験活動を関連付けた小中9年間の系統

的な教育を推進する。

・「宮・未来キャリア教育」の推進

「キャリア教育推進のための指導資料(平成26年度市教委作成予定)」を参考に,

中学校2年生で実施する「宮っ子チャレンジ」との関連を図りながら,各地域学校園

において小・中学校におけるキャリア教育の取組の充実を図る。

③小学校活用期(5・6年生)における教科担任制の実施←基本方針①

活用期における教科担任制を推進する。

教員の専門性や得意分野を生かした指導による学力向上,多くの教員による子どもの

見取りなどのよさがある教科担任制の考え方を取り入れることで,小中学校の円滑な接

続を図る。小学校の活用期(5・6年生)において,授業交換や専科教員の活用等によ

り実施し,実施教科については学校規模等の実情に応じて決定する。

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④地域の教育力を生かした教育活動←基本方針③④

地域等と連携を図った学習指導や学習支援を行うとともに,地域学校園の活性化を図

る。

魅力ある学校づくり地域協議会等との連携を図りながら,授業や放課後等において地

域の教育力の活用を一層推進する。また,地域行事等への協力と児童生徒の参加促進を

図る。

〔 新たに実施する1つの取組 新規 〕

①月1回程度の「小中一貫の日」の設定←基本方針②

地域学校園で月1回程度の「小中一貫の日」を設定し,新制度を確実に推進する。

小中学校教職員が,会議や打合せを定期的に実施することで,相互理解の深化ととも

に,地域学校園の業務や取組の効率化を図る。

〔 継続する4つの取組 継続 〕

①児童生徒の交流活動←基本方針①

これまで地域学校園で進められたあいさつ運動,奉仕活動などの児童生徒交流活動を,

今後も継続して推進する。

地域学校園の小中学校は,魅力ある学校づくり地域協議会や地域行事などを有効に活

用するなどして,交流活動の促進を図る。さらに,冒険活動センターの小小,小中の交

流活動も継続する。

②小学校6年生の進学先中学校訪問←基本方針①

小学校6年生の進学先中学校訪問を市内の私立学校とも連携しながら全市一斉に実

施する。

児童の中学校進学に伴う不安解消等を目的として,各地域学校園において実施内容の

工夫に努めながら継続する。

③教職員の連携した取組と推進のための運営体制(含 授業力向上に向けた地域学校園

の取組)←基本方針①②③

各地域学校園において,運営会議や部会,分科会,合同研修会を行うとともに,一人

配置教職員の連携も継続する。

小中一貫教育の取組の共通理解や小・中学校教員の授業力向上を図るため,地域学校

園の実態を踏まえながら連携した取組を行う。また,地域学校園事務室の取組も継続す

る。

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④小中一貫教育推進主任業務←基本方針①②③④

制度立上期に必要であった業務を見直すとともに,持続可能とするための必要な業

務を充実する。

(業務の見直し)

・ 保護者や地域に制度の趣旨が概ね周知されたことから,周知業務は地域学校園裁量

とする。

・ 乗り入れ授業の授業者が授業実施後に推進主任に提出する報告書を取りやめ,報告

を交付金業務の報告書等と一体化するなど簡素化を図る。

・ 年6回行っている市主催の小中一貫教育推進主任・担当教員の研修,連絡会を大幅

に縮減する。

(業務の充実)

・ 地域学校園の小学校の推進担当教員と連携して,系統的な指導の充実や地域学校園

裁量を生かした乗り入れ授業の企画・調整業務を行う。

・ 各地域学校園の部会や研修会の企画・運営を行い,本制度がより充実するための連

携強化を図る。

・ 本制度実施の進捗状況を管理するとともに,期待された効果に基づく指標の達成状

況等を定期的に把握し,その成果と課題を明らかにして,各地域学校園で PDCA サイク

ルを生かして取組の充実・改善を行う。

・ 魅力ある学校づくり地域協議会委員を兼ね,地域と連携した教育活動や地域行事等

への協力を推進し,「地域とともにある学校づくり」に積極的に参画する。

(3)教育環境の整備

「小中一貫教育・地域学校園」の取組を円滑に進め実効性を高めるためには,人的・

物的教育環境の整備は地域学校園や学校において必要なものである。

○ 相互乗り入れ授業と小中一貫教育推進主任業務を円滑に進めるための体制整備

各地域学校園,各学校に配置している学力向上非常勤講師は有効に活用され,教職

員からも必要性を強く訴えられていることから,今後の相互乗り入れ授業と小中一貫

教育に係る業務を円滑に実施するための体制を整備する。

○ 地域学校園と学校の創意ある取組推進のための環境整備

交付金等の予算は全ての地域学校園,学校で本制度の目的達成のために十分に活用

されていることから,小中一貫教育や創意ある取組を進めていくための物的環境を整

備する。

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Ⅶ 持続可能な制度の推進にあたって

「小中一貫教育・地域学校園」制度をより効果的に進められるようにするためには,全

ての教職員が,各取組の目的を共有し効果を実感しながら推進することが必要となる。ま

た,保護者や地域の協力,参画を得るなどして教育活動を進められるようにしていくこと

が大切である。

このようなことから,今後の推進にあたって以下のことを実施する必要がある。

1 成果に係る指標の設定

期待される効果の実現状況を把握する必要があることから,以下のように指標を設

定する。さらに,市教育委員会は,各地域学校園が主体的に本制度実施の進捗状況や

指標の達成状況,成果と課題を把握するためのシートを作成し,各地域学校園に配付

する。

【指標1】9年間の系統的な指導による教育活動の充実

○ 中1ギャップの解消

・中1の50%未満の定着率の生徒の割合(国語,数学)

【とちぎっ子学習状況調査 中学校2年生】

※とちぎっ子学習状況調査の出題範囲は,調査する学年の前学年までの学習内容

・小6から中1の不登校数 【不登校に関する実態調査】

・小6から中1のいじめの認知件数

【児童生徒の問題行動等 生徒指導上の諸問題に関する調査】

○ 9年間を通した学力保障

・中3の50%未満の定着率の生徒の割合(国語,数学,英語)

【学習内容定着度調査】

【指標2】教職員の相互理解の深化と資質向上

○ 学習指導における小中間の相互理解が進んだ割合 【教職員アンケート調査】

○ 指導方法の工夫,改善の状況 【教職員アンケート調査】

【指標3】地域の教育力を結集した学校支援の活性化

○ 学校支援ボランティアの数

【魅力ある学校づくり地域協議会に関する実績報告】

○ 地域の方とともに学ぶことが楽しいと考える児童生徒の割合

【学校マネジメントシステム】

【指標4】地域と連携した自主的・自律的な学校運営の推進

○ 学校,家庭,地域,企業等が連携して,教育活動や学校運営の充実を図ってい

ると考えている地域住民の割合 【学校マネジメントシステム】

○ 地域の行事に参加している児童生徒の割合 【学習と生活のアンケート】

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2 教職員用手引書の作成と学校への説明会の実施

本市全ての教職員に新制度の理解を深められるよう,平成27年2月までに,教職

員用手引書を作成し配付するとともに,校長会議はもとより,小中一貫教育推進主任

や担当教員を対象とした説明会を開催する。

3 家庭,地域の理解促進のための啓発

保護者や地域の理解を図るため,「つなぐ(取組改定版)」を平成27年度当初に発

行する。

4 教育委員会の支援

教育委員会においては,平成27年度以降も各地域学校園の実施状況等をとらえ,

学校現場に必要とされる支援は継続して実施する。