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温室効果ガス観測技術衛星 「いぶき」(GOSAT)の成果と後継機へ の期待 環境省地球環境局研究調査室長 松澤 宇宙利用ミッションシンポジウム2012

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Page 1: 温室効果ガス観測技術衛星 「いぶき」(GOSAT)の成果と後継 …2 GOSATプロジェクトの目的 温室効果ガス(二酸化炭素とメタン)の『全球の濃度分布』と

温室効果ガス観測技術衛星 「いぶき」(GOSAT)の成果と後継機へ

の期待

環境省地球環境局研究調査室長 松澤 裕 宇宙利用ミッションシンポジウム2012

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ご紹介内容

• GOSATの紹介(目的、システム、プロダクツ)

• CO2観測の意義

• 後継機開発

「いぶき」搭載H-IIA 15号機打上 2009年1月23日 (写真:三菱重工業㈱)

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GOSATプロジェクトの目的

◆ 温室効果ガス(二酸化炭素とメタン)の『全球の濃度分布』と

『その時間的変動』を測定する。

◆ GOSATにより取得される温室効果ガス濃度と地上観測デー

タとを併せて利用することにより、亜大陸レベルでの吸収排

出量の推定精度を高める。

● これらにより、京都議定書に基づく組織的観測の維持及び

開発の促進に貢献するとともに、京都議定書第1約束期間

(2008~2012年)における地域ごとの吸収排出量の把握や

森林炭素収支の評価等の環境行政に貢献する。

◆ これまでの地球観測技術を継承・発展させ、温室効果ガスの

測定技術を開発するとともに、将来の地球観測衛星に必要

な技術開発を行う。

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「いぶき」(GOSAT)のシステム

○サイズ 本体 :高3.7m×幅1.8m×奥行2.0m パドル翼端間 : 13.7 m ○質量 : 1750 kg ○発生電力 : 3.8 kw(EOL) ○寿命 : 5 年 ○打上げ時期 : 2009年1月23日 12:54 (JST) ○打上げロケット : H-IIAロケット 15号機

温室効果ガス観測センサ

TANSO-FTS

TANSO-CAI 雲・エアロソルセンサ

軌 道

太陽同期軌道

地方時 13:00+/-0:15 高 度 666 km 傾斜角 98 度 回 帰 3 日

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「いぶき」GOSAT

視野の直径10 km

高 度 666 km

太陽光

衛星観測データと地上測定データとを組み合わせて、大気輸送モデル解析により、炭素収支分布を高精度で推定する

地上測定データ

二酸化炭素濃度等の観測

炭素収支分布の推定

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検証観測の概念図

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「いぶき」データプロダクト (標準プロダクト)

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「いぶき」データ処理の概要

(L1B)

(L2:各地点カラム量 L3:全球濃度分布)

(L1A)

輝度分布

〔蓄積した時間変動(月・ 季節変動)情報を利用〕

(L4B) (L4A)

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衛星からの二酸化炭素観測の意義

地上、タワー、航空機による観測地点だけでは、 観測の空白域が多い

GOSATによる二酸化炭素濃度全球分布の 観測によって、観測空白域を埋めることが出来る

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二酸化炭素観測の意義ー炭素循環の解明

Global Carbon Project 2010をもとに改変

単位:Gt(ギガトン)C/年 = 10億トンC/年 = 37億トンCO2/年

1GtC/年は、全球平均で約0.5ppm/年の二酸化炭素増加に相当

重要な科学的課題 陸域生態系による二酸化炭素

吸収の変動要因。

陸域生態系・海洋による二酸化炭素吸収の安定性。

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二酸化炭素観測の意義ー炭素循環の変動の監視

臨界点 臨界点の概要 全球気温上昇

アマゾンの熱帯雨林の枯死

気候変動の影響によりアマゾン流域を広域にわたって乾燥させ、熱帯雨林が枯死するおそれがある

3から4度 二酸化炭素の吸収量の変化

高緯度の寒帯林の枯死

気候変動の影響により、水ストレス、夏の暑熱ストレスが増加し、枯死、病気に対する脆弱性等が増加するおそれがある

3度 二酸化炭素の吸収量の変化

凍土融解 シベリアにおける凍土融解 - メタン及び二酸化炭素の排出量の変化

Timothy M. Lenton (2008)より作成

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二酸化炭素観測の意義ー主要な排出国の排出量の推定

○ 中国、米国は世界の約5分の1を排出。 ○ 中国、インド等の途上国については、 今後の経済成長に伴う排出量の増加

が予想されている。

世界のエネルギー起源CO2排出量(2007年)

※ EU15ヶ国は、COP3(京都会議) 開催時点での加盟国数である

5.5%

ロシア

4.3%日本

11.0%

EU15カ国

7.4% その他先進国

19.9%

米国

21.0%

中国

インド4.6%

その他

26.4%

京都議定書義務付け対象

28.2%

世界のCO2排出量290億トン

出典: IEA「CO2 EMISSIONSFROMFUELCOMBUSTION」 2009 EDITIONを元に環境省作成

今後のCO2排出量の予測

0 2000 2010 2020 2030 2040 2050 2060 2070 2080 2090 2100

5

10

15

20

25

先進国

開発途上国

0 2000 2010 2020 2030 2040 2050 2060 2070 2080 2090 2100

5

10

15

20

25

出典: Kainuma et al., 2002: Climate Policy Assessment, Springer, p.64.

途上国

先進国

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後継機への期待

GOSAT2 (2016~)

GOSAT 4以降

濃度及び正味フラックスの顕著な精度向上

MRVへの挑戦 定常観測 観測空白域の大幅削減 吸収排出量推定誤差低減

GOSAT (2009~)

GOSAT3

GOSATシリーズの目指すもの

国際的な観測連携プラットフォーム

・データ相互利用、相互検証、共同観測等の連携を行うプラットフォームの構築 ・これによる観測データの信頼性や利用しやすさの向上

GOSAT2~ (日本)

OCO-2 (NASA)

Carbonsat (ESA、)

いぶき後継機の目標

・CO2、CH4の多点高精度観測による炭素循環の解明への貢献 ⇒ 気候変動予測の精緻化 ・気候システムの重大な変化(熱帯林枯死等)の早期検出 ⇒ 地球変動の監視 ・世界的なCO2の排出削減努力のモニタリング(REDD+含む):宇宙からのMRV ⇒ 気候政策への貢献

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G3

宇宙からのMRVに向けた主要なタイムフレーム

2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020

COP17・SBSTA:欧米との観測連携を提案 日米衛星データ利用WS:米国にG2-OCO2

での連携をバイで提案 SBSTA36:G2観測継続をコミットメント? Rio+20:GOSATシリーズによる科学、地

球変動監視、MRVを提唱?

OCO2(米国) TanSat(中国、3年)

GOSATミッション期間 GOSAT2ミッション期間

Carbonsat(欧州、5機体制

OCO3(米国)

カンクン合意に基づく長期目標達成のレビュー

新たな枠組みの国際的合意

2013年~2020年におけるカンクン合意等に基づく各国の緩和取組

Gシリーズ(日)と欧米中で

国際共同検証体制を構築し、大規模な排出国の正味の吸収排出量の変化を

観測し、MRVに貢献

G2

2020年からの新たな枠組による各国のGHG削減取組