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患 者 安 全 の エキスパ ート

日本麻酔科学会

麻酔科医以外の医師は、

なぜ、 子供に麻酔科をすすめるのか?

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23

      目  次

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45 45

目 

はじめに   

08

   医学生・研修医のみなさんへ

第一章 麻酔科医の現在と未来   

11  

 

麻酔科医のイメージと実態   

12

   

麻酔科医とは

   

知られていない麻酔科医

   

ドラマやマンガでの描かれ方 

麻酔科医は手術場のマエストロ

   

全身管理と周術期管理

   

患者安全のエキスパート

 

これまでの麻酔科医とこれからの麻酔科医   

14

   

これまでの麻酔科医

 

周術管理の中心を担い、患者の命を守る“

最後の砦”   

15

   

変わってきた麻酔科の立ち位置。全身管理から、病院の全体管理まで  

  

今後、さらに必要性、重要性は増していく麻酔科医  

16

   

麻酔科医の数、日本はアメリカの半分、ヨーロッパの30%

   

2004年以降、麻酔科の伸び率はダントツトップ

第二章 麻酔科医を目指すあなたへ   

19

 

専門医制度で何が変わる?   

20

   

専門医制度とは

 

あなたの本当にやりたい事は何ですか?   

22

   

臨床・研究・教育” “

趣味” “

収入” “

論文” “

出世”

本当にやりたいことを見極めよう?

 

意識調査〜「麻酔科医になる」ということ   

24

   

男女の比率

   

学生時代に希望していた科といま働いている科

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67

 

麻酔科を選んだ理由   

26

   

実際働いてみて感じる、麻酔科医のいい所

  

麻酔科医のクオリティ・オブ・ライフ   

28

   

意外にハッキリ、オンとオフ

   

育児と両立

  

研究者、教育者としての道を究める   

30

    

幅広い、選択肢

 

麻酔科医のキャリアパス   

32

   

業務の内容とキャリアップのステップ

   

幅広い、麻酔科医の活躍の場  

 

自由度の高い麻酔科医の仕事   

34

   

人生を通じて、長く働く事ができる科目

  

若手医師ぶっちゃけ覆面座談会   

36

   

学生時代の希望科と現在の科

   

後輩たちに教えておきたいおすすめポイントとネガティブポイント  

   

麻酔科を選んだ本当の理由

第三章 麻酔科医以外の医師が、子供に麻酔科をすすめる理由   

39

 

研修で変った麻酔科のイメージ   

40

   

研修をしたから麻酔科になった人は75%

 

医師は、子供に子供に何科の医師をすすめるか   

42

   

医師を目指すあなたの子供が、科の選択に迷っています。何科をすすめますか?   

あとがき   

46

参考文献   

47

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89

はじめに

 

この冊子は、医学生、研修医の皆さんだけでなく、その親御さんや一般の方も含め、多くの

方に麻酔科医の役割や実情を知っていただき、理解を深めていただくことを目的に編集されま

した。麻酔科医という仕事の魅力や、やりがい、今後の展望などについて、客観的なデータな

ども盛り込みながら、わかりやすく紹介しています。

 

麻酔科は、たとえば内科や外科、耳鼻科や眼科といった科に比べて、その内容が掴みづらい

ところがあるかもしれません。手術を受ける患者さんに麻酔をかけたりするらしい、実態がよ

くわからない医師──一般の方の中には、そんなイメージを持たれている人もいらっしゃる

ようです。

 

麻酔科医は、手術のために麻酔をするだけでなく、患者さんが無事に手術を終えて順調に回

復できるよう、手術前から手術中、手術後まで患者さんのコンディションを見守っていく“

者安全のエキスパート”

ともいうべき存在です。さらに近年は、集中治療や救命救急、緩和医療、

ペインクリニックといったさまざまな領域で麻酔科医の技術が求められるようになり、ますま

す活躍の幅を広げています。

 

本冊子では、そうした麻酔科医の業務の内容や、麻酔科を巡る昨今の概況などについて解説

することに加えて、現役医師たちへのアンケート、座談会などを通じて得られた声も盛り込み、

麻酔科医のメリット、面白さ、やりがいなどなど、麻酔科医の実情を立体的に描いています。

 

医学生や研修医の皆さんは近い将来、専門とする科を決定しなければなりません。「すでに

決めている」という人もいるでしょう。「いくつかに候補は絞った」という人もいるかもしれ

ません。そして「まだ迷っている」「研修を経験するなかで、これから決めていきたい」とい

う人も少なくないと思います。本冊子が、そんな医学生や研修医の皆さんの、人生の選択の一

助となれば嬉しく思います。

日本麻酔科学会  

広報委員会

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1011

第一章 麻酔科医の現在と未来

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1213 第一章  麻酔科医の現在と未来

 

皆さんは麻酔科医と聞いて、どんな姿を思い浮かべますか? 

ドラマやマンガなどでは、ちょっ

と変わり者だったり、謎の多い人物だったり、事件の犯人だったりと、ネガティブな形で描かれ

ることも少なくありません。内科や耳鼻科、整形外科など、診療科名から内容を想像しにくく、

身近さにも欠けるところもあるでしょう。要するに「実態がよくわからない医師」として捉えられ

がちなのです。

 

とはいえ、何かと誤解されてしまうのもやむを得ない側面があります。手術室における麻酔科

医の仕事は、パイロットに例えられることがよくありますが、飛行前の準備(術前評価と準備)、

離陸(薬剤の導入)、巡航(維持)、着陸(覚醒)といった一連のステップを、何事もなく完遂して

当たり前。乗客(患者)の気づかないところで、緻密な業務に当たっているのが麻酔科医という存

在なのです。麻酔科医が術中の患者の状態を適切にコントロールするからこそ、執刀する外科医

やサポートする看護師たちもそれぞれの仕事に集中し、役割を全うすることができるといっても

過言ではありません。手術現場をオーケストラになぞらえるなら、麻酔科はいわばマエストロ

(指揮者)のような役割を担っているのです。 

麻酔科医は、麻酔科に所属する医師を指しますが、

その役割は単に手術中の麻酔をするだけにとどまりま

せん。現代の麻酔科学は、ペインクリニック、集中治療、

緩和医療といった幅広い領域をカバーしています。

 

世間一般の方たちだけでなく、医師たちの間でも誤

解があったり、認識が不十分なところがある麻酔科

医という仕事ですが、手術、集中治療、救急など人

の生死に関わるような場面、緩和医療やペインクリ

ニックといった患者のQOL(クオリティ・オブ・ラ

イフ/生活の質)に関わる領域で、その専門知識や技

術は確実に必要とされるものばかりです。

 

現代の麻酔科医は“

患者安全のエキスパート”

と評

すべき存在といえます。その実態や未来については、

以降のページでさらに詳しく説明していきましょう。

■ 麻酔科医のイメージ

( 出典:日本麻酔科学会 第 61 回学術集会 広報委員会企画調査 )

麻酔科医のイメージと実態

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1415

 

以前の麻酔科医は、外科医の一スタッフのように扱われてしまうことが少なくありませんで

した。実際は従来から重要な役割を担っていたのですが、医療現場での認識不足もあって、手

術の裏方として捉えられてしまうような、目立たない存在だったのです。

 

そうした扱いに加えて、麻酔科を専門とする医師が少ないことによる激務が、麻酔科医を目

指す人材の慢性的な不足を、さらに加速させてしまいました。外科医に隷属するような形で「オ

マエは麻酔だけかけていればいい」などと軽んじられてしまうのに、仕事は激務…これでは、

なかなか麻酔科医を志す人材が出てこないのも仕方のないこと。患者や他の医師とのコミュニ

ケーションも少なく、一人で地味に麻酔をかけているだけの、孤独で過酷な裏方仕事。それが

従来の麻酔科医につきまとうイメージでした。

 

しかし現在では、そうしたイメージは完全に払拭されています。医療現場での認識も、大き

く変化しました。麻酔科学の進歩もあって、麻酔科医の専門性や技術が高く評価されるように

なり、「手術を行うには、まず麻酔科医を押さえろ」といった具合に、手術現場の中核を担う

人材として重要視されるようになったのです。集中治療や救急など、麻酔科医の活躍する場面

が増えたこともあり、麻酔科医ほど他の科と仕事をする医師はいないとも言われています。つ

まりは、それだけ顔が広くなり、さまざまな医師やスタッフとの交流や情報交換などがはかれ

るということです。さらに麻酔科医は、参加する手術数が他の医師に比べて圧倒的に多いので、

豊富な経験を積み、知見を蓄えることもできます。

 

麻酔科医の仕事は患者に麻酔をかけるだけでなく、呼吸や循環、代謝といった生理活動を手

術中に管理(全身管理)することも含まれます。手術中は通常、麻酔科医が一人で管理を担当

しますが、患者の入院から手術前の準備、麻酔、手術、回復という一連の流れにおける管理(周

術期管理)は、麻酔科医を中心に外科医など他科の医師と連携しながら行われるのが一般的で

す。言うなれば麻酔科医は、入院してきた患者が無事に手術を終え、順調に回復していくストー

リーを総合プロデュースするような存在であり、周術期の患者の命を守る“

最後の砦”

でもあ

第一章  麻酔科医の現在と未来

これまでの麻酔科医とこれからの麻酔科医

周術期管理の中心を担い、患者の命を守る“

最後の砦”

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1617 第一章  麻酔科医の現在と未来

るのです。そうした医療現場での管理技術やコーディネーション能力に加えて、手術に用いる

人工心肺など医療機器にも精通した麻酔科医は、やがて病院全体の管理・運営・経営責任者=

院長として活躍するケースも少なくありません。

 

医療業界全体で医師不足が問題視されている昨今、麻酔科医も御多分に洩れず不足していま

す。医療技術の発展に加えて、日本社会の高齢化が急激に進んでいる影響で、麻酔科医の力が

必要とされる高度な手術の数は増加傾向にあります。この動きは、今後さらに加速していくこ

とが予想され、麻酔科医はますます引く手あまたになることでしょう。

 

ちなみに、人口10万人あたりの麻酔科医数を見ると、日本は5人程度。一方、アメリカでは

13人、ドイツは15人といった数字です。さらにアメリカでは、麻酔看護師が存在しているので、

麻酔を担当する人材の実質的な数はさらに多くなります。こうした数字からも、日本の医療界

における麻酔科医不足が見て取れるわけです。とはいえ、ネガティブな情報ではなく希少性を

表していると思います。左のグラフに注目してください。

■ 各国の麻酔科医の数と麻酔科医1人あたりの麻酔件数

■ 診療科別医師数の推移 (1994 年を1として算出 )

*:日本は全身麻酔件数。アメリカ、イギリス、フランスは麻酔薬を投与した件数。n/a:Not available

( 出典:奈良県立医科大学 古家仁教授 麻酔科を取り巻く世界の状況 )

内科は、96 〜 06 年は内科、呼吸器科、循環器科、消化器科、神経内科、アレルギー科、リウマチ科、心臓内科、08 〜 12 年は、これらに腎臓、糖尿病、血液、感染症科を追加。外科は、94 〜 06 年は外科、呼吸器外科、心臓血管外科、気管食道科、肛門科、小児外科、08〜 12 年はこれらに乳腺、消化器科を追加。

( 出典:厚生労働省 平成24年 (2012) 医師・歯科医師・薬剤師調査の概況 )

今後、さらに必要性、重要性は増していく麻酔科医

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1819

 

これは診療科別の医師数の推移を示したものですが、新しい臨床研修医制度が導入された

2004年以降、伸び率は麻酔科がダンドツのトップなのです。研修期間中に見たり体験した

りして、麻酔科の仕事にやりがいや面白さを強く感じ、麻酔科医を志す若い医師が増えている

ということでしょう。

 

前のページで、麻酔科医がキャリアを積んでいくことで、病院長といった病院の要職に就く

ケースがあることをお伝えしました。従来から麻酔科医が重要視されてきたアメリカでは、か

ねてより多くの麻酔科医が院長や副院長などのポストにあります。また、近年では日本におい

ても、いわゆる大病院の院長に麻酔科医が就任する例が見られるようになってきました。

 

麻酔や手術中の全身管理の専門家として、周術期管理や救急などで他科と連携する際の中心

メンバーとして、緩和医療やペインクリニックといった患者のQOL向上の導き手として、人

工心肺や人工呼吸器など医療器機にも精通した手術現場のコーディネーターとして、ひいては

患者の安全を守るエキスパートとして──つまり麻酔科医は、多領域の連携における統率力、

コミュニケーション能力に優れた、医療現場のキープレイヤーだと言えます。

 

幅広く、奥行きのある麻酔科医の仕事は、やりがいや可能性に満ち溢れています。

第二章  麻酔科医を目指すあなたへ

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2021

■ 新・麻酔科専門医制度の受験資格(2015年以降の医師国家試験合格者対象)

第二章  麻酔科医を目指すあなたへ

 

医師の知識や技術の向上を図り、科目ごとの専門性を高めること、患者によりわかりやすく、

専門的な医療を提供することなどを目的に、新たな専門医制度がスタートすることをご存じで

すか? 

すべての科目では2017年度から、麻酔科では2015年度から、新しい専門医制

度に基づいた研修医プログラムが導入されます。

 

従来から大きく変わるのは、すべての医師が総合診療専門医、麻酔科専門医、小児科専門医、

救急科専門医といった「基本領域」とされる科目の、いずれかひとつの専門医として認定され

ることが原則になること。さらに、従来はそれぞれの科目の学会ごとに研修プログラム策定や

運用、専門医認定が行われていましたが、今後は専門医養成プログラムの評価、専門医の認定

などを第三者機関が執り行う形に変更されます。

専門医制度で何が変わる?

 

こうした変化は、若手

医師のキャリア形成にも

大きく関わってきます。

 

医師としての人生を中

長期的に捉え、何を自分

の専門とするか、じっく

りと検討することが重要

になってきます。

 

それでは次のページか

ら、「麻酔科専門医」と

いう選択を視野に入れる

ために役立つ情報をご紹

介していきましょう。

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2223

 

医師として、どのような人生を歩んでいくか。何を専門にして、何に価値を見出していくか。

これは非常に重要な選択です。そして、関わってくる選択肢も無数に存在します。

 

たとえば、どこで働くか。都道府県を選び、都市部にするか、地方にするか、大学病院か、

市中病院か…といった選択が、まず必要になってくるでしょう。

 

価値観も大切です。たくさんの臨床を経験したい、研究に時間を割いて多くの論文を残した

い、大学で出世をして教授職に就きたいなどなど、いろいろな選択が考えられます。

 

夢は何か、医師としての生活だけでなく、プライベートの生活をどうしたいか、という側面も検

討しなければなりません。生活に重きを置き、まずは稼げることを重視するのもひとつのチョイ

スでしょう。しっかりと休めるかどうか、趣味を楽しめるかどうか…といった「時間」を重視する

考え方もあります。結婚や子育てについても視野に入れて考えたいという人もいるでしょう。 

 

いま挙げたような、さまざまな要素を勘案しつつ、何を自分の専門にするか…自分の人生を

慎重に見極めていく姿勢が、とても大切になります。

第二章  麻酔科医を目指すあなたへ

■ あなたの本当にやりたいことは何ですか? あなたの本当にやりたいことは何ですか?

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2425

■ 医師全体、麻酔科医の男女比

■ 学生時代に希望していた科と、今働いている科

( 出典:厚生労働省 平成24年(2012) 医師・歯科医師・薬剤師調査の概況 )

( 出典:公益社団法人 日本麻酔科学会)

( 出典:日本麻酔科学会 第59回学術集会 招待企画シンポジウム    「学生・研修医時代に考えるべき 3 つのこと」 )

●男女の比率

 

2012年12月31日現在、医師全体では男性が80・3%、女性が19・7%という割合でした。

一方、麻酔科医の場合、男性は63・7%、女性は36・3%という割合。麻酔科は他科に比べて、

女性医師が多い傾向にあります。

●学生時代に希望していた科といま働いている科

 

現役医師へのアンケートによると、いま麻酔科以外の医師(内科医や小児科医など)として

働いている人は、67%が学生時代に希望していた科と同じ科に進んでいます。一方、いま麻酔

科医として働いている人は、学生時代から麻酔科を選んでいた人が7%。学生時代には別科を

選択してした人が93%もいるのです。研修医時代、たとえば「気管挿管の練習がしたい」といっ

た理由で麻酔科の研修も受けてみたところ、麻酔科医のやりがいや面白さを知り、進路変更し

た人が非常に多いのです。

第二章  麻酔科医を目指すあなたへ

意識調査〜「麻酔科医になる」ということ

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2627

■ 医師としての自己意識&自己実現

■ 麻酔科のいいところ

( 出典:日本麻酔科学会 第 61回学術集会 広報委員会企画調査 )

院から手術、退院まで、患者の安全にずっと携わることができる」といった、麻酔科医ならで

はのやりがいを魅力として挙げる声も少なくありません。

 

どんな要素に医師としての自己意識、自己実現を見出すか──つまりは、何に重きを置くか

を尋ねたところ、「研究に打ち込みたい」「社会的な地位を得たい」といった志向よりも「オン・

オフを切り分けたい」「家族や自分の時間(を大事にしたい)」といった、自身のQOLを重視

する志向が医師全体で高いことが見て取れます。そして、麻酔科はそうしたQOLの高さが確

保しやすく、とても働きやすいと評価する声が非常に多いのです。

実際働いてみて感じる、麻酔科医のいい所

 

麻酔科医、麻酔科医以外の医師それぞれに、麻酔科医の魅力についてアンケートで尋ねたと

ころ、どちらも「QOLが高い」という回答がトップでした。麻酔科医の回答で3位は「家庭

との両立」。子育てや家事、家族サービスなどを犠牲にする頻度が少ないことも魅力、という

わけです。麻酔科医以外の医師が3位に挙げているように、麻酔科医はベッドフリー=主治医

にはならないのが基本。加えて、サマリー(診療内容の要約)を書くことも原則的にありませ

んので、そのぶん業務の負担が他科の医師に比べて少なくなります。またこれら以外にも「入

第二章  麻酔科医を目指すあなたへ

( 出典:日本麻酔科学会 第59回学術集会 招待企画シンポジウム    「学生・研修医時代に考えるべき 3 つのこと」 )

麻酔科を選んだ理由

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2829

 

前の見開きでも紹介したように、麻酔科医という進路選択を語るうえで「QOLの高さ」は

見逃せない要素になります。

 

麻酔科医というと、日々、たくさんの手術に追われて忙殺される激務…という印象が以前は

強かったかもしれません。しかし現在では、医療業界全体で麻酔科医の拡充が叫ばれるように

なり、人員が揃いつつある病院も増えてきています。そうした病院の麻酔科では交代制で無理

のないシフトが組まれ、麻酔科医それぞれのオンとオフが確保されている施設が少なくありま

せん。実は、皆さんが想像する以上に自分の時間が取れるようになってきているのです。

 

また、麻酔科医は基本的に集中治療、ペインクリニック領域以外の、いわゆる手術室におけ

る麻酔管理に関して主治医になることは、まずありません。ですから、サマリーを書くことも、

まずありません。医師の業務のなかで、詳細なサマリーをまとめる労力と時間は、たいへん大

きな負担になっています。そうした負担から解放されることは、他科の医師から見て「正直、

羨ましい」と思われているところもあるようです。

 

いま述べたような麻酔科医の業務状況は、家庭生活にも大きく関わってくるものです。

 

麻酔科は、他科に比べて家庭との両立がしやすいという声が、現役医師たちから数多く聞か

れます。他科より女性医師の割合が多いことも、それを証明しているかもしれません。「麻酔

科全体の雰囲気として、女性が働きやすい職場づくりをしている傾向が強い」というような女

性麻酔科医たちの指摘もあるほど。

 

現実的なライフプランを考えるうえでは、職業だけでなく、結婚や子育ても視野に入れて検

討することが不可欠でしょう。もちろん、余暇を充実させ、趣味を楽しんだり、しっかりと休

養をとったりすることも重要です。昨今、巷間で話題にされることが増えてきたワーク・ライ

フ・バランスの考え方から見ても、麻酔科医という進路は非常に魅力的だといえます。

第二章  麻酔科医を目指すあなたへ

麻酔科医のクオリティ・オブ・ライフ

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3031

 

麻酔科医としてのライフプランを考えるうえで、これまで説明してきたような医療現場での

臨床経験やQOLの側面のほかに、「研究者や教育者を目指す」という選択があることも、こ

こで強調しておきたいと思います。

 

麻酔科医の仕事は、単に施術をするだけで完結するものではありません。患者の管理を適切

かつ安全に行うには、生理学や薬理学に関する豊富な知識が求められます。そうした背景から、

麻酔科医の中には、日々の臨床生活を通じて基礎医学への興味を深めて、基礎医学研究者とし

ての道を歩み始める者も少なくありません。

 

その他にも、神経、呼吸、循環、鎮静、痛みなど麻酔科学に関連した領域を研究するケース、

医療現場でのコーディネーション、マネジメントといった業務から派生して医療経済学や医療経

営学を研究するケースなど、多様な領域をテーマに研究を重ねる麻酔科医が数多く存在します。

 

たとえば、研究機関に所属して、研究や実験、論文執筆に専念するパターンもありますし、

大学の研究室に所属して、臨床にも携わりながら、研究や論文にも意欲的に取り組むパターン

もあります。臨床と研究のバランスなど、個別の条件は所属する環境によってさまざまなので

一概には語れませんが、臨床と研究、論文執筆などに並行して取り組むのは、ときには難しさ

や厳しさをともなうことがあるかもしれません。しかし、研究者として麻酔科学の進化(深化)、

発展に貢献し、知見や学識を深めることができるのは、とても意義深いことであり、きっとや

りがいを感じられることでしょう。臨床医として日々を送るだけでは得られない、深い達成感

や充実感を味わうこともできるはずです。

 

臨床での経験を重ねたり、研究に邁進したりしたその先には、先輩として後進の育成に携わる

ことも重要なミッションとなります。蓄えた技術や知識を継承し、次世代を担う麻酔科医を育

てる仕事──端的には、大学での教員職を目指す、という選択肢も考えられるでしょう。大

学の教授となって、後進の指導に意欲的に取り組む。そんな将来像も現実的な可能性のひとつ

なのです。

第二章  麻酔科医を目指すあなたへ

研究者、教育者としての道を究める

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3233 第二章  麻酔科医を目指すあなたへ

 

ここからは、実際の医療現場における麻酔科医のキャリアパスについて触れていこうと思い

ます。左の図は、麻酔科医の道を進むにあたり、どのようなステップを経ることになるかを説

明したものです。医療現場での研修などを通じて経験を積み、知識を深めていきながら、段階

的に資格を取得していきます。将来的には、麻酔科医として幅広い視野や技術を備えつつ、よ

り専門的な領域を深めていく形になるでしょう。病院に在籍する常勤麻酔科医のほか、ペイン

クリニックの開業医や、出張麻酔科の開業医、研究者、大学教員など、さまざまな進路が考え

られます。

 

現在、社会全体の要請として、麻酔科医が強く求められています。麻酔科医が全国で不足す

るなか、需要は増える一方です。その結果、麻酔科医は経済的にも優遇される傾向が強くなっ

ている、という話もあります。端的に表現するなら、麻酔科医は他科に比べて収入が高め、と

いうこと。これはひとり立ちした専門医だけでなく、研修医にも見られる傾向です。

麻酔科医のキャリアパス

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3435 第二章  麻酔科医を目指すあなたへ

 

麻酔科は、関係する領域が非常に幅広い科目です。換言するなら、選択肢が多く、それだけ

自由度の高い科目と言えます。

 

麻酔、集中治療、救急、緩和医療、ペインクリニックといった臨床の自由度が高いことは、

前章でも説明したとおり。さらに麻酔ひとつをとっても、たとえば心臓血管麻酔、小児麻酔、

産科麻酔などより専門的に極めることも可能です。その他、生理学、薬理学、生化学といった

分野から基礎研究に取り組むにも、麻酔科の専門知識は非常に活きてきます。

 

また、他大学や他県への移動、他科からの麻酔科への転科&麻酔科から他科への転科が比較

的自由であることもポイントでしょう。

自由度の高い麻酔科医の仕事

 

麻酔科は、地域や大学の垣根がない

科目と言われています。諸事情で移動

することになった場合でも、確実に移

動先で麻酔科医として勤務可能です。

日本全国どこでも同じように勤務でき

ることは、とても大きなメリットでは

ないでしょうか。常勤や非常勤といっ

た雇用形態の選択、非常勤の場合は週

何日働くかといった勤務日数の選択な

どでも自由な場合が多いようです。

 

人生を通じて、長く働くことができ

る科目…それが麻酔科と言えるかもし

れません。

■ 麻酔科医の活躍の場

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3637 第二章  麻酔科医を目指すあなたへ

A 

私は、学生時代から研修医の途中までは循環器内科志望だったんです。でも、麻酔科研修、

集中治療室研修を経て、麻酔科医を選択しました。

若手医師、ぶっちゃけ覆面座談会

B 

私も研修を受けてから麻酔科を選んだくちです。麻酔科医が全身管理を迅速に行っていたり、

仕事にメリハリがあるところに惹かれて志望しました。学生時代は、まさか自分が麻酔科医  

になるなんて、思ってもいなかったんですけどね。

C 

私は、実習でまわるたびに志望がころころ変わってしまって。でも、麻酔科研修を受けて術中

管理の面白さなどに魅力を感じ、麻酔科に進もうかなと。ただ、友人からは「あなたは麻酔

科っぽい」と以前から言われていたんですよ。

D 

医学部入学時は小児科希望でした。でも、4年生のころから麻酔科志望で、以降はずっと麻

酔科医を目指して勉強していました。自分にとって、いちばん面白い科だったので。

A 

やはり、研修の影響って大きい。外科手術において、麻酔科医の関与によって術中や術後の経

過が大きく違うことを知ったり。私の場合、急性期の変動が著しい病態で呼吸・循環管理を

することに興味が湧いたのが、麻酔科を選ぶ大きな理由になりました。

B 

全身管理が行えるのは、麻酔科の面白さであり、やりがいですよね。あと、自分の時間がちゃ

んと持てるなど、仕事の内容以外の部分でもメリットを感じました。結婚したり、育児しな

がらでも仕事が続けられるケースは多いから、女性にもおすすめです。

D 

入局後、早い段階から自分なりに考えて仕事ができるのも魅力。外科のように、オペレーター

になるまで何年もかかったりしないので。それに、手術麻酔だけでも産科、心臓外科、小児

科など専門性の高い分野があり、いろいろな角度から取り組める科でもある。

A 

そうですね。手術麻酔だけじゃなく、集中治療とか緩和ケアなど、麻酔科医の関わる領域は

幅広い。それらをまんべんなく習得することもできるし、専門領域を絞ってさらに勉強するこ

ともできるから、麻酔科って選択の自由度がとても高いと感じています。 

C 

それに、想像以上にいろいろな人と関わる仕事ですよね。外科の先生やコメディカルの方と

連携し、コミュニケーションをうまく取って、手術を円滑に進めていく役割ですし。患者さん

の急変時には、麻酔科医が全体の指揮を執りますからね。

B 

麻酔中は少しの変動も見逃さないよう緊張感もありますが、患者さんが痛みを感じることな

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3839

  

く手術を終えて、無事に病棟に戻る様子を見るたび、すごくやりがいを感じますよ。

D 

それ、よくわかります。麻酔科のことをよく知らない他科の医師から「やりがいのない仕事」

と思われている節があって、確かに患者さんから感謝されるようなことは外科医に比べると少

ないかもしれませんが、うまくいったときの達成感は大きいですよね。

C 

麻酔科医は通常、主治医にはならないので、患者さんによっては手術室だけの短い付き合い

になってしまうことが少なくない。それはちょっと淋しく感じることもあります。ただ、今後

は術前、術中、術後と周術期管理に麻酔科医が一貫して関わっていく形がさらに広まっていく

でしょうし、麻酔科の重要性がさらに増していくと思いますね。

A 

薬剤の進歩や医療機器の進歩で、麻酔の安全性は今後、さらに向上するでしょう。一方、重

症な症例の外科手術も増加傾向にありますし、緩和ケアやペインクリニックなど患者さんの

QOLに麻酔科医が関わる場面も増えていくはず。薬剤や医療機器に精通し、知識や経験を

備えた麻酔科医は、これからさらに必要とされるようになると考えます。

B 

麻酔科医は、循環や呼吸など麻酔中の患者さんの命に直結する領域を預かる存在。要は、

患者さんの安全やQOLを守るのが仕事ですから、やはり、とてもやりがいを感じますよね。

第三章 麻酔科医以外の医師が、

        子供に麻酔科をすすめる理由

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4041 第三章  麻酔科医以外の医師が、子供に麻酔科をすすめる理由

 

第二章でも紹介しましたが、現役医師に実施したアンケートの結果を見ると、大半の現役麻

酔科医が、学生時代には違う科を希望していたことが浮かび上がってきます。具体的には、現

役麻酔科医の実に93%が、学生時代は麻酔科以外の科を進路として考えていたのです。そうし

た進路変更に大きく影響したのが、研修医時代に麻酔科を経験したかどうか。麻酔科の研修を

受けると、多くの研修医たちは麻酔科の魅力や面白さに気づき、自身の進路として真剣に考え

るようになる、ともいえるでしょう。

 

それを証明するようなアンケート結果もあります。

 

現役の麻酔科医に「麻酔科研修は、将来を決める上で大切でしたか?」と尋ねたところ、「大切だ

った(研修をしたから麻酔科医になった)」と回答した人が75%もいたのです。翻って、麻酔科

は実際に研修を受けてみないと、その魅力や面白さに気づきにくい科目であると言えそうです。

研修で変わった麻酔科のイメージ

■ 学生時代に希望していた科と、今働いている科

■ 麻酔科研修は、将来を決める上で大切でしたか?

( 出典:日本麻酔科学会 第59回学術集会 招待企画シンポジウム    「学生・研修医時代に考えるべき3 つのこと」 )

( 出典:日本麻酔科学会 第59回学術集会 招待企画シンポジウム    「学生・研修医時代に考えるべき 3 つのこと」 )

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麻酔科の医師、麻酔科以外の医師それぞれに、次のような質問を投げかけてみました。

「医師を目指すあなたの子供が、科の選択に迷っています。何科をすすめますか?」

 

その回答結果は、非常に興味深いものでした。

 

麻酔科医師、麻酔科以外の医師ともに、1位は「自分の所属科」です。思い入れのある自分

の専門科であり、事情などもよくわかっているはずですから、すすめたくなるのも当然でしょ

う。2位の「子供に任せる」というのも納得です。

 

注目していただきたいのは、麻酔科医以外の医師の3位。ここでなんと「麻酔科」が挙げら

れています。麻酔科医以外の医師の1割程度が、大事な子供の進路として麻酔科をすすめてい

るわけです。

 

この回答から浮かび上がってくる現役医師たちの本音は、これからの未来にどんな医療が主

流になっていくのか、どんな科が重要視されるように

なるか、といった事柄を見極めていく上でも、大きな

判断材料になってくるでしょう。

 

要するに、多くの医師たちが、今後の医療において

麻酔科医がより重要な役割を担うようになるはず…そ

んな未来像を予期していることが推察できるというこ

とです。

 

だからこそ、自分の子供にも麻酔科をすすめたい、

ということなのではないでしょうか。

 

これまで三章に渡って、麻酔科医の実態を理解して

いただくためのさまざまなポイントを紹介してきまし

た。一般的に、麻酔科医はまだまだ「よくわからない

存在」といった印象を持たれてしまっているところが

あります。

第三章  麻酔科医以外の医師が、子供に麻酔科をすすめる理由

医師は、子供に何科の医師をすすめるか

( 出典:日本麻酔科学会 第59回学術集会 招待企画シンポジウム    「学生・研修医時代に考えるべき3 つのこと」 )

■ 子供が科を迷っています。どの科をすすめますか?

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4445

 

そして、こうした印象は、医学生や研修医といった“

医師のたまご”

の間でも(程度差はあ

れど)同様だったりするわけです。

 

しかし、実際の麻酔科医は、単に麻酔をかけるだけでなく、執刀医など他の医師たちと連携

しながら手術前の準備で中心的な役割を担い、手術中には患者の全身管理を一手に引き受けて

手術の成功を支え、手術後は順調な覚醒、回復を見守る…といった具合に、患者の入院から治

療、回復、退院までに携わっています。まさに「治療」の結果に大きく関わっているのです。

 

患者の安全を守るエキスパートとして、患者の命を守る“

最後の砦”

として、医療の現場で

欠かすことのできない存在。それが麻酔科医なのです。

 

やりがいや楽しさ、面白さにあふれた麻酔科医の仕事は、一方で、実際に経験してみないと

なかなか理解しにくい側面があるのも事実です。だからこそ、研修でぜひとも麻酔科医の仕事

に触れてみてほしいのです。研修医時代に麻酔科の研修を受けて、当初考えていた科を変更し、

麻酔科医の道に進んだ現役医師たちが数多く存在しています。

 

麻酔科の関係する領域は多岐に及ぶことにも注目しておきたいところ。麻酔科医は、さまざ

まな手術で麻酔をかけたり、周術期管理に携わるだけでなく、集中治療や救命救急、緩和医療、

ペインクリニックといった領域でも活躍しています。たくさんの臨床経験を積むこともできれ

ば、広範に渡る知識を吸収することもできます。多くの科をまたいで仕事に関わることも多い

ので、自然と顔が広くなり、豊富な人脈を築くこともできるでしょう。

 

他科に比べて、高いQOLを確保しながら仕事に取り組めることも、麻酔科のメリット。子

育てをしながらでも仕事を続け、活躍している女性医師も少なくありません。

 

昨今の医療情勢を鑑みると、麻酔科の重要性は今後、高まるばかりと言っても過言ではあり

ません。麻酔科は将来的に非常に有望な科だといえるでしょう。そうした視点は、経験を積ん

だ現役医師たちへのアンケート結果にも現れています。

 

医師としての人生において、どの科を専門として選ぶかは、とても重要です。そして、多く

の可能性や奥行きを備えた麻酔科医の仕事は、一生をかけて追求するに値する、非常にやりが

いのある仕事だといえます。

 

麻酔科医という生き方、そろそろ真剣に考えてみませんか?

第三章  麻酔科医以外の医師が、子供に麻酔科をすすめる理由

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4647

 

時々刻々と変化していく現代日本の医療において、麻酔科医の役割もまた、確実に変化を遂

げています。単に麻酔をかけているだけのバイプレイヤー的な存在から、医療現場における患

者安全の専門家として、さまざまな場面で活躍するメインプレイヤーに変貌を遂げたことは、

これまでのページですでにご説明したとおりです。

 

麻酔科では2015年度から、全体では2017年度から新たに「専門医制度」がスタート

することを踏まえて、麻酔科医の概況を明瞭に解説し、現代の麻酔科医像を正しく理解してい

ただくことを目指して、本冊子は制作されました。ここで強調しておきたいのは、医学生や研

修医の皆さんが将来的に麻酔科医の道を選択するかどうかに関わらず、麻酔科研修で学んだ事

柄は、あらゆる科においても役立つ、ということです。麻酔科における経験・知識・技術は現

代の医療において、極めて中核的な意義をもっている、ということにほかなりません。

 

最後になりましたが、本冊子をお手にとってくださったこと、心より御礼申し上げます。ご

高覧いただき、まことにありがとうございました。           

【参考文献】

日本麻酔科学会

第59回学術集会 

招待企画シンポジウム

「学生・研修医時代に考える3つのこと」       

公益社団法人 

日本麻酔科学会

日本麻酔科学会61回学術集会

「広報委員会企画調査」               

公益社団法人 

日本麻酔科学会

 「麻酔科医を取り巻く世界の状況」  

                 

奈良県立医科大学麻酔科学教室  

古家

仁 

教授

 「平成24年(2012)

医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」       

                                  

厚生労働省

あとがき

日本麻酔科学会 

広報委員会

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4849

日経メディカル 2014年4月号

「特集 

臨床研修医制度で医療は前進したか」              日経BP社

 ロハスメディカル

2009年9月号 

「手術を受ける患者の命綱 

麻酔科医」          

株式会社 

ロハスメディア

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5051

日本麻酔科学会 広報委員会

委員長     坂本 篤裕副委員長    上山 博史委 員     稲垣 喜三委 員     国沢 卓之委 員     坪川 恒久委 員     寺嶋 克幸委 員     松本 尚浩担当常務理事  上村 裕一

ご協力いただいた方々

         石川 真士           安藤 亜希         山脇 緑          原薗 登紀子  

日本麻酔科学会新書 001

麻酔科医以外の医師は、なぜ、子供に麻酔科をすすめるのか?

2014年 10月 30日 初版発行

編 集   日本麻酔科学会 広報委員会

発行者   日本麻酔科学会

発行所   日本麻酔科学会      兵庫県神戸市中央区港島南町 1丁目 5 番 2 号          神戸キメックセンタービル 3 階         http: // www.anesth.or. jp/

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