国土交通省の発表「台風第 19 号における利根川上 …...2...

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1 国土交通省の発表「台風第 19 号における利根川上流ダム群の治水効果(速報)」 2019 年 11 月 5 日)と八ッ場ダムの治水効果についての考察 嶋津暉之 1.ダムの治水効果について 1-1 上流ダムの洪水調節効果は河川の中下流に行くと、低下していく 洪水は河川を流下していく途中で、流入する支川の洪水とぶつかり合い、さらに河道で洪水が貯 留されることによって、洪水の波形は扁平となり、ダム地点の洪水ピーク流量は図1の通り、次第 に小さくなっていく。このことにより、ダムによる洪水ピーク削減効果も下流に行くにつれて次第 に小さくなっていく。 河道での洪水の貯留効果は河床勾配が緩やかになる河川中下流部で働くので、洪水波形の扁平化、 すなわち、洪水ピークの低減は主として河川の中下流部で進行する。 1-2 2015 年 9 月の鬼怒川水害における上流 4 ダムの効果 2015 年 9 月の台風 18 号では鬼怒川下流部は溢水と破堤により、甚大な被害が発生した。 図1 ダムの治水効果の概念図 (ダムによる洪水ピーク低減量は流下とともに次第に小さくなる)

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国土交通省の発表「台風第 19 号における利根川上流ダム群の治水効果(速報)」

(2019 年 11 月 5日)と八ッ場ダムの治水効果についての考察

嶋津暉之

1.ダムの治水効果について

1-1 上流ダムの洪水調節効果は河川の中下流に行くと、低下していく

洪水は河川を流下していく途中で、流入する支川の洪水とぶつかり合い、さらに河道で洪水が貯

留されることによって、洪水の波形は扁平となり、ダム地点の洪水ピーク流量は図1の通り、次第

に小さくなっていく。このことにより、ダムによる洪水ピーク削減効果も下流に行くにつれて次第

に小さくなっていく。

河道での洪水の貯留効果は河床勾配が緩やかになる河川中下流部で働くので、洪水波形の扁平化、

すなわち、洪水ピークの低減は主として河川の中下流部で進行する。

1-2 2015年 9月の鬼怒川水害における上流 4ダムの効果

2015年 9月の台風 18号では鬼怒川下流部は溢水と破堤により、甚大な被害が発生した。

図1 ダムの治水効果の概念図

(ダムによる洪水ピーク低減量は流下とともに次第に小さくなる)

2

鬼怒川上流には国土交

通省の大規模ダムが 4基あ

る。五十里ダム、川俣ダム、

川治ダム、湯西川ダムであ

る(表1)。

4ダムの集水面積 595 ㎢

は鬼怒川の流域面積 1,761

㎢ の 1/3を占めている。

そして、4ダムの治水容量

は合計で 12,530万㎥(八

ッ場ダムの治水容量 6,500

万㎥の約 2倍)もあるので、鬼怒川はダムで洪水調節さえすれば、ほとんどの洪水は氾濫を防止で

きるとされていた河川であったが、下流部で大氾濫が起きた(図2)。

当時、4ダムではそれぞれルール

通りの洪水調節が行われ、ダム地

点では洪水ピークの削減量は

2,000㎥/秒以上もあった。しかし、

下流ではその効果は大きく減衰し、

水海道地点ではダムによる洪水ピ

ークの削減量はわずか約 200㎥/

秒であった(図3)。

〔注〕ダムによる水海道地点で

の洪水ピーク削減量の計算根拠

水海道の当年度の水位流量

関係式を使って、国交省が示し

たダムがない場合の洪水ピーク

水位から、ダムがない場合の流

量を計算し、実績流量との差を

求めた。

このように4ダムによる洪水ピ

ーク流量の削減効果は下流では約

1/10に減衰していた。

ダムによる洪水ピークの削減量

が下流で激減したのは1.で述べ

た支川の合流と河道貯留という二

つの要因が働いたからである。特

に鬼怒川の中流部は川幅が非常に

広く、ゆったり流れるので、河道

貯留効果が働きやすい。

治水容量 利水容量 有効貯水容量 総貯水容量

川俣ダム 2,450 4,860 7,310 8,760

川治ダム 3,600 4,000 7,600 8,300

五十里ダム 3,480 1,120 4,600 5,500

湯西川ダム 3,000 4,200 7,200 7,500

4ダム 12,530 14,180 26,710 30,060

表1 鬼怒川上流の4ダム

鬼怒川流域図 図 2

3

2.国土交通省の計算による八ッ場ダムの洪水ピーク流量の低減率

―八ッ場ダムの洪水ピーク流量の低減率を国土交通省の三つの計算結果から検証する―

2-1 2009年 3月の八ッ場ダムの費用便益比算定のための計算

図5は国交省が 2009年に八ッ場ダムの費用便益比を求めるために、八ッ場ダムの治水効果を計算

した結果を図示したものである。

国交省が 1941年洪水、1947年洪水、1948年洪水、1949年洪水、1958年洪水、1959年洪水、1981

年洪水、1982年 7月洪水、1982年 8月洪水、1998年洪水の 10洪水の雨量パターンそれぞれについ

て洪水規模を 1/2、1/5、1/10、1/30、1/50、1/100、1/200 にして、利根川・八斗島地点、江戸川

上流端、利根川下流・取手地点の洪水流量を計算した結果を整理したものである(利根川の各地点

の位置は図4を参照)。

図5は八ッ場ダムのある場合とない場合の洪水ピーク流量の差を、八ッ場ダムがない場合の洪水

ピーク流量で割った値、すなわち、八ッ場ダムによる洪水ピーク流量低減率の 10 洪水の平均値を

洪水規模ごとに示している。

江戸川は利根川の栗橋地点の直下で分流するので、江戸川上流端は利根川の栗橋地点の洪水ピー

ク低減率を表している。

図5を見ると、八斗島地点から江戸川上流端、さらに取手地点へと、下流に行くほど、八ッ場ダ

ムによる洪水ピーク流量の低減率が次第に小さくなっている。2019 年台風 19 号の洪水規模に近い

と考えられる 1/50 を例に取れば、八斗島地点 7.6%、江戸川上流端(栗橋地点)3.3%、取手地点

0.7%である。

利根川は八斗島地点付近から上流が丘陵部で、その付近から平野部になり、河道勾配がかなり緩

やかになる。そのため、八斗島地点より下流では 1-1 で述べた河道での洪水貯留効果が働き、栗橋

図3

4

図5 図6

図4 利根川流域図

(出典:国土交通省の資料)

5

地点まで流れる間に八ッ場ダムによる洪水ピーク流量の低減率は八斗島地点の 2/5程度まで小さく

なり、さらに下流の取手地点まで来ると、低減率は八斗島地点の 1/10程度まで落ち込んでいる。

2-2 2014年 3月の八ッ場ダムの費用便益比算定のための計算

図6は国交省が 2014 年に 2009 年と同様に、八ッ場ダムの費用便益比を求めるために、八ッ場ダ

ムの治水効果を計算した結果を図示したものである。

2014年時の計算では、1947年洪水、1948年洪水、1949年洪水、1958年洪水、1959年洪水、1982

年 7 月洪水、1982 年 8 月洪水、1998 年洪水の 8 洪水の雨量パターンそれぞれについて洪水規模を

1/2、1/5、1/10、1/30、1/50、1/100、1/200にして、利根川・八斗島地点、江戸川上流端の洪水流

量の計算が行われている。図6はその計算結果を整理したものである。

図5の 2009年時の計算結果と比較すると、多少の違いがあるが、八斗島地点より江戸川上流端は

八ッ場ダムによる洪水ピーク流量の低減率がかなり小さくなっている。洪水規模 1/50 について見

ると、八斗島地点が 8.0%、江戸川上流端(栗橋地点)が 2.8%であり、八ッ場ダムによる低減率

が八斗島地点から栗橋地点までの間で 1/3程度になっている。

2-3 2012年 3月の八ッ場ダム検証のための計算

2010~2011年度に八ッ場ダム事業の検証が行われ、その検証の過程で八ッ場ダムの治水効果につ

いての計算も行われた。表2はその計算結果を整理したものである。

洪水規模は 1/70~1/80 の一つのみとし、上流ダムの洪水調節効果がない場合の洪水ピーク流量

が 17,000㎥/秒になるように計算対象洪水の雨量を引き伸ばして、八ッ場ダムがない場合とある場

合について計算が行われた。

八斗島地点直轄区間上流端~渡良瀬川合流前 (132.5km)

渡良瀬川合流後(132.0km)~江戸

川分派前(122.0km)

江戸川分派後(122.0k)~下流3調節池上(100.

0km)

下流3調節池下(89.0km)~河口

S22.9.13 0.8% 0.8% 0.4% 0.7% 0.5% -0.2%

S23.9.14 5.7% 5.1% 1.8% 2.3% 1.0% 1.2%

S24.8.29 12.7% 10.9% 3.5% 3.2% 1.2% 2.4%

S33.9.16 12.1% 10.8% 4.3% 4.3% 1.2% 3.3%

S34.8.12 11.3% 11.5% 3.7% 4.2% 1.8% 3.2%

S57.7.31 6.1% 6.4% 2.3% 2.8% 1.5% 1.6%

S57.9.10 10.1% 9.3% 3.2% 3.5% 1.6% 2.6%

H10.9.14 12.5% 11.8% 4.7% 4.2% 1.3% 4.4%

8洪水の平均 8.9% 8.3% 3.0% 3.1% 1.3% 2.3%

〔注1〕八斗島地点以外は各区間の最大流量計算値の低減率を示す。

〔注2〕下流3調節池は田中調節池、菅生調節池、稲戸井調節池である。

対象洪水

洪水ピーク流量削減率

利 根 川

江戸川

(利根川上流はん濫解析及び被害軽減方策検討業務報告書 2012年3月)

(ダムがない場合の八斗島地点の洪水ピーク流量を17,000㎥/秒に引き伸ばした場合(洪水規模1/70~1/80))

国土交通省の計算による八ッ場ダムの洪水ピーク流量低減効果(八ッ場ダム検証資料)表2

6

計算対象洪水は 1947 年洪水、1948 年洪水、1949 年洪水、1958 年洪水、1959 年洪水、1982 年 7

月洪水、1982年 8月洪水、1998年洪水の 8洪水である。

洪水流量の計算は八斗島地点、直轄区間上流端~渡良瀬川合流前、渡良瀬川合流後~江戸川分派

前、江戸川分派後~下流3調節池上、下流3調節池下~河口について行われている。

表2を見ると、八ッ場ダムによる洪水ピーク流量低減率は 8 洪水平均では八斗島地点 8.9%、渡

良瀬川合流後~江戸川分派前 3.0%、下流3調節池下~河口 1.3%である。

八斗島地点から江戸川分派前(栗橋地点)に行くと、八ッ場ダムによる洪水ピーク流量低減率は

八斗島地点の 1/3程度になり、利根川下流部に行くと、八斗島地点の 1/7程度まで落ち込んでいる。

2-4 国交省による三つの計算結果

2009 年 3 月と 2014 年 3 月の八ッ場ダムの費用便益比算定および 2012 年 3 月の八ッ場ダム検証の

ために国交省が行った計算結果を見ると、八ッ場ダムによる洪水ピーク流量低減率は八斗島地点で 8

~9%であるが、そこから江戸川分流前の栗橋地点まで流れると、その低減率は八斗島地点の 1/3~

2/5程度まで小さくなり、利根川下流部まで行くと、八斗島地点の 1/10~1/7程度まで落ち込んでい

る。

以上のように八ッ場ダムの治水効果は八斗島地点から中流部、下流部へと流れるにつれて次第に

かなり小さくなることが国交省の計算で示されているのである。

3.で述べる「2019年台風 19 号についての国交省の計算」は八斗島地点だけで、八斗島地点よ

り下流の利根川中下流部におけるダム効果については何も示していない。したがって、八斗島地点

でそれなりのダム効果が仮にあったとしても、その効果は上述の通り、利根川の中下流部ではかな

り小さくなっていくのであるから、3.の国交省の計算結果は利根川におけるダムの役割を高く評

価できる材料にはならない。

3.2019年台風 19号についての国交省の計算

3-1 国交省関東地方整備局の発表

2019年 11月 5日に国交省関東地方整備局は次の発表を行った。

「台風第 19号における利根川上流ダム群※の治水効果(速報)

~利根川本川(八斗島地点)の水位を約 1メートル低下~

台風第 19号では、利根川上流ダム群※で約 1.45億立方メートルの洪水を貯留しました。

この度、この貯留による利根川本川(八斗島地点(群馬県伊勢崎市))の水位低下量を算出したので

お知らせします。

※利根川上流ダム群:矢木沢ダム、奈良俣ダム、藤原ダム、相俣ダム、薗原ダム、下久保ダ

ム、試験湛水中の八ッ場ダム

・観測最高水位 約 4.1メートル(利根川上流ダム群※で貯留)

・計算最高水位 約 5.1メートル(全ての利根川上流ダム群が無い場合を仮定し、算出)

・水位低下量 約 1メートル

本資料の数値等は速報値であるため、今後の調査等で変わる可能性があります。」

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3-2 毎日新聞群馬版 2019年 11月 6日の記事

「台風19号大雨 危険水位超え抑制 7ダムの治水効果を検証 /群馬

国土交通省関東地方整備局は5日、台風19号による大雨に対する利根川上流ダム群の治水効果

の速報値を発表した。大雨でこれらのダムには水が計約1億4500万立方メートル(1立方メー

トルは1トン)たまったという。その結果、観測基準点のある伊勢崎市八斗島地点での観測最高水

位は、これらのダムがないと仮定した場合よりも約1メートル低い約4・1メートルにとどまり、

氾濫危険水位4・8メートルを超えなかったとしている。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

八ッ場ダムには1億4500万立方メートルの半分以上を占める約7500万立方メートルの

水がたまった。同整備局担当者によると、各ダム個別の治水効果は検証しておらず今後行うかも未

定。仮に行う場合でも時間はかかるといい、今回の大雨による治水効果も現段階では「分かってい

ない」と話している。」

この記事の通り、国交省は利根川上流ダム群(7ダム)の治水効果として八斗島地点で約 1mの

水位低下があったと発表したが、八ッ場ダム等の個別ダムの効果は検証しておらず、今後、その検

証を行うかどうかも未定としている。

7 ダムの効果を計算したのであるから、個別ダムの効果も求められるはずであるが、なぜか国交

省は個別ダムの効果を示そうとしない。この点で、7ダムによる約 1mの水位低下にどれほどの科

学的な根拠があるのか、疑問である。

3-3 国交省関東地方整備局の開示資料

情報公開請求により、国交省の上記発表の元資料として、「台風第 19号における利根川上流ダム

群の治水効果(中間報告書)」(令和元年 11月(㈱建設技術研究所)が 2019年 12月 9日に開示さ

れた。

この報告書に記されている利根川上流ダム群の効果は表3の通りで、「八斗島地点で 0.95mのピ

ーク水位の低下」である。記者発表の「水位低下量 約 1メートル」は 0.95mを丸めた数字である。

流量についても八斗島地点のダムなし、ダムありのピーク流量が表4の通り、示されている。

しかし、この報告書にはダムの効果についてこれより詳しい計算結果は記されていない。

一方、この報告書には各ダムの流入量と放流量のデータが 10 分おきに記されている。この流入

量と放流量の差から各ダムの 10分おきの調節量を求めることができる。

7 ダムの調節量の合計および、八斗島地点の実績流量とダムなし推定流量の時間変化を図示する

と、図7の通りである。

なお、八斗島地点の 10 分おき実績流量は国交省水文水質データベースの 10 分おき観測水位を、

この報告書で国交省が使った八斗島地点の水位流量関係式に当てはめて求めた。また、八斗島地点

のダムなし推定流量は表4の「ダムなしピーク流量/ダムありピーク流量」を八斗島地点の 10 分

おき実績流量に乗じて求めた。

各ダム地点から八斗島地点までの流下時間はダムごとに異なるが、ここでは流下時間のずれを考

慮せずに 7ダムの 10分おき調節量をそのまま合計した。

図7において 7ダムの調節量のピーク値 4,055㎥/秒に対して、7ダムによる八斗島地点の低減流

8

量は 16,493―12,776=3,717㎥/秒である。

表3

表4

9

この数字から、7ダムから八斗島地点まで流下する間にダム調節効果が低下する割合を推定する

と、1-3,717/4,055=0.09で、9%である。これは各ダムの地点から八斗島地点までの流下時間の

違いを考慮しない場合である。流下時間の違いを考えて各ダムの調節効果を加算すれば、7 ダムの

調節量の計は 4,055㎥/秒より小さくなるので、ダム調節効果が低下する割合は 9%より小さい値に

なる。

利根川の八斗島地点より上流は山間地と丘陵地であるので、1-1 で述べた河道の貯留効果は働

きにくいが、各支川からの洪水流入で本川の洪水ピークが次第に扁平化していくはずである。その

ことを考えると、ダム地点から八斗島地点までの流下によってダム調節効果が低下する割合が 9%

より小さい値にとどまるのは疑問であり、小さすぎるように思われる。

ちなみに、2019年洪水の前までは最近 60年間で

最大の洪水は 1998年 9月洪水であった。この 1998

年洪水について利根川・八斗島、利根川・上福島、

烏川・岩鼻、神流川・勅使河原それぞれの実績流

量の関係を見ると、図9の通りである(各地点の位

置関係は図8を参照)。上福島、岩鼻、勅使河原の

3 地点のピーク流量の計が 11,485 ㎥/秒であるの

に対して、この 3 地点の流量が合わさって形成さ

れる八斗島地点のピーク流量は 9,710㎥/秒である。

したがって、3河川の合流によって、洪水ピーク流

利根川

上福島

烏川 八斗島

岩鼻

勅使河原

神流川

利根川、烏川、神流川の関係図図8

図 7

10

量は1-(9,710㎥/秒÷11,485㎥/秒)=15%低下していることになる。

神流川、烏川、利根川の合流だけで、洪水ピーク流量が 15%も低下しているのであるから、2019

年洪水において上流7ダムから八斗島地点までの流下でダム調節効果が低下する割合が上記の通

り、9%より小さい値にとどまるのは不可解である。

3-4 まとめ

以上の通り、国交省が発表した「台風第 19号における利根川上流 7ダムの八斗島地点での水位

低下約 1m」の計算には基本的な疑問がある。

➀ 7ダムの効果を計算したのであるから、個別ダムの効果も示せるはずであるが、国交省は個別

ダムの効果は求める予定がないとしている。これはこの計算にはその詳細を明らかにできない事情

があることを示唆している。

➁ 国交省の計算では、利根川上流 7ダムでの洪水調節効果が八斗島地点までの流下でさほど低下

せず、低下の割合が 9%より小さい数字になっているが、これは図8の 1998 年洪水のデータから

見ても小さすぎる数字であって不自然であり、この計算にどれほどの科学的な根拠があるのか、疑

問である。

➂ 八斗島地点でダムによる洪水ピーク低減効果が仮にそれなりにあったとしても、3.で述べた

ように国交省の過去の計算結果が示す通り、その効果は、利根川の中下流部ではかなり小さくなっ

ていくのであるから、台風 19 号についての国交省の計算結果は利根川におけるダムの役割を高く

評価するものには決してならない。

図9