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振動発電デバイスの 実用化において どのような点を考慮すべきか 金沢大学 上野敏幸

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振動発電デバイスの 実用化において どのような点を考慮すべきか 金沢大学 上野敏幸

検討すべき項目

企業との面談やヒアリングに基づくと以下と順になる

1. 生産性、コスト

2. 発生電圧、電力、出力インピーダンス

3. 耐久性(疲労強度)、耐熱性

4. 動作帯域、共振周波数の調整

生産性・コスト

許容価格:ボタン電池の2~3倍程度

5百円~千円が普及の目安

デバイス価格+初期調整の手間

≪ 電池の価格,寿命管理,交換や廃棄の手間×回数

製造しやすい構造か、現在高くても量産効果はあるか?

歩留まりやバラツキはどうか?

磁歪式 の場合

シンプル

組み上げが容易 量産に適する

低価格 目標500円程度

磁歪素子(Fe-Ga合金)の

バラツキや低コスト化が課題

U字型発電デバイス

直径2インチのFe-Ga単結晶合金

発生電圧、電力の目標

入力条件

• 周波数20Hz~150Hz

(機械振動:大体この範囲に入る)

• 加速度0.05G~1G

(実際はこれより小さい,

機械は振動がないよう設計されている)

出力条件

電圧 0.5~1V以上(整流可能)

発生電力0.1~1mWrms

負荷(無線モジュール)ではこの20%程度

共振をピッタリ調整することはできず

せいぜい半分程度

デバイスで1mWの出力でも負荷で利用できるのは0.1mW

6 FFT解析の結果

ディーゼルエンジンの振動の実測データ例(わりと振動している方)

0.1G

1G

1.5Hzの間で

0.1G以上

時間波形 拡大

狭い幅

磁歪式の場合: 電圧の周波数応答 (錘をパラメータ)

錘で調整可能

40㎜ 如何に振動源の ピーク周波数に 共振を簡単に 合わせるか課題

錘10.2 gの場合の電圧の波形 (周波数28.4Hz)

電圧 1V 以上 (整流可) OK

周波数 28.4Hz, 0.49m/s2 (0.05G) 振幅15mm

錘10.2 gの場合,28.4Hz, 0.075Gの発生電力

1mWpk

0.4mWrms

割と大きいが 実用を考えると 2~3倍程度向上が必要

負荷を考慮した設計や評価

出力インピーダンス

一般に小さい方が電源として好ましい(電流が取れる)

以上の出力がない or インピーダンスが高い場合

整流回路を繋げ、キャパシタに蓄電できるか検証する

1日かけてもよいので蓄電できれば使える

目安 100mFに3V = 0.45mJ

(0.2mJあれば無線送信が可能)

出力が取れない場合

デバイスを大きくする

ある程度の大きさは許容できる

理由:電力変換回路、無線センサモジュールだけでも20mm角以上、

現場での取り回しを考えるとある程度の大きさは必要

耐久性の目標

半永久 (取り付ける機械,振動体の寿命以上)

例) 寿命 20年とすると 60Hzの振動の場合 240億回で出力を維持

検証方法

最大振幅もしくは、目標出力の振動条件で、

寿命が推測できる程度の繰り返し振動試験(疲労試験)を実施

適当な回数毎に電圧を計測し比較し、電圧の劣化の程度を検証、推測する

(磁歪の場合、1億回で劣化なしと判断し、試験を中断)

耐熱性の目標

-30℃~85℃ 電子回路の耐熱性と同等以上

高温or低温雰囲気下での同様の疲労試験を実施

耐久試験と結果: 磁歪式の例

400Hz, 8G,1億回の振動後に電圧を測定

各振動回数後の電圧の周波数特性

動作帯域

デバイスの共振周波数の±5%程度のずれでも

目標出力を維持

例)50Hzの場合、47.5~52.5Hz

理由:機械、デバイスには環境(温度)や経年変化がある

どの程度正確に

機械のメイン周波数(スライド6参照)

= デバイスの共振周波数と調整,保持できるか

(デバイスには個体差があり、感度は固定の仕方にも依存する)

様々な広帯域化の従来研究があり、適切な方法を選択する

広帯域化の手法

状況に応じ①~④を選択,もしくはこれらを組み合わせる

電池に対する優位性

発電デバイス

ボタン電池 200~300円/1個

ボタン電池: CR 2032

電圧 3V, 容量 220 mAh

試算0.2 mW で 3300 時間 (125日)

0.2 mW で 半永久

+ 取り替える手間

使用時間

振動があれば

価格

500円程度

20 mW で3年間+取り替える手間

振動発電が実用化しない理由

回路効率100% (発生電力がすべて負荷で利用できる),実際の機械に取り付けた状態で共振周波数が振動ピークとピッタリあう仮定で,発生電力が20mWなく,3年持たなければ,ボタン電池を代替することはできない

従来のデバイスでは,

○発生電力が20mW未満 (回路効率を考慮すると100mW 未満)

○半永久の寿命がない (電池以上のリスク,手間)

○共振周波数を合わせることが難しい

(ラボの条件と実際は違う,ラボではデバイスの共振に合わせて電力を計測)

○デバイスや回路のコストが高い

のいずれかが障壁となっている

以上を全て克服すれば実用化の道が開ける

ウェアラブルは難しい

振動周波数は最大でも1Hz~2Hz、出力はμWレベル

回路も含めた違和感のない形態

(様々に変形したときに出力が取れるか、蓄電できるか)

耐久性、耐水性(洗濯性)も必要

高い要求 (身に着けるに値する機能性、スマートウオッチの電源など)

よく聞かれますが,スマートフォンを 振動発電で充電するのは不可能です

最後に

電池交換ができない(面倒),電池が持たない,

すぐになくなる用途を狙う

例 タイヤの中,僻地(山林),特殊環境(高温,極低温)、

平均1mWの電力が必要(すぐに電池が切れる->

高周波数,大加速度の振動で,大きな電力が取り出せる)

設計式や理論モデルを確立する(可能性を試算できる)

企業の要望(例)40Hz, 0.1Gで1mWのデバイスがほしい

デバイスコストが許容できる分野もある

例 インフラ分野

大きくてもよいので実用の可能性を示す

実用の可能性 = 無線送信ができる

特許の取得を目指す

企業との共同研究や商品化においては特許が重要

等価回路とシミュレーション技術 (磁歪式の例)

Vin(without)

Vout

(without) Vout(with)

Vin(with Cr)

等価回路のSPICEモデル

デバイス 整流回路

負荷

コンバータ

コンデンサの電圧とコンバータの出力電圧

シミュレーション 実験