北極海の海氷変動と大気循環場の関係本田明治...
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本田明治
( 海洋研究開発機構地球環境フロンティア研究センター)
平成20年度異常気象分析検討会平成21年2月23日
北極海の海氷変動と大気循環場の関係
-夏季北極海の海氷減少と冬季ユーラシアの低温-
2005/06年冬の
寒冬・豪雪
2005年12月
地上気温の平年差(℃)
2006年1月
ロシアは30年振りの寒い1月
日本は50年振りの寒い12月
2005年9月 ユーラシア
北欧
グリーンランド
海氷密接度平年差 (%)
Photo by Y. KamimuraPhoto by Y. Takeuchi
北極海北極海
2005年11月~2006年1月の地上気温平年差(気象庁)
北米
2007.12.31
バレンツ海
2005年12月 日本
地上気温平年偏差 (℃)色等値線:海面気圧偏差(hPa)
9月の北極海の海氷分布NCEP
NCEP
2008年1-2月中国
東アジアの寒冬・大雪?夏季北極海の海氷減少
シベリア高気圧発達
低温
高温
シベリア高気圧発達
低温
高温
1979-2000平均
9月のシベリア沿岸の海氷面積 (SCI: km2)
近年シベリア沿岸での減少が目立つ
カラ海
ラプテフ海
東シベリア海
2007
2005
ベーリング海峡
グリーンランド
北米
ユーラシア
冬平均 T1000, SLP, Z250と9月SCI (トレンド除去)の線形回帰(符号反転, 2σ)
シベリア高気圧発達
低温定常ロスビー波
05/06
低温
07/08
低温
北米
ユーラシア
北太平洋
北大西洋
冬季(12月~2月)平均地上気温偏差
9月SCI
北米
ユーラシア
北太平洋
北大西洋
高温 高温
高温
両冬平均場共通の特徴→ユーラシアの帯状低温→北極海の高温
日本
欧州
太平洋
北極
ユーラシアT1000 T1000
SLP SLP
12月
12月
2月
2月
NCEP
NCEP
NCEP
NCEP
12月と2月の T1000, SLPと9月SCI (トレンド除去)の線形回帰(符号反転, 2σ)
9月SCI
シベリア高気圧発達
北大西洋振動?
低温 低温
少氷-多氷
多氷(10月)
少氷(10月)
解析・「少氷ラン」 と 「多氷ラン」のアンサンブ
ル平均の差(少氷-多氷、定常場)・メンバー6-16, 27-43の28例
実験・同じ大気の初期条件(9月1日)より「多氷」、「少氷」それぞれ3月1日まで
計算・初期値はControl runの6年目~55年目、50例ずつ計算
海氷の設定(境界条件)・ 密接度で設定→氷厚に変換・ 9,10,11,12月のシベリア沿岸に少氷と多氷を設定(図は10月)(11,12月の差はほとんどない)
・ 他海域の海氷分布は気候値・ 海面水面はすべて気候値
大気大循環モデル(AGCM):AFES2.5 T42L20(分解能約2.8度, 最上層8hPa)
北極域(シベリア沿岸)海氷大気応答感度実験
海氷応答実験結果:地上気温応答差 (少氷-多氷)
極東を中心に低温
観測(NCEP): 9月SCIとの線形回帰
欧州~東アジアの帯状低温
T(2m)
T1000 T1000
T(2m)
NCEP NCEP
AGCM AGCM
12月 2月
日本
12月 2月
9月SCI)
11月
初冬の大気応答メカニズム(定常ロスビー波)海氷応答実験(少氷-多氷) (11月)
Z250(m) SLP(hPa)日本
11月
バレンツ海
HL L
H L
高度差の波列に沿った鉛直断面(m)
80N 70N 60N 50N
熱源冷源
海面の乱流熱フラックス(顕熱+潜熱)の差(上向き正:W/m2)
700 hPa 上向き波活動度フラックス(等値線:10-1m2/s2)矢印:波の活動度フラックス (WAF: m2s-2 )
矢印:波の活動度フラックス (WAF: m2s-2 )
バレンツ海
加熱偏差のピークは晩秋に現れる!
海氷応答実験 鉛直断面図 (少氷-多氷、11月)高度 (m) 波活動度フラックス (m2s-2 ) 気温 (K) 鉛直風 (m/s)
相対渦度 (10-5 s-1 ) 西風(m/s) 発散 (10-6 s-1 ) 鉛直風 (10-1 m/s)バレンツ海
80N 70N 60N 50N
HL HL
D C
DC
L
H L
地上気温 (K)
WC
Honda et al. (1999)
オホーツク海の海氷大気応答感度実験(参考)
500hPa高度 (m)
H
HL
海面気圧 (hPa)
HLH
多氷-少氷(1-2月平均)
高度 鉛直東西断面 (m)
オホーツク海
H L
HHL
定常ロスビー波
11月 12月
Z250 (m)
VV250 (m2s-2)
海面気圧 (hPa) 地上気温 (K)潜熱 (W/m2)
積雪量 (10-3kg/m2)
日本
初冬の大気応答メカニズム(極東の低温域形成)海氷応答実験(少氷-多氷) (左:11月、右:12月)
Z250 (m)
VV250 (m2s-2)(ストームトラック)
シベリア高気圧発達
高気圧偏差
低気圧偏差
高気圧偏差
低気圧偏差
低温偏差
高温偏差
波列 寒気移流 上向き熱フラックス
北極海の海氷減少がもたらす初冬のユーラシアの低温(11月~12月)
夏~秋の海氷減少
シベリア高気圧発達寒気移流
低温
大気加熱
初冬の高温(バレンツ海)
定常ロスビー波
(上空) (地上)
2月
晩冬の大気応答過程(ストームトラック?)
(11月~1月)
2月
2月 2月
日本
海氷応答実験(少氷-多氷) (2月)
欧州~東アジアの帯状低温
積雪量 (10-3kg/m2)
Z250 (m)
VV250 (m2s-2) T(2m)
SLP(hPa)
応答の時間差についてはまだ説明できない→積雪の影響?→成層圏の影響?
地上気温平年差(気象庁)2008.11~2009.1
2007.9.14 2008.9.14
2007
2008
2005
2008/092008/09年の日本の冬は?年の日本の冬は?
2005.9.14
地上気温平年差(気象庁)(左)2005.11~2006.1 (右) 2007年12月~2008年2月
9月14日の海氷域分布図と各年の時系列(IARC-JAXA)
2008年は2007年に次ぐ少なさ。特にアラスカ沖の海氷が少ない。
日本では初冬は北暖西冷傾向。寒暖差大きい。
海氷による大気応答?(2009年1月第5半旬)
日本
バレンツ海
日本
バレンツ海
夏の異常気象も北極から?
2008年夏の異常気象分析検討会での検討結果より(気象庁)
2008年5月~9月の地上気温平年差(気象庁)
2008.8.26
8月26日の海氷域分布図(IARC-JAXA)
夏の模式図
北極域の変動が引き起こす異常気象(予想されるメカニズム)
冬の模式図
北極の変化は日本やアジアの気候に影響する
北極域は意外と近い
シベリアは西側(風上側)に位置する
9月の北極海の海氷分布
2007
2005
1979-2000平均
北極海
日本
4000キロ
5000キロ
将来、夏の北極海の海氷が消失すると…~ますます日本の冬が寒くなる、とは限らない
陸面、海洋の状況も変わってくる
→平均の大気循環場も現在とは異なってくるだろう
~気候の状態(基本場)が変わってくる
北極海の変化のみが日本の気候を決めているわけではない。
→やはり熱帯の影響が大きい(ENSO, IOD, MJOなど)
→異常気象の要因は通常複数ある
ただし北極の影響は今後無視できないだろう
終わりに
関連文献本田明治, 猪上 淳, 山根省三, 2008: 夏季から秋季の北極域海氷面積変動が冬季ユーラシアの天候に及ぼす影響. 平成19年度「異常気象と長期変動」研究集会報告, 148-151.本田明治, 猪上 淳, 山根省三, 2009: 北極海海氷変動に対する大気応答の力学・熱力学過程. 平成20年度「異常気象と長期変動」研究集会報告, 印刷中.Honda, M., J. Inoue and S. Yamane, 2008: Influence of summertime Arctic sea-ice reduction on wintertime Eurasian coldness. Geophys. Res. Lett., 改訂中