new 論文(投稿) 育児休業取得とその取得期間の 決定要因について · 2017....

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63 論文(投稿) 育児休業取得とその取得期間の 決定要因について 西本 真弓 (阪南大学専任講師) 日本労働研究雑誌 本稿の目的は,1994 年の『仕事と育児に関する調査』による個票データを用い,育児休 業を取得するかどうか,およびその取得期間の決定要因を明らかにすることである。取得 するかどうかと取得期間は意思決定が異なっていると捉え,ハードルモデルにより推定し た。その結果,育児休業取得による機会費用が高い場合,育児時間を利用した場合に育児 休業を取得しない,または早期職場復帰の傾向があることがわかった。保育面では,育児 休業を取得しない場合,事業所内託児施設が最も有効な保育手段となるが,育児休業取得 後の早期職場復帰では有効な保育手段の選択が広がる。一方,育児休業法実施後は育児休 業取得が促進され,早期職場復帰の傾向がある。 はじめに 育児休業法および育児時間の内容と現状について 育児休業取得の意思決定と育児休業が企業へ及ぼす 影響 推定に用いたデータ 推定に用いたモデル ハードルモデルによる推定結果 おわりに はじめに わが国では,1992 年4月1日に育児休業法が 実施され,育児休業制度が急速に整備された。 『女性雇用管理基本調査』によると,育児休業制 度の規定がある事業所は,事業所規模 30 人以上 で平成2年度には 21.9%であったが,5 年度には 50.8%,8 年度には 60.8%,11 年度には 77.0% と増加している。育児休業制度の目的は,育児と 就業が両立できるような環境を整えることである。 この制度が多くの企業に普及し,多くの雇用者が 利用できれば,出産時における離職をも減少させ ることができると考えられる。しかし,育児休業 制度の利用状況をみると,出産者がいた事業所の うち,育児休業取得者がいた事業所の割合が5年 度では 30.0%であったが,8 年度では 37.2%, 11 年度では 32.5%とあまり利用が進んでいない。 育児休業を取得するかどうかは,育児休業取得 により得られなくなる直接的な所得や人的資本の 減少,昇進・昇格に対する不利益といった育児休 業取得による機会費用と,育児休業を取得しなかっ た場合にかかる保育サービスに対する費用の比較 によって決定されると考えられる。しかし,実際 に育児休業を取得するかどうかを決定するには, 子供の保育が大きな課題となることから,決定に 際しては,育児休業制度そのものの充実だけでな く,職場に復帰する際の子供の保育状況も大きく 影響すると考えられる。 また,どのくらい育児休業を取得する予定であ るかということも育児休業取得を決める時点で決 定されていると予想される。子供の保育手段の確 保が可能であったり,職場において短時間勤務制 度等の育児支援策が充実していれば,早期に育児 休業を終了し,スムーズな職場復帰が可能になる と思われる。しかし,子供の保育手段が確保でき なかったり,復職時の仕事がきつく,適切な育児 63

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Page 1: New 論文(投稿) 育児休業取得とその取得期間の 決定要因について · 2017. 6. 13. · により育児休業の取得期間が決定されるのか,早 期の職場復帰を可能にする要因は何かを分析する。

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論文(投稿)

育児休業取得とその取得期間の決定要因について

西本 真弓(阪南大学専任講師)

日本労働研究雑誌

本稿の目的は,1994 年の『仕事と育児に関する調査』による個票データを用い,育児休

業を取得するかどうか,およびその取得期間の決定要因を明らかにすることである。取得

するかどうかと取得期間は意思決定が異なっていると捉え,ハードルモデルにより推定し

た。その結果,育児休業取得による機会費用が高い場合,育児時間を利用した場合に育児

休業を取得しない,または早期職場復帰の傾向があることがわかった。保育面では,育児

休業を取得しない場合,事業所内託児施設が最も有効な保育手段となるが,育児休業取得

後の早期職場復帰では有効な保育手段の選択が広がる。一方,育児休業法実施後は育児休

業取得が促進され,早期職場復帰の傾向がある。

目 次

Ⅰ はじめに

Ⅱ 育児休業法および育児時間の内容と現状について

Ⅲ 育児休業取得の意思決定と育児休業が企業へ及ぼす

影響

Ⅳ 推定に用いたデータ

Ⅴ 推定に用いたモデル

Ⅵ ハードルモデルによる推定結果

Ⅶ おわりに

Ⅰ は じ め に

わが国では,1992 年4月1日に育児休業法が

実施され,育児休業制度が急速に整備された。

『女性雇用管理基本調査』によると,育児休業制

度の規定がある事業所は,事業所規模 30 人以上

で平成2年度には 21.9%であったが,5年度には

50.8%,8 年度には 60.8%,11 年度には 77.0%

と増加している。育児休業制度の目的は,育児と

就業が両立できるような環境を整えることである。

この制度が多くの企業に普及し,多くの雇用者が

利用できれば,出産時における離職をも減少させ

ることができると考えられる。しかし,育児休業

制度の利用状況をみると,出産者がいた事業所の

うち,育児休業取得者がいた事業所の割合が5年

度では 30.0%であったが,8 年度では 37.2%,

11年度では 32.5%とあまり利用が進んでいない。

育児休業を取得するかどうかは,育児休業取得

により得られなくなる直接的な所得や人的資本の

減少,昇進・昇格に対する不利益といった育児休

業取得による機会費用と,育児休業を取得しなかっ

た場合にかかる保育サービスに対する費用の比較

によって決定されると考えられる。しかし,実際

に育児休業を取得するかどうかを決定するには,

子供の保育が大きな課題となることから,決定に

際しては,育児休業制度そのものの充実だけでな

く,職場に復帰する際の子供の保育状況も大きく

影響すると考えられる。

また,どのくらい育児休業を取得する予定であ

るかということも育児休業取得を決める時点で決

定されていると予想される。子供の保育手段の確

保が可能であったり,職場において短時間勤務制

度等の育児支援策が充実していれば,早期に育児

休業を終了し,スムーズな職場復帰が可能になる

と思われる。しかし,子供の保育手段が確保でき

なかったり,復職時の仕事がきつく,適切な育児

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64 No. 527/June 2004

支援策がなされていないと,職場復帰が遅れる,

または育児休業の取得を断念し,その時点で労働

市場からの撤退を強いられる可能性さえあるだろ

う。

育児休業の取得を決定する要因については,西

本・駿河(2002),脇坂(1999),山上(1999),小

島(1998)が分析を行っている。これらの先行研

究のうち,育児支援策が育児休業の取得に与える

影響を分析しているのは,西本・駿河(2002)で

ある。分析結果より,育児休業制度が規定されて

いること,短時間勤務制度,事業所内託児施設,

育児経費の援助があることは,育児休業の開始を

促す傾向があることを示している。また,始業・

終業時刻の繰上げ・繰下げの制度があることは育

児休業の開始を抑制すると述べている。一方,脇

坂(1999)は育児休業取得期間に注目し,育児休

業の短期利用者割合と長期利用者割合に影響を与

える要因について別個に推定を行っている。しか

し,西本・駿河(2002),脇坂(1999)の分析は,

共に企業別の個票データを用いていることから個

人の属性を考慮に入れた分析ではない。育児休業

を取得するかどうかは,親と同居しているかどう

かなど,個人が置かれている環境や状況が大きな

影響を与えると考えられることから,個人の属性

を考慮に入れた分析が必要となる。

よって,本稿では個人の属性に関する情報が得

られる個票データを用い,育児休業を取得するか

どうかを決定する要因を明らかにすると同時に,

育児環境や育児支援策に注目し,どのような要因

により育児休業の取得期間が決定されるのか,早

期の職場復帰を可能にする要因は何かを分析する。

Ⅱ 育児休業法および育児時間の内容と現状について

育児休業法において定められたところの育児休

業とは,労働者が,その1歳に満たない子を養育

するためにとる休業のことである。育児休業制度

の対象となるのは,日々雇用および期間雇用を除

く労働者であり,雇用された期間が1年未満の労

働者や,配偶者が子を養育できる状態である労働

者は対象外となる。休業期間は,子が1歳に達す

るまでの連続した期間で,子1人につき1回取得

できる。

また,1歳に満たない子を養育する労働者(日々

雇用を除く)で育児休業をしないものに対しては,

短時間勤務制度,フレックスタイム制,始業・終

業時刻の繰上げ・繰下げ(時差勤務制度),所定外

労働をさせない制度,託児施設の設置運営その他

これに準ずる便宜の供与のうち,いずれかの措置

を講じなければならない。

これらの措置のうち,勤務時間に関する制度が

三つある。まず,短時間勤務制度とは,1日,週,

または月の所定労働時間や,週または月の所定労

働日数を短縮する制度である。

フレックスタイム制は,1カ月以内の一定期間

(清算期間)における総労働時間をあらかじめ定

めておき,労働者はその枠内で各日の始業および

終業の時刻を自主的に決定し,働く制度である。

1日の労働時間帯を,必ず勤務すべき時間帯(コ

アタイム)と,その時間帯の中であればいつ出社

または退社してもよい時間帯(フレキシブルタイ

ム)とに分け,出社,退社の時刻を労働者の決定

に委ねるものである。

始業・終業時刻の繰上げ・繰下げの制度では,

始業時刻を自由に決定できる。しかし,あらかじ

め定められた所定労働時間を労働しなければなら

ないので,終業時刻は自動的に決定される。よっ

て,始業・終業時刻の両方を自主的に決めること

が可能なフレックスタイム制とは異なった制度で

ある。

また,育児休業法で定められた勤務時間に関す

る制度とは別に,育児時間が労働基準法 67 条で

定められている。その内容は,「生後満1年に達

しない生児を育てる女性は,休憩時間のほか,1

日2回各々少なくとも 30 分,その生児を育てる

ための時間を請求することができる」というもの

である。育児時間は,勤務時間の途中において,

または勤務の初めや終わりにおいてのどちらでも

請求することができ,1日2回の育児時間を1回

にまとめて,1 日 60 分という形でも請求するこ

とができる。例えば,保育所などの託児施設に子

供を預けている場合には,その送り迎えの時間を

育児時間として請求することもできるし,昼の休

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65日本労働研究雑誌

論 文 育児休業取得とその取得期間の決定要因について

憩時間の前後に帰宅して授乳のための時間として

も請求することができる。

育児時間と先に述べた短時間勤務制度は,勤務

時間の短縮という意味では同じ効果をもたらす。

しかし,育児休業法の行政解釈において「育児時

間は,1歳未満の子を育てている女子労働者が請

求した場合,授乳に要する時間を通常の休憩時間

とは別に確保すること等のために設けられたもの

であり,育児時間と短時間勤務の制度は,その趣

旨,目的が異なることから,それぞれ別に措置す

べきものであること」と示されている。よって,

育児時間と短時間勤務の制度の両方を取りたいと

いう請求があれば,二つの制度は別個のものとみ

なされ,両方の措置を講じる必要がある。

育児支援策の導入状況についてみてみると,

1999 年に労働省が実施した『女性雇用管理基本

調査』(複数回答)では,短時間勤務制度が 29.9

%(1996 年の同調査では 17.5%),フレックスタイ

ム制が 8.9%(同 5.6%),始業・終業時刻の繰上

げ・繰下げが 21.7%(同 14.1%),所定外労働を

させない制度が 22.9%(同 14.5%),事業所内託

児施設が 0.8%(同 0.3%)であった。この調査

結果より,いずれの育児支援策の導入も前回より

進んでいることがわかる。また,育児時間につい

てみると,1999 年 10 月から 2000 年1月にかけ

て実施された『福利厚生諸制度に関する総合実態

調査』では全体の 96.3%の企業が法定通り定め

ている。

Ⅲ 育児休業取得の意思決定と育児休業が企業へ及ぼす影響

継続就業しようとする女性は出産後,育児休業

を取得するか,取得せずに就業と育児を両立させ

るかという第一の選択を迫られる。育児休業取得

について休業中の一時的なコスト面から考えると,

もし育児休業を取得すれば,取得者は休業中の賃

金が得られなくなることから,家計所得の直接的

な減少は必須である。また,長期的にみた生涯所

得から考えると,育児休業の取得は昇給の見送り

や休業期間が退職金の算入から除かれる場合があ

るなど,直接的にみて生涯所得が減少する可能性

が高くなる。他方,育児休業取得により人的資本

が低下する,キャリア形成や昇進・昇格に対する

リスクが高くなるなど,間接的にみてもやはり生

涯所得が減少する可能性が高くなる。つまり,育

児休業を取得することによる機会費用は上昇する

ことになる。

一方,育児休業を取得せずに産休後に職場復帰

した場合,何らかの保育サービスを利用するので

あれば,そのサービスに対する費用が必要となる。

よって,就業女性は,育児休業を取得することに

よる機会費用と,取得しない場合にかかる保育サー

ビス費用を,育児休業中という一時的な視点から

だけではなく,ライフタイムという長期的な視野

からも考慮し,効用の最大化を図っていると考え

られる。

しかしここで,育児休業を取得せずに職場復帰

する場合,取得する場合と比べて子供の保育面に

より大きな制約が存在することを考慮に入れなけ

ればならない。産後間もない体力的に不安定な時

期での職場復帰には,育児や家事における大きな

援助が必要になる。例えば,親と同居していたり,

手厚い保育サービスを受けることができる場合な

ど,かなり恵まれた育児環境が必要であることが

予想される。

次に,育児休業の取得を選択した女性は,どの

くらい休業するのかという第二の選択を迫られる。

育児休業の取得を希望する場合,休業開始希望日

および終了予定日を明らかにした書面で申し出る

ことが必要となる。つまり,育児休業を取得する

ことを決めた時点でどのくらい取得する予定か,

意思表示をしなければならないのである。

取得期間の決定には,先に述べた育児休業取得

による機会費用と保育サービスにかかる費用との

関係,親との同居や保育サービスなどの育児環境

に加えて,職場における育児支援策がどの程度充

実しているかも大きく影響すると思われる。

幼い子供を持つ女性の継続就業を可能にするた

めには,子供の保育をどうするかが一番大きな課

題である。しかも,たとえ保育サービスを受ける

などの保育手段を確保できたとしても,病児保育

の受け入れ体制が整っているところはそれほど多

くない。乳幼児期においては,しばしば子供が病

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66 No. 527/June 2004

気になり,一時的に保育サービスを受けられない

という突発的なことが起こったり,検診や予防接

種等,勤務時間の変更を余儀なくされるという事

態になる可能性もある。職場の育児支援策が充実

しており,このような不測の事態に対応すること

ができれば,早期職場復帰の可能性が高まること

が予想される。また逆に,適切な育児支援策がと

られていない場合には復帰が遅れる可能性が高ま

るだろう。

つまり,育児休業取得者が取得期間を決定する

場合,育児休業取得による機会費用や保育サービ

ス費用といった経済的側面から生涯効用の最大化

を図ることになるが,個人における育児環境がど

のくらい整っているか,また育児支援策などの制

度的側面がどれほど充実しているかにより,育児

休業の取得期間は大きく影響を受けると考えられ

る。

次に,従業員が育児休業を取得することにより

企業側が受ける影響について考えてみる。企業に

おいては,育児休業制度の充実が進み,その活用

が増加することにより,有能な人材を確保できる

というメリットがあるが,近年の厳しい経済情勢

のなかで制度が活用されることにより生じるデメ

リットも存在する。育児休業中の代替要員の問題

や企業戦力低下の問題である。

まず,代替要員を採用した場合には育児休業者

が復職した後の代替要員の処遇が困難であること,

代替要員にかかる人件費のコストが高いことなど

の問題をかかえる。一方,代替要員を採用しない

場合では,育児休業者の仕事は他の従業員でカバー

することになり,企業戦力の低下を招く。また,

育児休業取得期間が長期化すれば,育児休業者の

人的資本の低下につながり,さらなる企業戦力の

低下を招く可能性もある。企業は,育児休業制度

の義務化を受け,制度を整備することは社会的責

任であり,従業員が制度を取得するのも当然の権

利と受け止めているだろう。しかし,休業期間が

長期化すれば業務への支障も懸念されることから,

企業は,育児休業者ができるだけ早期に職場復帰

を果たせるように望んでいると考えられる。

出産後の女性にとって,母子の健康面から考え

ると,やはり育児休業を取得することが望ましい

と思われる。また,育児休業を取得しやすい環境

が整えば,出産・育児期に労働市場から撤退せざ

るをえない女性の減少をも促し,継続就業できる

女性が増加する可能性を高めることにもなる。し

かし,休業が長期化すれば,育児休業取得による

機会費用の上昇や人的資本の低下などの影響が大

きくなり,育児休業者にとって,その休業期間は

長期化しないことが望ましいと考える。

また,企業にとっても,育児休業者の早期職場

復帰が可能になれば,育児休業取得による企業戦

力の低下も少なくなる。さらに,企業から育児休

業者への退職圧力や,育児休業者自身が感じる職

場への気兼ねなども少なくなることが予想され,

出産時に退職する女性が減少することも考えられ

る。

こうした母子の健康面,企業や育児休業者の効

用を考慮すると,育児休業の取得を促し,早期職

場復帰ができるような制度や環境を探ることは意

義があると考えられる。よって,本稿では,育児

休業の取得およびその取得期間がどのような要因

や状況によって決定されるのかを明らかにするこ

とを目的とする。

Ⅳ 推定に用いたデータ

推定には,1994 年に連合総合生活開発研究所

が実施した『仕事と育児に関する調査』の個票デー

タを用いている。調査対象者は,共働きで子供の

いる既婚男女であり,一番下の子供が就学前であ

ることが原則とされている。調査時期は 1994 年

11 月から 1995 年1月までである。調査対象者数

2000 人のうち有効回収数は 1092 人で,そのうち

男性は 445 人,女性は 644 人,無回答が3人であ

る。調査において,育児休業を取得したと回答し

た男性は,「自分だけが育児休業を取った」が 5

人,「夫婦交代で取った」が4人で,両方の回答

を合わせても男性 445 人中9人であった。また,

女性についてみると,「自分だけが育児休業を取っ

た」が 392 人,「夫婦交代で取った」は該当者が

いなかった。

本稿では,育児休業の取得およびその取得期間

に影響する要因や状況を分析することを目的とし

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67日本労働研究雑誌

論 文 育児休業取得とその取得期間の決定要因について

ているが,育児休業を取得する男性はかなり少な

い。よって,ここでは女性のサンプルだけを用い

て分析する。女性 644 人中,育児休業を取得した

女性が 392 人,育児休業を取得しなかった女性が

225人,無回答が 27 人であったが,無回答のサ

ンプルと欠損値のあるサンプルは削除した。また,

妊娠時に働いていなかった,または働いていたが,

妊娠・出産を機に仕事を辞めたと回答した女性も,

育児休業の取得対象から外れるのでサンプルから

削除した。その結果,推定に用いたサンプル数は,

「育児休業を取得した」が 341,「育児休業を取得

しなかった」が 174 の合計 515 であった。

また,これらのサンプルについて,調査時に勤

めていた企業での勤続年数と末子の年齢の関係を

調べた結果,末子の年齢が勤続年数より高くなっ

ているサンプルは含まれていない。よって,推定

に用いるサンプルは,末子の出産時には調査時の

企業に勤めていた女性であり,出産後に転職した

サンプルは含まれていない。ただし,雇用形態に

関しては,同一企業内でフルタイム就業からパー

トタイム就業へ移行したサンプルが含まれている

可能性が残されている。

推定に用いたデータでは約8割以上の女性が従

業員数 1000 人以上の大企業に勤め,約9割がフ

ルタイム就業であり,製造業に従事している女性

は6割弱であった。一方,ほぼ同時期の 1995 年

2 月に調査された『労働力調査特別調査報告』に

よると,1000 人以上の大企業に勤めているのは

女性雇用者のうち約 15%である。また,フルタ

イム就業は既婚女性雇用者の2分の 1,製造業に

従事している既婚女性雇用者は4分の1にすぎな

い1)。推定に用いたデータは連合加盟の産業別組

織と地方組織の労働組合を通じて行われた調査に

よるもので,データには偏りがあり,サンプルの

ほとんどが連合傘下の労働組合に加入した女性で

あることが予想される。労働組合が育児休業制度

を推進していることから考えると,推定結果を解

釈する場合,取得するかどうかに関しては,より

取得する方向に,また取得期間に関しては,より

長期化するようなバイアスが生じる可能性がある

ことに留意しなければならない。

Ⅴ 推定に用いたモデル

推定における被説明変数には「育児休業取得期

間」を用いている。推定に用いたデータからは,

「子供がいくつになるまで育児休業を取得したか」

に対する回答がカテゴリーとして得られる。よっ

て,「取得しなかった」を 0,「3カ月未満」を 1,

「3カ月以上6カ月未満」を 2,「6カ月以上 10 カ

月未満」を 3,「10 カ月以上1歳未満」を 4,「1

歳以上1歳6カ月未満」を 5,「1歳6カ月以上 2

歳未満」を 6,「2歳以上3歳未満」を 7,「3歳以

上」を8とし,被説明変数として用いている。

「育児休業取得期間」を分析する推定モデルを

考える際,女性が出産後に育児休業を取得するか

しないかを決定することと,育児休業をどのくら

いの期間取得するかを決定することは別であると

いうことも考慮に入れるべきである。

育児休業を取得する女性と育児休業を取得せず

に職場復帰する女性とでは,育児環境面における

属性が大きく異なっていることが予想される。育

児休業を取得せず,産休直後に職場復帰を果たす

ためには,生後間もない子供の保育手段の確保が

必須となるが,生後間もないがゆえに,保育手段

の確保に対する制約はかなり大きくなる。一方,

育児休業を取得する場合における期間の決定には,

育児環境や職場環境など多面的な要因が影響を与

えると予想される。また,保育手段の確保におい

ても,生後すぐの時点より,広い範囲での選択が

許される可能性が高い。よって,育児休業を取得

するかしないかの決定と,どのくらい取得するか

の決定では異なる意思決定プロセスをとることか

ら,推定にはハードルモデル2)がより適している

と考えられる。

ここで用いたハードルモデルでは,二項確率モ

デルにより,育児休業取得期間が 0,つまり育児

休業を取得しなかった場合と,取得期間が正であ

る場合のどちらの値が出るかを決定する。また,

推定における被説明変数はカテゴリーとしての

「育児休業取得期間」であることから,どのくら

い取得するかは順序応答モデル(Ordered Response

Model)により決定する。

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No. 527/June 2004

ここでは,継続就業する女性 iの育児休業取得

期間を表す確率変数を Yi とする。今,育児休業

を取得するかしないかを決定する潜在的な因子を

Y 1i*とし,育児休業取得期間が正の場合におい

て,育児休業を何カ月間取得するかを決定する潜

在的な因子を Y 2i*とする。また X 1iは,育児休

業を取得するかしないかに影響を与えると考えら

れる説明変数,X 2iは,育児休業を何カ月間取得

するかに影響を与えると考えられる説明変数とす

る。

今,説明変数が所与のとき,Y 1i*は正規分布,

Y 2i*はワイブル分布に従い,これらは互いに独

立であると仮定する。

ここでは,λ>0よりλ= exp(- X 2i, β2) とす

る。

通常 Y 1i*,Y 2i

*は観測することができず,観

測されるのは,

となり,尤度関数は以下のように表される。

ハードルモデルでは,この尤度関数を最大化す

るようなパラメータβ1, β2, γを求める。なお,

推定に用いた被説明変数のカテゴリーは月単位の

期間で表されており,各階層の閾値が既知であ

る3)ことから,それぞれの閾値はμ1=3,μ2=6,

μ3=10,μ4=12,μ5=18,μ6=24,μ7=36 と

する。

Ⅵ ハードルモデルによる推定結果

表1には記述統計量を,表2にはハードルモデ

ルによる推定結果と限界効果を示している。また,

表3には観測値と予測値の比較を表示しており,

予測値については,ハードルモデルと順序プロビッ

トモデル4)による結果を比較している。表3の結

果より,ハードルモデルを用いたほうが,予測値

が観測値に近い値となっている。また,ハードル

モデルと順序プロビットモデルのどちらがより適

しているかを選択するために,赤池の情報量基準

(Akaike information criterion : AIC)5)の計算も行っ

た。その結果,ハードルモデルの AICが 3.20,

順序プロビットモデルの AICが 3.54となり,ハー

ドルモデルが選択された6)。

表2より本人の属性に関する推定結果をみると,

居住地については育児休業を取得するかどうかの

決定に対して有意な結果が得られなかったが,ど

のくらい取得するかについては,都市部において

正の効果があることが有意に示されている。居住

地により,受けられる保育サービスに違いが存在

することから,居住地は保育所の代理変数と考え

られる。1995 年における0歳児の県別保育所入

所待機率をみると,平均待機率が 16.3%である

のに対して,待機率が高いのは,沖縄の 68.3%

に次いで東京が 43.2%,大阪が 41.6%,愛知が

33.1%,奈良が 25.0%,埼玉が 20.8%,兵庫が

20.3%,神奈川が 20.1%となっている。例外的

に待機率が高い沖縄を除くと,東京圏や京阪神圏

の待機率が特に高く,都市部から離れるほど待機

率が低くなっている。1・2 歳児の待機率について

も同様の傾向がみられる。つまり,都市部では乳

幼児の保育所入所待機率が高く,保育サービスを

受けられる可能性が低くなることから育児休業取

得期間が長くなると考えられる。また一方で,居

住地により女性の労働環境も異なってくることか

ら,都市部では女性が働きやすい環境が整ってい

る企業が多く,そういう企業では取得期間が長く

なることも考えられる。

育児休業を取得するかどうかについては有意な

68

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69

表 1 記述統計量

変数名 サンプル数 平均値 標準偏差 最小値 最大値

育児休業取得期間 515 2.590 2.254 0 8

居住地 東京圏と京阪神圏 515 0.346 0.476 0 1

10 万人以上の都市 515 0.379 0.486 0 1

その他 515 0.262 0.440 0 1

本人の学歴 中学,高校卒 515 0.579 0.494 0 1

短大,高専,専門学校卒 515 0.274 0.446 0 1

大学・大学院卒 515 0.144 0.351 0 1

夫の学歴 中学,高校卒 515 0.561 0.497 0 1

短大,高専,専門学校卒 515 0.113 0.316 0 1

大学・大学院卒 515 0.315 0.465 0 1

子供数 515 1.621 0.718 1 3

家族構成 夫婦と子供 515 0.606 0.489 0 1

夫婦と子供と親 515 0.350 0.477 0 1

その他 515 0.045 0.207 0 1

雇用形態 フルタイム 515 0.936 0.245 0 1

パートタイム 515 0.058 0.234 0 1

勤続年数 4年以下 515 0.054 0.227 0 1

5~9 年 515 0.249 0.433 0 1

10~14 年 515 0.466 0.499 0 1

15~19 年 515 0.161 0.368 0 1

20 年以上 515 0.070 0.255 0 1

勤務先の業種 加工組立型製造業 515 0.221 0.416 0 1

素材型製造業 515 0.107 0.309 0 1

その他の製造業 515 0.256 0.437 0 1

電気・ガス・熱供給・水道業 515 0.126 0.332 0 1

運輸・通信業 515 0.091 0.288 0 1

卸売・小売業・飲食店 515 0.027 0.163 0 1

サービス業 515 0.155 0.363 0 1

職位 一般社員 515 0.880 0.326 0 1

リーダー的な仕事 515 0.085 0.280 0 1

係長相当職 515 0.035 0.184 0 1

育児休業制度の有無 育児休業制度がある 515 0.955 0.207 0 1

育児休業制度がない 515 0.016 0.124 0 1

わからない 515 0.025 0.157 0 1

育休の最長期間 1歳まで 515 0.668 0.471 0 1

2 歳まで 515 0.093 0.291 0 1

2 歳1カ月以上 515 0.171 0.377 0 1

一番下の子供の出産 1992 年以降の出産 515 0.649 0.478 0 1

育児支援策の利用 育児時間制度 515 0.443 0.497 0 1

短時間勤務制度 515 0.202 0.402 0 1

フレックスタイム制 515 0.227 0.419 0 1

始業・終業時刻の繰上げ下げ 515 0.171 0.377 0 1

時間外労働免除 515 0.103 0.304 0 1

深夜勤務免除 515 0.095 0.294 0 1

事業所内託児施設 515 0.095 0.294 0 1

日本労働研究雑誌

論 文 育児休業取得とその取得期間の決定要因について

69

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表 2 ハードルモデルによる推定結果と限界効果

変数名育児休業を取得するかどうか どのくらい育児休業を取得するか

係数 t値 限界効果 係数 t値 限界効果

居住地 東京圏と京阪神圏 -0.127 -0.641 -0.036 0.373* 1.905 0.379

10 万人以上の都市 -0.104 -0.611 -0.029 0.224 1.368 0.226

本人の学歴 中学,高校卒 -0.399 -1.559 -0.111 0.232 0.996 0.233

短大,高専,専門学校卒 -0.277 -1.100 -0.078 0.096 0.437 0.097

夫の学歴 中学,高校卒 -0.102 -0.592 -0.029 -0.087 -0.553 -0.087

短大,高専,専門学校卒 0.227 0.964 0.061 -0.185 -0.864 -0.184

子供数 -0.134 -1.345 -0.171 0.287*** 2.845 0.289

家族構成 夫婦と子供と親 -0.329** -2.323 -0.094 -0.267* -1.871 -0.268

雇用形態 フルタイム -0.892** -2.493 -0.206 -0.981*** -3.134 -1.033

勤続年数 5~9年 -0.173 -0.521 -0.049 -0.586** -1.989 -0.580

10~14 年 0.009 0.026 0.002 -0.390 -1.315 -0.391

15~19 年 0.021 0.056 0.006 -1.278*** -3.699 -1.181

20 年以上 -0.457 -1.076 -0.135 -0.965** -2.298 -0.902

勤務先の業種 素材型製造業 -0.025 -0.099 -0.007 0.298 1.355 0.304

その他の製造業 -0.159 -0.835 -0.045 0.249 1.404 0.252

電気・ガス・熱供給・水道業 -0.346 -1.459 -0.100 0.696*** 2.742 0.714

運輸・通信業 -0.306 -0.910 -0.088 0.322 0.935 0.332

卸売・小売業・飲食店 -0.707* -1.649 -0.211 -0.411 -0.875 -0.403

サービス業 -0.763*** -3.029 -0.225 0.158 0.611 0.160

職位 リーダー的な仕事 0.063 0.260 0.018 0.041 0.165 0.041

係長相当職 0.247 0.642 0.066 -0.408 -1.060 -0.401

育児休業制度の有無 育児休業制度がある 1.188*** 3.288 0.358 1.799*** 3.681 1.541

育休の最長期間 2歳まで 0.128 0.493 0.035 0.526** 1.994 0.540

2 歳1カ月以上 0.283 1.196 0.076 1.629*** 6.414 1.753

一番下の子供の出産 1992 年以降の出産 0.959*** 6.161 0.297 -0.712*** -3.682 -0.741

育児支援策の利用 育児時間制度 -0.244* -1.698 -0.069 -0.704*** -4.626 -0.706

短時間勤務制度 0.300 1.456 0.081 -0.216 -1.053 -0.215

フレックスタイム制 0.180 1.007 0.049 -0.170 -1.039 -0.171

始業・終業時刻の繰上げ下げ -0.028 -0.140 -0.008 0.038 0.188 0.038

時間外労働免除 -0.436 -1.522 -0.127 -0.310 -1.030 -0.308

深夜勤務免除 1.526*** 4.303 0.304 0.491* 1.769 0.505

事業所内託児施設 -0.761*** -3.164 -0.229 -0.485* -1.660 -0.476

定数項 0.596 1.043 0.760 5.849*** 8.718 5.897

γ ― 2.545*** 21.064 ―

サンプル数 515

対数尤度 -757.66

No. 527/June 2004

結果が得られていないが,これは産休直後に保育

所に途中入所できる可能性がかなり低いため,居

住地の効果が表れなかったことによると考えられ

る。実際,1995 年時点で,公営,民営合わせた

保育所数2万 2493 カ所のうち,産休・育休明け

等に伴う年度途中入所ニーズへ対応するための

「産休・育休明け入所予約モデル事業7)」を実施

している保育所は 387 カ所にすぎない。

学歴については,本人の学歴を育児休業取得に

よる機会費用の代理変数として,また夫の学歴を

家計所得の代理変数として用いた。その結果,育

児休業を取得するかどうか,また,どのくらい取

得するかについてともに有意な結果が得られなかっ

た。

子供数については,育児休業を取得するかどう

かに関しては有意な結果が得られなかったが,ど

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71

表 3 観測値と予測値の比較

被説明変数

育児休業取得期間観測値

予測値

ハードルモデル 順序プロビットモデル

0 174 174.2 166.5

1 7 12.9 51.2

2 58 51.9 53.8

3 102 99.9 69.2

4 34 44.2 31.2

5 109 78.9 72.4

6 8 28.2 40.5

7 8 17.0 26.1

8 15 7.7 4.0

注:観測値は,育児休業取得期間の回答をもとに,各取得期間における該当者数を表している。

予測値は,推定により得られたパラメータの係数を用いて,各サンプルにおける,それぞれの取得期間

に対する期待尤度関数を計算し,その平均値にサンプル数を乗じて導出している。

予測値に関しては,本稿の推定で用いたハードルモデルと順序プロビットモデル(共に閾値は既知)を比

較している。

日本労働研究雑誌

論 文 育児休業取得とその取得期間の決定要因について

のくらい取得するかに関しては,有意な正の結果

が得られており,子供数が多いほど育児休業取得

期間が長くなることが示されている。子供数が多

いと育児の負担が大きく,職場復帰が遅れるのは

予想通りの結果である。

家族構成に関して,親との同居は育児休業を取

得するかどうかについても,どのくらい取得する

かについても共に有意な負の値となった。親と同

居している場合,同居の親に子供の世話をしても

らえる可能性が高い。また,同居の親による保育

サービスが受けられる場合,外部の保育サービス

より低コストの保育サービスが期待できる。よっ

て,コスト面からみても,親と同居することは育

児休業を取得しない,また取得しても早期に職場

復帰することを促すといえる。

雇用形態については,フルタイム就業の場合,

育児休業を取得するかどうか,またどのくらい取

得するかに関して共に有意な負の結果が得られた。

フルタイム就業はパートタイム就業より賃金が高

く,育児休業が長期化することによって育児休業

取得による機会費用が高くなることから,育児休

業を取得しない,または早期に職場復帰すること

が考えられる。また,フルタイム就業の女性はパー

トタイム就業の女性より一般的に昇進への意欲が

高いということも,取得確率を下げ,早期職場復

帰を促す要因の一つになるだろう。一方,出産時

にフルタイム就業していたが,出産後パートタイ

ム就業に移行した可能性もあり,その結果,パー

トタイム就業の職場復帰が遅れるという結果が得

られたということも考えられる。

調査時の企業での勤続年数については,育児休

業を取得するかどうかについては有意な結果が得

られなかったが,どのくらい取得するかについて

は,勤続年数が5年以上の場合において,それよ

り短い場合と比較してほぼ有意に取得期間が短く

なる傾向がみられる。限界効果をみると,特に勤

続年数が 15 年以上の人は有意に取得期間が短く

なることが示されている。勤続年数が長い人は賃

金が高く,育児休業を取得することによる機会費

用が大きくなる可能性が高い。取得期間が長期化

すると失われる費用が大きくなることから,早期

職場復帰が促されると思われる。また,勤続年数

が長い人は職場において重要な地位についている

可能性が高く,育児休業を長く取得しにくいこと

も考えられる。

勤務先の業種では,鉱業,建設業,金融・保険

業は該当サンプルが少なかったので推定から削除

した。育児休業を取得するかどうかについては,

卸売・小売業・飲食店,サービス業では,加工組

立型製造業と比べて育児休業を取らない確率が大

きくなることが示された。どのくらい取得するか

に関しては,電気・ガス・熱供給・水道業では,

加工組立型製造業と比べて休業期間が長くなるこ

とが示された。

また,職位に関しては課長相当職以上の該当者

がいなかった。推定結果では,一般社員と比較し

71

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72 No. 527/June 2004

た値を示しているが,育児休業の取得および取得

期間について有意な結果が得られていない。

最後に育児休業制度を初めとする育児支援策に

関する推定結果をみる。まず,育児休業制度の有

無については,西本・駿河(2002)と同様に,制

度があれば育児休業を取る確率が大きくなること

が示された。また,どのくらい取得するかに関し

ても有意な正の結果が得られ,育児休業が制度化

されているほうがより長く取得することが示され

た。

育児休業の最長利用可能期間では,育児休業を

取得するかどうかに関しては有意な結果が得られ

なかったが,どのくらい取得するかに関しては有

意な正の結果が得られた。企業が認めた利用可能

期間が取得するかどうかの決定に影響を与えず,

取得期間の決定にのみ影響を与えるという結果は,

二つの意思決定において利用可能期間が制約とな

るかどうかが異なっていることを示している。推

定結果より,企業が認めた利用可能期間は取得す

るかどうかの決定には制約とならないが,取得期

間の決定には強い制約となり,期間の決定に大き

な影響を与えることが示された。

取得期間についての限界効果をみると,1歳ま

で利用できる場合と比較して,取得可能な期間が

長いほど実際に取得する休業期間が長くなるとい

う結果が得られている。育児休業者が職場復帰の

時期を決定するには,認められた休業期間の範囲

内において,保育の状況や仕事の状況上,よい時

期を見定めていると思われる。認められた休業期

間が長い場合,休業の終了予定日として選択可能

な期間が長くなり,実際に取得する休業期間が長

期化すると予測される。

また,育児休業法が実施される前後では,育児

休業取得期間に与える影響が異なっていると考え

られることから,推定には育児休業法が実施され

る 1992 年以降に一番下の子供を出産した女性を

1,それ以前に出産した女性を0とするダミー変

数を用いている。その結果,育児休業を取得する

かどうかについては有意な正となり,実施後の出

産では育児休業を取る確率が高くなることが示さ

れた。このことから,育児休業法の実施により育

児休業の認知が増進し,職場における育児休業取

得者への理解がより深まり,取得しやすい環境と

なったことから取得が促されたといえる。また,

どのくらい取得するかについては有意な負の結果

が示され,育児休業法の実施後はそれ以前に比べ

て取得期間が短くなる傾向があることが示された。

育児休業法の実施により,就業と育児の両立を可

能にするような環境がより整備され,早期職場復

帰を促している可能性が考えられる。一方,育児

休業法の実施後はそれ以前に比べて取得期間が短

くなるということは,言い換えると,育児休業法

が実施される前に取得した場合は取得期間が長く

なるということである。このことから,育児休業

法が実施される前から自主的に育児休業制度を設

けていた企業では,女性が優遇されており,長期

の休業が取りやすかった可能性が高いということ

も考えられる。

育児時間に関しては,先に述べたように「生後

満1年に達しない生児を育てる女性」であれば誰

でも請求できる制度であり,子供が生後満1年以

降においては企業に規定義務はない。本稿で用い

たデータでは,推定に用いたサンプル 515 人のう

ち,子供が1歳未満で職場復帰した人は 375 人,

1歳以後に職場復帰をした人は 140 人であった。

1歳未満で復帰した 375 人のうち,育児時間を利

用した人は 189 人と約半数の人が利用している。

一方,1歳以後に復帰した 140 人においても,育

児時間を利用した人は 39 人いる。企業には1歳

以後の子供を養育する女性への育児時間の規定義

務はないものの,規定以上の措置を講じている企

業があることがわかる。よって,本稿では,育児

時間利用の変数も説明変数に加えて推定を行った。

その結果,育児時間を利用した場合,育児休業

を取得するかどうか,育児休業の取得期間につい

て共に有意な負の結果が示されている。つまり,

育児時間の利用は育児休業を取らない確率を大き

くし,また育児休業を取ったとしても期間が短く

なる傾向があるといえる。特に,育児支援策に関

して,育児休業の取得期間についての限界効果を

比較すると,育児時間を利用した場合に最も早期

職場復帰を促す傾向があることが示されている。

育児時間は,「生後満1年に達しない生児を育て

る女性」であれば誰でも請求できる。また育児休

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73日本労働研究雑誌

論 文 育児休業取得とその取得期間の決定要因について

業法で認められている勤務時間に関する制度と比

べて請求できる時間帯が柔軟であり,勤務時間に

関する制度と組み合わせて両方を請求することも

可能である。よって,育児時間制度を利用するこ

とは,他の勤務時間に関する制度より早期の職場

復帰を促すと思われる。

一方,育児支援策のうち,事業所内託児施設を

利用した場合においても,育児休業の取得および

育児休業取得期間に有意な負の効果があることが

示されている。西本・駿河(2002)では,事業所

内託児施設の有無をダミー変数として用いた推定

を行い,事業所内託児施設があると育児休業の開

始者数を増加させることを示している。事業所内

託児施設があると,育児休業が終了した後にその

施設に子供を預けて職場復帰することが可能にな

ることから,労働市場から撤退せずに育児休業を

取得して継続就業することが促されると考えてい

る。西本・駿河(2002)が,事業所内託児施設の

有無における効果を明らかにしたのに対し,本稿

では事業所内託児施設の利用をダミー変数として

用いた推定を行った。その結果,事業所内託児施

設を利用すると,育児休業を取らずに職場復帰し

たり,早期に職場復帰することが可能となること

を示している。つまり,事業所内託児施設があれ

ば,将来的に施設を利用しての職場復帰が選択可

能となり,育児休業を取得して継続就業すること

が促される。また,継続就業している女性が事業

所内託児施設を利用すれば,育児休業を取得せず

に職場復帰したり,取得したとしても早期復帰が

促されるといえる。事業所内託児施設は,一般的

に他の保育施設を利用するより低コストの保育サー

ビスが提供されている可能性が高いこと,保育施

設までの送迎時間が不要であるなどの点で利用し

やすいことから,事業所内託児施設の利用は育児

休業取得確率を低くし,早期職場復帰を促進する

と考えられる。

また,深夜勤務免除を利用した場合,育児休業

を取る確率が大きくなり,取得期間も有意に長く

なるという結果が得られた。しかし,これは深夜

勤務免除を利用しない場合および深夜勤務がない

場合に対する値であることに注意しなければなら

ない。深夜勤務免除の変数は,深夜勤務免除を利

用した場合を 1,それ以外を0とするダミー変数

である。よって,深夜勤務免除の制度を利用する

場合には,深夜勤務がない場合および深夜勤務は

あるが免除を利用しない場合と比較して,育児休

業を取得する確率が高まり,その取得期間も長期

化する傾向があると考えるべきである。

ここで,育児休業を取得するかどうか,またど

のくらい取得するかを決定する際の意思決定プロ

セスの違いについて,子供の保育面から考察して

みる。どちらの決定においても,職場復帰時の子

供の保育は重要な課題となる。しかし,産休後す

ぐに職場復帰するかどうかを決定することと,育

児休業を取得し,ある程度子供の月齢が経ってか

ら,いつ職場復帰するのかを決定することとでは,

意思決定プロセスにおける保育面での制約の度合

いが異なっている。

保育面に関する変数としては,保育所の代理変

数である居住地,親との同居,事業所内託児施設

の利用を用いている。これらについて,育児休業

を取得するかどうかの限界効果をみると,取得せ

ずに職場復帰を可能にする効果が最も強いのは事

業所内託児施設の利用である。年度途中入所を実

施している保育所がかなり少ないという現状では,

期待できる保育サービスとして事業所内託児施設

の効果は大きい。また,親との同居も有意である

が,その効果は小さい。一方,取得期間の限界効

果をみると,親と同居している場合,居住地にお

ける保育所入所待機率が少ない場合,事業所内託

児施設が利用できる場合,すべてにおいて有意に

取得期間が短くなり,その効果の大きさに大差は

ないことがわかる。つまり,産後すぐの職場復帰

では,事業所内託児施設が最も有効な保育サービ

スと考えられるが,育児休業取得後の職場復帰で

は有効な保育手段が多くなり,幅広い選択が可能

になるといえる。

企業における育児支援策においても,育児休業

を取得するかどうか,またどのくらい取得するか

の意思決定プロセスが異なっていることがわかる。

限界効果をみると,育児休業を取得せずに職場復

帰する場合,事業所内託児施設が最も有効で,次

いで育児時間制度となっているが,早期に職場復

帰する場合,育児時間制度が最も有効で,次いで

73

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74 No. 527/June 2004

事業所内託児施設となっている。つまり,育児休

業を取得せずに復帰するには保育全般に対する援

助が必要とされ,早期に復帰するには勤務時間の

柔軟な対応がより強く求められているといえる。

Ⅶ お わ り に

本稿では,1994 年に連合総合生活開発研究所

が実施した『仕事と育児に関する調査』の個票デー

タを用い,育児休業を取得するかどうかを決定す

る要因および,育児休業取得期間を決定する要因

を検証した。分析からは以下のことが明らかになっ

た。

第一に,パートタイム就業と比べて,育児休業

を取得することによる機会費用が高いフルタイム

就業は育児休業を取得しない確率が高いことが示

された。取得期間についても,フルタイム就業の

場合に短くなり,休業を取ることにより失われる

所得が大きいと早期に職場復帰をする可能性が高

くなるという結果が得られた。また,勤続年数が

長い人は賃金が高い傾向があり,育児休業を取得

することによる機会費用が大きくなることから,

早期職場復帰が促されるという結果も得られた。

つまり,育児休業取得による機会費用が高い場合

には,保育サービスを利用して働きつづけた方が

効用が高くなることから,育児休業を取得しない,

または取得したとしても早期に職場復帰をする傾

向があるといえる。

第二に,子供の保育に関して,推定では以下の

結果が示されている。育児休業の取得確率を最も

下げるのは事業所内託児施設を利用する場合であ

り,その効果は親と同居している場合より大きい。

また,取得期間に関しては,親と同居している場

合,居住地における保育所入所待機率が少ない場

合,事業所内託児施設が利用できる場合のすべて

において有意に取得期間が短くなり,その効果の

大きさに大差はない。よって,育児休業を取得せ

ずに職場復帰する場合においては,事業所内託児

施設が最も有効な保育手段となり,育児休業を取

得し早期に職場復帰するには有効な保育手段の選

択が広がるといえる。

第三に,育児時間制度の利用は,育児休業を取

らない,または取ったとしても早期職場復帰を促

す傾向があることが示された。育児時間は「生後

満1年に達しない生児を育てる女性」であれば誰

でも請求できること,時間帯も柔軟に設定できる

こと,育児休業法で認められている他の勤務時間

に関する制度と組み合わせて両方の請求が可能で

あることが,子供を養育する女性のニーズと合致

していると考えられる。よって,この制度を利用

すると就業と育児の両立が図りやすくなり,早期

の職場復帰が可能になることが予想される。

第四に,育児休業法実施後は育児休業の取得が

促進され,早期職場復帰の傾向があるという結果

が得られた。育児休業法の実施により,育児休業

に対する認知が増進し,育児休業を取得しやすい

状況が整ったことから,育児休業の取得が促進さ

れたといえる。滋野・大日(1998)において,育

児休業制度が継続就業を促進することが実証され

ていることと合わせて考えると,育児休業取得の

促進は,出産後に労働市場から撤退せざるをえな

い女性をも減少させる可能性がある。つまり,育

児休業法の実施は育児休業取得を促し,引いては

出産した女性の継続就業をも促すと考えられ,就

業と育児の両立を可能にし雇用継続を図るという

育児休業法の本来の意義をみたした結果であると

思われる。また,休業期間については,育児休業

法の実施に伴って,就業と育児の両立が可能にな

るような環境が整ったことにより,早期職場復帰

を可能にしていると思われる。

以上の結果から,育児休業法等の拡充により,

さらに育児休業を取得しやすい状況を整えること

は,育児休業の取得確率を上昇させるといえる。

また,乳幼児保育等における柔軟かつ多様な保育

サービスの充実や,育児時間など利用しやすい勤

務時間短縮の制度,就業と育児の両立を可能とす

るような環境の整備が早期職場復帰を促すことが

予測される。

最後に,今後の課題を記したい。ここでの推定

に用いたデータはクロスセクションの個票データ

であり,出産時と調査時の属性が異なるサンプル

が含まれている可能性がある。個人の属性の変化

を把握できるパネルデータを用いて分析すること

によって,より明確な推定結果を得ることができ

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Page 13: New 論文(投稿) 育児休業取得とその取得期間の 決定要因について · 2017. 6. 13. · により育児休業の取得期間が決定されるのか,早 期の職場復帰を可能にする要因は何かを分析する。

75日本労働研究雑誌

論 文 育児休業取得とその取得期間の決定要因について

るだろう。また,分析対象が継続就業する女性と

なっており,就業していない女性が含まれていな

いこと,データの平均が日本全体の平均から乖離

していることより,サンプルセレクションバイア

スが存在する可能性がある。こうしたバイアスを

除去することも今後の課題である。

*本稿の分析に用いた『仕事と育児に関する調査』は,連合総

合生活開発研究所および東京大学社会科学研究所附属日本社

会研究情報センターから調査個票データの提供を受けた。ま

た論文作成にあたって,神戸大学大学院駿河輝和教授,大阪

府立大学村澤康友助教授,七條達弘助教授,北海道大学高木

真吾助教授および本誌レフェリー,編集委員会より貴重な助

言をいただいた。ここに記して感謝申し上げたい。

1)『労働力調査特別調査報告』では,従業員数に関する既婚

女性のデータが得られないので,女性雇用者数の値を用いて

いる。女性雇用者 1979 万人中,従業員数が 1000 人以上であ

る女性雇用者は 306 万人(15.5%)であった。また,既婚女

性雇用者(死別・離別は含まない)1138 万人中,フルタイ

ム就業者(雇用者のうち,パート,アルバイト,嘱託,その

他を除いた値)は 610 万人(53.6%),製造業に従事してい

る既婚女性雇用者は 292 万人(25.7%)であった。

2)Greene (1997) pp. 943-945. Winkelmann (1997) pp. 104-

107. Cameron, and Trivedi (1998) pp. 123-125を参照。

ハードルモデルの応用例としては,子供数を分析した研究

などがある。Silva, Santos and Covas, (2000) pp. 173-188を

参照。

3)Wooldridge (2002) pp. 504-509を参照。

4)ハードルモデルでは,育児休業を取得するかしないかの決

定と,どのくらい取得するかの決定が異なる意思決定プロセ

スのもとで行われていると考えているのに対し,順序プロビッ

トモデルでは二つの決定は同じ意思決定プロセスのもとに行

われるとしている。順序プロビットモデルの詳細については

Greene (1997) pp. 926-931を参照。ただし,各階層の閾値

は既知であることから,ハードルモデルと同じ閾値を用いて

いる。

5)AICは以下の式で表される。

AIC=-2T

log L+2pT

上式において,Tは推定に用いたサンプル数,log L は対数

尤度関数,pはパラメータ数である。AICが最小となるモデ

ルが最も適したモデルということになる。

AICについての詳細は,Akaike (1973) pp. 267-281,およ

び Amemiya (1985) pp. 146-147を参照。

また,AICを用いてカウントデータモデルの選択を行った

論文としては,Melkersson and Rooth (2000) pp. 189-203

がある。

6)ハードルモデルにおいて,ワイブル分布の代わりに指数分

布,対数正規分布,切断された正規分布を仮定した場合の

AICを計算した結果,3.76,3.21,3.39 となった。よって,

ワイブル分布を仮定したモデルが最も適しているといえる。

7)全国保育団体連絡会・保育研究所(1996)pp. 216-218 を

参照。

参考文献

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性労働白書 働く女性の実情』。

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法をめぐって」丸山茂・橘川俊忠・小馬徹編『家族のオート

ノミー』早稲田大学出版部。

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号,第 3349 号,第 3367 号,第 3418 号,第 3437 号,第

3439 号。

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就業継続への影響」『日本労働研究雑誌』第 459 号。

総務庁統計局(1995)『労働力調査特別調査報告』。

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業・介護休業制度に関する調査研究報告書 ケーススタディ

を中心に』。

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労働省婦人局(1990)『平成2年度 女子雇用管理基本調査』。

労働省婦人局(1993)『平成5年度 女子雇用管理基本調査』。

労働省婦人局(1996)『平成8年度 女子雇用管理基本調査』。

労働省婦人局(1999)『平成 11 年度 女性雇用管理基本調査』。

脇坂明(1999)「育児休業利用に関する企業・事業所の違い」

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Akaike, H., (1973) “Information Theory and an Extension of

the Maximum Likelihood Principle”, in B. N. Petrov and F.

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tion Theory.

Amemiya, T., (1985) Advanced Econometrics. Basil Blackwell.

Cameron, A. C., and P. K. Trivedi, (1998) Regression Analysis

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Greene, W. H., (1997) Econometric Analysis 3th ed. Prentice

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Melkersson, M., and D. O. Rooth, (2000) “Modeling Female

Fertility Using Inflated Count Data Models.”, Journal of

Population Economics 13.

Silva, J. M. C Santos and F. Covas, (2000) “A Modified Hurdle

Model for Completed Fertility”, Journal of Population

Economics 13.

Winkelmann, R., (2003) Econometric Analysis of Count Data.

Springer.

Wooldridge, J. M., (2002) Econometric Analysis of Cross

Section and Panel Data. MIT Press.

〈2003 年1月6日投稿受付,2004 年2月 13 日採択決定〉

にしもと・まゆみ 阪南大学専任講師。主要業績に「親と

の同居と介護が既婚女性の就業に及ぼす影響」家計経済研究

所『季刊家計経済研究』第 61 号(七條達弘氏と共著)(2004

年1月)など。計量経済学・家族の経済学専攻。

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