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一般演題2
演題4
NASH における鉄代謝異常の解析と除鉄療法の有用性の検討
高田弘一、加藤淳二、新津洋司郎
札幌医科大学 第4内科
【目的】近年非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の約 20 % が肝硬変に進展し,肝細胞癌の発生母
地となることが明らかとなってきた。しかし,その原因や病態進展の機序は不明のままである。
最近 NASH の発症・進展に酸化ストレスの関与が示唆されている。その酸化ストレス増加の原因
の一つとして肝への鉄蓄積が関与する可能性が報告されている.過剰な鉄はフリー鉄となり,
hydroxyl radical などの活性酸素種 (ROS) の産生を亢進させ,肝障害および肝線維化を惹起す
ることが想定される。そこで本研究では,NASH 患者の肝への鉄沈着の程度や鉄吸収動態,さら
に酸化的 DNA 傷害について解析した。また,NASH の治療として除鉄療法が有用であるか否かに
ついても検討した。
【方法】NASH 25 例を対象とした.肝生検組織の鉄沈着度を Barton らの scoring system を用い
て評価した。また,鉄代謝の評価指標として血清鉄,% トランスフェリン飽和度,血清フェリチ
ンを測定した。鉄吸収は,早朝空腹時にクエン酸第一鉄 100 mg を経口投与し,経時的に採血し
血清鉄濃度から評価した。酸化的 DNA傷害度は肝生検組織内の 8-OH-dGを免疫染色し,KS-400 シ
ステムを用いて定量化した。除鉄療法は Hb 11g/dl または血清フェリチン 10ng/ml 未満を維持
するように瀉血と低鉄栄養療法を行った。その効果は,血清 ALT 値,肝線維化マーカーならびに
組織学的に評価した。
【成績】NASH では 健常人に比べ有意に血清フェリチンが高値であり,その約 70 % の患者で肝
への鉄沈着が確認された。また,NASH では消化管からの鉄吸収が亢進しており,肝内の 8-OH-dG
レベルも増加していた。NASH 患者 8 例に除鉄療法を施行したところ全例血清 ALT 値は有意に
低下し,肝内の 8-OH-dGレベルも低下していた。
【結論】鉄過剰に伴う肝内の酸化ストレス増加が NASH の発症・進展に関与する可能性が示唆さ
れた。また,除鉄療法により NASH の活動性および 8-OH-dG レベルが低下することから同療法
が有効であると考えられた。