kt88(t)平衡パワー・アンプの製作 - tok26...kt88(t)平衡パワー・アンプの製作...

5
サークロトロン型第2作 KT88(T)平衡パワー・アンプの ●最大出力は25W もう一度サークロトロン・ア ンプに挑戦 クロスシャント・プッシュプル・ アンプ(cspp)といえば いまやバイ ファイラー巻きアウトプット・トラ ンスやトl)ファイラー巻きアウトプ ット・トランスを使ったマッキント ッシュ型が主流であり,筆者もご多 分に漏れずかなり多くのマッキント ッシュ型アンプを製作し,本誌に報 告してきました しかし,マッキントッシュ型の CSPP (マッキントッシュ社はCSPPとは 呼ばずユニティ・カプルド・サーキットと 呼んでいます)とまったく同じ回路理 論に基づくアンプとしてば 筆者も 何件かは本誌に製作例を発表したこ とがありますが その他にもCSPP のオリジネ一夕であり命名者でもあ る島田聴氏の島田型.エレクトロヴ ォイス社のサークロトロン型,そし て, OTLでお馴染みのSEPPがあ ります.これらはプレートとカソ- から取り出した出力を並列接続して 合成伽算)する方式であり,給電方 法が異なるだけで 交流的にはまっ たく同一の回路といえます. この中で 最も回路理論に忠実で 純粋な形,いい換えれば 他の形式 のような工夫が見られない愚直な回 路がサークロトロン型です.したが って,この仲間の中では最も"純粋 杏(?)音"が出るのではなかろうか と思わせます. 筆者は2012年の本誌6月号で MAY 20 1 5 5998Aによるサータロトロン型15 Wパワー・アンプを報告しています. 物理特性は,自画自賛めいて恐縮で すが 物理特性はなかなかのもので す.そして,試聴感として,以下の 感想を述べています. 「もともとレギ ュレーク管は線の太い音がする(少な い経験なので断定するのもどうかとは思い ますが)ものですかCSPPによって, その太い音に芯が加わり, 10W級 の,しかもたった4球のアンプから 出る音とは思えない堂々とした音を 聴くことができましたクロストー ク特性のよさもあってか,空気感も 感じられる筆者の好きな音です」と. しかし,どこにも"純粋な音"ど の表現はなく,いまやその昔もすっ かり忘れてしまっていますし.アン プ自体も部品の流転などで影も形も ありません どんな音だったかなと 思っていた矢先,サークロトロン用 のOPT (染谷電子製 ASTR-21)の手 持ちがあるが使ってみないか,との お話を先輩からいただきました.濾 りに船,断る理由などあるわけがあ りません. ということで 今月はこのOPT を使ったサータロトロン型パワー・ アンプをご紹介します. なお,このOPTの仕様は参考図 のとおりです. サークロトロン・アンプの 普遍性と特殊性 サータロトロンを非常に簡明にわ かりやすく解説した,その筋では有 名なかたのサイト(http : //www h1-netor i p/一cm 3 h-kkc/cla clhtm)がありますので 以下(斜体文 字都)に主要部分を抜粋して原文のま まご紹介します.第1図をご覧くだ さい. 「図1はサークロトロン出力段の 上側の回路だけを抜き出して三極管 で描いたものです.そして負荷巻線 の中点を接地しているので その上 下の巻線を別巻線として描いたのが 101 ◆805アンプ事体はかなり大望になるためドライブ・アンプはセパレートにした

Upload: others

Post on 24-Jan-2021

3 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: KT88(T)平衡パワー・アンプの製作 - TOK26...KT88(T)平衡パワー・アンプの製作 最大出力は25W もう一度サークロトロン・ア ンプに挑戦 クロスシャント・プッシュプル・

サークロトロン型第2作

KT88(T)平衡パワー・アンプの製作●最大出力は25W

もう一度サークロトロン・ア

ンプに挑戦

クロスシャント・プッシュプル・

アンプ(cspp)といえば いまやバイ

ファイラー巻きアウトプット・トラ

ンスやトl)ファイラー巻きアウトプ

ット・トランスを使ったマッキント

ッシュ型が主流であり,筆者もご多

分に漏れずかなり多くのマッキント

ッシュ型アンプを製作し,本誌に報

告してきました

しかし,マッキントッシュ型の

CSPP (マッキントッシュ社はCSPPとは

呼ばずユニティ・カプルド・サーキットと

呼んでいます)とまったく同じ回路理

論に基づくアンプとしてば 筆者も

何件かは本誌に製作例を発表したこ

とがありますが その他にもCSPP

のオリジネ一夕であり命名者でもあ

る島田聴氏の島田型.エレクトロヴ

ォイス社のサークロトロン型,そし

て, OTLでお馴染みのSEPPがあ

ります.これらはプレートとカソ-

から取り出した出力を並列接続して

合成伽算)する方式であり,給電方

法が異なるだけで 交流的にはまっ

たく同一の回路といえます.

この中で 最も回路理論に忠実で

純粋な形,いい換えれば 他の形式

のような工夫が見られない愚直な回

路がサークロトロン型です.したが

って,この仲間の中では最も"純粋

杏(?)音"が出るのではなかろうか

と思わせます.

筆者は2012年の本誌6月号で

MAY 20 1 5

5998Aによるサータロトロン型15

Wパワー・アンプを報告しています.

物理特性は,自画自賛めいて恐縮で

すが 物理特性はなかなかのもので

す.そして,試聴感として,以下の

感想を述べています. 「もともとレギ

ュレーク管は線の太い音がする(少な

い経験なので断定するのもどうかとは思い

ますが)ものですかCSPPによって,

その太い音に芯が加わり, 10W級

の,しかもたった4球のアンプから

出る音とは思えない堂々とした音を

聴くことができましたクロストー

ク特性のよさもあってか,空気感も

感じられる筆者の好きな音です」と.

しかし,どこにも"純粋な音"ど

の表現はなく,いまやその昔もすっ

かり忘れてしまっていますし.アン

プ自体も部品の流転などで影も形も

ありません どんな音だったかなと

思っていた矢先,サークロトロン用

のOPT (染谷電子製 ASTR-21)の手

持ちがあるが使ってみないか,との

お話を先輩からいただきました.濾

りに船,断る理由などあるわけがあ

りません.

ということで 今月はこのOPT

を使ったサータロトロン型パワー・

アンプをご紹介します.

なお,このOPTの仕様は参考図

のとおりです.

サークロトロン・アンプの

普遍性と特殊性

サータロトロンを非常に簡明にわ

かりやすく解説した,その筋では有

名なかたのサイト(http : //wwwasa-

h1-netor i p/一cm 3 h-kkc/cla丑/ 6 cw 5_cir-

clhtm)がありますので 以下(斜体文

字都)に主要部分を抜粋して原文のま

まご紹介します.第1図をご覧くだ

さい.

「図1はサークロトロン出力段の

上側の回路だけを抜き出して三極管

で描いたものです.そして負荷巻線

の中点を接地しているので その上

下の巻線を別巻線として描いたのが

101

◆805アンプ事体はかなり大望になるためドライブ・アンプはセパレートにした

Page 2: KT88(T)平衡パワー・アンプの製作 - TOK26...KT88(T)平衡パワー・アンプの製作 最大出力は25W もう一度サークロトロン・ア ンプに挑戦 クロスシャント・プッシュプル・

図2です.さらにカソード側の巻線

を交差しないように反転したのが図

3です.このように描くとプレート

とアースの間に霞源と負荷が直列に

入っていて,これを上下に入れ替え

でも交流的には不変である事が分か

ると思います.そこで この両者を

入れ替えて描いたのか図4ですが

通常のプレート負荷回路にKNF (筆

者注 カソード負帰還)が掛かっている

だけだという事が理解できると思い

ます.ただ このKNF巻線はプレート負荷と同じ巻数なので50%の

KNFとなる訳です. 」

いかがですか?サータロトロン

は「通常のプレート負荷回路に50%

のKNFが掛かっているだけ」の1ふ

つうのアンプなのです.もっとも,

出力段の上側だけを見ればという前

提つきではありますが一一「上下では

出力の並列合成という点でふつうの

ppとは考えかたが違うことを忘れ

ないでください.

しかし.原理回路こそふつうのア

ンプなのですが 原理と実際は異な

ります.まずOPTですが これは

構造的には通常のOPTと変わると

ころはありませんが インピーダン

誼.ig" ・

「韓:gem I102

「「 1・(Kl、茶)

2200又は3150

88.m L 2.(El. ,i.)又は

1・26kn r 3・(E2、橙)

i

止2200又は3150

4.(K2、黄)

スの低いOPTが必要です.それは

出力を並列合成するため,出力管か

ら見た負荷インピーダンスは通常の

ppの4分の1となるからです.こ

んな低インピーダンスのOPTは市

販されていませんから,サークロト

ロン専用のものが必要になるのです

か 内部抵抗の極めて低い出力管,

例えば6080, 5998, 6C19P, 6C

44Cなどでは通常のOPTとして使

えますから,かならずしも完全専用

というわけではありません.

低インピーダンスのOPTは巻数

が少ないので高域特性の優れたもの

が作りやすいというメリットがあり

ます.ちなみに.上記の説明中, 「KNF

巻線」という言謎がありますがこの

opTにKNF用の専用巻線がある

わけではありません第1図のよう

にl次巻線の中点は接地されている

轄三韓蕗

(第1図)サイトに載っていたサータロトロン回路の説明

7.(8nl880QI. a)

6.(8nl1.26kn]、青)

5.(0、線)

(参考)使用したOPT,染谷電子裏

ASTR-21の仕様

ので1次巻線にはプレートとカソ

ードのそれぞれからの出力が与えら

れますから,カソード負荷はプレー

ト負荷と同じ巻数の負荷となるの

で 50%帰還がかかることになると

いうわけです.

つぎは電源トランスです.通常の

PTはB巻線が1つ(出力電圧別にタッ

プが出ているものが多い)ですが サー

クロトロン用としては許容電流値こ

そ小さいものの各出力管に1巻線,

ステレオ用としては計4巻線が必要

です,

第1回の図1-4のいずれを見て

も片側にlつの電源,しかも.どこ

も接地されていない浮動電源になっ

ています.と同時に,この4つの巻

線間はクロストークとノイズの面か

ら静電シールドされている必要があ

ります.それは,この浮動電源には

信号が通るので静電シールドなしで

は静電容量による相互干渉が甚だし

いからです.

5998Aの時は静電シールドなし

でしたがトランスの巻線構造が異

なるのと(カットコアの両足巻き)電源

電圧がずっと低かったことから静電

容量が小さかっだせいで ノイズも

クロストークも問題なかった(12dB

のNFB後ノイズは左右とも約0 25mV,

クロストークは可聴i諦戒では-80dB以下)

と考えられます.

今回はEIコアを使ったふつうの

pTですから,そうはいきません.

したがって.この影響を最小限に抑

ラ ジ オ技術

Page 3: KT88(T)平衡パワー・アンプの製作 - TOK26...KT88(T)平衡パワー・アンプの製作 最大出力は25W もう一度サークロトロン・ア ンプに挑戦 クロスシャント・プッシュプル・

して

:-こ

∴.)

)巻

iか

ミあ

:は

/千

さし

:し

ぎ異

i源

i電

:ら

dB

V.

千.

ミi 昌子 �6ツイ�R�2坊B�6i3V)))

> ⊂> 」で⊃ ������箚�ニR��� ���T「�

100V4711 ×4 100kBx4

+圭拝辞詐+ ��c�b�ト�鳴�77げ

0V VVV-78V10k -98V一一一22V -12V 偖ネ��

(第2図)

KT-88 (3結)サークロトロン型

平衡パワー・アンプの全回路囲

えるにはインピーダンスの低い3極

管(または5極管の3極管接続)を使うの

が無難です.静電シールドがないと

もちろんですが 静電シールドして

も電源投入後ヒ一夕が十分に暖まる

までの10秒程度は,ハムやジーノ

イズが多かれ少なかれ出てしまいま

す(ェレクトロヴォイスのサークロトロン

は主に業務用PA装置として使われたらし

(.通電直後のノイズは無視したのではな

いかと思われます)また B電源に信

号が通ることから部品のレイアウト

にも注意を要します.たとえば右チ

ャネルのB電源の平滑用電解コンデ

ンサが左チャネルの入力端子付近に

MAy 201 5

あると,はなはだだしいクロストー

クが発生します.

以上のとおり, OPTはそのイン

ピーダンスの点でやや特殊(今回の

opTは8809/1280Q:8Q 通常の

opTでは3 5kQ/5kQ相当)とはいえ,

選ぶ出力管次第で汎用性がないわけ

ではありませんが PTは 4つの

B電源巻線とこれらの巻線問の静電

シールドが必要という点でまったく

の専用となります.

そして,この4つもの浮動電源と

併せ 通常は電圧増幅管用にも別に

B電源を用意しなければならないの

で計5巻線・ 5電源が必要になると

二] 405V

二] 405V

二] 405V

二] 405V

いう点で サークロトロンは普及し

ないのだろうと思われます.なお,

このPTは染谷電子製の特注品で下

記のような仕様になっています.し

たがって,設計次第で仕様変更は自

由です.

コア: EI-114,積厚55mm,

容量: 195VA

巻線:6.3V/3.6Ax2.300V/

0.1Ax4,220V/0.1Ax

l,70V/0.1Axl

冒頭からややサークロトロンに対

し否定的な要素を並べてしまいまし

たが それらを跳ね飛ばすだけの魅

力的な音が期待されるサークロトロ

103

 

 

C

l

 

 

 

 

9

.

.

J

 

の し抑

Page 4: KT88(T)平衡パワー・アンプの製作 - TOK26...KT88(T)平衡パワー・アンプの製作 最大出力は25W もう一度サークロトロン・ア ンプに挑戦 クロスシャント・プッシュプル・

かタイムラグ型)にすべきです.瞬断型

の3Aフューズでは電源投入時にほ

ほ確実にフューズが飛びます.初め

ての電源投入時や電源を切ったのち

5分以上置いてから,すなわち,コ

ンデンサの電荷がほぼゼロの状態か

ら電源を投入する場合です.

製作直後はこれに気付かず 電源

を入れるとすぐにフューズが飛ぶも

のですから,フューズ飛び=回路内

のショート-配線まちがい,と決め

付け,電源回路をlつずつバラして

は確認するという作業を繰り返し,

どこもショートはしていないのに

4つのB電源のうち最後にいずれか

の1つをつなぐとフューズが飛ぶこ

とから,やっと突入電流と気付いた

次第.ずいぶん回り道をしました

大容量フューズを使えばフューズ

は切れませんが フューズは回路異

常から本体を守るためのものですか

ら,異常があればすぐに切れてくれ

なくては困りますので 大容量にす

るのでは異常の際に役に立ちませ

ん.瞬断型を使うなら5Aまでです.

これで飛ぶようであれば さらに大

容量のものを選ぶのではなく,かな

らず遅延型を使うべきでしょう.

また,サークロトロン・アンプで

はPTの静電シールド端子はしっか

りとシャシー・アースすることを忘

れてはなりません. B電源はアース

から浮いていますから.前述のクロ

ストーク問題だけではなく,誘導ノ

イズにもたいへん弱くなっていま

す.これは実機で如実に現れました

8-I1 � �� �� �� �� �� ��

看 � �� ��

1 1 1 辻""(����� �� �� �� �� �� ��00Hz kHz OkHz �� �� �� �� �2� �� ��

"slS � �� �� �� �� �� ��

!!!!!岳 � �� �� ��● �� �� ��

○○,○ � �� �� �� �� �� ��

S,18 � �� �� �� �� �� ��

8111臆臆 � �� �� �� �� �� ��

0.01        0.1         1         10         100

出力(W)

〈第7図)左チャネルの周波数別の雑音ひずみ率特性 NFBあり

S � ���� �� �� �� �� �� ��

1 1 1 ���イ��� ���� �� �� �� �� �� �� Hz Z Hz �� �� �� �� �� �� ��

〇〇〇, 劔 �� �� �� �� �� ��

〇〇°" 劔 �� �� �� �� �� ��

〟; �� �� �� �� �� ��剪� �� �� �� �� �� ��

"○〝, 劔 �� �� �� �� �� ��

ssi1 劔 �� �� �� �� �� ��

iiiiiiE 劔 �� �� �� �� �� �� 0.01       0.1       1       10       100

出力(W)

(第8図)右チャネルの周波数別の雑音ひずみ率特性. NFBあり

MAY 2015

このため, B電源の配線には以下

の注意が必要です.

つまり,サークロトロン用PTで

は4つのB巻線が続けて巻いてあり,

それぞれの巻線の間に静電シールド

が施されたいますが これによって

B電源巻線間のストレー容量を小さ

くしてそれが原因のノイズやクロス

トークを抑えようというものです.

ただ 片チャネルに隣り合った巻

線を使うと,この容量がいちばん大

きくなってしまうため,内側からA,

B, C, Dの順で巻かれているとす

るとA, Cを片チャネル. B, Dを

片チャネルに用いると,ノイズク

ロストークが最小となって効果が最

も大きくなります.

つまり実際の配線に当たっては

pTのB巻線を端から順番に右,左

と使っていくのではなく, 1つ飛ば

しに使っていくことが肝心です.衣

機では大きな差は出ませんでした

が PTの個体差により効果が大き

く出る場合があると考えれます.

調整は 平衡アンプだからといっ

て特に不平衡アンプと異なる点はあ

りません.出力段のアイドリング電

流設定(50mA)と一定の信号を入れ

てのNFB量調整,および必要なら

高域の位相補償で いつもと基本的

に同じ作業です.

まず 出力管のアイドリング電流

調整です.

サータロトロン回路ではアイド)

ング電流そのものの設定とDCバラ

ンスの両方を別々に調整する必要が

あります.つまり. OPTのカソー

ド巻線のアース側とグラウンド側に

ある10Q iま通常の電流検知用抵抗

ではなく, DCバランス用として使

います.この10〔=こは上下の出力

管からの電流が流れますから,両端

の電位差を測定してもアイド)ング

電流の絶対値は計測できません し

109

 

A

T

つ ペン

.

C

 

0

 

 

 

 

 

-

 

 

 

 

 

1

‥0

(%)掛おもも偶穀

Page 5: KT88(T)平衡パワー・アンプの製作 - TOK26...KT88(T)平衡パワー・アンプの製作 最大出力は25W もう一度サークロトロン・ア ンプに挑戦 クロスシャント・プッシュプル・

は25Wということでよいのではな

いかと思います.

(3)ダンピング・ファクタ(DF)

オン・オフ法によるlkHzで左

チャネルが11,右チャネルが10強

ど, CSPPとしてはそれなりの十分

大きな数値となりました.ブート・

ストラップによるDFの低下は軽微

に終わったようです.これなら十分

に引き締まった低音が期待されます.

(4)残留雑音

入力VR最小の位置で 負帰還後

左右それぞれ0.55mV, 0.49mVと.

絶対値はきりながら,この数値もマ

ッキントッシュ型で得られる0.1

mVレベルに較べると決して小さな

数値ではありません これは明らか

に浮動電源に拠るものでしょう

しかも,前述のとおり,本機でも

電源投入直後,ヒートアップするま

での間はかなり大きいノイズが発生

します.電源トランスの巻線間の静

電容量による影響ですが サータロ

トロンは信号が電源トランスにまで

流れるのですから,仕方ありません.

商品ならリレーでこの間は出力オフ

にしておくべきでしょうが 本機は

自家用ですから特段の対策はしてい

ません.個人差はありましょうが

筆者には対策するほど不愉快な大き

さと時間ではありません.

(5)クロストーク(第9図):

今回はゆえあって専門家に測定を

お願いしましたので 残留ノイズに

マスクされない真のクロストークを

知ることができました 60Hzと

120Hzの山は仕方ありませんが一応可聴帯域の全域にわたって

-100dBとなっていますから,た

いへん優秀です.

試聴と感想

5998Aでのサークロトロンでも

好印象でした戎 本機もなかなかの

MAY 2015

出来栄えです.もともとCSPPは出

力管の個性が出にくい回路方式と認

識していますが それでも聴き込め

ば違いはわかるもので 本機はさす

がに大出力管の満六で3綿の25W

といえども,悠然と深々としてはい

るが締まった低域t.ソリッドで突

き抜けるような高域,そして押出し

のよい線の太い中城は特筆ものです

が では,サークロトロン特有の音

という点ではどうなのかといえば

正直いって「?」です.何といっても

筆者にとってはサータロトロンの2

作目でしかありませんから,明言で

きるものではありません.

確かにマッキントッシュ型とは少

し違い,たいへん優れたパースペク

ティブを示しますが どうもそれが

回路の違いなのか, OPTの違いな

のかは判然としないのです.むしろ,

そういうことを考えさせないパーサ

タイルなCSPPの音であると同時

に,その中でも極上の音なのです.

そもそもCSPPアンプではほとん

ど失望することはないのですが 本

機は望外といってもよく,ひたひた

と押寄せる音の波にいつまでも身を

委ねていたいと感じさせる,たいへ

ん実在感のある音です.苦心した甲

斐があった,と安堵した次第です.

結果として音がよかったので安堵

したのですが 実はこのアンプ 相

当の難産たったのです.フューズ飛

びなんてのは序の口で発振するは,

大ノイズが発生するiI,で 対策に

てんてこ舞いをしました まあ,す

べては自業自得で 結局はいい加減

な配線といい加減な測定環境の結果

だったのですか 2つの"いい加減''

が重なると地獄です.

最初から「原因はこれとこれ」とわ

かっていれば切り分けができるので

すが そんなことがあろうはずはあ

りません 何度配線をやり直しても

変化はわずかしかなく,変えるたび

に 結果は好転するどころか悪化す

ることすらあったのです.どうも測

定側にも問題が起こっているらしい

と気付いたのはずっと後のことで

す.測定器にも測定のためのワイヤ

リングにも問題があったのです.

なにがいいたいのかといえば 配

線作業は慎重,かつ,ていねいにや

ればすむのですが 測定側の問題は

いつどのように問題(故障を含む)起き

るか予測がつかないので つねに測

定器の健轟状態は確認しておかねば

ならないということです.しかし,

プロと違ってアマチュアにとっては

測定器の日常的なメンテナンスや校

正は 時間的にも.そして.なによ

りも費用的にとても負担の大きいも

ので 多くの場合ダメとわかれば校

正するよりもオークションなどで新

たに購入する方が負担は軽くすんで

しまいます.

ではどうやって健康状態を確認す

るかですが ハナシは簡単です.過

去に計測して十分実力がわかってい

るアンプをときどき再測定してみる

ことです.バイアスなどは経年変化

でずれていることもありましょうか

ら.それはチャンと規定値に戻し,

各部の電圧もほぼ当初とおりと確認

して主要項目を測定すれば 元デー

タと近似なら健康,差が大きければ

不健康というわけです.

こうすれば 結果だけで大慌てを

せずにすみます.今回もこのテスト

の結果,以前とは似ても似つかぬこ

とがわかったので 主犯が測定系と

わかった次第でした.賢明な読者諸

兄は.そんなことは常識とおっしゃ

るのではなかろうかとは韻います

が 筆者には初めてのオソマツな教

訓でした

棚引