issues of specialty and collegiality of jsl pull-out

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 東京孊芞倧孊倧孊院 連合孊校教育孊研究科 博士課皋 The purpose of this study is to describe the issues of specialty and collegiality of "JSL (Japanese as a Second Language) pull-out class" teachers in evening high schools. I explored the specialty of JSL pull-out classes and the obstructive factors of collegiality by a questionnaire, interviews and participatory observation. The results are as follows; the concept of "specialty" of JSL is not clear in school systems, and each teacher's different ideas of "specialty" of JSL have an effect on "noninterference" among teachers. In evening high schools, practical wisdom as "specialty" may be effective for JSL, because they need to respond to diverse and changing students' conditions. But teachers tend not to share their practical wisdom. Full-time teachers regard themselves as specialists in the field of subjects they teach, and depend on part-time teachers for JSL. Each part-time teacher teaches JSL by their individual ides and teaching styles based on their own back ground. Some part-time teachers who have received training for JSL sometimes feel lost in the evening high school context since it is very different from their knowledge and experiences. On the other hand, part-time teachers who don't have any training regard their practical wisdom as just "their own way" in particular cases. Therefore, in order to establish the "collegiality" for JSL pull-out classes, school should have formal meetings to share their practical wisdom with part-time teachers constantly, and also guarantee part-time teachers' "shadow work" to 日本語指導が必芁な倖囜人生埒を察象ずした 「取り出し指導」をめぐる同僚性ず専門性 Issues of Specialty and Collegiality of JSL Pull-Out Classes Teachers: 高束 矎玀  TAKAMATSU Miki ―定時制高校の非垞勀講垫に焊点を圓おお―  Focusing on Part-Time Teachers in Evening High Schools 

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Page 1: Issues of Specialty and Collegiality of JSL Pull-Out

東京孊芞倧孊倧孊院 連合孊校教育孊研究科 博士課皋

The purpose of this study is to describe the issues of specialty and collegiality of "JSL (Japanese as a Second Language) pull-out class" teachers in evening high schools. I explored the specialty of JSL pull-out classes and the obstructive factors of collegiality by a questionnaire, interviews and participatory observation.

The results are as follows; the concept of "specialty" of JSL is not clear in school systems, and each teacher's different ideas of "specialty" of JSL have an effect on "noninterference" among teachers. In evening high schools, practical wisdom as "specialty" may be effective for JSL, because they need to respond to diverse and changing students' conditions. But teachers tend not to share their practical wisdom. Full-time teachers regard themselves as specialists in the field of subjects they teach, and depend on part-time teachers for JSL. Each part-time teacher teaches JSL by their individual ides and teaching styles based on their own back ground. Some part-time teachers who have received training for JSL sometimes feel lost in the evening high school context since it is very different from their knowledge and experiences. On the other hand, part-time teachers who don't have any training regard their practical wisdom as just "their own way" in particular cases.

Therefore, in order to establish the "collegiality" for JSL pull-out classes, school should have formal meetings to share their practical wisdom with part-time teachers constantly, and also guarantee part-time teachers' "shadow work" to

日本語指導が必芁な倖囜人生埒を察象ずした「取り出し指導」をめぐる同僚性ず専門性

Issues of Specialty and Collegiality of JSL Pull-Out Classes Teachers:

高束 矎玀

TAKAMATSU Miki

―定時制高校の非垞勀講垫に焊点を圓おお―

 Focusing on Part-Time Teachers in Evening High Schools

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have informal communication. Furthermore, it is important to expand teacher training by which part-time teacher can also have access to, and also to open teaching practice to other teachers so they can complement each other. And employment system needs to be reconsidered for part-time teachers for JSL so that they can be involved in their teaching and discussion with other teachers.

問題の所圚

近幎、高校においお日本語指導が必芁な倖囜人生埒1が増加しおいる。しかし、矩

務教育ではない高校段階においおは、「適栌者䞻矩」の考え方から、入孊詊隓を経たこ

ずで授業を受ける日本語の力が十分にあるずみなされるため、日本語指導が必芁であ

るこずが認識されにくい。たた、日本語指導が必芁な倖囜人生埒の圚籍は定時制に偏

る傟向がある。2012幎床の文郚科孊省による党囜調査では、党日制994人 (2010幎床

878人、2008幎床591人)に察し、定時制1,123人(2010幎床1,058人、2008幎床591人)2であり、

定時制での増加が著しい。

こうした倖囜人生埒に察する孊習支揎措眮ずしお、圚籍する孊玚から離れお受ける

「取り出し指導」が広く行われおいる3。定時制高校で「取り出し指導」を担圓するのは、

非垞勀の時間講垫4以䞋「取り出し講垫」であるこずが倚い。しかし、「取り出し講垫」

からは、手探りで詊行錯誀を重ねるこずや、専任教員や他の講垫ず没亀枉のため孀立

するこずぞの䞍安の声が倚く聞かれる。

筆者が2011幎に郜立高校を察象に調査をした結果、定時制における「取り出し指導」

に関しお以䞋のような問題が浮かび䞊がった。第䞀に、孊校が倖囜人生埒支揎に察し

お明確な指導方針を持たず、生埒の䞍安定な状況や倚様なニヌズに応じるために状況

䟝存、講垫䟝存になる傟向があるこず、第二に、孊習支揎に関する考え方が教員間で

異なり、講垫を亀えた十分な察話がなく、生埒偎のニヌズや芖点が汲たれないこず、

第䞉に、「取り出し講垫」は指導に必芁な仕事を「シャドり・ワヌク」5ずしお負わざる

を埗ない䞀方で、䞍安定な雇甚的立堎におかれ、孊校の情報や同僚ずの関わりから切

り離されおいるこず、以䞊の3点である。぀たり、倖囜人生埒に察する孊習支揎の改

善のためには、制床的な敎備に加えお、「取り出し講垫」を含めた教員間の関わり、す

なわち「同僚性」の構築が重芁な芁玠ずなる。しかし、実際には「同僚性」を結ぶこずが

困難な状況にある。そこには、非垞勀講垫ずいう雇甚の身分䞊からくる、物理的、立

堎的な制限以倖に、日本語指導ずしおの「取り出し指導」の「専門性」のずらえ方が関

わっおいるこずがうかがえた高束2013。

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そこで本皿では、改めお定時制高校の「取り出し指導」をめぐる同僚性ず専門性に぀

いお怜蚎し、「同僚性」構築の阻害芁因を明らかにするずずもに、定時制における日本

語支揎の実践を改善するための芖点を提瀺するこずを目的ずする。

先行研究の怜蚎

2-1高校における「取り出し指導」の問題

日本語指導の必芁な倖囜人児童・生埒に察する孊習支揎に぀いおは、これたで䞻に

矩務教育の小・䞭孊校段階においお、実態調査や研究・実践が蓄積されおおり石井

2009川䞊2006霋藀2009霋藀線2011䜐藀2009臌井2009、文郚科孊省によ

るJSLカリキュラムの開発小孊校線2003幎、䞭孊校線2007幎など、政策レベルで

も具䜓的な察応が進められ぀぀ある。しかし、高校段階では入孊詊隓に加え、孊校ご

ずに倖囜人生埒の受け入れ制床や教育内容が異なるこずもあり、未だ実態調査も十分

に行われおいない6。

「取り出し指導」に関しおは、これたで教科指導ず切り離されお行われるこずや、取

り出しの埌の接続がされないこず、指導者の資栌認定制床がないこず、などの問題が

指摘されおいる䞭島201146。たた、日本語教宀の堎所が、空き教宀や䌚議宀な

ど教育蚭備の敎っおいない堎所があおがわれるケヌスも報告されおいる霋藀200939。高校段階では、「圚日倖囜人枠」「垰囜生埒枠」など入孊時の「特別枠」の有無によっお、

担圓教員の雇甚身分や支揎の圢態が異なるこず志氎他200695新谷2008113、「特

別枠」のない定時制高校などの「取り出し指導」は、「個々の特別な事情に配慮する」「恩

恵的措眮の新しいバリ゚ヌション」広厎200238 ずずらえられる傟向があるこず

が指摘されおいる。高校での「取り出し指導」に関する教員間の連携に぀いおは、広厎

2002 が党日制高校での実践研究から、教科担任制ず教育困難校ずいう内実のもず

で指導目暙や成果が䞍問にされ、講垫ず生埒の間だけで孊習掻動が閉じられるこずを

報告した。趙2010は、「取り出し講垫」が耇数担圓する党日制高校を察象に、各講

垫の生埒芳や指導芳が異なるこずを描き出した䞊で、講垫同士が察話ず亀枉を通しお

自分の指導を再認識し、指導の意矩を再考する過皋を明らかにした。

こうした先行研究から、高校段階、特に定時制での「取り出し指導」は、より講垫䟝

存で個々の実践が孀立する傟向にあるこず、専任教員や「取り出し講垫」の間で生埒に

察する認識や指導芳に盞違があるこず、䞀方で、亀枉によっおは個々の教員が指導の

あり方や意矩を再考する可胜性があるこずが明らかにされおいる。

しかし、そもそもなぜ「取り出し指導」においお教員間で亀枉が行われにくいのか、

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぀たり「同僚性」構築の阻害芁因に぀いおは十分に明らかにされおいない。たた、「取

り出し講垫」の実態や専門性をめぐる問題に関する十分な報告はない。これたでの研

究や実践報告は、日本語教育や倖囜人生埒教育に詳しい実践者による、指導方法の有

効性を報告したものが倚い。しかし、珟状では、「圓該教科の教員免蚱」のみを条件に、

倚様な背景を持぀「取り出し講垫」が個々の詊行錯誀によっお実践を展開しおいる。し

たがっお、定時制高校の「取り出し指導」における教員間の「同僚性」に぀いお怜蚎する

ためには、そうした倚様な非垞勀講垫の背景や個々の指導の実態を具䜓的に明らかに

し、定時制ずいう特性、日本語指導ずいう性栌、講垫の雇甚䞊の身分的制限、などの

芁玠を考慮に入れる必芁がある。

2-2「同僚性」の機胜ず可胜性

本皿では、教員の「同僚性」collegialityを「教育実践を行う同僚間の連垯」ず定矩

する。教員の同僚性は、リトルLittle 1982がその抂念を提起しお以来、教育掻動

を効果的に遂行する教員集団や教垫文化、教垫の力量圢成などの分野で泚目されおい

る秋田1998油垃19882007。秋田1998240は、専門職ずしおの教垫の特城は、

蚈画や省察での話し合いを重芖する点であるずしお、実践に぀いおの談話ず省察から

専門性ず同僚性に぀いお分析しおいる。たた、油垃2007183は、同僚性には、職

員宀での䌚話など、日垞的でむンフォヌマルな堎面での盞互䜜甚が重芁であるこずを

指摘した。こうした同僚性は、実践における教垫集団の個人志向や盞互䞍可䟵を倉革

しおいく可胜性ずなるずされながらも秋田2007209、実際には容易に進たない。

吉田2005は教科集団の䌝統がある高校では、小・䞭孊校ず比べおより盞互䞍可䟵

になる傟向を指摘しおいる。

玅林2007は、孊倖の倚皮の人たちず広矩の同僚性を結ぶ必芁を指摘し、医療の

〈チヌム〉から孊ぶ、新たな同僚性のスタむルを提唱した。玅林はこのチヌムの特城的

芁件ずしお、クラむアントの問題ぞの察応を目的ずするこず、固定的ではなくフレキ

シブルであるこず、察等な関係性であるこず、成員の専門性を尊重するこずの4点を

挙げおいる。この新しい同僚性の抂念は、察象生埒の状況が倚様か぀䞍確定で、孊倖

のリ゜ヌスやアクタヌが関わる倖囜人生埒支揎にも有効ず思われる。しかし、医療に

おけるアクタヌは個々の職域が専門ずしお確立し、自埋しおいるのに察し、定時制の

「取り出し指導」は、孊習指導芁領による芏定や日本語指導の資栌条件もないなど、職

域ずしおの専門性が確立しおいない。定時制高校の特性や、「取り出し講垫」の立ち䜍

眮や雇甚䞊の制限などもふたえ、同僚性の構築に必芁な専門性や察等性の課題を改め

お怜蚎する必芁がある。

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2-3「専門性」ずしおの実践的知識

本皿では、定時制高校における「取り出し指導」の専門性を、実践における専門的な

力量、特に実践的知識ずいう芖点から怜蚎する。

䜐藀1996は、実践における教垫の専門的力量を二぀の偎面からずらえた。教授

孊や心理孊の原理や技術に熟達した「技術的熟達者」ず、耇雑な文脈における問題解決

の過皋で省察ず熟考により実践的芋識を発達させる「反省的実践家」である。埌者に関

わる「実践的知識」の特城に぀いお、䜐藀は次の5点に敎理しおいる。反省的思考を通

しお埗られる「熟考的知識」、特定の察象や内容、文脈に䟝存する「事䟋知識」、耇数の

領域の知識を統合する「総合的知識」、無意識で朜圚的な「暗黙知」、個人の経隓に基瀎

を眮いた「個人的知識」である。䜐藀はたた、こうした知識が厳密性や普遍性に乏しい

反面、具䜓的で機胜的、柔軟な知識ずなりうるこずを指摘した。

八田2009は、ショヌマンShulman 1986の研究から、ショヌマンの考えを、教

垫の知識が孊習過皋ず䞍可分であるこず、教垫特有の知識を成文化し共有する必芁が

あるこず、教垫の知識は粟遞し明確にするこずよりもそれが公的に開かれるこずを重

芖するこずの3点に芁玄した。八田によれば、ショヌマンの「知識基瀎」は、「内容に

関する知識」「䞀般的な教育方法に関する知識」「カリキュラムに関する知識」「PCKPedagogical Content Knowledge「内容に関する知識」ず「教育方法に関する知識」

の特別な混合物」「孊習者ずその特性に関する知識」「教育の文脈に関する知識」「教

育の目的、目暙、䟡倀、そしおそれらの哲孊的歎史的基盀に関する知識」からなる。

たた、八田2012は、グラントGrantの所論を玹介する䞭で、PCKは他者に問われ、

他者ずの協働の䞭で問いを明確にし、問いに答える胜力を圢成するこずや、PCK自

䜓も倉容するこずGrant 1991、授業に察する「問い」ず答えを繰り返す䞭で、「問い」

に察する理解を深め、意志決定の前提ずなる知識をメタ的に問うこずになるこず

Grant 1995に蚀及しおいる。

以䞊の先行研究から、「取り出し指導」の専門性を怜蚎する際には、技術的知識だけ

ではなく、どのような実践的知識をどのように埗るのか、が重芁になるずいえる。た

た、その知識はあるべき理想や基本ずしお蚭定されるのではなく、倉容しおいくもの

であり、他者ずの盞互䜜甚ず共有化によっお深たり、発展する可胜性があるこずが瀺

唆ずしお埗られた。したがっお本皿では、定時制高校ずいう文脈、「日本語指導」ずい

う芁玠、「取り出し講垫」の倚様な背景や雇甚䞊の制限をふたえた䞊で、より具䜓的に

「取り出し指導」における実践的知識の圢成ず共有に぀いお怜蚎する。

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2-4分析の芖点

先行研究から、「取り出し指導」をめぐる同僚性ず、それに関わる専門性を怜蚎する

ためのリサヌチ・ク゚スチョンを、以䞋3点に蚭定した。

Ⅰ専任教員ず「取り出し講垫」は互いの教育掻動に぀いおなぜ䞍干枉であるのか。

そのこずに「取り出し指導」の専門性はどのように関係するのか。

Ⅱ「取り出し指導」の専門性に぀いお、専任教員ず「取り出し講垫」自身はそれぞ

れどのようにずらえおいるのか。

Ⅲ「取り出し講垫」は、自分自身の実践的知識をどのように認識し、他の教員ず

共有しおいるのか。

本皿では、先行研究を参考に、「取り出し指導」の専門性を怜蚎するために、その 知識ずしお以䞋のように敎理した。技術的知識の偎面ずしおは、①䞀般的な教育原理

や方法に関する知識、②教科指導原孊玚の教科に関する知識・技胜、③日本語指導

に関する知識・技胜、④倖囜人生埒教育の知識である。実践的知識の偎面ずしおは、

⑀孊校の文脈担圓の孊校のシステム、成員の䟡倀芳や行動様匏などに関する知識、

⑥生埒の情報背景や日本語胜力、原孊玚での様子など、⑊䜕をどのように教えるべ

きかずいう刀断PCKにあたるずしおの知識、⑧自己の実践の省察による知識、で

ある。

技術的知識の①「䞀般的な教育原理や方法」ず②「教科指導」に関する知識は、倧孊で

教職課皋を履修する過皋で埗られ、その埌の経隓や研修によっお深められる知識であ

る。それに察しお、③「日本語指導」ず④「倖囜人生埒教育」に関する知識は、䞀般の教

科の教員免蚱取埗の過皋では埗られない。先に述べたように、「取り出し講垫」の雇甚

条件は、「圓該教科の教員免蚱」のみであるため、③ず④の技術的知識の有無は、「取

り出し指導」の「専門性」をずらえる際の重芁な芁玠ず思われる。

さらに重芁であるのは、実践的知識である。たず、⑀「孊校の文脈」、぀たり定時制

や個々の孊校の背景や特性などに関する知識や、⑥「生埒の情報」、すなわち背景や日

本語胜力、ニヌズも異なる個々の生埒の情報は、実践䞊䞍可欠である。そしお、⑊の

「䜕をどのように教えるべきかずいう刀断」は、カリキュラムもなく、䞍確定で状況䟝

存的な性栌が匷い、定時制の「取り出し指導」の専門性を怜蚎する重芁な芁玠ず思われ

る。たた、こうした䞭で⑧の「自己の実践の省察」も、実践的知識を発達させるために

必芁な芁玠ず考える。

本皿では、䞊蚘のリサヌチ・ク゚スチョンに基づいお、特に③④の「日本語指導」「倖

囜人生埒教育」に関する技術的知識ず、⑀の「孊校の文脈」⑊の「察象生埒に䜕をどのよ

うに教えるべきかずいう刀断」 を䞭心に実践的知識を怜蚎する。

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調査の方法ず調査察象

3-1調査の方法ず調査察象校

調査の方法は、半構造化面接調査を䞻ずし、質問玙調査ず参䞎芳察も䜵せお行った。

たず、調査察象校の「取り出し講垫」ず専任教員に察し、質問玙により属性や担圓校

の抂況を尋ねた。具䜓的には、(ⅰ)調査察象者に関するこず教員経隓や取埗免蚱、

日本語指導の資栌や倖囜人生埒教育の経隓の有無など、(ⅱ)勀務校の抂況勀務校の

倖囜人生埒の数や特城、日本語支揎察象ずなる授業、(ⅲ)調査察象者の指導内容指

導内容ず進め方、その決定の仕方、(ⅳ)他の教員ずの亀枉日本語支揎に関する連絡

䌚の有無や、専任教員や他の講垫ずの連携の有無や頻床、方法など、(Ⅾ)実践䞊の困難

「取り出し指導」を実践する䞊で困難に感じおいるこずなど、である。次に、半構造化

面接を行い、2-4で述べた分析の芖点から、語りを分析した。たた、蚱可された孊校

においおは授業堎面や職員宀などでの参䞎芳察を行い、語りず䜵せお実践の䞭の暗黙

知や教員同士の亀枉の様子をずらえるこずを詊みた。調査期間は2010幎4月から2013幎3月たでである。

本皿では、調査察象校ずしお、日本語支揎が必芁な倖囜人生埒が圚籍し、「取り出

し指導」「入り蟌み指導」も含むが行われおいる郜立定時制高校8校を取り䞊げる〔衚

-1〕。東京郜は、高校における日本語指導が必芁な生埒数、孊校数が、それぞれ325人党囜第2䜍、45校党囜第1䜍ず倚く2012幎床文郚科孊省調査による、「取り出

し指導」は1970幎代から実斜されおいる。䞭囜垰囜生埒の受け入れも他県に先駆けお

1980幎代から行われたが、近幎は䞭囜垰囜生埒の数が枛少し、代わっお倚様な背景

を持぀ニュヌカマヌの倖囜人生埒が急増しおいる。2011幎の講垫時数申請を䌎う「取

り出し指導」が蚭眮されおいるのは、党日制8校うち「特別枠校」は5校。内蚳は、圚

京倖囜人生埒受け入れ校2校、䞭囜等垰囜生埒受け入れ校3校。、定時制21校の蚈29校である7。

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倚蚀語倚文化─実践ず研究●vol.52013.11

è¡š -1 調査察象校

高校

日本語指導が

必芁な倖囜人

生埒関係す

る囜の傟向

「取り出し指導」入り蟌み指

導の蚭けられおいる孊幎・教

科

目暙・内容・カリキュラム等

講

åž«

数

連絡・連携 (ここでの「連絡䌚」は、専任教員を亀え

た、倖囜人生埒や取り出しに぀いお話し合う公的な䌚

の総称。)

Ⅰ26名倚囜籍

14ヶ囜

取り出し幎、囜語総合・

珟代文・日本史・䞖界史

内容は基本的に講垫に任される。囜語・地歎

は日本語を、垂販のテキストやオリゞナル教材

を甚いお教えるこずが倚い。地歎では教科の内

容理解を䞭心にする講垫もいる。理科は地孊

の内容。

7

幎床の情報亀換䌚がある。(2011幎より) 講垫同士

の連絡は蚘録ノヌトが蚭けられたが、スタむルや量な

どは講垫に任され、蚘録は必ずしも培底しない。専任

教員ずは担任を䞭心に随時生埒の情報を亀換する。

Ⅱ6名 䞭 囜 ・

フィリピン・韓囜

取り出し幎囜語総合・珟代

瀟䌚、幎囜語総合・䞖界史

日本語のテキストやオリゞナル教材を甚いた

日本語指導。2

取り出し講垫同士は、密に連絡を取り合い、ベテラン

講垫のリヌドに沿っお行う。専任教員ずも適宜連絡を

取る。

Ⅲ5名䞭囜倚

数

取り出し幎囜語総合・䞖界

史、幎囜語総合

日本語の習埗床によっお異なる。孊校生掻を

送るためや、教科の内容を理解するための指

導。初玚日本語テキストを甚いお指導する。

2

2

1

1

3

講垫間はメヌル等で頻繁に連絡を取り、初玚日本語

テキストをリレヌで教える堎合もある。専任が頻繁に

声をかけ、講垫も生埒の様子などをよく盞談する。

Ⅳ14名フィリピ

ン倚、䞭囜、タ

む、グァテマラ

取り出し幎珟代瀟䌚、幎

䞖界史、幎日本史、幎囜

語総合、・幎珟代文、幎

叀兞講読

囜語では日本語のテキストを䞭心にした日本

語指導。地歎は教科の内容を講垫がゆるやか

なカリキュラムを䜜っおオリゞナル教材で指導

する。

4

囜語は原孊玚の教科担圓ず随時話をする。地歎は担

圓間で内容の担圓領域を倧たかに決める。連絡䌚は

なし。

â…€ 15名倚囜籍

取り出し(幎囜語総合・珟代

瀟䌚、幎囜語総合・䞖界史、

幎珟代文)

囜語では生掻蚀語から孊習蚀語ぞの移行。地

歎・公民では、教科の内容を甚いた挢字・語圙

の習埗ず内容理解。

講垫同士はメモで連絡。連絡䌚はなし。

Ⅵ9名 䞭 囜 ・

フィリピン

取り出しでの個人指導(、

幎。囜語総合・珟代瀟䌚)。日本語テキストを甚いた日本語指導。

講垫は単独で刀断しお指導。原孊玚の教科の専任教

員ずは連携しない。

Ⅹ8名䞭囜ず少

数のフィリピン

入り蟌み幎生囜語、地理、

数孊、簿蚘、幎生囜語、䞖

界史、簿蚘、英語、理科、幎

生珟代瀟䌚・囜語衚珟

日本語胜力の向䞊。教科の孊習の補助。

講垫・教員間の連絡はそれほど密ではないが、講垫

はメヌル等を利甚するこずもある。教科ずの事前打ち

合わせは、䞀教科を陀いおなし。連絡䌚は孊期に

回ある。

Ⅷ 1名䞭囜 入り蟌み(幎工業技術基瀎) 実習の安党確保。実習内容理解ず参加。 原孊玚の教科の専任教員ずの確認。連絡䌚はなし。

デヌタは2011幎時点のものである。

筆者は察象校のうち、倖囜人生埒数が急増したⅠ校においお、2009幎4月から1幎間、

短期任甚の非垞勀講垫ずしお「取り出し指導」を担圓し、2010幎床以降2013幎3月たで、

授業の補助や参䞎芳察者ずしお、継続的にフィヌルドワヌクを行った。

3-2調査察象の「取り出し講垫」

調査察象の「取り出し講垫」17名の属性を〔衚-2〕に瀺す。特定を避けるため、高校

名は明蚘しおいない。たた、耇数の高校を兌任しおいる講垫もいる。

Page 9: Issues of Specialty and Collegiality of JSL Pull-Out

80

è¡š -2 定時制の「取り出し講垫」の属性

取埗教員免蚱の教科・䜿甚可胜

な倖囜語幎霢・性別

日本語指導の資栌等あり

講垫H 瀟䌚䞭囜語40代男

教員歎15幎。倧孊院で䞭囜関係専攻。珟圚研究者ずしお倧孊等でも教える。党日制定時制ずもに耇数校経隓。珟任校幎目。

講垫I 瀟䌚䞭囜語30代女

教員歎幎。倧孊院で䞭囜関係専攻。珟圚䞭囜関係の研究者。高校も定時制も珟任校のみ経隓。珟任校幎目。

講垫J 囜語なし50代男

教員歎24幎。倜間䞭孊や高校党日制・定時制で経隓倚数。珟任校幎目。

講垫K 囜語䞭囜40代女

教員経隓15幎。党日制・定時制取り出し指導含む10校経隓。珟任校経隓幎䞍明。

講垫C 瀟䌚䞭囜語40代女

教員経隓14幎。420時間研修終了。䞭囜留孊経隓あり。党日制・倜間䞭孊を含む10校経隓。珟任校幎目。

講垫L 瀟䌚英語50代女

教員経隓30幎。党日制を䞭心に定時制・通信制も倚数。珟任校幎目。

講垫M 瀟䌚䞭囜語60代女

教員経隓30幎。䞭囜垰囜生埒受け入れ校・定時制を含む校経隓。珟任校4幎目。

講垫N 囜語英語・䞭囜語30代女

教員経隓10幎。党日制・定時制等10校経隓。珟任校幎目。

講垫E 囜語英語20代女

教員経隓幎。倧孊院圚籍。日本語教育専攻。地域や倧孊留孊生察象の日本語教授経隓あり。高校も定時制も珟任校が初めお。海倖の日本語教垫志望。珟任校幎目。

講垫O 理科英語60代女

䌁業で理系の研究者海倖赎任あり。退職埌から䞭孊で教科の講垫経隓、高校も定時制も珟任校が初めお。珟任校幎目。

講垫F 囜語英語20代女

教員経隓幎。倧孊院で日本語教育専攻。日本語教育胜力詊隓合栌。高校も定時制も珟任校が初めお。小孊校教員志望。珟任校幎目。

講垫P 囜語なし60代女

教員経隓24幎。短歌や叀兞を埗意ずする。党日制で教科の講垫経隓は20幎以䞊、10校以䞊経隓。定時制も日本語指導も珟任校が初めお。珟任校幎目。

講垫G 囜語英語50代女

教員経隓22幎。日本語胜力怜定詊隓合栌。日本語孊校・NPO等での日本語指導経隓あり。珟任校幎目。

講垫Q 囜語英語20代男

教員経隓幎。珟圚倧孊院圚孊䞭。珟任校で教育瀟䌚孊のフィヌルド研究䞭。郚掻なども芋る。高校・定時制ずもに珟任校が初めお。珟任校幎目。

珟圚瀟䌚科の教員免蚱は、䞭孊校では「瀟䌚」、高校では「地理歎史」ず「公民」に分かれおいるが、ここでは「瀟䌚」ず衚瀺した。

定

時

制

で

の

指

導

経

鹓

少



幎

以

例

講垫A 瀟䌚・商業・䞭囜語䞭囜語40代女

教員経隓25幎。自らが䞭囜匕き揚げ子女。日本語教育胜力怜定詊隓合栌。高校では党日制特に䞭囜垰囜生埒枠蚭眮校・定時制等14校経隓。日本語孊校や専門孊校での経隓も持぀。通蚳や個人䞭囜語指導も行う。珟任校幎目。

日本語指導の資栌等なし

定

時

制

で

の

指

導

経

鹓

倚



幎

以

侊

講垫B 囜語英語・䞭囜語50代女

教員経隓27幎。日本語教育胜力怜定詊隓合栌。倧孊で教育孊等を教える。党日制・定時制など10校経隓。定時制での指導は10幎以䞊。珟任校幎目。

教垫経隓幎䞍明。日本語教育胜力怜定詊隓合栌。420時間修了。海倖での教授経隓あり。党日制ず定時制校経隓。珟任校幎目。

講垫D 囜語䞭囜語(40代女)

講垫D・Gは2010幎3月時点、それ以倖は2011幎のデヌタ。

〔衚‐2〕では、2-4で述べた専門性の芁玠から、技術的偎面ずしお日本語指導の知識、

実践的偎面ずしお文脈ずしおの定時制高校での指導経隓、ずいう二぀の偎面から分類

した。

日本語指導の知識の基準ずしおの「資栌」に぀いおは、囜家資栌がないため、本皿で

は䞀般的に「有資栌」ずしお扱われる以䞋3点のいずれかを資栌ずみなした。①倧孊で

の日本語教育専攻・修了、②「日本語教育胜力怜定詊隓」財団法人日本囜際教育支揎

協䌚・独立行政法人囜際亀流基金䞻催合栌、③「日本語教垫逊成講座」420時間の修

了である。〔衚-2〕からは、「取り出し講垫」が倚様な背景を持぀こず、䞭囜語や英語を

䞻に倖囜語に堪胜な者が倚いこず、必ずしも日本語指導の有資栌者ではないこずがわ

かる。本調査においおは日本語指導の資栌を有しない講垫が倚い。その䞀方で、日本

語に関する資栌はないが、定時制の「取り出し指導」に豊富な経隓をもち、耇数校にわ

たっお10幎以䞊の経隓をも぀講垫もいる。講垫の䞭には、専任教員や他の講垫ず緩

やかなネットワヌクを取り結び、「取り出し講垫」の人材や雇甚などに぀いお情報を亀

換する関係もみられる。

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倚蚀語倚文化─実践ず研究●vol.52013.11

さらに、「取り出し講垫」の「取り出し指導」に察する考えず指導内容を具䜓的に瀺す

ため、倖囜人生埒圚籍数ず「取り出し講垫」数が倚いⅠ高校を䟋に挙げる〔衚-3〕。

è¡š -3 Ⅰ高校の「取り出し講垫」の指導に察する考えず授業内容

講垫 教員免蚱取り出し指導で重芁に

思うこず授業内容に぀いお聞き取り・質問玙自由蚘述より

A瀟䌚商業䞭囜語

教科や生掻に関わる広範な知識

基本的には担圓教科を䞭心に、日本史の授業は、日本地理や時期に応じお日本文化を教えるなど、瀟䌚を総合的に教えるずいう感じ。自分が芚えた経隓を生かしお、県の芚え方を教えたり、歎史倩皇制や埳川幕府などを党䜓の䞭でメリハリを付けお教える。毎幎テヌマを倉える。

E 囜語ニヌズに応じた日本語胜力

胜力やニヌズが異なるクラスでは、芁望を聞いお、公文匏のように、挢字や文法、日本語胜力に応じたプリントをさせる。䜕皮類かの日本語のプリントを持っおいっお、生埒のその時の必芁や意欲で決めさせる。

F 囜語生きるために情報を刀断しお凊理する胜力

1孊期に情報を埗る胜力を぀けるために、新聞蚘事をレベル別に日本語孊習甚に教材化しお䜿甚したが、あたりモチベヌションが䞊がらなかった。2孊期は生埒のニヌズを改めお聞いお、個人指導になった。぀のレベル別に、「囜語衚珟」のテキストを日本語教材化したもの、初玚、䞭玚の文章読解䞭心の教材を䜿っお教える。

H 瀟䌚系統的な日本語胜力・生埒の居堎所

察象の生埒のレベルにあわせお、日本語教材をコピヌしお授業を行っおいる。幎間を通じお飜きないように、3皮類皋床のテキストを䜿うようにしおいる。たた、生埒からの「N2の文法がやりたい」「挢字が勉匷したい」ずいう個別の芁望に応えおいる。初玚レベルの生埒には『みんなの日本語』を䜿甚する。

J 囜語日本語を䜿う機䌚・コミュニケヌション

他の取り出し担圓講垫がやる内容をふたえお、補完すべきず思う内容を行っおいる。日本での生掻に圹立぀もの芪族の呌び方や東京の駅名など生掻でよく䜿う挢字などをその時々で取り䞊げる。

O 理科思考力や教科に察する䞀定の知識

理科総合Bを地孊の分野で教えおいる。芳察の代わりに理科ネットを䜿甚したり、テキストを甚いお説明したり、問答によっお考えさせるなど詊行錯誀をしおいる。理科甚語は日本独自のものがあり、その䞀端が日垞䌚話でも出おくるため、意識しお教える。

P 囜語 系統的な日本語胜力生埒の日本語の胜力に応じお、日本語胜力怜定受隓に応じたテキスト旧2玚か3玚盞圓を甚いお、テキストの流れにしたがっお授業をする。

〔衚-3〕からは、〔衚-2〕の属性ず䜵せお、「取り出し講垫」がそれぞれ倚様な背景や経

隓を持ち、異なる指導芳ずスタむルをもっお実践を行っおいるこずがうかがえる。

調査の結果

4-1盞互䞍干枉の芁因ずしおの「取り出し指導」の「専門性」

専任教員ず「取り出し講垫」の盞互䞍亀枉に぀いお、〔衚-1〕のように、倚くの孊校は

連絡䌚等を蚭けおおらず、「取り出し講垫」は孊校や生埒に関する情報を埗にくいこず

がうかがえる。たた、「取り出し講垫」ず専任教員、「取り出し講垫」同士が、指導内容

に぀いお十分な怜蚎をしおいる孊校は少ない。倚くの「取り出し指導」、特に囜語にお

いおは、基本的に教科の内容ず離れお、日本語の知識や技胜を教えられるこずが倚く、

指導内容に぀いお意芋を亀換するこずは少ない。専任教員の「取り出し講垫」に察する

䞍干枉の理由ずしお、たず講垫の雇甚䞊の制限が挙げられる。講垫は授業時間しか報

酬が保障されない䞊に、耇数の孊校を掛け持ちしおいる堎合もあり、専任教員は授業

時間倖に講垫を拘束するこずが憚られる。たた、講垫控宀や「取り出し指導」の教宀が、

職員宀や原孊玚の教宀から離れおおり、出勀から退勀たでほずんど専任教員ず顔も合

わせない、ずいった事䟋も少なくない。加えお、もずもず専任教員同士でも「他人の

指導には盞互䞍干枉」ずいう傟向があり、さらに講垫に察しおは、「倜間定時制、倖囜

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人生埒察応ずいう難しい条件で来おくれたのに、指導内容にたで口を出すこずで、や

りにくい思いをさせおはいけない」ずいう遠慮を抱くのである。

しかし、「取り出し指導」の盞互䞍干枉の理由には、この他に「取り出し指導」の「専

門性」に察するずらえ方が䜜甚しおいるず考えられる。以䞋のI高校専任教員の蚀葉に

はそのこずがうかがえる。

 「やっぱりね、わからないですよ。僕は教科の教員だから。倖囜人生埒の指導

ずか、日本語のこずは。」「結局、講垫の先生に䞞投げになっおしたっおたすね。

申し蚳ないず思うんですけど。自分も日本語指導のこずはわからないですから。」

ずもにⅠ高校専任教員

こうした蚀葉には、専任教員が取り出し指導を「日本語指導の専門領域」ずしおずら

え、「教科の教員」である自分は専門倖であるずずらえおいるこずがわかる。

しかし、「取り出し講垫」は、こうした専任教員の専門性意識による「隔お」に戞惑う。

先に述べたように、「取り出し講垫」は、教科の教員免蚱のみを条件に採甚される。講

垫の䞭には、日本語指導に関する知識や経隓を持たずに倖囜人生埒を担圓するこずに

なっお戞惑う者が少なくないが、同じ教科の専任教員からは「教科日本語指導」ずい

う境界で隔おられお孀立する。䞀方で、倧孊等で日本語教育を専攻した講垫もたた、

定時制ずいう新たな文脈で、これたで孊習・経隓しおきたこずが通じないこずに戞惑

い、途方に暮れるこずがある。以䞋に講垫Fの語りを瀺す。講垫Fは、倧孊院で日本

語教育を専攻し、卒業埌に初めお定時制高校で実践を行った。

 「最初専任の先生に、こんなに違うレベルの生埒をどうやっお教えおいるのか

聞こうず思ったんですけど、教科は違っおも。でも、『いやいや、先生の方が専

門ですから』っお。」(講垫F2013.1.11)

しかし、講垫Fを「専門家」ずしお隔おるのは、専任教員だけではなかった。講垫Fは、

定時制での指導経隓が長い他の「取り出し講垫」に、授業に぀いお盞談しようずしたが

できなかったずいう。

 「日本語教育を『専門』にやっおきたず芋なされるこずの壁を感じたす。私、

自分ではペむペむだず思っおるんですよ。ほんず、先生の話ず、ちょっず倖から

芋せおもらったのでは、確かに、専門的、カギカッコ付き、なんですけど、でも、

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83

倚蚀語倚文化─実践ず研究●vol.52013.11

じゃあどうしお授業を回しおいくのかは、わからないんで、教えおください、ず、

思ったんですが、『いや、倧孊でやっおきたんでしょ』っお。䞭略でも、逆の

立堎だったら、ここはただ想像なんですけど、自分が䜓隓だけで、手探りだけで

十䜕幎やっお来た方が、名前の぀いたずころで勉匷しおきた人に、自分の知識を、

教えおください、っおいわれおも、なんか批評される気がしちゃうのかな、 嫌

かな、っお。私の想像でも、嫌かな、っおわかるんで、二床聞きできない 、『教

えおください』『いやいや』『ああ、そうですか 』っお諊める。」「他の講垫

の先生が自己玹介で『F先生は、倧孊で勉匷しおきたから、あれですけど、私

なんかは 』っおいう蚀いぶりを聞くず、聞きにくくなりたすね。私からするず、

そういう先生達の方が『正統掟』なんですけど 」講垫F2013.1.11

講垫Fの語りからは、「取り出し講垫」が「日本語指導の専門」ず芋なされるこずに

よっお二重に隔おられるこずがうかがえる。専任教員からは、䞀般教科ず異なる「専

門性」があるず隔おられ、さらに日本語指導の資栌の有無により、「取り出し講垫」間

でも隔おが意識されおいる。講垫Fは、日本語教育に関する技術的知識を倧孊で習埗

したが、定時制ずいう新たな文脈の䞭で、「䜕をどのように教えるべきかずいう刀断」

を暡玢し、担圓校の文脈における実践的知識を他の講垫から埗たいず考える。しかし、

普段顔を合わせない講垫同士は、実践的知識、特に経隓から埗た「䜕をどのように教

えるべきかずいう刀断」をやりずりする機䌚がなく、その有甚性を共有したり、盞互

に力量を認蚌したりするこずがない。こうした状況の䞭で、講垫間では、資栌的な「専

門性」によっお差を感じたり、遠慮し合ったりする様子がうかがえる。

そもそも高校の教員は、小・䞭孊校の教員ず比べお「教科の専門性」に察する意識が

高いこずが指摘されおいる8。この教科の専門性意識は、「教科゚ゎ」や「科目゚ゎ」ず

いったこずばに衚されるように、共同しお教育目暙を達成する際の疎倖芁因ずなる面

も指摘されおきた山本1990 新井1998。こうした教科ごずの隔おの䞊に、「取り出

し指導」は、䞀般の教科教育ずは異なる補償的な日本語指導ずしお隔おられ、さらに

講垫間では、日本語教育の資栌的な専門性による隔おの意識がみられる。このように、

「取り出し指導」の「専門性」をめぐっおは、「隔お」の倚局性がみられる。

以䞊のように、「取り出し指導」をめぐる教員の盞互䞍干枉には、「取り出し指導」の

「専門性」のずらえ方が倧きく関わっおいる。「取り出し指導」は、そもそもカリキュラ

ムによる明確な䜍眮づけがなく、資栌認定制床もない。「日本語指導」ずしお、教科ず

は異なるずいう䜍眮づけをされ、「教科の専門性」の意識が匷い専任教員は䞍干枉にな

る傟向がある。講垫同士でも、互いの実践的知識を共有する機䌚がないため、公に付

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䞎された技術的な資栌のみが意識され、遠慮し合うずいう実態が明らかになった。

4-2「取り出し講垫」自身がずらえる「取り出し指導」の専門性

3-2で瀺したように、「取り出し講垫」は、日本語指導に関する資栌、定時制での指

導経隓の有無を含め、個別の異なる背景や経隓を持぀。この「取り出し講垫」自身は、「取

り出し指導」の専門性、特に実践的知識に぀いおどのようにずらえおいるのか。〔衚

-2〕の分類にしたがっお、講垫の語りから怜蚎する。

1新たな課題による実践的知識の蓄積 日本語指導資栌あり、定時制経隓あり

講垫Aは、高校卒業埌、倧孊圚孊の途䞭に䞭囜垰囜子女ずしお来日した。蚀語教育

の専門家や定時制高校の教員から、様々な方法で日本語を教えおもらった孊習者ずし

おの䜓隓、通蚳や高校での教科教育瀟䌚・商業、䞭囜語や日本語指導の講垫経隓、

特に䞭囜等垰囜生埒枠のある高校での、長幎にわたる豊富な指導経隓を持っおいる。

 「Ⅰ高校はいろんな囜から来おお、挢字圏じゃない生埒が7、8人もいる。そ

れたでは、基本的にみんな䞭囜人だったから、内容教えるずきも、ちょっず挢字

を曞けば分かるのね。でも、Ⅰ高校では挢字圏じゃない生埒が耇数いお、それ

で初めお挢字を教える難しさに盎面しお。急遜挢字の教え方の本ずか、アメリカ

人向けの本ずか買ったり、出版瀟に行っお調べたり、 挢字は、圢ず連想でやる

ようになっおうたくいくようになった。」「今たでの生埒は生掻かかっおるから

䞀生懞呜だったけど、Ⅰ高校ではそうでもない子がいるし。生埒は䞀人じゃ

ないから、その子の堎合に必芁なこずを合わせられない。でも、やっぱり、その

子に必芁なこず、職堎で䜿うこずずか、趣味のこずずか。ずにかくその子の生掻

に関わるこず入れたり。やはり、人間は興味があれば䞀生懞呜じゃないですか。

でも、䞀人乗らないず雰囲気壊れるから、クむズを入れお、20問の扉ずいうク

むズを入れお、20問取れたら、ずか、蚀葉で通じおも挢字じゃどうか、ずか。」講

åž«A2012.1.9

講垫Aの語りからは、Ⅰ高校ずいう新しい文脈で新たな課題に盎面するものの、詊

行錯誀をしお、生埒が理解しやすく興味を持っお取り組めるような、実践的知識を埗

おいく様子がうかがえる。講垫Aはこれたでの豊富な経隓から、孊習意欲のない生埒

や孊力やニヌズの異なる生埒に察しお、指導内容を倉えたり工倫したりするこずに慣

れおおり、挢字指導での䟋に芋られるように、自分が足りない知識やスキルをどのよ

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85

倚蚀語倚文化─実践ず研究●vol.52013.11

うに埗るかも心埗おいる。講垫Aの事䟋からは、これたでの実践的知識を新たな察象

に応甚し、「察象生埒に䜕をどのように教えるべきかずいう刀断」を新たに積み䞊げお

いく様子がうかがえる。

2新たな文脈による「専門性」の揺れ 日本語指導資栌あり、定時制経隓なし

次に、倧孊や倧孊院で日本語教育を専攻し、あるいは420時間の講習を受け、日本

語指導ず倖囜人教育の技術的知識を持っおいるが、定時制の経隓は初めおだったずい

う講垫Cず講垫Eの語りを取り䞊げる。講垫Cず講垫Eは、䞭孊校や倧孊などで日本語

指導の経隓を持っおいたが、定時制高校では、これたで孊習した技術的知識や経隓が

通甚しなかった。

 「䞭孊校の取り出し授業は、きちんず䞀人䞀人の孊習蚈画が立おられおいた。

そうじゃないず、教育委員䌚が認めない。ずころが珟任校はそういうのが䞀切な

い。䜕を教えるのが日本語指導なのか、それずも授業が理解できるようにするの

か、すごく難しい。䞭略途䞭で日本語指導ず思うこずをやめたんです。だっお

無理です。今の状況じゃ。420時間の講座を受けたけど、それはただ単に教え方、

なんです。ほんずにい぀も思う。䜕をもっお、日本語教育なのかっお。」講垫C2012.4.1

 「倧孊院の先生に盞談したけど、どうやっおいいかわからない。(先生の専門が)幎少者なので。提案されたのが、レベルず目的がバラバラなら、チュヌタヌみた

いに目的を曞かせたら、っおいうけど、そんなの定時制の生埒は曞かない。倧

孊の留孊生は就職がメむンで、日本人がどう考えおいるか知りたい、仕事に䜿え

るずか、はっきりしおる。高校は、目的がはっきりしおる生埒がいない。なぜ自

分が日本語を勉匷しに来おいるのか、わかっおいない。䞭略半幎すっごい悩ん

で、やる気なくしお、萜ち蟌んで、回埩した。母芪の圱響かな。䞭略定時制は

デリケヌトだなっお。䜕ずなく、雰囲気。初察面の先生に察しお、譊戒心もある。

たずは関係䜜っお、聞き圹になる。日本に暮らしおいる問題ずか。倧孊で教えた

ずきは、おしゃべりはないんだけど、ここだずおしゃべりしすぎるのも授業になっ

おるのかな。それに、先生ずしゃべっおいるから楜しいから、やっおみようかな、っ

おいうのもいいのかなっお。その雰囲気察しお『じゃあ、䞀枚だけやろうか』っお。」

講垫E2011.7.24

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講垫Cず講垫Eの語りからは、定時制高校での指導の実際に盎面し、「日本語指導」

では䜕を教えるのか、䜕をもっお日本語教育かずいう根本が問われ、これたでの技術

的知識ず経隓に基づいた、「専門性」が揺れおいるこずがわかる。講垫Eは、悩んだ末

に生埒の芳察や芋取りをしお詊行錯誀し、これたでの授業䞭の「おしゃべり」の芋方を

倉えるなど、自分の指導芳を倉えおいく様子がうかがえる。ただし、講垫Eが自分な

りの実践的知識を埗おいく過皋においお、専任教員や講垫同士など「同僚」の存圚はな

い。

3技術的知識ぞのアプロヌチず限界 日本語指導資栌なし、定時制経隓あり

次に、日本語教育の資栌を持たない、講垫Hず講垫Nを取り䞊げる。講垫Hず講垫

Nは、ずもに10幎以䞊の講垫経隓を持ち、党日制も含めお耇数の高校を経隓しおいる。

 「うしろめたさ、のようなものがやり始めた圓初はあったんですけど、『みんな

の日本語』の指導曞を結構読んだりしお、ちょっず独孊ずいうか、本を䜕冊か読

んだり教えるずいう䞊で必芁なこずを勉匷しお、初玚の方は教えられるず思いた

す。」講垫H2012.9.5「うヌん。初玚終わるず難しいね。正盎、どうしたら

いいか、わかんないです。」講垫H2011.12.15

 「珟代文ずか叀文ずかいっおも、結局孊校は日本語の怜定詊隓を受けさせる

方向なんです。䞭略䞀人ず぀、その子に合わせたテキストを䜿うんですけど、

垂販のずか、コピヌしちゃう。 本圓はダメなんですけど。䞭略倧孊の日本語

の研修に行ったんですけど、『ここが䜕詞だからこうで、なんでこういう問題は

間違ったのか 』っお。そこたで考えお教えおいる堎合じゃない。ずりあえず孊

校、やめないように、続けさせお 。だから文法はこうだから、ああだから、ず

いう研修は 。䞭略倧孊ずか日本語孊校に来おいる人っお、ある皋床勉匷した

くお来おいるでしょ。やっぱ、定時制ずかに来おいる生埒は、日本語孊校に来お

いるレベルじゃないですよ。」講垫N2011.12.2

講垫Hは、「うしろめたさ」から初玚の指導法を独孊で修埗したずいう自負があるも

のの、初玚の段階を終えおモチベヌションをなくした定時制の生埒をどう指導したら

よいかわからない。講垫Nは、孊校の文脈や定時制生埒の実態から、十分な授業デザ

むンができず、垂販のテキストの枠に頌らざるを埗ないこずにうしろめたさを感じ、

倧孊の研修に自䞻参加する。しかし、文法などの䞀般的な技術的知識だけでは、講垫

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倚蚀語倚文化─実践ず研究●vol.52013.11

Nが求めおいたような、孊校の文脈に応じおどのように実践するか、ずいう課題ぞの

有効なアプロヌチ法は埗られない。二人の講垫の語りからは、日本語教育に関する孊

習の機䌚を「正芏に」持たなかった講垫が、技術的な専門的知識の必芁を感じお個人的

に習埗しようずするが、行き詰たる様子がわかる。

4「玠人」意識から閉じられた実践的知識ぞ 日本語教育資栌なし、定時制経隓なし

最埌に、日本語指導も定時制での指導も初めであった講垫Pを取り䞊げる。講垫Pは、

叀兞や和歌など囜文孊の造詣が深く、高校での講垫経隓も長いが、定時制、しかも「取

り出し指導」は初めおで、自分の専門である日本文孊の知識や教授経隓が生かせない

こずを残念に思うずずもに、䞍安を感じおいた。

 「来た時、日本語っおいうのは、党く玠人なんですよ。今は、テキスト䜿っお。

日本語胜力詊隓の2玚、N3の察策しおたす。前の講垫の先生にレベル教えお

もらっお。」講垫P2011.10.3 「以前先生筆者が日本語教育胜力詊隓に合栌なさっおいるこずを䌺いたした

ので、私もテキストを賌入したのですが、たず、倖来語の倚さにショックを受

け、この叀い頭では芚えられないず思い、この倏断念臎したした。日本語を教え

るずいうこずに぀いお、自分の胜力䞍足も感じたすが、十分に予習さえしおいれ

ば資栌はなくずも仕事はできるず思い、粟いっぱい努力しおいたす。」講垫P2011.10.5

講垫Pは、着任以来「私は日本語教育は玠人だから」ずいう蚀葉を繰り返した。講

åž«Pは、日本語教育に関する資栌や経隓のないこずに匕け目を感じながらも、前任者

に聞いたり、垂販のテキスト賌入・掻甚したりしお授業に臚んだ。垂販のテキストの

掻甚によっお授業が軌道に乗っおいくず感じる䞭で、講垫Pは、十分な予習により実

践は可胜、ずいう考えを確立しおいく。しかし、講垫Pは他の講垫ず連携する必芁は

なく、指導内容は指瀺されるものではないず考えおいる。予習実践の詊行錯誀から

生たれた「䜕をどのように教えるべきかずいう刀断」は、他の講垫ずは共有されおいな

い。

以䞊の語りから、たず、日本語教育に関する資栌を持぀講垫でも、新たな文脈ず察

象に自分のこれたで埗た「専門性」が揺れるこず、特に定時制での経隓が少ない講垫は、

これたでの技術的知識が通甚せず、戞惑うこずがうかがえた。たた、日本語教育の資

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栌がない講垫は、技術的な専門性がないこずに埌ろめたさを感じ、技術的知識を自䞻

的に埗ようずするが、孊校の文脈に応じた実践のための知識を埗るこずは難しい。調

査からは、いずれの堎合も実践的知識が重芁なこずが明らかになったが、それぞれの

講垫は自分の実践的知識を共有しない傟向が明らかになった。

4-3「取り出し講垫」の実践的知識

次に、4-2で重芁性が浮かび䞊がった「取り出し指導」の実践的知識に぀いお、より

具䜓的にみおいく。特に、「䜕をどのように教えるべきかずいう刀断」を、講垫がどの

ように圢成し、自分自身でずらえおいるのかに぀いお怜蚎を深める。たた、そうした

実践的知識を、専任教員や他の講垫ず共有するこずに぀いおどのように考えおいるの

かも䜵せお怜蚎する。以䞋にⅠ高校のA、F、Hの3人の講垫を事䟋に取り䞊げる。

1豊富な䜓隓による「総合的知識」の圢成 講垫Aの事䟋

4-2で述べたように、講垫Aは、日本語教育の資栌を有し、通蚳や教科教育、倖囜

人生埒、特に䞭囜垰囜生埒の教育に長幎携わっおきた。その経隓から、「取り出し指導」

は教科内容を䞭心に、瀟䌚で必芁ずなるこずがらを考慮しお教えるこず、語孊ずしお

の日本語や系統性にこだわるよりも、内容をそれぞれの講垫の裁量で柔軟にやる方が、

教員にも生埒によいず考えおいる。

 「高校の取り出しは、日本語孊校じゃないんだから。その子の、いろんな日本

のこず、必芁だず思うこずを教える。」「内容を胜力がないからっお教えないで

いるのはダメ。無理やりでも぀めこんであげないず。その人は、芋たこずあるの

ずないのずでは違うわけ。自分の経隓からそう思う。」「取り出しも、ある意味で

は単に知識だけじゃない。安心感、どっかで䞎えおあげないず。就職問題ずか盞

談できるような。」「䞀般の授業の堎合、合わない人もいるじゃない。100合う

こずはあり埗ない。進床や内容を講垫同士で統䞀・調敎するこずは冗談じゃな

い。このペヌゞ、次のペヌゞずか。」「日本語孊校みたいに積み䞊げるのは無理。

教えるレベルがバラバラで䌑みが倚いから。」「教える蚀葉は重なっおもいいん

ですよ。その生埒にずっおは、その蚀葉を、いろんな教科や蚀い方で教わるから。

同じ教材䜿う必芁はないんです。人間の生掻っおそうでしょう。」「連携は、生埒

がどんな問題を持っおいるかずかは必芁だず思うけど、䞭身の調敎は必芁ない。

その先生の、埗意分野の方が教えやすいず思うんですよ。その方が生埒にもいい。

人間自信ないず、生埒に教えるのにも自信がない。」講垫A2012.1.9

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倚蚀語倚文化─実践ず研究●vol.52013.11

講垫Aの「䜕をどのように教えるべきかずいう刀断」の根拠は、「自分の経隓」であり、

それが有甚であるずいう確信を持っおいる。講垫Aは、䞀般的に日本語孊校で教える

ような文法や語圙の指導の順序にこだわるよりも、それぞれの講垫の裁量でやるこず

を重芖する。たた、こずばの習埗、日本瀟䌚ぞの適応、心理的なケア、進路指導、な

ど様々な偎面から日本語指導をずらえおいる点で、講垫Aは、「総合的知識」を圢成し

おいるずいえる。しかし、他の講垫も自分ず同様に、個人の経隓から専門性を発達さ

せおいるはずで、それを尊重するのがよいず考えるため、内容の連携は必芁ないず考

える。たた、講垫Aは、「䞭囜等垰囜者受け入れの孊校のこず日本語指導や進路指導、

校内倖の連携などのノりハりが、党然定時制で生かされない」こずをもどかしく思っ

おいるが、他の教員に䌝えるこずはしない。「講垫だもの。講垫が蚀うのは違うわ。

専任が蚀うならわかるけど。こうしなさいっお、私だっお同じ講垫から蚀われるず、

倉な気がしたすよ」講垫A2012.10.20ず、講垫ずいう立堎から遠慮をする。ただし、

講垫AはⅠ高校の話し合いや研修などには積極的に参加・協力する。

2生埒からの反応による「熟考的知識」の圢成 講垫Fの事䟋

講垫Fは、倧孊ず倧孊院で日本語教育を専攻したものの、Ⅰ高校や察象者の状況は、

自分が想定しおいなかったものであった。講垫Fはこれたでに孊習したこずや考えお

きたこずに工倫を加えお実践化するが、生埒の反応から、実態やニヌズに合わないず

感じるず、立お盎しを図る。

 「最初に、前任の先生の授業芋せおいただいお、それは日本語孊校みたいな授

業で、それは自分が今たで勉匷しおきたむメヌゞず近くお、なるほどこういう颚

にやるのか、っお思っおたら、私が最初に担圓したのが、すごいレベル差が激し

い、生埒5人の名前を挙げる、っおいうクラスだったんで、そういう颚にでき

なかったんですね。」「Ⅰ高校に孊習意欲がなく、萜ち぀かない生埒がいるこず

に぀いお同時に、私、小孊校でボランティアもしおたんですけど、小孊校1幎生の教宀っお、こうわヌっ、ずいうゞェスチャヌなっちゃう子もいお、慣れお

るっおいうか、座らない子もいるよね、っおいう。どうやっお座らせようかなっ

お。 小孊校の実践では自分で、生埒の顔ずか、食い぀きずか 今日の自

分の説明の仕方を再生しお 」「䞀孊期は、時事問題やっお、NHKのニュヌスを、

初玚ず䞊玚に分けお曞き盎しお でも、どうにもモチベヌションがあがんなくお。

䞭略生埒のうち二人は内容がわかんなくお。䞀人は、英語で芋るから、

いいよ、っお。䞭略私は、倧孊で、緊急地震速報ずかわかんなくお困る人の話

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ずかすごい聞いおたんで、きっず、ニュヌス、受け取る力を付けなければ、ず勝

手に盛り䞊がっお、やったんですけど。ニヌズを聞いおなかったんですね。䞭略

倏䌑みずっず悩んで、このたた続けおも身にならないな、で、2孊期アンケヌト

取ったんですよ。䞭略じゃあ、みんなそれぞれで足りないこずを補匷しよう

か、ず蚀ったら、それがいい、っお。」「圓初は2皮類䜜り分けおたんですよ、そ

うするず、その幎は、完党に個別指導になったかな 結局、5人で、3、4皮類。」講

åž«Fは、教科「囜語総合」の内容、日本語胜力怜定2玚レベルの文章読解、『みんな

の日本語』初玚の読解ず文法、ずいったように、生埒の日本語胜力やニヌズに応

じお指導内容を分けお察応した。「ニュヌスのこずは、挫折ず蚀えば挫折。䞭略

週に2回しか䌚わないし、話し蟌むこずができない。そうですね、『必芁性』を理

解させるこずができなかったですね。」「結局、授業倖の個別補講ず倉わらないよ

うな個別指導になっおしたったこずに眪悪感がありたす。䞭略私も含めお、個

別で「ぶ぀切り」の指導を行うこずで、生埒が『取り出し』をそういうものずしお認

識しおしたう、それが生埒にずっおよいのか。私䜕やっおるんだろう、っお。」講

åž«F2013.1.11

講垫Fは、倧孊での孊習や理想ず珟実ずのギャップに悩みながら、実践の省察ず詊

行錯誀を繰り返しおいる。その手がかりになっおいるのは、生埒の反応である。ボラ

ンティアの小孊校で埗た経隓的知識は、Ⅰ高校での刀断・察応に぀ながっおおり、こ

こには実践的知識の䞀般化や応甚がうかがえる。小孊校でもⅠ高校でも、専任教員か

らの感謝や励たしの蚀葉は動機付けになるが、指導に察する盎接のコメントはなく、

あくたで手がかりは生埒からのフィヌドバックである。䟋えば、講垫Fは、生埒に曞

くコメントでも、絵文字を入れお携垯メヌル颚にくだけお曞いたり、意識的に先生ら

しい蚀葉遣いや文字を䜿ったりしお、生埒のタむプによっお䜿い分けるこずで、やる

気の出させ方を調敎するなどの工倫をしおいる。こうした刀断も「どこたで参考にな

るか分らない。有甚性の実感はない。」ずいう。講垫Fはあくたで生埒の反応を根拠

ずした「事䟋知識」「個人的知識」であるため、䞀般化するこずは自信がない。

たた、講垫Fはむンタビュヌの䞭で、時事問題の実践の倱敗芁因に぀いお、生埒が

日本語孊習以前に、ニュヌスを芋たり、時事問題に興味を持ったりずいう「ステップ

が必芁」であったこず、そうした必芁性を意識させるこずは「取り出し指導」以倖の授

業ず関連するこずに気づくこずがうかがえた。講垫Fは、取り出し講垫が自分も含め

お、個別で「ぶ぀切り」の指導を行うこずでよいのか、ずいう問いを立おるが、そのこ

ずを他の教員や講垫ず共有したり、自分の指導を向䞊させたりできないこずにもどか

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倚蚀語倚文化─実践ず研究●vol.52013.11

しさを感じおいる。講垫Fは、垞に生埒の反応から省察するが、「自分の課題は気が

぀かないず怖いので、誰かに指摘しお欲しい」ず蚀う。講垫Fは、自分の実践をオヌ

プンに共有したい、ず連絡ノヌトを䞁寧に曞き、䜜成したオリゞナル教材もファむル

にしお講垫の共有机に眮いおいる。しかし、そのこずを講垫同士で話す機䌚や時間も

なく、教材は有効に掻甚されない。補講を含めおⅠ高校で3幎目になった講垫Fは、「完

党に私のスケゞュヌルで、私の仕事をしおたすね」ず、自分のスタむルが閉じられた

たた確立しおきたこずを感じおいる。

講垫Fは、このように、Ⅰ高校でも小孊校でも、自分の実践に぀いお、ほずんど教

員からの批評や孊びあいの機䌚を埗られなかった。しかし、筆者ずのむンタビュヌの

過皋においお、「レベル別にも䜜ったんですか 倧倉でしたね。」「こんなにいい教材

なのに、なんで食い぀きが悪かったんでしょう。」などず実践に関しお具䜓的に質問さ

れるために、実践の意図や自䜜教材の工倫点、生埒の反応や、自分がどのように省察

をしたのか、ずいうこずを改めお考え、詳しく話すこずになった。講垫Fは、実践の

意味や解釈を他者ず語るこずで、改めお考えが明確になり、評䟡されるこずで励たさ

れたず語った。

3「暗黙知」ずしおの実践的知識の圢成ず他者による意識化 講垫Hの事䟋

講垫Hは、䞭囜史の研究者であるが、様々な校皮で講垫の経隓を積んできた。䞭囜

語に堪胜であるこずから「取り出し指導」に声がかかり、独孊で日本語教育も熱心に勉

匷したが、初玚が終わった生埒の指導には行き詰たりを感じおいる4-2参照。講垫

Hは、定時制の生埒ず長く接するうちに、「取り出し指導」に察する考えが倉わっおき

たずいう。

 「取り出し指導は途䞭から方針を転換しお、いかに倖囜人生埒が孊校に来る

かずいうこずを考えるようになりたした。ぶっちゃけ、週に䜕時間か取り出しの

授業受けたからずいっお、日本語胜力がどれだけ䞊がるか期埅できないず思うん

です。それよりも、日本瀟䌚に定着させるこずがより重芁だなず思っお。日本語

が話せなくおも孊校にいる子がいお、日本語が話せおも孊校をやめる子がいる。

いろんな経隓をするようになっお、他人のこずを聞いたり、自分のこずを話した

り、ずか。そういう圢で手助けが取り出しの時間にできれば。」講垫H

2010.12.26

 「倖囜籍の生埒の抱えおいるバックグラりンドが党日制の普通の高校ず比べお

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ずっず耇雑なわけですよ。数幎やっおきお、限られた取り出しの時間の䞭で、生

埒のこずを教えるのが、なんずなくわかったんです。䞭略最初、党日制に行っ

たんですよ。出身校に。䞭略その時は党く䞀人䞀人の生埒のこず芋おる䜙裕な

かった。たぶん、受けた授業しかできないんだず思う。自分で新しく創り出すこ

ずができない。倧孊の教科教育法でもそんなこずはやらない。䞭略僕の講垫ず

しおのタヌニングポむントは、聟孊校に行ったこず。重耇障害の生埒に぀いお

圓然、教科を教えるこずはできなくお 䞭略通っおるず、僕のこずを芋る目

が違うんですよ。今日も来たんだねっお䞀生懞呜話しかけおくるんですよ。䞭

略ものすごく人間らしいなっお、それがきっかけでかなり生埒を芋るスタン

スずいうか、倉わりたしたね。」「ある定時制では6、7幎いたから、よく飲み

に連れおっおもらっお。その先生はすごかった。生埒に察する掞察力ずいうか、

この生埒はこういうバックグラりンドで、こういう性栌で、その時の様子も、蚀

葉の䞭のキャッチボヌルで探りながら、 そういうのを、本胜的にやっおる。」「語

孊の人はき぀いですよ。䞀床やったこずは芚えおいるず思っおる。珟実はそうじゃ

ない。仕事で疲れおいるずか 」「僕の感芚でいうず、専門性は存圚しない。他

の教科であればその教科の指導芁領がある。䞭略芏定があればいいも悪いも、

専門性がだいたい確立する。」「筆者に蚀われおみるず、そうですね 。自分は

そういう考え方ずか、授業のスタむルですね。それも専門 っお、そうかもしれ

ないな。なんか、こうやっお話しおいるず、自分も定時制の『取り出し指導』に぀

いお、自分の芋方、持っおたすね。そんなこず、あんたり話さないから普段意識

しないけど。」講垫H2012.9.5

講垫Hの語りからは、生埒䞀人䞀人を芋守る姿勢や、日本語の習埗そのものよりも

孊校に来る意味や関係性を重芖するずいう指導芳がうかがえる。それは、聟孊校での

経隓や、「同僚的な関係」にあった専任教員の圱響、自身の定時制での実践の䞭で埐々

に圢成しおきたこずがうかがえる。しかし、講垫Hも、自分の「刀断の仕方」が、特定

の堎ず生埒にのみ通甚する「事䟋知識」「個人的知識」ずいう意識をもち、䞀皮の「専門

性」ずは意識しおいない。手応えを感じた実践も、他の教員ず共有するこずは考えず、

「専門性」ずは倖的に芏定されたものである、ずいう考えを持っおいる。だが、講垫Hは筆者ずの面接の過皋で、自分の経隓や指導に察する考えを生き生きず述べ、著者の

「考えが倉わったのはそれがあるからですね。」「それも専門的な芋方ずいえるのでは」

などの問いかけに察しお、自分の指導芳やスタむルを意識し、自分も実践的知識ずし

おの「専門性」を持っおいるかもしれない、ず考え出しおいる。ここからは、「取り出

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倚蚀語倚文化─実践ず研究●vol.52013.11

し指導」においおも、暗黙知を明確化し、自分の実践をメタ的にずらえるには、他者

ずのやりずりが有効であるこずがうかがえる。

以䞊、背景の異なる3名の「取り出し講垫」が、「䜕をどのように教えるべきかずい

う刀断」をどのように埗おいるのか、そうした実践的知識を、専任教員や他の講垫ず

共有するこずに぀いおどう考えおいるかを述べおきた。ここで、改めおその特城を敎

理する。

第䞀に、講垫の「䜕をどのように教えるべきかずいう刀断」の仕方が、個人の倚様な

背景や経隓の圱響を受けおいるこずである。自身が䞭囜垰囜子女であり、日本語指導

に豊富な経隓を持぀講垫Aや、定時制で勀務するうちに、定時制の生埒の状態がわかっ

おきたずいう講垫Hの語りからは、経隓が刀断の仕方を圢成しおきたこずがわかる。

たた、この経隓は、珟任校での実践経隓だけでなく、個人の孊習䜓隓や他校皮での実

践経隓なども反映しおいる。語りからは、講垫Aは自分の孊習経隓を、講垫Fは小孊

校で獲埗した刀断の仕方を、それぞれ定時制での実践に応甚しおいるこずがうかがえ

る。講垫Hは、進孊校や聟孊校での経隓が、自分の生埒ぞの向き合い方を圢成したこ

ずを意識しおいる。「取り出し指導」は、カリキュラムがなく、状況䟝存の性栌が匷い。

぀たり「䜕をどのように教えるべきかずいう刀断」を講垫に負うずころが倧きく、倚様

な背景や経隓による講垫の実践的知識の倚様性が、実践の際に幅や柔軟性ずしお有効

に䜜甚する可胜性があるず考える。

第二に、3名の「取り出し講垫」は共通しお、個々の実践的知識を「事䟋知識」「個人

的知識」ずずらえ、共有しない傟向があるこずである。講垫Aは、自分の経隓的知識

に有甚性を感じながらも、それぞれの教員が個別のスタむルで教えた方がよいず考え

る。自分のスタむルは確立しおいるため、生埒情報の共有は有効だが、指導方法は自

分が玍埗いかないものを芏定されたくない。講垫Aにずっお指導方法は、個々の教員

の「オリゞナリティ」や「わざ」の芁玠が倧きく、共有が困難なものず認識されおいるず

いえる。講垫Fは、自分が開発した教材や実践の省察をリ゜ヌスずしお共有しようず

するが、他の講垫ずは物理的に亀流が難しく、意識の差もあっおうたくいかない。講

åž«Fは、自分が詊行錯誀ず省察を通しお埗た実践的知識が、結局「個人的知識」ずしお

閉じられる、ずいうこずに次第に慣れおいく様子がうかがえる。講垫Hは、経隓を重

ねながら、耇雑で困難な状況䞋にある定時制生埒には、「他人のこずを聞いたり、自

分のこずを話したり」が必芁で、「そういう圢で手助けが取り出しの時間にできれば」

ず考えおいる。こうした、定時制の生埒の状態を芋極め、寄り添おうずいう講垫Hの

「たなざし」は、経隓による実践的知識ずいえるが、講垫H自身は「個人的知識」である

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ため共有できないず考えおいる。

第䞉に、他者ずの共有により、講垫自身の実践的知識が意識化され、実践的知識の

䟡倀自䜓を認識するこずである。講垫Fも講垫Hも、これたで自分の実践やその解釈

を他者に語るずいう経隓を持たなかった。今回調査の過皋で筆者に語るこずで、孊校

の文脈や生埒のずらえ方、実践のねらい、生埒の反応ずその解釈などを改めお意識し、

省察を深める様子が芋られた。生埒の反応や自分の手応えずいった実感だけでは、メ

タ的な芖点は十分ではない。他者ず実践的知識を共有し、暗黙知を指摘されるこずに

よっお、実践を意識化する様子がうかがえた。たた、これたで自分では「事䟋知識」や「個

人的知識」ずみなしおいた実践的知識が、他者によっお専門性ずしお認識され評䟡さ

れるこずで、技術的知識ずは異なる、実践的知識の䟡倀を認識する様子がうかがえた。

結論

「取り出し指導」は、カリキュラム等による明確な制床的䜍眮づけや内容に関する指

針がない䞊に、状況䟝存で講垫䟝存の傟向がある。「取り出し講垫」には、䞀般的な教

育に関する知識や圓該教科の知識に加えお、日本語教育や倖囜人生埒教育の技術的知

識が望たれるが、講垫は必ずしも日本語教育の孊習経隓を持たず、それぞれの背景に

基づいた倚様な指導芳や指導スタむルで実践しおいる。そしお、「取り出し講垫」は、

盞互䞍干枉ずいう教員文化の䞊に、非垞勀講垫ずいう雇甚䞊の制限、それに䌎う堎や

時間の物理的な制限などがあり、専任教員や他の講垫ず実践的知識を共有するような

同僚性を構築しにくい。

そしお、同僚性構築を阻害する䞀因ずしお、「取り出し指導」の専門性がある。専任

教員は、教科の専門性ぞの固執から「取り出し指導」は専門倖であるず意識し、䞍干枉

になる傟向がある。䞀方で「取り出し講垫」のうち、日本語教育の資栌を持぀講垫は、

定時制高校ずいう文脈に、これたで修埗した技術的知識が通甚せず、「専門性」が揺れ

る。たた、日本語教育の資栌のない講垫は、自分が詊行錯誀によっお埗た実践的知識

は専門的でなく、限定的な「事䟋知識」「個人的知識」ずずらえ、他の教員ず共有しな

い傟向がある。

しかし、定時制高校における「取り出し指導」は、倚様な背景を持った生埒が察象で

あり、ニヌズや日本語胜力も異なる䞊に、生埒の䞭には孊習目的が明確でない者もい

る。したがっお、固定的な指導内容や方法ではない柔軟な察応が求められ、講垫の実

践的知識に負うずころが倧きい。぀たり、定時制においおは「取り出し講垫」個人の背

景や経隓から埗る「䜕をどのように教えるべきかずいう刀断」の仕方が重芁な意味を持

ち、その倚様性ず柔軟性が、倚様で䞍確かな定時制の倖囜人生埒の孊習支揎に有効に

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はたらく可胜性があるず考える。

調査からは、「取り出し講垫」が他者ず実践的知識に぀いおやりずりするこずで、自

分の実践的知識を意識化し、専門性ずしお䟡倀を認識する様子がうかがえた。技術的

知識や資栌ずは異なる、個々の実践的知識を専門性ずしお認め合うこずは、「取り出

し講垫」の察等性にも぀ながる。立堎䞊でも、意識の䞊でも、察等性が保障された関

係においお、実践的知識は盞互に共有し、補完し合うこずができるず考える。

同僚性の欠萜は、こうした講垫個々の背景ず実践珟堎の文脈ずのクロスによっお生

たれる貎重な実践的知識を、共通のリ゜ヌスずしお生かし合うこずを阻むだけではな

く、個々の教員が実践をメタ的にずらえ盎し、盞互に補完する機䌚を枛じおしたう。

専門性ず同僚性は䞍可分の関係であるが、珟圚の状況では双方ずも構築が困難である。

そこで、定時制高校の「取り出し指導」における専門性をふたえ、同僚性構築のため

の具䜓的な芖点を以䞋に3点瀺す。

第䞀に、専任教員、講垫同士が実践的知識をフォヌマルか぀むンフォヌマルに亀換

する「仕掛け」を孊校のシステムずしお䜜るこずである。フォヌマルな亀換の堎ずしお、

各孊校の倖囜人生埒に関する「連絡䌚」が挙げられる。しかし、調査からは、「連絡䌚」

自䜓が蚭定されおいない孊校が倚く、蚭けられおいるずころでも、生埒状況などの報

告が䞭心であるこずが明らかになっおいる高束2013。この「連絡䌚」を、より実践

的知識に぀いおやりずりする堎ずしお蚭定するこずが必芁である。情報を埗るだけで

なく、自分の実践を語るこずにも意味があり、それによっお自分の実践的知識を意識

化し、メタ的にずらえる機䌚にもなる。たた、講垫控宀や指導の教宀を、他の教員や

生埒ず自然に亀流できるように配眮するなど、物理的な配慮をするこずで、日垞的な

むンフォヌマルな同僚性を結びやすくする必芁がある。

第二に、日本語教育の技術的知識の習埗、事䟋研究に基づく実践的知識の共有を促

進するような教員研修を拡充し、非垞勀講垫の参加を可胜にしおいくこずである。珟

状では、非垞勀講垫は、同僚性による日垞的な孊びあいから疎倖されおいる䞊に、専

任教員に開かれおいる、教育委員䌚が䞻催するような公的な研修にも参加ができない。

倖囜人生埒教育や日本語指導など、非垞勀教員にずっおも新しい教育課題に察応する

ために、珟職研修の機䌚が開かれるこずが望たしい。たた、研修の内容は、技術的な

知識の習埗はもちろん、具䜓的な孊校の文脈ず実践事䟋を共有し、実践的知識を意識

化し、互いに認め合い、補完し合うような機䌚を倚く蚭定するこずが有効だず考える。

研修機䌚の拡充は、孊校をたたがっお実践課題を共有し、同僚性を構築する機䌚にも

なる。

第䞉に、講垫が研修に参加したり、日垞的な指導蚘録䜜成や専任教員に連絡をした

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りする仕事に、䞀定の補償を䞎えるこず、さらに講垫の雇甚システムを再怜蚎するこ

ずである。珟圚では、䞊に述べた「連絡䌚」などの参加も、シャドり・ワヌクになっお

いる。䌚議や研修は専任教員にずっおは勀務の䞀郚だが、講垫は他の仕事を䌑たなけ

ればいけない䞊に手匁圓になる。自䞻参加であっおも、補償があるこずで参加がしや

すくなり、このこずが察等性にも぀ながるず考える。たた、非垞勀講垫の雇甚に぀い

お、垞勀化等の怜蚎を進めるこずである。単幎床雇甚の非垞勀講垫ずいう䞍安定な身

分では「察等性」は保障されず、実践的知識も深化や蓄積がされにくい。しかし、珟時

点では倚くの孊校で倖囜人生埒の圚籍が䞍安定で少数であるこず、たた垞勀化にする

こずで、倚様なリ゜ヌスを持぀珟圚の「取り出し講垫」が非垞勀を継続できない堎合も

ある等、珟実的な課題がある。

今埌の課題は、「取り出し講垫」の実践的知識を具䜓的にどのように共有するのか、

共有の過皋で実践的知識の有効性やその知識自䜓をどのように問い盎しおいくのか、

そこに生埒の芖点をどのように入れるのかを怜蚎するこずである。

謝ᅵ蟞本研究にご協力いただきたした、郜立高校の先生方、特にむンタビュヌに応じ

お䞋さいたした「取り出し指導」担圓の講垫の先生方に心よりお瀌申し䞊げたす。

たた、本皿執筆にあたり、貎重なご助蚀を䞋さいたした、東京孊芞倧孊の䜐藀郡

衛先生に深く感謝申し䞊げたす。

泚1 本皿においお「倖囜人生埒」ずは、倖囜籍だけでなく、耇数の蚀語や文化背景を持぀日本圚䜏の生埒、

いわゆる「倖囜に぀ながりのある生埒」を指す。2 文郚科孊省「日本語指導が必芁な児童生埒の受け入れ状況に関する調査」による。ただし、この調査

は各孊校で日本語指導を必芁ずするず刀断し、報告した数であるこずに留意する必芁がある。3 倖囜人子女の日本語指導に関する調査研究協力者䌚議1998の調査小孊校、䞭孊校、高校が察象

によれば、党䜓の玄6割の孊校が「取り出し指導」をしおおり、特に高校では「クラスに入り蟌み、付

き添っお個別指導しおいる」、いわゆる「入り蟌み指導」はわずかであり、「取り出し指導」の割合が高

いこずが報告されおいる。4 「非垞勀講垫」は「非正芏教員」の圢態の䞀぀であり、「垞勀講垫」臚時的任甚教員に察しお「時間講垫」

ず呌ばれる自治䜓により呌称や採甚実瞟は異なる。東京郜を䟋にするず、勀務は担圓する授業時

間1単䜍60分のみであり、担任や校務分掌には携わらない。採甚は幎床内のみで、絊䞎は単䜍時

間で蚈算され、賞䞎や各皮手圓おの支絊はない。東京郜教育庁人事郚1012『東京郜時間講垫制床

の抂芁』リヌフレットより。たた、「取り出し指導」の非垞勀講垫の採甚の条件は、圓該教科の免

蚱のみで、日本語指導に関する資栌や経隓は問われない。5 「シャドり・ワヌク」は家事などの無報酬劎働を指すむリむチIllich 1981の造語だが、ここでは「必

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芁䞍可欠な仕事であるにもかかわらず、その察䟡が支払われない劎働」ずしお甚いる。6 倖囜人子女の日本語指導に関する調査研究協力者䌚議1998のアンケヌト調査においおも、小・䞭

孊校有効回答数1976、822校に比べお高校では41校ずサンプル数が少なく、校皮や各孊校の倖囜

人受け入れの制床なども明らかではない。7 東京郜ぞの開瀺請求資料「平成23幎床高等孊校教員定数および講垫時数の曎正に぀いお申請」平

成23幎3月 24幎1月申請たで。2012幎3月開瀺より。8 竹本・高橋2011は 、小・䞭・高校の教員に察する質問玙調査から、校皮ごずに「教垫の専門性」意

識が異なるこず、教垫の専門性の䞭栞をなすのが「孊習指導」であり、そこに付随しお小孊校教垫で

は「発達支揎」、䞭孊校教垫では「生埒指導」、高校教垫では「教科指導」にそれぞれ専門性の意識を眮

くこずを指摘しおいる。

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