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Instructions for use Title 日本語の謝罪表現「ごめんなさい」と「ごめん」について : ポライトネス理論からのアプローチ Author(s) 日髙, 慶美 Citation 国際広報メディア・観光学ジャーナル, 24, 39-55 Issue Date 2017-03-24 Doc URL http://hdl.handle.net/2115/64761 Type bulletin (article) File Information 39.pdf Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

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Title 日本語の謝罪表現「ごめんなさい」と「ごめん」について : ポライトネス理論からのアプローチ

Author(s) 日髙, 慶美

Citation 国際広報メディア・観光学ジャーナル, 24, 39-55

Issue Date 2017-03-24

Doc URL http://hdl.handle.net/2115/64761

Type bulletin (article)

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Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP

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The Journal of International Media, Communication, and Tourism Studies No.24|039

日髙 慶美

HID

AKA

Yoshimi

日本語の謝罪表現 「ごめんなさい」と 「ごめん」について─ポライトネス理論からのアプローチ─日髙 慶美

On the Expressions of Apology in Japanese, gomen nasai and gomen ─ An Approach from Politeness TheoryHIDAKA Yoshimi

The aim of this paper is to elucidate the underlying principle governing the use of the two conventional expressions of apology in Japanese, gomen nasai and gomen, within the politeness theory proposed by Brown and Levinson (1987). Based on the politeness theory, this paper proposes a hypothesis that the relation between gomen nasai and its reduced form gomen is characterized as a shift from a negative politeness strategy to a positive politeness strategy. Given Brown and Levinson's idea that positive politeness strategies are used for FTAs smaller than those for which negative politeness strategies are used, this hypothesis predicts that gomen is used for FTAs smaller than those for which gomen nasai is used. It is shown that an analysis of data collected from a Japanese TV drama scenario confirms the prediction. This result indicates that the hypothesis is empirically supported.

abstract

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日本語の謝罪表現「ごめんなさい」と「ごめん」について ─ポライトネス理論からのアプローチ─

日髙 慶美

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1|はじめに Brown & Levinson(1987)(以下、B&L)のポライトネス理論は、言語使用の背後にある動機をポライトネスという観点から説明する理論である。こ

の理論の中で、B&L(1987)は、2つのポライトネスを提案している。1つは、敬意を表す、「ネガティブ・ポライトネス」であり、もう1つは親しさを表す、「ポジティブ・ポライトネス」である。そして、それぞれのポライトネスを達成

するための手段を「ネガティブ・ポライトネス・ストラテジー」、「ポジティブ・

ポライトネス・ストラテジー」と名付けている。B&L(1987)は、この2つのポライトネスを表すためのストラテジーは、多くの場合、相互排他的なス

トラテジーであると述べている。しかしながら、B&L(1987)は、英語には、縮約や省略によって、ネガティブ・ポライトネス・ストラテジーを表す慣習

的な間接表現がポジティブ・ポライトネス・ストラテジーとして使われるよ

うになるという現象があることを説明している。

 本稿では、日本語の謝罪の定型表現である「ごめんなさい」と「ごめん」

という2つの表現の関係には、B&L(1987)が英語の例で説明している、ポライトネスの性質が転換されるという現象が生じているという仮説を提案す

る。そして、この仮説の検証を通じて、これまでネガティブ・ポライトネス・

ストラテジーであると一様に見なされ、十分な説明がなされていなかった「ご

めんなさい」と「ごめん」の関係を明らかにすることを試みる。

 本稿の構成は次の通りである。まず、第2節では、B&L(1987)のポライトネス理論について、本研究に関わる概念を中心に説明する。次に、第3節では、日本語の謝罪の定型表現の先行研究を概観する。第4節では、B&L(1987)のポライトネス理論の枠組みを用いて、「ごめんなさい」と「ごめん」ではポライトネスが転換されているという仮説を提案する。第5節では、仮説から得られる2つの表現の使い分けに関する予測をドラマのシナリオを用いて検証する。最後に、第6節で結論と残された課題を示す。

2|B&L(1987)のポライトネス理論

 本節では、B&L(1987)のポライトネス理論の概念のうち、本研究に関わる、フェイス、ネガティブ・ポライトネス・ストラテジー、ポジティブ・ポ

ライトネス・ストラテジー、FTAについて簡潔に説明する。そして、最後に、本研究の分析に関わる、英語に見られるポライトネス・ストラテジーの性質

が変わるという現象について説明する。

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▶1 日本語訳は田中(2011)より引用する。以下も同様である。

▶2 B&L(1987: 129-211) は、10個のネガティブ・ポライトネス・ストラテジーの例を挙げている。「謝罪せよ」(Apologize)はその中の6つ目のストラテジーであり、英語の仮定法は、3つ目のストラテジーである「悲観的であれ」(Be pessimistic)を表現する方法の1つとされている。

2.1 フェイスとポライトネス B&L(1987)のポライトネス理論の中心となっているのは、「フェイス」の概念である1。この理論におけるフェイスとは、人の基本的な欲求であり、

B&L(1987)は、すべての人は2つのフェイスを持っていることを前提としている。1つは、「ネガティブ・フェイス」(negative face)であり、もう1つは「ポジティブ・フェイス」(positive face)である。2つのフェイスは、それぞれ次のように定義されている。

(1) a. negative face: the want of every ‘competent adult member’ that his actions be unimpeded by others.

b. positive face: the want of every member that his wants be desirable to at least some others.

(B&L 1987, 62)

 (1a)の「ネガティブ・フェイス」とは、「邪魔されたくない」という欲求である。一方、(1b)の「ポジティブ・フェイス」は、「何等かの点で認められたい」という欲求である。B&L(1987: 61)は、この欲求としてのフェイスは、相互作用の中で常に配慮されなければならいものであると考えている。

このことから、B&L(1987)の理論におけるポライトネスとは、フェイスへの配慮であると見なすことができる。

 さらに、B&L(1987)は、「ネガティブ・フェイス」に配慮したポライトネスを「ネガティブ・ポライトネス」、「ポジティブ・フェイス」に配慮したポ

ライトネスを「ポジティブ・ポライトネス」と呼んだ。「邪魔されたくない」

というフェイス欲求に向けられた「ネガティブ・ポライトネス」は、「忌避を

基に」(avoidance-based)したポライトネスであり(B&L 1987, 70)、一般的にフォーマルなポライトネスとして馴染みが深いものである。一方、相手の「認

められたい」というフェイス欲求に向けられた「ポジティブ・ポライトネス」は、

「接近を基に」(approach-based)したポライトネスである(B&L 1987, 70)。そのポライトネスを達成する方法としては、親しさを表すという手段がある。

そして、それぞれのポライトネスを達成するための手段は、「ネガティブ・ポ

ライトネス・ストラテジー」、「ポジティブ・ポライトネス・ストラテジー」と

呼ばれる。具体的な例を挙げると、次の例文(2)は、ネガティブ・ポライトネス・ストラテジー、例文(3)はポジティブ・ポライトネス・ストラテジーの言語的実現の例である。

(2)Excuse me, would you by any chance have the time?(3)Got the time, mate?

(B&L 1987, 80)

 (2)は、ネガティブ・ポライトネス・ストラテジーとされる謝罪や、仮定法などが用いられている2。一方、(3)は、ポジティブ・ポライトネス・スト

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▶3 B&L(1987: 101-129) は、15個のポジティブ・ポライトネス・ストラテジーの例を挙げている。「仲間ウチであることを示す指標を用いよ」(use in-group identity markers)はその中の4つ目のストラテジーとして含まれている。

▶4 B&L(1987: 85)は、「ストラテジー」は必ずしも意識的なものだけではないと説明している。

ラテジーとされる短縮形や呼びかけなど仲間ウチであることを示す指標とな

る表現が使用されている3。この2つの例文からも、ネガティブ・ポライトネスは「他者と距離を置こうとする」ことを表し、ポジティブ・ポライトネス

は「他者に近づこうとする」ことを表すポライトネスであることが分かる。

 では、このようなポライトネス・ストラテジーの選択はどのように行われ

ているのだろうか。2.2節では、フェイスの侵害となる行為、フェイスの侵害度の決定要因、ストラテジーの選択について説明する。

2.2 FTAとストラテジー B&L(1987)は、言語または非言語コミュニケーションを含め、ある種の行為は本質的にフェイスを侵害する可能性があると考えている。そして、そ

のようなフェイスを侵害する行為のことを「フェイス威嚇行為」(face-threat-ening act)(以下、FTA)と名付けた。 B&L(1987: 68-71)は、FTAを避けることを含め、FTAを行うための5つのストラテジーを提案している4。その5つとは、1.「補償行為をせず、あからさまに」(without redress action, baldly)、2.「ポジティブ・ポライトネス」(positive politeness)、3.「ネガティブ・ポライトネス」(negative politeness)、4.「オフ・レコード」(off record)、5.「FTAをするな」(Don't do the FTA)というストラテジーである。そして、B&L(1987)は、5つのストラテジーの選択について、フェイスを脅かす度合いが増すほど、大きな番号のストラテジー

が選択されると主張し、FTAの深刻度の見積もりに合わせたストラテジーの選択を図1のように示している。

■図1 FTAを行うための可能なストラテジー (B&L 1987, 60)

 図1から分かるように、「ポジティブ・ポライトネス」と「ネガティブ・ポライトネス」は、「オン・レコードで」行為を行いながらも、FTAが引き起こす可能性のあるフェイス損傷を和らげる「補償行為」(redressive action)をするストラテジーである。FTAを行うときに「補償行為」をしているという点で1番目のストラテジー「補償行為を講じずに、あからさまに」と異なり、また「オン・レコード」でという点で、FTAをはっきりそれと分からないように間接的に行う4番目のストラテジー「オフ・レコード」とも異なる。 では、FTAの深刻度の見積もりは、どのように決定されるのだろうか。B&L(1987: 74)は、FTAの深刻度の度合いは、3つの社会的要因─話し手

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▶5 B&L(1987: 80)は、その社会のすべての構成員が互いに要求し合っても差し支えないと考えられるような手助けは小さな負担であると判断できるため、例文(2)、(3)の時間を教えてもらうという行為のRは小さいと説明している。Rの序列についてはB&L(1987: 77-78)を参照。

と聞き手の「社会的距離」(social distance: D)、話し手と聞き手の相対的「力」(power: P)、特定の文化における絶対的な「負荷度」(ranking of imposition: R)─によって決まると主張している。そして、この3つの要因からFTAの深刻度が算出される公式を次のように定式化している。

(4)Wx=D(S, H)+P(H, S)+Rx (B&L 1987, 76)

 (4)の公式のWxは、ある行為xのFTAの深刻度、つまりFTAxの重さの値を意味している。そして、その重さは、話し手(S)と聞き手(H)の「社会的距離」(D)を示す値、聞き手の話し手に対する「力」(P)、FTAxのその文化内での「負荷度」(R)によって決まることが示されている。つまり、この公式は、FTAの深刻度が3つの社会的変数の総和によって決まることを表している。

 ここで、2つのポライトネス・ストラテジーの選択と、3つの変数の総和によるFTAの深刻度の見積もりとの関わりについて見てみよう。図1を見て分かるように、ネガティブ・ポライトネスよりも番号の小さいポジティブ・ポライ

トネスは、FTAの深刻度の見積もりがより小さいときに選択される。(4)の公式の観点から先に挙げた例文(2)と(3)をもう一度詳しく見てみよう。2つの例文は、PとRが一定で話し手がそれらを小さく評価している場合、すなわち、話し手と聞き手の力関係が同等であり、行為の負担も大きくない場合に、

変数Dによってどちらのポライトネスを表す表現が使用されるのかを説明するためにB&L(1987: 80)が示した例である5。B&L(1987: 80)は、ネガティブ・ポライトネスを表す、(2)‘Excuse me, would you by any chance have the time?’は、Dの大きい面識のない相手に使用され、ポジティブ・ポライトネスを表す、(3)‘Got the time, mate?’は、Dの小さい知人などの近い関係の相手に使用されるものであることが直観的に分かることを示唆している。つま

り、この例文からは、Dの大きさの違いによって、FTAの見積もりが大きいときはネガティブ・ポライトネス・ストラテジーが、小さいときはポジティブ・

ポライトネス・ストラテジーが選択されるということが分かる。すなわち、

B&L(1987)のポライトネス理論では、異なる2つのポライトネスが提案され、FTAの深刻度の大きさによってそれに対応する2つのポライトネス・ストラテジーが選択されると考えられているのである。さらに、B&L(1987: 358)は、異なるフェイス欲求に向けられた2つのポライトネス・ストラテジーは、「少なくとも多くの場合、相互排他的なストラテジーである」と述べている。

 しかしながら、B&L(1987: 270)は、ネガティブ・ポライトネスを表す表現が、その境界線を越えてポジティブ・ポライトネスとして使用されるとい

う現象があることも説明している。本研究の分析では、この現象が重要となる。

そこで、次の節ではこの現象についてのB&L(1987)の説明を取り上げる。

2.3 ポライトネスの性質の転換 B&L(1987)は、「縮約や省略」がネガティブ・ポライトネスを表す表現をポジティブ・ポライトネスに転換させるという現象を説明している。B&L

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▶6 本文中で「ポライトネスの転換」と名付けた現象は、B&L(1987)では、「ポジティブ・ポライトネスへと性質が変わる」(‘…crosses over into positive polite-ness’)(B&L 1987, 111-112)、「ネガティブ・ポライトネスの境界を越えて、ポジティブ・ポライトネスのための用法も獲得している」(‘…extends beyond its neg-ative politeness limits and has posi-tive politeness usage too.’)(B&L 1987, 270)と表現されている。B&L(1987: 269-271) は、‘you ought to’を縮約した‘oughta’は、忠告などのFTAがポジティブ・ポライトネスを伴って行われている場合のみに使用されると説明し、縮約形の適切な使用がFTAとの関係で説明できることを示している。なお、2つのポライトネスの境界をマークするその他の方法については、B&L

(1987: 271)を参照。

(1987: 271)は、この理由を、「縮約や省略は仲間ウチのメンバーであること(in-group member-ship)やカジュアルな非公式性の指標となることから、ポジティブ・ポライトネスの目的にかなうため」であると述べている。この現

象が生じている例としてB&L(1987: 271)は次の英語の表現を挙げている。

(5) ネガティブにポライトな慣習的間接表現 ポジティブにポライトな縮約形 a. I want to a'. I wanna b. Do you want to b'. Wanna c. Do you need a c'. Needa d. Do you mind if I d'. Mind if I (B&L 1987, 271)

 (5a)–(5b)は、ネガティブ・ポライトネスであるとされる英語の慣習的な間接表現である。一方、それらを縮約、あるいは、省略させた(5a')–(5d')は、仲間ウチであることを示すポジティブ・ポライトネスを表すカジュアルな表

現となっているとB&L(1987)は説明している。 本稿では、この縮約や省略によってポライトネスの性質が転換するという

現象を「ポライトネスの転換」と呼ぶことにし、改めてこの現象を次のよう

に定義する6。

(6)ポライトネスの転換   縮約や省略など仲間ウチを指標する表現の使用によって、ネガティブ・ポライトネスを表す表現はポジティブ・ポライトネスを表す表現

に転換される。

 本稿では、(6)に示した「ポライトネスの転換」という現象が、日本語の謝罪の定型表現にも生じているという仮説を第4節で提案する。次の第3節では、仮説を提案する前に、これまでに行われている日本語の謝罪の定型表現

の先行研究を、ポライトネス理論を用いているものを中心に概観する。

3|日本語の謝罪の定型表現の研究 謝罪研究は、1960年代に発話行為理論を用いた抽象的な研究が主に英語を対象として行われ始めた(Austin 1962, Searle 1969)。その後、1980年代からは、語用論や社会言語学の分野で、言語ごとにある場面における具体的

な謝罪の仕方も研究されるようになった。ポライトネス理論は、そのような

具体的な謝罪方略を分析する際に用いられている(García 1989, Holmes, 1990)。 具体的な謝罪を対象とした研究では、いくつかのカテゴリーに分類された

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▶7 謝罪の具体的な手段を「謝罪ストラテジー」(apology strategies)と呼んでいる研究も見られるが、本稿では、ポライトネス・ストラテジーと区別するため「謝罪方略」と呼ぶ。

▶8 (7d)、(7e)のカテゴリーは、「状況特有」(situation-specific)なものであり、García(1989)の設定した状況では、この2つのカテゴリーに当てはまる表現はなかった。

▶9 Deutschmann(2003)のように、謝罪する内容が聞き手のどちらのフェイスを侵害したかによって、謝罪がどちらのポライトネス・ストラテジーになるかが決まると主張する研究もある。一方、山崎(2009: 5)は、「BLの装置で、PPS、NPSが軽減度として働く前提となるFTAは全てのFTAであり、『PPSはPF-FTAの軽減装置として働く』わけではない」と主張している(BLはBrown & Levinson、PPSは‘Positive Politeness Strategy’、NPSは‘Nega-tive Politeness Strategy’、PFは‘Positive Face’を表す)。本稿も山崎(2009)と同様の立場をとる。

謝罪方略が分析されるようになった7。例えば、具体的な謝罪方略に焦点を当

てた最初の代表的な研究である、Olshtain and Cohen(1983)は、謝罪方略を以下の5つに分類している。

(7)謝罪方略のカテゴリー a. An expression of an apology (e.g. ‘I'm sorry.’, ‘forgive me.’) b. An explanation or account of the situation (e.g. ‘The bus was delayed.’) c. An acknowledgment of responsibility (e.g. ‘It is my fault.’) d. An offer of repair (e.g. ‘I'll pay for the broken vase.’) e. A promise of forbearance (e.g. ‘It won't happen again.’) (Olshtain and Cohen 1983, 22-23)

 B&L(1987)のポライトネス理論を用いた研究には、(7)に挙げられているような謝罪方略をネガティブかポジティブかのポライトネス・ストラテジー

に分け、ストラテジーの使用傾向を分析しているものがある。例えば、アメ

リカ人英語母語話者とベネズエラ人英語学習者の謝罪方略を分析したGarcía(1989)は、(7a)と(7c)をネガティブ・ポライトネス・ストラテジーに、(7b)をポジティブ・ポライトネス・ストラテジーに分類している8。

 日本語を対象とした謝罪研究は、1980年代から始められ、日本語の謝罪に特有とされる謝罪表現とそれが持つ感謝の機能との関係についての研究や

(Coulmas 1981)、発話行為理論に基づく謝罪表現の研究(熊取谷 1988,1992)、謝罪の定型表現の研究(佐久間 1983,住田 1992)などが行われて来た。加えて、日本語母語話者と他の言語の母語話者の謝罪方略の対照研

究も多く行われている。ポライトネス理論を用いた初期の研究では、池田

(1993)がフェイスという概念に基づいて、日本人大学生・大学院生とアメリカ人留学生の謝罪方略を比較している。その他、日本語母語話者、英語母

語者(アメリカ人、オーストラリア人)を対象としたYamazaki(2000)、日本語母語話者と中国語母語話者を対象としたボイクマン・宇佐美(2005)、張(2007)、日本語母語話者と韓国語母語話者を対象とした鄭(2011)もポライトネス理論を用いて対照研究を行っている。

 日本語の謝罪の定型表現は方略(7a)に分類される。さらに、García(1989)と同様に、日本語の研究においても、Yamazaki(2000)、張(2007)、鄭(2011)は、謝罪の定型表現をネガティブ・ポライトネス・ストラテジーと見なして

いる9。そして、これらの研究から、他の母語話者に比べて日本人の定型表現

の使用率が高いことや、英語や中国語とは異なり、日本語の定型表現の種類

の使い分けは人間関係に強く影響されていることが明らかになっている。次

の節では、日本語の謝罪の定型表現の種類の使い分けについて、張(2007)の研究で明らかにされていることを中心に説明する。

3.1 日本語の謝罪の3つの種類の定型表現とその変異形 滝浦(2008: 117)が、「日本語の詫び行為に用いられる表現形は、語彙的な観点から、『ごめん(~ごめんなさい)』類、『すまない(~すみません)』類、

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▶10 滝浦(2008)のいう「有標」とは敬語のように明示的に距離を置くことを表し、「無標」とは、非敬語(タメ語)のように対人的な距離に対して何も表さないことを表す。なお、滝浦(2008)は「タメ語」と呼んでいる表現を本稿では「タメ口」と呼ぶ。

▶11 佐久間(1983)が挙げている表現の他に、女子大学生の談話資料から得られた謝罪の表現をまとめている住田(1992)は、「ほんとうに」などの副詞と共に使用される表現も挙げている。

『申し訳ない(~申し訳ありません)』類、等に大別できる」と述べているよ

うに、この3つの種類が日本語の謝罪の定型表現の代表的なものとして分析されている。

 例えば、張(2007)は、第2節で説明した、B&L(1987)のポライトネス理論が提案している、ストラテジーの3つの選択要因、話し手と聞き手の社会的距離(D)、力関係(P)、負荷度(R)を変数とした場面を設定し、日本語母語話者と中国語母語話者の謝罪方略を比較している。その結果、「ごめ

なさい」類、「すみません」類、「申し訳ありません」類の使い分けに、R要因の影響は確認できなかったのに対し、D要因とP要因の影響を受けている傾向が見られたと報告している。滝浦(2008: 117)は、張(2007)の調査結果をさらに体系的に考察し、「『すまない』類がDに関する“遠”という特徴をマークし、『申し訳ない』類がPに関する“上”という特徴をマークするということを示している。そして、それらを有標と見るならば、『ごめん』類が

無標の形式として、Dに関する“近”とPに関する“下”をともにマークしていると見なすことができる」と説明している10。

 この滝浦(2008)の考察は、3種類の謝罪の定型表現の使い分けが、ポライトネス理論のDとPに基づいて体系的に説明できることを示している点に意義がある。しかしながら、定型表現の種類の間にある関係の説明にとどまっ

ており、同じ定型表現の変異形の使い分けについては十分に説明されていな

い。

 日本語の謝罪の定型表現の変異形には、省略や語尾変化、終助詞や副詞の

付与などが見られる。例えば、佐久間(1983)は、謝罪の定型表現を6つのテレビドラマから集め、「ごめんなさい」類として「ごめん(ね)」、「ごめん

なさい(ね)」、「すみません」類として「すまない(ね)」、「すいません」、「ど

うもすみません」、「どうもすいませんでした」、「申し訳ありません」類として

「(どうも)申し訳ございません」といった表現が見られたことを示してい

る11。では、これらの変異形はどのように使い分けられているのだろうか。次

の節では、謝罪の定型表現の変異形に言及している2つの研究について説明する。

3.2 変異形の使い分け 日本語の謝罪研究において変異形について言及している研究は少ないが、

その中には、ドラマのシナリオを用いて分析を行っている佐藤(2011)、質問紙調査によって親しい関係に使用される日中の謝罪表現の対照研究を行った

趙(2012)、ドラマから得られたデータを用いて日本語の謝罪の定型表現と情意の関係を分析しているSandu(2011, 2013)がある。そして、ポライトネス理論を用いたものではないが、趙(2012)とSandu(2013)の研究は、「ごめんなさい」と「ごめん」の使い分けについて2つの特徴を示している。1つは、ポライトネス理論のDとPに関わる、人間関係の影響である。もう1つは、ポライトネス理論のRに当たる、謝罪内容の負荷度の影響である。 まず、「ごめんなさい」と「ごめん」の使用における人間関係の影響につい

ては、Sandu(2013)の分析によって示されている。Sandu(2013: 758)は、

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あるドラマの中で、主人公の女性が部下の男性に使用した謝罪表現について、

二人が上司と部下以上の関係になった後、それまで使用されていた「ごめん

なさい」から「ごめん」が使用されるようになるという変化が見られたと説

明している。さらに、女性がその男性との婚約を破棄するときに、「ごめん」

ではなく、「ごめんなさい」が使われていたという例を挙げ、この「ごめんな

さい」の使用は、話し手が、もう婚約者ではないという距離を聞き手に対し

て感じていることを表していると説明している(Sandu 2013, 758)。 次に、「ごめんなさい」と「ごめん」の使い分けに対するRに関わる要因について、趙(2012)とSandu(2013)は興味深い指摘をしている。滝浦(2008)は、張(2007)の分析を基に、謝罪の種類の選択にRの影響が確認できなかったと述べている。しかし、親しい関係のみに焦点を当てて謝罪方略を分析し

た趙(2012)の結果では、「ごめんなさい」と「ごめん」の使い分けに関するRの影響が示唆されている。趙(2012: 102)は、ポライトネス理論のRに当たる、謝罪する内容の過失度が軽度のときは、「ごめん」という表現の使用

が最も多いが、それが重度になると「ごめん」の使用が低下し、「ごめんなさ

い」の使用が多くなったと述べている。同様に、Sandu(2013: 763)も深刻な内容の謝罪をする際に、心からの謝罪として「ごめんなさい」が使用され

ていると指摘している。

 以上のように、「ごめんなさい」と「ごめん」という謝罪の定型表現の変異

形に焦点を当てている研究を見ると、人間関係と謝罪する内容の負荷度が、

その使い分けに影響を与えていることが分かる。しかしながら、これらの研

究は、2つの謝罪の定型表現の使われ方の記述的な説明にとどまっている。そこで、本研究は、「ごめんなさい」と「ごめん」の使い分けの背後にある原

理をB&L(1987)のポライトネス理論に基づいて説明することを試みる。

4|「ごめんなさい」と「ごめん」の分析 本節では、日本語の謝罪の定型表現である「ごめんなさい」と「ごめん」

という表現の使い分けの背後にある原理を説明するために、第2節で述べた、B&L(1987)が説明している「ポライトネスの転換」という現象が、「ごめんなさい」と「ごめん」の間でも生じているという仮説を提案する。仮説を

提案するために、「ポライトネスの転換」が起こるときに見られる、2つの特徴について考える。1つは、「縮約や省略」という語形に関する特徴である。もう1つは、FTAの深刻度の大きさに関する特徴である。 本節では、1つ目に挙げた、縮約と省略による「ポライトネスの転換」が日本語にも見られることを、日本語のあいさつの定型表現の研究に基づいて説

明する。

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日本語の謝罪表現「ごめんなさい」と「ごめん」について ─ポライトネス理論からのアプローチ─

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▶12 B&L(1987)のポライトネス理論に基づいて日本語の「敬語」をネガティブ・ポライトネス・ストラテジーの1つと見なすこと対しては批判も見られる。例えば、B&L(1987)の「ストラテジー」では、「わきまえ」としての日本語の受動的な敬語使用が捉えきれていないという井出(1987,2006)の批判や、フェイスを侵害しないような発話における敬語使用を説明できないというMatsumoto(1988)の批判がある。前者の批判に対して、滝浦(2001)はポライトネス理論の「ストラテジー」は、井出のいう「わきまえ」も含む広い概念であると説明している(注4参照)。後者の批判に対して、Fukuda・Asato(2004)は、聞き手の地位が高ければ、その行為自体が負担を含んでいなくても、Pが大きいため、W(x)は大きくなることから、ポライトネス理論に基づいて日本語の敬語使用を説明することは可能であると主張している。本稿でも滝浦(2001)、Fukuda・Asato(2004)と同様の立場をとる。

4.1  日本語のあいさつの定型表現における ポライトネスの転換

 まず、上で述べた1つ目の特徴と関わる、日本語のあいさつ表現の語形的特徴とポライトネスの関係について見てみよう。「あいさつ言葉」の待遇性に

ついて説明している沢木・杉戸(1999: 134)と中西(2008)は、日本語の「あいさつ言葉」には、「敬意の高い形式」と「敬意の低い形式」があると指摘

している。沢木・杉戸(1999: 134)は、その例として、「おはようございます」と「おはよう」、「ありがとうございます」と「ありがとう」、「申し訳ありません」

と「申し訳ない」を挙げている。つまり、後半部分に「ございます」や「あ

りません」がある表現が「敬意の高い形式」であり、その部分が省略されたり、

「ない」という表現に変わっている表現が「敬意の低い形式」である。この例

からも分かるように、日本語の「あいさつ言葉」の表現は、「後半部分に集中

して現れる動詞や補助動詞(助動詞など)の待遇表現性、つまり尊敬とか謙

譲とか丁寧とかの意味に支えられて、あいさつ言葉全体に待遇表現性が色濃

く備わっている」(沢木・杉戸 1999: 134)という特徴が見られる。そして、その部分の有無や変化によって待遇性の違いが見られることが分かる。中西

(2008)は、沢木・杉戸(1999)の「敬意が高い/低い」という対立を「敬体/常体」の対立として捉えている。

 沢木・杉戸(1999)と中西(2008)が指摘している「あいさつ言葉」に見られる「敬体」と「常体」の関係は、B&L(1987)のポライトネス理論における、ネガティブ・ポライトネスとポジティブ・ポライトネスの関係である

と考えることができる。日本語の「敬語」と「タメ口」の関係をB&L(1987)の理論に基づいて説明している滝浦(2008)は、日本語の「敬語」はネガティブ・ポライトネスを表すもの、「タメ口」はポジティブ・ポライトネスと結び

付くものと見なしている。すなわち、滝浦(2008)の考えに従うと、「敬意の高さ/低さ」、「敬体/常体」の対立は、2つのポライトネスを提案しているB&L(1987)のポライトネス理論においては、方向性の異なるポライトネスであると見なすことができるのである12。

 以上のことから、日本語のあいさつの定型表現においても、英語と同様に

省略による「ポライトネスの転換」が生じていると考えることができるだろう。

次の節では、「ごめんなさい」と「ごめん」の関係のポライトネス転換の仮説

による分析を提案する。

4.2  「ごめんなさい」と「ごめん」における ポライトネス転換の仮説

 語形的な特徴について見ると、「ごめん」は「ごめんなさい」の後半部分

の「なさい」が省略されている。さらに、「なさい」の省略は「ごめんなさい」

と「ごめん」の他にも、「おかえりなさい」と「おかえり」、「おやすみなさい」

と「おやすみ」などの表現にも見られる。上で述べた他のあいさつの定型表

現の形式と敬意の関係に基づくと、後半部分の「なさい」が付いた表現は「敬

意の高い形式」であり、その部分が省略された表現は「敬意の低い形式」で

あると考えることができる。すなわち、前者はネガティブ・ポライトネス・

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ストラテジーであり、後者はポジティブ・ポライトネス・ストラテジーであ

ると捉えることができる。

 以上の議論に基づいて、本稿では、日本語の謝罪の定型表現である「ごめ

んなさい」という表現の後半部分を省略した表現である「ごめん」は、ポラ

イトネスの性質が転換されていると考え、(8)の仮説を提案する。

(8)「ごめんなさい」と「ごめん」のポライトネス転換の仮説   ネガティブ・ポライトネス・ストラテジーである謝罪表現「ごめんなさい」から「なさい」を省略することによって形成される「ごめん」

ではポジティブ・ポライトネス・ストラテジーへとポライトネスの性

質が転換されている。

 (8)の仮説からは、FTAの深刻度の大きさによる「ごめんなさい」と「ごめん」の使い分けの予測が得られる。第2節で説明したB&L(1987)のストラテジーの選択の説明に基づくと、ネガティブ・ポライトネスを表す表現で

ある「ごめんなさい」よりもFTAの深刻度の見積もりが小さいときに「ごめん」が使用されているということが予測できる。そこで、次の節では、ドラマの

シナリオを用いて、「ごめんなさい」と「ごめん」が使用されるときのFTAの大きさについて考察し、仮説の検証を行う。

5|「ごめんなさい」と「ごめん」についての 仮説の検証

 本節では、ネガティブ・ポライトネス・ストラテジーである「ごめんなさい」

という表現の後半部分を省略した「ごめん」という表現はポジティブ・ポラ

イトネス・ストラテジーに転換されているという仮説を検証するために、ド

ラマのシナリオの中でこの2つの表現が使用されているときのFTAの深刻度の見積もりの大きさを分析する13。

5.1 使用するシナリオと分析対象 分析に使用するシナリオは、2000年1月16日から3月26日に11回にわたりTBS系列で放映されたテレビドラマ『Beautiful life ~ふたりでいた日々~』(北川,2000)のシナリオである。このドラマは、美容師の柊二と病気のために車イスでの生活をしながらも前向きに生きる図書館司書の杏子が偶然出

会い、恋人関係になっていくというストリーである。

 第3節で見たように、Sandu(2013)と趙(2012)の結果からは、「ごめんなさい」と「ごめん」という表現は、同じ相手に対して謝罪をするときにも

使い分けられていることが示唆されている。そこで、本研究での分析対象を

ドラマの主人公である杏子の親友のサチが杏子の兄である正夫に対して使用

した「ごめんなさい」と「ごめん」とし、その使い分けとFTAの深刻度の大

▶13 ドラマのシナリオを用いるのは、自然会話に近いデータを効率よく収集することができ、謝罪場面とその前後の文脈や、登場人物の気持ち、時間の経過の中での人間関係の変化が細かく描写されているため、細かな分析が可能であると考えたためである。研究データとしてドラマの会話を用いることの意義については熊谷(2003)を参照。

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きさについての検証の結果をまとめる。

5.2 検証 サチは正夫に対して、「ごめんなさい」を5回、「ごめん」を3回使用していた。この2つの表現の使い分けの要因には、Sandu(2013)の研究で示唆されている、人間関係の変化、すなわちDとPに関わる要因と、趙(2012)とSandu(2013)の研究で示されている、謝罪内容の負荷度であるRに関わる要因が見られた。まずは、DとPの要因についての考察から始める。

5.2.1 DとPの要因の影響 ドラマの中で、サチと正夫の関係は、杏子の親友と杏子の兄という杏子を

通した関係から恋人関係へと変化が見られる。この関係性の変化は、社会的

人間関係であるDと上下関係であるPに影響を与えていると考えられる。まず、Dについては、恋人関係になる前からサチは正夫を含め杏子の家族と親しくしているが、恋人となることでより小さくなると判断できる。次に、Pについては、恋人関係になる前は、正夫は杏子の兄であり、サチよりも年上である

ことから、サチにとって正夫はPの大きい相手であると考えられる。しかし、恋人関係となることで、Pも小さくなると判断できる。つまり、DとPともに、サチと正夫が恋人関係となることでより小さくなると考えることができる。

 この関係性の変化は、言語使用にも表れている。サチは、杏子の兄として

正夫と接しているときは、しばしばタメ口を使用することもあったが、主に

敬語を使用していたのに対し、恋人関係となった後はタメ口を使用している

という変化が見られたのである。関係性の変化は、使用する謝罪表現にも影

響していた。そのことは次の例(9)と(10)の場面から分かる。 例(9)の場面では、お互いの気持ちを意識しているが、まだサチは正夫に対する気持ちを伝えていない場面である。この場面の謝罪内容は、正夫が

少女漫画は読まないと嘘をついたことをサチがからかって笑ってしまったこ

とに対する謝罪である。

(9) サチ:「くらもちふさこ」 正夫:「ああ、あれはいいよ。あのなんだっけ、東京のカサノバ……」

サチ:「(クスッと笑う)」

正夫:「あ……」

サチ:「ごめんなさい(からかって、の意)」

正夫:「いや……」 (北川 2000,152-153)

 B&L(1987: 66)では、嘲笑という行為は、聞き手のポジティブ・フェイスを侵害する行為の1つとされていることから、からかうという行為は正夫のポジティブ・フェイスの侵害にあたると考えられる。聞き手のポジティブ・フェ

イスに対するFTAに関するRの大きさについて、B&L(1987: 78)は、聞き手のフェイスに与えられる「痛み」(pain)の量を測ることで得られると述べている。この場面では、サチが決して正夫を馬鹿にして笑ったわけではないこ

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とから、正夫のフェイスに与えられる「痛み」は大きくないと思われる。

 一方、(9)の場面のすぐ後で、もう少し長く一緒にいたいという発言をしてから、サチは正夫に敬語ではなくタメ口を使用している。そして、その後

に使用される2回の謝罪表現は、どちらも「ごめん」という表現であった。その1つが(10)の例である。この場面で、サチは、自分が受け取らなかったパチンコの景品の香水を母親にあげると言った正夫に対して、正夫の母親も

香水は使用しないのではないかと言ってしまったことを謝罪している。

(10)サチ:「……私、香水つけない……」 正夫:「ああ……(そうか、とショック)」

サチ: 「ああ、ううん。でも、ありがとう。これ、瓶きれいだし、飾っといて」

正夫: 「いや、いいよ。いいよ。無理に……。母ちゃん……母ちゃんにでも……(やるから)」

サチ: 「おばさん、つけるかな」と知らないうちに、おいうちをかけるサチ。

サチ:「あ、ごめん」

正夫:「いや……」 (北川 2000,154)

 B&L(1987: 66)は、不同意の表明を聞き手のポジティブ・フェイスを侵害する行為の1つに挙げている。(10)のサチの「おばさんつけるかな」という発言は、その前の正夫の発言への否定的な意見であり、ポジティブ・フェ

イスの侵害と考えられる。しかしながら、サチは、強い不同意を示している

わけではないことから、Rはそれほど大きくないと考えられる。 (9)と(10)、2つの場面は、謝罪している内容は異なるので、Rの大きさを比べることは難しいが、どちらの場面もそれほど大きくないと見なすこと

ができる。しかし、サチが自分の気持ちが分かるような発言をする前の(9)の場面では、「ごめんなさい」の使用が見られたのに対し、その後の(10)場面では「ごめん」が使用されていた。すなわち、サチが正夫に対して親友

の兄として接している段階から男性として接する段階への移行に伴いDとPが小さくなったことが、「ごめんなさい」と「ごめん」の使い分けに影響してい

ると考えられる。

5.2.2 R要因の影響 次に、趙(2012)とSandu(2013)が指摘している、謝罪内容の負荷度であるR要因が「ごめんなさい」と「ごめん」に影響を与えていることが示唆されている場面を示す。

 サチと正夫は、結婚を前提に付き合い始め、お互いにタメ口を使用してい

る。そのような関係で、サチが正夫に対して、「ごめんなさい」という謝罪表

現を使用している2つの場面が見られた。1つは、(11)のサチが正夫に妊娠したということを伝える場面である。

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(11) 正夫:「(しかし)……いつだ……」 サチ: 「あの、映画観た日の夜だと思う。給料の3か月分ってやつ

観た時」

正夫:「え、でも、サッちゃん大丈夫だって」

サチ:「……ごめんなさい!」頭下げる。

正夫:「ごめんなさいって……」 (北川 2000,316)

 (11)の場面で、サチは、実際は妊娠する可能性があることを知っていて「大丈夫」だと言ったことに対して謝罪している。B&L(1987: 67)では、状況に合わない行為を行うことは、聞き手のポジティブ・フェイスを気にかけて

いない行為となり、そのフェイスを侵害することになると述べている。その

ため、妊娠する可能性があることを知っていながら、「大丈夫」と言ったこと

は、正夫のポジティブ・フェイスの侵害になると考えられる14。そして、妊娠

する可能性があることを伝えるべきだったのにもかかわらず、そのことを隠

し、実際に妊娠したということは、正夫を動揺させることは明らかであり、フェ

イスの侵害は大きいと考えられる。そのため、この場面でのRは大きいと考えられる。

 この場面では、サチと正夫は恋人関係であり、DとPは、同じ「ごめんなさい」という表現が使用されている(9)の場面に比べて、小さいことは明らかである。そのため、(9)で「ごめんなさい」が使用されていた理由がDとPの大きさであると考えられるのに対し、この場面では、Rの影響が大きいと考えることができる。

 もう1つの場面では、「ごめんなさい」が2回使用されていた15。それは、病

気が悪化した杏子が、生まれてくるサチの子どものために靴下を編んでいる

ことを知って泣いてしまったことを、サチが正夫と二人の母親の久仁子に謝

罪している場面である。杏子の家族が気丈に振る舞おうとしているにもかか

わらず、感情を抑えきれずに杏子の前で泣いてしまうという行動は、杏子の

家族の気持ちを考えない行為であり、ポジティブ・フェイスの侵害になると

考えられる。そして、杏子の病気の悪化に対する感情を表すことは、杏子の

家族のフェイスに大きな「痛み」を与えると考えることができるので、(11)の場合と同様に、この場面のRも大きいと判断できる。もちろん、Rの他にDとPの大きい相手である久仁子がいることも「ごめんなさい」の使用の要因となっているとも考えられるが、謝罪表現以外はタメ口であったため、謝罪内

容に関わるRの影響が大きいと見なすことができるだろう16。

5.3 結果 ドラマのシナリオから得られたデータは8個と非常に限られてはいるが、「ごめんなさい」と「ごめん」の使い分けには、DとPの影響とRによる影響があることが示唆されている17。そして、「ごめんなさい」が使用されていたのは、

(9)のように、DとPがわずかに大きく、Rが小さい場面と、(11)のようにDとPが小さく、Rが大きい場面であった。一方、「ごめん」が使用されていたのは、(10)のように、DとPが小さく、Rも小さい場面であった。この結果を

▶14 本文で示しているように、妊娠する可能性があることを黙っていたことはRが大きいと分析できる。ただし、サチは、正夫は自分が妊娠したことを喜んでくれると思っていたため、本当に悪いと思って謝罪していないと思われる。Sandu(2013)は心からの謝罪をするときに「ごめんなさい」が使用さると述べているが、必ずしもそうではないことをこの例は示している。

▶15 この場面は、放送ではカットされているが、シナリオに基づき分析対象とした。

▶16 正夫の母親の久仁子の存在をサチが「ごめんなさい」を使用した要因として考えた場合も、久仁子はサチにとってDとPの大きい相手であることから、FTA

の深刻度は大きくなると考えられ、「ごめんなさい」はFTAの深刻度が大きいときに使用されるという結果と矛盾しない。

▶17 本研究におけるデータの数は限られているが、結果として示したFTAの大きさによる、「ごめんなさい」と「ごめん」の使い分けは、Sandu(2013)のデータからも示唆されている。加えて、本研究で使用したドラマの登場人物である、杏子と美山の間で使用された「ごめんなさい」と「ごめんね」も同様の使い分けが見られた。しかしながら、「ごめんね」に付与されている終助詞「ね」の影響の詳しい分析が必要であるため、今回は分析対象とはしなかった。

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FTAの深刻度の見積もりという視点から述べると、「ごめん」はFTAの深刻度が「ごめんなさい」よりも小さいときに使用されているということができる。

 したがって、この結果は、「ごめんなさい」はネガティブ・ポライトネス・

ストラテジーであり、「ごめん」はポジティブ・ポライトネス・ストラテジー

であるという仮説の予測が正しいことを示しており、仮説を支持するもので

あるといえる。

6|結論と残された課題 本稿は、日本語の謝罪の定型表現の1つの種類である「ごめんなさい」類に焦点を当て、「ごめんなさい」と「ごめん」という表現の使い分けの背後に

ある原理を、B&L(1987)のポライトネス理論の原理に基づいて説明することを目的とした。そして、B&L(1987)の説明に基づき、「ポライトネスの転換」と名付けた現象が「ごめんなさい」とその後半部分を省略した「ごめん」

という表現の関係に生じているという仮説を提案した。さらに、この仮説か

ら得られるこの2つの表現の使い分けの予測が正しいことをドラマのシナリオから得られたデータに基づいて検証し、仮説を支持する結果が得られたこと

を示した。

 この結果は、言語形式に焦点を当てることで、これまで一様にネガティブ・

ポライトネス・ストラテジーであると考えられてきた謝罪の定型表現の中に、

定型表現でありながら、ポジティブ・ポライトネスを表す表現があるという

可能性を示唆している。加えて、B&L(1987)の理論的枠組みが、日本語の謝罪表現の分析から経験的に裏付けられることを示している。

 しかしながら、本稿には残された3つの課題がある。第一に、「ごめんなさい」と「ごめん」という表現以外の変異形の分析を進める必要がある。例えば、

この2つの表現と、「ごめんなさい」類の変異形である「ごめんね」の関係を明らかにするという課題がある。また、「すみません」類の変異形、「申し訳

ありません」類の変異形の使い分けに「ごめんなさい」類の変異形の表現に

見られた関係があるかなどの分析も行う必要がある。第二に、データ数の問

題である。本研究が使用したデータは1つのドラマのシナリオであり、得られたデータも8つと非常に限られている。今後、データ数を増やし、より多様な場面を分析する必要がある。第三に、2つのポライトネス・ストラテジーの判断基準を明確にする必要がある。本研究の検証で用いた、FTAの深刻度の大きさ以外の基準を見つけることで、ポライトネスの性質が転換されてい

るという仮説が支持されることが期待される。

謝辞 本稿は、修士論文「日本語の謝罪表現『ごめんなさい』、『ごめん』、『ごめんね』の分析

─ポライトネス理論からのアプローチ─」(2016,北海道大学大学院 国際広報メディア・

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日本語の謝罪表現「ごめんなさい」と「ごめん」について ─ポライトネス理論からのアプローチ─

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観光学院)の一部を発展させたものです。本稿を執筆するにあたり、指導教員の上田雅信

先生には、草稿の段階から丁寧なご指導を賜りました。心より感謝いたします。また、査

読を担当してくださった匿名の2名の先生方からは大変貴重なコメントをいただきました。ここに記して感謝いたします。本稿における瑕疵は全て著者の責任です。

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