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「解体チョットマッタ」 2009年5月 企画 本丸会館とまちづくりの会 高岡市・本丸会館本館 保存・活用にかんする一次提案書 | 1

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高岡市本丸会館保存活用にかんする1次提案書 ver.1.1 honmarukaikan renovvation

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「解体チョットマッタ」

高 岡 市 ・ 本 丸 会 館 本 館

保 存 ・ 活 用 に か ん す る 一 次 提 案 書

2 0 0 9 年 5 月

企 画

本 丸 会 館 と ま ち づ く り の 会

高岡市・本丸会館本館 保存・活用にかんする一次提案書 | 1

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ま え が き

 高岡市本丸会館本館は、維持費問題、財政難、耐震強度不足(正式な検査はなされてい

ません)などを理由に、取り壊してもよいただの古びた「タテモノ」では決してありませ

ん。市の所有ではあっても、今の時代だけで、高岡の市民だけで消滅させてもよい単なる

「モノ」ではありません。幾世代の人々の、富山県全体や日本の近代化そのものの記憶を

背負った、歴史的文化的記念建造物であり、その名にふさわしい技術と構造と美を合わせ

持つ、世界遺産登録申請と連動させるべき傑作です。その敷地、周辺環境と一体となった、

すべての人々がなるほどと思えるような保存・修復・活用の理念と方策をめざした、「本

丸会館とまちづくりの会」発足後一年間の活動を、ここに報告いたします。

富山大学芸術文化学部 教授 松政貞治

- - - - - - - - - - - -

目次

まえがき 2

序章  本丸会館の文化財的価値 3-

-系譜と建築的価値

-建築学会による評価

-文化財的価値

-本提案書の位置づけ

1章  本丸会館 保存・活用の課題 6-

-維持管理費の課題

-耐震改修の課題

2章  使いながら考える ― 保存・活用へのシナリオ 9-

-「本丸会館保存協議会」

-「NPO 本丸会館リノベーションプログラム」

3章  本丸会館からはじまる高岡のまちづくり 13-

-<新しいまちの玄関>としての本丸会館

-<ひかかれた公共施設>としての本丸会館

-<ものづくりの拠点>としての本丸会館

資料 資料1 情報公開請求の結果 16-

資料2 事業計画案/空地などの活用計画案

高岡市・本丸会館本館 保存・活用にかんする一次提案書 | 2

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序 章

本 丸 会 館 の

建 築 的 ・ 文 化 財 的 価 値

系譜と建築的価値

 本丸会館本館*1は、古城公園の本丸広場を背景に左右対称の形で、高岡城の大手門である

かのように堂々としかも華麗な姿で建っています。昭和9年(1931年)に高岡電燈株式会

社社屋を建てるために、防備と風水の知恵にかなった二上山や立山連峰、小矢部川や庄川

との位置関係で高岡城が占地されたのと同じように、近代化すべき高岡の新しい中心とし

てこの本丸広場の正面が敷地に選ばれ、新しい近代建築を提唱した「分離派建築会」の一

員、矢田茂(清水組)の設計のもとに竣工されました。日本の近代化、そしてとりわけ電

力施設のために新しい鉄筋コンクリート構造を本格的に採用し始めた富山県の近代化の象

徴として、同じ構法がこの建築にも採用され、その上で鏝(こて)絵*2など高岡近辺の技

術・工芸の粋が集められました。その後の所有者である北陸電力と高岡市との施設の交換

により、昭和35年から21年間にわたって、市役所として市民に親しまれました。高岡市の

集団的な記憶と市民のアイデンティティを背負う、世界遺産登録申請と連動すべき近代化遺

産であり、優れた近代建築意匠をほとんどそのまま今に伝える歴史的記念建造物です。

 竣工当時の建築設計図面と照らし合わせたところ、市役所に使用されて以後に設けられ

た木造の間仕切り*3などを撤去すれば、竣工当時と大きくは変わらない鉄筋コンクリート構

造の梁や柱の率直な表現*4、繊細な漆喰や木部の造作*5が残されています。気品のあるデザ

インは、同時代に建てられ今も現役の大阪倶楽部や大阪綿業会館などにも引けをとらな

い、現代の高岡にも貴重な場を提供してくれるに違いありません。

建築学会による評価

 本館の建築的価値は、本会メンバーが突然指摘したことではなく、昭和58年に建築学会

が総力を挙げて全国のすべての近代建築を調査し、報告書としてまとめて刊行した『日本

近代建築総覧 : 各地に遺る明治大正昭和の建物』(日本建築学会編、技報堂出版 , 1983)

においては、富山県内の500前後のリストの中で、県庁、電気ビル、山町筋の富山銀行など

とともに「調査員推薦」という印を付けられた五つの優れた建築として高く評価されてい

ました。それがどういうわけか県の登録文化財を決めるための『富山県の近代化遺産~富

高岡市・本丸会館本館 保存・活用にかんする一次提案書 | 3

*1 本丸会館本館 外観

*2 旧客室の鏝絵

*3 現在の玄関ホール

増設された間仕切り壁を撤

去し竣工当時の意匠に近づ

けることが期待される。

*5 重厚な木製建具

*4 2階旧大会議室

柱、梁の率直な表現

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山県近代化遺産総合調査報告書~』(富山県教育委員会文化課/富山近代史研究会編、

1996/1997)では、高岡市内だけでも数十も挙げられた候補リストにも含まれなくなりま

した。これ以後は、矢田の後輩の山口文象による黒部川第二発電所のほうが近代建築の傑

作として評価が高まり、世界遺産登録申請に必要な国の重要文化財の候補として脚光を浴

びるようになった一方で、本丸会館本館は市の文化財にも指定されないどころか、取り壊

しの対象になってしまいました。

文化財的価値

 福野出身の吉田鉄郎の設計による同時代の東京中央郵便局が取り壊されようとしていた

中で、重要文化財級の評価が文化庁などによりなされていたとの報道がありました。この

本丸会館本館も同じ運命とならないことを願って、本会が現在までに市民集会などを通じ

てまとめてきた本会の考え方や本館の置かれた状況を、地元の建築家、建築学会の有志、

文化財の専門家などに説明した結果、耐震一次診断や、国の重要文化財やまたは登録文化

財の候補になり得るかどうかの予備調査なども検討され始めています。本会が活動し始め

た直後の、先の世界遺産登録申請の際に、文化庁から明確に、高岡の近世だけでなく近代

の遺産をも登録の対象にすべきことが指摘されました。このように、本会が確信を持って

訴えてきました本館の歴史的文化的価値は、早くから建築学会の総意として明文化されてい

た上に、文化庁の基準からしても国の重要文化財か登録文化財のレヴェルの価値を持つ近

代化遺産として保存・活用すべき建築であり得ることが分かりました。

本提案書の位置づけ

 本提案書は、高岡市長の「金銭的な問題を含めた、具体案な活用案を示してほしい」

(2008年5月)という発言をうけ、市民団体「本丸会館とまちづくりの会」(以下「本

会」)がまとめたものです。本会はこの1年間、1)本丸会館本館の建築学的な価値の調査、

2)文化財保護制度などの調査、3)建築遺産保存活用の事例調査、4)市民へのアンケート、5)

フォーラムの企画、6)改修計画案・事業計画案のスタディ、など実践的な活動を行ない、幅

広い視点から本丸会館の保存について考えてきました。

 この提案書の目的は、1)本丸会館にたいする市民のコンセンサスを得ること、2)本丸会館

の文化的価値や保存上の課題を示し、広範囲な保存・解体の議論を行なうこと、3)本丸会

館の保存を通しての今後の高岡市のまちづくりのヴィジョンを考えること、の3点です。こ

れを受け、本提案書は保存のための課題(1章)、今後の議論のプロセス(2章)、本丸

会館と高岡のまちづくり(3章)という3つの章から構成しました。とりわけ、この一次

高岡市・本丸会館本館 保存・活用にかんする一次提案書 | 4

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提案書の特色は、保存活用にたいする最終的なイメージを示すのではなく、2章にあるよ

うに市民のコンセンサスを形成したうえでの保存への道筋を提案していることです。すなわ

ち、本会はより本丸会館の保存に関しての課題を明らかにした上で、市、行政、市民、地

元企業などを含めた、幅広く、開かれた議論を行なうことを主張します。

 本丸会館本館は国内でもまれにみる大規模な近代建築遺産です。本会は高岡市の解体の

意向にたいして「チョットマッタ」を提唱するとともに、より本丸会館・保存問題と高岡

市のまちづくりの議論が活性化し、また、より歴史・文化・産業に満ちた「高岡」の実現

に向けてまち全体が動きだすことを願い、本会のこの1年間の活動の成果である本提案書

をここに公表します。

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1 章

本 丸 会 館

保 存 ・ 活 用 の 課 題

 本丸会館は本館、新館、別館、保健センターの4館*6から構成されています。市の管轄で

ある財団法人高岡市施設管理公社(以下、「施設管理公社」)が本館、別館、新館を管理

し、高岡市健康増進課が保健センターを管理していました(2008年5月当時)。このうち

高岡市は施設管理公社所管の3館にたいし耐震強度と維持費用の問題があるため解体する

と表明しています。しかし、本丸会館保存問題の論点はいかに本館のもつ建築的・歴史的価

値を保存するかにあります。この立場からすれば、本丸会館にかかわる耐震問題・維持管理

費の問題を、それぞれの棟にわけて検証することが必要になるでしょう。そのため、より

詳細な資料が必要となります。

 2009年3月、本会は高岡市にたいし情報公開請求をおこないました。本章では本館のみ

を保存・活用すべきという本会の立場から、公開された資料をもとに、維持費用、耐震強

度の2つの課題について検証します。

1-1 維持管理費の課題

-情報公開請求の結果

 前述のとおり、本会は施設管理者である高岡市から施設管理公社の過去10年間の経費*7、

および過去5年間の修繕費*8にかんする情報開示を得ました。これによれば、おおよそ年

5,000万円が本丸会館の経費として計上されていますが、これは(財)高岡市施設管理公社の

本丸会館にかんする年間の支出総額であり、すなわち本館、新館、別館の3館において費

やした光熱水費、人件費、委託費、備品費など公社の運営にかかる費用を全て含むもので

す。よって、この額は本館のみを保存・活用する場合に参考になるものではありません。

 ここで本館を最低限維持管理するのに要する費用を把握するため、まずは1)建物の維持管

理にかかる費用(光熱水費、修繕費)、2)建物の維持管理費にかかわらない、公社の運営

上の費用(人件費、事務費、委託費、備品費など)の2つにわけて検証します。平成10年

から平成19年までの平均の施設管理公社の支出内訳は次のようになります。

高岡市・本丸会館本館 保存・活用にかんする一次提案書 | 6

本館

保セ

広小路

別館新館

*7 pp.17 「資料1-2」 参照

*8 pp.16 「資料1-1」 参照

*6 本丸会館概略図

2008年5月当時、本館、新

館、別館が施設管理公社の

管轄、保険センター(保セ)

が健康増進課の管轄。

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fig.1 本丸会館・全館の経費の内訳(高岡施設管理公社、過去10年間の平均)

 すなわち、3館の光熱水費(建物の恒常的な使用に要する最低限の費用)には平均1,237

万円/年を、修繕費には平均481万円/年を要していたことが分かりました。また、情報公

開より得た「修繕費一覧」に目をとおしてみると、トイレ改修費や内部塗装工事など細か

な部分の場当たり的な修繕が目立ちます。今後は、本館の文化財的価値を取り戻すための本

格的修繕を行なうことが必要でしょう。また、光熱水費にかんしては、全館にたいする本

館の床面積率で*9乗じることで、おおよそ年450万円の光熱水費が本館に要していたと推計

することができます。この値は、実状とは異なりますが、このまま本館の建物のみを維持し

た場合、要する最低限の費用は市発表による施設管理公社の3館にたいする費用総額のお

よそ1/10程度*10で足りることが理解できるでしょう。

fig.2 公社の年間支出総額にたいする本館の光熱水費(推計)

-今後想定される経費

 今後想定される経費は、イニシャルコスト(初期経費)、ランニングコスト(維持管理

経費)に大別できます。

 イニシャルコストには、1)耐震改修費、2)修繕・復元費*11、3)建築設備更新費が想定

されます。これには技術的な問題も含まれており、専門的な見地からより詳細に積算する必

要があります。また、建物を文化財として登録することで、その文化財的価値を回復するこ

とにかかる経費(修繕事業)にたいし国からの補助をうけることができます。行政が所有

者である前提を確保した場合、「歴史まちづくり法」*12認定計画(コア事業)の場合は補

助率が1/2、「重要文化財」指定を受けた場合には補助率が8割など、かなりの補助を受け

ることができます。本丸会館の近代建築遺産としての価値をふまえ、文化財指定などの補助

金制度の受給を視野に入れた保存・活用計画を策定することが、今後求められます。

光熱水費(3館) 修繕費 その他

3,2554811,237

光熱水費(本館) その他

3,550450

高岡市・本丸会館本館 保存・活用にかんする一次提案書 | 7

*9 情報公開された図面による

と、それぞれの館の床面積

は本館2,450㎡、新館3,000

㎡、別館1,250㎡でありま

す。これより各館の床面積

率は概ね36.5%(本館)、

44.8%(新館)、18.7%

(別館)となります。

*12 「歴史まちづくり法」

略称:「歴まち法」、正式

名称:「地域における歴史

的風致の維持及び向上に関

する法律」。2008年施行。

*10 参考:公社発表の資料によ

れば、平成18年度、本丸会

館の会議室利用収入(新

館、別館)として総額470

万円、貸室収入(本館480

円/㎡、新館・別館530円

/㎡)として2,350万円が

ありました。

*11 特記すべき修繕費として、

市は今後本館を維持するた

めには屋上防水工事にたい

し約3,000万円が必要とな

ると述べています。

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 一方、ランニングコスト*13には、1)光熱水費、2)人件費・管理費が含まれます。これ

らは、原則受益者負担とすることで、,税金の投入なしに建物を維持することができます。

1)光熱水費にかんしては、上記のとおり現状を維持したとして年450万円ほどの費用が想定

されますが、この額は最新の設備機器を導入し効率的な運用を行なうことによって、最終

的なライフサイクルコストを削減することができます。2)人件費にかんしては、建物の管

理・警備などに要する費用が想定できますが、これらは受益者負担を原則とします。例えば

市民団体が指定管理者として建物の管理・活用を行なうことで、大幅なコスト縮減を実現

できます。これらをふまえ、2)ランニングコストにかんしては、これからの利用者による受

益者負担とし、修繕費にかんしては文化財登録による補助金受給をふまえて検討すること

が、よりコンパクトで合理的なマネンジメント・モデルであると考えることができます。本

会の考えるコストマネンジメントのイメージを次ぎに記します。

fig.3 今後のコストマネンジメントのイメージ

1-2 耐震改修の課題

 高岡市は解体のもうひとつの理由として本丸会館の耐震強度不足を表明しています。しか

し、現在において市はまだ耐震診断を実施しておらず、その根拠としての情報は不足してい

ます。また、本丸会館は本館、新館、別館、保健センターの4棟からなる建物で、これらは

建築構造を別にしていますので、耐震強度の問題を論じるにあたり棟ごとに分けて検討する

必要があるでしょう。2009年3月、本会はこの問題を検証する資料として、施設管理者で

ある高岡市より本館、新館、別館の竣工図面の情報開示をうけました。これをもとに耐震

診断を行なうには専門的な技術を必要とし、本会においてはこれを実施できておりませ

ん。そのため、本書においては、本丸会館・本館がどの程度の耐震強度をもちうるのか、

あるいはどのような耐震改修が求められるのかについて、言及できません。

 今後の課題として、専門家の協力・耐震診断の実施が求められています。本会としては、

この課題について、今後、より積極的に取り組んでいきたいと考えております。

高岡市・本丸会館本館 保存・活用にかんする一次提案書 | 8

人件費・管理費など

光熱水費約450万円

修繕費

受益者負担

補助金受給を含めて検討

*13 これまで、修繕費はランニ

ングコストとして計上され

てきましたが、本提案にお

いては文化財にかかる補助

金受給も視野に入れ、その

ための大規模修繕を前提と

しているので、これをイニ

シャルコストとして扱いま

す。

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2 章

使 い な が ら 考 え る

保 存 ・ 活 用 へ の シ ナ リ オ

 

 現状として本丸会館本館の保存/解体という問題にかんして、市民のコンセンサスは得ら

れていません。そこで、本会では本丸会館の解体に「チョットマッタ」を提唱する一方、

これに合わせ、3年~4年程度の期間を目安に<本丸会館保存協議期間>を設け、その上

で、行政・市民・地元企業・専門家・識者の代表者による、本丸会館の保存/解体にかん

する協議を行なう「本丸会館保存協議会」(以下、「保存協議会」)、また、現状を維持

したまま積極的活用を企画運営するNPO団体「本丸会館リノベーションプログラム」(以

下、「本丸会館RP」)の2つの組織の設立を提案します(fig.4参照)。すなわち、「保存協

議会」は保存のための立案機関として様々な事例の研究、および、技術・制度・資金な課

題を議論し、「本丸会館RP」はアイディア、および本丸会館の価値の広報のための機関と

して機能します(fig.5参照)。なお、保存協議期間において、本丸会館本館は高岡市が所有

し、「本丸会館RP」は指定管理者として建物の管理とその積極的活用、いわゆる上下分離

方式での運用を行ないます。「保存協議会」、「本丸会館RP」の2つの活動を平行させる

ことで、本丸会館の積極的な活用と、保存/解体にかんする議論をより活発なものするこ

とがこの提案の主旨です。そして、本丸会館の建築的価値、歴史的価値をふまえたうえで、

保存活用へ向けた具体的なアイディアを、市民全体で使いながら考えることを目指します。

保存

保存協議期間

3~4 年程度

コンセンサスの形成

「保存協議会」:保存案の議論

「本丸会館 RP」:本館の積極的活用

コンセンサス ×

現在

本会

専門家

市民

解体

fig.4 保存協議期間のプロセス

高岡市・本丸会館本館 保存・活用にかんする一次提案書 | 9

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本丸会館・保存協議会

本丸会館・本館

NPO 本 丸 会 館 RP代表者による会議保存/解体の議論

市民のコンセンサスを得る保存方法の研究・検討

活用企画書の作成活用イベントの企画 (A)活用企画 (B) の受理活用アイディアの公募

「活用企画書」の提出協議会の記録、公表

「活用企画 B」

広報

「活用企画書」の承認

所有

調査研究

アドバイス

管理積極的活用

市民地元企業地元企業

教育機関市民

市民

関係団体専門家・識者

高岡市

行政

その他団体

fig.5 組織のイメージ図

2-1 本丸会館保存協議会

 本会は、「保存協議会」を、本丸会館の保存/解体の問題を幅広い観点(文化財的、歴

史的、建築学的、事業的、まちづくり的側面)から議論し、今後の方針を決定する組織と

して提案します。「保存協議会」のメンバーは、市、市民、専門家・有識者などの代表者よ

り構成します。この会の目的は大きく分けて2つあります。

 第1に、定期的に本丸会館の保存活用にかんしての議論を行ない、現実的な保存・活用

方法を打出すことです。ここでは近代建築遺産の保存活用の実績のある学会、およびNPO

組織などからの協力を受け、技術的、制度的、事業的*14課題について専門性をふまえた議

論を行うことが求められます。また、議論の内容を積極的に市民に公開することで、保存/

解体問題にかんしてのコンセンサスを得るように努めます。

 第2に保存協議期間内における積極的活用の容認です。「保存協議会」は「本丸会館

RP」より「活用企画書」の提出をうけ、これを承認することができます。

2-2 NPO団体「本丸会館リノベーションプログラム」

 本会は、「本丸会館RP」を、保存協議期間において、建物を管理し、これを積極的に活

用する組織として提案します。「本丸会館RP」のメンバーは、一般市民の有志を中心に構

成し、市、専門家、地元企業などからの協力の元、その活動を行ないます。その主な目的

は次の3つです。

高岡市・本丸会館本館 保存・活用にかんする一次提案書 | 10

*14 本会では他の建築遺産の保

存活用の成功事例を調査・

研究し、独自の事業計画案

を作成しました。詳しくは

pp.18「資料2-1」参照。

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 第1に一般市民に本丸会館を利用してもらうことでその価値を理解してもらうことです。

そのために「本丸会館RP」は「活用企画書」を作成します。この企画は「本丸会館RP」が

自ら実践する「活用企画A」と一般市民、企業、市などの団体による「活用企画B」の2種

類からなり、営利目的のものは原則禁止とされます。「本丸会館RP」はこの2つの企画に

ついて審議し、これをまとめた「活用企画書」を定期的に「保存協議会」に提出し、その

承認を経て、これを実行することができます。

 第2に保存協議期間終了後の長期的な活用にかんする技術とアイディアを得ること。その

ため、1)市民、企業、諸団体などより、活用のアイディアを公募すること、2)全国の他の成

功事例を調査・研究すること、3)実際の活用をとおして、実践的なノウハウを習得すること

が求められます。この技術・アイディアを「保存協議会」に提出することで、より実践的な

議論ができるように促します。

 第3に本丸会館のPR活動です。ホームページやチラシなど様々なメディアを活用し、本

丸会館の建築的・歴史的価値、「保存協議会」の進捗状況などを積極的に公開すること

で、その価値や保存の意義を一般市民に幅広く理解していただきます。

 また、「本丸会館RP」を設立するにあたりいくつかの課題が考えられます。まず、建物

の修繕の課題です。保存協議期間においては、予算的に建物の本格的修繕を行なうことはで

きませんが、新たな使用用途にあわせた修繕必要箇所*15の発生が予想されます。これにか

んしては、「保存協議会」へと申請し、修繕費を含めた対策、および助言を求めることが

必要になります。つぎに、運営費用にかんする課題です。1章でも示したように、ランニン

グコストについては原則受益者負担とすることで、市の税金投与なしでも活動できる体制

を整えます。また、調査・研究など一時的に発生する費用にかんしては、「保存協議会」に

申請し行政や企業からの支援を募るほか、国や諸団体が実施している「まちづくり助成

金」などの受給を視野に入れて計画することが求められるでしょう。

高岡市・本丸会館本館 保存・活用にかんする一次提案書 | 11

*15 現在本会が把握している本

館の要修繕箇所のうち、保

存協議期間の使用において

支障をきたすと思われるも

のは次の3点です。

・3Fに女子トイレが設置さ

れていない。

・本館にEVが設置されてい

ない。

・不要な間仕切り壁があ

る。

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想定される「活用企画」

 ここでは、現段階において想定されうる、「活用企画」(活用イベント)を紹介します。

企画種別

イベント名 内容

A 見学会(本丸会館RP) 季節ごと、市内のイベントなどに合わせて開催

A 改修イベントクリーニングイベント

本丸会館をより気持ちよく利用してもらうため、市民ボランティアを募り、掃除や簡易補修などを行ないます。

B 貸し会議室 企業、行政、市民団体などが対象※H18年度、公社の貸し会議室は2000回の利用があり、約400万円の収入がありました。

B 展示会、発表会 教育機関、個人、企業など

B コンサート 音楽家、サークル、教育機関

B ダンスや音楽などの練習場 サークルや市民団体、教育機関などに時間単位で貸出します。

B アーティスト・イン・レジデンス

県内外の芸術家・工芸家などに、期間限定で制作活動の拠点としての環境を提供します。

A ロケ地 映画、ドラマなどのロケ地として、制作会社に活用してもらい、高岡と本丸会館のブランド価値を高めます。

B 結婚式、レセプションホール 使用を希望する市民、企業にたいし、貸出します。

A・B トークイベントシンポジウム

本丸会館やまちづくりに関するシンポジウム、トークイベント、その他

高岡市・本丸会館本館 保存・活用にかんする一次提案書 | 12

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3 章

本 丸 会 館 か ら 始 ま る

高 岡 の ま ち づ く り

 

 高岡市は郊外化が進行し、中心市街地の求心力が損なわれています。本会は、建築的な価

値を保存することを通して、本丸会館をを新しいまちづくりの中心とすることを提案しま

す。今回はその大きな道筋として、本会のスタディの中から生まれた3つのアイディアを提

案します。これらは、今後の保存協議期間での議論をとおして、より具体性をもった提案へ

と進展させることが期待されます。

3-1 <新しいまちの玄関>としての本丸会館

 本丸会館は高岡駅と伏木を結ぶ高岡市のメインストリート・広小路通りに面し、南東側

には古城公園があります(fig.6参照)。また、山町、金屋町などの昔からの市街地と、市

役所、市美術館、文化ホールなどの新しい市街地を結ぶ軸線の真中に位置し、これからの

高岡のまちづくりを考える上でも鍵となる立地にあります。本丸会館を取り壊すのではな

く、この立地を活用することで、これからのまちづくりの拠点として再整備し、歴史・文

化・観光・娯楽をむすぶ新しいまちの玄関とすることを提案します。同時に、万葉線などを

はじめとする新しい都市交通のあり方についての議論も必要になるでしょう。

fig.6 本丸会館の立地

高岡市・本丸会館本館 保存・活用にかんする一次提案書 | 13

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3-2 <ひらかれた公共施設>としての本丸会館

 本丸会館は、高岡電燈本社ビル、高岡市庁舎と長きにわたり高岡市民に親しまれてきた

建物です。今、まさに、建物の今後のあり方が問われようとしていますが、今後も市民に親

しまれる建物であるため、<ひらかれた公共施設>としての活用が求められます。(具体的

な活用案については、2章にある「保存協議会」にて作案されることが求められます。)こ

こでは建物の利用形態と同様に、周辺環境との関係が鍵になります。

 新館などの跡地の活用方法にかんしては、2009年1月25日に本会が主催したフォーラム

「本丸会館のあり方、楽しみ方を探る」で、様々なアイディア(pp.19 「資料2-2」参照)

を紹介しました。ここでは、そのひとつとして、新館などの跡地を都市公園として活用する

案を紹介します。

 高岡市中心部には古城公園という大きな都市公園がありますが、本来城郭であるので周

辺を堀に囲まれており、構造的に町並みからの距離があります。すなわち閉じた性格の落ち

つきのある都市公園です。たいして、本丸会館は、前述のとおり高岡のメインストリート・

広小路に面しており、新館などの跡地を都市公園とすることで、街並と一体化し市民に親

しまれやすい開かれた都市公園をつくることができます。また、本丸会館は広小路と古城

公園と結ぶアクセスルートの上にあります。本館の保存活用と敷地の都市公園としての再整

備を同時に行なうことで、<ひらかれた公共施設>として市民の新しい集いの場となるで

しょう。

fig.7 新館等の空地を都市公園として再整備

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3-3 <ものづくりの拠点>としての本丸会館

 高岡市は、近世より銅器・漆器などのものづくりの町として発展してきました。金屋

町・山町の伝統的建造物群や高岡大仏などは、その遺構として、今もなおものづくりの町

としての歴史を語ります。しかし、実質的な製造の拠点は郊外展開しているのが現状です。

そこで、本丸会館を市内に点在する生産・制作活動の場をつなげるための新しい施設とす

ることを提案します。これには次の2つの方針が考えられます。

 1) 地元企業にたいして、ものづくりの発表の場として本丸会館を提供すること。

 2) 市内外の工芸家、芸術家、産業デザイナーなどにたいし、発表の場や制作の場を提

供し、新しい<ものづくりの拠点>として活用を促すこと。

(ex.アーティスト・イン・レジデンス)

 このように、本丸会館を<ものづくりの拠点>として再整備することで、今まで中心市

街地を訪れることのなかった多くの人々が本丸会館に訪れます。本丸会館が町を活性化し、

また町が本丸会館を活性化することで、高岡市中心部に対してあらたな賑わいを創出する

ことが望まれます。

fig.8 <ものづくりの拠点>としての再整備

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資料

資料1

情報公開の結果

 本会は、2009年3月、高岡市用地管財課より次の資料の情報公開を受けました。

1-1) ここ5年程度の施設管理公社が本丸会館(本館、新館、別館)に要した修繕費一覧

1-2) ここ10年程度の施設管理公社の本丸会館にかんする支出内訳

1-3) 本丸会館(本館、新館、別館)の竣工図面(意匠図、構造図など)

上記資料のうち、1-1)、1-2)を本提案書に付します。

資料1-1 ここ5年の修繕費一覧

年度 項目 金額 (円)

15年度 本館ロビー塗装工事 985,950

新館屋上防水改修工事 882,000

本館内部改修工事 9,639,000

本館内部改修電気工事 2,709,000

H15小計 14,215,950

16年度 外壁修繕工事 7,560,000

18年度 駐車場舗装修繕工事 2,835,000

本館2階女子トイレ改修 328,440

本館3階女子トイレ改修 1,299,711

H18小計 4,463,151

19年度 新館エレベーターリニューアル分割改修工事 4,368,000

新館4階男子トイレ改修工事 1,216,950

H19小計 5,584,950

※ 本館に要した修繕費(H15~H19) 14,962,101

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資料1-2 ここ10年の高岡市・施設管理公社の本丸会館関連経費

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2H978H22+

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2H3:5H+2+

2H989H*5+

2H873H28+

2H*55H0:+

2H200H8:+

*H*75H+++

27H+92H:79

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38H*++

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*3H55:

23H+++

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9*+H+82

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2H229H709

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*H:9:H928

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237H257

2H380H290

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0H8:+H33*

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:H8:2H32*

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5:H+00H559

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5*0H803

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572H557

752H2*7

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*H*0:H220

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0H:::H798

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8H5*9H92+

8H5*9H92+

8H5*9H92+

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資料2

事業計画案・新館など跡地の利用計画案

※2009年1月25日、本会が主催したフォーラム(「本丸会館のあり方、楽しみ方を探る」)で発表した事業計画案、空地

の活用計画案を付させていただきます。

資料2-1 事業計画案

A案

 主要用途 複合施設

 運用形態 上下分離方式

 所有者 建物-行政/土地-行政

 運用主体者 民間(NPO)

 改修費の負担 行政

 参考事例 ルネスホール岡山(岡山市)

B案

  主要用途 アーティスト・イン・レジデンス

  運用形態 公営(or 上下分離方式)

  所有者 建物-行政/土地-行政

  運用主体者 行政(or NPO)

  改修費の負担 行政

  参考事例 ZAIM(横浜市)

Bank Art(横浜市)

C案

  主要用途 分譲住宅、SOHO

  運用形態 定期借地権付分譲住宅

  資産の所有 建物-建設組合/土地-行政

  運用主体者 建設組合・管理組合

  改修費の負担 建設組合・管理組合

  参考事例 求道学舎(千代田区)

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資料2-2 空地の活用計画案

1. まちをつむぐ、まちをつなぐ 2. <町家サイズ>のガラスケース

用途: 都市公園、(テナント、図書館、ギャラリーなど)

主旨: 本丸会館は高岡城本丸跡の軸線上に位置しています。

これをヒントに「つむぐ&つなぐ」をコンセプトを考えまし

た。すなわち、敷地周辺の特徴的な場所から軸線を引き、その

軸線に併せて公園内の新設建物を配置し、高岡の土地性を再び

現すことを意図しました。また、この様々な軸線上にたいし、

ギャラリーカフェなどの機能を配置することで、多様なパブ

リックスペースが生まれることを考えました。高岡市には都市

公園と言える場所が少ないため、本丸会館を町に対してオープ

ンに活用していくことが必要だと考えます。  (蒲 由奈)

用途: 複合施設(テナント、図書館、広場、カフェなど)

主旨: 町家と本丸会館。この相反する建築がまさにこの場で

集おうとしています。市内に数ある町家だけでなく近代建築で

ある本丸会館も高岡の重要な建築物です。これを知覚する場を

提案します。普段は間口しか見る事のない町家独特のカタチと

サイズを1つの仮設のモジュールとし、イベントに応じて敷地

内に散りばめます。これにより町家の形態がもつ面白さを感じ

させるようにしました。そして、本丸会館との対比の中で生ま

れる空間が、高岡の人にとって心地のよい場所になることを目

指しました。              (三上 恵理華)

3. まちと本丸会館をつなぐ<中庭> 4. 町並みとしてのデザイン

用途: 1F)店舗やオフィスなど、2F)集合住宅

主旨: この提案では敷地の中央につくられた「中庭」に焦点

をおきました。コの字型の新築物を持ち上げ、1階部分を自由

に行き来できるようにすることで、「まち」と「本丸会館」を

やさしくつなぐ新しい空間を生み出します。本館のどっしりと

したイメージと対比してウェーブ用いることで、やわらかく親

しみやすい印象から様々なユーザーを「中庭」へ惹きつけ・引

きよせ、本丸会館を中心にコミュニケーションの輪が広がるこ

とを期待します。

(加藤智子)

用途: 複合施設(テナント、図書館、ギャラリーなど)

主旨: 本丸会館は4つの道路に囲まれた街区に位置していま

す。この提案では、1)それぞれの街路のスケールを把握し、そ

れに建物の大きさを合わること、2)周辺街路に対してポケット

パークをつくること、3)利用者が集える中庭をつくること、の

3点をガイドラインとしました。以上により、周辺景観との調

和をとりながら、町並にたいして<寄付き>をつくることで、

新しい建物が市民にとって馴染みやすいものとなることを目指

しました。

(法澤龍宝)

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高岡市・本丸会館

保存・活用にかんする一次提案書

ver. 1.1

発行年 2009年5月23日

企画・制作 本丸会館とまちづくりの会

933-0055 高岡市中川園町5-14

(代表)本田 恭子

http://hon-maru-kaikan.cocolog-nifty.com

編集 法澤 龍宝 法澤建築設計事務所

936-0023 富山県滑川市柳原32-1(有限会社法澤木材工業内)

[email protected]

http://homepage.mac.com/ryuho/rha_web

執筆 松政 貞治 まえがき、序章 富山大学芸術文化学部・教授

市民A 1章 高岡市在住

太田 清 1章 高岡市在住

法澤 龍宝 2章、3章 法澤建築設計事務所、京都大学大学院・研究生

加藤 智子 資料 富山大学芸術文化学部

蒲 由奈 資料 富山大学芸術文化学部

三上 恵理華 資料 富山大学芸術文化学部

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入会者募集

 本会(本丸会館とまちづくりの会)では、随時、入会者を募集しております。あたなたも、本丸会館の建築的な魅力

にふれ、今後の高岡のまちづくりについて考えてみませんか?

年会費  個人  1口 1000円

団体  1口 2000円 ※1口以上、何口でも可

連絡先 933-0055 高岡市中川園町5-14 / 代表 本田恭子

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