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2011/07/12 浅見
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Function of Hippocampus in “Insight” of Problem Solving
Jing Luo1 and Kazuhisa Niki
HIPPOCAMPUS 13:316–323 (2003)
INTRODUCTION
� Wolfgang(1917)の発見以降、問題解決における洞察の過程は重要な調査の目的とな
った
� しかしながら、洞察の神経相関は未だ解明されていない
� 洞察は 2つの要素を持つ
1. 不適切な固着からの脱却
2. 課題特有な関連性の新規な構築
� 両方の要素が海馬の役割と密接に関わっている可能性がある
� 洞察は不適切な心的固着を破壊したときに起こる
� 例)9点問題における輪郭からの逸脱
� 不適切な心的固着の解消によって、再配列に似た処理(Redish, 2001)を通して海馬が
賦活すると考えられる
� また、洞察は新規な課題特有の関連性が形成されたときに起こる
� 例)チンパンジーの洞察
� 木箱を押す
� 木箱の上に登る
� チンパンジーは特定の問題解決状況において、これら 2つの技術を組み合わせた
際に洞察が起こす(e.g., Epstein et al., 1984)
� 海馬は関連性の形成の役割を持つことが知られている
� 動物実験(Eichenbaum et al., 1994; Wallenstein et al., 1998)
� 神経画像研究(Cohen et al., 1999)
� 海馬の役割のネットワークモデル(McClelland et al., 1995; Rolls, 1996)
� このことから、課題特有の新規な関連性の形成は、海馬を活性化させる可能性がある
� 本研究において、課題には日本の謎々が使用された
� 答えの提示と理解のプロセスは fMRIで取得された
� 調査の効率を上げるために 2つのアプローチが用いられた
1. 参加者特有のアイテム
2. イベント特有の分析
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� event-relatedな fMRIを使用し、参加者が洞察イベントの神経相関を記録した
MATERIALS AND METHODS
� Data Acquisition
� 全てのスキャンは 3.0テスラのMRIスキャナー(GE 3T Signa)によって、エコ
ープラナー法で取得された
� 頭の動きを避けるため、参加者はギプスを着床し、スキャン中には動いたり話し
たりしないように促された
� Experimental Paradigm
� 300の謎々がインターネットから獲得された
� 謎々の内容と答えのマッチングの評価を行い、上位 45の謎々を課題とした
� fMRIの実験に参加しない被験者グループによって評価された
� 選出された謎々の解は質問と非常に合致していた
� 問「重い丸太は運べても、小さな釘は運べないもの」
� 答「川」
� 質問の長さは 16文字、解は 7文字に統制された
� スキャンを始める前に、参加者は選出された 45のリストの謎々を提示され、それ
らの解決を行うように指示された
� 3つの選択肢から 1つを選ぶように教示
1. 質問はよく理解でき、答えもわかった
� この場合、答えを書くように指示された
2. 質問はよく理解できたが、答えはわからなかった
3. 質問も理解出来ないし、答えもわからない
� それぞれの謎々について、参加者は最大で 3分間与えられた
� fMRIを使用した実験において、タイプ 2と判断された問題がそれぞれの参加者ご
とに 16問用意された
� つまり、参加者ごとに提示される問題は異なる
� スキャンセッションでは、謎々が 6s提示され、参加者は解がわかったか否かを尋
ねられた
� 8sのディレイの後、謎々の解が 2s提示された(fig. 1)
� 参加者が手順に慣れるように、実験を行う前に練習試行を行った
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� Participants
� 7名の右利きの学生(女性 4名、男性 3名、年齢:20-22)が実験に参加した
� Data Analysis
� 分析において、3つのタイプのイベントが定義された
1. 質問提示時に、答えがわからなかったイベント(イベント Q)
2. 解答提示時に、答えの意味がわかったイベント(イベント A)
3. 解答提示時に、答えの意味がわからなかったイベント(イベント AD)
� 質問提示時に、答えがわかったイベントは全ての参加者を通じて存在しなかった
� 十分なイベントが得られたイベント Aとイベント Qのみを分析対象とした
RESULTS
� 90%の試行において、参加者は質問提示時に解は発見できず、解答提示時に解の意味
を理解した
� 質問への判断(解決/未解決)の平均反応時間
� 5.6s(SD=2.34)
� 解の理解への判断(理解した/理解できなかった)の平均反応時間
� 1.44s(SD=1.02)であった
� fMRIの結果では、前頭部、側頭部、頭頂部、後頭部において、広い分散型の活性化が
見られた
� しかし、重要なのは、イベント Aで右側海馬の高い活性化が見られた点である(Fig. 2)
� さらに、イベント A×イベント Qの分析は、イベント Aで活性化した部位と同じ場所
で、イベント Qよりもイベント Aがポジティブな活性化を示していた(Fig. 2)
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DISCUSSION
� 右側海馬の活性化がイベント Aとイベント A×イベント Qで観察された
� 解の提示や理解のイベントにおける有意な海馬の活性化
� 海馬と洞察のプロセスを補助する神経ネットワークとの関連を示唆
� 以下に、洞察における海馬の役割の可能性を考察する
� Formation of Novel Associations
� 謎々の解決は子供の頃に獲得され、日常の中で親しんでいる一般的な概念である
� つまり、イベント Aでの活性化が刺激の新規性によって引き起こされたもの
(Tulving et al., 1994, 1996; Knight, 1996; Grunwald et al., 1998)ではないと
考えられる
� 海馬の活性化はむしろ新規な関連性が形成されることにより起こったと思われる
� Breaking of Unwarranted Mental “Fixation”
� 上記以外の可能性は、海馬が洞察における心的固着の脱却に関連したプロセスを
仲立ちしているというものである
� 多くの謎々はミスリードな説明を含んでいる
� 例)「重い丸太は運べるが、小さな釘は運べない」
� 「重い丸太」、「運ぶ」という単語がクレーンのようなものについて考え
るようにミスリードしている
� 解答が提示されたとき、参加者は先行する仮説が間違っていたことに気づき、心
的固着が解消される
� 考え方の気づきや誤った固着の解消といったプロセスは、統合や再配列(e.g.,
Whishaw et al., 1997; Redish, 2001)と同様に海馬によって仲立ちされる可能
性がある
� 先行研究では前頭葉(e.g., Delis et al., 1992; Koechlin et al., 1999; Crozier et al.,
1999; Duncan and Owen, 2000)や側頭葉(e.g., Prabhakaran et al., 2001; Goel et
al., 2000; Hodges et al., 1999)の役割が問題解決に関連することを示している
� しかしながら、それらの課題では海馬の活性化がなかったことが示されてい
る(Goel et al., 2000)
� 1つの可能性としては、それらの課題では心的固着の解消や気づきのプロセスがな
かったことによるものだと考えられる
� Things Behind “Forming of Novel Associations” and “Breaking of Mental Fixation”
� 新規な関連性の形成のプロセスや固着の解消や気づきのプロセスが、海馬と関連
していることが示唆された
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� しかしながら、そのどちらに関連しているかに関しては、区別することがで
きない
� 一方で、新規な関連性の形成と固着の解消が独立したプロセスではないという可
能性もある
� この関係は認知地図と宣言的記憶における海馬の役割と類似している
� 認知地図と宣言的記憶において海馬が橋渡しの役割をしている(Redish,
2001)
� つまり、洞察における海馬の役割が、古い何かの棄却(心的固着の解消)と新し
い何かの構築(新規な関連性の形成)の両者の橋渡しの役割をしていることを示
唆している
� “Insight” and Memory
� 洞察的な経験は記憶に強く保持されることは一般的に知られている
� 動物を対象とした実験(e.g., Epstein et al., 1984)
� 人間を対象とした実験(e.g., Auble et al., 1979; Wills et al., 2000)
� 進化論の観点から、洞察経験への反応や長期記憶への貯蔵の特性は、動物の生存
確率を非常に高める可能性がある(Luo and Niki, 2002)
� 当然ながら、海馬単独で洞察に到達することはできない
� 事実、前頭部、側頭部、頭頂部、後頭部を含む大脳皮質での広い範囲での活性化
が、洞察イベントに関連して観測された
� 本研究の強みは海馬による補助的な役割の解明であったが、前頭葉のような他の
領域の役割も同様に重要である
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� 上段左の図
� イベントAの賦活箇所
� 上段右の図
� イベントA×イベントQでの比較
� 下段の図
� 時間を横軸にとった青い交点(活性化の最大値を示したボクセル)での信号変化
の比較