カーボンニュートラル賞 第6回カーボンニュートラル賞 関東 ......ashrae...

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カーボンニュートラル賞 受賞名称 第6回カーボンニュートラル賞 関東支部 奨励賞 カーボンニュートラル賞選考支部名称 第6回カーボンニュートラル賞選考委員会 関東支部 業績の名称 所在地 東京都千代田区神田和泉町1 応募に係わる建築設備士の関与 山田 一樹 応募者又は応募機関 代表応募者・機関 建物管理者 建物利用者 建物利用者 地上10階 地下2階 塔屋2階 事務所 竣工年月日 2015年6月 YKK80ビル 都市型環境建築における徹底したエネルギー削減とその手法 株式会社日建設計 水出 喜太郎 東洋熱工業株式会社 株式会社日建設計 YKK不動産株式会社 株式会社日建設計 鹿島・戸田・大和ハウス工業建設共同企業体 東洋熱工業株式会社 興和不動産ファシリティーズ株式会社 YKK株式会社 YKKAP株式会社 20,919.85 支部選考委員長講評 本建物は、都心立地、大規模オフィスビルという条件でありながら、再生可能エネルギー利用しない省エネルギーへ の取り組み・工夫によるCO2削減率が50%に達成している。 西面日射、高速道路の騒音と景観という過酷な敷地条件の中で構築された多機能ファサードは、アウタースキン・庇 兼用バルコニー・クライマー型自動制御ブラインド内蔵二重窓のより構成され、多くの機能を有し意匠性、執務者の 快適性を実現するとともに地球環境配慮にも貢献している。 執務室(インテリアゾーン)の空調方式は、放射空調(中温冷水)+デシカント外調機を組み合わせた潜熱顕熱分離 空調により快適性を目指して「微気流」を付加した空調方式を採用している。同空調方式により、夏期に快適性を保 ちつつ設定温度緩和(27~28℃)を可能にしている。中間期は放射空調と外気冷房のハイブリッド方式として外気冷 房利用期間の最大化を図っている。微気流併用放射空調方式と外気冷房により大きなエネルギー削減を実現してい る。 特徴的な外観の西面の多機能ファサードと、階高制限の中で実現した執務室の微気流併用放射空調方式の構築は、建 築・設備技術者の高いレベルの知見の融合で実現したものである。 自然エネルギーの活用として、外気冷房、クール/ヒートトレンチ、井水利用空調、再生水利用と節水器具による省資 源化を実施している。節水については厨房排水・雨水・井水・空調ドレンを再利用し、超節水大便器(3.8L型)を採用 し、雑用水のほぼ100%を賄っていることを高く評価する。 洗浄水3.6L超節水大便器(+配管方式)と微気流併用放射空調システムは、今後の普及を期待したい。 都心立地の大規模オフィスビルで再生可能エネルギーを利用しない省エネルギーの取り組み・工夫で50%のCO2削減率 を達成、洗浄水3.6L大便器の採用および徹底した水の再利用を行い雑用水のほぼ100%を再生水で賄えたこと、そして ASHRAE Technology Award:First Placeの受賞とLEED-CS:PLATNUMの国際的な評価受けている点は特筆できる。 一般社団法人建築設備技術者協会カーボンニュートラル賞運営委員会

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Page 1: カーボンニュートラル賞 第6回カーボンニュートラル賞 関東 ......ASHRAE Technology Award : First Place BELS : 5 CASBEE( 2014,自己評価) : S (BEE=5.7)

カーボンニュートラル賞

受賞名称

第6回カーボンニュートラル賞 関東支部 奨励賞

カーボンニュートラル賞選考支部名称

第6回カーボンニュートラル賞選考委員会 関東支部

業績の名称

所在地

東京都千代田区神田和泉町1

応募に係わる建築設備士の関与

山田 一樹

応募者又は応募機関

代表応募者・機関

建 築 主

設 計 者

施 工 者

施 工 者

建物管理者

建物利用者

建物利用者

延 床 面 積 ㎡

階 数 地上10階 地下2階 塔屋2階

主 用 途 事務所

竣 工 年 月 日 2015年6月

YKK80ビル 都市型環境建築における徹底したエネルギー削減とその手法

株式会社日建設計 水出 喜太郎

東洋熱工業株式会社

株式会社日建設計

YKK不動産株式会社

株式会社日建設計

鹿島・戸田・大和ハウス工業建設共同企業体

東洋熱工業株式会社

興和不動産ファシリティーズ株式会社

YKK株式会社

YKKAP株式会社

20,919.85

支部選考委員長講評 本建物は、都心立地、大規模オフィスビルという条件でありながら、再生可能エネルギー利用しない省エネルギーへの取り組み・工夫によるCO2削減率が50%に達成している。西面日射、高速道路の騒音と景観という過酷な敷地条件の中で構築された多機能ファサードは、アウタースキン・庇兼用バルコニー・クライマー型自動制御ブラインド内蔵二重窓のより構成され、多くの機能を有し意匠性、執務者の快適性を実現するとともに地球環境配慮にも貢献している。執務室(インテリアゾーン)の空調方式は、放射空調(中温冷水)+デシカント外調機を組み合わせた潜熱顕熱分離空調により快適性を目指して「微気流」を付加した空調方式を採用している。同空調方式により、夏期に快適性を保ちつつ設定温度緩和(27~28℃)を可能にしている。中間期は放射空調と外気冷房のハイブリッド方式として外気冷房利用期間の最大化を図っている。微気流併用放射空調方式と外気冷房により大きなエネルギー削減を実現している。特徴的な外観の西面の多機能ファサードと、階高制限の中で実現した執務室の微気流併用放射空調方式の構築は、建築・設備技術者の高いレベルの知見の融合で実現したものである。自然エネルギーの活用として、外気冷房、クール/ヒートトレンチ、井水利用空調、再生水利用と節水器具による省資源化を実施している。節水については厨房排水・雨水・井水・空調ドレンを再利用し、超節水大便器(3.8L型)を採用し、雑用水のほぼ100%を賄っていることを高く評価する。洗浄水3.6L超節水大便器(+配管方式)と微気流併用放射空調システムは、今後の普及を期待したい。都心立地の大規模オフィスビルで再生可能エネルギーを利用しない省エネルギーの取り組み・工夫で50%のCO2削減率を達成、洗浄水3.6L大便器の採用および徹底した水の再利用を行い雑用水のほぼ100%を再生水で賄えたこと、そしてASHRAE Technology Award:First Placeの受賞とLEED-CS:PLATNUMの国際的な評価受けている点は特筆できる。

一般社団法人建築設備技術者協会カーボンニュートラル賞運営委員会

Page 2: カーボンニュートラル賞 第6回カーボンニュートラル賞 関東 ......ASHRAE Technology Award : First Place BELS : 5 CASBEE( 2014,自己評価) : S (BEE=5.7)

業績名称:YKK80 ビル 都市型環境建築における徹底したエネルギー削減とその手法

応募申請書 様式 3

■ 業績の概要とカーボンニュートラル化に関わる取り組みの要旨

 YKK80 ビルは、幹線道路に面し活気ある秋葉原に接する。東日本大震災をふまえた、災害に強く、快適に執務でき且つ省エネルギーに寄与する計画が求められた。下記 3 つの観点で業績を述べる。①設計 - 施工 - 運用段階における一貫した性能検証 を建築主を含む関係者で実施し継続的に情報 共有することで、長寿命な建築を目指している。②内外放射コントロールに着目した多機能ファ サード及び室内環境 ( 微気流併用放射空調 ) で省 エネと快適性を両立。③都市型環境建築として、普及性のある自然エネル ギー活用技術による徹底した環境負荷削減

・LED 照明の採用・照明の明るさ、人感センサー制御・節水型衛生器具の採用・外気冷房+外部ダクトへのミスト設備・タスクアンドアンビエント照明・高性能コンセント設備

・外装のスクリーン効果 +ブラインド内蔵二重窓 +庇による日射負荷低減

・防水壁

・厨房除害再生水処理設備・井水の熱と水源への多段階利用・クールヒートトレンチによる地中熱利用

・熱源、デシカント外調機

・太陽光発電・緑化による室外機効率の向上

・BCP 用に3日分の容量を確保した給排水槽

・基礎免震構造

 省エネルギー技術の断面構成図を ( 図 1) に示す。様々な技術は、設計段階でのシミュレーション、施工段階でのモックアップ、運用段階での性能検証会議 ( 毎月開催 ) により検証され、意図されたエネルギー削減が確実に運用、実現することが確認してきた。 2016 年 4 月~ 2017 年 3 月の 1 年間の月別省エネルギー効果を ( 図 2) に示す。盛夏に注目すると、西面ファサードにおいて、WEB プログラム基準「庇なし , 単板ガラス , ブラインド有り」と比べ、日射遮蔽による負荷削減効果が大きい。次いで室内温度緩和効果が大きく、これは微気流併用放射空調によって

夏期に快適性を保ったまま 27 ~ 28℃への設定緩和を実現し、冬期にはチルドビームの温風運用でペリメータ負荷を効率よく処理した結果といえる。更に熱源からの供給水温は、冷水還 17℃ / 往 13℃、温水還 37.5℃ / 往 45℃とすることで、ヒートポンプ熱源の効率向上による省エネ効果も計上されている。また、ファンインバータ効果が 10 月や 4,5 月の中間期に多く計上され、外気冷房の効果が確認された。 1 年間の実績値は 960[MJ/ ㎡年 ] となった。 この値は東京都省エネカルテ(平成 26 年度公表)の事務所の基準値からは 63% の削減に相当する ( 図 3)。

① 省エネルギーの取組み・工夫 一貫した性能検証により実現した、エネルギー削減技術の実績

LEED-CS ( v.2009 )      : PLATINUM (91pt)ASHRAE Technology Award  : First PlaceBELS            : 5 ★CASBEE( 2014, 自己評価 )   : S (BEE=5.7)

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所在地   : 東京都千代田区神田和泉町 1敷地面積 : 2,640.05㎡    建築面積 : 2,059.63㎡  延べ面積 : 20,919.85㎡   階数 : 地上 10 階,地下 2 階主体構造 : 鉄骨鉄筋コンクリート造他、免震構造、CFT工  期 :  2013 年 2 月~ 2015 年 6 月熱源方式 : 電気 / ガス熱源空冷 HP チラー (13℃ /18℃ )708kW/568kW空調方式 : HP デシカント外調機+放射パネル ( 冷水、温水 4 管 )       + チルドビーム ( ペリメータ用:冷温水 2 管 )       + 微気流 ( 夏季 )+ 外気冷房 ( 中間期 )給水方式 :  高置水槽方式 ( 上水・雑用水 2 系統 )雑用水水源: 井水、雨水、厨房排水処理水、空調ドレン衛生器具 :  3.8L 超節水大便器、14 秒オートストップ手洗水栓受電方式 :  本線予備電源引込 3 φ 3W発電機  :   ディーゼル発電機 750kVA

設計趣旨

建築概要

環境ラベリング

図 3. 一次エネルギー消費量の統計値と実績の比較

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単位面積当たりの一次エネルギー削減量

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太陽光発電 再生水利用高性能コンセント 照明の削減厨房の換気量低減 駐車場のCO制御外気冷房ダクトミスト クール/ヒートトレンチ井水熱利用 室外機置場の芋緑化空調機の省エネ効果 ポンプインバータ化ファンインバータ化 放射パネル搬送動力低減室内温度緩和 熱源中温化効果

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統計値*1 YKK80ビル(実績値)

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一次エネルギー消費量内訳 (2016年4月~2017年3月)

その他給排水昇降機給湯熱源コンセント照明換気空調熱源

-63%

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(実績)

5 月 6 月 7月 8月 9月 10 月 11 月 12 月 1月 2月 3月4月2016 年 2017 年

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単位面積当たりの一次エネルギー消費量[MJ/m2] ガス:熱源 熱源 水搬送 熱搬送 デシカント

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単位面積当たりの一次エネルギー消費量[MJ/m2] ガス:熱源 熱源 水搬送 熱搬送 デシカント換気 照明 コンセント 給湯 厨房ELV動力 給排水 その他 空調設備 換気設備照明設備 給湯設備 昇降機 その他

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ガス:熱源 熱源 水搬送 熱搬送 デシカント換気 照明 コンセント 給湯 厨房ELV動力 給排水 その他 空調設備 換気設備照明設備 給湯設備 昇降機 その他

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単位面積当たりの一次エネルギー削減量

[MJ/m2]

太陽光発電 再生水利用高性能コンセント 照明の削減厨房の換気量低減 駐車場のCO制御外気冷房ダクトミスト クール/ヒートトレンチ井水熱利用 室外機置場の芋緑化空調機の省エネ効果 ポンプインバータ化ファンインバータ化 放射パネル搬送動力低減室内温度緩和 熱源中温化効果

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統計値*1 YKK80ビル(実績値)

MJ/m2年

一次エネルギー消費量内訳 (2016年4月~2017年3月)

その他給排水昇降機給湯熱源コンセント照明換気空調熱源

-63%

2,609

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(実績)

5 月 6 月 7月 8月 9月 10 月 11 月 12 月 1月 2月 3月4月2016 年 2017 年

単位面積当たりの一次エネルギー消費量[MJ/m2 ]

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単位面積当たりの一次エネルギー消費量[MJ/m2] ガス:熱源 熱源 水搬送 熱搬送 デシカント

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単位面積当たりの一次エネルギー消費量[MJ/m2] ガス:熱源 熱源 水搬送 熱搬送 デシカント

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ガス:熱源 熱源 水搬送 熱搬送 デシカント換気 照明 コンセント 給湯 厨房ELV動力 給排水 その他 空調設備 換気設備照明設備 給湯設備 昇降機 その他

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ガス:熱源 熱源 水搬送 熱搬送 デシカント換気 照明 コンセント 給湯 厨房ELV動力 給排水 その他 空調設備 換気設備照明設備 給湯設備 昇降機 その他

外壁の負荷削減効果

※統計値 東京都省エネカルテ (H25 年実績 )H26 年公表における基準年・事務所

図 2. 省エネルギー技術効果の内訳

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単位面積当たりの一次エネルギー削減量

[MJ/m2]

太陽光発電 再生水利用高性能コンセント 照明の削減厨房の換気量低減 駐車場のCO制御外気冷房ダクトミスト クール/ヒートトレンチ井水熱利用 室外機置場の芋緑化空調機の省エネ効果 ポンプインバータ化ファンインバータ化 放射パネル搬送動力低減室内温度緩和 熱源中温化効果

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統計値*1 YKK80ビル(実績値)

MJ/m2年

一次エネルギー消費量内訳 (2016年4月~2017年3月)

その他給排水昇降機給湯熱源コンセント照明換気空調熱源

-63%

2,609

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(実績)

5 月 6 月 7月 8月 9月 10 月 11 月 12 月 1月 2月 3月4月2016 年 2017 年

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単位面積当たりの一次エネルギー消費量[MJ/m2] ガス:熱源 熱源 水搬送 熱搬送 デシカント

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単位面積当たりの一次エネルギー消費量[MJ/m2] ガス:熱源 熱源 水搬送 熱搬送 デシカント

換気 照明 コンセント 給湯 厨房ELV動力 給排水 その他 空調設備 換気設備照明設備 給湯設備 昇降機 その他

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ガス:熱源 熱源 水搬送 熱搬送 デシカント換気 照明 コンセント 給湯 厨房ELV動力 給排水 その他 空調設備 換気設備照明設備 給湯設備 昇降機 その他

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ガス:熱源 熱源 水搬送 熱搬送 デシカント換気 照明 コンセント 給湯 厨房ELV動力 給排水 その他 空調設備 換気設備照明設備 給湯設備 昇降機 その他

外壁の負荷削減効果

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単位面積当たりの一次エネルギー削減量

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太陽光発電 再生水利用高性能コンセント 照明の削減厨房の換気量低減 駐車場のCO制御外気冷房ダクトミスト クール/ヒートトレンチ井水熱利用 室外機置場の芋緑化空調機の省エネ効果 ポンプインバータ化ファンインバータ化 放射パネル搬送動力低減室内温度緩和 熱源中温化効果

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統計値*1 YKK80ビル(実績値)

MJ/m2年

一次エネルギー消費量内訳 (2016年4月~2017年3月)

その他給排水昇降機給湯熱源コンセント照明換気空調熱源

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(実績)

5 月 6 月 7月 8月 9月 10 月 11 月 12 月 1月 2月 3月4月2016 年 2017 年

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実績

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

単位面積当たりの一次エネルギー消費量[MJ/m2] ガス:熱源 熱源 水搬送 熱搬送 デシカント

換気 照明 コンセント 給湯 厨房ELV動力 給排水 その他 空調設備 換気設備照明設備 給湯設備 昇降機 その他

0

20

40

60

80

100

120

140

160

基準

実績

基準

実績

基準

実績

基準

実績

基準

実績

基準

実績

基準

実績

基準

実績

基準

実績

基準

実績

基準

実績

基準

実績

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

単位面積当たりの一次エネルギー消費量[MJ/m2] ガス:熱源 熱源 水搬送 熱搬送 デシカント

換気 照明 コンセント 給湯 厨房ELV動力 給排水 その他 空調設備 換気設備照明設備 給湯設備 昇降機 その他

実績

基準

実績

基準

実績

基準

実績

基準

実績

基準

実績

基準

実績

基準

実績

基準

実績

基準

実績

6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

ガス:熱源 熱源 水搬送 熱搬送 デシカント換気 照明 コンセント 給湯 厨房ELV動力 給排水 その他 空調設備 換気設備照明設備 給湯設備 昇降機 その他

実績

基準

実績

基準

実績

基準

実績

基準

実績

基準

実績

基準

実績

基準

実績

基準

実績

基準

実績

6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

ガス:熱源 熱源 水搬送 熱搬送 デシカント換気 照明 コンセント 給湯 厨房ELV動力 給排水 その他 空調設備 換気設備照明設備 給湯設備 昇降機 その他

外壁の負荷削減効果

2016 年 2017 年

図 1. 省エネルギー技術の断面構成図

写真 1. YKK80 ビル 外観写真 西に面するメインファサード

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業績名称:YKK80 ビル 都市型環境建築における徹底したエネルギー削減とその手法

応募申請書 様式 3

■ 業績の概要とカーボンニュートラル化に関わる取り組みの要旨

 東京都千代田区、秋葉原駅近くに立地する。メインファサードは西に面し、長さは約 70m である。昭和通りおよび首都高速道路を目前にし、その幹線道路の向こう側は駅前繁華街と中小ビル群が広がる。都心に立地し、日射、騒音、景観において過酷な敷地条件の中で、外装はグローバルヘッドクォーターの顔となる意匠性、執務者の快適性、地球環境配慮を実現する、多機能ファサードとして計画された。

 建物の最外部のアウタースキンは、日本の伝統的なスダレに着想し、材質は YKK を象徴するアルミ押出材を用いた多層型アルミレイヤーとした。 その内側に奥行 1.5m の庇兼バルコニーがあり、空調・換気用の主ダクトをこのバルコニー部に配置することで、執務室内のダクトスペースを削減し、整形なオフィス空間を確保している。また、このスペースはメンテナンスデッキの役割もあり、ダクトや付属機器の保全、窓清掃に活用される ( 写真 4)。窓は外部騒音に配慮し、中空二重窓を採用した。ブラインドはその二重窓内に設置され、庇でカットしきれない直達日射を遮りながら眺望が確保できるクライマー型自動制御ブラインドを実装した。室内の温熱環境はチルドビームにて適切に処理される ( 写真 5)。 このように、アウタースキン、庇、窓、ブラインドの機能を組み合わせたファサードは、下記の 9つの機能を有する多機能ファサードとして構築された(図 4, 5)。 ①直射光のカットによる眩しさ低減 ②日射遮蔽による負荷削減と窓面放射の低減 ③適度な拡散光による昼光利用 ④屋外騒音の低減 ⑤整形な執務室の確保 ⑥落下防止対策のされたメンテナンスデッキ ⑦修景、眺望コントロール ⑧雷保護 ⑨チルドビームによる窓面放射環境向上

2 / 4

2) 多機能ファサードの計画意図1) 多機能ファサードの概要

▽ FL

外気冷房用ダクトアルミ押出材のアウタースキン(すだれ)

調湿外気供給用ダクト

放射パネルチルドビーム

中空二重窓

OAフロアを利用した還気自動制御クライマーブラインド

眺望

▽ FL

二重ガラスの場合

SHGC: 0.66 (計画値)

アルミレイヤー+二重ガラスの場合

SHGC: 0.39 (計画値)0.35 (実測値)

アルミレイヤー +二重ガラス+クライマーブラインドの場合 SHGC: 0.10 (計画値)0.14 (実測値)

▽ FL

ダクトミスト⑨窓面放射環境向上

⑥落下防止対策 を兼ねたメン テナンスデッキ

⑤整形な執務 室の確保

▽ FL

③適度な拡散光による昼光利用

▽ FL

①直射光カットによる眩しさ低減

⑦修景 / 眺望コントロール

⑧雷保護

②日射放射を低減

④屋外騒音の低減

一枚の繊細で大きなファブリックを広げたようなファサードがシンボル性を創出している。

雑然とした街並みをフィルタリングし、眺望をコントロールすることで、室内に落ち着きをもたらす。

② -1 低カーボンエネルギーへの転換 本社ビルの顔となる多機能ファサード

▽ FL

外気冷房用ダクトアルミ押出材のアウタースキン(すだれ)

調湿外気供給用ダクト

放射パネルチルドビーム

中空二重窓

OAフロアを利用した還気自動制御クライマーブラインド

眺望

▽ FL

二重ガラスの場合

SHGC: 0.66 (計画値)

アルミレイヤー+二重ガラスの場合

SHGC: 0.39 (計画値)0.35 (実測値)

アルミレイヤー +二重ガラス+クライマーブラインドの場合 SHGC: 0.10 (計画値)0.14 (実測値)

▽ FL

ダクトミスト⑨窓面放射環境向上

⑥落下防止対策 を兼ねたメン テナンスデッキ

⑤整形な執務 室の確保

▽ FL

③適度な拡散光による昼光利用

▽ FL

①直射光カットによる眩しさ低減

⑦修景 / 眺望コントロール

⑧雷保護

②日射放射を低減

④屋外騒音の低減

写真 3. 内側からみた秋葉原の街並み写真 2. 外側からみた外装

写真 4. メンテナンスデッキ 写真 5. コミュニケーションスペース

床下還気口

チルドビーム

換気ダクト

ブラインド内臓二重窓

アウタースキン(アルミ押出材簾)

放射パネル

図 4. ファサードダイアグラム 図 5 ファサードの機能

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業績名称:YKK80 ビル 都市型環境建築における徹底したエネルギー削減とその手法

応募申請書 様式 3

■ 業績の概要とカーボンニュートラル化に関わる取り組みの要旨

 インテリアゾーンの空調設備は、放射空調とデシカント外調機を組み合わせた潜熱顕熱分離空調とした。顕熱処理は搬送動力低減を意図し、水式放射空調とし、潜熱処理にはヒートポンプデシカント外調機を採用し、熱源と分離するシステムとした。これにより、熱源は中温度の冷水 / 温水の供給が可能となった。 中間期は外気冷房と放射空調のハイブリッド方式として外気冷房期間の最大化を図った。搬送動力削減のため、コイルやローターを介さない外気冷房専用のファンを設けた。 放射空調は天井に設置した放射パネルにて行う。山谷のある傾斜形状とし、パネル面で冷やされた空気が自然対流により居住域へもたらされ、緩やかな循環を生むことを意図した ( 写真 6)。

 山の部分には、明るさ・人感センサー制御のライン型 LED 照明を配置した( 詳細図 )。アンビエント照明としての照度は 300lx であるが、傾斜したパネル面が反射板の役割を果たすことで、天井面の明るさ感が向上し、室内は十分な明るさを有している。谷の部分には列毎に設備プレートが配され、微気流を付加するドラフト抑制型ライン制気口、感知器等の防災設備、無線アンテナ等を有効に設置することが可能な計画としている。選定した制気口は、約 70mm 毎に風向が変えられる器具を採用し、個人の嗜好に配慮して気流感の選択を可能としている。 パネル上部のダクトより供給されるデシカント外調機の調湿外気は、小梁のない空間をプレナムチャンバーとして利用し、パネルの山谷配置により生じる隙間より押し出される。居住域へ供給された後、レタンチャンバーを兼用する床下 OA フロア (175mm) を介しデシカント外調機へ還気される。

インテリア空調の詳細

 執務空間において、微気流を付加して室温緩和を図った事例が少なく、確実に実現するために、設計 - 施工 - 運用の各段階での一貫した性能検証にて、その効果を検証した。設計段階では前述の通り、シミュレーション検討を実施し、施工段階では模擬空間での実大実験により本空調システムの基本性能の確認ならびに被験者実験による温熱環境の快適性把握を行い、実運用での設定値を決定した。この実大実験では、空調のみの確認だけなく、放射パネルの勾配、照明形状、天井面の吸音性能、微気流制気口の意匠性確認を行い、実現場へ反映をした。運用段階では施主、建物管理者、設計者、施工者、大学の5者にて、毎月1回、性能検証会議を実施し、更なる改善を進めている。なお、2017 年夏に実施した空調環境に関するアンケートでは、83.8% の執務者が満足との回答を得た。

微気流併用の効果検証

写真 6. 内観写真

3 / 4

1) インテリア空調の概要② -2 低カーボンエネルギーへの転換 微気流併用放射空調システム

 木陰のそよ風に着想し、放射空調に微気流を付加することを計画し、放射空調のその先の快適性を目指した。ここで、温度と湿度を分けてコントロールする潜熱顕熱分離空調に対し、さらに気流を付加して快適性を向上させる空調計画とした。具体には、パネル上部に小型ファンを設置し、前述ライン制気口により、居住域に 0.2m/s 程度の気流を提供するものである ( 図 6)。 2013 ASHRAE Handbook Fundamentals, ch.9 fig. 17、PMV ± 0 に示される室温・MRT・気流の関係を参照すると、室内空気温度よりも平均放射温度が低くなる放射冷房室内において、微気流を付加することで快適性を維持したまま設定室温を高く緩和できることを示唆している。これは、本計画の実効性を後押しするものであった。

2) 微気流併用の意図

図 6. 微気流併用放射空調 ダイアグラム

外気供給ダクト(デシカント給気及び外気冷房)

微気流供給ダクト

ファン

LED照明冷水/温水配管

デシカント給気及び外気冷房はパネルの隙間より緩やかに供給

傾斜したパネルを照明の反射板として使い、明るさ感向上に寄与

微気流

放射パネルが人体やOA機器の発熱を除去

チルドビームにより、窓の熱負荷を局所的に処理

放射パネル+デシカント外調機による潜熱顕熱分離空調に加え、微気流併用により設定温湿度緩和によるさらなる省エネルギーを実現

微気流

デシカント外調機へ

OAフロアにて還気

ファンチルドビーム

インテリアペリメータ

風速 (m/s)

代謝1met

着衣量lcl = 0.5clo

室温 (℃)5

5

10

15

20

25

30

35

40

45

10 15 20 25 30 35 40 45

平均

放射

温度

- t r (℃)

- t r = t a

<0.1

0.2 0.30.5

1.5

A B

クライマーブラインド内蔵二重窓

相対湿度50%

日射

放射パネル 微気流は、放射パネル間の設備プレートに配置された専用のラインディフューザーにより供給される

還気用 床吸込口

窓の熱負荷処理は、アクティブチルドビームを採用

放射パネル頂部に設置されたLED照明

26℃ 26℃27℃

温度 (℃)30℃

29℃

28℃

27℃

26℃

25℃

0.24m/s0.18m/s

0.20m/s

風速 (m/s)0.40

0.32

0.24

0.16

0.08

0.00

冷気の緩やかな下降

LED 照明

アクリルカバー詳細図

放射パネル

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業績名称:YKK80 ビル 都市型環境建築における徹底したエネルギー削減とその手法

応募申請書 様式 3

■ 業績の概要とカーボンニュートラル化に関わる取り組みの要旨

 中間期の空調負荷削減のため、外気冷房が可能な計画となっている。都心部の排気ガス等の空気環境、音環境に配慮し、交通量の多い地上付近からではなく屋上から外気を取り入れる計画としている。年間で約2,000MJ の冷房熱量が削減できており、( 図 7) に示すように性能検証による運用改善により、2 年目には運転時間を 1.3 倍程度増やすことに成功した。

 BCP 対策として、市水断水時に給水可能な井戸、地震時に建物内の揺れを低減する免震構造を採用した。災害時の対策としての投資ではあるものの、日常の省エネルギーにも寄与するしくみを計画した ( 図 8)。 免震層については、ゴム板で仕切りを構築し、クール/ ヒートトレンチとして利用できる計画とした(図9,写真 7)。温度については地中の恒温性を利用した取入れ外気の予冷予熱効果として、最大で約 10℃の顕熱を緩和できたことを確認した。

 井水の年間安定した熱を利用し、外調機の予冷予熱コイルに通水して活用する計画とした。取水制限により、日常利用可能な 10t/ 日を、便所洗浄水、植栽灌水としても利用することで、多段利用を行っている。 井戸水とクール / ヒートトレンチによる外気負荷低減効果は、外気処理エネルギーの約 40% 削減となることが運用実績により確認した ( 図 10)。

 水の省資源について、水の再利用と節水に配慮した計画とし、その効果の確認を行った。特に使用量の多い大便器の水利用において工夫を行った。 雨水、井水、厨房排水をろ過再生し、さらに空調ドレン水も再利用し、トイレ洗浄水及び植栽灌水に使用する雑用水として供給する。これにより昨年 1 年間の実績において、雑用水のほぼ 100%をこの再生水で賄うことができた ( 図 11)。 大便器は一般オフィスにおける節水型大便器 ( 洗浄水量:6L) よりもさらに小さな洗浄水量:3.8L の大便器を採用した。この 3.8L 型大便器は当初、家庭用超節水器具として開発された製品であり、オフィスビルでの多連結設置での採用は事例がなかった。そこで洗浄に不具合が起きないよう綿密な試験を実施し、汚物流下の課題をクリアして採用に至った。 また、衛生面に配慮しながら、適切な手洗時間の目安となると共に、無駄に水を流し続けることがないように配慮した。具体的には、手洗い自動水洗はオートストップ型を採用し、手をかざし続けても 14 秒で停止する仕様とし、その実施を性能検証にて確認した。 再生水利用及びの節水器具により、LEED の「水」における評価項目において、10 点満点を獲得した。なお、昨年 1 年間の建物水使用量実績は、一般建物の水使用量と比較し 45%削減を確認した ( 図 12)。

4)再生水利用と節水器具による省資源化

0

2000

4000

6000

8000

10000

12000

14000

16000

18000

20000

17,300㎥ / 年

市水

雑用水(再生水利用)

9,665㎥ / 年市水

一般建物水使用量※※東京ビルジング協会「ビル運営管理に関する調査(2013年度版)」 延床面積20,000m2~50,000m2建物

YKK80 ビル(実績値)

建物水使用量 45%削減市水     60%削減

雑用水の水源

190 183 195 188 166 189 176 185 182 183 192226

33 48 48 58 78 5744 46 38 21

362626 22

37 41 58 4030 31 24 38 19

39

0

50

100

150

200

250

300

350

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

雑用水再利用水[m³]

井水利用量 雨水利用量 厨房除害水利用量 上水 (補給水量)

図 11. 雑用水再利用の月別推移

図 12. 上水と雑用水の利用量

雑用水の水源

190 183 195 188 166 189 176 185 182 183 192226

33 48 48 58 78 5744 46 38 21

362626 22

37 41 58 4030 31 24 38 19

39

0

50

100

150

200

250

300

350

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

雑用水再利用水[m³]

井水利用量 雨水利用量 厨房除害水利用量 上水 (補給水量)

図 8. クールヒートトレンチと井水の空調利用フロー

-10 -9

-9

-8

-8

-7

-7

-6

-6

-5

-5

-4

-4

-3

-3

-2

-2

-1

-1

0

0

1

1

2

2

3

3

4

4

5

5

6

6

7

7

8

8

9

9

10

10

11

11

12

12

13

13

14

14

15

15

16

16

17

17

18

18

19

19

20

20

21

21

22

22

23

23

24

24

25

25

26

26

27

27

28

28

29

29

30

30

31

31

32

32

33

33

34

34

35

35

36

36

37

37

38

38

39

39

40

40

41

41

42

42

43

43

44

44

45

45

46

46

47

47

48

48

49

49

50

50

乾球温度 t [℃]

10

20

30

40

50

60

70

80

90

5

15

25

35

45

55

65

75

85

95

相対湿度φ[%]

00.0

01.0

02.0

03.0

04.0

05.0

06.0

07.0

08.0

09.0

10.0

11.0

12.0

13.0

14.0

15.0

16.0

17.0

18.0

19.0

20.0

21.0

22.0

23.0

24.0

25.0

26.0

27.0

28.0

29.0

30.0

31.0

32.0

33.0

34.0

35.0

36.0

37.0

絶対湿度 x [g/kg(DA)]

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

55

60

65

70

75

80

85

90

95

100

105

110

115

120

125

比エンタルピ h [kJ/kg(DA)]

湿球温度 t' [℃]

0.75 0.76 0.77 0.78 0.79 0.80 0.81 0.82 0.83 0.84 0.85 0.86 0.87 0.88 0.89 0.90 0.91比容積 v [m3/kg(DA)]

3800

4000

4500

5000

6000

7000

10000

2000040000

-40000-20000

-10000

-5000

-2000

-1000

0

500

1000

1200

1400

1600

1800

2000

2200

2400

0062 2800 3000

3200

3400

3600

3800

熱水分比 u = dh/dx

1.00

0.95

0.90

0.85

0.80

0.75

0.70

0.65

0.60

0.55

0.50

0.45

0.40

0.36

顕熱比 SHF

湿り空気 h-x 線図 気圧=101.325[kPa]

KUKISEN 3.1.8

0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%100%

02004006008001,0001,2001,4001,6001,8002,000

利用率

井水利用削減分

クール/ヒートトレンチ利用削減分

熱源による外気処理分

未利用エネルギー利用率

外気冷房効果グラフ

30℃20℃ 25℃15℃5℃ 10℃0℃ 35℃

クール /ヒートトレンチの出口温度外気温度

10℃緩和

10℃緩和

削減熱量(MJ)

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

OAクール/ヒートトレンチより

井水よりRA SA

空調機

熱交換器

二次ポンプ

プレコイル

OA OA

3 階ガラリより

空調機へ

仕切板

0

50

100

150

200

250

300

2015年9月~2016年6月

運転時間[h] 6月

5月4月11月10月

1.37倍

2016年9月~2017年6月

-10 -9

-9

-8

-8

-7

-7

-6

-6

-5

-5

-4

-4

-3

-3

-2

-2

-1

-1

0

0

1

1

2

2

3

3

4

4

5

5

6

6

7

7

8

8

9

9

10

10

11

11

12

12

13

13

14

14

15

15

16

16

17

17

18

18

19

19

20

20

21

21

22

22

23

23

24

24

25

25

26

26

27

27

28

28

29

29

30

30

31

31

32

32

33

33

34

34

35

35

36

36

37

37

38

38

39

39

40

40

41

41

42

42

43

43

44

44

45

45

46

46

47

47

48

48

49

49

50

50

乾球温度 t [℃]

10

20

30

40

50

60

70

80

90

5

15

25

35

45

55

65

75

85

95

相対湿度φ[%]

00.0

01.0

02.0

03.0

04.0

05.0

06.0

07.0

08.0

09.0

10.0

11.0

12.0

13.0

14.0

15.0

16.0

17.0

18.0

19.0

20.0

21.0

22.0

23.0

24.0

25.0

26.0

27.0

28.0

29.0

30.0

31.0

32.0

33.0

34.0

35.0

36.0

37.0

絶対

湿度

x [

g/kg

(DA)

]

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

55

60

65

70

75

80

85

90

95

100

105

110

115

120

125

比エンタルピ h [kJ/kg(DA)]

湿球温度 t' [℃]

0.75 0.76 0.77 0.78 0.79 0.80 0.81 0.82 0.83 0.84 0.85 0.86 0.87 0.88 0.89 0.90 0.91比容積 v [m3/kg(DA)]

3800

4000

4500

5000

6000

7000

10000

2000040000

-40000-20000

-10000

-5000

-2000

-1000

0

500

1000

1200

1400

1600

1800

2000

2200

2400

0062 2800 3000

3200

3400

3600

3800

熱水分比 u = dh/dx

1.00

0.95

0.90

0.85

0.80

0.75

0.70

0.65

0.60

0.55

0.50

0.45

0.40

0.36

顕熱

比 S

HF

湿り空気 h-x 線図 気圧=101.325[kPa]

KUKISEN 3.1.8

0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%100%

02004006008001,0001,2001,4001,6001,8002,000

利用率

井水利用削減分

クール/ヒートトレンチ利用削減分

熱源による外気処理分

未利用エネルギー利用率

外気冷房効果グラフ

30℃20℃ 25℃15℃5℃ 10℃0℃ 35℃

クール /ヒートトレンチの出口温度外気温度

10℃緩和

10℃緩和

削減熱量(MJ)

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

OAクール/ヒートトレンチより

井水よりRA SA

空調機

熱交換器

二次ポンプ

プレコイル

OA OA

3 階ガラリより

空調機へ

仕切板

-10 -9

-9

-8

-8

-7

-7

-6

-6

-5

-5

-4

-4

-3

-3

-2

-2

-1

-1

0

0

1

1

2

2

3

3

4

4

5

5

6

6

7

7

8

8

9

9

10

10

11

11

12

12

13

13

14

14

15

15

16

16

17

17

18

18

19

19

20

20

21

21

22

22

23

23

24

24

25

25

26

26

27

27

28

28

29

29

30

30

31

31

32

32

33

33

34

34

35

35

36

36

37

37

38

38

39

39

40

40

41

41

42

42

43

43

44

44

45

45

46

46

47

47

48

48

49

49

50

50

乾球温度 t [℃]

10

20

30

40

50

60

70

80

90

5

15

25

35

45

55

65

75

85

95

相対湿度φ[%]

00.0

01.0

02.0

03.0

04.0

05.0

06.0

07.0

08.0

09.0

10.0

11.0

12.0

13.0

14.0

15.0

16.0

17.0

18.0

19.0

20.0

21.0

22.0

23.0

24.0

25.0

26.0

27.0

28.0

29.0

30.0

31.0

32.0

33.0

34.0

35.0

36.0

37.0

絶対

湿度

x [

g/kg

(DA)

]

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

55

60

65

70

75

80

85

90

95

100

105

110

115

120

125

比エンタルピ h [kJ/kg(DA)]

湿球温度 t' [℃]

0.75 0.76 0.77 0.78 0.79 0.80 0.81 0.82 0.83 0.84 0.85 0.86 0.87 0.88 0.89 0.90 0.91比容積 v [m3/kg(DA)]

3800

4000

4500

5000

6000

7000

10000

2000040000

-40000-20000

-10000

-5000

-2000

-1000

0

500

1000

1200

1400

1600

1800

2000

2200

2400

0062 2800 3000

3200

3400

3600

3800

熱水分比 u = dh/dx

1.00

0.95

0.90

0.85

0.80

0.75

0.70

0.65

0.60

0.55

0.50

0.45

0.40

0.36

顕熱

比 S

HF

湿り空気 h-x 線図 気圧=101.325[kPa]

KUKISEN 3.1.8

0%10%20%30%40%50%60%70%80%90%100%

02004006008001,0001,2001,4001,6001,8002,000

利用率

井水利用削減分

クール/ヒートトレンチ利用削減分

熱源による外気処理分

未利用エネルギー利用率

外気冷房効果グラフ

30℃20℃ 25℃15℃5℃ 10℃0℃ 35℃

クール /ヒートトレンチの出口温度外気温度

10℃緩和

10℃緩和

削減熱量(MJ)

4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月

OAクール/ヒートトレンチより

井水よりRA SA

空調機

熱交換器

二次ポンプ

プレコイル

OA OA

3 階ガラリより

空調機へ

仕切板

4 / 4

1) 外気冷房

2) クール / ヒートトレンチ

3) 井水利用空調

③ 再生可能エネルギー利用・工夫 普及性のある自然エネルギーの活用技術

図 10. クールヒートトレンチと井戸水利用におけるエネルギー削減

図 9. クールヒートトレンチの季節毎の温度

写真 7. 免震層を利用したクールヒートトレンチ

図 7. 外気冷房運転時間の向上

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