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    バイオエタノールのLCA

    平成22年4月23日 KOBA技術士事務所

    第38回 IT-農業P研究会 東大 (2010.04.23)

    小林 隆夫 E-Mail: [email protected]

    バイオマス・ニッポン総合戦略の流れの中で「バイオ燃料地域利用モデル実証事業(バイオエタノール混合ガソリン事業)」が農林水産省補助事業(平成19年度~21年度)として、北海道清水町、北海道苫小牧市、新潟県新潟市の三箇所で進められています。自動車用燃料としてのバイオエタノール利用方式である “エタノール混合ガソリンETBE7”、“エタノール直接混合ガソリンE3”および“エタノールE100”についてLCA結果をご説明し、その結果を踏まえたバイオエタノールの将来像私見を話題提供いたします。

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    1.バイオエタノール混合ガソリンの農林水産省事業

    第38回 IT-農業P研究会 東大 (2010.04.23)

    北海道清水町事業原料:テンサイ・小麦・米、 施設能力:1万5千kl/年(稼動日数300日)、 利用方式:ETBE

    北海道苫小牧市事業原料:米(多収米)、 施設能力:1万5千kl/年(稼動日数300日)、 利用方式:ETBE

    新潟県新潟市事業原料:イネ、 施設能力:1千kl/年(稼動日数330日)、利用方式:直接混合

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    2.バイオエタノール事業 LCA 話題提供

    第38回 IT-農業P研究会 東大 (2010.04.23)

    LCAの対象ケース:自動車燃料

    ガソリンとの比較で・・・・(1): ETBE7<BioEをETBEに転換後7%をガソリンと混合>

    ETBE = Ethyl Tertiary Butyl Ether エタノール + イソブテン → ETBE C2H5OH + C4H8 → C2H5OC(CH3)3

    (2): E3<BioE3%をガソリンと直接混合>(3): E100<バイオエタノールBioE100%>

    事業効果の検証バイオ燃料は・・・・・□ 化石エネルギー使用量の削減(省エネルギー)可能か?

    → エネルギー収支 [投入エネルギー量/エネルギー保有量]□ 温室効果ガス排出量の削減(地球温暖化対策)可能か?

    → GHG排出量 [GHG排出量/エネルギー保有量]

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    3. LCAの範囲と物質収支

    第38回 IT-農業P研究会 東大 (2010.04.23)

    BioE船輸送 ETBE生産 ETBE7輸送 ETBE7充填

    米生産* 米輸送 籾摺 米輸送

    E3 ケース

    BioE製造

    BioE生産工程

    ETBE7 ケースETBE混合

    BioE輸送 BioE混合 E3輸送 E3充填

    E100 ケースBioE輸送 BioE充填

    各ケースへ BioE 15,000 kl/年米 (15.5%水分) 41,532 t/年

    BioE 15,000 kl/年 ETBE 生産量 35,035 kl/年

    ガソリン混合量 485,000 t/年 E3 充填量 500,000 kl/年

    ETBE7 充填量 535,535 kl/年ガソリン混合量 500,500 t/年

    BioE 15,000 kl/年

    BioE 15,000 kl/年 E100 充填量 15,000 kl/年

    *: 米農地⇒米生産⇒イネ⇒脱穀

    (備考) ガソリン: 原油採掘⇒海上輸送⇒ガソリン精製⇒(国内輸送)

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    4.LCAの計算結果(1)

    第38回 IT-農業P研究会 東大 (2010.04.23)

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    4.LCAの計算結果(2)

    第38回 IT-農業P研究会 東大 (2010.04.23)

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    4.LCAの計算結果(3)

    第38回 IT-農業P研究会 東大 (2010.04.23)

    参考:ガソリンのLCA(石油産業活性化センター)

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    4.LCAの計算結果(4)

    第38回 IT-農業P研究会 東大 (2010.04.23)

    バイオ燃料の「化石エネルギー使用量削減」および「温室効果ガス排出量の削減」は確認されなかった。

    ⇒ サトウキビ原料のバイオエタノールのみが有効という暗黙の理解!

    LCA計算結果(1)と(2)の結果より

    バイオ燃料は、ガソリンと比べて、「投入エネルギー(エネルギーロス)」が大きく、「GHG排出量」が多い。

    バイオ燃料E3の方が、バイオ燃料ETBE7よりも、「投入エネルギー(エネルギーロス)」が小さく、「GHG排出量」が少ない。

    バイオエタノール生産に必要な投入エネルギーが、エタノール保有エネルギーより膨大であった。

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    5.LCA結果の考察(1)

    第38回 IT-農業P研究会 東大 (2010.04.23)

    バイオエタノール生産に必要な投入エネルギーが、保有エネルギーより膨大。

    米など澱粉質原料バイオエタノールの省エネ性とGHG削減性には??テンサイなど糖質原料バイオマスエタノールは澱粉質より格段の効果!

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    5.LCA結果の考察(2)

    第38回 IT-農業P研究会 東大 (2010.04.23)

    バイオ燃料の「化石エネルギー使用量削減」および「温室効果ガス排出量削減」は確認されなかった。バイオ燃料は、ガソリンと比べて、「製造/生産エネルギーロス」が大きく、「GHG排出量」が多い。

    バイオ燃料ETBE7およびE3ともに省エネ性とGHG削減性は??ETBE7よりE3の方が省エネ性とGHG削減性が向上する!

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    5.LCA計算結果の考察(3)

    第38回 IT-農業P研究会 東大 (2010.04.23)

    バイオ燃料E3の方が、バイオ燃料ETBE7よりも、「製造/生産エネルギー」が小さく、「GHG排出量」が少ない。

    日経新聞(201年2月18日)

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    6.バイオエタノールの将来像私見(1)

    第38回 IT-農業P研究会 東大 (2010.04.23)

    バイオエタノールを“自動車用ガソリン”ではなく、“家庭・業務用の灯油”を考えたい。

    理由1:バイオエタノール用原料の国内生産量には限度があるので、用途を絞る。理由2:灯油はガソリン程厳しい規格を必要としないので、使用量増大が容易である。理由3:灯油はガソリンよりも地産地消に向いているので、生産地域が限定される

    バイオエタノール用原料と方向性が同じである。

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    6.バイオエタノールの将来像私見(2)

    第38回 IT-農業P研究会 東大 (2010.04.23)

    バイオエタノールを自動車用燃料に使う場合、「エタノール混合ETBEガソリン」でなく、「エタノール直接混合ガソリン」が好ましい。

    理由1:バイオエタノールを石油代替燃料ととらえ、「使用の広汎性」を視点にしたい。理由2:石油連盟から距離を置いた「燃料の生産・販売・利用」の可能性を残したい。理由3:耕作放棄地や遊休農地利用も視野に、“地域性、持続可能性、社会性”と

    いった実社会との関係を考慮したい。理由4:エタノール直接混合ガソリンは地産地消に向いているので、生産地域が限定

    されるバイオエタノール用原料と方向性が同じである。理由5:エタノール直接混合ガソリンの利用を通じて、様々な民意を高められるだろう。

    石油連盟が、直接混合ではなく、ETBE混合ガソリンとした背景の小林想定:1)ブラジルからのバイオエタノールを安定且つ多量に輸入可能である。

    ⇒ 国内産バイオエタノールは殆ど対象としてない。2)エタノール直接混合ガソリンは、“蒸気圧上昇などガソリン性状に影響”や“エミッ

    ション(HC) 増加の懸念“および”ガソリン流通設備の改造(水分混入による層分離防止)にともなう新規投資が必要である。

    3)石油業界事情:既設製油所設備の有効利用、C4留分の有効利用、等々・・・・。

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    6.バイオエタノールの将来像私見(3)

    第38回 IT-農業P研究会 東大 (2010.04.23)

    バイオエタノールの将来像私見

    導入を「地球温暖化防止」と標榜するが本音は石油代替燃料ととらえる。

    耕作放棄地・遊休農地の利用と地域活性化や雇用促進を考慮する。

    主食ではなく、栽培に手間や化学品やエネルギー消費の少ない糖質農作物(テンサイなど)を原料とする。

    ガソリンではなく灯油との混合として、地産地消を志向する。

    石油税制、燃料規格、流通方式、季節変動等々多くの課題はある!

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    ご清聴ありがとうございました!本話題提供は、以下の資料等を引用・参考としています。

    □ 経済産業省 総合資源エネルギー調査会石油分科会- 次世代燃料・石油政策に関する小委員会資料- 石油部会燃料政策小委員会資料- 石油部会燃料政策小委員会ETBE利用検討ワーキンググループ資料

    □ (財)石油産業活性化センター- 平成13年度石油産業技術開発地盤等整備事業輸送用燃料ライフサイクル

    インベントリーに関する調査報告書- 平成19年調査事業成果報告書

    □ 環境省地球環境局 第3回再生可能燃料利用推進会資料□ 国立環境研究所

    - 産業連関表による環境負荷原単位」データブック(3EID)□ 新日本石油根岸製油所案内パンフレット□ 石油連盟ホームページ□ その他:関連ホームページ□ 秋田県バイオエタノール推進戦略(平成21年2月秋田県)

    第38回 IT-農業P研究会 東大 (2010.04.23)

    雑感:“バイオ燃料のLCAモデルは現時点で標準化されていないものの、公開されている検討結果等に「オブラートに包んだ記述」や「データの出展や計算ベースが明示されてない」ものが多いのが気になる。