ダイアトニック・スケール(diatonic...

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ダイアトニック・スケール(Diatonic Scale) ダイアトニック・スケールは元来、全音5個と半音2個から成るスケールという意味だっ たが、現在では曲の基礎となるスケールという意味で使われている。 現在、通常の曲の基礎として使用されているスケールは、メジャー・スケール(長音階) か、マイナー・スケール(短音階)なので、ダイアトニック・スケールとは、メジャー・ス ケールと、マイナー・スケールということになる。 1.メジャー・スケール(長音階:Major Scale) 1オクターブには、半音間隔で、12の音がある。その12音の中から7つの音を、次 のような間隔で並べたものが、メジャー・スケール。 全音ー全音ー半音ー全音ー全音ー全音ー半音 Cの音から、このような間隔で並べると幹音(かんおん:シャープやフラットのつかな い音)だけで、メジャー・スケールを作ることができる。 Ex.1 Cメジャー・スケール(ハ長調音階:C Major Scale) C D E F G A B C 全音   全音   半音   全音   全音   全音   半音

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Page 1: ダイアトニック・スケール(Diatonic Scale)ダイアトニック・スケール(Diatonic Scale) ダイアトニック・スケールは元来、全音5個と半音2個から成るスケールという意味だっ

ダイアトニック・スケール(Diatonic Scale) ダイアトニック・スケールは元来、全音5個と半音2個から成るスケールという意味だったが、現在では曲の基礎となるスケールという意味で使われている。

 現在、通常の曲の基礎として使用されているスケールは、メジャー・スケール(長音階)か、マイナー・スケール(短音階)なので、ダイアトニック・スケールとは、メジャー・スケールと、マイナー・スケールということになる。

1.メジャー・スケール(長音階:Major Scale) 1オクターブには、半音間隔で、12の音がある。その12音の中から7つの音を、次のような間隔で並べたものが、メジャー・スケール。

        全音ー全音ー半音ー全音ー全音ー全音ー半音

 Cの音から、このような間隔で並べると幹音(かんおん:シャープやフラットのつかない音)だけで、メジャー・スケールを作ることができる。

Ex.1Cメジャー・スケール(ハ長調音階:C Major Scale)

C D E F G A B C

全音   全音   半音   全音   全音   全音   半音

Page 2: ダイアトニック・スケール(Diatonic Scale)ダイアトニック・スケール(Diatonic Scale) ダイアトニック・スケールは元来、全音5個と半音2個から成るスケールという意味だっ

2.マイナー・スケール(短音階:minor Scale) ダイアトニック・スケールと使用されるマイナー・スケールは、通常(1)ナチュラル・マイナー・スケール、(2)ハーモニック・マイナー・スケール、(3)メロディック・マイナー・スケールの3種類。

(1)ナチュラル・マイナー・スケール(自然的短音階:Natural minor Scale)

 メジャー・スケールの6番目の音から始まるスケールで、各音の間隔は次のようになる。

       全音ー半音ー全音ー全音ー半音ー全音ー全音

 このスケールは、メジャー・スケールの第3音、第6音、第7音が半音下げられたスケールと見ることもできる。

Ex.2Aナチュラル・マイナー・スケール(イ調自然的短音階:A Natural minor Scale)

Cナチュラル・マイナー・スケール(ハ調自然的短音階:C Natural minor Scale)

 このスケールには、リーディング・トーン(導音:Leading Tone:トニックの半音下の音)がないため、ダイアトニック・スケールとして使用する場合、明確なケーデンス(終止:Cadence)が作れないという欠点がある。

全音   半音   全音   全音   半音   全音   全音

全音   半音   全音   全音   半音   全音   全音

Page 3: ダイアトニック・スケール(Diatonic Scale)ダイアトニック・スケール(Diatonic Scale) ダイアトニック・スケールは元来、全音5個と半音2個から成るスケールという意味だっ

(2)ハーモニック・マイナー・スケール(和声的短音階:Harmonic minor Scale)

 ナチュラル・マイナー・スケールの欠点を補うために作られた。リーディング・トーンを作るために、ナチュラル・マイナー・スケールの第7音が、半音上げられたスケール。スケールの各音の間隔は、次のようになる。

       全音ー半音ー全音ー全音ー半音ー(全音+半音)ー半音

 このスケールは、メジャー・スケールの第3音、第6音が半音下げられたスケールと見ることもできる。

Ex.3

Aハーモニック・マイナー・スケール(イ調和声的短音階:A Harmonic minor Scale)

Cハーモニック・マイナー・スケール(ハ調和声的短音階:C Harmonic minor Scale)

 このスケールでは、リーディング・トーンはできたが、第6音と第7音の間隔が、増2度になってしまい、その特徴的なサウンドが、スムーズなメロディーを作る妨げとなる。

全音   半音   全音   全音   半音   全+半音  半音

全音   半音   全音   全音   半音   全+半音  半音

Page 4: ダイアトニック・スケール(Diatonic Scale)ダイアトニック・スケール(Diatonic Scale) ダイアトニック・スケールは元来、全音5個と半音2個から成るスケールという意味だっ

(3)メロディック・マイナー・スケール(旋律的短音階:Melodic minor Scale)

 ハーモニック・マイナー・スケールの欠点を補うために作られた。ハーモニック・マイナー・スケールの第6音と第7音の増2度音階を解消するために、第6音が、半音上げられたスケール。スケールの各音の間隔は、次のようになる。

       全音ー半音ー全音ー全音ー全音ー全音ー半音

 このスケールは、メジャー・スケールの第3音が半音下げられたスケールと見ることもできる。

Ex.4

Aメロディック・マイナー・スケール(イ調旋律的短音階:A Melodic minor Scale)

Cメロディック・マイナー・スケール(ハ調旋律的短音階:C Melodic minor Scale)

全音   半音   全音   全音   全音   全音   半音

全音   半音   全音   全音   全音   全音   半音

Page 5: ダイアトニック・スケール(Diatonic Scale)ダイアトニック・スケール(Diatonic Scale) ダイアトニック・スケールは元来、全音5個と半音2個から成るスケールという意味だっ

3.調号(Key Signature)●キー(調:Key)  ある音から始まるメジャー・スケール(長音階:Major Scale)またはマイナー・スケール(短音階:minor Scale)を曲の基礎として使用すると、その音をトニック(主音:Tonic)とするキー(調:Key)が構築される。

●調名  トニック(主音:Tonic)の音名とスケール(音階:Scale)の名称が組み合わされたもの。

●調号(Key Signature)  Cメジャー(ハ長調:C Major)とAマイナー(イ短調:A minor)以外のキー(調)では、ダイアトニック・スケールに幹音だけでなく派生音(変化記号の付いている音)も含んでいる。その派生音を記譜する際に臨時記号を用いる手間を省くために調号(Key Signature)が使用される。つまり、調号は任意のキー(調)のダイアトニック・スケールに含まれる派生音を一括して表示しており、調号を見るだけで、その曲のキーを知ることができる。

<注>マイナーの調号の基準になるのはナチュラル・マイナー・スケール。

Ex.5

Cメジャー(C dur/C:)ハ長調          A♭メジャー(As dur/As:)変イ長調

E♭メジャー(Es dur/Es:)変ホ長調      C♭メジャー(Ces dur/Ces:)変ハ長調

B♭メジャー(B dur/B:)変ロ長調       G♭メジャー(Ges dur/Ges:)変ト長調

Fメジャー(F dur/F:)ヘ長調          D♭メジャー(Des dur/Des:)変ニ長調

Page 6: ダイアトニック・スケール(Diatonic Scale)ダイアトニック・スケール(Diatonic Scale) ダイアトニック・スケールは元来、全音5個と半音2個から成るスケールという意味だっ

Gメジャー(G dur/G:)ト長調         Bメジャー(B dur/B:)ロ長調

Dメジャー(D dur/D:)ニ長調         F#メジャー(Fis dur/Fis:)嬰ヘ長調

Aメジャー(A dur/A:)イ長調          C#メジャー(Cis dur/Fis:)嬰ハ長調

Aマイナー(a moll/a:)イ短調         Fマイナー(f moll/ f:)ヘ短調

Dマイナー(d moll/d:)ニ短調         B♭マイナー(b moll/ b:)変ホ短調

Gマイナー(g moll/g:)ト短調         E♭マイナー(es moll/ es:)変ホ短調

Cマイナー(c moll/ c:)ハ短調         A♭マイナー(as moll/ as:)変イ短調

Eマイナー(e moll/e:)ホ短調         G#マイナー(gis moll/gis:)嬰ト短調

F#マイナー(fis moll/fis:)嬰ヘ短調       A#マイナー(ais moll/ais:)嬰イ短調

Bマイナー(b moll/b:)ロ短調         D#マイナー(dis moll/dis:)嬰ニ短調

<注>調号のシャープやフラットの位置や順番は決まっていまる。位置や順番を、勝手に変えることはできない。

Cメジャー(C dur/C:)ハ長調         Eメジャー(E dur/E:)ホ長調

Aマイナー(a moll/a:)イ短調         C#マイナー(cis moll/cis:)嬰ハ短調

Page 7: ダイアトニック・スケール(Diatonic Scale)ダイアトニック・スケール(Diatonic Scale) ダイアトニック・スケールは元来、全音5個と半音2個から成るスケールという意味だっ

4.五度圏(Cycle Of 5th)

 1オクターブの12音を完全5度の間隔で並べると次のような時計の文字盤のような図が作られる。この図は五度圏(Cycle Of 5th)と呼ばれ、様々に利用される。ここでは、調号を覚えたり、調関係を考えたりするのに利用できる。

C Am F

Dm

B♭ Gm

E♭ Cm

A♭ Fm

D♭ B♭m

G♭ E♭m

C♭ A♭m

E C#m

A F#m

D Bm

GEm

♭#

C# A#m

F# D#m

B G#m

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5.調関係(Key Relation)

 同じ主音(トニック)を持つ、メジャー・キーとマイナー・キーの関係。例えば、CメジャーとCマイナーなど。

(1) 同主調/同名調(Parallel Key)

Ex.6同主長調(Parallel Major Key)

同主短調(Parallel minor Key)

 長調から見た場合、同主短調の調号は、長調の調号にフラットを3つ加えた調号、もしくは、シャープを3つ減らした調号になる。  逆に、短調から見た場合、同主長調の調号は、短調の調号にシャープを3つ加えた調号、もしくはフラットを3つ減らした調号になる。

 以下のそれぞれの調は同主調の関係になっている。  ・DメジャーとDマイナー  ・FメジャーとFマイナー  ・AメジャーとAマイナー

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 同じ調号を持つ、メジャー・キーとマイナー・キーの関係。 例えば、CメジャーとAマイナーなど。

(2) 平行調(Relative Key)

平行長調(Relative Major Key)

平行短調(Relative minor Key)

 長調から見た場合、平行短調の主音(トニック)は、長調の主音から短3度下の音になる。逆に、短調から見た場合、平行長調の主音は短調の主音から短3度上の音になる。

Ex.7

(3) 近親調

●主調(Tonic Key)  基準となるキー。

●下属調(Sub Dominant Key)  主調から完全4度上(または完全5度下)にあるキー。調号は主調にフラットを1つ加えたもの(もしくはシャープを1つ減らしたもの)。 例えば、主調がCメジャーの場合、下属調はFメジャーになる。

●属調(Dominant Key)  主調から完全5度上(または完全4度下)にあるキー。調号は、主調にシャープを1つ加えたもの(もしくはフラットを1つ減らしたもの)。例えば、主調がCメジャーの場合、属調はGメジャーになる。

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●近親調  同主調、平行調、下属調、属調の4つの調では、主調の音階(ダイアトニック・スケール)と共通する音も多く、非常に近い関係にある。このため、この4つの調は近親調と呼ばれる。近親調以外の調は遠隔調と呼ばれる。

Cメジャー(C dur / ハ長調)の近親調

Cマイナー(c moll / ハ短調)の近親調

主調:Cメジャー 属調:Gメジャー下属調:Fメジャー

同主調:Cマイナー

平行調:Aマイナー

主調:Cマイナー 属調:Gマイナー下属調:Fマイナー

同主調:Cメジャー

平行調:E♭メジャー

●移調(Transposition,Transpose)  曲全体の各音の相対的な音程関係を変えずにメロディやコード全体を異なった高さに移動させること。

●転調(Modulation,Modulate)  曲の途中で別の調に移行すること。転調の判定は、クラシックとポピュラー・ミュージックで少し異なる。