ハムレットはオフィーリアを愛したか? - hiroshima...

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広同文敏女子大学紀要 4 1. 2 明)6 ハムレットはオフィーリアを愛したか? 持子 1 lov'dOphelia" Is Hamlet's1ρveTruth? ー一 Sa chiko Mi to シェイクスピアのいわゆる四大悲劇作品町第ー作『ハムレット J (推定制作年代 1 阪)() の第五幕第 一場の終盤。主人士デンマーク王子ハムレァト{ま7 今まさに滋排されよとするオ フィーリアへの霊を高らかに宜する。「たとえ, 4 阪)()人もの兄弟がこぞって怯らすべての霊を この乙女に搾 ぐと誓おうとも,ひとりハム レッ トの量的深さと真笑に及ぶものなしJ と。(此" 戦でもあ った。 しかし,ここにひとつの疑問が起こ ってくる。「来たして,ハムレァトは真にオフィーリア を霊 してお った の か ? の自 官を揺いよげるハムレァトを前に,我々は戸惑いを感じずにはおれぬ。その百草は 聴く ものの耳にどこか L ら懐疑と苦笑を請わずにはおらぬ響きを炎でる。{可故か。第三幕第一場以 降 (ハム レットの異変を真っ先に目撃するのカf この場のオフ ィー リアである ),ハムレツトの 怖じ続ける「伴征 (韮った狂気)Jはオフィーリアを倒売し 不安と恐怖に陥れるばかりカ¥ やがて彼女自身の柾在へと導く要因にな ったことは百めない。その間,ハムレットは何らオ フイ}リアに紋いの手を伸ばすことはない。無論のこと司王子にはその「真意I 何故抗 っ た仮りをするのか7 その真意一一一ーを語ることも そして亡き父王の仇を 討つという 「大義」 しかしそれにしても,もはや「霊J に対する l 処し は消え失せたかの串を与えるその後のハム レツ卜である 。何よりも劇中。 7 回に丑ぷ独自がその証 L である 。すべからく !こ れら独 自 は 「大義」を速やかに成 L 得ぬ己を疎み,明く 1 3"!l躍に終始するとい って過百でない。そこでは7 「垂j なるものは背後に押しやられて L まっているのである。 にもかかわらず,終幕に至っ て! 偶然にも目前を行く排列がオフィ ーり アのためのものと知るや,ゃにわに 「霊 L てお った」 と はいかなることか。府裂の師"を 畳けてもいたし方あるまい。 第五幕寄)--.w,., i lov'd Ophelia: forty thou ndbrothcrs /Could Il ot witha11 th rquantity of lovc / Make up mysu m.' (Act V. i. 2 -266)と,誇るがごと ml( 語る墓場の場面的ハムレ ァ トに遭遇するとき 技々の雄 L もが オフィーリアを政世 L 続けたその“打ちを思い起こ L この司車の与えるほ突きに半ば唖然とせずにおれぬのであるまいか。ハムレッ卜の世の立百に こそ,疑うべきものあり と。世自身が 「笑11 千万」 とばかり茂み吸わんと L て,先にヲ ImL 1

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広同文敏女子大学紀要 41. 2明)6

ハムレットはオフィーリアを愛したか?

戸 持子

“1 lov'd Ophelia"

Is Hamlet's 1ρve Truth?ー一

Sachiko Mito

シェイクスピアのいわゆる四大悲劇作品町第ー作 『ハムレットJ(推定制作年代 1阪)()~t':)

の第五幕第一場の終盤。主人士デンマーク王子ハムレァト{ま7 今まさに滋排されよとするオ

フィーリアへの霊を高らかに宜する。「たとえ, 4阪)()人もの兄弟がこぞって怯らすべての霊を

この乙女に搾ぐと誓おうとも,ひとりハム レットの量的深さと真笑に及ぶものなしJと。(此"

それは。妹のIlと永遠の~IJれを惜しむあまり。大仰な映きぶりを見せる兄レアティーズへの挑

戦でもあった。

しかし,ここにひとつの疑問が起こってくる。「来たして,ハムレァトは真にオフィーリア

を霊 しておったのか?J ここ第五4!~第ー場において,レアティーズ朗自けの大見得を切って霊

の自官を揺いよげるハムレァトを前に,我々は戸惑いを感じずにはおれぬ。その百草は 聴く

ものの耳にどこかLら懐疑と苦笑を請わずにはおらぬ響きを炎でる。{可故か。第三幕第一場以

降 (ハム レットの異変を真っ先に目撃するのカfこの場のオフ ィーリアである),ハムレツトの

怖じ続ける 「伴征 (韮った狂気)Jはオフィーリアを倒売し 不安と恐怖に陥れるばかりカ¥

やがて彼女自身の柾在へと導く要因になったことは百めない。その間,ハムレットは何らオ

フイ}リアに紋いの手を伸ばすことはない。無論のこと司王子にはその 「真意I 何故抗っ

た仮りをするのか7 その真意一一一ーを語ることも そして亡き父王の仇を討つという 「大義」

を I~Iかすことも併されておらぬという冒い択も成り立ち iまする。 恨むべきはその境躍にあると 。

しかしそれにしても,もはや 「霊Jに対するl処しは消え失せたかの串を与えるその後のハム

レツ卜である。何よりも劇中。 会7回に丑ぷ独自がその証Lである。すべからく !これら独自

は 「大義」を速やかに成L得ぬ己を疎み,明く 13"!l躍に終始するといって過百でない。そこでは7

「垂jなるものは背後に押しやられてLまっているのである。にもかかわらず,終幕に至って!

偶然にも目前を行く排列がオフィ ーり アのためのものと知るや,ゃにわに 「霊Lておった」と

はいかなることか。府裂の師"を畳けてもいたし方あるまい。

第五幕寄)--.w,., i lov'd Ophelia: forty thou出 ndbrothcrs / Could Ilot, with a11 th創 rquantity

of lovc, / Make up my sum.' (Act V. i. 2刷-266)と,誇るがごとml(語る墓場の場面的ハムレ ァ

トに遭遇するとき 技々の雄Lもが オフィーリアを政世L続けたその“打ちを思い起こ L

この司車の与えるほ突きに半ば唖然とせずにおれぬのであるまいか。ハムレッ卜の世の立百に

こそ,疑うべきものあり と。世自身が 「笑11千万」 とばかり茂み吸わんと Lて,先にヲImLた

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あの宮策を役げつけた対手レアティーズの暁さにも劣らぬ,いやそれ以上の霊の大仰さがそこ

に露呈されているではないか,と。そLて この後 (先の引111)に結くハムレァトによる霊の

的示はいっそう,その感を強めていくことになるのである。

ぞれならば 泊五謀総ー鳩町置の宜主同I/H型的感を免れぬが敢に ハムレットのオフィ '1

アに対する霊は偽りであると断ずるべきか。.ilHこ 兄レアティ}ズへの対抗心がハムレットの

激怖を促Lて,置の誇示へと世を向かわせたに過Zぬのか.と!ilJぇぱ。その答えには述いが'1じざるを 1!~ なし 、

しかLまた方で。第 事め二坊において.オフイ リアの父ポロ ニアスが恐れ疑ったよ

うに,ハムレットの霊は霊でも守「霊(Iρve}jの衣を織った 「情欲 (Lust)Jという霊に他なら

ぬ,と考えることにも疑問が暁ると符わさ.るを斜なL、。ポローニアスはオフィーりアに向かつ

て rJII.間知らずの姐が!JJ-Lかも王fの地位にあって有無を言わせぬ権威を街する!JJ の11言

に刷すれば!ひとときの 「手慰みJとして葺ばれ,やがて飽食の後には鎗て世かれる革命しか

待っておらぬjと警告し 一明の交わりを禁止してしまうのである。 しかし7 土家の身分にあ

る昔がその地位を後ろ紙に女への求霊を試みて 己の情欲を満たすーーという同式によ ってハ

ムレットのJ行を判断するのはいかにら単純に過ぎる。第一にそれでは。劇の日開。吟ガ ト

ルー ドの早すぎる科創作を日に Lた術繋から 1 女全般への不信に襲われるあまりにーFrai1!y,thy

name is woman. (Act 1. ii.1. 146)と暁く ハムレツト肉身のその官革を琵した宜味が失われか

ねなし、 本来。 「霊」を 「情欲Jと化、昨る者が,何故に。情欲にh'¥した男女の早すぎる結師 (女

にと っては再時)に対してああまで慨略するのか。裂も慨嘆する理IUなどあるまい,といった

大いなる牙盾が生じて Lまうと官わざるを仰なし、

あるいは,同じく第一幕第三場。この父に先立って,兄レアティーズが寄f,したように,ハ

ムレ ァ トの目ドの霊は凝わぬー-r~~の世一一ーとしても それが決Lて宜わらぬ霊,永刷、変

の霊と信じてよいものであるかと雷えば。そうはL叶‘ぬ。何故なら, ー国の王たる週めを背負

う半了である者町宮は, I:I民の総Eと問益の認めるものでなければ,成就する宰躍を報われる

ことはないからである。また!その担となるべき人は,その身分にふさわLい出自でなければ

ならず 亜匝の蛇ながら 王家の血筋にはないオフイーリアの1fに幸運の女神の微笑む恐れは

まずない。にもかかわらず。ハムレットがオフイ ーリアを霊 L.オフィーリアもその霊に応え

たとするならば.その霊はやがて, レアティーズの案ずる通りに二i二子ハムレットの側に起こる

やむなき事情 「似の真実」 を ~lき過すことを阻む 「同の大'1'Jによ って変質を余儀なくされ

る巡命を感じさせないではない。亡き父王の祭主を附ら L 叔父であり現王であるクローデイ

アスの大~I'を暴くという使命を 「国の大義」 と解するなら 確かにそうした見方は成句虫つ。

LかL.ハムレットが仇悶ち/級官という大義優先のためオフィ ーリアへの霊を真実から虚偽

(甚切り )に変質させていく と且るのはやはり!あまりに単純すぎは Lないか。

加えて 劇作家シェイクスピアH身は 先に引}目した討業を始めとする ハムレットによる

述の 「置の立許」 大仰の諦りを免れぬ1佐々の霊の柾しのu柴 を第百幕第坊に州

入させる際,そのことによ って観%の胸のうちに呼び起こ Lかねぬ印象,府兜さの印象を予期

せぬはずはあるまい。それを敢えて試みるのは何般か。

既に触れたように守ハムレットは第一帯都 地における 「俳狂jの始まり以降,オフィ リ

アに対してその世のみな句ず,ハムレッ卜自身的人約への疑い (ルネサンス人の理想像から旺

人への聖様)さえ抱かせたまま肱世する。その誤解と不安から解き肱ってやる第}Jは無言貨のこ

2ー

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広島文教女子大学紀要 第 41巻 2006

日〆久

ハムレ ットはオフィーリアを世Lたか' 三 戸 作子.......( 1 )

人間文化学科 専門教す7科目 「デサ・イJ研究jに聞する検討11一ーデザイン数ff 色野敏宵の噂入科目と Lて 依 rnff 郎 ( 17 )

エントレインメント繰り込み “ 一一,17 IH 椛 午 (31 )

社会問仙本町請争とその位世づけ 一 日 一;長野源 6........(45)

開書のある子どもの位雌f金支躍に聞する考察 (2) 木村敦下 イド本ゆIM¥........(57)

「東広ぬ制神保健掴祉ポランティア白書路jの価値と課姐の検討

一一実行長Jl町立泌から 中 村 ';1 治 (71)

交流分析におけるww盟について

一一女子学生にS対する税干の臥より惑との問わり1i 狭 山幹リ).••.••.• (田 )

パルカン腰史教持、'1の比敏研究

一一ーアルパニア近代史の場合一- ....................................................JJ 浦 伊知郎 (/01)

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BULLETIN OF

HIROSHIMA BUNKYO WOMEN'S UNIVERSJTY

Vol. 41 2006

Contents

“Ilov'u Ophclia~ 一一一IsHamlet's 1ρvc Truth?--......................................................... Sachiko Mito ........ ( 1 )

Examination concerning sp(.-'C.ial. educat山】alsubjcct "dcsign research

As an introduction subject of a design erlucation and a color education--U “ IkuoSacki........( 17)

Entrainmcnt Renormal刷 lion........... ......................................................... Yugo Yosida ........ ( 31 )

lne Ro¥c of thc War of Words Qvcr sasic Problems in Social Welfare ..... Gengo Ogino ....... ( 45 )

Sup凹 rtfor Children wilh Di回 biliticsin after-school

Atsuko Kimura, Akinori Sumomogi.. .....( 57)

11】ediscussioll about the wurth and problem of

“A mcntal health welfare voluntcer lectuγe in Higashi Hiroshima Cily group~

一一一Froma situation of a member of the execulive committee 日 一一 1冶kujiNakamura .......( 71)

On thc Ego States o( Transactional Ana¥y同 n刊

一-Itsrelationship 10 thc similarity betw田 nfcmale students and thcir p訂 en!s

Mikio Akiyama .......(広:1)

Compamtive Study of History Tcxtbooks in the Balkans: the Albanian Casc. focused on the Contemporary Nationa¥ History.... ................................. Ichiro lura. ......(101)

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ハムレ γ ト,.オフイー 'J7を愛したか'

としておらぬ.もっとも.それは絡脅礁に棋富田大義を進めるハムレァトに閉される状況では

ないのであるがettluEに オフィーリア日身は父の命を ハムレットの意回したことでは

ないとしても一一毎われた後もなお鎗て置かれたまま,やがて不安とilJi!llのうちにlfotに至る

のであるo6をかに。それがたとえ装った狂気であれ 証人たるハムレ ットには釈明を捌持する

ことはでき品。 だが,その劇的1J~を自明町理と匁lりつつ, 他}jで観容は.何も知勺ぬオフィー

リアの陥った不安とl!l独に宜わりはあるまい,とも思わずドおれ白のである.4e,s,

このようにして !J: 似にも霊Lたとする女ーーを不安と恐れ 喪央惑から生じる絶用車

の澗に沈ませたまま肱閉した惨~iJ . その死後. ま るで取って付けたように かの『世の咋百」

をハムレットは知ることになるのである。Lかもそこに,劇作家のいかなる都tl、もE同も働い

ておらぬとすれば。鮎且として件まれる硝突きはどのように説明すればよいのか。ハムレット

の置に|則する摘さ }jに-l't性の欠卸lを見て.11劇 十の権側きを主闘と Lて犠げるのは簡tr..であ

る。しかし.ニの作品は州太甜劇の--11であり . t既 に ~l何 時代は.r r- !-I のこと。一見。 1,If~たに見

えもし,聞こえもする術'li.紘鱗ー鳩終盤の句Ilov'd Ophclin“に始まる愛の3撲が 拠はiJとし

て円裂に世せられたもので伝〈。そこに宝るまでのハムレツトの世多q)日行を町〈。あるーJ'I性 それと川仰のーJ'tttをもって この霊の討議も速なってくるものなのではないか.

この小諸の羽lいは.その点を明らかにすることにある。無誼 『ハムレットjは世を中心主

組にした劇作品で1.ない。一般にもそう龍植されているように。極書劇と従えるべきであろう。

しかしながら 世曹という大旋の成総をめぐって壇坦L,許制するだけではなく。世をめぐっ

て.!J:性副をめぐっても主人告は稲らさ, ,Yi闘する。そうしたー而からもハムレット倣を そ

して刷そのもののE昧を拠えるニとにも別の耐白さがあるのではないか.と与えている.また

ンエイクスピァ劇に唖織するk性 (町中にf高かれた女性像}を問題にしようとするとき.この

曹の問題は避けて通ることのでき由問題のひとつである.そうしたことからも。ハムレ フルの

霊がいかなるものであったかを誼じることは.オフイ リア.そ Lてガートルードについても

なんらかのZ、峻をfゆることになるに迎いない。ただ, ζの問題(女性像の問姐)"今川町主要

な訪山ではないので白他の機会に醐らなければならない。目下は。ハムレツトの世に.f.'.r.l.(を当

てることと L. まずは,問題のtini.捗第 場。 ~ l l ov'd Ophcliaーと語るあの場I耐から舶めるこ

とに Lょう。

第一章 我は,デンマーク王/王子ハムレ ッ ト右り

部Ji.紙切!-¥結 晶倒り人JC-人が健円をたたきながら 新たな化'?i'のための耳火を剃ってい

る。そこへ、ハムレ ットとオレインヨウが続場する。制り /11されてくる 側帽 を干に 人聞

の命ゃqについてあれこれ品川、巡らすハムレ y トであるが,このとき 畠腕人によ ってλ地に

大きなけを聞けていく事八が識のものかは 未だ知りぬままである。

やがて.ょに:Ett!.例師 レアティーズ.そ LてftI失速が加わった参事刊を日にするハムレ ッ

トは,ホレインヨウと物院に身をi辞めて見守ることに寸る.この弾刊の副1IJ.ーからして 身分あ

るE的理事いであるに遣いないと然知するものの,それ以上のことは思いもよらぬ畠のままに。

だが.問点に過Eる館儀への不満を抑えきれず 悠りに揃ちたd艇を//にするレアティーズ,

それに応えて 「第眼的核行が叶っただけでも幸運と思うベLJと冷たく見町抗議を地けんと

するfl"'IfM この二人の対晶は死再の4怖を語るに士事 LIρものであった.何と her virgin crants

(Act V. ii.lI. 224)をすド,/けられんとするのは。 まされもないオフィーリアであったのだ 1W H

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Larctcs: Lay her i' th' earth

And from her fair and unpolluted flesh

May violcts spring! 1 lell thee, churlish pri田 t,

A minist'ring angel shall my sistcr be

、,Vhenthou liest howling

Hamlet: What, the fair Qphclia!

Quecn: Sweets 10 the sweel; farcwcll

[Scatten"ng flowers

1 hop'd thou shouldsl havc bccn my Hamlel's wifc;

1 Ihought thy bridc.bcd 10 have deck'd, swect maid,

And not havc strew'd thy grave

(Act V, i. 11. 230-238)

例市への抗読がもはや何らの力も持たぬと勘企して,組事事に応じるレアティーズは,今や 「土」

に帰るべく 深く縮られた墓穴に安世されようとする乙女の亡骸に別れの雷殺を与える。「神

のご加置にて。そのったL<也被れなき肉体から (可憐なる}すみれの花が芽吹かんことを醐ら

ん!J“日}この古楽こそ,物除。こ摘むハムレァトにとってその亡骸が他ならぬオフィ ーリアの

ものであることを決定付けるものであった。既にこの直前,僻備とレアティ ズの究わす百繋

に平や,不古の予感を覚えてはいたに違いないが,それを fair and unpollutcd flcsh / May

violets spring! とし、うこの言翁が,もはや疑いなき事実に蜜えて Lまったのである。母ガート

ルードが 「王子町妃にと願っていたものをj と乙女の惨い命を悲しむその曾繋が。 LかとIfに

届いたかむか判然とせぬほどの鷲樗であったのか,ハムレッ卜は 「そなたの (オフィ ーリアを

指す)新床に撒くはずの花をこうしてil}いの花と Lて撒くことになろうとはJと続けるのの白

茶には何らの反応も見せず。押し黙ったまま である。

それよりも。ハムレフトの耳目を引くのは。 この直後,妹の死を大山に嘆き型しむレアティー

ズの喪である。「峠もろとも,うず日〈盛られた土の ドに眠らんJとする兄に激Lい怒りと対

抗 し、を鋸わにするハム レツトであった。

Laertes 0, lreble woc

Fall len limes treble on that cursed hcad

Whosc wicked deed thy mosl ingcniO¥俗世!!日

Depriv'd thee of1 Hold off the earth awhile

rill [ havc caught her on白 morcm mmc arms

[Leaps into the grave

Now 仰leyour dust upon the Quick and dcad,

rm of this flal a mounlain you havc madc

1" o'cr.lop old Pelio円 orthe skyish head

Of blue Olympus

Hamlet: [AdvancingJ、町atis he whose gricf

B四 rssuch an emphasis, whose phrase of sorrow

Conjures thc wand'ring stars, and makcs thcm stand

ukc wondcr-wounded hearers? 'Ib凶 is1

一-4 一一

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ハムレ ットはオフイーリアを愛したか P

Hamlet the Danc [Leaps into the grave

(Act V. i.ll. 238-251)

引刑文郷土h,ー山atcursed hcad"とは。ハムレットのことを指Lている。そして続く第三

fi,悶whosewicked dc(.'d'とは ハムレットがその刃によ ってレアティーズの父ポローニアス

を死へと募った あの忌まわLい叙書行為 (第三幕第凶場)を指す官業に他ならない。 レア

ティ ズは,この,父の,1需の死こそが妹オフィーリアの征乱を招き,死をももたわしたと信

じているのである。「呪わ Lい忠のゆ L子ハムレ ツトの闘に憎いあれJと願うのはそのためで

ある。

このi止に生きながらえる意味を見失ったかのように,レアティ ズは,ギリン司令部話11'の神々

が住まうと記えられる山々をも凌ぐほどの高さに土を盛って!妹の亡骸もろとも段が身を迎め

よと 生きながらの死を盟む。惜., オフイーリアの証乱と死の主因をハムレットに帰すばかり

か。峠への愛に殉ずるごときレアティ ズの冒楽に 激 Lぃ敵保心を燃やしたか,ここに王っ

てハムレットはやにわに盗を現わ l.r説。ここにあり。余はデンマーク王(王子)なり」と

日すのである。

現王クローディアスは確かに句I!JIの開幕早々.ハムレツトを正式な後継者として認め。それ

を賞依遣の而前において公式に表明する。(ーYouare thc most immediate 10 our thronc", Act

I.ii.l.l回)従って。いずれはデンマ ク正となることについて7 誰にも奥歯を差し挟む権限も

余地もない。 しかしそれでも , ハムレ y トは目下は 「王子」 に過Zぬこともまた否定し 1~~'.1事

実である。それをあえて自ら This路 I.!Hamlel the Danc聞と名乗るにはそれだけの理由が

あるはずである。と古っても。現王を真っ1可否定しての一一 内心は否定したいに高いないが

耳首ではない。そうではなくて.ここでのハムレットの意図は郁 には 「大聞な畷きなど提I1

千万。 その戸主空にまでも届き。夜空を附~す且々ま でも印王せ Lめ 且々は天上界でのJよみを止めて,限見聞き,お前の泣き喚く 71fに耳そばだてようぞ。Jと,レアティーズの大悲嘆を

ー笑に付すことにある。 iJ!に宮うなら,歩Eを倣うほどの救いなさ瞬きを 「安なき,!rJとして咽

英し逃げ去るをよしとせず, 堂々 島 lnisis 1,/ Hamlet the Danc"と名来り出ることによ り,

総論あらば挑んでまいれ。と堂々の'iX戦布告を Lておるのである。その意図があの百難。This

is 1, / Hamlct thc Daneとなって発せられた。

そして何よりも ハムレットにと って間し難いのは,オフィーリアを霊したのは児レアティー

ズ独り であるかのごとき その依る舞いであったはずである。I霊Jとは,前示誇臨すべきも

のに非ず。まして.神話中の神々のi主まう という岡山 Olympusを引き合いにiIけとはなんたる

不敬極まる般か者。噸ってくれん←一一というわけである。

他方,レアティ ーズはとうかと甘えぽ,父と峠の命を奪った とlJじて疑わぬ 当の本

人が事を見せたと知るや,罪Tながら. "lne devil takc thy回 ul!悶(1.252)とばかり,附き相

手 /仇敵に製し叶崎、っていく。それに障せずハムレ ァトも応戦する。

H叩 11ct: Wh)九1wi1l fight明 thhim upon this themc

Unlil my eyclids刷 11no !ongcr wag

Quecn: 0 my son, what themc?

Hamlet: I lov'd Ophdia: (orty thousand brothe目

Could not, with ;¥11 thcir quantity of lovc,

- 5

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Make up my sum, What will thou do for her?

仇ctV, i.ll. 261-266)

「そのためなら【f.命も惜しくはない。こGり命尽きるまで凶って決府をつけてやるJと応じ

るハムレ ツトのぱ翁のうち 引川文銃一行 thistheme' とは 汗ろまでもな〈 オフィーリ

アに対する霊の濃さ,強き,高'Ii性をJ訴している。そのことは,ーOm,田11.what thcmc?ーと

問いただすガートルードに替えるハムレ ット内身の,久的雷身さによ って,より明確に示されてい

る.[オフィーリアを世Lていたのだ。置に 4広畑人の兄郊のすべてが(!底火への)霊を語ろ

うとも,この4弘を凌げるものか。この世に対抗することなどできょうはずがない。」レアティー

ズにnけじとばかり。決知らずか。彼もまた霊の誇示を試みるのである。

それにしても,この大見得を回った霊の表明。いかにも服従である.それほとまでιオフィー

リアを世している/いたのであるならI 何故 今直のようにこニに主って世の柾しと占明をj~

が砂に調すのか。劇の終棋に至る以前に.世に対する徹日が持てるよう。オフィーリアを導い

たわけでなく,また 副作税者に対してさえも-J'tして(砂町一件を尭端に) [女へのィ、問J

を色続く nJ~付けてきたのではなかったか。 第三昨第 一 織には オフィーリアにさえ その不

日カ'1司けられていることがl別かされておる。ii'j'純なる乙火も.その1'if銘さはイミまならざるも町

であるニとを匁lらしめんとしたではないか。そしてそれ飲,オフィーリアに惟俗を絶って [1"

守へ行けJと命じたのではなかったか。これが 量の訣別でなくて何であろう。少なくともオ

フィーリアにと ってはそう惇〈言葉であったはず。しかも.かの第三事ー泌 fI<守の泌Jで町

対話は 彼女にと ってハムレットが完全なる証人と化Lたことを鎌田させるものでもあったは

ずである.ハムレットの置など 困惑と絶望町調に追い込まれていく乙女町胸に~I:ニうはずも

ない.

それならば,ハムレ ット町第五富島第 場における霊的災"/1ま偽りであると考えるべきかo tt!. に。レアティーズの攻感的なハムレツト批判に敵怖を促されてのことか. レアティーズかb

that Cl問 edhcad' {Act V. i.l目的と出られ その手にかかって果てた父ポローニアス町死こ

そが,オフィーリアのIE~tをmいたと断じられたことに怒り 対抗せんとして 「オフィーリア

への量Jをも って,抗揖.反駁にf(えんと Lたのか。もLも.そのようμfU屯するなら!妹オ

フィーリアの亡髄ととむに,1;:きながら '~A, されることを闘うレアティーズにI川かつて 次々

と雌‘l'への銚肢を11にするハムレットの討議は,いっそうの脱尖さ (の印級)を'1まずにはお

くま,'.

llamlet: 'Swounds, show mc whal th'o明 do

、.¥'oo'tw出 p.w似内 fight.woo't fast, woo', tear thysclf,

W叫 'tdrink叩 eascl.eat a crocodile?

rJI do'1. Dost∞me here 10 whine?

To ouuacc nlC岡山 leapIngin her g四 vc?

se buricd quic毛刷thhcr. and曲 will1;

And, if thou prate of mounlains, let them throw

Mi11ions of acres on us, till our ground,

Singcing his pate against the burning zone,

Make Ossa likc a wart! Nay, an thou'Jt 1I10uth.

6

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ハムレットはオフイーリアを愛した功、,

1'11 rant as well as thou

(Act V. I.ll. 269-279)

ここには,先に。ギリシャ神話中の間山も&trぬ日さ/採さに土を盛って, r妹と4えが身の

明書」とせよ,と喚いた レアティ ーズを償った,あのハム レットをこそ償うべき大印者と呼ぶ

べき査がある。むLろ滑摘でさえある。そして,付ガートルードがすべてを 「在試」のせいで

あると強湖すればそれだけいっそう,ハム レァトの立する 「霊」が偽りの響きとi1t.ffl味を市ぴ

てこずにはおらぬ。

ところがその 方で あのヘラ クレス顔白けの山成す難事に立ち向かうことなど オフィ ー

リアへの壷の柾を立てるためならば 恐れるに足りず。レアティーズなぞ何する者ぞ とば

かり 。あたかも「挑戦状をたたきつける」知く且巻くハムレット円安に 「霊の真;tありJと辞

える ようとi:,ある語感 にも叫たものを稚しも感じはしまいカ 。オフィーリアへの愛あらば

こそ。あのように怒句も L,レアティーズにこう Lて命を賄Lておf打Lしておるのだと。

都一事第五坊において ハムレフ ト刷身が 『柾試を錠う」ことを予告Lたミl'災を忘れぬ者な

ら稚であ札ここ第五事第場での 「霊のま明 1 loy'd upl叩 liaなる甘業と続く gr;々 の誇示」

を, その担気のtiわしめた首葉。あるいは。 レアティーズへの悠りと対抗心が知らしめた宵策

とLて,片付けて しまうことに疑問と抵抗を世えずにはおれまい。

また。初めて狂気の事で録台に現れるのが,他ならぬオフィ リアの日の附一一それも彼女

カ匂た句肘主に出るとき (第二幕第一場)ーーであったことを思い起こしそして 先に触れた

第三務第ー場の 「尼奇の場Jでのハムレットの冒殺を。いま少し剖世派〈読むなら,それらの

旨動にはま田上に現れたものとは通った,日1Iの意味が古まれて/託されていることに気付かな

いではおれぬはずであろう。

一一一ハムレットの 「伴Zりの臨に!ある悲しみのあることを。

加えて ハムレッ卜の百行の与える肝炎さと通産の大仰さが,劇作家ン L イク スピアの単純

なる稚拙さの生んだものでないとするなら,また,作家が敢えて,111 (担曽劇)とLての大間

円(第五幕筋場)を迎える由酬の第五幕第一坊の終盤に必いて 殊世に 主人公ハム レヅト

にオフィー リアへの霊を高らかに議わせるとすれば,そこに。何bかの/ いくばくかの真実

なくして何の立昧があろうか。たとえ.それが劇の中心主題でなくとも 「量jを描くことにお

いてもーJt性があって然るべしである。

第二章 ハムレ ッ トの恋文

第幕第場において 拙オフイーリアの報告によ って王子ハムレットが証況に至ったと叩

断した 平合占というべきか ポローニアスは クローデイアスに忠避に且ぷ。そのとき。

ひとつの証として差し出すのが。組かり布笹を宮わせず取り上げたハムレッ トからの悲主であっ

た。

Polonius: 'To the celestial. and my回 ul'sidol, thc most

bcautificd upheliaτもat'san i11 phrase, a vile phrase;

'beautified' is a yilc phrasc. But you shall hear. τnus

一一 7 -

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'In her excellent whitc bosom, these, &ビ

Queen: Came this仕omH田 llelto her?

Polonius: Good madam, stay awhilc; I will be faithful

'Doubt thou the stars are fire

Doubt白紙 thesun doth move;

Doubt lruth to bc a I凶,;

Bul never doubt 1 lovc

[Reads

[R,四"'

o dear Ophclia, 1 am ill at numbers. 1 havc not art

to reckon my groam日butthat 1 lovc thce best, 0 most

恥札 belie四 it. Adieu

Illine evcr more, most dear lady, whilst this

machine is 10 him, HAMLET,

(Act 11. ii.ll. 109-123)

「天上界に住まう人よ 7 私の魂の出敬する人よJと恋する刷予を女神に盟え.rわが命jと諮

りかける 求愛の}jj.;tは 陳腐と冒えば陳腐であるかも Lれぬ。女の畏をE買えるとき beautiful

と直控的な時を用いる拙さ放か, 'a vile phrase' とポローニアスに鴎静されてもいた LJ.iない

ことかもしれぬ。そして霊の苦手をしたためたものの ハム レット自り I am ill at thcse numbers

とその権拙さを器めている如く,そこにある置の詞は, けっして甘唱の官を事響かせて女のIIに

All <百薬とは会っておらぬ,厳しい批評世に曝されれば,それだけの表現力を持ち合わせぬ ill

phraseにすぎぬものであるかもしれぬ。しかし。自然界の真理の数々一一 『且が火の塊りJで

あること. r太陽が自ら動<Jということ。あるいは人IUJY棋の営みのうち.r真実に見えたもの

が実は偽り」にすぎぬこと一一それりを万一,跡 、, 怪しむことがあろうとも.rこの.我が

霊だけは7 疑うべからず」と訴えるハム レットの心に出りはなかった。

自らの霊の同においての枇捌さを伺lりつつ。なお霊の詩をしたため 円こおれぬ虫、心である。

あの間行の際(11.113-116)は直裁に 「この私は,他の雑よりもそなたのことを費 Lく想って

おるのだ」と飾りなく 霊を明治、Lたに等 Lい訂草である。政々は,ハムレァ トがその詩的権

拙を嘆くそのm:後の宮業を見逃しではならない。"butthat 1 love thee best, /0 most bcst, believe

it.-(11. 120-121)この司祭。この1!.¥いをこそ伝えんとして彼の (かの)凹行待を綴ったのであ

る。

直に ハムレッ トは。恋文の末地に次ぎの肯識を話えて 「霊の封向リに代える。"Thine

evermorc, most dear lady, whilst this machine is 10 him, HAMLlT" (11.122-123) rこの命のあ

る限り,この身はいと Lき君のものなる ハムレッ トよりj

引1fI!IJの'Inineとは,現代英語では yourに代わる人体代名詞第三人称の所有物である。当時

エリザベス朝時代においては,人材:代名詞の二人林はyooとth叫 のーつが用いられ,それぞ

れ状況に応じて使い分けがなされていた。置に yourとせず, thineをlfJいる場合 (賠り手か

ら聞き手に対する)観霊の怖や侮躍の合みを持たせることができた。Lたがって,上記引lfJで

は.ハムレットのオフイーリアに対する車、心と 幾たひ川、買わされたと推測される求置を企聞

にこの呼びかけ thinc cvermore をIIJいたと解さなければならない。ハムレツトが,聞き T

との距般を感じさせる yooではなくて,より強い親費感を込めることのできる thouを用いる

- 8

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ハムレ ットは才フ fーリアを愛したか ,

のは当然であったろう。したがって, 'Thine evermore, mosl dear lady は『いとしのt~ よ.こ

の身は水迫に君のもの」といった聖現になろうか。なお, ladyという請は,中世以降。正佼1'(

臨の醐人にIIh、られた尊敬語であり また。騎士が無聞かつ絶対の霊を剥げる相手の1't酎人に

111 いる時でもあった。それは1 現代において単に womanに代えてより上品に1 あるいは,女

性への敏宜も Lくは皮肉をこめて用いるときの ladyとは興なる。ハムレットは.中世騎士の世

嗣人に倒げた霊に慌Lてオフィーリアに求霊l..r誠の霊,永i盆不変の世Jを拘げる恋人/恋

する者として霊の普いを立てているのである。

引用後半にある thismachineとは thisbodyに相当する時であり ,いうま でもなくハムレァ

ト自身的肉体(の命)を指している。また, 'whilst this mac】ineis to him の末尾の himと

は,その芭後の HAMLETと同俗であることから分かるように,ハムレット自身を五人称でま

Lた人弥代名前であり‘全体としては,この肉体が彼 すなわちハムレット自身のものである

限り, Fiい換えれば.rこの命のある限りJーーという意味になってくる。

世か二行の引川の解説にしては,少しばかり説明が長くなってLまった。筆者の意図はただ.

ハムレットの詩的権捕のうちに吐露される その真提の聞いを伝えることにある。段々は.と

もすれば,ポローニアス町古集一一一 a vile phrase をはじめとする酷静によ って強調される

恋文の詩句の拙さ,買にハムレヅト自身によっても反証される詩人としての無能さを峨〈 官業

に目を寿彦われるため。そこに込められた偽りなさ想い,放しくも真実なる量的表明.(女から

の)返量への希求 そう Lたハムレットの感情を見逃しがちである。

そLて,この盟くもJ恥、恋文と時1,)に真実あ句とせば,この場面に先立つ第二幕第 場の始

め,オフィ '} 7のIJJ2昼に衣服乱るる愛で突快現れるハムレ ッ トの,あの語らずして示す~'{?怖

の“草に 単なる狂気の証しではなく 別のな味を見出すことになるはずである。

第三章 ハムレ yトの変織に秘められたもの

ハムレ ットが亡き父王の仇をMつため。狂気を装ってクロ ディアスの尻1.(,を捕らえようと

することは 一般によく匁lられている。惜H その伴柾の;c,を初めて見せるのが。第二幕剣ー場

である。しかもそれは。最も効果的な方法が週ばれていた。何散なら,ハムレットのiJ'に起こっ

た典査を誰よりも早〈日恕することになるのが,ほかでもない7 オフィ リアであったからで

ある。

EηleT OPHELlA

Polonius: How now Ophelia! What's the matter!

Ophelia: 0 my ¥ord, my lord, I have becn so affrighted!

Poloniu航、,Vithwhat, i' th' name of God?

Ophe1ia: My lord, as [ was sewing in my doset,

1ρrd Hamlet. with his doublct ull unbrac'd

No hat upon his hcad, his stockings foulι0<1.

Ungart'rcd and down-gyvcd to }Iis anklc;

Pale as his shirt, his knees knocking each other,

And with a ¥ook叩 piteousin pu叩0"- 9ー

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As if he had been ¥oosed oul of hcll

ro speak of horrors一一一一hccomes before mc.

Po¥onius: Mad for Ihy lovc?

Ophe1ia: My lonl, 1 do not know,

日目ltγuly1 do fel¥f it

(Aclll.i.ll.74一同)

ポローニアスは,フランス官学中の息子レアティーズの罪行を且照けてくるよう,世者レイ

ナードウに綿示を与えてほっとしかけていた。そこへオフ ィーリアが駆け込んでくる。「あ々 ,

怖かった f お父さま。本当Lこ怖かったことといったら!J何'1'かと思えば。何やらハムレッ

トが慨しげないでたちで彼女の居単に現れたというのである。ここでは,臨 77行以降を見れば

明らかなように,オフィーリアはある続,諮り手 chorusの控目も帯びているために そのu

1誌を過してハムレァトのいでたち.虫梢 (i却のひとつひとつが集に住意深く 微に入り制に

入り錨写されていく 。(この引111以降第 100行までも同級である)

まず その事情肝はといえば,然るべき世人にも伴る。すこぶる乱れたいでたちである。よ

拘のボタンはすべてはずされたまま、制干もかぶらず。 山"靴下も汚れており,しかも臨まで

だらしなく垂れ下がり !ま るで足柳のようである。そLて?その聞と甘えばw白く血の気も失

せて,闘の膝はガクガクと打ち震えて もうまるで,死者が地砧の快界から解き胞たれてこの

i止にたち現れたよう。これから今にも その恐ろ Lい賞泉の同の模線を悟ろうと Lてでも居る

かのような7 哀れな目を Lて 。見るも憐れかつ恐ろ Lき世であった。

オフィーリアはまず このハムレットの典雄な査のII1{ニ。悲しげでしかも, ZEEろしきもの

を感じさせずにおかぬ もの古いたげなその限 幽霊を思わせる服に且入られて 「ああ,怖かっ

た!Jと父に訴えたのである。

オフィ リアが。ハムレットの拠様さに恐怖を感じたことは否めぬとして,ただ守その -1have

b凹"田 affrighted!'0.75)とL‘う恐怖感を伝える甘紫に注意を寿彦われるあまり,ハムレットの

表情そのものを繍写する司策を見過ごしてはならない。何散なら,そこにこそハムレットの

f}¥iならぬ思いJが託されている々も Lれぬからである。仮に,この‘叩 affrighted' という簡

に引かれるあまり。 「どれほどオフィーリアは怖かったことであろうJといった先入主,オフィー

リアへの共感をより ~l< 抱くといった意味の先入主に捕われてしまう会ら,ハムレヅトの求刑

そのものを伝えるあの描呼匂川山田 pitcousJlU叩ort'0.82)は早苧阪中になく 次行の "A~

if loosed out of heIr (]. 83)へと佐立は向いて Lまうに迫いない。それこそが,オフィーリア

の恐怖を端的に示Lた甘繋に他ならぬからである。僚かに.r恐怖」を伝えるには。 「地以より

降りし者Jの加しという 百葉で i分であって他i主要ら品。だが,ハムレ y トのιしの内は むL

ろ前行(1.82)の 「哀れ晴うJI<m描写にこそ秘められているのである。そればかりか,その

聞に現れたる悲しみこそは,何故にニう Lて7 拠械ないでたちにてオフィ リアの民主に:J;ち

現れたのであるか1 その理由さえも伝えるものでなくてはならぬ。

LかLながら。当のオフィーリアには。恐怖が;tより,円円前町王子の興機さは証%と Lか峡

らず,その奥深〈にまで思いを歪すことなど且ばぬことであった。部られぬ百薬の立を汲むこ

とは,拙女のTに余る至難であった。

Polonius 、明latsaid he?

- 10ー

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ハムレフトはオフィーリアを愛したか'

Ophelia: He tOQk me by the wri針。andheld me hard

Thcn gocs he ¥0 the length of all his arm,

And刷 thhis othcr hand thus o'er his brow,

He falls to such peru回 1of my face

As 'a would draw it. Long slay'd he回

At last. a litt1e shaking of minc arm,

And thrice his head thus wa羽ngup and down

He rais'd a sigh 50 pitcous and profound

fu it did seem 10 shattcr al1 his bulk

And cnd his bcing. Thal done, hc lcts me go,

And, wilh his hcad over his shouldcr turn'd,

Hc sccm'd 10 find his way without his eyes;

For out ad∞rs he went without thcir helps

And 10 the lasl bcndcd thcir ¥ight on me

(AcI [1. i.ll. 8ι1伸)

ポローニアスは 「ハム レット織は何かおっしゃられたか 'Jと聞くが, それに替えず,オ

フィーリアは最前と同じくハムレッ トのfJ:1;iを照り伝えるばかりである。実は。当町本人は何

もE告らぬのである。不可解な仕草をあれこれと示すばかりでひと百も百繋を弛せず、立ち去っ

てLまうのである。

「ハム レヅト織は, 私の手をお取 りになって守手首をきっく提られたのです。そして {撮っ

たままご自分の腕を伸ばせるだけ仰ばすと。もう--)jの手は師にかざし。 じっと私的傾を食い

入るよ うにお見つめなさって じいっと,ずいぶん長い間見つめておいででしたの。Jオフィ ー

'1ァの手を取り。 じっとその顔を見入る この付草はやIを意味するのか。単に,狂人の征人

たる興常なる綴る鱒いのひとつと見ることもできょう。 しかし,この場のハム レットの巽輔さ

は。現笑には一一一筋ー務第五場においてハム レット 自身が予告しているように 「伴狂Jで

ある以上 旬'Iの観点から考える必要が当然ながら生まれてくる。

在気の印象を目町川の女いと しさを他く女 に与えつつ,他方ハムレットは立主的思い

をも伝えようとしているのである。量する女を見る 目。 もはやこれほど長〈 見つめることは二

度とあるまい と思いつつ ー湖を惜Lんで女の閣を見入ってやまぬ。オフイ }リアの告のひ

とつひとつを,忘れ紗ぬ 「宝なる記憧Jとして叩め世こうとして。 引制!IJ,“Hefalls 10 such

perusal of my fa四/As 'would draw il: 01剖-81)は まさしくこのハム レァトを,対象物の

副祭に余念のない両家になぞらえて (霊するものの裂を被写体として永迫町長にfilめ出こうと

して枯織を取る画家の知iく) その仕草を術勾 Lたものである。w織に 権持lであっても時を

込めて世を拘ることはもはや砕きれぬ境illi- ーそれをホ知するハム レットは.そのtU;t:に そ

の限 (まな こ)に思いを込めるより世のすべはない。合わせて,再師を12いだ付の韮に 「女と

いうものへの不信Jに終われておるハムレヅ トである。自のlilJの純真なる乙女も いずれは我

が妙ガ トルー ド同級,女の英 「点潔Jの美徳を拍て去ってしまうに違いない との疑いにも

捕われていた。オフィー リアへのいとおしさを暮らせつつーFrailty,thy name is woman同 (AcI

1. ii.1.146)と句女への呪世lにも似た自身の宮楽町示す通り。ハムレッ トは女の山桜をもはや永

迫不変の1J:.徳とは官じ仰なかったのである。それも, 己が行為を白潔喪失などとは思いも よら

ぬままに 女の身には早晩,自己自身を喪切るときが鈍いかかる。と。

一一 11一一

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他)j,この二つの思いに心裂かれるハムレフトの胸のうちなどオフィーリアは知る山もなかっ

た。ただひとつ.恐怖ということに鱒られていたのである。

ハムレ フトは,後写体を凝観する商家の釘J(,飽かず倦まずオフィーリアを眺め入った後.

困〈掛ったそのT'円を緩す.が。同時に長く深(,悲しみに欄ちた唖凪をもらすのであった。

詣れる I-flわんよりは 吐き山される左いうべきその漂い晒息.それは,まるで その吐息と

ともに命のすべてが尽きてLまうかのようである。現にハムレフトは,深々と悲Lい胞を洩ら

しつつ,わなわなと体中を置わせ.今にも命果てんとする者のごとき削きあり嫌であった。j;

そらく。この時ハムレットは,己の未練を断ち切るように Lて霊する女的手を徹したに相違な

い.111 (提えていたそのー下を緩Lたと同時に,己が魂も挫け/1¥てしま ったかのような脱力躍が

襲う。r,!t.}(あ々 )Jとも 「お白お々 Jとも表わし仰ぬ世剛のi"が続く それはオフィ ー

リア描写するところの a sigh曲 piteousand profound' (AcllI. i. 1. 93)一様く思しみに満ち

た暁むとなってそのuから漏れ111でたものであった。まさ L(,オフィーリアは,あの官、宜に

ある過り。ハムレットの「魂Jであった。それは,女神なる恋人 the celesti;!l, and my田 u]'s

idol, the 1110s1 bcaulitul Ophelia' (Act !l. ii.l1. 109-110)との世別を覚惜し,それを己に日ぃ聞

かせんとする瞬HI/であった。

しかし,f:tを決した淑ぃ!Jjの細川.何の心残句もなくiIl.炭と立ち去ることはハムレ フトには

できない。先の引111文末尾の 4行に儲かれるのは 後ろ監を引かれる事そのものである。オ

フィーリアの献を闘機に刻印せんとするのか,足は戸口に向かうものの その耐の11は日経L

に乙kを凝悦したままである.r(あの方は}自の案内なくとも山口がお分かりのように 私の

1jをじっとご覧になったまま.出てお行きになりま Lたの」この且ち占り }j,この悦線に込め

たものを指して 「世JとOJわずしてなんと訂おう。だが。この証円者 乙女オフィ ーリアは

i have been田 affrightcd!"(Act IJ. i.1. 75)と父町花に走り ,r怖い思いをしましたわ リ その

恐怖感を酔えるのみであった.

ハムレ ットには予防IL得たことであったかもしれぬ。オフィーリアを相手に。 nA!!なくして

J'I分のJ'i.-a:を伝えることの韮磁を。拠様ないでたちと仮る舞い。その思いつめたような目。そ

こに 「恐怖Jをのみ感じてLまう女であるかも知れぬことをイ分にみ知していたのではないか。

何故なら。オフィーリアは.父ポローニアスのl自で且せる 「絶対の世彫uから型持することがで

きるように 独立J'I立した精神をもって(費する)リjの真意や感情を慨し棚るJJを持たぬから

である。そうした.0:p,みでの恕像力は備わってはいない。そして!ニの龍剛さも 相神の未熟さ

からくる組曲力の欠如も。ハムレッドは知っていた。知っていてなおこの乙女を置したのであ

る.世もまた。女の 「従順さ」を好み霊した放である。

父に対する絶対の服従を体現してそこに何の疑問も そLて不満も感ぜぬかの胤怖にあるオ

フィ ーリアに,己の全存在を附けて果たそうとする 「大義jなど明かすことは到成でき由こと

である。ニの乙女,;o.,,*,のみならず,文から強要されれば何事であれ.すべてJ持り伝えること

は必主である。したがって,ハムレ ットは独η一一一尤も, l'{円五ホレイショウは別俗である

統合1を号をうことによ って衆目を欺き.格かなる一大lJ~を成 L連げることにEを決することになるのである。

そLて そのi!l~渉を蹄み/1\すのが,この従順の乙女の前であった。 それは何飲治』一一. オ

フィーリアのあの 「世販さJr米成熟さ」こそが,また Lてもーその理111である。父への絶対

的制世を且せるオフ ィーリアなればこそ 大殺を明かさぬことにしたのであったが一ーーまさ』こ

- 12

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ハムレ ットはオフィーリアを愛したか'

そのいlじ理111を也って,ハムレットはこの乙女の前で在気の慌を鮮烈なまでに印象付けようと

する。 ハムレ ッ トの拠織さに鷹〈オフィーリアは。 ~II直いなく父ポロ ニアスの元に走るー一一

怖れ怯え,救いを求めてーーと.耐 JIこ近い予測を立てて。そして 半ば疑いをJ1L挟まぬ形

で fハムレットlE乱jの噌が区桂内にJEまっていく一一あの。おLゃべりでおべっか使いのポ

ローニアスが輔の発臼i駆となってである.11酎ム般の揖符と訴えによ って.ハムレ フトの柾証

を雌日L.すくさま,正 (紙Eクローデイアス}に御忠避よろL<艶せ'"じるはずであった.

それこそがハムレ ットの狙いであった。まず初めに. rハムレ ット証乱」の第一日忽呂とし

てもっとも (Jじ紡き乙k オフィ ーリアを選ぷ。そして償lJ世に阿る (おもねる)ポローニア

スが拙の証Rを耳にするぞ すぐさまクローデイアスの元へ止l進に及ぶo ~I'~低この担感i且り

に~,は遊んでいくのである。 しかし,その結果,オフイーリアが聞となって かの第三裕子,ー

場 rl"守的場」に成れることまでは!来たLて予測し得たであろうか。

あ と がき

シェイクスピア作品目中でも。 u本ではどちらかというと , 悲劇作品のt-.~良平,制業による

銅駅酬が締まれる剛l司がありは L ないであろうか。 そして~ェイクスピア[(!!劇といえば 出

性人物が主要人物'1・の中心人物として描かれ,堂々舞台上に畳治してくることは行うまでもな

い..II.n身,こう Lた剖性人物を好まぬわけでもない。だが,卒か不事か 『ハムレ ツトjに

l処しては 息の関心は.デンマーク王子ハムレァトに向けられるよりも.そのよR世を畳けた乙

女として畳局するオフィーリアに何故か初めて作品を紐解いた頃より愛わることなく.より

強( (多().向けられることになったのである.

ひとつには,不事にして.劇学ぱニの (罪なき)鍛が柾5誌にいたり 来ては溺死にて命絶つ

というその運命に 単純に 「僑れJと感じたからであったろう。また.削る"が若い分だけ.

(身台町仁で)誕らぬ悲に終わる結末に議Lょうのない悲しみのようなものをを感じて,ィ、櫛

でもあり いっそう,その 「憐れに思うjこころを己の友として劇を剛てLまったが散でもあ

ろう。その後 次第に。父なる{1Mこ.'1して,あまりに匝販をIPl!したこのk性人物色オフィー

リア白身になにやらl 釈然とせぬ思い一一怒りとも,不満と也っかぬ感情を抱くようになる。

位』ぐにと って不週なことは.11:量悲劇『ロミオとジュリエットjに冊局するιk ジュリエッ

トがその句船にj七して。通かにn立した女性人物と Lて術かれていることである。ジユリエ ッ

ト在りしがために,いっそうオフィーリ 7の影はiWくな勺ざるを押ない。J::も,出制間氏にはー

かえってその自己のなさ乙女. ï~ .1Oの乙女により1Jかれるものをよ,UI\すということもこれまで,

少なからずあった。いや.これからも.ありうるやもしれぬ。現に この劇 fハムレットjは,

主人公をめぐる村学的傑棋の対級となるばかりか,溺死の乙女をめく ってその誼に迫らんとす

る拭みも1;されてきたはずである。

弘1:1身の間心はといえば,先にも触れた泊り こうした並々と Lた風怖の醐LiJIす見とその

誼ではな〈ーーーたとえば, ミレーの一般の粧を生み出す源のような一一ヘ ジユリエ フトの対艇

にあるような火性{弘己なさ乙女オフィーリアへと向かつて今日にいたったのである。そLて。

あるとき。ふと操たして.この乙1.<.ハムレァトが量したと {劇中にて).1っておる通り,真

に かの王子に量されたのであろうか 9 とfr.いなる疑問が湧いて〈ることになる。その鐙端

が.終艇の Ilov'dOphcliaという日業であった。ぞれは今までにない 新たなl刻むーハムレヅ

トへの関心を野生えさせた瞬間でもあった。

- 13ー

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司伊 * 司俳

この小~は.このときの疑問を追うことに主眼内がありました. 紙面的事情により ljiJ->t舗

を今闘発 I,~せていただくことと l . 後半部は他的機会に恵まれることを胤いつつ筆を置かせ

ていただこうと血、、ます。

j主

1 第五~l作場。ハムレットは埋欝されようとするオフィ←リアへの思いを比lSiな S愛として次の

ょう伝言艇で11わそうとする。

Harnlcl: 1 10的 1Ophclia: forty thOllS剖 dbrothcrs

Could noバ, with叫 theirquantity of lovc

Make up my sur司 、,Vhatwilt thou do for her?

(Acl V. i. 11. 2&¥-266)

2 父ポローエアスに対する舞条件の従順さを円頃から知るハムレ γトにIt.オフ<-リアに対事なる阿

1をJミめることはできないことであった。

オフイ】リアという女性は 『ロミオとジスリットJ'1'のジュリエツトに比して 附神的には未成鍬で

ある. ジュリエットは まったく孤立岸被の状i足にあってなお. 1'1己を此島過すJJ;I'I.iL柿怖を,.!っ

ており. (泡iψ る!.<:Jとして見るとき オフィーリアよりも長じている.劇'1'での句前段ii!li オフイ

リア l'>t ジュリエッ ト 14 畿であるにかかわら~'. I耐宵の幼さは併廷でさない.また。オフイーリ

アの場合I 受動的にならざる告仰ないその恋/愛の性絡を念頭においてもなお 内的な幼さは免れ&

、、とi1ってよ、、

3. 11;'1仰の初め批郎家小林秀臓は オフィーリアがハムレ γ トの怠簡をあたかbJl彼いていた 感知し

ていたかに.I!.',わせる前鎚lこ立って,彼4誌の Fに'"る告白文を創作している.l'ヨふえり中迫文1と溜し

たー支がそれである その筑みそのものも[遺文」 の内容も。 k変副I:J~ 、 ただし.(遺文J仁縦られ

たようなオプイ '1アのむのう%を映すと思わせるような言集.あるいは飽の.擁か会槻拠金制作品

の中に認めることがきるかと3えばそれl'残念ながらできないと函わざるを仰ない.なかでむ。 「覚

伐の上の決行Jを思わせる水面での敏則 <(遺文Jではそうなっている}をめ〈って吐総するオフ,-

リアの<情&どやはり 小林秀峰自身の忽像力によるものと~えるのがtc吋であろう<(おふえりや恋文J(日本現代女学金集68-'(f野秀古 小体秀忠全集jUI綴n.19同年 初版 1962

qア 属医文は附拘I61f-: I由1年の作である.1

4 引制した hcr virgin cranls' Ij 擁院を織り行う僧侶の百集 {Ar.:tY. i.ll. 218-226}から引いたもので

あるが その山梨はドイツ舗の kranzいあるらしいa大修館ンェイクスピァぷ曾の油釈いよれば 「杭

い本船k性の鯵鍵のときじ附討に置かれ その後教会内に懸け均れるJとある.

((ハム レフトjk修鮒yユイクスピア双評 高峰府成。河合す李鵬幅iJ:.p351. 2叩l年}なお 以

院は (!c1lJ!fi後噂」と記すことにする。

5 引川,(・の vioJcls について.k修sn見容では。「荊行の""凹ltutednl'shとの間組効I?, l'l節を意味

するJ花として従えているが 果たしてそうか。単に内節への訂Aえではな〈。むしろオフィーリアの

刺 Lを扱う呼怖かつ附りな%を思わせる花としての比喰剛1ct/車と慨すべ島ところではないか

6 ギ');, ""州Pii・l'O),(6IJIといえばi ゼウスを頂点とする伸々の(長まう矧所としてのオリンポス111がよ〈

知られているa ンエイクスピアは さらにぺ ,}オ J山 (PeU肌)とオッサth(08姐)を加えて. J.II.'~ にはあり得ぬほどの盛り上の向§ オフィーリアのtnlJ;の天を裂かんばかりの高きを災わそヮとした

のであろうか {劇中では 共に理務されたいと願う兄レアテ 4ーズの悲しみを誇張するための比喰と

なっている}

7 第 一修徳五場の終わり.父互の死のJ'!相を知ったハムレ ットは,オレイショウと僻繍民二人を捕に

n~託金製うこと金崎に予告するよヲ会吉東を口にしている.

{似し ハムレットの拠裂に気付いても,素知らぬふりをするよう命じている}

8 オヲィーリアが No hal U凹nhis hcad と帽子{を償っていないこと}にパ及ψるのは エリザベ

ス朝の人々lニとヮて室内でのお側が礼儀にかなった作U、であったことによる" (j: ~!l 大修館双術

p16l)

車向。本文!tぴ後 i l: 1ニ)IJいた~IJIIはすべて(,、ムレヅトjk修館ンエイクスピア奴得向備機1.. 吋

合作 郎編y往()に修館[;~i . 筑)())年鐙行}油、 勺のものである。

14 -

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ハムレヅトはオフイーリアを愛したカ'

" 考 支献

1 高健脱成。河合祁ー郎編注. fハムレット』太修館ンエイクスピアl<符 太修館、I~".,. 2曲 1年

2 ・lilll-:g,iIt'I吃 桟叡 HAMUi 続制h帥ンェイタスピァ111'1.研究札 1蜘匂'.初版 1咽

勾)

3. Harold Jenkins ed" HAMfJ!.T, 71teAr.削印1;011oftht同市ojWilliamShalt帥刷rt.M目1JEN,London and New York. rcprinted・, 1鈎6,fi四 t凹 blishedin 19位

4. l'hilip Edwards叫 。IIAM日T.何 1IU of ~"m(lrk, 7lte Ntw白 mbridgeShakaμ'Qre, Cambridgc Univcr. 割tyPre鎚 1988,fi滋凹blish吋 in1985

5 伴内遭遇政. fハムレ フトJf沙翁全集一一泊透訳シムークスピヤ全集 !f<-巻1.1 99-1 年 I~刻版句作ー刷発行

6. r! '前日''''''止「ン ι イクスピアの世界J ~'i.':柱。 1 967 年7 脅山自度予按 r ~.Lイクスピア 4にたらj 研究社透明 17. 側先札 111肱, 1984 il'.,初版 1981匂

8 ア ネスト ジヨ四ンズ符.栗眠術院. fハム レットとオイディプスJ.Jに修飢t!flJ.i.1988年

9 ジ'" アップダイク作河合作郎訳 f..ートル ドとクローデイアスJt'Jポ祉目2002年

10 小林舟峨n',rUAえりや温文Jf刊本殿代文学会集団 、'f'f待占 小体湾総集J,,階段1.t.1980勾。

初版 1962年(似し,問姐の文の供俸は附制6j'l'-: 1931句}

11 縦111制作也修。 『ンエイクスピァ ハンドプツクj三省盆.1987年

12 日4ドンェイタスピア協会編 fンZ イクスピアヨ区内J.研究社 1990仇 初 版 1冊4旬

13 脈疋貧持。『γ エイクスピア川、{修復 似耐と当時頗のあし 1だ一一J.0If削t.1986句:

M 河合作ー郎~, r~盤解きハムレット 』 隆容房 2000年

15 河合作ー郎軒。『ハムレ ットは太っていたリ内水性 2叩1年

可成 1 8íl~ 1O )/20n 畳思ー

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