プロジェクト・ファインディング調査報告書 -...

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インドネシア共和国 プロジェクト・ファインディング調査報告書 ___________________________________________________________________________________________________ 南スラウェシ州 カカオ収穫後処理流通改善・生計向上計画 ___________________________________________________________________________________________________ 平成 21 年 3 月 社団法人 海外農業開発コンサルタンツ協会

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インドネシア共和国

プロジェクト・ファインディング調査報告書

___________________________________________________________________________________________________

南スラウェシ州

カカオ収穫後処理流通改善・生計向上計画 ___________________________________________________________________________________________________

平成 21 年 3 月

社団法人 海外農業開発コンサルタンツ協会

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まえがき 社団法人 海外農業開発コンサルタンツ協会(ADCA)は、農林水産省の補助事業として平成21年

3月3日から11日までインドネシア国に調査団を派遣し、プロジェクト・ファインディング調査を

実施した。本調査では、インドネシア国において「南スラウェシ州カカオ収穫後処理流通改善・生計

向上計画」について相手国政府関係者との打合せや資料、情報収集および現場踏査を行い、その調査

結果を本報告書にとりまとめた。 本調査の実施に際しご協力頂きましたインドネシア国政府機関、日本大使館、JICA 事務所、JICA専門家など多くの関係者各位に深く感謝の意を表する次第である。 平成 21 年 3 月

プロジェクト・ファインディング調査団団長 森丘 直人

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案件概要

国 名 (和)インドネシア

(外)Republic of Indonesia 案件名

(和)南スラウェシ州カカオ収穫後処理流通

改善・生計向上計画

(外)Farmers’ Income through

Improvement of Cacao Post Harvest and

Marketing Improvement in South Sulawesi

地区名 (和)南スラウェシ州 (外)South Sulawesi Province

相手国担当機関 (和)農業省・南スラウェシ州

政府

(外) Ministry of Agriculture, South

Sulawesi Province

1.事業の背景 インドネシアのカカオ豆生産は 2005 年に 445 千トンで、世界全生産量の 13%を占め世界第三

位である。生産量の半分以上は南スラウェシ州の小規模農家によって生産され、彼ら重要な収入源

であり、インドネシアの農産物輸出額 479 百万ドルの半分以上を占める。今後の世界市場におけ

るカカオの需要拡大に鑑み、政府はカカオを重要な加工産業と位置づけ、南スラウェシ州における

カカオ加工を地場産業の振興による経済開発の重要項目にあげている。 南スラウェシ州では、カカオ豆は小規模農家から仲買人に集荷されて州都マカッサルの輸出業者

と加工業者に引き渡されている。近年はカカオ植替えの停滞と病虫害により生産性と品質が低下

し、原料供給量の低下が懸念されている。そのため、カカオ加工産業の振興に必要な良質な原料を

供給するため、カカオ豆の生産拡大と収穫後処理の導入による品質改善、生産基盤や生活基盤の整

備を通して小規模農家を組織化して集荷量の確保し、販売交渉力をつけることが必要である。

2.事業の概要 南スラウェシ州の二県程度を対象に農家グループ選定して、①農園のリプランテーションおよび

リハビリテーションの支援(樹種の選定と普及)、②農民組織による種苗場の設立・運営支援(育苗

施設の導入、育苗技術の指導、カカオ樹更新の指導)、③生産管理技術強化支援(生産技術指導、

生産技術の運用に必要な経営能力を強化するマイクロファイナンスの導入)、④収穫後処理処技術

強化支援(醗酵技術の指導、収穫後処理施設と集出荷施設の導入)、⑤生産基盤や生活基盤の改善

を含めたコミュニティ開発と組み合わせた実施(コミュニティをベースにした圃場・用水・農道な

どの生産基盤と集落内道路・上水・電気などの生活基盤の整備)、が考えられる。

3.調査の概要 カカオ・セクターの問題点は、①カカオ農園の害虫被害と樹齢廊下による生産の低下が著しい、

②この地場の生産量減少による地元輸出業者や加工業者の国際競争力の低下している、ことであ

る。このためには、カカオ生産基盤の回復と拡大、栽培管理の改善、付加価値創出への農家の参入、

市場の拡大、加工産業の振興が必要である。このうち生産段階の問題が結果的に輸出と加工産業

の動向に多大な影響を与えており、生産体制の強化が最も重要かつ支援の優先度が高い。

4.今後の展望 本件は農業省農産物加工流通総局が BAPPENAS のブルーブックに載せている南スラウェシ

州におけるカカオ振興開発計画策定のための調査案件の内容に近い。また、南スラウェシ州では農

業省と州政府が別々に独自にカカオ増産に取り組んでいるとともに、JICA の進めているスラウェ

シ地域開発プログラムの地場産業育成プログラムとの連携でも生産側の振興が必要である。

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南スラウェシ州カカオ収穫後処理流通改善・生計向上計画 写真集(2009 年 3 月)

1

Pinrang 県 農 業 普 及 所 ( BP4K: Badan Pelorsana Penyulusan Pertani, Prisana di Kelutanan)農業・エステート・漁業・森林

を兼務して 12 郡を管轄、スタッフは 155 人

普及所長の Haeruddin 氏から聞取りを行うハ

サヌディン大学の Rusnadi 博士。Rusnadi 博士

は 2000 年から開始した USDAと USAID による

支援に参加。

ハサヌディン大学の Nasrdin 氏と臼杵団員 普及所所長は Nasrddin 氏の教え子で、カカオの技

術指導は Nasrdin 氏が普及員と同行して農民に直

接行っている。

もとはカカオのプランテーションであったが、カカ

オの樹齢が進むとともに十分な栽培管理を行わない

ため生産性が低下し、すでにカカオを伐採しトウモ

ロコシを栽培している。

手前はサダン灌漑プロジェクトの幹線水路。対岸の

丘はカカオを植えていたが、老木化と Cacao Pod Borer による被害で生産性が低下し、伐採してしま

った。現在はトウモロコシを植えている。

左の写真の続き。 以前は、周辺一面がカカオのプランテーションであ

ったとのこと。現在はほとんどのカカオが伐採され

ている。

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南スラウェシ州カカオ収穫後処理流通改善・生計向上計画 写真集(2009 年 3 月)

2

Pinrang 県 Batulap 郡 Tapporang 村 Kampong Baru 集落。集落には 75 戸の農家があり、平均 1 haの農地を持つ。手前は農業普及員、奥が農家グルー

プのリーダーで、若い世代が目立つ。

同じ集落の別の農家グループのリーダー。75 戸の農

家が四つの農家グループに分かれ、一つのグループ

は 25 戸程度の農家から成る。ハサヌディン大学の

Nasrdin 氏は定期的にこの部落で指導している。

集落内の道路はセメント舗装されているが、政府に

よるものではなく、農家が資金を出し合って舗装し

たとのこと。以前はカカオからの収入が多く農家は

余裕があったが、カカオの生産量が低下して収入も

減少しているとのこと。

同じ場所の反対方向の写真。圃場からバイクで農産

物を運び出している。セメント舗装により運搬が飛

躍的に楽になったとのこと。

部落内の水道も農家が資金を出し合って引いたも

の。数 km はなれた湧水からパイプを使って数戸で

共有する水栓まで水を引いている。 集落は幹線道路からかなり入った丘陵地帯にある

が、カカオの収入により生活レベルがかなり上が

り、農家が集まって独自に農道や上水供給を進めた

とのこと。カカオの生産が低下して、トウモロコシ

などの栽培が多くなったが、現金収入ははるかに低

下したとのこと。

集落近辺のカカオ圃場の様子。樹間は 2 m x 2 m 程

度、下草の除草が必要。 枝の剪定が適切な時期に系統的に行われていないた

め、余分な枝が多くカカオ・ポッドが小さくなりが

ちである。 また、樹高をコントロールしていないため、収穫作

業に多大な労働力が必要なうえ、カカオ・ポッド・ボ

ーラーなどの虫害を受けたポッドの除去を円滑に行

えない。

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南スラウェシ州カカオ収穫後処理流通改善・生計向上計画 写真集(2009 年 3 月)

3

カカオ農園の内部。緩傾斜の斜面を利用して、水は

けのよい土地を選んでいる。 カカオの樹齢がばらばらで、計画的な植替えが必要

である。

野鳥の食害を受けたカカオ・ポッド。本来は、すぐ

に摘み取って処理しておくべきである。

カカオポッドに進入したポッド・ボーラー(蛾の一

種)。ポッド内部にいるため、農薬など薬剤の効果

が薄い。しかし、被害を受けたカカオ・ポッドを発

見したら、すぐに摘み取って処置すれば被害は無視

できる程度までにコントロールできる。

生育中のカカオ・ポッド。

ハサヌディン大学の Nasrdin 氏からガイダンスを

受ける農園主(農家)。 新規に移植したカカオの苗木。このような「リプラ

ンテーション」では生産年齢をすぎたカカオ樹は日

陰樹として利用される。移植されたカカオの苗木は、

強い直射日光に対して抵抗力がないため、日陰樹が

必要である。全くの新規のプランテーションではト

ウモロコシなども日陰樹として利用される。

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南スラウェシ州カカオ収穫後処理流通改善・生計向上計画 写真集(2009 年 3 月)

4

接木によるカカオ樹の「リハビリテーション」の模

様。サイド・グラフティングとシュウト・グラフテ

ィングがあり、これはサイド・グラフティングの例。

地上 60 cm 程度の主幹の側面の表皮をはぎ、内部の

木肌を露出させる。 農家レベルで主幹の低すぎる位置でサイド・グラフ

ティングを行う傾向があり、病害虫の被害を受けや

すく、成長も遅い。

表皮の上方を矩形に引き出し、接木を固定しやすい

ようにする。

同左

接木は活性のある葉を残しておき、表皮を剥いだ箇

所に置く。表皮は下部を主幹に残してあり、接木を

表皮と主幹ではさんで固定することになる。 農家レベルでは表皮のはぎ方が小さすぎて固定で

きなかったり、大きすぎて緩すぎる例が多い。

接木の切断面。汚れや細菌による感染を最小限にす

るため、清潔に保つ必要がある。

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南スラウェシ州カカオ収穫後処理流通改善・生計向上計画 写真集(2009 年 3 月)

5

接木を側面に差込み固定する。 バランスをとるために同じ樹の反対側にも接木を

行う。

固定した状況。このまま放置し、約 2 年から 3 年で

カカオの収穫が開始するが、生産年齢は新植の半分

程度から三分の一の期間で終えてしまう。また、次

を繰り返すと生産性が低下する。

シュウト・グラフティングの例。 カカオ樹の根元から出ている新芽を利用する。 健康な新芽を選定し、残りの新芽は切り取る。

シュウト・グラフティングではカカオ・ポッドの収

穫に 3 年から 5 年かかり、サイド・グラフティング

よりも時間がかかるが、生産期間が長い。 理論的には、定期的なリプランテーション(改植)

とリハビリテーション(接木)を組み合わせて生産

性を維持することが必要である。 実際は農家レベルでは計画的にリプランテーション

とリハビリテーションは行われていない。

このカカオ農園は女性グループが管理しており、栽

培管理が比較的よくされている。女性グループはマ

イクロクレジットも導入し、グループ内の緊密度は

良好である。

メンバーの旦那さんは別の農民グループの所属して

いるとのこと。 どちらかというと女性グループのほうが指導に沿っ

て生産を行う傾向が高く、男性中心のグループでは

指導しても自己流に変化させてしまい、効果を半減

させてしまう傾向にある。

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南スラウェシ州カカオ収穫後処理流通改善・生計向上計画 写真集(2009 年 3 月)

6

シュウト・グラフティングが生育した例。接木した

主幹から主根がでていることが重要。

ヤシの樹液を集めて煮詰め、砂糖を精製して販売す

る。カカオ農家の副収入となる。 煮詰めた砂糖(液状)はヤシのコプラのからを容器

に移して冷やすと固形状となる。このままパサール

に運び、露天の小売商に卸す。

カカオ農家の家。電気を引いており、テレビなどの

電化製品を持つ。また水は自家用の井戸を所有。 同左。高床式でスラウェシで典型の農家の作り。 上記のヤシから生成した砂糖も販売している。

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- i -

インドネシア国

プロジェクト・ファインディング調査報告書

南スラウェシカカオ収穫後処理流通改善・生計向上計画

まえがき

案件概要

調査対象地区位置図

調査地区写真

第1章 調査の背景と目的

1.1 調査の背景 .................................................... 1

1.2 調査の目的 .................................................... 2

第2章 インドネシア農業セクターの概況

2.1 農業セクターの現状 ............................................ 3

2.2 農業セクターの政策 ............................................ 4

第3章 南スラウェシ州を中心とするスラウェシ島カカオ生産の概況

3.1 カカオ生産 .................................................... 6

3.1.1 生産量 ................................................. 6

3.1.2 生産・流通体制 ......................................... 6

3.2 カカオ加工・輸出 .............................................. 7

3.2.1 カカオ豆の加工方法・プロセス ........................... 7

3.2.2 国際市場におけるインドネシア産カカオ豆の評価 ........... 7

3.2.3 カカオ豆加工と輸出の動向 ............................... 8

3.3 スラウェシ島におけるカカオ生産関連組織 ........................ 9

3.3.1 民間セクター ........................................... 9

3.3.2 教育・試験研究機関 ..................................... 10

3.3.3 金融機関 ............................................... 10

3.3.4 地方政府機関 ........................................... 10

3.3.5 多国籍・二国間ドナー期間 ............................... 11

3.4 カカオ豆生産・加工の問題点の整理 .............................. 12

3.4.1 栽培・収穫後処理 ....................................... 12

3.4.2 流通・加工 ............................................. 13

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- ii -

3.4.3 支援制度・農家組織面 ................................... 13

3.4.4 金融面 ................................................. 14

3.4.5 規制面 ................................................. 15

3.5 本調査における視察地域の現況 .................................. 15

3.5.1 ピンラン県の概要 ....................................... 15

3.5.2 カカオ生産地の現状 ..................................... 16

第4章 南スラウェシ州カカオ収穫後処理流通改善・生計向上計画の概要

4.1 計画の目的 .................................................... 19

4.2 計画対象地域の概要とカカオ生産の重要性 ........................ 19

4.3 計画コンポーネント ............................................ 20

...................................................................

第5章 総合所見........................................................... 23

添付資料-1 調査団員略歴

添付資料-2 日程表

添付資料-3 面談者リスト

添付資料-4 収集資料リスト

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第 1 章 調査の背景と目的

1.1 調査の背景

国際カカオ機関(ICCO)によると世界のカカオ豆生産は過去 10年間にわたり年率 3.7%

のペースで順調に増加、2005 年には世界総生産量が 3,500 千トンに達した。生産はコ

ートジボアール、ガーナ、インドネシア、ナイジェリア、ブラジル、カメルーンの順で

多く、この順位は過去 5年間変わっていない。

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05

生産量(千トン)

磨砕量(千トン)

世界のカカオ豆生産・磨砕量の推移(千トン)

世界第 3 位の生産国であるインドネシアの 2005 年生産量は 445 千トンで、世界生産量

の 13%を占める。輸出額は 479 百万米ドルでインドネシアの重要な輸出資源となって

いる。

カカオ豆を原材料とするカカオ・チョコレート

製品の消費も順調な伸びを見せている。2004 年

のカカオ・チョコレート製品の世界消費量はカ

カオ豆換算で約 3,260 千トン(ICCO 統計資料)

である。最大の消費地は全体の 70%を消費する

北米、EU 地域で、これら地域での消費は 1996

年から 2004 年まで年率 2.1-2.2%で安定的に成

長している。一方、中国を中心とするアジアや

中東など近年著しい経済発展を見せる地域での

消費は急拡大している。1996 年から 2004 年ま

で年率 4.2%で消費が伸び、消費量が 309 千トン

から 430 千トン(ICCO 統計資料)と約 40%も拡大した。これら地域での消費は今後も

大きく拡大していくと見込まれている。

エクアドル3%

カメルーン5%

その他7%

ドミニカ共和国1%

パプアニューギ

ニア1%

トーゴ1%

コートジボアー

ル39%

ガーナ20%

インドネシア13%

ナイジェリア5%

ブラジル5%

2005 年カカオ豆の生産シェア(%)

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インドネシアのカカオ豆生産は南スラウェシ州に集中しており、生産量、生産金額とも

にインドネシア全体の約半分を占めている。インドネシア政府は今後の世界市場におけ

るカカオ豆の需要増加に鑑み、南スラウェシ州のカカオ加工業の振興を経済開発の重要

項目に掲げている。

しかし南スラウェシ州におけるカカオ豆の生産は、ほとんどが小規模農家で供給体制が

不安定な上、近年はカカオ樹の植替えが停滞していることや病害虫被害の増加により生

産量、品質ともに低下している。不安定な供給量や低い品質はカカオ加工業の発展を妨

げ、生産国としての国際的信用の低下、ひいてはカカオ生産農家の所得低下を招いてお

り、カカオ樹の更新や病虫害対策の普及によりカカオ豆の生産拡大と小規模農家の組織

化による集荷量の確保、収穫後処理技術の向上による品質改善など総合的な対策が必要

となっている。

2006 年 1 月に農業省は省令によりインドネシア・カカオ委員会(ICC)を設立した。こ

の委員会は農業省エステート総局が事務局となり、政府の関係機関ならびにカカオ加工

業や輸出業者などの民間部門が委員会メンバーとして参加している。ICCはカカオ生産・

供給の持続性確保と国内加工業界の活性化を目指している。

1.2 調査の目的

本調査はインドネシア最大のカカオ生産地である南スラウェシ州のカカオ生産・加工業

振興、これによる農家所得向上に寄与する案件形成と、そのための基礎資料の収集・整

理を目的としている。調査団の構成、調査日程は添付-1および 2に示すとおりである。

-

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

1,600

1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004

EU

その他ヨーロッパ諸国

北米地域

南米地域

アフリカ地域

アジア・中東地域

地域別チョコレート製品消費量の推移(千トン)

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第 2 章 インドネシア農業セクターの概況

2.1 農業セクターの現状

インドネシア経済は 1997 年のアジア通貨危機で深刻な打撃を受けたが、2000 年には回

復基調に入り、2004 年以降は年率 5%の成長を続けている。昨年 2008 年の世界金融危

機による影響も少なく安定的経済を持続している。一方、農業セクターも成長を続けて

いるが食用作物部門が 1.5%~2.5%と低迷し、セクター全体の成長率は年率 2.5%~3.5%

と他セクターと比較して低水準である。このため 1999 年までは農業セクターは二番目

に大きな経済部門であったが現在は三番目の位置に下がり、全 GDP の 13%を堅持してい

るにすぎない。

GDP の成長率(1993 Constant Price)

1996 1997 1998 1999 2000 2001 2004 2007

GDP 実質成長率 7.8% 4.7% -13.1% 0.8% 4.9% 3.8% 5.0% 6.3%

農林水産業 3.1% 1.0% -1.3% 2.2% 1.9% 4.1% 2.8% 3.5%

鉱業 6.3% 2.1% -2.8% -1.6% 5.5% 0.3% -4.4% 2.0%

工業・製造業 11.6% 5.3% -11.4% 3.9% 6.0% 3.3% 6.4% 4.7%

電気・ガス・水道 13.6% 12.4% 3.0% 8.3% 7.6% 5.0% 5.3% 10.4%

建設業 12.8% 7.4% -36.4% -1.9% 5.6% 4.4% 7.5% 8.0%

商業・観光業 8.2% 5.8% -18.2% -0.1% 5.7% 3.7% 5.7% 14.4%

運輸・通信 8.7% 7.0% -15.1% -0.8% 8.6% 8.1% 13.4% 8.0%

金融 6.0% 5.9% -26.6% -7.2% 4.6% 6.6% 7.6% 5.4%

サービス 3.4% 3.6% -3.9% 1.9% 2.3% 3.2% 1.6% 7.5%

出典:Statistical Yearbook中央統計局

経済発展と逆行して貧困人口は増加傾向にある。貧困人口は 1996 年には全人口の

11.3%に当たる 22.5 百万人であったが、アジア通貨危機の影響により 1998 年には 24%

に相当する 24.2 百万人に大幅に増加した。経済回復に伴い 2005 年には 16%、35.1 百

万人に減少したものの、依然として高い水準である。

貧困ライン以下の人口の推移(1976~2005)

貧困ライン以下(百万人) 貧困率(%)

都市部 農村部 全国 都市部 農村部 全国

1976 10.0 44.2 54.2 38.8 40.4 40.1

1980 9.5 32.8 42.3 29.0 28.4 28.6

1990 9.4 17.8 27.2 16.8 14.3 15.1

1996 7.2 15.3 22.5 9.7 12.3 11.3

1998 17.6 31.9 49.5 21.9 25.7 24.2

1999 12.4 25.1 37.5 15.1 20.2 18.2

2000 12.3 26.4 38.7 14.6 22.4 19.1

2001 8.6 29.3 37.9 9.8 24.8 18.4

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貧困ライン以下(百万人) 貧困率(%)

都市部 農村部 全国 都市部 農村部 全国

2002 13.3 25.1 38.4 14.5 21.1 18.2

2003 12.2 25.1 37.3 13.6 20.2 17.4

2004 11.3 24.8 36.1 12.1 20.1 16.7

2005 12.4 22.7 35.1 11.4 19.5 16.0

Source: Statistical Yearbook of Indonesia

農業セクターは 2005 年の全就業人口 95百万人の40%にあたる 42百万人の雇用を提供

しているが、農業が主な経済活動である農村部は貧困人口の 59%を抱えている。

就業率とセクター別の就労者

2002 2003 2004 2005

1000人 % 1000人 % 1000人 % 1000人 %

労働人口 100,779 100.0 100,316 100 103,973 100 105,802 100

就業人口 91,647 93.9 90,785 91.9 93,722 90.1 94,948 89.7

失業人口 9,132 6.1 9,531 8.1 10,251 9.9 10,854 9.5

セクター別就労者

農林水産業 40,634 45.3 42,001 43.8 40,608 39.1 41,814 44.0

鉱工業 12,744 13.0 11,656 13.3 12,105 12.9 12,461 13.1

建設 4,274 3.9 4,107 4.2 4,417 4.7 4,427 4.6

その他rs 33,998 37.9 33,02 38.7 36,592 43.3 37,974 38.3

就労者合計 91,647 100 90,785 100 93,722 100 94,948 100

出典:Labor Force Situation in Indonesia, 2002~2005, 中央統計局

農業就業者一人あたり GDP は低く、下表に示すとおり 2005 年では US$800 と他セクター

の US$4,490 の五分の一にとどまっており、今後、貧困削減による社会的安定を伴った

経済発展を実現する上で農業セクターの生産性を向上することが求められている。

被雇用者一人当たりの名目 GDP(Current Price)

産業部門 2001 2002 2003 2004*1 2005

農業セクター

- 名目 GDP(Rp.十億) 263,328 281,591 305,784 331,553 365,560

- 被雇用者(千人) 39,744 40,634 42,001 40,608 41,814

-被雇用者当り GDP(Rp.十億) 6,600 6,900 7,300 8,200 8,700

(US$換算) (US$630) (US$770) (US$860) (US$880) (US$880)

Other Sectors

- 名目 GDP(Rp.十億) 1,420,953 1,540,234 1,707,891 1,941,589 2,364,149

- 被雇用者(千人) 51,064 51,014 47,793 53,114 53,134

-被雇用者当り GDP(Rp.十億) 27,800 30,200 35,700 36,600 44,500

(US$換算) (US$2,670) (US$3,380) (US$4,220) (US$3,940) (US$4,490)

(US$に対する交換レート) 10,400 8,940 8,465 9,290 9,900

出典:Statistical Yearbook 国家統計局

2.2 農業セクターの政策

政府は2004年から2005年までの国家中期開発計画(RPJMN)を2005年 1月に発表した。

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計画は(i)平和で安全な国家の創出、(ii)公正で民主的な社会の構築、(iii)国民生

活の福祉改善、の三本柱で構成され、貧困人口の削減(8.2%)、経済成長の引上げ(7.6%)、

失業率の引下げ(5.1%)目標に掲げている。

中期計画における農業セクターの課題は農家の福祉改善と農村地域の経済発展基盤の

強化をめざす「農業の再活性化」である。農業省はこの方針に基づき「農業開発計画

2004~2009」を 2005 年 1月に発表した。計画は(a)食糧安全保障、(b)農産物の付加

価値と競争力強化、(c)農民の福祉改善に重点を置き、目標として 1)農業セクターGDP

成長率を年率 3.3%、2)農業により 44.5 百万人の雇用確保、3)年率 5%の付加価値増加、

4)年率 1.4%の労働生産性向上、5)農村貧困率 15.0%への削減、を掲げている。特に貧

困削減目標は国家計画の目標 8.2%より大幅に高く、国家目標達成に向け農業セクター

の大きな貢献が求められている。

これらの目標を達成するため、(i)食糧安全保障改善プログラム、(ii)アグリビジネ

ス開発プログラム、(iii)農民福祉改善、の三つのプログラムを作成した。アグリビジ

ネス開発プログラムはその主要なコンポーネントとして非食用作物の振興を謳ってお

り、カカオは需要の伸びを見込むことができる国際商品であるとともに、国内で加工業

を振興して付加価値を高めて輸出することが可能な作物である。

本年 2008 年は中期計画の最終年にあたるとともに大統領選挙が予定されているが、次

期大統領のもとで政策を担当する新政権の下で策定される新たな中期計画(2010 年~

2014 年)でもカカオの生産と付加価値を向上する方向性は維持されると推察される。

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第 3 章 南スラウェシ州を中心とするスラウェシ島カカオ生産の概況

3.1 カカオ生産

3.1.1 生産量

インドネシアのカカオ生産は過去 20 年間に亘り成長を続け、最新統計データでの生産

量は 445 千トンに達している。カカオ生産地はスラウェシ島に集中しており、ここで

総生産量の約 70-80%に当たる 350 千トン(乾燥状態)が生産されている。特に南スラ

ウェシ州の生産量は多く、インドネシア総生産量の約 40%、170-180 千トンを産出する

大生産地である。

近年、スラウェシ島のカカオ生産は様々な問題に直面している。カカオの生産は樹齢 8

年~12 年で最大となりその後は徐々に低下していく。スラウェシ島のカカオ樹の平均樹

齢は最大の生産期を大幅に上回る 18 年で、現在の生産量を維持するためには段階的な

カカオ樹更新が不可欠となっている。加えて、カカオ・ポット・ボーラーなど病害虫害

の増加や栽培技術・農園管理の未熟さもあり、生産量低下、豆の品質低下が懸念されて

いる。

3.1.2 生産・流通体制

世界のカカオ豆生産の 90%は小規模農家によるものである。スラウェシ島も例外では

なくほとんどは耕作面積 0.5 から 1.0 ヘクタール程度の小規模農家によるもので、エス

テート型農園はごく限られており運営規模も小さい。現在、南スラウェシ州の 25 万農

家を中心に合計 50 万小規模農家がカカオ生産に携わっている。主要なカカオ生産地で

はこれら小規模農家にとって第一の収入源ないし米に続く第二の重要な所得源となっ

ている。しかし、その他の地域では、農家にとってカカオ栽培は通常、第二・第三の収

入源であり、平均すると各々0.5ha に満たない農園規模である。

ほとんどの農家が肥料等の農業投入資材を使用しているが、生産技術の未熟さから適切

な管理がなされておらず、平均収量は潜在的な平均収量 1.0t/ha に対し、0.3t/ha と

非常に低い水準にある。さらに、現金の早期確保を優先するため収穫後処理に対する意

識が希薄で生産物の品質低下につながっている。

販売は一般的に仲買業者を通じて行われる。農家への配分は他の作物と比較して高く、

農家の取り分はニューヨーク市場価格の約 80%に達し、残り 20%を輸送コスト、マー

ジンとして中間・輸出業者が得ている。

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3.2 カカオ加工・輸出

3.2.1 カカオ豆の加工方法・プロセス

カカオ豆は次ページの図に示すとおり、加工プロセスの中でカカオ・ペースト(カカオ

マス)、バター、ケーキ、パウダーなど様々な中間工業製品に姿を変える。

カカオ・ペースト、ケーキおよ

びパウダーのフレーバー、色合

い、臭み等は最終製品の品質を

左右する重要要素である。この

ため、製造には品質の高い豆と

発酵処理など適正な処置が用い

られる。一方、カカオ・バター

の場合、そのフレーバーや色合

いは最終製品にほとんど影響を

与えないため、油分抽出量の多

さが最も重要となる。

チョコレート製品に対する嗜好

は消費地によって異なる。嗜好

に併せた製品の製造には特性

(フレーバー・味)の異なる複

数の産地の中間工業製品の配合

が必要となるため、チョコレー

ト製品は一般的に最終消費地の

近くで製造される。

3.2.2 国際市場におけるインドネシア産カカオ豆の評価

スラウェシ島を中心とするインドネシアのカカオ豆は一般的にフレーバーが貧しく評

価が低い。発酵によりカカオ豆の生得なフレーバーを高めることができるが、インドネ

シア産カカオ豆については、特段のフレーバーを期待されていないこと、発酵に要する

収穫後処理のための金銭的インセンティブ(プレミアム)もないことから、ほぼ全てが

未発酵にて取引される。このため、国際市場でのインドネシア産カカオ豆は、油脂分採

取を目的とした非発酵バルク・ビーンズ(フェアーアンド・アベレージ・クオリティ:FAQ

と呼ばれる低品質カテゴリー品)として需給されている。さらに、品質に対する低い評

価から、ニューヨーク市場取引価格での取引価格は平均的価格国際価格 1,500-1,700 米

ドル/tから 300 米ドル程度ディスカウントされ取引きされている。バルク・ビーンズ

カカオ豆

豆の選別

破砕による皮の除去

カカオニブ

焙煎

配合

摩砕

カカオマス

採油

カカオバター カカオケーキ

粉砕

カカオパウダー

砂糖などの調合・調整

ココア飲料製品

砂糖などの調合・調整

精錬・冷却他

チョコレート製品

カカオ豆の加工プロセス

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は必ずしも低評価ということはなく、例えば西アフリカ地域で生産されるバルク・ビー

ンズは、一般的に油脂含有量が高く、フレーバーも強く高い評価を得ている。このこと

からもインドネシア産カカオ豆の品質の低さが伺われる。カカオ豆に関する国家品質基

準(SNI 01-2323-1994/Revision 2002)が存在するが、インドネシア産カカオ豆の質が

そもそも低いこと等から、全く執行されていないのが実情である。

国別・カカオ中間工業製品の輸出価格(米ドル/kg)

中間工業製品 インド ネシア

オランダ s フランス コート

ジボアール マレーシア ブラジル 米国

カカオペースト 1.23 2.52 2.64 2.18 2.19 2.16 2.81

カカオバター 2.51 3.61 3.76 3.13 2.91 3.07 3.95

カカオパウダー 1.47 2.85 2.83 1.78 1.86 2.02 2.48

カカオ豆 1.34 - - 1.58 - - -

出典:国連・食糧農業機関(FAO)の統計に基づいて計算

インドネシア産カカオ豆の競争優位性は、溶解点の高いバター抽出用のカカオ豆を大量

かつ安価に供給できるである。インドネシアは未発酵バルク・ビーンズの最大産地とし

てこれまでのところ同じセグメントに目立った競合産地もなく強固なポジションを国

際市場にて確保している。アジア・中近東地域のカカオ消費の成長はスラウェシ産カカ

オ豆に代表されるバルク・ビーンズの需要を押し上げるものと見込まれる。

しかし、農園の生産性と質の良い豆(豆当たり油脂分抽出量の低下を含む)の供給量の

低下という問題に適切な対処しなければ、安価なバルク・ビーンズの主要供給者という

スラウェシの独特なポジションは徐々に損なわれ、同国のスマトラ島、ベトナム、パプ

ア・ニューギニア等他の新興産地にその座を奪われかねないと危惧される。

3.2.3 カカオ豆加工と輸出の動向

インドネシアのカカオ豆の輸出量は 2000 年の 333.6 千トンより 2005 年の 367.4 千ト

ンと大きな変化は見られない。一方、同期間の輸出総額は 2000 年の 233.1 百万米ドル

から 2005 年には 467.8 百万米ドルに増加している。これは、生産側の問題が影響した

輸出量の鈍化がカカオ豆の輸出価格の上昇につながり、これらが相殺された結果である。

カカオ・バターなど工業中間品輸出は過去 5 年間にわたり主要生産国の地位を維持し

ており、カカオ・バターは世界で 5 番目、カカオ・パウダー/ケーキでも 6 番目の輸出

量を誇る。

スラウェシ島で生産されるカカオ豆の多くは島内最大港である南スラウェシ州の州都

マカッサルより船積みされるカカオ豆は 2005 年のインドネシア全体の輸出量・輸出額

の共に約52.6%を占める。これに中部スラウェシ州のパル港からの船積み分を含めると、

インドネシアカカオ豆輸出に対するスラウェシ島の貢献度は約 85%まで上がる。

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カカオ豆の輸出仕向け地には当然ながら規模の大きなカカオ製品の加工業・工場が存在

する。インドネシアも 10 以上の民間カカオ加工業者が操業しているが、これら加工業

者は近年質の良いスラウェシ産カカオ豆の定量確保に困難を来たしており、大多数は操

業停止か処理能力を下回る操業を強いられている。

商習慣や税制面でもインドネシアのカカオ加工業の立場は厳しい。ヨーロッパや北米の

伝統市場でのチョコレート製品製造業者は長年の取引実績により信頼を得た加工業者

との間で一定の製品仕様に基づいた長期購入契約を重視しており、両者間に確立されて

いる既存の取引・信頼関係を崩し、新たに参入することは難しい。さらに、成長市場へ

の浸透も決して容易いものではない。効果的なブレンドを目的とした良質な豆を輸入す

る上での輸入関税、製品を輸出する上での相手国輸入関税が妨げとなっている。カカオ

製品の輸出先として有望な中国の場合、インドネシア産カカオ製品には 8~22%の範囲

の輸入関税が課せられる一方で、マレーシア産カカオ製品 5品目に対してはゼロ関税が

実現(アーリー・ハーベスト・プログラムにて)されている。インドネシア加工業界では、

係る不利が存在する間にマレーシアが中国市場にかなり浸透するのではと危惧を強め

ている。事実、マレーシアのみならず中国のカカオ加工能力の拡大が顕著で、インドネ

シアにとっては有望な市場であると同時に当面の手強い競争相手として位置付けられ

る。

3.3 スラウェシ島におけるカカオ生産関連組織

南スラウェシ州およびスラウェシ島全体のカカオ・セクターは多くの関係支援機関に支

えられている。主な関連機関を以下に示す。

3.3.1 民間セクター

インドネシア・カカオ貿

易業協会(ASKINDO)

マカッサル支店

貿易業者を中心とするカカオ・セクターの業界団体で、病害虫や

樹齢の老朽化に対応するためのカカオ農家支援に積極的であ

る。

PT. Effem Indonesia 多国籍食品企業 Masterfoods Inc.の現地カカオ加工子会社でマ

カッサルに立地、カカオ農家への技術支援を実施。支援活動と

して USDA / USAID による SUCCESS プロジェクトに関与し、近年

は PRIMA プロジェクト(疫病対策を目的とした包括的農園管理

改善事業)を実施した。さらに、フィールド・ファシリテータを

南・中部スラウェシ州の主要産地に配属、カカオ栽培に関する

技術指導・助言を展開している。

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3.3.2 教育・試験研究機関

ハサヌディン大学 カカオ生産栽培に関係する事業や調査において技術コンサルタ

ント、ファシリテータとして参画し、経験と知見が蓄積されて

いる。

インドネシア・コーヒー・

カカオ研究所(ICCRI)

インドネシア唯一のカカオに関する国立農事研究所で農業省の

予算援助を受ける。しかし、東ジャワ州に設置されていること

もあり、スラウェシ・カカオに関して限られた研究実績しか持た

ず(特にフィールド実証研究が弱い)、また、普及サービスとの

連携が乏しい。

農業技術評価センター

マカッサル支局(BTPT)

農業省管轄の技術評価・普及支援機関で、全作物が対象。マカッ

サルに州支局が所在。カカオに関しては北ルウ県にて実証ファ

ームを設立して運営を開始したが、研究能力・普及展開能力とも

に乏しい。コーヒー・カカオ研究所および州・県農園作物局との

連携が必要である。

3.3.3 金融機関

インドネシア中央銀行

(BI)マカッサル支店

中小零細企業や農家グループを対象に金融アクセス改善に向

け、金融仲介コンサルタント(KKMB)の育成を通じた支援を南

スラウェシ州では 2004 年より展開している。

インドネシア人民銀行

(BRI)

中央政府の資金拠出を受け、農園リハビリテーション信用供与

スキーム(KREN-RP)を開始、カカオは支援対象作物の一つで、

農家へ直接低利融資を供与して、リプランテーションを通じた

農園再生の促進を図る。

3.3.4 地方政府機関

州・県農園作物局

(DISBUN)

業務分掌にカカオ栽培の管理指導が入る。小規模農園の再植、

接木、新規開発に要する予算を持ち、農家グループへの肥料購

入資金や栽培資材の無償提供を実施するが、その数量と範囲が

限定的である。農業省の予算によりカカオ再植接木プログラム

を実施中、無償にて老齢樹の更新を支援している。

農業普及・情報センター 農家向け農業普及サービスを行う機関であるが、米等食用作物

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(BIPP) への対応が中心で、カカオの主要産地においてもカカオ栽培に

対する支援リソースの配分、職員の知識は非常に限られている。

州・県商工業局

(DISPERINDAG)

カカオの流通と加工は DIEPERINDAG の管理指導の対象。現在、

産業クラスター新興事業を実施、Gerbang Emas 事業を主導して

おり、カカオも対象産業の一つとして選定されている。

3.3.5 多国籍・二国間ドナー機関

アメリカ 国際援助庁

(USAID)

2000 年以降の取り組みよりスラウェシのカカオ・セクターにお

いて最もプレゼンスが高く、これまでに以下の技術支援事業を

実施した。

SUCCESS ( Sustainable Cocoa Extension Services for

Smallholders)プロジェクト(2000 年~2005 年):病害虫に対

応するため、農家に包括的対策や適切な農園管理手法の研修を

実施、約 3万戸のカカオ農家が裨益した。

AMARTA(Agribusiness Market and Support Activity)プロジ

ェクト:官民パートナーシップ(PPP)アプローチを通じたアグ

リビジネスの振興を図るため 2007 年より開始。インドネシア全

国 8つの産品が対象で、スラウェシ・カカオもその一つである。

多国籍企業 Olam が協力を行う予定。

国際金融公社(IFC) PENSA(Program for Eastern Indonesia SME Assistance)を展

開、そのアグリビジネス・リンケージ強化コンポーネントでスラ

ウェシ・カカオが対象。カカオ・セクターにおける PPP モデルを

構築することが目的で、カカオ・サステナビリティ・パートナー

シップを設立した。

世界銀行 農業セクター支援向けクレジット-FEATI(Farmer Empowerment

through Agricultural Technology and Information for Eastern

Indonesia)を開始予定。なかで、“Farmer-managed Activity”

に対するグラント資金を供与し、民間・R&D 機関と協力しながら

農民の発案による農産・加工活動の改善努力を支援する。スラウ

ェシ・カカオに対する活動も小規模ながら含まれるものと思わ

れる。

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3.4 カカオ豆生産・加工の問題点の整理

南スラウェシ州を中心とするカカオ生産及び流通加工に関与するステークホルダーは

①農家、②中間流通業者(トレーダーおよびコレクター)、③輸出業者、④加工業者、

⑤輸入者(多国籍企業および加工業者)、⑥製造業者、並びに⑦関係支援機関(研究開

発機関: R&D、政府、ドナー等)で構成される。これらのステークホルダーが直面して

いる問題点を、(1) 栽培・収穫後処理、(2) 流通・加工、(3) 支援制度・農家組織、(4)

金融、(5) 規制、などの面から整理すると、以下のとおりである。

3.4.1 栽培・収穫後処理

栽培・収穫後処理では主に農家が直面している問題点として、生産性と農家所得の低下、

カカオ豆の品質が低いこと、カカオ豆の醗酵処理の欠如である。

問題点と制約 詳細

農園の生産性低下、こ

れに伴う農家所得の低

- カカオ農園の生産性は低下傾向にあり、潜在的な水準である

1.0 トン/ha 以上に対し、現状は平均で 0.3 トン/ha 程度と低

水準。

- 平均樹齢は最も生産性の高い樹齢 8~12 年を大幅に上回る 18

年である。

- 農園管理がおろそかかつ不適切で病害の一層の発生と生産性

の低下を招いている。芽接ぎ等のリハビリテーションも方法

が不適切で成果を出せない例が多い。

- 多くの農家が肥料を利用しているが、知識と資金の不足より、

適切な方法と量で利用しているものは稀である。

栽培資材の供給量不足

と技術指導の欠如

- 苗木を育成するための種や腹接ぎ用の芽接ぎ材は、外部の技

術指導を受けることなく農民自身が選ぶことが多く、成果を

出せない例が多い。

- ICCRI が育成・選定し、各 DISBUN に配布する苗木の量が極めて

限定的である。

リプランテーションや

リハビリテーションの

停滞

- リプランテーション(植え替え)は殆ど進んでいない。個々

の農家では栽培資材の購入や持続的な農園管理に要する充分

なリソースを確保する余裕がない。

- 政府によりリプランテーション・プログラムは徐々に始めら

れているが、その範囲は未だ限定的である。

カカオ豆の質の低下 - 樹齢の老齢化と不適切な農園管理により、豆の質は、フィジ

カル面(サイズが小さくなっており、不良・くずの割合も上

昇)、物質面(油脂含有量が低下)で低下している。

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問題点と制約 詳細

農家レベルでのカカオ

豆の処置や発酵処理の

欠如

- カカオ豆の処置(選定/グレーディング、乾燥)に対する農民

の意識は弱く、農家レベルでは殆ど行われていないため、豆

の質のばらつきが大きい(重量ベースの取引による弊害)。

- 買い付け側が金銭インセンティブ(プレミアム)を提示しな

いため、発酵処理も稀である。

3.4.2 流通・加工

流通・加工では、輸出市場における需要は伸びつつあるもののカカオ豆の生産量と品質

が需要に追いつかないことである。すなわち生産段階の問題で流通・加工が制限されて

いる。

問題点と制約 詳細

良質豆の確保の難しさ

(→加工業では、稼働

率の低下に招いてい

る)

- 農園の生産性と品質の低下に伴い、輸出業者と加工業者は

益々質の良い豆の安定確保に困難を来している。

- 特に国内加工業者は、多国籍企業による輸出向けカカオ豆の

取り扱いシェアが増加していることもあり、稼働率も低下し

ていることから、この問題を危惧している。

加工効率の低下 - カカオ豆の油脂含有量の低下から、加工効率が低下している。

未発酵豆の利用も設備の利用効率を下げる要因である。

- いくつかの国内加工業者は、国内産発酵豆の利用とプレミア

ム価格の適用を検討する可能性があるが、農民側は潜在的な

発酵豆需要に対する意識に欠ける。

国内産カカオ・パウダ

ー/ケーキの市場性

- スラウェシ産カカオ豆で精製されるカカオ・パウダー/ケーキ

はフレーバーが弱いことから、市場が限られ、かつ低位であ

る。これが、加工工場操業の商業性に影響する。

カカオ産業に対する公

的機関による輸出振興

サービスの弱さ

- スラウェシの加工工場のいくつかは、市場情報の提供、潜在

バイヤーの引き合い・マッチング支援を政府の輸出振興機関

に求めているが、カカオ加工産業については殆ど情報・支援ノ

ウハウが無い。

3.4.3 支援制度・農家組織面

流通・加工では、輸出市場における需要は伸びつつあるもののカカオ豆の生産量と品質

が需要に追いつかないことである。すなわち生産段階の問題で流通・加工が制限されて

いる。

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- 14 -

問題点と制約 詳細

普及指導およびファシリテーション・サービス

政府の普及指導員の献

身性と能力の弱さ

- 組織の構造的な問題から、政府の普及指導員の献身性とカカ

オ栽培に関する知識や指導能力は一般的に脆弱である。

限られたサービスの対

象範囲

- 民間セクターの自助努力もあり、質の高いフィールド・ファシ

リテータの数は近年増加しているものの、依然としてそのサ

ービスが提供される範囲には限度がある。

試験研究における支援

限定的な実地研究と普

及活動

- カカオに関する試験研究機能は実質的に東ジャワに所在する

ICCRI であり、期待も大きい。しかし、スラウェシのカカオ栽

培に向けた栽培資材の配布量、フィールド実証・適用研究等は

これまでのところ限定的である。

試験研究機関と普及指

導サービスのリンケー

ジの欠如

- 研究と普及指導のリンケージが弱く、ICCRI 等による既往の研

究成果が農家レベルまでなかなか浸透しないことが問題であ

る。

その他行政サービス

カカオ生産に関する信

頼性の高い統計情報の

欠如

- カカオ生産については、信頼性の高い統計情報に欠け、農園

の正確な現状把握、政策への反映に支障を来すものと危惧さ

れる。

カカオ生産に関する土

地利用情報の管理の欠

- カカオ生産に関する土地利用情報は適切に管理・更新されて

おらず、効果的・効率的な普及指導サービスに支障を来すもの

と危惧される。

農家組織

農家によるコレクティ

ブ・アクションの欠如

- 農家によるコレクティブ・アクションが経済的かつ効果的な

方策となりうる問題がいくつかあるが、大多数の農家組織が

コレクティブ・アクションを通じた組織の効果的な運用を図

っておらず、コレクティブ・アクションを消極的に捉えるもの

も多い。

農家組織の強化に対す

る献身的な支援の欠如

- 農家組織の強化の鍵は、ファシリテーション・サービスとの継

続的なコンタクトの有無である。しかし、農家組織がある事

業の対象となり、その実施前後に限られることが一般的、実

践状況は乏しい。

3.4.4 金融面

カカオ豆の生産農家と流通業者はいずれも零細・小規模であり自己資金に乏しいこと共

通している。この観点から問題点は以下のとおりである。

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問題点と制約 詳細

フォーマルな金融への

アクセスの欠如

- 登記コストが高いことで、担保としての土地所有証明の取得

が進まず、フォーマル金融へのアクセスの妨げとなっている。

- 農家グループは法的根拠を持った組織ではなく、民間金融へ

のアクセスが出来ない。

政策金融制度の実効性

の弱さ

- 貿易・流通業者が複数の政策金融スキーム利用者の大多数を

占めており、農園生産性の改善や生産基盤の回復に繋がって

いない。

- 農家グループ向けのリボルビング・ファンドの供与(DISBUN)

を除き、政策金融制度が農家の多くに知られていない。

3.4.5 規制面

南スラウェシ産のカカオ豆の特徴が高い溶解点と淡白なフレーバーに加えて価格が低

いことから国際市場で安定した需要を持つが、国内市場での需要も期待できる。これら

の点から以下の制約がある。

問題点と制約 詳細

カカオ豆の輸出課税の

影響

- 国内加工業の振興を意図するカカオ豆の輸出課税が栽培農家

に与える負の効果が懸念され、詳細な分析も行われていない。

カカオ豆の輸入関税の

影響

- カカオ豆の輸入関税が、国内加工業者の行う外国産カカオ豆

との効果的なブレンドを阻害している可能性があり、輸入関

税のないマレーシアの加工業に比べ国内加工業を不利な状況

に置いている。

国家品質基準 - カカオ豆の国家品質基準(SNI 01-2323-1994/Revision 2002)

が存在するが、基準に基づく等級分けや値付けが執行されて

いない。

3.5 本調査における視察地域の現況

今回の現地視察では、南スラウェシ州北部に位置し、代表的な生産地であるピンラン県

を訪問した。その概要をいかに示す。

3.5.1 ピンラン県の概要

ピンラン県は州都マカッサル市から西岸沿いに北へ 170 km の距離に位置し、州内第二

の都市であるパレパレ市から 93 km の距離にある。位置的には南緯 3o 9’ 13”~4o 10’ 30”、東経 119o 26’ 30”~119o 47’ 20”の範囲にあり、北側はタナ・トラジャ県、南側はパレパ

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レ市、東側はエンレカン県とシドラップ県、西側はポルマス県とマカッサル海峡にその

境界を接している。面積は 1,962 km2で、行政上は県の下に 12 郡からなり、都市部 36

区と農村部 67村からなる。

2005 年における人口は 33 万 5 千人で人口密度は km2あたり 164 人である。人口の 84%

が農村部に居住している。平均家族規模は 4.5 人であるが、都市部は 5.1 人に対し農村

部が 4.4 人で、農村部の家族規模が小さいことが特徴である。これは農村部から就業機

会を求めて人口が移動していることを想像させる。総戸数のうち専業農家が 55%、兼業

農家が 21%である。

主な産業である農業の生産は2005年の記録ではコメが41万3千トンで食用作物全体の

98%を占める。エステート作物のカカオは 2 万 5 千トン、ココナッツ:8 千トン、コー

ヒー:2千トンとカカオの生産が特筆され、農家収入と地域経済の両面でカカオの占め

る割合が高いことを示している。

3.5.2 カカオ生産地の現状

県都ピンランから西へ進みサダン川の灌漑システム頭取工付近から丘陵地域に入った

バトゥラップ郡タポラン村を訪問した。付近は小規模農家によるカカオのプランテーシ

ョンが一面を覆っていたとのことであるが、現在はカカオの樹齢が高くなり生産性が低

下したことに加えて、カカオ・ポッド・ボーラーなどの害虫被害が深刻なために、プラ

ンテーションの更新よりも伐採してトウモロコシなど他の作物への転換が進んでいる。

農業普及員と農家から以下のとおり地域のカカオの生産の状況を聞き取った。具体的な

状況は巻頭の現地写真に付記した説明のとおりである。

1) 小規模農家の経営であること。平均的な農家のカカオ栽培面積は 1 ヘクタール程

度と規模が小さく、生産力からもこの規模の栽培のみでは農家所得としては不安

定な状況である。聞き取りによると生産性はヘクタールあたり 500~1500kg で収

入としては Rp.5 百万~Rp.10 百万にとどまる。

2) 農家の経営基盤が脆弱であること。また、現状では、カカオのほか米の生産も行

っているが、ほかの就業機会は少ない。

3) 生産期が終わった老木で生産ができないか著しく減少した農地が多く、改植や接

木が必要となっているが、接木後 2 年は収穫が期待できない。このため、老木を

伐採した後にトウモロコシに転作したり、放置されている農地が広がっている。

4) 平坦地は水田が多く、カカオ栽培地は丘陵や傾斜地に広がっており農地へのアク

セスが悪い。今回の調査地区は傾斜地で集落のアクセスも悪く、農民が自力によ

って道路整備(コンクリートの舗装:集落まで幅 2 m、農地幅 1 m 程度)されて

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いた。また、今回調査地区では整備されていたが家庭用水のほか生産、加工用の

雑用水が必要である。

5) USAID の SUCCESS プログラムにより生産技術の移転やファシリテーターの育成が

なされ農民グループの組織化と栽培技術の普及も図られてきたが、その波及効果

は限定的で進んでいないようである。今回の調査した集落でも四つの農民組織が

あるが、そのウチの一つの農民組織でしか普及していない。

6) 技術移転が行われた農民であっても、日常の営農管理は粗放的で、カカオ・ポッ

ド・ボーラーの被害が激しく、ネズミの食害などに対して摘出廃棄などの適切な

処置がとられていなかったり、樹枝の剪定もほとんど行われていない。こういっ

た日常的な営農管理は、カカオの品質と生産量に影響を及ぼすと同時に、防除、

施肥あるいは商品価値の高い品種の導入などのより高度な営農管理を定着させる

ための基本的な技術ステップと考えられ、改善の余地は多い。

7) 生産物の品質向上や醗酵などの農産物収穫後処理の改善による付加価値をつける

ことなどが必要であるが、実現には農民の意欲的な取り組みが必要である。カカ

オの農産物収穫後処理を地域に取り組む場合には、民間のカカオ流通業者などを

巻き込んで適正な利益の配分が行われるなど対応が必要である。

8) カカオの生産分野と生産物の流通、加工分野とのコミュニケーションチャンネル

に改善の余地が大きい。とくに幹線道路と結ぶ農道は収穫したカカオ豆の出荷を

容易するとともにロスを軽減する。また、カカオ豆の付加価値を向上する醗酵・

選別などの収穫後処理は個々の農家で行うよりも共同の集出荷施設を設置するこ

とにより効果を発揮するであろう。

9) カカオ生産の発展は、政府の振興策や助成金によってなされているわけではなく、

マレーシアへのカカオ栽培労働者の持ち帰った資源で発展してきたといわれてお

り、民間主導であったことが特徴である。しかし、カカオを導入した農家の世代

交代が進み、次世代でカカオの生産に対する意気込みが低下している。

カカオ豆の生産は依然として地域の農村経済で大きな地位を占めているとともにマカ

ッサルにおける加工輸出産業への原料供給に重要な役割を果たしている。このような状

況を勘案すると、以下の方策が考えられる。

1) 小規模農家が持続的に発展していくため、集落レベルの農村生産基盤と生活基盤

の整備を通してコミュニティの活性化をはかることにより次世代の農家が存続す

る環境を創出し、優良農家の組織化に向けて若手の農民リーダーを育成して農家

経営を近代化する必要がある。これに付随して、肥料などの生産資材やカカオの

集出荷拠点までの生産流通インフラおよび生活インフラとして圃場改善・搬出入

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道路・集落道路・用水の整備があげられる。また共同集出荷施設や収穫後処理施

設などの整備も必要である。

2) 傾斜地や丘陵地という土地条件から農地面積の拡大は容易ではないため、農業所

得の向上の観点からはカカオ豆の生産性と品質の向上が不可欠である。また、所

得の安定に配慮するト他作物の生産など農産物の多様化を組み合わせて複合経営

を視野に入れる必要がある。

3) カカオを含む農産物の生産性の向上と品質の改善は、現在の農民の能力と意欲で

は困難であり、農民の営農意欲の増進を通して栽培技術や収穫後処理技術の向上

と経営能力の強化が必要である。

4) 州都マカッサルの加工流通産業とのネットワークを構築するために流通業者を含

めたステークホールダー間の Win-Win 原則に立つ互恵関係を構築することが必要

である。

5) 農民の主体的な取り組みに必要な資金確保だけではなく、次世代をになう若手農

民に焦点をあてて農家経営に必要な資金管理能力や経営計画を作成する能力を高

めてるとともに経営センスを磨くためのマイクロファイナンスの導入が効果的で

ある。

6) 上記の普及のために今後の実施の方策として、①農家によるカカオ関連の加工流

通事情の理解とステークホルダーとのネットワークの構築、②カカオ以外の農作

物との複合経営の可能性と地域事情の調査、③生産基盤と生活基盤を中心とする

地域特性別のモデル事業の構築、④モデルの地域全体への普及と波及のための手

法の検討、が考えられる。

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第 4 章 南スラウェシ州カカオ収穫後処理流通改善・生計向上計画の概要

4.1 計画の目的

本計画はインドネシア最大のカカオ生産地域である南スラウェシ州を対象に、カカオ生

産・収穫後処理の改善を通じた農家所得の向上を図るとともに、加工輸出原料となる良

質なカカオ豆を供給することにより加工輸出産業を振興してマカッサルを中心とする

地域経済の発展を目的とする。

4.2 計画対象地域の概要とカカオ生産の重要性

(1) 計画対象地域の概要

南スラウェシ州はスラウェシ島 6州で最大の人口を抱え、島内 GDP の約 52%を占める。

ジャワ島、カリマンタン島両島の対岸に位置する州都マカッサルは、その立地条件を活

かし古来より東部インドネシアの物流拠点として発展し、インドネシア 6位の人口を有

する広域都市圏に成長した。このようにスラウェシ島最大の経済規模を誇る南スラウェ

シ州であるが、製造業の低迷から農産物を中心とする地域資源の付加価値化が進んでい

ないために経済的優位性が十分に活かされていない。一人当たり GRDP は 5.7 百万ルピ

アと島内 6 州の中で 3 番目に甘んじており、この水準はインドネシア全体の平均 10 百

万ルピアとの比較でも低位である。このような状況下、南スラウェシ州政府は農産加工

業振興に焦点に据えた地域経済活性化を目指している。

(2) カカオ生産の重要性

スラウェシ島で生産されるカカオ豆の多くは物流の拠点である南スラウェシ州の州都

マカッサルから輸出される。輸出額は 2004 年時点で 284 百万米ドル、これは南スラウ

ェシ州の総輸出額の 22.4%を占め、ニッケルに続く第 2位の輸出産品となっている。さ

らに、南スラウェシ州では、25万におよぶ農家がカカオ栽培を生計の手段としており、

カカオ関連産業は農家および地域経済にとって極めて重要である。

3.4 節にて指摘した問題点と制約が適切に処理されなければ、南スラウェシ州(および

スラウェシ全体)のカカオ・セクターは以下の状況に直面するものと考えられる。

- 害虫被害や樹齢老化により、農園の生産性は低下し、結果的に農家所得も低下する。

益々多くの農家がカカオ農園を放棄するか、栽培作物を変更する。

- 質の良いカカオ豆確保に向けた競争が激化し、豊富な資金力を持つ多国籍輸出業者

の取引シェアが一層高まり、地元輸出業者や加工業者のシェアが更に低下する。

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- 結果、国内加工業者によるカカオ豆の安定確保は一層困難になり、その大多数が操

業停止または更に低い稼働率での操業を強いられる。

- 輸入側(多国籍企業)のスマトラ島等インドネシアの他地域、ベトナム、パプアニ

ューギニア等でのカカオ豆の調達が一層進む。

4.3 計画コンポーネント

上記のように想定される将来の状況を回避するため、南スラウェシ州のカカオ・セクタ

ーは以下の課題に対応する必要がある。

- カカオ生産基盤の回復と拡大:

スラウェシ産カカオ豆の国際市場での比較競争優位を維持する

- カカオ農園管理の改善:

カカオ農家が適切な農園管理を実践することで、カカオ豆の質的改善をはかりなが

ら農園生産性の改善をはかる。

- 付加価値創出活動へのカカオ農家の参入促進:

持続発展的なカカオ生産に必要な農家所得の改善をさらに進めるため、収穫後処理

等の付加価値創出活動を推進する。

- 市場の拡充:

新興成長市場や国内市場での国内産カカオ製品の浸透をはかる。

- 加工産業の振興:

操業停止や低い稼働率での操業を強いられている国内加工産業の活性化をはかる。

こうしたカカオ・セクターが取り組むべき課題は、第一に民間セクターの自発的かつ継

続的な努力と協力が不可欠だが、同時に行政による以下の取り組みも無視できない。

- 農家組織の強化と金融アクセスの向上: 上記課題への取り組みに必要なアクショ

ン・プランを効果的かつ効率的に実行していくための組織的基盤と手段を整備する。

- 公的サービスの改善: カカオ農家・産業・支援機関が必要とする公的サービス(ファ

シリテーション・サービス、普及指導、R&D、その他)の充実化をはかる。

これらの取組みはそれぞれが個別に取り組んでいくことも可能であるが、パッケージ化

して取り組むことにより効率的に推進可能である。そのため、計画は生産・収穫後処理

を行う農家および加工・輸出産業の両側に対する二つコンポーネントに分け、カカオ・

セクター全体の活性化を目指す。収穫後処理を行う農家に対しては「生産(栽培)強化

プログラム」とし、加工・輸出産業に対しては「加工・輸出産業振興プログラム」である。

加工・輸出産業振興プログラムは一部がすでに南スラウェシ州地場産業振興プロジェク

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トとして開始されており、これと連携した形で農家を対象とした生産(栽培)強化プロ

グラムの開始が必要である。

(1) 生産(栽培)強化プログラム

今回調査で輸出業者ならびに加工業者を含むステークホルダーの多くが、生産段階の問

題が結果的にサプライ・チェーンの次段階の輸出と加工産業の動向に多大な影響を与え

ているという認識にあることを確認、生産体制の強化が南スラウェシ州のカカオ・セク

ターにおいて最も重要かつ支援の優先度が高いことを認識した。

実施機関 州・県の農産作物加工局(DISBUN)および公共事業局

支援対象

2 県程度。効率的な支援のために対象県からカカオ生産に積極的な農家グループ・農村を選定しモデル村とする。

プログラム内容 選定農家グループが抱える課題や能力に応じ以下の支援を実施する。

① 農園のリプランテーションおよびリハビリテーション支援

国際市場で求められる品質を有するカカオ樹種の選定、選定されたカカオ樹の普及、リプランテーション・リハビリテーションにかかる資金支援

② 農民組織による種苗場の設立・運営支援

育苗施設の建設にかかる資金支援、施設運営技術指導による定期的カカオ木更新に向けた良質苗供給体制強化

③ 生産管理技術強化支援

植え替え、腹接ぎ、施肥、農園管理手法、病害対策等に関する生産技術指導。また生産技術の運用に必要な経営管理能力を強化するためのマイクロファイナンスの導入指導。

④ 収穫後処理処技術強化支援

発酵作業など収穫後処理技術の技術指導、コミュニティ・ベースド・マーケティング・ステーション設立、組織運営技術の指導

⑤ 農業生産基盤と農村生活基盤の整備

上記の支援を効率的に進めるため、また、農村の次世代層が活躍しやすい環境を整えるため、圃場・用水・農道・収穫後処理・集出荷施設などの生産基盤を整備するとともに、次世代の農家が農村で快適な生活をおくることを可能とする上水供給・集落内道路・電化などの生活基盤西部

留意点

生産(栽培)プログラムでは、インドネシア・カカオ貿易業協会(ASKINDO)が実施するカカオ・ビレッジ・モデルの取り組みを参考とし、受益農家によるコミュニティ開発を促進する仕組みを組み入れることがより効果的である。

農家の自助努力を醸成するために、支援の組み合わせはあくまで問題の深刻度(必要性)、農民グループ・農村の積極性に応じ決定する。

州・県農産作物加工局(DISBUN)は実施的にカカオ・セクターを支援する政府機関である。農園リプランテーション・リハビリテーションプログラムなどの支援を展開しているが、予算的な制約もあり支援範囲は限定的である。DISIBUN を実施機関とする本プログラムの実施により、活動内容強化と支援範囲の拡大など DISIBUN のカカオ・セクターの支援機

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関としての能力強化も期待される。

(2) 加工・輸出産業振興プログラム

カカオ農家への支援は、国内加工ならびに輸出産業にとっても不可欠かつ最も有益な取

り組みである。しかし、カカオ・セクターが輸出を目的とした産業であることから、生

産物の受け入れ先としての加工・輸出産業の強化を同時並行で進める必要がある。

実施機関 州商工業局(DISPERIDAG)

支援対象 州商工業局(DISPERIDAG)

プログラム内容 ① カカオ加工・輸入業者データベース構築

国内外加工・輸入業者リストアップ、加工・輸入業者ニーズに関する調査、加工・輸入業者データベース整備

② 消費者ニーズの確認

消費者ニーズ、カカオ製品の販売状況に関する調査

③ 品質基準(取引基準)運営体制の強化

上記①、②に基づく品質基準のレビュー、簡易品質判定表の作成など品質基準管理・運営体制の指導

留意点

供給者(生産者)と加工・輸出のニーズを合致させる意味で両側への支援は意義が大きい。

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第 5 章 総合所見

カカオ・セクター全体を見通して、収穫後処理を行う農家に対しては「生産(栽培)強

化プログラム」と、加工・輸出産業に対しては「加工・輸出産業振興プログラム」を提案

したが、生産(栽培)プログラムは南スラウェシ州のカカオ・セクターにおいて最も重

要かつ支援の優先度が高い。輸出業者ならびに加工業者を含むステークホルダーの多く

が、南スラウェシ州(およびスラウェシ全体)のカカオ・セクターにおいて最大の問題

は生産段階にあるという意見で一致する。生産段階の問題が結果的にサプライ・チェー

ンの次段階の輸出と加工産業の動向に多大な影響を与えることは明らかである。

本プログラムは技術支援として、州・県農産作物加工局(DISBUN)が実施機関として主

導的役割を果たし、2県程度を選定のうえ対象として実施するのが望ましい。対象県で

はさらに、対象村を選定し、意識の高い農家グループをプログラムの受益者として発掘

する。

農家グループまたはそのクラスター組織は、i)農園のリプランテーションおよびリハ

ビリテーション、ii)「適切な農園管理」の定着化支援を通じた生産性の改善活動のど

ちらか、または両方を選択したうえプログラムに参加する。本プログラムの実施にあた

っては、苗木、接ぎ木、肥料等の栽培資材の支給が必要となる。係る資金面の支援に加

え、フィールドでのプログラム実行支援に当たるファシリテーション・サービスと、植

え替え、腹接ぎ、施肥、農園管理手法、病害対策等に関する技術指導を提供する。

さらに、上記の短期アクションを経験し、農園の再生と適切な管理の定着が確認される

場合は、一層の所得創出の機会をもたらし得るアクションに参加する選択肢を、関心と

管理能力を持つ農家グループまたはそのクラスター組織に限り用意する。中期のアクシ

ョンとして、i)農家組織による種苗場の設立・運営、ii)コミュニティ・ベースド・マー

ケティング・ステーションの設立・運営に用意に進むことができる。以上のアクションに

参加する農家グループに対しては、併せて農家組織の強化支援の対象となる。

上記に加えて、生産基盤や生活基盤の改善を含めたコミュニティ開発と組み合わせて実

施することが参加する農家と農家を取り巻く状況を改善し、農家が主体的にプログラム

に参加する環境を創出することが必要である。そのためには、州または県の行政レベル

で公共事業局との連携が必要となる。また、生産(栽培)プログラムでは、ASKINDO が

実施するカカオ・ビレッジ・モデルの取り組みを参考とし、受益農家によるコミュニティ

開発を促進する仕組みを組み入れる。

これらを含めて現在実施中の南スラウェシ州地場産業育成プロジェクトと緊密な連携

をとることが 2県から地域的な広がりを期待するうえで重要である。

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添付資料

添付資料-1 調査団員の略歴

添付資料-2 日程表

添付資料-3 面談者リスト

添付資料-4 収集資料リスト

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添付資料-1

調査団員の経歴

インドネシア共和国

南スラウェシ州カカオ収穫後処理流通改善・生計向上計画

プロジェクトファインディング調査

調査団員の経歴

__________________________________________________________________________ 森丘 直人 昭和 30 年 9 月 16 日生 昭和 56 年 3 月 岩手大学 農学研究科 修了 昭和 56 年 4 月 日本工営(株)入社 現在 日本工営(株)地域整備部 部長代理

臼杵 宣春 昭和 24 年 1 月 1 日生 昭和 47 年 3 月 東京農工大学 農業生産工学科 卒業 昭和 47 年 4 月 農林水産省 入省 平成 17 年 1 月 全国土地改良事業団体連合会 平成 19 年 4 月 日本工営(株)入社 現在 日本工営(株)コンサルタント国内事業本部 技師長

________________________________________________________________________

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添付資料-2

調査団日程

インドネシア共和国

南スラウェシ州カカオ収穫後処理流通改善・生計向上計画

プロジェクトファインディング調査

調査行程

月日 行程 宿泊地 活動内容

1 3 月 3 日 火 (森丘:現地参加) 臼杵:東京-Jakarta

Jakarta

- 農業省 加工流通総局 計画局に

て表敬および説明 - JICA インドネシア事務所にて表

敬および説明

2 3 月 4 日 水 Jakarta – Makassar – Pare Pare Pare Pare

- Jakarta より現地へ移動 - ハサヌディン大学 地域開発学局

スタッフと合流および打合せ

3 3 月 5 日 木 Pare Pare – Pinrang – Makassar Makassar

- Pare Pare から Pinran に移動 - 農業普及所にて聞取り - Pinrang 県 Batulap 郡 Tapporang 村

Kampong Baru にてカカオ栽培現

場の視察と農民組織の聞取り - Pinrang から Makassar へ移動

4 3 月 6 日 金 Makassar - JICA マカッサル事務所にて表敬

および説明 - 資料収集

5 3 月 7 日 土 Makassar - 資料収集 - ハサヌディン大学 地域開発局ス

タッフと打合せ

6 3 月 8 日 日 Makassar – Jakarta Jakarta - Makassar から Jakarta へ移動

7 3 月 9 日 月 臼杵:Jakarta – 機中 Jakarta 機中泊

- 資料整理および調査取りまとめ - 臼杵:夜行便にて Jakarta 出発

8 3 月 10 日 火 森丘:Jakarta – 機中 臼杵:機中-東京

機中泊

- 大使館に報告と説明 - JICA インドネシア事務所に報告

と説明 - 森丘:夜行便にて Jakarta 出発 - 臼杵:帰国

9 3 月 11 日 水 森丘:機中-東京 - 森丘:帰国

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添付資料-3

面談者リスト

インドネシア共和国

「南スラウェシ州カカオ収穫後処理流通改善・生計向上計画」

プロジェクトファインディング調査

面談者リスト

1. 農業省(Ministry of Agriculture)

農産物加工流通総局 計画局(Planning Division, Directorate General of Processing & Marketing of Agricultural Products)

- Dr. Ananto K Seta Head of Division(計画局長) - Ms. Andi Arinida Staff of Division

大臣官房(Secretariat General) - Watanabe Kenji JICA 専門家 2. ハサヌディン大学(Hasanuddin University)

地域開発局(Division of Regional Development) - Dr. Rusnadi Padjung Head of Division

農学部(Division of Regional Development) - Nasaruddin Lecturer(カカオ) - Dr. Agnes Rampisela Lecturer 3. Pinrang 県農業普及所(BP4K: Badan Pelorsana Penyulusan Pertani, Prisana di Kelutanan) - Haeruddin Kammig 普及所長 - Burhanuddin Hasan Batulappa 分所 4. 日本大使館 - 瀬尾 充 一等書記官 5. JICA インドネシア事務所 - 山根 誠 次長 - 山田 智之 所員(スラウェシ地域開発担当) - 市原 純 所員(気候変動担当) 6. JICA マカッサル事務所 - Tokumaru Shuji 次長 - Ida Gosal Program Officer

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添付資料-4

資料収集リスト

インドネシア共和国

南スラウェシ州カカオ収穫後処理流通改善・生計向上計画

プロジェクトファインディング調査

収集資料 出版元 発行年

1. Statistical Yearbook 2004 Statistical Bureau of Indonesia 2005 年

2. Statistical Yearbook 2005 Statistical Bureau of Indonesia 2006 年

3. Statistical Yearbook 2006 Statistical Bureau of Indonesia 2007 年

4. Rehabilitasi dan Peremajaan Tanaman Kakao (Rehabilitation and Replantation of Cacao Plantation) カカオの接木と再植に関する説明書

Fakultas Pertanian UNHAS(ハサヌディン大

学農学部) 2009 年 2 月

5. Pembibitan Kakao (Cacao Cultivation) カカオ栽培に関する説明書

Fakultas Pertanian UNHAS(ハサヌディン大

学農学部) 2009 年 2 月

6. RENCANA PEMBANGUNAN JANGKA PANJANG SULSEL 2008 - 2028 (Long-Term Development Plan of South Sulawesi) 南スラウェシ州長期開発計画 2008年 – 2028 年

PERDA NO. 10 TAHUN 2008 by South Sulawesi Province (州令 2008 年第 10 号)

2008 年 4 月

7. RPJMD Sulawesi Selatan 2008 – 2013 (Medium-Term Development Plan of South Sulawesi) 南スラウェシ州中期開発計画 2008年 – 2013 年

PERDA NO. 12 TAHUN 2008 by South Sulawesi Province (州令 2008 年第 12 号)

2008 年 4 月

8. Gerakan Pemulihan Produksi & Kualitas Kakao: 300,000 ton pada Tahun 2013 (presentation material) 南スラウェシ州政府エステート部によ

るカカオ増産計画の説明資料

Dinas Perkebunan, Provinsi Sulawesi Selatan(州政府エステート総局)

2008 年 8 月

9. Gerakan Penngkatan Produksi dan Mutu Kakao Nasional, , January 2009 (presentation material at Makassar) 東部インドネシアを対象としたカカオ

国家計画の説明資料(マカッサルに

て 2009 年 1 月)

Ditjen Perkubunan: DG Estate, Deptan(農業

省エステート総局官房) 2009 年 1 月

10. Pedoman Umum, Grankan Peningkatan Produksi dan Mutu Kakao Nasional 2009 – 2011 2009 年~2011 年における高品質カ

カオ生産に向けたガイドライン

Direktorat Jenderal Perkebunan, Departemen Pertanian(農業省エステート総局)

2008 年 12 月

Page 41: プロジェクト・ファインディング調査報告書 - ADCAadca.or.jp/page/pf/info_PF_H20/20PF14.pdf案件概要 国 名 (和)インドネシア (外)Republic of Indonesia

添付資料-4

資料収集リスト

収集資料 出版元 発行年

11. Pedoman Teknis Penuediaan Nenih Kakao Somatic Embryogenesis (SE) dan Entres カカオ品質改善の技術ガイドライン

Direktorat Jenderal Perkebunan, Departemen Pertanian(農業省エステート総局)

2008 年 12 月

12. OUTLOOK, Komoditas Pertanian Perkebunan エステート作物の生産動向

Pusat Data Informasi Pertanian, Departemen Pertanian(農業省農業データ情報センター)

2006 年 12 月

13. Daftar Nama Penyuluh Pertanian Fungsional dan Structural Berdasarkan Latar Belakang Pendidikan, Keadaan Desember 2008 (Staff List of BP4K Kab. Pinrang) ピンラン県農業普及所の職員リスト

BP4K Kab. Pinrang 2008 年 12 月

14. Final Report: the Support Program for Agriculture and Fisheries Development in the Republic of Indonesia

国際協力機構(JICA) 2005 年 6 月

15. インドネシア国農水産業セクタープロ

グラム開発計画調査 ファイナルレ

ポート

国際協力機構(JICA) 2005 年 6 月

16. Final Report: South Sulawesi Component : Study on Cocoa Sector, the Study on Improvement of Farmers’ Income: Agricultural Processing and Rural Micro Finance

国際協力機構(JICA) 2007 年 7 月

17. 農家所得の向上調査:農産加工及

び農村金融 ファイナルレポート 和

文要約

国際協力機構(JICA) 2007 年 7 月

18. Statistik Pertanian: Agricultural Statisitics 2005 農業省の作物統計

Pusat Data Informasi Pertanian, Departemen Pertanian(農業省農業データ情報センター)

2005 年 12 月

19. Statistik Pertanian: Agricultural Statisitics 2006 農業省の作物統計

Pusat Data Informasi Pertanian, Departemen Pertanian(農業省農業データ情報センター)

2006 年 12 月

20. Population of Sulawesi Selatan, Results of the 1995 Intercensal Population Survey 南スラウェシ州の人口センサス

Central Bureau of Statistics 1996 年 10 月

21. Direktori dan Revitalisasi Agribisnis Kakao Indonesia

Komisi Kakao Indonesia (Indonesia Cacao Commission)

2006 年 11 月