プレゼンテーションの実施 および2...

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プレゼンテーションの実施および能力育成について - 19 - プレゼンテーションの実施 および能力育成について 谷 口 政 男 プレゼンテーションⅠの授業報告および感想 今回はじめて「プレゼンテーションⅠ・Ⅱ」を担当し、現在プレゼンテーション Ⅰが終了しましたので、その報告および感想を次の順に述べてみたいと思います。 .プレゼンテーションとは何か .プレゼンテーションの目的 .何をプレゼンテーションするか .効果的なプレゼンテーションとは何か .学生によるプレゼンテーションの実施 .評価とフィードバック .前期の反省と後期の予定 .プレゼンテーション能力の育成について 1.プレゼンテーションとは何か ここで使うプレゼンテーションとは、「与えられた条件のもとで、自分の持っ ている情報・事実・考えなどを相手にわかりやすく正確に伝え、受け入れてもら うための行動のこと。(与えられた条件とは:プレゼンテーションの時間、準備 の期間、聞き手の人数、使用できる機器、会場などがある)」(実教出版発行「30 時間でマスター プレゼンテーションPowerPoint2002」より)の意味に使って いるものと理解してください。 また、他の定義として参考までに以下列記します。(注

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e ラーニング活用ハイブリッド授業

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プレゼンテーションの実施および能力育成について

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プレゼンテーションの実施および能力育成について

谷 口 政 男

プレゼンテーションⅠの授業報告および感想

今回はじめて「プレゼンテーションⅠ・Ⅱ」を担当し、現在プレゼンテーション

Ⅰが終了しましたので、その報告および感想を次の順に述べてみたいと思います。

1.プレゼンテーションとは何か

2.プレゼンテーションの目的

3.何をプレゼンテーションするか

4.効果的なプレゼンテーションとは何か

5.学生によるプレゼンテーションの実施

6.評価とフィードバック

7.前期の反省と後期の予定

8.プレゼンテーション能力の育成について

1.プレゼンテーションとは何か

 ここで使うプレゼンテーションとは、「与えられた条件のもとで、自分の持っ

ている情報・事実・考えなどを相手にわかりやすく正確に伝え、受け入れてもら

うための行動のこと。(与えられた条件とは:プレゼンテーションの時間、準備

の期間、聞き手の人数、使用できる機器、会場などがある)」(実教出版発行「30

時間でマスター プレゼンテーション+ PowerPoint2002」より)の意味に使って

いるものと理解してください。

 また、他の定義として参考までに以下列記します。(注1)

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プレゼンテーションの実施および能力育成について

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・ 高校用「情報」教科書では:教室にコンピュータと、その画面を大きく映写す

ることができるプロジェクタがあれば、みんなの前で考えを発表(プレゼンテー

ション)することが効果的になります。プレゼンテーションソフトを用いると、

1枚ずつのスライドのように、ページを決められた順番で紙芝居のように表示

することができます。・・・・・・・

・大辞泉では:計画・企画案・見積もりなどを、会議で説明すること。プレゼン。

・大辞林では:

1 〔提示の意〕広告代理店が新規獲得・更新に際し、広告依頼主に対して広告

計画案を示すこと。

2 フィギュア -スケートで、フリー演技の芸術性に対する評価点。1994年にアー

ティスティック -インプレッションから変更。

・プログレッシブ英和辞典では:presentationとは

1 提出,提示[物];実演,発表,説明,プレゼンテーション

2 (…への)贈呈,進呈;(…への)贈り物,授与品

3 (劇・映画などの)公開,上演,上映

4 紹介,披露 (ひろう );(宮中の)拝謁;(社交界への)デビュー .

5 (手形などの)呈示

6 (分娩時の)胎位 .

7 教会聖職給の給付申請(権).

8 表象,表出;直覚 .

2.プレゼンテーションの目的

 一般的にプレゼンテーションの目的は、意思伝達の有効な手段になるというこ

とです。

 もともと、アメリカは多民族国家のため、相手に自分の考えを伝えるのが難

しいので、コミュニケーション方法が盛んに研究されてきました。ですから、多

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くの人が理解しやすい伝達方法や強い印象を与える表現方法に関心を持っていま

す。アメリカでプレゼンテーションが重視され、効果的なプレゼンテーションの

方法を身に付けるための学習が進んだ背景がここにあります。

 ところが、日本では本来、共通の文化的背景を持っていて、膨大な情報を共有

してきました。その結果、言葉で表さなくても、相手の表情や態度から意図をく

みとることができました。ところが、明治維新以降の社会の急激な変化(文明開

化など)に伴って、互いの持っている情報も大きく異なり、言葉で意思表示する

ことが重視されるようになり、自分の知識やアイデアを形に示すことが求められ

るようになってきました。そのため、その手段としてプレゼンテーションが使わ

れるようになりました。

 また、プレゼンテーションは他にもグループウェアでのプレゼンテーションや

製品のプレゼンテーションなどがあります。

 グループウェアでのプレゼンテーションとはどのようなものでしょうか。現代

では新しい仕事を創り出していくためには、プレゼンテーション能力が鍵になる

と言われています。プレゼンテーション能力を使って、異なる分野の人と意見交

換し、理解しあって新しいアイデアを創り出していくときや創り出した新しいア

イデアを他人に提案するときに、プレゼンテーション能力が必要になることが分

かりました。

 また、製品のプレゼンテーションとはどのようなものでしょうか。商品の説明・

説得の場合で新製品などの販売などで顧客に対して製品の内容などを説明したり

説得したりすることが必要です。そのため、プレゼンテーションが必要になって

くるわけです。新製品の展示会などでは多くの場合、パソコンによるプレゼンテー

ションが当たり前にして行われています。

3.何をプレゼンテーションするか

 学生にとってプレゼンテーションとはどのようなものなのでしょうか。会社な

ど企業組織の場合は企画書等の説明などプレゼンテーションの目的や対象がはっ

きり決まっていますが、学校の場合は卒業演習などの論文発表の場合以外は特に

プレゼンテーションする機会が無いため聴衆の前でのプレゼンテーションを一度

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も経験しないまま卒業してしまう場合が多くあります。

 さて、プレゼンテーションもホームページなどと同様情報発信・自己表現の一

種と考えられます。学生の場合、聴衆の面前でプレゼンテーションを実施すると

きに、何をプレゼンテーションしたらいいかということが問題になります。一番

いいのは、自分の研究テーマをプレゼンテーションすることですが、まとめるの

に進度の差が相当出るので、前期は身近なテーマを提示してそれを題材にプレゼ

ンテーションすることにしました。つまり、自己紹介や地元紹介や趣味などなる

べく身近かで比較的内容が書きやすいテーマにしました。学生は、それらの中か

ら自分がプレゼンテーションし易い方を選択します。

 そして、テーマが決まったら、プレゼンテーションの下書きを別紙に6コマ程

描かせて提出させてチェックします。あまり進まない場合はこちらから助言をし

て、ある程度完成した段階でそれを基にパソコンに入力させます。

 今回は特に人数が多いので、早めにプレゼンテーションを実施する必要があり、

あまりパワーポイントの操作の説明には時間を割きませんでした。それは、操

作方法を詳しく説明しすぎるとその分作品の完成が遅くなり、その結果プレゼン

テーションが遅れてしまい、場合によってはプレゼンテーションができない学生

が出てきかねないからです。

 したがって、パワーポイントのごく初歩的な説明のみで、あとは作品のストー

リーを完成させることに重点をおいて欲しい旨要望しました。第1回目のプレゼ

ンテーションでは、自己紹介をテーマにした学生 36名、地元紹介をテーマにし

た学生9名、両方をテーマにした学生6名でした。

 自己紹介は、自分の生い立ち・趣味・特技・バイト経験・好き嫌い等などが主

たる内容でした。

 地元紹介は、観光案内(日本では沖縄・熊本・新潟・宮城・福島・栃木・埼玉・

千葉・東京・神奈川・長野・名古屋など、中国では天津・吉林・桂林・北京・上

海・世界遺産など)や地元出身の有名人などが主たる内容でした。

 2回目のプレゼンテーションは、趣味や関心・興味のあるテーマならなんでも

よいということにしました。学生からの要望もあり、グループでのプレゼンテー

ションも構わないことにしました。できればノート表示モードで、発表内容のシ

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ナリオを記入するようにしました。2回目のプレゼンテーションは全体の人数が

多いため、時間的制約があり約 60%の学生しか実施できませんでした。 残り

の学生は制作物の提出だけだったのが残念です。ただ全体的に言えるのは、2回

目のプレゼンテーションは1回目に比べゆとりがあり、わかりやすくなっていた

と思います。やはり場慣れすればする程、プレゼンテーションの発表方法にゆと

りがでてきて落ち着いて分かりやすくなってきていることがわかりました。

 また、リハーサルの有無によって良いプレゼンテーションになるかどうか決ま

ることもわかりました。大変熱心な学生は、授業後に来週のプレゼンテーション

のリハーサルをやらせて欲しいといってきました。本番ではスムーズにできるの

を見てリハーサルの大切さを感じました。

 2回目のテーマを列挙しますと次のようになります。

 それは、Jリーグ・就職活動・会社案内・株式について・スカイライン(グルー

プ)・中国の旧暦と食文化・府中神社・アルバイト・サークルについて・PCメモリー・

大リーグ・卒業旅行・好きなスポーツ・卓球と私・地球環境問題・趣味・ハワイ・

バイク・サザンオールスターズ・ピカソ・バクテン・私の好きなスポーツ・青春

切符・アルバイトの経験談・クレジットカード・マクロ経済学・タバコ・中国の

世界文化及び自然遺産・W杯・メイク・ガンダム・水上の格闘技-競艇・GMS

ショック・サッカー・ロックフェスティバル・イタリアについて・手塚治虫など

でした。また、2名以上だったのは、就職活動3名・スカイライン2名・アルバ

イト4名・地球環境問題3名・夢2名です。

 印象に残ったのは、どれも自分の研究や経験によるもので大変わかりやすく心

動かされるものばかりでした。特に印象に残ったのは、就職活動についてのプレ

ゼンテーションで、全員が真剣に聞き入っていました。やはり、3・4年生なの

で大変就職を意識している証拠だと思いました。

 また、当初の予定では全部で3作品の提出を予定していたので、3番目の課題

として案内状・チラシ等1枚ものを作成・提出させました。これは定期試験まで

に約 70%の学生が提出しました。今回の場合、3作品の作成・提出ははじめて

学習する学生にとっては多少きつい面があったのではないかと反省しています。

課題は3作品ではなく、2作品にして作成・提出させればいいのではないかと思

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いました。

4.効果的なプレゼンテーションとは何か

 さて、授業で効果的なプレゼンテーションについて説明しましたので、その内

容を以下に要約します。

 

 これからプレゼンテーションを学ぼうという人たちのために、プレゼンテー

ションの企画や準備の段階から心がけて欲しいことは、情報を正確にわかりやす

く伝えるということです。

 またプレゼンテーションは、目に見えないアイデア・企画・情報を聞き手に伝

達する効果的手段です。聞き手の判断は、話し手から受ける印象や話し手の伝え

方によって大きく左右されます。同じ視覚資料を使っても、話し手の伝え方次第

で、プレゼンテーションの成果には大きな差が生まれます。プレゼンテーション

は場合によって人の心を動かすものもあります。

 聞き手は、プレゼンテーションのストーリーを聞き、その視覚資料を見ながら

理解します。視覚資料を使って情報を正確にわかりやすく伝えること、単なる説

明に終わるのではなく、聞き手の注意を引きつけるようなジェスチャーなども交

え、強い印象を与えるように工夫することが大切です。

 なお、視覚の刺激は五感の中で 83%と一番強くなっています。

 聞き手は、プレゼンテーションの場で話し手をどのように見ているのでしょう

か。プレゼンテーションの冒頭では、何か期待を持って話し手を見ているかもし

れません。逆に、話し手を批判的に見ているかもしれません。そのような状況を

踏まえて、話し手は次の点に気をつける必要があります。

1)態度・身だしなみの工夫

 聞き手は第1印象で、話し手の人柄を判断するものです。話し手に嫌な印象

を持つと、聞き手はプレゼンテーションを通じてその印象を持ち続けます。別

にスーツを着てプレゼンテーションするようにという訳ではありません。学生

らしい服装をしていればそれでいいと思います。

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2)話し方・表現の工夫

 話し方は、プレゼンテーションの分かりやすさに大きな影響を与えます。表

現方法によって、聞き手に与える印象も大きく異なってきます。プレゼンテー

ションは、言葉だけではなくボディランゲージを使って情報を伝達するという

意識が必要です。

 ボディランゲージの中で、最も強く印象を与えるものの1つに顔の表情があ

ります。聞き手は、険しい表情からは難しい内容、笑顔であれば心弾む内容を

連想します。

 次のポイントに配慮してリハーサルを必ず実施し、自分でもチェックしてみ

てください。

 ・ 自然な表情をこころがける:聴衆の面前で発表するという機会は今までそれ

ほど無かった緊張して顔がこわばるということはよくあります。自分の顔が

どういう表情をしているのかをリハーサルのときにチェックします。

 ・ 笑顔はどんな状況でも宝です:聞き手とコミュニケーションをとるためには、

笑顔は欠かせません。自分に笑顔を向けてくれる人には自然に心を開くもの

です。リハーサルを積んで自然な笑顔を作るようにすることが大切です。

 ・ 伝わる話し方はどんなものか:つい口先だけになってしまいますが、それだ

けでなく顔全体で話をするように習慣づけをすると非常によいと思います。

 ・ 声の大きさはどうか:適当な声の大きさを心がけるようにした方がよいと思い

ます。特に一番後ろの人が聞こえる大きさを保つようにすることが大切です。

 ・ 話のスピード:大勢の聴衆を前にするとつい早口になってしまいます。普段

話しているスピードよりさらにゆっくり話すようにするとちょうどよいと思

います。

 ・ 話にメリハリをつける:単調な話し方では聞き手も飽きてしまいます。話に

メリハリをつけることで、相手の集中力を高めることが大切です。

 

 このような説明をしました。画面による説明はともかく、ボディランゲージ

の可否は、場慣れているかどうかを判断できる材料になることがわかります。

言葉によるわかりやすい説明だけでなくうまいボディランゲージができる学生

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が 20数名いることがわかりました。他の学生にも大変よい影響を与えたよう

です。

 また、実際に小生も学生たちにプレゼンテーションをしているわけですが、

果たしてこのように実践しているかどうか心配になりました。そうなるように

努力する事が大切であると思っております。

3)配布資料に話の内容をメモすることが大切

 パソコンでのプレゼンテーションが普及する前は、OHPによるプレゼンテー

ションが主流でした。OHPでは、1枚のスライドで3分程度が目安であると

言われていました。ゆっくり話すと1分間で 400字詰め原稿用紙1枚程度から、

スライド1枚で 1200字程度(3分間)の話を準備していたことになります。

 パワーポイントのスライドが完成しましたら、話の内容をメモするために配

布資料を印刷します。話し手はプレゼンテーションで話す内容を配布資料にメ

モしておくといいです。細かい原稿を用意してしまうと、ついプレゼンテーショ

ンの時に原稿を読み上げてしまうきらいがあります。そこで話のポイントだけ

をメモしておき、それを見ながらプレゼンテーションするのがいいと思います。

 パワーポイントのノート機能を使えば、説明内容をメモしておくことができ

ます。ただし、ノートのスペースが大きいので、詳しく原稿を書き込んでしま

いがちになります。箇条書きでポイントをメモするのがいいと思います。

 要するに聞き手がプレゼンテーションに対して、どの程度理解しているかを

知るため簡単な試験をすればその理解度がわかると思います。今回はできませ

んでしたが、次回試行してみようと思います。

5.学生によるプレゼンテーションの実施

 次に学生のプレゼンテーションの実施について述べます。

 まずプレゼンテーションの順番を考えました。急に人数が多くなったので、当

初の予定では全員のプレゼンテーションが終わらないのではないかと心配になり

ました。

 パワーポイントをよく知っている学生達はすぐにプレゼンテーションを実施で

きるので早めにやりたいと申し出てきました。そのため、5、6回目からは一斉

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指導が終わり次第すぐに、プレゼンテーションを実施して、残った時間で個別指

導をしました。

 残りの時間が少ないときは、全員を診ることができませんでした。そこで、彼

らに、申し訳ないが次回に必ずみる旨約束して納得してもらいました。それで満

足しない場合は、質問事項を FDや CDに保存して提出してもらい、次回に説明

を付けて返却しました。

 学生は進度や経験によって大きく次の3つのグループに分かれることが分かり

ました。

1)パワーポイントを熟知していてしかもプレゼンテーションに慣れている学生

2)パワーポイントは知っているがプレゼンテーションに未だ慣れていない学生

3)パワーポイントの操作法を知らないだけでなくプレゼンテーションもでき

ない学生

 さて、1)のグループの学生は、4・5回目の授業で、自発的にプレゼンテー

ションを実施したいと申し出てきました。作品を見てもなかなかのできだったの

で、予定よりも早いが早速プレゼンテーションを実施することにしました。

 実は、一番目に発表した学生がプレゼンテーションに大変慣れていてあまりに

も上手にプレゼンテーションを実施したので、次から発表する学生はそれに刺激

を受けたようで、一番目の学生のプレゼンテーションは、いろいろな意味でとて

もよいプレゼンテーションになったのではないかと思います。今でも最初にプレ

ゼンテーションを実施した学生には感謝しています。

 また、予想外だったのは、プレゼンテーション毎にそれに対する質問が必ずあっ

たことです。よく注意して聞いているからだろうと思われる質問をする学生が数

名いました。

 プレゼンテーションの時間については、早い場合は3分、遅い場合は5~7分

というように個人差があります。一律3分と決めましたがなかなか3分では終わ

らない学生が多かったように思います。このような場合では、時間はあまり決め

ないほうがいいのではないかと思いました。時間厳守より充実した内容や分かり

やすい説明や観客を引き付ける技術などを入れた興味あるプレゼンテーションの

方が重要だと思いました。

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 なかでも、特記事項として挙げられるのは、内定が決まった学生のプレゼンテー

ションです。それは、その学生がキャリアサポートセンターを如何にうまく使っ

て就職活動をしたのかということについての具体的な体験談を基にプレゼンテー

ションを実施したからです。その学生はまず、プレゼンテーションの前に「就職

のことについて、キャリアサポートセンターから依頼されたので少し時間をくだ

さい」と私にことわってからキャリアサポートセンター発行の自己紹介用の「自

己分析シート」を 60枚程度持参して学生達に配布して、その書き方等を丁寧に

説明していました。聞き手の学生達も大変熱心で、静聴してまた質問もして大変

有意義な時間になったのではないかと思います。

 その後のプレゼンテーションも就職活動が中心で非常に具体的に説明されて、

やはり聞き手の学生達も大変真剣に聞き入っていました。その後の質問は当然の

ことながら活発でした。全部で約 30分かかりましたが、このテーマすなわち就

職活動こそ学生にとって非常に大切なことであることがわかり、今後も就職活動

についてのプレゼンテーションがあれば、十分時間を割くべきだと思いました。

 また、回を重ねるごとに絵や写真の挿入がだんだん増えてきました。それは、

聞き手の学生達がいろいろなプレゼンテーションを見ているとやはり絵や写真が

あった方が分かりやすいことが分かってきたからだと思われます。このような自

分の頭の中のコラボレーションが、回を重ねる毎に芽を出してきたのではないか

と思われます。互いに切磋琢磨してよりよいものを作り上げていくことができる

環境をこの科目「プレゼンテーションⅠ・Ⅱ」は提供してくれているように思え

てなりません。

 以前の学校(帝京平成大学専門学校(注2):当時はコンピュータの専門学校)

にいたときは、教育環境が最新式であり、ID・パスワードを使えば、どの教室

のどのパソコンからでも自分のサーバのテリトリーに入ることができるだけでな

く、他の学生の作品を見ることもできました。したがって、学生同士で互いの

作品を鑑賞し合って、新しい知識の吸収などができるためよりよい作品が出来上

がってきました。今回の教育環境は違いますが、他の学生の作品を鑑賞できる面

で似ているものだと思いました。

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6.評価とフィードバック 

 プレゼンテーションを見聞きして、どう感じたかとかどう評価するかとかなど

を聞き手の学生に紙面を使って評価してもらいました。

 最初のうちは、授業の初めに私の方から、前回のプレゼンテーションの学生評

価と簡単なコメントを発表していました。その後とてもよく見聞きしていてコメ

ント欄に必ず感想や意見を記入する学生が多くなってきたので、まとめて発表す

るのでは全部カバーしきれないので学生の評価したコメントの書いてある紙面を

直接発表者本人に配布しました。

 つまり、プレゼンテーションのフィードバックを実施しました。学生はいろい

ろな意見や感想を持っていることが分かりました。そこで、プレゼンテーション

した学生には、この結果を真摯に受け止めて、是非2回目以降のプレゼンテーショ

ンに反映させて欲しい旨を説明すると同時に評価する学生の方もプレゼンテー

ションした学生が2回目以降にプレゼンテーションするときにどういうところに

気をつけてプレゼンテーションしたらよりよくなるか積極的な意見を出して欲し

い旨を付け足した。

 たぶん、本人に直接コメントを渡すので、大変刺激的効果があったのではない

かと思われます。プレゼンテーション後に質問の時間がありますが、評価が直接

本人に渡されるからか皆真剣に見聞きして必ず何か質問していました。こういう

環境が互恵教育、互助教育というのだろうか、ある程度こちらのほうでお膳立て

をしておけば学生間で自由に討論し、切磋琢磨し、より良いプレゼンテーション

が期待できることもわかりました。

7.前期授業の感想と後期授業の予定

 はじめは、この授業「プレゼンテーションⅠ・Ⅱ」も他のコンピュータ関係の

授業と同様に、一斉指導(いわゆる授業)と個別指導(学生間を個々に巡回して

質問や助言を受ける)の両方を実施しようと思っていました。ところが、受講者

数が第1回目は約 60名だったのが第2回目から 100名前後に急増してしまった

ので、シラバスの予定通り実施することが困難になってしまいました。

 学生に事情を説明し次回アンケートを実施し選抜する旨連絡しました。アン

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ケートでは、PCの操作法を全然知らなくてもやる気さえあれば選抜するつもりで

した。その結果、60名には収まらなかったのですが、約 70名まで絞り込むことが

できました。そしてすぐに選抜結果を発表しました。これは履修届の提出期限が

さしせまっていたからです。いろいろな条件を勘案して最終的に決定しました。

 この段階で履修人数の制限は事実上無いも等しい状態になってしまい、最終的

には約 100名になってしまいました。教室の定員 60名を大幅に超えたので、他

の大教室を使えないかチェックしましたが、他の教室はすでに使用しており教室

変更はできないことがわかりました。

 当初の予定では、学生にはまず一斉指導でプレゼンテーションソフト:パワー

ポイントの操作性を説明して各自質問等あれば、個別指導の時に聞くというもの

でありました。ところが、人数が増えた分個別指導が全員に行き届かなくなって

しまいました。そのため、授業時間内で質問する時間がなかった学生については、

申し訳ないが次回に聞いて欲しい旨伝え謝りました。

 次にアンケート調査結果と授業への対応について述べます。

 第1回目の授業でアンケート調査を実施しました。結果はプレゼンテーション

ソフト:パワーポイントを以前に使ったことがある学生は約 53%で、大半が大

学に入学してから学習したことがわかりました。つまり約半数の学生はパワーポ

イントを使ったことがないので、その学生をまず重点的に指導しなければならな

いこともわかりました。そこで、パワーポイントを知っている学生には自分で教

科書を見てどんどん進むよう指導しました。  

 つまり能力別・進度別に授業をすることになりました。したがってパワーポイ

ントの機能を知らない学生を重点的に指導することになりました。教室内で大き

く2つのグループに分けて指導するほうが効果的でありますが、すでに教室内の

座席がある程度決まっているので、それを動かすことは相当無理があることが分

かりました。もし次回も担当する場合は早めに座席指定をした方が良いと思いま

した。

 今回この授業を担当して他の授業とは違い、相当やる気のある学生たち、つま

り進んで授業に取り組もうという学生たちが多く、その熱気が伝わってきました。

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プレゼンテーションの実施および能力育成について

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 これは、時代のプレゼンテーションへの要求が大変高いことが裏づけされてい

るからだと思いました。プレゼンテーションソフトであるパワーポイントはあく

まで発表の手段であって、目的は自分の持っている情報・事実・考えなどを相手

にわかりやすく正確に伝え、受け入れてもらうことなのであります。

8.プレゼンテーション能力の育成について

 まず、効果的なプレゼンテーションに接する機会を多く持つ方がいいと思いま

す。たとえば、身近なものとして考えられるものは新製品の展示会などで実施し

ているプレゼンテーションを見学し参考にする。また、授業での先生のプレゼン

テーションを参考にするのもいいでしょう。

 次に、プレゼンテーションの経験を多くすることで場慣れすることができると

思います。たとえば、部活などの新入生勧誘キャンペーン時の呼び込みを積極的

に行うとか、オープンキャンパスで学生アルバイトとして参加し見学ツアーなど

プレゼンテーションを実施する役割に参加するとか実施しようと思えば、機会は

相当あるものです。

 最後に、プレゼンテーションを実施した後で反省し今回良くなかった点を次回

改善することです。できれば、自分のプレゼンテーションを友人や先輩や先生に

見てもらい評価が受けられればいいのですが、なかなか実際にはそううまくは行

かないのではないかと思います。そういう意味でも、今回聴衆が評価してそれを

プレゼンターにフィードバックしたことは良かったと思いました。

 学生が巣立って社会人になり、社内や社外でのプレゼンテーションの機会が多

くなります。そのため、自分の考えを相手にわかりやすく効率的に伝達すること

が必要になりそのためパワーポイントを使ってプレゼンテーションすることが気

軽にできることが重要になってきます。そのことを自覚しそのための準備期間と

してこの授業を活用して欲しいと要望しています。

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日米関係に見る米国外交術

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注1  高校の教科書:「情報 ― ディジタルコミュニケーション」(情報 テキス

トブック 編集委員会 監修 OG-ARTS協会発行)辞典:大辞泉(小学館)、

大辞林(三省堂)、プログレッシブ英和辞典(小学館)

注2  帝京平成大学専門学校:1990年4月帝京情報技術専門学校として創立・

開校、情報機器科、情報通信科、情報処理科、技術秘書科を設置。1994年

4月改組により情報システム科、情報処理科、情報ビジネス科とした。1997

年4月改組によりマルチメディア科、情報処理科、情報ビジネス科とした。

2001 年4月帝京平成大学専門学校に改称。改組により情報3科を統合して

情報学科とし、作業療法学科、理学療法学科を設置した。2003 年4月情報

学科を廃止し、作業療法学科、理学療法学科の2学科とした。

参考文献

1. 永山嘉昭、山崎紅著(2003年) 説得できるビジネスプレゼン 200の鉄則 

日経 BP社

2. 浅井宗海著(2005年) プレゼンテーションと効果的な表現 エスシーシー

3. 川崎和男著(2005年) プレゼンテーションの極意 ソフトバンクパブリッ

シイング

4. 永山嘉昭著(2005年) 説得できるプレゼンの鉄則 Power Point徹底活用編

日経 BP社

5. 山崎紅著(2005年) 説得できるプレゼンの鉄則 Power Point上級極意編 

日経 BP社

6. 池内健治他著 30時間でマスター プレゼンテーション+ Power Point2002

実教出版