カバークロップの炭素貯留機能と窒素動態 (第28 …...cover crops) magdoff, f....
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カバ-クロップとは?
緑肥(Green Manure)
清浄作物(Cleaning Crops)
有害線虫対抗作物
その他, 広く土壌改善に用いられる作物
カバ-クロップ
(Cover Crops)
Magdoff, F. 1992. Building soils for better crops, University of Nebraska Press.
Sustainable Agriculture Network. 1998. Managing Cover Crops Profitably.
カバ-クロップの炭素・窒素供給能力
カバークロップ 乾物重(Mg/ha)
窒素吸収量(kg N/ ha)
資料名
ライムギ( Secale cerealeL.) 1.5-5.7 17-64 Ranells and Wagger
(1996)3.4-6.8 44-87 小松崎ら(2007)
エンバク(Avena sativa L.) 3.3-4.3 80-82 Dyck and Liebman (1995)1.1-1.5 27-45 小松崎ら(2007)
コムギ(Triticum aestivum L.) 4.9-9.8 81-87 Singogo et al. (1996)1.5-2.0 30-42 小松崎ら (2007)
イタリアンライグラス(Lolium multiflorum Lam.) 0.7-17.5 15-346 Stopes et al. (1996)
クリムソンクローバ(Trifolium incarnatum L.) 4.2-5.7 151 Abdul-Baki et al (1996)
ヘアリーベッチ(Vicia villosa Roth) 2.9-4.8 125-182 Ranells and Wgger (1996)
3.0-6.7 104-257 Sainju and Singh (2001)サブタレニアンクローバ(Trifolium subterraneum) 5.1-6.3 51-65 Komatsuzaki (2002)
白クローバ(Trifolium repens L.) 0.6-25.0 17-592 Stopes et al. (1996)
実験は茨城大学農学部附属農場の洪積台地畑(土性:CL,LiC)で2002年10月~現在まで継続した .主作物:2003年~2008年 オカボ
2009年から 大豆実験設計 4反復主要因: 耕うん方法
1.プラウ耕 2.ロータリ耕 3.不耕起副要因: カバークロップ種類
1.ヘアリーベッチ 2.ライムギ 3.裸 地土壌窒素レベル
0.Low:0 kg/ha 1.High:100 kg/ha(大豆では 0あるいは20㎏N/ha)
調査内容カバークロップ 乾物重,オカボ乾物重・収量, 土壌炭素貯留量,亜酸化窒素排出量
カバークロップと耕うん方法の長期試験圃場
カバークロップの種類と施肥レベルおよび耕うん方法別のカバークロップの乾物量(2004年4月)
深さ (cm) 要因2003 2004 2005 2006 2007
Apr. Oct. Apr. Oct. Apr. Oct Apr Oct Apr. Oct.
0-2.5
T NS NS NS ** *** *** * *** * ***
CC NS NS * NS ** ** * *** ** ***
T×CC NS NS NS NS NS NS NS NS NS NS
2.5-7.5
T NS NS NS NS NS * NS ** NS *
CC NS NS NS NS NS NS NS *** NS ***
T×CC NS NS NS NS NS NS NS NS NS NS
7.5-15
T NS NS * NS NS NS NS NS NS NS
CC NS NS NS NS NS * NS ** NS ***
T×CC NS NS NS NS NS NS NS NS NS NS
15-30
T NS NS NS NS NS NS NS NS NS NS
CC NS NS NS NS NS NS NS NS NS **
T×CC NS NS NS NS NS NS NS NS NS NS
T:耕うん体系 , CC:カバークロップ, T×CC:耕うん体系×カバークロップ.***,**,* それぞれ有意性の水準が 0.1%,1%,および5%. NS 有意差なし.
土壌炭素含有率の分散分析結果
05
10152025
1.5 2 2.5 3 3.5
No till2003.10
1.5 2 2.5 3 3.5
Plow2003.10
1.5 2 2.5 3 3.5
Rotary2003.10
05
10152025
1.5 2 2.5 3 3.5
No-till2007.10
1.5 2 2.5 3 3.5
Plow2007.10
1.5 2 2.5 3 3.5
Rotary2007.10
土壌深さ
(cm
)
土壌炭素含有率 (g/cm3)
土壌炭素含有率の土中分布(2003 vs. 2007)
Rye Hairy vetch Fallow
深さ(cm) 0-2.5 2.5-7.5 7.5-15 15-30
年度 2003 2009 2003 2009 2003 2009 2003 2009
要因 5月 10月 5月 10月 5月 10月 5月 10月 5月 10月 5月 10月 5月 10月 5月 10月
カバークロップ(CC)
NS NS *** *** NS NS *** *** NS NS *** *** NS NS ** ***
耕うん(T) NS NS *** *** NS NS ** *** NS NS ** ** NS NS NS NS
施肥(N) - - *** NS - - NS * - - NS NS - - NS NS
CC×T NS NS * NS NS NS NS NS NS NS NS NS NS NS NS NS
CC×N - - NS * - - NS NS - - NS NS - - NS NS
T×N - - ** NS - - NS NS - - NS NS - - NS NS
CC×T×N - - NS NS - - NS NS - - NS NS - - NS NSCC、T、NはそれぞれCC:カバークロップ、N:耕うん、N:施肥を表している
*、**、***はそれぞれ5%、1%、0.1%有意差を表している またNSは有意差がないことを表している
土壌炭素含有率の分散分析結果(2003 VS 2009)
東ら 2011
窒素施肥あり
窒素施肥なし
深さ
(cm
)
炭素濃度(%)
0
5
10
15
20
25
3 4 5 6
ロータリー
裸地
ヘアリー
ベッチ
ライムギ
0
5
10
15
20
25
3 4 5 6
プラウ
0
5
10
15
20
25
3 4 5 6
不耕起
0
5
10
15
20
25
3 4 5 6
不耕起
0
5
10
15
20
25
3 4 5 6
プラウ
0
5
10
15
20
25
3 4 5 6
ロータリー
裸地
ヘアリー
ベッチ
ライムギ
土壌炭素含有率の土中分布(2009年10月)
東ら 2011
土壌炭素の経年変化(Equivalent Soil Mass)炭素
貯留量
(Mg/
ha)
60
65
70
75
80
85
90
2003年 2005年 2007年 2009年
60
65
70
75
80
85
90
2003年 2005年 2007年 2009年
60
65
70
75
80
85
90
2003年 2005年 2007年 2009年
裸地
ヘアリー
ベッチ
ライムギ
不耕起
プラウ
ロータリー
東ら 2011
カバークロップ利用により炭素貯留能力の向上
不耕起
プラウ
ロータリ
土壌炭素
貯留量(トン
C/h
a)
2003 2004 2005 2006 2007
6264666870727476
裸地
ヘアリーベッチ
ライムギ
6264666870727476
6264666870727476
0 1 2 3 4 5 6
不耕起裸地 ▲0.03ヘアリーベッチ 0.62ライムギ 1.13
プラウ裸地 ▲0.43ヘアリーベッチ ▲0.01ライムギ 0.19
ロータリ裸地 ▲0.07ヘアリーベッチ 0.9ライムギ 1.36
年間の炭素増加量
RothC(ローザムステドカーボンモデル)
RothCでは土壌炭素は5つの区画に分けられる各区分の比率を月ごとに逐次計算することで土壌炭素の動態を計算するデータは1年分を月ごとに内訳したものを用いる
RothCモデル図
モデル外部 モデル内部
CO2
月ごとに比率が再計算
春、秋に有機物投入 易分解性有機物
(投入時分解率の異なる2つのタイプに分けられる)
難分解性有機物
微生物バイオマス
腐植
不活性な炭素 年月に関わらず一定
R² = 0.8454
50
60
70
80
90
100
50 60 70 80 90 100
予測値
(Mg/
ha)
実測値(Mg/ha)
1:1
実測値とRothCモデルの予測値
東ら 2010
土壌炭素貯
留量(Mg
/ha)
y = -0.393x + 869.15R² = 0.9325
y = -0.0299x + 141.87R² = 0.6112
y = 0.293x - 497.48R² = 0.9849
50556065707580859095
100
2000 2005 2010 2015 2020 2025
ライムギ
ヘアリーベッチ
裸地
RothCによる土壌炭素貯留量の予測
東ら 2010
0
20
40
60
80
100
120
0
20
40
60
80
100
120ロータリ耕・へアリーベッチ ロータリ耕・ライムギ ロータリ耕・裸地
プラウ耕・へアリーベッチ プラウ耕・ライムギ プラウ耕・裸地
不耕起・へアリーベッチ 不耕起・ライムギ 不耕起・裸地
N2Oフラックスの動態
オカボ収獲・耕うんカバークロップ播種
オカボ生育期間カバークロップ カバークロップ
3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
施肥2
1月 2月
耕うん
カバークロップ刈倒し・施肥1オカボ播種整地
N2O
-N g
ha
-1day-
1含水比%
地温℃
施肥区
無施肥
炭素貯留量と亜酸化窒素の相殺
カバークロップの種類 不耕起 プラウ耕 ロータリ耕
裸地 ▲0.015 ▲0.253 ▲0.044ヘアリーベッチ 0.363 ▲0.007 0.528
ライムギ 0.664 0.110 0.800
カバークロップの種類 不耕起 プラウ耕 ロータリ耕
裸地 0.132 0.008 0.069
ヘアリーベッチ 0.363 0.195 0.273
ライムギ 0.178 0.321 0.233
カバークロップの種類 不耕起 プラウ耕 ロータリ耕裸地 ▲0.147 ▲0.261 ▲0.113
ヘアリーベッチ 0 ▲0.202 0.255ライムギ 0.468 ▲0.211 0.567
炭素貯留増加量(CO2t/年)
亜酸化窒素排出量(CO2t/年)
年間の温室効果ガス吸収量(CO2t/年)
不耕起
0
30
60
90 プラウ耕 ロータリ耕
不耕起
0
30
60
90
0 10 20 30 40 50 60 70
裸地
ヘアリーベッチ
ライムギ
プラウ耕
0 10 20 30 40 50 60 70
ロータリ耕
0 10 20 30 40 50 60 70
土壌無機態窒素含有量(mgN/kg)
異なる耕うん方法およびカバークロップの作付の有無が
土壌無機態窒素の分布に及ぼす影響(2004年4月)
0kgN/ha0kgN/ha
0kgN/ha
100kgN/ha
100kgN/ha 100kgN/ha
土壌
深さ(cm
)土壌深さ(cm
)
100kgN/haプラウ耕
3 6 10 3 6 10
100kgN/haロータリ耕
3 6 10 3 6 10
0kgN/ha不耕起
0
20
40
60
80
100
裸地
ヘアリーベッチ
ライムギ
0kgN/ha
プラウ耕
0kgN/haロータリ耕
深層(60~90cm)で土壌無機態窒素の推移
調査時期2003 2004 2003 2004 2003 2004
土壌
無機
態窒
素量(mgN
/kg)
100kgN/ha不耕起
0
20
40
60
80
100
3 6 10 3 6 10
八木岡ら 2011
0
0.05
0.1
0.15
4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
N2O排
出量
(k g
/ha/月
)
不耕起・草生
耕起
耕起
a
b0
5
10
15
20
25
30
0 2 4 6
深さ(
cm)
土壌炭素(%)
不耕起・
草生
耕起11月
ba
不耕起・草生栽培での土壌炭素と亜酸化窒素の排出(転換1年目)
土壌炭素分布 亜酸化窒素の排出
まとめ
カバークロップの導入は、土壌炭素を増加させると同時に、積極的に土壌残留養分を回収・ストックする機能をもち、土壌生態系の多様性と機能を向上させることから、堆肥では得られない極めてユニークな土壌管理手法であり、温暖化の緩和策としても積極的に位置付けていく必要がある。
不耕起栽培やロータリ耕などとカバークロップ利用を組み合わせることで、土壌炭素貯留の効果が亜酸化窒素発生との相殺を考慮しても認められることから、これらの農法をベースにした圃場管理による農耕地の炭素貯留機能の有効性は極めて高いと考える。