ディベートで対話を促進するディベートで対話を促進する 安藤 香織...
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ディベートで対話を促進する
安藤 香織
日本心理学会第76回大会
“心理学における対話的教育”
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ディベートとは?
あるテーマについて肯定側と否定側に分かれて議論を行うゲーム
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基本的なルール
肯定側と否定側が交互にスピーチする
肯定側と否定側のスピーチ時間の合計は同じ
肯定側がプランを提案し、そのメリットとデメリットを比較して勝敗を決める
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勝敗はどうやって決める?
スピーチのうまい方=勝ち ではない。
メリットとデメリットのどちらが大きいか、ジャッジが判断する
疲れる 家族の絆が深まる
デメリット メリット
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なぜディベート授業? ディベートの目的
学生が能動的に授業に参加
•ゲームに「勝つ」という目的があるので、必然的に能動的に。
•リサーチし、スピーチを準備するなど自主的に活動する必要あり。
「考える力」を身につける
•説得力のあるスピーチを行うためには、論理的な話の展開をする必要
•相手に勝つために、様々な戦略を練る
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心理学でディベートを行う意義
意思決定プロセスを体験する
•意思決定プロセスを可視化
コミュニケーションのトレーニング
•日常会話と異なる、パブリックのコミュニケーション
学習テーマについてより理解を深める
•能動的な学習効果
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ディベートで意思決定プロセスを体験する
ディベートでは・・・
•メリットとデメリットを比較してどちらが上回るか決める
•メリットとデメリットを主張する人が、それぞれ違う • 通常は頭の中で行っているが、それを可視化
•通常の意思決定では、意識しにくい情報を精査して決定。中心的情報処理ルート(精緻化見込みモデル, Petty & Cacioppo; 1986)
もともとの立場とは反対の立場で議論することもある。
•通常は、自分の立場に肯定的な情報を選択的に集めてしまう。そうしたバイアスから離れることができる
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ディベートのコミュニケーション
日常のコミュニケーション:
•日本では多くの人が共通のコンテキスト(文脈)を共有している(高コンテキスト文化)
↔低コンテキスト文化:アメリカなど
•婉曲的・間接的な表現が好まれる
•意見の対立は避けようとする(KYはダメ)
•→意見が合わなくても、あいまいなまま終わってしまう。
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ディベート:
•パブリック・スピーチ • 初対面の相手でも、わかりやすく。
•必ず相手に対して反対意見を述べる • ゲームなので、KYとは思われない
• 気が弱くてふだんは反対意見が言えない人でも、言える
•なぜ自分達の意見の方が相手より勝っているのか、理由を説明する
• 論理的・説得的なコミュニケーションが求められる
• 客観的立場のジャッジに対して説得
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ディベートでは、違った形のコミュニケーションを体験できる!
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対話を促進するための仕掛け
リンクマップ
フロー・シート
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リンクマップの例
(「実践!アカデミック・ディベート」より p44)
テーマについてブレインストーミング
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リンクマップによって・・・
ブレインストーミングをやりやすくする
•思いつくアイデアをどんどん書き出す
•どんなアイデアも否定せず、まずは可視化
•どういう順序で物事が発生するか考える
リンクの間の関係を意識する
•メリットだと思っていたのに、デメリットに変わってしまうことも!
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フロー・シートの例
実践!アカデミック・ディベート(p38,39)
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フローによって・・・
話の流れを整理することができる
相手の話を集中して聞く
フローをもとに、相手への反論を考える
フローが取れるようになると、ディベートも上達(だけどきれいな字でなくても大丈夫!)
ディベート以外にも応用可能
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ディベート体験前後での変化
2.85 2.80
3.85 3.95
2.63
4.00
3.60
2.75
3.84.0
2.9
3.5
1.6
3.84.1
3.8
1
2
3
4
5
C1.機会があればまたや
ってみた
い
C2.おもしろか
った
C3.自分には向
いていな
いと思
った
C4.人前で話すのが緊張した
C5.一部の人だけが話すものだと思
っ
た
C6.デ
ィベートは難しいと思
った
C7.準備が大変だ
った
C8.楽しか
った
ディベート前
ディベート後
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というわけで・・・・
あなたもディベート授業、
やってみませんか?
参考文献: 「暮らしの中の社会心理学」 安藤・杉浦編著 2012年 ナカニシヤ出版
「実践!アカデミック・ディベート」 安藤・田所編著 2002年 ナカニシヤ出版
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ディベートQ&A
ディベート授業って難しい?
•むしろ逆。主役は学生、教員は脇役
ディベート授業って時間がかかる?
•30分程度から可能
どこから始めれば?
•まずはワンマン・ディベートがオススメ
• 理論的に何人の授業でも実施可能
•少人数 → 多人数で
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大学でのディベート風景 19
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Thank you for your attention!
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学生の感想より1
「・・・一方ディベートを実践した授業では、自分の意見を発言し、周囲の人の意見を聞き、メモを取る・質問するなど常に周囲の人とコミュニケーションを取る必要があったので、眠たくなることもなく能動的に授業に参加していたと思う。」
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学生の感想より2
「自分はグループ中で意見を言うのがあまり得意ではないと思っていましたが、ブレインストーミングや立論の準備の時に 私の意見をみんなが聞いてくれて、かなり取り入れてくれて、うれしかったです。新しい自分を発見できたような気がしました」
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学生の感想より3
「小学4年生のときの担任の先生が何かとディベートをするのが好きで・・・いじわるに相手を言い負かさないといけない、少しいやな感じがしていた。けれど、相手を言い負かすのでなくてジャッジを説得するし、論理に基づいての立論・反駁は口論の延長ではないので、いじわるやけんかでもない。・・・この授業でミニディベートを行って、案外楽しいものだ、と認識がかなり変わった。
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ディベートのプランの例
「将来住む場所は田舎がよいか、都会がよいか」
「大学生は 在学中にインターンシップに行くべきである」
「結婚はした方がよい」
「日本人は、集団主義的か」
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ディベートで意思決定プロセスを体験する
精緻化見込みモデル (Petty & Cacioppo, 1986)
説得的メッセージを分析する動機づけと能力
中心的情報処理ルート 周辺的情報処理ルート
高いと… 低いと…
メッセージの内容を深く分析!
「誰が言ってるの?」などに注目…(周辺的手がかり)
態度や価値観が長く深く変化 一時的で浅い、態度の変化
説得的メッセージ内容への関心と知識
図6-1 「精緻化見こみモデル」による情報処理と態度変化のまとめ
Petty & Cacioppo, 1986より作成
「暮らしの中の社会心理学」6章(野波)より 28