コンピュータ関連の発明(cri)に対する審査ガイドライン 仮訳...- 1 –...

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- 1 コンピュータ関連の発明(CRI)に対する審査ガイドライン (仮訳) 独立行政法人 日本貿易振興機構(ジェトロ) 知的財産課編 ※本資料は仮訳の部分を含みます。ジェトロでは情報・データ・解釈などをできる限 り正確に記するよう努力しておりますが、本資料で提供した情報などの正確性につい てジェトロが保証するものではないことを予めご了承下さい。

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    コンピュータ関連の発明(CRI)に対する審査ガイドライン

    (仮訳)

    独立行政法人 日本貿易振興機構(ジェトロ)

    知的財産課編

    ※本資料は仮訳の部分を含みます。ジェトロでは情報・データ・解釈などをできる限

    り正確に記するよう努力しておりますが、本資料で提供した情報などの正確性につい

    てジェトロが保証するものではないことを予めご了承下さい。

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    コンピュータ関連の発明(CRI)に対する審査ガイドライン

    特許意匠商標総局

    2013

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    目次

    1. はじめに

    ………………………………………………………………………………………3

    2. 背景(法修正)

    ………………………………………………………………………………………3

    3. 用語・定義

    ………………………………………………………………………………………5

    4. コンピュータ関連の発明に関係するクレームのカテゴリー

    ………………………………………………………………………………………11

    5. 審査手順

    ………………………………………………………………………………………14

    6. 形式と実体

    ………………………………………………………………………………………26

    7. ミーンズプラスファンクション

    ………………………………………………………………………………………30

    8. バイオインフォマティクスおよびバイオテクノロジーの分野におけるコ

    ンピュータ関連の発明

    ………………………………………………………………………………………34

    9. コンピュータ関連の発明の審査手順を示すフローチャート

    ………………………………………………………………………………………35

    10. 結論

    ………………………………………………………………………………………37

  • - 4 –

    1. はじめに

    情報科学技術は、過去 20 年間で特別重要な意味を持つようになった。科学の

    発展にとって欠かせないツールとして出現したのである。「情報科学技術」と

    いう言葉は、コンピュータやその他様々なネットワーク、ハードウェア、ソフ

    トウェア、電子機器、そして遠距離通信機器を使ったデータの入力、保存、検

    索、送信や管理の全ての範囲を包括する。産業界は、これまで手動であるいは

    機械で行ってきた活動のコンピュータ化による急速な発展を目の当たりにし

    てきた。インターネットやワールドワイドウェブ(www)の出現で、仮想空

    間における世界の国々の境界は縮まりつつある。情報科学技術の応用おける中

    心要素は、コンピュータとその周辺機器である。コンピュータ関連の発明(CRIs)

    分野において、知的所有権の創出者は、より厳格な保護を求め続けている。従

    来の特許制度は、新しく出現したこれら科学技術の挑戦に取り組まなければな

    らず、これはまた、近年、国際的な注目を集めている課題でもある。世界の主

    な特許局は、コンピュータ関連の発明における特許性の問題に直面しており、

    統一的な審査実務を行うために、これらの技術分野の審査部門で使用する審査

    ガイドライン・マニュアルを作成してきた。

    本文書の目的は、コンピュータ関連の発明の審査において統一性と一貫性を助

    長するため、この分野の特許出願の審査に対してガイドラインを作成すること

    である。

    ガイドラインは、コンピュータ関連発明の特許性に関する様々な条項を含んで

    いる。ガイドラインでは、申請書を審査する際に、審査者がとるべき手続きや、

    この技術分野で特許を付与・拒絶する際に展開された判例についても論じる。

    また、該当する問題をよりよく理解してもらえるよう、コンピュータ関連の発

    明に関係した様々な判例法を例解している。さらに本書では、説明や先行技術、

    クレームの記述や関係する問題について、典型的な明細書の例も完全な形で記

    載している。

    ただし、このガイドラインは、法律の制定を目的としているわけではない。こ

    のガイドラインと、特許法 1970の条項及びそれに基づいて作られた規則の間

    で齟齬が生じた場合は、ガイドラインよりも、特許法の条項及び規則が優先し

    て適用される。ガイドラインは、法廷や法修正及び、利害関係者からの貴重な

    情報による解釈に基づいて、その時々で改訂されるべきものである。

    2.背景(法修正)

    2.1 特許(修正)法 2002(2002の No.38)の実施に先立ち、発明1の定義は

    以下のとおりとする。

    「発明は、あらゆる新規で有用な

    1 2002修正前の、特許法 1970の 2(1)(j)項のもとでの発明の定義

  • - 5 –

    (i)製造の技術、プロセス、方法あるいは様式、

    (ii)機械、器具、あるいはその他の物品、

    (iii)製造によって生じたもの

    を意味し、これらにおける新規で有用な改良点、及び発明と称するものを含む。」

    コンピュータ関連の発明分野において、発明の規定には特許性を明確に除外す

    るものは何も記載されていない。科学及び技術の分野における発明はすべて、

    新規性及び有用性の基準を満たしてさえいれば、上記のカテゴリーに当てはま

    る限り、特許化可能であると考えられた。「方法」や「プロセス」に関する発

    明は、「製造方法」に限定された。特許化可能だと考えられる「方法」はすべ

    て、その方法が「製造方法」であるか否かを、審査者によって吟味されなけれ

    ばならなかった。精神的行為、数学的方法、ビジネスの方法、アルゴリズム、

    そしてコンピュータプログラムは、「製造方法」の範疇には入らず、従って、

    発明とは見なされず、特許化可能ではなかった。

    2.2 特許(修正)法 2002(2002の No.38)は、2003年 5月 20日に発効し

    た。この法律は、2(1)(j)項の発明2の定義を、「発明は、進歩性を含む新規な製

    品あるいは方法であり、産業への応用ができるものを意味する」と修正した。

    また 2(1)[(ja)3項によれば3、「進歩性」は、発明の特徴が、周知の知識と比べ

    て技術的進歩を含んでいるか、経済的重要性を備えているか、あるいはその両

    方であり、その特徴によって、その発明が当業者にとって自明ではないものに

    なることを意味する。

    さらに、2(1)(ac)4項4には、発明に関して、「産業への利用が可能であること」

    は、その発明がある産業で製造できまた利用できることを意味する、と述べら

    れている。

    2.3 また、コンピュータ関連の発明に関して、特許性を明白に除外する項目

    が、第 3項に導入された。

    (k) 数学的方法、ビジネスの方法、コンピュータプログラムそのもの、あるい

    はアルゴリズム;

    (l) 文学作品、劇作品、音楽作品、あるいは芸術的作品、あるいは、映画作品

    やテレビジョン作品を含むその他の審美的創作;

    (m) 精神的行為を行う純粋なスキーム、規則あるいは方法、またはゲームを

    する方法;

    (n) 情報の表示

    2 2002修正後の、特許法 1970の 2(1)(j)項のもとでの発明の定義 3 特許法 1970のもとでの「進歩性」の定義 4 特許法 1970のもとでの「産業への応用が可能」の定義

  • - 6 –

    2.4 3(k)項による除外5は、特許(修正)法令 2004(2004 の No.7)を通し

    て、以下のように修正された。

    (k)産業への技術的応用のない、あるいはハードウェアとの組合せのないコン

    ピュータプログラムそのもの;

    (ka)数学的方法あるいはビジネスの方法あるいはアルゴリズム。

    ところが、この法令の修正条項を含まない特許(修正)法 2005(2005のNo.15)

    が制定され、これにより、2002修正法が自動的に復活した。

    第 3(k)項の原文表記が復活したことにより、立法府が、当初の除外範囲を保持

    する意図を持っており、法令を通して修正を試みたこれら小項の適用拡大を認

    めなかったことは明白である。

    3. 用語・定義

    コンピュータ関連の発明の特許性を扱う上で、頻繁に使用される用語及び定義

    を、以下に要約する。インドの制定法のいずれかで定義されている用語につい

    ては、それに従って解釈し、法律的定義が行われていないものについては、通

    常の辞書の意味に従って解釈する。

    3.1 コンピュータ

    (a)「コンピュータ」という用語は、情報科学技術法 2000(2000 の No.21)

    において、「電子的、磁気的、光学的、あるいはその他の高速データ処理装置

    あるいはシステムであり、電子的、磁気的、または光学的インパルスの操作に

    よって、論理的機能、算術的機能そして記憶機能を実行し、あらゆる入力、出

    力、処理、記憶、コンピュータソフトウェアあるいは、コンピュータシステム

    またはコンピュータネットワークの中にあるコンピュータと接続あるいは関

    係する通信設備を含む」と定義されている。

    (b)著作権法 1957 の 2(ffb)項では、「コンピュータ」は、情報処理能力を備

    えた電子的装置あるいはそれに類似する装置を含む、と定義されている。

    3.2 コンピュータネットワーク

    「コンピュータネットワーク」という用語は、情報科学技術法 2000(2000

    の No.21)において、「1台以上のコンピュータによる相互連絡」であり、

    (i) 衛星、マイクロ波、地上線あるいは他の通信メディアを利用して、また;

    (ii) 相互接続が継続的に維持されているかどうかに関わらず、二台以上の相互

    接続されたコンピュータから構成される複合体あるいは端末を通して行われ

    5 特許(修正)規則 2004の 3(k)及び 3(ka)項のもとでの除外

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    る」と定義されている。

    3.3 コンピュータシステム

    「コンピュータシステム」という用語は、情報科学技術法 2000(2000 の

    No.21)において、「装置あるいは装置の集合体で、入力支援装置と出力支援装

    置を含み、プログラミングはできない計算機は除外され、外部ファイルと共に

    利用でき、論理、算術、データ記憶、検索、通信制御及び、その他の機能を実

    行するコンピュータプログラム、電子的命令、入力データ及び出力データを含

    む」と定義されている。

    3.4 コンピュータ関連の発明

    この用語は、インドの制定法のいずれにも定義されておらず、このガイドライ

    ンの目的に即して、「コンピュータ、コンピュータネットワーク、あるいはそ

    の他のプログラミング可能器具の使用に関わる発明であり、その 1つ以上の特

    徴が、コンピュータプログラムによって全体的または部分的に実現される発明

    を含む発明」を意味すると解釈する。

    3.5 データ

    「データ」という用語は、情報科学技術法 2000(2000 の No.21)において、

    「形式化された様式で作成されたあるいは作成されている情報、知識、事実、

    概念あるいは命令の表示であり、これらは、コンピュータシステムあるいはコ

    ンピュータネットワークでの処理を目的とするか、処理中であるか、あるいは

    既に処理されたものであり、またどの形態(コンピュータによる印刷物、磁気

    的あるいは光学的記憶メディア、パンチカード、パンチテープを含む)で保存

    されたものでも、またコンピュータのメモリ内に保存されたものでもよい。」

    と定義されている。

    3.6 情報

    「情報」という用語は、情報科学技術法 2000(2000の No.21)において、「情

    報には、データ、テキスト、画像、音、声、コード、コンピュータプログラム、

    ソフトウェア及びデータベースやマイクロフィルム、コンピュータで作成した

    マイクロフィッシュが含まれる」と定義されている。

    3.7 アルゴリズム

    「アルゴリズム」という用語は、インドの制定法では定義されていないため、

    一般的な辞書の意味を使用して、この用語を解釈する。

    コンサイス・オックスフォード・ディクショナリ(10版)は、「アルゴリズム」

    を、「計算やその他の問題において、特にコンピュータを使って演算を解く上

  • - 8 –

    で従うべきプロセスあるいは規則のセット」と定義している。

    3.8 機能

    「機能」という用語は、情報科学技術法 2000(2000の No.21)において、「機

    能は、コンピュータとの関連において、論理、算術的制御プロセス、削除、記

    憶、検索及び、コンピュータ間あるいはコンピュータ内の通信あるいは遠距離

    通信を含む」と定義されている。

    3.9 ソフトウェア

    「ソフトウェア」という用語は、インドの制定法では定義されていないため、

    一般的な辞書の意味を使用して、この用語を解釈する。

    オックスフォード・アドバンスト・ラーナーズ・ディクショナリでは、「ソフ

    トウェア」を、「コンピュータを操作するために使用するプログラム等」と定

    義している。

    3.10 コンピュータプログラム

    コンピュータプログラムという用語は、著作権法 1957の第 2(ffc)項のもとで、

    以下のように定義されている。

    「コンピュータプログラムは、語、コード、スキームあるいは、機械で読み込

    み可能な媒体を含めたあらゆる形態で表された命令のセットで、コンピュータ

    に、特定のタスクを実行させ、あるいは特定の結果を達成させることができる

    ものを意味する。」

    3.11 そのもの(Per se)

    「そのもの」という用語は、インドの制定法では定義されていないため、一般

    的な辞書の意味を使用して、この用語を解釈する。

    オックスフォード・アドバンスト・ラーナーズ・ディクショナリは、「そのも

    の」は「それ自体」、すなわち何かを指すときに、他のものとのつながりでは

    なく、それ自体で表すことと定義している。

    3.12 ファームウェア

    「ファームウェア」という用語は、インドの制定法では定義されていないため、

    一般的な辞書の意味を使用して、この用語を解釈する。

    オックスフォード・アドバンスト・ラーナーズ・ディクショナリは、「ファー

    ムウェア」を、「変更や消去ができないように記憶されたコンピュータソフト

    ウェアの一形式」と定義している。

    3.13 ハードウェア

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    「ハードウェア」という用語は、インドの制定法では定義されていないため、

    一般的な辞書の意味を使用して、この用語を解釈する。

    オックスフォード・アドバンスト・ラーナーズ・ディクショナリは、「ハード

    ウェア」を、「コンピュータが従う命令ではなく、コンピュータの物理的及び

    電子的部分」と定義している。

    3.14 埋込システム

    埋込システムは、通常、特別な装置内の専用アプリケーションのために作成さ

    れた特別な用途をもつコンピュータシステムである。埋込システムは、汎用パ

    ーソナルコンピュータに比べて、非常に特殊な要件を満たすよう設計されてい

    る。埋込システムの例として、ATMやグラフィックカード、PLCなどがある。

    3.15 技術的効果

    このガイドラインの目的に即して定義すれば、技術的効果は、発明全体として

    克服する技術的問題の解決法である。技術的効果の一般的な例を、以下にいく

    つか挙げる。

    *高速化

    *ハードディスクアクセス時間短縮化

    *メモリのさらに経済的な使用

    *データベース検索戦略の効率化

    *データ圧縮技術の効率化

    *ユーザインターフェースの改良

    *ロボットアームの制御改良

    *無線信号の送受信の改良

    3.16 技術的前進

    このガイドラインの目的に即して定義すれば、技術的前進とは、あらゆる技術

    分野における最新技術への貢献である。その発明の技術的前進を評価する際に

    は、技術的成果をもつソフトウェアと、それを持たないソフトウェアを区別す

    ることが重要である。技術的前進は技術的効果を伴うが、全ての技術的効果が

    技術的前進に繋がるわけではない。

    3.17 数学的方法

    「数学的方法」は、精神的機能を使った行為と考えられる。計算方法、方程式

    の公式化、平方根や立方根を見つける方法、及び、数学的方法を直接的あるい

    は間接的に含むその他すべての方法は、特許性を持たない。コンピュータ技術

    の発展にともない、これらの数学的方法は、様々なアプリケーション用にコン

    ピュータプログラムやアルゴリズムを書くために使われており、特許出願発明

  • - 10 –

    の中には、数学的方法そのものではなく、技術的発展に関係した発明に見せか

    けたものが時々ある。これらの方法は、どんな形態でクレームを書いていても、

    実質的に数学的方法に関係している限り、特許性のない案件とみなされる。

    3.18 ビジネスの方法

    どんな形態でクレームが書かれていても、「ビジネスの方法」の案件には、

    特許性はない。「ビジネスの方法」という用語には、商業あるいは工業の企業

    体が品物やサービスの取引に関係して行うすべての活動範囲が含まれる。イン

    ターネット技術の発展にともない、多くのビジネス活動が、eコマースやB2

    B(企業間取引)、B2C(企業対消費者取引)に関連したビジネスを通して、

    飛躍的な成長を遂げた。電子的口座振替によって、銀行業務活動は、以前より

    ずっと使いやすくなった。直接ビジネスの方法は書かれていないが、インター

    ネットやネットワーク、サテライト、遠距離通信など、これまで利用可能な技

    術特徴を備えているように見えるクレームが時々ある。除外事項には、すべて

    のビジネスの方法が当てはまるため、たとえ技術の助けを借りてはいても、ク

    レームが実質的にビジネスの方法に関係していれば、特許性があるとはみなさ

    れない。

    3.19 文学作品、劇作品、音楽作品、あるいは芸術的作品、あるいは、映画作

    品やテレビジョン作品を含むその他の審美的創作

    書物、音楽、美術作品、絵画、彫刻、コンピュータプログラム、電子的データ

    ベース、書籍、パンフレット、講義、演説、説教、劇的音楽作品、振り付け作

    品、映画作品、描画、建築図面、彫版、リトグラフィ、写真作品、応用芸術、

    イラストレーション、地図、平面図、スケッチ、地理や地形に関係する三次元

    作品、翻訳、翻案、音楽の編曲、マルチメディア制作物などには、特許性はな

    い。これらの作品は、著作権法 1957の範疇に入る。

    3.20 精神的行為を行う純粋なスキーム、規則あるいは方法、またはゲームを

    する方法

    精神的行為を行う純粋なスキーム、規則あるいは方法、またはゲームをする方

    法は、純粋な精神的プロセスの所産と考えられるため、特許性から除外される。

    例えば、

    a.チェスの遊び方

    b.教え方

    c.学び方

    d.訓練方法である。

    3.21 情報の表示

  • - 11 –

    語、コード、信号、記号、図形あるいは他の表示様式を使って、視覚的、聴覚

    的、触覚的のいずれかで情報を表す方法あるいは様式にはすべて、特許性はな

    い。

    例えば、印刷されたテキストの形態をとるスピーチ指示書で、横線のアンダー

    ラインが強調を表し、垂直の分割線がリズムで言葉をグループ分けしている場

    合、そのスピーチ指示書に特許性はない。

    例えば、鉄道の時刻表、100年カレンダーなどもこれに含まれる。

    4.コンピュータ関連の発明に関係するクレームのカテゴリー

    コンピュータ関連の発明(CRIs)に関係するアプリケーションは、おおまかに以

    下のカテゴリーに入る。

    ・方法・プロセス

    ・器具・システム

    ・コンピュータ読み取り可能媒体

    ・コンピュータプログラム製品。

    4.1 方法・プロセス

    コンピュータ関連の発明のクレームには、「~するための方法・プロセス」と

    いう前文がよくみられる。そのクレームが、数学的方法やビジネスの方法、コ

    ンピュータプログラムそのものやアルゴリズム、あるいは精神的行為であるか

    どうかに関わらず、それらは「方法・プロセス」の形式で特許請求される。審

    査者の役割は、その発明がこれらのカテゴリーのいずれかに入るかどうか、つ

    まり除外案件事項にあたるかどうかを確認するという非常に厳しいものにな

    っている。以下に、「方法」の形を示しながらも様々な除外カテゴリーにあた

    るクレームの例を示す。

    例 1:数学的方法・コンピュータプログラムそのもの

    1. 値を計算する方法において:

    計算すべき値の計算法を記述した計算可能な関数のプログラムをエンコード

    する段階と;

    前記エンコード済みプログラムを継続する段階と;

    継続化されたエンコードプログラムを、微分演算子として表す段階と;

    微分演算子を物理的媒体の中に具体的に示す段階と;

    前記物理的媒体から、継続化されたエンコードプログラムに対する解答を抽出

    する段階からなることを特徴とする。

    2. クレーム 1の方法において、計算可能な関数のプログラムをエンコードす

  • - 12 –

    る段階にはさらに:

    計算可能な関数の変域 S1 xS2 x ---xSNの各点(x0,xi...,xN_1)に対して、

    F:[0,1,...pN_l]→[0,1...p]

    によって与えられるマッピングが含まれており;

    このとき

    であり、

    pは:

    F(x)=Mx>->X>>-l)限定可能なら

    それ以外はθ

    によって限定される自然数であることを特徴とする。

    例 2:ビジネスの方法

    仮想支払い口座を使って、売り手コンピュータから製品を購入する方法におい

    ては:

    仮想支払い口座を使って売り手コンピュータから製品を購入したいという、買

    い手コンピュータからの請求を受け取る段階と;

    前記の購入請求に応えて、前記の買い手コンピュータが仮想支払い口座と連携

    しているかどうかを決定する段階と;

    前記買い手コンピュータと仮想支払い口座との連携確認に反応して、前記製品

    の費用を仮想支払い口座に適用する段階と;

    売り手コンピュータに関係している売り手に、前記の製品を提供する段階から

    なることを特徴とする。

    例 3:コンピュータプログラムそのもの

    1. ソースコード内の脆弱性を検知する方法においては:

    ソースコード内の変数を分析し、そこから、各変数の所定の特性を特定するモ

    デルをそれぞれ作る段階と;

    前記変数モデルを使って、ソースコード内のルーチンコールに対する独立変数

    モデルを作る段階と;

    対応するルーチンコールに対してあらかじめ特定された基準と前記独立変数

    モデルとを使って、独立変数と周知のルーチンの動きにもとづいて、前記ルー

    チンコールが脆弱性を有しているかどうかを決定する段階からなることを特

  • - 13 –

    徴とする。

    例 4:アルゴリズム

    複数の論理的レプリカそれぞれにおいて、顧客からの要求を受け取る段階と;

    このとき、前記論理的レプリカは、一人の顧客と排他的に関係するよう構成さ

    れており;

    前記各論理的レプリカは、待ち行列を含んでおり;

    前記要求は複数のリソースの 1つにアクセスすることであり;

    特定の論理的レプリカが別の顧客に排他的に関係しているときは、その要求を、

    前記特定の論理的レプリカの待ち行列の中に保存する段階からなることを特

    徴とする。

    4.2 器具・システム

    コンピュータ関連の発明に関係するクレームの別の主な前文に、「~するため

    の器具・システム」がある。これらのクレームは、「手段+機能」の形に見え

    るよう作られていることがよくある。審査者は、特許請求案件が本当に、新規

    性があり、進歩性があり、産業上の利用可能性がある器具に関係しているのか、

    あるいはただそう見えるよう書式化されているのかを、正しく見極めるため注

    意を払わなければならない。器具のクレームでは、発明の特徴である構成・ハ

    ードウェアを明確に定義しなければならない。器具に対するクレームには、器

    具に対する「プロセスの限界」を含むことがあるが、この場合の「限界」は、

    特定の応用を定義するものであって、一般的な応用を定義するものではない。

    例:装置とワイアレスネットワークの間で、安全な通信セッションを提供する

    ための器具においては:

    -前記装置からアクセス要求を受信するための-手段と、このとき前記器具は、

    -パケットトラフィックフィルタ手段を介して、ワイアレスネットワークへの

    再設定済みアクセス許可のため、ローカルウェブサーバーにアクセス要求をリ

    ダイレクトするための-手段を特徴としており;

    -前記装置から受信した情報に応じて、モジュールを起動させるための-手段

    と、前記モジュールは、-ユーザーが選択した構成配列に関係した適当なパラ

    メータを使って認証するための-装置を再構成しており;

    -前記再構成された装置を認証し-、前記認証に応じてワイアレスネットワー

    クへのアクセスを許可するための手段からなることを特徴とする。

    4.3 コンピュータプログラム製品

    コンピュータプログラム製品に関連するクレームは、単にコンピュータ読み込

    み可能記憶媒体(CD、DVD、信号等)に表されたコンピュータプログラムそ

    のものにすぎず、従って、許諾されない。

  • - 14 –

    例:受信器から送信器に情報をフィードバックするためのコンピュータプログ

    ラム製品において、前記プログラムはコードから構成されており、前記コード

    は:

    受信器のプロセッサ上で実行されたとき、ワイアレス多入力多出力チャンネル

    を通して、送信器から信号を受信し;

    受信した信号に基づいて、個々のタイムインターバルからなる周期的シーケン

    スで、受信器から送信器へ複数のレポートを転送し、このとき各期間のレポー

    トは少なくとも、イベントに応じたプレコーディングマトリックスの表示と、

    前記プレコーディングマトリックスのランクの表示から構成されており;

    所定のデフォルトランクに基づいて、プレコーディングマトリックスの表示か

    らなる後続レポートを決定し;

    送信器にレポートを送信することからなることを特徴とする。

    5. 審査手順

    コンピュータ関連の発明に関する特許出願の審査手順は、新規性、進歩性、産

    業上の利用可能性を考慮する点において、他の発明と共通している。審査対象

    が、除外カテゴリーのいずれかに関係しているかどうかの判断において、審査

    者は高いスキルが求められるため、このガイドラインではこの点に焦点をあて

    る。

    5.1 新規性

    新規性は、あらゆる発明において、その特許性を判断する上で最優先に求めら

    れる要件である。説明及びクレームの内容が、出願日以前あるいは優先日以前

    に開示された案件と同等のものであれば、どんな発明も特許性をもつことはで

    きない。コンピュータ関連の発明に関する新規性の判断は、他の分野の発明と

    何ら変わることはない。

    インド特許法 1970における「新しい発明」の定義は、以下のとおりである。

    「新しい発明」は、完全な特許明細書を備えた特許出願の出願日以前に、いか

    なる文書出版物でも先取りされたことがなく、また世界の国あるいはいかなる

    場所ででも使用されたことがない発明あるいは技術を意味し、すなわちその対

    象は、パブリックドメインの枠内に入ったことがなく、また先進技術の一部を

    形成してもいないことを意味する。

    新規性の基準は、前記特許法の第 13 項の規定のもとで判断され、手続きは、

    インド特許意匠商標総局(CGPDTM)の公式ウェブサイトで入手可能な「特許

    局実践と手続きマニュアル」の 08.03.02章に記されている。

    5.2 進歩性

  • - 15 –

    進歩性は、インド特許法 1970の 2(1)(ja)項の規定に従って決定する。コンピ

    ュータ関連の発明に関する進歩性の判断は、他のカテゴリーの発明と同様に行

    われる。

    「(ja)「進歩性」は、発明の特徴が、周知の知識に比べて技術的進歩を含んで

    いるか、あるいは、経済的重要性を備えているか、あるいはその両方であり、

    その特徴によって、その発明が当業者にとって自明ではないものになることを

    意味する。」

    エネナーコン案件6において IPAB(知的財産審判委員会)は、ウィンドサーフ

    ィング・インターナショナル社7とポツォリ(Pozzoli)8を参照して、進歩性の

    判断について、以下の段階を踏んだ。

    1.特許の中に具現化された発明概念を特定する。

    2.通常の技術を備えるが想像力にかける名宛人に、優先日において、その技

    術分野で一般的な周知知識であったものを示す。

    3.引用したものと発明だと称するものとの間に差違があれば、それを同定す

    る。

    4.発明と称するものの知識を除いて見たときに、その違いが、当業者にとっ

    て自明であったと考えられるか、あるいはある程度の発明が必要な段階から構

    成されているかを決定する。

    進歩性の判断に関する詳しい手続きは、インド特許意匠商標総局(CGPDTM)

    の公式ウェブサイトで入手可能な「特許局実践と手続きマニュアル」の

    08.03.03.02章に記されている。

    5.3 産業上の利用可能性

    特許法では、産業上の利用可能性あるいは産業的応用は特許性要件であり、こ

    れに準拠して特許が与えられるのは、産業的応用が可能な発明、すなわちいず

    れかの産業で製造されるか利用される発明に対してのみである。

    インド特許法 1970の 2(1)(ac)項には、以下のように定義されている。

    (ac) 発明に関して、「産業への利用が可能であること」は、その発明がある

    産業で製造できまた利用できることを意味する」。

    産業上の利用が可能ではないと思われる発明の例は、個人及び個人の領域に適

    用される「避妊の方法」がある。

    実行可能性及び有用性はともに、この要件に結びついている。その発明に実行

    6 ORA/4/2009/PT/CH及び ORA/4/2009/PT/CHにおけるMP番号

    5/2010,27/2010,48/2010 7 ウィンドサーフィング・インターナショナル社対タブール・マリン(英)社。[1985]RPC

    59 8 ポツォリ対 BDMO[2007]EWCA Civ 588; [2007] FSR 37

  • - 16 –

    可能性がない場合、それは産業的に利用可能ではないことを意味する。

    コンピュータ関連の発明案件における産業上の利用可能性の判断は、除外カテ

    ゴリーに関係する発明が、産業的応用の欠けた抽象的な理論と見なされるため、

    大変厳格なものとなる。

    産業上の利用可能性に関する判断についての詳細な手続きは、インド特許意匠

    商標総局(CGPDTM)の公式ウェブサイトで入手可能な「特許局実践と手続き

    マニュアル」の 08.03.04章に記されている。

    5.4 コンピュータ関連の発明に関係した除外案件の判断

    5.4.1 進歩性を含み産業上の利用が可能な新しい製品あるいは方法をカバー

    する特許(修正)法 2002 の 2(1)(j)項による発明の定義の修正によって、ハ

    ードウェア実装を備えた器具・システムに関係した発明の特許性を決定するこ

    とは比較的簡単であるものの、修正法実施以前のように「製造の方法」だけに

    限定されることがなくなったため、発明に関係したプロセス・方法の吟味は非

    常に厳しくなった。むしろ、特許出願の方法・プロセスが、法令の中に規定さ

    れたプロセス・方法に当てはまると解釈できるかどうかは、審査者の厳格な判

    断にゆだねられる。特許は、どの技術分野においても、製品か方法いずれかの

    発明に対して与えられるため、特許出願の方法・プロセスの本質から、その特

    許出願の方法・プロセスが技術分野に関係するかどうか確かめるのが適切であ

    る。

    5.4.2 進歩性の調査には、発明の特徴が、周知の知識に比べて技術的進歩を

    含むかどうかの確認が含まれるため、先行技術からの技術的進歩に基づいて、

    「方法・プロセス」を判断する必要がある。さらに、特許権の保護及び執行は

    技術革新の促進に貢献するため、特許性を考慮すべき案件対象が、技術革新に

    関係していなければならないことは、十分に自明のことである。

    5.4.3 従って、技術分野に関係しない方法・プロセスはいずれも、特許性が

    あるとはみなされない。第 3項の小項(k)から(n)に記載された除外対象は、明

    らかに、第 2 項の小項(1)(j)に記載された広義の発明から特定のカテゴリーの

    発明を切り出したものであり、これら除外対象は、技術的特徴を含まない精神

    的、知的、審美的、抽象的対象とみなされるものである。

    5.4.4 数学的方法やビジネス関連の方法、コンピュータプログラムそのもの、

    あるいはアルゴリズム、精神的行為、美的創作、ゲームを遊ぶ方法、情報の表

    示方法などの言葉はすべて、特許性の範囲から除外され、これらの分野では特

    許を許諾しないという立法府の強い意図が示されている。

  • - 17 –

    5.4.5 本質的に、すべてのコンピュータプログラムは、その機能性のため何

    らかのハードウェアと組み合わせる必要がある。これは、すべてのコンピュー

    タプログラムが、コンピュータプログラムそのものの範囲から外れるとみなせ

    るという意味だろうか?すなわち問題は、周知の汎用コンピュータあるいは関

    連装置にインストールされたコンピュータプログラムに特許性はあるかとい

    うことである。法の精神に鑑みれば、その答えは否定的である。だが、新しい

    ハードウェアシステムに対する特許出願において、クレームの一部分をなすコ

    ンピュータプログラムの可能性は排除されていない。審査者は、新しいハード

    ウェアとコンピュータプログラムが、どれほど一体化されているかを慎重に考

    慮する必要がある。また、機械がプログラム専用のものか、プログラムが機械

    専用のものかを確かめることが重要である。このために、審査者は厳しい配慮

    が必要である。

    5.4.6 周知の汎用コンピュータで作動するコンピュータプログラムは、特許

    法の要件を満たさない。ハードウェアの特徴と組み合わされたコンピュータプ

    ログラムの特許性を考慮する際には、ハードウェア部分は、汎用の機械とは何

    らかの点で異なっていなければならない。装置、機械、あるいは器具に新規性

    がある場合、また、その装置のクレームに、新規あるいは周知のコンピュータ

    プログラムとの組み合わせが、その装置の機能性を決定づけると記載されてい

    る場合、その発明が、新規性、進歩性、産業上の利用可能性という三段階の課

    題を満たしていれば、その装置に対するクレームは特許性があるとみなされる

    ことがある。

    5.4.7 「そのもの」という言葉は、コンピュータプログラムだけ付けられる

    接尾辞であることに留意することが大切である。従って、その発明が、数学的

    方法、ビジネスの方法、あるいはアルゴリズムに関係する場合、法を直接適用

    して、その発明に特許性はないとみなされる。ただし、その発明のクレームが、

    新規で進歩性があり産業上の利用可能性のあるコンピュータあるいは関連装

    置と、その機能性を決定づけるプログラムに向けられている場合は、特許性が

    あると見なされることがある。

    5.4.8 これら除外カテゴリーに関係する出願に判断を下す際に、特許局が採

    用するアプローチを示すため、このガイドラインに以下のケース例をのせる。

    例解 1:「追加物の勘定を請求する方法及びシステム」という表題の出願は、

    ビジネスの方法と判断された。

    特許局は、修正クレーム 1-9の対象案件は、顧客からメッセージを受信し、そ

    れを分析してサービス請求カテゴリーを決定し、次に勘定請求イベントを発生

  • - 18 –

    させて、顧客の口座に勘定を請求するという追加物の勘定請求方法を記載した

    ものであると判断した。この方法は、ビジネス主体と単純に繋がっており、従

    って方法は本質的にビジネスの方法であり、その処理段階は単に、ビジネスの

    処理段階の自動化にすぎない。従って、このクレームの対象案件は、特許法

    1970(修正済)の(3) (k) 項の範囲に適用され、前記クレームで特許出願した

    この発明には特許性はない。

    例解 2:別の案件において特許局は、特許制度は、ただ一種類の創造性、すな

    わち技術的創造性だけを保護するよう意図されており、対象の特許出願発明は、

    ビジネスの方法及び情報を表示する方法に関係していると判断して許諾しな

    かった。

    例解 3:特許出願は、以下の独立クレームから構成されていた。

    ダウンロードサーバからのアプリケーションのダウンロード取引に対して勘

    定請求イベントを生成する方法において、勘定請求イベントの生成には、第一

    セットの情報と第二セットの情報が必要であり、このとき前記方法は:メタデ

    ータとして、第一セットの情報を保存する段階と、前記メタデータは複数のブ

    ロックから構成されており;

    ダウンロードサーバが実行するダウンロード取引ごとに、生取引データを受信

    する段階と、前記生取引データは、前記メタデータのブロックに対する複数の

    参照と、前記第二セットの情報から構成されており;

    前記生取引データの複数の参照それぞれを相関させて、前記メタデータから第

    一セットの情報を検索する段階と;

    前記第一及び第二セットの情報から、勘定請求イベントを生成する段階からな

    ることを特徴とする。

    申請を拒絶するにあたって、特許局は、本発明の範囲は予約申し込み取引に関

    わるものであり、発明と称する作業には、取引マネージャ、購入申し込みオプ

    ション、価格付け情報及び、キャリアの勘定請求システムに対する取引データ

    の処理方法を記したフローチャートを使用する取引処理環境が備わっており、

    前記キャリアの勘定請求システムには、生取引データとメタデータを処理する

    ことによって、アプリケーションダウンロードというデータ取引に関連する価

    格付け情報を含む勘定請求イベントを生成する段階が含まれると判断した。

    従って、この発明出願は、データネットワーク上で取引データ処理及び取引の

    勘定請求を行うことに関係し、単なるビジネスの方法であることは明白である。

    例解 4:以下の独立クレームで、特許出願が行われた。

    電子ネットワーク上で作動し、複数のヘルスケア施設で、看護ユニットの看護

    品質を調査するシステムにおいては:

    複数のヘルスケア施設から受信した情報を保存するよう構成されたデータベ

    ースと;

    ウェブサーバと、前記ウェブサーバにおいては:

  • - 19 –

    看護品質インディケータに関係する最低一つの質問を、第一ウェブクライアン

    トを介して、第一ヘルスケア施設の第一看護ユニットの最低一人のスタッフ及

    び、第二ウェブクライアントを介して、第二ヘルスケア施設の第二看護ユニッ

    トの最低一人のスタッフに送信する段階と;

    前記第一看護ユニットの最低一人のスタッフに提示した最低一つの質問に対

    して応答した第一データ要素と、第一ユニット形式と第一識別子を、前記第一

    ウェブクライアントから受信し、また、前記第二看護ユニットの最低一人のス

    タッフに提示した最低一つの質問に対して応答した第二データ要素と、第二ユ

    ニット形式と第二識別子を、前記第二ウェブクライアントから受信する段階

    と;

    前記第一データ要素と、前記第一ユニット形式と、第一識別子と、第二データ

    要素と、第二ユニット形式と、第二識別子を、データベースに保存する段階と;

    前記第一ユニット形式と第二ユニット形式が実質的に同じ形式であるかどう

    かを決定する段階と;

    また前記第一ユニット形式と第二ユニット形式が実質的に同じ形式だと決定

    された場合、データベースに保存された第一データ要素と第二データ要素を比

    較する段階と;

    前記ユニット形式とヘルスケア施設に基づいて、前記比較結果を整理する段階

    と;

    前記ウェブサーバから第三ウェブクライアントに結果を送信する段階とから

    なることを特徴とする。

    ネットワークを介して接続された複数のヘルスケア施設で、看護ユニットの看

    護品質を調査する方法においては:

    看護品質インディケータに関係する最低一つの質問を、ウェブサーバを使って、

    前記ネットワークに接続した第一ウェブクライアントを介して、第一ヘルスケ

    ア施設の第一看護ユニットの最低一人のスタッフに提示する段階と;

    看護品質インディケータに関係する最低一つの質問を、ウェブサーバを使って、

    前記ネットワークに接続した第二ウェブクライアントを介して、第二ヘルスケ

    ア施設の第二看護ユニットの最低一人のスタッフに提示する段階と;

    前記第一看護ユニットの最低一人のスタッフに提示した最低一つの質問に対

    して応答した第一データ要素と、第一看護ユニットの第一ユニット形式と、第

    一ヘルスケア施設の第一識別子とを受信する段階と、このとき前記第一データ

    要素は、ウェブサーバを使用して第一ウェブクライアントを介して受信し;

    前記第二看護ユニットの最低一人のスタッフに提示した最低一つの質問に対

    して応答した第二データ要素と、第二看護ユニットの第二ユニット形式と、第

    二ヘルスケア施設の第二識別子とを受信する段階と、このとき前記第二データ

    要素は、ウェブサーバを使用して第二ウェブクライアントを介して受信し;

  • - 20 –

    前記第一ユニット形式と前記第一識別子とともに、前記第一データ要素を、ウ

    ェブサーバを使ってデータベースに保存する段階と;

    前記第二ユニット形式と前記第二識別子とともに、前記第二データ要素を、ウ

    ェブサーバを使ってデータベースに保存する段階と;

    前記第一ユニット形式と第二ユニット形式が実質的に同じ形式であるかどう

    かを決定する段階と;

    またウェブサーバを使って、前記第一ユニット形式と第二ユニット形式が実質

    的に同じ形式だと決定された場合、ウェブサーバを使って、データベースに保

    存された第一データ要素と第二データ要素を比較する段階と;

    ウェブサーバを使って、前記ユニット形式とヘルスケア施設に基づいて、前記

    比較結果を整理する段階と;

    ウェブサーバを使って表示するため第三ウェブクライアントに結果を送信す

    る段階とからなることを特徴とする。

    出願の拒絶にあたって、特許局は、サーバとデータベースが周知の技術である

    場合、コンピュータは周知の技術であり、これらの相互作用の方法もまた周知

    であるため、発明者の貢献は何であったのかと考えた。貢献した点は、ただ、

    上記で述べたビジネスの方法を実行するコンピュータプログラムだけである。

    例解 5: ソーシャルネットワークのメンバー間の適合性を採点する方法にお

    いて、前記方法は:

    ソーシャルネットワークのメンバーが表した興味に基づいて、興味の適合性ス

    コアを作成する段階と;

    第一メンバーが表した興味と、第二メンバーが表した興味と、第一メンバーが

    表した興味と第二メンバーが表した興味の間の興味適合性スコアとをもとに

    して、ソーシャルネットワークの第一メンバーとソーシャルネットワークの第

    二メンバーの間の適合性スコアを計算する段階からなることを特徴とする。

    特許局は、ソーシャルネットワークユーザー間の適合性を採点する前記方法は、

    商業的に使われているビジネスの方法に過ぎないと判断した。従って、この発

    明対象案件は、特許法 1970の第 3(k)項によって許諾できない。

    前記のソーシャルネットワークユーザー間の適合性を採点する方法は、言わば、

    確率を推定し、その結果の積を推定確率で割ることであり、これは単純な数学

    的方法であるため、特許法 1970の第 3(k)項によって許諾できない。

    この発明対象案件は、言わば適合性スコアを計算する方法であり、スキームあ

    るいは事前定義された規則セットを基礎とするものであり、特許法 1970の第

    3(m)項によって許諾できない。

    こうして本出願は、上で述べた係争反対意見に照らし合わせて、特許法 1970

    の第 15項によって拒絶された。

    例解 6:顧客の口座に値を追加する方法においては:

    値に関係する識別子を顧客に分配する段階と、このとき前記識別子は、口座に

  • - 21 –

    値を追加するために利用でき;

    ショートメッセージサービス(SMS)を介して、顧客の口座に値を追加したい

    という要求を受信する段階と、前記要求は、識別子と、前記顧客の口座に関係

    する口座識別子情報とから構成されており、前記要求は、SMSメッセージとし

    て、ユーザーの通信装置から受信するものであり;

    前記要求に基づいて、前記識別子に関係する値と、前記口座識別子情報に関係

    する顧客口座とを同定する段階と;

    顧客の口座に、値を追加する段階と;

    前記値が顧客の口座に追加されたという確認を、ユーザーの通信装置に送る段

    階からなることを特徴とする。

    特許局は、クレーム 1(主独立クレーム)が示唆する、口座に値を追加するの

    に利用できる識別子を分配し、送信し、受信し、前記値を同定し、口座に前記

    値を追加し、前記値が追加されたことを確認するという機能は、明らかに値 I

    のサービスの取引 Iというビジネスの方法を描いたものだと判断した。

    さらに、このクレームの後に続く残りの部分は、ビジネスの方法・活動・サー

    ビス取引を直接助けるか支援するものであり、サービス取引の実行方法につい

    て直接的に単純に示しているに過ぎない。上記の事実及び結論に基づき、発明

    と称している本案件は、特許性のあるものから構成されておらず、純粋にビジ

    ネスの方法及びソフトウェアそのものに関係しており、従って、特許の出願手

    続をさらに進めることはできないと決定・結論づけられた。従って、クレーム

    1 から 19 は、特許法 1970 に鑑みて、許諾できないとの結論に至った。こう

    して、特許局はこの出願を拒絶した。

    例解 7:中央ネットワークサイトを通して、顧客の個人的な栄養情報を提供す

    る栄養薬理学者と顧客とを繋ぐ双方向性コンピュータ化方法においては:

    a)前記栄養薬理学者と顧客とが互いに通信を行う中央集積サイトを用意する

    段階と、前記中央集積サイトは、記憶媒体から構成されており;

    b)前記記憶媒体において、最低一つの生物化学マーカに対する生物化学マー

    カデータ情報を保持するため、第一データベースを保存する段階と;

    c)前記記憶媒体に、最低一つの栄養素に対する栄養データを保持するための

    第二データベースを保存する段階と、前記栄養データは、前記最低一つの生物

    化学マーカを伴う最低一つの栄養素の効果と関連性に関する記録から構成さ

    れており;

    d)前記中央集積サイトから、最低一つの生物化学マーカレベルを含む顧客の

    臨床試験結果を受信する段階と;

    e)前記顧客の臨床試験結果に示された前記最低一つの生物化学マーカレベル

    と、前記第一データベースの生物化学マーカデータ情報とを比較して、顧客の

    生物化学マーカレベルセットを生成する段階と;

    f)前記顧客の生物化学マーカレベルセットと、前記第二データベースに保存

  • - 22 –

    された栄養データとを比較する段階と;

    g)顧客のために、個人的な栄養情報を示すステータスレポートを生成する段

    階と;

    (g)段階で得られたステータスレポートを顧客に伝える段階からなることを

    特徴とする。

    上記の事実及び結果に基づいて、特許局は、発明と称する対象案件は、特許性

    のあるものから構成されてはおらず、純粋にビジネスの方法及びソフトウェア

    そのものに関係しており、従って、本特許出願の手続をこれ以上進めることは

    できないと判断した。従って、クレームは、インド特許法 1970に鑑みて許諾

    されない。こうして、特許局は、出願手続を進めることを拒絶した。

    例解 8:Yahoo案件 IPAB OA/22/2010/PT/CH

    クレーム

    コンピュータネットワーク(20)に接続された入力装置を通して、ユーザーが入

    力した情報との一致を表す項目の結果リスト(710)を生成するためのコンピュ

    ータネットワーク検索器具を操作する方法において、前記検索器具は、コンピ

    ュータネットワークと連働的に接続したコンピュータシステム(22,24)か

    ら構成されており、前記方法は:

    データベース(38、40)に複数の項目(344)を保存する段階と、各項目は、

    最低一つのキーワード(352)との関連性を備えてユーザーに伝えられる情報

    と、提供された情報(302)と、入札額(358)から構成されており;

    入力装置(12)を通して、ユーザーが入力したキーワードを受信する段階と;

    保存した項目(344)を検索し、前記ユーザーが入力したキーワードとの一致

    を表す項目を同定する段階と;

    同定した項目に対する入札額(358)を使って、同定した項目を注文する段階

    と、また、注文した同定項目を含む結果リスト(710)を生成する段階と;

    ユーザーに結果リスト(710)を提供する段階と;

    前記結果リスト(710)から選択した項目に関する情報について、ユーザーから

    の要求を受信する段階と;

    前記選択項目に関係する情報提供者(302)の口座に、前記選択項目に関係す

    る入札額(358)を請求する段階と;

    前記情報提供者のリスト(344)に関係する最低一つの入札額(358)を情報

    提供者が変更できるように、情報提供者(302)に、認証済みログインアクセ

    スを提供する段階と;

    このとき前記コンピュータシステム(22、24)は、所定条件の発生に応じて、

    情報提供者の口座の状態を示すものを、情報提供者(302)に送ることからな

    ることを特徴とする。

    特許局は、この発明は、単にビジネスの戦略にすぎず、特許性はないと結論づ

    けた。

  • - 23 –

    審判請求において、IPAB(知的財産審判委員会)は、「ビジネスの方法」特許

    に関する外国の法廷の様々な判決を分析した。判決において、委員会は、本発

    明は、「ビジネスを行う方法」のカテゴリーに入り、おそらくビジネスを行う

    技術的に洗練された方法である、と判断した。

    IPAB が「ビジネスの方法」及び、他の様々な管轄における許容性に鑑みて外

    国のケースを分析したことは明らかである。

    例解 9:「コンピュータ性能最適化方法」という表題の発明。

    出願者が当初申請した 19のクレームのうち、独立クレーム 1はコンピュータ

    性能最適化方法に関するものであり、他の二つの独立クレーム 12 と 16 は、

    無限数の同等コンピュータを高速で最適化する補足の方法と、4 つの目的別セ

    クションによる基本セット備え目的別セクションで最適化された主要不揮発

    性記憶媒体を記述している。

    特許局は、以下のように考察した。

    本特許出願のクレームに記載されまた説明された発明は、以下の 3つの成分か

    ら構成される。ぞれぞれについて以下に補足説明を行う。

    a)コンピュータの性能を最適化する方法

    b)無限数のコンピュータの性能を高速で最適化する方法

    c)目的別のセクションごとに最適化された主要不揮発性記憶媒体

    特許局は、クレームの成分ごとに分析を行った。

    a)コンピュータの性能を最適化する方法

    本発明の上記の第一成分は、コンピュータの主要不揮発性記憶媒体に作成さ

    れた目的別セクションによって、コンピュータの性能を最適化する方法である。

    b)無限数のコンピュータの性能を高速で最適化する方法

    本発明の第二成分は、本発明の第一成分を補足する二次的方法から構成されて

    おり、「マスターコンピュータ」で達成した最適化から、無限数の「レプリカ」

    コンピュータの性能の最適化を高速に行うことができる。

    ただし、商業あるいは工業レベルの大多数のアプリケーションでは、ハードウ

    ェアやソフトウェア、また構成が同じであるかそれらを同じにした数十、数百、

    あるいは数千の同等コンピュータを、速やかに最適化するために、二次的方法

    が必要となる。上記の発明の第二成分は、以下のソフトウエア処理方法によっ

    て達成される。

    (i)「マスターコンピュータ」を最適化する段階

    (ii)複数の「レプリカ」コンピュータを最適化する段階

    (iii)最適化したコンピュータの最終調整

    c)目的別のセクションごとに最適化された主要不揮発性記憶媒体

    本発明の最後の第三成分は、上記で説明した第一成分に従って一台だけのコ

    ンピュータで「コンピュータの性能を最適化する方法」を利用するか、第二成

    分に従って無限数のコンピュータで上記方法を利用するかのいずれかによっ

  • - 24 –

    て、「コンピュータの性能を最適化する方法」を適用した後に生じる、目的セ

    クションで最適化が行われた主要不揮発性記憶媒体である。

    この文脈において、特許局は、発明の 3つの成分はソフトウェアの方法を段階

    的に述べたもの、すなわち、このソフトウェア段階は、ソフトウェアプログラ

    ムによってのみ実行されると考察した。

    従って、特許局は、上記の特許申請発明について以下のように考えて結論づけ

    た。

    クレーム1記載のコンピュータ性能最適化方法、クレーム 12 記載の無限数の

    同等コンピュータを高速で最適化する補足方法、クレーム 16 記載の目的ごと

    にセクションを最適化した主要不揮発性記憶媒体は、コンピュータプログラム

    そのものであり、従って、特許法 1970の 3(k)項及び特許法 2005の修正が適

    用される。

    特許局はさらに、以前に手動で行っていたことの自動化のためにだけコンピュ

    ータを使用することは、技術的貢献を行ったと言える発明としては不十分だと

    付け加えた。例:(i)文書テンプレートが必要なものを決定するため、デー

    タプロセッサを構成する段階、(ii)データベース内に保存されているユーザ

    入力データにアクセスする段階、(iii)これらテンプレートとユーザの答えを

    統合し文書を作成する段階には、技術的貢献が要求される。コンピュータ内の

    技術的手段を用いて実行する意味では、これらは「技術的」ではあるが、これ

    は単にプログラミング段階にすぎず、その間の相互関係は、自動化プロセスに

    自然に従ったものでり、運用解決法と呼んでもよく、特許性をもつことはでき

    ない。

    6. 形式と実体

    6.1 数学的方法あるいはビジネス方法の判断は比較的容易であるが、コンピ

    ュータ・プログラムそれ自体あるいはアルゴリズム関連の発明を検討するに際

    しては、審査官は慎重を期す必要がある。コンピュータ・プログラムは、著作

    者の創作であると考えられているため、著作権法に基づいて保護を受けること

    ができる。当該の条款では、コンピュータ・プログラムそれ自体は特許性の適

    用範囲から除外されている。コンピュータ・プログラムは、アルゴリズムとい

    う形式で、フローチャートや工程段階という機能を示している、いつくかの「手

    段」を伴う方法クレームあるいはシステム・クレームとして請求の範囲に記載

    されることが多い。アルゴリズム関連の請求の範囲は、単独で請求の範囲に記

    載されるコンピュータ・プログラムよりもはるかに範囲が広い。プログラムは

    一つの特定のセットを表すのに対して、アルゴリズムは同一のアルゴリズムを

    ベースにして多数のプログラムが様々な言語で書かれるようにする方法を与

    えるものである。したがって、上記のいずれの形式で請求の範囲に記載される

  • - 25 –

    発明も、実体として見ると除外されたカテゴリーに属しており、それゆえに特

    許を受けることができない。

    6.2 さらに、問題がハードウェアとソフトウェアとの関係に関連する場合(例

    えば、請求の範囲に「...するようプログラムされたプロセッサ」あるいは「一

    つのプロセッサから成り、...するよう設定され、あるいはプログラムされた

    装置」と記載されている場合など)には、方法として表現されている機能性は

    その実体に基づいて判断される。特許性が争われる事件においては、請求の範

    囲に記載されている発明の特定の形式ではなく、当該発明の根底をなす実体に

    着目するべきであるという考え方が、法律的に定着している。特許法は、明ら

    かにコンピュータ・プログラムそれ自体が排除されるようにすることを意図し

    ており、ただ単に表現によって、またさらには様々なサブルーチンが物理的に

    様々に異なる箇所(例えばプロセッサなど)で実行されていると述べただけで

    も、かかる排除は避けられないというのが、同法の明確に意図するところであ

    る。

    例解 10: 「トランザクションを処理する方法およびシステム」という名称

    の発明において、審査官は、請求項 1から同 5までおよび同 13から同 16ま

    での請求項は特許法の第 3条(k)項に該当するという異議を唱えた。

    「複数のクライアント・コンピュータとデータを交換するように設定されたサ

    ーバと、該サーバと動作可能に連結され、複数の化学製品に関する化学製品デ

    ータを格納するデータベースと、該サーバと動作可能に連結され、a. 前記複

    数のクライアント・コンピュータのうち第 1のクライアント・コンピュータか

    ら製品識別子で構成されるリクエストを受け取り、b. 受け取られたリクエス

    トに応じて製品情報を検索するようにデータベースにクエリーを行い、c. 製

    品情報を第 1のクライアント・コンピュータへ送信するように該サーバを設定

    する命令より成る記憶装置と、成分を組み合わせて化学製品を形成する製剤手

    段とから構成される、トランザクション処理用のネットワーク・コンピュー

    タ・システム」

    特許局長は、それらの請求項はシステムとして書かれているにもかかわらず、

    主張されるシステムにおけるトランザクション処理は、当該サーバを設定する

    ために記憶装置内に格納された命令により行われ、さらに当該サーバがそれに

    立ち代わってリクエストを受け取り、データベースにクエリーを行い、製品情

    報を送信するので、実際にはビジネスを行う方法の域を出ていないとした。

    特許局長は、この主張されるネットワーク・システムは、その実現にすべて従

    来からあるハードウェア装置を使用しており、この事実は当該出願人の代理人

    も認めるところでもあるので、当該ネットワーク・システムには発明はないと

    述べた。また、本発明の本質は、このネットワーク・システムとされるものが

  • - 26 –

    取り扱っている各製品の製剤設計にもない。

    当該出願を拒絶して、特許局長は、請求の範囲に記載されている発明は、顧客

    が自ら店に出向いてそこで適当な製品を買うことをさせないようにする事務

    処理の工程を、サーバを設定するための指令に基づいて機能するコンピュー

    タ・プログラムによって自動化したものにすぎないとした。したがって、本発

    明の請求の範囲に記載されているネットワーク・システムは、事務処理を完遂

    させるようにコンピュータ・プログラムによって与えられる命令を設定するこ

    とによってコンピュータ・プログラムにより実現されるシステムを装ったビジ

    ネス方法にすぎない。従って、本発明は、1970年の特許法の第 3条(k)項に該

    当し、サーバの記憶装置に格納される命令を用いたコンピュータ・プログラム

    によって実現されるビジネス方法であるというのが特許局長の考えであった。

    例解 11: 本発明の名称は、「型検査システムおよびその方法」というもので

    あった。

    請求の範囲: 型検査システム(920)において実現される、コンパイラにお

    けるプログラミング言語を一つまたは複数の型検査規則セット(310)に従っ

    て型検査する方法であって、前記型検査システム(920)の型検査ソフトウェ

    ア(398,400)により、コンパイルの現状に基づいて持続性の記憶装置に格納

    された一つまたは複数の規則セット(310)を選択する段階と、前記型検査シ

    ステム(920)の型検査ソフトウェア(308,400)により、選択された一つま

    たは複数の型検査規則セットに基づいてプログラミング言語を型検査する段

    階とから構成され、前記一つまたは複数の型検査規則セット(310)が弱い型

    検査に対応する規則セットと表現型検査に対応する規則セットとを含んで構

    成されることを特徴とする方法。

    特許局長は、本発明は型付けされた中間言語をいかなる種類のプログラム言語

    のコンパイルもが改善されるような形で型検査するための方法およびシステ

    ムに関するものであり、それがめぐりめぐってコンパイラの誤りを防止し、コ

    ンパイラの信頼性と頑強性を向上させると述べた。

    コンパイラとは何かを理解する必要がある。「コンパイラとは、あるプログラ

    ミング言語(原始言語)で書かれた原始コードを別のプログラミング言語(タ

    ーゲット言語。目的言語として知られている 2進形を持つことが多い)に変換

    するコンピュータ・プログラム(あるいはプログラムのセット)である。」原

    始コードの変換を必要とする最も一般的な理由は、実行可能なプログラムをつ

    くりたいということである。さらに、型システムは、実行時エラーの検出と予

    防を手助けするために使われるプログラミング言語で書かれたシステムであ

    る。あるプログラミング言語が変数、関数等々といったオブジェクト用と明示

    されている一連の型を含んで構成されている場合には、そのプログラミング言

    語は型検出型であり、これらの型は、当該言語で書かれたプログラムがコンパ

  • - 27 –

    イルされている間に、一連の規則に対比して検査される。型付けされた言語で

    書かれた原始コードが当該の型の規則の一つに違反すると、コンパイラのエラ

    ーが特定される。

    型、型検査ソフトウェア、およびコンパイラの表現は、様々な形態の中間言語

    の整合性を検査するために提供される。型検査ソフトウェアとコンパイラは、

    プログラムの構成要素の原始言語またはコンパイルの段階あるいはその両方

    に応じて様々に異なる型と型検査規則の使用を可能にする。コンパイラには、

    型検査ソフトウェアが装備されており、その二つ以上の型検査ソフトウェアが

    多数の基準のいずれか一つあるいは二つ以上の組み合わせに基づいて1組ある

    いは複数組の規則を構築する。

    したがって、修正された請求項 1に記載の本発明は、コンパイラにおいてプロ

    グラミング言語を型検査する方法である。また請求項 8に記載される別の修正

    された独立形式請求項 bもまた、複数の原始言語で書かれた型検査原始コード

    を型検査ソフトウェアに従って型検査するための型検査システムであって、前

    記の型検査ソフトウェアが複数の表現のそれぞれにおいて原始コードに適用

    するべき一つまたは複数の型検査規則セットを選択し、前記の複数の表現が高

    レベルの中間表現と中間レベルの中間表現と低レベルの中間表現をのうちの

    少なくとも一つを含んでいることを特徴としている。システム・クレームにお

    いてプロセッサ装置や記憶装置という用語を使用することは、汎用であるとい

    う以外何の意味も持たない。

    上記を考慮すれば、修正された方法クレーム3およびシステム・クレーム8は、

    依然として 1970年の特許法の第 3条 (k) 項に該当することがわかる。また、

    かかる方法クレームの請求の範囲は、システム・クレームにすぎないこともわ

    かる。これらの請求項には、様々な形式の型検査規則を選択するという特徴し

    か含まれていないため、請求項 1あるいは請求項 8ならびにそれらの独立形式

    請求項に記載される請求の範囲に関して、1970年の特許法の第 3条(k)項に規

    定される異議を未然に防ぐ提訴権がない。したがって、修正された請求項 1ま

    たは 12あるいは原初の請求項 1から 34までに記載の請求の範囲は、1970年

    の特許法および 2005年の修正特許法の第 3条 (k)項に該当し、認められない

    との判断が下される。

    7.ミーンズプラスファンクション

    「ミーンズプラスファンクション」というクレーム区分に属する問題の解決

    については、ミーンズプラスファンクション形式の請求項は、当該の手段の構

  • - 28 –

    造的特徴が明細書に開示されていない限り、認められないものとする。

    さらに、明細書がコンピュータ・プログラムのみを当該発明実現の裏付けとし

    ている場合には、当該手段はコンピュータ・プログラムそれ自体にすぎないた

    め、ミーンズプラスファンクションは拒絶されるものとする。

    例解 12: 本特許出願の請求範囲には、下記の主クレームが記載されていた。

    動物関節のコンピュータ・モデルをつくる方法であって、当該関節の生物学

    的状態に関連するデータを識別する段階と、当該関節の生物学的状態の少なく

    とも一部を画定する、前記データに関連する複数の生体内作用を識別する段階

    と、前記複数の生体内作用を組み合わせて当該関節の生物学的状態のシミュレ

    ーションを形成する段階とから構成される方法。

    動物関節の生物学的状態のコンピュータ・モデルであって、当該関節の生物学

    的状態に関連している一連の生体内作用を画定するコードと、当該の生物学的

    状態に関係する生物学的諸変数間の相互作用に関連している一連の数学的関

    係を画定するためのコードであって、前記の一連の生体内作用のうち少なくと

    も二つの生体内作用が前記の一連の数学的関係と関連しているコードとから

    構成され、前記の一連の生体内作用を画定するためのコードと前記の一連の数

    学的関係を画定するためのコードとの組み合わせが当該関節の生物学的状態

    のシミュレーションを画成するコンピュータ・モデル。

    動物関節の生物学的状態に関連している複数の生体内作用を画定するコード

    から構成されるコンピュータで実行可能なソフトウェア・コードであって、前

    記複数の生体内作用のうちの第 1の生体内作用に関連しているとともに、前記

    第1の生体内作用に関連している生物学的諸変数間の相互作用に関連している

    一連の数学的関係を画定するためのコードと、前記複数の生体内作用のうちの

    第 2の生体内作用に関連しているとともに、前記第 2の生体内作用に関連して

    いる生物学的諸変数間の相互作用に関連している一連の数学的関係を画定す

    るためのコードとを含んで構成され、前記複数の生体内作用が当該動物関節の

    生物学的状態と関連しているソフトウェア・コード。

    特許局長は、上記の主クレームは、「プロセッサ」、「主記憶装置」、「スタティ

    ックメモリ」などの様々な「手段」を含んで構成される「コンピュータ・シス

    テム」に重点を置いているが、それらの「手段」が明細書で画定されていない

    とした。

    フローチャートの工程段階は、当該請求項の形式を「システム」+「ミーンズ」

    形式に仕立て直すように偽装され、うまく当該請求項に組み入れられている。

    明らかに、明細書には、「上記で当該コンピュータ・システムのいくつかの実

    施例を説明したが、この他の実施例も考えられる。かかるコンピュータ・シス

  • - 29 –

    テムの実施例としては、例えば、ネットワーク化されたあるいは分散型のコン

    ピュータ・システムが挙げられる。さらに、本発明の実施例として、コンピュ

    ータ・システムの力を借りずに実施されるものも考えられる。」と記されてい

    る。

    さらに、「本発明を分析モデルという形で実施した一つの例として、コンピュ

    ータ・システムの力を借りずに関節の生物学的状態を分析的に表現することが

    実現できるかもしれない」とされている。しかし、かかる分析的表現の生成は、

    コンピュータ・システム・クレームにも含まれている。

    特許局長は、当該出願を拒絶して、当該コンピュータ・システムには発明力の

    ある独創性はなく、プロセッサと記憶装置を備えた汎用コンピュータであれば

    どんなものを使っても、フローチャートにより記述される数学的過程と数学的

    アルゴリズムを活用して、主張される発明を実現することができるとした。

    例解 13: データ・ソースにより生成されるビット記号を処理するための装

    置であって、前記ビット記号が複数の入力データ・ベクトル X=X1, X2…, Xk

    から構成され、前記装置が前記データ・ソースからそれぞれ複数のビットプレ

    ーン記号から構成される複数のビットプレーンを構築するとともに、それぞれ

    のビットプレーンのビットプレーン記号を走査して2進形のビットプレーン記

    号のストリングを生成するためのビットプレーン構築・走査装置と、前記デー

    タ・ソースのラプラシアン確率分布関数の統計的特性に基づいて生成される統

    計的情報を提供するための統計的モデル・ユニットであって、前記ラプラシア

    ン確率分布関数が下記の数式により画定されるユニットと、

    前記統計的モデル・ユニットにより与えられる 2進形のビットプレーン記号の

    ストリングに基づいて、前記の 2進形のビットプレーン記号のストリングを符

    号化するための符号化ユニットと、

    下記の数式を最大限に満足する整数を決定することにより、前記複数の構築さ

    れたビットプレーンから最適なビットプレーンを決定するための第1の決定ユ

    ニットとから構成される装置。

    特許局長は、当該出願を拒絶して、これらの請求項と明細書に記載されてい

  • - 30 –

    る主張される発明は、データ、特に映像、画像あるいは音声のデータの処理装

    置に関するものであるとした。前記装置に使われるデータは、請求項 1の数学

    的方程式、すなわちラプラシアン確率分布関数の出力である。また、前記請求

    項では、最適なビットプレーンを表す整数を決定するための決定ユニットは下

    記の方程式を最大限に満足するとされている。

    これらの計算は、請求の範囲に記載の装置なるものによって行われている。そ

    の装置なるものの機能は、いくつかのパラメタを受け取るために、それらを処

    理し、そこに組み込んでいるように思われる。前記装置は、走査ユニット、符

    号化ユニット等といった、周知の方法で当該データを処理する働きをする周知

    のユニットで構成されており、統計的特性を生成する。したがって、請求項 1

    に記載の所定の方程式に基づいてあらかじめ決められているラプラシアン確

    率分布関数の所定の条件が満足された時に、これらのパラメタの処理が行われ

    ている。

    さらに、特許局長は、当該の装置なるものは、当該の請求項に記載の数学的方

    程式を解くための数学的方法に基づいており、それらの請求項はさらに様々な

    アルゴリズムに基づいているとした。当該の請求項は装置として書かれている

    が、装置とされるものに含まれている様々なユニットが当該装置の新規のハー

    ドウェア装置あるいはその組み合わせとしてそれ以上詳細に画定されていな

    いので、実際にはそれらは様々なアルゴリズムを用いた複雑な数学的方程式を

    解く数学的方法によるデータ処理にすぎないというのが特許局長の考えであ

    った。

    例解 14: 「アクセス・ネットワークの選択に適した方法、システムおよび

    移動体通信局」という名称の発明。

    移動体通信端末(10)へサービスを提供することができる、一つあるいは複数

    のアクセス・ネットワークからアクセス・ネットワークを選択する方法であっ

    て、当該端末(10)から各アクセス・ネットワークへ向かう電波品質(q)を

    決定する段階(S1)と、アクセス・ネットワークごとに少なくとも一つのノー

    ドに�