コンクリートの非破壊試験-弾性波法- 第2 部:衝 …- 2 -...

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NDIS意見受付 NDIS 2426-2 原案作成委員会 このNDISは「日本非破壊検査協会規格(NDIS)制定等に関する規則」に基づき関係者 にNDISの制定前の意見提出期間を設けるために掲載するものです。 意見は規格原案決定の際の参考として取り扱いさせていただきます。 掲載されているNDISについての意見提出は下記メールアドレスまでお願いいたします。 意見受付締切日:2014 6 30 () 意見提出先:Email [email protected] NDIS 2426-2 20XX コンクリートの非破壊試験-弾性波法- 2 部:衝撃弾性波法 Non-destructive testing of concrete - elastic wave method Part 2: Impact elastic wave method

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Page 1: コンクリートの非破壊試験-弾性波法- 第2 部:衝 …- 2 - 非破壊試験手法。 注2) 物理的な衝撃を与える方法には,ハンマ,鋼球などによる機械的な方法,励磁コイルによる磁

NDIS意見受付

NDIS 2426-2 原案作成委員会

このNDISは「日本非破壊検査協会規格(NDIS)制定等に関する規則」に基づき関係者

にNDISの制定前の意見提出期間を設けるために掲載するものです。

意見は規格原案決定の際の参考として取り扱いさせていただきます。

掲載されているNDISについての意見提出は下記メールアドレスまでお願いいたします。

意見受付締切日:2014 年 6 月 30 日(金)

意見提出先:Email [email protected]

NDIS 2426-2:20XX

コンクリートの非破壊試験-弾性波法-

第 2 部:衝撃弾性波法

Non-destructive testing of concrete - elastic wave method

Part 2: Impact elastic wave method

Page 2: コンクリートの非破壊試験-弾性波法- 第2 部:衝 …- 2 - 非破壊試験手法。 注2) 物理的な衝撃を与える方法には,ハンマ,鋼球などによる機械的な方法,励磁コイルによる磁

(1)

目 次

ページ

序文 ································································································································ - 1 -

1 適用範囲 ······················································································································ - 1 -

2 引用規格 ······················································································································ - 1 -

3 用語及び定義 ················································································································ - 1 -

4 試験技術者 ··················································································································· - 2 -

5 試験装置 ······················································································································ - 2 -

5.1 入力装置 ··················································································································· - 2 -

5.2 振動センサ ················································································································ - 2 -

5.3 計測装置 ··················································································································· - 2 -

6 試験装置の校正及び点検 ································································································· - 2 -

6.1 試験装置の校正 ·········································································································· - 2 -

6.2 試験装置の点検 ·········································································································· - 2 -

7 測定の準備 ··················································································································· - 2 -

7.1 測定箇所の選定 ·········································································································· - 2 -

7.2 測定箇所の処理 ·········································································································· - 2 -

8 弾性波伝搬速度の測定方法 ······························································································ - 2 -

8.1 伝搬時間差を利用した弾性波伝搬速度の測定 ···································································· - 2 -

8.2 多重反射の周波数特性を利用した弾性波伝搬速度の測定 ····················································· - 3 -

9 コンクリートの部材厚さの評価方法 ·················································································· - 3 -

10 新設コンクリート構造物におけるコンクリートの圧縮強度評価方法 ······································· - 3 -

11 ひび割れ深さの評価方法 ······························································································· - 3 -

12 報告 ·························································································································· - 3 -

附属書 A(規定)伝搬時間差を利用した弾性波伝搬速度の測定方法 ············································· - 4 -

附属書 B(規定)多重反射の周波数特性を利用した弾性波伝搬速度の測定方法 ······························ - 9 -

附属書 C(規定)コンクリート部材厚さの評価方法 ································································ - 13 -

附属書 D(参考)新設コンクリート構造物におけるコンクリート圧縮強度評価方法 ······················· - 19 -

附属書 E(参考)ひび割れ深さの評価方法 ············································································· - 28 -

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(2)

まえがき

この規格群は,一般社団法人日本非破壊検査協会の日本非破壊検査協会規格(NDIS)制定などに関する

規則に基づき,標準化委員会の審議を経て,NDIS 2426-2 改正原案作成委員会によって原案が作成され,

改正された。

この規格群は,著作権法で保護対象となっている著作物である。

この規格群の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願

に抵触する可能性があることに注意を喚起する。一般社団法人日本非破壊検査協会は,このような特許権,

出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願にかかわる確認について,責任は

もたない。

NDIS 2426 の規格群には,次に示す部編成がある。

NDIS 2426-1 コンクリート構造物の弾性波による試験方法-第 1 部:超音波法

NDIS 2426-2 コンクリートの非破壊試験-弾性波法-第 2 部:衝撃弾性波法

NDIS 2426-3 コンクリート構造物の弾性波による試験方法-第 3 部:打音法

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日本非破壊検査協会規格(案)

NDIS 2426-2:2014

コンクリートの非破壊試験-弾性波法-

第 2 部:衝撃弾性波法

Non-destructive testing of concrete - elastic wave method

Part 2: Impact elastic wave method

序文

この規格群は,2009 年に制定された。そのうち,第 2 部衝撃弾性波法に関しては,既に ASTM-C1383-04

で“Standard Test Method for Measuring the P-Wave Speed and the Thickness of Concrete Plates Using the

Impact-Echo Method”が制定されているが,その内容を我が国でそのまま適用するには多くの問題がある

ことから,我が国の実情を踏まえて,新たに日本非破壊検査協会規格として制定された。

衝撃弾性波法については,その後の使用実績が豊富であり,技術の進歩も著しいことから,それらに対

応するために改正した。

なお,対応国際規格は現時点では制定されていない。

1 適用範囲

この規格は,衝撃弾性波法による,コンクリートの弾性波伝搬速度を測定する方法 1),コンクリートの

部材厚さ,新設コンクリート構造物におけるコンクリートの圧縮強度及びひび割れ深さの評価を行う方法

について規定する。

注 1) コンクリートの弾性波伝搬速度を測定する方法には,“伝搬時間差を利用した弾性波伝搬速度

を測定する方法”及び“多重反射の周波数特性を利用した弾性波伝搬速度を測定する方法”が

ある。

2 引用規格

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。

JIS A 0203 コンクリート用語

JIS Z 2300 非破壊試験用語

NDIS 3418 コンクリート構造物の目視試験方法

3 用語及び定義

この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS A 0203,JIS Z 2300 及び NDIS 3418 によるほか,次による。

3.1

衝撃弾性波法

物理的な衝撃 2)で発生させた弾性波を,コンクリート表面の振動として,振動センサによって受信する

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非破壊試験手法。

注 2) 物理的な衝撃を与える方法には,ハンマ,鋼球などによる機械的な方法,励磁コイルによる磁

気的な方法などがある。

3.2

構造体コンクリート

構造体を構成するコンクリート。

4 試験技術者

この規格を適用して試験を行う技術者は,試験方法の原理及び試験装置に関する基礎知識をもち,コン

クリートに関する知識をもつ者とする。

5 試験装置

5.1 入力装置

弾性波を入力するための装置は,コンクリートに物理的な衝撃を与えることができるものとする。

5.2 振動センサ

振動センサは,入力装置によって入力された弾性波を受信するために十分な感度及び分解能をもつもの

とする。振動センサの感度特性は,測定に必要な周波数範囲において平坦なものとする。

5.3 計測装置

計測装置は,振動センサの出力信号を時間波形として表示及び記録でき,サンプリング時間間隔,サン

プリング数,測定時間長,電圧範囲,トリガなどが測定に必要な条件の範囲で設定可能で,弾性波の到達

時刻が測定できるものとする。ただし,弾性波の入力のタイミングを出力できる入力装置を使用する場合

は,弾性波の入力時刻も測定できるものとする。

6 試験装置の校正及び点検

6.1 試験装置の校正

試験技術者は,定められた期間ごと又は異常が確認された場合に,試験装置の校正を装置製造業者又は

その代理者に依頼して行う。

6.2 試験装置の点検

試験技術者は,試験開始前後に試験装置が正常に作動することを点検する。

7 測定の準備

7.1 測定箇所の選定

コンクリート表面にひび割れ,ジャンカなどがある場合は,それらを避けた箇所を選定する。

7.2 測定箇所の処理

入力箇所及び振動センサを設置する箇所は,ゴミ,ほこり,余分な水分などを取り除いておく。

コンクリート表面が非常に粗い場合は,弾性波が安定して入力でき,かつ,振動センサの接触状態が十

分となるように,表面を研磨する。また,表面に残っている緩んだ骨材などは事前に取り除いておく。

8 弾性波伝搬速度の測定方法

8.1 伝搬時間差を利用した弾性波伝搬速度の測定

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コンクリート表面において物理的な衝撃によって弾性波を入力し,2 個の振動センサを用いてコンクリ

ートを伝搬する弾性波の到達時刻を読み取る。2 個の振動センサにおける到達時刻の差が,弾性波の伝搬

時間差となる。センサ間距離を弾性波の伝搬時間差で除して弾性波伝搬速度を求める。ただし,弾性波の

入力のタイミングを出力できる入力装置を使用する場合は,この装置及び 1 個の振動センサを用いて,弾

性波の入力時刻及び到達時刻をそれぞれ読み取り,弾性波伝搬速度を算出する。この測定方法については,

附属書 A による。

8.2 多重反射の周波数特性を利用した弾性波伝搬速度の測定

1 組の平行な面をもつコンクリート部材の一方の面から物理的な衝撃によって弾性波を入力し,対向す

る面との間で生じる多重反射波を,振動センサによって入力点付近において表面の振動として計測装置に

記録する。記録した時間波形を周波数スペクトルに変換し,多重反射によってスペクトル強度が最大とな

るピークの位置から卓越周波数を読み取る。この卓越周波数と入力面から対向する面までとの距離を用い

て,弾性波伝搬速度を算出する。

なお,この測定では,弾性波の厚さ方向の多重反射を利用するため,幅及び長さが,厚さに対して十分

に大きいコンクリート部材に適用する。この測定方法については,附属書 B による。

9 コンクリートの部材厚さの評価方法

附属書 A の同一面で測定した弾性波伝搬速度及び附属書 B で算出した卓越周波数を,それぞれ用いてコ

ンクリートの部材厚さを求める。この評価方法については,附属書 C による。

10 新設コンクリート構造物におけるコンクリートの圧縮強度評価方法

附属書 A の同一面で測定した弾性波伝搬速度に基づき,圧縮強度評価式を用いて構造体コンクリートの

圧縮強度を評価する。この評価方法については,附属書 D による。

11 ひび割れ深さの評価方法

附属書Eによって,伝搬時間差を利用した評価方法又は受信波形の立上りに着目した評価方法を用いて,

コンクリートの表面から内部まで開口している単独のひび割れの深さを評価する。

12 報告

報告は,各附属書の様式による。

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附属書 A

(規定)

伝搬時間差を利用した弾性波伝搬速度の測定方法

A.1 適用範囲

この附属書は,衝撃弾性波法によって,コンクリートの弾性波伝搬時間差を利用した弾性波伝搬速度を

測定する方法について規定する。

A.2 試験装置

A.2.1 入力装置

弾性波を入力するための装置は,測定対象物の表面において,振動センサで弾性波を検出するのに十分

な振動振幅を励起できるものとする。弾性波の波長は,2 個の振動センサによる測定点の間隔よりも短い

ものがよい。ただし,弾性波の入力のタイミングを出力できる入力装置を使用する場合,弾性波の波長は,

弾性波の入力点と振動センサによる測定点との間隔よりも短いものがよい。

A.2.2 振動センサ

振動センサは,入力装置によって入力された弾性波の初動を検出するのに十分な感度及び分解能をもつ

ものとする。振動センサの感度特性は,測定に必要な周波数範囲において平坦なものとする。

なお,弾性波の入力のタイミングを出力できる入力装置を使用する場合は,一方の振動センサを省略し

てもよい。

A.2.3 計測装置

計測装置は,振動センサの出力信号を,時間波形として表示及び記録でき,サンプリング時間間隔,サ

ンプリング数,測定時間長,電圧範囲,トリガなどが測定に必要な条件の範囲で設定可能で,波形の到達

時刻が計測できるものとする。

表示画面において受信波形が観察可能で,受信波形上の時刻及び振幅値を読み取る機能をもつものがよ

い。

A.3 測定の準備

弾性波の入力点及び振動の測定点は,測定結果に影響を及ぼすと考えられるような気泡,ひび割れなど

がある箇所を避け,表面ができるだけ平滑な箇所を選定する。弾性波の入力点及び振動の測定点のコンク

リート表面が非常に粗い場合,測定に影響を及ぼす不陸,付着物,ライニングなどがある場合は,コンク

リート表面を研磨して影響物を取り除いておく。また,表面にゴミ,ほこり,余分な水分,緩んだ骨材な

どがある場合も事前に取り除いておく。

A.4 測定方法

A.4.1 試験装置の設定

試験装置の設定は,次の手順で実施する。

a) 入力装置,振動センサ及び計測装置が正常に作動することを確認し,製造業者指定の方法によって調

整を行う。

b) 測定対象物のコンクリート表面において,測定対象及び測定の目的に応じて,弾性波の入力点及び振

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動の測定点を設定する(図 A.1 参照)。同一面に 2 点の測定点及び弾性波の入力点を設ける場合は,そ

れらが一直線上になるように設定する。

なお,鉄筋が測定点の近傍にある場合は,鉄筋の影響が低減されるように,弾性波の入力点と振動

の測定点とを結ぶ直線が,鉄筋に対して斜め(45°)になるように振動センサを配置する。

c) 弾性波の到達時刻を精度よく計測するために,計測装置のサンプリング時間間隔,サンプリング数,

測定時間長,電圧範囲,トリガなどを設定する。

弾性波の

入力点

コンクリート

L2

L1

振動の

測定点1

振動の

測定点2

弾性波の

入力点

* 弾性波の入力のタイミングを出力できる入力装置を使用

コンクリート

L2

振動の

測定点2

コンクリート

弾性波の

入力点

L2L1

振動の

測定点

1 振動の

測定点

2

コンクリート

弾性波の

入力点 L2

振動の

測定点

2

* 弾性波の入力のタイミングを

出力できる入力装置を使用弾性波の

入力点

コンクリート

L2

L1

振動の

測定点

1

振動の

測定点

2

45°

a) 測定点の同一面配置 b) 測定点の対面配置

図 A.1-弾性波の入力点及び振動の測定点の配置例

(伝搬時間差を利用した弾性波伝搬速度の測定方法)

A.4.2 入力点から測定点までの距離測定

弾性波の入力点から振動の測定点までの距離(m)を有効数字 3 桁で測定し,記録する。

A.4.3 弾性波の入力及び伝搬時間差の測定

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弾性波の入力及び伝搬時間差の測定は,次の手順で実施する。

a) 入力装置を用いて,コンクリート表面から弾性波を入力する。

b) 振動の測定点 1 1)及び測定点 2 で測定した弾性波の受信波形の立上り 2)から,それぞれの測定点におけ

る弾性波の到達時刻 3)を読み取る。それを基に,測定点 2 と測定点 1 1)との伝搬時間差 Δt(s)を有効

数字 3 桁で求める

注 1) 弾性波の入力のタイミングを出力できる入力装置を使用する場合は,弾性波の入力点となる。

2) 受信波形の立上りが特定できない場合は,測定点及びその周辺の状態を確認する。

3) 弾性波の入力のタイミングを出力できる入力装置を使用する場合は,弾性波の入力時刻及び弾

性波の到達時刻となる。

A.5 計算

弾性波伝搬速度(m/s)は,式(A.1)から算出し,四捨五入によって有効数字 3 桁に丸める。

LLV 12

time

········································································ (A.1)

ここに, Vtime: 伝搬時間差を利用して測定した弾性波伝搬速度(m/s) Δt: 計測から求めた伝搬時間差(s) L1: 弾性波の入力点から振動の測定点 1 までの距離(m)

ただし,弾性波の入力のタイミングを出力できる入力

装置を使用する場合は,0 m となる。 L2: 弾性波の入力点から振動の測定点 2 までの距離(m)

A.6 報告

報告内容は,次の事項について行うことを標準とする。また,表 A.1 に参考の報告様式を示す。

a) 測定年月日及び測定場所

b) 試験技術者

c) 使用した試験装置

1) 入力装置の仕様

2) 振動センサの仕様

3) 計測装置の仕様

4) 測定条件

5) 校正及び点検状況

d) 対象物

1) 名称及び構造

2) 竣工年月日

e) 測定箇所の状況

1) 測定位置

2) 弾性波の入力点及び振動の測定点の配置

3) 表面状況(平滑さ,変状の有無及びその他必要な情報)

f) 振動センサの設置状況

1) 測定箇所の処理

2) 振動センサの配置

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g) 測定結果

1) 振動測定点の間隔

2) 伝搬時間(伝搬時間差)

3) 伝搬速度

4) 受信波形など

h) その他

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表 A.1-報告に用いる様式例(伝搬時間差を利用した弾性波伝搬速度の測定用)

年 月 日 曜日 : ~ :

校正点検有効期間: 年 月 日 ~ 年 月 日

校正点検有効期間: 年 月 日 ~ 年 月 日

校正点検有効期間: 年 月 日 ~ 年 月 日

調整方法

コンクリート

測定点No.

測定位置

測定点の配置

平滑さ

変状の有無および状況

測定面の処理方法

その他の状況(必要に応じて図示)

振動測定点の間隔

(L 2-L 1)

伝搬速度

(V time)

受信波形記録

資 格 名: 登録番号:測 定 者

測定年月日

測定場所

測定時刻

氏  名: 所  属:

備  考

試験装置の仕様・設定

測定対象物

測定結果

伝搬時間差(Δt )

入力装置

振動センサ

計測装置

名称・部材

測定箇所の状況

3

型名・材質:

種類・形式:

調整方法:

構造物名:

1 2

対比試験片の仕様:

構  造:

材  齢:種  類:

竣 工 年:

種  類:

部 材 名:

製造番号: 質量(直径):

1 :

2 :

3 :

平均:平均:

1 :

2 :

3 :

1 :

2 :

3 :

平均:

型  名:

製造番号:

製造番号: 周波数範囲(±10%):

サンプリング時間間隔: サンプリング数:

型  名:

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- 9 -

附属書 B

(規定)

多重反射の周波数特性を利用した弾性波伝搬速度の測定方法

B.1 適用範囲

この附属書は,衝撃弾性波法によって,多重反射の周波数特性を利用して弾性波伝搬速度を測定する方

法について規定する。多重反射は,弾性波を入力する面及びこれと対向する面のそれぞれが自由に振動で

き,かつ,両面が平行である場合に,これらの両面間で生じるものを対象とする。

B.2 試験装置

B.2.1 入力装置

弾性波を入力するための装置は,多重反射の信号を測定するのに十分な振動を励起できるものとする。

なお,入力される弾性波の周波数は,周波数スペクトル上の卓越周波数 1)が,多重反射による基本周波

数 2)となる範囲で設定する。測定対象のコンクリートと入力装置の条件との関係の一例を表 B.1 に示す。

注 1) 測定した振動が周波数スペクトル上で複数のピークをもつとき,スペクトル強度が最大となる

周波数を卓越周波数とする。

2) 入力面とこれに対向する面とが,それぞれ振動の腹及び両面から等距離となる中央点を節とし,

波長が入力面と対向する面との距離の 2 倍となる振動による周波数を,基本周波数とする。

表 B.1-測定対象のコンクリートと入力装置の条件との関係の一例

測定対象のコンクリート 入力装置

(鋼球の場合)

部材厚さ

(mm)

基本周波数 a)

(kHz)

直径

(mm)

入力される弾性波の周波数 b)

(kHz)

100 ~ 150 13.3 ~ 20.0 10 23.3

150 ~ 200 10.0 ~ 13.3 15 15.5

200 ~ 300 6.7 ~ 10.0 20 11.6

300 ~ 450 4.4 ~ 6.7 30 7.8

450 ~ 700 2.9 ~ 4.4 40 5.8

700 ~ 1 250 1.6 ~ 2.9 75 3.1

1 250 ~ 2 500 0.8 ~ 1.6 145 1.6

注 a) 弾性波伝搬速度が 4 000 m/s として計算

b) 既往の研究に基づく概算値

B.2.2 振動センサ

振動センサは,入力された弾性波の多重反射を,入力面で振動として受信するのに十分な感度をもつも

のとする。振動センサの感度特性は,測定する周波数範囲において平坦なものとする。

B.2.3 計測装置

計測装置は,振動センサによって測定した振動を時間波形として受信,表示及び記録でき,サンプリン

グ時間間隔,サンプリング数,測定時間長,電圧範囲,トリガなどの設定機能をもつものがよい。記録し

た時間波形を周波数領域に変換し,表示できる機能をもつものとする。

B.3 測定の準備

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- 10 -

弾性波の入力点及び振動の測定点は,測定結果に影響を及ぼすと考えられるような気泡,ひび割れなど

がある箇所を避け,表面ができるだけ平滑な箇所を選定する。弾性波の入力点及び振動の測定点のコンク

リート表面が非常に粗い場合,及び測定に影響を及ぼす不陸,付着物,ライニングなどがある場合は,コ

ンクリート表面を研磨して影響物を取り除いておく。また,表面にゴミ,ほこり,余分な水分,緩んだ骨

材などがある場合も事前に取り除いておく。

B.4 測定方法

B.4.1 試験装置の設定

試験装置の設定は,次の手順で実施する。

a) 入力装置,振動センサ及び計測装置が正常に作動することを確認し,製造業者指定の方法によって調

整を行う。

b) 測定対象物のコンクリート表面において,測定対象及び測定の目的に応じて,弾性波の入力点及び振

動の測定点を設定する(図 B.1 参照)。

コンクリート

弾性波の

入力点

振動の

測定点 入力面

対向する面

図 B.1―弾性波の入力点及び振動の測定点の配置例

(多重反射の周波数特性を利用した弾性波伝搬速度の測定方法)

c) 弾性波の多重反射による基本周波数を精度よく計測するために,計測装置のサンプリング時間間隔,

サンプリング数,測定時間長,電圧範囲,トリガなどを適切に設定する。また,周波数の最小読み値

が計測する目的において適切となるように,計測装置の各設定を調整する。

B.4.2 入力面から対向する面までの距離の測定

入力面から対向する面までの距離(m)を有効数字 3 桁で測定し,記録する。

B.4.3 弾性波の入力及び基本周波数の決定

弾性波の入力及び基本周波数の決定は,次の手順で実施する。

a) 入力装置を用いてコンクリート表面から弾性波を入力し,計測装置によって時間波形及びその周波数

スペクトルを求める。

b) 周波数スペクトルにおける卓越周波数から基本周波数 f0(Hz)を決定し,これを有効数字 3 桁で求め

る。

B.5 計算

弾性波伝搬速度(m/s)は,式(B.1)から算出し,四捨五入によって有効数字 3 桁に丸める。

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- 11 -

0fre 2 fLV ·········································································· (B.1)

ここに, Vfre: 多重反射の周波数特性を利用して測定した弾性波伝搬速

度(m/s) L: 入力面から対向する面までの距離(m) f0: 基本周波数(Hz)

B.6 報告

報告内容は,次の事項について行うことを標準とする。また,表 B.2 に参考の報告様式を示す。

a) 測定年月日及び測定場所

b) 試験技術者

c) 使用した試験装置

1) 入力装置の仕様

2) 振動センサの仕様

3) 計測装置の仕様

4) 測定条件

5) 校正及び点検状況

d) 対象物

1) 名称及び構造

2) 竣工年月日

e) 測定箇所の状況

1) 測定位置

2) 弾性波の入力点及び振動の測定点の配置

3) 表面状況(平滑さ,変状の有無及びその他必要な情報)

f) 振動センサの設置状況

1) 測定箇所の処理

2)振動センサの配置

g) 測定結果

1) 入力面から対向する面までの距離

2) 基本周波数

3) 伝搬速度

4) 受信波形など

h) その他

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表 B.2-報告に用いる様式例(多重反射の周波数特性を利用した弾性波伝搬速度の測定用)

年 月 日 曜日 : ~ :

校正点検有効期間: 年 月 日 ~ 年 月 日

校正点検有効期間: 年 月 日 ~ 年 月 日

校正点検有効期間: 年 月 日 ~ 年 月 日

調整方法

コンクリート

測定点No.

測定位置

測定点の配置

平滑さ

変状の有無 及び状況

測定面の処理方法

その他の状況(必要に応じて図示)

入力面から対抗する面までの距離( )L

伝搬速度

(V fre )

受信波形記録

資 格 名: 登録番号:測 定 者

測定年月日

測定場所

測定時刻

氏  名: 所  属:

備  考

試験装置の仕様・設定

測定対象物

測定結果

基本周波数(f0 )

入力装置

振動センサ

計測装置

名称・部材

測定箇所の状況

3

型名・材質:

種類・形式:

調整方法:

構造物名:

1 2

対比試験片の仕様:

構  造:

材  齢:種  類:

竣 工 年:

種  類:

部 材 名:

製造番号: 質量(直径):

1 :

2 :

3 :

平均:平均:

1 :

2 :

3 :

1 :

2 :

3 :

平均:

型  名:

製造番号:

製造番号: 周波数範囲(±10%):

サンプリング時間間隔: サンプリング数:

型  名:

周波数分解能:

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附属書 C

(規定)

コンクリート部材厚さの評価方法

C.1 適用範囲

この附属書は,弾性波伝搬速度及び基本周波数 1)の測定結果からコンクリートの部材厚さを評価する方

法について規定する 2)。弾性波を入力する面及びこれと対向する面のそれぞれが自由に振動でき,かつ,

両面が平行であるコンクリートを対象としている。

注 1) 入力面とこれに対向する面とが,それぞれ振動の腹及び両面から等距離となる中央点を節とし,

波長が入力面と対向する面との距離の 2 倍となる振動による周波数を,基本周波数とする。

2) コンクリート表層部と内部の条件との違いによって表層部付近での弾性波伝搬速度が低下して

いる場合,及びコンクリートの部材厚さの測定位置内部に空洞,はく離,ジャンカなどの変状

部がある場合は,これらの影響が含まれた評価結果が得られることに注意する必要がある。

C.2 試験装置

C.2.1 入力装置

C.2.1.1 弾性波伝搬速度の測定に用いる入力装置

弾性波伝搬速度の測定に用いる入力装置は,測定対象物の表面において,振動センサで弾性波を検出す

るのに十分な振動振幅を励起できるものとする。弾性波の波長は,2 個の振動センサによる測定点の間隔

よりも短いものがよい。弾性波の入力のタイミングを出力できる入力装置を使用する場合,弾性波の波長

は,弾性波の入力点と振動センサによる測定点との間隔よりも短いものがよい。

C.2.1.2 基本周波数の測定に用いる入力装置

基本周波数の測定に用いる入力装置は,入力される弾性波の周波数が異なる複数の入力装置とする。

なお,測定対象のコンクリートの基本周波数を測定できる入力装置が含まれるように選定する。測定対

象のコンクリート及び使用が推奨される入力装置の一例を表 C.1 に示す。

表 C.1-測定対象のコンクリート及び使用が推奨される入力装置の一例

測定対象のコンクリート 推奨される入力装置

(鋼球の場合)

部材厚さ

(mm)

基本周波数 a)

(kHz)

鋼球の直径 b)

(mm)

100 20.0 10 mm 以下

150 13.3 10 ~ 15

200 10.0 15 ~ 20

300 6.7 20 ~ 30

450 4.4 30 ~ 40

700 2.9 40 ~ 75

1 250 1.6 75 ~ 145

2 500 0.8 145 mm 以上

注 a) 弾性波伝搬速度が 4 000 m/s として計算

b) 既往の研究に基づく一例

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- 14 -

C.2.2 振動センサ

C.2.2.1 弾性波伝搬速度の測定に用いる振動センサ

弾性波伝搬速度の測定に用いる振動センサは,入力装置によって入力された弾性波の初動を検出するの

に十分な感度及び分解能をもつものとする。振動センサの感度特性は,測定に必要な周波数範囲において

平坦なものとする。

なお,弾性波の入力のタイミングを出力できる入力装置を使用する場合は,一方の振動センサを省略し

てもよい。

C.2.2.2 基本周波数の測定に用いる振動センサ

基本周波数の測定に用いる振動センサは,入力された弾性波の多重反射を,入力面で振動として受信す

るのに十分な感度をもつものとする。振動センサの感度特性は,測定する周波数範囲において平坦なもの

とする。

C.2.3 計測装置

C.2.3.1 弾性波伝搬速度の測定に用いる計測装置

弾性波伝搬速度の測定に用いる計測装置は,振動センサの出力信号を時間波形として表示及び記録でき,

サンプリング時間間隔,サンプリング数,測定時間長,電圧範囲,トリガなどが測定に必要な条件の範囲

で設定可能で,波形の到達時刻が計測できるものとする。

表示画面において受信波形が観察可能で,受信波形上の時刻及び振幅値を読み取る機能をもつものがよ

い。

C.2.3.2 基本周波数の測定に用いる計測装置

基本周波数の測定に用いる計測装置は,振動センサによって測定した振動を時間波形として受信,表示

及び記録でき,サンプリング時間間隔,測定時間長,電圧範囲,トリガなどの設定機能をもつものがよい。

記録した時間波形を周波数領域に変換し,表示できる機能をもつものとする。

C.3 測定の基準

弾性波の入力点及び振動の測定点は,測定結果に影響を及ぼすと考えられるような気泡,ひび割れなど

がある箇所を避け,表面ができるだけ平滑な箇所を選定する。弾性波の入力点及び振動の測定点のコンク

リート表面が非常に粗い場合,及び 測定に影響を及ぼす不陸,付着物,ライニングなどがある場合は,

コンクリート表面を研磨して影響物を取り除いておく。また,表面にゴミ,ほこり,余分な水分,緩んだ

骨材などがある場合も事前に取り除いておく。

C.4 測定方法

C.4.1 弾性波伝搬速度の測定

C.4.1.1 弾性波伝搬速度測定方法の選定

弾性波伝搬速度の測定は,C.4.1.2~C.4.1.5 によって実施する。ほかの方法(超音波法など)によって測

定してはならない。

C.4.1.2 計測装置の設置

計測装置の設置は,次の手順で実施する。

a) 入力装置,振動センサ及び計測装置が正常に作動することを確認し,製造業者指定の方法によって調

整を行う。

b) 測定対象物のコンクリートの同一面に,弾性波の入力点及び測定点を,それらが一直線上になるよう

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- 15 -

に設定する[図 C.1 a)及び図 C.1 b)参照]。

なお,鉄筋が測定点の近傍にある場合は,鉄筋の影響が低減されるように,弾性波の入力箇所と振

動の測定点とを結ぶ直線が,鉄筋に対して斜め(45°)になるように振動センサを配置する[図 C.1 c)

参照]。

c) 弾性波の到達時刻を精度よく計測するために,計測装置のサンプリング時間間隔,サンプリング数,

測定時間長,電圧範囲,トリガなどを設定する。

C.4.1.3 入力点から測定点まで距離測定

弾性波の入力点から振動の測定点までの距離(m)を有効数字 3 桁で測定し,記録する。

C.4.1.4 弾性波の入力及び伝搬時間差の測定

弾性波の入力及び伝搬時間差の測定は,次の手順で実施する。

a) 入力装置を用いて,コンクリート表面から弾性波を入力する。

b) 振動の測定点 1 3)及び測定点 2 で測定した弾性波の受信波形の立上り 4)から,それぞれの測定点におけ

る弾性波の到達時刻 5)を読み取る。それを基に,測定点 2 と測定点 1 3)との伝搬時間差 Δt(s)を有効

数字 3 桁で求める

注 3) 弾性波の入力のタイミングを出力できる入力装置を使用する場合は,弾性波の入力位置となる。

4) 受信波形の立上りが特定できない場合は,入力点及び測定点のコンクリートの状態を確認する。

入力装置及び振動センサとコンクリート表面とがそれぞれ接触しているかも確認する。

5) 弾性波の入力のタイミングを出力できる入力装置を使用する場合は,弾性波の入力時刻及び弾性

波の到達時刻となる。

C.4.1.5 弾性波伝搬速度の計算

弾性波伝搬速度(m/s)は,式(C.1)から算出し,四捨五入によって有効数字 3 桁に丸める。

t

12

Δ

LLV

- ··········································································· (C.1)

ここに, V: 伝搬時間差を利用して測定した弾性波伝搬速度(m/s) Δt: 計測から求めた伝搬時間差(s) L1: 弾性波の入力位置から振動の測定点 1 までの距離(m)

ただし,弾性波の入力のタイミングを出力できる入力装置を

使用する場合は,0 m となる。 L2: 弾性波の入力位置から振動の測定点 2 までの距離(m)

弾性波の入力点

コンクリート

振動の

測定点

1

振動の

測定点

2

a) 2 点の測定点及び入力点による測定

図 C.1-弾性波伝搬速度の測定での弾性波の入力点及び振動の測定点の配置例

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弾性波の

入力点

* 弾性波の入力のタイミングを出力できる入力装置を使用

コンクリート 振動の測定点

2

弾性波の

入力点

コンクリート

振動の測定点

1

振動の測定点

2

45°

b) 振動センサ付きの入力装置を用いた測定 c) 鉄筋に対する弾性波の入力点及び測定点の設定位置

図 C.1―弾性波伝搬速度の測定での弾性波の入力点及び振動の測定点の配置例(続き)

C.4.2 基本周波数の測定

C.4.2.1 計測装置の設置

計測装置の設置は,次の手順で実施する。

a) 入力装置,振動センサ及び計測装置が正常に作動することを確認し,製造業者指定の方法によって調

整を行う。

b) 測定対象物のコンクリート表面において,弾性波の入力点及び振動の測定点を設定する(図 C.2 参照)。

c) 基本周波数を精度よく計測するために,計測装置のサンプリング時間間隔,測定時間長,電圧範囲,

トリガなどを適切に設定する。また,周波数の最小読み値が計測する目的において適切となるように,

計測装置の各設定を調整する。

C.4.2.2 弾性波の入力及び基本周波数の測定

基本周波数の測定は,次の手順で実施する。

a) 入力装置を用いてコンクリート表面から弾性波を入力し,計測装置によって時間領域の波形を得て,

その周波数スペクトルを得る。

b) 入力される弾性波の周波数が異なる複数の入力装置で a)の測定を行う。

c) 複数の入力装置で得られた複数の周波数スペクトルにおいて,共通して卓越周波数 6)となる周波数を

基本周波数 f0(Hz)とし,有効数字 3 桁で読む。

注 6) 測定した振動が複数の周波数成分をもつとき,スペクトル強度が最も大きくなる周波数を卓

越周波数とする。

コンクリート

弾性波の入力点

振動の

測定点 表面

境界面

図 C.2―基本周波数の測定での弾性波の入力点及び振動の測定点の配置例

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C.5 計算

部材厚さ(m)は,式(C.2)から算出し,四捨五入によって有効数字 3 桁に丸める。

02 f

VL ··············································································· (C.2)

ここに, L: 部材厚さ(m) V: 弾性波伝搬速度(m/s) f0: 基本周波数(Hz)

C.6 報告

報告内容は,次の事項について行うことを標準とする。また,表 C.2 に報告様式の例を示す。

a) 測定年月日,測定場所及び気象条件

b) 試験技術者及び保有資格

c) 使用した試験装置

1) 計測装置の仕様

2) 入力装置の仕様

3) 振動センサの仕様

4) 波形計測条件(サンプリング間隔及びサンプリング数)

5) 周波数計測条件

6) 点検状況

d) 対象物

1) 名称及び構造

2) 使用コンクリート

e) 測定箇所の状況

1) 測定位置

2) 表面状況(平滑さ,変状の有無及びその他必要な情報)

f) 測定結果

1) 伝搬速度

2) 基本周波数

3) 部材厚さ

g) その他

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- 18 -

表 C.2-報告に用いる様式例(コンクリートの部材厚さの評価方法用)

測定時刻

波形計測

周波数解析

名称・構造

コンクリート

No. 1 3

位 置

伝搬速度(V)

基本周波数(f 0)

部材厚さ(L)

入力装置 種  類:     材  質:     質 量(直径) :

種  類:     材  質:     質 量(直径) :

その他

表面状況 平滑さ 変状の有無 その他特記事項

その他の状況(図示)

測定結果

対象物名 称:            構 造 :

材 齢:            配(調)合 :

測定箇所

2

点検状況前回点検年月日:    年   月   日 点検者 :

点検内容:

サンプリング間隔:         サンプリング数:          .

周波数スペクトル周波数間隔:

測定者資格 資格名:          登録番号 :

測定装置

計測装置製造会社:         形  式 :

製造番号:

種  類:     材  質:     質 量(直径) :

振動センサ製造会社:     形  式:     製造番号 :

周波数範囲(±10%):

天候・気温など 天 候:    気 温:  ℃

測 定 者 氏 名:           所 属 :

測 定 年 月 日     年   月   日  曜日     :    ~   :

測定場所      都道府県       市町 村

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- 19 -

附属書 D

(参考)

新設コンクリート構造物におけるコンクリート圧縮強度評価方法

序文

この附属書は,弾性波伝搬速度に基づくコンクリートの圧縮強度を評価する方法について参考のために

記載するもので,規定の一部ではない。

D.1 適用範囲

この附属書は,新設コンクリート構造物 1)における構造体コンクリート 2)の圧縮強度を,衝撃弾性波法

による弾性波伝搬速度の測定結果に基づき,圧縮強度評価式を用いて評価する方法について規定する。

適用できる範囲は,圧縮強度評価式の作成時に測定した円柱供試体の弾性波伝搬速度の範囲,かつ,60

N/mm2を上限とする。

注 1) 既設コンクリート構造物においても,適切な圧縮強度評価式が存在する場合には,適用できる。

2) 構造体コンクリートとは,構造体を構成するコンクリートのことであり,NDIS 3424 に準ずる

ものである。

D.2 引用規格

次にあげる規格は,この評価方法に引用されることによって,この評価方法の一部を構成する。これら

の引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。

NDIS 3424 ボス供試体の作製方法及び試験方法

JIS A 1108 コンクリートの圧縮強度試験方法

JIS A 1132 コンクリート強度試験用供試体の作り方

D.3 用語及び定義

圧縮強度評価式

弾性波伝搬速度から圧縮強度を評価する式。

D.4 圧縮強度評価方法の手順

図 D.1 に構造体コンクリートの圧縮強度評価方法の手順を示す。圧縮強度評価式の作成及び構造体コン

クリートの弾性波伝搬速度の測定から構成されている。

圧縮強度評価式の作成は,図 D.1 の右側の手順のように,試験に必要な数の円柱供試体を作製し,予定

した材齢時に円柱供試体の弾性波伝搬速度の測定及び圧縮強度試験を行い,圧縮強度評価式を決定する。

構造体コンクリートの弾性波伝搬速度の測定を行い,圧縮強度評価式を用いて構造体コンクリートの圧

縮強度を算定する。

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- 20 -

D.5.3 円柱供試体の作製

スタート

D.8 報 告

D.6 構造体コンクリートの弾性波伝搬速度の測定

D.7 構造体コンクリートの圧縮強度の算定

エンド

D.5 圧縮強度評価式の作成

D.5.4 円柱供試体の弾性波伝搬速度の測定

D.5.5 円柱供試体の圧縮強度試験

D.5.6 圧縮強度評価式の決定

図 D.1―圧縮強度評価方法の手順

D.5 圧縮強度評価式の作成

D.5.1 圧縮強度評価式の作成方法

圧縮強度評価式の関数形を,式(D.1) 3)に示す。 α

c VF ············································································ (D.1)

ここに, Fc: 圧縮強度 V: 弾性波伝搬速度 α,β: 回帰係数。実験によって定める。

注 3) 式(D.1)の場合,αは 4~6 となるが,圧縮強度の範囲を限定した場合,二次関数式で表すことも

できる。

強度評価に用いる圧縮強度評価式は,調査対象コンクリートと使用材料,配(調)合などが同じコンク

リートを使用して作製した円柱供試体の弾性波伝搬速度及び圧縮強度を材齢の進行に応じて測定し,その

相関関係に式(D.1)を回帰させることによって作成する。圧縮強度評価式は,コンクリートの使用材料,配

(調)合などが異なるごとに作成する。

D.5.2 試験材齢

円柱供試体における弾性波伝搬速度の測定及び圧縮強度試験を実施する材齢は,3~4 材齢以上 4)とする。

注 4) 試験材齢としては,例えば,普通ポルトランドセメント又は高炉セメント B 種の場合は,7 日,

14 日,28 日及び 56 日又は 91 日に,早強ポルトランドセメントの場合は,3 日,7 日,28 日及

び 56 日又は 91 日のように,強度発現の初期段階からほぼ収束する段階までを予定することが

望ましい。

D.5.3 円柱供試体の作製

圧縮強度評価式を作成するために,事前に試験に用いる円柱供試体を作製する。供試体の数は,1 回の

試験に用いる供試体個数を 3 個とし,合計で(試験材齢数×3)個とする。円柱供試体は,縦横比を 2 のも

のとし,JIS A 1132 に準じて調査対象コンクリートの種類ごとに作製して水中養生又は封かん養生を行う。

D.5.4 円柱供試体の弾性波伝搬速度の測定

D.5.4.1 測定方法

円柱供試体の弾性波伝搬速度の測定は,附属書 B によるほか,D.5.4.2~D.5.4.5 による。

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- 21 -

D.5.4.2 試験装置

D.5.4.2.1 入力装置

弾性波を入力するための装置は,多重反射の信号を測定するのに十分な振動を励起できるものとする。

なお,入力する弾性波の波長は,周波数スペクトル上の卓越周波数 5)が,多重反射による基本周波数 6)

となる範囲で設定 7)する。

注 5) 測定した振動が周波数スペクトル上で複数のピークをもつとき,スペクトル強度が最大となる

周波数を卓越周波数とする。

6) 円柱供試体を縦置きにした場合,上下面がそれぞれ振動の腹及び上下面から等距離となる中央

点を節とし,波長が円柱供試体の長さの 2 倍となる振動による周波数を基本周波数とする。

7) 入力装置として鋼球を用いる場合,円柱供試体の長さが150~200 mmの場合では直径は15 mm,

200~300 mm の場合では 20 mm のものが適切である。

D.5.4.2.2 振動センサ

振動センサは,入力された弾性波の多重反射を入力面で振動として受信するのに十分な感度をもつもの

とする。振動センサの感度特性は,測定する周波数範囲において平坦なものとする。

D.5.4.2.3 計測装置

計測装置は,振動センサによって測定した振動を時間波形として受信,表示及び記録でき,サンプリン

グ時間間隔,サンプリング数,測定時間長,電圧範囲,トリガなどの設定機能をもつものがよい。記録し

た時間波形を周波数領域に変換し,表示できる機能をもつものとする。

D.5.4.2.4 試験装置の準備

入力装置,振動センサ及び計測装置が正常に作動することを確認し,製造業者指定の方法によって調整

を行う。

D.5.4.3 測定の準備

D.5.4.3.1 円柱供試体の整形

予定した試験材齢において,コンクリートの使用材料,配(調)合などが異なるごとに円柱供試体を 3

個ずつ用意する。円柱供試体の端面は,圧縮強度試験に必要とされる,キャッピンク又は研磨などの整形

処理を施す。

D.5.4.3.2 円柱供試体形状などの計測

円柱供試体の長さ,直径及び質量を有効数字 3 桁で測定及び記録する。

D.5.4.4 弾性波伝搬速度の測定

D.5.4.4.1 試験装置の設定

試験装置の設定は,次の手順で実施する。

a) 円柱供試体の一方の端面(キャッピングを施した場合は下面。)において,弾性波の入力点及び振動の

測定点を設定する。

b) 弾性波の多重反射による基本周波数を精度よく計測するために,計測装置のサンプリング時間間隔,

サンプリング数,測定時間長,電圧範囲,トリガなどを適切に設定する。また,周波数の最小読み値

が計測する目的において適切となるように,計測装置の各設定を調整する。

D.5.4.4.2 弾性波の入力及び基本周波数の決定

弾性波の入力及び基本周波数の決定は,次の手順で実施する。

a) 入力装置を用いて円柱供試体の一方の端面から弾性波を入力し,計測装置によって時間波形及びその

周波数スペクトルを求める。

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- 22 -

b) 周波数スペクトルにおける卓越周波数から基本周波数 f0(Hz)を決定し,これを有効数字 3 桁で求め

る。

D.5.4.5 計算

弾性波伝搬速度(m/s)は,式(D.2)から算出し,四捨五入によって有効数字 3 桁に丸める。

02 fLV ············································································ (D.2)

ここに, V: 多重反射の周波数特性を利用して測定した弾性波伝搬速度

(m/s) L: 円柱供試体の長さ(多重反射面間距離)(m) f0: 基本周波数(Hz)

D.5.5 円柱供試体の圧縮強度試験

円柱供試体の圧縮強度試験は,JIS A 1108 による。

D.5.6 圧縮強度評価式の決定

円柱供試体の弾性波伝搬速度と圧縮強度との相関関係に式(D.1)を回帰させ,圧縮強度評価式の係数を決

定する。

D.6 構造体コンクリートの弾性波伝搬速度の測定

D.6.1 測定方法

構造体コンクリートの弾性波伝搬速度の測定は,附属書 A によるほか,D.6.2~D.6.5 による。

D.6.2 試験装置

D.6.2.1 入力装置

弾性波を入力するための装置は,測定対象物の表面において,振動センサで弾性波を検出するのに十分

な振動振幅を励起できるものとする。弾性波の波長は,2 個の振動センサによる測定点の間隔よりも短い

ものがよい。弾性波の入力のタイミングを出力できる入力装置を使用する場合,弾性波の波長は,弾性波

の入力点と振動センサによる測定点との間隔よりも短いものがよい。

D.6.2.2 振動センサ

振動センサは,入力装置によって入力された弾性波の初動を検出するのに十分な感度及び分解能をもつ

ものとする。振動センサの感度特性は,測定に必要な周波数範囲において平坦なものとする。

なお,弾性波の入力のタイミングを出力できる入力装置を使用する場合は,一方の振動センサを省略し

てもよい。

D.6.2.3 計測装置

計測装置は,振動センサの出力信号を,時間波形として表示及び記録でき,サンプリング時間間隔,サ

ンプリング数,測定時間長,電圧範囲,トリガなどが測定に必要な条件の範囲で設定可能で,波形の到達

時刻が計測できるものとする。

表示画面において受信波形が観察可能で,受信波形上の時刻及び振幅値を読み取る機能をもつものがよ

い。

D.6.2.4 試験装置の準備

入力装置,振動センサ及び計測装置が正常に作動することを確認し,製造業者指定の方法によって調整

を行う。

D.6.3 測定の準備

弾性波の入力点及び振動の測定点は,測定結果に影響を及ぼすと考えられるような気泡,ひび割れなど

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- 23 -

がある箇所を避け,表面ができるだけ平滑な箇所を選定する。弾性波の入力点及び振動の測定点のコンク

リート表面が非常に粗い場合,及び測定に影響を及ぼす不陸,付着物,ライニングなどがある場合は,コ

ンクリート表面を研磨して影響物を取り除いておく。また,表面にゴミ,ほこり,余分な水分,緩んだ骨

材などがある場合も事前に取り除いておく。

D.6.4 構造体コンクリートの測定

D.6.4.1 試験装置の設定

試験装置の設定は,次の手順で実施する。

a) 測定対象物のコンクリート表面において,同一面に 2 点の測定点及び弾性波の入力点を設け,それら

が一直線上になるように設定する(図 D.2 参照)。

なお,鉄筋が測定点の近傍にある場合は,鉄筋の影響が低減されるように,弾性波の入力点と振動

の測定点とを結ぶ直線が,鉄筋に対して斜め(45°)になるように振動センサを配置する。

b) 弾性波の到達時刻を精度よく計測するために,計測装置のサンプリング時間間隔,サンプリング数,

測定時間長,電圧範囲,トリガなどを設定する。

弾性波の入力点

コンクリート

振動の

測定点1

振動の

測定点2

弾性波の入力点

コンクリート

45°

振動の測定点

1

振動の測定点

2

弾性波の

入力点

* 弾性波の入力のタイミングを出力できる入力装置を使用

コンクリート 振動の

測定点2

図 D.2―弾性波の入力点及び振動の測定点の配置例

D.6.4.2 入力点から測定点までの距離測定

弾性波の入力点から振動の測定点までの距離(m)を有効数字 3 桁で測定し,記録する。

D.6.4.3 弾性波の入力及び伝搬時間差の測定

弾性波の入力及び伝搬時間差の測定は,次の手順で実施する。

a) 入力装置を用いて,コンクリート表面から弾性波を入力する。

b) 振動の測定点 1 8)及び測定点 2 で測定した弾性波の受信波形の立上り 9)から,それぞれの測定点におけ

る弾性波の到達時刻 10)を読み取る。それを基に,測定点 2 と測定点 1 8)との伝搬時間差 Δt(s)を有効

数字 3 桁で求める。

注 8) 弾性波の入力のタイミングを出力できる入力装置を使用する場合は,弾性波の入力点となる。

9) 受信波形の立上りが特定できない場合は,測定点及びその周辺の状態を確認する。

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- 24 -

10) 弾性波の入力のタイミングを出力できる入力装置を使用する場合は,弾性波の入力時刻及び

弾性波の到達時刻となる。

D.6.5 計算

弾性波伝搬速度(m/s)は,式(D.3)から算出し,四捨五入によって有効数字 3 桁に丸める。

Δt

LLV 12

time

········································································ (D.3)

ここに, Vtime: 伝搬時間差を利用して測定した弾性波伝搬速度(m/s) Δt: 計測から求めた伝搬時間差(s) L1: 弾性波の入力点から振動の測定点 1 までの距離(m)

ただし,弾性波の入力のタイミングを出力できる入力装置を

使用する場合は,0 m となる。 L2: 弾性波の入力点から振動の測定点 2 までの距離(m)

D.7 構造体コンクリートの圧縮強度の算定

構造体コンクリートの圧縮強度(N/mm2)は,測定から求めた構造体コンクリートの弾性波伝搬速度を

圧縮強度評価式に代入することによって算定する。計算結果は,四捨五入によって有効数字 3 桁に丸める。

D.8 報告

報告は,構造体コンクリートの圧縮強度評価及び圧縮強度評価式の作成について行うことを標準とする。

D.8.1 構造体コンクリートの圧縮強度評価

構造体コンクリートの圧縮強度評価に関する報告内容は,次の事項について行うことを標準とする。ま

た,表 D.1 に参考の報告様式を示す。

a) 測定年月日及び測定場所

b) 試験技術者

c) 使用した試験装置

1) 入力装置の仕様

2) 振動センサの仕様

3) 計測装置の仕様

4) 測定条件

5) 校正及び点検状況

d) 対象物

1) 名称及び構造

2) 竣工年月日

e) 測定箇所の状況

1) 測定位置

2) 弾性波の入力点及び振動の測定点の配置

3) 表面状況(平滑さ,変状の有無及びその他必要な情報)

f) 振動センサの設置状況

1) 測定箇所の処理

2) 振動センサの配置

g) 測定結果

1) 振動測定位置の間隔

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2) 伝搬時間

3) 伝搬速度

4) 受信波など

h) 構造体コンクリートの圧縮強度

i) その他

D.8.2 圧縮強度評価式の作成

圧縮強度評価式の作成に関する報告内容は,次の事項について行うことを標準とする。また,表 D.2 に

参考の報告様式を示す。

a) 円柱供試体の作製年月日,作製場所,養生方法,呼び強度及びコンクリートの配(調)合

b) 試験技術者

c) 使用した試験装置

1) 入力装置の仕様

2) 振動センサの仕様

3) 計測装置の仕様

4) 校正及び点検状況

5) 圧縮強度試験機の仕様

d) 円柱供試体の試験

1) 試験材齢及び試験年月日

2) 円柱供試体の整形方法(研磨,キャッピングなど)

3) 円柱供試体の諸元(長さ,直径,質量及び単位体積質量)

4) 弾性波の入力点及び振動の測定点

5) 1 次共振周波数

6) 弾性波伝搬速度及び圧縮強度

e) 圧縮強度評価式

1) 圧縮強度評価式の関数形

2) 圧縮強度評価式の実験定数

f) その他

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表 D.1-報告に用いる様式例(構造体コンクリートの圧縮強度評価用)

年 月 日 曜日 : ~ :

校正点検有効期間: 年 月 日 ~ 年 月 日

校正点検有効期間: 年 月 日 ~ 年 月 日

調整方法

コンクリート

測定点No.

測定位置

測定点の配置

平滑さ

変状の有無および状況

測定面の処理方法

その他の状況(必要に応じて図示)

振動測定位置の間隔

(L 2-L 1 ; mm )

伝搬速度(Vtime ; m/s )

圧縮強度

(F c ; N/mm2)

受信波記録

対比試験片の仕様:

サンプリング時間間隔:

資 格 名: 登録番号測 定 者

製造番号:

製造番号: 周波数範囲(±10%):

サンプリング数:

型  名:

測定年月日

測定場所

測定時刻

氏  名: 所  属

備  考

試験装置の仕様・設定

測定対象物

測定結果

伝搬時間差(Δt ; μsec.)

入力装置

振動センサ

計測装置

名称・部材

測定箇所の状況

3

材  質:

種類・形式:

調整方法:

構造物名:

1 2

構  造:

材  齢種  類:

竣 工 年

種  類:

部 材 名

製造番号: 質量(直径):

型  名

1 :

2 :

3 :

平均:平均:

1 :

2 :

3 :

1 :

2 :

3 :

平均:

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表 D.2-報告に用いる様式例(圧縮強度評価式の作成用)

年 月 日 曜日 : ~ :

校正点検有効期間: 年 月 日 ~ 年 月 日

校正点検有効期間: 年 月 日 ~ 年 月 日

調整方法

検定有効期間: 年 月 日 ~ 年 月 日

試験材齢・試験日 年 月 日 曜日

整形方法

供試体No.

長さ(mm)

直径(mm)

質量(g)

単位体積質量(g/cm3)

弾性波の入力位置及び振動の測定点(必要に応じて図

示)

伝搬速度(m/s)

圧縮強度(N/mm2)

関数形

実験定数

円柱供試体の試験

試験日:

整形方法:

1 :

2 :

3 :

平均:平均:

1 :

2 :

3 :

1 :

2 :

種類・形式: 型  名:

製造番号:

資 格 名:

対比試験片の仕様:

製造番号:

製造番号: 周波数範囲(±10%):

サンプリング数:

登録番号:

3 :

平均:

3

材  質:

質量(直径):

種類・形式:

調整方法:

試験材齢:

1 2

種  類:

型  名:

型  名:

製造番号:

サンプリング時間間隔:

周波数分解能

備  考

基本周波数(Hz)

入力装置

振動センサ

計測装置

圧縮強度試験機

試験装置の

仕様・設定

圧縮強度評価式

円柱供試体作製年月日

作製場所

作製時刻

氏  名: 所  属:

コンクリートの配(調)合

養生方法

呼び強度(N/mm2)

試験技術者

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附属書 E

(参考)

ひび割れ深さの評価方法

序文

この附属書は,コンクリート表面に開口した単独のひび割れ深さの評価方法について参考のため記載す

るものであって,規定の一部ではない。

E.1 適用範囲

この附属書は,ひび割れ先端からの回折波によるひび割れ深さの評価方法について規定する。

対象とするひび割れは,測定対象のコンクリートの表面に開口し,内部に進展した 1)単独のひび割れ 2)

である。また,表面で観測されるひび割れの長さは,想定されるひび割れ深さと比較して相当に長く,か

つ,部材を貫通していないことを前提とする。

この附属書では,初動波形に着目したひび割れ深さの評価方法及び時間差を利用したひび割れ深さの評

価方法の二つの方法について記載する。

注 1) ひび割れ内は,弾性波を伝搬させる媒体で満たされておらず,かつ,途中で接触していないこ

とを想定している。

2) 弾性波の入力点と振動の測定点との間に複数のひび割れがある場合は適用対象としていない。

E.2 用語の定義

E.2.1 回折波

弾性波の入力点を出発し,ひび割れ先端部を回り込んで測定点に至る経路を辿る波動。また,その経路

を通過したと想定される波動。

E.2.2 初動波形

弾性波を入力したとき,振動の測定点で観測された受信波形において,弾性波の到達に伴う最初の振幅

変化部分。

E.3 試験装置

E.3.1 入力装置

弾性波を入力するための装置は,測定対象物の表面において,振動センサで弾性波を検出するのに十分

な振動を励起できるものとする。ただし,入力信号の発生時刻を測定する場合は,弾性波の入力のタイミ

ングを出力できる入力装置を使用する。

E.3.2 振動センサ

振動センサは,入力装置によって入力された弾性波の初動を検出するのに十分な感度及び分解能をもつ

ものとする。振動センサの感度特性は,測定に必要な周波数範囲において,平坦なものとする。

E.3.3 計測装置

計測装置は,振動センサの出力信号を,時間波形として表示及び記録でき,サンプリング時間間隔,サ

ンプリング数,測定時間長,電圧範囲,トリガなどが測定に必要な条件の範囲で設定可能で,受信振動の

初動波形を測定できるものとする。弾性波の入力のタイミングの測定が可能な装置を装備した場合は,そ

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- 29 -

の振動入力検知センサの出力信号も同様に,時間波形として表示及び記録できるものとする。

表示画面において受信波形が観察可能で,受信波形上の時刻及び振幅値を読み取る機能をもつものがよ

い。

E.4 測定の準備

E.4.1 試験装置の点検

試験装置の設定は,次の手順で実施する。

a) 入力装置,振動センサ及び計測装置が正常に作動することを確認し,製造業者指定の方法によって調

整を行う。

b) 弾性波の初動波形を精度よく測定するために,計測装置のサンプリング時間間隔,サンプリング数,

測定時間長,電圧範囲,トリガなどを設定する。

E.4.2 測定箇所及び測定点の処理

弾性波の入力点及び振動の測定点は,測定結果に影響を及ぼすと考えられるような気泡,測定対象とし

ないひび割れなどがある箇所を避け,表面ができるだけ平滑な箇所を選定する。弾性波の入力点及び振動

の測定点のコンクリート表面が非常に粗い場合,及び測定に影響を及ぼす不陸,付着物,ライニングなど

がある場合は,コンクリート表面を研磨して影響物を取り除いておく。また,表面にゴミ,ほこり,余分

な水分,緩んだ骨材などがある場合も事前に取り除いておく。

測定対象のひび割れ内にゴミ,ほこり,ゆるんだ骨材,骨材のかけらなどがある場合には,事前に清掃

し,可能な限りそれらを取り除いておく。

E.5 初動波形に着目したひび割れ深さの評価方法

E.5.1 基本原理

弾性波の入力点及び振動の測定点は,測定対象とするひび割れと直交する直線上に配置し,その距離は,

ひび割れ開口から等距離 L にあるものとする(図 E.1 参照)。

この方法は,打撃によって入力された弾性波の回折角度が 90°未満になるとき,測定点での初動波形が

上向き 3)の波動,その角度が 90°を越える場合には,下向き 4)の波動となることを利用したひび割れ深さ

の評価方法である。

注 3) コンクリート表面が押し上げられる方向を上向きとする。

4) コンクリート表面が引き下げられる方向を下向きとする。

図 E.1-初動波形に着目したひび割れ深さの評価方法での弾性波の入力点及び測定点の配置

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- 30 -

E.5.2 測定方法

ひび割れ深さは,次の手順で測定する。

a) 弾性波の入力点,振動の測定点を決定する。

なお,入力点及び測定点は,ひび割れ開口位置を挟み,ひび割れと直交する直線上でひび割れ開口

部から等距離の点とする。ひび割れ開口部から測定点までの距離を測定距離とする。

b) 振動の測定点に振動センサを設置する。振動センサの設置は,測定対象とするコンクリート表面に対

し感度軸を垂直とし,かつ,上向きの方向が正として測定される方向する。

c) 入力装置を用いて,コンクリート表面の入力点から弾性波を入力する。

d) 初動波形の向きを確認する。

e) 測定距離を変化させながら a)~d)の手順を繰り返し,測定点での初動波形が下向きから上向きに変化

する測定距離を決定する。

f) e)で決定した測定距離をひび割れ深さとする。

E.6 時間差を利用したひび割れ深さの評価方法

E.6.1 基本原理

弾性波の入力点及び振動の測定点は,測定対象とするひび割れと直交する直線上に配置し,その距離は,

ひび割れ開口から等距離 L にあるものとする(図 E.2 参照)。また,この距離 L は,ひび割れ深さ d より

も長いものとする。この時の弾性波の伝搬時間 ΔT は,式(E.1)となる。

22 dLV

2ΔT ···································································· (E.1)

ここに, ΔT : 入力された弾性波がひび割れ先端を回折して測定点に達す

るまでの時間(s) V: 弾性波の伝搬速度(m/s) L: ひび割れ開口部から入力点及び測定点までの距離(m) d: ひび割れ深さ(m)

ひび割れ深さは,式(E.2)によって求める。

22

L2

ΔTVd

·································································· (E.2)

図 E.2-時間差を利用したひび割れ深さ評価方法での弾性波の入力点及び測定点の配置

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- 31 -

E.6.2 測定方法

E.6.2.1 弾性波伝搬速度の測定

E.6.2.1.1 弾性波伝搬速度測定方法の選定

弾性波伝搬速度の測定は,E.6.2.1.2~E.6.2.1.5 によって実施する。他の方法(超音波法など)によって

測定してはならない。

E.6.2.1.2 計測装置の設置

計測装置の設置は,次の手順で実施する。

a) 入力装置,振動センサ及び計測装置が正常に作動することを確認し,製造業者指定の方法によって調

整を行う。

b) 測定対象物のコンクリートの同一面に,弾性波の入力点及び測定点を,それらが一直線上になるよう

に設定する[図 E.3 a)及び図 E.3 b)]。

なお,鉄筋が測定点の近傍にある場合は,鉄筋の影響が低減されるように,弾性波の入力箇所と振

動の測定点とを結ぶ直線が,鉄筋に対して斜め(45°)になるように振動センサを配置する[図 E.3 c)]。

c) 弾性波の到達時刻を精度よく計測するために,計測装置のサンプリング時間間隔,サンプリング数,

測定時間長,電圧範囲,トリガなどを設定する。

E.6.2.1.3 入力点から測定点までの距離測定

弾性波の入力点から振動の測定点までの距離(m)を有効数字 3 桁で測定し,記録する。

E.6.2.1.4 弾性波の入力及び伝搬時間差の測定

弾性波の入力及び伝搬時間差の測定は,次の手順で実施する。

a) 入力装置を用いて,コンクリート表面から弾性波を入力する。

b) 振動の測定点 1 5)及び測定点 2 で測定した弾性波の受信波形の立上り 6)から,それぞれの測定点におけ

る弾性波の到達時刻 7)を読み取る。それを基に,測定点 2 と測定点 1 5)との伝搬時間差 Δt(s)を有効

数字 3 桁で求める

注 5) 弾性波の入力のタイミングを出力できる入力装置を使用する場合は,弾性波の入力点となる。

6) 受信波形の立上りが特定できない場合は,入力点及び測定点のコンクリートの状態を確認す

る。入力装置及び振動センサとコンクリート表面とがそれぞれ接触しているかも確認する。

7) 弾性波の入力のタイミングを出力できる入力装置を使用する場合は,弾性波の入力時刻及び

弾性波の到達時刻となる。

E.6.2.1.5 弾性波伝搬速度の計算

弾性波伝搬速度(m/s)は,式(E.3)から算出し,四捨五入によって有効数字 3 桁に丸める。

Δt

LLV 12 ··········································································· (E.3)

ここに, V: 伝搬時間差を利用して測定した弾性波伝搬速度(m/s) Δt: 計測から求めた伝搬時間差(s) L1: 弾性波の入力位置から振動の測定点 1 までの距離(m)

ただし,弾性波の入力のタイミングを出力できる入力装置を

使用する場合は,0 m となる。 L2: 弾性波の入力位置から振動の測定点 2 までの距離(m)

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弾性波の

入力点

コンクリート

振動の

測定点

1

振動の

測定点

2

弾性波の

入力点

* 弾性波の入力のタイミングを出力できる入力装置を使用

コンクリート 振動の

測定点

2

弾性波の

入力点

コンクリート

45°

振動の

測定点

1

振動の

測定点

2

b) 振動センサ付きの入力装置を用いた測定 c) 鉄筋に対する弾性波の入力点及び測定点の設定位置

図 E.3―弾性波伝搬速度の測定での弾性波の入力位置及び振動の測定点の配置例

E.6.2.2 ひび割れ深さの測定

ひび割れ深さの測定は,次の手順で実施する。

a) 入力点,測定点の決定 弾性波の入力点,ひび割れ開口位置及び振動の測定点の配置は,弾性波の入

力点からひび割れ先端を回折して振動の測定点に至る弾性波の伝搬経路において,波動が回折する角

度が 90°以上とならないように配置する(図 E.4 参照)。この位置関係の確認は,E.5.2 によって行う。

図 E.4-回折角度の説明図

b) 弾性波の入力 弾性波の入力タイミングを出力できる入力装置を用いて,コンクリート表面から弾性

波を入力する。

c) 伝搬時間の差測定 弾性波の入力タイミングから弾性波の発生時刻,及び振動の測定点で測定した弾

性波の受信波形の立上りから弾波の到達時刻を読み取る。それを基に,伝搬時間差 ΔT(s)を四捨五

入によって有効数字 3 桁で求める。

E.6.3.3 ひび割れ深さの計算

伝搬時間差を用いて,式(E.2)でひび割れ深さを算出する。

E.7 報告

報告内容は,次の事項について行うことを標準とする。また,表 E.1 に参考の報告様式を示す。

a) 測定年月日

a) 2 点の測定点及び入力点による測定

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- 33 -

b) 計測パラメータ(波形計測時のサンプリング時間間隔及び計測時間)

c) 測定を実施した場所並びに測定対象としたひび割れの位置及びその状況

d) 測定方法及び測定結果

1) 初動波形に着目したひび割れ深さの評価方法

1.1) 測定した波形及びその向き

1.2) 測定距離及びひび割れ深さ

2) 時間差を利用したひび割れ深さの評価方法

2.1) 測定した時間差

2.2) 測定距離

2.3) ひび割れ深さ

e) その他

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- 34 -

表 E.1-報告に用いる様式例(ひび割れ深さの評価用)

測定年月日 年 月 日 曜日 測定時刻 : ~ :

測定場所

測定者 氏 名: 所 属: 資格名: 登録番号:

試験装置の

仕様・設定

入力装置 種 類: 型 名: 製造番号: 質量(直径): 校正の有効期間: 年 月 日~ 年 月 日

振動センサ 種類・型式: 型 名: 製造番号: 周波数範囲(±3dB): 校正の有効期間: 年 月 日~ 年 月 日

計測装置 型 名: 製造番号: サンプリング時間間隔: 測定時間: 校正の有効期間: 年 月 日~ 年 月 日

調整方法 調整方法:

測定箇所の

状況

測定点 No. 1 2 3 4 5

測定位置

測定点の配置

平滑さ

変状の有無及び

状況

測定面の 処理方法

その他の状況(必要

に応じて図示)

時間差

測定距離

伝搬時間差

1: 2: 3: 平均:

1: 2: 3: 平均:

1: 2: 3: 平均:

1: 2: 3: 平均:

1: 2: 3: 平均:

ひび割れ深さ

初動

波形

測定距離

初動波形の向き

備考

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1

解 1

NDIS 2426-2:9999

コンクリートの非破壊試験-弾性波法-第 2 部:衝撃弾性波法

解 説

この解説は,本体及び附属書に規定・記載した事柄,並びにこれらに関連した事柄を説明するもので,規

格の一部ではない。

この解説は,(一社)日本非破壊検査協会が編集・発行するものであり,この解説に関する問合せ先は,(一

社)日本非破壊検査協会とする。

1 改正の趣旨

高度経済成長期に大量に建設された鉄筋コンクリート(RC)構造物が維持管理の時代を迎え,土木分野

では,(社)土木学会“コンクリート標準示方書[維持管理編] ”が,建築分野では,(社)日本建築学会“鉄

筋コンクリート造建築物の耐久性調査,診断及び補修指針(案)”が刊行されるなど,構造物の合理的な維

持管理の枠組みに関する指針類の整備が積極的に進められている。

一方で,新設の RC 構造物については,設計方法の性能照査型への移行に伴い,材料,部材,又は構造

物の性能を適切なタイミングで的確に確認できる手法の確立が望まれている。他方,疎漏工事の増加など

に伴い住宅及び公共工事の品質確保の促進に関する法律が制定されるなど,管理・検査体制の強化も重要

な課題になっている。

上記のような現状に対して,諸基準類には多くの試験項目が列記されているものの,これらの試験方法

で規格化されているものはほとんどなかった。このうち,特に,弾性波法に基づく非破壊試験法について

は,様々な試験への適用が期待されているものの,規格・規準類の整備が十分でなかったことから,構造

物所有者/管理者,研究機関及び測定業者などによって運用方法が異なっているのが現状である。そこで,

2009 年に弾性波法が,コンクリートの非破壊試験法として適所で有効に用いられることを目指して,本協

会において規格群を制定した。

このうち,第 2 部“衝撃弾性波法”については,制定時にはコンクリートの品質及び変状を評価する際

に基本となる衝撃弾性波の伝搬速度の測定方法及び部材厚さの評価方法のみの規格であった。その後,コ

ンクリートの圧縮強度及びひび割れ深さ評価への適用実績も増えたことなどから,改正原案の作成を行っ

た。

2 改正の経緯

今回の改正は,制定時に規格化が待ち望まれていた多くの評価方法(制定時の解説の 6 懸案事項に記載

されている。)のうち,コンクリートの圧縮強度及びひび割れ深さ評価への適用実績も増えたことから,こ

れらも適用できるようにすること,また,入力方法もハンマ,鋼球などによる機械的な方法の他,励磁コ

イルによる磁気的な方法なども用いられるようになってきていることから,機械的な方法に限定すること

なく,さまざまな入力方法が適用できるようにすること,などのために,2013 年に NDIS 2426-2 改正原案

作成委員会が設置され,2014 年に改正された。

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2

解 2

3 審議中に問題となった事項

今回,新設コンクリート構造物におけるコンクリートの圧縮強度評価方法を附属書 D(参考)として示

した。本手法は,新設コンクリート構造物と同じ材料,同じ配(調)合を用いたコンクリートによる円柱

供試体を用い,伝搬速度と圧縮強度を材齢の進行に応じて測定し,その相関関係から圧縮強度評価式を得

るものである。

これらに対して,圧縮強度評価式の作成においては,W/C を変えるなど,影響要因を変化させて作成す

べきという意見,構造物の施工に起因する影響及び現場での養生条件を加味した手法が必要との意見もあ

った。これらの意見に対して本手法は,同じ材料及び同じ配(調)合を用いたコンクリートでは,材齢の

進行による水和が圧縮強度および弾性波伝搬速度の変化の主要因であると考えていること,同じ材料又は

同じ配(調)合でないコンクリートではコンクリートごとに圧縮強度評価式を作成する必要があること,

安定した条件下で作製された円柱供試体に対して実構造物の状態を把握する手法であること,及びこれま

での実績における評価精度により十分実用的であることを確認した。これらの内容については解説に取り

まとめている。また,既設コンクリート構造物に対しての圧縮強度の評価は,同様の圧縮強度評価方法が

提案されているものの,実績及び根拠の説明が未だ不十分であるため,後述の箇条 6“懸案事項”で技術

の必要性と保留理由や評価方法を紹介することとした。

コンクリートに生じた変状を評価する手法として,ひび割れ深さの評価方法を附属書 E(参考)として示

しており,初動波形に着目したひび割れ深さの評価方法及び時間差を利用したひび割れ深さの評価方法の

二つの方法について記述している。初動波形に着目した手法については,その波動伝搬の物理現象につい

て一般的に理解されていないという意見があった。一方で,本手法は現時点ですでに適用実績が多く,そ

の精度についても確認されているため,今回,附属書(参考)とした。時間差を利用した手法では,回折

波を受信していることを確認することが重要となり,その方法も含めて示すこととした。

一方,弾性波伝搬速度の測定方法は附属書 A(規定),附属書 B(規定)として規定している。いずれの

手法においても,入力される弾性波の波長と部材寸法の関係が重要となる。そこで,今回は,計測に適し

た入力装置の条件を例示することとした。ただし,コンクリートの品質又はコンクリートに生じた変状を

評価する手法として,上記の手法以外にも提案がなされているが,現時点では,これらの評価方法を規格

化することは時期尚早であると判断したため,これらの評価方法については,後述の箇条 6“懸案事項”

で技術の必要性と保留理由や事例を紹介することとした。

4 適用範囲

NDIS 2426(コンクリート構造物の弾性波による試験方法)は,次に示す 3 部から構成されている。

- NDIS 2426-1 第 1 部:超音波法

- NDIS 2426-2 第 2 部:衝撃弾性波法

- NDIS 2426-3 第 3 部:打音法

部構成とした理由は,次のとおりである。

3 方法は後述のとおり弾性波の発信,受信の違いにより分類している。3 方法とも,コンクリート中にお

ける弾性波の伝搬特性をもとに材質及び変状の評価を行うための試験方法であるという点では,基本的に

は同様のものである。しかしながら,実際の計測における弾性波の発信及び受信の具体的方法が異なるこ

とから,適用範囲も異なる。

3 方法の特徴から,測定目的,評価項目,対象とする部材などは多少異なる(解説表 1)。

超音波法,衝撃弾性波法は,ほぼ同じ測定目的をもつが,発信するエネルギー,周波数の違いなどから,

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3

解説

解 3

対象範囲が多少異なる。例えば,厚い部材の厚さ測定は衝撃弾性波法のほうが測定しやすい。

打音法は,受信が非接触のため,接触受信による衝撃弾性波法に比べて受信される弾性波のエネルギー

が小さくなり,コンクリート表層又は薄い部材への適用に限定される。

解説表 1―研究,開発状況

対象 評価項目 超音波法 衝撃弾性波法 打音法

施工 型枠充てん性 ○

凝結硬化過程 ○

新設

強度など,表層部の品質 ○ ○

部材厚さ ○ ○ ○

初期

不良

ジャンカ ○ ○ ○

コールドジョイント ○ ○

内部空隙 ○ ○ ○

グラウト未充てん ○ ○

ひび割れ(乾燥収縮,温度ひび割れ) ○ ○

既設

ひび割れ(荷重,鋼材腐食に伴う ひび割れなど) ○ ○

材料劣化(脆弱化) ○ ○ ○

かぶりコンクリートのはく離 ○ ○ ○

仕上げ材のはく離 ○ ○ ○

第 2 部“衝撃弾性波法”の適用範囲は,解説表 1 に示すように評価の対象として,コンクリート強度,

表層品質,部材厚さ,初期不良,ひび割れ深さなどの評価に広く適用できるが,その前提条件として,衝

撃弾性波の伝搬速度が正確に測定されている必要がある。そのため,この規格では,まず衝撃弾性波法に

よる弾性波伝搬速度の測定方法として,衝撃弾性波の伝搬時間差を利用した方法と多重反射の周波数特性

を利用した方法の 2 種類の測定方法を規定することとした。このうち,衝撃弾性波の伝搬時間差を利用し

た弾性波伝搬速度の測定方法は,図 1 に示すように,同一のコンクリート表面か対面するコンクリート表

面のいずれかで 2 個の振動センサがコンクリート表面に設置できる場合に適用し,衝撃弾性波の多重反射

の周波数特性を利用した弾性波伝搬速度の測定方法は,厚さが既知の 1 組の平行な面をもつコンクリート

部材で,幅・長さが厚さに対して十分に大きく,厚さ方向のコンクリート表面間の多重反射波が正確に受

信できる場合に適用するとよい。ただし,得られる弾性波伝搬速度は,弾性波が伝搬する経路の平均速度

であるため,弾性波伝搬経路のコンクリートの品質によって測定結果が異なることに留意する必要がある。

従って,調査の目的に応じて,弾性波伝搬速度の測定方法及び振動センサ位置と弾性波入力箇所を選定す

ることが望ましい。また,衝撃弾性波法による評価方法としては,附属書 C“コンクリートの部材厚さの

評価方法”に加え,今回の改正で参考ではあるが附属書 D“新設コンクリート構造物におけるコンクリー

トの圧縮強度評価方法”及び附属書 E“ひび割れ深さの評価方法”を作成した。その他の評価方法につい

ては,いずれの方法も規格化することは時期尚早であると判断し,箇条 6“懸案事項”として取りまとめ

た。

5 規定項目の内容

規定項目ごとに,規定理由,規定内容の根拠,誤った解釈をしないための補足説明,関連する情報など

を以下に述べる。

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4

解 4

5.1 用語及び定義(本体の箇条 3)

5.1.1 衝撃弾性波法

衝撃弾性波法では,物理的な衝撃により弾性波を入力し,コンクリート中を伝搬した弾性波をコンクリ

ート表面の振動として,振動センサにより受信し,計測装置にて受信波形を記録する。得られた波形より

求めた弾性波伝搬時間差又は多重反射の周波数特性を用いてコンクリート中を伝搬する弾性波伝搬速度を

算定することができる。また,得られた伝搬速度,伝搬時間及び多重反射により得られる共振周波数との

関係より,部材厚さ,ひび割れ深さなどを評価することができる。弾性波の入力方法には,ハンマや鋼球

などによる機械的な方法又は励磁コイルなどによる磁気的な方法などがある。衝撃弾性波法で対象として

いる周波数帯域は,超音波法に比べて低いため,コンクリートの非均質性に起因した弾性波の減衰・散乱

の影響を受けにくく,比較的大きな構造物への適用が可能である。

5.1.2 構造体コンクリート

構造体コンクリートの定義は,NDIS 3424 及び NDIS 3432 による。

5.1.3 その他

1) 試験(方法) ある対象物の性質を把握する行為(その方法)。

2) 測定(方法) いわゆる弾性波を計測する行為(その方法)で,試験(方法)よりも範囲は狭い。

3) 評価(方法) コンクリートの品質,部材厚さ,ひび割れ深さなど,対象とする項目を定量的に表現

する行為(方法)。

5.2 試験技術者(本体の箇条 4)

衝撃弾性波法による非破壊試験に関する資格制度はない。参考になる資格制度として,金属材料に対し

て(社)日本非破壊検査協会の非破壊試験技術者資格のうち,超音波探傷(レベル 1,レベル 2,レベル 3)

及び超音波厚さ測定(レベル 1)がある。コンクリート構造物に対して使用する装置及び測定方法は異な

るが,基本的な原理はほぼ同じであり,本体の箇条 4 では,これらの資格をもつ者を試験方法の原理及び

試験装置に関する基礎知識をもつ者とした。

一方,コンクリート構造物の調査・診断に関する資格としては,(公社)日本コンクリート工学会のコン

クリート診断士などのコンクリートに関する知識をもつ者とした。

5.3 試験装置(本体の箇条 5)

5.3.1 入力装置

弾性波を入力するための装置には,ハンマ,鋼球などによる機械的な方法,励磁コイルによる磁気的な

方法などがある。入力する弾性波の波長は,例えば鋼球であれば,質量により入力する弾性波の波長を変

化させることができる。一般的に,入力装置の質量が小さくなると入力する弾性波の波長は短くなり,入

力装置の質量が大きくなると入力する弾性波の波長は長くなる。一方で,磁気的な方法による入力装置は,

励磁コイルに電流を流すことにより発生した磁場を強磁性体に作用させ弾性波を入力する。具体的には,

表面に鉄板などを設置し磁場を作用させることで,コンクリート表面より弾性波を入力する。励磁コイル

の仕様,印加する電気信号などにより入力する弾性波の波長を調整できる。それぞれの弾性波入力イメー

ジを解説図 1 に示す。

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5

解説

解 5

機械的な方法

( 鋼球またはハンマ)

解説図 1-弾性波の入力イメージ

5.3.2 振動センサ

振動センサは,入力装置により入力された弾性波を受信するために十分な感度及び分解能をもち,その

感度特性は,測定に必要な周波数範囲において平坦なものが必要である。通常,接触型振動センサとして

は,小型・軽量の加速度センサ又は小型・軽量の変位センサが用いられており,非接触型振動センサとし

てはレーザドップラ式振動計などがある。

5.3.3 計測装置

計測装置では,振動センサが受信した信号を,時間波形として表示,記録し,弾性波の到達時間の算定,

伝搬速度の算出などの処理を行う。測定の目的に応じて,適切なサンプリング時間間隔,サンプリング数,

測定時間長,電圧範囲,トリガなどを適切に設定する必要がある。なお,規格本文の計測装置はデジタル

方式で規定されているが,オシロスコープなどのアナログ計測装置を用いて測定を行うことも可能である。

5.3.4 試験装置の校正及び点検(本体の箇条 6)

5.3.4.1 試験装置の校正

試験装置の信頼性を確保する為に,使用する試験装置は校正されたものを使用する必要がある。校正の

間隔は,保全水準などにも依存するが,特に指定がない限り原則として,1 年から 2 年に 1 回は行うこと

が望ましい。ただし,装置に異常が確認された場合には,その都度,校正を実施する。

5.3.4.2 試験装置の点検

試験装置は,異常がないことが確認された装置を使用する必要がある。日常の点検は,試験開始前,試

験終了後に試験技術者が行う。

5. 4 報告(本体の 12)

報告事項については,各附属書に記載の様式を参考にして,関係者で協議の上必要な事項を選定すると

ともに,測定の内容,報告事項などを考慮し適宜修正して用いることが望ましい。参考として報告に用い

る様式例への記入の一例を,それぞれの附属書解説表に示す。

5.5 附属書 A(規定)伝搬時間差を利用した弾性波伝搬速度の測定

5.5.1 基本的な考え方

本体で規定する弾性波伝搬速度の測定方法は,コンクリート表面において,打撃などの衝撃力により励

起された弾性波が最短経路で最も速く振動センサ間を通過する時の平均速度を求めるものである。この方

法により,一般的にはコンクリート中を伝わる弾性波の P 波速度を測定することができるが,次のような

点に留意する必要がある。

磁気的な方法

(励磁コイル)

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6

解 6

同一面による測定(附属書 A図 A.1 (a))では,コンクリート表面で測定するため,コンクリート表層部

と内部の条件の違いにより測定結果が影響される可能性がある。例えば,表面と内部の見掛けの密度の相

違,波動伝搬時の境界条件の相違及び乾燥や劣化の進行などにより,同一面で測定した弾性波伝搬速度は

コンクリート内部での弾性波伝搬速度と大きく異なる場合がある。また,部材形状による影響として,部

材が細長い場合には棒状体の P 波速度となり,部材厚さが入力弾性波の波長と比較して相対的に薄い部材

になると,たわみ振動の影響を考慮した取り扱いが必要となる。

5.5.2 試験装置

5.5.2.1 入力装置

弾性波を入力するための装置には,鋼球又はハンマなどによる機械的な方法又は励磁コイルなどによる

磁気的な方法などがある。これらの衝撃力により励起された弾性波は,十分に計測可能な波動である。

入力する弾性波の波長は,鋼球またはハンマなどの機械的な方法では,入力装置の打撃部の質量により

変化させることが出来る。入力装置の質量が小さくなると入力する弾性波の波長は短くなり,入力装置の

質量が大きくなると入力する弾性波の波長は長くなる。一方,磁気的な方法では,励磁コイルの仕様,印

加する電圧などにより入力する弾性波の波長を調整できる。

5.5.2.2 振動センサ

振動センサは,入力装置により入力された弾性波の初動を検出するのに十分な感度と分解能を有し,そ

の周波数応答特性は,使用する周波数の範囲内で平坦であることがが必要である。一般的に,コンクリー

ト表面での衝撃により励起された弾性波の立上り部の周波数は,接触時間にもよるが,3 kHz~10 kHz 程

度である。このため,より低周波数領域の感度を低下させることにより,測定現場で発生する比較的低周

波数の振動をノイズとして除外することも可能である。通常,接触型振動センサとしては,小型・軽量の

圧電型加速度センサが用いられており,非接触型振動センサとしてはレーザドップラ式振動計などがある。

弾性波の伝搬時間差の測定は 2 点における弾性波の到達時刻の測定であるため,増幅器を含めた振動セ

ンサ系の位相特性が重要である。2 個の振動センサ系の位相特性は,使用する周波数の範囲内において同

一で,相対的な位相差がないものが望ましい。

5.5.2.3 計測装置

計測装置は,振動センサが受信した弾性波の時間波形を表示するとともに AD 変換したデータを記録し,

弾性波の到達時刻の算定及び伝搬速度の算出などの処理を行う装置である。

AD 変換のサンプリング間隔は,弾性波伝搬速度の有効桁数を考慮すると,測定値の 1 %以下に設定す

ることが望ましい。例えば,4,000 m/s の速度の弾性波が 400 mm の間隔に設置された振動センサを通

過する時間差は 100 s であり,この波形を 1 %の分解能に相当する 1 s のサンプリング間隔で AD 変換

すると,弾性波の伝搬時間差は 99~101 s,伝搬速度は 3,960~4,040 m/s の有効範囲となり,算出される

伝搬速度の誤差は±40 m/s となる。従って,測定で要求される弾性波伝搬速度の信頼性を確保するために

は,測定の対象や目的に応じてサンプリング間隔を適切に選定する必要がある。

電圧範囲は,受信する弾性波の大きさに応じてアンプの増幅率を適切に設定する必要がある。

トリガ及び測定時間長の設定は,弾性波の到達時刻を精度良く計測に非常に重要であり,トリガレベル

前後の時間波形を十分に長く記録する必要がある。

5.5.3 測定の準備

弾性波の入力点及び振動の測定点は比較的平坦な部分を選定し,振動センサの接触及び衝撃力の入力な

どに対して支障となるゴミやほこり,余分な水分などは除去する。特に弾性波の入力点は,安定した衝撃

を入力するために,型枠面程度の平坦な面であることが望ましい。ただし,表面劣化や損傷を評価する際

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7

解説

解 7

には,表面処理を行わずに計測を実施する場合がある。その際は,測定結果の取扱いに注意が必要である。

5.5.4 測定方法

5.5.4.1 試験装置の設定

a) 測定前の点検として,入力装置により入力された弾性波を振動センサが正常に受信して計測装置に時

間波形を表示できることを確認する。同時に,計測に影響を及ぼす周辺振動の有無を確認し,影響を

受ける場合は対策を講ずる。また,振動センサ及び計測装置の調整方法として,鋼材などのように弾

性波の伝搬速度が一定の材料で作製された対比試験片を用いて,その計測値を確認するとよい。

b) 測定する 2 個の振動センサ間にひび割れやジャンカなどの変状部があると,弾性波はそれらを迂回し

て伝搬することなどにより,測定される伝搬速度は遅くなる。健全なコンクリートの弾性波伝搬速度

を測定する場合は,それらを避けて振動センサを設置する。一方,測定される伝搬速度の低下の程度

から変状部を評価する場合には,それらの変状部を避けずに計測を実施する。その際は,測定結果の

取扱いに注意が必要である。また,鉄筋が測定位置の近傍にある場合は,鉄筋を一部通過した弾性波

が最短経路を通過した弾性波よりも先に振動センサに到達することがあり,見掛け上,伝搬速度が速

くなる可能性がある。このように,鉄筋による影響が予想される場合は,鉄筋を通過する経路を長く

して鉄筋による影響を低減させるために,2 個の振動センサの設置点を結ぶ直線が鉄筋に対して斜め

(45°)になるように振動センサを配置する(附属書 A図 A.1 (a))。

同一面で測定した弾性波伝搬速度は,コンクリート表層部と内部の条件の違いにより,コンクリー

ト内部での弾性波伝搬速度と大きく異なる場合がある。例えば,既設構造物などでは,表面と内部の

見掛けの密度の相違,波動伝搬時の境界条件の相違及び乾燥や劣化の進行などにより,同一面で測定

した弾性波伝搬速度はコンクリート内部での弾性波伝搬速度と大きく異なる場合がある。

c) 衝撃により励起された弾性波の到達時刻を精度良く計測するためには,波動が立ち上がる前の無信号

部分の時間波形を適切な増幅度,トリガレベル及び継続時間で計測することが重要である。

5.5.4.2 入力位置と測定点の距離測定

弾性波の入力点と振動の測定点との位置関係が附属書 A 図 A.1 に示されている。振動センサを 2 個使用

した場合の弾性波の入力点と振動の測定点の配置は,2 個の振動センサへの弾性波の到達時刻を計測する

ものである。他方,振動センサ付きの入力装置と 1 個の振動センサを使用する場合は,入力装置に付けら

れた振動センサにより弾性波が入力された時刻を計測し,コンクリート表面に設置された振動センサによ

り弾性波が受信位置に到達した時刻を計測するものである。さらに,附属書 A 図 A.1a)測定点の同一面配

置は,同一表面に弾性波の入力点と振動の測定点を配置することにより,表面付近の最短経路を通過した

弾性波を計測するのに対し,b)振動センサ対面配置は,対面する平行面に弾性波の入力点と振動の測定点

を配置することにより,一方の面から弾性波を入力し,コンクリート部材内を透過して反対面に到達した

弾性波の到達時刻を計測するものである。なお,弾性波の入力点と直近の振動センサまでの距離は,可能

な限り短い方がよい。

距離の測定は,弾性波の入力点と振動の測定点が同一面に配置されている場合は,それぞれのコンクリ

ート接触面の中心間で行う。

5.5.4.3 弾性波の入力及び伝搬時間差の測定

a) 入力装置により安定した衝撃力が入力されているか,また,弾性波の入力点と振動の測定点との関係

が適切であるかを確認することが重要である。何回かの試行により,計測された時間波形又は算出さ

れた弾性波伝搬速度の再現性を確認し,適切な計測であると判断できる場合に記録する。

b) 弾性波の到達時刻は,立上り点(時間)を特定することにより求められる。その方法として,読み取

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8

解 8

りによる人為的判断とルールに基づく自動的判断による方法が用いられている。人為的判断には,デ

ィスプレー上に表示された時間波形の立上り点に手動でカーソルを合わせる方法がある。自動的判断

には,しきい値法があるが,記録波形に低周波数の雑音振動成分が含まれると誤った立上りをとらえ

る可能性があるため,高い精度は望めない。他の方法として,波形勾配比法と呼ばれる方法が試みら

れている 2)。この方法は,立上り波形の接線勾配(波形勾配と呼ぶ)とその半波長内の最大の波形勾

配との比が所定の値に達した時間を弾性波の到達時刻と見なすもので,比較的良好な結果が得られて

いる。

c) 振動センサとコンクリートの接触状態が悪い場合及び弾性波の入力点のコンクリート表面が脆弱又は

粗い場合は,波形の立上りが安定せず,再現性が乏しくなる場合がある。

5.5.5 計算

計算された弾性波伝搬速度(m/s)は,測定の対象によっては有効数字 3 桁では分解能及び精度の面から

不十分な場合がある。このような場合は,センサ間距離の有効数字及びサンプリング間隔を変更すること

により,得られる弾性波伝搬速度の分解能を向上させることが望まれる。

5.5.6 報告

参考として報告に用いる様式例への記入の一例を,解説表 5.5.1に示す。

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9

解説

解 9

解説表 5.5.1-報告に用いる様式への記入例(伝搬時間差を利用した弾性波伝搬速度の測定用)

20○○ 年 ○ 月 ○ 日 ○ 曜日 9:30 ~ 12:00

東京都大田区○○○○○

衝撃太郎 ○○株式会社

○○協会講習会終了 第2007-0002

衝撃加速度計付ハンマー 型名・材質: ○○型:鋼材

○○○○○ 質量(直径): 18g

校正点検有効期間: 20○○ 年 ○ 月 ○ 日 ~ 20○○ 年 ○ 月 ○ 日

種類・形式: 圧電式加速度センサ ○○○○型

○○○○○ 0.3~12000Hz

校正点検有効期間: 20○○ 年 ○ 月 ○ 日 ~ 20○○ 年 ○ 月 ○ 日

○○○○型 ○○○○○

0.5μ秒 サンプリング数: 4096個

校正点検有効期間: 20○○ 年 ○ 月 ○ 日 ~ 20○○ 年 ○ 月 ○ 日

調整方法 製造業者指定の方法 未使用

○○○単独洞道 トンネル覆工コンクリート

シールドトンネル覆工コンクリート 19○○年

コンクリート 不明 30年

測定点No.

測定位置 距離300m 天端付近 距離350m 天端付近

測定点の配置 同一面 同一面

平滑さ 良好 入力点にエフロレッセンス

変状の有無及び状況

なし 入力点にエフロレッセンス

測定面の処理方法 なし 砥石にて研磨

その他の状況(必要に応じて図示)

振動測定位置の間隔

(L 2-L 1)0.500 m 0.500 m

126×10-6 秒 131×10

-6 秒

125×10-6 秒 132×10-6 秒

125×10-6 秒 131×10-6 秒

125×10-6 秒 131×10-6 秒

伝搬速度

(V time)3990 m/s 3810 m/s

受信波形記録 File No.001 File No.002

型  名:

製造番号:

製造番号: 周波数範囲(±10%):

サンプリング時間間隔:

型  名:

1 :

2 :

3 :

平均:平均:

1 :

2 :

3 :

1 :

2 :

3 :

平均:

3

調整方法:

構造物名:

1 2

対比試験片の仕様:

構  造:

材  齢:種  類:

竣 工 年:

種  類:

部 材 名:

製造番号:

備  考

試験装置の仕様・設定

測定対象物

測定結果

伝搬時間差(Δt )

入力装置

振動センサ

計測装置

名称・部材

測定箇所の状況

資 格 名: 登録番号:測 定 者

測定年月日

測定場所

測定時刻

氏  名: 所  属:

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10

解 10

5.6 附属書 B(規定)多重反射の周波数特性を利用した弾性波伝搬速度の測定

5.6.1 基本的な考え方

この方法により測定される基本周波数は,弾性波の多重反射による周波数であり,弾性波が入力面と反

射境界面間の 1 往復に要する時間の逆数となる。従って,弾性波の伝搬距離が既知の場合に弾性波伝搬速

度を算出することが可能となる。この方法の適用限界は以下に示すとおりである。

a) コンクリート部材が厚くなると,弾性波の減衰によって基本周波数を精度良く測定することが困難な

場合がある。これまでの実績では,厚さ 2,500 mm 程度までが限界とされている。一方,コンクリー

ト部材が薄い場合では,基本周波数は高域となり,振動センサの測定周波数範囲を超える可能性があ

る。また,弾性波の 1 往復する時間が短くなることから,基本周波数を精度良く測定するには,サン

プリング時間間隔を短く設定する必要がある。具体的な例として,部材厚さ 100 mm からの多重反射

による基本周波数は 20 kHz,1 往復する時間は 50 s となり,サンプリング時間間隔は,後述するナ

イキスト周波数の関係から理論上 25 s 以下(解説式(5.6.5)参照)となるが,実用上 10 s 以下とする

ことが望ましい(5.6.4.1 c)参照)。従って,適用可能な部材厚さの下限値は,使用する計測装置の性能

に依存することになる。

b) この測定では,弾性波の厚さ方向の多重反射を利用しているが,弾性波は部材厚さ方向以外に幅・長

さ方向に対しても多重反射する。従って,部材の幅・長さが厚さに対して十分に大きくないと,幅・

長さ方向で多重反射する弾性波が卓越して観測され,正確な基本周波数を測定することが困難となる。

ASTM-C1383-04 では,測定対象となるコンクリート部材は,厚さに対して幅・長さが 6 倍以上であ

るものと定義している。

5.6.2 試験装置

5.6.2.1 入力装置

弾性波の多重反射による周波数の測定では,入力される弾性波の周波数によって周波数解析結果も影響

を受ける場合がある。従って,測定に際しては,入力される弾性波の周波数は,周波数スペクトル上の卓

越周波数が多重反射による基本周波数となる範囲で設定する必要がある。

具体的には入力装置は,入力される弾性波の周波数が測定対象のコンクリートの基本周波数の 0.5 倍以

上から 1 倍以下程度であることが必要条件となる。測定対象のコンクリートと入力装置の条件との関係の

一例を附属書 B表 B.1 に示した。

附属書 B表 B.1は入力装置として鋼球を使用した場合について,鋼球の接触時間 TC (s)を解説式(5.6.1)で

概算し 5.6.1),鋼球の接触時間の逆数から入力される弾性波の周波数及び測定可能な周波数の範囲を算出し

た結果に基づくものである。この算出結果を解説表 5.6.1 に示す。ただし,解説表 5.6.1 の算出結果は,

コンクリート表面の弾性係数や弾性波伝搬速度によって変化することに留意する必要がある。また,特に

部材厚さの厚いコンクリートでは,周波数解析方法を工夫することにより,附属書 B表 B.1 に示す入力装

置よりも直径の小さい入力装置により基本周波数を測定することが可能となる。厚さ 1600mm の基本周波

数を直径 76mm の鋼球を入力装置に使用して測定した周波数解析方法の例を 5.6.4.3 に示す。さらに,厚さ

2400mm の基本周波数を直径 76mm の鋼球を入力装置に使用して測定した結果も報告されている 5.6.2)。

5

1

S

5

2

C

2C

S

2S

SC

111

VRE

ν

E

νMAT ≒ Ds0043.0 ………………………解説式(5.6.1)

ここに,TC:接触時間(s),A:定数,MS:鋼球の質量(kg),νS:鋼球のポアソン比,ES:鋼球の弾性

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11

解説

解 11

係数(N/m2),νC:コンクリートのポアソン比,EC:コンクリートの弾性係数(N/m2),RS:鋼球の半径(m),

V:鋼球がコンクリートに接触する時の速度(m/s)DS:鋼球の直径(m)である。

解説表 5.6.1―各入力装置で入力される弾性波の周波数及び測定可能な周波数の範囲

11.7 ~ 23.3

7.8 ~ 15.5

5.8 ~ 11.6

3.9 ~ 7.8

2.9 ~ 5.8

1.6 ~ 3.1

0.8 ~ 1.6

測定可能な

周波数の範囲※2

(kHz)

7.8

5.8

3.1

1.6

入力される弾性波の

周波数※2

(kHz)

23.3

15.5

11.6

解説式(5.6.1)による

接触時間※2

(μs)

43.0

64.5

86.0

129.0

172.0

322.5

623.5

30

40

75

145

10

15

20

質量(g)

4

14

33

110

262

1730

12501

入力装置(鋼球の場合)

直径(mm)

附属書 B表 B.1により入力装置を特定できない場合には,入力される弾性波の周波数が異なる複数の入

力装置を使用すること,さらに,この場合には,測定対象のコンクリートの基本周波数を測定できる入力

装置が含まれるように選定することが望ましい。

5.6.2.2 振動センサ

振動センサは,使用する周波数の範囲内において感度特性が平坦なものとする。なお,使用する周波数

f(Hz)の範囲は,コンクリートの弾性波伝搬速度が約 3,000 m/s~5,000 m/s の範囲にあることから解説式

(5.6.2)より算出できる。

)2( LVf ………………………………………………… 解説式(5.6.2)

ここに,L:弾性波の多重反射面間距離(m)

V:弾性波の伝搬速度(m/s)

5.6.2.3 計測装置

計測装置は,振動センサにより測定した振動を時間波形として受信・表示・記録でき,サンプリング時

間間隔,サンプリング数,測定時間長,電圧範囲,トリガなどを,5.6.4.1c)に示すとおり,適切に設定で

きるものとする。

5.6.3 測定の準備

弾性波の入力点及び振動の測定点はは比較的平坦な部分を選定し,振動センサの接触及び衝撃力の入力

などに対して支障となるゴミやほこり,余分な水分などは除去する。特に弾性波の入力点は,安定した衝

撃を入力するために,型枠面程度の平坦な面であることが望ましい。ただし,表面劣化や損傷を評価する

際には,表面処理を行わずに計測を実施する場合がある。その際は,測定結果の取扱いに注意が必要であ

る。

5.6.4 測定方法

5.6.4.1 試験装置の設定

a) 測定前の点検として,入力装置により入力された弾性波を振動センサが正常に受信して計測装置に時

間領域の波形を表示できることを確認する。同時に,計測に影響を及ぼす周辺振動の有無を確認し,

影響を受ける場合は対策を講ずる。また,振動センサ及び計測装置の調整方法として,鋼材などのよ

うに弾性波の伝搬速度が一定の材料で作製された対比試験片を用いて,その計測値を確認するとよい。

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12

解 12

b) コンクリート表面に振動センサを設置し,弾性波の入力点を決定する。弾性波の入力点と振動の測定

点との間隔は,多重反射する弾性波の伝搬距離の 0.4 倍以下とすることが望ましい。測定位置近傍の

コンクリート内部に空洞などの変状が存在すると,弾性波は空洞位置で反射することから弾性波の往

復時間が短くなることや,弾性係数の低下などにより弾性波の往復時間が長くなることから,測定さ

れる伝搬速度は変化する。健全なコンクリートの弾性波伝搬速度を測定する場合は,それらを避けて

振動センサを設置する。一方,測定される伝搬速度の変化の程度から変状部を評価する場合には,そ

れらの変状部を避けずに計測を実施する。その際は,測定結果の取扱いに注意が必要である。

c) 基本周波数を精度よく計測するために,計測装置のサンプリング時間間隔,サンプリング数,測定時

間長,電圧範囲,トリガなどを適切に設定する必要がある。弾性波の 1 往復時間 TPは,弾性波の伝搬

距離を L,弾性波の伝搬速度を V とすると,解説式(5.6.3)により与えられる。測定に際しては,サン

プリング時間間隔は弾性波の 1 往復中に 5 個以上のデータがサンプリングできるように,TPの 1/5 倍

以下に設定し,測定時間長は 4 往復以上のデータが計測できるように,TPの 4 倍以上に設定すること

が望ましい。

VLTP 2 …………………………………………………… 解説式(5.6.3)

5.6.4.2 入力面から対向する面までの距離の測定

多重反射する弾性波の多重反射面間距離は,弾性波の入力点と振動の測定点の中間位置において測定し,

弾性波の入力面から対向する面までの距離(1 往復伝搬距離の半分の長さ)とする。

5.6.4.3 弾性波の入力及び基本周波数の測定

a) 部材厚さの厚いコンクリートでは,附属書 B表 B.1 に示す入力装置を実際に適用することが困難な場

合も考えられる。周波数解析方法を工夫することにより,附属書 B表 B.1に示す入力装置よりも直径

の小さい入力装置により基本周波数を測定することが可能となる。具体的な周波数解析方法としては,

最大エントロピー法又は相互相関法 5.6.2)により相関関数を求め,相関関数に対してフーリエ変換(高

速フーリエ変換を含む)を行う方法,入力した弾性波が継続している時間帯である測定波形の初期部

分を除去してフーリエ変換を行う方法(以下,初期波形除去法という)などがある。

この例として,解説図 5.6.1 に示す設計厚さが 1,600 mm の橋脚で,直径 76mm の鋼球を入力装置に

使用して測定された時間波形(速度波形),及び,各周波数解析方法での周波数スペクトルを解説図

5.6.2 に示す。図によれば,フーリエ変換では,卓越周波数は 1,200 Hz 付近にあり,厚さ 1,600 mm の

コンクリートでの基本周波数と一致するが,入力される弾性波の周波数に相当する 3,000 Hz 付近の振

幅も大きくなっている。これに対して,最大エントロピー法,相互相関法,初期波形除去法では,卓

越周波数から厚さ 1,600 mm の基本周波数が明瞭に測定されているのがわかる。

基本周波数から算出される弾性波伝搬速度の分解能は,フーリエ変換の場合,解説式(5.6.4)により

示される周波数分解能f に依存する。

TN1f ……………………………………………… 解説式(5.6.4)

ここに,N:サンプリングデータ数,ΔT:サンプリング間隔である。

周波数分解能は,弾性波伝搬速度の有効桁数を考慮すると基本周波数の 1 %以下とすることが望ま

しい。例えば,弾性波伝搬速度が 4,000 m/s の場合の基本周波数は,多重反射面間距離が 0.1 m では 20

kHz,多重反射面間距離が 2.5 m では 0.8 kHz となるため,周波数分解能は,多重反射面間距離が 0.1 m

では 0.2 kHz,多重反射面間距離が 2.5 m では 0.008 kHz 以下とすることが望ましい。この条件を満足

させるには,解説式(5.6.4)より,サンプリング数とサンプリング間隔の積(N・ΔT=1/Δf)を多重反射

面間距離が 0.1 m では 5 ms,多重反射面間距離が 2.5 m では 125 ms 以上とすることが必要となる。

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13

解説

解 13

また,弾性波伝搬速度の分解能を向上させる方法として,サンプリング時間間隔を長くすることも

考えられるが,同時に,ナイキスト周波数についても留意する必要がある。ナイキスト周波数とは,

解説式(5.6.5)に示される周波数 fN で,この周波数より高域の周波数成分については,周波数スペクト

ルを求めることができない。

T21f N ……………………………………………… 解説式(5.6.5)

すなわち,サンプリング数を一定とすれば,サンプリング時間間隔が長くなると,周波数分解能が

向上して弾性波伝搬速度の分解能は向上するが,一方で測定できる周波数範囲が狭くなる性質がある。

5.6.4.1 c)では,サンプリング時間間隔は弾性波の 1 往復伝搬時間の 1/5 倍以下に設定することが望ま

しいことを示したが,これにより,測定で要求される周波数範囲を満足できる。従って,測定で要求

される弾性波伝搬速度の信頼性を確保するためには,サンプリング時間間隔をこの条件で設定し,サ

ンプリング数を多く設定することが必要となる。

b) 測定位置内部に空洞,はく離,ジャンカなどの変状部がある場合は,これらの影響が含まれた基本周

波数が得られることに注意する必要がある。

c) 入力される弾性波の周波数が異なる複数の入力装置を選定した場合には,各入力装置での周波数スペ

クトルを求め,共通して卓越周波数となる周波数を基本周波数であると判断する。

5.6.5 計算

多重反射の周波数特性を利用して測定した弾性波伝搬速度は,弾性波が多重反射する距離間での平均速

度と定義する。測定した基本周波数は,弾性波が多重反射する距離を 1 往復する時間の逆数であることか

ら,附属書 B 式(B.1)により,弾性波伝搬速度が算出できる。

5.6.6 報告

解説図 5.6.1―時間領域の波形(速度波形)

解説図 5.6.2―各周波数解析方法により得られた周波数スペクトル

0 2000 4000 6000 8000

振幅

解析方法:FFT卓越周波数:1221Hz

0 2000 4000 6000 8000

解析方法:最大エントロピー法卓越周波数:1251Hz

0 2000 4000 6000 8000

周波数(Hz)

解析方法:相互相関法卓越周波数:1245Hz

振幅

0 2000 4000 6000 8000

周波数(Hz)

解析方法:初期波形除去法卓越周波数:1245Hz

0 2 4 6 8時間(ms)

振幅

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14

解 14

参考として報告に用いる様式例への記入の一例を,解説表 5.6.2に示す。

参考文献

5.6.1)N. J. Carino, M. Sansalone, N. N. Hsu: A Point Source-Point Receiver, Pulse-Echo Technique for Flaw

Detection in Concrete,ACI JOURNAL, pp. 189-208, 1986. 3-4

5.6.2)岩野聡史,森濱和正:コンクリート部材を打撃して得られた振動波形の周波数解析方法に関

する検討,土木学会論文集 E2,Vol.67,No.2,pp.297-308,2011

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15

解説

解 15

解説表 5.6.2―報告に用いる様式への記入例(多重反射の周波数特性を利用した弾性波伝搬速度の測定用)

20○○ 年 ○ 月 ○ 日 ○ 曜日 9:30 ~ 12:00

東京都大田区○○○○○

衝撃太郎 ○○株式会社

○○協会講習会終了 第2007-0002

鋼球 型名・材質: ○○型:鋼材

○○○○○ φ40㎜

校正点検有効期間: 20○○ 年 ○ 月 ○ 日 ~ 20○○ 年 ○ 月 ○ 日

種類・形式: 圧電式加速度センサ ○○○○型

○○○○○ 0.3~12000Hz

校正点検有効期間: 20○○ 年 ○ 月 ○ 日 ~ 20○○ 年 ○ 月 ○ 日

○○○○型 ○○○○○

10μ秒 サンプリング数: 4096個

0.024kHz

校正点検有効期間: 20○○ 年 ○ 月 ○ 日 ~ 20○○ 年 ○ 月 ○ 日

調整方法 製造業者指定の方法 未使用

○○橋 PC桁

鈑桁橋 19○○年

コンクリート 不明 30年

測定点No.

測定位置 10m付近 20m付近

測定点の配置 同一面 同一面

平滑さ 良好 入力点にエフロレッセンス

変状の有無及び状況

なし 入力点にエフロレッセンス

測定面の処理方法 なし 砥石にて研磨

その他の状況(必要に応じて図示)

入力面から対向する面までの距離 (L )

0.6000 m 0.598 m

3370Hz 3250 Hz

3350Hz 3250 Hz

3370Hz 3070 Hz

3360Hz 3260 Hz

伝搬速度

(V fre)4030 m/s 3910 m/s

受信波形記録 File No.001 File No.002

資 格 名: 登録番号:測 定 者

測定年月日

測定場所

測定時刻

氏  名: 所  属:

種  類:

型  名:

型  名:

製造番号:

備  考

試験装置の仕様・設定

測定対象物

測定結果

基本周波数

(f 0)

入力装置

振動センサ

計測装置

名称・部材

測定箇所の状況

3

質量(直径):

調整方法:

構造物名:

1 2

対比試験片の仕様:

材  齢:種  類:

竣 工 年:

1 :

2 :

3 :

平均:平均:

1 :

2 :

3 :

1 :

2 :

3 :

平均:

周波数分解能:

部 材 名:

構  造:

製造番号:

製造番号: 周波数範囲(±10%):

サンプリング時間間隔:

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16

解 16

5.7 附属書 C(規定)コンクリートの部材厚さの評価方法

5.7.1 適用範囲

附属書 C は,弾性波伝搬速度及び基本周波数の測定結果からコンクリートの部材厚さを評価する方法に

ついて規定したものである。弾性波伝搬速度は,コンクリート表面での伝搬時間差から測定するため,コ

ンクリート表層部と内部の条件の違いにより測定結果が影響される可能性がある。例えば,表面と内部の

見掛けの密度の相違,波動伝搬時の境界条件の相違及び乾燥や劣化の進行などにより,コンクリート表面

での伝搬時間差から測定した弾性波伝搬速度はコンクリート内部での弾性波伝搬速度と大きく異なる場合

がある。この様なコンクリートでは,これらの影響が含まれた評価結果が得られることに注意する必要が

ある。また,コンクリートの部材厚さの測定位置内部に空洞,はく離,ジャンカなどの変状部がある場合

は,これらの影響が含まれた評価結果が得られることに注意する必要がある。

5.7.2 試験装置

5.7.2.1 入力装置

弾性波伝搬速度の測定での入力装置については 5.5.2.1 を参照されたい。

基本周波数の測定に用いる入力装置は,入力される弾性波の周波数が測定対象のコンクリートの基本周

波数の 0.5 倍以上から 1 倍程度以下であることが必要条件となる。しかしながら,本規格は部材厚さが分

からないコンクリートが測定対象であることなどから,測定対象のコンクリートの基本周波数及び入力装

置を予め判断することができない。そこで,入力周波数が異なる複数の入力装置を使用すること,さらに,

測定対象のコンクリートの基本周波数を測定できる入力装置が含まれるように選定することを規定した。

測定対象のコンクリートと使用が推奨される入力装置の一例を附属書 C 表 C.1 に示した。例えば,測定対

象のコンクリートの厚さが概ね 200mm 程度であると予測される場合には,直径 15mm~直径 20mm の鋼球

を入力装置に選定する。また,測定対象のコンクリートの厚さが想定できない場合には,直径 10mm~直

径 145mm までの入力装置を選定する。

附属書 C表 C.1は入力装置として鋼球を使用した場合について,解説表 5.6.1に示した算出結果に基づ

くものである。入力装置の選定に際しての注意事項,特に部材厚さの厚いコンクリートでは,周波数解析

方法を工夫することにより,附属書 C表 C.1に示す入力装置よりも直径の小さい入力装置により基本周波

数を測定することが可能であることの事例については,5.6.2.1 を参照されたい。

5.7.2.2 振動センサ

弾性波伝搬速度の測定での振動センサについては 5.5.2.2,基本周波数の測定での振動センサについては

5.6.2.2 を参照されたい。

5.7.2.3 計測装置

弾性波伝搬速度の測定での計測装置については 5.5.2.3,基本周波数の測定での計測装置については

5.6.2.3 を参照されたい。

5.7.3 測定の準備

測定の準備については,5.5.3 及び 5.6.3 を参照されたい。

5.7.4 測定方法

5.7.4.1 弾性波伝搬速度の測定

弾性波伝搬速度はコンクリートの弾性係数,密度,ポアソン比によって変化する。各測定点でのこれら

の相違による弾性波伝搬速度の変化が,コンクリートの部材厚さの評価において許容される誤差の範囲内

であれば,弾性波伝搬速度は全点で測定するのではなく,代表する点で測定した弾性波伝搬速度を測定値

として採用することが出来る。

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17

解説

解 17

超音波法のような他の測定方法を用いて測定した弾性波伝搬速度は,衝撃弾性波法により測定した弾性

波伝搬速度とは一致しないことが多く,さらに,両者の関係については現在のこところ不明な点が多い。

このことから,部材厚さの評価での弾性波伝搬速度の測定方法には他の方法(超音波法等)により測定し

てはならないことを規定した。

弾性波伝搬速度の測定方法は,伝搬時間差から測定する方法で,測定点を同一面とする方法がより多く

のコンクリートに適用できることから,この方法のみを規定した。ただし,測定対象のコンクリート部材

内に厚さが既知の測定箇所が存在する場合には,附属書 B などにより弾性波伝搬速度を測定して,測定結

果を検証する方法もある。

その他,弾性波伝搬速度の測定方法については,5.5.4 を参照されたい。特に,この測定方法では,設置

する 2 点の振動センサ間にひび割れやジャンカなどの変状部がある場合では部材厚さの評価に必要な弾性

波伝搬速度を測定できないことに留意する。また,コンクリート表面での伝搬時間差による測定では,コ

ンクリート表層部特有の要因により測定結果が影響される可能性がある。例えば,既設構造物などでは,

表面と内部の見掛けの密度の相違,波動伝搬時の境界条件の相違及び乾燥や劣化の進行などにより,コン

クリート表面での伝搬時間差から測定した弾性波伝搬速度はコンクリート内部での弾性波伝搬速度と大き

く異なる場合がある。部材厚さを評価するためには,内部を伝搬する弾性波の伝搬速度を測定することが

必要となるが,コンクリート表面での伝搬時間差から内部を伝搬する弾性波の伝搬速度を測定する方法を

規格化することは時期尚早であると判断したため,この方法は懸案事項として 6.2 に示した。

5.7.4.2 基本周波数の測定

基本周波数は,入力される弾性波の周波数が基本周波数の 0.5 倍以上から 1 倍程度以下となる入力装置

により測定された周波数スペクトルにおいて卓越周波数となる。従って,入力される弾性波の周波数が異

なる複数の入力装置で周波数スペクトルを得れば,基本周波数は複数の周波数スペクトルにおいて卓越周

波数になる。このことから,複数の入力装置で得られた複数の周波数スペクトルにおいて共通して卓越周

波数となる周波数を基本周波数とすることを規定した。

基本周波数の有効数字は 3 桁とすることが規定されているが,これは部材厚さの有効数字が 3 桁に規定

されていることによるものである。従って,基本周波数の測定値で要求される周波数の分解能は,部材厚

さの有効数字 3 桁を満足する分解能となる。具体的に一例を示すと,弾性波伝搬速度 4000m/s の場合に要

求される周波数の分解能は,厚さ 100mm のコンクリートでは 198Hz,厚さ 200mm のコンクリートでは

49.8Hz,厚さ 500mm のコンクリートでは 8.0Hz,厚さ 1000mm のコンクリートでは 19.8Hz となる。

この測定方法では,測定位置内部に空洞,はく離,ジャンカなどの変状部がある場合は,これらの影響

が含まれた基本周波数が得られることに注意する必要がある。周波数解析結果は,厚さの等しい同一部材

内の他の測定位置での測定結果や,設計図書に示されている設計厚さから算出される周波数などと比較し

て,測定値の異常の有無を確認することが望ましい。異常値が得られた場合には,入力される弾性波の周

波数が異なる入力装置を用いて再度測定する。この結果においても異常値が得られる場合には,測定位置

内部に空洞,はく離,ジャンカなどの変状部が存在すると判断されるが,この評価方法を規格化すること

は時期尚早であると判断したため,この方法は懸案事項として 6.3 に示した。

その他,基本周波数の測定方法については,5.6.4 を参照されたい。

5.7.4.3 計算

測定した共振周波数は,弾性波がコンクリートの部材厚さ方向に 1 往復する時間の逆数となることから,

部材厚さは附属書 C 式(C.3)により算出できる。

コンクリート表面を伝搬する弾性波とコンクリート内部を多重反射する弾性波とは伝搬経路が異なるこ

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18

解 18

とから,使用する計測装置によっては,附属書 C 式(C.3)により算出した部材厚さに対する補正係数が示さ

れている場合がある。この場合には,この補正係数を用いて補正することができる。

5.7.5 報告

参考として報告に用いる様式例への記入の一例を,解説表 5.7.1に示す。

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19

解説

解 19

解説表 5.7.1―報告に用いる様式への記入例(コンクリートの部材厚さの評価方法用)

測定時刻

周波数解析

名称・構造

コンクリート

No. 1 3

位 置 距離300m 天端付近

伝搬速度(V ) 3860m/s

基本周波数(f 0) 9.56kHz

部材厚さ(L ) 202mm

測 定 年 月 日  20○○年  ○月  ○日 ○曜日 9:30   ~  12:00

測定場所  東京都大田区○○○○○○

天候・気温など 天 候:晴    気 温:  34℃

測 定 者 氏 名: 衝撃太郎     所 属:○○株式会社

測定者資格 資格名: ○○協会講習会修了    登録番号:第2007-0002

測定装置

計測装置製造会社:○○○○株式会社  形  式:○○○○-5

製造番号: 0605002

種  類:鋼球  材  質:鋼材  質 量(直径):φ15mm

振動センサ製造会社:○○○○社   形 式:○○○○型   製造番号:○○○○

周波数範囲(±10%):0.3~12000Hz

点検状況前回点検年月日:20○○年  ○月  ○日 点検者:衝撃太郎

点検内容:各部動作確認

周波数スペクトル周波数間隔:測定厚さ間隔が1mmとなる周波数間隔

波形計測サンプリング間隔:伝搬速度測定0.5μs,基本周波数測定10μsサンプリング数:4096個      .

対象物名 称:○○○○単独洞道    構 造:シールドトンネル覆工コンクリート

材 齢:15年          配(調)合:24-8-20N

測定箇所

2

距離350m 天端付近

入力点にエフロレッセンス

測定結果

3890m/s

9.27kHz

210mm

入力装置 種  類:鋼球  材  質:鋼材  質 量(直径):φ17.5mm

種  類:鋼球  材  質:鋼材  質 量(直径):φ20mm

その他

表面状況 平滑さ 変状の有無 その他特記事項

その他の状況(図示)

良好

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20

解 20

5.8 附属書 D(参考)新設コンクリート構造物におけるコンクリートの圧縮強度評価方法

5.8.1 作成の経緯

この評価方法は,2009 年に NDIS 2426-2 が制定された当初は懸案事項の 1 つに,「コンクリート強度の

評価方法」として挙げられていた。一方,国土交通省では 2006 年から橋梁構造物のコンクリート強度の健

全性を検査するため,「微破壊・非破壊試験によるコンクリート構造物の強度測定要領(案)」を作成し,新

設構造物を対象に監督や検査の充実を目的として強度測定を実施してきた。これを契機に,衝撃弾性波法

による強度評価式を用いたコンクリート強度の評価方法は,実績が高まり,非破壊試験による強度評価方

法としての有効性が実証されつつあると考える。今回の NDIS 2426-2 の改正では,懸案事項に挙げられて

いた「コンクリート強度の評価方法」に検討を重ね,「新設コンクリート構造物におけるコンクリートの圧

縮強度評価方法」と改め,附属書(参考)として作成した。

5.8.2 適用範囲

附属書 D は,新設コンクリート構造物における構造体コンクリートの圧縮強度を衝撃弾性波法により測

定した弾性波伝搬速度を指標として強度を推定(評価)する方法について定めたもので,弾性波伝搬速度と

圧縮強度との関係は使用材料,配(調)合,材齢,打設条件,含水率などコンクリートの各種要因により異

なるため,事前に圧縮強度評価式の作成が可能なもの又は適切な圧縮強度評価式が既に得られている場合

に適用できる。

一般的に弾性波伝搬速度と圧縮強度との相関関係は強度の段階により変化し,強度が大きくなるに従い

弾性波伝搬速度の変化量に対する圧縮強度の変化量が大きくなる傾向があり,強度推定精度の低下が懸念

されること,超高強度領域での適用実績が極めて少ないことなどの理由から,圧縮強度の上限を 60N/mm2

とした。

5.8.3 衝撃弾性波伝搬速度による圧縮強度評価の原理

コンクリートの弾性波伝搬速度を測定することは,弾性波動論から導かれる解説式(5.8.1)により,間接

的にコンクリートの弾性係数を測定することである。

……………………………… 解説式(5.8.1)

ここに,V:弾性波伝搬速度(m/s)

E:弾性係数(Pa)

:密度(kg/m3)

:ポアソン比

一方,従来からコンクリートの圧縮強度と弾性係数との間には経験的に非常によい相関関係が認められ

ている。従って,解説式(5.8.1)を介することにより,圧縮強度と弾性波伝搬速度の間においても,相関関

係が存在すると考えられ,解説図 5.8.1 のように,実験的にも相関関係が確認されており,圧縮強度 Fc

は,弾性波伝搬速度 V の関数として解説式(5.8.2)のような形式的表現で表すことができる。この式を圧縮

強度評価式と呼び,実験的に圧縮強度評価式を作成し,構造体コンクリートの弾性波伝搬速度を測定する

ことにより,圧縮強度を評価することが可能となる。圧縮強度推定精度の一例を解説図 5.8.2 に示す。

解説図 5.8.1 は,構造物は異なるが同一配(調)合のコンクリートであり,打設時にミキサー車より採取

して作製した円柱供試体の弾性波伝搬速度と圧縮強度との相関関係である。相関関係は、構造物ごとには

2

) -(1

) 2-)(1(1VED

ν

ννρ

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21

解説

解 21

顕著であるが、それらを比較すると異なっている。このように,コンクリートの弾性波伝搬速度は,使用

材料,配(調)合,材齢,打設条件,含水率などの各種要因により異なることから,この規格ではコンクリ

ートの種類ごとに圧縮強度評価式を作成こととしている。

また,解説図 5.8.2 は,構造体コンクリートの弾性波伝搬速度測定を行い,同時にその近傍からコアを

採取し,圧縮強度推定式より算定した推定強度とコアの圧縮強度との関係である。推定強度とコアの圧縮

強度との相関関係は,ほぼ±15%の範囲内にプロットしている。

Fc=f(V) ……………………………………………………… 解説式(8.5.2)

5.8.4 圧縮強度評価式の作成

5.8.4.1 圧縮強度評価式

解説図 5.8.1 弾性波伝搬速度と圧縮強度との相関関係の例

10

20

30

40

50

60

3600 3800 4000 4200 4400 4600 4800

圧縮

強度

(N/m

m2)

弾性波伝搬速度(m/s)

① 構造物-g② 構造物-h③ 構造物-I④ 構造物-j⑤ 構造物-k⑥ 構造物-l

② ③

④⑤⑥

解説図 5.8.2 圧縮強度推定精度の例

10

20

30

40

50

60

70

10 20 30 40 50 60 70

推定

強度

(N/m

m2)

コアの圧縮強度(N/mm2)

橋梁構造物ボックスカルバート±10%範囲±15%範囲

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22

解 22

圧縮強度と弾性係数との関係式において,圧縮強度を弾性係数の高次ベキ乗式で仮定すると解説式

(5.8.2)は解説式(5.8.3) 1)のように指数関数式で表される。この式を附属書Dでは圧縮強度評価式とする。

Fc=β×Vα ………………………………………………… 解説式(5.8.3)

ここに,α,βは,式の係数である。

一方,圧縮強度の範囲を限定すれば,圧縮強度は弾性係数の一次式で仮定することが可能となり,解説

式(5.8.3)は解説式(5.8.4) 2) のように二次式で表わすことができる。

Fc=a・c・ρ・V2+b ……………………………………… 解説式(5.8.4)

ここに,a,bは式の係数であり,cはポアソン比による定数で,0.825と仮定する。

5.8.4.2 圧縮強度評価式の作成方法

調査対象構造物と使用材料,配(調)合などが同じコンクリート(以下,同種のコンクリートという)で

作製した円柱供試体の材齢の進行に伴う圧縮強度の増進は,対象構造物での形状,打設,養生条件などが

異なる影響は受けるものの,水和レベルが同等であれば構造体コンクリートの圧縮強度と同等となるため,

圧縮強度評価式の作成では,対象構造物と同種のコンクリートで作製した円柱供試体の材齢の進行に伴う

弾性波伝搬速度と圧縮強度との相関関係を利用する方法を用いることとした。

この様な圧縮強度推定式の作成方法を用いた強度推定法に関しては,新設構造物への適用例,適用性の

検討,推定精度などについて多くの報告がある 3),4)。さらに,5.8.1 節に示した国土交通省の「微破壊・非破

壊試験によるコンクリート構造物の強度測定要領(案)」では,同様な圧縮強度推定式の作成方法が採用さ

れており,新設構造物への展開を通して数多い実績が蓄積されている。

5.8.4.3 試験材齢

コンクリートの弾性波伝搬速度と圧縮強度との相関関係から圧縮強度評価式を必要な精度で作成するた

めには,圧縮強度の範囲が広く得られるように試験する材齢を設定する。そのためには,強度発現の初期

段階からほぼ収束する段階までを,円柱供試体の試験材齢として,3~5 材齢予定することが望ましい。供

試体が予定した材齢に達した時点で,円柱供試体の弾性波伝搬速度の測定及び圧縮強度試験を行うことと

する。

5.8.4.4 円柱供試体の作製

強度評価を行う際に圧縮強度評価式が必要であるため,構造体コンクリートを測定するまでに調査対象

コンクリートの圧縮強度評価式を用意することが求められる。弾性波伝搬速度と圧縮強度との関係は使用

材料,配(調)合,材齢,打設条件,含水率などコンクリートの各種要因により異なるため,調査対象コン

クリートの種類ごとに試験練り又は実機試験などの際に試験に必要な数の円柱供試体を作製し,圧縮強度

評価式を作成する準備を行うのがよい。

5.8.4.5 円柱供試体の弾性波伝搬速度の測定

5.8.4.5.1 測定方法

円柱供試体の弾性波伝搬速度の測定に衝撃弾性波法による多重反射の周波数特性を利用した弾性波伝搬

速度の測定方法を用いる理由は,円柱供試体は長さが比較的短いため,弾性波伝搬時間差を利用した弾性

波伝搬速度の測定方法に比べ,次の 2 点において優れていると考えられるためである。

1) 振動センサが 1 個で,供試体を立てて測定できるため,測定が比較的簡便である。

2) 測定値のバラツキが非常に少なく,測定結果が安定しており,測定者による差異がほとんどない。

また,衝撃弾性波法に限定した理由は,超音波法のような他の測定方法により測定した弾性波伝搬速度

は,衝撃弾性波法によるものとは一致しないことが多くあり,構造体コンクリートの弾性波伝搬速度との

関連で評価に影響を及ぼすと考えられるためである。

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23

解説

解 23

5.8.4.5.2 弾性波伝搬速度の測定方法

円柱供試体の弾性波伝搬速度の測定は,上下面のどちらか一方とするが,キャッピングを行った場合は

その影響を避けるために下面(コンクリート打設時に下になった面)で行うのがよい。衝撃の入力位置は,

縦弾性波の励起を対象とするため,測定面の中心部分とし,振動の測定点は半径の中央付近とすることが

望ましい。従って,3測定点を設ける場合には,振動の測定点は測定面にイメージした正三角形の各頂点

とすることを勧める。なお,正三角形は供試体の半径の半分の同心円に内接するものを想定するのがよい。

時間波形の取込みは,入力装置により何回か弾性波の入力を行い,衝撃弾性波が再現性を有しているこ

とを確認した上で記録することが望ましい。

5.8.4.6 円柱供試体の圧縮強度試験

圧縮強度試験は,弾性波伝搬速度測定と同一材齢で行うことを前提としているため,円柱供試体の弾性

波伝搬速度測定が終了した後,速やかに行うことが妥当である。

5.8.4.7 圧縮強度評価式の決定

円柱供試体の衝撃弾性波法による多重反射の周波数特性を利用した弾性波伝搬速度測定により求めた弾

性波伝搬速度と圧縮強度との相関関係を解説式(5.8.3)を用いて回帰し,係数α,βを求めて圧縮強度評価式

を決定する。なお,円柱供試体の材齢7日から 56 日又は 91 日の圧縮強度は,ほぼ 1.5 倍から 2.5 倍の範

囲内に分布するので,強度の範囲を限定することにより,圧縮強度評価式として解説式(5.8.4)を用いるこ

とも可能である。

5.8.5 構造体コンクリートの弾性波伝搬速度の測定

5.8.5.1 測定方法

構造体コンクリートの弾性波伝搬速度に,衝撃弾性波法によるコンクリートの弾性波伝搬時間差を利用

した弾性波伝搬速度の測定方法を用いる理由は,弾性波の入力点及び振動の測定点を同一面に配置するこ

とにより,構造物のあらゆる部位において,容易に測定を行うことができると考えられるためである。弾

性波の入力点及び振動の測定点を結ぶ直線を測線と呼び,弾性波伝搬速度測定では,測線を適切に選定し

て行うことが望ましい。

なお,5.8.4.5.1 の後半に記した理由により衝撃弾性波法以外の測定方法を使用してはならない。

5.8.5.2 測線の選定に関する留意点

強度を評価する部位において,以下の点に留意して測線を設定することが望ましい。

1) 測線を横断するひび割れの有無を確認し,ひび割れのない場所を選ぶ。

2) ジャンカなどで粗骨材が露出している部分は避ける。

3) 測線とコンクリート側面が平行する場合,測線はコンクリート側面から 10 cm 以上の間隔を設ける。

4) 衝撃の入力し易い位置を選ぶ。

5) 打撃箇所は,型枠面程度の平坦な部分を選び,気泡痕などの部分は避ける。コンクリート表面が凸

凹の場合は,研磨機などで平らにする。

5.8.5.3 測定における注意事項

測定において,以下の点に注意することが望ましい。

1) コンクリートの弾性波伝搬速度は,部材の形状,大きさなどの影響を受けるため,厚さの薄い床版

や壁,幅の狭い梁や柱の測定を行う場合は,適用性に留意する。

2) コンクリートの含水率の低下は弾性波伝搬速度に影響を及ぼすため,乾燥が進行したコンクリート

の場合,測定された弾性波伝搬速度は本来のよりも遅くなることに留意する。

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24

解 24

5.8.6 構造体コンクリートの圧縮強度

附属書 D の D.7 では,構造体コンクリートの圧縮強度は,測定により求めた構造体コンクリートの弾性

波伝搬速度を圧縮強度評価式に代入することにより算定されるとしている。このことは,事前に作成した

圧縮強度評価式を介して調査対象コンクリート中に同種のコンクリートによる円柱供試体を仮想し,その

圧縮強度を,測定による弾性波伝搬速度を用いて非破壊的に求め,構造体コンクリートの圧縮強度と見な

すことを意味している。したがって,圧縮強度を評価する上で,圧縮強度評価式を適切に作成すること,

及び構造体コンクリートの弾性波伝搬速度を適切に測定することが重要である。

5.8.7 報告

参考として報告に用いる様式例の記入例を,構造体コンクリートの圧縮強度評価について解説表 5.8.1

に,圧縮強度評価式の作成について解説表 5.8.2 に示す。なお,解説表 5.8.2 は材齢 28 日に関する記入

例であり,他の材齢については省略する。

参考文献

1) (独)土木研究所ホームページ:衝撃弾性波試験(仮称) iTECS 法による新設の構造体コンクリート強

度測定要領(案),http://www.pwri.go.jp/renewal/relation/conc-kyoudo/kyodo.syougeki1.pdf

2) (独)土木研究所ホームページ:衝撃弾性波試験(仮称)表面 2 点法による新設の構造体コンクリート強

度測定要領(案),http://www.pwri.go.jp/renewal/relation/conc-kyoudo/kyodo.syougeki2.pdf

3) 松田拓,立見栄司,蓮尾孝一:衝撃弾性波法による圧縮強度推定手法に関する研究―円柱供試体に

よる弾性波速度と圧縮強度との関係―,日本非破壊検査協会,シンポジウム;コンクリート構造物

の非破壊検査論文集(Vol.3),pp.161-166,2009.8

4) 岩野聡史,森濱和正:衝撃弾性波法(iTECS 法)による新設コンクリート構造物の圧縮強度の推定,

日本非破壊検査協会,シンポジウム;コンクリート構造物の非破壊検査論文集(Vol.3),pp.167-170,

2009.8

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25

解説

解 25

年 MM 月 DD 日 水 曜日 10 : 00 ~ 12 : 00

ABCDE作業所

○△□▽ WXYZ株式会社

いろはにほ講習会 123-4567

中型ハンマー 鋼製

H-1122 110g

圧電型加速度センサ ASS-440

S-8765 100~15000Hz

校正点検有効期間: 年 AB 月 XY 日 ~ 年 AB 月 XY 日

KS-3333 A-5432

4 μsec.

校正点検有効期間: 年 AB 月 XY 日 ~ 年 AB 月 XY 日

調整方法 鋼製棒の弾性波伝搬速度測定 φ30-800

○○○○高架橋 床版

ボイドスラブ 2014年

コンクリート 24-8-20BB 28 日

測定点No.

測定位置

測定点の配置

平滑さ

変状の有無および状況

測定面の処理方法

その他の状況(必要に応じて図示)

振動測定位置の間隔

(L 2-L 1 ; mm)30 30 30

伝搬速度(Vtime ; m/s)

圧縮強度

(F c ; N/mm2)

受信波記録

備  考

2 : 2 :

3 : 3 : 3 :

平均: 平均: 平均:74.22 73.95

測定箇所の状況

1 2 3

測定結果

伝搬時間差(Δt ; μsec.)

1 : 1 : 1 :

2 :

S-001 S-010 S-020

床版中央X通りに対し45度 床版中央X通りに対し45度 床版中央X通りに対し45度

調整方法: 対比試験片の仕様:

測定対象物名称・部材

構造物名: 部 材 名:

構  造: 竣 工 年:

種  類: 材  齢:

試験装置の仕様・設定

入力装置種  類: 材  質:

製造番号: 質量(直径):

周波数範囲(±10%):

計測装置

型  名: 製造番号:

サンプリング時間間隔:

振動センサ

種類・形式: 型  名:

製造番号:

2013 2014

サンプリング数: 1024

2013 2014

表5.8.1-報告に用いる様式例の記入例(構造体コンクリートの圧縮強度評価用)

測定年月日 測定時刻

測定場所

測 定 者氏  名: 所  属:

資 格 名: 登録番号:

2014

良好 良好 良好

変状なし 変状なし 変状なし

処理なし 処理なし 処理なし

73.79 72.81 74.75

74.58

74.28

74.61

74.44

73.23

73.51

73.83

4042

25.7

報告書に掲載

4057

26.4

省略

4063

26.7

省略

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26

解 26

年 ○ 月 □ 日 火 曜日 10 : 00 ~ 12 : 00

ABCDE作業所 封かん養生

24-8-20BB 24

○△□▽ WXYZ株式会社

いろはにほ講習会 123-4567

小型ハンマー 鋼製

H-0011 25g

圧電型加速度センサ ASE-220

S-9876 100~15000Hz

校正点検有効期間: 年 AB 月 XY 日 ~ 年 AB 月 XY 日

KS-3333 A-5432

20 μsec.

Hz

校正点検有効期間: 年 AB 月 XY 日 ~ 年 AB 月 XY 日

調整方法 円柱供試体の基本周波数測定 φ100×200

油圧式圧縮強度試験機 CT-5555

T-45678

検定有効期間: 年 ab 月 xy 日 ~ 年 ab 月 xy 日

試験材齢・試験日 28 日 年 cd 月 ef 日 木 曜日

整形方法 研磨

供試体No.

長さ(mm)

直径(mm)

質量(g)

単位体積質量

(g/cm3)

弾性波の入力位置及び振動の測定点(必要に応じて図

示)

円柱供試体の上面中心 同 同

伝搬速度(m/s)

圧縮強度

(N/mm2)

関数形

実験定数

表5.8.2-報告に用いる様式例の記入例(圧縮強度評価式の作成用)

円柱供試体作製年月日 作製時刻

作製場所 養生方法

コンクリートの配(調)合 呼び強度(N/mm2)

同報告書に掲載 同

試験技術者氏  名: 所  属:

資 格 名: 登録番号:

試験装置の

仕様・設定

入力装置種  類: 材  質:

製造番号:

計測装置

型  名: 製造番号:

サンプリング時間間隔:

質量(直径):

振動センサ

種類・形式: 型  名:

製造番号: 周波数範囲(±10%):

28.5 26.8

3

基本周波数(Hz)

1 : 1 : 1 :

2 : 2 : 2 :

3 : 3 :

1 2

100.0 100.2

製造番号:

備  考

2014

2013 2014

2013 2014

2013 2014

試験日:

平均: 平均:

圧縮強度評価式

二次式 同

円柱供試体の試験

試験材齢:

整形方法:

2014

調整方法: 対比試験片の仕様:

圧縮強度試験機

種類・形式: 型  名:

サンプリング数:

100.2

3584 3597 3612

2.340 2.331 2.337

4096

周波数分解能: 12.2

194.9 195.8 196.1

27.8

10400

10390

10390

10390

4083 4066 4073

10460

10480

10470

10380

10380

10380

10380

3 :

平均:

10460

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27

解説

解 27

5.9 附属書 E(参考)ひび割れ深さの評価方法

5.9.1 適用範囲

5.9.1.1 対象とした評価方法及び適用条件

ひび割れ深さを測定する方法には,附属書に記載した,(1) 初動波形に着目した評価方法,(2) 時間差を

利用したひび割れ深さの評価方法及びその他に,(3)表面波の減衰を用いた評価方法があるが,(3)は対象と

していない。(3)を対象にしなかった理由は,6.5 に記述する。

附属書 E は,ひび割れ先端で回折した波動を受信することによってひび割れ深さを評価する方法を対象

としており,回折波が測定されていることを確認することが適用条件となる。

初動波形に着目した評価方法については,理論的に回折波が測定される位置を求める方法である。この

方法は,実際的にも広く使用され,その精度についても確認されていることから,ひび割れ深さの評価法

として附属書に記載することとした。

時間差を利用したひび割れ深さの評価方法は,5.9.1.3 のとおり超音波法では以前より用いられている方

法であるが,ひび割れ深さと測定距離の関係が明確ではなく,回折波を受信しているかどうかについては

疑問が残っている。附属書 E では初動波形により回折波が測定されていることを確認することを求めてお

り,適用条件を満足している。

5.9.1.2 測定方法の名称

ひび割れ深さの測定方法として,①初動波形に着目した評価方法,②時間差を利用したひび割れ深さの

評価方法,の名称を使用している。時間差を利用したひび割れ深さの評価方法は,「行路差法」,「伝搬遅延

時間差法」と呼称されている場合もある。旧規格では,「伝搬時間差を利用した評価方法」としていた。伝

搬遅延時間差あるいは伝搬時間差は,暗に波動がコンクリート表面を伝搬した時と,ひび割れ先端を回折

して伝搬した時の時間差を意味している。今回の改訂では,単純に衝撃弾性波の入力時刻と測定点で観測

される時刻の差を利用する方法としたため,測定方法の名称を変更した。

初動波形に着目した評価方法は,「位相反転法」,「直角回折波法」と呼称されることもある。旧規格では,

「受信波形の立ち上り振幅に着目した評価方法」とされていた。この方法についても,着目しているのは,

測定点に到達した衝撃弾性波の初動振幅の方向成分変化であり,これを明確にするため,測定初動波形に

着目した評価方法,という名称に変更した。

5.9.1.3 その他のひび割れ深さ測定方法

ひび割れ深さの測定方法は,超音波法が先行してその技術開発を行っており,附属書 E に採用した初動

波形に着目した評価方法 1),時間差を利用したひび割れ深さの評価方法 2)についての報告がある。衝撃弾

性波法を用いたひび割れ深さの測定方法として附属書 E の 2 種類のほか,Impact Echo 法を応用した方法

も報告されている 3)。

5.9.1.4 適用条件

附属書 E では,ひび割れはコンクリート構造物の測定表面に開口をもち,かつ,測定表面に対して鉛直

な方向に進展し,先端がナイフエッジ状となっている単独のひび割れのみを対象としている。コンクリー

ト表面は,斜交する複数のひび割れが錯綜している場合,又は平行する複数のひび割れがある場合は対象

としていない。また,コンクリート内部において,ひび割れ先端が枝分かれしているような複雑な形状の

ひび割れ,又はひび割れ先端が測定表面から斜め方向に進展しているような形状のものは対象としていな

い。これは,附属書 E に取り上げた現行のひび割れ深さ測定方法の理論,測定原理が,単純な鉛直進展で

ナイフエッジ状先端をもつひび割れを前提としているからである。実際的なコンクリートのひび割れは,

ナイフエッジのような単純な形状ではない場合があることなどに注意が必要である。同様に,附属書 E で

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28

解 28

取り上げているひび割れ深さ測定の理論は,ひび割れ先端で弾性波が回折することを前提としており,こ

のため,構造物を貫通するひび割れに対しては適用することができない。

5.9.2 測定装置

5.9.2.1 入力装置

衝撃弾性法では,基本的に打撃により弾性波をコンクリートに入力する方法を用いる。ひび割れ深さの

評価においても同様である。ひび割れ深さの評価では,測定点に到達した縦弾性波の立ち上り時刻を測定

あるいは観測するため,測定に必要な振幅を発生させることのできる入力装置が必要である。具体的には,

打撃速度を速くすることによって振幅を大きくすることができる。また,打撃体の質量を大きくすること

によって,より強い打撃力を発生させることができる。しかし,打撃体の質量を大きくすると,発生する

弾性波の周波数範囲が低くなり,波形の立上り検知に誤差が生じる場合があり,注意が必要である。弾性

波の入力方法としては,電磁的な方法もある。なお,附属書 E では入力された弾性波の初動波形が入力面

を押し下げる方向に作用することを前提としている。

5.9.2.2 振動センサ

振動センサの選定では,検知器としての感度,周波数範囲また計測装置のアナログデジタル変換精度を

含めた分解能を考慮する。周波数範囲は,発生した弾性波の波形を再現できるよう,発生した弾性波の周

波数範囲において平坦な周波数特性をもつことが要請される。また,加速度型のセンサでは,感度を高く

すると測定周波数範囲が低くなる傾向があるが,弾性波を利用する場合,周波数範囲としては音波領域

(0.5Hz~20kHz)が要請されるため,この周波数範囲においてほぼ平坦な特性を持ち,かつ必要な感度を持

つ振動センサを用いる。

5.9.2.3 計測装置

計測装置は,時間差を利用した評価方法では,弾性波入力時刻と測定点に弾性波が到達した時刻を測定

する。このような計測装置の実現方法として,同期した 2ch の入力をもつ計測装置を用いる方法と弾性波

の入力信号をトリガとして測定点での振動を測定し,時間差を求める方法がある。附属書 E では,計測装

置の時間差測定方法については触れていないが,時間差の計測では,計測装置での系統的な誤差が生じな

いことが要請される。一方,初動波形に着目した評価方法では,原則として測定点での振動波形を観測で

きる装置であればよい。計測装置では,アナログ信号をデジタル信号に変換してデータを保存するデジタ

ル計測器を用いることが望ましい。この場合,デジタル変換速度(サンプリング時間間隔)は,ひび割れ

深さの測定・評価値に影響を及ぼすことに注意が必要である。具体的に,コンクリート内の弾性波速度が

4,000m/s の場合,サンプリングクロック 1μs において弾性波は 4mm 進行する。この距離は,ひび割れ深

さ評価に系統的誤差となる。同時にデジタル変換する場合の分解能(変換器の有効ビット数)も誤差の原

因となる。波形の立ち上りを検知するとき,変換器の有効ビット数が少ないと,波形の立上り検知時刻に

1サンプリングクロック以上の誤差が生じるからである。

5.9.3 測定の準備

ひび割れ開口部からひび割れ先端のひび割れ部に,水分,ゴミ,ほこり,破損した骨材のかけらなどが

詰まっていると,縦弾性波がその介在物を通して伝搬し,結果的にひび割れ深さの評価を誤る場合がある。

このため,測定対象とするひび割れ部は,内部まで清掃することが望ましい。特に,縦弾性波の到達時間

を測定してひび割れ深さを計算する時間差を利用したひび割れ深さの評価方法では,ひび割れ部に水が介

在すると縦弾性波は水を伝搬し,ひび割れ深さを過小評価する可能性があり,注意が必要である。鉄筋の

被り厚さを越えるひび割れの場合も同様に鉄筋を通過する波動の影響を受けるので,注意が必要である。

振動センサがほこり,ゆるんだ骨材上などに設置されると,波動が振動センサに正しく伝達されないこ

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29

解説

解 29

とがあり,測定精度に影響を与える。このため,測定点位置を清浄に保つことが必要である。

5.9.4 初動波形に着目した評価方法

5.9.4.1 基本原理

初動波形に着目した評価方法は,超音波を用いたひび割れ深さの測定方法として用いられている。実際

に初動波形に着目した評価方法が適用できる多くの事例が報告されているが,この基本原理に関しては,

必ずしも広い公認性が得られているわけではない。

圧縮方向成分をもつ波動が,ひび割れ先端を通過するときに波動の伝搬空間が拡大し,回折によって波

動の回り込みが生じる。このとき,波動の進行方向と逆の方向に伝搬する波動は,力の釣り合いによって

引張波となる。すなわち,当初の波動の進行方向に対して 90°以上の角度で回折する波動は引張波,90°以

下は圧縮波となる。初動波形に着目した評価方法は,この原理に基づいている。

5.9.4.2 測定方法

a) 弾性波入力点,測定点の決定

附属書Eでは,ひび割れ開口部から入力点及び測定点までの距離を等距離とすることを記載しているが,

回折角度が直角となる位置関係であれば,必ずしも等距離である必要はない。ただし,これを等距離と置

かない場合には,ひび割れ深さを計算によって求める必要がある。付属書解説図 5.9.1 の場合に評価され

るひび割れ深さは,解説式(5.9.1)による。

21LLd (解説式 5.9.1)

解説図 5.9.1 初動波形に着目した評価方法の測定距離を等距離としない場合の入力点及び測定点

b) 振動センサの感度及び質量

ひび割れ先端を回折して測定点に到達した縦弾性波の振幅は一般的に小さく,この初動波形を測定する

ためには,十分な感度をもつセンサが必要である。また,加速度型のセンサを用いる場合,センサの質量

が大きいと,センサ自体の慣性抵抗によって,初動波形の測定が難しい場合がある。このため,振動セン

サとして加速度計を使用する場合,加速度計の質量について十分に配慮する必要である。

c) 振動センサの方向成分

初動波形に着目した評価方法によるひび割れ深さの測定では,縦弾性波がひび割れ先端を回折し,圧縮

波として測定点の到達することを前提としている。圧縮波として到達する波動はコンクリート表面を上方

向に持ち上げる方向成分をもつことになる。この波動を捉えるためには,振動センサの感度軸方向をコン

クリート表面に鉛直方向とし,上向きの波動が正の振幅として測定できる方向成分をもつことが望ましい。

5.9.4.3 ひび割れ深さの計算値

初動波形に着目した評価方法では,回折角度が丁度 90°の場合,圧縮波も引張波も測定点には到達しな

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30

解 30

い。このため,この評価方法で確認する初期波動が上向きとして観測される測定距離はひび割れ深さより

もやや大きくなることから,この方法によるひび割れ深さの測定値を取り扱う上では,十分な注意が必要

である。

5.9.5 時間差を利用したひび割れ深さの評価方法

5.9.5.1 基本原理

この方法では,原則として入力点で入力された縦弾性波が,ひび割れ先端部を回折して,測定点に到達

することを前提としている。このため,初動波形に着目した評価方法が示すように,ひび割れ開口部から

入力点及び測定点までの距離は,想定されるひび割れ深さに相当する距離よりも長くなければならない。

この前提条件成立の確認は,初動波形に着目した評価方法によって行うことができる。附属書 E では,弾

性波入力点からひび割れ開口部までの距離と,ひび割れ開口部から振動センサの測定点までの距離を等し

くすることを求めているが,これは時間差を利用したひび割れ深さの評価方法の適用条件の可否を判定す

るため,初動波形に着目した評価方法を利用することを前提としているからである。十分にひび割れ先端

を回折した弾性波が測定される確証がある場合には,測定距離を等距離としなくともよい。

測定距離を等距離とおくことが困難の場合には,ひび割れ開口から入力点及び測定点までの距離を等し

くしないこともできる(解説図 5.9.2)。この場合,時間差は,解説式(5.9.2)によって求める。

222

221

1dLdL

VT (解説式 5.9.2)

ここで,

1L : 弾性波入力点からひび割れ開口までの距離(m)

2L :ひび割れ開口から測定点までの距離(m)

解説図 5.9.2 ひび割れ開口から入力点及び測定点までの測定距離を等距離とおくことが困難の場合のひび

割れ測定での入力点,測定点

5.9.5.2 測定方法

a) 弾性波伝搬速度

附属書 E の式(2)及び解説式(5.9.2)では,弾性波伝搬速度を一定としているが,コンクリート内部を伝搬

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31

解説

解 31

する弾性波の速度が一定でない場合,測定結果に誤差が生じる。コンクリート表面,内部,ひび割れ先端

部での弾性波の速度変化は,弾性波の波長などの影響も受けることに注意が必要である(6.5 参照)。

弾性波伝搬速度をあらかじめ決定する場合,表面を伝搬する縦弾性波伝搬速度を,伝搬時間差を利用し

た弾性波伝搬速度の測定方法によって決定することを推奨している。ただし,弾性波伝搬速度が別の手段

によって相当の確かさで決定可能な場合には,必ずしも,附属書の方法に依拠する必要はない。

たとえば,附属書 E の式(2)を変形すると,解説式(5.9.3)が得られる 4)。この式から,測定距離を複数と

り,時間差の 1/2 の 2 乗値と測定距離の 2 乗値の間での直線回帰式を求めると,その勾配が弾性波伝搬速

度の 2 乗,また切片がひび割れ深さの 2 乗となる。この方法を用いる場合,弾性波速度をあらかじめ決定

しておく必要はない。

22

22

2d

TVL

解説式(5.9.3)

b) 入力点,測定点の決定

時間差を利用したひび割れ深さ評価方法の測定の基本原理は,入力された縦弾性波がひび割れ先端を回

折して測定点に達し,その時間差から伝搬経路長を求めることである。この原理が成立するためには,弾

性波速度として縦弾性波の速度を用いる場合には,測定点で得られる信号が縦弾性波であることを確信す

るに足る証拠が必要である。附属書 E では,縦弾性波を用いることを前提として,測定初動波形に着目し

た評価方法によって,確認することを提示している。

c) 弾性波の入力

実際的な衝撃弾性波の入力方法は,鋼球又はハンマによるコンクリート表面の打撃である。弾性波の入

力方法としては,このほか電磁的方法,磁歪素子,圧電素子,超音波探触子などによる方法もあるが,伝

搬時間差測定の主旨から,弾性波の立上り速度が十分に速い入力方法を用いる必要がある。また,弾性波

の入力時刻を確定できることが必要である。この目的のために,振動センサを内蔵した打撃体を使用する

方法がある。

d) 伝搬時間差の測定値

時間差を測定する方法において,波形がピークに至った時間を用いると,測定する振動成分によってピ

ークとなる時刻が異なり,時間差の正しい測定に支障を来す。このため,入力及び測定波形の立上り時刻

の差をもって測定値とすることを前提としている。

5.9.5.3 ひび割れ深さの測定値の計算

附属書 E では,測定されたデータセットから,1 個のひび割れの評価値を得る方法を示している。実際

にひび割れ深さを決定するためには,測定に伴う誤差及び過誤による測定値のばらつきを考慮し,統計的

な処理によって代表値を決定する必要があるが,附属書 E では,これは示されていない。特に,デジタル

測定装置を用いる場合,離散化時間(サンプリング時間間隔)は,時間差の測定値に系統的な誤差を与える。

この誤差が,ひび割れ深さの測定値に与える影響については,十分に配慮する必要がある。また,波形の

立上りを検出する場合,誤差や過誤が伴うので,その処理方法についても考慮が必要である。

5.9.6 報告

参考として報告に用いる様式例への記入の一例を,解説表 5.9.1 に示す。

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32

解 32

解説表 5.9.1 報告に用いる様式への記入例(ひび割れ深さの評価用) 測定年月日 20○○年○月○日○曜日 測定時刻 9:30~ 12:00 測定場所 東京都世田谷区

測定者 氏 名:衝撃 次郎 所 属: ○○株式会社 資格名:○○協会登録技術者 登録番号:000-000

試験装置の

仕様・設定

入力装置

種 類:インパルスハンマ 型 名: ○○社××型 製造番号:0000-01 質量(直径)17g: 校正の有効期間:2011 年 5 月 12 日~2012 年 5 月 11 日

振動センサ 種類・型式:○○社 型 名: ○○○型 製造番号:000000 周波数範囲(±3dB): 0.1Hz~12.5kHz 校正の有効期間: 年 月 日~ 年 月 日

計測装置 型 名:○○社 ××-×型 製造番号:000000 サンプリング時間間隔:1μs 測定時間:2ms 校正の有効期間:2011 年 5 月 12 日~2012 年 5 月 11 日

調整方法 調整方法: 測定箇所の

状況 測定点 No. 1 2 3 4 5

測定位置 50mm 80mm 60mm 70mm 65mm

測定点の配置 等距離 等距離 等距離 等距離 等距離

平滑さ 平滑 平滑 平滑 平滑 平滑 変状の有無及

び状況 なし なし なし なし なし

測定面の処理

方法 研磨処理 なし なし なし なし

その他の状況

(必要に応じて

図示)

時 間

差 測定距離 50mm 80mm 60mm 70mm 65mm 伝 搬 時 間 差(ms)

1: - 2: - 3: - 平均:

1: 0.052 2: 0.051 3: 0.053 平均 0.052

1: 0.045 2: 0.046 3: 0.047 平均 0.046

1: 0.047 2: 0.045 3: 0.046 平均 0.046

1: 0.045 2: 0.046 3: 0.044 平均 0.045

ひび割れ深さ(mm) 65 65 65 65

測 定

初 動

波形

測定距離 50mm 80mm 60mm 70mm 65mm

初動波形の向

き 下 上 下 上 上

備考

参考文献

1) 山口哲夫他:超音波の直角回折波法による鉄筋コンクリートのひび割れ深さの測定,非破壊検査第

45 巻 10 号,pp.742-748,1996

2) 平田隆祥,魚本健人,超音波法によるコンクリートのひび割れ深さ測定精度の向上,コンクリート

工学年次論文集,Vol.22,No.1,pp.355-360,2000

3) 渡海雅信,大津政康:SIBIE によるひび割れ深さ評価の実用化,コンクリート工学年次論文集,Vol.29,

No.2,pp.613-6180,2007

4) 首藤浩一他:衝撃弾性波法によるひび割れ深さの測定,日本非破壊検査協会平成 15 年度春期大会

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33

解説

解 33

講演概要集,2003 年 5 月

6 懸案事項

6.1 懸案事項について

衝撃弾性波法は,多くの測定方法・評価方法に関する研究成果が報告されている。しかしながら,各測

定方法・評価方法の現状の実績などを考慮して改正をしたことから,今回は規格化が保留された測定方法・

評価方法がある。これらの測定方法・評価方法について,今後の規格化にあたっての懸案事項を以下に述

べる。

6.2 コンクリート表層部と内部の条件の違いを加味した衝撃弾性波伝搬速度の測定方法

6.2.1 今後の規格化の必要性と保留理由

附属書 A 伝搬時間差法を利用した弾性波伝搬速度の測定に示した同一面での弾性波伝搬速度の測定方

法は,背面が埋設された構造体コンクリートや部材厚さの厚い構造体コンクリートにも適用でき,また,

測定結果から部材厚さや圧縮強度が評価できるなど,有効な測定方法である。しかしながら,この方法で

測定される弾性波伝搬速度は,コンクリート表層部と内部の条件の違いにより,コンクリート内部の弾性

波伝搬速度と大きく異なる可能性がある。例えば,既設構造物などでは,表面と内部の見掛けの密度の相

違,及び乾燥や劣化の進行などにより,同一面で測定される弾性波伝搬速度はコンクリート内部の弾性波

伝搬速度よりも大きく低下することがある。

コンクリートの表面から内部までの全体の部材厚さを評価するには,コンクリート内部の弾性波伝搬速

度を把握することが必要となる。また,詳細は 6.2.2 に示すが,同一面で測定される弾性波伝搬速度が大き

く低下している場合でも,コンクリートの弾性係数,圧縮強度は低下してないことがあり,コンクリート

の圧縮強度を評価するには,コンクリート内部の弾性波伝搬速度から評価することが必要となる。これら

のことから,同一面での測定によるコンクリート内部の弾性波伝搬速度の測定方法が規格化されることが

期待される。

これに対して,参考文献 1)に示した既往の研究では,この測定方法が提案されている。しかしながら,

現状の実績や適用にあたっての誤差の影響の程度の検証が不十分であり,今回は規格化が保留された。

6.2.2 コンクリート表層部と内部の条件の違いによる影響の事例 6.2.1)

既設構造物における測定事例を解説図 6.2.1 に示す。解説図 6.2.1 は建設後 43 年が経過した構造物で

の測定結果である。解説図 6.2.2に示すとおり,弾性波の入力のタイミングを出力できる入力装置を使用

して,弾性波の入力点と振動の測定点を同一面に配置し,両者の距離差を 200mm から 1000mm まで変化

させて伝搬時間差を測定している。附属書 A 式(1)により,弾性波伝搬速度を算出すると,例えば測定位置

名称:No.3 では,弾性波の入力点と振動の測定点との距離差 200mm から 600mm では弾性波伝搬速度は

2900m/s 程度であるのに対して,距離差 650mm 以上では弾性波伝搬速度が速く変化していることが確認さ

れる。

この変化の原因は,何らかの原因により弾性波伝搬速度がコンクリート内部より表層部で遅くなるため

である。しかしながら,このコンクリート表層部での弾性波伝搬速度の低下は,コンクリート表層部での

圧縮強度や弾性係数の低下とは限らない。この例を解説図 6.2.3に示す。解説図 6.2.3は解説図 6.2.1の

結果が得られた位置でφ142mm のコアを採取し,表面からの深さを変化させて,弾性係数の指標値である

反発度を JIS A 1155 により測定した結果である。コンクリート内部と表面で弾性係数の指標値である反発

度に変化が無いことが確認される。

6.2.3 提案される測定方法 6.2.1)

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34

解 34

既往の研究で提案されている測定方法は,弾性波伝搬速度が内部より表層部で遅くなるコンクリートで

は,弾性波は解説図 6.2.4に示すスネルの法則に基づき伝搬するとの仮定に基づいたものである。この仮

定では,弾性波の入力点と振動の測定点との距離差が近距離の場合では,受信点に最初に到達する振動は

表面を伝搬した弾性波となる。これに対して,弾性波の入力点と振動の測定点との距離差が長くなると,

伝搬速度の速い内部を経由した弾性波(以下,内部弾性波という)が受信点に最初に到達する振動となる。

この仮定に基づく測定方法を以下に示す。

200 300 400 500 600 700 800 900 10002600

2800

3000

3200

3400

附属

書A式

(1)に

よる

弾性

波伝

搬速

度(

m/s)

入力点と振動センサ位置との距離差(mm)

測定位置名称:No.5

200 300 400 500 600 700 800 900 10002600

2800

3000

3200

3400

附属

書A式

(1)に

よる

弾性

波伝

搬速

度(

m/s)

入力点と振動センサ位置との距離差(mm)

測定位置名称:No.3

解説図6.2.1 建設後43年が経過した構造物での伝搬時間差法(同一面配置)を利用した測定結果

弾性波の 入力位置

* 弾性波の入力のタイミングを出力できる入力装置を使用

コンクリート

L2

振動の測定点

2

解説図6.2.2 伝搬時間差法(同一面配置)による測定方法

25 50 75 100 125 150 175 20035

40

45

50

55

60

反発度

表面からの深さ(mm)

測定位置名称:No.3

25 50 75 100 125 150 175 20035

40

45

50

55

60

反発度

表面からの深さ(mm)

測定位置名称:No.5

解説図 6.2.3 解説図 6.2.1 に示した構造物での反発度の測定結果

測定点

弾性波の

入力位置測定点

表面:速度低下

内部

表面を伝搬する弾性波

内部を経由する弾性波

深さDE

解説図 6.2.4 表層部の弾性波伝搬速度が低下した構造物での弾性波の伝搬状況の模式図

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35

解説

解 35

ⅰ)振動センサ付き入力装置による測定方法

弾性波の入力点と振動の測定点との距離差が内部弾性波の伝搬時間差が測定される距離(解説図 6.2.1

測定位置名称:No.3 では L=650mm~1000mm)となる条件で伝搬時間差を測定する。この測定を弾性波

の入力点と振動の測定点との距離差を変化させて複数点で実施する。

各弾性波の入力点と振動の測定点との距離差と測定される伝搬時間差との解説式(6.2.1)に示す関係式を

最小二乗法により求め係数 a から弾性波伝搬速度を決定する。この測定例を解説図 6.2.5に示す。

bTaLΔ P ………………………………………………… 解説式(6.2.1)

ここに,ΔL:弾性波の入力点と振動の測定点との距離差,TP:測定される伝搬時間差,a,b:係数であ

る。

50 100 150 200 250 300 350200

400

600

800

1000

伝搬時間差(μs)

距離差

ΔL

(mm

)

ΔL=3.597TP+79

⇒ a=3.597(mm/μs)=3597(m/s)

解説図6.2.5 表層部の弾性波伝搬速度が低下した構造物での弾性波伝搬速度の測定結果例

弾性波の入力点 測定点 1 測定点 2

内部弾性波の伝搬時間差が測定される距離

・2個の振動センサによる測定方法

解説図6.2.6 2個の振動センサによる測定方法の例

ⅱ)2個の振動センサによる測定方法

2 個の振動センサを内部弾性波の伝搬時間差が測定される弾性波の入力点からの距離(解説図 6.2.1 測

定位置名称:No.3 では L=650mm~1000mm)に設置する。振動センサの測定例を解説図 6.2.6に示す。

測定点 1 と測定点 2 での伝搬時間差と,測定点 1 と測定点 2 の距離差から弾性波伝搬速度を決定する。

6.2.4 規格化にあたっての懸案事項

提案される測定方法は,規格化にあたり以下の懸案事項がある。

・測定結果を検証した事例数が不十分である。

・コンクリート中の弾性波の伝搬速度を表層部と内部の 2 種類のみで想定しているが,弾性波の伝搬速度

は表面側から徐々に変化していることも考えられる。このことから,弾性波の伝搬速度を 2 種類のみと

想定することは,弾性波伝搬速度の測定誤差の要因になると考えられる。しかしながら,この測定誤差

がコンクリートの部材厚さや圧縮強度を評価する上で,どの程度の影響を及ぼすのかが十分に検討され

ていない。

Page 73: コンクリートの非破壊試験-弾性波法- 第2 部:衝 …- 2 - 非破壊試験手法。 注2) 物理的な衝撃を与える方法には,ハンマ,鋼球などによる機械的な方法,励磁コイルによる磁

36

解 36

参考文献

6.2.1)岩野聡史,森濱和正,渡部正:衝撃弾性波法と微破壊試験の併用による構造体コンクリート

の圧縮強度推定方法の提案,土木学会論文集 E2,Vol.69,No.2,pp.138-153,2013

6.3 コンクリート部材内部の変状の評価方法

6.3.1 今後の規格化の必要性と保留理由

附属書 C コンクリート部材厚さの評価方法では,測定位置内部に空洞,はく離,ジャンカなどの変状部

がある場合は,これらの影響が含まれた評価結果が得られることを指摘している。これらの変状部を評価

することは,新設構造物では構造物の耐久性能や安全性能を評価する上で有効であり,また,既設構造物

では劣化の状況を評価する上で有効である。このことから,衝撃弾性波法によるコンクリート部材内部の

変状の評価方法が規格化されることが期待される。

これに対して,既往の研究により 6.3.1)~6.3.3),コンクリート内部の変状による測定値の変化事例が報告さ

れており,これに基づく評価方法が考えられる。しかしながら,現状では,コンクリート内部の変状によ

る測定値の変化の程度や,適用できる変状の大きさや位置関係などの適用範囲の検証が不十分であり,今

回は規格化が保留された。

6.3.2 部材内部の変状による測定値の変化事例 6.3.1)~6.3.3)

既往の研究で指摘されている異常値の発生原因の模式図を解説図 6.3.1に示す。コンクリート内部に変

状が存在せずに健全な場合では,コンクリート表面から弾性波を入力すると,表面と背面での弾性波の多

重反射による基本周波数が測定される。これに対して,コンクリート内部にある程度以上の断面積を有す

る空洞が存在すれば,コンクリート表面と空洞位置での弾性波の多重反射による基本周波数が測定される

ことから,測定される周波数は高く変化する。次に,コンクリート表面にはく離が存在すれば,コンクリ

ート表面に与えた衝撃によって,たわみ振動が発生し,測定される周波数は変化する。また,コンクリー

ト内部に健全部よりの弾性係数が低下したジャンカなどの脆弱部が存在すれば弾性波の伝搬速度は遅くな

り,測定される基本周波数は低く変化することや対面配置により測定する弾性波伝搬速度は遅くなる。以

上の性質から,測定位置内部に空洞,はく離,ジャンカなどの変状部がある場合では,弾性波伝搬速度及

び多重反射による基本周波数の測定結果は異常値となる。

6.3.3 提案される評価方法

測定点を複数点設定し,各点で附属書 A に基づき弾性波の伝搬時間差や附属書 B に基づき弾性波の基本

周波数を測定し,各測定値を比較することにより,空洞,はく離,ジャンカなどの変状部の有無,及び,

変状位置を評価することが可能となる。

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37

解説

解 37

解説図 6.3.1 コンクリート内部に変状部がある場合での異常値の発生原因の模式図

6.3.4 規格化にあたっての懸案事項

6.3.3 の性質を利用した測定位置内部の変状位置の評価方法については,規格化にあたり以下の課題があ

る。

・測定値がどの程度変化すれば異常値であるのかの判定方法について,明確な基準が示されていない。

・たわみ振動の発生を判別する明確な基準が示されていない。

・評価できる変状の大きさ,変状の位置,変状の程度などの適用条件が明確でない。

参考文献

6.3.1)岩野聡史,森濱和正,極檀邦夫,境友昭:衝撃弾性波法を適用した新設コンクリート構造物

での圧縮強度推定および内部欠陥探査に関する検討,日本非破壊検査協会シンポジウムコンクリート構造

物への非破壊検査の展開論文集(Vol.2),pp.475-482,2006

6.3.2)渡辺 健, 橋本 親典, 大津 政康, 一宮 桂一郎 : インパクトエコー法に基づいたイメージン

グ手法によるコンクリート内部空隙の検出,コンクリート工学年次論文集,Vol.24,No.1,pp.1581-1586,

2002

6.3.3)鎌田敏郎,内田慎哉,角田蛍,佐藤浩二:実橋梁 PC 桁での非破壊試験による PC グラウト充

填評価方法に関する研究,土木学会論文集 E2(材料・コンクリート構造),Vol.68,No.4,pp.238-250,2012

6.4 既設のコンクリート構造物における圧縮強度評価式の作成方法

6.4.1 今後の規格化の必要性と保留理由

附属書 D 新設コンクリート構造物における圧縮強度評価方法では,調査対象コンクリートと使用材料,

配(調)合などが等しい同種のコンクリートを用いて,圧縮強度評価式を作成することを必要としている。

つまり,附属書 D では,これまでに建設され,維持管理が必要とされる多くの既設のコンクリート構造物

入力位置 測定点

弾性波

背面で多重反射 ⇒正常な周波数

入力位置測定点

弾性波

空洞で多重反射 ⇒周波数が高く変化

入力位置 測定点

たわみ振動多重反射とは 異なる周波数

入力位置測定点

弾性波

伝搬速度の低下 ⇒周波数が低く変化

入力位置

測定点

弾性波

伝搬速度の低下

(a)健全なコンクリート (b)内部に空洞がある場合 (c)表面にはく離がある場合

(d)内部にジャンカがある場合

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38

解 38

が適用対象外となる。今後,既設のコンクリート構造物を適用対象とした圧縮強度の評価方法が規格化さ

れることが期待されるが,これには,既設のコンクリート構造物にも適用可能な圧縮強度評価式の作成方

法を確立する必要がある。これに対して,参考文献 6.4.1)や参考文献 6.4.2)では,既設のコンクリート構造

物において微破壊試験や JIS A 1107 による圧縮強度の試験方法を併用することによる圧縮強度評価式の作

成方法が提案されている。しかしながら,現状では実績や理論的な根拠の検証が不十分であり,今回は規

格化が保留された。

6.4.2 提案される評価方法 6.4.1)

ⅰ)弾性波伝搬速度と圧縮強度の関係について

使用材料,配(調)合などが異なる66種類のコンクリートで円柱供試体を12本ずつ作製し,附属書D.5に示

した手順に従い弾性波伝搬速度と圧縮強度を測定して,両者の関係式がコンクリートの配合によってどの

ように変化するのかを確認した。66種類の配合の全円柱供試体で得られた弾性波伝搬速度と圧縮強度の関

係を解説図6.4.1(a)に示す。両者を解説式(6.4.1)に示す指数関数で回帰すると,解説式(6.4.2)に示す関係式

が相関係数0.896で得られた。

αβ PC Vf ……………………………………………………………解説式(6.4.1)

129.5P

17C 10224.1 Vf ………………………………………………解説式(6.4.2)

66 種類の配合の全円柱供試体で得られた弾性波伝搬速度と圧縮強度には,ある程度の相関関係がある。

しかし,例えば弾性波伝搬速度 4000m/s での圧縮強度は,解説式(6.4.2)の回帰式では 36.5N/mm2 となるの

に対して,解説図 6.4.1(a)より,実際には約 25N/mm2~約 60N/mm2 と広範囲に分布している。これに対

して,使用材料,配(調)合などが全て等しい同種のコンクリートでの弾性波伝搬速度と圧縮強度の関係

の一例を解説図 6.4.1(b)に示す。同種のコンクリートでは,実際の測定結果と回帰曲線との誤差が小さく,

弾性波伝搬速度と圧縮強度は相関係数 0.912~0.991 と強い相関関係である。

以上のように,弾性波伝搬速度と圧縮強度の関係は,コンクリートの使用材料,配(調)合などによって

異なることから,附属書 D では,調査対象コンクリートと使用材料,配(調)合などが等しい同種のコンク

リートを用いて,圧縮強度評価式を作成することを必要としている。

ⅱ)弾性波伝搬速度と圧縮強度の関係の性質について

コンクリートの配合によって,弾性波伝搬速度と圧縮強度の関係式がどのように変化しているのかを確

認した。66種類の配合毎に解説式(6.4.1)に示す弾性波伝搬速度と圧縮強度の関係式を最小二乗法により求

め,弾性波伝搬速度が1%増加したときの圧縮強度の変化率を比較した。その結果を解説図6.4.2に示す。

解説図6.4.2より,弾性波伝搬速度が1%増加したときの圧縮強度の変化率は1.03~1.07であり,コンクリー

トの使用材料,配(調)合などが変化しても,この変化率に大きな差がないことが確認される。

解説図6.4.2の結果は,解説式(6.4.1)での定数βと解説図6.4.1(b)での回帰曲線の切片は配合によって大

きく変化するものの,解説式(6.4.1)での定数αと解説図6.4.1(b)での回帰曲線の勾配は配合が異なっても

変化しないことを示す。

ⅲ)圧縮強度評価式の作成方法について

ⅱ)で確認された性質に基づき,コア採取による圧縮強度試験結果を併用する以下の手順により,圧縮

強度評価式を設定することが提案されている。

a) コアを採取する位置で弾性波伝搬速度を測定し,解説式(6.4.2)に示される全配合での弾性波伝搬速度と

圧縮強度の関係式で暫定的に圧縮強度fCT(以下,暫定推定強度という)を推定する。

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39

解説

解 39

b) コアを採取して,JIS A 1108に準じた方法で圧縮強度試験を行う。

c) b)による圧縮強度fCとa)による暫定推定強度fCTとの比率kを解説式(6.4.3)により求める。

CT

C

f

fk ………………………………………………………………解説式(6.4.3)

d) c)による比率kを用いて,解説式(6.4.4)を圧縮強度評価式とする。

129.5P

17C 10224.1 Vkf ………………………………………解説式(6.4.4)

なお,ⅲ)は暫定推定強度とコア採取による圧縮強度試験結果との比率により補正する方法であるが,

差分により補正する方法については参考文献6.4.2)により提案されている。

6.4.3 規格化にあたっての懸案事項

提案される圧縮強度評価式の作成方法には,規格化にあたり以下の課題がある。

・本提案では,弾性波伝搬速度の増加に対する圧縮強度の変化率(解説式(6.4.1)での定数α)は,コンク

リートの使用材料,配(調)合などが変化しても,大きな差がないことを利用している。しかしながら,

この根拠については,十分な検討がされていない。

・本提案で用いている弾性波伝搬速度と圧縮強度の相関関係は,対象構造物と同種(使用材料,配(調)合

などが等しい)のコンクリートの材齢の進行に伴う弾性波伝搬速度と圧縮強度との相関関係である。こ

れに対して,コンクリートの水セメント比の違いによる弾性波伝搬速度と圧縮強度との相関関係を利用

する方法も提案されている 6.4.3)。この方法についても,検討することが必要であると考えられる。

・本提案により,圧縮強度評価式を設定し,圧縮強度の評価行なった場合での精度等が十分に検証されて

いない。

3000 3500 4000

10

20

30

40

50

60

70

80

弾性波伝搬速度(m/s)

圧縮

強度

(N/m

m2 )

:BB21, 0.991: N27, 0.953: H36, 0.976: N50, 0.912

コンクリート種類,

相関係数

3000 3500 4000

10

20

30

40

50

60

70

80

弾性波伝搬速度(m/s)

圧縮

強度

(N/m

m2 )

相関係数:0.896f' C=1.224×10-17×VP

5.129

(a) 66種類の配合を混在した場合 (b) 同種のコンクリート毎に比較した場合

解説図6.4.1 弾性波伝搬速度と圧縮強度の関係

2275 2300 2325 23501

1.05

1.1

1.15

1.2

単位容積質量(kg/m3)

圧縮

強度

変化

解説図6.4.2 弾性波伝搬速度の変化に対する圧縮強度の変化について

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40

解 40

参考文献

6.4.1)岩野聡史,森濱和正,渡部正:衝撃弾性波法と微破壊試験の併用による構造体コンクリート

の圧縮強度推定方法の提案,土木学会論文集 E2,Vol.69,No.2,pp.138-153,2013

6.4.2)反発度法,超音波法及びその複合法による構造体コンクリートの強度推定のための非破壊試

験方法(案),日本建築学会 鉄筋コンクリート造建築物の品質管理および維持管理のための試験方法,

pp.423-424,2007

6.4.3)前掲書6.4.2)附属書 強度推定式の作成方法(案),日本建築学会 鉄筋コンクリート

造建築物の品質管理および維持管理のための試験方法,pp.425,2007

6.6 コンクリート内部に弾性波の発信源がある場合の弾性波伝搬速度測定方法

6.6.1 今後の規格化の必要性と保留理由

5.3.1 で記載されているように磁気的な方法による入力装置では,励磁コイルに電圧を印加することによ

り発生させた磁場を強磁性体に作用させ弾性波を入力する 1)。コイルと強磁性体は必ずしも接触している

必要はない。したがって,解説図 6.6.1 に示すように,強磁性体をコンクリート表面に設置する方法の他に,

コンクリート内部に埋設された鉄筋などを弾性波の発信源とすることも可能である。コンクリート内部に

埋設された鉄筋を弾性波の発信源とした場合には,発信源となる鉄筋自体の品質の(例えば,腐食等の劣

化による)変化,あるいは鉄筋とコンクリートとの境界近傍の状態変化を捉えることが可能であり,表面

より弾性波を入力する方法とは異なったアプローチで対象物を評価できる。例えば,RC 柱隅角部におけ

るフープ筋の破断や PC 桁グラウト未充填の評価などにも適用可能との報告もあり 2), 3),今後の発展が期待

される。

弾性波入力位置

(鉄筋などコンクリート内部の強磁性体)

励磁コイル

弾性波入力位置

(コンクリート表面に設置した強磁性体)

励磁コイル

コンクリート コンクリート

解説図 6.6.1―磁気的な力による衝撃弾性波入力イメージ

上記の方式をコンクリートの弾性波伝搬速度の測定方法として適用することを想定した場合,コンクリ

ート内部の強磁性体より入力された弾性波は,コンクリート表面に設置した振動センサにて受信すること

になる。このことは,鉄筋からコンクリート表面までの,いわゆるかぶりコンクリート部分の平均的な弾

性波伝搬速度として測定可能であることを意味する。したがって,コンクリート表層部の部分的な経年変

化などを評価できるメリットがあることから,弾性波伝搬速度測定手法のひとつとして規格化されること

が期待される。ただし,懸案事項として,速度の測定においては励磁コイルとコンクリート内部の鉄筋と

の位置関係に関して注意が必要である。すなわち,コンクリート内部の鉄筋に作用する磁場の強さは,励

磁コイルと鉄筋との距離の 2 乗に反比例して減衰するため,コンクリート内部の鉄筋と励磁コイル間との

距離が離れていると振動センサで受信するのに十分な感度が得られない恐れがある。励磁コイルによる鉄

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41

解説

解 41

筋への磁場の作用が期待できる限界距離は,装置の出力性能やセンサの感度により異なるため,装置毎に

測定可能な鉄筋と励磁コイル間距離の条件をあらかじめ把握しておく必要がある。加えて,コンクリート

内部の鉄筋に作用する磁場の範囲は,励磁コイルの形状など種々の条件により異なるため,弾性波の入力

点の位置が不明瞭となる場合があることにも留意する必要がある。これらの理由から,コンクリート内部

に弾性波の発生源がある場合の弾性波伝搬速度の測定について,今回は規格化が保留された。

6.6.2 手法・方法の事例

コンクリート内部の鉄筋を弾性波の発信源として弾性波伝搬速度を測定するには,様々な伝搬経路を経

て振動センサに到達する弾性波の内,コンクリート中を最短距離で通過した弾性波の波形の立上がりを振

動センサで捉える必要がある。現状では,解説図 6.6.2 に示すように,鉄筋直上に励磁コイルを配置し,2

個の振動センサを用いて,以下の解説式 6.6.1~6.6.3 により伝搬速度を導き出す。この方法では,鉄筋の位

置,深さなどの情報が既知であることが前提条件となる。これらが未知の場合には,NDIS 3429:2011「電

磁波レーダ法によるコンクリート構造物中の鉄筋探査方法」などにより,コンクリート内部の鉄筋からコン

クリート表面までの距離を測定する。

tVtime

12

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・解説式 6.6.1

ここに, timeV :伝搬時間差を利用して測定した弾性波伝搬速度(m/s)

t :測定された伝搬時間差(s)

2 :入力(弾性波発生)箇所から振動センサ 2 までの距離(m)

1 :入力(弾性波発生)箇所から振動センサ 1 までの距離(m)

ℓ 1及びℓ 2(m)は次の式によって算出し,四捨五入により有効数字 3桁に丸める。

22

22 DL ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・解説式 6.6.2

22

11 DL ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・解説式 6.6.3

ここに, D :励磁コイル下端から鉄筋までの距離(m)

2L :励磁コイル中心から振動センサ 2 までの距離(m)

1L :励磁コイル中心から振動センサ 1 までの距離(m)

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42

解 42

鉄筋:入力(弾性波発生)箇所

励磁コイル

L1

L2

ℓ1

ℓ2

D

振動センサ1 振動センサ2

コンクリート

一例として,コンクリートの設計基準強度を 6 水準(15,18,21,24,27,30N/mm2),かぶり厚さを

30 ㎜と 50 ㎜の位置とした試験体に上記測定手法を適用して弾性波伝搬速度を測定し,同時期に打設した

φ100 ㎜×h200mm の円柱試験体を,JIS A 1108(コンクリートの圧縮強度試験方法)により圧縮強度値を

測定した時の弾性波伝搬速度と圧縮強度との関係を解説図 6.6.3 に示す 4)。弾性波伝搬速度と圧縮強度の関

係については,6.4 に記載のように,配合などにより変化するため一概に相関関係があるとは言えないが,

圧縮強度の変化に応じて弾性波伝搬速度が変化する傾向が認められる。

この方法で測定するためには,解説図 6.6.4 に示すように鉄筋と直交する励磁コイル中心軸方向にセンサ

を配置する必要がある。こうすることで,鉄筋に作用する磁場の範囲に関わらず,発信源から最短距離で

到達する弾性波を捉えることが出来る。また,弾性波発信源となる鉄筋に直交する鉄筋の配筋間隔によっ

ては鉄筋を介して到達する弾性波が先に到達する場合もあるため,注意を払う必要がある。

振動センサ

鉄筋

励磁コイル

鉄筋

振動センサ

(配置不可)

振動センサ

(配置不可)

コンクリート コンクリート

鉄筋

鉄筋に作用

される磁気力

励磁コイル

鉄筋に作用

される磁気力

解説図 6.6.4―励磁コイル,鉄筋,振動センサの位置関係

振動センサの配置は,入力点の位置が明確になれば鉄筋の配筋に左右されないような配置で測定できる

ため,センサを複数個設置するなどの手法により,より的確な測定が可能となると考えられる。

参考文献

1) 高鍋雅則,橋本光男:鉄筋コンクリート診断のためのパルス電磁力音響法の提案,非破壊検査,Vol.52,

No.11,pp.628-632,2003.11.

2) 李 興洙,鎌田敏郎,内田慎哉,新名 勉,久利良夫:電磁パルス法によるフープ筋曲げ加工部の

鉄筋破断の検出方法に関する基礎研究,コンクリート構造物の補修,補強,アップグレード論文報

解説図 6.6.2―コンクリート内部に発信源をもつ

弾性波伝搬速度測定

解説図 6.6.3―弾性波伝搬速度と圧縮強度との関係

Page 80: コンクリートの非破壊試験-弾性波法- 第2 部:衝 …- 2 - 非破壊試験手法。 注2) 物理的な衝撃を与える方法には,ハンマ,鋼球などによる機械的な方法,励磁コイルによる磁

43

解説

解 43

告集,第 11 巻,pp.291-298,2011.10.

3) 角田 蛍,鎌田敏郎,内田慎哉,宗像晃太郎,稲熊唯史:弾性波による PC グラウト充填評価手法

への電磁パルス法の適用に関する基礎研究,コンクリート構造物の補修,補強,アップグレード論

文報告集,第 9 巻,pp.39-44,2009.10.

4) 橋本光男,高鍋雅則:鉄筋コンクリート診断への電磁パルス音響法の適用-電磁パルス音響法によ

るコンクリートの弾性波伝搬速度測定-,検査技術,Vol.18,No.10,pp.7-11,2013.10.

7 引用に関する事項 該当なし

8 特許権などに関する事項 該当なし

9 その他

9.1 参考文献

1) ASTM-C1383-04: Standard Test Method for Measuring the P-Wave Speed and the Thickness of Concrete Plates

Using the Impact-Echo Method, 2004