セラミックス - sic.shibaura-it.ac.jpnagayama/2017年度セラミックス第6,7,8... ·...
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セラミックス
2017年 5月 23日(火),30日(火)
6月 6日(火)
工学部 材料工学科 教授 永山 勝久
第 6,7,8 回目
( 2号館 2301教室 )
日本 アメリカ ニュ-セラミックス High Technology Ceramics (新しいセラミックス) (高い技術を有するセラミックス) ファインセラミックス Advanced Ceramics (微細・緻密なセラミックス) (先端技術のセラミックス) ↓ ① 高度に精選された原料 ② 精密に調整された組成 ③ 十分に制御された 製造プロセス を用いた『知識集約的製品』 (高機能・高付加価値) ⇒ 図1,表1-1~1-3,表2 (参考資料:図4~図8) 【参考】 図2:ニューセラミックスの 生産総額(市場規模) 図3:ニューセラミックスの 市場規模の成長予測
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ①
京セラ株式会社
ファインセラミックスワールドより
http://www.kyocera.co.jp/fcworld/index.html
図1 ファインセラミックスの概念図
代表的な応用例
① 電気・磁気
・光学分野
ファインセラミックスの
代表的応用分野・機能
絶縁性
半導体
導電性
磁性
誘電性
・圧電性
光学
集積回路用パッケーシ゚、半導体用各種基板
(電子デバイス用基板)、絶縁用製品 他
各種センサ材料、化合物半導体関連製品
電極、電池用部材、発熱体、サーミスタ、バリスタ、超電導部品、その他
フェライト磁石、フェライト磁気ヘッド、メモリ部材、薄膜磁気ヘッド、その他
コンデンサ素子、圧電体、水晶振動子
(各種超音波振動子など)、その他
光ファイバー、レーザー発振用素子、
特殊ガラス、光変換素子(LEDなど) 他
表1-1 ファインセラミックスの分類 【 ← 表2 参照】 (一社)日本ファインセラミックス協会・産業動向調査 より
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ②
③ 熱的
・半導体
・原子力
関連分野
高温高強度
高温耐食性
半導体関連
原子力関連
その他
工具・高硬度
耐摩耗性
その他
WC工具、サーメット1)工具、セラミック工具、
ダイヤモンド工具、CBN工具、コーティング工具(金属基材・WC基材・その他の基材)、他
② 機械的
分野 粉体処理装置、ポンプ, 液体処理装置、
製紙装置紡錘装置、その他耐摩耗部材
精密機器部品、精密治具、食品加工装置部品、炭素繊維複合部材、セラミック各種複合部材、切削用セラミック部材、他
スパークプラグ、エンジン部材、その他
熱処理用治具、その他
半導体製造装置用部材、その他
各種原子力関連材料、その他
各種耐熱・断熱部材、その他
表1-2 ファインセラミックスの分類【 ← 表2 参照】
ファインセラミックス の代表的応用分野・機能 代表的な応用例
(一社)日本ファインセラミックス協会・産業動向調査 より
1) 金属の炭化物,窒化物等を
金属と複合化した超硬質材料
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ③
④ 化学・生体生物
・生活文化分野
化学 濃度センサー(酸素濃度測定用
センサ-)、セラミックフィルター、
各種耐食容器・治具等、その他
生物・生体 生体材料(人工骨、人工関節、
人工歯根)、化粧品・医薬部品 他
生活文化 家電・住宅用材料、生活雑貨、
繊維・衣料、スポーツ・レジャー用品、抗菌性セラミックス部材、表面処理材、装身・装飾、その他
⑤ 薄膜原料、
複合材料分野
セラミックス薄膜用ターゲット原料、複合材料添加用セラミックス繊維
・微粒子、表面処理用溶射材、他
表1-3 ファインセラミックスの分類【 ← 表2 参照】
ファインセラミックスの
代表的応用分野・機能 代表的な応用例
(一社)日本ファインセラミックス協会・産業動向調査 より
薄膜原材料、
繊維・微粒子
表面改質
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ④
表2 ニュ-セラミックスの機能・材料・応用製品 機能大分類 機 能 酸化物セラミックス 非酸化物セラミックス 応用製品例
耐熱性 Al2O3 SiC, Si3N4 耐熱構造材
断熱性 ZrO2, SiO2 C 各種断熱材伝熱性 BeO SiC(+ BeO) 基板硬質・耐磨性 Al2O3 SiC メカニカル・シール・リング
切削性 Al2O3 TiC, TiN 切削工具
研磨性 ― B4C, ダイヤモンド 砥石,研磨材
生体適合性 Al2O3,アパタイト ― 人工骨坦体性 コーディライト ― 触媒担体耐食性 Al2O3 BN, TiB2, Si3N4 耐食部品
絶縁性 Al2O3 SiC(+ BeO) IC基板,パッケージ
導電性 ZrO2 SiC, MoSi2 抵抗発熱体
誘電性 ZrO2, BaTiO3 ― コンデンサ
イオン伝導性 ZrO2, β -Al2O3 ― 酸素センサ,電池
半導性 SnO2, ZnO-Bi2O3 SIC ガス・センサ,バリスタ圧電性 PZT, ZnO ― 着火素子,発振子磁性 (Zn, Mn)Fe2O4 ― 磁心,記憶素子
蛍光性 Y2O3 ― 蛍光体
透光性 Al2O3 ― Naランプ偏光性 PLZT ― 偏光素子導光性 SiO2 ― 光ファイバ
原子炉材 UO2 UC 核燃料
減速材 BeO C 減速材
制御材 ― B4C 制御材
熱的機能
機械的性質
生物・化学的機能
原子力関連機能
光学的機能
電気・電子的機能
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ⑤
図2 ニューセラミックスの生産総額(市場規模) 平成27年度(2015年度):2兆4,510億円
出典: (一社)日本ファインセラミックス協会
(一社)日本ファインセラミックス協会
産業動向調査報告 より
http://www.jfca-net.or.jp/
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ⑥
図3 日本のニューセラミックス市場規模(2020年までの成長予測)
(一社)日本ファインセラミックス協会・産業動向調査 より
← 1.8倍 ← 国内需要
↑
輸出総額
↑
2.5倍
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ⑦
2009年 ↓
2020年 ↓
2020年に成長が期待されるニューセラミックスの主要分野 1.環境・エネルギー分野, 2.自動車関連分野, 3.情報・通信分野
4.医療分野
① 次世代2次電池 ⇒ 高性能リチウムイオン電池用電極材料(ex.電気自動車用)
② 発光素子(ex.液晶ディスプレイバックライト照明用・Ⅲ-Ⅴ族化合物半導体LED)
① セラミックス生体材料(人工関節,人工骨,人工弁 等)
② 医療用セラミックスセンサー:胸部,心臓,脳部超音波画像診断(エコー)用
圧電セラミックス:PZT(チタン酸ジルコン酸鉛Pb(Zr,Ti)O3)セラミックス
『リチウムイオン電池』 :電解質中のLiイオンが電気伝導を担う2次電池 正極にリチウム酸化物,負極に炭素を用いる
図4
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ⑧
電気自動車の構造図
iPhone搭載リチウムイオン電池
図5
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ⑨
(←使い捨て型) (←充電により
繰り返し使用)
『はやぶさ』
2003年5月9日に宇宙科学研究所ISASが打ち上
げた小惑星探査機(地球重力圏外にある天体表面に着陸し、サンプルリターンに世界で初めて成功)
2005年夏に「イトカワ(アポロン群の小惑星,地球から約3億km,直径540m)」に到着し、表面を詳細に観測後、表面の微粒子サンプルを採取し2010年
6月13日22時51分に60億km,7年間の旅を終え、大気圏再突入し消滅(カプセルとサンプルが帰還)
電力源は太陽電池で、リチウムイオン電池を搭載
小惑星イトカワ:540m×270m×210m
はやぶさの着陸想像図
『はやぶさ』
に搭載された
イオンエンジン
Xeをイオン化し、電場で加速 して噴射(マイクロ波放電式) する独自のシステムを採用
はやぶさに搭載された
リチウムイオン電池
はやぶさの着陸想像図
(JAXA)
図6
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ⑩
図 超音波画像診断装置(エコー)とプローブ
図 圧電セラミックス素子の超音波発生機構 図7
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ⑪
人々の心豊かで幸せな生活をセラミックスの科学・技術で実現する 第 6,7, 8 回 HP掲載資料 ⑫
図8
セラミックスの種類と用途
(-代表的なセラミックス材料-)
セラミックス材料の大分類 (1)酸化物系セラミックス
(2)非酸化物系セラミックス
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ⑬
1. 酸化物系セラミックス 『代表的な材料(金属酸化物を原料としたもの)』
:Al2O3(アルミナ),ZrO2(ジルコニア),MgO(マグネシア),
SiO2(シリカ),TiO2(チタニア),Fe3O4(マグネタイト),
BaTiO3(チタン酸バリウム),Pb(Zr,Ti)O3(ジルコン酸鉛),
UO2(ウラニア),PuO2(プルトニウム)・・・
核燃料
注)Pb(Zr,Ti)O3(ジルコン酸鉛)セラミックス
:圧電体セラミックス材料 の代表
『圧電性(piezoelectric effect)』 とは
①ある種の材料に圧力(応力)を加える電圧を発生する現象
②ある種の材料に電気を流す(電圧を印加)と振動(変位)する現象
【代表材料】:水晶(クオーツ),PZTセラミックス(・・・誘電体の一種)
【応用例】 ① ガスコンロ,ファンヒターの点火スイッチ
② 水晶振動子(クオーツ時計), 魚群探知機,
超音波振動子, スピーカーなど各種振動用センサ素子
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ⑭
①Alの酸化物を精製・調整し焼結したもの
②電気絶縁性,耐熱性,耐食性に優れる
③電子材料の基板として多用される(IC基板、ICパッケージ)
④耐摩耗性を利用した軸受け,シャフト
⑤化学的安定性,生体組織適合性を利用した人工骨,
人工歯,人工関節などの
生体材料
⑥軽量性とダイヤモンドに
次ぐ高硬度
⑦成形・加工の容易さ
(マシナブル・セラミックス)
アルミナAl2O3
図 アルミナ製品(一例)
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ⑮
図 セラミックス多層基板(左:DRAM用,右:フラッシュメモリ用)
図 電子デバイス用各種セラミックス製パッケージ
コンピュータのメインメモリや デジタルテレビ,デジタルカメラ等の 情報機器の記憶装置に使用される 揮発性の半導体メモリ(RAM)
DRAM:Dynamic Random Access Memory
Flash Memory
書き換え可能で、電源を切っても データが消えない不揮発性の半導体 メモリ(ROM:Read Only Memory) (ex.HDD,SDメモリカード,USB)
多層基板:集積回路が3~10層程度,厚み(上下)方向に積層された高密度基板
⇒ 電子回路基板を3層以上重ね合わせ、各層を配線し回路を3次元化した基板)
各種OA機器,携帯電話,デジタルカメラ,ビデオカメラ,ゲーム機,PC用マザーボード等に使用
第 6,7, 8 回目
HP掲載資料 ⑯
ジルコニア ZrO2
①耐熱性と耐食性に優れる(→溶融金属,ガスなどに反応しない)
②純物質状態では高温での結晶変態に伴う破壊を誘発するため、
安定化剤(酸化カルシウム)を添加して焼結し、『安定化ジルコニア』
として高温発熱体等に利用
(・・・酸素イオン伝導体 ⇒固体電解質:「燃料電池」)
③キュービックジルコニアCZは光の屈折率が2.17と天然ダイヤモンド
の2.47に近いためダイヤモンドの代用品として用いられている
図 Cubic ZrO2 図 ジルコニア耐熱材料
Mg,Ca,希土類金属等
活性金属用溶解ルツボ
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ⑰
他の代表的な酸化物系セラミックス (a) マグネシア:MgO
① 透過性セラミックスの代表的材料
(→ 高圧ナトリウム灯用発光管に利用)
② Pt,Niや希土類金属用の溶解用ルツボとして多用
(b) ベリリア:BeO
:熱伝導率に優れ,かつ絶縁性が良好であるため
IC回路の放熱基板に利用(但し金属Be同様、毒性がある)
(c) チタニア:TiO2
:硬度,引張り強さが大きい ⇒ 『光触媒』 として発展
(d)フェライト:M2+O・Fe2O3 (M2+:2価の金属イオン :磁性体セラミックス材料の代表 M = Fe,Mn, Ni, Zn,・・・)
耐高温、高強度特性
ジェット機(戦闘機)
用窓ガラス
(⇒ 修正液,修正テープ,白色塗料 等に使用)
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ⑱
1) 『ナノセラミックス』 の定義
:ナノサイズの超微細結晶粒からなる「ナノ多結晶体」やナノレベル
の超微細構造制御が可能な「無機膜」などがあり、ナノ粒子化により機能特性(電気・電子・磁気特性)や構造特性(超硬度、超延性など)の顕著な改善を可能とする「次世代社会を牽引する新たな材料」
「無機材料研究(セラミックス材料)」の新たな展開を可能とし、特に「環境保全・新エネルギー関連」への応用が期待
【応用例】:「ナノ光触媒」
ex.酸化チタン:TiO2
① 地球温暖化防止・環境浄化用材料
② 環境ホルモンの分解用材料
③ 光触媒デバイス用材料
④ 色素増感型太陽電池(Si半導体を使用せずZnOやTiO2等の
金属酸化物を用いた次世代低コスト太陽電池) など
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ⑲
『光触媒』は、TiO2微粒子やTiO2
薄膜の表面に太陽や蛍光灯などの光が当たると、表面で強力な酸化力が生まれ、接触してくる有機化合物や細菌などの有害物質を除去する
ことができる「環境浄化材料」
「光触媒の5つの機能」
1.大気浄化:工場や自動車から
の排ガス中の窒素酸化物(NOx)
や硫黄酸化物(SOx)などを除去
2.脱臭効果:アンモニア、硫化水素
等の悪臭を除去(・・・空気清浄機)
3.浄水効果:浄水,排水処理
(有機塩素化合物を分解除去)
4.除菌・抗菌効果:細菌を分解
5.防汚効果:表面に付着した汚れ
図 光触媒の5つの機能
(地球環境保護材料)
(=油分など)を分解除去
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ⑳
(e) チタン酸バリウム BaTiO3
:チタニア(TiO2)を炭酸バリウムと反応させて焼結したもの
で、誘電率*)が大きく、コンデンサ材料の代表的材料として多用
*) 誘電体・・・電圧を付加した時には定常電流は流れないが、
電荷を蓄積することのできる材料[:コンデンサ]
誘電率:ε(比例定数)・・・D=εE
電束密度:D(・・・誘電体により形成されたコンデンサの
単位面積当りに蓄積される電荷量
⇒ コンデンサ(蓄電)容量)
電界:E[V/m]
図 セラミックコンデンサ
(・・・電子製品、IT産業に不可欠)
電磁気学の基礎
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ㉑
2. 非酸化物系セラミックス 『代表的な材料』
(人工的に合成した新しい無機物を原料としたもの)
:Si3N4(窒化ケイ素),SiC(炭化ケイ素),BN(窒化ホウ素),
ZrC(炭化ジルコニウム),C(ダイヤモンド),炭素繊維
・・・フラーレンC60,カーボンナノチューブ
『代表的な特性』
:共有結合が支配的であるため、高温強度・脆性に優れる
物質中最も強い化学結合 セラミックス最大の弱点
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ㉒
(a) 窒化ケイ素Si3N4
① 熱膨張率が小さく,かつ熱伝導率が大きいため“熱衝撃”に強い
② 高温強度は1473Kで約700MPa以上を示すため、
各種耐熱材料以外に高温用機械部品材としの応用が期待
(:切削工具,ガスタ-ビンの回転軸など
・・・cf.Niタ-ビン用基耐熱合金:1366K-300MPa
(ジェット機のタービンブレード・・・金属の2倍以上)
の代表材料)
セラミックス高温高強度材料の代表的物質
「セラミックスエンジン材料」用構造材料
高温での変形が金属とは異なり小さい
金属と同程度の高い値
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ㉓
※ “熱衝撃”:急加熱または急冷により材料内部に急激な温度分布が 生じることにより、大きな熱応力が発生する現象
海底地震観測の現場を支えるファインセラミック材料
高い圧縮強度、耐食性、比重の小さい窒化ケイ素Si3N4は、深海用耐圧容器,特に、世界一深いマリアナ海溝の11,000mの深海に、地震計(自己浮上型海底地震計:海底で地震を観測・記録する装置,観測終了後、本体のみを海面に浮かせ、船で回収し、地震データを解析)の保護用耐圧容器として使用されている
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ㉔
(b) 炭化ケイ素SiC ① 伝熱性に優れるため、高性能IC基板に利用 ② 硬度が大きい ③ Si3N4同様,耐熱材料として期待 ④ 抵抗発熱体(通電により材料自体が高抵抗に起因して 発熱し高温になるもの)→ セラミックスファンヒーター ⑤ 次世代パワー半導体 :電力(電圧)変換機器(インバーター)用半導体素子 ⇒ 交流電圧を直流電圧に高効率に変換(ex.60Hz → 50Hz)
・・・SiをGaNやSiCといった化合物半導体で置き換える ことで,Si製パワー半導体素子(以下,パワー素子)で 実現できない大幅な効率向上や小型化が見込めるため 例えば,送電システムや電車,ハイブリッド車,工場内の 生産設備,太陽光発電システムで利用するパワーコン ディショナー,エアコンを始めとする家電,サーバー機や パソコンなどの分野で使用する次世代用高性能半導体 素子材料としてGaNやSiCが今後の発展が期待される
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ㉕
図 次世代パワー半導体の用途・応用分野
(電力変換効率の向上、機器の小型・軽量化が期待)
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ㉖
(c) 窒化ホウ素 BN ① 炭素(常温・常圧:黒鉛,高温・高圧:ダイヤモンド)同様、 “窒化ホウ素BN”も、常圧相の六方晶と高圧相の立方相の 2つの構造を有する(⇒Ⅲ(B)-Ⅴ(N)族化合物) ② c-BN(Cubic Boron Nitride),② h-BN(Hexagonal)共に 実用材料として多用される 『立方晶BN(c-BN)の特徴』 1.ダイヤモンドに次ぐ高硬度 高温下において切削工具材料として期待 ⇒ セラミックス機械構造用材料 ※ 結晶構造がダイヤモンドに酷似し、原子間距離も ほぼ同じであるため、高硬度特性を有する 2.熱伝導もダイヤモンド同様に高い ※ c-BN(常温・常圧相h-BNの高温・高圧相)の製造法 ・・・ h-BNを2273K-5000気圧の高温・高圧下で焼結
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ㉗
『六方晶BN(h-BN)の特徴』 1.熱的安定性に優れる (・・・2200℃付近まで使用可能) 2.熱伝導性に優れる (・・・鋼に近い高い熱伝導率) 3.熱膨張率が小さい (・・・熱衝撃性に優れる) 4.潤滑性・機械加工性が良好 (・・・精密加工が可能) 5.化学的安定性・耐食性良好 6.電気絶縁性に優れる
図 c-BNの結晶構造(正四面体構造)
・・・四つの頂点にBまたはN原子,
重心位置 にNまたはB原子
図 h-BNの結晶構造(正六角形の頂点
の青:B,茶色:Nで、(a)(b)(a)(b)・・・
の二層積層構造で結晶を形成
B
N
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ㉘
ニュ-セラミックスの特性支配因子 (- 特性と構造の関係 -)
『セラミックスの特性』[:図1 参照]
「構造特性」・・・内部の気孔,粒子サイズ等のマクロ因子に依存
[:構造敏感]
「機能特性」・・・原子配列,原子価,イオン半径,電子状態等の
ミクロ因子に依存
図1 セラミックスの
特性支配因子
機械的性質
電気的性質
熱的性質
化学的性質
微細構造
超微細構造
原子元素
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ㉙
http://www.jfca-net.or.jp/
より引用
ファインセラミックスの種々の高機能特性と応用分野および密接に関連する学問領域
ファインセラミックス
の出発原料と製造技術の革新的かつ飛躍的進展に起因
学問領域
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ㉚
『 ニューセラミックスの製造法 』
① 原料成分調整・混合・粉砕・乾燥工程
⇒ ② 成形工程
⇒ ③ 焼成(焼結)工程
⇒ ④ 仕上げ加工
⇒ ⑤ 製品検査工程
⇒ 『ニューセラミックス製品(先端高機能材料)』
【重要】
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ㉛
『ニューセラミックスの製造工程』の概要
『①ニューセラミックス原料』は、「非金属・無機・固体粉末」
であり、純度,成分,粒子径(微細・均一化)などが高精度に
制御されたものが使用される
目的の製品機能に合わせて配合した原料は、バインダーと
呼ばれる『粘結剤(成形助剤,焼結助剤など)と混合』する
その後、製品形状に近い『②精密成形や切削加工』を行い、
温度制御された焼成炉内で、高温で焼き固める(焼結)する 上記、『③焼成(焼結)過程』で、原料中に含まれる水分や
バインダーなどが除去され『粉末粒子同士が融合・合体』し、
内部の空隙の消失に伴い、均一・微細構造かつ先端高機能
特性を有する『ニューセラミックス製品』が出来上がる
なお、「最終仕上げ加工・検査工程」として、『④切削・接合』
等の高精度の加工と『⑤製品としての特性検査』を行う
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ㉜
ファインセラミックスの製造工程(代表例) ① 原料成分調整・混合・粉砕・乾燥工程 ⇒ ② 成形工程 ③ 焼成(焼結)工程 ⇒ ④ 仕上げ加工 ⇒ ⑤ 製品検査工程
http://www.jfca-net.or.jp/
より引用
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ㉝
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ㉞
メタライズ
・・・焼結体表面に金属粉末やセラミックスなどの混合粉末(ペースト)を塗布し、高温で熱処理し、導体パターンの形成や気密封止を行なうための工程
接合・接着
・・・セラミックス製品同士やセラミックス製品と金属・樹脂を一体化させ、複合製品として付加価値を高める重要な工程
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ㉟
ファインセラミックスの原料には、無機系固体粉末で、純度,粒子径,粒子分布などが高精度に制御されたものが使われている 目的の機能(製品)に成分調整・配合した原料は、さらにバインダーと呼ばれる粘結剤と混合する。 設計された通りに精密成形や切削加工が施され、温度制御された焼成炉によって高温で焼結(焼成)を行う この焼結過程で、原料に含まれる水分やバインダーが取り除かれ、さらに熱処理をすることで、粉末粒子同士が合体・融合し、空隙が減少し、緻密で非常に硬い『ニューセラミックス製品』が出来上がる
【重要】
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ㊱
1.1 ニューセラミックスの代表的な原料工程 - ①・1 原料調合・混合・粉砕 工程 - “ニューセラミックスの製造プロセスにおける最初の工程”が 『①原料調合・混合・粉砕工程』であり、製品特性や品質安定 性を決める、極めて重要な出発工程となる セラミックボールが充填された『ボールミル』と呼ばれる装置 内に、原料粉末を水などの溶媒と共に入れ、原料の均一化 や粒子サイズ分布等を揃えるため に、ボールミルを回転または振動 させ、原料粉末の成分調整と成形 助剤(バインダーなど)を添加させ、 『出発原料の成分調合・混合・粉砕 (粒子径の均一・微細化)』を行う なお、上記工程で均一・微細混合 された原料を『スラリー』と呼ぶ
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ㊲
【補足1】 ニューセラミックス原料の 混合・混練・分散 工程 -日本ガイシ(株):http://www.ngk.co.jp/index.html より- 多成分からなる原料粉末に、バインダーと水を混ぜ、十分混練する。ニューセラミックスは、微細原料粉体を均一に混ぜるため、 ① 粉体混合 ⇒ ② 混練 ⇒ ③ スラリー生成 が重要になる (※ スラリー:溶媒及び水中の均一混合・混練原料粉末集合体)
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ㊳
⇒ ⇒ ① ② ③
←原料粉末
を溶媒中で
均一にする
【補足2】 ニューセラミックス原料の微細構造 - 原料調合・混合・混練・均一分散 状態 -
成形前の原料に潤滑性や粘りを出すためには、粘土やバインダーが不可欠となる。原料の混練工程においては、均質に分散させた粘土やバインダーや水などを混合し、さらに原料を乾燥させて、次の工程で成形しやすいように一つの塊(塊状)にする
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ㊴
←原料粉末粒子と
溶媒を均一かつ
緻密に混ぜて、
塊状にする
↓
成形工程
1.2 ニューセラミックスの代表的な原料工程 - ①・2 噴霧・乾燥 工程 - 『①原料調合・混合・粉砕工程』で調整された「スラリー」は、
熱風を発生する装置「スプレードライヤー :熱風粉末乾燥機」
で『①・2 噴霧・乾燥処理』を行う
これは、次の重要な工程となる『②成形工程』で、成形型中
での充填率および成形体の密度を高めるために、スラリーを
乾燥させる成形前の工程となる
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ㊵
乾燥後の人工原料粉末
2.1 ニューセラミックスの代表的な成形工程 - ②・1 加圧・成形 工程(プレス工程) - 『①・2 噴霧・乾燥工程』で生成した乾燥させた原料粉末を、
「金属製の金型中に充填」し、上下方向から圧力を加えて
(一軸加圧,プレス成型)、高密度な成形体をつくる手法
寸法精度が要求される、「複雑な機械部品等の成形」に適
した手法かつ量産性の高い成形方法
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ㊶
2.2 ニューセラミックスの代表的な成形工程 - ②・2 冷間静水圧加圧成形(CIP) 工程 - 『①・2 噴霧・乾燥工程』で生成した原料粉末を、ゴム製型 中に充填し、蓋をして、水が入っている高圧容器内に入れ、 水圧を高めて、全方向から等方的かつ均一に加圧し、均質・ 高密度な製品形状に近い成形体をつくる代表的な成形方法
『CIP法』・・・大型,厚みのある製品の成形に適した方法
CIP:Cold Isostatic Press(冷間静水圧加圧)
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ㊷
2.3 ニューセラミックスの代表的な成形工程 - ②・3 押出成形加工 工程 - 乾燥原料粉末に、水やバインダーなどを加えて粘土状にし、
これに圧力を加えながら金型を用いて『押出し成形する方法』 金型内で原料を押出すため、同一断面形状を持つ円柱体
やTまたは+型ブロック等(長さ方向に形状を有する成形体)
の成形に適した方法
図 円筒形金型中での押出成形加工
を用いた円柱体(左)と+型ブロック
成形体の製造工程(概念図)
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ㊸
2.4 ニューセラミックスの代表的な成形工程 - ②・4 射出・鋳込成形 工程- 乾燥させた原料に樹脂を混合し、加熱溶融させ、流動性を 付与し、『高温の金型中に射出し、成形する方法』 『鋳込成形法』は、「混合原料粉末に溶媒等を加え、吸水性 の型中に流し込む方法(高温の溶融原料を金型中に鋳込み これを冷却し成形体を取り出す)」であり、『射出,鋳込成形』 共に、高い寸法精度が要求される、複雑な三次元形状を有 する成形に適した方法
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ㊹
2.5 ニューセラミックスの代表的な成形工程 - ②・5 テープ成形 工程 - 原料粉末にバインダーと溶媒を加えた「スラリー」をつくり、
薄いテープ形状の成形体を連続的に作る方法 『テープ成形』では、一般に均質なスラリーをフイルム上に
薄く延ばして成形する 『ドクターブレード法』 が用いられる
薄いテープを積層して作る『IC用のセラミックパッケージ』や
『積層セラミックコンデンサ』などの製造に適した成形方法
- ②・6 切削加工 工程- セラミックス製品は大変硬いため、
出来る限り焼結前に、ダイヤモンド
砥石や超硬工具を用いた研削加工
を行うことが不可欠となる
(焼結後の切削加工は極めて困難)ため、焼結前に切削加工
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ㊺
3.1 ニューセラミックスの代表的な焼成工程 『焼結・焼成工程』は、「セラミックス成形体(充填率:約60%) を、融点以下で加熱し、粉体同士を合体させることで緻密化 を進行・促進」させ、気孔のない緻密・焼結体を得る 高温のセラミック粉体は、微細球状粒子の接触点を介して 互いに界面拡散を起こし、粒子は一体化(合体・緻密化)する 『焼結方法(焼結条件)』には、真空中、大気中、不活性ガス 雰囲気中で行うなど、目的に応じて種々の方法がある
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ㊻
3.2 ニューセラミックスの代表的な焼成工程 - ③・1 成形・焼成工程 (ホットプレスHP)- 高温下で成形体に高い圧力(一軸加圧)を加えて、内部に
気孔(空隙)のない緻密な焼結体を得る代表的方法
「カーボン製の型中に原料粉末を充填」し、高温に加熱後、
上下方向から『カーボン製ラムにより加圧し、焼結体を得る』
(※ 短時間での緻密・
焼結体の成形と焼結
が可能
但し,平板,円板等
の単純形状を有する
成形・焼結に限定)
ホットプレス:Hot Press (熱間加圧成形)
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ㊼
3.3 ニューセラミックスの代表的な焼成工程 - ③・2 熱間静水圧加圧焼結(HIP) - 高温状態で原料粉末に周囲から等方的にガス圧を加えて、 焼結反応を促進させ、高密度な焼結体を作製する方法 通常、最初に予備焼結を行い、成形体の密度を理論密度 の95%程度まで高めた後、加熱炉を組み込んだ圧力容器に 入れ、加熱と同時に1,000~2,000気圧のガス圧を等方的に 加える焼成方法 HIP:Hot Isostatic Press (熱間静水圧加圧)
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ㊽
4.1 ニューセラミックスの代表的な 研削・接合工程 - ④・1 研削・研磨 - セラミックスは高硬度を有するため ダイヤモンド砥石等を使って寸法精 度の高い製品や鏡面に研磨された 製品を作る重要な仕上げ加工・工程
4.2 ニューセラミックスの 代表的な研削・接合工程 - ④・2 メタライズ - 焼結体表面に金属粉末や導電 ペーストを塗布し、熱処理を行い、 セラミックス製品の表面に金属層 を形成し、導体パターン(回路)や 気密封止処理などを行なう工程
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ㊾
4.3 ニューセラミックスの 代表的な研削・接合工程 - ④・3 接合・接着 - セラミックス製品同士やセラミック
ス製品と金属や樹脂を接着材など
を用いて一体化させ、複合・実用製
品として付加価値を高める重要な工程
(例えば,『IC回路用基板』は、セラミックスに
電子回路が集積された半導体Siを実装する
ための無数の配線用電極が接合される) 5.ニューセラミックスの代表的な
検査工程 - ⑤ 製品検査 - 高度な測定・計測・検査技術を用いて、 セラミッックス製品(知識集約型製品)の
高い機能特性を検査する最終工程
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 ㊿
焼結(焼成)工程 『焼結工程』では、圧縮成形されたセラミック人工原料(充填率約60%)を、融点以下で加熱し、粉体粒子同士 を合体させることで緻密化を進行・促進させる 高温のセラミックス成形体は、粒子の接触点を通じて 互いに物質移動(界面拡散)を起こし、一体化させる 焼結方法は、真空中、大気中および不活性雰囲気中 など、目的に応じて種々の条件下で焼結を行う
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 51
[1]セラミックスの焼結法 『焼結法(Sintering)とは何か』
[定義]:粉末成形体を融点以下の温度に加熱して、
粉末粒子が互いに表面拡散し、多結晶焼結体
に変化する現象
(1)焼結体(多結晶体)の分類[・・・焼成状態による分類]
①多孔質体(:ポ-ラス体)
②普通焼結体
③緻密焼結体
1.焼結反応の促進:原料粉末の合体反応の促進
2.内部に空隙(残存ガスに起因)のない焼結体
・・・ 『ニュ-セラミックス,ファインラミックス』
従来型セラミックス
(窯業製品)
(界面拡散)
ファインセラミックスの製造法
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 52
(2)焼結過程 ① 『焼結初期(:低温焼結)』 = 「焼結反応前期段階」
・・・焼成前の粉末成形体と変化は殆どない状態
( ⇒ 粉末粒子間に大小の空隙(隙間)があり、
気孔率は30~50%程度の多孔体)
② 『焼結中期(:中温焼結)』 = 「焼結反応中期段階」
・・・粉末粒子間の界面拡散反応が進行し成形体の収縮に
伴う気孔の減少が開始する
③ 『焼結終期(:高温焼結)』=「焼結反応後期段階」
・・・粉末粒子間の気孔が消滅し、結晶粒が成長する
(⇒粉末粒子どうしの界面反応(拡散)に伴う粒成長の発生)
↓
ex.【 Al2O3セラミックスの焼結過程 】 に伴う
①外観(成形体の形状)[:図3.4参照]
②内部変化(成形体の密度,収縮率)[:図3.5参照]
③組織(微細構造)変化[:図3.6参照]
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 53
図3.4 Al2O3セラミックスの 図3.5 Al2O3セラミックスの 焼成温度と外観変化 焼成温度と(a)密度と (左から1000,1200, (b)収縮率 1400,1500,1600℃)
Al2O3セラミックス ・・・焼成温度が高くなるに従い 収縮率と密度が1200℃付近 から急激に増大 ⇒ 『緻密化の進行』
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 54
1200℃ ↓
図3.6 Al2O3セラミックスの
焼成温度と内部微細構造
の変化(電子顕微鏡写真)
Al2O3セラミックスの微細構造変化
①1200℃まで
:内部に粗大な気孔(空隙)が
残存
②1400℃
:内部の気孔は減少するが、
粒子界面の拡散は進行中
③1500℃以上
:マクロ(左),ミクロ(右)観察
結果共に、緻密焼結体生成
を示す微細構造
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 55
①
②
③
(3)焼結による粉末粒子の形状変化(:焼結反応の概念) [:図1 参照] 『焼結による粉末粒子の形状変化』 ⇒ 『緻密焼結体ニューセラミックスの生成過程』 (a)焼結前期段階(低温焼結):焼結前の成形体と変化なし (b)焼結中期段階(中温焼結):粉末粒子どうしの界面拡散反応が 進行し、気孔減少に伴う収縮の発生[:L→L’]
※ 焼結反応が進行し、「焼結後期段階(高温焼結,(c))」になると 粒子間の気孔が完全に消滅し、1つの球状粒子に成長する [ ⇒ 直径L”の球体 に移行(・・・ L’→ L”( L’>L” ))]
L”
図1 セラミックス焼結体の緻密化機構
(c)
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 56
[2] ニュ-セラミックスの製造法 ニュ-セラミックスの製造法 [:図3.1参照]
(1)一般的製造法
・・・『多結晶体・焼結法』
(:原料調整→成形→焼結:通常の工程)
(2)特殊製造法
① 繊維製造法 : 複合材料 へ利用(FRP,FRM)
② 単結晶製造法[:図3.2,図3.3 参照]
③ 結晶化ガラス製造法,④非晶質体製造法
⑤ 薄膜製造法,⑥ 表面コ-ティング法 ガラス すなわち アモルファス を利用 → ナノテク、 ナノマテリアル へ移行
薄膜プロセス
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 57
図3.1 ニュ-セラミックスの製造法
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 58
[3] セラミックスの種々の焼結法
(1)ホットプレス法(Hot Pressing:HP法)[:図 参照] :カ-ボン製の型(ダイス)内に原料粉末を入れ、高周波加熱 により加熱しながら加圧(上方から1軸加圧)・焼結する方法
【圧力】:200~400kg/cm2 【温度】 SiC :2000~2200℃ Si3N4:1700~1800℃ 【特徴】 :高温,短時間での 緻密焼結体製造が可能 (高純度,高密度の 緻密焼結体製造法 )
図 ホットプレス法
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 59
(2)反応焼結法(Reaction Sintering:RS法)
:固相の原料成形体に気相あるいは液相を化学反応させ、
セラミックスの合成と緻密化を同時に行い焼結体を得る方法
ex.1) Si3N4の反応焼結
:Si微粉末成形体を窒素雰囲気中で加熱・化学反応
3Si+2N2→Si3N4
ex.2) SiCの反応焼結
:SiCの成形体とC粉末からなる成形体をSiの気相
または液相と高温で反応させ、SiC+Siの焼結体を得る
(・・・焼結体の気孔にSiが充填 ⇒ 緻密化を促進)
(3)常圧焼結法(Pressureless Sintering:PLS法)
:大気圧下,各種雰囲気中で、焼結助剤(バインダ-)を
用いて緻密に焼結させる方法
⇒ 『一般的なセラミックスの焼結方法』
【特徴】:複雑形状の焼結製品の製造が可能で、生産性に
優れる
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 60
(4)熱間静水圧焼結法:HIP法(Hot Isostatic Pressing)
:不活性ガス雰囲気を圧力媒体として、周囲から等方的
に加圧しながら高温で焼結する方法
例)Si3N4のHIP法・・・圧力:2000気圧,温度:2000℃
(5)ガス圧焼結法:GPS法(Gass Pressure Sintering)
:非酸化物系セラミックス(例えば,Si3N4 )の成形体を
50~120気圧のN2ガス雰囲気中で1800~2000℃ の
高温状態で焼結を行う方法
(6)2段焼結法:PS法(Post Sintering)
:反応焼結法と常圧焼結法を組み合せた手法
例)Si3N4の焼結法 [・・・ Si3N4の緻密焼結体製造法]
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 61
(7)化学気相析出法:CVD(Chemical Vapor Deposition) :加熱領域に原料ガスを導入し、化学反応により非揮発性
物質を基板上に析出させる方法[:図3.7 参照] 【特徴】 ① 材料の融点より低い温度で合成できる
② 高純度,高密度のものが合成できる
③ 2元素以上で構成される材料の組成制御が可能
④ 結晶構造を制御でき、特定の結晶面を配向可能
⑤ 薄膜中の粒子径を制御できる
⑥ 焼結に必要な粘結剤や焼結助剤が不要
⑦ 複雑な形状の焼結体に被覆できる
⑧ 準安定状態の物質の合成が可能
⑨ 多層被覆(表面コーティング)が容易にできる
1.各種半導体用薄膜, 2.アモルファス太陽電池用Si薄膜 3.ダイヤモンド薄膜(コーティング,微粒子) など 各種ガスを出発原料に用いた多くの薄膜材料の作製に多用
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 62
図3.7 CVD法による工程概要 図3.8 セラミックス焼結法の比較
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 63
高温・高圧下の焼結法の
ため強度特性に優れる
基板上での核生成と薄膜の結晶成長
[4] 一般的なニューセラミックスの製造工程
『セラミックスの製造工程』 [:図3.9 参照] (1)原料調整
(2)成形
(3)焼成(焼結)
図3.9 セラミックスの製造工程と特性の関係
*沈殿方法 ①金属イオンを含む水溶液 + アンモニア水と混合
↓ NH4
+ + OH−
②金属水酸化物を生成 ex)Al2O3の場合 Al2(OH)3:水酸化アルミ が出発原料 ↓ ③分解・仮焼させ 原料酸化物を作製 (ex.Al2O3人工原料粉末)
*
セラミックス原料粉末の製造工程
( ・・・ 各製造工程における諸因子が、
焼結体(最終製品)の特性を支配する)
最終製品となる
「セラミックス焼結体
の特性支配因子」
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 64
(水酸化アンモニウム NH3+H2O ⇔ NH4OH )
IC基板の製造工程 『焼結』:成形体を加熱・熱処理(焼結)によって粒子同士の拡散を促進
⇒ 相互拡散の促進や緻密な焼結体を得るために焼結助剤の添加
ex.Si3N4の焼結・・・焼結助剤:MgO,Y2O3を添加
※ 『焼結法によるファインセラミックスの製造プロセス』[:図3.10参照]
図3.10 焼結法によるファインセラミックス(IC基板)の製造プロセス
【重要】
『 ニューセラミックス
の製造工程 』
① 人工原料粉末の
成分調整・混合工程
↓
② 成形体の作製
(焼結前工程)
↓
③ 焼結(焼成)工程
↓
④ 最終製品化
(仕上げ工程)
① ② ③ ④
*
*
*成形、焼結
促進用添加剤
(有機物系
バインダー)
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 65
『補足』 【酸化物系セラミックス製品の内訳】 (1)ファインセラミックス(ニュ-セラミックス):80% ① エレクトロニクスセラミックス(・・・電子・磁気関連) ② エンジニアリングセラミックス(・・・機械・構造用) ③ バイオセラミックス(・・・生体・医療・治療用) (2)窯業製品:20%
①エレクトロニクスセラミックス 絶縁体、誘電体、圧電体
半導体、永久磁石材料
磁気記録材料 など
②エンジニアリングセラミックス 機械的機能を有するもの
耐摩耗、切削、耐熱材料 など
③バイオセラミックス 生体適合機能を有するもの
人工骨、人工歯根材料 など
セラミックス人工骨 リン酸カルシウム
:Ca3(PO4)2
バイオセラミックス
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 66
『製造方法の飛躍的な進歩』 (1) 微視的(ミクロ)構造の制御が可能
⇒ 電気・電子・磁気的機能特性に有効
(・・・ 誘電性,圧電性,半導性,磁気特性 等)
① 添加元素,② 高純度・微細化,③ 焼結条件制御 等
(2) 巨視的(マクロ)構造の制御が可能(⇒ 構造欠陥除去)
『ファインセラミックス原料粉末の条件』
( ⇒ セラミックス製品の製造に対する最重要因子)
① 粉末形状が等方的
(・・・真球形状が最適) ② 粒径が均一かつ超微細
③ 高純度(人工原料)
④ 構成相を制御可能
ニューセラミックスの人工原料粉末
※ 『セラミックス原料粉末』は、①気相法、②固相法、③液相法
(共沈法・化合物沈澱法・加水分解法)などの方法で作製される
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 67
物質の形態
物質の三態
物質は 原子 で構成されている
原子は温度が低いと規則的に並び易く、
温度が高いと自由に動き易い
原子の動きや配列=物質の形や性質
アモルファス ( amorphous )
構成原子の配列に結晶構造のような
長距離規則性を持たない固体状態
組成比など物理的定数を連続的に変化可能
均質で粒界がない
構造的に乱れがある
特徴
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 68
高温加熱
固体金属の構造 液体金属の原子状態
急冷
アモルファス合金
の構造
アモルファス合金の生成過程(液体超急冷法)
金属を液体状態に変化させ、構造を崩し、原子が移動可能状態にする
それを急冷することによって、アモルファスができる
冷却速度
貴金属(Au,Ag,Pt 等) - 半金属系合金(ex,Pd-Cu-Si):数千~1万℃/秒(103~104K/s)
遷移金属(Fe,Co,Ni 等) - 半金属系合金(ex.Fe-Si-B):1万~100万℃/秒(104~106K/s)
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 69
アモルファス合金(金属ガラス)の特徴
特徴
強くてしなやか
さびにくい
磁気特性に優れる
結晶金属に比べ3~10倍の強度
ステンレス鋼をはるかにしのぐ耐食性
方向性がないため優れた磁気特性を示す
金属の結晶=多くの欠陥が存在
変形を容易にする
強度が弱い
金属ガラス
=欠陥がなく、互いの原子が
衝突しあい集団での移動が困難
強度が高い
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 70
アモルファス合金の定義と構造
「アモルファス (Amorphous)」 ・・・ 「不定形」 (本来の意味)
【定義】:原子の配列が結晶のような規則性を有さない固体の状態(⇒ 図1 参照)
「単範囲規則性」
のみ有する状態
数原子間における規則性 非晶質(アモルファス)
cf. 結晶 ・・・結晶構造の周期性に依存した原子配列
(単位格子) 「長範囲規則性」
(結晶格子の周期的配置)
アモルファス構造の特徴 【図1】 並進対称性
【概要】 ① 結晶のような原子の規則的な
配列がないため,隙間 が多い
↓ 結晶に比べ体積は大きい
② 結晶特有の異方性
(方向による原子配列の相違)はなく,
材料全体としては,均質かつ等方性
を示す(⇒全体的にバラバラな状態を示す)
③ 結晶特有の格子欠陥(ex. 空孔,転位,粒界) はない
<・・・材料内部で,原子レベルの欠陥が平均して存在している>
特徴
結晶面
結晶面
結晶面なし
膨張量
結晶状態 アモルファス状態
図1 結晶とアモルファスの両状態に
おける2次元的原子配列の模式図
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 71
アモルファス合金の作製法【 ・・・ 図 2 】
(1) 気相法 : 気体
(2) 液相法 : 液体 アモルファス を作製
(3) 固相法 : 固体
液体 気体
固体
(結晶)
非平衡プロセス
アモルファス
(非晶質)
平衡プロセス
真空蒸着
化学気相反応
スパッタリング
急冷凝固
(ガラス化)
結晶化
液体急冷法
【非平衡反応】
【平衡反応】
:凝縮(凝結)
[平衡反応]
:凝集(凝結)
(CVD法)
【非平衡反応】
レーザー照射etc.
照射損傷
イオン打込み
【平衡反応】
:昇華
固体表面に電子,イオンをぶつけて
原子配列を壊す
図 2 アモルファス合金の作製法(概念図)
一般的な作製法
気相法 → 電子材料の作製法
液相法 → 液体急冷法
(半導体,太陽電池)
薄膜材料
【 図 3 】
生産性の高い、中心的方法
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 72
液体急冷単ロール法(⇒冷却速度:104~106K/sec)
アモルファス合金の原料となる組成金属を溶かし、それを石英ノズル先端からArガスで押し出し、回転するロールの表面上に噴出させ、
超急冷凝固させる方法=『液体急冷単ロール法』
⇒ アモルファス合金の代表的手法
アモルファス急冷リボン
(Fe-Si-B系軟磁性材料) 日立金属(株)
リボン幅:10㎝
リボン厚み
:20~30μm
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 73
太陽電池用
膜
a-Si
基板 (ex.ガラス)
真空槽
(真空容器) 蒸着法
シャッタ
ヒーター
(電子ビーム)
蒸着用材料(原材料)
排気系 (真空ポンプ)
『気相法』
薄膜材料
図 3 真空蒸着装置 (a)
蒸着源
加熱
100pm 1nm 10nm 100nm 1μm 10μm 100μm
薄膜の範囲
VTR
用アモルファス磁性膜
工具コーティング膜
レンズコーティング膜
鏡用金属膜
LSI
の配線
超電導膜
磁気記録用磁性膜
サングラス
磁気抵抗効果膜
光磁気記録膜
ハーフミラー用金属膜
金属超格子膜(単層)
膜
LB 単原子層膜
極超薄膜 超薄膜 薄膜
=
CD
MO
応用例
図 3 薄膜の寸法と応用例 (b)
【 図 3 】
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 74
「2次元(平面)構造」 「3次元(立体)構造」
単結晶 Si アモルファス Si
単結晶 Si
(半導体材料)
アモルファス Si
(太陽電池)
(a)単結晶Si 共有結合 配位数=4 ダイヤモンド構造 (sp3混成軌道) 結合の方向性 (異方性)あり
(b)アモルファスSi
Si原子間の結合
が歪んでいる
(結合が不連続)
(a)単結晶Si
正四面体構造
(ダイヤモンド
構造)の規則的
な周期構造
(b)アモルファスSi
結晶の単位胞が
ゆがんでいる
図 2次元および3次元で考えられる単結晶Si(a)とアモルファスSi(b)の物質構造
[:単結晶Siでは規則正しく配列しているが,アモルファスSi
では結合距離や結合角がすこしずつ異なり,歪んでいる]
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 75
『ナノガラスの応用例』
「高強度・超大型薄型テレビのディスプレイ用ガラス」
①超短パルスレーザーで薄くて軽い高強度ガラスを実現
②立体映像の臨場感あふれる大型ディスプレイを実現
(社)ニューガラスフォーラムNew Glass Forum (NGF),ホームページより
http://www.newglass.jp/ngfinfo/index-j.html
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 76
『大容量光メモリ用ナノガラス薄膜』
ナノガラス薄膜を用いた大容量光ディスク
ナノガラス薄膜の集光機能により高い記録容量を実現
(・・・映画20本分が1枚の小型ディスクに記録可能)
(社)ニューガラスフォーラムNew Glass Forum (NGF),ホームページより
http://www.newglass.jp/ngfinfo/index-j.html
第 6,7, 8 回目 HP掲載資料 77