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109日立評論 2016.01-02
オートモティブシステム
小型ステレオカメラ1
日立オートモティブシステムズ株式会社は,自動車事故の防止や被害軽減をめざし,外界および自車の走行状態を認識する「外界認識走行システム」のセンサーとして,歩行者・自転車なども検知し,ブレーキ制御による衝突回避・被害軽減を可能にしたステレオカメラを自動車メーカーへ納入している。今回開発した小型ステレオカメラは,左右のカメラ間距
離(基線長)を従来の約半分とし,小型車両など限られたレイアウト要件においても搭載を可能としつつ,従来とほぼ同等の衝突回避・被害軽減性能を達成した。今後は低コスト化によるさらなる普及と性能向上を図
り,将来の自動運転を実現するセンサー開発を進めていく。(日立オートモティブシステムズ株式会社) マルチスワール式ポート噴射インジェクタ
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マルチスワール式ポート噴射インジェクタは,PFI(Port Fuel Injection)システムに用いられるガソリン噴射インジェクタであり,噴射されるガソリン粒径の微粒化と低ペネトレーション(低噴霧速度)を実現するために,世界で始めて※1)スワール噴霧方式を採用した。スワール噴霧方式とは,燃料通路に作られた旋回室でガソリンを旋回させて得るエネルギーを,効率よく噴霧の微粒化エネルギーに変換することができる噴霧方式である。この噴霧方式を採用するために,日立が有するシミュレーション技術と精密加工技術による噴霧コントロール技術を構築し,世界最小※2)の粒径と,世界最短※2)のペネトレーションを併せ持った噴霧を実現した。この噴霧により,燃費の向上と,排出ガスの低減が可能となった。(日立オートモティブシステムズ株式会社)(量産開始時期:2013年11月)
モールドパッケージ型エアフローセンサー3
内燃機関への吸入空気流量を計測するエアフローセンサーを,高精度・低価格で提供することを目的とし,従来必要であったプリント基板を使わない樹脂モールドパッケージ構成をコンセプトとした新型センサーを開発した。
※1)2013年10月時点,日立オートモティブシステムズ調べ。※2)2015年10月時点,日立オートモティブシステムズ調べ。
オートモティブシステム
噴霧粒径(世界最小)
インジェクタ スワール噴霧方式
液膜
旋回室
ペネトレーション
(世界最短)
2 マルチスワール式ポート噴射インジェクタと噴霧方式
フィルタ
左カメラ
DRAM
仕様(開発品)項 目
幅 : 270×奥行き : 130×高さ : 40(mm)サイズ
650(g)重量
ASIC(画像処理)
電源
電源
カメラ間距離を従来の半分とした。
S/W入力 CAN
ビデオデータ(デジタル) ビデオデータ(デジタル)
タイミングコントロールタイミングコントロール
ROM
DRAM 認識マイコン(認識処理)
右カメラ制御マイコン
(車両制御処理)
CMOS
オプティカルレンズ
フィルタ
CMOS
オプティカルレンズ
1 小型ステレオカメラの外観(上),構成(中)とその仕様(下)
注:略語説明 CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor), DRAM(Dynamic Random Access Memory ), ASIC(Application Specific Integrated Circuit),ROM(Read Only Memory), S/W(Switch),CAN(Controller Area Network)
110 オートモティブシステム
オートモティブシステム
具体的には,以下の4点を開発し,製品適用を図った。(1)これまで必要であった外部電子部品を内蔵集約化した専用 IC(Integrated Circuit)(2)厚さ数マイクロメートルの薄膜ダイアフラムを形成したセンシング素子を,部分的に露出させ,IC,吸入空気温度センサチップとともに樹脂一体封止したモールドパッケージ(3)接着剤を用いずにパッケージをハウジングへ固定する
2段モールドハウジング(4)従来必要であった接着剤を用いずに,樹脂カバーをレーザにより接合する技術この結果,素子実装精度が向上し,センサーの高精度化
が可能となった。また,部品数の大幅削減,接着剤熱硬化プロセス廃止などの工数低減を達成した。今後は,高機能化とさらなる部品の集約化を進め,高性
能エンジンに適したセンサーの開発に取り組んでいく。(日立オートモティブシステムズ株式会社)(生産開始時期:2014年4月)
車室内騒音予測技術4
近年,車両の静粛性向上に伴いコンポーネント製品の騒音低減がより必要となっている。しかし,コンポーネントだけで騒音低減を行っても車両搭載した状態で騒音レベルを満足できないことがある。そこで,解析主導型設計として,開発段階で車両搭載状態の騒音を予測する手法の構築に取り組んでいる。エアサスペンション用コンプレッサを対象として,コン
プレッサ単体での作動状態の振動解析を実施し,車両に与える加振力を求める。これに車両伝達特性を乗じることに
より,車室内騒音(音圧)を予測することが可能である。車両伝達特性は,量産車や開発車を加振し,車室内の音圧を測定することによって求めることができる。車両伝達特性があれば解析上で車載状態の車室内騒音予測が可能と なる。今後は精度をより高め,さまざまな製品に活用できるよう進めていく。(日立オートモティブシステムズ株式会社)
センシング素子
専用IC(内蔵)
モールドパッケージ
リード
吸入空気温度センサーチップ(内蔵)
センシング素子
AA
A-A薄膜ダイアフラム
カバー
エアフローセンサー
吸入空気
車両吸気管通路
モールドパッケージ
2段モールドハウジング
カバー
エアフローセンサー分解図
従来製法
新製法
従来製法
回路基板をハウジングへ接着剤により熱硬化し,ワイヤボンディング
パッケージを一体成型し,リードをレーザ溶接
カバーをハウジングへレーザ溶着
カバーをハウジングへ接着剤・熱硬化新製法
接着剤レス
接着剤レス
3 モールドパッケージ型エアフローセンサー
加振力予測(シミュレーション)
予測加振力車両伝達特性(実測)
起振源+振動伝達 加振力
= sH
sF
sP H s
sF
sFモータモデル
機構・構造モデル
予測音圧(固体伝播音)× =
+
周波数
周波数
80テストシミュレーション60
40
20
0
-20
-40101 102 103
y
z
x
周波数 周波数
X方向 Y方向 Z方向
周波数(Hz)
音圧(
dB)
周波数
周波数
音圧
音圧/加振力
音圧/加振力
音圧/加振力
音圧/加振力
加振力
空圧モデル
車室内騒音予測車室内騒音予測 車両伝達特性(実測)s F
4 車室内騒音予測手法の概要(上),車室内騒音予測シミュレーションの結果(下)
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オートモティブシステム
エンジン潤滑用可変容量オイルポンプ5
近年,環境・燃費規制の強化を受けて燃費の向上を目的としたエンジン潤滑用オイルポンプの可変容量化のニー ズが高まってきている。このような中,今回,フロントカバー一体型可変容量オイルポンプ[VDVP(Variable Displacement Vane Pump)]を開発した。吐出容量が一定の従来ポンプでは,エンジンの回転数上
昇に伴い吐出容量および吐出圧力が増加し,また,エンジン高回転域ではエンジン要求油圧に対して過剰な油圧となるため,リリーフバルブを介してオイルパンに余剰オイル
をリリーフすることで油圧を適正に制御していた。すなわち,むだな仕事をしているという課題があった。今回開発したVDVPは,吐出容量を可変にすることで
従来ポンプではリリーフしていた余剰オイルの削減を実現すると同時に,2本のスプリングを使いエンジン低回転側から油圧を2段階に制御する。これにより,従来ポンプに対しモード燃費領域で2%の燃費改善(消費動力40%低減)を実現している。今後は製品ラインアップを拡充し,グローバルな顧客
ニーズに応えていく。(日立オートモティブシステムズ株式会社)(量産開始時期:2014年10月)
周波数感応型ダンパー6
近年,タイヤの大径低扁(へん)平化やエコタイヤ採用によるタイヤの高剛性化により,さまざまな路面の走行で伝わる不快な振動(ゴツゴツ,ビリビリ)が乗り心地の悪化を引き起こしている。しかし,従来のダンパーでは,車両のフワフワした低周波の大きな動きの抑制(減衰力を高くする)と,路面から伝わる高周波の不快な振動の遮断(減衰力を低くする)の両立が困難であった。今回,電子制御を使わずにメカニカルな機構のみで,振動の周波数に応じて減衰力を切り替え,振動の抑制と遮断を両立させる周波数感応型ダンパーを量産化した。ダンパーの油の通路の途中にピストン型のアキュムレータ室を設け,簡素なゴム部材でバネとシール両方の機能を構成させることで,違和感の少ない減衰力の可変特性と機構部の小型化を実現することができた。今後は,さらなる性能向上を図り,製品のラインアップ拡充と適用車種の拡大(小型車への展開)に取り組み,顧客のニーズに応えていく。(日立オートモティブシステムズ株式会社)
エンジン回転数
従来ポンプ
吐出圧力 消費動力
VDVP
フロントカバー
VDVP
油圧2段制御用スプリング
VDVP
従来ポンプむだ仕事領域
エンジン要求油圧
消費動力40%低減(モード燃費2%低減)
消費動力/吐出圧力
5 VDVP油圧・動力の特性(上),フロントカバー一体型VDVP(下)
Reb側
減衰力(
N)
450400350300250200150100
5000.1 1 10 100
周波数(Hz)
ゴム部材(Oリング)
アキュムレータ室ピストン
周波数感応型ダンパー機構部 @Vp0.05 m/s減衰力特性線図
従来ダンパー周波数感応型ダンパー
6 周波数感応型ダンパー
112 オートモティブシステム
オートモティブシステム
ハイブリッド自動車用角形リチウムイオン電池7
日立オートモティブシステムズ株式会社は,米国ゼネラル・モーターズ社が2016年に販売するシボレー・マリブ・ハイブリッドの新型モデル向けに,日立ビークルエナジー株式会社が製造する5,000 W/kgの高出力密度の角形リチウムイオン電池セルを納入する。今回納入が決定した角形リチウムイオン電池セルは,電
池の正極・負極間のイオン伝導性を確保する耐熱セパレーターの採用により, 5,000 W/kgの高出力密度を高い安全性のもとに実現している。また,マイナス30℃の寒地においても高い出力密度を保つ性能を備えていることなどが評価され,今回の採用に至った。今後も,この角形リチウムイオン電池セルをさらにグ
ローバルに展開し,顧客ニーズに応えるとともに,電動パワートレイン製品の強化をとおして,電動化車両の発展に貢献していく。
(日立オートモティブシステムズ株式会社,日立ビークルエナジー株式会社)
業務車両向けAndroid車載端末SOLID AD-1
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業務車両向けの新車載端末SOLID AD-1シリーズはクラリオン株式会社が2014年11月に市場投入した業務用車載機である。OS(Operating System)にAndroidを搭載することで,業種ごとに求められるさまざまなアプリケーションの追加が可能となり,堅牢(ろう)性・耐久性を保つプラットフォームなど,業務車両用車載端末で強く求められるニーズへの対応が可能となった。主な特長は,以下のとおりである。
(1)外部からのナビコントロール,マルチセンサーを使用した正確な位置情報の提供と24時間・365日の連続使用を考慮した堅牢・耐久設計となっている。(2)ソフトウェア開発キット提供によるサードパーティのアプリケーション開発の容易化が図れる。(3)安全運転解析や動態管理に必要な走行ログ取得機能(位置情報,時間,車輌データなど)を使用したセンターとのデータ通信やUSB(Universal Serial Bus)メモリへの走行ログ蓄積による業務管理支援に活用できる。(4)USBスティック型データ通信端末とPTT(プッシュ・トゥー・トーク)マイクを接続することでカーナビゲーションと IP(Internet Protocol)無線機能の一体化を実現した。今後も業務用カーナビゲーションのノウハウを生かし,安全経済運転支援や業務効率化を支援する業務用車載端末の開発に取り組んでいく。(クラリオン株式会社)
項 目サイズ(mm)重量(kg)平均電圧(V)容量(Ah)出力密度(W/kg)エネルギー密度(Wh/kg)
仕 様120×80×12
0.24
3.7
5.2
5,000
80
7 角形リチウムイオン電池セルとその仕様
8 業務車両向けAndroid車載端末SOLID AD-1