プレゼンスを向上機会損失を防ぐとともに技術力をアピールし › club ›...

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Page 1: プレゼンスを向上機会損失を防ぐとともに技術力をアピールし › club › pdf › vol55 › uni-55_18-23.pdf · るのはもちろん、お客さまへのプレゼンなどからの問い合わせや相談に対応すどを発信していきます。また、営業部門おける技術動向や最新の活用事例なを想定した取り組みであり、各領域にです。こちらは、より具体的なビジネスしている「テクニカルエバンジェリスト」

須貝

もう1つが、私たちの部門が推進

している「テクニカルエバンジェリスト」

です。こちらは、より具体的なビジネス

を想定した取り組みであり、各領域に

おける技術動向や最新の活用事例な

どを発信していきます。また、営業部門

などからの問い合わせや相談に対応す

るのはもちろん、お客さまへのプレゼン

テーションを担当することもあります。

葛谷

エバンジェリスト補は、現在、各

部門の上長とともに策定した行動計

画に基づいて、具体的な活動を進めて

います。従って活動内容はそれぞれ異

なりますが、イントラネットやSNSに

よる日常的な情報発信に加え、年4回

程度は社内外のオフィシャルな場で

発表してもらう予定です。

須貝

このように若手〜中堅のエンジ

ニアがエバンジェリストとなって活動

することで、当社の技術力を社内外に

広めるだけでなく、現場のエンジニアの

モチベーション向上にもつながっていく

ものと期待しています。

葛谷

エンジニアというのは、とかく

まず、エバンジェリスト育成を開始

した背景・理由を教えてください。

葛谷

エバンジェリストとは、本来は

キリスト教の「伝道師」を意味する言葉

です。ビジネスの世界では、新しい技術

や製品、サービスなどの価値や魅力を

業界・社会に伝え広めていく、その領域

のプロフェッショナルの意味で用いられ

ています。

須貝

マイクロソフトやアップル、グー

グルといった米国の大手IT企業では、

各社のエバンジェリストが世界各地で

講演したりメディアの取材を受けたり

しています。

香林

最近では、日本でも著名なエ

バンジェリストの方々が出てきています

よね。

須貝

国内外を問わずこうした動きが

進むなかで、日本ユニシスも自社の技術

や活用事例をもっとうまく伝えていく

べきではないかという課題が浮上して

きたのです。

葛谷

例えば、AI(A

rtificia

l Intelligence

:人工知能)分野に関し

ていえば、当社は機械学習や自然言語

処理などの技術に強みをもっており、

国立情報学研究所が中心となって推

進しているプロジェクト「ロボットは東

大に入れるか。」にも参画しています。

同様に、IoT(InternetofThings

)や

ビッグデータ処理、アジャイルソフト

ウェア開発などの分野においても、業界

屈指の実績を有しています。

須貝

これらの先端領域に精通してい

るエンジニアは当社にも多数在籍して

います。しかし、これまでは彼らが前面

に出て情報発信する機会が少なかった

ため、社内外にあまりアピールできて

いなかったというのが実情です。

中村

たしかに、お客さまのみならず社

内にも浸透していないと実感するとこ

ろはあります。

葛谷

そのため、お客さまがビジネス

にAIやIoTを活用しようと考えた

時、日本ユニシスの存在が思い浮かばず、

声をかけていただけない事態も起こり

得ます。また、声をかけていただいたとし

ても、社内で情報共有できていなければ

お客さまに提案することはできません。

須貝

こうした機会損失をなくすに

は、当社がさまざまな先端技術を活用

して革新的なサービスを実現する企業

であることを社内外に強くアピール

し、業界における日本ユニシスのポジ

ショニングを改めて確立させる必要が

あります。

 当社は社会課題の解決に向けた

「ビジネスエコシステム」の創出を目指

していますが、多様なパートナーと協業・

連携するうえでも存在感を発揮する

ことは重要です。

葛谷

そうした考えのもと、当社は

2016年に‘Foresightin

sight’

いう新たなコーポレートステートメント

を掲げました。これは、当社の社員一人

ひとりが「先見性」と「洞察力」を発揮

して、お客さまや社会の課題解決を実

現する最適なソリューションや、新しい

ビジネスモデル、ビジネスエコシステム

をつくり出していこうというものです。

須貝

その実現に向けた取り組みの

1つとして、エバンジェリストを育成し

ていくことになったわけです。

中村

ただ、エンジニアの中には、これ

までもいろいろな技術セミナーで講師を

務めるなど、エバンジェリスト的な活動

をなさってきた方々がいますよね。なぜ

今回、新たに育成することになったの

でしょうか。

田中

実をいうと、私もこの取り組み

を初めて聞いた時、「その役割は先輩

たちで十分なのでは?」と思ってしまい

ました。

須貝

そうしたスペシャリストたちは

ベテランの域に達しており、ほとんどが

部長や室長などの役職に就いていま

す。ですから今回は、次世代のエバン

ジェリスト候補として、最前線で活躍

する20代後半から30代の若手〜中堅

クラスのエンジニアの中から選抜する

ことにしました。

 これまで中核を担ってきたエンジニ

アたちも同じ職場で働いていますので、

新しいエバンジェリストたちにアドバイ

スしたりフォローしたりと、手厚くサ

ポートしてくれています。

選定基準について教えてください。

葛谷

エバンジェリストに求める資質

は大きく3つあります。1つはその先

端領域に精通し、必要な技術力や知識

を備えていることです。2つめは、技術

の特徴やメリットを相手の目線に立っ

て分かりやすく伝えるコミュニケー

ション能力です。そして3つめが情報発

信力です。

須貝

エバンジェリストは、技術だけで

なく、お客さまがそれをどう活用し、

エンドユーザーや世の中にどのような

価値を生み出せるかまで伝えなければ

なりませんから。

葛谷

すなわち、業界のトレンドや最

新の活用事例などを把握・分析し、社

内外のセミナー、イベントやSNS、マス

メディアなどさまざまな形態で情報を

発信していく能力が求められるのです。

須貝

こうした基準のもと、今回は、

AI、IoT、アジャイル、ビッグデータ、

ICTプラットフォーム、Webマーケ

ティング、UI/UX(ユーザインタ

フェース/ユーザエクスペリエンス)の7

つのカテゴリに携わる人材の中から、

適任者を各新技術主管の上長に推薦

してもらい、2016年10月に18名の

「エバンジェリスト補」を選出しました。

どのような活動に取り組んでいる

のですか。

葛谷

当社では、現在、2種類のエバン

ジェリスト活動を展開しています。1つは

「Foresightinsight

エバンジェリスト」

と呼ばれる活動です。これは、将来の

技術トレンドや社会課題などをテーマ

にした座談会や調査研究などを通じ

て、コーポレートステートメントである

‘Foresightin

sight’

を社内外に積極

的に発信していく取り組みです。

裏方のような存在であり、先進的な

プロジェクトに携わっていても、個々の

エンジニアにスポットライトが当たる

ことはあまりありません。

 しかし、エバンジェリストの活動が

活発化することで技術への関心が高ま

れば、自ずとエンジニアへの注目も高ま

るでしょうし、「スキルアップして自分

もエバンジェリストになりたい」と考え

る若手エンジニアも増えるはずです。

|「エバンジェリスト補」の皆さんから、

具体的な活動内容を聞かせてください。

中村

私はIoT領域のエバンジェリ

スト補として活動しています。IoTと

いうキーワードは、最近では一般紙や

テレビのニュースでも見られるように

なりましたが、抽象的で説明しにくい

技術領域です。

香林

「モノのインターネット」と日本

語に訳しても分かりづらいですし、

モヤっとしたイメージですよね。

中村

そこでまずは、社内での周知や

理解を促したいと考えました。私は、

2016年4月からIoTサービスに

対応したクラウドサービス基盤「IoT

ビジネスプラットフォーム」の開発と案

件創出にかかわっており、エバンジェリ

スト補に選ばれる数カ月前から、社内

SNSに「IoT何でも座談室」を立ち

上げ、情報発信・情報交換に努めてき

ました。ただ、現状ではまだまだ足り

ないと感じています。

須貝

IoTといっても幅が広いです

から、日本ユニシスのビジネスという観

点でIoTにどのような可能性がある

のか、そんな活用事例を具体的に伝え

られるとイメージしやすいかもしれま

せん。社内でもIoTの実証実験を

行っていますよね。

中村

はい。本社ビルの社員食堂で

IoTを活用した「画像解析実証実

験」を実施中です。食堂内にWebカメ

ラを設置して、入店した社員の人数や

年齢性別を把握します。そのデータを

クラウド上のビジネスプラットフォーム

で処理・解析し、入店者の属性別グラ

フや滞在人数を見える化した結果を

デモ公開しています。

須貝

実験を通じて多くの社員に

IoTへの興味・関心をもってもらうと

同時に、お客さまに提案する際のヒン

トになるといいですね。

田中

私は入社2年目の2011年

からテキストマイニングツールの設計・

開発に携わり、機械学習やデータ解析

手法の知識を修得してきました。現在

は、自動応答システムなど、自然言語

関連のAI開発に取り組んでいます。

 AI領域のエバンジェリスト補となっ

てからは、社内研修やお客さま向けの

セミナーでAI技術や活用事例などに

ついて情報発信しています。

葛谷

最近は、AIが囲碁で名人に圧勝

したり、AIを用いて創作した小説が

文学賞の1次選考を通過したりする

など、AIへの社会的注目が高まって

いますから、ビジネス上の引き合いも

増えているのではないですか。

田中

このところ、営業部門やお客さ

まから「AIを活用したい」という声を

聞く機会が急増しています。しかし、詳

しく話を伺っていくと「何かすごいこと

ができるのでは」といった漠然とした期

待が大きく、AIを活用することで「ビジ

ネスにどんな価値を生み出せるか」ま

では想定されていない気がしています。

香林

マスメディアなどで「いずれAI

が人間を超える」といった報道を目に

していると、AIを”何でもできる魔法

の杖“のように感じてしまう部分は

あるかもしれません。

田中

大きな可能性を備えた技術で

あることは確かなのですが、決して万能

ではありません。また、AIを活用して

業務を効率化・高度化することはでき

ますが、最初に導入する時には大きな

労力を要することも実はあまり知ら

れていません。

須貝

これまで人間が担ってきた知的

作業をAIに置き換えていくために

は、お客さまと当社のエンジニアが密接

に協力しながら進めていく必要がある

ということですね。

田中

はい。最先端の技術はメリット

だけでなくリスクもあります。ですか

ら、単に夢を語るのではなく、注意点

も含めてAIを正しく理解していただ

きながら、AI活用の企画提案をス

ムーズに進められる環境づくりをして

いきたいと考えています。

香林

私が担当しているのはUI/

UX領域です。エバンジェリスト補として

選ばれた時は、正直少し戸惑いました。

この領域のエバンジェリストは日本にも

何人かいらっしゃるのですが、私がその

方々に求める知識・経験と自分との

ギャップが大きかったので。

中村

プレッシャーだったんですか(笑)。

香林

それはもう。その一方で、ぜひ挑戦

してみたいという気持ちもありました。

 というのも、UI/UXへの取り組み

は社内外での認知度が低く、これまで

は知っている人だけが情報を聞きにく

るという感じでした。これからは、多く

の方に知ってもらうために自ら情報を

発信できるのだと思うと、俄然やる気

が湧いてきたというか。

田中

最近、とくに「ユーザエクスペリ

エンス」という言葉をよく耳にします

が、社内ではいつ頃から取り組みが始

まったのですか。

香林

2011年にUI/UXの専

門チームである「ユーザビリティ&デザ

インセンター」が設立され、私も発足時

から参加しています。

 UIはユーザーが直接見たり触れた

りする、ユーザーとシステムやサービス

との接点のことで、私たちが日頃から

よく開発している画面もUIの1つ

です。これに対し、UXはシステムや

サービスの利用を通して得られるユー

ザー体験を指します。人々の価値が

多様化するなか、使いやすさだけでな

く、システムやサービスの利用体験全

体を通してユーザーにより良い体験価

値を提供するには何をすべきか、を

ユーザー視点で追求することが求めら

れています。私たちのチームも、当初は、

Webサイトなどのユーザビリティ改

善が中心でしたが、ここ数年は上流工

程にシフトし、Webサイトの企画や

新規サービスのコンセプト策定など、

UXデザインやサービスデザインと呼

ばれる領域にも力を注いでいます。

 これまで約6年にわたって取り組ん

できたわけですが、残念ながらいまだ

に「日本ユニシスがそんなことをやって

いるなんて知らなかった」と言われる

ことも少なくありません。

須貝

今後、さらに情報発信を強化し

ていく必要がありますね。

香林

これまでも社内外で研修やセミ

ナーを実施してきましたが、最近は興

味をもっていただいたお客さまを対象

にしたより詳しい勉強会なども開催し

ています。

 また、社内ブログでも情報を発信し

ていますが、より多くの方々にUI/

UXに興味を抱いてもらい、気軽に相談

してもらえるよう、内容を充実させて

いきたいと考えています。セミナーでも

どんどん宣伝していきます。

田中

私もブログを始めるつもりでし

たので、ぜひ参考にさせていただきま

す(笑)。

最後に、今後の抱負や目標を聞か

せてください。

中村

エバンジェリスト補として活動

を開始して以降、IoT案件に関する

相談件数は確実に増えてきましたが、

具体的なプロジェクトに発展したケー

スはまだ少ないので、より多くビジネス

として結実させたいと考えています。

そして、社外から「中村さん、ちょっと

話しにきてよ」とお呼びがかかるよう

なエバンジェリストになりたいですね。

田中

AIに関しても営業部門やお客

さまから個別の相談を受ける件数は

大きく増えています。現場をサポート

しながら、より多くのビジネスに結びつ

けていきたいと考えています。

 エバンジェリストとしては、今後、技

術知識とともにコミュニケーション能力

を磨きたいです。AIという難解な技

術について、前提知識をもたない方に

も分かりやすい一方で、技術に詳しい方

にも気づきを提供できるようなプレ

ゼンテーションスキルを身に付けたいと

思います。

香林

システムの機能や性能を追求す

るだけでなくユーザー中心に考えると

いうアプローチは、当社がこれから競争

力を高めたり差別化を図ったりしてい

くうえで欠かせない要素になると確信

しています。

 今後は社内におけるUI/UXの成

功事例を積み上げるとともに、お客さ

まのリピーター需要も増やしていきた

いと思います。

葛谷

皆さん頼もしいですね。早く

「補」が取れるようにがんばってくだ

さい(笑)。

中村

ちなみに、どうなったら「補」が

取れるのですか。

須貝

先ほど中村さんも言っていたよ

うに、社外から講演を依頼されるよう

になったら、正式にエバンジェリストと

して活躍してもらいたいと考えていま

す。そのために、セミナーなど登壇の機

会を設けるのはもちろん、メンバー間の

交流の場をつくるなど積極的に支援

していきます。

葛谷

そうですね。会社としてもバック

アップやプロモーションに力を入れて

いきますので、ぜひエバンジェリストの

皆さんには「日本ユニシスの顔」を目指

してもらい、また‘Foresightin

sight’

実現に向けた原動力として、企業革新

や価値向上をリードしていってほしい

と思います。

本日はお忙しいなかありがとう

ございました。

取締役常務執行役員CDO

葛谷 幸司執行役員

須貝 達也新技術サービス本部

IoT基盤技術部 適用一室

中村 一茂プラットフォームサービス本部第一統括部 ビジネスPF部

UXデザイン室 室長

香林 愛子新技術サービス本部

AI利用技術部サービス技術室

田中 星一

最前線で活躍するエンジニアを

エバンジェリストとして育成し、先進技術の魅力や可能性を社内外に訴求。

日本ユニシスグループの視点から

K E Y P E R S O N S

I N S I G H T

先端領域における

技術力をアピールし

機会損失を防ぐとともに

プレゼンスを向上

日本ユニシスは、2016年10月から自社の先端技術の魅力やビジネスの可能性を社内外に発信するエバンジェリストの育成を推進しています。

この取り組みに携わるビジネスサービス部門のキーパーソン2名と、エバンジェリスト候補に選ばれた3名が、活動の狙いや内容、

今後の目標などについて語り合いました。

19 18Club Unisys + PLUS VOL.55Club Unisys + PLUS VOL.55

Page 2: プレゼンスを向上機会損失を防ぐとともに技術力をアピールし › club › pdf › vol55 › uni-55_18-23.pdf · るのはもちろん、お客さまへのプレゼンなどからの問い合わせや相談に対応すどを発信していきます。また、営業部門おける技術動向や最新の活用事例なを想定した取り組みであり、各領域にです。こちらは、より具体的なビジネスしている「テクニカルエバンジェリスト」

須貝

もう1つが、私たちの部門が推進

している「テクニカルエバンジェリスト」

です。こちらは、より具体的なビジネス

を想定した取り組みであり、各領域に

おける技術動向や最新の活用事例な

どを発信していきます。また、営業部門

などからの問い合わせや相談に対応す

るのはもちろん、お客さまへのプレゼン

テーションを担当することもあります。

葛谷

エバンジェリスト補は、現在、各

部門の上長とともに策定した行動計

画に基づいて、具体的な活動を進めて

います。従って活動内容はそれぞれ異

なりますが、イントラネットやSNSに

よる日常的な情報発信に加え、年4回

程度は社内外のオフィシャルな場で

発表してもらう予定です。

須貝

このように若手〜中堅のエンジ

ニアがエバンジェリストとなって活動

することで、当社の技術力を社内外に

広めるだけでなく、現場のエンジニアの

モチベーション向上にもつながっていく

ものと期待しています。

葛谷

エンジニアというのは、とかく

まず、エバンジェリスト育成を開始

した背景・理由を教えてください。

葛谷

エバンジェリストとは、本来は

キリスト教の「伝道師」を意味する言葉

です。ビジネスの世界では、新しい技術

や製品、サービスなどの価値や魅力を

業界・社会に伝え広めていく、その領域

のプロフェッショナルの意味で用いられ

ています。

須貝

マイクロソフトやアップル、グー

グルといった米国の大手IT企業では、

各社のエバンジェリストが世界各地で

講演したりメディアの取材を受けたり

しています。

香林

最近では、日本でも著名なエ

バンジェリストの方々が出てきています

よね。

須貝

国内外を問わずこうした動きが

進むなかで、日本ユニシスも自社の技術

や活用事例をもっとうまく伝えていく

べきではないかという課題が浮上して

きたのです。

葛谷

例えば、AI(A

rtificia

l Intelligence

:人工知能)分野に関し

ていえば、当社は機械学習や自然言語

処理などの技術に強みをもっており、

国立情報学研究所が中心となって推

進しているプロジェクト「ロボットは東

大に入れるか。」にも参画しています。

同様に、IoT(InternetofThings

)や

ビッグデータ処理、アジャイルソフト

ウェア開発などの分野においても、業界

屈指の実績を有しています。

須貝

これらの先端領域に精通してい

るエンジニアは当社にも多数在籍して

います。しかし、これまでは彼らが前面

に出て情報発信する機会が少なかった

ため、社内外にあまりアピールできて

いなかったというのが実情です。

中村

たしかに、お客さまのみならず社

内にも浸透していないと実感するとこ

ろはあります。

葛谷

そのため、お客さまがビジネス

にAIやIoTを活用しようと考えた

時、日本ユニシスの存在が思い浮かばず、

声をかけていただけない事態も起こり

得ます。また、声をかけていただいたとし

ても、社内で情報共有できていなければ

お客さまに提案することはできません。

須貝

こうした機会損失をなくすに

は、当社がさまざまな先端技術を活用

して革新的なサービスを実現する企業

であることを社内外に強くアピール

し、業界における日本ユニシスのポジ

ショニングを改めて確立させる必要が

あります。

 当社は社会課題の解決に向けた

「ビジネスエコシステム」の創出を目指

していますが、多様なパートナーと協業・

連携するうえでも存在感を発揮する

ことは重要です。

葛谷

そうした考えのもと、当社は

2016年に‘Foresightin

sight’

いう新たなコーポレートステートメント

を掲げました。これは、当社の社員一人

ひとりが「先見性」と「洞察力」を発揮

して、お客さまや社会の課題解決を実

現する最適なソリューションや、新しい

ビジネスモデル、ビジネスエコシステム

をつくり出してこうというものです。

須貝

その実現に向けた取り組みの

1つとして、エバンジェリストを育成し

ていくことになったわけです。

中村

ただ、エンジニアの中には、これ

までもいろいろな技術セミナーで講師を

務めるなど、エバンジェリスト的な活動

をなさってきた方々がいますよね。なぜ

今回、新たに育成することになったの

でしょうか。

田中

実をいうと、私もこの取り組み

を初めて聞いた時、「その役割は先輩

たちで十分なのでは?」と思ってしまい

ました。

須貝

そうしたスペシャリストたちは

ベテランの域に達しており、ほとんどが

部長や室長などの役職に就いていま

す。ですから今回は、次世代のエバン

ジェリスト候補として、最前線で活躍

する20代後半から30代の若手〜中堅

クラスのエンジニアの中から選抜する

ことにしました。

 これまで中核を担ってきたエンジニ

アたちも同じ職場で働いていますので、

新しいエバンジェリストたちにアドバイ

スしたりフォローしたりと、手厚くサ

ポートしてくれています。

選定基準について教えてください。

葛谷

エバンジェリストに求める資質

は大きく3つあります。1つはその先

端領域に精通し、必要な技術力や知識

を備えていることです。2つめは、技術

の特徴やメリットを相手の目線に立っ

て分かりやすく伝えるコミュニケー

ション能力です。そして3つめが情報発

信力です。

須貝

エバンジェリストは、技術だけで

なく、お客さまがそれをどう活用し、

エンドユーザーや世の中にどのような

価値を生み出せるかまで伝えなければ

なりませんから。

葛谷

すなわち、業界のトレンドや最

新の活用事例などを把握・分析し、社

内外のセミナー、イベントやSNS、マス

メディアなどさまざまな形態で情報を

発信していく能力が求められるのです。

須貝

こうした基準のもと、今回は、

AI、IoT、アジャイル、ビッグデータ、

ICTプラットフォーム、Webマーケ

ティング、UI/UX(ユーザインタ

フェース/ユーザエクスペリエンス)の7

つのカテゴリに携わる人材の中から、

適任者を各新技術主管の上長に推薦

してもらい、2016年10月に18名の

「エバンジェリスト補」を選出しました。

どのような活動に取り組んでいる

のですか。

葛谷

当社では、現在、2種類のエバン

ジェリスト活動を展開しています。1つは

「Foresightinsight

エバンジェリスト」

と呼ばれる活動です。これは、将来の

技術トレンドや社会課題などをテーマ

にした座談会や調査研究などを通じ

て、コーポレートステートメントである

‘Foresightin

sight’

を社内外に積極

的に発信していく取り組みです。

裏方のような存在であり、先進的な

プロジェクトに携わっていても、個々の

エンジニアにスポットライトが当たる

ことはあまりありません。

 しかし、エバンジェリストの活動が

活発化することで技術への関心が高ま

れば、自ずとエンジニアへの注目も高ま

るでしょうし、「スキルアップして自分

もエバンジェリストになりたい」と考え

る若手エンジニアも増えるはずです。

|「エバンジェリスト補」の皆さんから、

具体的な活動内容を聞かせてください。

中村

私はIoT領域のエバンジェリ

スト補として活動しています。IoTと

いうキーワードは、最近では一般紙や

テレビのニュースでも見られるように

なりましたが、抽象的で説明しにくい

技術領域です。

香林

「モノのインターネット」と日本

語に訳しても分かりづらいですし、

モヤっとしたイメージですよね。

中村

そこでまずは、社内での周知や

理解を促したいと考えました。私は、

2016年4月からIoTサービスに

対応したクラウドサービス基盤「IoT

ビジネスプラットフォーム」の開発と案

件創出にかかわっており、エバンジェリ

スト補に選ばれる数カ月前から、社内

SNSに「IoT何でも座談室」を立ち

上げ、情報発信・情報交換に努めてき

ました。ただ、現状ではまだまだ足り

ないと感じています。

須貝

IoTといっても幅が広いです

から、日本ユニシスのビジネスという観

点でIoTにどのような可能性がある

のか、そんな活用事例を具体的に伝え

られるとイメージしやすいかもしれま

せん。社内でもIoTの実証実験を

行っていますよね。

中村

はい。本社ビルの社員食堂で

IoTを活用した「画像解析実証実

験」を実施中です。食堂内にWebカメ

ラを設置して、入店した社員の人数や

年齢性別を把握します。そのデータを

クラウド上のビジネスプラットフォーム

で処理・解析し、入店者の属性別グラ

フや滞在人数を見える化した結果を

デモ公開しています。

須貝

実験を通じて多くの社員に

IoTへの興味・関心をもってもらうと

同時に、お客さまに提案する際のヒン

トになるといいですね。

田中

私は入社2年目の2011年

からテキストマイニングツールの設計・

開発に携わり、機械学習やデータ解析

手法の知識を修得してきました。現在

は、自動応答システムなど、自然言語

関連のAI開発に取り組んでいます。

 AI領域のエバンジェリスト補となっ

てからは、社内研修やお客さま向けの

セミナーでAI技術や活用事例などに

ついて情報発信しています。

葛谷

最近は、AIが囲碁で名人に圧勝

したり、AIを用いて創作した小説が

文学賞の1次選考を通過したりする

など、AIへの社会的注目が高まって

いますから、ビジネス上の引き合いも

増えているのではないですか。

田中

このところ、営業部門やお客さ

まから「AIを活用したい」という声を

聞く機会が急増しています。しかし、詳

しく話を伺っていくと「何かすごいこと

ができるのでは」といった漠然とした期

待が大きく、AIを活用することで「ビジ

ネスにどんな価値を生み出せるか」ま

では想定されていない気がしています。

香林

マスメディアなどで「いずれAI

が人間を超える」といった報道を目に

していると、AIを”何でもできる魔法

の杖“のように感じてしまう部分は

あるかもしれません。

田中

大きな可能性を備えた技術で

あることは確かなのですが、決して万能

ではありません。また、AIを活用して

業務を効率化・高度化することはでき

ますが、最初に導入する時には大きな

労力を要することも実はあまり知ら

れていません。

須貝

これまで人間が担ってきた知的

作業をAIに置き換えていくために

は、お客さまと当社のエンジニアが密接

に協力しながら進めていく必要がある

ということですね。

田中

はい。最先端の技術はメリット

だけでなくリスクもあります。ですか

ら、単に夢を語るのではなく、注意点

も含めてAIを正しく理解していただ

きながら、AI活用の企画提案をス

ムーズに進められる環境づくりをして

いきたいと考えています。

香林

私が担当しているのはUI/

UX領域です。エバンジェリスト補として

選ばれた時は、正直少し戸惑いました。

この領域のエバンジェリストは日本にも

何人かいらっしゃるのですが、私がその

方々に求める知識・経験と自分との

ギャップが大きかったので。

中村

プレッシャーだったんですか(笑)。

香林

それはもう。その一方で、ぜひ挑戦

してみたいという気持ちもありました。

 というのも、UI/UXへの取り組み

は社内外での認知度が低く、これまで

は知っている人だけが情報を聞きにく

るという感じでした。これからは、多く

の方に知ってもらうために自ら情報を

発信できるのだと思うと、俄然やる気

が湧いてきたというか。

田中

最近、とくに「ユーザエクスペリ

エンス」という言葉をよく耳にします

が、社内ではいつ頃から取り組みが始

まったのですか。

香林

2011年にUI/UXの専

門チームである「ユーザビリティ&デザ

インセンター」が設立され、私も発足時

から参加しています。

 UIはユーザーが直接見たり触れた

りする、ユーザーとシステムやサービス

との接点のことで、私たちが日頃から

よく開発している画面もUIの1つ

です。これに対し、UXはシステムや

サービスの利用を通して得られるユー

ザー体験を指します。人々の価値が

多様化するなか、使いやすさだけでな

く、システムやサービスの利用体験全

体を通してユーザーにより良い体験価

値を提供するには何をすべきか、を

ユーザー視点で追求することが求めら

れています。私たちのチームも、当初は、

Webサイトなどのユーザビリティ改

善が中心でしたが、ここ数年は上流工

程にシフトし、Webサイトの企画や

新規サービスのコンセプト策定など、

UXデザインやサービスデザインと呼

ばれる領域にも力を注いでいます。

 これまで約6年にわたって取り組ん

できたわけですが、残念ながらいまだ

に「日本ユニシスがそんなことをやって

いるなんて知らなかった」と言われる

ことも少なくありません。

須貝

今後、さらに情報発信を強化し

ていく必要がありますね。

香林

これまでも社内外で研修やセミ

ナーを実施してきましたが、最近は興

味をもっていただいたお客さまを対象

にしたより詳しい勉強会なども開催し

ています。

 また、社内ブログでも情報を発信し

ていますが、より多くの方々にUI/

UXに興味を抱いてもらい、気軽に相談

してもらえるよう、内容を充実させて

いきたいと考えています。セミナーでも

どんどん宣伝していきます。

田中

私もブログを始めるつもりでし

たので、ぜひ参考にさせていただきま

す(笑)。

最後に、今後の抱負や目標を聞か

せてください。

中村

エバンジェリスト補として活動

を開始して以降、IoT案件に関する

相談件数は確実に増えてきましたが、

具体的なプロジェクトに発展したケー

スはまだ少ないので、より多くビジネス

として結実させたいと考えています。

そして、社外から「中村さん、ちょっと

話しにきてよ」とお呼びがかかるよう

なエバンジェリストになりたいですね。

田中

AIに関しても営業部門やお客

さまから個別の相談を受ける件数は

大きく増えています。現場をサポート

しながら、より多くのビジネスに結びつ

けていきたいと考えています。

 エバンジェリストとしては、今後、技

術知識とともにコミュニケーション能力

を磨きたいです。AIという難解な技

術について、前提知識をもたない方に

も分かりやすい一方で、技術に詳しい方

にも気づきを提供できるようなプレ

ゼンテーションスキルを身に付けたいと

思います。

香林

システムの機能や性能を追求す

るだけでなくユーザー中心に考えると

いうアプローチは、当社がこれから競争

力を高めたり差別化を図ったりしてい

くうえで欠かせない要素になると確信

しています。

 今後は社内におけるUI/UXの成

功事例を積み上げるとともに、お客さ

まのリピーター需要も増やしていきた

いと思います。

葛谷

皆さん頼もしいですね。早く

「補」が取れるようにがんばってくだ

さい(笑)。

中村

ちなみに、どうなったら「補」が

取れるのですか。

須貝

先ほど中村さんも言っていたよ

うに、社外から講演を依頼されるよう

になったら、正式にエバンジェリストと

して活躍してもらいたいと考えていま

す。そのために、セミナーなど登壇の機

会を設けるのはもちろん、メンバー間の

交流の場をつくるなど積極的に支援

していきます。

葛谷

そうですね。会社としてもバック

アップやプロモーションに力を入れて

いきますので、ぜひエバンジェリストの

皆さんには「日本ユニシスの顔」を目指

してもらい、また‘Foresightin

sight’

実現に向けた原動力として、企業革新

や価値向上をリードしていってほしい

と思います。

本日はお忙しいなかありがとう

ございました。

I N S I G H T

最前線で活躍するエンジニアをエバンジェリストとして育成し、先進技術の魅力や可能性を社内外に訴求。

技術や知識に加え

コミュニケーション能力や

情報発信力を兼ね備えた

若手〜中堅を選出

先端技術を活用した

新規ビジネス創出や

サービス提案につながる

情報提供に注力

21 20Club Unisys + PLUS VOL.55Club Unisys + PLUS VOL.55

Page 3: プレゼンスを向上機会損失を防ぐとともに技術力をアピールし › club › pdf › vol55 › uni-55_18-23.pdf · るのはもちろん、お客さまへのプレゼンなどからの問い合わせや相談に対応すどを発信していきます。また、営業部門おける技術動向や最新の活用事例なを想定した取り組みであり、各領域にです。こちらは、より具体的なビジネスしている「テクニカルエバンジェリスト」

須貝

もう1つが、私たちの部門が推進

している「テクニカルエバンジェリスト」

です。こちらは、より具体的なビジネス

を想定した取り組みであり、各領域に

おける技術動向や最新の活用事例な

どを発信していきます。また、営業部門

などからの問い合わせや相談に対応す

るのはもちろん、お客さまへのプレゼン

テーションを担当することもあります。

葛谷

エバンジェリスト補は、現在、各

部門の上長とともに策定した行動計

画に基づいて、具体的な活動を進めて

います。従って活動内容はそれぞれ異

なりますが、イントラネットやSNSに

よる日常的な情報発信に加え、年4回

程度は社内外のオフィシャルな場で

発表してもらう予定です。

須貝

このように若手〜中堅のエンジ

ニアがエバンジェリストとなって活動

することで、当社の技術力を社内外に

広めるだけでなく、現場のエンジニアの

モチベーション向上にもつながっていく

ものと期待しています。

葛谷

エンジニアというのは、とかく

まず、エバンジェリスト育成を開始

した背景・理由を教えてください。

葛谷

エバンジェリストとは、本来は

キリスト教の「伝道師」を意味する言葉

です。ビジネスの世界では、新しい技術

や製品、サービスなどの価値や魅力を

業界・社会に伝え広めていく、その領域

のプロフェッショナルの意味で用いられ

ています。

須貝

マイクロソフトやアップル、グー

グルといった米国の大手IT企業では、

各社のエバンジェリストが世界各地で

講演したりメディアの取材を受けたり

しています。

香林

最近では、日本でも著名なエ

バンジェリストの方々が出てきています

よね。

須貝

国内外を問わずこうした動きが

進むなかで、日本ユニシスも自社の技術

や活用事例をもっとうまく伝えていく

べきではないかという課題が浮上して

きたのです。

葛谷

例えば、AI(A

rtificia

l Intelligence

:人工知能)分野に関し

ていえば、当社は機械学習や自然言語

処理などの技術に強みをもっており、

国立情報学研究所が中心となって推

進しているプロジェクト「ロボットは東

大に入れるか。」にも参画しています。

同様に、IoT(InternetofThings

)や

ビッグデータ処理、アジャイルソフト

ウェア開発などの分野においても、業界

屈指の実績を有しています。

須貝

これらの先端領域に精通してい

るエンジニアは当社にも多数在籍して

います。しかし、これまでは彼らが前面

に出て情報発信する機会が少なかった

ため、社内外にあまりアピールできて

いなかったというのが実情です。

中村

たしかに、お客さまのみならず社

内にも浸透していないと実感するとこ

ろはあります。

葛谷

そのため、お客さまがビジネス

にAIやIoTを活用しようと考えた

時、日本ユニシスの存在が思い浮かばず、

声をかけていただけない事態も起こり

得ます。また、声をかけていただいたとし

ても、社内で情報共有できていなければ

お客さまに提案することはできません。

須貝

こうした機会損失をなくすに

は、当社がさまざまな先端技術を活用

して革新的なサービスを実現する企業

であることを社内外に強くアピール

し、業界における日本ユニシスのポジ

ショニングを改めて確立させる必要が

あります。

 当社は社会課題の解決に向けた

「ビジネスエコシステム」の創出を目指

していますが、多様なパートナーと協業・

連携するうえでも存在感を発揮する

ことは重要です。

葛谷

そうした考えのもと、当社は

2016年に‘Foresightin

sight’

いう新たなコーポレートステートメント

を掲げました。これは、当社の社員一人

ひとりが「先見性」と「洞察力」を発揮

して、お客さまや社会の課題解決を実

現する最適なソリューションや、新しい

ビジネスモデル、ビジネスエコシステム

をつくり出してこうというものです。

須貝

その実現に向けた取り組みの

1つとして、エバンジェリストを育成し

ていくことになったわけです。

中村

ただ、エンジニアの中には、これ

までもいろいろな技術セミナーで講師を

務めるなど、エバンジェリスト的な活動

をなさってきた方々がいますよね。なぜ

今回、新たに育成することになったの

でしょうか。

田中

実をいうと、私もこの取り組み

を初めて聞いた時、「その役割は先輩

たちで十分なのでは?」と思ってしまい

ました。

須貝

そうしたスペシャリストたちは

ベテランの域に達しており、ほとんどが

部長や室長などの役職に就いていま

す。ですから今回は、次世代のエバン

ジェリスト候補として、最前線で活躍

する20代後半から30代の若手〜中堅

クラスのエンジニアの中から選抜する

ことにしました。

 これまで中核を担ってきたエンジニ

アたちも同じ職場で働いていますので、

新しいエバンジェリストたちにアドバイ

スしたりフォローしたりと、手厚くサ

ポートしてくれています。

選定基準について教えてください。

葛谷

エバンジェリストに求める資質

は大きく3つあります。1つはその先

端領域に精通し、必要な技術力や知識

を備えていることです。2つめは、技術

の特徴やメリットを相手の目線に立っ

て分かりやすく伝えるコミュニケー

ション能力です。そして3つめが情報発

信力です。

須貝

エバンジェリストは、技術だけで

なく、お客さまがそれをどう活用し、

エンドユーザーや世の中にどのような

価値を生み出せるかまで伝えなければ

なりませんから。

葛谷

すなわち、業界のトレンドや最

新の活用事例などを把握・分析し、社

内外のセミナー、イベントやSNS、マス

メディアなどさまざまな形態で情報を

発信していく能力が求められるのです。

須貝

こうした基準のもと、今回は、

AI、IoT、アジャイル、ビッグデータ、

ICTプラットフォーム、Webマーケ

ティング、UI/UX(ユーザインタ

フェース/ユーザエクスペリエンス)の7

つのカテゴリに携わる人材の中から、

適任者を各新技術主管の上長に推薦

してもらい、2016年10月に18名の

「エバンジェリスト補」を選出しました。

どのような活動に取り組んでいる

のですか。

葛谷

当社では、現在、2種類のエバン

ジェリスト活動を展開しています。1つは

「Foresightinsight

エバンジェリスト」

と呼ばれる活動です。これは、将来の

技術トレンドや社会課題などをテーマ

にした座談会や調査研究などを通じ

て、コーポレートステートメントである

‘Foresightin

sight’

を社内外に積極

的に発信していく取り組みです。

裏方のような存在であり、先進的な

プロジェクトに携わっていても、個々の

エンジニアにスポットライトが当たる

ことはあまりありません。

 しかし、エバンジェリストの活動が

活発化することで技術への関心が高ま

れば、自ずとエンジニアへの注目も高ま

るでしょうし、「スキルアップして自分

もエバンジェリストになりたい」と考え

る若手エンジニアも増えるはずです。

|「エバンジェリスト補」の皆さんから、

具体的な活動内容を聞かせてください。

中村

私はIoT領域のエバンジェリ

スト補として活動しています。IoTと

いうキーワードは、最近では一般紙や

テレビのニュースでも見られるように

なりましたが、抽象的で説明しにくい

技術領域です。

香林

「モノのインターネット」と日本

語に訳しても分かりづらいですし、

モヤっとしたイメージですよね。

中村

そこでまずは、社内での周知や

理解を促したいと考えました。私は、

2016年4月からIoTサービスに

対応したクラウドサービス基盤「IoT

ビジネスプラットフォーム」の開発と案

件創出にかかわっており、エバンジェリ

スト補に選ばれる数カ月前から、社内

SNSに「IoT何でも座談室」を立ち

上げ、情報発信・情報交換に努めてき

ました。ただ、現状ではまだまだ足り

ないと感じています。

須貝

IoTといっても幅が広いです

から、日本ユニシスのビジネスという観

点でIoTにどのような可能性がある

のか、そんな活用事例を具体的に伝え

られるとイメージしやすいかもしれま

せん。社内でもIoTの実証実験を

行っていますよね。

中村

はい。本社ビルの社員食堂で

IoTを活用した「画像解析実証実

験」を実施中です。食堂内にWebカメ

ラを設置して、入店した社員の人数や

年齢性別を把握します。そのデータを

クラウド上のビジネスプラットフォーム

で処理・解析し、入店者の属性別グラ

フや滞在人数を見える化した結果を

デモ公開しています。

須貝

実験を通じて多くの社員に

IoTへの興味・関心をもってもらうと

同時に、お客さまに提案する際のヒン

トになるといいですね。

田中

私は入社2年目の2011年

からテキストマイニングツールの設計・

開発に携わり、機械学習やデータ解析

手法の知識を修得してきました。現在

は、自動応答システムなど、自然言語

関連のAI開発に取り組んでいます。

 AI領域のエバンジェリスト補となっ

てからは、社内研修やお客さま向けの

セミナーでAI技術や活用事例などに

ついて情報発信しています。

葛谷

最近は、AIが囲碁で名人に圧勝

したり、AIを用いて創作した小説が

文学賞の1次選考を通過したりする

など、AIへの社会的注目が高まって

いますから、ビジネス上の引き合いも

増えているのではないですか。

田中

このところ、営業部門やお客さ

まから「AIを活用したい」という声を

聞く機会が急増しています。しかし、詳

しく話を伺っていくと「何かすごいこと

ができるのでは」といった漠然とした期

待が大きく、AIを活用することで「ビジ

ネスにどんな価値を生み出せるか」ま

では想定されていない気がしています。

香林

マスメディアなどで「いずれAI

が人間を超える」といった報道を目に

していると、AIを”何でもできる魔法

の杖“のように感じてしまう部分は

あるかもしれません。

田中

大きな可能性を備えた技術で

あることは確かなのですが、決して万能

ではありません。また、AIを活用して

業務を効率化・高度化することはでき

ますが、最初に導入する時には大きな

労力を要することも実はあまり知ら

れていません。

須貝

これまで人間が担ってきた知的

作業をAIに置き換えていくために

は、お客さまと当社のエンジニアが密接

に協力しながら進めていく必要がある

ということですね。

田中

はい。最先端の技術はメリット

だけでなくリスクもあります。ですか

ら、単に夢を語るのではなく、注意点

も含めてAIを正しく理解していただ

きながら、AI活用の企画提案をス

ムーズに進められる環境づくりをして

いきたいと考えています。

香林

私が担当しているのはUI/

UX領域です。エバンジェリスト補として

選ばれた時は、正直少し戸惑いました。

この領域のエバンジェリストは日本にも

何人かいらっしゃるのですが、私がその

方々に求める知識・経験と自分との

ギャップが大きかったので。

中村 プレッシャーだったんですか(笑)。

香林 それはもう。その一方で、ぜひ挑戦

してみたいという気持ちもありました。

 というのも、UI/UXへの取り組み

は社内外での認知度が低く、これまで

は知っている人だけが情報を聞きにく

るという感じでした。これからは、多く

の方に知ってもらうために自ら情報を

発信できるのだと思うと、俄然やる気

が湧いてきたというか。

田中

最近、とくに「ユーザエクスペリ

エンス」という言葉をよく耳にします

が、社内ではいつ頃から取り組みが始

まったのですか。

香林

2011年にUI/UXの専

門チームである「ユーザビリティ&デザ

インセンター」が設立され、私も発足時

から参加しています。

 UIはユーザーが直接見たり触れた

りする、ユーザーとシステムやサービス

との接点のことで、私たちが日頃から

よく開発している画面もUIの1つ

です。これに対し、UXはシステムや

サービスの利用を通して得られるユー

ザー体験を指します。人々の価値が

多様化するなか、使いやすさだけでな

く、システムやサービスの利用体験全

体を通してユーザーにより良い体験価

値を提供するには何をすべきか、を

ユーザー視点で追求することが求めら

れています。私たちのチームも、当初は、

Webサイトなどのユーザビリティ改

善が中心でしたが、ここ数年は上流工

程にシフトし、Webサイトの企画や

新規サービスのコンセプト策定など、

UXデザインやサービスデザインと呼

ばれる領域にも力を注いでいます。

 これまで約6年にわたって取り組ん

できたわけですが、残念ながらいまだ

に「日本ユニシスがそんなことをやって

いるなんて知らなかった」と言われる

ことも少なくありません。

須貝

今後、さらに情報発信を強化し

ていく必要がありますね。

香林

これまでも社内外で研修やセミ

ナーを実施してきましたが、最近は興

味をもっていただいたお客さまを対象

にしたより詳しい勉強会なども開催し

ています。

 また、社内ブログでも情報を発信し

ていますが、より多くの方々にUI/

UXに興味を抱いてもらい、気軽に相談

してもらえるよう、内容を充実させて

いきたいと考えています。セミナーでも

どんどん宣伝していきます。

田中

私もブログを始めるつもりでし

たので、ぜひ参考にさせていただきま

す(笑)。

最後に、今後の抱負や目標を聞か

せてください。

中村

エバンジェリスト補として活動

を開始して以降、IoT案件に関する

相談件数は確実に増えてきましたが、

具体的なプロジェクトに発展したケー

スはまだ少ないので、より多くビジネス

として結実させたいと考えています。

そして、社外から「中村さん、ちょっと

話しにきてよ」とお呼びがかかるよう

なエバンジェリストになりたいですね。

田中

AIに関しても営業部門やお客

さまから個別の相談を受ける件数は

大きく増えています。現場をサポート

しながら、より多くのビジネスに結びつ

けていきたいと考えています。

 エバンジェリストとしては、今後、技

術知識とともにコミュニケーション能力

を磨きたいです。AIという難解な技

術について、前提知識をもたない方に

も分かりやすい一方で、技術に詳しい方

にも気づきを提供できるようなプレ

ゼンテーションスキルを身に付けたいと

思います。

香林

システムの機能や性能を追求す

るだけでなくユーザー中心に考えると

いうアプローチは、当社がこれから競争

力を高めたり差別化を図ったりしてい

くうえで欠かせない要素になると確信

しています。

 今後は社内におけるUI/UXの成

功事例を積み上げるとともに、お客さ

まのリピーター需要も増やしていきた

いと思います。

葛谷

皆さん頼もしいですね。早く

「補」が取れるようにがんばってくだ

さい(笑)。

中村

ちなみに、どうなったら「補」が

取れるのですか。

須貝

先ほど中村さんも言っていたよ

うに、社外から講演を依頼されるよう

になったら、正式にエバンジェリストと

して活躍してもらいたいと考えていま

す。そのために、セミナーなど登壇の機

会を設けるのはもちろん、メンバー間の

交流の場をつくるなど積極的に支援

していきます。

葛谷

そうですね。会社としてもバック

アップやプロモーションに力を入れて

いきますので、ぜひエバンジェリストの

皆さんには「日本ユニシスの顔」を目指

してもらい、また‘Foresightin

sight’

実現に向けた原動力として、企業革新

や価値向上をリードしていってほしい

と思います。

本日はお忙しいなかありがとう

ございました。

I N S I G H T

最前線で活躍するエンジニアをエバンジェリストとして育成し、先進技術の魅力や可能性を社内外に訴求。

企業革新を

リードする存在として

さらなる研鑽を積む

23 Club Unisys + PLUS VOL.55Club Unisys + PLUS VOL.55 22