エンジン計算における cfd解析の指針 -...
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CFD analysis guidelines
for Engine Simulation
エンジン計算における
CFD解析の指針
目次
・ICエンジンのBest Practiceについて、以下の推奨設定を紹介します。
1.メッシュ作成に関係するノウハウ:メッシュ数、メッシュサイズ
2.基本的なメッシュ品質の確認
3.ガソリンエンジンおよびディーゼルエンジンにおける物理モデルの推奨設定
1) 燃焼モデル
2) 計算開始タイミング
3) 初期条件
4) 境界条件
5) タイムステップ制御
4.pro-STAR設定
5.STAR-CD および es-ice の設定
6.その他
1) pro-STAR 計算設定の注意点( V4.16 vs V4.18) 2) スカラー初期設定の注意点(ECFM-3Z vs ECFM-CLEH)
メッシュ数、メッシュサイズ
トリムメッシュ
1.推奨メッシュ数
・ハーフモデル:500,000セル
・フルモデル:1,000,000セル
2.推奨メッシュサイズ
・一辺のセル長さ:1~4 mm
3.TDCおよびBDCの推奨メッシュ層数
・TDC:およそ5~10層
・BDC:およそ70層
TDC
BDC
メッシュ数、メッシュサイズ
トリムメッシュ:吸気ポート
1.推奨メッシュ数(フルモデル) ・200,000~250,000セル
※circumferential cells:80
吸気ポート
トリムメッシュ:排気ポート
1.推奨メッシュ数(フルモデル) ・150,000~200,000セル
※circumferential cells:72
排気ポート
メッシュ数、メッシュサイズ
トリムメッシュ:シリンダー
1.推奨メッシュ数(フルモデル) ・650,000~750,000セル
※BDC時
シリンダー
トリムメッシュ:2Dテンプレート
1.推奨メッシュ数(フルモデル) ・6,000~7,000セル
2Dテンプレート
メッシュ数、メッシュサイズ
セクターメッシュ
1.推奨メッシュ数
・200,000~500,000セル
2.推奨メッシュサイズ
・一辺のセル長さ:0.7~1mm
3.2Dメッシュ層数
・50~70層
3D 2D
50~
70層
基本的なメッシュ品質の確認
メッシュ品質の確認
・CA毎におけるメッシュ品質 ・TDC(360CA,720CA)
・BDC(540CA)
・吸気バルブ最大開口時 ・排気バルブ最大開口時
負の体積セルをチェック
基本的なメッシュ品質の確認
メッシュ品質の確認
・バルブシート
バルブ断面を確認し、シート部分でメッシュが
崩れていないかどうか確認します。 ※崩れている場合、Create template > Valve
> Seat radial cells を調節して下さい。
・バルブリセス
バルブアタッチ領域がバルブリセスに
入っていないかどうか確認します。 ※入っている場合、Create template > Trim
> Valve N lift を大きくして下さい。
バルブリセス
燃焼モデル
ガソリンエンジン
燃焼モデル:ECFM-3Z,spark
1.係数αおよびβは、以下の数値が
結果を満足させる最適値となります。
α=1.6,β=1.0
2.係数αは、火炎伝播速度を制御し、
αを大きくすると、燃焼速度を大きく
する効果があります。
係数βは、火炎伝播における
火炎面の曲率を制御し、βを大きく
することによって、燃焼速度を減少
させる効果があります。
3.本燃焼モデルは、標準モデルに
なりますが、部分負荷ならびに
成層燃焼においては過大な火炎核
が影響し、点火タイミングで
非物理的な圧力ピークが発生
するため、注意が必要になります。
燃焼モデル
ディーゼルエンジン
燃焼モデル:ECFM-3Z,compression
1.ガソリンエンジンとは異なり、
係数αおよびβを調整しても、
さほど効果がありません。
2.冷炎の影響における燃焼遅れの
効果を計算したい場合は、
Tabulated Double-Delay
Autoignition モデルをONにします。
※デフォルトでは、事前に準備されて
いるテーブルから読み込んだ点火
遅れのデータを使用します。
計算開始タイミング
計算開始タイミング
・吸気バルブが開く2~3CA
前からの計算開始を推奨
としております。
理由
・排気バルブ開口時の計算は、吸気や燃焼時の計算より安定しているケースが多い。
・燃焼後の排気行程であるため、シリンダー内は全て排気ガスとみなしてよい。
・シリンダー内は全て排気ガスとみなすことが出来、かつ筒内温度は吸気時および燃焼時と
比較して、一様とみなすことが出来る。
・燃焼までに360CA以上計算するため、適当な流れ場を作成した後、燃焼を行うことが出来る。
・流動の初期の状態における熱伝達および、実際の熱伝達の差が最小となる。
初期条件
速度・温度ならびに圧力
・シリンダー:排気ポートの条件を使用します。
※排気フェーズの最終に近いCAから計算開始することを前提とする。
・吸気ポート:計算開始時の吸気境界条件を
初期条件として使用します。
・排気ポート:計算開始時の排気境界条件を
初期条件として使用します。
乱流パラメーター
・初期の乱流エネルギーk、および乱流散逸率εの
求め方
1.平均ピストン速度を求める。 Vp = 2 ⋅ stroke ⋅ rpm ⁄ 60
2.乱れ速度を評価する。 v' = 0.5 Vp
3.乱流エネルギーを評価する。 k = 3/2 (v’)**2
4.乱流長さスケールを設定する。 L = 0.025 bore
5.乱流散逸率を求める。 ε = Cμ**(3/4) * k**(3/2) / L
初期条件
スカラー
・初期値の設定について、以下のメニューから選択することが可能です。
1.Inflow:以下の定義により、求められます。
Flesh Air:新気としてエンジンに流れ込む空気の量
Injected Fuel:シリンダー/ポート噴射もしくは吸気側で予混合となった燃料ガスの量
※ECFM-CLEHを選択する場合、
スカラーの初期設定には、Inflowの
設定がデフォルトになります。
初期条件
2.Cylinder:以下の定義により、求められます。
※Cylinderは、大学や研究機関で使用されるケースが多い。
Total Air:新気としてエンジンに流れ込む空気の量
および1つ前のサイクルにおける残留空気との総和
Total Fuel:シリンダー/ポート噴射もしくは吸気側で予混合となった燃料ガスの量
および1つ前のサイクルにおける残留燃料との総和
初期条件
・混合燃料の定義は、以下のメニューから選択することが出来ます。
1.Equivalence ratio(当量比):混合燃料が燃空比で定義されている場合に
使用します。
2.Lambda(空気過剰率):混合燃料が空燃比で定義されている場合に使用します。
・EGRの定義には、以下の4つがあります。
※Scalarの初期条件に Cylinderを設定している場合、
4番のみ選択することが出来ます。
初期条件
・Residual パラメーターは、シリンダー内における残留排気ガスの初期比率に
なります。また、Residual以外は、吸気側のガスで構成します。
※Residual パラメーターは、解析の開始がIVCからTDCFの間にある場合において
使用することを推奨としております。
計算開始タイミングが吸気バルブ
開口前の場合、100%にします。
境界条件
境界条件
・シリンダー
壁面境界においては、温度固定を選択します。 Resistanceの定義
ユーザー定義
境界条件
・シリンダー
具体的な条件がない場合、弊社で用いているディーゼルエンジンの
壁面温度は、以下の通りです。
境界条件
・吸気ポート
ポート壁面をAdiabaticに設定します。
吸気境界条件にEnvironmentalとした圧力境界を選択します。
圧力境界として設定した場合、乱流パラメーターの設定欄が出現します。
境界条件
・境界条件をInletとして設定した場合、
1.初期流動がない場合、k-εオプションを使用することを推奨します。
2.初期流動がある場合、k-εもしくはI-Lオプションを使用することを推奨します。
境界条件
・排気ポート
ポート壁面をAdiabaticに設定します。
排気境界条件にMeanとした圧力境界を選択します。
吸気ポートと同様の乱流境界条件を設定します。
タイムステップ制御
・Global
(a) 気流計算(圧縮および排気期間):1e-5 sec
(b) 燃焼および噴霧期間:1e-6 sec以下
(c) ノック効果を考慮する場合:1e-7 sec
※1e-6をCA表示した場合、
2,000rpm:0.012CA
4,000rpm:0.024CA
6,000rpm:0.036CA
空欄の場合、自動的に0.1が入ります。
タイムステップ制御
・Valve
バルブ開弁0.1CA前から1CA後まで(閉弁1CA前から0.1CAまで)の
タイムステップをGlobalの0.5倍としています。
pro-STAR 設定
乱流モデル
・V4.16以前:K-Epsilon/High Reynolds Numberが乱流モデルとして
設定されます。
・V4.18以降:自動的にK-Epsilon/RNGが乱流モデルとして設定されます。
pro-STAR 設定
噴霧モデル
・Lagrangian Multi-Phase > Droplet Controls > Interpolation Method
ほとんどのケースでは、Use Gradientを使用することが適正となるが、
より精度よく計算する場合、Use Vertex Dataの方が良い。
pro-STAR 設定
噴霧モデル
・ Lagrangian Multi-Phase > Droplet Controls > Droplet Mode
以下の3種類から選択出来ます。
1.Spray injection with atomization:ディーゼエンジンでの使用を推奨
2.Explicitly defined parcel injection:ガソリンエンジンでの使用を推奨
3.User Subroutine:ガソリンエンジンでの使用を推奨
pro-STAR 設定
液膜モデル
・Liquid Film > Film Physical Models and Properties
Evaporation and Condensation をEvaporation onlyにします。
※Evaporation onlyは、ほとんどケースにおいて共通設定としています。
pro-STAR 設定
ソルバー設定
・Analysis controls > Solution Method
> Under Relaxation for Pressure Correction
トリムメッシュの場合:0.3~0.5に設定します。
マップメッシュの場合:0.6~0.7に設定します。
pro-STAR 設定
・ Analysis controls > Primary variables > Solver Parameters
燃料噴霧モデルを含む場合、Residual toleranceは以下の様に設定します。
Momentum, kinetic energy, dissipation rate and temperature:0.001
Pressure:0.0001
pro-STAR 設定
・燃焼モデルを使用する場合、温度の Residual toleranceを
スカラーのTolerance:1e-12と等しくします。
pro-STAR 設定
・ Analysis controls > Primary variables > Differencing Schemes
MomentumおよびTurbulenceをMars(デフォルト)、Temperatureを
MARSにします。
※ECFM-CLEH では、UDを使用します。なお、ECFM-CLEHはV4.20から
MARSがデフォルトになります。
pro-STAR 設定
ソルバー設定
・ Analysis controls > Primary variables > Additional Scalar
差分スキームをMarsにし、Multi component limiter option をONにします。
※ECFM-CLEH では、UDを使用します。なお、V4.20からMARSが
デフォルトになります。
⇒本設定は、低品質および粗いメッシュに対し、計算精度を改善させます。
STAR-CD および es-ice の設定
並列計算の設定
・1CPU当たり最小10,000~15,000セルに設定する。
※Decompose(分割数) * 10,000~15,000セル = 全体のメッシュ数
・mvmesh.shの設定
各パラメーターの推奨値
MVMESHCPUS=4
-events-ahead-processes=3
-events-ahead=3
MVMESHLAHEAD=2
MVMESHCPUSの設定が重要になります。
※STAR-CD および es-ice で合計32コア使用した計算になります。
その他
・pro-STAR 計算設定の注意点( V4.16 vs V4.18)
Switch 10
Error 017: A face cannot be split into triangles が発生した際、Errorを解消するSwitchになります。
※粒子が壁面に衝突した際に,衝突した境界面を三角形に分割して衝突位置を算出していますが、分割がうまくいかなかった場合に,上記のエラーが発生し、計算がストップするため、SW10を使用し、三角形に分割する頂点の取り方を変更し再度分割しています。
注:V4.16:Switch 10 ON および V4.18:Switch 10 OFF
が同等の機能となります。
その他
・スカラー初期設定の注意点(ECFM-3Z vs ECFM-CLEH) Scalar initialization
1.ECFM-3Z : Inflow および Cylinder を選択出来ます。
2.ECFM-CLEH:Inflow のみ選択出来ます。
EGR Definition
1.ECFM-3Z:Inflow 全ての定義、およびCylinder 定義4のみ選択出来ます。
2.ECFM-CLEH:Inflow 定義2のみ選択出来ます。
※ECFM-CLEHでは、Trapped mass および Mass of fuelが追加されます。
ECFM-3Z ECFM-CLEH
ご清聴ありがとうございました。