3086

160.

612. 017. 32

抗 原 ノ腹 腔 内再注 入 ニ ヨル過 敏 症 ニ就 テ

(第2報)

抗 原 ノ 海 〓 腹 腔 内 吸 收

岡山醫科大學衛生學教室(主任緒方教授)

桑 原 一 郎

[昭和10年10月4日 受稿]

Aus dem Hygienischen Institut der Okayama Med. Fakultat

(Direktor: Prof. Dr. M. Ogata).

Uber die experimentelle Serumanaphylaxie durch intraperitoneale Antigenreinjektion.

(II. Mitteilung.)

Uber die Antigenresorption in der Peritonealhohle bei

der Meerschweinchenanaphylaxie.

Von

Ichiro Kuwabara.

Eingegangen am 4. Oktober 1935.

In der hier mitgeteilten Unter

suchung beschaftigte sich Verfasser mit

der Frage der Antigenresorption in der

Peritonealhohle bei normalen und sen

sibilisierten Meerschweinchen, weil die

anaphylaktischen Symptome sowohl bei

aktiv als auch bei passiv sensibilisierten

Meerschweinchen in bezug auf die Anti

genreinjektionsmenge und die Inku

bationszeit starker verschieden sind als

bei venoser Antigenreinjektion. (siehe

I. Mitteilung.)

Fur den Antigennachweis im Meer

schweinchenblut ist die Nachprufung mit

Kaninchenimmunserum von Rinderserum

durch die Prazipitinreaktion nach Uhlen

huth erforderlich. Leider ist these Pra

zipitinreaktion nicht ohne weiteres an

wendbar, weil die Gruppenreaktion zwi

schen Meerscbweinchenserum und Rin

158

抗原 ノ腹腔 内再 注入 ニヨル過敏症 ニ就 テ(第2報) 3087

derserum gegen Antirinderkaninchen

serum diesen Antigeunachweis verzcgert.

Aus diesem Grunde hat Verfasser das

Antirinderkaninchenserum (Uhlen- huthscher Wert 1:50000, Ogatascher Wert

1:500 bei 1:2500 antigenverdunnung,

d. h. Bindungszone.) mit physiologischer

KochsalzlOsung bis zur Verwendbarkeit

(1:100) verdunnt, womit einerseits die Gruppenreaktion fur Meerschweinchenserum beseitigt, anderseits der Antigen

nachweis fur Rinderserum noch nicht

unmoglich gemacht wurde. Infolge des

spezifischen Gewichtes beider Sera kann

man den Rinderserumabguss auf Kanin

chenserum nicht uberschichten, daher hat Verfasser umgekehrt die Antigenlosung

unten angestellt und auf diese die ver

dunnte immunserumhaltige Flussigkeit

uberschichtet; dabei werden die Anti

gene durch ein Gemisch von physiolo

gischer Kochsalzlosung und Gummi arabicum (1%) verdunnt.

Nach diesem Experiment hat er die hemmende Wirkung von hypertonischer

Kochsalzlosung und Pepton untersucht

und eine Verzogerung der Autigenresorp

tion in der Peritonealhohle bei diesem

Versuche beobachtet.

1) Die Reinjektionsmenge des Anti

gen bei aktiver und passiver Anaphylaxie ist je nach dem Injektionsort stark ver

schieden, weil bei intraperitonealer Injek

tion ungefahr uber 1:50 des bei intravenoser Injektion erforderlichen Antigen

benotigt wird.

2) Um den anapbylaktischen

Schocktod durch peritoneale Reinjektion

bei Meerschweinchen hervorzurufen, ist

erforderlich, dass die injizierten Antigene

so schnell wie moglich (spatestens in 5•L

oder 10•L) aus der Bauchhohle in das Blut

ubergehen und ihre Konzentration im

Blute dazu der Bindiungszone des Prazi

pitin entspricht (geeignete Konzentration

fur Antigen und Prazipitinbindung);

wenn die Antigenmenge im Blute diese

geeignete Menge noch nicht erreichte

oder diese Resorption etwas verspatet,

specter als nach 10 Minuten, erfolgte, so

beobachtete Verfasser nur schwache

Schocksymptome und die Antianaphy

laxie beim Versuchstier.

3) Wenn der anaphylaktische Scho

cktod nach peritonealer Reinjektion des

Antigen hervorgerufen wird, so kann

stets eine schnelle Verminderung des

Prazipitin und das Vorkommen des Anti

gen im Blute bei dem sensibilisierten Tier

nacligewiesen werden. Wenn die ana

phylaktischen Symptome verhindert oder

erleichtert werden, so werden bei dem

sensibilisierten Tier das unversehrt

zuruckbleibende Prazipitin und eine

Verspatung des Antigenaustrittes in das

Blut beobachtet.

4) Bei sofortiger Kochsalzinjektion

(5%) oder bei nach 1-2 stundiger Inku

bation erfolgter Peptoninjektion (0.03g)

wird die Anaphylaxie durch intraperito

neale Reinjektion stark behindert. weil

dabei die Antigenresorption durch die

Peritonealhohle auch stark verzogert

wird.

5) Aus obigen Beobachtungen er

sieht man, dass eine starke Antigen- und

Antikorperbindung im Blute bei experi

menteller Anaphylaxie unbedingt notig

159

3088 桑 原 一 郎

ist; wenn diese Bindung in geeigneter

Konzentration sofort nach der Injektion

stattfindet, so wird der Schocktod hervor

gerufen, wenn diese Bindung aber nur

unvollstandig oder langsam vor sich geht,

so wird eine Abschwachung der Schock

starke oder die Antianaphylaxie beo

bachtet. (Autoreferat.)

内 容 目 次

第1章　 緒 言

第2章　 正常海〓竝 ニ感作海〓 ニ於 ケル抗原 ノ腹

腔内 ヨ リノ吸收

第1節　 實驗方法

第1項　 海〓 血中 ノ異種蛋白(牛 血清)檢 出法

ニ就テ

第2項　 採 血方法

第2節　 實驗成績

第1項　 正常(非 感作)海 〓 ニ於 ケル實驗成績

第2項　 被動性感作海〓 ニ於 ケル實驗成績

第3項　 實驗成績 ノ考察

第3章　 高張性 食鹽水及 ビPeptonノ 海〓 過敏症

ニ及 ボス影響

第1節　 實驗方法

第2節　 實驗成績

第1項　 對照實驗

第2項　 高張性食鹽水 ノ影響

第3項　 Peptonノ 影響

第4項　 正常海〓 ニ於 ケル抗原 ノ腹腔 内吸收

ニ對 スル高張性食鹽水及ビPepton

ノ影響

第5項　 實驗成績 ノ考察

第4章　 結 論

第1章　 緒 言

余 ハ曩 ニ第1囘 報 告(抗 原 ノ腹 腔 内 再 注 入

ニ ヨル 海 〓 過 敏 症 實驗)ニ 於 テ,緒 方教 授 創

始 ニ ナ ル抗 體 稀 釋 沈 降素 測定 法(以 下 單 ニ緒

方氏法 ト記ス)ニ 據 リ,感 作海〓ニ就キ沈降

素結合帶ヲ基準 トシテ再注入ヲ行 ヒ,ソ レニ

ヨリテ海〓血中ノ沈降素量竝ニ結合帶 ト抗原

再注入量 トノ量的關係ヲ檢索 シ,以 テ過敏症

發現 ニ對 シテハ該測定法 ノ示ス沈降素價及 ビ

沈降素結合帶 ノ最 モ有意義ニシテ,且 沈降素

ト過敏性抗體 ノ同一論 ヲ立證スベキ諸事實 ヲ

報告セリ.爾 後ハホ一層這般ノ關係ヲ知ラン

ト欲 シ,被 働性過敏症實驗ニ於テ沈降素及ビ.

補體 ノ消長 ヲ檢スル傍,主 トシテ腹腔 ヨリ再

注入セラレタル抗原ヲ檢査 シ,更 ニ高張性食

鹽水竝ニPeptonヲ 以テ處置 シ,抗 原腹腔内

吸收及 ビ過敏症ニ如何ナル變動 ヲ來スヤヲ研

究シ,以 テ抗原ノ腹腔内再注入ニヨリテモ過

敏症發症 ニハ生體内ニ注入 セラ レタル抗原ニ

對 スル沈降素 ノ結合力及 ビ沈降素量ガ最モ重

要ナル役割 ヲ演ズルモノニシテ,過 敏症ハ實

ニ沈降素 ト抗原ガ生體内ニ於テ相結合 スルニ

ヨリテ由來スルモノナラン トノ推定ヲ一層確

信スルニ足ル成績 ヲ得タルヲ以テ,茲 ニ之 ヲ

報告セントス.

第2章　 正常海〓竝ニ感作海〓ニ於ケ

ル抗原ノ腹腔内ヨリノ吸收

余 ノ第1囘 報告ニ於ケルガ如 ク抗原 ヲ感作

海〓ノ靜脉内ニ注入スル時ハ結合帶相當量ニ

テ過敏症死 ヲ起サシメ得ルニ反シ,之 ヲ腹腔

内ニ注入スル時ハ遙ニ大量 ヲ要 セリ.カ カル

160

抗原 ノ腹腔 内再注入 ニヨル過 敏症ニ就 テ(第2報) 3089

事實ハ腹腔内ニ注入セラレタル抗原 ノ吸收遲

延ニ歸因 スルモノ ト容易ニ想像 セラル.然 レ

ドモ之ガ基礎的檢索ハ過敏症ニ於テ重要ナル

沈降素 ト抗原ノ結合 ヲ立證 スル一根據ナ リ.

飜テ文獻 ヲ觀ルニ緒方氏法ニ據 テ海〓血清過

敏 症 ヲ研 究 セ シ諸 家 ノ報 告 ニ於 テ,沈 降 素 及

ビ補體 ノ消 長 ノ檢 査 ハ之 アル モ,未 ダ抗 原 ノ

消 長 ニ關 シテ ハ之 アル ヲ聞 カ ズ.コ レハ恐 ラ

ク海 〓 血中 ノ抗 原 檢 出 ノ困難 ナ ル ニ 由 リシモ

ノナ ラ ン.海 〓 腹 腔 内 ニ異 種蛋 白例 之 牛 血 清

ヲ注 入 シ,血 中 ニ吸收 セ ラ レタ ル牛 血 清 ノ濃

度 ヲ檢 出 スル場 合,抗 牛血 清 家 兎免 疫 血 清 ヲ

使 用 シテUhlenhuth氏 原 法 ヲ行 フ時 ハ所 謂

類 屬 反應 ノタ メ ニ其 ノ正 確 ヲ期 シ難 キ モ ノナ

リ.然 ル ニ余 ハ幸 ニUhlenhuth氏 法 ニ緒 方

氏法 及 大城 氏 ノ逆 重 層 輪 環 法 ヲ應 用 シ,極 メ

テ便 利 ニ シテ 且 正確 ニ檢 出 シ得 ベ キ方 法 ヲ案

出 シ,之 ニ ヨ リ過 敏 症 ニ於 ケル抗 原 檢 出 ニ興

味 アル成 績 ヲ得 タ ル ヲ以 テ,次 ニ其 ノ方 法 ヲ

述 ベ,更 ニ實 驗 成績 ヲ記 載 セ ン ト欲 ス.

第1節　 實驗 方 法

第1項　 海 〓 血中 ノ異 種 蛋 白(牛 血清)

檢 出法 ニ就 テ

動物血中 ノ蛋 白檢査 ニ際 シテハ舊來該蛋 白ヲ以

テ免疫 シテ得 タル他動物 ノ免疫血清 ヲ使用 セ リ.

即チ豫 メUhlenhuth氏 法 ニヨ リテ免疫血清 ノ沈

降價 ヲ定 メオキ,次 デ檢査 セン トスル血清 ヲ遞 減

的 ニ稀釋 シ,該 免疫血清原液 上 ニ重層 ヲ行 フニ ヨ

リテ檢出 セ リ.然 ルニコノ方法 ハ同種 ハ動物例之

抗牛血清家兎免疫血清 ヲ以テ家兎血中 ノ牛血清含

有度 ヲ檢出 スルニハ差 障之ナキ モ,該 血清 ヲ以テ

海〓 血中ノ牛血清含有度 ヲ檢 スル ニハ不適當ナ リ.

ソハ類屬反應ナル副反 應 ノタメニ正確 ヲ期 スルヲ

得ザ ルヲ以 テナ リ.故 ニ抗牛血清海〓 免疫血清 ヲ

以 テ海〓 血中 ノ牛血清 ヲ檢出 スル時ハ副反應 ヲ生

ズルコ トナク,正 確 ヲ期 シ得 ルハ至當 ナルベシ.

然 ル ニ普通海〓 免疫血清 ニ於テハUhlenhuth氏

法 ノ沈降價 低ク,余 ノ研究 ニ必要 ナル1:50000以

上 ノ高價 ナル沈降價 ヲ有 スルモノヲ得 ルコ ト極 メ

テ困難 ナ リ.茲 ニ於 テ家兎 免疫 血清 ヲ以 テ檢 出セ

ン トスル場合,佐 藤氏ハ次 ノ如 キ方法 ヲ提案 セ リ.

氏 ハ舊來 ノ方法 ハU.氏 法 ノ沈 降價 ニ ノミ重視 シ

テ沈降素 量ヲ考慮 セザ ル點 ニ留意 セ リ.即 チ現今

迄 ノ所謂 類屬反應 除外 ノ方法中最 モ多 ク用 ヒラル

ルハ稀釋法ニ シテ,抗 原 ヲ一定度以上 ニ稀釋スル

モ ノナ リシモ,氏 ハ正常 血清(家 兎)ヲ 以テ免疫 血

清 ヲ稀澤 シ,之 ヲ以テ副反應除外 ノ一新法ナ リト

提案 シ,舊 來 ノ方法 ニヨル誤 リタル結果 ニ到 達 ス

ル ヲ改 正セ リ.余 ノ發案 セル方法ハ免疫血清 ヲ稀

釋 スルニ生理的食鹽水 ヲ以 テシ,且 其 ノ稀釋度 ヲ

正常海〓 血清 ヲ以 テ檢査用免疫血清 ノ沈降反應 ヲ

緒方氏法 ニヨ リ實施 スル コ トニヨ リ知 リ,更 ニ反

應觀察 ヲシテ明瞭ナラ シメ且重層 ヲ便利 ナ ラシム

ルタメニ大城 氏 ノ發案 ニナル逆 重層輪環 法 ヲ併用

セシメタ リ.余 ノ實施 セル方法 ヲ示 セバ次述 ノ如

シ.

第1表　 抗原檢査用E抗 血清沈降反應測定成績

161

3090 桑 原 一 郎

U.氏 原法 沈降 價1:50000　 緒 方 氏法　 結 合 帶1:2500,沈 降 素 價1:500

備 考 〓 層 疊15´ 後 反 應 陽 性, 〓30´ 後 陽 性, 〓1時 間 後陽 性, +2時 間 後 陽 性

第2表　 F抗 血 清 沈 降 反 應 測 定 成 績

U.氏 原法 沈 降 價1:100000　 緒 方 氏 法　 結合 帶1:5000,沈 降素 價1:1000

余 ハ對照實驗 トシテ何等牛血清 ヲ注入 セザ ル正

常海〓 ノ血清 ヲ檢 シタルニ,次 ノ如 キ甚 ダ興味 ア

ル類屬反應 ヲ呈 セル ヲ實驗セ リ.即 チ牛 血清 ニ對

シテ第1表 及 ビ第2表 ニテ示 セルガ如 キ沈降反應

ヲ呈 スルE及 ビF抗 牛血清家兎免疫血清(以 下單

ニ抗血清 ト記 ス)ノ 正常 海〓 血清 ニ對 スル沈降反

應 ヲ行 フニ第3表 及ビ第4表 ニ示 セルガ如 キ結果

ヲ得 タ リ.

162

抗原 ノ腹腔 内再注 入ニヨル過教 症 ニ就テ(第2報) 3091

第3表　 E抗 血清ノ類屬反應測定成績

第4表　 F抗 血清ノ類屬反應測定成績

表 ニ於 テU.氏 法 ノ ミヲ觀 察 ス ルニ,第3表 ニ

テ ハ 沈降 價1:1000,第4表 ニ テ ハ1:5000ヲ 示

シ,反 應測 定 時 間1時 間 ノ成 績 ニテ ハ夫 々1:500,

1:2500ヲ 示 ス ヲ認 ム.即 チE及 ビF抗 血清 ハ第

1表 及 ビ第2表 ニ テ示 セ ル ガ如 ク 夫 々1:50000,

1:100000ナ ル 高價 ノU.氏 法 沈 降 價 ヲ有 ス ル モ,

斯 ノ如 ク正 常 海〓 血 清 ヲ以 テ沈 降 反 應 ヲ施 行 ス ル

時 ハ 類 屬 反 應 著 明 ニ現 レ,到 底 海 〓 血中 ノ牛 血 清

含 有度 ノ檢 出ニ使用 シ得ザ ルヲ知 ルベシ.然 ルニ

第3,第4表 ニテ緒方氏法 ニヨル沈降反應成績 ヲ

觀察 スルニ,兩 抗血清50倍 稀釋迄反應 ヲ呈 シ, 100

倍 ニ至 リ最 早反應 ヲ呈 セザ ルヲ認 ムベシ(正 常海

〓 血清稀釋度10倍 ヨリ濃厚部 ノ沈降反應ハ 重疊

不可能ナル タメ施行 セサ リシモ後述 ノ逆重層法 ヲ

應用セ シ成績ニ於テ 見 ルニ10倍 稀釋 ヨリ濃厚部

ニ於テモ反應陰性ナルヲ知 ルベ シ.)コ ノ反 應成績

ヲ考察 スルニ, E及 ビF抗 血清 ハ生理的 食鹽 水 ヲ

以 テ100倍 ニ稀釋 スル時ハ最早副反應 ヲ呈 セザル

ニ至 ルベ ク,更 ニ第1,第2表 中該稀釋度 ニ於 ケ

ル牛血清 ニ對 スル反應度 ヲ觀 ル ニ.夫 々2時 間 ノ

反應測定 ニ於テハ牛血清稀釋度1:50000, 1:100000

迄反應 シ, 1時 間 ノ測定 ニテハ1:25000, 1:50000

迄 反應 スルヲ認 ムベシ.今 若 シ兩抗血清 ノ100倍

液 ヲ以テ原液 ト見做 ス時ハU.氏 法沈降價 ハ夫々

依 然 トシテ1:50000, 1:100000ヲ 示 シ. 1時 間 ノ

反應測定 ニ於テ夫 々1:25000, 1:50000ヲ 示 ス事 ト

ナルべ シ.是 ニ於テ海〓 血中 ノ牛血清含有度 ヲ檢

出 セン トスルニ當 リ,先 ヅE或 ハF抗 血清 ヲ以

テ之 ヲ施行セ ン トスル際,兩 抗 血清 ヲ生理 的食鹽

水 ヲ以テ100倍 ニ稀澤 シ, U.氏 法 ヲ行 フ時ハ副反

應 ヲ除外 シ得,且 正確 ニ檢出 シ得ルハ當然ナ リト

推 セラル.此 方法施行 スル ニ不便 ナルハ,被 檢査

血清濃厚 ナル場 合ハ重層困難 トナル點ナ リ.サ レ

ド余ガ採用セル大城 氏發案 ノ逆重層輪環法 ヲ應用

セバ甚ダ容易ナ リ.逆 重層法 ノ有利 ナルハ大城氏

ノ報告 セルガ如 ク抗血清 ノU.氏 法沈降價 ヲ一層

鋭敏ナ ラシムル點ナ リ.即 チ次 ノ第5表 ニ示 セル

ガ如 クE及 ビ下抗血清生理的食鹽水100倍 稀釋液

ヲ以テ,順次1%「 アラビヤ ゴム」生 理的食鹽水溶液

ヲ以テ稀 釋セル牛血清液 ノ上層 ニ逆位 ニ重層 シ,

1時 間後 ノ反應 ヲ測定 スルニ夫 々沈降價1:50000,

1:100000ヲ 示 シ,前 法 ニヨルモ兩抗血 清 ノ沈降價

ノ増大 シ,鋭 敏 トナル ヲ認 ムべ シ.

163

3092 桑 原 一 郎

第5表

以上 ノ成績結果 ヨ リシテ,余 ノ採用 セシ方法ハ

佐藤氏 ノ方 法ヲ改良 シ,更 ニ大 城氏 ノ逆重層輪環

法 ヲ加 へ,其 ノ有利ナル點 ヲ利用 シタルモ ノニシ

テ.海 〓 血中 ノ抗原檢出法 トシテ最 モ正確 ナルハ

勿論,檢 査用抗血清 ヲ得ルニ方 リテモ容易 ニシテ

誠 ニ至便 ナル方法ナ リ ト信 ズルモノナ リ.余 ハ以

下認 スル諸實驗 ニ於 テ, E抗 血清 ヲ以テ抗原檢査

用 ニ供 セ リ.

第2項　 採血方法

海〓 腹腔 内 ニ 牛 血清 ノ適 當 量 ヲ注 入 シ,時 間 的

ニ例 之 注 入後5´, 10´, 20´, 30´, 40´, 70´, 100 ,́ 130´,

160´, 190´, 250´, 310´, … …… 等 ノ間隔 ヲオ キ テ採

血 シ,牛 血清 ノ檢 出 ヲ行 フ ニ方 リテ ハ 一動 物 ニ就

テ ノ ミ斯 ノ如 キ頻 囘 ノ採 血 ハ僅 少 ナ ル海 〓 ニ於 テ

.ハ 到底 不 可能 ナ ル ヲ以 テ.余 ハ 一 動物 ニ ツキ2乃

至3囘 シカ モ相 當 時 間 ヲ オキ テ 採 血 ス ル ニ止 メ,

數 頭 ノ海 〓 ヲ使 用 シテ牛 血 清 ノ血 中 出現 ノ時 間 的

檢 索 ヲ施 行 セ リ.第1囘 報 告 ニ於 テ モ既 ニ述 べ タ

ル ガ如 ク抗 原 ノ海 〓 腹腔 内 吸收 ハ種 々 ナ ル條 件 ニ

ヨ リテ 左 右 セ ラル ル ヲ以 テ,コ ノ點 ニ注 意 ヲ拂 ヒ,

且1例 ニ ノ ミ滿 足 セ ズ余 ハ 出來 得 ル限 リ多 數 例 ニ

於 テ 同 一 實驗 ヲ繰 返 ス コ トニ努 メ ク リ.

第2節　 實 驗 成 績

第1項　 正 常(非 感 作)海 〓 ニ 於 ケ ル

實 驗 成 績

數 頭 ノ正 常 海〓 腹腔 ニ種 々ナ ル 量 ノ牛 血清 ヲ注

入 シ,時 間 的 ニ順 次 採 血 シ, E抗 血清 ヲ使 用 シテ

既 述 ノ方 法 ニ ヨ リ血清 ノ牛 血清 含 有 度 ヲ檢 出 セ ン

ト欲 ス.コ コ ニ如 何 ナ ル 牛血 清 量 ヲ注 入 ス ル ヲ適

當 ナ リ トナ スヤ ノ問題 ナ ル ガ,余 ハ被 働 性感 作 海

〓 ヲ シテ過 敏 症 死 ヲ起 サ シ ム ル最 少確 實致 死 量 ハ

流 血 中 稀 釋 沈 降素 價1:25, 1:12.5, 1:50ナ ル 時,

夫 々結 合 帶 ノ64倍, 128倍, 32倍 量 ニ シテ,且

感 作用 抗 血 清 ノ沈 降 素 ノ示 ス結 合 帶 ニ ヨ リテ其 ノ

絶 對 量 相 異 ル モ ノ ナル ヲ第1囘 報 告 ニ於 ケル 實驗

ニ ヨ リテ知 リ得 タ ル ヲ以 テ.之 等 ノ最 少 確 實 致 死

量 ヲ以 テ 基 準 トナ サ ン トセ リ.而 シテ前 囘報 告 實

驗 ニ於 テ,感 作用 抗 血清 ハ夫 々1:2500, 1:5000,

1:100000ナ ル結 合 帶 ノモ ノヲ使 用 セ シ ガ故 ニ,之

等 ノ實 瞼 成 績 ニ一 致 セ シ ム ル 目的 ヲ以 テ次 ノ如 キ

注 入量 ニ於 テ セ リ.

今 若 シ260gル 體 重 ヲ有 ス ル 正常 海 〓 ニ於 テ,其

ノ推 定 血量 ヲ20cc(=260/13)ト スル 時, 20/10000

×64=0.128ccノ 牛 血 清 ヲ注 入 シ タ リ トセ バ,該 注

入量 ハ 沈 降 素 結 合 帶1:10000ヲ 證 明 ス ル感 作 海〓

ノ場 合 ニ於 ケル64倍 結 合 帶相 當 量 ナ リ.更 ニ該 量

ハ 結 合 帶1:5000ヲ 證 明 ス ル感 作 海 〓 ノ場 合 ニ於 テ

ハ 正 ニ32倍 結 合 帶相 當 量(20/5000×32=0.128cc)

ニ當 リ,結 合 帶1:2500ヲ 證 明 ス ル感 作 海〓 ノ場

合 ニ於 テ ハ16倍 結合 帶 相 當量(20/2500×16=

0 128cc)ニ 相 當 ス.故 ニ余 ハ 算 出 ノ便 宜 上

推 定 血 量/10000×64cc… … …I

推 定 血 量/10000×128cc… … …II

ナ ル2式 ニ ヨ リテ2種 ノ注入 量 ヲ定 メ タ リ.

164

抗原 ノ腹腔 内再注入ニ ヨル過敏症 ニ就 テ(第2報) 3093

I及 ビII式 ノ示 ス注 入 量 ハ 上 述 ノ如 ク感 作海 〓

ノ血清 沈 降 素 ノ結 合 帶1:2500, 1:5000, 1:10000

ナ ル場 合 ニ於 テ,夫 々16倍, 32倍, 64倍 或 ハ32

倍, 64倍, 128倍 結 合 帶 相 當 量 ニ一致 ス ベ キ注 入

量 ナル ヲ以 テ, 2式 ニ ヨル2團 ノ實 驗 施 行 ニテ充

分 ナル見 解 ヲ求 ム ル ヲ得 ベ シ ト思 惟 シ タ ル モ ノ ナ

リ.

實 驗 第1

第6表　 牛血清 推定血量/10000×64ccヲ 正常海〓腹腔内ニ

注入セル後各時間ニ於ケル血清ノ牛血清含有度

數頭 ノ正常海〓 ニ推 定血量1/10000×64ccノ 牛

血清 ヲ生理的食鹽水 ヲ以テ稀釋 シ,全 量1.0ccト

ナシテ腹腔内注入 シタル後,各 時間ニ於 テ採血シ,

其 ノ血清 ノ牛血清含有度 ヲ既述 ノ方法 ニヨ リ反應

測定1時 間ニ於 ケル成績 ヲ以テ示セバ第6表 ノ如

シ.創 チ所定 ノ牛血清注入後5分 時ニ於テ已 ニ血

清中ニ出現 スルヲ證 セラレ,次 第 ニ其 ノ濃度 ヲ増

シ,略 ボ2時 間 ニシテ最高 ノ域 ニ達 シ,爾 後310

分 ニ至 ルモ殆 ド増減 ナク, 21時 間 ニ及ブ ヲ認 ムベ

シ.

165

3094 桑 原 一 郎

實 驗 第2

第7表　 牛血清 推定血量/10000×128ccヲ 正常海〓腹腔内ニ

注入セル後各時間ニ於ケル血清ノ牛血清含有度

數頭 ノ正常海〓 ニ 推定 血量/10000×128ccノ 牛

血清ヲ前實驗 ノ場合 ノ如 ク腹腔 内注入 シ,其 ノ吸

收 セラ レテ血行 ニ入 レル牛血清 ヲ血清 中 ノ反應 ニ

ヨリテ見 ルニ,第7表 ニテ示セルガ如 ク注入後5

分 時ニシテ可成多量ニ現 レ,次 第 ニ増量 シテ,略

ボ2時 間 ニシテ最高 ノ域 ニ達 シ,爾 後310分 ヲ經

過 スル モ殆 ド増減ナ シ.前 實驗成績 ニ比 スルニ,

牛血清注入量 ノ増加ニ ヨ リテ,其 ノ血 中出現量 ノ

多量 トナ リ來 レル ヲ認 ムル ヲ得 タリ.

上 記2實 驗 成績 ノ考 察

上 述 ノ2實 驗 成績 ヲ考 察 スル ニ,海 〓 血 清

中 ノ牛 血 清檢 査 ニ使 用 セ シE抗 血清 ハ沈 降 價

1:50000ナ ル ヲ以 テ第6及 ビ第7表 ニ示 セル

被 檢 血 清 ノ反應 度 ヨ リ シテ,各 時 間 ニ於 ケル

血 清 中 ノ牛 血 清 濃度 ヲ概 知 スル ヲ得 べ シ.即

チ表 中 ニ示 ス反 應度 ヲE抗 血清 沈 降 價 ヲ以 テ

除 シタ ル 商 ハ海 〓 血 清 中 ニ於 ケル 血 清 ノ含 有

濃 度 ヲ示 ス モ ノナ リ.故 ニ兩 實 驗 成績 ニ於 テ,

牛 血 清 注 入後 各 時 間 ニ於 ケ ル血 中 ノ牛 血清 濃

度 ヲ推 測 ス ル ニ,推 定 血 量/10000×64ccノ 牛

血 清 注 入 ノ場 合 ハ5分 乃 至10分 時 ニ シテ 已

ニ5/50000即 チ1/10000ノ 濃 度 テ示 シ, 30分

分 至70分 ニ シテ25/50000即 チ1/2000,略 ボ

2時 間 ニ シテ50/50000即 チ1/1000ノ 濃度 ニ

166

抗原 ノ腹腔 内再 注入 ニヨル過敏症 ニ就 テ(第2報) 3095

達 スル ヲ知 ル.同 樣 ニ推 定 血 量/10000×128cc

ノ牛 血 清 ヲ 注 入 セ シ場 合 ハ5分 乃 至10分 時

ニ シテ1/5000ノ 略 ボ2時 間 ニ シテ1/500ノ 濃

度 ニ達 スル テ知 ル.是 ニ於 テ被 働性 過敏 症 實

驗 ニ於 ケル再 注 入量 ヲ考 察 スル ニ興 味 深 キモ

ノ ア リ.被 働 性感 作 海 〓 ニ於 テ,其 ノ血 中沈

降 素 ノ結 合 帶1:10000ヲ 證 明 セシ場 合, 64倍

ノ結合 帶 相 當 量 即 チ 推 定 血 量/10000×64cc

ノ抗 原(牛 血清)ヲ 腹 腔 内 再 注 入 スル時 ハ確 實

ニ過敏 症 死 ヲ起 サ メ シ得 ル ハ第1囘 報 告 ニ テ

實 驗 セ シ所 ナ リ.然 ル ニ正 常(非 感 作)海 〓 ニ

同量 ノ 牛 血 清 ヲ 注 入 ス ル時 ハ5分 乃至10分

ニ シテ血 中牛 血 清 濃度1/10000ニ 達 シ,恰 モ

感作 海〓 ニ於 ケ ル沈 降素 結 合 帶1:10000ナ ル

場合 ニ於 ケル 濃 度 ニ相 當 ス ル ヲ知 ル.更 ニ血

中沈降 素 結 合 帶1:5000ヲ 證 明 セル被 働 性 感

作 海 〓 ニ64倍 ノ結 合 帶 相 即 チ 推 定 血 量/5000

×64cc(=推 定 血量/10000×128cc)ノ 抗 原 ヲ

注 入 スル時 ハ確 實 ニ過敏 症 死 ヲ起 サ シ メ得 ル

モ ノナ ル ガ,同 量 ノ牛 血清 ヲ正 常海 〓 ニ注 入

スル時 ハ5分 乃 至10分 ニ シテ 血 中牛 血 清 濃

度1/5000ニ 達 シ,恰 モ感 作 海 〓 ニ於 ケ ル沈 降

素 結合 帶1:5000ニ 相 當 スル ヲ知 ル.更 ニ進

デ 最 少確 實致 死 量 以 下 例 之32倍 ノ結 合 帶 相

當 量 ノ抗 原 ヲ被 働 性 感 作 海 〓 腹 腔 内 ニ再 注 入

ス ル場合 ヲ考 フル ニ,同 量 ノ牛 血清 ヲ正 常 海

〓 ニ注 入 セル場 合 即 チ 推 定 血 量/5000×32cc

(=推 定血 量/10000×64cc)ノ 牛 血清 ヲ注 入 ス

ル 時 ハ5分 乃 至10分 ニ テハ 感 作 海 〓 ノ場 合

ノ結 合 帶1:5000ニ 相 當 ス ル牛 血清 濃度 ニ達

セ ズ シテ,數10分 乃 至2時 間 後 ニ於 テ1/5000

或 ハ夫 レ以上 ノ濃 度 ニ達 ス ル ヲ知 ルベ シ.是

ニ 至 リテ之 ヲ觀 ズル ニ,被 働 性 海〓 過 敏 症 ニ

於テ ハ次 ノ諸 事項 ヲ想 像 シ得 ル ナ リ.

1.抗 原 ノ腹 腔 内 再 注 入 ニ ヨ リ海 〓 ヲ シテ

確 實 ニ過 敏 症 ヲ起 サ シム ル ハ 腹腔 ヨ リ速 ニ

吸 收 セ ラ レ,遲 ク トモ5分 乃 至10分 間 ニ海 〓

血 中 ニ於 ケル 抗 原 含 有 度 ガ沈 降素 ノ結 合 帶 ニ

相 當 スル濃 度 ニ達 スル テ必 要 トス.

2.若 シ再 注 入 量 ノ不足 或 ハ他 ノ原 因 ニ ヨ

リ抗 原 ノ腹 腔 内 吸收 ニ遲 延 ヲ來 シ,速 ニ血 中

含 有 度 ガ結 合 帶 ニ相 當 スル 濃度 ニ達 セザ ル時

ハ定 型 的 過 敏 症 ヲ惹起 セ シムル ヲ得 ズ.

3.抗 原 ノ血 中出 現 状 態 ト過 敏症 状 及 ビ熱

型 トハ略 ボ一致 ス.

余 ハ以 上 ノ諸 推 測事 項 ヲ シテ 一層 立 證 セ シ

ム ル爲 ニ更 ニ次 ノ諸 實 驗 ヲ行 ヘ リ.

第2項　 被 働 性 感作 海〓 ニ於 ケル 實 驗 成 績

前 項 ニ於 ケル余 ノ推 測 ヲ シテ尚 ホ眞 ナ ラ シ

ム ル ニ ハ感 作 海 〓 ニ於 ケル抗 原 ノ腹 腔 内吸 收

ヲ檢 セザ ルベ カ ラズ.更 ニ進 ン デ之 ガ海 〓 血

中 ノ沈 降 素 及 ビ補體,或 ハ其 ノ際發 症 ス ル過

敏 症 状 トノ關 係 ヲ究 ムル 必要 ア リ.海 〓 過 敏

症 時 ニ於 ケル 沈 降素 及 ビ補 體 ノ消 長 ニ關 シテ

ハ 既 ニ第1囘 報 告 ニ 於 テ多 少實 驗 セル モ,本

項 ニ於 テ ハ更 ニ精 細 ニ之 ガ檢 索 ニ努 メタ リ.

被 働 感作 ニ ハ既 ニ記 載 セ シF抗 血 清(結 合 帶

1:5000,稀 釋 沈 降 素 價1:1000)ヲ 使 用 セ リ.

實 驗 第1

數頭 ノ海〓 ニF抗 血清 ノ適當量 ヲ以テ被 働的ニ

感 作 シ,潜伏期24時 ヲ經テ流血中 ニ稀釋沈降素價

1:25ヲ 證明スル ヲ確 メタル後,結 合帶 ノ64倍 相

當量 ノ抗原 ヲ腹腔 内ニ再注入 シ,其 ノ吸收 セラレ

テ血行 ニ入 レル抗原 ヲE抗 血清 ヲ以テ檢査 セル血

清中 ノ反應 ニヨ リヲ見,且 血清 ノ沈降素及 ビ補體

ヲ檢査 セ リ.實 驗成績 ハ第8表 ニ示 スガ如 シ.

167

3 0 9 6 桑 原 一 郎

第8表

　被

働感

作海

〓腹

腔内

ニ64倍

結合

帶相

當量(推

定血

量/5000×

64cc=推

定血

量/10000×128cc)ノ

牛血清

ヲ再

注入

セル過敏症實驗檢査成績

1 6 8

抗原 ノ腹腔 内再注入ニ ヨル過敏症 ニ就 テ(第2報) 3097

所 見

7)再 注入前 ニ於テ採血シ,血 清中 ノ抗原 ヲ檢

スルニ何等證明 シ得 ズ.

2)再 注入 後5分 ニテハ2例 共 抗 原 ヲ檢 シ得

ズ. 10分 後ニ至 リ1例 ハ尚 ホ抗原 ヲ證明 シ得ザ ル

モ, 1例 ハ漸 ク之 ヲ證 明シ得 ルニ至 リ,血 清稀釋

度1:25迄 反應 ヲ呈 ス. 20分 ニテハ1例 ハ依然抗

原ヲ證明 シ得 ズ. 23分 ニテ即 チ過 敏症死直前 ニテ

ハ血清稀釋度 ト1:10迄 反應陽性ナル ヲ認 ム.次デ

25分 及 ビ35分 ニテ過 敏症死 ヲ來セル直前 ニ於テ

採血檢査 セル場合 ニテハ夫々血清 稀釋度殆 ド1:10

1:25迄 反應 ヲ呈 スルヲ認 ム.

3)再 注入前沈降素價1:25ヲ 證 明セ シ沈降素

ハ再注入後5分 ニ於テハ2例 共著 シキ減少 ヲ認 メ

難 ク,僅 ニ沈降反應出現時間 ノ遲延 スル ヲ認 メ,

多少沈降素減少 スルヲ推 シ得.再 注入後10分 ニテ

ハ1例 ハ沈降素價1:10ニ 減ジ,抗原 ヲ血清稀釋度

1:2.5迄 證明 シ得 タル1例 ニテハ 沈降素 ヲ證明 シ

得ズ.再注入後20分 ニテハ沈降素價1:1ニ 迄 減少

シ,更 ニ23分, 25分, 35分 ニ於 ケル過 敏症死直

前 ニ於テハ遂 ニ沈降素全 ク證明 シ得ズ.

4)補 體ハ再注入後時間 ノ經過ニ從 ヒ抗原 ノ血

中出現及 ビ沈降素消失 ト共 ニ迅 速 ニ補體價 ヲ減 ジ

遂 ニ殆 ド證明 シ得ザ ルニ至 ル.

實 驗 第2

結合帶 ノ32倍 相當量 ノ抗原 ヲ被働 性感 作海〓

腹腔 内ニ再注入 シ,前 實驗 ト同 樣ナル實驗 ヲ施行

シタルニ第9表 ニ示 スガ如 キ所見 ヲ得 タリ.

所 見

1)再 注入前 ニ於テハ海〓 血中ニ毫 モ抗原 ヲ證

明シ得 ズ.

2)再 注入後10分 更ニ20分 ニ至 ルモ,抗 原 ヲ

證 明シ得 ズ, 30分 ニシテ血中 ニ之 ヲ證明 シ得 ル ニ

至 リ,略 ボ血清稀釋度1:10迄 反應 ヲ呈 ス.更 ニ再

注入後40分, 60分, 70分 ニテハ共 ニ血清 稀釋度

1:25迄 反應 ヲ呈 シ, 130分, 160分 ニハ1:100迄

310分 ニハ1:250迄 反應 ヲ呈スル ヲ認 ム.

3)再 注入前 沈降素價1:25ヲ 證明 セ シ沈降素

ハ再注入後10分 ニテハ 殆 ド沈 降素價 ニハ變動 ナ

キモ,僅 ニ抗降反 應ニ時間的遲延 ヲ認 メ,多 少沈

降素 ノ減少セル ヲ認 ム.再 注入後20分 ニテ ハ沈降

素價1:10或 ハ1:2.5ヲ 示 シ,沈 降素 ハ著 シタ減少

ス.更 ニ30分 以後310分 迄 ノ檢 査 ニテハ 沈降 素 ヲ

全 ク證明 シ得ズ.

4)再 注入後 ノ補體 ハ10分, 20分 後 ニテ沈降

素 ノ減少 ト共 ニ補體價 ヲ減 ジ, 30分 後 ヨ リ130分

ニ至 ル迄沈降素消失,抗 原 ノ出現 ト共 ニ殆 ド消失

スルヲ見 ル,然 ルニ以後310分 ニテハ補體 價ハ著

シク増加 シ,過 敏症 ノ恢 復 ト共 ニ補體 モ亦 漸次増

加 シ來 ルヲ思ハ シム.

5)體 温降下及 ビ過敏症状 ハ沈降素 ノ減少 シ始

ムル ト共 ニ發症 シ來 リ,且 之ガ減少著 明 トナル ニ

從 ヒ著明 トナ リ.沈 降 素消失竝 ニ抗原 出現 ト共 ニ

益 々著 シク,遂 ニ約2時 間ニ シテ抗原出現度略 ボ

最高 ニ達 スルニ及 ビ最モ著明 トナ リ,以 後 抗原 出

現度持續 シ或ハ多少増大 スルモ漸次恢復 ノ状 ヲ呈

シ,遂 ニ原状 ニ復 スル傾 向 ヲ認 ム.

第3項　 實 驗 成績 ノ考察

余 ハ前 項 ニ述 ベ タル ガ如 ク正 常 海 〓 ニ於 ケ

ル牛血 清 ノ腹 腔 内吸 收,更 ニ被 働 性 過 敏症 ニ

於 ケ ル抗 原 ノ消 長 ヲ檢 シ,且 其 ノ際 沈 降素 及

ビ補體 ヲ モ檢 査 セ シガ,第1囘 報 告 ニ於 ケ ル

實 驗 成績 ヲ參 照 シ,之 等 ノ實 驗 成績 ヲ概 括 考

察 スル ニ次 述 ノ如 シ.

F抗 血 清 ヲ 以 テ 海 〓 ヲ被 働 感 作 シ,其

ノ 流 血 中 ニ 沈 降 素 價1:25ヲ 證 明 セ シ 場

169

3 0 9 8 桑 原 一 郎

第9表

　被

動感

作海

〓腹

腔内

ニ32倍

結合

帶相

當量(推

定血

量/5000×

32cc=推

定血量/10000×64cc)ノ

牛血

清ヲ再注

入セル

過敏

症實

驗檢

査成績

1 7 0

抗原 ノ腹腔 内再 注入 ニヨル過 敏症 ニ就テ(第2報) 3099

合,最 少確實致死量タル64倍 結 合帶相當

量(推 定血量/5000×64)ノ 抗原 ヲ腹 内

再注入 シタル時 ノ成績 ヲ同 量ノ抗 原即 チ

推定血量/10000×128ccノ 牛血清 ヲ正堂海〓

腹腔内ニ注入セル第7表 ノ成績 ト比較 シ見ル

ニ再注入ノ始 メニ於テハ抗原ノ出現後者ノ場

合 ニ比 シテ遙ニ遲延スルガ如 ク現 レ, 20分 以

後25分 或 ハ35分 即チ死直前 ニ於テ漸ク之 ヲ

證明シ得ルニ至ル.コ レ即チ被働感作海〓ニ

64倍結合帶相當量 ノ抗原 ヲ注入スル時ハ恐 ラ

ク5分 乃至10分 間ニシテ海〓血中ノ抗原含

有度ハ結合帶ニ相常スル濃度ニ達 シ,沈 降素

トノ結合 ニ適當ナル状態 トナルヲ以 テ兩抗體

ノ生體内ニ於ケル結合 ヲ想像 シ得ルハ容易ニ

シテ,且再注入後5分 乃至10分 ニシテ沈降素

ハ速ニ減少シ始メ,過 敏症状モ出現 シ來ル事

實ハ明カニ此間 ノ消息 ヲ證明スルモノナ リ.

更ニ23分, 25分, 35分 後ニ至 リ過敏症死 ヲ

來セル場合ニ於テ抗原 ヲ證明スルハ,コ レ殘

餘抗原 ト見做サルベシ.同 一感作状態ノ海〓

ニ最少致死量 ヲ半減 シ, 32倍 結合帶相當量

(推定血量ノ5000×32)ヲ 再注入スル時ハ抗原

ノ血中出現ハ更ニ遲延 スルガ如 ク現 レ, 30分

後ニシテ之ヲ證明 シ, 130分 後 ニテ正常海〓

ニ注入セル場合ニ稍々近キ反應度ヲ示 セリ.

沈降素ノ消失モ遲ク20分 乃至30分 ニテ初メ

テ消失スルテ認ム.正 常海〓ノ場合即チ第6

表 ノ成績 ヲ見ルニ注入後5分 乃至20分 ニテ

ハ血中ノ牛血清含有度ハ結合帶 ノ1/2ニ相當ス

ル濃度ヲ呈シ,從テ感作海〓ニ32倍 結合帶相

當量ノ抗原ヲ再注入スル時ハ沈降素 トノ完全

ナル結合 ニ不適當ナル状態ニアルヲ以テ沈降

素 ノ消失遲延 スル理ナ リ.而 シテ逐次抗原ハ

血 中 ニ吸 收 サ レ來 ル テ以 テ遂 ニ沈 降 素 ノ消 失

テ來 シ, 30分 後 ニ ハ完 全 ニ消 失 スル ヲ認 ムル

ナ リ.以 後 血 中 ニ 出現 セル抗 原 モ亦 沈 降 素 ト

結 合 シ了 シタ ル殘 餘 ト見做 サ ル.斯 ノ如 ク抗

原 再 注 入量 ヲ減 ズ ル時 ハ其 ノ血 中出現 ニ遲 延

ヲ招來 スル結 果 沈 降 素 トノ完全 ナ ル結 合 ニ長

時 間 ヲ要 シ,其 ノ間感 作海 〓 ハ抗 過 敏 性 トナ

ル ベ ク,コ ノ抗 過敏 症 現象 ハ又實 ニ桑 名氏 ノ

結 論 セ シガ如 ク抗 原 ニ依 ル沈 降 素 ノ 中和 現 象

ニ外 ナ ラズ.是 ニ於 テ 定型 的過 敏 症 死 ヲ被 働

感 作 海 〓 ニ惹起 セ シム ル ニ ハ 出來 得 ル限 リ速

ニ遲 ク トモ5分 乃 至10分 間 ニ 流 血 中抗 原 含

有 度 ガ結 合 帶 ニ相 當 ス ル濃 度 ニ達 スル テ必 要

トスル モ ノニ シテ,コ レガ爲 ニ靜 脉 内 注 入 ニ

比 シテ腹 腔 内 注 入 ニ於 テ ハ著 シク多 量 ノ抗 原

量 ヲ要 シタルレナ リ.

過 敏 症 時 ノ體 温 降 下 及 ビ症 状 ヲ觀察 スル モ

亦 上 記 ノ推 定 ヲ益 々首 肯 シ得 ル モ ノナ リ.即

チ抗 原 ノ適 當量 ヲ再 注 入 スル ニ 既 ニ5分 時 ニ

シテ海 〓 ハ鼻 掻 爬,噴 嚏 ノ如 キ症 状 ヲ呈 シ始

ム,コ ノ際 流 血 中 ニ抗 原 ヲ證 明 シ得 ザ ル モ,

沈降 素 ハ早 ク モ減 少 スル ノ傾 向 テ認 ムベ ク,

兩抗 體 ノ結 合 シ始 ムル ヲ想像 シ得 ベ シ.更 ニ

沈降 素 ノ減 少 著 明 トナ リ抗 原 トノ結 合 完全 ト

ナ ル ニ及 ビテ體 温 降下 及 ビ症 状 ハ益 々著 明 ト

ナ ル.

以 上 ノ如 ク考 察 シ來 ル時 ハ過 敏 症 ナ ル モ ノ

ハ常 ニ動 物 生體 内 ニ於 ケ ル抗 原 ト沈 降 素 トノ

結 合 ニ 由來 スル モ ノ ニ シテ,沈 降 素 ト過敏 性

抗 體 トハ全 ク 同 一物 ナ リ トノ余 等 ノ持 論 ヲ シ

テ 益 々鞏 固 ナ ラ シム ル モ ノナ リ.補 體 モ亦 常

ニ過敏 症 死 ノ際 ノ ミナ ラズ,抗 原,沈 降 素結

合 最 モ適 當 ナ ル時 ハ夫 ニ伴 ヒテ消 失 ス ベ ク,

171

3100 桑 原 一 郎

杉 本 氏 ノ言 ヘ ル ガ如 ク吾 人 ヲ シテ沈 降 素 ト所

謂 補體 結 合 性抗 體 トハ同 一 物 ナ リ トノ信 念 ヲ

抱 カ シム ルモ ノナ リ.

第3章　 高張性食鹽水及ビPepton

ノ海〓過敏症ニ及ボス影響

余ハ前章ニ於テ被働感作海〓ヲシテ過敏症

ヲ起サシムルニハ再注入セラレタル抗原ガ腹

腔 ヨリ吸收セラレ可及的短時間内ニ血中含有

度ガ沈降素結合帶ニ相當スル濃度ニ達 シ,沈

降素 トノ結合 ニ適當ナル状態 トナル事必要ナ

リ トノ判定ヲ下 セリ.本 章ニ於テハ高張性食

鹽水及 ビPeptonヲ 以ヲ被働感作海〓ニ前處

置ヲ施 シタル後,或 ハ之等藥物 ト同時ニ抗原

ヲ腹腔内再注入スルニ,過 敏症ニ興味 アル阻

止現象ヲ招來スルヲ實驗セリ.コ ノ過敏症阻

止現象ノ際,之 等兩藥物 ノ影響ニヨリ抗原ノ

腹腔内吸收ニ何等カノ變動 アルヤモ知 レズ ト

思考シ,前 章ニ於ケルガ如ク抗原檢査 ヲ施行

シ,更 ニ正常海〓 ニ同樣ナル實驗ヲ試 ミ,以

テ兩藥物 ノ影響ニ ヨル阻止現象 ノ本態ヲ明カ

ニシ,且 前章ニ於ケル余 ノ推定ヲシテ一層明

確 ナラシメン ト企テタリ.

第1節　 實 驗 方 法

感作動物ハ前章 ト全 ク同樣 ナル感作状態 ノ海〓

ヲ使用 セ リ. Peptonハ 海〓 ニ對 シテハ甚ダ毒性

強 ク,佐 藤氏 ハ實驗 ニ依 ルニWitte Peptonハ 大

量 ヲ腹腔 内ニ注 入スル時 ハ,忽 チ虚脱 ハ症状 ヲ來

シ,數 時間ニ シテ死 亡 シ,或 ハ血球像 ハ變化及 ビ

體温 ノ下降 ヲ來ス.之 ガ少量 ヲ注入 スル時 ハ血球

像 ノ變 化及ビ體 温 ノ上昇 ヲ來 ス.余 ハ之等 ノ點 ヲ

考慮 シ, Witte Peptonノ 注入量 ヲ0.03gト セ リ.

高張性食鹽水 ニ於 テハ田中氏ハ食鹽 ハ血清過敏症

ニ及ボス影響 ヲ實驗 シ タル場 合,「 マウス」ノ腹腔

内ニ7%食 鹽水0.5ccヲ 注 入セ リ.余 ハ5%食 鹽

水 ヲ作 リ,其 ノ2.0ccヲ 注 入セ リ.實 驗 ニ際 シテ

ハ先ヅF抗 血清 ヲ以テ被 働感 作セ シ海〓 ニ上記 ノ

量 ノPepton及 ビ5%食 鹽水 ヲ腹腔 内注入 シ, 1時

間及ビ4時 間 ヲ經 テ,流 血中ニ沈降素價1:25ヲ

證 明 シ得 ル ヲ確 メタル後 最 少確 實 致 死量 タル64

倍結合帶相 當量 ノ抗原 ヲ生理 的食鹽水 ヲ以 テ全量

1.0ccト ナ シテ腹腔 内 ニ再 注入 セ リ.更 ニ同量 ノ

抗原 ヲ5%食 監 水豫ビPepton 0.03gト 混 ジ全

量 ヲ2.0ccト ナ シ再 注入 ヲ行 ヘ リ.潜 伏期間ハ26

時間 ト定 メ,前 處 置ハ其傷合 ニヨ リ時間 ヲ加 減セ

リ.

第2節　 實 驗 成 績

第1項　 對 照 實 驗

F抗 血清 ノ過敏症賦與力 ハ 潜 伏 期24時 間 ニテ

感作海〓 ノ流血中ニ沈 降 素 價1:25ヲ 證明 スル場

合64倍 結合帶 相當量 ノ抗原ヲ腹 腔 内 再注入 スル

時確實 ニ過 敏症 死 ヲ起 サ シメ得 ルハ前章 ノ實驗 ニ

ヨ リヲ明 カナル モ,本章 ニ於テハ潜伏期 ヲ26時 間

トシ,抗 原注 入量 ノ全 量 ヲ2.0ccト ナシ タル場合

ア ルヲ以ヲ,念 ノ爲次 ノ第10(次 頁)ニ 示 スガ

如 ク對照實驗 ヲ施行セ リ.

即 チF抗 血清 ヲ以テ被働感 作 シ,潜 伏期26時

間 ヲ經テ流血中 ニ沈降素價1:25ヲ 證明セ ル4頭

ノ海〓 ニ結合帶相當量 ノ64倍 及ビ32倍 量 ノ抗原

ニ生理的食鹽水 ヲ加へ全量2.0ccト シ腹腔 内ニ再

注入 シタルニ,前 者 ノ2例 ハ定 型的過 敏症死 ヲ起

シ,後 者 ノ2例 ハ著明ナル過 敏症状及 ビ體温降下

ヲ認 メタルモ,斃 死 ヲ免 レタ リ.即 チコノ場合 ニ

於 テモ抗原 ノ最 少 確 實致死量ハ64倍 結合帶相當

量 ナ リ.

172

抗原 ノ腹腔 内再注入 ニヨル過敏症 ニ就 テ(第2報) 3101

第10表

第2項　 高張性食鹽水ノ影響

被働感作海〓ニ最少致死量ノ抗原 ヲ再注入

スル過敏症ニ及ボス5%食 鹽水ノ影響ヲ檢 シ

タルニ家述ノ諸實驗ノ如 シ.

實 驗 第1

被 働感 作海〓 ニ26時 間 ノ潜伏期後64倍 結合帶

相當量 ノ抗原 ヲ全量2.0ccナ ル5%食 鹽溶液 トナ

シテ腹腔 内ニ再 注入 セル 過敏症實驗成績ハ 第11

表 ニ示 スガ如 シ.

第11表

所 見

1)確 實致死量 ノ抗原 ヲ再注入スルモ常 ニ過敏

症ハ極端 ニ阻止セラレ,毫 モ體 温降下及 ビ過敏症

状 ヲ呈 セズ.

2)沈 降素 ノ減少ハ再注入後 數 時 間 ニ至 リテ

稍 々認 メ ラ レ,其 ノ著 明 ナル 減少 或 ハ消 失 ハ24時

間 後 ニ於 テ認 メ ラル.

3)抗 原 ハ 再 注 入 後24時 間 ニ至 ルモ 殆 ド證 明

シ難 ク, 1例 ノ ミニ於 テ之 ヲ證 明 セ リ.

173

3102 桑 原 一 部

實 驗 第2

被働感作海〓 ニ25時 間 ノ潜伏期後5%食 鹽水

2.0ccヲ 腹腔 内ニ注入 シ, 1時 間 ヲ經テ64倍 結合

帶相當量 ノ抗原 ヲ全量加生理的 食鹽 水溶液1.0cc

トナシテ腹腔 内 ニ再 注入セル過 敏症 實驗成績 ハ第

12表 ノ如 シ.

第12表

所 見

1)實 驗第1ノ 場合 ニ比 シテ過敏症 ノ阻止ハ減

弱 シ,輕 度 ノ體温降下及 ビ過敏 症状 ヲ認 メラ レ,

3例 中1例 ハ過敏症死 ヲ來 セリ.

2)沈 降素 ノ減少及 ビ消失 モ明 カニ認 メラル.

3)抗 原 ノ證明 モ著 明ナ リ.

實 驗 第3

被働感作海〓 ニ22時 間 ノ潜伏期後5%食 鹽水

2.0ccヲ 腹腔内 ニ注入 シ, 4時 間 ヲ經テ64倍 結合

帶相當量 ノ抗原 ヲ全量加 生理 的食鹽水溶液1.0cc

トナシテ腹腔内 ニ再注入 セル過 敏症實驗成績ハ第

13表 ハ如 シ.

第13表

所 見

1)實 驗第2ノ 場合 ニ比 シテ過敏症 ノ阻止ハ更

ニ減弱 シ,體 温降下及 ビ過敏症状ハ著明 トナ リ,

1例 ハ過 敏症死 ヲ起 セ リ.

2)沈 降素 ハ採血時證 明 シ得 ズ.

3)抗 原ハ一般 ニ實驗第2ニ 比 シテ著 明ニ證明

セ ラル.

4)表 中 ニ記入ナキモ5%食 鹽水注入後4時 間

即 チ抗原再 注入前 ニ於 テハ常 ニ1.0℃ 乃至1.5℃ ノ

體温上昇 ヲ認 メタ リ.

第3項　 Peptonノ 影 響

被 働 感 作 海 〓 ニ最 少 致 死 量 ノ抗 原 ヲ再 注 入

スル過 敏 症 ニ及 ボスPepton(Witte Pepton)

ノ影 響 ヲ檢 シタ ル ニ次 述 ノ諸 實 驗 ノ如 シ.

174

抗原 ノ腹腔 内再 注入 ニヨル過敏症ニ就テ(第2報) 3103

實 驗 第1

被働感作海〓 ニ26時 間 ノ潜 伏期後64倍 結合帶

相當量 ノ抗原 ニWitte Pepton 0.03gヲ 加 ヘ生理

的 食鹽水 ニテ稀釋 シ全量2.0ccト 少 シテ腹腔 内ニ

再注入 セル過敏症實驗 成績ハ第14表 ノ如 シ.

第14表

所 見

1)最 少確實致死量 ノ抗原 ヲ再注入 スルニ常ニ

對照實驗 ニ於 ケル場合 ト同樣 ニ過敏症死 ヲ起 シ,

Witte Peptonハ 之 ヲ抗原 ト同時 ニ注入スル時ハ

過敏症阻 止作用 ヲ起 サズ.

2)沈 降素ハ過 敏症 死直前 ニ於テ常 ニ證明 シ得

ズ.

3)抗 原ハ死直 前ニ於 テ常 ニ著明 ニ證明 セル.

實 驗 第2

被 働 感 作 海 〓 ニ25時 間 ノ潜伏 期 後Witte

Pepton 0.03gニ 生理的食鹽水 ヲ加へ全量2.0cc

トナ シテ腹腔 内ニ注入 シ, 1時 間 ヲ經 テ64倍 結

合帶相當量 ノ抗原(生 理的食鹽 溶液,全 量1.0cc)

ヲ腹腔 内ニ 再注入 セル過 敏症實驗 成績ハ第15表

ノ如 シ.

第15表

所 見

1)實 驗第1ニ 比 シテ過敏症 ハ稍 々阻止 セラレ

ルガ如 ク現 レ, 2例 ハ過 敏症死 ヲ起 シ, 1例 ハ死

ヲ免 シタ リ.

2)沈 降素ハ採血時常 ニ證明 シ得 ズ.

3)抗 原 モ採血時著 明ニ證明サ ル.

175

3104 桑 原 一 郎

實 驗 第3

被 働 感 作 海 〓 ニ22時 間 ノ 潜 伏 期 後Witte

Pepton 0.03gニ 生 理 的 食 鹽 水 ヲ加 へ 全 量2.0cc

トナ シ テ腹腔 内 ニ注 入 シ, 4時 間 ヲ經 テ64倍 結 合

帶 相當量 ノ抗原(生 理的食鹽水 溶液,全 量1.0cc)

ヲ腹腔 内 ニ再注入 セル 過敏症 實驗成績 ハ 第16表

ノ如 シ.

第16表

所 見

1)實 驗第1,第2ノ 場合 ニ比 シテ過敏症ハ漸

ク著明ニ阻止セラ レ, 2例 ニ於テハ體温降下2.0℃

或 ハ ソレ以下ニ シテ症状 モ著明 ナヲズ, 1例 ハ60

分 ニシテ斃死セルモ腹腔 内再注入 ノ際 ノ過 敏症 ニ

於 テ見 テルルガ如 キ定型的痙攣死 ヲ呈 セズ.

2)沈 降素ハ採血時常 ニ證明 シ得ズ.

3)抗 原ハ採血時常 ニ著 明ニ證 明セ ラルルモ,

前實驗中 ニ於 ケル略ボ同 時刻 ノ採 血時檢査 ノ場合

ニ比 シテ血清 ノ反 應度減弱 シ,血 清中 ノ抗原含 有

度 ノ減少 シヲル ヲ推定 シ得.

4)表 中記載 ヲ略々ルモWitte Pepton 0.03g

注入後3時 間或ハ4時 間 ニシテ體温ハ常 ニ1.5℃

内外 ノ上昇 ヲ認 メタ リ.

第4項　 正常海〓ニ於ケル抗原 ノ腹

腔内吸收 ニ對 スル高張性食

鹽水及 ビPeptonノ 影響

上記實驗成績 ニ於ケル高張性食鹽水 及 ビ

Peptonノ 影響 ニ ヨル過 敏 症 阻 止現 象 ノ本 態

ヲ 究 ム ル 目的 ノタ メニ正 常 海 〓 ニ ツ キ テ 牛

血 清 ノ腹 腔 内吸 收 ニ及 ボ ス高 張 性 食 鹽 水 及 ビ

Peptonノ 影響 ヲ檢 セ ン トシ次 ノ諸 實 驗 ヲ施

行 セ リ.

實 驗 第1

正常 海〓 ニ前實驗 ニ於 ケル64倍 結合帶相當量

ニ相當 スベ キ量即 チ 推定 血量/5000×64ccノ 牛血

清 ヲ全量5%食 鹽溶液2.0ccト ナシテ腹腔 内 ニ注

入 シ,各 時間 ニ於 ケル血中 ノ牛血清含有度 ヲ檢 シ

タルニ,第17表 ニ示 シタル ガ如 ク注入後1時 間乃

至2時 間或ハ數時間 ニ至 リテ初 メテ之 ヲ證明 シ得

ベ ク,血 清反應度1:10以 上即チ血中濃度1:5000

以上 ヲ證 明 シ得 ルニハ2時 間乃至 數時 間 ヲ要 スル

ヲ認 ムベ シ.即 チ牛血清 ヲ高張 性食鹽 溶液 トナス

時ハ其 ノ腹腔 内吸收 ハ極端 ニ遲延 サ レ來 ル ヲ認 ム

ルナ リ.

176

抗原 ノ腹腔 内再注入 ニヨル過敏症 ニ就 テ(第2報) 3105

第17表　 正常海〓腹腔内ニ牛血清 推定血量/5000×64ccヲ 全量5%食 鹽溶液2.0cc

トナシテ注入セル後各時間ニ於ケル血清 ノ牛血清含有度

實 驗 第2

第18表　 正常 海 〓 腹 腔 内 ニ5%食 鹽 水2.0ccヲ 注 入 シ1時 間 後 牛 血清

推 定 血量/5000×64ccヲ 全 量 加生理 的 食鹽 溶 液1.0ccト ナ シ テ

注 入 セ ル後 各 時 間 ニ於 ケ ル血 清 ノ牛 血 清 含 有 度

177

3106 桑 原 一 郎

正常 〓 ニ5%食 鹽水2.0ccヲ 腹腔 内ニ注入 シ,

1時 間 〓推定血量/5000×64ccノ 牛血清 ヲ全量

加生理 〓食鹽水溶液1.0ccト ナ シテ腹腔 内 ニ注入

シタル 後各時間ニ於 ケル血中 ノ牛血清含有度 ヲ檢

シタル ニ第18表 ニ於 テ 見 ラルルガ如 ク其 ノ血中

出現 ハ漸 ク著 シク證 明 シ得 ルモ,尚 ホ血清反應度

1:10即 チ 血中 濃 度1:5000以 上 ヲ完 全 ニ證 明 シ得

ル ニ ハ20分 或 ハ ソレ以 上 ヲ要 ス ル ヲ認 ム ベ シ.

實 驗 第3

第19表　 正常海〓腹腔内ニ5%食 鹽水2.0ccヲ 注入シ4時 間後牛血清

推定血量/5000×64ccヲ 全量加生理的食鹽溶液1.0ccト ナシ

テ注入セル後各時間ニ於ケル血清ノ牛血清含有度

正常 〓 ニ5%食 鹽 水2.0ccヲ 腹腔 内 ニ注 入 シ,

4時 間 〓 推 定 血 量/5000×64ccノ 牛 血 清 ヲ全 量加

生 理 的 食鹽 水 溶 液1.0ccト ナ シテ腹 腔 内 ニ注 入 シ

タル 後 〓時 間 ニ於 ケル 血 中 ノ牛 血 清含 有 度 ヲ檢 シ

タ ル ニ,第19表 ニ於 テ見 ラ ル ル ガ如 ク,實 驗 第2

ノ場 合 〓比 シテ 牛 血 清 ハ血 中 出 現 度 ハ益 々著 シ

ク.10〓 ニ シテ僅 ニ 血清 反 應 度1:10即 チ血 中 濃

度1:5000ヲ 示 シ, 20分 以後 ニ於 テハ完全 ニ ソレ

以上ニ達 スル ヲ證 明 シ得 ルヲ認 メタリ.即 チ5%

食鹽水注 入後時間 ノ經過 ニ從 ヒテ牛血清 ノ腹腔内

吸收 ハ著 明 トナルベシ.コ ノ際何等前處置 ヲ施サ

ザ ル正常海〓 ニ於 ケル同量 ノ牛 血清 ヲ注入 セル既

述 ノ第7表 ノ成績 ニ比 シテ尚ホ多少 成績不良 ナル

ヲ認ムベ シ.

178

抗原 ノ腹腔 内再注入ニ ヨル過敏症 ニ就 テ(第2報) 3107

實 驗 第4

第20表　 正 常 海 〓 腹 腔 内 ニ牛 血 清 推 定血 量/5000×64ccニWitte Pepton

0.03gヲ 加 へ全 量 加 生 理 的食 鹽 溶 液2.0ccト ナ シテ注 入 セル後

各 時 間 ニ於 ケ ル血 清 ノ牛 血 清含 有 度

正常 海〓 ニ 推定血量/5000×64ccノ 牛 血清 ニ

Witte Pepton 0.03gヲ 加 へ全量加生理的食鹽水

溶液2.0ccト ナ シテ腹腔 内 ニ注 入シタル後各時間

ニ於 ケル血中 ノ牛 血清含有度 ヲ檢 シタル ニ,第20

表 ニ於テ見ルガ如 ク 注入後10分 ニシテ 血清反應

度1:10或 ハ ソレ以上 ヲ示 シ,牛血清 ノ血中濃度ハ

完全ニ1:5000或 ハ ソレ以上 ニ達 スル ヲ認 ム.表

中各時間 ニ於ケル成績 ヲ既 記載 セル第7表 ノ成

績 ト比較 スル ニ殆 ド差異 ナキヲ認 ムベ シ.

179

3108 桑 原 一 郎

實 驗 第5

第21表　 正 常 海 〓 腹 腔 内 ニWitte Pepton 0.03gヲ 注 入 シ1時 間後 牛 血清

推 定 血 量/5000×64ccヲ 全 量 加 生理 的 食 鹽溶 液1.0ccト ナ シテ注

入 セル後 各 時 間 ニ於 ケ ル血 清 ノ牛 血 清 含有 度

正 常 海〓 ニWitte Pepton 0.03gヲ 全 量 生理 的

食 鹽 溶液2.0ccト シテ腹 腔 内 ニ注 入 シ, 1時 間 後

推 定 血 量/5000×64ccノ 牛 血清(全 量加 生 理 的 水 溶

液1.0cc)ヲ 腹 腔 内 ニ 注入 シ タル後,各 時 間 ニ於 ケ

ル血中 ノ牛血清含有度 ヲ 檢 シタル ニ第21表 ニ於

テ見 ルガ如 ク前實驗第4ニ 比 シテ牛血清 ノ血中出

現 ハ漸 ク緩漫 トナ リ, 20分 ニシテ血清反 應度1:10

以上即チ血串濃度1:5000以 上ニ達 スル ヲ認 ムベシ

實 驗 第6

第22表　 正 常 海 〓 腹 腔 内 ニWitte Pepton 0.03gヲ 注 入 シ4時 間後 牛 血 清

推 定血 量/5000×64ccヲ 全 量 加 生 理 的 食 鹽 溶 液1.0ccト ナ シテ注

入 セル後 各 時間 ニ於 ケ ル血 清 ノ牛 血 清 含 有 度

抗原 ノ腹腔内再 注入 ニヨル過敏症 ニ就テ(第2報) 3109

正常 海 〓 ニWitte Pepton 0.03gヲ 全 量 生 理 的

食 鹽 溶液2.0ccト シテ 腹腔 内 ニ注 入 シ, 4時 間 後

推 定 血 量/5000×64ccノ 牛 血 清(全 量加 生 理 的 食 鹽

水 溶液1.0cc)ヲ 腹腔 内 ニ注 入 シ タル後,各 時 間 ニ

於 ケル 血 中 ノ 牛 血 清 含 有度 ヲ檢 シ タル ニ 第22表

ニ於 テ見 ル ガ如 ク前 實 驗 第2ノ 場合 ニ比 シ テ更 ニ

牛 血 清 ノ血中 出 現 ハ 緩 漫 ノ状 ヲ呈 シ,完 全 ニ血 清

反 應 度1:10以 上 即 チ血 中1:5000以 上 ニ達 ス

ル ニハ20分 後 殆 ド1時 間 ヲ要 ス ル ヲ認 ムベ シ.

第5項　 實驗成績ノ考察

上記諸實驗成績ニヨリ重要ナル點ヲ要約 ス

ルニ次述 ノ如 シ.

1)高 張性食鹽水及 ビPeptonノ 被働性海

〓過敏症 ニ及 ボス影響

(イ)抗 原ヲ5%食 鹽水溶液 トシテ腹腔

内ニ再注入スル時ハ極端ニ阻止セラレ, 5%

食鹽水腹腔内注入後1時 間或ハ4時 間ヲ經

テ之ヲ再注入スル時ハ阻止現象ハ減弱 シ來

リ,且1時 間後 ヨリモ4時 間後ニ於ケル場

合ノ方阻止セラルルコト少シ.

(ロ)抗 原 ヲWitto Pepton(0.03g)ト

共 ニ腹 腔内 再 注 入 スル時 ハ過敏 症 ハ毫 モ阻

止 セ ラ ルル コ トナ ク, Pepton注 入後1時

間 或 ハ4時 間 ヲ經 テ之 ヲ再 注 人 スル時 ハ阻

止現 象 ハ漸 ク現 ハ レ,且1時 間 後 ヨ リモ4

時 間 後 ニ於 ケル場 合 ノ方更 ニ強 ク阻 止 セ ラ

ル.

2)正 常海〓ニ於ケル抗原(牛血清)ノ腹腔

内吸收 ニ對 スル高張性食鹽水及ビPeptonノ

影響

(イ)抗 原ヲ5%食 鹽水溶液 トシテ腹腔

内 ニ注 入 スル時 ハ其 ノ腹腔 内 吸收 ハ 極端 ニ

遲 種 セ ラ レ, 5%食 鹽 水 注 入後1時 間 或 ハ

4時 間 ヲ經 テ 之 ヲ注 入 スル時 ハ其 ノ腹腔 内

吸 收 ハ漸 ク著 明 トナ リ,且1時 間 後 ヨ リモ

4時 間 後 ニ於 ケル場 合 ノ方 更 ニ著 明 ナ リ.

(ロ)抗 原 ヲWitte Pegton(0.03g)ト

共 ニ腹 腔 内 ニ注 入 スル 時 ハ其 ノ腹 腔 内吸 收

ハ毫 モ遲 延 ス ル コ トナ ク, Pepton注 入後

1時 間 或 ハ4時 間 ヲ經 テ 之 ヲ注 入 スル時 バ

共 ノ腹 腔 内吸 收 ハ漸 ク遲 延 シ來 リ,且1時

間 ヨ リモ4時 間 後 ニ於 ケル 場合 ノ方 更 ニ強

ク遲 延 サ ル.

高 張 性 食 鹽 水 及 ビPeptonノ 影 響 ニ ヨ リ被

働 性 海 〓 過 敏症 ニ種 々 ノ阻 止現 象 ヲ來 スハ上

記 ノ諸 事 實 ニ依 リテ考 察 スル時 ハ之 等 ノ藥 物

ニ ヨ リ再注 入 セ ラ レタ ル 抗 原 ノ腹 腔 内 吸收 ニ

種 々ナ ル變 動 ヲ招 來 ス ル結 果 ナ リ ト容 易 ニ推

定 セ ラル.今 兩 薬 物 ノ影 響 ニ ヨル過 敏 症 阻 止

作 用 ノ本 態 ヲ精 細 ニ考 究 スル ニ.

高 張 性 食 鹽 水 ニ 過 敏 症 阻 止 作 用 アル ハ

Friedberber u. Hartochノ 報 告 以 來 相 續 キ

テ多數 ノ學 者 ニ ヨ リ追試 承 認 セ ラ レタ リ ト雖

モ,其 ノ阻 止作 用 ノ本 態 ニ關 シテ ハ論 爭 甚 ダ

シクFriedberger u. Hartoch, Ritz, Rowit,

Armand-Delille et Launay等 ハ濃 厚 食鹽 結

合 阻 止 ヲ主 張 シ, Bornsteinハ 血 量 増 加 ヲ招

致 ス ル ニ ア リ ト説 キ, Dorr u. Russハ 一部

濃 厚食 鹽 水 ノ沈 降 素結 合 阻 止 ニ,大 部 ヲ補 體

結 合 阻 止 ニ歸 シ,杉 本氏 ハ沈 降 素結 合 力 ノ減

弱 ニ歸 セ シメ,村 上 氏 ハ ニ單 ニNa「 イ オ ン」

ノ作 用 ナ リ ト論 ズ ルガ如 ク未 ダ其 ノ歸 決 スル

所 ヲ知 ラズ.

181

3110 桑 原 一 部

Peptonノ 過 敏 症 阻 止 作 用 ニ 就 キ ヲ モ,

Friedberger u. Mitaハ 夙 ニ過 敏 症 ハ過 敏 性

抗 體 ト抗 原 竝 ニ補 體 ニ ヨ リPepton樣 物 質 ヲ

産 シ,之 ニ ヨ リテ惹起 セ ラル ル症 状 ナ リ トシ,

特 ニ三 田 氏 一派 ノ學 者 ハ過 敏 症Schockハ コ

ノPeptonニ 對 スル肝 臟 ノ解 毒 作 用 ナ キ結 果

ナ リ トシ,豫 メPeptonノ 少量 ヲ注 射 シオ キ

テ,肝 臟 ニ之 ニ對 ス ル解 毒 能 力 ヲ得 セ シメ オ

ク時 ハ該 動 物 ノ過 敏 症 ハ抑 制 セ ラル ト説 キ,

爾 來Histaminト 共 ニPeptonニ 過 敏 症 阻 止

作 用 アルレハ 一般 ニ認 容 セ ラ レ,最 近 大岩 氏 モ

之 ヲ實 驗 的 ニ立 證 セ リ.而 シテPeptonノ 阻

止 作 用 ノ本態 ニ關 シテ ハ未 ダ不 明 ナ ル點 ナ キ

ニ ア ラズ.

自家 實 驗 ノ場 合 ニ就 テ之 等 兩薬 物 ノ阻 止作

用 ヲ考 察 スル ニ方 リ,阻 止 機 轉 ノ本 態 ト考 ヘ

ラル ル モ ノヲ擧 グ レバ1.沈 降 素 ノ變 動. 2.

補體 ノ變 動. 3.發 熱 等 ノ影 響 ナ リ.

高 張 性 食鹽 水 注 射 後 血 中沈 降 素 ニ變 動 ヲ來

ス ハ既 ニ杉 本 氏 ノ實 驗 ニ於 テ多 少減 少 スル ヲ

認 メタ ル モ,余 ノ實 驗 ニ於 ハ ハ高 張 性 食 鹽 水

ハ 腹 腔 ニ注 入 シ.且 其 ノ濃度 及 ビ量 ヲ異 ニ シ,

注 入 後 ニ於 ケ ル 沈降 素 ノ變 動 ハ全 ク之 ヲ見 ザ

リキ. Pepton 0.03g注 入後 ニ於 テ モ 同樣 ナ

リ率.

補 體 モ亦 余 ノ實 驗 ニ於 テ ハ兩 薬 物 注 入後 ノ

減 少 ハ甚 ダ僅 少 ニ シテ,之 ヲ以 テ阻 止 機 轉 ヲ

説 明 シ難 シ.發 熱 ハ之 等 薬 物 ノ注 入 後4時 間

ニ シテ常 ニ1.5℃ 内 外 ノ體 温 上 昇 及 ビ白血球

増 加 等 ヲ見 タ ル モ,發 熱 ノ ミヲ以 テ阻 止 機 轉

ノ本態 トナ ス ヲ得 ザ ル ハ實 驗 成 績 ノ明 カ ニ示

ス所 ナ リ.是 ニ於 テ抗 原 ノ腹 腔 内 吸 收 及 ビ ソ

レガ沈降 素 トノ關 係 ヲ考 察 スル時 ハ例之,過

敏症阻止セラレタル場合 ニ於 テハ抗原ノ血中

出現竝ニ沈降素ノ減少遲延 シ來 リ,過 敏症阻

止 ヲ呈セザル場合ニ於テハ抗原及 ビ沈降素 ノ

消長ハ常ニ之等薬物ノ處置ナキ場合 ト相變ル

コ トナク,高 張性食鹽水竝ニPeptonニ 依ル

自家實驗ニ於ケル過敏症阻止ノ本態ハ明確 ニ

抗原ノ腹腔内吸收ヲ以テ説明 シ得ルモノ ト信

ズ.

高張性食鹽水ニヨル抗原ノ腹腔内吸收遲延

ハ濃厚食鹽ニ依ル滲透作用ニ歸スルヲ最モ妥

當ナ リトス.

Peptonノ 場合ニ於テハ高張性食鹽水ノ場

合 ト異 リ,之 ヲ抗原 ト同時ニ注入スルニ何等

阻止作用ナク, 1時 間或ハ4時 間ノ如ク次第

ニ注入後 ノ時間的經過ニ依 リテ阻 止作用ノ強

マル點 ヲ三田氏ノ説ノ如ク考フル時ハ,即 チ

Pepton腹 腔内注入ニヨリ時間的經過中ニ肝

臟 ニPepton解 毒機能 ヲ生ズル結果過敏症ハ

阻止セラルベシ ト想像サル.然 ルニ之ヲ以テ

シテハ抗原ノ腹腔内吸收 ノ消 長 ヲ説 明 シ難

ク,尚 ホ進ンデ研究ヲ要 スルモノナ リ.

之ヲ要 スルニ本章ニ於ケル實驗結果ニ依 リ

察スルニ,定 型的過敏症Schockヲ 起サ シム

ルニハ常ニ感作海〓腹腔内再注入後可及的短

時間遲ク トモ5分 乃 至10分 間 ニ血中ノ抗原

含有度ガ沈降素 ノ結合帶ニ相當 スル濃度ニ達

スルヲ必要條件 トナスベク,コ ノ條件ノ滿サ

レザル場合ハ定型的過敏症 「Schack」 ヲ起サ

ズシテ動物ハ抗過敏性 トナル傾尚ヲ示スモノ

ニシテ前章ニ於ケル余ノ推測ヲ立證シ得ル 事

實 ヲ得 タ ル モ ノ ナ リ.

182

抗原 ノ腹腔内再注ス ニヨル過 敏症ニ就 テ(第2報) 3111

第4章　 結 論

上記諸實驗ニ於テ得タル主要結論 ヲ摘録 ス

レバ次 ノ如 シ.

1.海 〓血中ノ牛血清檢査ニ際 シテハ先ヅ

正常海〓血清 ヲ以テ檢査用抗牛血清家兎免疫

血清ノ緒方氏抗體稀釋沈降反應 ヲ施行 シ,以

テ該檢査用血清ノ所謂類屬反應ヲ除外 シ得ベ

キ生理的食鹽水稀釋度ヲ知ルヲ得ベク,次 デ

斯ク稀釋 セル檢査期免疫血清 ト被檢血清 トヲ

逆重層スルコトニヨリ略 ボ正確ニ海〓血中ノ

牛血清濃度ヲ檢出シ得ベシ.

2.抗 原ノ腹腔内再注入ニ際 シテ,海 〓ノ

個性,注 射部位及 ビ薬物ノ影響等 ノ如 キ種 々

ナル因子ニヨリ過敏症ニ攣動 ヲ來 シタル時,

症状,體 温降下,沈 降素,補 體及ビ解剖的變

化等ノ檢査ノ外ニ抗原ノ測定モ亦意義 アルモ

ノナ リ.

3.抗 原ノ腹腔内再注入ニ依 リ海〓ニ定型

的過敏症Schock死 ヲ起サシムルニハ腹腔 ヨ

リ吸收サ レタル抗原ガ可及的迅速ニ遲 クトモ

5分 乃 至10分 間ニ沈降素ノ結合帶ニ相當 ス

ル血中濃度ニ達スルヲ必要條件 トナス.(コ レ

腹腔ヨリ吸收セラレタル抗原ガ動物生體内ニ

於テ速ニ沈降素 ト結合 シ過敏症ヲ起サシムル

ニ適當ナル濃度ナリ)若 シ抗原ノ血中濃度 コ

レ以下ナル時或ハ遲延 シテコノ濃度ニ達スル

時 ハ海 〓 ハ抗 過敏 性 トナ ル.

4.高 張食鹽水(5%)及 ビWitte Pepton

(0.03g)ノ 腹腔内注入ニヨル過敏症阻止現象

ハ之等藥物 ノ影響ニ依 リ抗原 ノ腹腔内吸收 ニ

變動 ヲ來 スヲ以テナ リ.

5.抗 原ノ腹腔内再注入ニ依ル海〓過敏症

ノ際,定 型的過敏症Schock死 ヲ起セル場合

ハ常ニ沈降素消失竝ニ抗原ノ血中出現ヲ證明

シ, Schock死 ヲ免 レタル場合モ沈降素ノ減

少次デ消失竝ニ抗原ノ出現ヲ證明スルモ,過

敏症ノ強弱ニ從 ヒテ沈降素 ノ減少及 ビ抗原 ノ

血中出現ハ遲延 ス.

6.過 敏症 ノ本態ハ動物生體内ニ於ケル沈

降素 ト抗原ノ結合 ニ由來スルモノニシテ,兩

者ノ適當ナル濃度 ニ於テ迅速 ニ結合スル時ハ

Schock死 ヲ來 シ,其 ノ結合不充分ナルカ或

ハ結合遲延スル時ハ過敏症ハ減弱セラレ,阻

止現象ヲ招致ス ト推セラル.

終 ニ臨 ミ恩師緒方教授 ノ御懇篤ナル御指導

ト御校閲 ニ對 シ深甚 ノ謝意 ヲ表 ス.

木論文 ノ要 旨ハ昭和9年2月 岡山醫學會第

45囘 總 會ニ於 テ發表 セ リ.

主 要 文 獻

1) 大 城,岡 醫 雜,第44年,第1號, 88頁,昭 和

7年. 2) 佐 藤,社 會醫 學 雜 誌,第515號, 11頁,

昭 和4年;第539號, 831頁,昭 和6年. 3) Kuwana,

Arbeiten aus der Med. Un. zu Okayama, Bd.

2, H. 3, S. 436, 1931. 4) 杉 本,岡 醫 雜,

第42年,第9號, 2241頁,昭 和5年;第42年,第10號,

2329頁,昭 和5年. 5) 佐 藤,社 會 醫 學 雜 誌,

第785號, 785頁,昭 和6年. 6) 田 中,細 菌 學

雜 誌,第434號, 291頁,昭 和7年. 7) Friedberger

u.Hartoch, Zeitschr. f. Immunitatsf, Bd. 3,

S. 981, 1909. 8) Lowit, Arch. f. exp. Pathol.,

Bd. 65, S. 337, 1911. 9) Ritz, Zeitschr. f.

Immunitatsf., Bd. 12, 1912. 10) Armand-

Delille et Launay, Comp. rend. Soc. Biol., T.

72, P. 61, 1912. 11) Bornstein, Zeitschr. f.

Immunitatsf., Bd. 14, S. 605, 1912. 12) Dorr

u. Russ, Ebenda, Bd, 3, S. 706, 1909. 13) 村 上,

十 全 會 雜 誌.第32卷,第10號,昭 和2年. 14) Fried

herger u. Mita, Zeitschr. f. Immunitatsf., Bd.

10, 1911; Berlin, Woch,, Nr. 42, 1910. 15)

大 岩,岡 醫 雜,第46年,第10號,昭 和9年.

183