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中国における早成広葉樹植林賦存状況調査 急成長する中国製紙産業とパルプ材需給の見通しについて 平成 21 年 3 月 委託先 社団法人海外産業植林センター

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中国における早成広葉樹植林賦存状況調査

急成長する中国製紙産業とパルプ材需給の見通しについて

平成 21 年 3 月

日 本 製 紙 連 合 会

委託先 社団法人海外産業植林センター

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1

はじめに

1978 年の改革開放、とくに 1992 年の社会主義市場経済の導入以後、中国経済は持続的

に急成長を遂げてきた。一般にその国の国内総生産と紙・板紙需要とは相関が高いことから

中国の急速な経済の伸長とともに紙・板紙の需要、生産も急激に増進し、長らく世界2位に

あったわが国の紙・板紙の消費量を 1997 年に、生産量は 2001 年に上回るに至った。そして

2008 年には世界の首位にあった米国の紙・板紙生産量と同等、あるいは上回ったのではない

かと推定されている。

紙の発祥地である中国にはかつては非木材繊維を利用する零細な製紙業が無数にあった。

そのため 1990 年代に入って中国の製紙産業の難点として三小一大、すなわち木材パルプの

利用が少ない(低品質)、生産設備が小さい、製紙企業の規模が小さいことに加え、環境対策

が大きな問題であることが指摘されていた。需要の拡大による生産増によって環境汚染が

深刻化し、非木材繊維を原料とする多数の小規模工場の閉鎖が行われた。一方、外資を含

む大型資本による近代的大型工場の新設が相次いだ。これらは木材パルプ繊維(古紙も含め

る)を主原料とするものである。そこで木材繊維の供給を促進するために林紙一体化政策が

講じられることになった。そして木材パルプの利用を促進するため重要施策の 1 つが早成

広葉樹の植林である。

このような背景下で日本製紙連合会は、社団法人海外産業植林センターに委託し、中国

における早成広葉樹植林賦存状況の調査を行ってきた。平成 16 年度「中国東南沿海地区に

おける早成広葉樹植林賦存状況調査」、平成 17 年度「広東省・海南省の紙パルプ産業と林

業政策」、平成 18 年度「湖南省における早成広葉樹植林賦存状況調査」、平成 19 年度「山

東省における早成広葉樹植林賦存状況調査」が実施された。平成 20 年度はこれまでの中国

各地の調査に引き続き、急成長する中国製紙産業とパルプ材需給の見通しについて、中国

全般の製紙原料事情に関する調査を行うことになった。

現在、将来を予測することは平成 20 年後半に米国の金融問題に端を発した未曾有の経済

変動によって産業の動向を見通すことは極めて困難な局面となっているが、いずれ事態は

回復されるであろうし大局的には未来は過去からの連続上にある。その際、いわゆる BRICS

と呼ばれる新興国、中でも中国の存在は大きく、経済活動と関連の深い製紙産業もさらに

成長することであろう。世界最大の紙・板紙消費国である中国において木材資源に立脚する

製紙原料の問題は重大、かつ深刻であり、わが国の製紙産業への影響は大きい。今回はこ

れまでの調査結果を踏まえ、中国製紙産業の原料問題と関係する中心的な諸機関、団体に

聴き取りを行うこととし、また中国側専門家の協力を得て中国製紙産業の現状と将来予測、

原料事情の動向について調査を行った。

本調査に当たっては中国林業科学研究院研究員易浩若氏、同 李剣泉氏をはじめ各位の

御協力があった。ここに深く感謝の意を表するものである。

平成 21 年 3 月

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1.調査の概要

1-1 調査の目的と方法

中国の紙・板紙消費量は 1997 年から 2007 年までの 10 年間に 2.2 倍に増加した。これは

平均年増加率として 8.3%であるが、紙・板紙生産量はこの間に平均年増加率 10.3%、また

パルプ生産量は 13.1%と消費量より高目に推移してきている。これは紙・板紙の輸入が相対

的に減少し、自給率が高まったことである。しかし、製紙用繊維原料中の非木材繊維の含

有率は 2000 年に 40%であったものが 2007 年には 19%に著減している。かつて中国の製

紙産業の問題として挙げられていた三小一大の大である環境問題、すなわち廃液処理の困

難な非木材パルプの製造で水質汚濁を起こすために多数の小規模非木材パルプ工場が閉鎖

されることがあった。しかし、この間、木材パルプの比率は 19%から 22%とさほど増加し

てない。これは古紙利用率が 41%から 59%に高まったことで補われた。古紙、とくに輸入

古紙は木材パルプ製品である。しかし、一般に所得水準が高まると文化用紙など高品質の

紙・板紙の需要が増えるから木材パルプに対する要求が高まることは疑いのないことで、現

在、中国の紙・板紙の生産量は世界で首位にある米国と比肩する水準にあり、さらに大型パ

ルプ製造設備の建設が予定されており、中国国内産材および輸入木材チップなどパルプ材

需要が高まることは必至の状況にある。わが国の製紙産業への影響は免れられないところ

である。

2004 年1月に「林紙一体化政策」が発布され増大するパルプ材需要に対応するため国内

各地で植林基地の造成が計画、推進されることが予想された。そこで林紙一体化政策の中

でも最重要地区とされている東南沿海地区のうち広西壮族自治区の調査のため平成 16年度

(2004 年)に日本製紙連合会の委嘱で海外産業植林センターから調査団が派遣された。その

後、平成 17 年度は広東省、海南省、平成 18 年度は湖南省、平成 19 年度は山東省における

森林資源、林業政策、とくに早成広葉樹植林について調査が行われてきた。5 年目を迎え

る 2008 年度は、これまで行ってきた調査の集大成として、中国全土を対象とした紙パ

ルプ産業の動向並びに現状から、将来像と、早成樹種植林等森林・林業政策に古紙の集

荷など原料問題を併せて調査することにした。本調査を行うために中国委員会を設置し

た。

中国委員会メンバー

東京農工大学名誉教授 大江 礼三郎

(財)緑の地球防衛基金 監事 宇津木 嘉夫

(財)日本木材総合情報センター 海外調査部調査課長 趙 川

三菱製紙(株) 執行役員 林材部長 前田 清

日本製紙連合会 常務理事 上河 潔

(社)海外産業植林センター 専務理事 田辺 芳克

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(オブザーバー)

日本製紙連合会 林材部長 渡辺 光一

日本製紙連合会 林材部 前田 直史

本調査を行うに当り、広大な中国の全体的状況については中央官庁、関係機関から資料を

得ることが重要であるとされ、2008 年 9 月に北京での調査が実施された。

調査の対象は、(1)中国林業科学研究院、(2)中国造紙協会、(3)中国造紙学会、(4)

日本国大使館、(5)中国林業産業協会、(6)国家林業局経済発展研究中心、(7)国家林業

局科技発展中心、(8)北京造紙七廠であった。

1-2 調査団員と現地調査日程

調査団員は以下の通り。

東京農工大学名誉教授 大江礼三郎

日本木材情報センター 趙 川

日本製紙連合会 上河 潔

海外産業植林センター 田辺 芳克

現地調査日程は以下のとおり(表1-1)

表1-1

月 日 曜日 活 動 内 容

8 31 日 成田 → 北京 (出国)

9

1 月 中国林業科学研究院訪問

2 火 中国造紙協会、中国造紙学会訪問

3 水 日本国大使館訪問

4 木 中国林業産業協会、国家林業局経済発展研究中心、国家林業局

科技発展中心森林認証処訪問

5 金 北京通開集団北京造紙七廠訪問

6 土 北京 → 成田 (帰国)

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1-3 面談者リスト

現地調査の主要面談者は以下のとおり(表1-2)

表1-2

No. 氏名 所属先 職名 備考

易 浩若

中国林業科学院 資源

信息研究所

研究教授

調査・研

究機関・

団体

李 剣泉 中国林業科学院 資源

信息研究所

副教授、

黄 斌 中国造紙学会 常務理事

顧 民達 中国造紙学会協会 顧問

陳 勇 中国林業科学研究院林

業科技信息研究所

博士

2 趙 偉 中国造紙協会 副理事長・秘書長 団体

? 仕均 中国造紙学会 副理事長

団体 馬 石輝 中国造紙学会 国際学術交流委員会副主

4 空 周一 日本國駐中華人民共和

國大使館

二等書記官

徐 衛東 中国林業産業協会林紙

分会

秘書長 団体

鞠 洪波 国家林業局経済発展研

究中心

国際合作部主任

行政

戴 広翠 国家林業局経済発展研

究中心

副主任

李 青 国家林業局科技発展中

心 森林認証処

処長

? 玲 国家林業局科技発展中

心 森林認証処

副所長

6 許 震 北京造紙七廠 副総経理 企業

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1-4 報告書要旨

1.林業・製紙産業の情報に関しては中国において関連機関、団体においてデータベース

が構築されており、造林、製紙原料、紙・板紙需要について将来計画、予測がなされて

いる。今回は当該機関のスタッフの協力よって資料および調査・分析をこの委託調査の

ために行って頂いた。付属資料「高度成長中の中国製紙産業およびパルプ用材供給の予

測」および「集団林権制度改革の全面的推進に関する意見」がそれである。

2.2006 年まで紙・板紙の需要は生産を上回っていたが、1997 年からの 10 年間、消費量

の年平均伸び率は 8.3%、生産量の伸び率は 10.8%で推移し 2007 年に消費量は 7,290

万t、生産量は7,350万tとなった。紙・板紙の生産高は推定5,706億元でGDPの2.3%、

全製造業生産高の 4.5%、従業員数は推定 106 万人である。同期間の中国の GDP の成

長率は平均 9.2%であるから紙・板紙消費量の伸び率はこれより 1%程度低い。

紙:板紙の生産量の比率はほぼ一定で推移してきていて 2007 年は 46:54 である。

3.2007 年の原料は木材パルプが 22%、非木材繊維が 19%、古紙が 59%である。2000

年には木材パルプが 19%、非木材繊維 40%、古紙 41%であったから、非木材繊維の

使用比率は古紙によって代替された。中国では伝統的に稲わらなどの非木材原料が

使用されてきた。消費原料構成比率面では減少しているが、使用量は 1,100 万トン

から 1,300 万トンへと増加している。消費木材パルプに占める輸入パルプの比率は

58%、消費古紙の輸入比率は 45%であるから、木材繊維原料の輸入依存度は高い。か

つて中国は 200 万 BDT 近く(1997 年)木材チップを輸出していたが、2006 年から輸

入超過となり 2007 年には 114 万 BDT を輸入している。

4.中国内陸は針葉樹、針広混交、落葉広葉樹、常緑広葉樹、モンスーン雨林、多雨林と

多彩な林相があり、2003 年の資料では香港、澳門、台湾を除く天然林面積は 1 億 1,576

万 ha、蓄積は 106 億? 、人工林は 5,326 万 ha、15 億? で、人工林面積は世界一位と

なった。製紙原料には松、ポプラ、ユーカリが使われている。用材林資源の人工林面

積は 4,670 万 ha で毎年 400 万 ha 増加しているが、製紙原料用人工林は 2,420 万 ha、

蓄積量は 8 億 3,440 万? であって、中・幼令樹林が面積で 86%、蓄積量で 72%を占め

ている。

5.製紙産業は北から南に移行する傾向にあり、東南沿海地域が林紙一体化の重点地域と

されている。西南地区では木材と竹がパルプ化の対象になり、長江および珠江デルタ

地帯は国産・輸入パルプと古紙の利用、華北の黄淮海地域は非木材パルプから市販パル

プと古紙の利用へ移行、東北地域は製紙用林の造成はするものの新規工場は見送り、

西北地域は工場の統合を進めるとの方針が出されている。なお 2001-05 年にユーカリ

などの早成多収穫樹種の造林が 36 万 ha 行われたが、人工林は面積順では馬尾松、杉、

ポプラ、ユーカリで合計 2,900 万 ha、蓄積 14 億? である。なおインドネシアの金光

集団(APP)をはじめ外資系製紙会社も造林を進めている。

6.林業と製紙産業を結びつける政策としては、関係諸官庁による「製紙産業原料林造成

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推進案」、国家林業局の「早成多収穫用材林地造成計画」、2003 年末の国家発展改革委

員会による「全国林紙一体化プロジェクト計画」などがあって、2010 年までに 500 万

ha の製紙用林と木材パルプ 645 万t増産が目標とされた。また 2008 年 6 月には「集

団林権制度改革推進」について中央国務院から意見が出され、林業の生産性向上が図

られた。それに先立って 2007 年 10 月には「製紙産業発展政策」が国家発展改革委員

会によって制定されるなど、木材パルプ増産のための林業政策が進められて来ている。

林紙一体化政策の要点

① 中国の製紙産業は良質な原料に恵まれず対外依存度が高い。

② 林紙結合を促進し、製紙産業の原料構成の調整を推進するため、2001 年、国家計

画委員会、財政部、国家林業局は『製紙産業原料林基地建設推進に関する若干の

意見』を公表した。

③ 2002 年、林業六大重点プロジェクト中、『重点地区における早成多収穫材林基地建

設プロジェクト』が正式に発足した。

④ 2003 年、12 月に国家発展改革委員会は『全国における林紙一体化プロジェクトの

「十五」及び 2010 年特別計画』を出版、配布した。

⑤ 2010 年迄に製紙用林基地建設は 500 万 ha、木材パルプ増産は 645 万tの目標に達

する見込みである。

⑥ 実行能力を有する国内企業による海外における製紙用林基地とパルプ製紙の建設

も支持している。

⑦ 木材チップ、木材パルプ、非木材パルプの輸出を規制し、輸出後の税還付を廃止

し輸出税を課することとする。

⑧ 国内の古紙回収を強化し、古紙の回収率と利用率を高める。

7.かつて中国製紙産業は生産規模、企業規模が小さく、非木材繊維を原料とすることで

パルプ製紙の生産性、品質において国際的水準からみて遜色が著しかった。増大する

需要を国産製品よって賄うためには、国際競争力を高める必要がある。そのためには

経済的な林地の造成による木材パルプの増産、生産設備の改善、エネルギー・用水の節

減、労働生産性の向上が必要であるが、現在、すでに国際的に最新鋭の装置、製造プ

ロセスの導入がなされつつある。問題点として上記以外に環境汚染の抑制があり、ま

た 2020 年に年間需要が 2 億tになるとすると、その場合には莫大な資本投下(試算で

は 2 兆元)が必要となる。

8.現在、年産 40 万t以上の製紙企業は 21 社ある。上位 5 社は玖龍紙業 382 万t、山東

晨鳴紙業 287 万t、理文造紙 237 万t、金東紙業 220 万t、華泰集団 150 万tである。

また 2007 年から 2011 年に建設中、操業開始の大型パルプ製紙プロジェクトは年産 15

万t以上の工場は 22 件あって、能力の総計は 1,280 万tで、最大はAPP金桂(広西

省)である。

9.過去における中国の製紙工業の最大の問題点は環境汚染であって、2001~05 年に非効

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率で汚染が著しいパルプ製紙企業 1,500 社が閉鎖され、2007 年 6 月の国務院の資料に

よると 2006~10 年の間に、年産 3.4 万t以下の非木材パルプ設備、年産 1.7 万t以下

の化学パルプ設備、年産 1 万t以下の不適格古紙再生工場など総計 650 万tの設備が

淘汰されるとされている。またパルプ、紙t当りエネルギー消費は石炭換算で国際水

準が 0.9~1.2tであるのに対して中国は 1.38t、用水消費は国際水準の 35~50 ? に対

して 103 ? である。またソーダ回収設備を持つ非木材パルプ工場は 30%に過ぎず、ま

た非木材パルプは製紙原料の 19%であるが COD 排出量は製紙産業全体の 60%を占め

ている。なお非木材パルプ工場は次亜塩素酸塩漂白であるので AOX の排出は小さい。

なお水質汚濁防止、環境影響評価、クリーン生産促進について今後規制が厳しくなり、

「新を以って旧に代える」「大を挙げ、小を閉じる」政策が採られるとされている。

10.元々森林資源が不足している中国は、木材資源危機に直面している。木材消費の面で

建材、合板、繊維板などが製紙と競合する。これらの用途にはロシア、マレーシア、

パプアニューギニアなどからの輸入材が多く使われており、しかも木材製品の輸出量

は世界 1 位であり、製紙と同様に原料問題を抱えている。

11.21 世紀に入って中国の経済成長は目覚しく GDP 成長率は 8~11%で推移し、紙・板紙

消費量もこれに近い成長率を示している。今後、世界の首位に立つ中国の紙・板紙需要

が国際的な木材需給に大きく影響することは明らかである。これまで多数の予測結果

が発表されているが、紙・板紙消費量の予測は 2015 年 0.8~14.8 億t、2020 年 1.0~2.3

億tとなっている。特に 2003 年以降、GDP の成長率は 10%を越えていたのでその後

の成長率予測値は高い傾向がある。

12.国内生産の製紙原料についても予測が行われているが、その1例を示すと、2005 年の

消費パルプ実績 5,200 万tに対して、2010 年 8,370 万t、2015 年 1 億 230 万t、2020

年 1 億 3,020 万tと予測され、木材パルプは 2010 年 2,009 万t、2015 年 2,660 万t、

2020 年 3,515 万t、古紙は 2010 年 4,968 万t、2015 年 6,342 万t、2020 年 8,203

万t、非木材は 2010 年 1,325 万t、2010 年 1,228 万t、2020 年 1,302 万tとなって

いる。すなわち 2005 年の実績として総原料中、木材パルプが 21.7%。古紙が 54.1%、

非木材が 24.2%であったが、2020 年にはその比率が 27%、63%、10%となると予測

されている。また木材パルプ中の輸入パルプの比率は 2005 年 67%であったが、2020

年には 40%に下がり、輸入古紙比率も現在の 48%から 31%に下がると予想されてい

る。

13.パルプの原料についての予測であるが、2007 年の原料木材は 6,525 万? 、非木材 3,256

万t、古紙 5,021 万tであるが、2020 年には木材 2 億 1,280 万t、非木材 8,185 万t、

古紙 1 億 2,730 万tと予測されている。この場合は木材の輸入比率は 65%、古紙の輸

入比率は 40%である。前述の予測と整合しないが、木材パルプの使用比率が高まるこ

とは確かであり、国産パルプの比率は高まるものの、原料チップの輸入材比率は現在

の 58%よりも高まり、輸入古紙比率も現在の 45%に比べそれ程低くはならない。

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14.現在の未曾有の世界的経済不況下でも中国の経済はプラス成長といわれているが、未

来予測の困難な時期にある。2007 年以前の資料に基づいた予測によれば 2020 年には

中国の紙・板紙消費は 2 億tを超えるとされている。林紙一体化政策など製紙用林の発

展が期待されるが、製紙原料の輸入依存度は必ずしもそれ程低くはならず、木材およ

びパルプ、古紙の海外からの調達量は大きく増加すると予測される。

2.中国製紙産業の原料需給見通し調査

2-1 調査経過

2008 年 9 月 1 日、中国林業科学研究院において同院資源信息研究所、同院林業科技信息

研究所、中国造紙協会、中国造紙学会所属の専門家と中国の製紙産業の原料である森林事

情について終日、聴き取りをおこなった。補足すれば林業科学研究院は機能的にはわが国

の森林総合研究所に対応し、資源信息研究所は資源情報研究所である。また中国造紙協会

は日本製紙連合会に近いが国務院の指導下にある。中国造紙学会は紙パルプ技術協会に相

当し、民間の技術者集団から出発し、造紙協会よりも歴史が古く、毎年、製紙業界関連情

報を網羅した中国造紙年鑑を刊行している。

9 月2日は造紙協会、造紙学会において中国の製紙産業の動向について聴き取りを行った。

協会では製紙産業全般の動向について知見を得、学会では製紙産業の予測について論議し

た。

9 月 3 日は日本大使館で経済部担当書記官より中国林業の動向の全般、とくに集団林権制

度の改革について説明を受けた。詳細は資料を添付した。

9月4日はわが国の林野庁に相当する国家林業局において中国林業産業協会林紙分会幹部

とわが国の製紙業界と中国製紙業界の交流など情報交換をし、さらに国家林業局経済発展

研究中心、同科技発展中心森林認証処を訪問した。

以上の調査先機関は中国の林業、製紙産業の中核的機関・団体であり、多くの場合、林業

科技信息研究所の易教授、李副教授が同行、論議に参加した。そのような経緯を踏まえて

製紙産業の原料問題としての視点から中国の林業、製紙産業について、改めて資料の収集

および調査・分析を行って頂いた。その結果が付属資料「高度成長の中国製紙産業および

パルプ用材供給の予想」である。

2-2 資料の説明

付属資料1.「集団林権制度改革の全面的推進に関する意見」(関於前面推進集体林権制度

改革的意見)(中共中央、国務院 2008 年 6 月 8 日発布)

本資料は資料2の6章にも引用されている。

付属資料2.「高度成長の中国製紙産業およびパルプ用材供給の予想」(仮訳)

本資料は 11 章からなっている。すなわち(1)製造業における中国製紙産業の地位、(2)中

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国経済と紙・板紙の需要量、(3)原料供給状況とその動向、(4)用材林資源事情、(5)中国にお

ける植林の現状およびその動向、(6)中国林業およびパルプ製紙産業に関する政策、(7)製紙

産業の競争力評価と問題点、(8)中国紙パルプ産業の主要企業、(9)製紙産業に関連する環境

問題と対策、(10)紙パルプ産業との競合産業の現状、(11)2015 年と 2020 年の紙・パルプ市

場の発展予測 である。

補足:

資料2に記載された樹木、草本の学名、和名は以下のようである。

中国名 和名 学名

馬尾松 台湾アカマツ Pinus massoniana

湿地松 スラッシュパイン Pinus elliottii

思茅松 カシアマツ Pinus kesya

加勒比松 カリビアマツ Pinus caribae

雲南松 雲南マツ Pinus yunnanensis

火炬松 テーダマツ Pinus taeda

障子松 モンゴルアカマツ Pinus sylvestris var. mongolia

落? 松 カラマツ Larix leptopsisi

池杉 ポンドサイプレス Taxiodium ascendens

冷杉 モミ Abies fabri

? 杉 トウヒ Picea

尾? ? ウロフィラユーカリ Eucalyptus urophylla

相思樹 台湾アカシア Acacia confusa

馬占相思樹 アカシア マンギウム Acacia mangium

意楊 (改良ポプラ) Populus euramevicana cv.'I-214'

黒楊 クロポプラ Populus xiaohai or deltoides

沙蘭楊 改良ポプラ Populus euramericana

大青楊 ウスリーポプラ Populus ussuriensis

甜楊 コヨウ(コトカケヤナギ) Populus euphratica

山楊 朝鮮ヤマナラシ Populus davidiana

毛白楊 オニドロノキ Populus tomentosa

楠竹、毛竹 モウソウチク Phyllostachys pubescens

南荻 南荻(イネ科) Triarrhena lutarioripara

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1

付属資料1

集団林権制度改革の全面的推進に関する意見

(2008 年 6月 8日)

我が国の集団林業建設は新中国成立後、特に改革開放以来大いなる成功を収め、経済社

会の発展と生態建設に重要な役割を果たした。集団林業制度は何度の変革も行われたもの

の、不明晰な財産権、模糊たる経営主体、硬直した経営制度、不合理的な所得配当などの

問題があまねく存在し、林業の発展に著しく阻んでいる。林業生産力をさらに開放し促し、

現代的林業を発展させ、農民の収入を上げ生態文明を建設するため集団林業制度の改革を

めぐって以下の意見を提出した。

一、集団林権制度改革の意味の重大さを全面的に理解すること。

1、 集団林権制度改革は農村基本経営制度を改善し安定させるための必然の要求で

ある。集団林地は国家の土地資源としても、林業の生産要素としても、農民の生活

保障としてもその重大さが知られている。集団林権制度改革施したのは集団森林地

所有権と森林所有権を確実に農民たちに渡すためである。農民たちを経営主体に位

置づけるのは農村請負制度の畑から森林地までの拡大でありながらも、農村土地経

営制度の補完と改善でもある。これらの措置は農村生産力を更に開放し、発展でき

るだろう。

2、 集団林権制度改革は農民たちの就職増産問題の解決の戦略的措置である。林業産

業チェーンの形成は市場需要の増大や就職難の解決に繋がる。集団林権制度改革を

行うことによって農民たちが生産資料を手に入れる。したがって、農民たちは林業

生産経営に対する意欲も向上できるし、特に僻地にいる農民たちの生活の改善や

「三農」問題の解決1、社会主義新農村の樹立も推し進めるだろう。

3、 集団林権制度の改革は生態文明建設の重要な内容である。林業発展において最も

重大な任務は生態文明の建設と生態安全の維持である。集団林権制度改革を行い、

責務のはっきりとした経営制度を設けることによって、農民たちの林業経営に対す

る意欲や森林生態維持に対する自覚を引き出し、森林の被覆率を増やし、その質を

向上させることができるだろう。引いては、森林の生態的効果や気候変化に対する

適応能力の増強、生態文明の繁栄、人類と自然との共存、経済社会の持続発展にも

繋がるだろう。

4、 集団森林制度の改革は現代的林業発展を促すためには、欠くことのできない動力

である。林業は国民経済と社会発展の重要な公益事業と基礎産業とされている。集

1三農問題とは農村、農民と農業の問題

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団林権制度改革を行い、市場の林業生産要素の分配においての基本的働きを発揮さ

せることで、林業の生態的、経済的、社会的かつ文化的功能の発揮を促し、社会は

林業に対する多種多様な需要を満たし、現代的林業発展を促せるだろう。

二、集団林権制度改革の指導思想、基本原則と全体的目標。

5、 指導思想に関して:我が党の十七大精神を一貫し、中国特色の社会主義を高く掲

げ、鄧小平理論と「三つの代表」のもとに科学的発展観をより深く貫き、生態建設

を中心とする林業発展戦略を実施する。集団林業経営体制の改善、法律に基づいて

生産権力の明確化、経営の活性化、流通の規範化、税金の軽減を図ることで林業生

産力の更なる増強、伝統林業から現代的林業への転換、社会主義新農村の建設や和

階社会の構築を実現できるだろう。

6、 基本原則に関して:農村基本経営制度を一貫することで、農民たちの集団林地に

関する平等なる請負経営権を保障する。各方面を重んずることで、農民たちの利益

を保証し、森林地の生態を維持する。農民たちの意見を尊重し、その情報獲得権、

参与権、決定権などの権利を確保する。法律に即した行動をとり、順調な改革を確

保する。分類指導を行い、実際に即した改革を進める。

7、 全体的目標に関して:五年くらいの時間で生産権力の明晰化と世帯請負制度の改

革を初歩的に成し遂げる。それに踏まえて、改革を深め、政策とサービスの改善、

管理の規範化を通じて集団林業の良き発展体制を打ち立て、資源量の増加、農民収

入レベルの向上、林地およびその生態の穏やかな発展を実現する。

三、集団林権制度改革の主な任務を明確にすること。

8、 生産権の明晰化。集団林地所有権を変わらない限り、法律に基づいて森林地の請

負経営権および林木所有権を世帯請負で各農家に配り、農民を森林地請負人として

の主体性を確立する。世帯請負制度の不適用な林地の場合、本集団経済組織メンバ

ーの合意の上、株平均化2や所得平均化などの方法を通じて、生産権を確定する。村

集団経済組織の場合は、一定的集団森林地を保有することができる。そして本集団

経済組織によって民主管理を行う。

林地の請負期限は70年である。期限が来ても、相応の規定によって続けて請け

負うことができる。すでに請け負われたあるいは譲与された集団森林地は、相応の

規定、請負契約、譲与契約に違反しない限り、法によって保護される。請負契約や

譲与契約に不足があれば、法によって改善する。規則違反となるものは、法によっ

て正す。林地や林木の所有権をめぐる問題は、法律に基づいて解決を図り、その後

2植林木の所有権をメンバーで平均すること

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経営主体と確定する。農家所有のやまとあれば、長期にわたっての無償使用が可能

とする。強制回収、調整などを一切禁止する。請負方案の実施は本集団経済組織各

メンバーの認可が必要とする。

自然保護地、森林公園、名所旧跡、河川などの管理機構や国有農場、森林地、開

墾地などの経営機構が管理している集団林地、林木となれば、所属関係を明白にし、

法律に基づいて経営管理地区の安定を図り、森林所有権保有者の政党利益を確保す

る。

9、 境界を定め、証明書を配布する。請負関係の確立後、法律に基づいた実地調査、

登録を行い、全国統一的森林所有権証明書を配る。完全な登録情報、ミスのないデ

ータ、一致した図表冊と画一的な人地証が目標である。各林業管理部門は森林所有

権管理機構を設け、同級政府の依頼した森林所有権の登録、証明書の配布、データ

や譲与の管理、森林地請け負い紛争の仲裁、森林所有権問題の解決に携わるべきで

ある。

10、 経営権力の活性化。商業用森林、公益森林の分類管理を実施する。地理的条

件のいい、伐採や経済的利用を行っても生態バランスや生物の多様性にマイナス影響

を及ぼさない森林や林木を商業用森林として認める。重要な生態的区域あるいは生態

システムの脆弱な地域に位置する森林や林木を公益林として認める。商業用森林の場

合、農民たちは法律に違反しない限り、経営パターンや経営方式、木材の販売を自由

に決められる。公益林の場合は、その生態的機能を破壊しない限り、合法的かつ合理

的な養殖業、森林観光業などの利用ができる。

11、 使用権の確定。林地の使い道を変えない限り、請負人が合法的にその経営権

や所有権を下請け、租借、譲与、株入り3、抵当あるいは融資、合作条件として森林地

を合法的に開発利用することができる。

12、 収益権の保障。請負した森林地の収益はすべてその請負人のものとする。集

団所有の林地を徴収する場合は、法律に基づいて森林地の補償金、安置補助費4、地上

の付着物および林木補償金などの費用を払わなければならない。そして森林地の徴収

された農民への社会保障費用も用意されなければならない。請負したのは政府の規定

した公益林の場合、生態的機能に対する破壊は補償金の形で農民たちに償わなければ

ならない。まだ請負されていない森林地の場合は、管理および保護の主体の責任を明

らかにし、森林の生態的機能破壊の補償は本集団経済組織のメンバーである各農家に

支払う。非合法的な割り当てや課税などを厳禁する。

13、 責任の確定。集団森林地の請負は契約の調印を必要とする。契約の中には請

3株を持つこと(立木所有権) 4当該地が民家でそこに植林をしたいならば、その農家に一定の補助費を出し、引っ越させるということ

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負双方の造林、保護、管理、火災や虫害防止などの責任を強調することで、森林資源

の持続経営を促す。基礎林業管理部門は請負契約の管理規範化にも力を注がなければ

ならない。

四、 集団林権制度改革への改善

14、 林木伐採管理制度を完備する。森林経営計画を打ち立て、商業用森林の伐採

上限管理改革を行い、林木伐採審査公開制度を実施し、審査過程を簡単にし、便利な

サービスを提供する。公益林への伐採を厳格に控え、法律に即した再生的伐採を行い、

伐採の方式や加減などを合理的に控える。

15、 林地や林木の譲与を規範にあわせる。法律に即し、自らそう望み、有償を条

件に、林地請負人が多様な方法で林地所有権や林木所有権を譲与することができる。

譲与は残った請負期限内に行わなければならない。また譲与した林地の用途を変えた

りすることはできない。集団統一経営管理下の森林地の経営権および林木所有権の譲

与は、あらかじめ本集団経済組織内部で検討し、各メンバーの合意を得たうえで、初

めで実行可能とする。その収益の使用権は農村集団財務管理にあり、本集団経済組織

内部メンバーの配当や公益事業に当たる。

林地および林木譲与制度の打ち立てを早め、生産権利引き取り体制を改善し、

譲与管理を強め、法律に基づいて譲与を規範にあわせることは、公平な引き取りの保

障、農民所有地の保全に繋がる。森林資源資産評価管理を強め、森林資源資産評価士

および評価制度の打ち立てを早め、評価を規範にあわせ、書く引取りの各方面の合法

的権益を守る。

16、 集団林業発展を支持する公的財政制度を設ける。各級政府は森林生態効果補

償金制度の打ち立ておよび改善を図るべきである。「開発したものが保護する。受益

したものが補償する」という原則に基づいて、多様な方法で公益林補償基金を募り、

徐々に中央および地方財政の森林生態効果に対する補償標準を高める。造林、育林、

保護、管理投入補助金制度を設け、森林火災や虫害防止、林木の優良品種の栽培、メ

タンガスの吸収に設備を配置することに補助金を配り、森林の育成、木本の食料と食

用油、生物質エネルギー林、珍奇品種および大直径樹木の栽培に幇助を与える。森林

育成基金管理法の改革を行い、徐々に森林育成基金の徴収歩合を下げ、その使い方を

規範にあわせる。各級政府は林業部門行政支出を財政予算の一部として扱い、森林火

災、虫害防止および林業行政司法体系などの基礎施設の建設費を各級政府の基本建設

計画の一環として扱わなければならない。また林地の交通、給水、給電、通信などの

基礎施設建設は法律に基づいて関連産業の発展計画に加えなければならない。特に僻

地や砂漠地区、少数民族地区の林業基礎施設に対する投入を高めなければならない。

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集団林権制度改革の支出は主に地方政府が担うことになっているが、中央政府からも

一定的な補助金を発給する。財政収入の少ない県、郷に対しては、中央政府および省

政府から財政補助金を発給する。

17、 林業投資および融資の改革を進める。金融機構が林業向けの貸付商品を開発

することで、林業融資ルートを広げる。林業への貸付限度を高め、林業貸付財政利子

補給政策を改善し、林業に対する小額貸付業の発展に力を注ぐ。より完備な林業貸付

保証方式、林権抵当貸付制度を設ける。政策的森林保険制度の打ち立てを早めること

で、各農家の防災能力を高める。また農村林業債務に対して妥当な対処を要求する。

18、 林業の社会的サービス功能を強化する。林業プロ合作組織や幅広い分野に携

わる先導企業を培うことで、林業の大規模化、標準化、集約化経営を促す。そして政

策諮問、情報サービス、技術の普及、業界自律などの働きを発揮する林業プロ協会を

設営する。森林資産評価、経営方案制定などの仲介業を規範に合わせ、引いてはその

健全の発展に繋がる。

五、 集団林権制度改革への組織および指導を強めること。

19、 集団林権制度改革を重視する。各級党委員会、政府は集団林権制度改革の重

要さを十分に認識した上で、厳密に組織し、妥当に手配し、情報に応じて改革を有利

に導き、改革の着実の進展を確保する。主要指導者責任体制を実行し、指導者の責任

を明らかにする。県市政府が率い、郷・鎮組織が実施し、村組織が具体的に操作し、

各部門がサービス改善に努める仕事体制を設けることで、農村基礎党組織の力を確実

に引き出す。改革法案の制定は法律厳守、民意尊重、実事求是のもとに設けなければ

ならない。また改革の内容およびその具体的操作過程は公開、公平、公正にしなけれ

ばならない。改革基本原則の下に積極的な模索を提唱し、実際に合う実績のある改革

を確保する。指導者および森林スタッフへの調達、統計、検査、監督、データ管理な

どの育成訓練を強化しなければならない。党幹部、特に各級指導者は、その身をもっ

て改革を契機にした汚職を根絶する。紛糾調停体制をより完備にすることで、紛糾を

解決し、農村の安定を維持する。

20、 林業管理を着実に改善する。各級林業主管部門は新たな改革情勢に応じ、そ

の役割をさらに調整し、林業に対するマクロ管理、公共サービス、行政法の執行や監

督を強化すべきである。そして調査研究、経験総括を通じて、指導を強化し、サービ

ス方式を改善する。林業総合行政法の実施を進め、森林資源に対する破壊などの違法

行為を取り締める。森林火災および病虫害防止などの公共サービスの建設を強め、政

府が指導し、大衆が実行する火災、病虫害、乱伐防止体制を健全にする。科学技術普

及奨励体制を打ち立て、育成訓練を強め、林業技術を全面的に普及する。基礎林業の

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機構の構築にさらに力を注ぎ、郷鎮林業経費を地方財政予算に組み入れる。

21、 改革を支持できる多角協力に努める。集団林権制度改革は幅が広く、政策的

性質が強いゆえ、各関連部門の参与、支持および各部門間の協力が必要となる。また

各大衆団体や NPO が集団林権制度改革に協力することを要求する。世論や宣伝に通じ

て集団森林制度改革に有利な社会ムードを作り出す。

集団林権制度改革は即ち農村生産関係の変革である。この変革は全局に関わってお

り、その影響は計り知れない。我々は胡錦濤総書記を中心とする党に追随し、中国特

色の社会主義を高く掲げ、鄧小平理論と「三つの代表」を指導に、科学的発展観を貫

き、思想のくびきを打ち砕き、信念を固め、積極的に前へ進み、集団林権制度改革を

深め、小康社会の全面的勝利に新たな力を注ごう。

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付属資料 2

中国における早成広葉樹植林賦存状況調査

- 高度成長の中国製紙産業およびパルプ用材供給の予想 -

(仮訳)

中国林業科学研究院

易浩若

李剣泉

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目次

項 目 ページ

はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1

第1章 製造業における中国製紙産業の地位・・・・・・・・・・・・・ 1

1.1 紙・板紙の生産量・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

1.2 紙・板紙売上高・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

1.3 製紙産業の従業員数・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4

1.4 中国製造業における位置・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4

第 2 章 中国経済と紙・板紙の需要量・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

2.1 中国経済成長(GDP)の展望・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

2.2 中国の経済成長と紙・板紙需要・・・・・・・・・・・・・・・ 8

2.3 紙・板紙製品の種類と需要量・・・・・・・・・・・・・・・・ 10

第 3 章 原料供給状況とその動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12

3.1 国内の製紙パルプ生産および輸入製紙パルプ・・・・・・・・・ 13

3.1.1 国内産パルプ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14

3.1.2 輸入パルプ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14

3.2 国内古紙及び輸入古紙・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15

3.2.1 国内古紙・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15

3.2.2 輸入古紙・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15

3.3 国内古紙回収システム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16

3.4 国産チップと輸入チップ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18

3.4.1 国産チップ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19

3.4.2 輸入チップ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20

3.4.3 輸出チップ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21

3.4.4 2008 年 1~6月のチップ輸出入量の比較・・・・・・・・・・・・ 21

3.5 非木材製紙原料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24

第 4 章 用材林資源事情・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26

4.1 森林資源事情・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26

4.2 森林資源賦存量・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26

4.2.1 用材林資源現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26

4.2.2 原料林資源発展計画・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27

4.2.3 用材林優勢樹種・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27

4.3 森林資源の地区分布・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28

4.3.1 東北内モンゴル国有森林地・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28

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4.3.2 四川雲南国有林・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28

4.3.3 南 10 省(区)集団林・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28

4.3.4 チベット自治区国有森林地・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29

4.3.5 他の省、市・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29

4.4 主要樹種の森林資源量・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29

第 5 章 中国における植林の現状およびその動向・・・・・・・・・・・ 30

5.1 中国国内植林面積推移・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30

5.1.1 人工林資源面積・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30

5.1.2 人工林資源の蓄積・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32

5.2 植林主体別の植林面積・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33

5.3 地域別の植林面積・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33

5.4 早成樹種の植林事情・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34

5.4.1 早成樹種植林地・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34

5.4.2 4種類の早成樹の主要分布地域・・・・・・・・・・・・・・・・ 35

5.4.3 早成樹種の面積および蓄積・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37

5.5 中国における外資系企業の植林事情・・・・・・・・・・・・・ 39

5.6 海外における中国企業の植林事情・・・・・・・・・・・・・・ 41

第 6 章 中国林業および製紙パルプ産業に関する政策・・・・・・・・・・ 44

6.1 林業に関する基本政策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 44

6.1.1 製紙パルプ用原料林基地の建設・・・・・・・・・・・・・・・ 44

6.1.2 林紙一体化政策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 45

6.1.3 林権制度改革による製紙産業の原料保障・・・・・・・・・・・ 47

6.2 製紙産業発展政策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 48

6.2.1 政策目標・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49

6.2.2 産業配置・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49

6.2.3 繊維原料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49

6.2.4 技術と設備・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49

6.2.5 製品構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50

6.2.6 組織構造・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50

6.2.7 資源節約・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50

6.2.8 環境保全・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51

6.2.9 業界参入・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51

6.2.10 投融資・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 52

6.2.11 紙製品の消費・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 52

第 7 章 製紙産業の競争力評価と問題点・・・・・・・・・・・・・・・ 53

7.1 中国製紙産業発展因子の評価と製品の国際貿易水準・・・・・・ 54

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7.1.1 産業競争力の環境条件評価・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54

7.1.2 中国紙製品の貿易状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55

7.2 中国製紙産業製品の国際競争力の評価・・・・・・・・・・ 56

7.2.1 製品の国際競争力・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 56

7.2.2 木材パルプと紙製品の貿易価格競争力の分析・・・・・・・・・ 57

7.2.3 製紙産業界と企業利益、労働生産性の分析・・・・・・・・・・ 57

7.3 木材パルプによる製紙産業の国際競争力向上対策・・・・・・・ 58

7.3.1 国内市場の需要影響力の発揮・・・・・・・・・・・・・・・・ 58

7.3.2 関連支持産業との連携の拡大・・・・・・・・・・・・・・・・ 58

7.3.3 経済林地の造成強化と木材パルプによる製紙の原料保障の向上・ 58

7.3.4 原料構成の改変と製紙産業の改善、国際競争力の増強・・・・・ 59

7.3.5 多様な林紙結合方式の実施促進・・・・・・・・・・・・・・・ 59

7.3.6 林業の改革促進、指導的企業の育成・・・・・・・・・・・・・ 59

7.4 製紙産業の優位性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59

7.4.1 生産設備・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59

7.4.2 生産コスト・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61

7.5 当面する問題点と対策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61

7.5.1 問題点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61

7.5.2 対策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 63

第 8 章 中国紙パルプ産業の主要企業・・・・・・・・・・・・・・・・ 72

8.1 玖竜紙業有限公司・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 72

8.2 山東晨鳴チンミン

紙業集団公司・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 75

8.3 理文造紙有限公司・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77

8.4 金東紙業(江蘇)公司・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 79

8.5 華泰集団有限公司・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 80

8.6 山東太陽紙業有限公司・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 82

8.7 寧波中華紙業有限公司・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 88

8.8 湖南泰格林紙集団・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 92

8.9 ?芬欧 川紙業公司(UPM-KymmeneCorporation)・・・・・・・・・ 96

8.10 ?山東博 紙業公司・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 100

第 9 章 製紙産業に関連する環境問題と対策・・・・・・・・・・・・・ 105

9.1 製紙産業の環境問題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 106

9.1.1 地球温暖化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 106

9.1.2 環境汚染の深刻化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 106

9.1.3 高消費低効率による生態系劣化の進行・・・・・・・・・・・・ 106

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9.2 温暖化問題予防対策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 107

9.2.1 森林保護対策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 108

9.2.2 関連産業政策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 108

9.2.3 その他の関連提案・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 109

9.3 有害化学廃棄物の処理対策・・・・・・・・・・・・・・・・・ 111

9.3.1 製紙産業の主要有害化学廃棄物ダイオキシン・・・・・・・・・・ 111

9.3.2 中国のダイオキシン対策・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 112

9.4 環境汚染問題への対策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 113

9.4.1 監視体制の完備、環境法規の厳守・・・・・・・・・・・・・・ 113

9.4.2 クリーン生産技術の推進強化とクリーン生産審査制度の実施・・ 113

9.4.3 廃水排出対策実施許可書の管理・・・・・・・・・・・・・・・ 113

9.4.4 環境指標の公告および企業環境保護情報の公開制度の実施・・・ 114

9.4.5 環境評価の企画推進と環境評価戦略の推進・・・・・・・・・・ 114

9.4.6 製紙用林基地における生態系保護の重視と強化・・・・・・・・ 114

9.4.7 関連政策の整備とパーティション管理の実施・・・・・・・・・ 114

9.4.8 「引進来」と「走出去」複合戦略の採用・・・・・・・・・・・ 114

9.4.9 循環型経済の発展と実現可能計画と製紙産業発展政策の徹底・・ 115

9.4.10 関連標準の制定、改訂と資源節約、汚染処理の強化・・・・・・ 115

第 10 章 紙パルプ産業との競合産業の現状・・・・・・・・・・・・・・ 117

10.1 建築業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 117

10.2 繊維板産業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 120

10.3 家具製造業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 121

10.4 きのこ栽培産業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 121

10.5 その他の業種・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 121

第 11 章 2015 年と 2020 年の紙・パルプ市場の発展予測・・・・・・・・・ 123

11.1 国内紙・板紙の需要量と供給量の予測・・・・・・・・・・・・・ 124

11.2 製紙原料(パルプ)の需要量と供給量の予測・・・・・・・・・・ 135

11.3 早成木材の需要量及び供給量の予測・・・・・・・・・・・・・・ 145

11.4 紙・板紙及び製紙原料の輸出の見通し・・・・・・・・・・・・・ 147

11.5 急速に増加する原料需要と供給の乖離が国際市場に及ぼす影響 149

11.6 未来の展望・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 150

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1

はじめに

中国は国土が広大で森林資源が豊富である。北から南に針葉樹林、針広混交林、落葉広

葉樹林、常緑広葉樹林、モンスーン雨林、熱帯降雨林と多彩な森林景観が構成されている。

半世紀あまりの建設で、中国の林業は大きく発展を遂げ、森林面積や森林の内容、樹木蓄

積量および被覆率は著しく向上した。第 6回森林資源調査(1999-2003 年)によると、全国

森林資源面積は 1.75 億万 ha に達し、世界で第 5 位を占める。森林被覆率は 18.21%、立木

総蓄積1は 136.2 億? で、森林蓄積は 124.6 億? に達し、世界第6位である。天然林面積は

1.16 億 ha で蓄積量は 105.9億? 、人工林面積は 5,326 万 ha に達し、15.1 億? の蓄積量は

世界で首位を占めている。このような豊富な木材繊維資源と人工林の発展が中国の製紙産

業の発展に揺ぎ無い原料基礎を与え、大きな原動力となるのである。

第 1章 製造業における中国製紙産業の地位

製紙産業は国民経済や社会事業発展に繋がる重要な基礎原材料産業であり、紙・板紙の

消費はその国の近代化や文化水準を評価する基準になる。製紙産業は多額の資本、技術、

顕著なスケールメリットなどを必要とする特徴を有し、また関連産業が多く、市場の規模

が大きいため、林業、農業、印刷、包装、機械製造などの産業の発展を促進する力となり、

さらに中国の国民経済発展の成長点ともなった。製紙産業は木材、竹、葦などの天然植物

繊維や古紙などの再生繊維を原材料とし、プラスチック、鉄材、非鉄金属など再生不能の

資源の代替となり、中国の国民経済を持続的に発展させる産業である。

近年、中国の製紙産業は高度成長期に入ったが主として次のような特徴がある。第一に

政策体系がほぼ出来上がり、林紙一体化による発展について共同認識が得られるに至った。

第二に生産、需要が急速に増加し、業界の内容が質、量ともに明らかに向上している。第

三に原料構造が改善され、製品構成も改善された。第四に企業再編が進み産業の集約度が

高まった。第五に汚染防止が一定の効果を挙げ、資源の消費が著しく減少した。一方、中

国製紙産業は深刻な資源の制約、環境対策の圧力に直面している。その第一は非合理的な

規模のためにスケールメリットが小さい。第二は良質な原料が不足し対外依存度が高い。

第三は資源の消費が大きく環境汚染防止が困難である。第四は新規設備の研究開発、技術

が不成熟なため先進的な設備は輸入に依存している。第五は海外の企業からの投資は最大

化され、概して調和して成長するように計画されることが求められる。近年、世界の製紙

産業は大きく発展を遂げたが、一方、資源、環境などの制約を受けエネルギーの節約、環

境保護、製品品質や経済利益の向上に力を入れている。そして高効率、高品質、高収益、

1立木蓄積量は街路樹や庭の木など全ての樹木を含む

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2

低消費、低排出の近代化工業を目指して企業の規模拡大、技術の集成化、製品の多機能化、

グリーン生産化、資源の節約、林紙一体化、産業のクローバル化の趨勢にある。

現在、中国の製紙企業は約 3,500 社で、生産能力は約 7,000万t以上である。2007年の

紙・板紙生産量は 7,350 万t、消費量は 7,290 万tに達し、初めて生産量が消費量を上回

った。生産量および消費量ともに世界第2位で、中国は世界の製紙産業において生産・消

費大国となった。

1.1 紙・板紙の生産量

1996 年から 2007 年に、世界の紙パルプ年間総生産量は 0.7%、年間総消費量は 1.1%の速

度で増加し、中国は同 10.9%と同 11.5%の速度で増加し、世界平均レベルをはるかに超えて

いる。それに応じて、世界の紙・板紙原紙の生産量、消費量の年平均伸び率も明らかに中

国を下回っている。(表 1-1)

表 1-1 世界及び中国の製紙パルプ・紙・板紙の生産、消費状況 (1996-2007 年)

地区 種類別 1996年1997年1998年1999年2000年2001年2002年2003年2004年2005年2006年2007年

年平均伸び率

(%)

パルプ総生産量(万t)

17,404 17,820 17,553 17,913 18,868 17,937 18,200 18,157 18,850 18,320 18,660 0.74

世パルプ総消費量(万t)

17,294 17,900 17,511 18,007 18,901 18,257 18,265 18,442 18,775 18,844 19,230 1.10

界紙・板紙総生産量(万t)

28,197 29,904 30,101 31,571 32,329 31,815 33,070 33,882 35,960 36,703 38,200 3.11

紙・板紙総消費量(万t)

27,940 29,690 29,852 31,439 32,338 31,802 33,076 33,913 35,753 36,640 38,176 3.20

紙・板紙1人当り年平均消費量(kg)

48.5 50.8 50.4 52.8 53.8 51.8 53.7 51.7 55.6 56.3 70.8 4.14

パルプ総生産量(万t))

1,900 1,738 2,384 2,443 2,501 2,490 2,944 3,309 3,723 4,446 5,204 5,935 11.52

中パルプ総消費量(万t)

2,045 1,890 2,604 2,752 2,834 2,980 3,470 3,910 4,455 5,200 5,992 6,769 12.00

国紙・板紙総生産(万t)

2,600 2,744 2,800 2,900 3,050 3,200 3,780 4,300 4,950 5,600 6,500 7,350 10.05

紙・板紙総消費量(万t)

3,028 3,270 3,347 3,525 3,575 3,683 4,332 4,806 5,439 5,930 6,600 7,290 8.42

紙・板紙1人当り年平均消費量(kg)

24.7 26.5 26.8 27.8 28.0 29.0 33.0 37.0 42.0 45.0 50.0 55.0 7.65

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3

中国大陸の紙・板紙の1人当り年間平均消費量は世界製紙産業先進国の米国、アジアの

先進国の日本、中国香港には追い付かずにいる。米国の1人当り年間消費量は平均約 320kg、

日本は 240kg、中国香港は 150kg である。 2007 年、中国紙・板紙の1人当り年間消費量は

1978 年の 5.08kg の 10.8 倍で平均 55kg である。特に 2002 年以後、紙・板紙1人当り年間

平均消費量は急速に増加し 2020 年には1人当り 100kg に達する見込みである。

21 世紀に入り、世界の製紙産業先進国の米国、日本では、紙・板紙の総生産量と総消費

量はほぼ平衡状態である。2000 年から今まで、米国の紙・板紙総生産量は 8,400 万tあま

りで、消費量は約 9,000 万tである。日本の紙・板紙生産量、消費量共に 3,100 万tであ

る。中国の紙・板紙生産量、消費量は急速に増加している。1997 年中国の紙・板紙消費量

は 3,270 万t、同年に日本の 3,137 万tを上回り、世界の紙・板紙消費ランキングで2位

となり、今もその勢を保ち米国との差をさらに縮めているのである。2001 年中国の紙・板

紙総生産量は 3,340 万tで、同年日本の 3,073 万tを上回り、世界の紙・板紙総生産ラン

キングでは2位で、米国との差は小さくなりつつある。近年の趨勢から、2008 年中国紙・

板紙総生産量、総消費量は米国に追いつくか或いは上回るという見込みである。2012 年の

消費量も米国と同等あるいは上回ると予測される。

1978 年から 2007 年にかけて、中国紙・板紙生産量、消費量は増加傾向を示したが、特に

近年の増加速度は大きく、2005 年紙・板紙生産量は 5,600 万t、2006年 6,500 万t、2007

年 7,350 万tに達し、2005 年、2006年、2007年の紙・板紙消費量は 5,930 万t、6,600 万

t、7,290 万tとなった。(表 1-2)。

表 1-2 中国における紙・板紙生産量 (? 位:万 t)

年 1978 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2006 2007

総生産量 466 563 931 1,392 2,400 3,050 5,600 6,500 7,350

総消費量 489 620 989 1,463 2,650 3,575 5,930 6,600 7,290

輸入量 36.5 75.3 80.8 96.2 303 597 524 441 401

輸出量 13.4 17.4 22.9 25.2 53 71.8 194 341 461

1.2 紙・板紙売上高

21 世紀に入り、中国における紙・板紙売上高は明らかに上昇の趨勢を示し、2005年、2006

年、2007 年の紙・板紙総売上高はそれぞれ 1,487.5 億元、5,082.4 億元、5,706.4 億元に達

した(表 1-3)。

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4

表1-3 中国における紙・板紙売上高

年 1978 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2006 2007

総生

産量

(万t)

466 563 931 1,392 2,400 3,050 5,600 6,500 7,350

総消費額

(億元) 1,487.5 4,519.2 5,082.4 5,706.4

1.3 製紙産業の従業員数

製紙産業は非労働集約型産業である。統計によると2000 年以来、年間の売上高が 500 万

元以上の製紙企業の従業員数はほぼ一定している(表 1-4)。製紙産業の従業員総数の変動も

小さく、基本的には 100 万人以上で安定している。

1.4 中国製造業における位置

開放改革30年以来、国民経済の急速な発展に伴い、中国製紙産業は着実に力を付け、

急速かつ安定的な発展を遂げた。特に 2007 年、中国における紙・板紙の生産量は初めて総

消費量を上回り供給が需要に応じられない状況を終え、中国の製紙産業の新時代到来とな

った。2005 年、2006 年、2007 年の中国製紙産業の生産額は製造業総生産額においてそれぞ

れ 5.1 %、4.8 %、4.5%である。(表 1-4) 表1-4 1978-2007年の中国製紙産業の総生産額

年 総生産量(万t)

総生産額(億元)

総生産額*(億元)

従業員人数

(万人)

従業員人数

*(万人)

国内総生産額(億元)

製造業の総生産額(億元)

製造業において製紙産業が総生産額に占める割合(%)

1978 466 3,6241980 563 4,5181985 931 8,9641990 1,392 18,5481995 2,812 58,4781996 2,669 67,8851997 2,757 74,4631998 2,824 579 413 78,345 29,771 1.941999 2,900 607 434 82,067 32,006 1.902000 3,050 1,488 1,063 118 83 89,468 35,000 4.252001 3,200 1,686 1,204 114 81 109,655 47,152 3.582002 3,780 1,957 1,398 112 78 120,333 54,150 3.612003 4,300 3,552 2,537 110 77 135,823 62,479 5.682004 4,950 3,144 2,775 109 76 159,878 76,741 4.102005 5,600 4,519 3,228 109 76 182,321 89,337 5.062006 6,500 5,082 3,119 132 92 209,407 106,798 4.762007 7,350 5,706 4,076 106 74 246,619 128,242 4.45

注:*総生産額および従業員数は年間売上高500万元以上の製紙企業のみを指す。うち全企業総生

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5

産額=1.40×年売上高500万元以上製紙企業の総生産額。全企業の従業員数=1.43×年売上高500万元以上製紙企業の従業員数(係数1.40および1.43は調査結果による推計である)。2000年のデータは統計によるもの以外、製造業生産額のデータはその年GDPにおける割合の変化から推計したものである。

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6

第 2章 中国経済と紙・板紙の需要量

2008 年、中国の製紙産業は新たな歴史的発展段階に入った。転換期に直面していること

が現在の製紙産業発展の特徴であって、2008 年は中国の製紙産業にとり発展の分岐点であ

る。統計によると 2007 年の中国の紙の輸出は 461万t、輸入は 401 万t、従って純輸出量

は 60 万tであって長年、中国が紙の供給が需要に応じられず輸入に依存する状態が根本的

に改善された。このように形勢が根本的に改変されたのは、中国経済が成長することに伴

って生じたので、一部の品種については生産能力が段階的に過剰になり、紙の輸出量が輸

入量を超過することがその現われで、30 年近く中国の紙の需給は輸入に依存して成長して

きたがその転換期を迎えた。

2.1 中国経済成長(GDP)の展望

改革開放以来、中国経済は 30年間連続して成長してきた奇跡を見せたが (表 2-1参照)、

特にここ 10年は着実に発展、上昇してきた(図 2-1)。

表 2-1 中国国内総生産(GDP)の成長状況

年 国内総生産

GDP

成長率

1人当

GDP(元) 億元 億ドル %

1978 3,624 11.7 379

1979 4,038 7.6 417

1980 4,518 7.8 460

1981 4,862 5.3 489

1982 5,295 9 525

1983 5,935 10.9 580

1984 7,171 15.2 692

1985 8,964 13.5 853

1986 10,202 8.9 956

1987 11,963 11.6 1,104

1988 14,928 11.3 1,355

1989 16,909 4.1 1,512

1990 18,548 3.8 1,634

1991 21,618 9.2 1,879

1992 26,638 14.2 2,287

1993 34,634 13.5 2,939

1994 46,759 12.7 3,923

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7

1995 58,478 7,006 10.5 4,854

1996 67,885 9.6 5,576

1997 74,463 8.8 6,054

1998 78,345 7.8 6,308

1999 82,067 7.1 6,551

2000 89,468 10,808 8 7,086

2001 109,655 11,590 8.3 7,651

2002 120,333 12,371 9.1 8,214

2003 135,823 13,720 10 9,101

2004 159,878 19,317 10.1 12,299

2005 182,321 22,592 9.9 13,944

2006 209,407 22,257 10.7 15,935

2007 246,619 30,100 11.4 17,896

目下、中国経済の発展は世界から注目され1人当りの GDP は間もなく 1,700 ドルに達す

る見込みである。2002 年に中国の1人当りの GDPは 1000 ドルを超えたばかりであった。世

界銀行の最近の基準によると1人当り GDP が 750 ドル以下つまり1人当り平均 1 日 2 ドル

以下の国は低収入国、1人当りの GDP が 750 ドルから 2,960 ドル、つまり1人当り平均1

日約 8ドルの国は中低収入国と決められている。

将来、世界経済の発展において中国と米国は極めて重要な役割を担うものと世界銀行は

推測している。2006 年 12 月、世界銀行は始めて北京で「2007 年グローバル経済展望」を

発行している。2008年 1 月、世界銀行が発行した「2008 年グローバル経済展望」によると、

2008 年の東アジアおよび太平洋地域の経済成長率は 9.7% 、2009 年は 9.6%に下降したが東

アジアおよび太平洋地域の経済成長は主として中国の 11.3%の成長に依存しているが、この

地域の他の国の平均成長率は 5.9%である。報告によると 2008 年の発展途上国の GDP の成長

率は 7.1%に低下し、高収入国は 2.2%の低成長であるので 2008 年の世界の成長率は 3.3%と

見込まれている。

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8

中国10年間のGDPと成長率

0

5

10

15

20

25

30

1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

兆元

0

2

4

6

8

10

12

GDP GDP成長率

図 2-1 この 10 年の中国の GDPと成長率

2.2 中国の経済成長と紙・板紙需要

現在、紙製品の利用領域は止まることなく拡大している。木箱、プラスチック、布によ

る包装の代わりに紙を使用するのが包装市場の最近の傾向である。生活用途の紙の市場は

更に広い。紙コップ、紙製食器市場は急速に拡大しつつあり、トイレットペーパー、紙タ

オル、ティッシュ、紙ナプキン、女性用ナプキン、紙オムツも人気が高い、紙製ズボン、

紙靴下、紙シーツ、紙枕カバーなどがホテル、病院、駅、埠頭で多く見られるようになっ

た。近年、紙家具も盛んになり、独特な技術によって堅牢さでも木製家具に見劣りしない。

この他、製品の軽くて耐用性があり、安価のため多くの消費者を惹き付けている。また、

さまざまな特種紙、例えばコンピューター用紙、レンズ拭き用紙、化粧紙、芳香紙など実

に様々なものがあり枚挙すれば切りがない。

紙・板紙の需要量は中国の経済成長と密接な関係にある。(表 2-2、図 2-2、図 2-3 参照)。

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9

表2-2 近年中国の経済成長および紙と板紙の需要量

年 中国 GDP

(兆元)

1人当り

GDP(千元)

紙・板紙

生産量

(百万 t)

紙・板紙

消費量

(百万 t)

1人当り

紙・板紙

消費量

(Kg)

1997 7.45 6.1 27.4 32.7 26.5

1998 7.83 6.3 28.0 33.5 26.8

1999 8.21 6.6 29.6 35.3 27.8

2000 8.95 7.1 30.5 35.8 28.2

2001 10.97 7.7 32.0 36.8 28.9

2002 12.03 8.2 37.8 43.3 33.7

2003 13.58 9.1 43.0 48.1 37.2

2004 15.99 12.3 49.5 54.4 41.8

2005 18.23 13.9 56.0 59.3 45.0

2006 20.94 15.9 65.0 66.0 50.0

2007 24.66 17.9 73.5 72.9 55.0

中国紙・板紙の生産量、消費量とGDPとの比較

0

10

20

30

40

50

60

70

80

1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

百万t

0

5

10

15

20

25

30

兆元

紙・板紙生産量 紙・板紙消費量 GDP

図 2-2 最近の中国の紙・板紙生産量、消費量と GDP の比較

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10

中国1人当り紙・板紙消費量とGDP

0

10

20

30

40

50

60

1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

KG

0

2

4

6

8

10

12

14

16

18

20

千元

1人当り紙・板紙消費量 1人当りGDP

図 2-3 最近の中国の1人当り紙・板紙消費量と GDP の比較

経済発展の牽引力から見ると中国の製紙産業は国内需要が供給を上回る数少ない業種の

1つであった。今後の数年、中国の紙消費量が増加することは明らかで、紙の生産量の年

間増加率は 10 % 以上を維持するであろうから国民経済の GDPの成長率よりも高いことにな

る。特に新聞用紙、包装用紙、板紙、生活用紙など主要紙製品の需要および生産は大幅に

増加しよう。この内需拡大が大幅な古紙輸入に繋がっている。製紙産業の拡大が経済を牽

引する力は依然として大きい。当然、このために製紙原材料、パルプ製造に対する要求は

さらに急激に高まろう。

2.3 紙・板紙製品の種類と需要量

現在、中国の紙・板紙製品の種類は 600 以上ある。製品の種類は少なくないが、技術的

に低級で、高級な製品が少ないのが現状である。低級製品が約 50 % を占めているが、主と

して黄板紙、ライナー、中しん原紙などである。中級製品は約 20%で、高級製品は約 30 % で

ある。紙と板紙の比率は 6:4である。そこで低級製品が過剰となり中、高級製品の供給が

不足する需給構造の矛盾を孕んでいる。

近年、中国製紙産業が生産した紙、紙製品の種類およびその生産量は表 2-3 の通りであ

る。2007 年、中国の紙・紙製品の生産、消費は一貫して増加傾向を示している。一方、生

産の増加率は鈍化し、前年に比べ 3%下落した。生産量が大幅に増加した主な製品はライナ

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11

ー、新聞用紙、中しん原紙、アート紙、非塗工印刷用紙、白板紙および生活用紙であって、

成長率は 9% 以上、その中、段ボール原紙は 15.0% 、新聞用紙は 14.2%、板紙は 13.5%、ア

ート紙は 10.5%の伸び率である。(表 2-4) 表2-3 中国紙・板紙種類別生産量(単位:万t)

年 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

紙・板紙計 3,200 3,780 4,300 4,950 5,600 6,500 7,350

紙計 1,775 1,995 2,234 2,474 2,700 3,045 3,350

(1)新聞用紙 175 185 207 300 319 375 450

(2)印刷筆記用紙 800 920 960 1,020 1,070 1,220 1,340

(3)工業用雑種紙 130 180 240 300 365 460 510

(4)包装用紙 400 400 480 470 510 520 530

(5)生活用紙 270 310 347 384 436 470 520

板紙計 1,425 1,785 2,066 2,476 2,900 3,455 4,000

(1)特殊板紙 65 70 80 85 90 110 120

(2)包装用板紙 1,360 1,660 1,900 2,310 2,720 3,220 3,750

(3)その他板紙 0 55 86 81 90 125 130

表2-4 中国2006~2007年の各種紙・板紙種類別の生産量と消費量

品種

生産量(万 t) 消費量(万 t)

2006 年 2007 年 増加比

(%) 2006 年 2007 年

増加比

(%)

総量 6,500 7,350 13.08 6,600 7,290 10.45

1.新聞用紙 375 450 20.00 344 393 14.24

2.非塗工印刷用紙 1,220 1,340 9.84 1,211 1,332 9.99

3.塗工紙 460 510 10.87 400 426 6.50

うち:アート紙 380 420 10.53 332 367 10.54

4.生活用紙 470 520 10.64 436 476 9.17

5.包装用紙 520 530 1.92 528 537 1.70

6.白板紙 940 1,050 11.70 972 1,062 9.26

うち:塗工白板紙 900 1,000 11.11 931 1,012 8.70

7.ライナー 1,150 1,360 18.26 1,250 1,438 15.04

8.中しん原紙 1,130 1,340 18.58 1,193 1,354 13.50

9.特殊紙・板紙 110 120 9.09 131 136 3.82

10.他の紙・板紙 125 130 4.00 135 136 0.74

注:数値は中国造紙協会 2007 年度報告に準拠

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12

第 3章 原料供給状況とその動向

製紙用繊維原料の不足は現在、中国製紙産業の発展上、大きな隘路となっている。需要

と比べると林木の成長は遅いので、産業用に伐採される残材、木材加工の廃材、輸入木材、

輸入チップによってパルプを生産、あるいはパルプ輸入することになる。

中国の繊維原料構成は不完全で、木材パルプの比率が低く、木材と古紙は大きく輸入に

依存しているので市場リスクに対して脆弱である(表 3-1)。

表3-1 繊維原料構成の推移(%)

年 1980 1990 2000 2001 2003 2005 2007

木材パルプ

の比率 25 15 19 23 21 22 22

非木材パルプ

の比率 60 57 40 33 30 24 19

古紙パルプ

の比率 15 28 41 44 49 54 59

注:非木材パルプの占める割合は著しく低下し、木材パルプはほぼ現状維持、古紙パルプは大幅に増加した。

中国の非木材パルプ生産技術はかなり進んでいるが、環境保護上の制約によって十分に

利用できない。早成多収穫林によっても短期間に原料問題は解決できない。2007 年の輸入

木材パルプは 845 万tで、古紙は 2,256 万tに達しているから輸入依存度は 39 % 以上にな

っている(表 3-2)。

表3-2 国産木材パルプおよび輸入パルプの数量的推移(万t)

年 1980 1990 2000 2002 2004 2006 2007

国産木材

パルプ 110 150 200 214 238 526 605

輸入木材

パルプ 25 54 335 526 732 796 845

注:2007年の国産パルプ?輸入パルプ=41.7?58.3

製紙繊維原料の輸入依存度は年々増加し、木材パルプおよび古紙価格は高騰している。

そのため中国政府は積極的にこれに取り組み、造林植樹に力を注ぎ、木材、チップ、木材

パルプ、非木材パルプ、古紙の供給拡大に乗り出している。2007 年の古紙パルプ総消費量

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は 4,017 万t(古紙として 5,021 万t)である。国産古紙パルプと輸入古紙パルプの比率

は 55.1?44.9 である(表 3-3)。

表3-3 古紙繊維原料の内容(万t)

年 1980 1990 2000 2001 2003 2005 2007

国産古紙

パルプ 82 371 843 800 1,170 1,448 2,212

輸入古紙

パルプ 0 21 297 510 750 1,362 1,805

注:数値は中国紙業年鑑及び年度報告に準拠

製紙パルプは植物の組織を原料に加工、生産される基本的な製紙原料である。現在、中

国は世界最大の製紙パルプ輸入国となっている。大量の輸入製紙パルプによって中国の製

紙産業は大きく発展を遂げてきた。ところが、大量の輸入によって中国の製紙産業は外来

資本に左右されかねない危険に直面しており、製紙パルプの対外依存度は深まる一方であ

る。「全国林紙一体化プロジェクト建設“十五2”及び 2010 年計画」によると、2000 年から

2010 年にかけて 7,500 万 haの製紙用材基地を建設するが、その中、外資企業との契約およ

び合弁の林地は約 2,500 万 ha で約 1/3 を占めている。国内資本の企業がこの 10 年以内に

外資企業が原料林を抑えている状況を打ち破ることは困難である。

中国は林紙一体化プロジェクトの実施を促進し、木材パルプ産業の発展に取組み、伐採

時の残材、木材加工の廃材、輸入木材やチップなどでパルプを製造することを進めるとと

もに適切に木材パルプを輸入し、2010 年には 500 万 ha の製紙用林基地の造成を実現して

45 万tの木材パルプ生産能力を増強する。2010 年から 2020 年にはさらに 500万 ha の製紙

用林基地を造成して木材パルプ 645 万tの生産能力を増強する。輸入チップ、木材伐採時

の残材や加工時の廃材および個人農家の植林によって年間製紙原料用材 1 億? の需要を満

たすべきである。

3.1 国内の製紙パルプ生産および輸入製紙パルプ

1990 年以来、世界における製紙パルプの生産大国である米国、カナダ、日本のパルプ生

産量は平衡状態にある。2001 年から 2006 年における米国の製紙パルプ生産量は約 5,300万

t、カナダは 2,600 万t、日本は 1,100 万tであった。1992 年の中国の製紙パルプ生産量

は 1,199 万tで、同時期の日本の 1,120 万tを超えて世界第3位となった。近年、中国の

製紙パルプ消費量は紙・板紙の消費量の増加とともに増大し、原料の製紙パルプに対する

2 第 10期 5ヶ年計画(2001 年-2005 年)

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需要はますます高まった。中国の木材資源は相対的に乏しく、国産木材パルプは国内需要

の 10%にも満たず、製紙パルプの対外依存度は依然として高い。製紙用パルプの構成内容を

みると非木材パルプが占める比率は次第に低下を続けており(ただし消費量としては増加)、

古紙パルプの比率が大きくなっており、古紙輸入が大幅に増大している。すなわち 2007年

の中国の製紙繊維原料輸入量(古紙を含む)は製紙パルプ総消費量の 39.2%を占めている。 3.1.1 国内産パルプ

中国造紙協会の統計によると、2007 年の全国の製紙パルプ消費量は 6,769 万 t で、前年

より 13.0%増加した。うち木材パルプが 1,450 万 t で、前年より 9.7% 増加して 22%を占め

前年から横ばいである。非木材パルプは 1,302 万 t で、前年より 0.9%増加して 19%を占め

前年より 3%下落した。古紙パルプは 4,017 万 t で前年より 18.9%増加して 59%を占め、前年

より 3%増加した。2007 年の中国の製紙パルプ生産量は 1,907万tに増加した 。(うち木材

パルプ 605 万t、非木材パルプ 1,302 万tで、竹、あし、バガス、わら、棉茎などの非木

繊維原料を含む)(表 3-4)。 表3-4 製紙産業主要繊維原料消費量構成

万t % 万t % 万t % 万t % 万t % 万t %

製紙パルプ消費量 1,393 100 2,259 100 2,790 100 5,200 100 5,992 100 6,769 100

1.木材パルプ 204 14.6 283 12.5 535 19.1 1,130 21.7 1,322 22 1,450 22国産 150 10.7 201 9.2 200 7.1 371 7.1 526 9 605 10輸入 54 3.9 82 3.3 335 12 759 14.6 796 13 845 12

2.非木材パルプ 797 57.2 1,136 50.3 1,115 40 1,260 24.2 1,290 22 1,302 19あし 86 6.1 87 3.9 100 3.6 138 2.7 144 2.5 144 2.0竹 15 1.1 32 1.4 30 1.1 86 1.6 95 1.7 120 1.8

バガス 26 1.9 29 1.3 30 1.1 63 1.2 74 1.3 90 1.3わら 602 43.2 870 38.5 862 30.9 929 17.9 908 15.2 849 12.4棉、麻 44 3.2 19 0.9 20 0.7 ? ? 15 0.3 25 0.4その他 24 1.7 99 4.3 73 2.6 44 0.8 54 1 74 1.1

3.古紙パルプ 392 28.2 840 37.2 1,140 40.9 2,810 54 3,380 56 4,017 59国産 371 26.7 767 34 843 30.3 1,448 28 1,810 30 2,212 32輸入 21 1.5 73 3.2 297 10.6 1,362 26 1,570 26 1,805 27

2006年 2007年1990年 1995年 2000年 2005年

3.1.2 輸入パルプ

中国の森林による木材資源の供給は非常に不足していて、近年、製紙パルプの輸入量は

増加の一途を辿り、2000 年は 335 万t、2007 年は 845 万tで対前年比 6.1 % 増である(表

3-4)。今後、中国の輸入は高水準のまま推移する見込みである。2007 年の輸入製紙パルプ

の CIF 輸入額は 55.5 億ドルで、対前年比 26.3 % の増加である。国際市場における製紙パ

ルプの価格上昇が著しいことが明らかである。

近年、自国の森林資源を保護するため、インドネシア、ロシアなどの世界主要木材生産

国は原木の輸出を禁止あるいは制限する政策を採り、同時に製紙パルプの輸出価格を大幅

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15

に吊り上げているため、中国の製紙パルプ輸入価格、すなわち国内製紙企業の原料コスト

が大幅に増加した。調査によれば輸入パルプのコストが大幅に増加しても紙製品に原料コ

ストを転嫁することが困難なため製紙企業の利益は一様に 3~5%低下した。

中国は積極的に「林紙一体化」を行い、製紙原料利用率を高めようとしているが、外資

企業はすでに中国で「エンクロージャ」を行い、国内大部分の用材林基地を独占している。

また製紙パルプの輸入依存度が高過ぎることも中国の製紙産業の価格安定を揺るがす原因

になっている。

3.2 国内古紙及び輸入古紙

中国製紙産業は原料供給を確保するために古紙利用率の向上を図るべきである。古紙回

収や古紙利用率の向上に力を入れる一方、国際的に古紙資源をできるだけ多く利用し、合

理的に輸入古紙資源を利用すべきである。中国の古紙の年間輸入量は世界全体の 1/3 を占

め、増加率は上昇しつつある。一方、国際市場における古紙供給余力は低下しており、古

紙価格の高騰をもたらしている。

3.2.1 国内古紙

2007 年の中国の紙・板紙生産量は 7,350 万 t、古紙総消費量は 5,021 万 t(古紙パルプ

4,017 万 t)で、パルプ総消費量 6,769 万 t の 59.3%を占め、製紙産業の成長を促す最も重

要な繊維原料となった。古紙消費量は紙・板紙生産量の 68.3%を占め、その多くを輸入に依

存しており、輸入量は 2,256 万 t である。国内古紙回収量は 2,765 万tまで高まったが、

国内古紙統計によれば回収率は低く、37.9%である。現在、中国の製紙原料のうち、古紙の

占める割合は 2006 年、2007 年には 56%、59%に達し、木材パルプの占める割合はわずか 22%

で、製紙産業の古紙資源への依存度が高いことは明らかである。中国の 2006 年、2007年の

紙消費量は 6,600 万、7,290 万tに達し、大量の古紙が排出されているが、回収率はかなり

低い。調査結果によると、日本の古紙回収率は 78%以上、ドイツでは毎年 400 万tの古紙を

回収して回収率は 83%である。フィンランドの都市では新聞、雑誌の回収率はほぼ 100%に

達している。中国では最近、努力の結果、古紙回収率は 2006 年の 27.4%から 2007 年には

30.3%に達した。中国は需要の実情を踏まえ、国内古紙回収率を高めるべきである。

3.2.2 輸入古紙

現在、国際的な古紙貿易全体的の事情をみると、ヨーロッパでは輸出入量はほぼ同じ水

準で基本的には平衡状態にある。北米は純輸出国であるが、アジア、ラテンアメリカ、ア

フリカは純輸入国である。オーストラリアも基本的には平衡状態にある。そこで古紙の貿

易は主として米国からアジア、ラテンアメリカへの流れになっており、今後もしばらく続

くものと見込まれる。

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国内の製紙産業への古紙の供給は需要に追いつかず、輸入古紙は重要な原料となってい

る。現在、中国は最大の古紙輸入国であって 2007 年の中国の古紙輸入は 1,805 万tで、1997

年の 161 万tの 10.2倍に増加し、一途に増加する状況にあった。統計によると、米国、EU、

日本、香港、マカオ地区は中国の古紙輸入の供給地となっている。2006 年に中国は米国か

ら 856 万t、EU から 549 万tの古紙を輸入しているがそれぞれ対前年比 14.6 %と 20.5 % 増

加し、総輸入量の 71.5 % を占めている。また、日本から 324万tを輸入しているが、対前

年比 5.9 % 増加した。日本にとって中国は最も大きな古紙輸出市場である。中国の膨大な

内需があって大量の古紙資源が欧米から輸入されている。米国の「ニューズウィーク」誌

によると中国は 2007年に米国の輸出古紙の 58 % を輸入したという。

古紙を輸入することは木材パルプ繊維の輸入である。その製紙適性は国内産のわら、あ

しを原料にした製紙パルプよりも良好である。国内で回収する古紙には異物が多く、パル

プ繊維は短く、上級の新聞用紙や包装用紙には向いていない。そのため、国内の多くの製

紙企業は次第に外国の良質な古紙を製紙原料として使用するようになった。古紙資源の重

要性に鑑みて、今後、国際古紙資源に対する中国の争奪はいっそう強まる見込みである。

購入、海上輸送、備蓄、通関、国内販売の合理化に力を入れ、低価格で良質の古紙を入手

して国内の生産、需要を満たすべきである。

3.3 国内古紙回収システム

古紙の回収利用は生態系など環境保護に役立つだけでなく、廃棄物の資源化、資源の節

約、社会資本の増大に繋がる。古紙は製紙原料の選択上、最適なもので、製紙産業におい

て投資コストと生産コストの低減になる。その回収・利用率は 80 % まで高めることが出来

る。1tの古紙を使用するごとに立木 10 本、石炭 400 kg、電気 400 KWH、水 300tが節約

ができる。繊維原料が不足する地域や国家にとっては古紙利用率を高めることが唯一信頼

できる繊維入手方法である。現在、環境保護および資源節約のため世界各国において繊維

原料の消費を減少するために古紙の回収・利用を重視し施策に取り組んでいる。回収古紙

の 47 % が各種包装用板紙、32 % が新聞用紙、21 % が包装用紙の生産に使われている。報

道によると新規製紙パルプ需要の年増加率は 2.5 % であるが、古紙需要の年増加率は 5.3 %

である。すなわち古紙への需要は新規製紙パルプより2倍も高いことが知られる。中国の

古紙回収率は 30 % で、各製紙大国どころか世界平均の水準である 37 % よりも低い。これ

は中国の古紙利用の潜在力が巨大であることを意味する。

中国における古紙の回収利用は古くから行われてきて、一部の企業では古紙回収市場の

仕組み逐次作りつつあるが、現在、中国の古紙回収と利用はまだ収益を得るための廃棄物

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売買としての段階に止まっており、資源の回収循環体系を形成するまでには達していない。

中国国内古紙回収システムの成熟はまだ先のことである。

中国において古紙回収系統を整備するにはまだ関連法律や支持政策が整っていない。古

紙回収システムがよく整備されている多くの国では全面的、実用的に細部に亘って緻密な

回収法令体系を有している。製紙企業は関係部門によって強制的に一定量の古紙を原料と

して使用することになっている。政府は企業の円滑な運営と合理的な経済的利益が保証さ

れるように回収企業に一定の補助を与えるべきである。消費者については行政部門が抜取

り検査を行って、古紙を分別して指定の場所に出さないものを厳しく罰するべきである。

中国において古紙回収系統を整備するにはまだ関連法律や支持政策が整っていない。古

紙回収システムがよく整備されている多くの国では全面的、実用的に細部に亘って緻密な

回収法令体系を有している。製紙企業は関係部門によって強制的に一定量の古紙を原料と

して使用することになっている。政府は企業の円滑な運営と合理的な経済的利益が保証さ

れるように回収企業に一定の補助を与えるべきである。消費者については行政部門が抜取

り検査を行って、古紙を分別して指定の場所に出さないものを厳しく罰するべきである。

中国の古紙回収系統を整備するに当たって、必要な古紙利用技術が基礎になる。古紙の

利用、処理は 1970 年代では簡単な蒸煮、離解、叩解、洗淨などの諸工程を経て家庭用衛生

紙や下級の段ボール原紙を抄造していた。1980 年代の古紙回収率はほぼ 25%に達し、少数

のメーカーは脱インキパルプを生産していた。1990 年代以後は一部の大、中規模の製紙企

業が海外から脱インキ設備を含む生産ラインや技術を導入したが、国内でも脱インキ剤や

古紙脱インキ設備を改良したため中国の古紙利用技術と設備は全面的に進歩した。

一部の国内の研究機関は製造企業に協力して脱インキ技術や脱インキ設備を開発し、企

業の既存の施設を利用して小規模の古紙パルプ生産に成功している。河南省許昌、焦作、

? 県、新郷などの地元の企業は輸入米国段ボール古紙などを配合して強度のある中しん原

紙やライナーを抄造し成果を挙げている。福州第二造紙廠、南寧新陽造紙廠などの中小規

模の企業は国産の設備や技術を利用して、新聞古紙と板紙古紙を用いて家庭用衛生用紙や

下級白板紙を生産している。河南省鶴壁造紙廠は既存の設備を改造して新聞古紙で新聞用

紙を生産している。許昌、偃師の製紙一条街は古紙を利用して衛生用紙を生産している。

新密市の一部の製紙工場は国内の古段ボール箱を利用して、ライナー、クラフト紙など中

級、下級の製品を生産して好利益を得ている。

国内の設備メーカーと化学薬品メーカー、研究所が協力して設備の性能、製品の品質の

改善に成功している。例えば杭州軽工業研究所は小規模古紙処理技術と脱インキ方式を開

発している。遼陽製紙機械工場と福建軽工業機械工場が開発した古紙処理設備は一連の製

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品系列となって既に成功裡に生産に使われている。山東の一部の製紙機械工場は独特の脱

インキ設備を製造しているが、購入、使用しているメーカーもある。福建造紙所、杭州化

工研究所、天津科技大学などが研究開発した脱インキ剤も好評である。

中国に古紙回収システムを整備すること古紙のリサイクルという戦略的問題として国家

的に重要視すべきであるからメディアを通じて広報を行い、社会全体に資源の節約、社会

資本の増加、生態環境保護に古紙回収は大きな意義があることを知らしめ、全ての市民の

参加を促がすと同時に政府や協会からの指導や支持も必要で、政府、協会が共同して専門

の古紙回収管理機構を創設すべきで、現在のように廃棄物として個人的に売買されている

状態あるいは資材、製造販売、環境保護の多部門における管理の低効率状態を改善すべき

である。

中国の古紙回収系統を整備するためには海外の経験を参考するべきである。米国の紙生

産量は世界首位で、ただ森林面積はロシア、ブラジル、カナダがやや大きい。しかし 1940

年代から米国は古紙回収と利用を重要視し始め、90 年代になって米国国内で古紙を使って

大量に製紙をするだけでなく、余剰古紙を輸出し始めた。以前は米国の新聞用紙はカナダ

から供給されたが、近年は古紙で新聞紙を製造することで新聞用紙の生産量が増加し、輸

入が減少した。調査によると、米国およびヨーロッパでは新聞古紙回収箱を設置し、奨励

法令を施行し、新聞古紙の回収を促進している。日本では新聞古紙を無闇に捨てると罰金

を科すことが規定されている。中国は古紙回収利用体制が整備されている欧米国家の経験

を参考するべきである。各種回収古紙の分類と品質基準を設け、大型古紙企業を創設し、

古紙回収貿易市場を形成するために各地方において古紙回収管理法規を制定することを推

奨する。大企業が国外に古紙回収基地を設立することを奨励し、海外の古紙回収企業が中

国で協調投資をすることを支持すべきである。古紙の回収管理を強化し、古紙回収の基準

を作成する。同時に法律、政策、課税、貸付、投資などの面において援助を提供し、古紙

回収に援助あるいは古紙貿易付加税の低減、免除など政策面で社会的に積極的に参画すべ

きである。中国の製紙資源不足問題は国内古紙回収作業を強化することによって解決され

ると言っても過言ではない。

3.4 国産チップと輸入チップ

世界の年間チップ貿易量は約 1,500万 BDT で、うち日本の輸入量が輸入総量の 80 %、1,200

~1,300 万 BDT である。したがって日本の経済状況によって国際チップ市場が左右される。

韓国もチップ輸入国で、その輸入量は台湾とほぼ同量の年間約 60 万 BDTである。当面の国

際チップ市場の状況では供給が需要より多い。主な原因は以下の通りである。1.米国、

オーストラリア、チリ、南アフリカ、ニュージーランドのチップ過剰生産。2.日本の海

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外におけるパルプ用造林が伐採期に入り、チップ供給量が増加。3.製紙メーカーの減産

である。

チップはパルプ・製紙産業の主原料である。中国におけるチップの生産、経営には 30 年

の長い歴史があり、この 10数年来、大きく発展を遂げたが、全体から見れば利用度は低く

10 % ~18 % 過ぎず世界の先進国の水準に及ばない。最近は需給が不均衡となって国内の

大型繊維板およびパルプ製造企業は海外からチップを輸入するようになった。

3.4.1 国産チップ

現在、チップの国内生産は伐採時の残材、製材および加工廃材の「3種の廃棄物」およ

び造林の早成ユーカリ林、間伐材などの「若令樹の薪(燃料用)材」を原料にしている。

伐採地の残材はチップ生産の主要な原料である。伐採地残材は収集後、一部は現場で剥

皮、チップ化、精選、積込、山元の仮土場を経て需要先に輸送し、生産に供している。残

余の分は山元仮土場で剥皮、チップ化、選別後、買い手先に輸送され生産に供する

(図 1)。

現地で皮剥ぎ、切片、選別

麓臨時貯蔵場へ輸送

伐採地余剰物を採集

買い手に輸送、臨時貯蔵、生産に投入

麓臨時貯蔵場へ輸送

貯蔵場で皮剥ぎ、切片、選別

図 1 伐採余剰物のチップ生産及びその過程

加工廃材には樹皮、木芯、木屑があるが、木屑は主として食用きのこの生産と燃料に利

用するが、樹皮と木芯も一定の用途がある。一部の大規模加工企業は自家でチップ化、精

選し、一旦、貯めて置いてある程度の量になると積載、チップの購入先に輸送するように

している。殆どの企業は加工廃材を収集、積載してチップの購入側に輸送し、購入先でチ

ップ化、精選を行い、生産に供する(図 2)。

切片、選別、臨時貯蔵

買い手へ輸送、臨時貯蔵、生産に投入

加工余剰物を収集

買い手へ輸送 切片、選別、臨時貯蔵、生産に投入

図 2 加工余剰物のチップ生産及びその過程

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しかし、現在の中国のチップ生産方式には多少、問題がある。「3つの廃棄物」の利用率

が低い。伐採基準として工業用木材の伐採に制約があり、また産業構造が不合理で、チッ

プの原料の掘起しは未だ不十分である。また輸入チップと加工廃材も窮屈である。チップ

の原料については、多くはまた山から原料を採取する段階にとどまっている。伐採地残材、

小径材、間伐材、生活圏から発生する大量の木材廃棄物(建築、住宅内装からの廃材、木製

包装箱など)が看過され、利用されていない。課税を通じて「3種の余剰物」の利用を喚起、

促進することが必要である。

現在、刻々と増加するチップ需要に対して産業レベルまでチップ生産を発展、促進させ、

林業の重要の部門としてチップ生産を重視し、チップ生産管理を深め、粗放な経営を集約

的経営に転換させてチップ生産企業全体の利益と業績を向上させ、資源優位のチップ産業

を隆盛させることが実現できよう。チップの生産を発展させるには、「3つの廃棄物」の利

用だけでは不十分なので、チップ生産計画を立て、チップ用林基地を造成し、森林資源を

合理的に利用することでチップ生産の集約化、工業化を実現するべきである。 3.4.2 輸入チップ

中国で天然林保護プロジェクトが実施されて以来、木材の輸入量が大幅に増加し、2007

年の原木の輸入量は 3,709 万? を越えた。近年、一部の大企業はチップと加工廃材の輸入

によって国内の供給不足を補っている。輸送はコンテナで国外から港、さらにトレーラー

で工場まで陸送する。(図 3) 最近の中国のチップ輸出量および輸入量は表 3-5に示した通

りで、うち輸入量は一途に増加傾向をとり、2006 年には始めて輸出量を 30 万t上回った。

2007 年の輸出入量の差は 92万tである。

臨時貯蔵、生産に投入

海運で輸入チップ、加工余剰物を港まで輸送

陸運で買い手へ輸送

切片、選別、臨時貯蔵、生産に投入

図 3 輸入チップ、加工余剰物のチップ生産及びその過程

表 3-5 最近の中国のチップ輸出入統計 (単位:万 BDT)

年 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

輸入量 0.13 0.21 0.15 0.28 0.12 0.36 5.23 27.97 30.27 87.13 89.54113.96

輸出量 184.87194.84 157.07160.10185.50 177.14155.99113.78 109.4288.07 59.62 21.45

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3.4.3 輸出チップ

中国のチップ輸出は地区別に二つに分けられる。一つは北方の雑広葉樹チップ、もう一

方は南方のユーカリ材チップである。北では3つの廃材と「潅木の薪材」、間伐材があり、

南方では早生多収穫の造林ユーカリ林をチップ生産の原料にしている。1988 年、広東省南

油経済発展会社は広東湛江港から初めで日本に中国のチップを輸出している。1988 年から

2000 年の 13年間に中国のチップ輸出は大きく伸びて、チップ総輸出量は 1,000.7 万 BDT と

なった。うち、日本には 571.4 万 BDT、韓国 220.1 万 BDT、台湾 209.2 万 BDTで、10数億ド

ルの外貨収入となり、20 万人あまりの雇用が実現した。チップの生産・輸出を発展させる

には、森林資源の育成、保護、その十分な利用、森林火災と病虫害の抑制、林業経済の発

展、森林地の安定に繋がる。

1995年から中国のチップ年間生産量は400万BDTに達し、生産額は20~25億元であるが、

うち輸出量は僅か 60~200 万 BDT であるから総額の 1/7 から 1/2 であって、年を追って減

少しつつある。(表 3-5)

ユーカリは早生多収穫樹種で、広東、広西、海南省などの地域で多く栽培されている。

10 数年の発展を経て現地の農民の早生多収穫のユーカリ樹種を栽培する意欲は強く、南方

のチップ生産はうまく循環しており、現地の林業発展の先導となっている。

国際的な木材パルプ生産大国の成功経験に鑑みると、パルプ製紙産業とチップ生産は相

互補完、相互促進の関係にある。例えば、スウェーデン、ロシア、米国の年間チップ生産

量は 3,000 から 4,000 万 BDT である。米国、オーストラリアは毎年 400 万 BDT あまりのチ

ップを輸出しており、チリ、南アフリカは毎年 150万 BDT である。

以前から中国の製紙パルプ産業の技術、設備は立ち遅れ、生産性は低く、少数の工場の

みが木材チップによって製紙パルプを生産しており、針葉樹原木とポプラ材チップを必要

としており、北方から輸出している硬質の雑広葉樹材や広葉樹チップの需要はない。中国

民衆の物質文化生活の水準向上と環境保護の要求が高まり、山東省の日照紙廠、広東省の

湛江紙廠、金光集団が海南省において生産を開始するなど中国の製紙工業が発展したため、

最近は中国のチップの需要が大幅に増加し、中国はチップ輸出国から輸入国に変わった。

3.4.4 2008 年 1~6月のチップ輸出入量の比較 (1)輸入事情

2008 年上半期、中国チップ輸入量は大幅に増加した。前年同期より量的には 1/4 強、金

額としては6割増加した。それとともに以前はチップ輸出大国であった中国は 2008 年 1~6

月まで輸出チップは量、金額ともに前年同期より 80%減少した。そのため中国のチップ貿易

の赤字は増加した(表 3-6)。

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表3-6 2008年1~6月期と前年同期の中国のチップ輸入状況

2008年 2007年 % 2008年 2007年 % 2008年 2007年 %針葉樹チップ 3,620 16,450 -78.0 57.7 214.6 -73.1 159.4 126.9 25.6

非針葉樹チップ 565,724 436,544 59.6 9,626.1 5,851.0 64.5 170.2 132.6 28.3

合計 569,344 452,994 25.7 9,683.8 6,065.6 59.7 170.1 132.4 28.5

品種 数量(BDT) 金額(万ドル) 単価(ドル/BDT)

表 3-6 によれば 2008 年 1~6 月のチップ輸入量を前年同期と比較すると、08 年上半期に

569,344tのチップを輸入し、07 年より 452,994t、すなわち 25.69% 増加した。その中、

非針葉樹チップ輸入量の増加分が非常に多く 565,724tを輸入しているから前年同期の

436,544tより 29.6% 増加している。これに対し針葉樹チップ輸入量の減少は非常に顕著で、

08年1~6月に3,620.1tを輸入しているから、前年同期の16,450tより78.0%も減少した。

2008 年上半期のチップ輸入額は 9,684 万ドルで前年同期の 6,066 万ドルより 59.7 % 増

加した。うち非針葉樹チップ輸入額は 9,627 万ドルで、前年同期の 5,851 万ドルより 64.52 %

増加した。08 年 1~6 月の針葉樹チップの輸入額は 57.7 万ドルで前年同期の 214.6 万ドル

より 73.1%減少した。

2008年上半期、チップの輸入単価は? 当り170.1ドルで前年同期の132.4ドルより28.5 %

増加した。つまり、上半期の国際市場ではチップの価格はt当り前年同期より 37.7 ドル高

くなった。うち針葉樹チップ輸入単価は? 当り 159.4 ドルで前年同期の 126.9 ドルで 25.6 %

上昇している。08 年 1~6 月の非針葉樹チップ輸入単価は? 当り 170.2 ドルで、前年同期の

132.6 ドルより 28.3 % 増加した。

以上のデータから 08 年 1~6 月にチップ輸入量および輸入額の増加は主として非針葉樹

チップの増加によっている。もともと針葉樹チップの輸入量は非針葉樹チップより少ない

が、両年の上半期を比較すると 78 % も低下している。国際市場における製紙用非針葉樹チ

ップの需要増に対して中国は国内的に供給を満たせないことがわかる。

(2)輸出状況

2008 年上半期に中国は 42,00.0tのチップを輸出し、前年同期の 183,570.7t より 77.1%

も減少した。針葉樹チップの減少が顕著で、08 年 1~6 月輸出した針葉樹チップ僅か 0.3t

で、前年同期の 15.0tより 98.2%減少した。非針葉樹チップの輸出も著しく減少し、08 年 1

~6 月に非針葉樹チップは 42,004.7t 輸出しているが、前年同期の 183,555.7t から 77.12%

も低下した(表 3-7)。

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表3-7 2008年1~6月と前年同期の中国のチップ輸出状況

2008年 2007年 % 2008年 2007年 % 2008年 2007年 %針葉樹チップ 0.3 15 -98.2 0 0.6 -100 414.4 -100

非針葉樹チップ 42,005 183,556 -77.1 510.9 2,173 -76.5 121.6 118.4 2.75

合計 42,005 183,571 -77.1 510.9 7,174 -76.5 121.6 118.4 2.72

品種 数量(BDT) 金額(万ドル) 単価(ドル/BDT)

2008 年上半期の中国のチップ輸出金額は 510.9 万ドルで、前年同期 2,173.6 万ドルより

76.5 % 減少した。うち非針葉樹チップ輸出額は 510.88 万ドルで、前年同期の 2,173.0 万

ドルより 76.5 % も減少した。上半期輸出量で極めて少ない針葉樹チップの輸出額はここに

は示されていないが、前年同期から 100 % 減少した。

2008 年上半期のチップ平均輸出価格は? 当り 121.6 ドルで、前年同期の 118.4 ドルより

2.7 % 増加し、08 年 1~6 月の非針葉樹チップは? 当り 121.6 ドルで、前年同期の 118.4ド

ルより 2.6 % 増加している。 (3)輸出入の比較

2008 年上半期の通関チップ輸出入全体の統計および輸出入の貿易差を比較、分析した結

果では、この期間のチップ輸入は 569,344tで、輸出の 42,005tに比べて 527,339t多い。

輸入総額は 9,683.7 万ドルで、輸出額の 510.9 万ドルより 9,172.9 万ドル多い。輸入単価

は上半期のチップのt当り輸入価格は 170.1 ドルで、輸出価格の 121.6 ドルより 48.5 ドル

高い(表 3-8)。 表3-8 2008年1~6月の中国のチップ輸出入の比較

2008年 2007年 % 2008年 2007年 % 2008年 2007年 %輸出 42,005 183,571 -77.1 510.9 2,173.6 -76.5 121.6 118.4 2.7輸入 569,344 452,994 25.7 9,683.7 6,065.6 59.7 170.1 132.4 28.5合計 -527,339 -269,423 -9,172.9 -3,892.0 -48.5 -14.0

輸出入 数量(BDT) 金額(万ドル) 単価(ドル/BDT)

2008 年上半期の輸出入チップの数量、金額および単価の3つを比較すると以下のような

結論が得られる:第一は、近年中国の森林資源を重視、保護することによってチップのよ

うな木材資源を消費する物資の輸出を禁止、制限する政策がとられ中国のチップ輸出は減

少している。それに対しチップ輸入は増加している。これは 08 年上半期の中国の貿易赤字

をつくる主な原因ともなっている。第二は、中国の製紙産業は輸入チップより国内チップ

を利用する方がコストの節減になる。森林資源を保護するという面からは輸入チップを使

用することは中国の製紙産業の原料構成を調整し、木材不足の実情に適うものである、し

かし、長期的に勘案すれば中国の林紙一体化プロジェクトを速やかに実施し、逐次、輸入

依存を減らすべきである。

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3.5 非木材製紙原料

中国の製紙産業はかなりの期間、非木繊維原料を使用しなければならない。製紙産業は

木材パルプの使用量の増加を図る一方、草本パルプなど非木繊維原料を合理的に利用しな

ければならず、あし、竹、バガスなどの原料の利用を重点的に進めるべきである。中国は

アシ類の生育地を強化し、生育の悪い地域を改善、単位面積当りの生産の向上に努め、あ

しの植裁面積を広げている。同時に非木材繊維による製紙上の問題にも取り組んでおり、

科学技術の導入を推進し、機械設備の水準と技術研究の向上を図り、経済的合理性を進展

し、汚染の少ない品質的に高級な製品を開発し、紙製品に対する需要を満たすべきである。

山東省造紙工業研究設計院と山東省の光華紙業集団有限公司が開発した非木材パルプによ

る高品質アート紙、オフセット用紙や高級カラー印刷用軽量コート紙の出現は非木繊維の

総合的利用に新たな道を創出した。

しかし、非木材植物繊維の特性からすると、例えば稲わら、あし類などは良質の製紙原

料にはならない。ところが、南荻(オギの 1 種)からは非常に良質な繊維が得られる。製紙

原料において非木材繊維の占める比率は大きくなりつつあり、現在、製紙用繊維原料の 6.5 %

を占め、2010 年には 7.5 % に達する見込みである。

南荻はかなり良質な製紙原料として持続的に多量に利用できる製紙資源である。南荻属

はイネ科の多年生で大型のオギ属植物である。国際的にも利用価値、将来性のある「新経

済的作物」として認められている。中国南部に広く分布し、大型で毎年 5 m ~ 7 m も成長

し、直径 2 cm~3 cmで1畝当り 1,500 kg 程度生産される。茎幹の繊維細胞量は 45 % ~65 %

で、繊維長は平均 3 mm、最長 6.8 mm で、繊維長/繊維幅の比は l82 である。その生産量、

品質はあし、麻類、モウソウチク、ポプラ、ヤナギよりもよく、製紙用に良質な原料であ

る。凡その試算では1ha 当り約 15 tの製紙パルプシートが生産できる。表 3-9に製紙原料

としての主要な性質を示す。 表3-9 製紙原料として主要な性質

種類 平均繊維長(mm) 灰分(%) リグニン(%) 繊維素(%) わら 0.5 14-20 12-14 28-36 あし 1.0-1.8 3-6 18-22 33-43 竹 3.0-4.0 1-3 22-30 50

針葉樹 2.7-4.6 1 26-30 40-45 広葉樹 0.7-1.6 1 18-25 38-49 南荻 3 2-4 17-20 38-45

南荻の漂白、叩解、抄紙試験の結果によると、叩解による濾水度の向上は良好で。抄紙

性も良く、叩解広葉樹パルプに近く、紙質もかなり良い (表 3-10)

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表3-10 南荻と他の繊維原料の性質との比較 項目 叩解度 SR 白色度% 裂断長 m 比破裂強さ 比引裂き強さ

南荻パルプ 40 70.2 6,398 5.91 7.12 わらパルプ 40 74.4 5,789 5.63 6.95 あしパルプ 40 75.7 5,664 5.28 6.68 広葉樹パルプ 40 76.4 6,524 6.12 7.80

南荻の化学成分と繊維形態の試験によると、繊維素含有量は高く、リグニン含有量は低

く、繊維は長くてその分布も良好で、これらの面から製紙原料として良好である。叩解、

抄紙して得られる紙は引裂き強さ、抗張力が高く、上質の紙の抄造に適しており木材繊維

の代替として各種の紙を製造が可能である。

わらを原料に発酵法によって毛頭紙、包装紙、爆竹紙、黄板紙など各種の紙が製造でき、

板紙に加工し易く、扱い易く、投資が少なく、コストも低く、利益は高い点で優れている。

遼寧省の製紙工業の原料は草本の繊維を中心にしているのが特徴で、あしが 34%を占め、わ

ら、その他の草本繊維が 18%で木材はわずか 18%であって、市販パルプは 9.5%、屑棉、屑麻、

ぼろ布が 6.1%、古紙が約 14%である。遼寧省はわら資源に恵まれていて製紙工業の需要を

満たせるが、あしや木材資源は不足しており、あしは需要のほぼ 45%しか供給できないので

毎年省外からあしを大量に購入している。

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第 4章 用材林資源事情

中国は国土が広く、気候は地域で差が大きく、植物の種類が多く、森林資源、種類に富

み、森林分布は顕著である。中国内陸は北から南にかけて主に針葉樹林、針広混交林、落

葉広葉樹林、常緑広葉樹林、熱帯降雨林など多彩な森林景観を呈している。半世紀あまり

の経営を経て、中国林業は大いなる発展を遂げたのである。(天然林保護や退耕還林などの

六大重点的なプロジェクトの実施および全国民義務植林の展開により、中国の森林面積、

森林の内容、森林蓄積および森林被覆率は明らかに向上した。)

4.1 森林資源事情

第6回森林資源統計(1999-2003年)の結果によると、全国森林面積は17,490.92万 haで、

森林被覆率は 18.21%、樹木総蓄積量は 136.18 億? 、森林蓄積量は 124.56 億? である。中

国の森林面積は世界 5 位で、森林蓄積は世界 6 位である。香港、マカオ特別行政区および

台湾省以外、全国天然林面積は 1 億 1,576.20 万 ha、蓄積は 105.93 億? 、人工林面積(立

木地面積)5,325.73 万 ha、蓄積 15.05 億? で、人工林面積は世界一位となった。現在中国

で製紙原料として利用されているのは松、ポプラ、ユーカリである。

4.2 森林資源賦存量 4.2.1 用材林資源現状

近年大規模な植林により、製紙産業のため大量な原料資源が増加した。建国後、特に改

革開放以来、中国の植林は絶え間なく続いてきた。今、中国人工造林面積は 4,666.69 万 ha、

世界1位にランクインされ、毎年 400 万 ha の速度で拡大している。成林した人工林の中、

林分面積は 2,914.42 万 ha で、総面積の 62.45%を占める。製紙原料として使用できる人工

林面積は 2,415.08万 ha で、蓄積は 8億 3,438.72 万? である。うち、中幼齢林面積は 85.5%

を占め、蓄積は 71.7%で、近熟、成熟、過熟林面積は 14.5%を占め、蓄積は 28.3%である。

現在の人工製紙用材林資源を毎年1ha 平均 3 ? の成長で計算すると、毎年成長林分は

7,245.24 万? の蓄積で 5,071.67 万? の製紙材料を提供できる(出材歩留まり 70%で計算)。

植林した 990.96 万 ha の早成多収穫林1ha は年平均 12 ? の成長量から計算すれば、毎年成

長林分蓄積は 1億 1,892 万? で、8,324 万? の製紙材料を提供でき、合計 1億 1,315 万? 3の

製紙材料、2,514 万 t の木材パルプ(1t 4.5 ? の消費量で計算)を生産できる。2007 年の国

内木材パルプ生産量の 4 倍である。中国六大重点的なプロジェクトの実施に伴い、人工林

資源は一層増加し、中国の木材パルプ製紙産業の発展により多くの資源を提供できる。

3 ((2,415.08-990.96)万 ha×3m3/ha+990.96 万 ha×12m3/ha)×70%

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4.2.2 原料林資源発展計画

国家林業局の「重点地区早成多収穫林森林造成プロジェクト計画書」 (審議中)によると、

2001 年から 2015 年まで、二つの段階に分かれ、三つの時期を経て、十五年の努力で、18

省内に、高投入、高産出、高度集約化経営、企業化、市場化、商品化を通じて、586 万 ha

の紙パルプ材基地を含む 1,333 万 ha の早成多収穫用材林を設ける。

紙パルプ材は主に以下四つの地域に分布している:① ? ?粤桂 地区。広東、広西、海南

および福建 4 省を含み、ユーカリ4、相思樹(タイワンアカシア)5、? ? ? ? 6、馬尾松7な

どの樹種を紙パルプ用材林として栽培している。②揚子江中下流地区。江蘇、浙江、安徽、

江西、湖北、湖南省および雲南思茅地区も含み、新造および栽培方式を変えることで、ポ

プラ、池杉8、ユーカリ、馬尾松、火炬松9、湿地松10、雲南松11、思茅松12などの樹種を紙パ

ルプ用材林として栽培している。③黄河中下流地区。河南、河北、山東 3 省を含む黄河流

域、および淮河、海河流域の豫東、冀中、冀南、魯西地区では、主に三倍体毛白ポプラ、

意楊、沙蘭楊を紙パルプ用材林として栽培している:④東北、内モンゴル地区。黒竜江、

吉林、内モンゴル大興安嶺、大興安嶺林業会社などの国有森林地、および吉林、遼寧の集

団森林地では、ナガバドロ、甘ポプラ、チョウセンヤマアラシおよび各唐松を紙パルプ用

材林として栽培する。紙パルプ用材基地落成後、年間1ha 平均 15 ? の成長量の国際標準を

参考に、毎年製紙用材林の蓄積は 8,790 万? 増加し、約 6,000万? の製紙材料、1,300万 t

あまりの木材パルプを提供できる。

4.2.3 用材林優勢樹種

早成多収穫用材森林を造成するには樹種や植林方式の選択は非常に重要である。長年の

研究および実験を通じ、中国の林業専門家および企業経営者は製紙原料材としての将来性

のある早成樹種およびその栽培方式を探り出したのである。北では早成多収穫のポプラを

主要樹種として植林している。三倍体毛白ポプラは他のポプラと比べ、早成、良質、病虫

に対する抵抗力が強く、利用率も高くなっている。5 年生の三倍体毛白ポプラ蓄積は1ha

ごとに 150~300 ? に達し、普通ポプラの 2~3 倍で、現在、世界の製紙原料用ポプラの中

で成長周期の最も短い多収穫樹種である。黄、淮、海地区における三倍体毛白ポプラの栽

4 E.grandis×E.urophylla:推定 5 タイワンアカシア Acacia confusa 6 カリビアマツ Pinus caribae 7台湾アカマツ Pinus massoniana 8 ポンドサイプレス Taxiodium ascendens 9 テーダマツ Pinus taeda 10 スラッシュパイン Pinus elliottii 11雲南マツ Pinus yunnanensis 12 カシアマツ Pinus kesya

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培は顕著な社会経済効果を収めた。岳陽製紙集団は洞庭湖地区で早成、耐水、耐旱、痩せ

た土壌に適する? ? 13を製紙材料として植林している。? ? は年間平均で 1.37~2.09m 成長

し、直径は 1.52~1.98cm で、6 年生の樹木ごとの蓄積は 0.0537 ? 、12 年生の樹木ごとの

蓄積は 0.2417 ? である。10 年の造林で、1ha 森林材積 272.4 ? に達する。南のユーカリ

と馬占相思樹(台湾アカシア)、輸入した早成樹種例えば地松、カリビア松、郷土早成樹種

などは近年成功している製紙用樹種である。その他、中国の中南部地区では馬尾松と杉14も

広く分布している。

4.3 森林資源の地区分布

半世紀にわたる森林経営により、中国林業は大いなる発展を遂げ、森林面積、品質、立

木蓄積量および森林被覆率は明らかに向上した。北から南まで針葉樹林、針広混交林、落

葉広葉樹林、常緑広葉樹林、熱帯降雨林の分布で壮麗多彩な景観となった。長年の活動に

より、中国の森林資源は東南部に集中し、うち東北の内モンゴル、四川、雲南の国有林お

よび南 10 省の集団林区では一番多い。全国立木総蓄積は 117.9 億? で、林分蓄積は 101.4

億? である。うち針葉樹蓄積量は 57.0億? で、広葉林蓄積量は 44.4 億? である。

4.3.1 東北内モンゴル国有森林地

黒竜江、吉林、遼寧および内モンゴル自治区、大、小興安嶺、長白山などの中国主要用

材林生産基地を含み、当該森林は中国最大の国有林である。当該地区の林業用地は 6,229

万 ha で、森林面積は 4,664 万 ha である。森林被覆率は 20.3%で、うち黒竜江の森林被覆率

は 35.6%、吉林は 33.6%、遼寧は 26.9%、内モンゴル自治区は 12.1%である。林分面積は 3,561

万 ha で、うち用材林は 3,210 万 ha、林分総面積の 90.1%を占める。当該地区の森林総蓄積

は 34.8 億? で、うち林分蓄積は 30.0 億? である。林分のうち、用材林蓄積は 26.8 億? で、

林分蓄積の 89.4%を占める。

4.3.2 四川雲南国有林

四川、雲南を及ぶ林業用地総面積は 5,108 万 ha で、森林被覆率は 22.1%である。うち四

川省の森林被覆率は 20.4%、云南は 24.6%である。林分面積は 1,895 万 ha で、うち用材林

は 1,243 万 ha、林分総面積の 65.6%を占める。四川雲南国有林の森林総蓄積は 28.228 億?

で、うち林分は 24.1 億? である。林分のうち、用材林は 14.0 億? で、林分総蓄積の 58.0%

を占める。

4.3.3 南 10省(区)集団林

南 10 省区の集団林というのは広東、広西、湖南、湖北、江西、福建、江蘇、浙江、安徽、

13 ハンノキ:Alnus japonica 江南? 木:Alnus trabeculosa 14 コウヨウザン Cunninghamia lanceolata

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海南など 10 省の丘陵地を指す。当該森林地では、現在の林業用地は 8,184 万 ha で、全国

林業用地総面積の 31.9%を占める。有林地面積は 4,664 万 ha、森林被覆率は 31.6%で、うち

広東の森林被覆率は 36.2%、広西は 25.3%、湖南は 32.8%、湖北は 21.2%、江西は 40.4%、福

建は 50.6%、江蘇は 4.0%、浙江は 43.0%、安徽は 16.3%、海南は 31.3%である。全地区森林

総蓄積は 18.3 億 m3で、うち林分蓄積は 14.6億 m3である。林分のうち、用材林蓄積は 12.3

億? で、林分総蓄積の 84.1%を占める。

4.3.4 チベット自治区国有森林地

立木地面積(コントロール線以外は除外)は 396万 ha で、森林被覆率は 3.5%である。

4.3.5 他の省、市

立木地面積は 2,041万 ha で、森林被覆率は 5.0%である。

4.4 主要樹種の森林資源量

第六回全国森林資源統計によると、優勢樹種別で、クヌギ類、馬尾松、杉、カバ、カラ

マツ、この 5つの優勢樹種の植林面積、蓄積の占める割合が多く、合計 7,131 万 ha で、林

分面積の 49.94%を占める。蓄積は合計 44.9 億? で、林分蓄積の 37.2%を占める。

天然林の各優勢針葉樹種は主に杉、馬尾松およびカラマツである。その面積は 4,745 万

ha、蓄積は 54.2 億? で、天然林面積の 42.9%、蓄積の 51.2%を占める。広葉樹林は主にカ

バ、クヌギなどの硬広葉類で、その面積は 6,304 万 ha に、蓄積は 51.8 億? に達し、天然

林面積の 57.1%、蓄積の 48.9%を占める。

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30

第 5章 中国における植林の現状およびその動向

製紙産業を全国的に分析すれば、北から南への調整を要し、合理的な新しい産業構成を

図っていく。長江を起点に南の方は製紙産業発展の重点地域であるため、林紙一体化プロ

ジェクトの実施を中心に、紙パルプ製造、製紙産業発展のペースを促進する。東南沿海地

域も林紙一体化実施の重点地域である。揚子江中下流地域では植林あるいは大型林紙一体

化実施主体の導入を進めていく。西南地域では、木、竹資源を合理的に利用し、木材パル

プ、竹パルプを有効に活用していく。長江デルタ地帯および珠江デルタ地帯では、国内外

のパルプ、古紙資源を有効に活用していく。揚子江北部は製紙産業の構造調整が優れた地

域である。黄淮海地域では、立ち遅れた草本パルプの生産能力を淘汰し、市販木材パルプ

および古紙の利用を推進し、林紙一体化を推進していく。東北地域では製紙原料用森林造

成を早め、原則としては新規の紙パルプ製造、製紙企業を創設しない。西北地域では製紙

産業の統合を早め、生産設備の能力拡大を厳格に取り締まるべきである。重点的環境保護

地域、深刻な水不足におかれた地域、大都市では新たなパルプ製造、製紙プロジェクトを

設けない。水不足問題の深刻な地域では灌漑型の製紙原料用森林の造成は厳禁する。

5.1 中国国内植林面積推移

中国人工林資源面積は(人工有林地、人工未成林造林地、人工疎林地)5,940 万 ha で、全

国林業用地面積の 21.0%を占める。全国人工林資源総蓄積は 15.2 億 m3で、全国活森林総蓄

積の 11.5%を占める。

5.1.1 人工林資源面積

人工林資源総面積のうち、立木地面積は 5,326 万 ha で、総面積の 89.66%を占める(全国

有林地面積の 31.5%を占める)。未成林植林地面積は 489 万 ha で、総面積の 8.24%を占める。

人工疎林地面積は 125.0 万 haで、総面積の 2.1%を占める。(図 5-1)。

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31

中国人工林資源面積構成

89.66%

8.24% 2.10%

有林地面積未成林造林地人工疎林地

図 5-1 中国人工林資源面積構造

人工林の立木地面積のうち、林分面積は 3,229 万 ha で、総面積の 60.6%を占める。経済

林面積は 1,931 万 ha で、総面積の 36.3%を占める。竹林面積 165 万 ha で、総面積の 3.1%

を占める。人工林分は全国林分の 22.3%、経済林分は全国経済林の 90.3%、竹林分は全国竹

林面積の 33.1%を占める。所属別では、国有林地面積は 890 万 ha で、人工有林地面積の 16.7%

を占める。集団林地面積は 4,437 万 haで、同 83.3%を占める。

林齢別では、幼齢林面積は 1,300 万 ha、中齢林面積は 1,200 万 ha、近熟林面積は 443 万

ha、成熟林面積は 241 万 ha、過熟林面積は 46 万 ha である。人工林分は主に幼中齢林であ

り、その面積は総面積の 77.4%を占める(図 5-2)。

林分面積:林齢別区分

41%

37%

14%

7% 1%

幼齢林中齢林近熟林成熟林過熟林

図 5-2 人工林年齢区分による森林割合

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32

林種別では、用材林面積は 2,318 万 ha、防護林面積は 812 万 ha、薪炭林面積 48 万 ha、

特用林面積は 52 万 ha である。人工林分は主に用材林であり、その次は防護林で、薪炭林

および特用林の占める割合は少ない。(図 5-3)

林分面積:林種別区分

72%

25%

1% 2%

用材林防護林薪炭林特用林

図 5-3 林種別人工林面積構成

5.1.2 人工林資源の蓄積

人工林資源蓄積のうち、人工林蓄積は 15.0 億? で、総蓄積の 99.1%を占める。人工疎林

蓄積は 1,387 万? で、総蓄積の 0.9%を占める。

林齢別では、幼齢林蓄積は 2.9 億? 、中齢林蓄積は 6.7 億? 、近熟林蓄積は 3.1 億? 、

成熟林蓄積は 1.9 億? 、過熟林蓄積は 3,150 万? で、それぞれ人工林蓄積の 19.5%、44.6%、

20.8%、12.9%、2.1%を占める。うち幼中齢林蓄積は人工林蓄積の 2/3 を占めている。

林種別では、用材林蓄積は 11.5 億? 、防護林蓄積は 0.32 億? 、薪炭林蓄積は 400 万? 、

特用林蓄積は 0.31 億? で、それぞれ人工林分蓄積の 94.4%、2.7%、0.3%、2.6%を占める。(図

5-4)。

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33

林分蓄積:林種別区分

94.4%

2.6%0.3%

2.7%

用材林防護林薪炭林特用林

図 5-4 中国人工林分各林種の蓄積構造

5.2 植林主体別の植林面積

植林主体別では、国有人工林蓄積は 4.7 億? 、集団人工林蓄積は 6.4 億? 、個人人工林

蓄積は3.7億? 、その他の人工林蓄積は1,797万? で、それぞれ人工林蓄積の31.5%、42.7%、

24.6%、1.2%を占める(図 5-5)。

林分蓄積:植林主体別

31.5%

42.7%

24.6%1.2%

国有林集団林個人その他

図 5-5 中国人工林植林主体構造

5.3 地域別の植林面積

人工林分の多くは広東、湖南、福建、内モンゴル、広西、四川などの省に分布しており、

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上海、チベット、青海、天津、寧夏、北京などの省での分布面積は少ない。人工林分布の

多い省での分布面積は合計全国人工林分面積の 45.0%を占め、少ない省での分布面積は 0.9%

である。広東省の分布面積は 285 万 ha で、全国人工林分面積の 8.8%を占め、面積の最も多

い省となる。上海市の分布面積は 0.6 万 ha で、全国人工林分面積の 0.02%と分布面積は最

も少ない。

人工林分蓄積の比較的多く分布しているのは福建、広西、湖南、広東、四川、江西など

の省で、上海、寧夏、天津、チベット、青海、北京などの省での蓄積分布面積は比較的少

ない。蓄積分布の多い省での分布面積は合計全国蓄積の 48.3%を占め、少ない省での分布面

積は同 0.8%を占める。うち福建省の蓄積は 1.8 億 m3 で、全国蓄積の 12.0%を占め、分布蓄

積の最も多い省となる。上海市の蓄積は 33.2 万 m3で、全国蓄積の 0.02%を占め、分布蓄積

の最も少ない省となる。

5.4 早成樹種の植林事情

中国では紙パルプの供給および製紙原料の生産能力が不足しているため、木材繊維原料

は輸入に頼らざるを得ない。それで、中国政府は一連の措置を講じて、国内の木材生産量

を伸ばすことにした。主要措置として、国内で早成多収穫林を造成し、サービス政策の提

供で木材繊維の品質、紙パルプ、木材加工の外資を招聘する。広西の早成ユーカリの栽培

は一つの例である。

5.4.1 早成樹種植林地

「十五」期間、中国は合計早成多収穫用材林を 35.70 万 ha 造成した。うち荒廃地で 18.67

万 ha の森林地を造成した。育成目的別で、紙パルプ用材林は 7.61 万 ha、人造板用材林は

11.00 万 ha、大径用材林は 6.08 万 ha、ほかの工業用材林は 11.01 万 ha である。プロジェ

クトの実施により、中国木材の供給需要矛盾の更なる緩和、林業生態体系と林業産業体系

との協調、資源造成と加工利用との結合、農村経済構造の調整が図れたのである。

早生樹種造林基地は主に四つのブロックに分かれる:

(1)粤桂? ? 地域、広東、広西、海南、福建 4省を含み、ユーカリ、相思樹、馬尾松などの

樹種を主要紙パルプ原料として栽培している。

(2)揚子江中下流地区。江蘇、浙江、安徽、江西、湖北、湖南省および雲南思茅地区を含み、

新造および栽培方式を変えることで、ポプラ、池杉、ユーカリ、クスノキ、馬尾松、火炬

松、湿地松、雲南松、思茅松などの樹種を紙パルプ用材林として栽培する。

(3)黄河中下流地区。河南、河北、山東 3省を含む黄河流域、および淮河、海河流域の豫東、

冀中、冀南、魯西地区では、主に三倍体毛白ポプラ、意楊、沙蘭楊を紙パルプ用材林とし

て植林している。

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35

(4)東北、内モンゴル地区。黒竜江、吉林、内モンゴル大興安嶺、大興安嶺林業会社などの

国有森林地および吉林、遼寧の集団森林地では、ナガバドロ、甘ポプラ、チョウセンヤマ

アラシおよび各唐松を紙パルプ用材林として植林している。

5.4.2 4種類の早成樹の主要分布地域

中国のユーカリ、ポプラ、杉、馬尾松の四つの早成樹の主要分布地域(図 5-6、図 5-7、

図 5-8、図 5-9)

図 5-6 中国ユーカリ主要分布地域(1)

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図 5-7 中国ポプラ主要分布地域(2)

図 5-8 中国杉主要分布地域(3)

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図 5-9 中国馬尾松主要分布地域(4)

5.4.3 早成樹種の面積および蓄積

中国人工林分各早成樹種のうち、針葉樹林は杉、馬尾松、カラマツを主要樹種としてお

り、杉の植林面積は 922 万 ha で、総面積の 28.5%を占める。馬尾松の面積は 583 万 ha で、

総面積の 18.2%を占める。カラマツの面積は 270 万 ha で、総面積の 8.4%を占める。広葉樹

林はポプラおよび硬広葉樹類を主要樹種としており、ポプラの面積は 414 万 haで、総面積

の 12.8%を占める、硬広葉樹類林の面積は 148万 haで、総面積の 4.6%を占める。

杉の植林地の蓄積は 5.6 億? で、総蓄積の 37.4%を占める。馬尾松の蓄積は 2.0 億? で、

総蓄積の 13.4%を占める。カラマツの蓄積は 1.5 億? で、総蓄積の 10.0%を占める。広葉樹

林はポプラを主要樹種としておりポプラの蓄積は 2.0 億? で、総蓄積の 13.5%を占める。

中国馬尾松、杉、ポプラ、ユーカリの四つの早成優勢樹種(面積の大きさの順位で)の各

年齢別面積蓄積統計は表 5-1、表 5-2、表 5-3、表 5-4 の通りである。

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表 5-1 用材林優勢樹種としての馬尾松の各年齢別面積蓄積統計

統計項目(? 位)

面積合計(千ha)

蓄積合計(千? )

幼齢林面積(千ha)

幼齢林蓄積(千? )

中齢林面積(千ha)

中齢林蓄積(千? )

近熟林面積(千ha)

近熟林蓄積

(千? )

成熟林面積(千ha)

成熟林蓄積(千? )

過熟林面積(千ha)

過熟林蓄積

(千? )

全国合計 13,035 515,367 4,496 92,294 5,852 233,760 2,001 129,019 649 54,662 39 5,631

広西 2,354 94,989 759 10,955 1,043 41,601 355 25,116 183 15,624 15 1,693湖南 1,867 62,814 355 4,101 1,143 35,549 282 17,218 83 5,649 3 297湖北 1,357 49,891 544 12,810 592 25,923 186 9,052 35 2,107 0 0広東 1,343 42,150 235 2,688 609 17,224 388 15,923 106 6,148 5 167江西 1,306 45,477 743 19,028 480 18,902 64 4,942 13 668 6 1,938浙江 1,248 41,469 515 6,588 539 21,408 163 10,547 31 2,926 0 0福建 1,147 70,494 207 3,790 522 24,107 267 23,902 144 17,534 7 1,161安徽 788 27,864 428 9,073 303 13,939 49 3,883 7 716 1 253貴州 740 38,351 442 16,618 228 15,714 64 5,535 6 485 0 0四川 496 26,861 78 2,023 233 11,871 151 10,665 34 2,303 0 0河南 155 4,689 98 2,402 52 1,836 5 451 0 0 0 0? 西 115 3,766 61 1,224 45 2,001 10 541 0 0 0 0重慶 77 4,160 21 493 43 2,399 11 994 2 273 0 0江蘇 25 1,056 2 53 12 606 6 167 5 230 0 0海南 18 1,337 7 450 8 681 1 84 0 0 1 122

表 5-2 用材林優勢樹種としての杉の各年齢別面積蓄積統計

統計項目

(? 位)

面積合計

(千ha)

蓄積合計

(千? )

幼齢林面積

(千ha)

幼齢林蓄積

(千? )

中齢林面積

(千ha)

中齢林蓄積

(千? )

近熟林面積

(千ha)

近熟林蓄積

(千? )

成熟林面積

(千ha)

成熟林蓄積

(千? )

過熟林面積

(千ha)

過熟林蓄積

(千? )

全国合計 12,146 665,449 3,370 78,620 6,232 360,918 1,567 122,490 909 87,568 117 10,672

湖南 2,661 122,961 657 13,549 1,319 59,937 349 23,540 295 22,349 42 2,585江西 2,279 115,919 352 5,538 1,517 77,615 243 18,646 141 11,493 26 2,628福建 1,737 151,278 303 6,541 977 87,770 306 32,650 144 20,032 7 1,286広西 1,379 92,213 678 27,027 394 37,380 207 16,086 96 11,558 5 162浙江 1,083 34,126 333 2,909 575 17,770 141 7,427 65 4,806 17 1,215広東 835 44,831 273 5,617 369 22,778 120 8,616 72 7,821 0 0貴州 631 33,275 202 3,949 323 18,805 71 6,079 29 3,316 6 1,126安徽 563 26,320 213 4,309 270 14,833 52 4,055 27 3,003 1 120湖北 352 11,113 163 2,376 150 6,391 19 1,032 19 131 0 0四川 272 13,600 49 563 175 7,916 34 2,339 5 1,748 10 1,034雲南 240 15,340 120 5,846 110 7,607 5 1,271 5 616 0 0? 西 54 1,447 13 95 26 829 13 358 3 166 0 0江蘇 20 872 1 53 6 172 6 306 7 341 0 0重慶 19 1,289 5 68 8 443 2 73 2 190 3 517河南 16 574 7 149 10 412 0 13 0 0 0 0海南 5 291 2 31 2 260 0 0 0 0 0 0

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39

表 5-3 用材林優勢樹種としてのポプラの各年齢別面積蓄積統計

統計項目

(? 位)

面積合計(千ha)

蓄積合計

(千? )

幼齢林面積(千ha)

幼齢林蓄積(千? )

中齢林面積(千ha)

中齢林蓄積(千? )

近熟林面積

(千ha)

近熟林蓄積(千? )

成熟林面積(千ha)

成熟林蓄積(千? )

過熟林面積(千ha)

過熟林蓄積

(千? )

全国合計

3,094 193,310 929 24,745 888 59,747 551 39,293 461 41,827 266 27,698

内モンゴル 874 42,864 203 3,241 256 14,875 210 10,217 171 13,512 33 1,019

黒竜江 668 51,984 218 4,225 198 17,678 101 10,266 64 8,358 87 11,457吉林 291 26,997 73 2,106 51 4,076 58 5,103 81 9,594 28 6,118河南 195 13,157 61 2,291 98 7,226 31 3,119 5 521 0 0江蘇 178 9,058 71 2,081 98 6,147 8 769 1 61 0 0? 西 170 9,664 10 64 22 528 42 2,212 38 2,725 58 4,134山東 149 9,758 125 7,029 18 1,898 5 554 0 0 2 277遼寧 130 5,886 41 524 10 170 25 1,328 38 2,445 16 1,420山西 82 2,024 19 234 33 951 10 360 11 372 10 108安徽 70 4,571 24 788 32 2,220 12 1,412 2 150 0 0河北 66 4,131 21 1,181 15 979 8 953 18 843 5 175四川 53 5,231 5 0 0 0 15 1,450 10 1,201 24 2,580貴州 51 2,498 26 454 13 683 6 324 3 675 3 362湖北 38 1,516 13 120 19 1,256 3 39 3 102 0 0

チベット

20 331 5 43 5 33 5 216 5 40 0 0

甘? 18 1,453 2 56 4 134 3 173 9 1,090 0 0青海 10 682 2 74 7 502 0 42 1 64 0 0雲南 10 445 0 0 5 163 5 282 0 0 0 0北京 7 363 3 32 1 135 2 72 1 76 0 48新疆 7 595 2 110 2 81 2 403 0 0 0 0寧夏 7 99 6 92 0 8 0 0 0 0 0 0天津 0 5 0 0 0 5 0 0 0 0 0 0

表 5-4 用材林優勢樹種としてのユーカリの各年齢別面積蓄積統計

統計項目

(? 位)

面積合計

(千ha)

蓄積合計

(千? )

幼齢林面積

(千ha)

幼齢林蓄積(千? )

中齢林面積(千ha)

中齢林蓄積

(千? )

近熟林面積

(千ha)

近熟林蓄積

(千? )

成熟林面積(千ha)

成熟林蓄積(千? )

過熟林面積

(千ha)

過熟林蓄積

(千? )

全国合計 716 16,744 358 3,714 198 5,966 117 4,211 35 2,455 2 398

広東省 374 8,636 206 2,528 91 3,370 72 2,592 5 146 0 0海南省 148 4,438 55 340 64 1,865 17 1,000 4 836 2 398広西区 139 2,165 67 291 29 436 29 590 14 848 0 0四川省 19 602 10 38 0 0 0 0 10 564 0 0雲南省 19 673 5 348 14 294 0 30 0 0 0 0福建省 17 231 14 169 0 0 0 0 2 62 0 0 5.5 中国における外資系企業の植林事情

製紙企業は生産規模の拡大および本国での原料不足問題、製品市場拡大のため、製紙企

業の多くが海外で市場を開拓してきた。海外で自社の原料基地または林業会社を設けるこ

とで、本国の製紙林産業の規模の拡大および国際化を実現し、本国の企業、製紙産業の発

展を保証し、森林資源、環境、生態を保護できたのである。

国外大手製紙林産企業は中国製紙産業の発展潜在能力および膨大な消費市場に目をつけ、

中国での市場開拓を始めた。例として、インドネシアの金光グループは中国で製紙事業グ

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ループの拡大を図るため、中国で幅広く原料基地を造成している。日本の王子製紙、米国

の三元、泰(タイ)国の順和順などは次々と中国で「エンクロージャ」(植林用地確保)を

起こし、製紙林産業を発展させている。フィンランドの製紙林産業は国内外で会社の創設、

合併を通じて、より多くの原材料の確保、輸送距離、納期の短縮、コストダウン、サービ

スの改善、市場の開拓を達成した。フィンランド三大製紙集団のストラ・エンソ、UPM は中

国で原料用の森林を造成し、独自の資本で製紙工場を建設した。

2006 年、インドネシア金光集団傘下の海南金海パルプ製紙有限会社 (以下「金海パルプ

会社」と略称する)は雲南の関連部門に雲南開発投資会社(以下「省投資会社」と略称する)

の所有する雲南雲景林紙株式会社の国有株を購入すると協議した。株価について交渉した

後、双方は早速「株譲渡協議」および「株式増資計画に関する協議」を調印したのである。

二つの協議によると、省の投資会社は 100 万畝(注:1ha=15畝)の国有森林地を含む 58%

の株を金海パルプ会社に譲渡し、協議価格は 5 億元にした。しかし、その後、金光集団は

違法回収合併の嫌疑で、この協議は中断した。

例 1:中国におけるインドネシア金光集団の投資造林 インドネシア金光グループの投資はアジア、北米、ヨーロッパ、オーストラリアなどに

及んでいる。差し当たり、グループの発展により、形成した四大中核産業は:パルプ・製紙、金融、農業、食品加工、不動産業である。 インドネシアで著名な財団??金光グループ(Sinar Mas Group)はアジアで有名な中国人企

業家黄奕聡氏によって創設された。その業務は主に、パルプ・製紙、農業、食品加工、不動産業である。うちアジア紙パルプ製紙有限会社 (Asia Pulp & Paper Co., Ltd.略称 APP)が紙パルプ製造、製紙産業を主導している。30 年間の努力で、APP は今や世界の製紙産業で上位 10 社に入り、総資産は 100 億ドル余りで、年間の生産および加工能力は約 1,000万トン余りである。 1992 年から、APP は揚子江デルタ地帯、珠江デルタ地帯に重点的に投資し、前後して金

東、寧波中華、金華盛、金紅葉、海南金海をはじめ、世界で先進的な大型のパルプ・製紙企業を創設し、また大規模な早成林を造成している。 現在、APPは中国で 17 社の資本または持ち株の紙パルプ・製紙企業を有し、20ヶ所あま

りの森林を造成しており、総資産は約 540 億人民元である。年間の加工生産能力は約 500万トンで、2004 年中国においての販売額は 150 億元を超え、2 万人あまりの従業員を雇用している。 APP は企業と社会との繋がり、環境保護を非常に重要視している。天然林資源を製紙原料

に使用しないため、人工林の植林プロジェクトを実施する一方、環境保護にも力を入れている。差し当たり APP は中国で 360 万畝の造林に成功し、生産を開始した 10 社あまりの製紙企業は全て ISO14001 国際環境認定を得た。うち寧波中華製紙会社は中国で初めてISO14001 国際環境認定を得た製紙企業となったことは、従来の製紙産業のマイナスイメージの改善に繋がる契機となった。 その上、APP は社会貢献活動を行い、政府やコミュニティの各事業に協力し、中国での各

種寄付金は累計 1.5 億元あまりに達し、2004 年「フォーブス」慈善ランキングで外資企業第 2位となり、2005年 4 月胡潤中国慈善ランキングでは第 1位となった。

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5.6 海外における中国企業の植林事情

森林面積は世界で 5位でありながら、中国は森林資源に乏しい国で、1人当たりの森林占

有面積は世界で 119 位である。長期にわたる企業戦略から見れば、国内の製紙産業が発展

を遂げるには海外の資源に頼らざるを得ない。市場開拓や、原料確保に対して、中国の国

内製紙産業は全面開放をせざるを得ない。対外開放を行うことによって、製紙事業の拡大、

さらにリスク対応能力の強化が図れるのである。これは企業の生存問題だけではなく、グ

ローバル化に対応する戦略でもある。したがって、政府は製紙産業のグローバル化に対し

て発展戦略を取り、中国の製紙企業の海外での市場開拓のため政策を立て、それなりの条

件を整備するという意見もある。

中国製紙産業は中小企業を中心とする状況であり、企業毎に原料確保の森林造成は実現

できず、多くの企業はそれだけの資金力がない。それで、先進国に比較する面でも、国内

で林紙一体化を実施し、原料のコストダウン、汚染防止対策、規模拡大によるコストダウ

ンの面と、国内で一定の規模で競争するのに優位な集団会社の設立が各方面において必要

であり、国際的発展の趨勢にも一致している。本結論は 2007 年 10 月国家発展改革委員会

が頒布した「製紙産業発展政策」のうち、国内企業は合併、連携、再編および拡大などを

通じ、10 社ほどが 100万 t~300万 t のトップレベルの先進的な紙パルプ製造、製紙企業お

よび年間生産量が 300 万 t 以上の多地域に亘り、多くの部門を有し、国際競争力のある大

型パルプ・製紙企業、集団の設立を支持する政策にも一致している。

近年の発展状況を見るに、中国では生産能力 100 万 t を超える製紙企業は依然少なく、

生産能力 300 万 t 級の企業は晨鳴、玖龍などごく少数の企業に過ぎない。従って、生産能

力 300 万 t 以上の製紙企業を設立するには、業界の買収合併、再編が必要である。他の相

対的規模の大きい華泰集団有限公司、山東太陽紙業、晨鳴紙業 ?、博 紙業、岳陽紙業など

は生産能力の拡大、地方企業に対する合併、再編を通じて、製紙産業の先導的な企業とな

っている。小規模でスケール・メリットが出せない企業には専有の原料林の造成はできな

いが、相互または先導的な企業との合併で、双方の共同利益が実現できる。上場企業のう

ち、岳陽紙業、美利紙業、華泰集団有限公司、晨鳴紙業、景興紙業はすでに林紙一体化プ

ロジェクトに取り組んでいる。これらの先導企業が幅広く林紙一体化プロジェクトに取り

組むことによって、原料の自給自足、業界の持続可能な発展が実現できる。

今、国内の事情から、中国製紙上場企業には海外で産業植林を実施できる企業はない。

中国国内の製紙産業は、産業の規模拡大、発展を図るには世界に向かって進出することで

ある。これは企業の生存問題であり、真のグローバル化に対応する戦略問題でもある。政

策に対する支持や国内資源が徐々に少なくなる今、いくつの製紙業界の先導的な役割を担

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う企業が国内外で製紙用森林の造成に取り組むことによって、中国製紙産業をさらに発展

させることになる。

例 2:ラオスにおける山東太陽紙業の「林、パルプ、紙一体化」プロジェクト実施に関する公告

一、対外投資事情 1、対外投資基本事情:企業の原料自給率を高め、充分かつ安定的な原料供給を保障し、

企業の持続可能な発展を促すために、本社はラオスにおける林紙一体化プロジェクトの投資建設計画を起案した。

2、理事会審議経緯:本社は 2008 年 10 月 13日に第 3回理事会、第 23 回(臨時)会議を開き、7名の理事から成る理事会は 7 票の全員一致による賛成の結果、ラオスでの林紙一体化投資建設プロジェクトを通じ、株主総会に理事会が全権をもって当該プロジェクトを実施し、関連する事項の面談およびほかの関連事務を処理することを申し込んだ。「規程」、「株主総会議事規則」などの規定によると、当該対外投資事項は株主総会の審議によって決まるので、関連貿易業務としては成立しない。 3、投資行為が発効とするのに必要な審議手順:中国政府およびラオス政府関係部門の許

可または記録は済んでいない。 二、プロジェクト作業現場事情

ラオスは雲南と接し、面積は 23.68 万? で、中南半島北部にある内陸国家である。ラオスの経済は農業中心で、工業は充分に発展していない。2007 年までラオスの人口は 625 万人で、うち農業人口は約全人口の 90%を占め、ラオスは労働力、国内鉱物資源、水力、森林資源に恵まれている。森林面積は約 900 万 ha、森林被覆率は 42%に達している。ラオスは社会主義国家で、政治、社会が安定している。中国はラオスと貿易条約を締結し、ラオスに関税優遇措置を取っている。両国の貿易関係が深まり、協力分野も広がりつつある。2003年、双方の貿易額は初めて1億ドルを超え、2007 年は 2.49 億ドルに達した。

?当該プロジェクトはラオス沙湾拿吉省色奔 (the name of province and county in Loasラオスの地名)で ?実施することになっている。色奔 はラオス南部、北緯 16°43、東経 106°9にあたる。ベトナムまでわずか 40kmで、ダナンまで 280km で、交通運輸事情は比較的便利である。

三、プロジェクト基本事項 本社は今回のラオスでの投資プロジェクトの実行会社として新会社を創設する案を起草

した。当該プロジェクトは新会社の独資で、会社創設後主に紙パルプ用材林の造成、生産および販売に携わる。新会社の登録資本は当該会社自らの出資によるもので、19717万ドルに達すると見込まれる。

四、対外投資の主要内容 今回の対外投資プロジェクトはラオスで紙パルプ用材林および年間の生産能力 30 万 t の

漂白広葉樹パルプ工場建設の二部分からなっている。一つはラオス人民民主共和国沙湾拿吉省およびその周辺地域で 3万 ha の自営模範林を経営し、相応の管理機構を設ける。それで持続的かつ安定した木材の供給、木材市場価格の調整、現地森林経営レベルの向上が可能となる。同時に長期にわたる出荷契約の調印により、供給期限、方式、数量、最低価格、支払い方法および賞罰を明確化し、7 万 ha の住民共有森林を造成する。所有者は自主経営なので、契約によって定まった価格で優先的に当該プロジェクトに木材を供給する。斯くして当該プロジェクトに長期かつ安定したパルプ材を提供できる。もう一つはラオス人民

?民主共和国沙湾拿吉省色奔 で年生産量 30 万 t の漂白広葉樹パルプ工場を建設し、経営する。硫酸塩パルプ連続蒸解法で木材パルプを生産する。当該プロジェクトでは世界先進技術による設備が採用され、クリーン製造法を取り、コストダウンのため熱電連産の設計が

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採用される。木材パルプ工場は主に原料ヤード、予備原料ヤード、パルプ製造、パルプシート製造、アルカリ回収作業、化学製品製造、発電所、各種倉庫の建設およびその他補助用設備の設置に取り組む。

五、今回投資の目的および企業に及ぼす影響 1、対外投資資金の出所:当該会社自ら資金を募る。 2、対外投資の上場企業に及ぼす影響:会社の原料自給率を向上させ、生産に充分かつ安

定した原料が供給でき、企業の競争力およびリスク対応能力も向上できる。企業活動の改善を促し、その上産業発展戦略にも一致している。

六、対外投資リスクに対する分析 1、市場競争などの要素が存在するので、投資項目には一定のリスクもある。世界の木材

パルプ生産量の増加、市場競争の激化、エネルギー価格の高騰により、経営環境も不景気になりかねない。上記のリスクの対応措置として、国際的な木材パルプおよび紙製品市場の面から見れば、紙製品に対する消費需要が増加し、木材パルプは高価なままである。当社は当該プロジェクトを通じ、原料自給率の向上、輸入価格高騰のリスクからの回避を図ることができる。プロジェクトを実施する企業はプロジェクト現地で発電所を建設することで、建設および生産に充分なエネルギーや電力を供給できる。 2、プロジェクトの実施および大型設備など物資の購入は品質、安全、コストなどのリス

クが伴う。 上記リスクの対応措置として紙パルプ原料用森林造成および木材パルプ工場の大型設備

などの物資購入は国際入札を通じて実施される。本社は長年プロジェクトの開発、実施、管理をしているため、多くの経験を積んできた。プロジェクト実施会社設立後、本社はプロジェクト実施会社に生産管理の向上に強力な権限を与え、管理リスクを適切に避ける。本社は新技術、製造法を吸収、応用し、企業の公共資源を利用することで、コストダウン、重要部門労働力の最善の配置、経営レベルの向上、市場意識の強化、利益の増加を図り、投資リスクを避け、株主の利益の向上を求める。 3、投資事項は中国およびラオス政府関係部門の許可と記録が必要としているので、許可

されない可能性がある。 当該プロジェクトは本社では、初めての海外投資で、経験、人材が不足している。本社

は確実で実行可能な計画を立て、段階的にプロジェクトを実施し、事業に精通しながら関連投資を始める。ラオス政府および関連部門の支持を得るため、積極的にプロジェクトの審議に協力する。

七、予備審査ファイル目録 1、第 3回理事会、第 23 回(臨時)会議の決議。 特にここで公告する

山東太陽紙業有限公司理事会 2008 年 10月 14 日

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第6章 中国林業および製紙パルプ産業に関する政策

林業は製紙パルプ産業に木材繊維原料を提供し製紙パルプ産業は林業との連携をさらに

発展させるため林紙結合は両産業の経済効果を向上させ、社会的成果と生態的効果の統合を

促進する上で大変重要な意義を有している。中国の製紙パルプ産業は国内外資源を充分に利

用し、木材パルプ比率の向上、古紙回収利用の拡大、非木材パルプの合理的利用によって木

材繊維と古紙を主とし非木材繊維を従とする製紙原料構成に漸次移行すべきである。林紙一

体化計画実現を推進、促進して木材パルプを大きく発展させるため、林地残材、木材加工廃

材、輸入木材と輸入チップを利用する木材パルプの生産を推奨する。海外から木材パルプを

適切に輸入することもよい。既存の林場・林業公司と国内製紙パルプ企業による製紙原料用

林基地の共同建設も推奨する。企業による製紙原料林基地を建設する場合、国家林業分野別

の経営、早成多収穫用材林建設計画並びに全国林紙一体化特別計画に定めた総合的な要求に

一致すると共に、土地、生態系、土壌保持、環境保護などの関連規定にも一致しなければな

らない。市販木材パルプ計画の策定も推奨する。原料を国内市場で調達される木材に依存す

る計画では製紙用林基地の建設を計画するには製紙原料用林基地プロジェクトの建設許可

を先に取得すべきである。許可なしに林紙一体化プロジェクトの名目で製紙用林基地を独自

に建設、または囲い込みをしてはいけない。海外市場からの木材を原料にする場合には予定

した製紙パルプ計画の実行する約束は厳格に履行しなければならない。実行能力のある国内

企業が海外に製紙用林基地や製紙パルプ計画を立てることも支持できる。国内の古紙回収を

強化し、古紙の回収率と利用率を高め、輸入古紙を合理的に利用するべきである。適地適宜

の条件下で非木材繊維資源を合理的に利用する。製紙パルプの生産に竹、バガス、あしなど

の資源を充分に利用し、草本パルプの生産総量は厳格に制限し、既存の草本パルプ生産企業

の統合を促進すべきである。原則として草本化学パルプの新規生産はしない。チップ、木材

パルプおよび非木材パルプの輸出を規制し輸出後の税還付は廃止し輸出税を課す。

6.1 林業に関する基本政策

6.1.1 製紙工業原料用林基地の造成

中国製紙パルプ業の発展を促進し、天然林保護プロジェクトの実施と生態環境の保全を

推進し、天然林保護プロジェクトが実施した後の木材需給不均衡を適切に解決し、製紙パ

ルプ企業の木材原料供給と中国森林資源の持続的増加を保証し、製紙パルプ用原料林基地

(以下、製紙用林基地と略称する)の建設を規定するため、2001年2月7日、元国家計画

委員会、財政部、国家林業局は『製紙パルプ用原料林基地建設の促進に関する若干の意見』

を発表、製紙用林基地建設に関する政策について意見を公表した。

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(1)製紙用林基地計画

国家林業局によって編成された『重点地区における早成多収穫材林基地建設プロジェクト

計画』に基づいて国家計画委員会と国家林業局は全国製紙用林基地の建設計画を立てる。

製紙用林基地の経営企業は自社の実情を踏まえ、製紙用林基地の面積と地域を決め、国家

林業局主管部門の審査許可を取得した後、全国製紙用林基地の計画に納める。

(2)製紙用林基地の管理機構

国家発展改革委員会は全国における製紙用林基地建設を実施する牽引役とし、かつ全国

製紙用林基地を綜合的に調整する。国家林業局は全国製紙用林基地建設の管理部門である。

製紙用林基地建設計画に参入したパルプ製紙企業、林業企業は現代企業制度に基づき、製

紙用林基地の経営会社を設立する。

(3)製紙用林基地造成形式

パルプ製紙企業、林業企業は各地の実情に従い、自己資本、合資、協同、共同経営、株

式など適地適宜の形式によって製紙用林基地造成を行う。パルプ製紙企業は地域・部門・

所有制度を超えた製紙用林基地を造成することを推奨する。国内企業は森林資源状況が良

く気候条件に恵まれた海外に投資、製紙用林基地をすることも推奨する。

(4)製紙用林基地の収穫管理

各省、自治区、直轄市の林業主管部門は当地の実情に応じてパルプ製紙の技術的要求、

林木の生長条件などを踏まえ、法律に基いて製紙用林基地森林、木材の主伐期、輪伐期、

間伐期を適切に定める。森林、木材及び林地の所有権を明確にし、一定規模以上の製紙用

林基地を形成して林木の利用を行うこと。しかも採伐限度管理を行い、林木採伐許可証制

度、林木運送証制度を執行する。規定の手順と方法に従って製紙用林基地森林、木材の年

間採伐限度を定め、かつ年度木材生産計画を立て、統一管理を実施する。各省、自治区、

直轄市の林業主管部門は当該地域の年間木材生産計画を作成する際、製紙用林基地計画を

別個に作成し、製紙用林基地の伐採基準に基いて個別申請、個別審査制度を執行する。各

地域は年間林木採伐限度、年間木材生産計画を執行する際、製紙用林基地の木材伐採基準

は確実に実行すべきである。製紙用林基地から生産された木材は必ず製紙パルプに向ける。

6.1.2 林紙一体化政策

中国の製紙パルプ産業は良質な原料に恵まれず対外依存度が高い。紙・板紙消費量の増

加と現在の製紙産業の生産能力が急速に増加するのに伴い、国内繊維原料の需給不均衡は

際立ってその乖離が年々高まっている。2005 年の中国の製紙パルプの総消費量は 5,200 万

tである。そのうち、木材パルプ 1,130 万t、非木材パルプ 1,260 万t、古紙パルプ 2,810

万tで、製紙パルプ総消費量に占める割合はそれぞれ 22%、24%、54%である。国際的な

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製紙産業の製紙パルプ総消費量中の新規木材パルプは平均 63%であるのに対し中国の木

材パルプ消費量と木材パルプ生産量の比率は僅か 7%である。輸入依存度からみると、2005

年、中国は木材パルプを 759 万t、古紙を 1,703万t輸入し、輸入木材パルプと古紙が原

料消費総量に占める割合は2000年の22.6%から40.8%に上昇した。輸入市販木材パルプ、

古紙を紙・板紙に換算し、更に輸入の紙・板紙を入れると 2005年、中国は 5,930 万tの総

消費量の 47%を輸入に依存した。中国の製紙産業のこれからの発展は相変わらず輸入繊維

原料に負うところが大きく、世界の繊維原料供給量と供給価格に大いに影響されるので、

繊維原料供給を確保することは中国製紙産業の持続的高度成長の鍵である。従って、林紙

一体化を積極的に推進し、国内の古紙回収率を向上させ、繊維原料の自給レベルを大幅に

高めることは中国製紙産業発展における切実な責務である。

林紙結合を促進し、製紙産業の原料構成の調整を推進するため、2001 年、国家計画委員

会、財政部、国家林業局は『製紙産業原料林基地建設推進に関する若干の意見』を公表し

た。2002 年、国の批准を経て、林業六大重点プロジェクト中、『重点地区における早成多

収穫材林基地建設プロジェクト』は正式に発足した。2003 年、『林業発展の促進に関する

中国共産党中央国務院の決定』が正式に発布された。2003 年 12 月、国家発展改革委員会

は『全国における林紙一体化プロジェクトの「十五」及び 2010 年特別計画』を出版、配布

した。2007年、国家発展改革委員会は『製紙産業発展政策』(以下、政策に略する)を公表

した。一連の政策と措置が提出されたことにより、林紙一体化への援助がより一層、進め

られる。林紙一体化プロジェクトは中国林業、製紙産業振興の突破口である。

『政策』は林紙一体化プロジェクトを推進し木材パルプを大きく発展させるために林地

残材、木材加工廃材、輸入木材と輸入チップなどを利用する木材パルプの生産を推奨して

いる。海外から木材パルプを合理的に輸入することも推奨される。2010 年迄に製紙用林基

地建設は 500 万 ha、木材パルプ増産は 645 万tの目標に達する見込みである。

『政策』は既存の林場・林業公司と国内製紙パルプ企業による、製紙原料林基地の共同

建設を推奨する。企業による製紙原料林基地を建設する場合、国家林業分野別経営、早成

多収穫用材林建設計画並びに全国林紙一体化特別計画に定めた総体要求に一致するほか、

土地、生態系、土壌保持、環境保護などの関連規定にも一致しなければならない。

『政策』は市販木材パルプ計画を拡大することも推奨している。原料は国内市場から調

達される木材に依存するもので、製紙用林基地の建設を計画するがそれに先立って製紙原

料林基地プロジェクトの建設許可を取得すべきである。許可なしに林紙一体化プロジェク

トの名目で製紙用林基地の独自に建設、または囲い込みをしてはならない。海外市場から

の木材を原料にすると設定した製紙パルププロジェクトは厳格に履行しなければならない。

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『政策』は実行能力を有する国内企業による海外における製紙用林基地とパルププロジ

ェクトの建設も支持している。木材チップ、木材パルプおよび非木材パルプの輸出を規制

し輸出後の税還付を廃止し輸出税を課することになっている。

『政策』では「国内の古紙回収を強化し、古紙の回収率と利用率を高め、輸入古紙を合

理的に利用する。古紙の分類、回収規格を早期に制定し、地方における古紙回収の管理方

法の制定を推奨し、古紙回収の大手企業を育成し、古紙回収・取引市場を設立し、古紙の

回収行為を規制する。2010 年迄に国内の古紙回収率を現在の 31%から 34%に高め、古紙

の利用率は 32%から 38%に高める。」と要求している。

6.1.3 林権制度改革による製紙産業の原料保障

『『集団林権制度の全面的改革に関する中国共産党中央国務院の意見』の公布により、専

門家は林紙一体化建設の促進に役立つと述べている。2008 年 6 月 8 日、『集団林権制度の

全面的改革に関する中国共産党中央国務院の意見』(以下、『意見』に略する)が公布され

た。これは集団林権制度の改革が全国に推進すると示している。製紙産業界の専門家は『意

見』の公布により、林紙一体化プロジェクト建設がより一層推し進めると述べている。

(1)集団林権制度改革の重大政策

2008 年、中国共産党中央、国務院は『集団林権の全面的改革に関する意見』を公布し、

共産党第 17回代表会の精神を全面的に徹底させ、科学的な発展を貫きし、生態建設が主と

する林業発展戦略を実施し、継続的に集団林業経営方式を樹立し、法律に基づいて生産権

を明確にし、経営を柔軟に、回転を規範し、税金を減少し、林業の生産力をより一層解放、

発展し、伝統林業から現代林業への転換を促進すると提唱している。

改革の主要目標は 5年間にわたり、生産権の明確化、世帯請負の改革任務をほぼ成し遂

げる。これに基づき、改革を進め、政策を完全なものにし、集団林業の良好な発展体制を

打ち立て、資源の増加、農家収入レベルの向上、生態良好、林地の穏やかな発展を実現す

る。集団林地所有権が変化ない限り、法律に基づき、林地の請負経営権と林木所有権を世

帯請負として本集団経済組織の農家に与え、農民を林地請負経営権所有者としての主体な

地位を確立する。林地の請負期間は 70 年である。満期になった場合、国家の関連規定によ

り、請負を続けられる。

重要な関連改革として、林木採伐管理方式をより一層改善し、林地、林木の譲渡を規範

し、集団林業発展支持の公共財政制度を設立し、林業の投融資改革を推進し、林業の社会

化貢献を強化する。

(2)集団林権改革の主要任務

(a)生産権の明確化

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集団林地所有権に変化がない限り、法律に基づき林地の請負経営権と木材所有権を世帯

請負で本集団経済組織の農家に与え、農民を林地請負経営権所有者としての主体地位を確

立する。しかも、法律により、農民の請負権益を保障する。世帯請負制度に不適當な林地

の場合、本集団経済組織メンバーの合意の下で、株均等化(註:植林木の所有権を構成員

で均等化すること)、所得均等化などを通じて、生産権を確定する別個の経営方式を取る。

林地の請負期間は 30年から 70 年である。

(b)経営権の活性化

市販林、公益林の分類管理を実施する。市販林の場合、農民たちは法律に違反しない限

り、経営形態や経営方式、木材の販売を自由に決められる。公益林の場合は、その生態的

機能を破壊しない限り、合法的かつ合理的な養殖業、森林観光業などの利用ができる。

(c)使用権の実施

林地の使い方を変えない限り、請負人が合法的にその経営権や所有権を下請け、リース、

譲与、株式化、出資合作条件として森林地を合法的に開発利用することができる。

(d)収益権の保障

請負林地の収益は国家の規定と契約により約束した費用のほか、すべて請負人のものと

する。農民の請負林地を徴用する場合、法律に基づいて林地補償金、安置補助金、地上付

属物件及び木材補償金などの費用を払わなければならない。そして、林地を懲用された農

民への社会保障金などもを負担しなければならない。請負には政府の規定した公益林の場

合、森林生態的機能に対する補償政策を確定すべきだ。自留地を経営する収益は農家のも

のとする。

中国製紙学会の専門家である顧民達は、『集団林権制度の改革に関する意見』の公布によ

り、林紙企業による植林を行う過程で長期にわたる林地の配置難、採伐制限、税金負担が

重く、資金が不足、技術サービスが滞るといった問題の解決に役立ち、請負農民の植林意

欲を大いに掻き立て、かつ林紙一体化プロジェクト建設の促進発展を推進し、中国製紙産

業の持続可能な発展に信頼できる原料確保が提供できると述べている。

6.2 製紙産業発展政策

2007 年 10月 15 日、国家発展改革委員会は社会主義市場経済体制改革を完備する要求に

応じ、関係法律法規に従い、『製紙産業発展政策』を制定、公布した。政策目標、産業配置、

繊維原料、技術と設備、製品構造、資源節約、組織構造、環境保全、業界参入、投融資、

紙製品消費あるいは他方面から製紙産業を詳細に説明、計画した。公正な市場秩序と良好

な発展環境を構築し、製紙産業の発展問題を解決し、産業の健全な発展を指導する。

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6.2.1 政策目標

政策の制定により、市場による資源の適正な配分が行われるようにするため、政府によ

る大局的政策を定め、産業発展の新しいメカニズムを構築する。紙・板紙プロジェクトの

建設を適度に制御し、2010 年迄に紙・板紙の新規生産能力を 2.650 万t、旧態化した生産

能力を 650 万t廃棄することにより、効率的な生産能力を 9.000万tにする。産業配置、

原料構成、製品構成、企業構造の調整により、産業構造の向上を実現する。技術イノベー

ションを強化し、素質の高い人材を育成し、製紙パルプ設備製造について指導的企業を育

成する。生産量追求型から転換し、業界と企業の社会的責任の重要性を認識し、国の環境

保全、資源節約、労働保障、安全生産など関係法律、法規を厳格に執行する。省資源、環

境に優しい、調和のとれた発展という製紙産業の新しい発展方式に漸次移行する。産業へ

の参入条件を明確にし、投融資行為と市場秩序を規範し、公正な競争環境を作る。

6.2.2 産業配置

製紙産業の全体的な配置を「北から南へ」移行させ、合理的で新しい配置にする。長江

以南は製紙産業発展の重点地区であり、林紙一体化プロジェクトを主とし、製紙パルプ産

業の発展を促進する。東南沿海地区は中国の林紙一体化プロジェクト建設の重点地区であ

る。長江中下流地区は林紙一体化プロジェクトの実施主体の育成又は誘致を促進する。西

南地区は木材、竹資源を合理的に利用し、木材パルプと竹パルプの併用を堅持する。長江

デルタ及び珠江デルタ地区は国内外の木材パルプと古紙を利用した製紙を特に重要視する。

長江以北は製紙産業の改善、調整地区である。黄淮海地区は旧式なわらパルプ生産設備を

廃棄し、市販木材パルプと古紙の利用を増やし、林紙一体化を適切に発展させる。東北地

区は製紙用林基地の建設を促進し、原則として新規の製紙パルプ企業は設置しない。西北

地区は製紙産業の整合を促進させ、生産能力の拡充を厳格に制限する。重点な環境保全地

区、水不足が激しい地区、大都市の市区には、製紙パルプ工場を設置しない。水不足が激

しい地区での灌漑型製紙用林基地の建設を禁止する。

6.2.3 繊維原料

木材パルプ比率の向上、古紙利用の拡大、非木材パルプの合理的な利用により、木材繊

維、古紙を主とし、非木材繊維を従とする製紙原料構成に漸次移行する。2010 年迄に木材

パルプ、古紙パルプ、非木材パルプの比率を 26%、56%、18%にする。

6.2.4 技術と設備

技術の導入と自主的な開発の相互結合の原則を堅持する。国家製紙工程研究センター及

び国家認定製紙企業技術センターを設立し、重点的な科学研究機構、設計機関、製紙企業、

設備製造企業による技術の共同研究開発を支持し、共通技術成果のサービスステーション

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及び情報ネットの建設を支持する。重要な設備の地方への普及を促進し技術と設備・製造

技術水準を高める。

製紙産業の技術を高水準、高効率、低汚染の方向に向けて発展させる。高収率パルプ製

造技術、バイオ利用技術、低汚染パルプ製造技術、中濃度叩解技術、無塩素漂白パルプ技

術、省エネルギー機械パルプ製造技術、高効率古紙脱インキ技術及び関連設備の開発、発

展を推奨する。軽量、高填料製紙技術、塗工技術、中性抄紙技術、閉鎖系水循環技術、化

学品応用技術、広幅・高速製紙技術、高効率廃水処理と固形廃棄物回収処理技術の応用、発

展を優先する。

製紙パルプ設備製造企業の構成を調整し、大手紙・パルプ設備製造グループや連合体を

育成し、研究、開発、設計、製造、統合のステーションを設立し、プラント設備の研究開

発と集成能力を高め、先進技術を保有する海外の設備製造企業と国内の製紙パルプ設備製

造企業の合資・合弁を推奨し、設備の国産化を促進する。

6.2.5 製品構成

市場の需要に適応し、多様な紙・板紙の製品構成を形成する。既存の資源を統合し、低効

率、低品質製品の向上を促進する。

『環境表示製品の技術的要求―再生紙製品』を適宜、改訂し、製紙企業による古紙を用い

た新聞用紙、印刷筆記用紙、包装用紙など再生紙製品の生産拡大を推奨する。

6.2.6 組織構造

現代的な企業制度を樹立し、産業組織の形式を改善し、製紙パルプ企業の過多、小規模、

散在配置の状況を変え、大型企業を増やすと同時に、合理的な中小企業比率となる産業組

織構造を形成する。国内企業の合併、連合、再編、拡充などを通して、100 万t~300万t

の先進水準を有する製紙パルプ企業を 10 社前後に育成し、地区、部門、所有形態などを考

慮の上、年間生産能力 300 万 t以上の国際競争力のある大型製紙パルプグループ数社を育

成する。

若干の市販木材パルプの中大型生産企業または企業グループ数社の発展を推奨する。竹

資源を充分に利用し、10 万t?年以上の竹パルプ生産企業の発展を支持する。

産業集中度の向上に努め、2010年までに上位 30社の製紙パルプ企業の紙・板紙の生産量

が総生産量に占める割合を現在の 32%から 40%に上昇させる。

6.2.7 資源節約

国務院の『循環経済の発展に関する若干の意見』を完全に実施し、資源節約型の製紙産

業を建設する。

全業界の節水意識を強化し、節水の新技術、新工法、新設備の開発と普及に努め、水の

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再利用率を高める。『水法』、『取水許可および資源費徴収管理条例』並びに『取水許可制度

実施方法』など関係法律法規を厳格に執行し、取水許可制度と水資源有償使用制度を実行

し、総量コントロールと定量管理を全面的に遂行し、水資源の合理的な開発、節約、保護

を強化する。

企業による省エネルギー先進技術の採用を推奨し、エネルギー消費の多い設備を改造、

廃棄し、製紙パルプの熱・電併用の長所を充分に発揮し、エネルギーの総合利用効率を高め

る。

最も厳格な土地管理制度を執行し、土地の節約、集約利用を図る。『水土保持法』の関連

規定を厳格に執行し、水と土壌の流失を防止する。

6.2.8 環境保全

『環境保全法』、『水汚染防治法』、『環境影響評価法』並びに『クリーン生産促進法』な

ど法律法規を厳格に執行する。クリーン生産技術を力強く推進し、クリーン生産審査許可

制度を実行する。製紙パルプ製造排水の排出には、許可証による管理を実行する。環境指

標公告及び企業環境保全情報公開制度を実行し、環境認証、環境マーク及び環境保全実績

評価制度を積極的に推進する。

製紙用林基地の建設では、生態系保護を重視し、環境影響評価を強化し、林業の分野別

経営原則を遵守し、新技術を用いた科学的な造林を行い、生物の多様性を保護し、森林を

破壊しての造林を厳禁し、水と土壌の流失を防止する。

6.2.9 業界参入

製紙産業に参入する国内外の投資主体は、高い技術水準、強い資本力、豊富な管理経験、

高い信用度という条件を満たさなければならない。企業の資産負債率は70%以下、銀行

の評価による信用等級は AA 級以上とする。

製紙パルプ産業の重点発展及び調整を計るために、省区は製紙産業中長期発展計画を編

制すべきであり、大型の製紙パルプ企業グループは国家製紙産業発展政策に基づいて企業

中長期発展計画を策定し、かつ投資主管部門に届け出る必要がある。パルプ製造プロジェ

クトの新規建設及び増設時の1生産ラインあたりの初期規模は以下の通りとする:木材化

学パルプ 30万t?年、木材セミケミカルパルプ 10万t?年、竹化学パルプ 10 万t?年、非

木材パルプ 5万t?年;抄紙プロジェクトの新規建設、増設時の1生産系列あたりの初期規

模は以下の通りとする:新聞用紙 30万t?年、文化用紙 10 万t?年、段ボール原紙・白板紙

30 万t?年、そのほかの板紙 10 万t?年。ワックス加工包装紙、特殊紙、特殊板紙のプロ

ジェクト及び既存ラインの改造は規模について参入条件に制限をつけない。

1 企業(グループ)の紙の同一品種の国内市場占有率が 35%を超えた場合、当該企業(グ

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ループ)は同一品種の建設プロジェクトの許認可申請ができない。1 企業(グループ)の

紙・板紙生産能力が国内市場の当年総消費量の 20%を超えた場合、製紙パルププロジェク

トの許認可申請ができない。

新規建設プロジェクトの製品 1t あたりの COD排出量、取水量及び総合的なエネルギー消

費量(標準石炭換算量)などは先進水準に達する必要がある。

6.2.10 投融資

国務院の『投資体制改革に関する決定』及び関連管理方法、『産業構造調整の促進に関す

る暫定規定』及び指導目録、『外国投資者に対する投資方向の指導規定』及び指導目録を厳

格に執行する。プロジェクト法人制度、資本金制度及び請負入札制度を厳格に執行する。

国内企業による国内の製紙パルプ企業や設備製造企業の合併、買収、再編を推奨する。投

資への監督管理を強化し、規定違反の許認可、自己許認可、分散申請の許認可、許認可回

答または届け出内容の勝手な改ざんなどの行為に対し、プロジェクト法人の投資プロジェ

クトの資格を取り消し、かつ関連当事者の行政責任を追及する。条件が整っている製紙パ

ルプ企業が株券公開発行や企業債券の発行を通じて資金を調達することを支持する。規定

違反のプロジェクトに対し、金融機構は貸出をしてはいけない。

6.2.11 紙製品の消費

節約型社会構築の求めに従って、社会に紙を節約する意識を形成させる。紙製品の基準

を適時改定し、高白色度など過度の品質を追求するといった現在の紙製品の消費傾向を変

える。古紙を一定比率配合して生産された紙製品を優先的に調達する。オフィス・オートメ

ーションを積極的に推進し、事務用紙製品の消耗を節減する。デジタル化、デジタル生産、

ネット化といった新媒体を積極的に推進する。一般図書と定期刊行物の用紙の軽量化を推

奨する。節約型モデルを提唱し、包装材料と製品の軽量化、減量化を実現する。国内市場

の需要を満たすため、紙・板紙の輸入は適度に増やして国内における製紙原料の国際市場へ

の過度な依存を軽減する。

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第7章 製紙産業の競争力評価と問題点

紙・板紙の消費水準は国の近代化の水準と文化の程度を評価する重要な指標である。製

紙・パルプ産業は中国の林業林産業体系の中で重要な構成要素であって、中国の林業林産

業全体の国際競争力を形成する上で不可欠な力でもある。現在、経済のグローバル化の波

が世界を席巻している。中国製紙・パルプ産業の発展と検討を国際経済競争を背景と関連

させ、製紙産業の国際競争力評価と問題点を検討し、中国の製紙・パルプ産業の国際競争

力の向上対策を提言することは重要な論点であり現実的に意義がある。

旧国家経済貿易委員会の研究計画であった 2003 年の『中国製紙産業競争力の研究報告』

で国内外紙業および国内資本と外国資本の製紙企業間の競争力を系統的に比較検討された。

競争に影響する五つの因子とは業界外部からの参入の脅威、代替品の脅威、供給側の価格

設定能力、購買側の価格取引能力及び業界内競争である。市場、資源、設備、組織の四つ

の要素は製紙産業の競争力に影響する因子である。市場と資源は企業外の因子で、将来性

のある優れた紙品種や設備と組織を選定するのは企業内因子で、それによって競争力のあ

る優れた企業が決まるので、中国の紙業発展の競争戦略を提案すれば企業の企画、建設、

市場開発について有力な指針となろう。

設備水準によってその企業の製品の生産量と品質が決まってくる。最新の生産設備は価

格が高いため現実には設備は企業の資本力によって決る。製紙産業では規模が経済性に強

く作用するが、規模による経済性とは生産量総量が一定の水準にあるということだけでな

く、抄紙機単位の生産能力が大きいことが重要である。あらゆる製品には、導入、成長、

成熟、衰退といった生命周期があるので、製紙企業が長期にわたって競争力を維持するに

は、常に設備の新改造を強化する必要がある。製紙産業は資本集約的特徴があり、特に新

聞用紙、上級文化用紙などには近代的な設備、一定規模以上の生産ラインとして 10 億元以

上が必要であるから企業にとっては自社資金だけでこれらの建設を遂行することは不可能

である。したがって、企業の資金調達能力が特に重要である。その能力は企業の自社資金、

上場融資、合資共同出資者の導入、銀行借入などによって可能になる。企業の資金調達能

力が最終的に同社の新規計画、新設設備に反映されるので、設備を企業競争の水準を重要

な指標として看做すことが必要である。設備の水準こそその企業の能力を示す重要なもの

である。

良好な組織はその企業の管理水準の高さと関連している。組織の良し悪しは企業の価値

と直接に関りがないにもかかわらず、大多数の中国企業は計画経済体制時代から成長して

きたので、企業価値と構造はその組織に大きく影響される。従って異なる経済形態の企業

競争力を研究すれば異なる組織の企業との競争力を比較できる。現在、中国企業には経済

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的類型として多くの種類あるが、大別すれば外国資本企業と国内資本企業に分けられる。

さらに国内資本企業は国有企業、集団企業、私営企業、株式合資企業、株式企業及びその

他企業に分けられる。異種の企業の経営状況を検討すると組織を異にする企業間に競争力

の差が見られる。

金融投資機関はどの品種の紙に将来性があるか、どの企業に将来性があるかがはっきり

判れば大胆に投資すると思われるが、どれが将来性のある優位な紙品種なのか、どれが競

争力のある優位企業なのかは把握し難い。したがって、市場、資源、設備、組織といった

要素を検討することによって、業界及び企業の競争状況を正確に把握できるから、それに

よって科学的な投資計画が立てられる。

7.1 中国製紙産業発展因子の評価と製品の国際貿易水準

国際競争力を評価する理論によれば産業または製品の市場競争に影響する主な因子とし

て生産要素、需要状況、関連産業状況、企業戦略等の4つがある。これらの因子が産業競

争力の環境条件を構成するから、産業の国際競争力を研究する場合、その状況を比較、深

く分析すべきである。

7.1.1 産業競争力の環境条件評価

(1)生産要素の分析

中国は世界の製紙産業において生産、消費、輸入の大国であるものの、世界の製紙産業

先進国と比べ、天然資源、人的資源、資本資源、知的資源およびインフラストラクチュア

ーなど生産要素の面において大きな格差があり、問題点が際立っている。

第6回全国森林資源調査(1998-2003 年)の結果からみると、中国の森林資源総量は他

に比べて少なく、世界森林面積に占める割合は 4.5%で、ロシア、ブラジル、カナダ、米

国に続き第5位に位置している。森林蓄積量は世界森林蓄積量の 3.2%を占め、第6位で

ある。一方、林分の樹齢が若いことが問題で、近熟林、成熟林の割合は 40%に及ばない。

中国の木材資源の供給は著しく不足しており、森林資源の産業保証度は低く、資源不足が

林業林産業の発展の隘路になっている。

産業の技術水準、インフラからみた主要な格差は以下のどおりである。1)原料構成が不

適当で、木材パルプの比率が低過ぎる。2007 年、中国の国産木材パルプの割合は僅か 8.9%

で、一般的な水準からすれば 100 年前の先進国の水準にさえ及ばない。2)総生産量が少な

く、また製品構成が不適当である。国産品は中、低級製品が主である。3)企業の規模が小

さい。中国の木材パルプ・製紙企業の平均的規模は世界水準の 3分の 1である。4)技術、

設備が遅れている。全体的に技術、設備は先進国と比べ少なくとも 20 年は遅れている。5)

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水資源の消費が多く、環境汚染が深刻である。

さらに上位の要素としては、中国の製紙企業の管理水準、研究開発は国際競争力に欠け

ることと管理体制と企業経営組織に問題がある。企業の負担が重すぎ、技術革新と自己発

展の能力が不足している。企業が分散的、閉鎖的であるため、国際競争に参入する覚悟と

経済能力を備えていない。施策面では具体的な指導方針と実行に欠けている。

(2)市場の需要水準

紙製品に対する市場の消費需要の動向がその国の製紙産業国際競争力に影響する。現在、

中国の紙製品は需要を満たせない状況にある。1978~2007 年、中国における紙の需要は平

均年間 234 万t増加した。年間平均伸び率として 9.3%であるから、2010年までに紙の需

要は 0.8~1.0 億t?年に達する見通しである。需要構造としては高級オフセット新聞用紙、

カラー書籍用紙、上級文化用紙、中・上級生活用紙、クラフト紙、クラフトライナー、塗

工紙などが需要の主流である。しかし、これら上級紙の需要に対しては木材を主要原料に

しなければならないので、製紙パルプ向けの森林育成の要求は甚だ大きい。

(3)関連・支持産業の状況

林業・林産業の国際競争力は林業、林産業相互の発展の度合いに影響される。製紙産業

は関連産業が多い。林業、農業、機械製造、化学工業、エネルギー、交通輸送、環境保全

といった諸産業と関連があり、上・下流産業の発展を推進している。特に製紙産業は林業

と関連が深く、相互依存、相互促進の関係にある。長年に亘って中国の製紙産業と林業は

異なる省庁によって管理され、産業間で有機的な連繋が果たせず、製紙産業の発展は林業

に制約され、林業は十分に持続可能な発展を果たせなかったので、活発な国民経済の発展

に木材供給は対応できなかった。

7.1.2 中国紙製品の貿易状況

『2007 年中国林業発展報告』によれば 2006 年、中国の紙製品の輸出入が急速に伸び、

輸出の増加が輸入の伸びより大きかったが、貿易収支の差は拡大している。製品構造から

みると、輸入総量に占める古紙と木材パルプの比率が高くなり、紙と紙製品の比率が下が

りつつある。輸入量と価格をみると木材パルプの輸入が増加し、価格が大幅に上がったの

に対して、古紙の輸入は大幅に増加したが価格は少々下がった。2006 年、紙製品の輸出入

はそれぞれ 17.1 億ドル、100.0 億ドルで、前年比それぞれ 33.5%、8.2%増加した。貿易

黒字は82.9億ドルで前年と比べて4.1%増加した。木材パルプの輸出は3.2万tで1,648.0

万ドル、輸入は 788.1 万tで 43.5億ドルである。紙と紙製品(木材パルプ比率で換算)の

輸出は 114.6 万tで 14.57 億ドル、輸入は 368.4 万tで 33.7 億ドルである。

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7.2 中国製紙産業製品の国際競争力の評価

国家林業局が編集、出版した『中国林業統計年鑑』にもとづいて算出、纏めた中国の木

材パルプと紙製品の貿易数量の年別競争指数、金額の年別競争指数及び輸出入の年別平均

価格差の比率{輸出入価格差比率(%)=(輸出平均価格-輸入平均価格)÷輸出平均価

格×100}は以下のようになる。(表 7-1)

表7-1 中国木材パルプと紙製品の貿易数量と年別競争指数および

価格の年別競争指数と年別平均価格差比率(%)

年 年別数量競争指数 年別金額競争指数 年別平均価格差比率

木材パルプ

紙および紙製品

木材パルプ 紙および紙製品

木材パルプ 紙および紙製品

1994 -0.98 -0.93 -0.98 -0.88 +18.07 -44.16 1995 -0.93 -0.90 -0.94 -0.84 +21.71 -38.57 1996 -0.98 -0.94 -0.98 -0.88 -22.10 -54.96 1997 -0.98 -0.94 -0.98 -0.87 -8.18 -57.03 1998 -0.99 -0.95 -0.98 -0.88 -24.01 -56.93 1999 -0.99 -0.95 -0.99 -0.90 -23.79 -55.86 2000 -0.99 -0.90 -0.99 -0.82 +34.07 -46.54 2001 -0.99 -0.86 -0.99 -0.75 -9.64 -48.44 2002 -0.99 -0.87 -0.99 -0.76 -19.51 -48.56 2003 -1.00 -0.83 -0.87 -0.71 -18.62 -44.45 2004 -1.00 -0.80 -1.00 -0.66 -20.52 -45.41 2005 -0.99 -0.78 -0.95 -0.65 -17.35 -37.31 2006 -1.00 -0.77 -0.97 -0.63 -13.21 -36.47

表 7-1 からみると 1994 年から 2006 年にかけて木材パルプの数量の年別競争指数、金額

の年別競争指数は比較的安定し、殆どが-0.93~-1.00 であり、紙と紙製品の数量の年別

競争指数、金額の年競争指数は年々上昇していることが知られる。これから中国の紙と紙

製品の貿易量は継続的に増加しており、年別平均価格差比率が負であることは輸出平均価

格が輸入平均価格より低いことを意味している。この数年来、中国の紙と紙製品の年平均

価格差比率から輸出平均価格より輸入平均価格が高いことが知られる。

7.2.1 製品の国際競争力

製品の輸出量とその製品の輸出入比は製品の国際競争力を評価する重要な指標である。

製品の国際競争力は国際市場における国および地区の輸出競争力を反映している。競争力

の強さはその製品の産業国際競争力の強さである。製品の輸出競争力を貿易競争指数で評

価することは、つまり製品の輸出入総量に対する純輸出入量の割合である。表 7-1の統計

数値による製品の貿易数量指標で評価すると、紙及び紙製品の国際競争指数は負であるか

ら国際競争力が相対的に弱いことになる。また、表 7-1から中国の木材パルプ、紙及び紙

製品の国際競争力の変化動向をみると、長年連続して木材パルプ、紙及び紙製品の貿易指

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数はほぼ変化していない。紙と紙製品の貿易指数は向上しているが、全体の国際競争力は

かなり低い。木材パルプは製品の国際分業において純輸入の立場にある。これらの林産物

製品の貿易はほぼ一方的に補完型であり、輸出量が少なく国際水準に比べより生産効率が

低いのは明らかである。

製品の輸出入貿易の数量分析によっては製品の貿易競争力を客観的、総合的に評価する

ことはできない。貿易金額とその均衡状況を分析することによってこの欠点が補える。取

引損益の程度が貿易赤字、黒字の水準を評価する重要な指標であり、製品の貿易競争力を

客観的に評価するのには不可欠の方法である。表 7-1の統計資料からみると製品の貿易金

額、数量指標で評価すると木材パルプと紙製品の貿易競争指数の変化動向は数量に基づい

て分析する貿易競争指数とほぼ同じである。表7-1に示した貿易競争指数の変化には価

格差指数にプラス、マイナスが出る時期についてみると、低い水準を保っている製品の貿

易赤字は貿易数量分析方法の結果と完全には一致していない。上述の二つの貿易指数に時

期的にズレや差異があるのは、生産国の輸出入平均価格の変動に起因している。しかし、

全体的に言えば中国の木材パルプ、紙と紙製品の国際競争力は相対的に弱いという基本的

状況は大きく変わっていない。

7.2.2 木材パルプと紙製品の貿易価格競争力の分析

価格優位は製品の輸出競争力を促進する重要な要因であり、貿易価格競争指数で評価で

きる。製品の貿易価格競争指数は製品の輸出入価格差比率で示される、すなわち同時期の

製品輸出価格と同時期の製品輸入の差に対する同時期の輸出価格の比である。この指標は

製品生産国の貿易価格競争力を総合的に評価できる選択指数である。

表 7-1 の数値は中国の木材パルプ、紙と紙製品など林産工業品が輸出価格が優位にある

ことは明らかで、輸出価格全体が輸入価格より低いことは明瞭に示されている。木材パル

プの輸出価格は 1994 年から始めの2年間は輸出価格が輸入価格より高かったが、その後、

2000 年は輸出価格が反発してプラスとなり輸出価格が優位であった。しかしながら、その

後の6年は中国の木材パルプ、紙製品の輸入価格はすべて輸出価格より明確に高かった。

表 7-1の統計数値によると、紙と紙製品、木材パルプの輸入価格は輸出価格より明らかに

高いと見られる。紙と紙製品の輸入価格は輸出価格より平均しておよそ 50%高く、木材パ

ルプ価格はおよそ 20%高い。これは、中国の輸出紙と紙製品が価格競争上、優位にないこ

とを示している。

7.2.3 製紙産業界と企業利益、労働生産性の分析

企業利益率としてはみると中国の木材、竹、籐、棕櫚の製品製造業の利益率は比較的高

く、世界平均の水準よりやや低いが、米国の平均水準よりも高い。製紙産業界の販売利益

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率をみると、2001年の世界上位 150 社の平均販売利益率は 4.8%であるが、2002 年に中国

の製紙産業界の平均販売利益率は 5.5%に達し、海外の大手企業を上回った。生産額利税

率から分析すると 2002 年の外資企業の生産額利税率は 8.0%で、全業界の生産額利税率は

5.21%であるから両者にはかなりの隔たりがある。世界の大手企業の順位からすると、中

国企業を1位の米国のインターナショナル・ペーパー(IP)と比べると著しい差がある。

米国のインターナショナル・ペーパー(IP)は世界の上位 500社の中で 72 位に位置し、従

業員 10 万人、2002 年の売上高は 249.8 億ドル、中国の製紙産業の総生産額の 1.48 倍であ

る。

7.3 木材パルプによる製紙産業の国際競争力向上対策

7.3.1 国内市場の需要影響力の発揮

国内消費者の消費形態、国内市場の大きさ、成長速度及び国内需要を国際的需要に転じ

る能力は、林業の産業競争力形成に重要な影響を与えている。中国林業の現状からすると

林産製品に対する国内需要は甚だ盛んである。中国の国内企業は地の利、人の和という優

位性に立ち、この状況を充分に利用し、体制改革と技術革新を行うべきである。製品の品

質がよく、値段が合理的であれば、同一条件下では国内企業の方が外資企業より市場を占

有し易い。

7.3.2 関連支持産業との連携の拡大

成功する産業の周囲には常に関連産業が数多くある.関連支持産業に投資、生産される

高級要素産業と市場はその産業に関連して利益を齎し、国際競争の上でより強い地位を獲

得することができる。中国の木材パルプ、紙製品の価格は高過ぎるが、これは長く林業と

製紙が隔離されていて原料の保障に欠け、木材価格が高過ぎることと大いに関係がある。

現在、林紙結合が云われ木材パルプ・製紙産業は発展、強化させる国家発展戦略に組入れ

られている。

7.3.3 経済林地の造成強化と木材パルプによる製紙の原料保障の向上

中国の森林資源の不足は製紙産業の発展を制約する大きな原因となっている。現在の国

際森林環境保全の動向からすると、中国の製紙原料は国内に立脚すべきであって、国内の

人工林資源の利用を主とし、海外の木材パルプの利用を従とする製紙産業を展開するよう

な施策を立てるべきである。製紙原料に重点をおいて造林種のユーカリ、3倍体毛白楊(ド

ロノキ)、イタリアポプラなど適切な早生樹種や云杉15、冷杉16、松類など製紙に適した優

15 トウヒ Picea 16 モミ Abies fabri

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良樹種の人工植林を広げ、特に優良な品種や丈夫な苗の育成に力を入れ、進んだ栽培技術

と管理を実施し、製紙用林としての生産性を高め、製紙林基地そのものの活力を増強すべ

きである。

7.3.4 原料構成の改変と製紙産業の改善、国際競争力の増強

WTO加盟後、中国の製紙産業は国際市場の激しい競争に生残り発展するためには、製

紙産業の原料構成を改善しなければならない。産業構造の改善を進め国際競争力を強化す

るためには以下のことが考えられる。1.原料構成を改善し木材パルプによる製紙を進め

る。2.製品構成を改めて新聞用紙、上級紙と板紙の増産を促進する。3.製紙産業のス

ケールメリットを高め、パルプの製造を集中化し、製紙を分散する形式にし、企業規模を

拡大し、木材消費原単位を下げ、企業の効率化を図る。4.市場と情報サービス体系を改

善する。

7.3.5 多様な林紙結合方式の実施促進

企業組織については林紙分離と細分化体制を打破し、市場指向とし、資本を統合し、資

源の配分を改善し、所有制度、地区、部門、業界を越えた連合を結成し、株式、独資、合

資、合作、共同経営などの制度を採用し、基本的な林紙結合の企業組織を設立する。

7.3.6 林業の改革促進、指導的企業の育成

競争優先を促進するのには、中国の林産工業は考え方を転換し、実力、危機意識、市場

競争経験を備えた企業になる必要がある。1.伝統的な林業経済体制を市場経済体制に転

換させる。2.伝統的、孤立的な経営方式を連合、集団、株式制に変える。国有製紙企業

を株式制または民営化改造を行い、企業制度改革の下で、経済的規模をもつ中程度の産業

技術をもつ企業への再編を促進し、3~8社の指導的企業を育成するのであるが、投資、

税金、金融政策について優遇し、十分な実力をもち、影響力のある指導的企業を育成する。

7.4 製紙産業の優位性

7.4.1 生産設備

現在、中国は世界最新の技術と設備である連続蒸解、酸素脱リグニン、二酸化塩素製造、

過酸化水素漂白、各種類の化学機械パルプ製造、塗工技術、古紙脱インキ、ツインワイヤ

ー抄紙機、パルプシート自動包装系統、廃水処理設備など殆どを所有している。しかし、

全体からみれば、中国のパルプ、製紙用の設備の製造は全体的に先進的な国際水準と比べ

るとまだ格差が大きい。規模についていえば、先進的な技術と設備を所有している中国企

業は海外に比べ一般に規模が小さく、経済的規模でないため、国際市場において地歩を占

めることが難しい。数としては中国には何千という製紙工場があるが先進的技術と設備を

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もつ企業は僅か一部分で、大多数の製紙工場の技術、設備の水準は低い。総じていえば中

国の製紙企業は全体として規模が非常に小さく、設備が旧式で、技術が立ち遅れ、競争力

が弱い。大型工場の先進的設備と中核の技術はまだ輸入に頼っており、例えば、海外の独

占的資本との合弁企業の大型計画の主要設備は殆どが輸入である。

海外の抄紙機の速度は一般的に 1,700~1,800 m/分であるが、中国の抄紙機は普通、

500~600 m/分である。紙のt当り石炭消費量は国際的には 1.2tであるのに対し中国は

平均、1.4t以上を消費している。用水の消費量は国際的には 80tあるいは先進的な水準

であると僅か 50t、あるいはもっと低いが、中国では一般的には 200t以上である。

この十年来、中国のパルプ製紙設備製造業は技術的に輝かしい飛躍を遂げ、現在、パル

プ製紙設備の製造に関わる企業はおよそ 500 社あって、製品も既にかなり進歩して技術的

に適応性が強く、技術も進んで製品の種類も多く、電装、意匠、コンピュータを組み込ん

だ新製品となっており、少なからずの製品が先進的国際水準にほぼ到達している。先進的

で実用になっている設備としては次のものがある。日産能力 400tの古紙パルプ製造の関

連技術とその設備および日産能力 250tの古紙脱インキ漂白パルプの関連技術とその設備、

年間生産能力7万tの非木材繊維横型連続蒸解設備、日産能力 600tの粗選機能一体型ド

ラム式パルパー、ウォシャー、密閉式スクリーン、中濃度無塩素・TCF漂白設備、ダブ

ルディスクリファイナー、加圧式ディスクフィルター、新式実用型文化用紙抄紙機および

板紙抄紙機、スーパーカレンダー、塗工機、スリッター、リワインダー、ソーダ回収など、

省エネ低排出設備及び自動制御装置などである。例えば、海南省の金海には年産 100 万t

の晒木材パルプ設備、山東省の晨鳴には 25 万tのケミメカニカルパルプ製造ライン、山東

省の華泰には 45 万tのオフセット新聞用紙抄紙機、芬欧? 川(UPM-Kymmene)の 45 万t

上級非塗工紙抄紙機、江蘇省には金東の 60 万tオンマシン塗工抄紙機、江西省の晨鳴には

30 万tの軽量塗工抄紙機、寧波の中華には 75 万tの塗工白板紙生産ライン、山東省晨鳴

の 40 万tの塗工白板紙生産ライン、玖竜の太倉 50万tのクラフト板紙抄紙機、上海の正

隆 35 万の強化ライナー抄紙機、山東省恒安の 6万tの衛生用紙抄紙機、河北省の斯諾克騰

龍の日産 1,000tの古紙処理設備と金海の年産 100 万tの化学木材パルプ「三廃(廃水、

廃気、廃物)」処理設備などがある。

導入近代的工業技術は以下のようである。低濃度連続蒸解法、省エネルギーバッチ式蒸

解法、多段向流式洗浄、全密閉式高温スクリーン、酸素脱リグニン、高濃度無塩素漂白、

TCF漂白、広幅高速抄紙機、大型古紙脱インキ処理設備、省エネルギー低排出装置、高

効率プレート式蒸発装置、低臭気回収ボイラー、省エネ型石灰スラッジ回収装置、排水処

理装置および自動制御系統など。

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現在、中国のパルプ製紙設備製造業の主な役割は主要なものを導入し技術を受け入れて

それを併せて吸収、消化して新規創造の道を行くことである。年間生産量 10 万t~30 万

tの竹化学パルプ、木材パルプの生産系統の設備と幅 6m以上、抄速 1,200~1,500 m/分、

年産 20~30万tの大型上級文化用紙抄紙機など大型設備に取り組み、核心技術の獲得に全

力を尽くすべきである。

7.4.2 生産コスト

中国の製紙産業のコストは原料の占める比率は、およそ 30%で海外の 25%より少々高い。

これに反して人件費の比率は低い。1人当りの労働生産性は海外の場合、差があるとして

も 100t~200t/人・年であるが 2007年の中国は 70t/人・年にも達しない。中国の製

紙工場はパルプ・紙を合体し、小規模であれ、大規模であれ一貫体制にして、海外に則っ

て「パルプを集中生産し製紙は分散する」方式によって低コスト、高効率、低汚染にしな

ければならない。

7.5 当面する問題点と対策

7.5.1 問題点

(1) 製品構成が市場の要求に適応していない。現在、中国の紙・板紙製品の種類は 600

種余り、品種が少ないとはいえないが、技術的価値が低く、殆どの製品は上級品

が少なく、黄板紙、ライナー、中しん原紙など低級品が 50%を占め、中級品が約

20%で、上級品は約 30%、紙と板紙の比率は6:4である。一方で低級品は過剰

で圧力となり、他方、中上級品の供給が甚だ不足であって需給構造に齟齬をきた

している。

(2) 原料構成が適切でない。国際的に見ると製紙原料の 95%以上は木材パルプであり、

北米、北欧の国では製紙原料は木材パルプが 100%である。木材繊維は長繊維で強

度が大きい特長があるから紙力が高く、品質のよい上級製品の生産に適している

ので、北米、北欧の紙製品は極めて品質が良い。中国の製紙原料は木材パルプの

比率が低く、非木材繊維の比率が多過ぎる。統計によると 1997年の中国の木材パ

ルプの比率はわずか 13%前後で草本パルプが 51%、古紙パルプが 34%、その他の

パルプが 2%である。非木材パルプの割合が過大であるのは、中国は森林資源が不

足しており製紙用造林基地が造成されていないためであるが、中国の製紙産業は

この半世紀近く発展してきたものの、その主要な原因は巨額な投資と豊富な森林

資源によって支えられる林紙一体化という国際的な主流である産業路線を避け、

「草本を主とした適地適宜」の路線を選択したことに拠っている。とはいえ特殊

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な歴史的条件下で中国は発展途上国として紙製品の消費の領域で「安価」な質、

量で消費需要を満たしてきたが、産業として中国の製紙工業は極めて素質が低く、

大型化、近代化、製品の上級化に向けての発展が制約されたという大きな代償を

払った。

(3) 古紙の回収率が低い。資源と環境問題を考慮すると世界各国では、森林資源が豊

富 な国でも古紙の回収利用を大いに重視している。2007 年の中国の古紙回収率

は 30.3%で世界平均水準の 37%を大きく下回っている。買入価格低いことと管理

がよくないことが主な原因とされている。

(4) 企業規模が小さくスケールメリットが低い。2007 年の中国の製紙工場の平均生産

規模は2.1万t/年を下回っているが、生産能力が最大のものとしては玖竜紙業(持

株)公司と山東省の晨鳴紙業集団があってそれぞれ年間生産量は 382.4万t、287

万tである。中国を除いた世界の製紙工場の平均生産規模はおよそ6万t前後で、

先進国の平均規模は大体 100 万tである。世界では年間生産量 100 万t以上の会

社は 500 社余りあり、生産能力が最大である Stora Enso 社の年間生産量は 1,372

万tである。現在のところ中国大陸には世界製紙産業で上位 150 社に入る会社は

まだ1社もない。企業規模が小さいから当然のことながらスケールメリットがな

いどころか、リスクへの抵抗力も弱く、国際競争に参入するにも不利で、海外の

製紙産業の圧力に抵抗し難い。

(5) 管理水準が低い。ISO9000 品質マネジメントシステムの認証を得ている中国の製紙

企業は多くない。業界全体の管理水準は低く、エネルギー消費指数は高く、製紙

生産性はかなり低く、製紙コストが割高で、労働生産性が低く、競争力に欠けて

いる。

(6) 環境汚染が深刻である。中国製紙産業の汚染は生態系環境の安全を著しく脅かし

ている。製紙産業は中国の環境汚染の主要業界の一つで、パルプ製紙業の汚水排

水量のは全国の汚水排出総量の 10%~12%を占めていて第3位である。汚染排水

の化学的酸素消費量(CODcr)は全国の総排出量の 40%~45%を占め、第1位であ

る。現在、国内の製紙企業はいずれも規模が小さく、技術水準が低く、汚染対策

が立ち遅れているため、紙、パルプの需要が旺盛になるのにともない、製紙企業

の廃水排出量はますます増加しており、環境資源的な許容能力を峻厳に検査すべ

きである。パルプ製紙産業はかねてから中国の工業廃水と COD 排出の大手であっ

て、汚染排出を重点的に抑制すべき業界である。統計によれば 2006 年、製紙工業

の廃水排出量は 37.4 億tで、全国重点統計にある企業総排出量の 18.0%を占め、

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COD 排出量は 155.3 万tで全国工業の COD 排出量の 33.6%を占め、単位製品当り

の COD 排出量は 23.9kg/t である。

(7) 資金の不足。製紙産業は生産の集中度が高く、資本が高度集約型の産業であるた

め、中国が近代的な製紙産業を展開するためには、千億元単位の巨額な投資が必

要である。2020 年までに中国の紙製品の年間需要量はおよそ 2.1 億tに達すると

予測されている。2007年の生産能力7,350万tからすると、これから12年に改造、

更新および新増設を含めると 1 億 3,650 万 t 規模の実生産能力を増加しなければ

ならないが、このためには紙の生産能力を 1t増設するのには 1.5 万元の投資が必

要であるから、この需要に対しては 2 兆元以上の投資が必要で、毎年平均投資額

として 1,700 億元となり、これは中国製紙業界にとって天文学的数字である。

7.5.2 対策

現在、中国の製紙産業には多くの問題があるが、需要とともに同時に解決すべき主要な

問題が2つある。1つは原料の供給不足、もう1つは環境汚染の深刻さである。したがっ

て国は製紙企業の発展を促進するため関連政策の整備に努力しており、企業が原料林面積

を増やして製紙パルプの供給不足を緩和させて製紙企業が発展するようし、環境影響評価

を実施して製紙産業の環境保護の改善、国際協力を強化して中国の製紙企業の競争力を向

上させることにしている。

(1)林紙一体化の促進による製紙パルプ原料供給の向上

製紙工業は総体的に北から南へ発展するように調整を行う。広東、広西、海南、福建、

雲南及び湖南などの各省は自然環境が良好で、ユーカリ原料林基地発展の重点地区である

ため、当該地区において木材・パルプ製紙一体化の大型企業の建設計画を立てるべきであ

る。これにより製紙パルプ生産を南へ移動し、木材パルプ自給率向上の目標を実現する。

河南、河北、山東、遼寧、寧夏及び江蘇など省区はポプラに向く地域であるから当該地域

においては高収率のケミメカニカルパルプを発展させる。

多元化造林モデルを設立する。例えば、自営造林、注文林業、委託協力造林、全体的買

収あるいは会社と農家の共同造林等である。多様な方途によって社会資金を導入すること

で、主に実力のある大手林紙集団及び資金的に実力のある民営林業主に頼る。国内外市場、

資源を充分に利用し、海外投資者を引き寄せ、林紙一体化に参加させることを推奨する。

同時に、ブラジル、チリ、ニュージーランド、インドネシア、日本などの国が指向してい

る早成多収穫人工林を育成し、林紙一体化の実施を通して製紙産業が発展した成功例を参

考にし、実行能力を有する国内企業による海外での製紙用林基地とパルプ製造を実施する

ことを支持する。

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「十一五」期間、『製紙産業原料林基地建設の促進に関する若干の意見』と『全国林紙一

体化計画の実施、及び 2010年の特別計画』を引き続き実施し、全国の林紙一体化計画建設

を加速し、重大な林紙一体化計画の促進と企業の自社製紙原料林基地建設に力を入れる。

そのうち、比較的に大きな計画は以下の通りである。湖南泰格、福建南紙、青山紙業、広

東広寧、広州紙業、湛江晨鳴、広西賀達、鳳凰、雲南雲景、寧夏美利、安徽安慶、山東亜

泰、華泰、晨鳴、太陽、泉林、河南濮陽、焦作、インドネシア金光、ストラ・エンソ(Stora

Enso)、シンガポール金鷹、日本王子など林紙企業の製紙用林基地などである。国内で造林

をしている企業も 50社余りある。2010年迄、製紙用林基地建設 500 万 ha、木材パルプ生

産能力 645 万tを増産する目標は達成できると予測されている。木材 5,600 万? 、竹材

1,350 万tを供給して、木材パルプ 1,300 万t、竹パルプ 400 万tの生産系統を増設し、

国際市場への木材パルプ依存度を大きく低下させる見通しがある。建設中の林紙一体化の

工程と製紙パルプ計画を表 7-2、2007~2011 年に国内建設中及び操業開始の大型製紙パル

プ計画を表 7-3、2007年の中国製紙産業における年間生産量 40万t以上の企業を表 7-4

に示した。

表7-2 製紙企業の木材・パルプ・紙一体化主要計画

社名 生産能力計画 (万t/年)

主要品種 2010年迄の計画林地(万ha)

樹 種

湖南泰格 50 ケミメカニカルパルプ

65.00 主要樹種ポプラ

湖南懐化 40 晒クラフト 木材パルプ

14.00 馬尾松

福建南紙 20 オフセット 新聞用紙

10.00 馬尾松、湿地松

福建青州 20 化学パルプ 10.67 馬尾松、湿地松

シンガポール 亜太

100 化学パルプ、ケミメカニカルパ

ルプ 20.00 馬尾松、ユーカリ

広州紙業 50 オフセット 新聞用紙

8.67 馬尾松、ユーカリ

広東鼎豊 30 ケミカルパル

プ、紙 10.00 ユーカリ、現地樹種

広東泉林 20 ケミメカニカル

パルプ 4.00 ポプラ

山東華泰 20 ケミメカニカル

パルプ 4.00 ポプラ

山東太陽 20 ケミメカニカル

パルプ 4.00 ポプラ

寧夏美利 20 ケミメカニカル 3.33 ポプラ

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65

パルプ

焦作瑞豊 20 ケミメカニカル

パルプ 6.67 ポプラ

濮陽竜豊 10 ケミメカニカル

パルプ 2.67 ポプラ

河南新亜 20 白板紙 2.67 ポプラ 雲南雲景 10 化学パルプ 6.67 思茅松、ユーカリ

安徽安慶 30+40 ケミカルパルプ、ケミメカニカルパルプ

33.33 ポプラ

APP広西金桂 30+150 ケミメカニカル

パルプ 60.00 ユーカリ、相思樹

広西 斯道拉・恩索(Stora Enso)

90 化学パルプ、ケ

ミメカニ カルパルプ

16.00 ユーカリが主

沈陽金新 50 ケミメカニカル

パルプ 13.33 ポプラ

湛江晨鳴 70 ケミカル木材パ

ルプ 20.00 ユーカリ

武漢晨鳴 20 ケミメカニカル

パルプ 3.33 ポプラ

海南金海 160 ケミカルパル

プ、紙 23.30 ユーカリ、ポプラ

広西賀達 20 ケミカルパルプ 6.67 ユーカリ、馬尾松

南寧鳳凰 10 ケミカルパル

プ、 2.00 尾葉? 、馬尾松

撫寧豊満 10 ケミメカニカル

パルプ 4.00 ポプラ

中冶? 江 60 ケミメカニカル

パルプ 13.33 ポプラ

金光青遠 60 化学木材パル

プ、 16.67 ユーカリ、ポプラ

APP 金瀾滄 60 ケミカル木材パ

ルプ、 40.00 ユーカリ、ポプラ

APP 雅安 20 晒竹パルプ 6.67 竹

黔東地区 34 晒製紙パルプ 23.33 馬尾松、カバ、 ポプラ

UPM-Kymmene 45 オフセット紙 ? ユーカリ

日本王子 60 晒製紙パルプ 20 早成樹種

鼎元(白山) 60 晒製紙パルプ 4.67 早成樹種

注:1.表7-2の出所;『2007年中国造紙年鑑』:2.企業は計画を調整中で個別の計画は2015年まで続くため以上の資料は参考資料 3.造林計画は自営造林、注文造林、委託協力造林、全体買収、(会社+農家)造林を含めている。 訳注:樹種の和名、学名が別表

表7‐2から見ると中国で現在、建設中の林紙一体化計画と製紙パルプ計画のうち、ポ

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プラ、カバ、ユーカリ、松および早成樹種が主であるから、海外からの木材パルプへの依

存度は大きく軽減される。2015年末までに以上31社の大手林業製紙企業の造林面積は473

haに達する。

表7-3 2007~2011年に国内で建設中及び操業開始する大型製紙パルプ計画 企業 場所 品種 生産能力 (万 t) 操業開始年

APP 金桂 広西欽州 BCTMP 30 2009 APP(亜州漿紙) 寧波 APMP 25 2007.11

太陽 山東 APMP 10+20 2007.11/2008.5 赤天化 貴州 晒竹パルプ 20 2007

泰格 湖南懐化 晒広葉樹 パルプ

40 2008

泰格(中冶集団) 湖南? 江 晒広葉樹 パルプ

30 2008

晨鳴 湛江 晒広葉樹 パルプ

120 2010

亜太森博 山東日照 漂白広葉樹 パルプ

150 2008

APP 沈陽 BCTMP 50 2009

Stora Enso 広西北海

1 期目: ユーカリ材パ

ルプ 2 期目:BCTMP

90 30

2011 2009

王子製紙 南通 晒広葉樹 パルプ

70 2011

華泰 安徽安慶 晒広葉樹 パルプ

30 2010

金鷹新会 広東新会 晒広葉樹 パルプ

120 2011

恒興紙業 河南恒興 CTMP 20 2009

永豊 四川 晒竹パルプ 15 2008

理文 重慶 晒竹パルプ 15 2008

瑞豊紙業 河南焦作 CTMP 15 2011

銀鴿 四川 晒竹パルプ 15 2008

福建超輝 福建 晒広葉樹 パルプ

120 2011

赤天化 貴州 晒広葉樹 パルプ

25 2008

APP 金桂 広西 晒広葉樹 パルプ

160 2010

鼎元(白山) 吉林臨江 製紙パルプ 60 2010

注:2008 年『国際造紙技術報告会論文集』より採録

表 7-3 によれば 2015 年に木材パルプ、竹パルプの総生産量は 1,260 万tに達する。

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2007 年現在の生産量 600 万tを加えると合計 1,860万tになる。既存の木材パルプ、竹パ

ルプ工場を拡張すれば 2015 年までに木材パルプ、竹パルプは 1,460 万tに増加すると予想

される。

表7-4 2007年の中国製紙産業で年間生産量40万t以上の企業 社名 生産量(万

t) 主要製品

玖竜紙業有限公司 382.43 高強度ライナー、高強度中しん原紙 山東晨鳴紙業公司 287.00 アート紙、軽量塗工紙、新聞用紙、オフセット用紙、

筆記用紙、白板紙、ライナー 理文造紙公司 237.00 高強度ライナー、中芯原紙 金東紙業(江蘇)公司 220.22 アート紙 華泰集団公司 150.56 新聞用紙 山東太陽紙業公司 143.63 上級塗工板紙、工業用原紙、事務用紙 寧波中華紙業公司 138.28 上級塗工白板紙 湖南泰格林紙集団 87.03 軽量塗工用紙、新聞用紙、オフセット用紙 芬欧匯川紙業公司 81.00 上級文化用紙 山東 ?博 紙業公司 72.22 筆記用紙、オフセット紙、嵩高紙、アート紙、クラ

フトライナー、塗工白板紙 東莞建輝紙業公司 66.00 上級白板紙、白板紙 金華盛紙業(蘇州) 公司

56.32 ノーカーボン紙、オフセット紙、塗工カード用紙、事務用紙

浙江景興紙業金氏 53.05 クラフトライナー、白ライナー、紙管原紙、 高強度中芯原紙

河南銀? 実業投資集団 50.18 上級文化用紙 新郷新亜紙業集団 49.30 文化用紙、包装用紙 安徽山鷹紙業公司 47.94 クラフトライナー、中芯原紙 山東泉林紙業公司 46.44 文化印刷用紙、無菌包装製品、中上級生活用紙 山東華金集団公司 46.20 文化印刷用紙、包装用紙 山東銀河紙業公司 44.55 オフセット紙、筆記用紙、事務用紙、嵩高紙、

高強度中芯原紙 上海中隆紙業公司 42.60 クラフトライナー 広東製紙集団公司 42.33 新聞用紙

注:数値は中国造紙協会 2007年の報告に準拠

表7-4から 2007 年における中国製紙産業で年間生産能力 40万tの企業は 21 社あり、

製品は低級から高級まで不同であって、主要な製紙企業は沿海、中原地区に集中している。

表7-5 2008~2010年の主要紙製品の増産能力及び30万t以上の建設計画 社名 製品品種 生産量

(万 t) 投資見込 (億元)

投資年

中冶美利 塗工白板紙 30 15.5 2008 山東華泰 アート紙 40 52 2008 福建優蘭発 文化用紙 60 ? 2009

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金海漿紙 文化用紙 60+80 ? 2009~2010 広西金桂 文化用紙 60+150 ? 2009~2010 広西金桂 白板紙 50 ? 2010 Stora Enso

クラフト板紙 木材パルプ

45 90

2 項合計150

2009~2010 2010

泰格 文化用紙 40 25.7 2008 江蘇王子 アート紙 80 ? 2010

金鷹新会 文化用紙 45 52.8 2010 山東博? 塗工紙 30 20 2008 昌東世紀陽光 白板紙 50 12 2009 山東太陽 塗工白板紙 40 25 2008 山東太陽 液体包装 30 12.8 2008 上海金奉 塗工紙 36 10 2009 玖竜(重慶、東莞、太倉) 玖竜(天津太倉) 玖竜(天津)

クラフトライナー 高強度中心原紙 クラフトライナー

段ボール クラフトライナー

段ボール

180 140 70 90 35 45

玖竜紙業 合計 322

2008 ~ 2010

江蘇理文

クラフト紙 ライナー

40 50

? ?

2009 2010

東莞理文 段ボール 40 ? 2008 浙江景興 ライナー 60 12 2009 河南江河 包装板紙 40 30 2010 広州紙業 文化用紙 40 ? 2009 河北江河 文化用紙 30 7.5 2008 浙江吉安 塗工板紙 45 9 2008 沈陽金新

クラフト紙 文化用紙 白板紙

35 35 50

沈 陽 金 新紙業 3 項合計

103

2010

福建超輝

ケミメカニカルパルプ 40 120

2 項合計120

2010~2011

張家港華興 文化用紙 40 9 2009 鎮江金河 木材パルプ

40+60 ? 2009~2010

山東万国 段ボール ライナー 塗工板紙

40 ? 2008

注:“2008 国際製紙技術報告会論文集”及び“中華紙業”2008.7 より採録

表 7-5 が示すように、年間生産量 30 万t以上の計画は3年内に操業開始の紙・板紙の総

量は計 2,300 万t、年間生産量 30 万t以下の建設計画を加え、2015 年までに操業を開始

すると、技術設備が旧式で汚染が深刻な小工場の倒産に拍車がかかる。これは企業の構造

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調整に役立つ。

(2)汚染物排出の新基準の実施と環境影響評価の施行による製紙産業の環境保護水準の向

製紙パルプ製造業の水質汚染物質新規制を実施し、製紙計画の進展に伴う環境影響評価

を行い、環境影響評価と追跡調査、監視を組織化することによって、製紙業のクリーンな

生産を促進して、環境保護の水準を高める上で極めて大きな役割を果すことが出来る。

2009 年 5 月 1 日から、既存企業における新しい国の排出基準を実施すると、業界の CODcr

排出量は 95 万tに減少する。“十二五”期間17、新設企業に排出規制値を制定することよ

り、企業の CODcr 排出量は 43.4 万tに減少できると予測され、環境効果がかなり大きい。

新基準は新旧の企業に異なる品種毎に異なる排出抑制要求を出している。古い企業に対

しては2009年5月1日から2011年6月 30日にかけては過渡的な水質汚染物質排出濃度規

制値を適用する。新規企業に対しては 2008 年 8 月1日から新しく規定する水質汚染物排出

濃度規制値を適用するが(表7-6参照)、特殊地区の水域においてはより厳しい基準を執

行する。新基準には、色度、総窒素、総燐、アンモニア性窒素、AOX 及びダイオキシンの

排出規制を追加する。単位製品当りの基準排水量にも要求が出されている。各種の汚染物

質の監視場所、測定方法、排出濃度の算出方法、規制値を超える排出の判定方法、都市汚

水処理場への排出の監視方式などの内容についても規定されている。

表7-6 既存企業の水質汚染物質排出規制に関する新基準(GB3544-2008)

企業タイプ パルプ製

造業 古紙パルプ製造、同製紙業

その他パルプ製造・製紙業

製 紙業

排出濃度基準 pH値 6~9 6~9 6~9 6~9

色度(希釈倍数) 80 50 50 50

浮遊物質量(SS) mg/L 70 50 50 50

生物化学的酸素要求量 (BOD5) mg/L

50 30 30 30

化学的酸素要求量 (CODcr) mg/L

200 120 150 100

アンモニア窒素 mg/L 15 10 10 10

17 中国第 12回 5ヶ年計画 2011 年~2015年

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70

総窒素 mg/L 18 15 15 15

総燐 mg/L 1.0 1.0 1.0 1.0

吸着性有機ハロゲン化合 物(AOX) mg/L

15 15 15 15

注:1.現存企業の規制値より新規企業の規制値がより厳しい。CODcr を例にすると 2008 年 8月 1日からパルプ製造企業は 100 mg/L の新規制値を適用し、単位製品当りの基準排水量は 30t/tパルプと定められている。2.2011 年 7月 1日から現存企業に新規企業の新基準を適用し、これには単位製品当りの基準排水量も含まれる。

計画案 3:海南省金海パルプ製紙企業

金海紙パルプ工場の年間生産量は晒クラフトパルプ100 万tの硫酸塩漂白ケミカルパル

プで、これは現在、世界最大の規模で技術設備とも最先端のもので、1系統で「三廃」処理

も完全に整っており、清水使用量はパルプの1t当り 30 ? で、COD の排出値は 100mg/L で

ある。

計画案 4:江蘇省金東紙業公司

金東紙業は年産上級紙 160万tで、国際的に最先端の抄紙機と節水汚濁処理の新技術、

新設備を導入し、且つ全て市販木材パルプを使用し、循環経済の推進に努力し、クリーン

生産を全面的に実施、用水の循環利用率は 96%以上、紙t当りの用水量は 9.53 ? で、排水

量は 7.86 ? 以下である。処理後の排水は工場道路の埃止め、緑化、灌漑などに用い、節水

汚濁処理は国際先進国並みである。

計画案 5:山東省華泰紙業集団

山東省華泰紙業公司は年産 45 万tの新聞生産ラインを持ち、古紙を原料とし、用水の循

環利用率は 96%以上に達し、紙t当りの用水は僅か8? である。汚水処理は物理化学的-

嫌気性-好気性-化学処理を組み合わせた方法を採用し、CODcrは 150mg/L 以下に抑制し、

処理水は生産に再用し、剰余の水は製紙用早成林とあしの生育地の灌漑に用いる。

計画案 6:天津万利天然繊維薄膜有限公司

天津万利は国産の設備を使用し、古紙を原料にして中芯原紙を生産する。年間生産量は

8万t、用水の循環利用率は 98.1%、紙t当りの用水量は 2.8-3.0 ? で、廃水排出は殆ど

無い。

製紙産業界の先進企業(計画案3~6)の用水量と COD 排出量の例で説明すると、先進

的な管理方法、技術設備を採用し、国の政策と業界基準を厳格に実施すれば製紙に伴う水

質汚染物質の排出新規制値を完徹する上で問題はない。

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(3)対外開放の継続、国際協力の強化による中国製紙産業の発展

外資を合理的、有効、積極的に利用し、国際的大手製紙パルプ企業による中国への投資

を的確に導入する。当然、中国側の外資利用法を改善、改良を図り、重複あるいは過度の

外資利用を避け、外資利用の質、量、水準を高めると同時に、国内で好条件にある製紙企

業を支援、激励して、国際的な規範に則って域外に投資し、国際的に活動する中国製紙企

業を発展させる。国内紙製品の品質、生産量が大幅に向上すれば多くの中国製紙企業は製

品を海外市場へ販売し、国際市場競争に参入し、これによって近い将来には中国の紙の輸

出量は年々増加することであろう。

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第8章 中国紙パルプ産業の主要企業

改革開放 30 年来、中国製紙産業は著しく発展し、特に企業総資産が世界第 1位となった。

ここまで発展してきたのは容易なことではなく、誰でも誇りに思っている。

2007 年に、中国製紙産業における年間生産量上位 10 社の企業は順に以下の通りである。玖

竜紙業(株)(年間生産量 382 万t)、山東晨鳴(チンミン)紙業集団公司(年間生産量

287 万t)、理文造紙(製紙)公司(年間生産量 237万t)、金東紙業(江蘇)公司(年間生

産量 220 万t)、華泰集団公司(年間生産量 151 万t)、山東太陽紙業公司(年間生産量

144 万t)寧波中華紙業公司(年間生産量 138万t)、湖南泰格林紙集団(年間生産量 87

万t)、芬欧? 川紙業公司(UPM-KymmeneCorporation)(年間生産量 81万t)、山東博?

紙業公司(年間生産量 72 万t)。これらの企業が発展してきた経緯、設備と投資動向は、

中国製紙企業の現状と動向を反映している。

8.1 玖竜紙業有限公司

(1) 会社概要

玖竜紙業有限公司(「玖竜紙業」または「本公司」)(株式番号:2689)は 1995 年に設

立され、生産能力で見ると、中国最大の段ボール原紙メーカーで、世界最大の段ボール原

紙メーカーの 1つである。玖竜紙業及びそのグループ企業(本グループ)は主に紙器用板

紙コート紙(クラフト、環境配慮型クラフトボール、白表クラフトボールを含む)、強化

中しん原紙及び裏ねずマニラを生産する。本グループの業務モデルは会社を紙パルプ一貫

メーカーの育成、一系列の良質包装用紙製品の生産に役立てる。玖竜紙業の抄紙機はそれ

ぞれ広東省東莞市、江蘇省太倉市及び重慶にある。本公司 4番目の生産基地は天津に位置

し、2009年 6 月に操業開始する見込みである。事業は珠江デルタ18、長江流域、中国中西部

及び北部を営業エリアとしてカバーしている。その他、本グループは内蒙古の合弁企業を

通して、未晒し木材パルプを生産し、四川楽山で高級特種紙と竹パルプの生産を行ってい

る。2008 年 5 月、玖竜紙業はベトナムの 1つの製紙工場 60%の株式を買収し、ベトナム、

ラオス、カンボジアなどのアセアン市場の占有を加速している。

国際レベルの包装用紙メーカーになることが玖竜紙業の目標である。グループは絶えず

大量の資源を投入し、先進的な機械と技術を導入し、製品の品質を向上させ、技術・管理

の人材を育成し、国際的で先進的な管理方法を採用し、企業資源計画システム(ERP)を普

及し、企業の運営と管理をより一層向上させ完備する。同時に、玖竜紙業は人材が企業成

18広東省の東部で、広州、珠海、東莞、中山などの地区

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73

功の基本であると考え、従業員の福利厚生を拡充し、国内及び海外研修計画を立て、各階

層の従業員の能力を高めるために、さまざまな研修機会を設けている。

玖竜紙業は企業の発展を推進するとともに、積極的に社会責任を果たしている。工場建

設初期には、できるだけ環境への影響を減らすために、環境保護施設に多額の投資を行っ

た。そのほか、様々なコミュニティ活動を支援し、貧困扶助、被災者救済などの慈善活動

に参加し、社会貢献を行い国の支援策にも協力している。

玖竜紙業は 2006 年 3月 3 日に、香港株式市場に成功裏に上場した。

(2)業務概要

玖竜紙業は中国最大の段ボール原紙メーカーであると同時に、世界最大の段ボール原紙

メーカーの一つである。玖竜紙業は主にコート紙(クラフト・コート紙、環境保護コート

紙、晒クラフトボールを含む)、段ボール中しん原紙及び裏ねずマニラを生産する。グル

ープも本来の素材を活かした木材パルプの生産に携わっている。

本グループの業務モデルは会社を紙パルプ一貫メーカーの育成、1系列の良質包装用紙製

品の生産に有利である。玖竜紙業はサイズ、幅、機能、生産数量の異なる抄紙機を活用し、

需要に応じた製品の組み合わせを供給できる。その上、本グループは数多くの生産ライン

を有し、ニーズに柔軟に対応し、多元的な製品の組み合わせを行った生産ができる。現在、

グループ 5種類の主要製品はユーザーの要求に応じた数多くの重量、サイズ等、種類の異

なる製品を供給している。

グループの抄紙機はヨーロッパ、北アメリカ、日本から導入した先進の技術である。中

国における年間生産能力は 695 万t、その内クラフトボール 370 万t、段ボール中しん原

紙 230 万t、裏ねずマニラ 95 万tを含む。これらの抄紙機はそれぞれ珠江デルタ、広東省

東莞市及び江蘇省太倉市にある。

各地域のニーズに応じて、玖竜紙業は生産基地を重慶まで拡張した。重慶は中国中西部

の要衝であり、湖北省・雲南省・貴州省・四川省に接し、多くの市場に応えることができ

る。近年、地域内では事業が拡大、発展し、ライナーのニーズを促している。新工場の位

置は戦略的に優位にあり、また重慶に在る地元の段ボール原紙メーカーの規模は小さく、

技術が遅れ、生産能力は限られているため、この工場が更に競争力を有し、本グループの

これからの発展にも重要な役割を果たすことができる。土地の面積は年間生産量500 万t

の生産設備と関連設備を収容できる。

4 番目の生産基地は天津港に隣接する寧河経済開発区に位置し、2010 年から操業を始め、

年間生産能力が初歩的に 80 万tだと予測されている。天津生産基地の完成に伴い、本グル

ープは徐々に中国のあらゆる主要な市場に拡大し、国内各地域における巨大な潜在需要に

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応えられる。本グループももっと優良なサービスを提供でき、潜在需要を開拓することが

できる。

2008 年 5 月、本グループは正式に四川省の高級特種紙プロジェクトと竹パルププロジェ

クトの生産と運営を引き継ぎ、電気絶縁紙及びコンデンサー用紙を生産し始めた。本グル

ープは 2009年まで、年間生産量を 5万tまで増加する高級特殊紙(電気絶縁紙とコンデン

サーペーパーが主である)及び 15 万tの竹パルプを生産する予定である。

2008 年 5 月、玖竜紙業はベトナムの1つの製紙工場の 60%の株式を買収することによっ

て、正式にベトナムへ進出し始める。グループは中国基地のために発注した抄紙機(年間

生産量 40 万t)をベトナムへ運び、2009 年末に操業を開始する予定である。

抄紙機を除き、玖竜紙業は様々な関連設備を運営し、本グループに電気、蒸気、排水処

理施設及び良質な物流機能を提供する。これらの設備を活用することにより、本グループ

はコストを節約する上で、もっとフレキシビルな方式で業務を管理でき、環境保護につい

ての業務も推進できる。

グループの目標は生産能力、収益性及び生産効率などの面で世界トップクラスの紙器用

板紙メーカーになることである。本グループは経済規模の拡大、技術改良の強化、一体化

した生産施設を通して、生産量を増やし企業運営の効率化を推進する。本グループは運営

効率の改善、販売地域の拡大、製品種類の増加、優秀な人材の採用などで、グループ事業

の持続的な発展を促進する。

(3)生産施設

東莞基地:紙器用板紙、段ボール中しん原紙及び裏ねずマニラを生産し、世界では紙・

板紙生産設備が最も集中した工場である。240万㎡の土地と、351 兆W容量の石炭発電設備

を有する。

太倉基地:上海市まで 50kmで、コート紙と強靭な段ボール中しん原紙を生産する。260

万㎡の土地と、240兆W容量の石炭発電設備を有する。

重慶基地:最初の 2本の年間生産能力総量 80 万tの生産ラインはすでに 2008年 8 月に

操業を開始した。計画した土地の面積が 240 万㎡で、工場まで埠頭と鉄道を建設している。

管内の段ボール原紙需要が急速に伸びている。重慶は湖北省、雲南省、貴州省、四川省に

隣接し、中国中西部の要衝である。重慶では、紙パルプ産業は、小規模で技術面で遅れた

メーカーが多いため異業種の産業をリードしている。管内では、メーカーの生産能力は 5

万t以下であるため、良質の段ボール原紙需要は沿海のメーカーによって供給されなけれ

ばならない。総合生産設備はスケールメリットをもたらし、年間生産能力 500 万tの生産

設備を収容できる土地、発電設備を確保している。先進的な環境保全管理施設、管理され

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た交通システムと物流機能、優れた立地条件、重慶市中心まで車で 40 分の距離、長江の河

畔に位置し、自社の埠頭を擁し、専用鉄道が工場まで伸び高速道路に近い。

天津基地:渤海経済中心に位置し、天津埠頭まで 30km、浜海新区に隣接し、浜海新区と

同じ優遇条件に恵まれている。2台の抄紙機の年間生産量は 80万tで、2009 年の半ばごろ

から生産を開始する見込みである。およそ 240万 m2 の土地、良質で十分な水資源、便利な

交通網に恵まれている。

(4)投資

玖竜興安有限公司(内蒙古):未晒木材パルプを生産している。中国内蒙古森林工業グ

ループ有限公司より、45%を投資した合弁企業であり、年間生産能力が 12 万tである。

ベトナムプロジェクト:製品はクラフトコート紙、環境保護クラフトコート紙及び中し

ん原紙である。株の持分率 60%、現在の年間生産能力が 10 万tである。中国基地のために

発注した抄紙機(年間生産能力 40 万t)をベトナムに運んだ。生産拡大の許可を得て、

2009 年末に操業開始する予定である。十分な土地で生産能力を増加できる。

楽山基地:高級特種紙製品(電気絶縁紙とコンデンサー用紙)及び竹パルプを生産して

いる。高級特殊紙の年間生産能力が 5万t、竹パルプの年間生産能力が 15万tである(2010

年に稼働する)。重慶及び太倉基地に竹パルプを提供する。

8.2 山東晨鳴紙業集団公司

(1) 会社概要

山東晨鳴紙業集団公司は紙パルプの生産を中心にする大手企業グループであり、A・B株

式の上場会社で、傘下には武漢晨鳴、晨鳴発電所、斉河晨鳴、湛江晨鳴、江西晨鳴、赤壁

晨鳴、延辺晨鳴、海拉爾晨鳴、吉林晨鳴など 10 社余りの子会社がある。総資産 226 億元、

生産能力 400 万tである。中国企業のトップ 500 社と世界製紙業トップ 50 社の中に入り、

中国上場企業のトップ 100 社と最も競争力のある 50 社の 1つだと評価されている。“晨鳴”

商標も国家工商行政管理総局に中国知名商標と認可されている。

現在、グループは国家レベルの技術センター、博士科学研究所19及び多数の国際一流レベ

ルの製紙生産ラインを擁する。主要な製品は高級アート紙、コート紙、微塗工紙、新聞用

紙、オフセット紙、電話帳用紙、コピー用紙、ライナー、筆記用紙、高密度繊維板、強化

フローリングなどである。そのうち、12 種類の製品は「国家レベルの新製品」に評価され、

23 種の製品は国内で供給できなかった種類の紙を生産し、4種類の製品は「国家検査免除

製品」に選ばれた。製品はイギリス、日本、米国、オーストラリアなど50 余りの国と地区

19博士号取得など高学歴の研究者が製品、設備の開発に従事する研究所

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に販売されている。企業経済効果の主要指標が 12年連続で全国同業界の首位で、真っ先に

ISO9001 品質認証と ISO14001 環境保護認証を獲得した。相次いで、全国五一労働賞20、軽

工業における全国のベストテン企業、中国企業管理特別貢献賞、全国精神文明建設先進企

業など省級以上の名誉称号を 150 余り取得した。

経済グローバル化のチャンスと挑戦に向けて、晨鳴集? は企業の発展を中心に、新しい

ものを作り出すことを原動力にし、国際化戦略の実施に取り組み、世界への影響力が最大

となる製紙企業になるために全力を尽くしている。

(2)沿革

1958 年、寿光製紙工場を設立した;

1987 年、指導者の人事異動により、改革と発展の幕を開けた;

1989 年、経済効果の主要指標は山東省紙パルプ業界のトップとなった;

1993 年、株式会社に再編した;

1995 年、晨鳴のオフセット紙は「中国公認ブランド商品」に評価され、経済効果の総合

指標が中国紙パルプ業界のトップとなった;

1996 年、山東斎河板紙工場のリース経営を開始、低コスト拡大路線へ歩み始めた;

1997 年、B株券が上場、山東晨鳴発電公司、武? 晨鳴紙業公司を設立した;

1999 年、海拉爾晨鳴紙業公司を設立した;

2000 年、晨鳴の A株券が上場、赤壁晨鳴紙業公司を設立した;

2001 年、陳洪道は取締役社長になり、晨鳴を国際企業へと発展させ、延辺晨鳴紙業公司

を設立した;

2002 年、武漢晨鳴紙業では 15 万tの新聞用紙、斎河晨鳴紙業は 18 万tの紙器用板紙、

寿光晨鳴紙業 15.3 万tの高級アート紙プロジェクトは相次いで竣工、稼働した。江西晨

鳴? 業公司を設立した。

2004 年、20 億元の債券を成功裏に発行し、中国と海外の合弁企業である江西晨鳴紙業を

設立した;

2005 年、吉林紙業の資産を買収し、吉林晨鳴紙業有限公司を設立し、湛江木材パルププ

ロジェクトを受け継ぎ、中仏合弁の 10万トン特種紙プロジェクトを開始した;

2006 年、晨鳴 30 万tのスーパー圧光紙プロジェクトの試験が成功し、湛江 70 万tの木

材パルププロジェクトの基盤を磐石なものとし、「中国トップ 500 のブランド」に選出

され、“晨鳴”は同種類ブランドの首位であり、ブランド価値が 36 億元である;

20メーデーの日に国の建設に大いに貢献した人や企業に与えられる賞

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2007 年、“晨鳴”商標は「中国知名商標」に選ばれ、吉林晨鳴の高級微塗工紙工場が竣

工し、操業を開始した。

8.3 理文造紙有限公司

(1)会社概要

理文造紙(製紙)有限公司は 1994 年に設立され、小企業から世界でも先進的な段ボール原

紙と紙パルプメーカーの一つとなった。グループは2003 年 9 月 26 日に香港株式取引所に

上場した(株式コード:02314)。グループの主要製品は異なる規格、等級の包装用クラフ

トライナー及び段ボール中しん原紙で、様々な工業用包装ニーズに応えられる。過去数年

間、グループは原料の安定供給を確保するために、規模の拡大、パルプ製造、植林及び古

紙回収の業務モデルの構築に取り組んできた。

グループは現在、中国では 5つの工場があり、策略的に東莞? 涌、東莞洪梅、江蘇常熟、

重慶、広西に保有した。その他、ベトナムでも生産施設を建設する予定である。グループ

は先進機械と研究開発に資源を投入しつつ、良質で価格競争力のある製品生産に全力を尽

くしている。2008 年に、グループの段ボール原紙と紙パルプの生産能力はそれぞれ 376 万

t、15 万 t であり、2010 年まで、年間生産能力はそれぞれ 418万 t、30万 t に達する見込

みである。

収益性の高い業務を発展させるほか、グループは積極的に社会責任を果たし、特に環境

保護に力を入れている。従って、グループは資源を使用する際は適切な環境保護措置を実

施し、社会に好評を得ている。同時に、グループの作業場は度々品質及び環境保護管理方

面の国際認証を獲得した。

(2)沿革

1994 年 3 月、主席の李運強及び行政総裁の李文俊は中国の法律に従い、海外資本の「東

莞理文製紙有限公司」を設立し、段ボール原紙を生産している;

1995 年 5 月、香港で理文製紙(香港)有限公司が登録設立し、グループの財政業務を担

当する。

1996 年、 東莞? 涌工場が着工し、生産施設を取り付ける;

1998 年 8 月、グループ 1番目と 2番目の生産ライン(PM1&PM2)は? 涌工場で操業を始

め、段ボール原紙の年間生産能力が 10万tである;

2000 年 10 月、グループ 3番目の生産ライン(PM3)は? 涌工場で稼働し、年間 18 万トン

の段ボール原紙を生産する。

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2002 年 5 月、長江デルタにおける段ボール原紙のニーズが日に日に増加するチャンスを

掴むために、グループは中国法律に基づき、海外資本の「江蘇理文製紙有限公司」を設

立した。10 月、グループ 4番目の生産ライン(PM4)は? 涌工場で操業を始め、年間 35 万

t の段ボール原紙を生産する。10 月、EvergreenTradingCompanyLimitedはマレーシアの

アラブアン連邦直轄区で登録設立し、グループに米国とカナダから原料購買を担当する。

11 月、60 万㎡の土地を所有する常熟プロジェクト(註:紙パルプ工場建設プロジェクト)

が実施された。

2003 年 6 月、グループ 100%資本参加の関係会社「利国貿易有限公司」は澳門で登録成

立し、古紙購買、古紙購買の財務管理を担当する。6月、集団 100%資本参加の付属公司

「宏基貿易有限公司」は澳門で登録成立し、本グループ製品の販売、普及を担当する。9

月、グループは香港株式取引所で上場(株券コートネーム 02314)した。12 月、グルー

プ 5番目の生産ライン(PM5)は常熟工場で稼働し、紙器用板紙の年間生産能力が 20 万t

である。2004 年 1 月、東莞理文は DetNorskeVeritas の公布した ISO9001:2000 及び

ISO14001:1996 管理システム認証と管理認証の証明証を取得した。3月、グループは東莞

洪梅で 3番目の製紙工場を建設する計画を発表した。10 月、グループ 6番目の生産ライ

ン(PM6)は常熟工場で操業を始め、年間 35 万 t の紙器用板紙を生産する。

2005 年 2 月、グループは米国カリフォルニア州における年間生産能力 20万 t の木材パ

ルプ製造工場を買収した;

2006 年 1 月、グループ 7番目の生産ライン(PM7)は洪梅工場で稼働し、年間 45万tの段

ボール原紙を生産する。4月、グループ常熟工場は SGS の ISO9001:2000 管理システム認

証を獲得した。

2007 年 2 月、グループ 8番目の生産ライン(PM8)は常熟工場で操業を始め、年間 43 万 t

の段ボール原紙を生産する。6月、グループ九番目の生産ライン(PM9)は洪梅工場で稼

働し、年間 43 万tの段ボール原紙を生産する。洪梅工場は SGS により、公布した

ISO9001:2000 管理体系の認定書を得た。8月、グループ 11 番目の生産ライン(PM11)は洪

梅工場で操業開始し、年間 30万トンの段ボール原紙を生産する。9月、グループ 10 番

目の生産ラインは洪梅工場で操業を始め、年間 30万 t の段ボール原紙を生産する。10

月、理文製紙はアジアフォーブス誌にアジアの「ベストの中小会社 200社」と選ばれた。

2008 年 6 月、グループ 12 番目の生産ライン(PM12)は洪梅工場で稼働し、年間 35 万 t の

段ボール原紙を生産する。理文製紙は香港工業総会が公布した「毎年、毎工場に環境保

全を行う」計画―グリーン賞を受賞した。10 月、グループ 13 番目の生産ライン(PM13)

と漂白木材パルプ生産ライン(BHKP1)は重慶工場で稼働し、年間30万tの段ボール原紙、

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15 万 t のパルプを生産する。グループは 2億香港ドルで米国の木材パルプ生産事業を売

却した。

8.4 金東紙業(江蘇)公司

(1)会社概要

1997 年 5 月 18 日に、江蘇省鎮江港で正式に成立した。インドネシアの金光グループに付

属する金光紙業(中国)投資有限公司と鎮江金達工貿有限公司により、共同出資 21.73 億

ドルで設立された。「中華の振興、紙業の返却21」の旗を掲げ、中国製紙産業における小規

模、低級、汚染深刻といった状態の変化を目指している。金東の設備は世界水準と同じで

ある。ドイツ VOITH 抄紙機が 2台、速度が 1500m/分、幅が 9.77m である。フィンランドMETSO

塗工機が 2 台、速度が 1800m/分、幅が 9.77m である。製紙塗工を一体にする 3 号機械は速

度が 1800m/分で、幅が 9.77m である。

1997 年 5 月 18 日 金東紙業(江蘇)有限公司が設立された;

1997 年 8 月 8 日 金東紙業(江蘇)公司工場の建設が着工した;

1999 年 2 月 6 日 1号抄紙機が紙を作り出した;

1999 年 4 月 22 日 最初の外洋汽船“満江海号”は自社埠頭に停泊した;

1999 年 5 月 2 日 2号抄紙機が紙を作り出し、巻き取ることに成功した;

1999 年 6 月 9 日 1号塗布機が紙を作り出し、巻き取ることに成功した;

1999 年 12月 28 日 金東が ISO9002 国際品質システムの正式認証を得た;

2000 年 12月 15 日 金東が ISO14001国際環境管理システムの正式認証を獲得した;

2001 年 8 月 8 日 2号塗布機が紙を作り出し、巻き取ることに成功した;

2002 年 7 月 17 日 1号抄紙機は正常に 24 時間も運行し、速度が 1524m/分を維持し、世

界新記録を立てた;

2003 年 4 月 7 日 1号抄紙機の速度が 1528 m/分に達し、1524m/分の記録を破った;

2003 年 4 月 8 日 1号抄紙機の速度は 1537 m/分に達した;

21 いろいろな歴史的な原因で、中国の製紙市場は外国の製紙会社に占められていた。金東紙業は中国の製紙市場では、外国の製紙会社より、高いシェアを占めようとする。

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2003 年 4 月 24 日 1号抄紙機の速度は 1553 m/分に達し、抄紙機の最新記録を破った;

2003 年 6 月 金東が ISO9001:2000 の国際品質システム認証を得た;

2003 年 8 月 6 日 アート紙の反ダンピング事件に中国側は勝訴した;

2004 年 5 月 金東が国家環境友好企業称号を得た;

2004 年 9 月 24 日 金東は順調に cQcの OHsAsl8000職業健康安全管理システムの認証を

獲得した;

2005 年 5 月 3 号抄紙機が紙を作り出した上、巻き取ることに成功した;

2006 年 7 月 31 日 金東の紙パルプ・テスト・センターは国家レベルの(cNAs)実験室の認

可を獲得した;

2007 年 5 月 24 日 3号抄紙機の速度が 1720 m/分に達し、文化用紙抄紙機速度の世界記

録を破った;

2007 年 9 月、金東は順調に PEFC 森林認証プログラムの COC 審査許可を得た;

金東は 2005年の全国トップ 500 企業に、383位とランクされている。2005 年中国製造ト

ップ 500 社に、208位とランクされている。2004 年、外資企業の納税ランキングで 65 位

である。2005-2007 年製品品質の国家検査免除企業であり、2004 年全国品質管理先進企

業である。

(2)主要設備

2本の抄紙機生産ラインはドイツVOITH社により提供され、リール幅が9.77m、抄速が1500

m/分で、世界で抄紙幅が一番広く、速度が一番早い文化用紙抄紙機である。そして、速度

は 2回で世界記録を破った。2本塗工生産ライン塗工機はフィンランドMETSO 会社により提

供され、幅が 9.77m、抄速が 1800 m/分である。3号生産ラインはリール幅が 9.77 メート

ル、抄速が 1800 m/分で、技術と創意工夫で製紙と塗工を一体化し、文化用紙抄紙機の新記

録を立てた。

8.5 華泰集団有限公司

(1)会社概要

華泰集団は 1976 年に成立し、製紙・化学工業・印刷・熱電・林業・物流・貿易事業を一

体にする全国トップ 500 社の 1社である。山東省における重点管理の 24社の大手中堅企業

の 1つであり、山東省政府による重点育成する 20社の知名商標の一つでもある。世界最大

の新聞用紙生産基地で、2006年に国家統計局の公布した「第 1期の全国大手企業グループ

競争力トップ 500 社」に 3位にランクされている。

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華泰紙業傘下会社は 10 社余りある。主要企業は山東華泰紙業有限公司、華泰化工グルー

プ、華泰新華印刷、華泰熱力、華泰大厦、華泰林業、大? 華泰印務、華泰国際物流などで

ある。同グループは国家認定の技術センターと試験室を有し、業界最初の博士科学研究所

を設立した。2000 年 9 月、上海証券取引所で上場した(株の略称:華泰株式;株券コード

ネーム:600308)。華泰集団は山東省同業界における最初の A株券上場会社であり、上場

会社トップ 100 に 28位とランクされ、製紙産業上場会社の 1位となっている。会社は相次

いで 2000 年の ISO9001 国際品質システム認証と ISO14001 国際環境システム認証を得た。

また、「全国五一労働賞」、「全国契約を守り、信用を重んじる企業」、「国家レベルの

重点先進技術企業」,「全国におけるユーザーを満足させる製紙企業ベストテン」など名

誉称号を獲得した。

従業員1万名余り、資産 150億元、新聞用紙、文化用紙、包装用紙、生活用紙四大系列

100 種余りの品種を含む機械製紙能力 200 万t、製紙用薬品製造能力 100 万t年間印刷能力

は 50 万色令22、日間印刷量は 800 万枚である。? 泰? ? の製品は山東省製品品質賞を受賞

し、“? 泰”商標が「山東ブランド商品」、「全国ブランド商品」など名誉称号を獲得し

た。“? 泰”商標は国内製紙産業において、最初の「中国知名商標」である。? 泰新聞用

紙、オフセット紙、筆記用紙は国家検査免除製品に確定され、国内 20 あまりの地区、アメ

リカ、東ヨーロッパ、東南アジアなどの国家と地区に販売されている。2007 年、グループ

は合計 130億元を突破し、15 億元の税引き前利益を実現し、様々な税金を 8.9 億元納めた。

1995 年から、企業の総合経済効果はずっと全国紙パルプ業界の首位を固めている。

日増しに激しくなる国内市場競争に向かい、華泰は「設備を近代化し、製品の品質を高

級に、国際競争に参加し、森林・パルプ・紙一体化の戦略を実施し、高い操業効率で環境

に配慮した紙を生産する」という指導思想に基づき、2000 年から、相次いで 70 億元を投資

し、ドイツから 4本の国際一流の高級カラー印刷新聞用紙生産ラインを導入した。また、

2001 年に稼働した 16 万トンの新聞用抄紙機は当時中国最大の新聞用紙抄紙機である。2003

年操業開始した 25 万tの新聞用紙生産ラインは国際一流、アジア第一本の「ワンプラット

フォーム新概念」抄紙機であり、フォイト・ペーパー社最新の標準化モジュール式設計と

成熟な技術、及び先進の DCS, QCS, MCS などオートメーション化・システムを採用し、38

-48.8g/㎡の新聞用紙を生産でき、国内高級軽量新聞用紙を供給することができるように

なった。2005 年末に操業開始の年間生産能力40 万 t の高級カラー印刷新聞用紙プロジェク

トは世界最大の新聞用紙プロジェクトである。当プロジェクトは 22.8 億元を投資し、機械

の予定速度が 2000m/分、ドイツのフォイト・ペーパー社、フィンランドの METSO、オース

22印刷能力の単位は中国語では色令で表す

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トリアのアンドリッツといった国際トップレベルの抄紙機会社から最先端の技術設備を導

入し、各指標も世界のトップクラスにある。34-60g/m2 の高品質カラー印刷新聞用紙を生

産できると同時に、市場のニーズにより薄くて軽量なオフセット紙、電話帳用紙、辞書用

紙なども生産でき、世界では、今まで単一機械としては生産能力が最大、設備最先端、速

度が一番早く、抄紙幅が一番広く、品質等級が最高である新聞用紙生産ラインである。2006

年 10 月、華泰は新設の年間生産能力 45 万tの新聞用紙生産ラインが稼働した後、新聞用

紙の生産能力は 120万t以上に上り、中国市場総量に占める割合が 1/3で、世界最大の新

聞用紙生産基地となった。

第 10 回 5 ヶ年計画期間に、華泰グループは 100 億元を投資し、「林紙一体化」の国家重

点技術改革プロジェクト、広東新会双水発電会社と共同出資の 40 万t新聞用紙プロジェク

ト、世界トップ 500 社のストラ・エンソと共同出資の 20 万tSC紙、「興広」鉄道路線及び

他の工程と製紙用薬品製造プロジェクトを引き続き建設する予定である。2010 年まで、製

紙原料林 300 万ムー(20 万 ha)、漂白木材パルプ工場 70 万tを建設し、製紙年間生産量

300 万t、製紙用薬品 200 万t、印刷能力 80 万色令に達し、次第に国際物流、貿易サービ

ス、不動産など分野の規模を拡大し、売上高が 300億元を突破し、華泰を先端技術品の研

究開発、生産経営、技術サービスが主導で、科学・工業・貿易を一体にし、国際市場競合

力を擁する一流の現代企業グループに育成させる見通しである。

(2)投資動向

激しい市場競合の中、? 泰は積極的に実力のある企業と協力する戦略を実施し、相次い

で香港協発、勝利油田などと合弁企業を成立し、大? 報業グループと大? 華泰印務公司を

設立し、中国製紙と新聞が協力する先鞭をつけた。世界有名な抄紙機メーカーのドイツ・

フォイトを導入し、長江以北の製紙補修サービスセンターを設立した。第 10 回 5 ヶ年計画

の始め頃、? 泰は「海外進出」の発展戦略を実施し、先進国・地区の企業と積極的に協力

する。2006年 4 月、華泰は世界のトップ 500 社―フィンランドのストラ・エンソグループ

と華泰における 20 万tの SC紙プロジェクトの建設に対して合意に達し、フィンランド首

相のマテイ・マンハが北京で行われた調印式に出席した。2006年 8 月、華泰は広東新会双

水公司と広東における 120 万tの新聞用紙プロジェクトの建設に対し、合意に達した。こ

れは華泰が多元化から国際化へ移行することを示している。

8.6 山東太陽紙業有限公司

(1)会社概要

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山東太陽紙業有限公司は 1982年に設立され、3万元の借入金、30 数名の農民により設立

され村営の小工場から、次第に製紙、化学工業、貿易、電力、科学研究、林紙、投資を一

体に発展する大型株式企業となった。現在、総資産87 億元、年間生産能力 150 万t、従業

員 7,500 名で、中国最大の民営製紙企業、中国最大の高級塗工包装板紙生産基地、中国最

大の煙草生産企業、済寧市委員会・市政府による確立された最初の売上高 100 億元超の企

業である。主要製品は高級塗工包装板紙、高級工業用原紙、高級文化用紙三大系列の 150

種余りの品種、規格がある。製品は中国各地、アメリカ、アフリカ、及び東南アジアなど

国家、地区に販売されている。会社は最初に品質、環境、安全、食品 4つのシステム認証

を取得し、3回連続で「中国で最も生命力のあるトップ 100 企業」に選ばれた。

全国工商連が発表した 500 社の規模以上の民営企業調査に、会社は 87位にランクされて

いる。当社は「中国製紙業界ベストテン企業」、「中国信用でき、法律遵守郷・鎮企業」、

「中国における従業員に関心を持つ優秀民営企業」、「中国工商連システム優秀納税企業」、

「中国で最も生命力のある企業」、「山東省ハイ・テクノロジー企業」、「山東省文明信

用ベスト 100 企業」、「山東省排水処理先進企業」、「山東省品質効果型先進企業」など

名誉称号を取得した。

2005 年 8 月 30 日、同社は世界のトップ 500 社、世界最大の森林紙製品会社、世界最大の

製紙企業である米・インターナショナル・ペーパーと戦略的パートナー関係を結んだ。2006

年 4 月 4 日、当社は米・インターナショナル・ペーパーと高級塗工コート紙を共同経営す

る下で、国内需要を満たせる生産能力 30 万 tの無菌液体包装紙生産ラインを新設し、国際

化の戦略が実質的に発展を辿った。2006 年 11月 16日、会社は深? 証券取引所に上場し、

順調に資本市場に参入し、融資ルートと発展する余地を開拓した。取引して以来、株格が

どんどん上昇し、名実相伴う製紙産業で最も高値の株となった。

2007 年、会社は生産量 145 万 t、税引き前利益 10.7 億元を達成し、各経済指標が史上

新高値で、引き続き中国製紙業界のトップの地位を固める。2008 年、生産量 180万t、売

上高 100 億元、税引き前利益 15 億元を実現する見通しで、中国製紙業界では第 1のグルー

プである。

グリーン製紙業の旗を高く掲げ、環境に積極的に配慮した企業を創設する。数年来、会

社はあくまでも環境保護を会社の根幹に関わる工事として重視し、汚染処理に 10 億元を投

資した結果、汚水処理水準が同業界のトップとなり、全面的な「排出ゼロ」を実現し、か

つ ISO14000 環境システム認証も得た。同時に、積極的に循環経済理念を導入し、クリーン

生産・省エネルギー・排出削減を実施し、「事後処理」から「事前の策」へ転換する資源

節約型の道を歩き、環境効果、経済効果と社会効果の「3win」を収めた。

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経済グローバル化の挑戦とチャンスに臨み、会社は中国に立脚し世界に目を向ける。世

界では、改めて資源確保と戦略配置を行い、ラオスで太陽紙業ラオス有限公司を設立し、

紙パルプ用原料の森林を造成する。2008 年、同社は 200 万tの紙パルプを生産し、売上高

が 100 億元を超えた。2011 年迄、紙パルプ生産高 350 万t、売上高 200億元の目標に達し、

世界製紙トップ 50 社になり、主業抜群、多元化の発展モデルの国際化超大手製紙会社へと

育っている。民族の製紙産業の発展に向け、新たな大きな貢献をする。

(2)会社優位

太陽紙業は「品質を根本に、信用を基本に、徳を優先にする」の経営理念と「常に開拓

者精神で仕事を行ない、守りの姿勢は取らない」の経営主旨を忠実に遵守し、高・精・特・

格差化競合の発展を堅持することにより、中国の最終ユーザー紙製品、紙パルプ業界のリ

ーダー企業の地位を築いた。同社は中国最大の民営製紙上場会社であり、中国最大の高級

塗工包装用板紙生産基地でもある。また、同社は国際製紙企業と戦略的パートナー関係を

結び、中国主要のアート紙、煙草用紙生産企業、中国食品コート紙のリーダー企業、同業

界における初めて「五を一にするシステム認証」(五は環境・品質・衛生・安全・森林の

ことである)を取得した企業である。同社は業界における最良の資産回転率、最良の紙製

品と自製パルプ製造の最も優れた投資効率、流動資産管理能力を有する。

①製品優位

同社の主要製品は高級塗工白板紙、高級アート紙、未塗工文化用紙、工業原紙、自制パ

ルプなどである。

同社及び協力会社が擁する高級塗工白板紙は生産能力 120 万t、市場シェアは No1 であ

る。同社は中国における最も競争力のある白板紙生産企業である他、東莞建輝有限公司(年

間生産能力 70 万t)の 30%の株式を持っている。同社の白板紙の生産能力は 190 万tに上

り、中国白板紙メーカーの首位をしっかりと固めている。

同社は今、アート紙の生産能力が 40万tに達し、国内で主要なアート紙メーカーである。

数年に、当社の高級アート紙は業界における高い知名度があり、すでに国内数多くの著名

な会社の 1社となった。業界をリードする塗工技術を通して、同社は引き続きアート紙の

生産能力を拡大し、太陽紙業のアート紙ブランドを作り、最終製品ラインの広範囲な応用、

改革を継続する。

木材パルプ高級未塗工文化用紙の生産能力が 20 万t、他の中高級文化用紙と工業原紙の

生産能力が 20 万tである。当社の工業原紙はシール原紙、剥離紙、PS 差込用紙、薄膜紙な

どを含む。

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85

協力会社により生産した液体食品包装用紙は、HACPP(国家食品安全)の認証を得た。40万

tの「液体食品包装用紙」生産ラインは、既に 2008 年 8 月 8 日に成功裏に規定の生産量に

達した。同製品は会社の製品ラインが業界トップに進出することを促進し、太陽紙業にと

って新たな市場の切り札となる。

現在、当社の自製パルプ生産能力は大幅に高まった。傘下の関係会社のポプラ・セミメ

カニカルパルプ生産ラインは 2008 年 1月に操業を開始した。会社にとって新規の 3万t無

汚染水解法機械パルププロジェクトは2008 年 5 月に生産を開始した。2008年 6 月、子会社

の永悦会社の 10 万tポプラ・セミメカニカルパルプ生産ラインは着工し、2009 年 5 月に操

業する見通しである。2008 年、当社第 4回の株主大会は『回転式地球釜の改造と、アルカ

リ再利用プロジェクトに関する議案』を審査し通過した。当プロジェクトは国外先進の連

続蒸解設備を導入し、旧式の高エネルギー消費型の地球釜を廃棄し、会社のパルプ生産ラ

イン及びソーダ回収生産ラインにおいて、全面的な技術改造を行う。1000t/日のソーダ

回収プロジェクトでは回収ボイラ・蒸気タービン発電機、建設し、ソーダ回収作業場にお

ける電気、蒸気の完全的な自給を実現し、余剰の蒸気を抄紙機に用いる。プロジェクトは

2008 年後半に着工し、2009年 10 月に竣工し運営する見通しである。プロジェクト建設後、

年間6億元の売上が実現でき、利益はおよそ1億元である。

同社の自製パルププロジェクトの実行により、会社の利益率はより一層向上し、原料価

格が変動するリスクに抵抗する能力を強化する。

②企業管理、財務優位

高効率と着実な経営で、会社が迅速に発展する主要原因は、民営企業優良の管理体制で

ある。株主の価値と管理者の価値を相互に統一し、収益を重視することは正真正銘に達成

する。太陽紙業は国内においては、比較的早く民営化を実施した会社であり、株式は会社

に所有されている。

? 州市の金太陽投資有限公司の株式は、全て取締役社長李洪信及び会社の経営に携わる役

員に所有されている。会社は上場会社 67.51%の株を間接的にコントロールし、所有権と

経営権に関して高度な統一を実現した。これは会社が長期にわたり、持続的で安定する発

展が実現する基礎である。株式市場へ上場した後、株式所有優先権も株主が割り当ての配

当を超えて得ることができる基本的な保証であった。

会社第 1期株権奨励策の実施により、会社の奨励、規制体制を健全した。これは会社に

おける高層管理者と核心技術者の積極性・創造性を有効的に促し、会社の発展戦略と経営

目標の実現を確保し、会社と社員の共同持続的発展理念を強化し、長期価値の創造を推奨

し、会社の長期にわたる安定発展を促進する。

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会社は柔軟な給与制度、明白な奨励策と規制がある。柔軟な人材制度があるため、人材

が集まり、且つ安定している。会社の技術者は国内トップクラスの技術グループである。

当社は自社なりの持続、安定、健康、長期にわたる一致の企業発展戦略がある。最良の流

動資産管理能力、最良の資産回転率、高い効率の製紙、自製パルプの投資効率がある。ま

た、最も厳格な費用管理を執行する。

営業周期はおよそ 80 日で、業界水準を大きく下回り、資金の回収期間を大いに短縮した。

資金の回転率が 12 回を超え、回収期間が 29日もなく、十年以上連続で 100%の生産販売率・

代金回収率を維持している。当社は注文書により生産することによって、在庫製品量を厳

しく抑える。製品を生産するのが 10日ぐらいかかり、運送時間を加え、製品周期はおよそ

15 日で、近代化生産ラインの最低水準である。2001年から 2005年まで、太陽紙業は 32.6%

の平均純資産収益率を確保し、上場した後、同社の純資産収益率も高い水準を維持してい

る。株主への高額配当は太陽紙業が終始一貫して目標としている。紙の 1t あたり、自製パ

ルプの 1t 当りの生産には、必要な固定資産投資と運営資本投資は同業界水準を大きく下回

る。同社は 1t 当りの紙・パルプの投資規模が 4,000 元を超えない。同社の元固定資産回転

率はおよそ 1.5 回、同業界レベルを大きく上回った。同じ資金でも、サンペーパーはもっ

と大きな効果を発揮できる。同社は 1t 当りの紙の生産費用が合計 395元で、同業界水準と

比べ、明らかに低い。うち、間接費用の管理がもっとも際立っている。当社が上場した後、

資産負債率と債務融資コストは大いに減少し、財務費用のやや高い状況を顕著に改善し、

1t の紙当りの利益を向上させた。

③技術優位

20 年あまりの急速成長を経て、太陽紙業は業界トップクラスの技術陣を集め、国際的な製

紙リーダー企業に勤めたことのある管理・技術人材を擁する。同社は世界最先端の高級紙

製品生産技術をマスターしている。太陽紙業の製紙塗工技術が業界の発展方向を導き、太

陽紙業塗工紙が中国塗工紙の第 1ブランド商品となった。

同社は終始一貫「人を基本にする」という戦略を堅持し、「人材は第 1の資源である」

と「科学技術は第 1の生産力である」の思想を樹立し、企業の発展と実情を踏まえ、絶え

ず人材の導入、育成、配置メカニズムを改善する。

同社は人材戦略を実施する。企業革新の人材メカニズムを設立し改善し、メカニズムで

人材を激励し、「人材戦略」で「ブランド戦略」を推進し、引き続き科学技術者の生活、

仕事環境を改善し、優れた条件と手厚い待遇をもって、技術と優秀な人材を吸引し、自主

的革新の「人材バンク」を発展し、強大にする。新製品の開発改造プロジェクトには、専

任の責任者を任命し、重責を担わせ、仕事を通して新人を育成する。生産と科学技術進歩

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をめぐり、1年 1回に技術エリートと技術中堅の選挙を行い、500-1,000 元/月の技術補

助金を与え、科学技術者の積極性を高める。同時に、特許技術を獲得した社員に 5,000-

8,000 元を奨励するほか、特許技術を技術者資格評定の主要な根拠にする。

同社は中国工程院王天然院士とともに国家 863 計画「製紙業界における運搬ロボットシ

ステムの開発と応用」プロジェクトを引き受け、陳克復院士とクリーン漂白分野で協力す

る。863 計画と第 10回 5 ヶ年計画重点科学研究プロジェクトは「早成木材高収率パルプを

効率的に利用する技術の研究開発と産業化応用模範」である。同社により、自主的に研究

開発した液体包装用原紙生産技術プロジェクトは 2007 年の軽工業連合会により発表された

科学技術 1等賞と山東省科学技術進歩1等賞を受賞した。

同社は「大いに投入してこそ、大いに産出できる」の理念を堅持し、毎年、新規プロジ

ェクト、技術改革、プロジェクト研究開発に用いる資金が数億元以上に上る。毎年、企業

技術研究開発センターのインフラ建設と科学研究開発に用いる経費は売上高の 5.0%以上

を占める。

④エネルギー優位

製紙生産は大量の水、電気、石炭を消費し、エネルギー消耗が製品構造コストの 15%を

占める。当社本部は水、電気、石炭資源が豊富な地区に位置する。有名な炭鉱資源豊富地

区―? 州炭鉱は石炭資源が非常に豊富で、生産能力が 4000 万tを超える。同社は熱電連産

火力発電所を備え、生産需要の蒸気と電力供給を満たせ、安い値段でエネルギーの総合利

用に役立つ。一方、会社が位置する地区は山東省 3つの地下水が豊富な地区の 1つで、水

利資源が豊かで、利用コストが安い。

持続可能な発展を実現するため、2000 年、同社は真っ先に原料用森林基地建設プロジェ

クトをスタートし、山東太陽白楊科学技術株式会社を設立し、自社の原料林基地を建設し、

「森林で製紙産業を養い、森林で製紙産業を促進し、製紙を基本にし、林紙結合する」の

指導思想を確立し、会社が森林と結び、森林が農民と結ぶという生産モデルを探索し、土

地租借で自社有林を造成し、契約回収で協力造林の方式を通して、森林を主にし、溝・道

路・ルート・河両側植林、次耕地植林を従とする紙パルプ森林基地を造成する。

発展中、同社は苗木の栽培、樹種の選択、育成を第一にし、紙パルプ林研究センターを

設立し、科学研究グループを設け、次々と異なる樹種の対比実験、密度造林実験、異なる

モデルの生長量対比実験を行い、適地適木の原則に従い、樹種の選抜育種を行う。

木材パルプ生産ラインの操業開始に伴い、伐採期になった林地において、輪作を行った。

採伐した黒楊林は明かに早成優勢を示した。

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会社の発展機会を拡大し、持続可能な発展を保障するため、会社は適時に「海外へ進出

する」の発展戦略を提出した。一衣帯水の隣国関係と長い歴史の深い友情により、海外の

「森林・パルプ・紙一体化」プロジェクトはラオスで実施することにした。

会社は時期を分けて、ラオスにおける早成林基地の造成、ケミカル木材パルプ、熱電連

産プロジェクト、物流プロジェクトを行う見通しである。当社は海外林紙一体化プロジェ

クトの実施により、原料の管理能力、競争力の大いなる向上を図り、世界製紙のトップ 50

社になるのを目指している。

今まで、会社の海外プロジェクトは順調に行われている。会社は関連規定に基づき、深

? 証券取引所指定のメディアを通し、ラオスプロジェクトの進展を発表する。

(3)太陽投資

太陽紙業の本部は中国にあり、傘下は支社 2社、持ち株子会社 8社、協力会社 2社、資

本参加会社が何社かある他に、? 州・上海・米ロサンゼルス・パリで専門研究開発機構を

設立した。製品は米国、アフリカ、東南アジアなど20 ヶ国余りの国、地区に販売されてい

る。

百年ブランドを作成する、百年企業を育成する、世界一流の製紙企業になるという目標

を達成するために、太陽紙業は中国製紙業界トップの座に君臨した後、2002 年に珠江デル

タへ進出し、香港建輝公司に資本参加し、広東東莞市に中国最大の塗工包装用板紙生産基

地―東莞建? 紙業有限公司を設立した。東莞建? 紙業有限公司は珠江デルタの広い包装用

紙ニーズと優れた立地条件の優位性を利用し、高級塗工包装板紙を生産し、現在の生産能

力が 70 万tである。

2006 年 4 月、太陽紙業は世界のトップ 500 社、世界最大の森林紙製品企業である米・イ

ンターナショナル・ペーパー社と共同出資で高級コート紙の生産規模を拡大し、2社の協力

企業を設立した。同時に、アジアで実施したことのない生産能力 40 万tの無菌液体食品包

装用紙プロジェクトも達成した。これは企業の国際化戦略と飛躍的発展の実現に堅実な土

台を築いた。

2006 年 11月 16 日、太陽紙業は深セン証券取引所に上場し、順調に資本市場に進出した。

1回の公募だけで12.5億元を調達した。これは企業の資金調達ルートと発展機会を開拓し、

企業の核心競争力を高め、収益を上げてリスク対応能力を高めることなどを促進できる。

8.7 寧波中華紙業有限公司

(1)会社概要

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1997 年 7 月、インドネシア金光グループにより株式を所有されているシンガポールアジ

ア紙パルプ株式会社、香港中策投資公司、寧波白板紙会社、中国紙パルプ輸出入会社によ

り、共同出資して寧波中華紙業有限公司を設立した。同社は寧波市海曙区段塘鎮に位置し、

敷地面積 63万㎡、資産 53 億元、従業員 1605名、各種類の高級塗工白板紙の年間生産量が

50 万t、中国最大の最先進の塗工白板紙専門メーカーである。

中華紙業は新聞古紙、オフィス古紙、雑誌古紙などを製紙原料にし、生活、仕事環境を

大幅にクリーンにし、資源を節約するだけでなく、古紙の循環リサイクルも実現できた。

環境保全に関して、中華紙業は相次いで 1.6 億元を投資し、1999 年 3 月に真っ先に SGS 国

際認証機構が公布した「14001環境保全管理システム認証」を獲得した。なお、中国製紙産

業においてこの認証を得た第一社である。中華紙業は「寧波市環境保全ベストテン企業」、

「環境保全模範企業」、「庭園化企業」、「品質効果型企業」、「浙江グリーン企業」な

ど名誉称号を獲得した。2004年、中華紙業はまた真っ先に、OHSAS18001職業健康安全管理

システム認証と最初のクリーン生産審査を得た。同社は 1999 年から 2005 年まで 6年連続

で経済効果が同業界のトップである。売上高は中国外資企業のトップ 100 社で 108 位にラ

ンクされている。数年来、同社は良好な経済効果を達成し、地方の経済発展と繁栄に大い

に寄与した。2003 年、国務院に「中国華僑投資明星企業」称号を授与され、2005年、国家

環境保全総局に「国家環境友好企業」称号を与えられた。

主要製品は単面塗工裏ねずマニラ、両面塗工カード用紙、環境配慮型両面塗工紙器用板

紙、片面塗工黄しん白板紙、片面塗工裏白板紙などである。主要ブランドは金鴎、酋長な

どである。

(2)沿革

1988 年 8 月、当社の前身は寧波白板紙廠であった。1号抄紙機が稼働した;

1992 年 7 月、香港中策投資公司、寧波白板紙廠、中国紙パルプ輸出入会社は共同出資し、

寧波中華紙業株式有限公司を設立した;

1994 年 9 月、インドネシア金光グループにより 100%資本参加の子会社であるシンガポ

ール APP 社は資本参加し、持ち株主となった。寧波中華紙業有限公司は成

立した;

1996 年 10 月、自家発電設備(動力部門)が蒸気の供給を開始した;

1996 年 11 月、二号抄紙機が操業開始した;

1997 年 5 月、3号抄紙機が稼働した;

1997 年 6 月、自家発電設備が操業を開始した;。

2000 年 6 月、寧波市政府に「環境保全ベストテン企業」称号を与えられた;

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2005 年 12 月、「国家環境友好企業」称号を獲得した;

寧波アジア紙パルプ有限公司は寧波市北?? ?

の青峙工業区に位置し、前身は寧波中華紙業で

ある。従業員 1590 名、プロジェクトの総投資額 118.3 億元、第一期投資58.9 億元、敷地

面積 176 万㎡、建物面積 45 万㎡である。2002年 10月に着工し、2004 年 7 月 15日、設備

の設置が完了し、2004 年 12月、操業を開始し、2005 年 6 月、正式に生産を始めた。年間

生産能力は 75 万tである。抄紙機はフィンランド・METSO に提供される抄紙幅が 8.1m、抄

速が 900m/分、世界で最先端設備を持つ板紙抄紙機である。しかも、国際最先端の DCS オ

ートメーション化のコントロールシステム、QCS 品質コントロールシステムなどを装備して

いる。また、寧波アジア紙パルプ有限公司も世界で単位生産量最大の高級包装用紙メーカ

ーの一つである。

その他、環境保護製紙のグリーン理念を実践するため、寧波アジア紙パルプは 1日当り

45,000t、40,000tの汚水処理作業場の建設を計画するほか、4,000 万元投資し、円型密閉

式の環境保全貯炭所を設け、石炭の密封積み上げ、密閉運搬を実現した。そのほか、先進

的な排煙脱硫装置を建設し、循環流動層ボイラの先進的除塵・脱硫技術を通し、排気ガス

中に含まれる硫黄の量を国家標準より低くさせる。排水回収利用に関して、寧波アジア紙

パルプは密閉型の白水回収システムを採用し、中国製紙企業における紙の 1t 当りの用水量

が最も少ない企業である。また、2セットの 300T/Hの CFB ボイラーと 2台の 62.4MW の蒸気

タービン発電機を擁し、自社だけでなく、周辺地区にも電力を供給している。主要な国内

販売ブランドは金貝、金鴎、漢威、酋長、彩蝶、寧波の星、ナウェヤである。海外販売ブ

ランドは NINGBOSTATなどがある。そのうち、金貝裏ねずマニラ、漢威と金鴎高級塗工白板

紙は「寧波市ブランド商品」を獲得し、金鴎は「中国知名商標」、「浙江著名商標」称号

を与えられた。

金奉源紙業(上海)有限公司は上海市奉賢星火開発区に位置し、2004 年 5 月に成立した。

敷地面積 40万 m2、従業員 400名、総資産 5.8 億元、高級塗工食品コート紙と食品包装用紙

の年間生産能力 11 万tである。中国最大の食品包装用紙メーカーである。抄紙機はフィン

ランドの Tampella 社から 3,200mm 抄紙機と製紙設備を導入し、速度が 300m/分に達する。

また、同社は相次いでフィンランド、ノルウェー、アメリカから先進の古紙加工設備を導

入し、脱墨生産ラインの日間生産量が 150t、製品の品質が国際と同レベルである。生産を

発展する同時に、金奉源は特に環境保全を重視し、合計 2,500万元を投資した。カナダか

ら先進の汚染対策工法とプラント設備を導入し、国際先進の SBR 汚水生物化学処理技術を

採用し、各環境保全指標がすべて国家標準に達する。同社の主要製品は食品用紙、コップ

用紙、単面塗工白しんマニラ、片面塗工白しんマニラ、無菌液体包装原紙などがあり、「環

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境配慮型紙器用板紙」は上海市第一陣の特許新製品認定を得て、特許新製品として認めら

れた。

(3)企業設備

寧波中華紙業は創業してから、20 年の歴史があり、傘下には 2つの製紙会社、3台の抄

紙機(それぞれ日本、ドイツ、オーストリアから輸入した)を有し、板紙の生産水準が世

界先進レベルに達している。

寧波中華製紙一廠:製紙一廠は現在、抄紙機が 1台あり、1号抄紙機と称されている。日

本の小林製作会社から輸入し、1988 年に稼働してからずっと正常運転している。これは国

内において最も古いものであるが、高速運転を維持する現代化抄紙機である。その期間、

何回も改造されたため、1号抄紙機は近代的抄紙機の特性に合致し、年間生産能力も 3.4 万

tから 60 万tに上昇した。一号抄紙機の抄紙幅が 2.4m、速度が 150m/分、生産定量が 350

-550g/㎡、抄造の紙層が 8層もあり、中高級の灰板紙の抄造に適する。その高品質製品

は国内の印刷会社に歓迎されている。これは運転時間が一番長く、最も歴史のある 1号抄

紙機である。

寧波中華製紙二廠:製紙二廠は 2台の抄紙機があり、それぞれ 2号、3号と称され、それ

ぞれ 1996 年、1997年に稼働した。

ドイツのVOITHとオーストリアのANDRITZを採用した高度の近代化抄紙機は抄紙幅が4.2m、

速度が 500m/分、生産定量が 210-400 g/㎡の高坪量白板紙、アート級白板紙、カード用

紙などの高級品である。4層の長網を使用したため、製品の平均度が良い他、硬度も良いの

で、国内の最終ユーザーにとって、包装材料のベストな選択である。

寧波中華紙業、寧波アジア製紙有限公司国内販売の主要ブランドは金貝、金鴎、漢威、

酋長、彩蝶、寧波の星、? ? 雅(ナウェヤ)、白玉である。海外販売のブランドは NINGBOSTAT

などである。そのうち、金貝単面裏ねずマニラ、漢威と金鴎高級塗工白板紙は「寧波市ブ

ランド商品」を獲得し、金鴎は「中国知名ブランド」、「浙江著名ブランド」称号を与え

られた。

寧波アジア紙パルプ業はフィンランドの METSOによる作られたトップレベルの抄紙機が一

台あり、当機械がおよそ 600mの長さで、4階のビルに当たる高さである。

抄紙機は 5層抄長網であり、5つあるヘッドボックスの内 1つは濃度調整装置付である。

フォーマーは 5台の MB フォーマーより構成され、プレスは 2台のダブルフェルト SymBelt

シュープレス及び 1台スムーザープレスより構成される。プレドライヤーとアフタードラ

イヤーは 111 本のシリンダードライヤーより構成され、サイズプレスはOptiSizer で板紙

のプレコーティングを行う。板紙の厚みを調整するため、ハードニップカレンダー1台も装

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備されている。コーターは 5台の OptiCoatJet から構成され、板紙が 1台の OptiSoft ソフ

トカレンダー、1台の OptiReelPlus リールと 1台の WinBelt ワインダーを通過してからト

ップ層塗工を行う。

当機械は主に 250-450GSM の塗工白板紙と白地塗工白板紙の定量生産に用いられ、抄紙

幅が 8.1m、900m/分のリール抄速で高速生産を行い、1日の生産量が 2,500tで、年間生

産量は 75 万tである。しかも、完備の DCS、QCS 品質コントロールシステムを装備してい

る。現在世界では、抄紙幅が 1番広く、速度が最も早く、マシン」1 台あたり抄紙機の生産

能力が最高、生産技術が最先端の板紙生産ラインである。

1993 年、工場を創設した際:フィンランドの Tampella 社より、機械部分(ヘッドボック

ス、フォーマー、プレス、ドライヤー、サイズプレス、1ニップカレンダー、スーパーカレ

ンダー、潤滑システム)を輸入し、国産機械部分は上海製紙機械総廠より購入し、電気は

ABB 公司から導入し、計装は上海 FOXBORO から導入した。製品は食品用板紙 200g/㎡~450g/

㎡、生産量150(t/24h)、抄紙幅3,300mm、駆動速度250 m/分である。1997年の改造で、Cellwood

社よりフォーマーのトップユニットを導入し、2000年の改造では、Valmet 西安製紙機械有

限公司、沙市軽工機械公司から機械部分を導入した。電気は自社にて設計した。

2003 年の改造で、機械部分、運送システム、フォーミングレングスの延長、プレスのシー

トピックアップ装置は上海興維軽工機械組立有限公司により、組み立てられた。何回の改

造を経て、現在、抄紙機の技術指標は以下の通りである。紙品種:食品用紙、坪量 200~500g/

㎡、通常坪量 300g/㎡、生産量:300t/日、網幅:3,750mm、リール紙幅:3,300mm、最高運

転抄速:290m/分、駆動抄速:300m/分、設計抄速:400m/分(機械設計とバランス抄速)。

8.8 湖南泰格林紙集団

(1)会社概要

湖南泰格林紙集団有限? 任公司は紙パルプ製造、林業開発、板紙生産、モノレール生産、

埠頭貿易、不動産開発、化工などを一体にした国有大型企業であり、湖南省は工業化を促

進するために実施した「十大シンボル・プロジェクト」の先導企業であり、全国国有製紙

企業の旗艦である。2008 年上半期にかけて、同社は総資産 146億元、純資産 59 億元を擁し、

紙・板紙の年間生産能力が 130万tを上回り、自営紙用森林 200 万ムー(13 万 ha)、注文、

協力造林、青山購買などの林業運営モデルを加え、同社によって管理されている林業資源

が 500 万畝(33 万 ha)を超えた。2007 年、同社は主要な運営業務収入が 56.6 億元で、税

引き前利益 5.9 億元を実現した。また、同社は「全国五一労働賞」、「全国先進企業」、

「全国品質管理先進企業」、「全国模範従業員の家」、「全国品質効果型先進企業」、「全

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国環境保護寄与顕著賞」、「第二陣の国家循環経済試験単位」、「農業産業化の国家重点

先導企業」、「全国軽工業界先進集団」、「全国林業寄与顕著賞先進企業」、「湖南省文

明模範」など名誉称号を獲得した。

同社本部は長沙経済技術開発区に位置し、岳? 、益? 、永州、懐化、常德五大原料基地

と生産基地を含み、グループ全体の管理、研究開発、財務、物流、資本の運営センターで

ある。

そのうち、岳? に位置し、泰格林紙グループにより株式を所有される岳? 紙業株式有限

公司は 2004年 5 月 25 日に上海証券取引所に上場した。当社は万里の長城と洞庭湖の接す

る三江口畔に位置し、北―長江黄金水道に面し、西―八百里の洞庭湖に臨み、西―城陵? 2

つの 5000t海外貿易埠頭に接し、東―京広鉄道、京珠高速、107 国道に近い。便利な水路・

陸路、湖区豊富な淡水、葦、ポプラ資源があるため、ここは国内外製紙専門家に製紙産業

発展の黄金地だと譬えられている。当社は主に文化印刷用紙の生産、販売に従事し、30 種

余りの品種、100 種余りの規格がある。主要な製品は低定量塗工紙、中高級新聞用紙、顔料

整飾ゴム版紙であり、全国各地の他、東アジア、西アジア、東南アジア、北アフリカなど

に販売されている。当社の製品は 2000年 10 月に ISO9002 国際品質システム認証、2006 年

1 月に ISO14001:2004 環境管理システム認証及び GB/T28001-2001 職業健康安全管理システ

ム認証を取得し、国内における少数の「品質、環境、職業健康安全」管理体系認証を得た

企業の一つである。当社の製品は国内での評判が良く、「国家品質金メダル」、「全国顧

客満足製品賞」を獲得した。

同グループは1つの国家レベルの技術センター、1つの博士科学研究ワークステーション、

全国最初の企業独自の林業科学研究所を擁し、強大な自主革新能力があり、次々と 30 項目

あまりの自主知的財産権のある新製品、新技術、新工法などを開発し、国家、省レベルの

科学技術賞 19 項を取得した。そのうち、イタリア APMP パルプ製造新工法及びその応用は

2003 年国家科学技術進歩 2等賞を受賞した。これは現在製紙業界における最高賞歴の 1つ

である。当社の軽量塗工印刷用紙、精製高白カラー印刷新聞用紙、顔料整飾オフセット紙、

軽型印刷用紙は国家レベルの新製品と評価された。ここ 4年来、当社は特許を 31 件申請し、

国家の授権を取得した特許が 17 件ある。そのうち、イタリア APMP リファイニング漂白パ

ルプ製造工法、精製高白カラー印刷新聞用紙及びその製造法、顔料整飾オフセット紙及び

その製造工法、表面施膠新聞用紙、軽量塗工印刷用紙、機械磨石磨木パルプ滓化学処理熱

磨パルプ工法など 6件は発明特許を取得し、抄紙機紙の牽引縄駆動装置など 8件は実用新

型特許を取得し、リール印刷用紙の外包装は外観設計特許を取得した。

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「文明を先取りして生活を豊かにし、顧客のために価値を創造する」の企業使命を担い、

「先憂後楽」の湘楚文化精粋を引き継ぎ、当社は「泰格・風、泰格・雅、泰格・頌」系列

製品を作り出し、国内で高い名誉を得、「国家品質金メダル」、「国家顧客満足製品賞」

を受賞し、国内外の顧客に好評を博した。

林紙一体化で、当社は? 湘で事業を展開している。中国最初の「林紙一体化」の先導と

して、泰格は湘楚大地でグリーンの種を蒔いた。林業で製紙を促進し、製紙で林業を養い、

林業の産業化は泰格循環経済チェーンの第一環を構築し、三湘四水に広げ、多くの農民が

豊かになる原動力となり、新農村建設の最強音を演奏し出した。

企業戦略を立て、当社は製紙業に君臨している。優位資源の下で、泰格は世界最先端の

紙パルプ生産ライン、国内多元化の自制パルプ生産ライン、全国最大の自営製紙用材林基

地を集めた。科学的な発展観を指導にし、泰格は産業と資本を融合し、林・パルプ・紙一

体化発展の雄大な青写真が徐々に広げた。第 10 回 5 ヶ年計画後半、泰格は製紙林基地面積

を 976 万畝(650,000ha)に拡大し、市販紙パルプ生産能力を 350 万tに上昇し、年間生産額

を 200 億元に増加し、年間利税 30 億元を超えた。泰格の林木資源優位は中部の飛躍に発揮

され、泰格の新型工業化は湘楚の人々に幸福を齎している。

中華製紙文明は長い歴史があり、泰格林紙は湘楚の精華を汲み取り、千年の歴史を受け

継いだ。

(2)主要な生産設備

当グループ主要な生産設備は以下の通りである。

l 製紙システム:6台の抄紙機を擁し、うち、8#機は世界最先端の設備と工法を

導入した。

l パルプ製造システム:6本のパルプ生産ラインがあり、セミメカニカル、ケミ

カル葦パルプ、ケミカル木材パルプ、機械木材パルプ、300t/日の古紙脱墨パ

ルプを生産できる。

l 補助施設:6.8 万 Wの発電ユニット、580tボイラーの熱・蒸気供給能力、生産

能力 18 万? /日の自社給水システム。

l 環境保護施設:7万? /日の排水 2級生物化学処理センター、塩基回収システム、

石炭灰粉砕システム、クリーナーシステム、ホワイトクレイ回収システム。

1)環境保護投資

l 20 世紀 90 年代の初めから、当社は企業の森林育成基金で製紙林基地に投資す

る。洞庭湖区には、欧米ポプラ、外国松を広げ、付近県市 30 余りの郷・鎮と

造林契約を結んだ。1998 年洞庭湖の大洪水後、当社は林紙結合をより一層拡

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大し、実際の行動で洞庭湖区の総合管理を推進する。当社は 7.5 億元の投資

で洞庭湖区に 150 万畝(10 万 ha)の製紙林基地を建設する予定である。現在、

当社は岳? 、益? 、常德、湖北漢川、赤壁などと長期にわたる協力造林 165

万畝(11 万 ha)の契約を結び、今日まで 40 万畝(26,700ha)を完成し、計

8,000 万元を投資した。

l 1999 年、当社は 20万tの技術改革プロジェクトを実施した時、環境汚染を徹

底的に治めるため、「新しい技術で古い技術を置き換えること」を実施し、

総合汚水処理プロジェクトの新設に 8,000 万元を投資した。(そのうち、嫌

酸素処理部分が稼働した)

l 2000 年、グループは? 江製紙工場を合併してから、まず巨額資金を投資して環

境保護対策を推進した。例えば、3,400 万元で塩基回収システムを改造し、塩

基回収率を 50%から 75%に上昇した。排水の全面的な基準達成を実現するた

め、2,100 万元を投資して汚水 2級生物化学処理センターを新設した。

l 2001 年、当社本部は 350 万元を投資して、製紙白泥回収システムを完成した。

l 2002 年、当社は 600 万元と投資して本部熱電センターの 5#炉にクリーナーを

配置した。同時に、会社の発展・環境保護ニーズを満たすため、6,400 万元を

投資して本部の発電工場で「3を 2に改造する」プロジェクトを実施し、目下、

改造プロジェクトがほぼ竣工した。

l 2002 年、当社本部は 1,200 万元を投資して、20 万tの抄紙機生産作業場と古

紙脱墨作業場にホワイトクレイ回収システムを設立した。

l 2003 年のはじめ、当社本部は 2,000 万元を投資して石炭灰粉砕総合利用プロジ

ェクトを実施し、現在当プロジェクトが建設中である。

l 生産中の汚染負荷を軽減し、水資源を節約するために、当社本部は今、8,500

万元を投資して総合節水プロジェクトを実施し、当プロジェクトが 2004年 6

月竣工する見込みであった。

l 2003 年、当社本部は生物質発電プロジェクトをスタートし、7,000 万元の投資

で国際トップレベルの生物質発電システムを設立する見通しである。

2)科学技術投資

泰格林紙集団技術センターは 2000年 3 月に成立し、同年 7月省レベルの技術センター認

証を取得した。博士科学研究センター、開発部、科学研究部、設計研究部、機械製品開発

室を設置し、かつ会社 60 余りの部門における各種の専門技術員 1,400人の科学技術業務を

管理する。その内、高級、中級技術者は 500 名いる。

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2005 年 10月、泰格林紙グループ技術センターは「国家レベルの技術センター」を取得し

た。

「ソフトウェア」建設

² 技術センターを主体にする企業技術創出システムを設立した。

² 泰格グループ、中国紙パルプ研究院、中国林業科学院南京林業化学所、華南

理工大学、陝西科技大学、軽工業長沙設計院、湖南製紙研究所からなる産・

学・研の連合体を構築した。

² 国際知名会社のフィンランド・METSO 会社、オーストリア・アンデリジ会社と

技術協力協議に調印し、毎年技術員の派遣により、交流と科学実験を行い、

世界トップレベルの紙パルプ製造技術を研究する。

² 博士科学研究センター設立:国家人事部の批准を経、2002 年に成立し、作動

した。

「ハードウェア」建設

l 長沙星沙高新技術開発区に科学技術研究センターを設立している。

l 1,000 万元を投資して、国内トップレベルの定温定湿実験室と製品品質検査セ

ンターを設立した。

l 3,000 万元を投資して、情報化ネットセンター、企業ハイ・テクノロジー情報

化プラットフォームを構築した。

l 600 万元を投資し、機電一体化デジタル・コントロール加工センターと線切断

加工センターを設立した。

l 湖南泰格林紙グループは今、森林 10万 ha、苗畑 1,000ha を擁し、主に湖南、

湖北に分布し、計 24 個である。グループは森林基地を拡大する見通しで、2010

年 65 万 ha、2015 年 100 万 haである。

8.9 ?芬欧 川紙業公司(UPM-KymmeneCorporation)

(1)会社概要

百年以上の歴史を持つ芬欧? 川集団(UPM-KymmeneCorporation)は世界先進の林産工業グ

ループの一つで、本部はフィンランドヘルシンキにあり、ヘルシンキ証券取引所に上場し

た。グループ第 1 陣の機械パルプ工場、製紙工場、製材工場は 19 世紀 70 年代初頭から運

営し始めた。ケミカルパルプの生産は 19 世紀 80 年代、紙製品の加工は 20 世紀 20 年代、

ベニヤ板の生産は 20世紀 30年代から始まった。

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今の芬欧? 川集団は、世界森林産業の先導グループとして 1995年の秋に創設された。芬

欧? 川集団は Kymmene グループ、RepolaLtd 社およびその傘下連合製紙業会社などの独立経

営会社の合併により誕生した。当社は 1996 年 5 月 1 日に運営し始めた。グループの 100社

あまりの生産企業は全世界に分布している。グループは 14 カ国に生産企業を設けており、

世界には 170 社の販売会社を有している。2007 年、UPM グループの売上高は 100 億ユーロ

に達し、従業員は約 26,000 人である。

芬欧? 川集団の核心製品は主に:雑誌用紙、新聞用紙、文化用紙、特殊紙および木材製

品シールラベル材、RFID ラベルである。ほかに林業、エネルギー産業にも携わっている。

UPM グループ紙の年間生産力は 1250 万トンで、その全紙製品シリーズは客の最も厳しい

要求に応じることができる。UPMは世界最大の雑誌用紙、ラベル生産メーカーとされている。

その他、UPM グループはヨーロッパ最大の合板メーカーで、製材生産量もヨーロッパの上

位にある。

中国における芬欧? 川集団は、中国は世界紙製品業界の新興市場として、近年 UPM グル

ープのグローバル発展戦略の重要な一環である。2006 年まで、UPM は中国での投資額は累

計 12 億ドルに達し、その従業員は 1,200 人以上である。生産、販売、研究開発、管理シス

テムを有する芬欧? 川集団の中国での産業の構築は益々成熟してきた。

北京に創設したグループ代表機構以外、文化用紙、シールラベル材などの紙製品、シー

ルラベルなどのグループ主要業務にかかわる生産企業およびグループアジア研究開発機構

は中国で創設された。面積 184.5 ヘクタールの UPM のアジア生産基地である江蘇省常熟川

沿いの経済開発区では UPM(常熟)紙業有限公司および UPM 藍泰ラベル (常熟)有限公司、

UPM(常熟)研究開発有限公司、およびエネルギー、環境保護、貯蔵輸送などの施設が設けら

れてある。全国を及ぶ販売ルートを通じて製品は各地へと送られている。

そのほか、芬欧? 川集団のほかの部門の製品、例えば、合板、製材および特殊紙などは

グループの販売ルートを通じて各地で販売されている。

(2)環境保護

環境の保護および管理は芬欧? 川集団の経営における重要な部分である。グループは環

境保護を重視し、持続可能な発展原則を終始貫いている。原料の選択、エネルギーの利用

から製造法、製品開発まで、この過程を貫く一つの目的は自然や環境に対する影響を最小

限に控えることである。

芬欧? 川集団の生産は殆ど再生可能の自然資源――木材を利用している。木材は加工後、

紙パルプ、紙、製材、ベニヤ板にされ、木材自身も紙製品加工製品の生産にも使用されて

いる。故に、木材供給および森林管理は企業の運営には重要である。

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2005 年、環境保護および林業、エネルギープロジェクトの実施はグループの健全な発展

を確保したのである。

木材供給および森林管理において芬欧? 川集団は以下の措置を取っている:

木材供給

l 貴重な原生木材および再生木材を有効的に利用する。

l ケミカルパルプにおいては 90%の自給自足を達成する。

l 世界筆記用紙業界において再生木材を最も多く利用できる企業で、ヨーロッパでの

グループの工場は毎年 230 万トンの回収古紙を新聞用紙、雑誌用紙生産に使用して

いる。

l 古紙の回収、木質原料の循環使用によってパルプ用木材の使用量を減らし、エネル

ギーを節約する。経済、生態および各社会方面において森林資源を持続的に利用す

る。

l グループはフィンランド、カナダ、イギリス、オーストリア、ドイツ、アメリカ、

フランス、ロシア、エストニアで木材を購入している。

l グループは原料のトレーサビリティを確保する。

l 森林認証を広めるのを承諾する。

l 工場および製品の中で、認証された木材の比例を調べる。

l UPM は権威機構が認定した自然保護区、保護プロジェクト森林地及ぶ保護森林や保護

森林地の木材を伐採、収穫しない。

芬欧? 川集団の生産はほぼ再生できる自然資源を使用している。製材、ベニヤ板などの

木質、紙製品は人体、環境には無害である。廃棄した製品も簡単かつ安全に循環利用され、

燃料製品にされる。

芬欧? 川集団の経営は環境に対する影響は主にパルプ製造、製紙、エネルギー生産から

来た。パルプ、製紙の製造工程で発生した廃棄物は空気、水、土壌に排出される。これら

の有機物の排出は水の栄養過剰化に繋がり、排気ガスの排出は水および土壌の酸化に繋が

る。そのため、生産者は廃棄物処理または生産工法の改善を通じて廃物排出が環境に及ぼ

す影響を最小限にすべきである。UPM グループは最も先進的な環境科学技術を有しており、

ここ数年来、製紙における排出が減少されつつある。その上、木材製品および紙製品加工

の環境に対する影響も比較的少ない。

芬欧? 川集団傘下の全てのパルプ工場および製紙工場は ISO14001 環境管理システム認定

を得ている。

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芬欧? 川集団は極めて環境問題を重視している。環境管理システムは ISO14001 国際標準

を参照している。グループ全ての主要生産設備はこの標準または同様の環境管理システム

標準を参照にし、生産過程の改進を生産の趣旨としている。2004 年 8 月まで、芬欧? 川集

団傘下全てのパルプ工場および製紙工場は第 3者認証の ISO14001 環境管理システム認定を

得た。

芬欧? 川集団の環境汚染は主に紙パルプ、紙の生産によるものである。グループの年間

総生産能力は紙が約 1,250 万 t、ケミカルパルプ約 230 万 t である。過去十年にわたるクリ

ーン生産管理により、UPM の環境に対する汚染は明らかに減少した。グループの生産量の持

続的増加はこれ以上の廃棄物の排出をもたらさなかったのである。

ヨーロッパにある UPM グループの殆どの製紙工場は EU 生態管理審議企画(EMAS)に登録さ

れており、当該体系の要求に応じ、環境保護を承諾した。今年フィンランドにある UPM の

パルプ工場、製紙工場は EU生態管理審議企画(EMAS)認定の共同環境保護声明を公表したの

である。

芬欧? 川集団の木材製品部門、紙製品加工部門の一部の生産部門および一部の木材購入、

エネルギー、物流に携わる部門も環境管理システムを参考に運営している。

芬欧? 川集団の中核となる製品による環境汚染は回収、分解などの方法で減少できる。

l グループが生産した雑誌用紙、新聞用紙、文化用紙、および特種紙は回収できるダ

イプである。その上、UPM グループが世界最大の回収木材利用者であることは、生産

した紙のうち相当の部分は原料として工場に回収される。

l 木材製品部門のベニヤ板工場および製材工場は維薩ベニヤ板、製材を生産している。

一部のベニヤ板以外、木材製品は使用後簡単に処理できる。木材製品は循環使用ま

たは焼却、堆肥を通じて分解できるのである。

l 紙製品加工部である藍泰、瓦格維薩は加工した生産過程が複雑な特種紙を生産して

いる。これらの製品に対する最適の回収方法は焼却後の再利用である。珪素を含む

紙は分解でき、ラミネート紙のプラスチックラップおよびその紙も機械作用により

分解できるので、紙の回収は可能である。シールラップのなかに粘着剤が使用され

ているため、その循環使用には影響がある。なお、粘着剤は加工、再検査された後

雑誌用紙に使用できる。

芬欧? 川集団の主要の 3つの製品:紙製品、シールラベル材、木材製品、紙製品:UPM の

全ての紙製品シリーズは客の最も厳しい要求に応じることができる。製品は大量な違う種

類の木材パルプを原料にしている。うち再生パルプの占める割合が高い。

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文化用紙給は主に紙製品販売店、事務用品問屋、印刷工場、出版社、雑誌社および加工

工場に供給されている。文化用紙はコピー、非接触印刷、直接配達郵便広告および専門雑

誌などに使用されている。芬欧? 川集団は世界トップの文化用紙生産企業で、江蘇省常熟

市の近代化製紙工場もその文化用紙を生産している。

雑誌用紙は主に雑誌の印刷、新聞紙枚数の増加、広告の印刷および製品カタログの印刷

に使用されている。芬欧? 川集団の雑誌用紙生産量は世界一で、世界雑誌用紙市場の 5 分

の 1を占める。

新聞用紙は主に出版会社および印刷工場に向かっている。なお、電話帳、直接配達郵便

の注文カタログの製造にも使用されている。ヨーロッパにおける芬欧? 川集団の新聞用紙

市場シェアは 20 パーセントに達している。

特種紙はシール面紙、離型紙、漂白紙、原色クラフト紙、漂白封筒紙、原色封筒紙を含

んでいる。ステッカーラベル紙、離型紙の加工により製造される。封筒紙は加工工場に提

供される。芬欧? 川集団は世界最大のラベル紙メーカーで、ヨーロッパ先進の封筒メーカ

ーである。

ステッカーラベル紙:芬欧? 川集団は世界トップレベルのステッカーラベル紙および

RFID ラベルメーカーである。

木材製品:芬欧? 川集団の木材製品は世界各地の客の多様な要求に応じて、高級木材製

品を供給することができる。

8.10 ?山東博 紙業公司

(1) ?博 の概況

?山東博 製紙業有限公司は 1994 年に創設され、紙の研究、生産、販売を一体化した大型

株式会社である。2004 年 6 月全社会に向かって 7,000 万の A 株を発売し、株は上海証券取

引所で上場した。現在 3 億 1,536 万元の登録資本で、従業員は 4,705 人である。主に文化

用紙、段ボール原紙、白板紙、石膏ボード原紙、製紙用木材パルプの生産販売を行ってい

る。2006 年 12 月まで、会社総資産は 34 億元で、2006 年は 26 億元の売上高を実現し、業

界で総合経済効果が全国五位に入った。当社は全国 30 省、市、自治区に事務室を設けてお

り、その製品を東南アジア各国、地域まで販売している。

国家科学技術部によって認定された国家ハイテクノロジー企業で、全国第一期の優秀民

営企業である。年間 75 万 tの抄紙能力を有している。うちマスコミ用紙、筆記用紙は国家

検査を要しない製品である。当社は銀行、税務機関が認定した AAA 級信用のよい企業であ

る。工商系統においては信用のよい企業、軽工業においては経済効果ベストテン企業、環

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境保護においては優秀な水汚染改善企業である。企業の情報化も全国のトップ 500 社とラ

ンキングされた。2004 年「博? 」ブラントは「山東省著名ブラント」と評された。科学研

究開発、研究経費投入、人材の採用および育成を重要視し、多くの科学研究機構と合作し、

14 つの特許、発明を有し、国家科学部の三つのトーチプロジェクト、二つのポイントトー

チプロジェクトおよび一つの国家新製品発明プロジェクトの研究開発に参加している。

2006 年 11 月再び ISO9001:2000 国際質量体系認定、2004 年「国際標準で製品を生産する

証明」を得て、製品質量標準は国際レベルに達したのである。

製紙化学工業プロジェクト技術研究センターは省研究開発センターで、技術実験条件、

基礎施設を備えている。また技術、実践経験に富んだ人材を有し、新製品、新工法および

製紙技術研究、設計、相関の経験を有している。当社は長年製紙業に携わるゆえ、基礎装

備、技術、管理に優れ、何回もの全面技術革新を経験し、プロジェクトの実行を保障でき

る。

移動人材養成施設および兼業養成機構を創設しており、外国技術専門家、国内外大学、

科学研究機構の優秀人材を雇用し、定期的または臨時ゼミナール、養成訓練を開いている。

対外的に 24時間の人材および技術ゼミナールを開くことで、研究成果の吸収、応用、更新、

改良、広範囲使用、規範化、制度化、経常化を促す。当社の養成機構は完備した養成、評

価制度および短、中、長期養成計画を立て、実施し、体制改革の深化を図り、国内外合弁

の自己良性循環発展体制を築き上げたのである。当社は山東軽工業学院、青島科技大学、

天津軽工業大学、中国紙パルプ研究所と人材教育、プロジェクト合弁協議を結び、核心技

術者、高級管理者に対して年俸制を取り、福祉等の優遇を提供し、オファーを出し、経済

責任体制を築き、貢献度に応じて核心技術者、高級管理者を優遇している。社内奨励体制

を築き上げ、技術革新賞も設けており、重大な成果を上げ、または重要な貢献をした従業

員には物心両面から奨励する。当社は人事管理において、社内での先見性、技術的発展を

促進し、最も進んだ科学技術を学ぶために、人材を最も可能性の高い活用を図るため、能

力のある人材を雇用し、業績の上がらない人材の解雇など、労働者に対して行動的な経営

を行ってきた。常に先端技術で、先進的、適応的、経済的な技術開発を保証する。

急速な発展を重視すると同時に、企業の競争力の向上も重視し、会社に適する生産経営、

管理方式を探り出したことで、生産規模の拡大、運営コストの減少、市場シェアの増加を

図ることができた。

?当社は「発展こそ真理」の企業戦略方針を貫き、博 の「現状に満足せず一流になる」

の旗を掲げ、大量投入で発展を促し、ハイテクで企業の飛躍を実現する。市場需要事情、

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国家産業政策の変化に注目し、製品製造構造のリストラ、早成林地建設の加速を図る。「林

紙一体化」プロジェクトを実践し、非木材の材料で原料構造の調整を図る。

山東省製紙化学工業プロジェクト技術研究センター(研究センターと略称する)は 2000 年

に創設され、2003 年に山東省科学技術庁資格認定を得たのである。新製品、新工法、新技

術の開発、導入、吸収、応用および革新に携わる。

研究センターは製紙、化学工業の技術者および優勢科学資源を有効的に利用し、生産、

学習、研究が一体化した体制を築き上げることで、研究センターは山東省製紙化学工業技

術研究、交流センター、新規技術開発および産業化開発基地となった。センター落成以来、

新規技術を多く応用し、企業技術革新能力を高め、中国製紙技術の国際先進水準への進軍

および相関業界の発展を促した。

製紙産業は山東省の優勢のある伝統工業で、先進技術で伝統工業、生産工法の改進に迫

っている。製紙業は中国国民経済の基礎原料産業として、中国軽工業においては重要な産

業である。

製紙産業は主に包装、印刷、情報などの産業に商品材料を提供する。技術および資金が

密集で、スケールメリットも顕著で、連続かつ効率的に生産できる製造業は国民経済の発

展、社会文明の建設に深く関わっている。発達した国家においては紙および板紙の消費量

の増加は国内総生産の増加に一致している。改革開放以来、内需の増加、国家産業政策お

よび資金の重点的支持により、中国製紙業は迅速に発展してきた。

化学工業触媒の生産使用は製紙技術研究においては研究の核心である。その研究開発は

紙の品質、品種、グレードの向上およびコストダウンに決定的な作用がある。本社は製紙

化学工業、塩素処理アルカリの工法技術研究および生産においては同業者を上回っており、

研究センターは上記の優勢をさらに発揮し、技術を改進し、中国製紙業の高速、安定、持

続可能な発展を促進した。

研究センターは技術、実践経験に富んだ人材、新製品、新工法および製紙技術研究、設

計、相関の経験を有している。

1)研究センターはプロジェクト技術実験能力、基礎施設および必要な検査、分析、テス

ト技術、工法設備を有し、総合的工事技術テスト実験に担当するだけの能力がある。

研究センターの面積は 750m2で、機械設備に対して累計 1,200万元の投資で、機械設備は

輸入して、国際先進レベルに達している。その上、完成した検査、分析、テスト、製造設

備システムも設けている。研究センター現有の基礎施設はセンター対外の各種類製紙添加

物、液体アルカリ、塩素、製紙塗布材料、塗工白板紙、塗工白コート紙、タバコ用厚紙用

のパルプ・製紙技術、高級クラフト紙器用板紙の紙パルプ技術、硫化床及び脈石鉱物(石

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英・雲母など)総合利用発電技術、製紙原料林苗育成および植林技術、製紙機械補修改造

などの製品または技術の研究開発、製品検査、標準の制定、成果の広範囲応用、品質検査、

情報などの社会技術サービスの提供を請け負える。

2)研究センターはプロジェクト研究を進める人材を有している。2000 年から今まで会社

は高給で人材を招聘し、豊かな生活、仕事環境を提供し、最大限にその才能を発揮するこ

とを保障した。また一部の業界専門家も雇用して、定期的に研究センターで指導ゼミを開

くことで、製品の研究が市場に対応できるようにしてきた。高等教育機関、研究所と連携

し、研究センターを実験、実践基地にし、研究センターの新製品、新技術の技術含有量を

高める。毎年定期的に研究センターの従業員の再教育、他の企業との交流を行い、研究員

は市場要求に即した研究技術の基礎を固め、研究センターの研究の正確さを追求した。

目下、研究センターは 286 人の従業員で、学歴から見れば、大卒以上は 216 人で、総員

の 75%を占める。肩書きから見れば、中高級職務は 165 人で、総数の 57%を占める。年齢か

ら見れば、30 歳以下 143 人、30~40 歳 86 人である。技術員は若年化、専門化し、紙パル

プ製造、製紙、化学工業、機械設備、器具メータ、電気などの専門分野に及んでいる。技

術員全体の素質は高く、年齢、知識構造は合理的で、技術改造創造能力が備えている。

3)研究センターはプロジェクト技術実験の総合条件を有している。製品を市場のニーズ

に合わせるために、研究センターは社長を本部長にする管理体制を設けた。生産部門、技

術質量部門、販売部門、供給部門、財務部門が研究センターの研究を協力する。新製品、

新工法、新技術は研究センターで実験合格後、基地で再検査される。その品質、販売のル

ート、原料の供給、コストの清算が保障される。

(2)技術設備

年間生産量が 30 万 t に達するコート紙生産ライン:ホストコンピュータはドイツ VOITH

会社から導入し、(当該セットは世界第四の生産ライン、中国に置いては1本しかない)抄

紙幅は 5,630mm、運転速度は 500m/min で、パルプ製造に用いられる。パルプ用具は準備さ

れ、補助用具も世界で大型製紙設備メーカーである Metso 社を通して準備された。同社に

より、最も先進的なオートメーション・コントロール・システムが配備されている。DCS は

シーメンス会社から、QCS は ABB会社から導入し、輸入設備メーカーと技術補償契約を交わ

している。生産開始以来、設備は良好に稼動し、製品も国際レベルに達し、アメリカ、イ

ギリス、シンガポール、韓国まで輸出される。

年間生産量 25 万 t の文化用紙生産ライン:2007 年に文化用紙生産ラインのコア設備およ

び技術を輸入し、国内の一般設備や技術を加え、全体装備レベルは国際同業界トップの座

にある。

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104

年間生産量 20 万 t のケミカルメカニカルパルプ生産ライン:当該生産ラインはスウェー

デンの美卓から導入し、主に処理されたチップをパルプ化、脱水、洗浄、漂白し、商品と

して価値のよい漂白機械木材パルプにする。導入した設備のレベルは国際先進水準に達し

ている。

年間生産量 15 万 tの A 級クラフト箱用板紙生産ライン:ホストコンピュータは上海電気

グループ製紙機械有限会社から、電気制御システムはアメリカ ABB から導入し、パルプ製

造設備はアメリカ TBC 会社およびフィンランド維美徳によって提供される。製品は国内に

おいて青島海爾、四川長虹などと長期購入合同の調印によって販売ルートが保障され、国

際においては、米国、カナダ、ロシア、日本まで販売されている。

年間生産量 15 万 t の石膏ボード原紙生産ライン:当該生産ラインの重点設備は世界トッ

プレベルのパルプ製造、製紙設備メーカーが提供され、紙機供給商昆山市中? で、DCSおよ

び QCS はオートメーション製品を使用している。当該製品は新型環境友好建築材料で、環

境に優しく、軽量化し、防音、保温でき、使用し易いのが特徴で建築内装業の新商品であ

り、潜在な市場販売力を持っている。

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105

第 9章 製紙産業に関連する環境問題と対策

伝統的な製紙産業の生産過程では、環境汚染が非常に深刻である。特にパルプ製造に投

入される原料と化学品の半分以上は汚染物質として大気中と水中に排出され大気と水資源

を著しく汚染する。

統計によると 2006 年の世界の製紙産業による紙・板紙の生産量は 3.82億 t で、前年比

4.4%増加した。上位 3位は米国、中国、日本である。それぞれの生産量は 8,407 万 t、6,500

万 t、3,111 万 t である(表 9-1)。2006年の世界の紙パルプ生産量は 1.866 億 tで、前年

比 1.84%増加した。その中、化学パルプ生産量は 1.283 億tに達した。製紙パルプ生産量

が最も多いのは米国の 5,322 万 t、カナダの 2,368 万 t と中国の 1,816 万 t である。市販

パルプ生産量が最も多いのはカナダの 1,041 万tで、それに次いでブラジル、スウェーデ

ン、チリ、フィンランドである。上述の5カ国のパルプのネット輸出量は 2,435万 t に達

している。パルプのネット輸入量の多い国は中国、ドイツ、イタリア、韓国、日本の5カ

国である。総輸入量は 1,980万 t で、うち中国の輸入量が 790万 t に達している。

然し、消費量からみると、2006 年度の見かけ消費量は前年比 1.6%増の 1.923 億tとな

った。1人当りの見かけ消費量は 70.8kg である。ルクセンブルク、ベリギー、フィンラン

ド、米国、スウェーデンはそれぞれ 488kg、361kg、330kg、301kg、268kg で上位 5位に位

置している。

資源リサイクルの面では、2006 年度において世界の古紙回収量は 1.923億 t で、回収率

は 51.3%に達している。欧州は回収率 60.6%で 6,172 万tである。北米は 53.1%で 5,182

万tである。アジアは 47.2%で 7,004 万tである。米国の古紙輸出量は 1,593 万tに達し

世界一の古紙輸出国である。その他、日本とイギリスも大量に輸出している。古紙の最大

輸入国は 1,962 万tの中国で、世界の 45%を占めている。 表 9-1 2006 年度世界製紙産業概要

順位 生産量/万 t 対前年比/%

1 米国 8,407 1.7

2 中国 6,500 16.1

3 日本 3,111 0.5

4 ドイツ 2,266 4.5

5 カナダ 1,817 -6.8

6 フィンランド 1,415 14.2

7 スウエーデン 1,207 2.5

8 韓国 1,070 1.5

9 イタリア 1,001 0.1

10 フランス 1,001 -3.1

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出典:数値は“造紙信息”2007.11 に準拠

9.1 製紙産業の環境問題

9.1.1 地球温暖化

地球温暖化は大気の温室効果によるもので、大気の中の物質が近接する大気圏に対して

温暖化作用をもたらす。大気中の二酸化炭素などの気体の含有量が増加すると地表の熱が

宇宙空間へ長波長放散するのを阻止するため地球の温度が高くなる。そのために一部の旱

魃地域では雨量が増加し、高緯度の農業地域では温度状況が改善される、しかし大きなマ

イナスの影響もあって、熱帯と温帯では旱魃や洪水災害が頻発し、氷山が融解し、海水面

が上昇して多くの沿海デルタ地帯が水没する。科学者の予測によると地表温度が現在の速

度で高まれば 2050 年に世界の温度は平均2~4℃高くなり、南北両極の氷山が大幅に融解

し、海水面が上昇し、島嶼国家や沿海都市が水没するが、これにはニューョーク、上海、

東京など有名な国際都市が含まれる。

製紙産業は原料林を消費し、森林面積及び樹木の二酸化炭素の吸収量を減少させ、それ

によって大気中の二酸化炭素濃度が高まり、従ってそれに応じて大気の温室効果を招く。

9.1.2 環境汚染の深刻化

製紙産業の原料構成、生産規模構成が非合理的で技術と設備水準が低いことによって中

国の製紙産業では水、エネルギー、資材の浪費に繋がり、これが主な汚染の源になってい

る。国際的な先進国の水準ではパルプ紙1t当りの全エネルギー消費は石炭換算 0.9~1.2

tで水消費量は 35~50 ? であるが、中国でこうした先進国の水準に達しているのは少数の

企業または一部の生産系統を除けば大半の企業の平均はそれぞれ 1.38t、103 ? 前後であ

る。

2005 年、製紙産業の廃水量は 36.7 億tに上り、全国の重点統計対象企業の廃水総量に

占める割合は約 17.0%である。COD 排出量は 159.7 万 t に達し、全国の重点統計対象企業の

COD 排出総量の 34.2%を占める。その中、ソーダ回収ボイラーを持つ草本パルプ生産ライン

の生産量は草本パルプ総生産量の 30.0%に過ぎず、草本パルプ製造の COD 排出量は製紙産

業全体の排出量の 60%以上を占め、いまだに主な汚染源となっている。中国の製紙産業が

直面する環境保護の圧力は依然として大きく、汚染の防止、回復はまことに困難である。

9.1.3 高消費低効率による生態系劣化の進行

大規模な汚染と併せ製紙産業の資源の浪費も極めて深刻である。製紙産業自体が資源消

費型産業で、森林資源と水資源を大量に消費することに重々思いを致さねばならない。

現在の状況では中国の製紙産業の木材パルプ消費量の割合はそれほど大きくないが、製

紙パルプの需要先の数が多く、木材パルプ消費量も年々大幅に増加しているから製紙産業

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が原料とする森林資源に対する需要量は軽視できない。目下のところ木材消費では製紙産

業が最大の林産工業である。2005 年を例にとれば中国の製紙産業は 759万tの木材パルプ

を輸入しており、これは木材パルプ消費量(1,144 万t)の 66.4%を占め、製紙パルプ総消費

量(5,200 万t)の 14.6%を占める。一方、国産木材パルプは僅かに 355.7万tに過ぎず、木

材パルプ消費量の僅か 31.1%で、製紙パルプ総消費量の 6.84%である。国家発展改革委員会

が制定する計画によれば2010年までに中国の木材パルプ自給率を15%に到達させることに

なるが、木材パルプ生産量 750万tを達成するには3,700 万? の木材が必要である。もし

2020 年において国際市場に占める比率が 50%以上になるとすると、1.2 億? の木材を消費

することになる。この計画によれば製紙産業による中国の木材資源の消費が年々大幅に増

加することを示している。しかし、中国の森林資源は非常に不足しており、現在の発展速

度では製紙産業の需要を満たせないのが現状である。そこで木材パルプの供給を輸入に大

きく依存することになる。

早成林を造成することは製紙産業が生態系環境に影響をもたらすことであって、潜在的

な環境への影響は主に外来種の侵入、地区水資源の減少、土壌の硬化、生物多様性の減少、

病虫害への耐性減退、生態系機能の変化などがある。例えば黄淮海、寧夏における林紙一

体化は地区の生態系用水の安全を脅し、東北地区、雲南地区の林紙一体化は地区天然林造

成に影響を与え地区の生態系の安全を脅す恐れがある。それ以外に一部の地区では耕地を

利用して速成林を造成することはその地区の穀物供給を減少させることでもある。林紙一

体化を全面的に実施するのに従い、これらの影響は「十一五」期間にも存在し、局所的に

は著しく激しいこともある。

製紙産業は森林資源を大量に消費すると同時に、水資源の消費も軽視できない。中国の

現有技術では1tの紙を生産するのに水を約100t消費し、世界先進水準の3倍以上である。

中国では毎年数千万tの紙を生産するための水消費量は数十億tになる。この数字から水

資源が非常に少ない現状を考えると、この問題を重視するべきである。

資源消費の角度から見れば、もし中国の製紙産業が現在の生産構造と発展形態を根本的

に変えなければ、中国の製紙産業が直面する問題は原料の枯渇だけでなく他業界に影響す

る生態系の危機を誘発する恐れがある。

9.2 温暖化問題予防対策

近代工業社会において石炭、石油、天然ガスが大量に燃焼されることによって排出され

る二酸化炭素が大気に満ちるのが温室効果の原因である。大気中の過多な二酸化炭素を減

少するためには、一つはできるだけ節電し(石炭は発電の原料)、自動車の運転を避けるこ

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と、あるいは森林と海洋を保護するめ森林の乱伐を禁止、プランクトンの生存を保護する

ため海の生態系環境を保護することである。植物に二酸化炭素を吸収させ、更に温室効果

を緩和するため植樹造林、使い捨ての割り箸の使用を減らし、紙(製紙用木材)を節約し、

芝生の保護などを通して緑色植物を保護することである。

これ迄、有効な解決対策を提供できなかったが、少なくとも排出量の増加を抑える方法

を考えるべきである。一時しのぎの対策にしても全力を尽くして予防対策を取り、排出量

の上昇傾向を抑制すべきである。現在国際世論もこの問題に対して絶えず呼びかけをして

おり、各国の研究機構もすでに各種の具体的な対策案を出している。

9.2.1 森林保護対策

熱帯降雨林を主とする世界の森林は人為的に急激に破壊されている。早急にこういった

無節制な森林破壊の停止、大規模造林作業の実施、森林の再生促進などが現在、有効な対

策である。現在森林が破壊されているため大気に排出される二酸化炭素は年間およそ 1~2

Gt炭素と推定される。各国が真剣に森林の管理伐採と再生計画を推進すれば、2050 年に

は生物圏が毎年吸収する二酸化炭素は 0.7Gt 炭素相当になり、その結果温室効果は 7%程

度下げられよう。

森林資源を保護するため、中国は関連法律法規と政策を公布し、行政法律の執行機関と

木材監視・管理体系を創設し、木材製品グリーン購入促進政策とそれに対応する課税制度

案を制定、業界の信用制度を創設し、森林認証作業を展開し、多数の関連国際公約と地区

合意を履行すると同時に世界あるいは地域との国際協力を強化する。

森林育成を増強するためには、中国は造林基金の管理方法を改革し、造林基金の徴収標

準を合理化し、またそれを林業生産経営者に還元し林業生産を発展させる、同時に林業の

信託基金制度と森林生態系効果の補償制度を探求し、生態系税制度と炭素取引市場などを

設立し、融資ルートを広く開拓し、森林生産経営者の再生産に必要な資金を保証すること

である。

9.2.2 関連産業政策

マクロコントロール及び政策の導く作用を強化するため、林業の産業発展を促進、規範

また援助するため 2007 年 8 月 10 日に国家林業局、国家発改委、財政部、商務部、国家税

務総局、中国銀行業監督管理委員会、中国証券監督管理委員会は共同で『林業産業政策要

点』を制定、頒布し、各部門に実行させることにした。上述の要点によって、林業林産業

においては生態系を優先する政策を堅持し、循環型経済の発展を奨励し、資源の総合的利

用度を高め、資源の消費を低め、環境汚染を減少し、資源節約型で環境に優しい発展の道

を歩むことが表明された。

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中国国務院が許可した『製紙産業原料林基地の加速化に関する若干意見』とその他の関

連発展政策によって、木材パルプ製紙産業を重点的に発展させ、林紙一体化の建設を促進

し、『全国林紙一体化プロジェクト建設“十五”及び 2010 年専項規則』の実施を引き続き

促進し、紙を以って林を養い、林を以って紙を促すという林紙結合の産業構成を新たに形

成する。市販木材パルプの商品化を推奨するが、国内市場から調達される木材を原料とす

るパルプ製造に当たっては、製紙用林基地の造成を同時に計画するか、または製紙原料用

林基地の造成の許可を先に取得すべきであって、許可なしに林紙一体化プロジェクトの名

目で製紙林基地を単独に造成、または囲い込みをしてはなあらず、海外市場の木材を原料

にパルプ製造をする場合は約束を厳格に履行しなければならない。現存する林場・林業会

社と国内パルプ製紙企業による製紙原料林基地の共同造成を奨励する。企業による製紙林

基地の造成は国の林業分類経営、早成多収穫林造成計画並びに全国林紙一体化特別計画の

総合的要求を満たし、土地、生態系、水質土壌の保全および環境保護などの関連規定に適

合しなければならない。

国の省エネルギー排出削減政策に従い、国内の生産能力が低く環境汚染が著しい製紙企

業は強制的に閉鎖される。統計によると 2001~2005年に中国ではエネルギー消費が多く環

境汚染が激しいパルプ製紙企業1,500社が閉鎖された。2007年 6月に国務院が許可した『省

エネルギー排出削減に関する総合方案』によると、2006~2010 年の間に不合格の製紙生産

能力650万tが淘汰される。主として年産3.4万t以下の草本パルプの生産装置と年産1.7

万t以下の化学パルプ生産ライン、基準に達しない年産 1万t以下の古紙を原料とする製

紙工場である。これらの政策と措置は製紙産業による地球温暖化問題を緩和、抑制する上

で大いに役立つであろう。

9.2.3 その他の関連提案

地球温暖化を防止するため、エネルギー利用に重大な関心を持つべきであって、中国は

この領域で努力をしている。

第 1は全面的にフレオンの使用を禁止している。現在、世界はこの方向に向かって努力

しており、これは非常に具体的に実現の可能性が高い。推測によると仮にフレオンの使用

禁止を実現できれば、2050 年までに地球温暖化を 3%程度抑制する効果が発揮できる。

第 2は自動車の燃料使用状況を改善すること。日本の自動車は技術の向上によりガソリ

ンの消費状況が大幅に改善された。しかし米国などは、石油資源が豊富であるからかガソ

リン消費の減量設計で未だ何ら顕著な改善の兆しがなく、旧態然と過度のガソリン消費状

況が続いている。そのためこの地域で生産される自動車は化石燃料消費削減で努力する余

地があるから、おそらく 2050年になれば温室効果は5%程度下がるであろう。

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第 3 は、その他、各種の場所でエネルギー使用効率を改善すること。現在の人類の生活

では、至る所で大量にエネルギーが使用されている。特に住宅と事務所の冷暖房設備のエ

ネルギー消費は最も大きい。そのためエネルギー使用効率の向上に幅広い改善の余地があ

り、この政策は 2050年の地球温暖化に対して8%程度の抑制効果があるとされている。

第 4は、化石燃料の生産と消費に応じて課税すること。これによってメーカーや消費者

がエネルギーを慎重に使用することで無意味な浪費が免れる。徴収した税金は森林保護や

代替エネルギーの開発に用いる。いずれの化石燃料も燃焼によって二酸化炭素を排出する

ことでは変わりはない。ただ排出量は化石燃料の種類によって同じではない。例えば天然

ガスの主要な成分はメタンで、二酸化炭素の排出量は石炭、石油より低い。1kcal の熱量

を発生させるのには、石炭は 0.098 ㎏炭素の二酸化炭素、石油は 0.085 ㎏で、天然ガスの

場合は 0.056㎏である。そのため、天然ガス、石油、石炭の順で税率を高めるという提案

もある。例えば生産の面では、二酸化炭素の排出量の高い石炭は、エネルギーで換算し 10

億 J(ジュール)ごとに 0.5 ドル税金を課し、天然ガスは 0.23ドルにする。即ち二酸化炭

素の排出量の高い化石燃料には高い税金を課することである。消費の面でも同じく税率は

石炭を 23%、天然ガスは 13%にする。今は構想に過ぎないが実行できれば 2050 年の地球温

暖化に5%の抑制効果がある。

第 5は、天然ガスを主なエネルギーとして推奨すること。天然ガスの燃焼による二酸化

炭素の排出量は少ない。最近、日本の都市部では液化ガスの代りに天然ガスが多く使用さ

れている。この案の目標はこのような活動をあまねく普及させることにある。この方法に

よる温暖化抑制効果は僅か1%程度であるが、試めす価値があると言われている。

第 6は自動車、原動機付車両の排気ガスを制限すること。自動車の排気には窒素酸化物

と一酸化炭素が大量に含まれるから、その排出量を減らすことが望まれる。この方法では

直接に二酸化炭素は削減できないが、オゾンとメタンなどの温室効果気体を抑制できる。

推定では 2050 年の地球温暖化に2%程度の抑制効果を分担できる。

第 7は、太陽エネルギーの使用を奨励すること。例えば「日光計画」などの活動を推進

する。この面で努力すれば、化石燃料の使用量がかなり減らされ、温室効果の緩和に直接

的な効果がある。しかし、たとえ積極的にこの案を推進するとしても、2050年までの温暖

化については4%程度の抑制効果しかないので、その効果についてはそれ程期待出来ない。

第 8は、代替エネルギーを開発すること。生物エネルギー(Biomass Energy)を利用し新

らたにクリーンなエネルギー源とする。植物の光合成作用によって生成する有機物を燃料

にすることで、石油など既存の汚染性の高いエネルギー源に換える。生物エネルギーの燃

焼も二酸化炭素を生み出すことでは化石燃料と同じであるが、生物エネルギーは大自然か

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ら絶えず二酸化炭素を吸収し、それを原料としているから、循環的に再生エネルギーとな

るので大気中の二酸化炭素の濃度増加を抑制する効果がある。

温室効果は大気の二酸化炭素などの気体の含有量が増加し、地球の気温を高めるという

現象である。気温が高くなると、両極の氷河が溶解し、海水面が上昇し、多くの沿海都市

や島嶼、あるいは低地は水浸に脅かされ、甚だしい場合は水没してしまう。1960年代末期、

アフリカのサハラ放牧地帯で干ばつが6年間続いたことがある。食糧と牧草が不足したた

め、家畜は屠殺され、飢餓による死者は 150 万人を超えた。これは“温室効果”が人類に

もたらした災害の典型的な例である。したがって、効果的に二酸化炭素の含有量増加を抑

制し、人口増加を抑え、科学的に燃料を使用し、植樹造林を強化し、大地を緑化し、温室

効果によって地球に大災難が来るのを防止すべきである。

9.3 有害化学廃棄物の処理対策

9.3.1 製紙産業の主要有害化学廃棄物ダイオキシン

パルプ製造と漂白工程で生成される有毒なダイオキシン(dioxin)は製紙産業の主な有害

化学廃棄物である。1999 年 1 月 25 日以来、ベルギー、オランダ、フランス、ドイツの4

ヶ国の飼料がダイオキシンで汚染されていることが判明し、畜産品と乳製品から高濃度の

ダイオキシンが検出された事件が起こった。この事件はマスコミに報道され、直ちにヨー

ロッパで食品恐慌を引き起こし、世界に波及した。中国の衛生部は 1999年 6 月 9日にベル

ギーなどの4ヶ国からダイオキシンに汚染された食品の輸入を禁止すると布告した。ダイ

オキシン汚染の影響は小さくなってきているが未だに収束していない。

いわゆるダイオキシンは単一な化合物ではなく、ジベンゾダイオキシンまたはジベンゾ

フランに数個の塩素原子が化学結合したものなど 75 種の有機塩素化合物

(polychlorinated dibenzodioxins etc.)の総称である。「毒の中の毒」と称され、1 オン

ス(28.35 g)で 100 万人を死に至らしめる。世界保健機関はダイオキシンの毒性を殺虫剤

DDT に相当すると指摘し、国際癌研究センターはこれを人類の 1 級の発癌物質とし、さら

に環境保護組織はこれを環境に危害を及ぼす大敵の一つと見なしている。

ダイオキシンは工業化社会がもたらした邪悪物質の一つである。自然の中のダイオキシ

ンは普通、毒性のある生活ごみ(特に廃棄プラスチックを大量に含んだゴミ)の燃焼によっ

て発生するのである。製紙産業や殺虫剤製造業など塩素とその化合物を大量に使う製造工

業の廃棄物の中に大量に含まれる。1980年代にスウェーデン人が初めて製紙廃水中にダイ

オキシンを発見し、さらに研究した結果ダイオキシンは廃水中に微量以上に、また漂白パ

ルプの製品にも存在することが分かった。

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112

ダイオキシンはリグニンの塩素化、酸化分解生成物のクロロフェニール、クロログアイ

アコール、フェノール類、クロロフィルピロカテコール、クロロベンゼン、塩化フェニル

などの有機塩素化物を経て一定の条件によって生成するとされている。同時にアルカリ処

理でもダイオキシンが生成する。漂白過程の塩素化段階とアルカリ抽出段階がダイオキシ

ンの主な発生場所である。ダイオキシン汚染を効果的に抑制するために、スウェーデンの

環境保護機関ではダダイオキシンの発生量と相関のある AOX(吸着性有機ハロゲン化合物)

の測定値を環境汚染防止の参考値としている。製紙産業の先進国では AOXの発生を抑える

ための処置を取っているが、例えばスウェーデンでは 1992 年から AOX をパルプ工場の廃水

の排出規制値に組み込んでいる。

9.3.2 中国のダイオキシン対策

第 1は海外の先進的な経験を参考にすること。製紙産業は環境に深刻な汚染、環境破壊

をもたらす業種と思われている。1960 年代、製紙先進国でも環境汚染問題は非常に深刻で

あった。その後、パルプ製紙工業における環境保護の管理技術は急速に進み、現在、世界

の製紙先進国は技術的に成熟した汚染予防方法を有して、良い成果を挙げており、工場で

はクリーンな生産を行うことができるようになった。中国は国の政策法規を整備し、関連

標準規制値を制定し、企業が真摯に実行するよう監督し、進歩した無汚染の新技術を活用

し、原料構成を適切に按配し、的確な技術路線を選択するなど成功経験を導入すべきであ

る。

第 2は、無公害漂白の新技術を普及させること。現在、中国の草本パルプ漂白は一般に

は1段あるいは2段の次亜塩素酸塩漂白を採用している。報道によると次亜塩素酸塩漂白

段の廃水中の塩素化フェノール化合物の含有量は非常に少なく、AOX 生成の可能性は小さ

い。中国の新設の大規模のパルプ製造工場では塩素化脱リグニンに二酸化塩素漂白技術を

導入して塩素投入量を減らし、それによって AOX の発生量を削減している。現在の 3段漂

白木材パルプやあし、芒稈パルプの廃水については AOX の問題を重視する必要がある。AOX

測定計器及び測定方法の導入と開発に努力し、結果を確認し、それ相応の措置を取らなけ

ればならない。中国では二酸化塩素、過酸化水素、酸素脱リグニンなどの新技術を推し進

め、オゾン漂白技術を研究している。全無塩素漂白技術(TCF)は根本的にダイオキシンの発

生を根絶でき、パルプ製造に伴う汚染について最も厳しい環境保護要求を満すことが出来

る。この技術の採用には投下資金がかなり嵩むが、産業の持続可能的発展からみれば、新

設や重要な増設をする場合には新技術から出発することが正しい選択である。

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113

9.4 環境汚染問題への対策

製紙工業は産業としての連鎖が長く、広域に亘り、水資源、水環境、林業、農業、エネ

ルギー、土地資源などに諸分野多方面に係っている。資源不足、環境問題が日増しに厳し

くなる情勢に直面し、中国の製紙工業は科学発展の視野と循環経済の原則に則って新しい

発展の形態を創造し、発展の質を高め、発展を前提に、『節水、省エネルギー、省資源、汚

染削減、効率向上』などを主要目標として、クリーンな生産の実施、技術の進歩の推進、

資源の高効率的利用と循環利用を実現し、製紙工業を持続的発展の実現を促進すべきであ

る。

9.4.1 監視体制の完備、環境法規の厳守

『環境保護法』、『水質汚染防止法』、『環境影響評価法』、『クリーン生産促進法』などの

法律法規を厳格に実行し、製紙業界の環境保護意識および社会的責任感を高め、『製紙産業

水質汚染物排出標準』を適時修正し、汚染物の排出を厳しく抑制する。

9.4.2 クリーン生産技術の推進強化とクリーン生産審査制度の実施

パルプ製紙設備の新設に当たっては、汚染物質の発生源の消滅あるいは削減によって工

場外での処理を廃止または削減をする。既存の企業は技術改善を通して逐次、クリーン生

産を実現する。水質汚染の改善に重点を置き、用水の閉鎖循環系の採用、白水の再用、中

間段階の廃水処理と回収、排気・燃焼からの熱回収、スラッジの燃料化処理など「工場内」

環境保護の技術と対策を採用し、廃水、排煙、排泥の総合的改善を行う。先進的で完成の

域にある廃水の多段生物処理技術、排煙の静電除塵技術、排泥の資源化処理技術を採用し

て「三排」の排出を削減する。

9.4.3 廃水排出対策実施許可書の管理

パルプ製造、製紙の廃水排出作業の許可証の管理と国と地方の排出規準および汚染物の

総量規制値を厳格に実施する。廃水排出のオンラインモニターシステムを全面的に構築し、

企業の廃水排出状況は定期的に公表する。勧奨政策を制定し、基準を満たした企業にはさ

らに技術の改良および操業の改善を強化することを推奨し、水質汚染物質の排出のさらな

る削減を進める。基準に満たない企業に対しては法律に基づいて生産の中止と改善を課し、

改善後も基準に満たない或は総量規制値を超える企業は法律に基づいて閉鎖する。それと

同時、「新を以って旧に代える」、「大を挙げ小を閉じる」政策を必ず実行することとし、「大

型を開始させる前に小型を閉鎖する」という政策を順次遂行することとし、地区内の代替

あるいは閉鎖予定企業は淘汰されるまで、新設若しくは増設計画の受理、審査は延期する。

また設立に専用の資金を設け、汚染予防対策と生態系保護に用い、工程での抑制と末端の

改善を強化する。

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9.4.4 環境指標の公告および企業環境保護情報の公開制度の実施

公衆が企業の環境保護行為の監視に参加することを推奨し、環境認証、環境マークと環

境保護実績評価制度を積極的に推進し、環境遵法責任制度と責任追及制度を厳格に実施す

る。

9.4.5 環境評価の企画推進と環境評価戦略の推進

製紙産業の環境評価を積極的に展開する。自然環境、地区の資源、環境保持力、特に水

資源と水環境の保持力の観点から地域の企業及び原料基地の規模、構成、配置を適切に評

価する。原料基地造成の生態系への影響を重視し、なお当該業界と地域の他業界との資源

配分、利用関係を調整し、関連方策を決める同時に汚染物の排出を抑制し、生態系への影

響を抑え、原料基地が耕地を占用することを厳禁、森林を破壊しての造林することを厳禁、

水土の流失を防止する。環境評価を企画するのを契機に、製紙産業領域の戦略的環境評価

の発展を推進する。政策面では特に製紙産業政策、産業政策と外国貿易政策などを分析し、

その進行を解析し、完全な提案を提出し、根本から制御できるようにする。

9.4.6 製紙用林基地における生態系保護の重視と強化

製紙林基地の建設中生態保護を重視し、環境影響評価を強化し、林業類別経営原則を遵

守し、ハイ・テクノロジーを使用して科学的な造林を行い、生物の多様性を保ち、森林を

破壊して造林することを厳禁し水土流失を防止する。

9.4.7 関連政策の整備とパーティション管理の実施

他の部門と提携し、貸付、課税など相応の関連政策を制定する。行政、経済、技術など

の手段によって『格差電気価格』、『格差地価』、『格差課税』などを実施し、環境条件によ

る企業の競争条件の差を調整するため、エネルギー消費が多く汚染が大きい紙製品の輸出

に対しては『特別環境税』を課するか輸出を禁止する。立ち遅れている企業を淘汰する方

法を研究し、具体的且つ実行可能の細則を制定する。クリーン生産の水準が高い循環型経

済政策を確実に実現するような企業には環境保護部門はクリーン環境保護マークを使うこ

とを許可する。不定期にリストを公表し、政府は優先的にこの種類の製品を購入すること

にする。

9.4.8「引進来」と「走出去」複合戦略の採用

『引進来(引込み)』戦略に比べ中国の『走出去(打って出る)』戦略は明らかに停滞してい

る。『引進来』戦略は中国の製紙産業のクリーン生産水準を高め、循環型経済の発展を促進

する面で相当に効果があり、中国の環境保護にかなり貢献している。しかし中国製紙の原

料構成と数量の現状から見てより重要なのは「走出去」戦略である。十分な条件を備えた

企業には海外に工場を設立させ、現地の資源を利用して製紙パルプあるいは紙・板紙を生

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産させる、若しくは製紙用林の権利を購入して速成林を造成するよう奨励する。東南沿海

地域と南西地区はその位置の優利性を利用して東南アジアに竹パルプと木材パルプの生産

基地を建設する、東北地区ではロシアの豊富な森林資源が利用できるし、東部地域では中

米、南米などの森林資源が利用できる。

9.4.9 循環型経済の発展と実現可能計画と製紙産業発展政策の徹底

第 1は、『国民経済と社会発展の第十一5カ年計画綱要』に製紙産業に対して提出した「製

紙産業原材料の構成を調整し、水資源の消費と汚染物質の排出を低減し、旧式の草本パル

プの生産ラインを淘汰し、条件が十分に整った地区で林紙一体化工程を実施する」という

明確な要求を徹底的に実行すること。

第 2は、国務院が許可した全国林紙一体化の特定プロジェクト計画と政策措置を徹底的

に実行し、なお、国の投資管理規定に基づいた計画の原則と構成に成熟な企画を積極的に

推進し、また計画にある企画は促進し、不適切な企画は廃止し、全国林紙一体化工程の建

設を科学的な発展軌道へと導く。

第 3は、国務院の『循環型経済発展の促進に関する若干の諸見解』、『省エネルギー排出

削減総合実施案』と国家発展改革委員会の『“十一五”資源総合利用指導意見』および製紙

産業と関係のある政策と書類要求を徹底的に実行し、産業構成の調整を加速し、成長方式

に転換する。

第 4は、『製紙産業に関する発展政策』を全面的に実行し、製紙産業の健全且協調的発展

を促進する。

9.4.10 関連標準の制定、改訂と資源節約、汚染処理の強化

第 1は、なるべく早く古紙の回収規準を制定し、古紙の利用政策を統一し、回収を容易

にする。 「十一五」期間に製紙産業は古紙の回収利用を原料不足問題の解決と汚染削減の

重要な施策とする。国内の古紙回収利用市場の組織を作り、古紙回収を規準化し、中国の

古紙回収利用を拡大するため関連部門は国内の古紙回収利用の問題について研究と試験を

集中的に実施し。それに基いて中国の古紙回収についての標準管理方法を制定し、また古

紙を利用している企業に税金上の優遇政策を実施すると同時に古紙を利用した紙・板紙の

生産に関連する規準と政策を制定する。

第 2は、紙製品の品質標準を適時改訂して、高白色度など過度の品質を求める現在の紙

製品消費傾向を変えて、省資源、汚染削減、理性的で、グリーンで、消費を抑制するなど、

社会全体に用紙節約の意識を高めることである。

第 3は、適時、製紙産業汚染物の排出基準を改訂して、基準を厳格に実行せしめ。新し

い標準を段階的に実施して、効果を確実なものにするべきである。

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第 4 は、製紙産業の汚染予抑制策は技術的に最も優れたものを導入することである。

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第 10章 紙パルプ産業との競合産業の現状

建物の装飾、家具、木造門、人造繊維板などは紙パルプ産業と原料調達面での競合関係

にある産業である。コンテナ底板用合板はここ数年来中国での生産を始め、産業発展は速

い。原料からみれば、これらの産業は大量の木材を原料として必要とするため、紙パルプ

産業と木材の調達では競合する関係にある産業となる。現在と将来の植林計画を結び付け、

これらの産業の生産現状と未来の発展からみる木材需要を分析する上で、初めて中国の紙

パルプ産業の発展する方向を企画でき、競合産業と中国紙パルプ産業の発展のフレ―ムを

作り出せる。

ここ 10 年来中国の林産業の発展は顕著で、生産方法、市場化、グループ化などが徐々に

形成されていった。中国林業産業の総価値は2005年は7,269億元、2006年は10,652億元、

2007 年は 1兆 2,533 億元で、2010年に 1.5兆元に達すると予想する。なお、大規模、品種

豊富、最適配置、品質優良、効率の高い、競争力の強い比較的に発達する林産業体系を構

築する。中国は迅速に世界的な主要木材製品生産国の 1つになり、中国の木材製品の輸出

量は世界で第 1位にランクされる。元々森林資源が不足している中国は、木材資源危機に

直面している。ロシア、マレーシア、パプアニューギニアなどは中国の木材原料の主な提

供国である。本国の資源保護問題、世界環境保護の圧力を考慮に入れた上、木材の伐採と

原木の輸出の制御政策と措置を実施する国も数多くなるため、原木の供給の不確定性が増

えた。紙パルプ産業は関連産業の競合だけではなく、現在の環境保護及び木材の主要輸出

国の関税圧力にも直面している。

紙パルプ産業と競合する産業では、中国が基本建設、災害被災後の回復再建のため、建

築用木材消費が持続的に増加するとされる。しかし他の面で、製材品などの代替製品が使

用されるため、原木の直接消費は一定の量を保ち、時に減少することもある。大部分の製

材原料は原木であるため、原木消費量の減少は必ずしも木材消耗量の減少ではない。同時

に天然林の保護及び公益的環境保護林の建設などによる木材の市場供給は減少し、紙パル

プ産業の材木原料需要および生産に新たな困難に直面させる。

10.1 建築業

木材は鋼材、セメントと共に三大建築材料と称され、再生できる生活物質材料として環

境に優しいという特性を持ち、国民経済の持続的発展を支える主要な物質の一つである。

中国の国土資源持続可能な発展の研究報告によると、2004 年各省の総括的な木材消費量の

適切なデータでは他の木材消費量と紙類消費量は計算に入れず、建築用の木材消費量だけ

ということから、建築用木材消費量は非常に多く、紙類消耗量は非常に少ないことが分か

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る。建築用材は紙パルプ用材の最も主要な競合産業になる。

その上、木材が建築材料として加工しやすく、重量と強度の比率が高く、環境適合性、

温暖感のある材色、自然且多変化の模様、柔らかい光沢を持ち、断熱と電気絶縁の特性、

室内湿度の良好な調節機能、安全警報性とエネルギーの吸収性、紫外線の吸収と赤外線の

反射作用がある。木材は良好な音響学的な性質などの長所を持っているので、現在または

将来多くの家庭や建築家、装飾家が木材を主な建築用材として使用する見込みである。そ

れゆえ、製紙産業界の最大の競合産業の1つとなる。建築用木材の中の小径原木は屋根の

棟木、門と窓及び足場用材として、中径と大径の原木は建築の構造材、鋳型、家具や通信、

送電線路の補修に使う支柱として用いられている。原木は用途と寸法によって、直接用原

木、加工用原木、(太径材)、小径原木、短原木などに分けられる。直接用原木は建築用材(梁、

桁、垂木など)、杭、電柱、坑木など縦鋸で加工しなくても直接に用いられる原木である。

加工用原木の主は車の生産補修材料、造船材料、合板、スポーツ用材で、機械加工を経て

使える原木である。特級原木は特殊な需要に応じて貴重な木から選ばれた優秀な用材(原

木)である。

建築装飾用材の中で、フロアの装飾材料が多種多様で、木質床板は多く使われる。木質

床板が天然木質材料から加工されたため、木材の色と独特な質感と模様が消費者に大自然

に戻り、素朴さを追求する心理を満たせるため消費者から愛用されている。木材床板の原

材料と製造技術面からみると、木材フローリング、木材複合フローリングに分けられる。

木材フローリングは天然木材を使用し機械設備の加工を通して天然木材の機能が維持でき

る。無害、ゼロ汚染、断熱、防音、模様が綺麗で、弾力性があるため足触りがよい。又天

然木材は一定の湿度と温度の調節能力があるので、家屋の理想的な装飾材料として使用さ

れている。木材複合フローリングは合板、細木板を基本材料として表は薄板或は木材組み

板で飾られ、成型とペイントを通じてできた床板である。木材複合フローリングは天然木

材の性能再編を通して寸法の安定性と割れを防ぐのに優れている。寸法の大きな複合板材

でも成型加工できるため、多種規格の床板が加工され、性能と規格はもっと実際の要求に

応じる。3層構造の木材複合フローリング、合板が基本材料とした木材複合フローリング、

細木工板を基本材料とした木材複合フローリングはその実例である。その他、外形および

構成特徴によって床板、象嵌床板(木質モザイク)等に分けられる。条木床板は体育館、ト

レーニングルーム、舞台、住宅の地面装飾に適用する。象嵌床板は室内の地面装飾に使用

される比較的高級な木材製品である。

門と窓は建築物の重要な構成部分で、採光と風通しの機能があるだけでなく、外観とス

タイルから建築物の内外正面の装飾効果に大きな影響がある。今国内の門と窓の用材は木

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質系(材木、木材を主な原料とする人造板材)と非木質系(プラスチック、鋼、金属)の 2種

類に分けられる。木質門と窓の外観とスタイルは中国式と洋式があり、造形、色彩、寸法

規格などは具体的な設計方案によって違う。

中国の建築業は都市部建築と農村部建築に分けている。普通の都市建築材料は生産面の

基盤建設プロジェクト(工場、鉱山建築など)と消費面の基盤建設プロジェクト(住宅と店、

病院、学校、機関建物など)に用いられている。都市建物の用材には原木の占める割合は低

く、主に板材と柱材がある。劉愛民氏などの分析により、都市住宅単位建築用材は 0.045

? で、工業と公共建築は 0.055 ? で、工事単位面積から計算してみると 1993 年は 2,024

万? の原木で、1997 年は 2,250 万? と算出できる。都市部の建築として使用された製材を

原木に換算すると 1993 年は 1,079 万? で、1997 年は 1,932 万? になる。同時一部の代替

板材も加算し、都市部建築直接な原木使用量は 1993 年の 1,106 万? と 1997 年の 480 万?

である。大量の板材と製材の使用によって原木の直接消費量は次第に減少する趨勢を呈し

ている。

農村部建物の建築材料は主に農民の住宅と他の多くの耐久度の低い臨時の建物に用いら

れる。農村部の建築用材は計画外の用材である。公共建築と住宅の単位面積の木材消費量

の係数のギャップが小さく、1㎡の建築面積に 0.06 ? の木材消耗で計算し又一部の板材と

製材の代替が原木の消費量を減少できることも考えれば、1993 年の原木直接消費量は

2,605 万? で、1997年は 3,678 万? である。

統計によると、建築企業の施工用材販売量は既に市場木材製品販売量の 7割以上も占め

た。経営目標の転換により、江蘇海門は華東最大な建築用材基地となったのは良い例であ

る。ここ数年来、民間用の家屋建設用材の縮小は木材経営を厳しい状況にさせているもの

の建築工事現場は鋼鋳型、鋼竜骨のコストが高くしかも二次利用の時の偏差が大きく、次

第に木材の枠板等を使用するようになる。市場ニーズに適応し、各種の建築工程用材の必

要を満たすため、経営者達は建築用の枠板底部支持材と桁、板材、大工板などを生産した。

現在、市場の 1日当たり建築用木材販売量は 800 ? である。

加工の必要に応じ経営者は直ちに江西の吉水、吉安、泰和、万安、高安、永豊などの林

場と長期間の木材供給契約を交わした。市場の要求によって経営者は積極的に台車付製材

機の数量を増やし、台車付製材機は以前の 42 台から 62 台まで増加し、加工の規模を大き

く拡大した。紹介によると、郁家店市場は今既に浙江、山東、江蘇、上海、福建などの用

材供給基地になったとされる。市場影響力を拡大し、建築用材木の取引を全国によく知ら

せるため、去年当該市場の投資はウェブサイトを開通しネット取引を始めた。今年ネット

での取引高は3,000数万元に達した。調査によると、今年の市場成約量は30万? まで達し、

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取引高は昨年比 24%増の 3 億元を突破して華東地域の最大規模の建築用材基地になるとさ

れる。

10.2 繊維板産業

前述の通り、繊維板は建築材料の一つとして多く使われる。しかし繊維板は建築用材だ

けを指しているのではなく、その製造は木材に対する需要も多様化している。1 つの例は

薄木材チップで、普通/特殊合板、ファイバー・ボード、パーテイクル・ボードなども含ま

れている。具体的に言えば、合板は積層木材とも言え、木材工業の中、最も悠久な歴史を

有し使用の範囲が広い人造板である。煮沸によって軟化した原木を大きな薄片に旋切し、

木繊維を垂直に置き、耐水性の良い合成樹脂で粘着し、加圧、乾燥、手入れ、表面の補修

を通してできた板材である。原料は主に花旗松、南方松、アメリカ唐松とアメリカ西部の

黄松である。生産高はおよそ合板総生産量の 70%以上を占め、大部分は構成厚板に使用さ

れる。主に木造家屋建築の壁板、床板、屋根材と複合梁等に用いられる。それ以外コンテ

ナの底板、自動車及び汽車の車両板、船板とコンクリート型枠などの面でも大量に使用さ

れる。

現在中国は既に世界の合板の主な輸入国から、今や世界第 1の合板輸出国となった。そ

こから、中国乃至世界の合板に対する需要量はどれほど大きいか分かる。1995 年から中国

の合板生産高はおよそ人造繊維板総生産量の 50%位を占め、2005 年の生産高は 2,515 万?

に達した。針葉樹を原材料とした合板及び厚合板の生産高の占める割合は比較的に小さく、

主に国産と輸入した貴重な木材を原料に生産した装飾性のある薄板を表面に使用している。

これらの製品は木材の種類と材質に対する依存性が強く、資源制約及び他の装飾的繊維板

製品の急速な発展の影響で装飾的合板製品の生産は深刻な衝撃を受ける。

繊維板。樹皮、木材チップ、枝などの廃材を砕き、液体に浸し、パルプに磨砕して又更

に加圧成型、乾燥処理を経て出来た板材は繊維板である。成型する時の温度と圧力が違う

ので、硬質、半硬質、軟質の 3種類に分けられる。繊維板の構成は均質で、変形、湾曲、

割れが防がれ、各方向の特性が同様で木材の欠陥を完全に克服した。硬質繊維板は木材を

代替でき、室内の壁面、天井などの材料としてに用いられる。軟質繊維板は保温吸音材料

として使用できる。

? 花板(OSB、パーティクルボード)は、接着剤を添加、あるいは未添加の木質削片や木

質繊維を加圧してできた板材である。OSB の密度は小さく、材質は均一で、吸湿性が良く、

強度が高くないため保温吸音或は室内装飾材料として使える。OSB は急速に発展した新型

高強度人造板材で、短期速成人工林、小径木などを原料として、木材チップ、乾燥、接着

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剤の添加、配向、積層、熱圧などの手順を通してできた板材である。現在国内の OSB、密

度板、合板と比較して抗湾曲強度が高く、膨張係数が小さく、釘保持力が強く、接着剤の

消費量が少なく、耐水(酸)性が良いなどの長所を持って包装業、建築業、家具製造業、軍

用弾薬包装など広範囲に使用される。ここ 20 年来 OSB は北米とヨーロッパで大きな発展を

遂げた。2000年の生産量は 1,590 万? で、2005 年までは 3,000 万? を突破する見込みであ

る。80 年代半ばから大量に合板と MDFに取り代わり、潜在需要が巨大である。

ここ数年中国の合板の生産量の増加に従い、原木消費量も増える一方である。1994 年の

599 万? から 1995 年の 1,680 万? まで激増し、1996年にある程度減少し 1,091 万? になっ

たものの、1997 年には 1,696 万? まで増加した。

10.3 家具製造業

調査によって直接原木で家具を製造するのは、主に農村部と規模以上の家具生産企業で

ある。家具業の板材と製材消費量は次第に増加した。しかし原木の直接消費量の変化は小

さく、大体 5,000,000 ? のレベルを維持している。家具製造の鋸材及びベニヤ板の消費量

を原木に換算してみれば、1994 年の消費量は 12,970,000m3 で、1997 年の 17,340,000m3

と 2006 年の 24,000,000m3 である。

10.4 きのこ栽培産業

森林資源調査によると、中国のきのこ栽培産業における資源消耗量を原木に換算すると

およそ 500万? である。

10.5 その他の業種

主に坑木及び製材用材との競争である。石炭業は計画内においても、中国採鉱業におい

ても、原木消費の主要な業種である。全国の重点炭鉱の二次採掘加工面と坑道の非木支柱

の比重が平均的に 90%以上達したため、1万 t レベルの石炭坑木の消耗量は 80 ? /t から

50 ? /t~60 ? /t までに下がった。全国の石炭生産高による坑木消費量は 870 万? ~900

万? 位で、変化の幅は小さく又次第に下降傾向のあるということが分かる。

製材は木材加工工業の基盤で、原木生産高の 50%以上の原木は製材を通して生産をしな

ければならない国もある。近代の製材工場は材料の生産率は 63%~70%まで達成した。65%

の割合で計算すると鋸材を生産するため消耗する原木は、1994 年の 1,991 万? 、1995 年製

材の生産高は大幅に増大し計画内材木の生産高に接近した 6,437万? になり、その後ある

程度下がって 1997 年は 3,096 万? である。その他業界の生産補修及び市場用材があり、家

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屋を建設するに農民自用材を除き原木消費量は約 2,500 万? とされる。

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第 11章 2015 年と 2020 年の紙・パルプ市場の発展予測

改革開放以来、中国の経済は持続的、且つ急速に発展し、パルプ製紙工業に対する需要

も一貫して旺盛で、強大な市場推進力の下で製紙工業は急速に発展することが出来た。こ

れまでの中国の製紙パルプ、紙・板紙の生産、輸出入、消費の数量は表 11-1 の通りである。

紙・板紙の需要は 1978 年は 489 万tであったが、年率 9.49%で増加して 2006 年には 6,600

万tとなった。2001 年から中国は世界第2の製紙大国となったが、2008 年の上半期、中国

の製紙産業の総生産量は 4,173万tであり、この時期にこれまで世界の首位であった米国

は 4,084 万tであるから中国よりやや低く、中国の製紙産業が世界 1位の座に着くのは間

近である。製紙産業のこのような急速な発展を目の辺りにし、今後何時まで持続できるか、

中国の製紙パルプ市場の前途はどうなるか、今や非常に大きな課題となっている。

しかし、国内外の政治、経済情勢と政策が大きく変動する現在、中国の 2020 年の長期計

画は未だ確定していない。例えば石油などの原料、不動産、株価は大幅に変動し、特に世

界経済のグローバル化による国際環境や多くの要素が中国の経済発展に大きく影響してく

るため、経済成長の予測は難しく、人々の生活水準と紙製品の消費量の推定は難しい。そ

こで 2015 年、2020 年のパルプ紙市場の発展を予測することは難問であるが、以下、色々

な出所の予測データを参考までに提供する。

表11-1 中国の製紙パルプ、紙・板紙の生産、輸出入、消費量の推移(単位:万t)

製紙パルプ 紙・板紙

生産量 輸入量 輸出量 消費量 生産量 輸入量 輸出量 消費量

1978 345.5 466.2 36.5 13.4 489.3

1980 426.3 562.6 75.3 17.4 620.5

1985 615.3 930.8 80.8 22.9 988.7

1990 835.0 1,391.9 96.2 25.2 1,462.9

1995 1,862.0 82.0 3.9 1,940.1 2,812.3 303.0 53.0 3,062.3

1996 1,900.0 146.8 1.7 2,045.1 2,668.7 449.5 23.3 3,094.9

1997 1,738.0 154.2 2.2 1,890.0 2,757.2 552.4 28.3 3,281.3

1998 2,384.0 219.9 2.0 2,602.0 2,824.0 577.2 30.4 3,370.9

1999 2,443.0 309.7 - 2,752.7 2,900.0 652.3 13.4 3,538.9

2000 2,501.0 334.5 2.6 2,833.0 3,050.0 597.1 71.8 3,575.3

2001 2,490.0 490.4 1.3 2,979.1 3,200.0 562.2 80.0 3,682.3

2002 2,944.0 526.5 1.9 3,468.6 3,780.0 636.9 85.5 4,331.5

2003 3,309.0 603.4 2.5 3,909.9 4,300.0 634.7 129.1 4,805.6

2004 3,723.0 732.0 1.8 4,453.3 4,950.0 614.0 124.8 5,439.2

2005 4,441.0 759.0 4.7 5,195.3 5,600.0 524.0 193.9 5,930.1

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124

2006 5,204.0 796.0 7.5 5,992.5 6,500.0 441.0 341.0 6,600.0

2007 5,935.0 845.0 11.0 6,769.0 7,350.0 401.0 461.0 7,290.0

11.1 国内紙・板紙の需要量と供給量の予測

中国の紙・板紙の生産量、輸入量及び消費量の推移は図 11-1 の通りで、輸入量は近年下

がり気味で、生産量と消費量は一貫して上昇してきたが、さらに激増している。

中国の紙・板紙生産量・消費量・輸入量推移

0

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

8000

1978

1980

1985

1990

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

万t

生産量消費量輸入量

図 11-1 中国の紙・板紙の生産量、輸入量及び消費量推移

国際的に権威ある機関から出されている世界の紙・板紙消費量の予測によると、先進国の

伸び率は世界の平均的水準より低く、アジア、アフリカ、南米、東ヨーロッパ及び旧ロシ

ア連邦諸国(アゼルバイジャン、アルメニア、キルギス、モルドバ、ロシア、ウズベキス

タン、ウクライナ等)の消費伸び率は、平均水準を大きく超えている。FAOの予測では

2010 年の平均伸び率は 3.1%である。中国の製紙産業市場の予測については幾つか異なった

結果が出されている。中国製紙産業の発展の趨勢を基にするが幾つのかの方式によって国

内の紙・板紙の需要量予測が出来る。参考までに次の方法を紹介する。

(1)経済発展と相関させる回帰予測

① 2000 年 5 月に中国国際工程諮問公司は中国の製紙、林業、経済領域の専門家を

集め、1950~1993 年の 43 年間の消費量と GDPデータに基づいて数学的回帰分析

法と専門家の経験則によって中国の紙・板紙の消費量は最高値として 2010 年に

6,000 万t、2015 年に 7,600~8,000 万tと予測した。中国を全面的に住み易い

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125

社会にするという要望に従うと、2020 年の GDP は 2000 年の 4倍になるとされる

が、これを基に更に 5年延長してみると 2020年の消費量は 1億 1,000 万tに達

すると予測される。

② Hannu Oinonenと Nie Xiaorongによる2020年の中国の消費量の予測値は10,000

万 t であって、米国は 10,800 万 t、ヨーロッパ 1 億 1,000 万 t、日本は 4,000

万 t 以下となっている。

③ 顧民達氏(中国造紙学会顧問、中国造紙協会専家委員会委員、中国軽工業集団二

次繊維利用協作中心主任、中冶集団製漿造紙専家委員会副主任委員、中国造紙

沙龍専家組組長)の予測によると、2010→2015→2020 年の中国の紙・板紙の総生

産量はそれぞれ 9,000 万t→1億 1,000 万t→1億 4,000 万tであるが、国内の

木材供給量および輸入パルプと輸入古紙の事情によっては 1 億 3,000 万tにな

る可能性もある。

④ 賀力平博士の予測。賀博士は収入と需要の弾性値変化の長期データに準拠して

需要の伸びを予測し、2010 年の需要予測値として増加率が低い場合に 7,410 万

t、中程度の場合 9,688 万t、大きい場合は 1 億 2,793 万tとした。もし中国

が長期に亘って高い経済伸び率を維持できれば、中国の紙の需要伸び率が他の

発展途上諸国のそれを大きく上回ることになるが、賀博士が予測する中程度の

増加率が実現する可能性は低増加率に比べて明らかに大きい。高増加率の場合

の数値はかなり大きいものの実現の可能性はある。中程度値を取るか高程度値

を取るかに関わらず、いずれ中国は米国を越して世界第 1 の紙消費国となる。

更に2020年を展望してみると中国の紙需要は最低でも1.5億 tを超える可能性

は極めて大きく、最高値としては 2億 t超の可能性も小さくはない。

⑤ 張燦彬、程天鑑、戚永宜氏は 1952 年から 2005 年までの中国の紙総消費量指数

と 1 人当り消費指数の変化曲線から消費総指数の成長傾向曲線と回帰方程式 y

=8E-73e0.0873X及び1人当り消費指数の成長曲線の回帰方程式y=8E-60e0.0719Xを

求めた。その予測曲線は図 11-2に示した通りである。2本の曲線のR値はそれ

ぞれ 0.9890、0.9791 であるので、回帰分析の正当性が証明された。これから中

国の紙消費量と 1 人当り消費量の伸びとに著しく規則性があることは明瞭であ

る。上述の公式によって、2010 年、2015 年、2020 年の中国紙・板紙の消費量は

図 11-2 のようになる。

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126

中国紙・板紙消費量予測曲線

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

1952

1956

1960

1964

1968

1972

1976

1980

1984

1988

1992

1996

2000

2004

2008

2012

2016

2020

万t

0

20

40

60

80

100

120

140

kg

年消費量 1人当り年間消費量

図 11-2 1952 年から 2005 年までの中国の製紙産業成長指数に基づく予測曲線

表11-2 2010年、2015年、2020年の中国の紙・板紙消費量予測 2010年 2015年 2020年

消費量(万t) 8,915.5 13,799.7 21,350.9 一人当り消費量

(kg/年) 55.7 79.9 114.4

注:指数は1952年を100とするが、その時の消費量は69.22万tで、1人当り消費量は 年間1.2kgであった。

2010年の中国の総人口を14億人、年間1人当り消費量を55.7kgとして計算すると2010年の

中国の紙・板紙消費量は凡そ7,798万tと予測される。

以上のデータは中国の紙・板紙の消費量に基づく単純な数学的予測であってその他の要

素は考慮に入れていない。なお権威ある機関の予測と計画によると、2010年の中国の紙・板

紙の年間生産量は年間伸び率が約10%であれば7,500‐8,000万t、年間消費量は伸び率が

約8%であれば8,500万tと予測される。

(2) 一般回帰分析方法による予測

以下は楊懋暹氏(教授級高級工程師、米国製紙協会、中国造紙学会常務理事兼学術委員会

主任、中国造紙協会、北京造紙学会顧問、元北京市造紙研究所所長、北京造紙包装工程公

司総工程師、中国造紙学会副理事長、北京造紙学会理事長など)による予測である。

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127

中国の紙・板紙の社会的需要量はその年の生産量 + 輸入量 - 輸出量である。社会的需要

量は国民経済の状況を反映する重要な指標で、需要量に対する予測には普通、回帰分析法

が利用される。この回帰法が用いられる前提としてその年代の特徴があり、この場合に採

用された1978年~2006年、つまり計画経済が市場経済に転換してから今日に至る期間であ

るが、30年間の市場経済が反映されていることになる。中国の紙・板紙の生産量と消費量は

指数的に上昇してきている(図11-3 参照)。図11-3が示すように1978年から1990年までの10

数年間は改革開放の初期で社会的需要量の伸びは緩慢で、当時、国有製紙企業は全面的に

改革する道を探求し、元郷鎮企業は資本を蓄積し、外資企業の多くは模索段階にあった。

歴史的な経緯もあって東南アジアの華僑外資企業のみが大胆に中国市場に進出してきた。

そしてこの段階になると中国市場の社会的需要が緩やかに上昇し始め、各方面の条件が次

第に整う1990年代になってから社会の需要は漸く大きく伸びるようになった。そこで中国

の紙・板紙の消費量は図11-2のように指数的に伸びるのである。それは指数方程式y=

4.82e0.093112x×10-78 で表されている。式中の y は社会的需要量で、x は年である。つまり

1978年から2006年まで上昇する一方であったことになる。方程式を検証したところ相関係

数は0.98と非常に高い値を示した。

上述の方程式による予測によると、中国の紙・板紙の需要量は 2010 年 9,193 万t、2015

年 1 億 4,644 万t、2020年 2 億 3,327 万tとなる。前の2つの予測値は予測期間が比較的

短く、期間内に突発的な事件がない限り予測数値は実際と良く一致しよう。一方、2020年

となると予測期間が 14 年もあり、このような長い予測期間内では予想できない大きな因子

が入り込むことがあろうから回帰予測法による予測は難しい。例えば国は資源節約型持続

的発展の政策を選ぶ、あるいは国の発展のために環境保護策をとる、あるいは国際的金融

危機が起こるなどのことがあれば社会的需要量に大きな影響があることになる。そこで

2020 年の予測値 23,327 万tは多過ぎるかもしれない。一般的な予測では 2020 年の北米と

ヨーロッパの需要量はそれぞれ 1億t程度で、中国の 2.3 億tの予測値は非常に際立って

いると言える。仮に予測結果から 5,000 万tを削減すれば、つまり 2020 年の需要を 1.83

億tとすれば比較的、説得力のあるものになる。そこで予測数値として2010年9,193万t、

2015 年 1 億 4,644 万t、2020年 1 億 8,327 万tとすることができる。つまり図 11-2 にあ

る 2015-2020 年の曲線を少し緩やか補正したものになる。

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128

中国の紙・板紙需要量及び予測(単位:万t)

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,00019

78

1980

1985

1990

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2010

2015

2020

図 11-3 中国の・板紙需要量と予測値

上述の予測の信頼性を明らかにするため、モデル的予測値と各年の実際の数値と偏差率

(最後の欄)を表2に示す。表 11-3 のように 1980 年、1985 年、1995 年~1999 年および

2001 年の偏差率が割に高い以外は各年の偏差率は皆±5%より小さい。これからこのモデ

ル的予測値の結果が信用できることになろう。勿論、紙・板紙の需要量に関連する要素は複

雑また数多いからこのモデル的予測も 1種の蓋然性を示すのに過ぎない。実際の状況がど

うなるか見守る必要があろう。しかし、後からの予測結果が実際の水準より高くなってい

るのも事実である。経済成長が数々の要素の影響を受けて大きく変化するのがその原因で、

また方法にも修正の余地はある。

表 11-3 中国の紙・板紙需要量及び予測(単位:万t)

年 予測需要

消費量実

差 偏差率

(予測-実

績) (差/実績、%)

1978 467.2 489.3 -22.1 -4.5

1980 562.8 620.5 -57.7 -9.3

1985 896.5 988.7 -92.2 -9.33

1990 1,428.0 1,462.90 -34.9 -2.39

1995 2,274.6 3,062.30 -787.6 -25.72

1996 2,496.6 3,094.90 -598.3 -19.33

1997 2,740.2 3,281.30 -541.1 -16.49

1998 3,007.7 3,370.90 -363.2 -10.77

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129

1999 3,301.2 3,538.90 -237.7 -6.72

2000 3,623.3 3,575.30 48 1.34

2001 3,976.9 3,682.30 294.6 8

2002 4,364.9 4,331.50 33.5 0.77

2003 4,790.9 4,805.60 -14.7 -0.31

2004 5,258.4 5,439.20 -180.8 -3.32

2005 5,771.6 5,930.10 -158.6 -2.67

2006 6,334.8 6,600.00 -265.2 -4.02

2007 6,953.0 7,290.00 -337.1 -4.62

2008 7,631.5

2010 9,193.5

2015 14,644.5

2020 23,327.2

(3)経済発展と関連する推移予測

1978 年~2007 年の約 30 年間の中国の国内総生産(GDP)及び 1人当り GDPと成長状況(表

11-4)、および GDP 伸び率と 1人当り GDP 伸び率の推移は図 11-4 に示す通りである。

表 11-4 中国の国内総生産(GDP)の成長状況

年 GDP(億元) GDP 伸び率

(%)

1人当り 1人当り

GDP(元)

GDP 伸び率

(%)

1978 3,624 11.7 379

1979 4,038 7.6 417 10.0

1980 4,518 7.8 460 10.3

1981 4,862 5.3 489 6.3

1982 5,295 9 525 7.4

1983 5,935 10.9 580 10.5

1984 7,171 15.2 692 19.3

1985 8,964 13.5 853 23.3

1986 10,202 8.9 956 12.1

1987 11,963 11.6 1,104 15.5

1988 14,928 11.3 1,355 22.7

1989 16,909 4.1 1,512 11.6

1990 18,548 3.8 1,634 8.1

1991 21,618 9.2 1,879 15.0

1992 26,638 14.2 2,287 21.7

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130

1993 34,634 13.5 2,939 28.5

1994 46,759 12.7 3,923 33.5

1995 58,478 10.5 4,854 23.7

1996 67,885 9.6 5,576 14.9

1997 74,463 8.8 6,054 8.6

1998 78,345 7.8 6,308 4.2

1999 82,067 7.1 6,551 3.9

2000 89,468 8 7,086 8.2

2001 109,655 8.3 7,651 8.0

2002 120,333 9.1 8,214 7.4

2003 135,823 10 9,101 10.8

2004 159,878 10.1 12,299 35.1

2005 182,321 9.9 13,944 13.4

2006 209,407 10.7 15,935 14.3

2007 246,619 11.4 17,896 12.3

中国における30年間のGDP成長率と1人当りGDP成長率の比較

0

5

10

15

20

25

30

35

40

1978

1980

1982

1984

1986

1988

1990

1992

1994

1996

1998

2000

2002

2004

2006

GDP伸び率 1人当りGDP伸び率

図 11-4 1978-2007 年の中国の GDP と 1 人当り GDPの伸び率の比較

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131

中国の紙・板紙の生産量、輸出入量と消費量および伸び率は表 11-5 に示した。またその

推移は図 11-5 の通りである。

表 11-5 中国の紙・板紙生産量、輸出入量と消費量及び伸び率

紙・板紙

生産量 輸入量 輸出量 消費量

(万

t)

伸び

率(%)

(万

t)

伸び率

(%)

(万

t)

伸び率

(%)

(万

t)

伸び

率(%)

1978 466 37 13 489

1980 563 10.34 75 53.15 17 14.93 621 13.41

1985 931 13.09 81 1.46 23 6.32 989 11.87

1990 1,392 9.91 96 3.81 25 2.01 1,463 9.59

1995 2,812 20.41 303 42.99 53 22.09 3,062 21.87

1996 2,669 -5.11 449 48.35 23 -56.04 3,095 1.06

1997 2,757 3.32 552 22.9 28 21.28 3,281 6.02

1998 2,824 2.42 577 4.48 30 7.36 3,371 2.73

1999 2,900 2.69 652 13.01 13 -55.72 3,539 4.98

2000 3,050 5.17 597 -8.46 72 434.45 3,575 1.03

2001 3,200 4.92 562 -5.84 80 11.3 3,682 2.99

2002 3,780 18.13 637 13.29 85 6.9 4,331 17.63

2003 4,300 13.76 635 -0.35 129 51.04 4,806 10.95

2004 4,950 15.12 614 -3.26 125 -3.34 5,439 13.18

2005 5,600 13.13 524 -14.66 194 55.39 5,930 9.02

2006 6,500 16.07 441 -15.84 341 75.86 6,600 11.3

2007 7,350 13.08 401 -9.07 461 35.19 7,290 10.45

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132

中国の紙・板紙需要量と成長率

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

1978

1980

1985

1990

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

0

5

10

15

20

25

需要量万t 成長率%

図11-5 中国の紙・板紙需要量及び成長傾向

紙・板紙製品は文化用途(新聞、印刷筆記用紙など)、生活用途(紙ナプキン、トイレット

ペーパーなど)と産業用途 (包装紙、産業関連用紙例えば煙草用巻き紙など、板紙)など多

種類の領域で使われる日常的な商品で、社会の経済発展と人々の生活水準と密接な関連が

ある。そのため、中国の GDPおよび 1人当り GDPの成長と紙、板紙消費量の増加との関係

を検討することは有意義である。中国のGDPおよび1人当りGDPの伸びと紙・板紙の生産量、

消費量の伸びとを比較したのが図 11-6である。

図11-6 30年間の中国のGDP、1人当りGDPおよび紙・板紙の生産量、消費量の伸び率の比較

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133

図 11-6 が示すように GDP の伸びおよび紙・板紙の生産量、消費量と 1人当り GDP の伸び

の推移は一致している。そのため、2015年と 2020 年の中国の紙・板紙の需要量を予測する

にはその年の中国の GDP 及び 1人当り GDP を先ず予測しなければならない。中国の GDP と

1 人当り GDP をパラメーターとして予測モデルに組み入れられば、客観的且つ正確な中国

の紙・板紙の消費量あるいは需要量が予測できる。

計算によると1978年~2007年の30年間、中国の年間GDP伸び率は平均で9.3%、1人当りGDP

の伸び率は12.9%、紙・板紙の生産量の伸び率は9.8%、紙・板紙消費量の伸び率は9.3%で

ある。中国の紙・板紙の年間平均消費量の伸び率とGDP伸び率は非常に良く一致し、1人当り

GDP伸び率と紙・板紙の生産量の伸び率は大体同じで、その他の2つの指標より高い。その

中、1人当りGDP伸び率は最低の紙・板紙の消費量伸び率より3.6%増で、最高である。した

がって今後15年以内の中国の年間GDP平均伸び率は9.3%で、伸び率はその数値に近い2002

年のGDP及び紙・板紙の消費量を基準にとれば(表11-6)、2010年、2015年、2020年の中国の

紙・板紙の消費量はそれぞれ8,794万t、1億3,692万tと2億1,319万tと予測される。 表11-6 2010 ― 2020年の中国のGDP、1人当りGDP、紙・板紙生産量、消費量の予測(1)

年 GDP 1人当り 紙・板紙 紙・板紙

(億元) GDP(元) 生産量(万t) 消費量(万t)

2002 120,333 8,214 3,780 4,331

2010 245,102 21,667 7,974 8,797

2011 267,896 24,460 8,754 9,611

2012 292,810 27,613 9,610 10,501

2013 320,042 31,172 10,550 11,474

2014 349,806 35,190 11,582 12,536

2015 382,337 39,726 12,714 13,697

2016 417,895 44,847 13,958 14,966

2017 456,759 50,628 15,323 16,351

2018 499,238 57,153 16,821 17,865

2019 545,667 64,521 18,467 19,520

2020 596,414 72,837 20,273 21,327

しかし4つの年間平均伸び率の平均値に最も近い1980年の数値を基準として予測すると、

その結果は表11‐7の通りである。2つの表の結果を比較すると、GDPと1人当りGDPとの差

が大きく、GDPの予測結果は明らかに実際と合わない。然し、紙・板紙の生産量と消費量の

予測結果は非常によく一致し、特に紙・板紙の消費量は驚くほど相似している。

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134

表11-7 2010 ― 2020年の中国のGDP、1人当りGDP、紙・板紙生産量、消費量の予測(2)

2007 年の数値を基準に予測した結果を表 11‐8 に示す。3つの予測結果を比較すると、

GDP と 1 人当り GDPとの差が大きく、特に GDP の差が非常に目立っている。然し、紙・板紙

の生産量と消費量の予測結果は非常に近似しており特に紙・板紙の消費量とは驚くほどの

相似を示している。

表 11-8 2010 ― 2020 年の中国の GDP、1人当り GDP、紙・板紙生産量、消費量の予測(3)

年 GDP 1人当り 紙・板紙 紙・板紙

(億元) GDP(元) 生産量(万t) 消費量(万t)

2007 246,619 17,896 7,350 7,290

2010 322,023 25,747 9,724 9,508

2011 351,971 29,066 10,675 10,389

2012 384,705 32,812 11,719 11,351

2013 420,482 37,042 12,866 12,402

2014 459,587 41,816 14,124 13,551

2015 502,329 47,206 15,505 14,805

2016 549,045 53,291 17,021 16,176

2017 600,106 60,160 18,686 17,674

2018 655,916 67,915 20,514 19,311

年 GDP 1人当り 紙・板紙 紙・板紙

(億元) GDP(元) 生産量(万t) 消費量(万t)

1980 4,518 460 563 621

2010 65,093 17,475 9,245 8,843

2011 71,146 19,728 10,149 9,661

2012 77,763 22,271 11,141 10,556

2013 84,995 25,141 12,231 11,534

2014 92,899 28,382 13,427 12,602

2015 101,539 32,041 14,741 13,768

2016 110,982 36,171 16,182 15,043

2017 121,303 40,833 17,765 16,436

2018 132,585 46,096 19,502 17,958

2019 144,915 52,038 21,409 19,621

2020 158,392 58,746 23,503 21,438

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135

2019 716,916 76,669 22,520 21,099

2020 783,590 86,552 24,722 23,053

この方法による中国の紙・板紙の需要量と消費量の予測は非常に信用できる。これから中

国の GDP の年間平均伸び率は 9.30%であるという前提にすると 2010 年、2015年、2020 年

の中国の紙・板紙の消費量はそれぞれ 8,800 万t、1億 3,700 万tと 2億 1,000 万tとの予

測値は信頼できる。

(4)製紙産業発展企画についての予測

『全国林紙一体化プロジェクト建設“十五”及び 2010 年計画』と「十一五」発展の目標に

則って 2010年の中国の紙・板紙の生産量と消費量を予測すると表 11-9 のようになる。ここ

では 2015 年と 2020年について予測はしなかった。

表11-9 中国「十一五」による製紙産業の主な指標

類別 指標 2005年 2010年 年平均伸び率

/% 属性

発展速度 紙・板紙生産量/万t 5,600 7,600 6.3

予期性 (prediction)

紙・板紙消費量/万t 5,930 8,500 7.5 予期性

(prediction)

資源消費

パルプ、紙・板紙t当りエネルギー総消費量(標準石炭換算量)、t

1.38 1.10 -4.4 制限性

(obligation)

パルプ、紙・板紙t当り平均取水量、?

103 80 -4.9 制限性

(obligation)

環境保護 主な汚染物CODの排出量12.5%減少 制限性

(obligation)

上述の諸予測結果を比較検討し国際的、国内的経済状況と将来の推移を考慮に入れると、

中国の紙・板紙の需要量は 2010 年、2015 年、2020年にそれぞれ 0.9 億t、1.4 億tと 2.1

億tに達し、供給量は 0.85 億t、1.38 億tと 2.15億tを超えるものと見込める。

11.2 製紙原料(パルプ)の需要量と供給量の予測

中国の林業の発展によって木材パルプ、製紙の資源条件はすでに整っている。一方、木

材消費の構成を調整することによって繊維用材の増加の潜在力は大きいものがある。現在、

国内の年間森林資源消費量は 3.5 億? で、その中市販材が 40%、農民の自家用材と栽培用

材が 21%、薪炭材が 34%を占めている。消費総量の中で製紙用材が占める割合は低く、資

源の合理的な利用の面からみると現在の用材構成は不適当である。他方、現存の人工林は

製紙産業に豊富な木材繊維資源を提供できる。中国の現存人工林は 5,326 万 ha で、その中

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人工用材林は 2,200万 ha である。計画によれば 2020 年に早成多収穫林は 2,000万 ha 以上

になるとされている。しかし、木材パルプは主に人工林、早成多収穫林と天然林から発生

する二次的な薪材、加工廃材を利用するから天然林保護の原則に反することはない。人工

林が急速に増加するので天然林、生態系の環境保護の改善を促進できる。

数十年来の建設、発展を経て中国はすでに紙の生産大国、消費大国、輸入大国になった。

しかし木材パルプ生産の伸びは緩慢で、国産木材パルプが製紙原料の年間生産量に占める

割合は10%にも及ばず、世界平均の90%より遥かに低い状況にある。木材パルプを原料と

した高級印刷紙と高強度包装紙の需要を満たすため毎年、国は外貨を惜しまずに木材パル

プ、板紙、紙製品を海外から大量に購入している。従って中国の木材パルプによる製紙を

健全かつ安定的に発展させていくためには、木材パルプによる製紙産業を林業と国民経済

の中核産業として発展させ、十分に良質で持続性のある安価なパルプ原料を確実に供給す

るためには早成多収穫林計画を速やかに発展させる必要がある。軽工業部門の計画による

と、2010年の国産木材パルプ生産量は710万tであるがその原料のパルプ材需要量は3,200

万? で、2015年はパルプが1,000万t、パルプ材が4,500? となっている。

近年の中国の製紙原料であるパルプ生産量、輸出入量、消費量及び伸び率は表 11-10 に示

した。表 11-10 から、パルプ生産量は消費量よりやや低く、その差は輸出を差引いたネッ

ト輸入量で補填していることになる。

表11-10 中国の製紙パルプ生産量、輸出入量、消費量及び伸び率

製紙パルプ

生産量 輸入量 輸出量 消費量

数量 伸び率 数量 伸び率 数量 伸び率 数量 伸び率

万t % 万t % 万t % 万t %

1978 346

1980 426 11.69

1985 615 8.87

1990 835 7.14

1995 1,862 24.6 82 4 1,940

1996 1,900 2.04 147 79.02 2 -57.36 2,045 5.42

1997 1,738 -8.53 154 5.01 2 30.95 1,890 -7.59

1998 2,384 37.17 220 42.66 2 -10 2,602 37.67

1999 2,443 2.47 310 40.82 2,753 5.79

2000 2,501 2.37 335 8.01 3 2,833 2.92

2001 2,490 -0.44 490 46.6 1 -50.59 2,979 5.16

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2002 2,944 18.23 526 7.36 2 52.38 3,469 16.43

2003 3,309 12.4 603 14.61 3 30.73 3,910 12.72

2004 3,723 12.51 732 21.31 2 -30.28 4,453 13.9

2005 4,441 19.29 759 3.69 5 168.57 5,195 16.66

2006 5,204 17.18 796 4.87 7 58.94 5,993 15.35

2007 5,935 14.05 845 6.16 11 47.26 6,769 12.96

中国の製紙パルプ生産量、輸入量及び消費量の推移は図 11-7 に示すが、その中、生産量

と消費量は指数的に増加しているが、輸入量の増加はやや緩やかである。

中国紙パルプ生産量・消費量・輸入量の推移

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

万t

生産量 消費量 輸入量

図 11-7 中国の製紙パルプ生産量、輸入量及び消費量

中国の製紙パルプ需要量及び成長の推移は図11-8に示す通りである。図から2005年以降、製紙パルプの需要量の増加は緩やかに減少傾向を示している。

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138

中国紙パルプ需要量及び成長率

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007

万t

-10

-5

0

5

10

15

20

25

30

35

40%

需要量 伸び率

図11-8 中国の製紙パルプ需要量と伸び率

1990年-2005年の製紙産業における各種製紙パルプ量およびその比率は表11-11に示すよ

うである。表11-11から中国の製紙原料は木材パルプ、非木材パルプ、古紙パルプの3つか

らなっている。2005年の古紙パルプの割合は54%、木材パルプは僅かに22%で非木材パル

プが24%を占めている。このような原料構成は非常に不適当である。特に木材パルプの占

める割合を大幅に高める必要がある。

表11-11 1990年-2005年の製紙産業における製紙パルプの種類別数量と比率

1990 年 1995 年 2000 年 2005 年

数量 比率 数量 比率 数量 比率 数量 比率

万 t % 万 t % 万 t % 万 t %

パルプ消費量 1,393 100 2,259 100 2,791 100 5,200 100

(1)木材パルプ 204 14.6 283 12.5 535 19.2 1,130 21.7

国産 150 10.8 201 8.9 200 7.2 371 7.1

輸入 54 3.9 82 3.6 335 12 759 14.6

(2)非木材パルプ 797 57.2 1,136 50.3 1,116 40 1,260 24.2

あしパルプ 86 6.2 87 3.9 100 3.6 130 2.5

竹パルプ 15 1.1 32 1.4 30 1.1 120 2.3

バガスパルプ 26 1.9 29 1.3 30 1.1 65 1.3

わらパルプ 602 43.2 870 38.5 862 30.9 830 16.0

綿・、麻パルプ 44 3.2 19 0.8 20 0.7 15 0.3

その他パルプ 24 1.7 99 4.4 74 2.7 100 1.9

(3)古紙パルプ 392 28.1 840 37.18 1,140 40.8 2,810 54.0

国産古紙パルプ 371 26.6 767 33.953 843 30.2 1,448 27.8

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輸入古紙パルプ 21 1.5 73 3.23 297 10.6 1,362 26.2

注:数値は中国紙業年鑑及び年度報告に準拠

現在、製紙原料の不足が中国の製紙産業の発展に最も深刻な問題となっている。中国の

繊維原料の構成は不適当で木材パルプの占める割合が低く(表 11-12)、木材パルプと古紙は

主に輸入に依存しており(表 11-13、表 11-14)、市場リスクに対して脆弱である。中国の非

木材繊維を原料とするパルプ製造の技術は進んでいるが、環境保護上の制約があり十分に

利用できない。早成多収穫林も短期間内に原料不足問題を解決することはできない。2007

年に輸入した木材パルプは 845 万tで、古紙は 2,256 万tで、輸入依存度は 39%になって

いる。製紙原料の輸入依存度は年々増える一方で、木材パルプと古紙の価格も大幅に高騰

する見通しである。現在、政府は造林事業に力を入れ、木材、木材チップ、木材パルプお

よび古紙の供給量を増加させる努力をしている。

表11-12 中国の製紙産業の繊維原料構成比率の変化(単位:%) 年 1980 1990 2000 2001 2003 2005 2007

木材パルプ 25 15 19 23 21 22 22 非木材パル 60 57 40 33 30 24 19

古紙パルプ 15 28 41 44 49 54 59

注:非木材パルプの比率は明らかに減少、木材パルプの変化は小さく古紙パルプは 大幅に上昇している。

表11-13中国の製紙産業の国産および輸入木材パルプ量の変化 年 1980 1990 2000 2002 2004 2006 2007

国産木材パルプ(万t) 110 150 200 214 238 526 605 輸入木材パルプ(万t) 25 54 335 526 732 796 845 注:2007年の国産木材パルプ:輸入木材パルプ=41.7:58.3

表11-14 中国の製紙産業の古紙繊維原料の構成 (単位:万t) 年 1980 1990 2000 2001 2003 2005 2007

国産古紙パルプ 82 371 843 800 1,170 1,448 2,212 輸入古紙パルプ 0 21 297 510 750 1,362 1,805 注:2007年の古紙パルプ消費量は4,017万t、古紙としては5,021万t

国産古紙パルプ:輸入古紙パルプ=55.1?44.9

そこで中国製紙原料(パルプ)の需要量と供給量を予測する場合、多くの要素の影響を

考慮しなければならない。主として経済発展の影響、原料構成の変化、輸出入貿易の影響

がある。次の予測結果を参考に供したい。

(1)顧明達氏の予測

最近の中国製紙産業の発展の趨勢から中国の製紙パルプ消費量は2010年8,370万t、2015

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年1億230万t、2020年1億3,020万tと予測されている。その場合、紙t当りのパルプ消費

量を93%として計算されている(表11-15)。

表11-15 2010~2020年の中国の製紙産業の製紙パルプ消費量予測

品種

2005 年実績 2010~2020年の予測

消費量 万 t

比率 %

2010 万 t

比率 %

2015 万 t

比率 %

2020 万 t

比率 %

製紙パルプ消費量

5,200 100 8,370 100 10,230 100 13,020 100

木材パルプ :国産 輸入

1,130 371 759

21.7 7.1 14.6

2,009 1,009 1,000

24 12.05 11.95

2,660 1,460 1,200

26 14.3 11.7

3,515 2,115 1,400

27 16.2 10.8

古紙パルプ :国産

輸入

2,810 1,448 1,362

54.1 27.9 26.2

5,022 2,837 2,185

60 33.9 26.1

6,342 3,942 2,400

62 38.5 23.5

8,203 5,643 2,560

63 43.3 19.7

非木材 パルプ

1,260 24.2 1,339 16 1,228 12 1,302 10

注:2015 年の木材パルプ消費量は 2,660 万tで、其の中、国産木材パルプは 1,460tである。1tのパルプの平均木材消費量を4.5 ? (化学パルプと機械パルプの平均値)で計算すると、年間木材消費量は 6,570 万? である。2020 年の木材パルプ消費量は 2,660 万tで、其の中国産木材パルプは 2,115 万t、木材消費量は 9,518 万? (木材チップも含める)

2010 年の古紙輸入量は 2,700 万tで、古紙パルプに換算すると 2,160 万tになる。2015

年の古紙輸入量は 3,000 万tで、2,400 万tの古紙パルプになる。2020 年の古紙輸入量は

3,200 万t、古紙パルプとしては 2,560 万t。

世界の製紙産業における製紙パルプ、紙・板紙の生産量の増加速度は平坦、緩慢に推移し

2020 年までは年伸び率は2%と予測される。(注: 2020 年まで世界の製紙産業における製

紙パルプ、紙・板紙生産量を年間伸び率2%として計算しているが、中国の木材パルプと古

紙の輸入量は価格と関連するので慎重に検討しなければならない)。2020 年に中国の紙・板

紙生産量は 2010 年と比べ 5,000 万t増の 1億 4,000 万tになると予測される。年間平均伸

び率(2010 年→2020 年)を 5%で計算すれば、紙・板紙の年間平均増加量は 500 万tである。

国産製紙パルプの年間平均伸び率を 10%で計算すると年間平均増加量は約 400 万tである

(木材パルプ 110 万t、古紙パルプ 380 万t、非木材パルプは前と同水準)。輸入木材パル

プの増加量は平均年 40 万tで、古紙パルプは 50 万tである。そこで成長する需要を満た

せるかどうか、まだ多方面からの検討が必要である。

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141

(2)楊懋暹氏の予測

①供給量についての予測結果は表11-16である。

いかなる工業でもその発展は市場、原料、動力、技術、建設投資などの条件が具備され

ねばならないが、なかでも2つの因子、すなわち市場と原料が重要である。紙が発明され

た当初はぼろや麻類などが使われたが、すでに1000年以上の歴史がある。その後、木材が

紙の生産に使用出来るようになり製紙産業が近代化して一大工業となった。木材は繊維が

良質で原料として集中しており、伐採輸送が容易で、大規模経営に発展できる利点がある。

中国の製紙産業は一途に草本を主原料とする経過を辿ったので、汚染が深刻となり、製品

の品質が低く、国民経済からの需要を満すことが出来なかった。1978年の改革開放政策で

製紙産業の主原料を木材とすることにし、2つの市場、2種類の原料という政策を実施し、

大量に木材パルプと古紙を輸入して中国製紙産業を近代化する路線をとった。この原料政

策による原料供給構成の場合の予測結果は表11-16のようになる。

表11-16 中国の製紙産業原料(パルプ)供給量の予測

品種 2001 年実績 2010~2020年予測

数量 比率 2010 年* 2015 年** 2020 年

万t % 万t % 万t % 万t %

製紙パルプ

生産量

2,980 100 11,165 100 14,800 100 18,500 100

木材パルプ量 690 23.2 2,903 26.0 4,662 31.5 5,920 32.0

国産 200 6.7 1,016 9.1 2,634 17.8 3,920 21.2

輸入 490 16.4 1,887 16.9 2,028 13.7 2,000 10.8

古紙パルプ量 1,310 44.0 6,252 56.0 8,214 55.5 12,025 65.0

国内 800 26.8 3,740 33.5 5,654 38.2 7,215 39.0

輸入 510 17.1 2,512 22.5 2,560 17.3 4,810 26.0

非木材

パルプ量 980 32.9% 2,010 18.0 1,924 13.0 555 3.0

葦パルプ 100 3.4%

竹パルプ 30 1.0%

蔗滓パルプ 30 1.0%

ワラパルプ 720 24.2%

その他 100 3.4%

注:表中の2020年の木材パルプ:古紙パルプ:非木材パルプ=32%:65%:3%は中国製紙産業

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の近代化目標により予測した。また、*2010年の予測値は「国民経済と社会発展第11次五ヵ年計

画綱要」及び「全国林紙一体化プロジェクト建設“十五”及び2010年専門計画」に定めた発展目

標に基づき算出。**2015年の予測値は2010年と2020年の比例関係をもって算出

**2015年の予測値は2010年と2020年の比例関係をもって算出

②需要量の予測は表11-17に示したようになる。

表11-17 中国の製紙産業の原料(パルプ)需要量の予測

品種

2001 年実績 2010~2020年の予測

数量 万 t

比率 %

2010 年 2015 年* 2020 年**

万 t % 万 t % 万 t %

製紙パルプ 消費量

2,980

100 10,000 100 14,000 100 24,000

100

木材パルプ :国産 輸入

690 200 490

23.1 6.7 16.4

3,700 2,650 1,050

37.0 26.5 10.5

5,880 3,920 1,960

42.0 28.0 14.0

11,280 7,440 3,840

47.0 31.0 16.0

古紙パルプ :国内古紙 輸入古紙

1,310 800 510

44 26.9 17.1

5,500 4,300 1,200

55.0 43.0 12.0

7,420 6,160 1,260

53.0 44.0 9.0

12,000 10,800 1,200

50.0 45.0 5.0

非木材パルプ :葦パルプ

竹パルプ バガスパルプ わらパルプ その他

980 100 30 30 720 100

32.9 3.4 1.0 1.0 24.2 3.4

800

8.0

700

5.0

720

3.0

注:2010 年の需要量の予測値(10,000 万 t)は 1t 紙/1t パルプをもって計算。また、*2010年と**2020年の予測値は1978~2007年の30年間のデータをもって2003年のデータをベースに算出した。 (3)過去の数値に基づく予測

計算すると 1978~2007 年までの 30 年間、中国の製紙パルプの生産量の年平均伸び率は

11.3%で、製紙パルプの輸出量年平均伸び率は 24.1%、製紙パルプ消費量の年平均伸び率

は 11.5%となる。中国の製紙パルプ生産量の年平均伸び率と消費量伸び率はよく一致して

いるが、輸出の伸び率は他の2つの値より 2倍も高い。そのため今後の 15 年内の中国の製

紙パルプ生産量の年平均伸び率は 11.3%、製紙パルプ消費量の伸び率は 11.5%と、伸び率

がその数値に近い 2003 年の製紙パルプの生産量、輸出量および消費量を基準にすると、

2010 年、2015 年、2020 年の中国の製紙パルプ供給量はそれぞれ 7,010 万t、1 億 1,993

万t、2億 485 万t、需要量はそれぞれ 8,351 万t、1億 4,359 万tと 2億 4,690 万tと予

測される(表 11-18)。

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表11-18 中国の製紙パルプ生産量、輸出量、消費量の予測(単位:万t)(1)

年 生産量 輸出量 消費量

2003 3,309 3 3,910

2010 7,010 11 8,351

2011 7,803 14 9,307

2012 8,687 17 10,373

2013 9,670 22 11,560

2014 10,765 27 12,884

2015 11,983 33 14,359

2016 13,340 41 16,003

2017 14,850 51 17,836

2018 16,531 64 19,878

2019 18,402 79 22,154

2020 20,485 98 24,690

表 11-19 中国の製紙パルプ生産量、輸出量、消費量の予測(単位:万t)(2)

年 生産量 輸出量 消費量

2007 5,935 11 6,769

2010 8,187 21 9,371

2011 9,114 26 10,443

2012 10,146 32 11,639

2013 11,294 40 12,972

2014 12,573 50 14,457

2015 13,996 62 16,113

2016 15,580 77 17,957

2017 17,344 95 20,014

2018 19,307 118 22,305

2019 21,493 146 24,859

2020 23,926 181 27,705

2007 年と 1995 年の関連データを比較しできた予測結果(表 11-19 と表 11-20)を比較して

みると、2007 年を基準にできた予測結果は表 11-18の 2003 年を基準にできた予測結果と最も近く、1995 年を基準にできた結果とは差が大きい。 比較してみると、表 11-18 の予測結果の方が信頼性は高い。

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表 11-20 中国の製紙パルプ生産量、輸出量、消費量の予測(単位:万t) (3)

年 生産量 輸出量 消費量

1995 1,862 4 1,940

2010 9,302 100 9,863

2011 10,355 124 10,992

2012 11,527 154 12,251

2013 12,832 191 13,654

2014 14,285 237 15,217

2015 15,902 294 16,960

2016 17,702 365 18,902

2017 19,706 452 21,066

2018 21,936 561 23,478

2019 24,419 696 26,166

2020 28,298 864 29,162

(4)製紙産業発展計画の予測

『全国林紙一体化プロジェクト建設“十五”及び 2010 年計画』と「十一五」の発展目標

によって、2010年の中国の製紙産業繊維原料構成についての予測は表11-21のようである。

ここで 2015年と 2020 年については計画的な予測はしなかった。

表11-21 中国“十一五”の製紙工業の主要な指標

繊維構成 種類と出所

2005年 2006年 2007年 2010年 数量 万t

比率 %

数量 万t

比率 %

数量 万t

比率 %

数量 万t

比率 %

製紙パルプ総量 5,200 100 5,992 100 6,769 100 11,165 100 木材パルプ

:国産 輸入

1,130 371 759

21.7 7.1 14.6

1,322 526 796

22 9 13

1,450 605 845

22 10 12

2,903 1,016 1,887

26.0 9.1 16.9

非木材パルプ 1,260 24.3 1,290 22 1,302 19 2,010 18.0 古紙パルプ :国内 輸入

2,810 1,448 1,362

54.0 27.8 26.2

3,380 1,810 1,570

56 30 26

4,017 2,212 1,805

59 32 27

6,252 3,740 2,512

56.0 33.5 22.5

以上の結果を解析検討したところでは、中国の製紙原料(パルプ)の2010年、2015年、2020

年の製紙原料(パルプ)の消費あるいは需要量はそれぞれ約0.90億t、1.40億t、2.40億t、

供給量はそれぞれ0.95億トン、1.50億トンと2.40億トン以上と認められた。

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11.3 早成木材の需要量及び供給量の予測

国家林業局は天然林保護、退耕還林、京津黄砂の整備、三北及び長江流域に重点的な保

護林体系の建設と早成多収穫用材林基地建設プロジェクトなどを通し、2001~2006年まで

人工造林総面積は 2790.3 万 haで、その中、早成多収穫用材林面積の占める割合は非常に

低く、僅か 0.70%の 19.6 万 ha である。

1990~2007年の中国の製紙産業用繊維原料の種類と使用量及び 2010 年、2015 年、2020

年の予測状況は表 11-22 に示した。2020 年の木材パルプの総生産量は 2,515 万tで、木材

需要量は 12,575 万? と予測される。林地1ha 当りの年間材積成長量を 50 ? 、出材量を 40

? として計算すると新しく 3l4.4 万 haの林地を造成する必要があり、国の早成多収穫用材

林総面積の 6.7%(314.4/4667=6.7%)となる。現在、展開している林権制度改革は生産権

の明確化、経営権の自由化、早成多収穫用材林の発展促進に大きな推進力となる。勿論、

製紙用材林基地造成と開発期間は長期に亘り、国の政策、経済、貸付、融資の面で強力な

支持が必要である。

表 11-22 1990-2020 年の中国の製紙産業用繊維原料の種類及び使用量の状況

原料の種類 1990 年 1995 2000 2005 2006 2007 2010 年* 2015 年** 2020 年**

原料総量(万? +t) 3,344 5,142 6,598 11,730 13,400 14,802 25,904 33,060 42,195

(1)木材繊維(万? ) 916 1,274 2,408 5,085 5,949 6,525 13,064 16,673 21,280

:国産木材(万? ) 673 905 900 1,670 2,367 2,723 4,572 5,835 7,447

輸入(万? ) 243 369 1,508 3,416 3,582 3,803 8,492 10,838 13,833

(2)非木材繊維(万 t) 1,938 2,818 2,765 3,132 3,226 3,256 5,025 6,413 8,185

:あし (芒) 214 218 250 325 360 360

竹 39 80 75 300 238 300

バガス 64 73 75 163 185 225

稲麦わら 1,505 2,175 2,155 2,075 2,270 2,123

綿、麻、ぼろ 56 24 25 19 38 63

其の他原料 60 248 185 250 135 185

(3)古紙(万 t) 490 1,050 1,425 3,513 4,225 5,021 7,815 9,974 12,730

:国内古紙 463 959 1,054 1,810 2,263 2,765 4,675 5,967 7,615

輸入古紙 27 91 371 1,703 1,963 2,256 3,140 4,007 5,115

注:用材量=木材パルプ×4.5;非木材繊維使用量=非木材パルプ×2.5; 綿、麻、ぼろ使用量=綿麻等×1.3:古紙量=古紙パルプ×1.25。*『国民経済及び社会発展の第11次 5カ年計画綱要』と『全国林紙一体化プロジェクト建設“十五”及び 2010 年計画』の発展目標参照、**2010 年の発展目標の伸び率を 5%とし、2015 年と 2020 年を予測した。 楊懋暹氏の推定によれば、2020 年の中国の国産パルプ増産量は 4,000 万tである可能性がある。パルプ1tの木材消費量を 4 ? とすれば、4,000 万×4=1.6 億? となる。1ha の林地の生産力を年木材 20 ? (国際的にはかなり低い水準)とすると必要な林地は 800 万 ha

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となる。 全国人工林の分布は表 11-23 である。国の人工林資源の面からみれば、800 万 ha の林地

は人工林面積の 17.1%(800/4667)に相当する。 表 11-23 全国の人工林分布

森林区 人工林面積(万 ha)

全国人工林に占める比率

(%)

人工林蓄積量(万? )

全国人工林蓄積量に占める

比率(%) 国有林業省区 1,254.22 26.88 34,398.18 33.96

その内

東北、内モンゴル

515.99 11.06 18,243.09 17.97

四川、雲南 506.31 10.85 10,259.95 10.17 南方集団林 2,538.64 54.4 52,728.84 52.02

その他少林省 873.72 18.72 14,172.38 14.02 合計 4,667 100 101,299 100

2001 年 2 月に元国家計画委員会、財政部、林業局は『製紙産業原料林基地の建設加速に

関する若干意見』を公布して以来、早成林基地造成が全国各地で活発に行なわれ、南方で

は馬尾松、ユーカリなど早成多収穫樹種が推進され、北方ではカラマツ、樟子松、ポプラ

などの早成樹種を採用している。湖南省の泰格林紙集団は非常に顕著な実績を挙げている。

林業基地の造成は土地を借入れによる造林、自社で造林基地の造成や製紙工場による全面

的経営管理権をもつ林木生産がある。合作造林では、林業を営む林農民が土地を提供、林

業専門業者は技術・作業を提供し、製紙企業は資金を出資し、伐採後、製紙工場が購入し、

利益を比例配分する。指定(訂単)造林は製紙会社が林農業者と契約を結ぶことで信頼で

きる市場を提供し木材販売に伴う林農民のリスクが軽減できる。この他に委託造林があり、

中・幼令林と青山(植林したばかりの森林)を買収する方式もある。現在、泰格林紙集団

は 7 年間の林地拡大の努力を経て現在、湖南省、湖北省で自社林基地 200 万畝、指定造林

200 万畝を造成し、2010 年までに林業基地は 1,000 万畝に達する見通しである。伐採期に

入れば木材 7,000 万? を出材でき、1? 600 元で計算すると市場価値は 420 億元になる。

年間 80 万畝を伐採し、木材 560 万? を出材すれば 140 万tの紙を生産する原料が供給でき

ることになる。その他、林地の経済効果とカーボン取引による経済効果もある。これは非

常に成功した例であるが、この他に金光集団(Sinar Mas)が海南省で成功したユーカリ造

林の例がある。自社林からの木材は金海パルプ工場の年産 120 万tの製紙パルプの主原料

となっている。また福建省の南平製紙工場の馬尾松の林業基地造成、福建省青山企業の馬

尾松林業基地造成、広西省の恩索紙業のユーカリ林業基地造成、広西省の金光集団のユー

カリ林業基地造成など成功例がある。

正確な統計ではないが、現存する林業基地としては海南パルプ工場の 23万 ha、南平紙業

の 8.2 万 ha、広西恩索紙業の 16 万 ha、広東湛江の 20 万 ha、湖南岳陽の 67 万 ha、福建青

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山紙業の 8.9 万 ha、広東梅州森博の 20 万 ha があって合計 163.1 万 ha になる。

以上が中国の製紙工業の基地林の主な状況である。その他、北方地域、河南、山東、江

蘇、安徽、寧夏など各省の製紙用林を含めれば大体 450 万 ha となる。

しかし、前へと進む途中で多くの問題が出て来た。主要なものとして南方地域、特に広

西、広東、雲南、貴州の各省では行動開始間もなく顕著に効果が現れたが、北方のポプラ

造林の進展は遅く、三倍体毛白楊と欧州のポプラの雑種などや、東北地域の大興安嶺の天

然林の伐採禁止によって生態系など環境保護に成果を挙げている。しかし天然林開発と樟

子松のような早成針葉林の開発はまだ十分ではなく、総じて言えば開発状況は区々である。

次は短期早成林の開発であるが全般的に計画は少なく、例えばユーカリの開発に針葉樹の

開発も加えるべきであるが、国内では専らユーカリの開発が行われており、針葉樹と広葉

樹と均衡の取れた開発はなされてないが、将来、必ず単一樹種林が問題になるであろう。

さらに製紙用森林の伐採には自主権がないことである。国の林木伐採権が何層にも重ねら

れていて、省は上から下へ次々と伐採権を地区と一般都市まで移譲する。同じ土地でも製

紙専用林の場合には伐採期が来ても伐採証明が得られないから伐採できないから本当の独

立経営は実現し難い。各省、市の伐採指標管理なしに、今後製紙原料林基地計画は独立し

たプロジェクトとして批准することを提案する。

分析検討の結果によると、2010年、2015 年、2020年の中国の短期早成材の消費量および

需要量は大体、0.4 億? 、0.6 億? 、0.75億? で、供給量は 0.50 億? 、0.70 億? 、0.90 億

? を上回ると予測されている。 11.4 紙・板紙及び製紙原料の輸出の見通

中国は林木の早期成長に適した広大な土地資源が十分にあり、先進的な育種、営林、管

理などの技術をもって工業林の育成を補佐できれば、中国は恐らく世界で最低のコストで

木材繊維資源を持てる可能性がある。人口については間違いなく大国であって豊富な労働

力資源を持っている。その単純労働力資源は長期に亘って供給が需要を上回るであろうか

ら労働力の価値は今後とも長期間、低水準に維持されよう。この2点で中国は世界で強力

な生産国、輸出大国になり得る基盤がある。

中国の紙・板紙の輸出とその推移は図11-9に示したが、製紙パルプの輸出の変化は図11-10

のようである。この2つの図によると中国の紙、板紙、製紙パルプの輸出は 2015 年、2020

年の状況は最近の場合に類似しており、微小な変動はあっても大きな変化はない、つまり

輸出が増加する傾向に大きな変化はなく、輸出量が大きく増加することはない。

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148

中国紙・板紙輸出量及び成長率

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

500

1978

1980

1985

1990

1995

1996

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

-100

0

100

200

300

400

500

輸出量万t 成長率%

図 11-9 中国の紙・板紙の輸出の推移

2007 年の輸出量を基準に 1978 年~2007 年の年間平均伸び率を予測の指標にすると中国の

紙・板紙の輸出量は 2010 年に 1,174 万t、2020 年に 2,107 万tになる。(2007 年の輸出量

は 461 万t、年間伸び率は 12.4%)。製紙パルプの輸出量は 2010 年に 62 万t、2020 年に

181 万tとなる。(2007 年の輸出量は 11 万t、年間平均伸び率は 24.1%)

中国紙パルプ輸出量及び成長率

0

2

4

6

8

10

12

1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007-100

-50

0

50

100

150

200

輸出量(万t) 成長率(%)

図 11-10 中国の製紙パルプの輸出の推移

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11.5 急速に増加する原料需要と供給の乖離が国際市場及ぼす影響

現在、中国の製紙産業は国際的な製紙産業の競合において既に相当な影響力を持ってい

る。世界各国政府、国際組織、NGO、業界専門家、企業家は広く中国の製紙産業の発展

に関心を持ち、中国の未来に大きな希望を寄せて中国の経済成長の成果を分ち合うことを

望んでいる。例えばAPP金光、Stora-Enso、UPM、シンガポール金鷹、日本の王子製

紙などのパルプ製紙企業、Voith、Metso、Andritz、KBC、ABB、Siemens、Purac、Albany

など数十の設備メーカー会社が中国に進出している。中国の古紙輸入には米国、日本、英

国がすでに主要輸出国となっている。中国の木材パルプ輸入国にはカナダ、インドネシア、

ロシア、ブラジル、米国、チリが上位に並んでいる。中国は木材チップ、木材パルプ、古

紙資源を全世界から調達している。このような国際協力を通して中国は既に世界一流の大

型パルプ生産製紙企業、先進的な技術・装置製造企業によって中国の製紙工業の水準は著

しく高まった。中国製紙産業はすでに世界製紙産業発展の重要な推進力となっており、生

産量と消費量の面において既に世界の前列に位置している。

中国製紙産業の繊維原料の輸入について楊懋暹先生が推定されたところによると、木材

パルプの年間輸入量は 2,000 万tに達する可能性がある。伝統的に市販パルプの産地であ

る米国、カナダ、スウェーデン、フィンランド、ノルウェーの 2001 年の市販木材パルプ取

引量は 1,907.5 万tで、年間増加率を 1.3%として計算すると 2020 年の製紙パルプの増加

量は 1,907.5×(1.013) 19=2,438 万tになる。南方の新規市販パルプ生産地であるブラジ

ル、チリ、スペイン、インドネシア、南アフリカの 2001 年の木材パルプの取引量は 935.5

万tで、年間 7.9%の増加速度であるから、2020 年パルプの増加量は 935.5×(1.079)19=

3,967 万tである。上述の2つの地域の市販パルプを加えると 2020 年の市販パルプの増加

量は 6,405 万tになる。2001 年の国際市場における市販パルプ需要量は 3,150 万tで、年

間増加率は 3.2%であるから、2020 年の需要量は 3,150×(1.032)19=5,731 万tに増大する

と予測される。2020 年に中国が国際市場から 6,405-5,931=474 万tのパルプを得られる

かもしれない。2007 年の中国のパルプ輸入量は 845 万tであるが、これに加えて国際市場

から増加分のパルプの中、中国は 474 万tを得られるであろう。2者を加えると 1,319 万

tになる。中国は八方手を尽くして国際資源を掘り起こせば、2,000 万tの輸入パルプ量を

確保することが可能であろう。

繊維原料の輸入を拡大するもう1つの重要な方策は木材チップの輸入を拡大することで

ある。木材チップの輸入は日本にとって国内繊維原料の不足を解決する重要な方法になっ

ている。現在、日本の木材チップ輸入量は国内木材チップの 2.6 倍で、絶対量として 1,250

万tに達し、国内の木材チップ需要量の 72.2%以上を占めている。これは検討に値する事

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である。日本の輸入木材チップの使用経験からすれば1tにつき 120 ドルでも利益は得ら

れるのである。これは今後の中国のパルプ製造業の原料問題解決に重要な参考例である。

以上の研究調査からすると中国は製紙原料資源を充足されようが、しかし短期的には原

料の構成要素であるパルプと古紙の一定数量は輸入することになるが、これは現在の国際

市場の原料価格を持続的の上昇させる推進力となるに違いない。

11.6 未来の展望

30 年間近く急速に発展を継続してきた経過があり、中国の製紙業は世界の製紙大国にな

り、世界の製紙産業の強国として邁進している。中国の製紙産業の発展潜在能力は巨大で、

好機と挑戦が共存している。現在、中国の経済発展は外部環境の面では世界的な通貨膨張、

ドル安、経済危機、石油、木材パルプ、古紙などの原材料価格の継続的高騰、米国のアン

チダンピング法等々の問題に直面し、国内では CPI(消費者の価格指数)の高騰、経済の成

長速度は前の数年間と比較して明らかに下降し、人件費は一途に上昇し、輸出増加速度は

明らかに下がるなど多くの問題が発生し、加えて冷害雪害と大地震がもたらした巨大な損

失は中国の経済発展に圧力となり雪上霜を重ねたことになった。業界内の繊維原料、水資

源、エネルギーの不足、環境汚染等の問題は中国の製紙産業の発展に影響を与えている。

しかし、当面の問題は中国の製紙産業の力強い成長力を転換させる程のものではない。新

たな情勢の下、世界経済発展の新しい動向に関心を持ち、国が公布する政策法規を真剣に

学習し、発展の方式、変革の手段によって伝統的な製紙産業の改造を進め、現代的設備を

導入し、古紙の回収利用に大いに力を入れ、科学技術の進歩、労働力資質を高めて増産方

式を転換し、適切な規模と速度を維持し、経済的利益、社会的利益を重視、但し環境的利

益も肝要で、品質を高め商標価値を創造し、国際競争力を高めることによって、中国製紙

産業を引続き前進させることができる。

製紙産業が持つ循環経済の優位性を十分に発揮し、持続的発展戦略を実施し、中国的特

色のある近代的製紙産業を建設する。紙・板紙関連の計画は適度に抑制し、2010 年までの

紙・板紙の新増設能力は 2,650万 t とし、現存する旧式の能力 650 万 t を淘汰して、効率的

な能力を 9,000 万 t にする。増産方式を転換し、業界と企業の社会的責任意識を高め、国

家の環境保護、資源節約、労働保障、安全生産など関連法律法規を厳格に遵守する。製紙

産業の製品1t当り平均取水量を2005年の103 ? から2010年までに80? までに引き下げ、

総合的平均エネルギー消費量 (標準石炭換算量)を 2005年の1.38tから1.10tに減少し、

汚染物質(COD)の排出総量は 2005 年の 160 万 tから 140 万 t に減らし、逐次、資源節約型

で環境に優しい調和的な新しい模式の製紙産業に発展させる。

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総括すると中国の森林資源は十分に豊富であって、人工造林と早成多収穫林を推進する

政策が維持されれば、将来、中国製紙産業の木材繊維原料の供給は需要を満たせる。これ

は中国製紙産業の継続的な発展に堅実な物質的基盤となり、さらに国際市場にある程度木

材パルプの原料と紙製品を提供できるであろう。