fe-c 合金の状態図1 fe-c 合金の状態図...
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Fe-C 合金の状態図
Keyword:状態図計算、包晶反応、共析反応、共晶反応、パーライト、レーデブライト
課題詳細
Fe-C 系合金は、非常に幅広く利用されている材料である。鉄に含まれる炭素量によって、
金属の特性が大きく変化する。炭素量が多いと、金属の溶融温度が低くなる。鉄筋などに使
われている一般的な鋼材は 1500℃以上に加熱しないと溶融しないが、鋳鉄は 1200℃程度
に加熱すれば溶解する。一般的に、鋳鉄には 3%程度の多くの炭素が含まれている。ここで
は、Fe-C 合金の状態図について以下 27 課題に関して熱力学ソフトの使用方法とともに簡
単な熱力学の説明も行う。
「Fe と C を混合した Fe-C 系合金を 0℃から 5000℃まで昇温した時、或いは 5000℃から
0℃まで降温した時の下記の反応を検討する。(1‐x)Fe(液体⇄固体)+(x)C(液体⇄固体)→
Fe1-xCx(液体⇄固体)(x=0.0~1.0)」
(I)一般的な状態図・・・・・・・・
課題 1:温度を 0℃から 5000℃まで昇温させた時の下記の反応の状態図を作成し、本状態
図の特徴を記せ。(状態図を表示させるためのソフトの使用方法を説明します。ただし、Fe-
C 系には、複数の反応系が含まれているため、必要な反応系に飛ばれても結構です。)
課題 2:前述の状態図において、温度を 4000℃、1200℃、1000℃と降温させた時の各降温
過程における各相の変化を表示せよ。(各温度における相変化を表示する方法と、その相変
化について説明します。)
(Ⅱ)包晶系状態図・・・・・・・・
課題 3:包晶系状態図の横軸をモル分率表示或いは重量%表示せよ。また、グラファイト抜
き(含セメンタイト)のモル分率表示と重量%を表示せよ。(Fe-C 状態図では、横軸をモル
表示或いは重量表示する方法や、計算ソフトのデータからグラファイト或いはセメンタイ
トを除去して計算する方法等、いくつかの手法があります。ここでは、モル表示或いは重
量%表示する方法や、グラファイトを除いて計算する方法を説明します。)
2
・・・・温度一定で C のモル分率が変化した場合・・・・
課題 4:上記の包晶系状態図で、温度を 1520℃、1503℃(包晶点温度)、1480℃と降温さ
せた時の各降温過程における各相の変化を表示せよ。(包晶系状態図において各温度でγ鉄、
δ 鉄、液相がどのように変化するを説明します。)
課題 5:上記の状態図の 1520℃及び 1480℃において、δ 鉄、γ 鉄、液相の安定関係を溶体
の自由エネルギーを基に説明せよ。(溶体の自由エネルギーをベースに、化学ポテンシャル
を用いて、何故、δ 鉄、γ 鉄、液相のそれぞれの相が安定であるかを説明します。)
課題 6:溶体の自由エネルギーを用いて、1537℃、1520℃、1494℃(包晶温度)、1480℃、
1394℃の各降温温度における各相の安定関係を説明せよ。(溶体の自由エネルギーを用いて、
課題 5 と同様に、δ 鉄、γ 鉄、液相の安定関係を説明します。)
課題 7:包晶系状態図において、1520℃、包晶温度、1480℃での活動度を求め、各相の安
定関係を説明せよ。(活動度の表示方法と、δ 鉄、γ 鉄、液相の活動度の説明をします。)
課題 8:C=0.005mol における 1520℃と 1480℃における各相の変化を説明せよ。(包晶系
合金の固相と液相の割合を求める「テコの原理」について説明します。)
課題 9:包晶系状態図において、1520℃、包晶温度、1480 における δ 鉄、γ 鉄、液相に含
まれる極微量の炭素の挙動について説明せよ。(δ 鉄、γ 鉄、液相中に含まれる極微量の炭
素が、各温度から降温される過程でどのように変化するかを説明します。)
・・・・組成一定で温度が変化した場合・・・・
課題 10:上記の状態図において、C=0.002mol、0.0079mol、0.02mol における 1550℃から
1350℃まで冷却した時の相変化を定量的に説明せよ。(3 種の炭素のモル分率で、それぞれ、
δ 鉄、γ 鉄、液相がどのように変化するかを定量的に説明します。)
・・・・上記の条件での顕微鏡の概念図・・・・
課題 11:上記の状態図の C=0.003mol において、1550℃から 1350℃まで降温した時の各
相変化を金属組織の変化として、その概念図を図示せよ。(包晶反応を経由しない炭素鋼が
降温時にどのように組織変化するかを顕微鏡下での概念図を基に説明します。)
課題 12:包晶鋼(C=0.079mol)を、1550℃から 1350℃まで降温した時の各相の変化を金
属組織の変化として、その概念図を図示せよ。(包晶鋼が降温時にどのように組織変化する
かを顕微鏡下での概念図を基に説明します。)
3
課題 13:上記の状態図の包晶点(C=0.079mol)における包晶組織に関して状態図を用いて
説明せよ。(包晶鋼は、何故、包晶組織になるかを、状態図を基に概念図で説明します。)
課題 14:亜包晶鋼(C=0.005mol)において、1550℃から 1350℃まで降温した時の各相の
変化を金属組織の変化として、その概念図を図示せよ。(亜包晶鋼が降温時にどのように組
織変化するかを顕微鏡下での概念図を基に説明します。)
課題 15:過包晶鋼(C=0.02mol)おいて、1550℃から 1350℃まで降温した時の各相の変化
を金属組織の変化として、その概念図を図示せよ。(過包晶鋼が降温時にどのように組織変
化するかを顕微鏡下での概念図を基に説明します。)
(Ⅲ)共析系状態図・・・・・・
課題 16:共析系状態図において、包晶系状態図と同様に、横軸をモル表示、重量%表示、
グラファイト抜きで計算した重量%表示との比較を行え。(課題3と同様に、モル分率表示、
重量%表示の説明とグラファイトの代わりにセメンタイト表示の状態図について説明しま
す。)
・・・・温度一定で C のモル分率が変化した場合・・・・
課題 17:共析系状態図について、1000℃、800℃、600℃における、α 鉄、γ 鉄、セメンタ
イトの各相の変化を図示せよ。(各温度で、α 鉄、γ 鉄、セメンタイトがどのように量的に
変化するかを説明します。)
課題 18:溶体の自由エネルギーを基に、1000℃、800℃、600℃における α 鉄、γ鉄、セメ
ンタイトの各相の安定性関係を説明せよ。(溶体の自由エネルギーを用いて、それぞれの温
度で、なぜ、α 鉄、γ 鉄、セメンタイトが安定化を説明します。)
・・・・組成一定で温度が変化した場合・・・・
課題 19:共析系状態図において、1200℃から 400℃まで降温した時の C=0.02mol、
0.0345mol、0.06molにおける各相の変化を図示せよ。(それぞれの炭素のモル分率で、α鉄、
γ 鉄、セメンタイトがどのように変化するかを説明します。)
・・・・降温に伴う共析鋼の組織の変化・・・・
課題 20:共析鋼(C=0.0345mol)において、800℃から 700℃まで降温した時の各相の変化
を金属組織の変化として、その概念図を図示せよ。(亜共析鋼が降温時にどのようにパーラ
イト構造に変化するかを顕微鏡下での概念図を基に説明します。)
4
課題 21:亜共析鋼(C=0.02mol)において、800℃から 700℃まで降温した時の各相の変化
を金属組織の変化として、その概念図を図示せよ。(共析鋼が降温時にどのように組織変化
してパーライト構造になるかを顕微鏡下での概念図を基に説明します。)
課題 22:過共析鋼(C=0.06mol)において、1000℃から 700℃まで降温した時の各相の変
化を金属組織の変化として、その概念図を図示せよ。(過共析鋼が降温時にどのように組織
変化してパーライト構造になるかを顕微鏡下での概念図を基に説明します。)
(Ⅳ)共晶系状態図(鋳鉄)・・・・・・・・
課題 23:課題1の状態図の中の共晶系状態図について説明せよ。特に、横軸をモル表示、
重量%表示、グラファイト抜きで計算した重量%表示との比較を行え。(課題 3 と同様に状
態図の計算でモル表示、重量%表示、グラフィト表示、セメンタイト表示等の表示法につい
て説明します。)
・・・・降温に伴う鋳鉄の組成変化・・・・
課題 24:共晶鋳鉄である白鋳鉄(C=0.176mol)を 1600℃から 400℃まで降温した時の相
の変化及び組成変化を図示せよ。(白鋳鉄の冷却時にどのような相に変化するかを、グラフ
ァイトで計算した場合とセメンタイトで計算した場合の 2 種類について説明します。)
課題 25:白鋳鉄(共晶点、C=0.176mol)の共晶凝固に関して状態図を用いて熱力学的に説
明せよ。(白鋳鉄がどのようにして液相からレーデブライト構造に変化するかを、状態図を
ベースに説明します。)
課題 26:亜共晶鋳鉄であるねずみ鋳鉄(C=0.1mol)を 1600℃から 400℃まで降温した時
の相の変化及び組成変化を図示せよ。(亜共晶鋳鉄が降温時にどのような相に変化するかを、
グラファイトまたはセメンタイトで計算した場合の 2 種類について説明します。)
課題 27:過共晶鋳鉄の(C=0.2mol)を 600℃から 400℃まで降温した時の相の変化及び組
成変化を図示せよ。(過共晶鋳鉄が降温時にどのような相に変化するかを、グラファイトま
たはセメンタイトで計算した場合の 2 種類について説明します。)
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(I)一般的な状態図・・・・・・・・
課題 1:温度を 0℃から 5000℃まで昇温させた時の下記の反応の状態図を作成
し、本状態図の特徴を記せ。
(x)Fe(固体→液体)+(1-x)C(固体→液体)→ FexC1-x(固体→液体)
の反応で x を 0 から 1 まで変化させた場合。
●計算熱力学ソフトの使用方法(状態図の表示のための事前入力法 1)
パソコン画面上の CaTCalc を立ち上げ、画面上段の System をクリックする。
●計算熱力学ソフトの使用方法(状態図の表示のための事前入力法 2)
①最初に鉄の Fe をクリックする。
②次に炭素の C をクリックする。
③データベースとして RICT-BasicDB.EDB を選ぶ。
④最後に Load をクリックする。
*下図に示すように、今回の計算ために選択した条件が表示される。
①
②
③
④
6
①CalClation ボタンをクリックする。
●計算熱力学ソフトの使用方法(状態図の表示のための事前入力法 3)
下図のような状態図を計算するための入力画面が現れる。状態図を計算するためのデー
タの入力方法を以下に示す。
●この計算は典型的な計算であるので、Set Default Values をクリックすると上記の条件が
自動的にセットされる。以下に示すのは、一般的な個々のデータを入力する方法である。
①Add Feed ボタンをクリックし、Phase のプルダウンメニューで Fe(FCC_A1)を選択する。
②Add Feed ボタンをクリックし、Phase のプルダウンメニューで C(GRAPHITE)を選択す
る。
① ②
③ ④
⑤
⑥
⑦
⑧
7
*Speciesの項がFeとCであることを確認する。
③Feの項のValueにbを入力する。
④Cの項のValueにxを入力する。
⑤xの項に0と1を入力する。
⑥Temperatureを0から5000℃と入力する。
⑦Phase Diagramを選択する。
⑧全項目を確認し、Calculate を実行する。
●計算結果の説明(0℃から 5000℃までの状態図の表示)
①状態図を Word 等に貼り付けたい場合は、メニューバーの[Edit]‐[Copy to clipboard]を
選択、Word 等にペーストすることで図を貼り付けることができる。
②Fe-C 系の状態図の計算結果が下図に示すように自動で表示されます。
・上図に Fe-C の状態図を示す。最初に状態図にある各種記号の説明を行う。
Fe-xC P=1.01325bar
CaTCalc
Mole fraction C
1.8.6.4.2
Tem
pera
ture
(C)
5000
4500
4000
3500
3000
2500
2000
1500
1000
500
LIQUID+GRAPHITE
LIQUID
γ(FCC_A1)+GRAPHITE
α(BCC_A2)+GRAPHITE
LIQUID+γ(FCC_A1)
γ(FCC_A1)
1.包晶系
2.共析系
3.共晶系
8
・BCC_A2 は α 鉄の代表的な構造である立方晶系の体心立方格子を示す。純粋な Fe の格子
定数は 0.286nm である。純粋な Fe は 727℃で炭素(C)を最大限 0.0218%まで固溶でき
る。これらは総称してフェライト呼ばれ、α 鉄とも呼称される。フェライトは、912℃を超
えると γ 鉄に変化する。
・FCC_A1 は γ 鉄の代表的な構造である立方晶系の面心立方格子である。純粋な γ 鉄の格
子定数は 0.364nm であり、α 鉄と比較すると大きな格子定数である。このため、結晶構造
内にすきまが多く、炭素を多く固溶できる。γ 鉄はオーステナイトを呼称される。オーステ
ナイトは 1147℃で炭素最大限 2.14%まで固溶することができる。
・Graphite が液相になる温度は 4492℃である。
・この状態図には、3 種類の特色ある反応系が含まれている。先ず、高温領域に包晶系反応、
中温領域に共晶系反応、低温領域に共析系反応である。
●計算結果の説明(mol からgへの変換)
・Calculate 画面の unit の項のプルダウンメニューで g を選択する。Mol の場合と同様の
図が得られる。
Fe-xC P=1.01325bar
CaTCalc
Mass fraction C
1.8.6.4.2
Tem
pera
ture
(C)
5000
4500
4000
3500
3000
2500
2000
1500
1000
500 α(BCC_A2)+GRAPHITE
γ(FCC_A1)+GRAPHITE
LIQUID+GRAPHITE
LIQUID
α
γ
9
課題 2:前述の状態図において、温度を 4000℃、1200℃、1000℃と降温させた
時の各降温過程における各相の変化を表示せよ。
●計算熱力学ソフトの使用方法(各相の割合の表示のための事前入力法)
・Unit が g であるとわかりにくいので g から mol へ変換する。
①x の項は 0 と1を入力。注:温度間隔を 0.02 と入力する。
②Temperature は 4000℃に固定。
③Equilibrium Calc を選択する。
④Calculate を実行する。
①
②
③
④
10
●計算結果の説明(4000℃での各相の割合の自動表示)
・Edit をクリックし、Copy to Clipboard を選択し、必要なファイルにコピーする。
・以下の図は、パワーポイントにコピーし、説明用に加工したものである。
・4000℃では、炭素量が 0.73mol までは液相であるが、それ以上の濃度になるとグラファ
イトが生成し始め、液相は減少していく。
●計算結果の説明(1200℃での各相の割合の自動表示)
Fe-xC T=4000C, P=1.01325bar
CaTCalc
C (mol)
1.8.6.4.2
mol (a
tom
)
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
LIQUID
GRAPHITE
液相
グラファイト
0.73mol
Fe-xC T=1200C, P=1.01325bar
CaTCalc
C (mol)
1.8.6.4.2
mol (a
tom
)
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
LIQUID
FCC_A1
GRAPHITE
液相グラファイト
γ鉄(FCC_A1)
0.078mol 0.16mol
11
・γ 鉄は C=0.078mol から急激に減少し C=0.16mol では完全に消失している。このように
状態図のみでは、各相の割合が不明であるので、この情報は、有用である。
・液相は、C=0.078mol から 0.16mol まで直線的に急激に増加し、その後、直線的に減少し
ている。
・グラファイトは C=0.16mol から出現し、その後、C=1mol まで直線的に増加している。
●計算結果の説明(1000℃での各相の割合の自動表示)
・γ 鉄は C=0.07mol から C=1mol まで直線的に増加している。
・グラファイトは C=0.07mol から C=1mol まで直線的に減少している。
Fe-xC T=1000C, P=1.01325bar
CaTCalc
C (mol)
1.8.6.4.2
mol (a
tom
)
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
FCC_A1
GRAPHITE
γ鉄(FCC_A1)
グラファイト
0.07mol
12
(Ⅱ)包晶系状態図・・・・・・
課題 3:上記の状態図の中の包晶系状態図について説明せよ。特に、横軸をモル
表示、重量%表示、グラファイト抜き(含セメンタイト)で計算した重量%表示
とモル表示との比較を行え。
●計算熱力学ソフトの使用方法(包晶系状態図の表示方法)
①x を 0 から 0.025 にする。
②Temperature を 1350 から 1550 とする。
③Phase Diagram を選択する。
④Calculate を実行する。
●計算結果の説明(グラファイト&横軸をモル分率表示した包晶系状態図)
・以下の計算結果には、グラファイトが含まれている。
・T1 は 1538℃で、δ 鉄の融解温度である。
・T2 は 1394℃で、γ 鉄から δ 鉄への転移温度である。
・T3 は包晶点温度で、1494℃で、組成は C=0.0079mol である。この組成の温度で液相と
δ 鉄から γ 鉄が析出する。
Fe-xC P=1.01325bar
CaTCalc
Mole fraction C
.025.02.015.01.005
Tem
pera
ture
(C)
1540
1520
1500
1480
1460
1440
1420
1400
1380
1360
γFe(FCC_A1)
LIQUID+γFE(FCC_A1)
LIQUID+δFe (BCC_A2)
LIQUID
δFe(BCC_A2)
δFe (BCC_A2)+γFe(FCC_A1)
0.0043mol
T1
T2
T3
0.0079mol 0.024mol
T5
T6
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・δ 鉄は包晶点温度以上で、C=0.024mol 以上の炭素含有量であれば液相へと変化する。
・これらの変化過程に関しては、これから説明を行う。
●計算結果の説明(グラファイト&横軸を重量%表示した包晶系状態図)
・課題 1 で説明したように、Unit の項のプルダウンメニューで g を選択する。以下のよう
にモル分率の場合と同様の計算結果が得られる。
・以下の計算結果もグラファイトを含んで計算している。
・横軸を重量%に変更しても、δ 鉄の溶解度温度や包晶温度は変化しない。
・重量%表示にすると δ 鉄への炭素の溶解度が 0.09%と表示されるので他の文献値等と比
較する場合に便利である。
Fe-xC P=1.01325bar
CaTCalc
Mass fraction C
.006.004.002
Tem
pera
ture
(C)
1540
1520
1500
1480
1460
1440
1420
1400
1380
1360
FCC_A1
LIQUID+FCC_A1
LIQUID+BCC_A2
LIQUID
BCC_A2
BCC_A2+FCC_A1
C=0.0009(0.09%)
C=0.0017(0.17%)
14
●計算結果の説明(セメンタイト&横軸をモル表示した包晶系状態図)
・課題 1 で説明したように、Unit の項を g からプルダウンメニューで mol に変更する。
・この計算結果は、上記と同様に、グラファイトの代わりにセメンタイトが表示されるが、
この組成範囲では表示されない。
●計算結果の説明(セメンタイト&横軸を重量%表示した包晶系状態図)
・Data 画面を選択して、Phases 項の DIAMOND_A4 と GRAPHITE の+を外す。
Fe-xC P=1.01325bar
CaTCalc
Mole fraction C
.025.02.015.01.005
Tem
pera
ture
(C)
1540
1520
1500
1480
1460
1440
1420
1400
1380
1360
FCC_A1
LIQUID+FCC_A1
LIQUID+BCC_A2
LIQUID
BCC_A2
BCC_A2+
FCC_A1
0.0043mol
T1
T2
T3
0.0079mol 0.024mol
T5
T6
15
・下図の計算結果には、グラファイトの代わりに状態図にセメンタイトが表示されるが、こ
の組成範囲では表示されない。
・包晶系状態図においては、γ 鉄への炭素の固溶量、及び包晶温度に変化はない。
Fe-xC P=1.01325bar
CaTCalc
Mass fraction C
.006.004.002
Tem
pera
ture
(C)
1540
1520
1500
1480
1460
1440
1420
1400
1380
1360
FCC_A1
LIQUID+FCC_A1
LIQUID+BCC_A2
LIQUID
BCC_A2
BCC_A2+FCC_A1
0.0009(0.09%)
0.0017(0.17%)
16
課題 4:上記のモル表示の状態図を用いて、温度を 1520℃、1503℃(包晶点温
度)、1480℃と降温させた時の各降温過程における各相の変化を表示せよ。
●計算結果の説明(1520℃での各相の割合の自動表示)
・Edit をクリックし、Copy to Clipboard を選択し、必要なファイルにコピーする。
・以下の図は、パワーポイントにコピーし、説明用に加工したものである。
・1520℃では、炭素量が 0.0019mol までは δ 鉄が安定であるが、その後、急激に減少し、
C=0.010mol で完全に消滅している。
・液相は C=0.0019mol より生成し、C=0.010mol まで直線的に増加し、その後、安定に存
在している。
Fe-(x )C T=1520C, P=1.01325bar
C (mol)
.025.02.015.01.005
mol (a
tom
)
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
LIQUID
BCC_A2
δ鉄(BCC_A2) 液相
0.010mol
0.0019mol
17
●計算結果の説明(1495℃の包晶点温度近傍の変化)
(1)包晶点温度の直上の組成の変化
(2)包晶点温度の直下の組成の変化
Fe-(x )C T=1520C, P=1.01325bar
C (mol)
.025.02.015.01.005
mol (a
tom
)
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
LIQUID
BCC_A2
δ鉄(BCC_A2) 液相
0.010mol
0.0019mol
Fe-(x )C T=1493.63C, P=1.01325bar
C (mol)
.025.02.015.01.005
mol (a
tom
)
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
LIQUID
BCC_A2
FCC_A1
δ鉄(BCC_A2)
γ鉄(FCC_A1)
液相
0.0042mol0.0078mol 0.025mol
18
(1)包晶点温度直上
・包晶点温度の直上ではδ鉄が C=0.0043mol まで安定であり、C=0.0043mol から
C=0.024mol まで直線的に減少し、その後消滅している。
・液相は、それとは反対に、C=0.0043mol から C=0.024mol まで直線的に増加している。
その後は安定に存在している。
(2)包晶点温度直下
・包晶点直上では δ 鉄が C=0.042mol まで存在したが、C=0.0078mol で消滅している
その代わりに γ 鉄が突如出現している。
・包晶点温度で C=0.0078mol(包晶点濃度)では、δ 鉄と液相が完全に消滅し、γ 鉄のみと
なっている。包晶点では、3 相が同時に存在し、液相+δ 鉄→γ 鉄の反応となる。
●計算結果の説明(1480℃での各相の割合の自動表示)
・δ 鉄は C=0.0034mol まで安定に存在し、C=0.0034mol から C=0.0065mol の間で急激に
減少し、その後、消滅している。
・γ 鉄は C=0.0034mol から析出し、C=0.0034mol と C=0.012mol の間で直線的に増加して
いる。その後、徐々に減少している。
・液相は C=0.012mol か出現し、その後、直線的に増加している。
Fe-(x )C T=1480C, P=1.01325bar
C (mol)
.025.02.015.01.005
mol (a
tom
)
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
LIQUID
BCC_A2
FCC_A1
δ鉄(BCC_A2)
γ鉄(FCC_A1)
液相
0.0034mol
0.0065mol
0.012mol
19
課題 5:上記の状態図の 1520℃及び 1480℃において、δ 鉄、γ 鉄、液相の安定
関係を溶体の自由エネルギーを基に説明せよ。
・1520℃における各相の成分の変化と液相と固相の安定性の議論を溶体の自由エネルギー
を基に説明する。溶体の自由エネルギーに関しては、等晶系固溶体の Si-Ge 等を参照して
下さい。ここでは、溶体の自由エネルギーを自由エネルギーと呼称することとする。
●計算結果の説明(前述の 1520℃と 1480℃(横の赤線)での状態図)
・前述の状態図で、1520℃では、C のモル分率の増加に伴って、「δ 鉄の固相の領域」、「δ 鉄
の固相と Liquid の領域」、「Liquid の領域」となる。
・1520℃では、1520℃の等温線(赤線)と固相線が交差するのは、C=0.0009mol の時であ
る。この間は δ 鉄のみが存在する。
・1520℃の等温線(赤線)と液相線が交差するのは C=0.01mol である。C=0.0009mol から
C=0.01mol までは δ 鉄と液相が共存する。
・液相線より炭素の濃度が高くなると液相に変化する。
・何故、このような領域になるのか溶体の自由エネルギーをベースに説明する。
Fe-xC P=1.01325bar
CaTCalc
Mole fraction C
.025.02.015.01.005
Tem
pera
ture
(C)
1540
1520
1500
1480
1460
1440
1420
1400
1380
1360
γFE(FCC_A1)
LIQUID+γFE(FCC_A1)
LIQUID+δFE(BCC_A2)
LIQUID
δFe(BCC_A2)+γFe(FCC_A1)
δFE
(BCC_A2)
0.0009mol0.0034mol
0.0065mol
0.012mol0.01mol
20
○計算熱力学ソフトの使用方法(個々の自由エネルギー表示のための前操作)
・先ず、最初に Data ボタンをクリックして、Data 画面を表示させる。
・次に”Phases”項横の+記号をクリックして全項目から+記号を消去します。
・消去後、Liquid、BCC_A2、FCC_A1 の横をクリックすることで+にして選択する。
○計算熱力学ソフトの使用方法(1520℃における自由エネルギーの求め方)
①x を 0 から 0.025 にセットして、間隔を 0.001 とする。この間隔を忘れると不正確な図に
なるので要注意。
①
②
③④
21
②Temperature を 1520℃とする。
③Individual Phase Energies 選択する。
④Calculate を実行する。
●計算結果の説明(1520℃で何故、液相線と δ 鉄の固相線の間は δ 鉄と液相が
安定化するのか?)
・δ 鉄の自由エネルギー曲線(赤)と組成線 X の(緑)が交差する点に緑色の接線を引くと
Fe=1mol(C=0mol)の軸と交わる点が固相(δ 鉄)の化学ポテンシャル(μSδFe)である。
・液相の自由エネルギー曲線(青)と組成線 Y(緑)が交差する点に青色の接線を引くと
Fe=1mol(C=0mol)の軸と交わる点が液相の化学ポテンシャルで(μLδFe)ある。
・液相と δ 鉄が平衡の場合は、δ 鉄の自由エネルギー曲線と δ 鉄の自由エネルギー曲線に引
いた接線が同じでなくてはならない。そのため、液相と δ 鉄の化学ポテンシャルは等しくな
くてはならない。
・よって、液相と δ 鉄の自由エネルギー曲線に引いた赤色の接線が、両者が最も安定な領域
であり、C=0.00019mol から C=0.01mol の間は、液相と固相が安定な領域となる。
Fe-(x )C T=1520C, P=1.01325bar
C (mol)
.025.02.015.01.005
Gib
bs E
nergy (
kJ/m
ol_
ato
m)
-106
-106.05
-106.1
-106.15
-106.2
-106.25
-106.3
-106.35
-106.4
-106.45
-106.5
-106.55
-106.6
-106.65
-106.7
-106.75
-106.8
LIQUID
BCC_A2
FCC_A1
液相
δ鉄
γ鉄
μSδFe
μLδFe
XYδFe
μSδFe μL=
C=0.010mol
C=0.00019mol
22
●計算結果の説明(1480℃で何故δ鉄線とγ鉄線の固相線の間はδ鉄とγ鉄が
安定化するのか?)
・γ 鉄の自由エネルギー曲線(黒)と組成線 X(緑)が交差する点に接線を引くと Fe=1mol
(C=0mol)の軸と交わる点が γ 鉄の化学ポテンシャル(μSγFe)である。
・δ 鉄の自由エネルギー曲線(赤)と組成線 Y(緑)が交差する点に接線を引くと Fe=1mol
(C=0mol)の軸と交わる点が δ 鉄の化学ポテンシャルで(μSδFe)ある。
・γ 鉄と δ 鉄が平衡の場合は、両者の固相曲線の接線が同じでなくてはならない。そのため、
γ 鉄と δ 鉄の化学ポテンシャルは等しくなくてはならない。
・よって、赤色の γ 鉄と δ 鉄の自由エネルギー曲線に引いた赤色の接線が、両者が最も安
定な領域であり、C=0.0034mol から C=0.0065mol の間は、γ 鉄と δ 鉄が安定な領域とな
る。
Fe-xC T=1480C, P=1.01325bar
CaTCalc
C (mol)
.025.02.015.01.005
Gib
bs E
nerg
y (
kJ/
mol_
ato
m)
-102.3
-102.35
-102.4
-102.45
-102.5
-102.55
-102.6
-102.65
-102.7
-102.75
-102.8
-102.85
-102.9
-102.95
-103
-103.05
-103.1
LIQUID
BCC_A2
FCC_A1液相 δ鉄
γ鉄
μSδFe
μSγFe
XY
γFeμS
δFe μS=
0.0034mol
0.0065mol
23
課題 6:上記の状態図の説明を基に、溶体の自由エネルギーを用いて、1537℃、
1520℃、1494℃(包晶温度)、1480℃、1394℃の各降温温度おける各相の安定
関係を説明せよ。
●計算結果の説明(1537℃での各相の組成変化による自由エネルギー変化)
・1500℃のような高温においては、C=0.0mol から C=1.0mol まで、全領域において、液相
の自由エネルギー曲線が固相の自由エネルギー曲線よりも下側にある。この温度では、全て
の組成範囲の合金は単一の溶融体として安定である。
Fe-xC T=1537C, P=1.01325bar
CaTCalc
C (mol)
.025.02.015.01.005
Gib
bs E
nerg
y (
kJ/
mol_
ato
m)
-107.6
-107.65
-107.7
-107.75
-107.8
-107.85
-107.9
-107.95
-108
-108.05
-108.1
-108.15
-108.2
-108.25
-108.3
LIQUID
BCC_A2
FCC_A1
液相
δ鉄
γ鉄
24
●計算結果の説明(1520℃での各相の組成変化による自由エネルギー変化)
・各相の安定性を議論するには、前述のように固相の自由エネルギー曲線と液相の自由エネ
ルギー曲線に接線を引く必要がある。
・液相の自由エネルギー曲線と δ 鉄の自由エネルギー曲線の間に赤線で示すように接線を
引く。
・C=0.00019mol から C=0.010 mol までは、液相と固相の自由エネルギー曲線の接線の範
囲内にあり、液相と δ 鉄の固相の両相が最も安定に存在する。
・C=0.010mol 以上では、液相の自由エネルギー曲線が最も小さく、液相のみが安定である。
・C=0.0mol から C=0.00019mol までは、δ 鉄の固相の自由エネルギー曲線が最も小さく、
δ 鉄が安定である。
Fe-xC T=1520C, P=1.01325bar
CaTCalc
C (mol)
.025.02.015.01.005
Gib
bs E
nerg
y (
kJ/
mol_
ato
m)
-106
-106.05
-106.1
-106.15
-106.2
-106.25
-106.3
-106.35
-106.4
-106.45
-106.5
-106.55
-106.6
-106.65
-106.7
LIQUID
BCC_A2
FCC_A1
δ鉄
液相
γ鉄
C=0.00019mol
C=0.010mol
25
●計算結果の説明(包晶点温度(1494.63℃)での各相の組成変化による自由エ
ネルギー変化)
・包晶点温度では、δ 鉄、γ 鉄、液相の 3 種の自由エネルギー曲線が同じ赤線の接線上に乗
る。これは不変反応の特徴である。
・不変反応の接線上では、C=0.0042mol から 0.025mol まで、液相、γ 鉄、δ 鉄が同時に存
在している。
・C=0.00mol から C=0.0042mol までは、δ 鉄の自由エネルギー曲線が最も小さいので、δ
鉄のみが安定である。
Fe-xC T=1494.63C, P=1.01325bar
CaTCalc
C (mol)
.025.02.015.01.005
Gib
bs E
nerg
y (
kJ/
mol_
ato
m)
-103.7
-103.75
-103.8
-103.85
-103.9
-103.95
-104
-104.05
-104.1
-104.15
-104.2
-104.25
-104.3
-104.35
-104.4
LIQUID
BCC_A2
FCC_A1
δ鉄
γ鉄液相
0.0042mol
0.0078mol 0.025mol
26
●計算結果の説明(包晶点温度(1494.63℃)での各相の組成変化による自由エ
ネルギー変化)
・この温度は、γ 鉄が δ 鉄に転移する温度である。
・液相及び δ 鉄の自由エネルギー曲線は γ 鉄より大きい値なので、γ 鉄が最も安定となる。
Fe-xC T=1394C, P=1.01325bar
CaTCalc
C (mol)
.025.02.015.01.005
Gib
bs E
nerg
y (
kJ/
mol_
ato
m)
-94.1
-94.2
-94.3
-94.4
-94.5
-94.6
-94.7
-94.8
-94.9
-95
-95.1
-95.2
-95.3
-95.4
LIQUID
BCC_A2
FCC_A1 δ鉄
液相
γ鉄
27
課題 7:包晶系状態図において、1520℃、包晶温度、1480℃での活動度を求め、
各相の安定関係を説明せよ。
●計算熱力学ソフトの使用方法(液相と固相の活動度の求め方)
【設定条件】
・「計算熱力学ソフトの使用方法(1520℃における自由エネルギーの求め方)」(P20 参照)
と同じ設定条件を入力し、「Equilibrium Calc」にて計算する。
・Plot 画面左の[Axis]タブ- “Y-Axis” - “Variable” にある Phase Activites を選択して、
Apply ボタンをクリックすると、活動度が出力される。
28
●計算結果の説明(1520℃での活動度)
・δ 鉄の活動度は C=0.010mol まで 1.0 であるが、それ以降は 1.0 より小さくなっている。
δ 鉄が安定に存在するためには活動度が 1.0 であることが必要であるので、この温度では δ
鉄は 0.010mol まで安定である。このように活動度をもとめることより δ 鉄の安定な範囲を
知ることができる。しかし、C=0.010mol 以上の濃度では急激に活動度は減少している。
・γ 鉄の活動度は、この温度では 1.0 になることはない。しかし、δ 鉄の挙動と類似してお
り、C=0.010mol 以上の濃度では急激に減少している。
・液相の活動度は C=0.0019mol まで 1.0 より小さいが、それ以上の濃度では、1.0 であり
液相が安定である。
・前述の状態図と比較すると、δ 鉄、γ 鉄、液相の安定性が活動度の観点から理解できる。
Fe-(x )C T=1520C, P=1.01325bar
CaTCalc
C (mol)
.025.02.015.01.005
Phase A
ctivity
1
.998
.996
.994
.992
.99
.988
.986
LIQUID
BCC_A2
FCC_A1
0.010mol0.0019mol
δ鉄
γ鉄
液相
29
●計算結果の説明(包晶温度での活動度)
【設定条件】
・温度を 1494.63℃に変更し、「Equilibrium Calc」にて計算する。
・Plot 画面左の[Axis]タブ- “Y-Axis” - “Variable” にある Phase Activites を選択して、
Apply ボタンをクリックすると、活動度が出力される。
・包晶温度における活動度を示しているが、以下に述べるように特徴的なパターンを示す。
・δ 鉄は、約 C=0.024ml まで活動度は 1.0 であり、包晶温度では、このモル範囲ではほぼ
安定に存在している。
・γ 鉄は C=0.0042mol までは活動度は 1.0 より小さく、不安定であるが、C=0.0042mol か
ら C=0.024mol までは活動度は 1.0 であり安定である。
・液相は、C=0.0042mol までは、活動度は 1.0 以下であり存在しないが、それ以上の濃度
の活動度は 1.0 であり安定に存在する。
・δ 鉄、γ 鉄、液相の活動度から、C=0.0042mol から C=0.024mol までは、三相が安定に
存在しており、包晶温度における、δ 鉄+液相→γ 鉄の各相の安定関係が明確に理解できる。
Fe-(x )C T=1494.63C, P=1.01325bar
CaTCalc
C (mol)
.025.02.015.01.005
Phase A
ctivity
1
.998
.996
.994
.992
.99
.988
.986
.984
.982
.98
.978
LIQUID
BCC_A2
FCC_A1
δ鉄 液相γ鉄
液相
0.0042mol 0.024mol
30
●計算結果の説明(包晶温度での活動度)
【設定条件】
・温度を 1480℃に変更し、「Equilibrium Calc」にて計算する。
・Plot 画面左の[Axis]タブ- “Y-Axis” - “Variable” にある Phase Activites を選択し、
Apply ボタンをクリックすると、活動度が出力される。
・δ 鉄は C=0.0065mol まで活動度は 1.0 であり、安定に存在している。それ以上の濃度で
は 1.0 より以下の値となるが、1520℃の場合と異なり、直線的に減少することはなく、ほ
ぼ、一定の値を保つっている。
・γ 鉄は C=0.0034mol まで、活動度は 1.0 以下であるが、それ以上の濃度では C=0.025mol
まで活動度は 1.0 であり、安定に存在している。
・液相は C=0.012mol までは活動度は 1.0 以下であるので存在せず、それ以上の濃度では安
定に存在している。
Fe-(x )C T=1480C, P=1.01325bar
CaTCalc
C (mol)
.025.02.015.01.005
Phase A
ctivity
1
.995
.99
.985
.98
.975
LIQUID
BCC_A2
FCC_A1
δ鉄γ鉄
液相
0.0034mol0.0065mol
0.012mol
31
課題 8:上記の状態図において C=0.005mol における 1520℃と 1480 における
各相の変化を定量的に説明せよ。
●計算結果の説明(C=0.005mol で 1580℃における固相と液相の割合の求め
方)
【設定条件】
・Calculate 画面にて x を「0 0.025 0.005」と入力、温度を「1340 1540」℃に設定
し、Phase Diagram を選択。その後、Calculate を実行する。
・包晶系合金において、液相から固相への降温過程における、各相の変化並びに組織変化に
ついて、上図に示す前述の状態図をベースに説明する。
・包晶系合金の状態図において、C=0.005mol と Fe=0.995mol である x=0.005mol の組成
の合金を 1550℃から降温させた時、1520℃における固相と液相の割合を求める。
・固溶体の場合と同様に、「テコの原理」で固相と液相の割合が求められる。1520℃の等温
線と x=0.005 の組成線が交差する点を N とする。また、1520℃の等温線と液相線が交差す
る点を b とする。この点は、C=0.01mol に相当し、液相の組成を表す。同様に 1520℃の等
温線と固相線が交差する点を a とする。この点は、C=0.0009mol に相当し、固相の組成を
表す。
・1520℃における固相の割合(WS)は、WS=直線(N-b)/ 直線(a-b)で求められる。
直線 ab 上の S と記述される範囲である。
Fe-xC P=1.01325bar
CaTCalc
Mole fraction C
.025.02.015.01.005
Tem
pera
ture
(C)
1540
1520
1500
1480
1460
1440
1420
1400
1380
1360
γFE(FCC_A1)
LIQUID+γFE(FCC_A1)
LIQUID+δFE(BCC_A2)
LIQUID
δFe(BCC_A2)+γFe(FCC_A1)
δFE
(BCC_A2)
0.0009mol0.0034mol
0.0065mol
0.01mol
SL
cd
N a b
N
δγ
32
・同温度における液相の割合(WL)は、WL=直線(a-N)/ 直線(a-b)で求められる。
直線 ab 上の L と記述される範囲である。
●計算結果の説明(固相と液相の割合を正確に求める方法)
①x の項は 0.005 を入力。
②Temperature の項は 1520℃に固定。
③Equlibrium Calc を選択する。
④Calculate を実行する。
●計算結果の説明(Liquid と FCC_A1 の液相と固相の正確な値の求め方)
・上記の計算を行うと、以下の表が得られるので、液相と固相の正確な割合を求めることが
できる。
・上記の表を基に概略を求めると WS(δ 鉄)=0.64、WL=0.36 となる。
①
②③
④
33
●計算結果の説明(C=0.005mol で 1480℃における固相と液相の割合の求め
方)
・1520℃の場合と同様に、1480℃の等温線とx=0.005molの組成線が交差する点Nとする。
1480℃の等温線と δ 鉄の固相線が交差する点を c とする。この点は、C=0.0034mol に相当
し、固相(δ 鉄)の組成を表す。同様に 1480℃の等温線と γ 鉄の固相線が交差する点を d
とする。この点は、C=0.0065mol に相当し、γ 鉄の組成を表す。
・1480℃におけ δ 鉄の割合(WδFe)は、WδFe=直線(N-d)/ 直線(c-d)で求められる。
直線 cd 上の δ と記述される範囲である。
・同温度における γ 鉄の割合(WγFe)は、WγFe=直線(c-N)/ 直線(c-d)で求められ
る。直線 cd 上の L と記述される範囲である。
・上記と同様の方法を用いて、固相と液相の割合を求めると、 WδFe=0.48、WγFe=0.52 と
なる。
Fe-xC P=1.01325bar
CaTCalc
Mole fraction C
.025.02.015.01.005
Tem
pera
ture
(C)
1540
1520
1500
1480
1460
1440
1420
1400
1380
1360
γFE(FCC_A1)
LIQUID+γFE(FCC_A1)
LIQUID+δFE(BCC_A2)
LIQUID
δFe(BCC_A2)+γFe(FCC_A1)
δFE
(BCC_A2)
0.0009mol0.0034mol
0.0065mol
0.01mol
SL
cd
N a b
N
δγ
34
課題 9:包晶系状態図において、1520℃、包晶温度、1480 における δ 鉄、γ 鉄、
液相に含まれる極微量の炭素の変化を定量的に説明せよ。
●計算熱力学ソフトの使用方法(炭素量の表示のための事前入力法 1)
計算結果出力方法:Plot 画面左の[Axis]タブ- “Y-Axis” - “Variable” にある Elements
Distribution を選択し、Apply ボタンをクリックすると組成(mol)が出力される。
●計算熱力学ソフトの使用方法(炭素量の表示のための事前入力法 2)
①Fe のチェックを外す。
②Scale タブをクリックして縦軸の値の最大値を 0.03 にする。
35
●計算結果の説明(1520℃での炭素量の変化)
・δ 鉄の固相線と 1520℃の温度が交差する炭素濃度は C=0.0019mol である。この範囲には
δ 鉄が存在するが、C=0.0mol から C=0.0019mol までは、固相線と交差するまでは、炭素
濃度が増加する。この増加は δ 鉄中に固溶する炭素量を表している。
・δ 鉄と関連する炭素量は C=0.0019mol をピークに、C=0.010mol まで直線的に減少して
いる。これは δ 鉄中の炭素量が減少しているのではなくて、結晶化した δ 鉄の量が減少し
ているためである。この間は、δ 鉄の炭素量は、C=0.0019mol と一定である。
・液相は、1520℃の等温線と固相線が交差してから生成する。液相と δ 鉄が混在している
間は、液相中の炭素量は、δ 鉄中に含まれる炭素量を除去しなくてはならない。C=0.010mol
以上の液相の炭素量は、純粋な液相の炭素量となる。
Fe-xC T=1520C, P=1.01325bar
CaTCalc
C (mol)
.02.015.01.005
mol (a
tom
)
.03
.025
.02
.015
.01
.005
C_LIQUID
C_BCC_A2
0.010mol
0.0019mol
δ鉄(Fe=0.998mol、C=0.002mol)
C=0.0019molδ鉄
液相
36
●計算結果の説明(包晶温度での炭素量の変化)
・δ 鉄は、C=0.0043mol までは、δ 鉄中の炭素量は徐々に増加し、C=0.0043mol で固溶限
界に達する。それ以上の濃度で炭素濃度が減少しているが、この理由は、C=0.0043mol か
ら C=0.0079mol までは γ 鉄量が増加するため、δ 鉄中の炭素量は減少する。
・γ 鉄は C=0.0043mol から包晶濃度である C=0.0079mol までは、γ 鉄の構造中への炭素の
固溶が進む。
・包晶点濃度を過ぎると γ 鉄の炭素量が減少するが、これは液相が増加するためである。
・液相の組成は、Fe=0.9759mol、C=0.0241mol と一定で、C=0.0079mol から C=0.025mol
までは、この値は変化することはない。よって液相の炭素量の増加は、単純に液相の量が増
加するためである。
Fe-xC T=1494.63C, P=1.01325bar
CaTCalc
C (mol)
.02.015.01.005
mol (a
tom
)
.03
.025
.02
.015
.01
.005
C_LIQUID
C_BCC_A2
C_FCC_A1
δ鉄(Fe=0.9957mol、C=0.0043mol)
γ鉄(Fe=0.9921molC=0.0079mol)
C=0.0043mol
0.0079mol
C=0.0079mol
γ鉄
0.0043mol
δ鉄
液相
液相(Fe=0.9759molC=0.0241mol)
37
●計算結果の説明(1480℃での炭素量の変化)
・δ 鉄は、δ 鉄の固相線と 1480℃の等温線とが交差する C=0.0033mol まで δ 鉄中に炭素が
固溶され、δ 鉄中の炭素濃度が増加している。その後、γ 鉄の固相線と 1480℃の等温線が交
差する C=0.0065mol まで炭素濃度が減少している。これは、γ 鉄の増加により δ 鉄の量が
減少したことによるもので、δ 鉄中の炭素濃度が減少したのではない。
・γ 鉄は 1480℃の等温線と δ 鉄の固相線と交差する C=0.0033mol から、γ 鉄中の炭素量は
増加し、γ 鉄の固相線と交差する C=0.0065mol まで増加する。この時の γ 鉄の組成は、
Fe=0.9936mol、C=0.0065mol である。
・1480℃において、1480℃の等温線と、γ 鉄の固相線が交差する C=0.0065mol から、γ 鉄
と液相が固溶体を形成する γ 鉄の固相線と等温線の交差する C=0.0116mol までは、γ 鉄中
の炭素濃度は、C=0.0065mol から C=0.0116mol まで直線的に増加する。このように、γ 鉄
しか存在しない領域では、両サイドにある固相線の濃度の影響を受ける。
・γ 鉄と液相が共存する領域では、γ 鉄の炭素濃度が減少しているが、これは、液相の増加
にともない γ 鉄の量が減少するためで、γ 鉄中に含まれる炭素濃度が減少するものではな
い。
・液相は γ 鉄の固相線と 1480℃の等温線が交差する C=0.0116mol から直線的に増加して
いるが、液相の組成は、Fe=0.9963mol、C=0.0337mol と一定であるので、単に液相の量が
増えたことを意味している。
Fe-xC T=1480C, P=1.01325bar
CaTCalc
C (mol)
.02.015.01.005
mol (a
tom
)
.03
.025
.02
.015
.01
.005
C_LIQUID
C_BCC_A2
C_FCC_A1
C=0.0033mol
C=0.0065mol
C=0.0116mol
0.0033mol 0.0065mol 0.0116mol
δ鉄(Fe=0.997mol、C=0.003mol)
γ鉄(Fe=0.9936mol、C=0.0065mol)
γ鉄(Fe=0.9884mol、C=0.0116mol)
γ鉄
δ鉄
液相
液相(Fe=0.9963molC=0.0337mol)
38
課題 10:上記の状態図において、C=0.002mol、0.0079mol、0.02mol における
1550℃から 1350℃まで降温した時の相変化を定量的に説明せよ。
●計算結果の説明(C=0.002mol で各温度における固相と液相の割合の求め方)
○計算熱力学ソフトの使用方法(C=0.002mol における 1550℃から 1350℃まで
降温した時の組成変化の求め方)
①x を 0.002 する。
②Temperature を 1350℃から 1550℃とし、温度間隔を 10℃とする。この時、温度間隔を
入力しないと、結果が直線となり不正確になるので、要注意。
③Equilibrium Calc を選択する。
④Calculate を実行する。
①
②③
④
39
●計算結果の説明(C=0.002mol で 1550℃から 1350℃まで降温した時の固相
と液相の割合の直接表示)
・液相は 1550℃から 1534℃までは液相の状態であるが、1534℃から 1518℃の間で δ 鉄に
変化し、その後消滅する
・δ 鉄は 1534℃から結晶化が始まり、1453℃までは安定に存在するが、温度がさらに下降
すると 1425℃で消滅する。
・1534℃から 1518℃までの δ 鉄と液相の割合は、先述の「テコの原理」から求められるが、
本ソフトを用いると、目的の温度のみを入力して計算すると、簡単に δ 鉄と液相の割合を求
めることができる。
・γ 鉄は 1453℃から 1425℃にかけて固相である δ 鉄から析出する。1425℃から 1350℃の
間は γ 鉄のみが安定である。δ 鉄と γ 鉄の割合は、「テコの原理」で求めることができるが、
上記と同様に本ソフトを用いると簡単にもとめることができる。
Fe-(x )C P=1.01325bar, X=0.002
CaTCalc
Temperature (C)
15501500145014001350
mol (a
tom
)
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
LIQUID
BCC_A2
FCC_A1
γ鉄 δ鉄 液相
1425℃1453℃
1518℃
1534℃
40
●計算結果の説明(C=0.0079mol の包晶濃度で 1550℃から 1350℃まで降温し
た時の固相と液相の割合の直接表示)
・液相は 1550℃から 1494.6℃までは液相の状態であるが、包晶反応温度の 1494.6℃で γ
鉄に変化している。
・δ 鉄は 1525℃から結晶化が始まり、1494.6℃までは安定に存在するが、包晶温度の
1494.6℃で γ 鉄に変化している。
Fe-(x )C P=1.01325bar, X=0.0079
CaTCalc
Temperature (C)
15501500145014001350
mol (a
tom
)
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
LIQUID
BCC_A2
FCC_A1
1494.6℃
0.18mol
0.82mol
1525℃
γ鉄
δ鉄
液相
41
課題 11:上記の状態図の C=0.003mol において、1550℃から 1350℃まで降温
した時の各相の変化を金属組織の変化として、その概念図を図示せよ。
●C=0.003mol で 1550℃から 1350℃まで降温した時の金属組織変化の概念図
・C=0.003mol における金属の組織変化の概念図を以下に示す。あくまでも理解を助けるた
めの概念図であることに留意して欲しい。それぞれの合金により組織が異なるので、このよ
うに単純組織とはならない。
●計算結果の説明(C=0.003mol で t1、t2、t3、t4、t5 の各温度における各相
の定量的変化)
・各温度における各相の割合は、List タブをクリックすると以下の表が得られる。
1.上段は液相の各温度における Fe と C のモル数を示す。また、液相の欄の上段は液相の
合金中におけるモル数、その下の段は液相の活動を示している。
2.中段は δ 鉄の各温度における Fe と C のモル数を示している。δ 鉄の欄の上段と下段は、
液相と同様に、δ 鉄のモル数と活動を示している。
3.下段は γ 鉄の各温度における Fe と C のモル数を示している。γ 鉄の欄の上段と下段は、
δ 鉄と同様に、γ 鉄のモル数と活動を示している。
C mol fraction 0.003 0.003 0.003 0.003 0.003 0.003 0.003 0.003P (bar) 1.01325 1.01325 1.01325 1.01325 1.01325 1.01325 1.01325 1.01325
Phase DataBase T (C) 1370 1450 1473.418 1490 1508.468 1530 1532.861 1550LIQUID RICT-Free mol (atom) 0 0 0 0 0 0.560218 1 1
Activity 0.92022 0.966662 0.984081 0.991603 1 1 1 1Element C 0.011731 0.01332 0.018909 0.017887 0.016827 0.004703 0.003 0.003Element Fe 0.988269 0.98668 0.981091 0.982113 0.983174 0.995297 0.997 0.997
BCC_A2 RICT-Free mol (atom) 0 0.429771 1 1 1 0.439782 0 0Activity 0.997271 1 1 1 1 1 1 0.991413
Element C 0.001151 0.00185 0.003 0.003 0.003 0.000831 0.000529 0.000558Element Fe 0.998849 0.99815 0.997 0.997 0.997 0.999169 0.999471 0.999442
FCC_A1 RICT-Free mol (atom) 1 0.570229 0 0 0 0 0 0Activity 1 1 1 0.999105 0.998115 0.995387 0.995044 0.985786
Element C 0.003 0.003867 0.005868 0.005638 0.005396 0.001435 0.000909 0.00092Element Fe 0.997 0.996133 0.994132 0.994362 0.994604 0.998565 0.999091 0.99908
T1T5 T4 T3 T2
液相
δ鉄
γ鉄
42
●上記の計算結果の概念図(1550℃から 1490℃までの金属組織の説明)
・t1:1550℃:この温度では液相線と交差していないので液相のみの存在となる。この時の、
液相の組成は(Fe=0.997mol、C=0.003mol)である。
・t2:1530℃:温度が 1530℃に達すると、1530℃の等温線と液相線が交差する。この温度
で、液相中に δ 鉄の結晶核から結晶成長した δ 鉄結晶や、これから結晶成長を始める結晶
核が混在している。この時の結晶は、固相線に沿って温度が下降するため、わずかではある
が、δ 鉄中に含まれる炭素量が増加し、δ 鉄の組成は、Fe=0.9992mol、C=0.0008mol とな
る。この温度での液相の組成は、1550℃の液相よりも炭素量が増加している。
・t3:1490℃:温度が 1490℃まで下降してくると、液相は完全に消費されて δ 鉄のみとな
る。この時の δ 鉄の組成は、最初の組成と同じ、Fe=0.997mol、C=0.003mol である。
liquid/Solid=0.0/1.0
Liquid(Fe=0.997molC=0.003mol)
Liquid
T2:1530℃ T3:1490℃
liquid/Solid=1.0/0.0
Liquid/δFe=0.56/0.44
δFe(Fe=0.992molC=0.008mol)
Liquid(Fe=0.995molC=0.005mol)
Liquid/δFe=0.00/1.00
δFe(Fe=0.997molC=0.003mol)
δFe 結晶
δFe 結晶
T1:1550℃
43
●上記の計算結果の概念図(1450℃から 1370℃までの金属組織の説明)
・t4:1450℃:この温度では δ 鉄の中に γ 鉄が析出してくる。この時の δ 鉄の組成は、
Fe=0.998mol、C=0.002mol となる。この温度で析出する γ 鉄の組成は、Fe=0.996mol、
C=0.004mol となっている。
・t5:1370℃:1370℃まで降温されると、δ 鉄も γ 鉄に変化して、全てが γ 鉄となる。γ 鉄
の組成は、Fe=0.997mol、C=0.003mol と、最初の液相の組成と同じである。
Liguid/Solid=0.0/1.0
γFe(Fe=0.996molC=0.004mol)
γFe(Fe=0.997molC=0.003mol)
γFe結晶
δFe/γFe=0.43/0.57
t4:1450℃
Liguid/Solid=0.0/1.0
t5:1370℃
δFe(Fe=0.998molC=0.002mol)
δFe/γFe=0.00/1.00
44
課題 12:包晶鋼(C=0.079mol)(包晶組成)において、1550℃から 1350℃ま
で降温した時の各相の変化を金属組織の変化として、その概念図を図示せよ。
●C=0.079mol で 1550℃から 1350℃まで降温した時の金属組織変化の概念図
・包晶点の組成である C=0.079mol における金属の組織変化の概念図を以下に示す。前述
のように、あくまでも理解を助けるための概念図であることに留意して欲しい。それぞれの
合金により組織が異なるので、このように単純組織とはならない。
・この包晶系組成の合金の特徴は、高温から降温されると液相中に一次凝固相である δ 鉄
が現れ、さらに温度が下がり、包晶温度に達すると第 2 の固相である γ 鉄も現れ、液相、δ
鉄、γ 鉄の 3 相が現れるので、この反応は不変反応となる。
●計算結果の説明(C=0.079mol で t1、t2、t3、t4、t5 の各温度における各相
の定量的変化)
・各温度における各相の割合は、List タブをクリックすると以下の表が得られる。
1.上段は液相の各温度における Fe と C のモル数を示す。また、液相の欄の上段は液相の
合金中におけるモル数、その下の段は液相の活動を示している。
2.中段は δ 鉄の各温度における Fe と C のモル数を示している。δ 鉄の欄の上段と下段は、
液相と同様に、δ 鉄のモル数と活動を示している。
3.下段は γ 鉄の各温度における Fe と C のモル数を示している。γ 鉄の欄の上段と下段は、
δ 鉄と同様に、γ 鉄のモル数と活動を示している。
X 0.0079 0.0079 0.0079 0.0079 0.0079P (bar) 1.01325 1.01325 1.01325 1.01325 1.01325
Phase DataBase T (C) 1400 1494.349 1494.632 1500 1550LIQUID RICT-Free mol (atom) 0 0 0.182393 0.234223 1
Activity 0.949342 0.999787 1 1 1Element C 0.026923 0.023982 0.024051 0.021295 0.0079Element Fe 0.973077 0.976018 0.975949 0.978705 0.9921
BCC_A2 RICT-Free mol (atom) 0 0 0.817607 0.765777 0Activity 0.995471 1 1 1 0.987289
Element C 0.003365 0.004278 0.004297 0.003803 0.001515Element Fe 0.996635 0.995722 0.995703 0.996197 0.998485
FCC_A1 RICT-Free mol (atom) 1 1 0 0 0Activity 1 1 1 0.999257 0.982299
Element C 0.0079 0.0079 0.007929 0.006948 0.00249Element Fe 0.9921 0.9921 0.992071 0.993052 0.99751
T1T5 T4 T3 T2
液相
δ鉄
γ鉄
45
●上記の計算結果の概念図(1100℃から 900℃までの金属組織の補足説明)
・T1:1550℃:温度が 1550℃では、前図と同様に、液相線と交差しないので液相のみであ
る。この時、液相の組成は(C=0.008mol、Fe=0.92mol)である。
・T2:1500℃:1500℃まで降温されると、1500℃の等温線が、液相線と δ 鉄の固相線に交
差する。この時、液相と δ 鉄の割合は、0.23 / 0.77 と δ 鉄の割合が増加している。この時の
δ 鉄の組成は、Fe=0.9962mol、C=0.0038mol で、炭素の最大固溶量に近い値を示す。液相
の組成は、Fe=0.979mol、C=0.021mol である。
・T3:1494.6℃:さらに、温度が降温し包晶温度に達すると、その直前の温度と直後の温度
では組織が大きく異なる。これは、あくまでも理論計算による結果であり、現実の組織とは
必ずしも一致しない。包晶温度直前になると液相+δ 鉄→γ 鉄の反応が起こり、3 相が共存
するが、理論計算上は、この温度では、液相と δ 鉄しか存在しない。しかし、現実には、後
述するように δ 鉄の周囲には、新しく生成する γ 鉄の組成に近い液相が生成していると思
われる。この時の δ 鉄の組成は、Fe=0.9957mol、C=0.0043mol で、この δ 鉄には、炭素が
最大量固溶している。この時の、液相の組成は、Fe=0.976mol、C=0.024mol と初期濃度の
液相の炭素濃度よりも多くなっている。
δ鉄(Fe=0.9962molC=0.0038mol)
δ鉄(Fe=0.9957molC=0.0043mol)
Liquid(Fe=0.992molC=0.008mol)
T1:1550℃
T3:1494.6℃
liquid/Solid=1.0/0.0
Liquid(Fe=0.979molC=0.021mol)
Liquid/δ鉄=0.18/0.82
Liquid(Fe=0.976molC=0.024mol)
Liquid
T2:1500℃
Liquid/δ鉄=0.23/0.77
δ鉄結晶
δ鉄結晶
γ鉄組成の液相
液相(liquid)
46
●上記の計算結果の概念図(包晶温度から 1400℃までの金属組織の説明)
・T4:1494.3℃:この温度は包晶点の温度より僅かに温度低い状態である。理論計算上は、
瞬間的に γ 鉄に変化している。しかし、現実の降温時間を考慮すると、前図の包晶点温度の
直後から、δ 鉄から排出された炭素原子とマトリックスの液相との間に γ 鉄に近い液相が生
成し、徐々に γ 鉄の結晶化に伴い、液相の組成と δ 鉄の組成が γ 鉄の組成に近くなり、さ
らに、γ 鉄の結晶化が進み最終的には γ 鉄のみになったと類推できる。
・T5:1400℃:包晶温度より低くなると、完全に γ 鉄のみの合金となる。この時の γ 鉄の組
成は、包晶温度の組成と同じ、Fe=0.9921、C=0.0079mol である。
Solid・αのみLiguid/Solid=0.0/1.0Liguid/Solid=0.0/1.0 Liguid/Solid=0.0/1.0
γ鉄結晶
T5:1400℃T4:1494.3℃
γ鉄(Fe=0.9921mol
C=0.0079mol)
δ鉄/γ鉄=0.00/1.00 δ鉄/γ鉄=0.00/1.00
γ鉄(Fe=0.9921mol
C=0.0079mol)
47
課題 13:上記の状態図の包晶点(Cu=0.4149mol)における包晶組織に関して
状態図を用いて説明せよ。
●包晶温度における液相+δ 鉄→γ 鉄の反応に関する考察
これより説明する考察の項は「平衡状態図の基礎」の包晶状態図の説明の一般論を、Fe-
C 系状態図の内容に合致するように書き直したものであるが、本状態図と異なる箇所があ
るため、完全に合致する内容とはなっていない。下図は先述の包晶状態図の包晶点の組成近
傍を拡大したものであるが、以下の説明は、モデルとして説明しているので縦軸の温度は省
略してある。
・包晶温度以下まで微過冷:下図の赤線で示す包晶濃度の組成の合金を、高温から包晶温度
まで降温した仮定とする。ここで、さらにこの δ 鉄と積層の融液が包晶点温度(Tp)の温
度より低い c’の温度(Tp-dT)までほんのわずか過冷されたと仮定する。この時、液相線(ec)
の延長線と c’の等温線との交点を f ’とする。c’は液相線 ecf ’及び液相線 ch の両方の内側にあ
るので、この液相は、δ 鉄及び γ 鉄の両方に関して過飽和となっている。
・δ 鉄の成長阻止:一次凝固の δ 鉄の粒子が液相を消費して成長し続けると仮定する。その
場合には、δ 鉄はその周辺の液相に炭素原子を排出し、液相の組成を c’から f ’へ向かって移
動させ、δ 鉄の組成は r’から n に向かって変化する。このようなことが起こると δ 鉄に関す
る液相の過飽和度はゼロに達し、同時に、δ 鉄の炭素の限界固溶量を越してしまうので、こ
の反応を阻止するように働く。このため δ 鉄はこれ以上、結晶成長できなくなる。
Fe-( x)C P=1.01325bar
CaTCalc
Mole fraction C
.03.025.02.015.01.005
Tem
pera
ture
(C)
1510
1508
1506
1504
1502
1500
1498
1496
1494
1492
1490
1488
1486
1484
1482
1480
液相+γ鉄
液相+δ鉄 液相
δ鉄
δ鉄+γ鉄
γ鉄
e
c
hc’
Tp
f’r’km
n
r b
p
48
・γ 鉄の層の生成:同時に、δ 鉄の γ 鉄に関する過飽和度も増加する。この δ 鉄の成長阻止
と γ 鉄の過飽和度により、δ 鉄と液相の間で下図に示すモデル図のように γ 鉄の層の形成が
促進される。なぜならば、第一の理由として、液相は依然として γ 鉄に関して過飽和である
こと、また、第二の理由として、γ 鉄が形成されることは、δ 鉄中の炭素の含有量を p まで
減少させることになるため、結果的に、δ 鉄から炭素原子を排出させるための手段を与える
ことになる。
・δ 鉄+液相→γ 鉄:γ 鉄が形成されると、それは、δ 鉄との界面において m の組成を、ま
た、液相との界面においては、k の組成となる。これは、液相から δ 鉄に向かって、γ 鉄を
通過して炭素原子を運ぶ拡散流を発生させる。これは γ 鉄中の δ 鉄近傍の炭素濃度を m 以
上にし、液相側での炭素原子濃度を k 以下にしようとする。このため γ 鉄が δ 鉄と液相を
消費して成長することによって、これらの濃度分布が再調整される。このように、δ 鉄の外
側に、δ 鉄と液相を消費した γ 鉄が、δ 鉄を包むように γ 鉄が成長することになる。このよ
うに、降温の過程で、一つの固相と一つの液相が反応して、第一の固相を包み込むように第
二の固相が形成される反応を包晶系反応と呼称している。
・包晶濃度での特徴:包晶濃度を持つ合金では、包晶濃度がちょうど、液相と δ 鉄の和の組
成が γ 鉄の組成と一致している。このため、上記で説明した反応が金属組織内のあらゆる
箇所で発生するため、前述の金属組織図のモデル図に示したように、包晶温度に達すると、
一気に、γ 鉄のみになってしまう。ただし、現実的には、理想的な平衡を維持する冷却速度
よりも速い冷却が起こるために、δ 鉄が、完全に消費されることなく、僅かに残存すること
もある。
δ鉄
γ鉄組成の液相
δ鉄
液相へ炭素原子の排出
δ鉄
液相 液相
49
課題 14:亜包晶鋼(C=0.005mol)において、1550℃から 1350℃まで降温した
時の各相の変化を金属組織の変化として、その概念図を図示せよ。
●C=0.005mol で 1550℃から 1350℃まで降温した時の金属組織変化の概念図
・C=0.005mol における金属の組織変化の概念図を以下に示す。前述と同様に、あくまでも
理解を助けるための概念図であることに留意して欲しい。それぞれの合金により組織が異
なるので、このように単純組織とはならない。
●計算結果の説明(C=0.005mol で t1、t2、t3、t4、t5 の各温度における各相
の定量的変化)
・各温度における各相の割合は、List タブをクリックすると以下の表が得られる。
1.上段は液相の各温度における Fe と C のモル数を示す。また、液相の欄の上段は液相の
合金中におけるモル数、その下の段は液相の活動を示している。
2.中段は δ 鉄の各温度における Fe と C のモル数を示している。δ 鉄の欄の上段と下段は、
液相と同様に、δ 鉄のモル数と活動を示している。
3.下段は γ 鉄の各温度における Fe と C のモル数を示している。γ 鉄の欄の上段と下段は、
δ 鉄と同様に、γ 鉄のモル数と活動を示している。
C mol fraction 0.005 0.005 0.005 0.005 0.005P (bar) 1.01325 1.01325 1.01325 1.01325 1.01325
Phase DataBase T (C) 1400 1494.632 1494.632 1500 1550LIQUID RICT-Free mol (atom) 0 0 0.035588 0.068439 1
Activity 0.942123 1 1 1 1Element C 0.017996 0.024051 0.024051 0.021295 0.005Element Fe 0.982004 0.975949 0.975949 0.978705 0.995
BCC_A2 RICT-Free mol (atom) 0 0.806455 0.964412 0.931561 0Activity 0.997229 1 1 1 0.989745
Element C 0.002105 0.004297 0.004297 0.003803 0.000941Element Fe 0.997895 0.995703 0.995703 0.996197 0.999059
FCC_A1 RICT-Free mol (atom) 1 0.193545 0 0 0Activity 1 1 1 0.999257 0.984374
Element C 0.005 0.007929 0.007929 0.006948 0.001551Element Fe 0.995 0.992071 0.992071 0.993052 0.998449
T1T5 T4 T3 T2
液相
δ鉄
γ鉄
50
●上記の計算結果の概念図(1550℃から 1350℃までの金属組織の補足説明)
・T1:1550℃:温度が 1550℃では、前図と同様に、等温線は液相線と交差しないので液相
のみである。この時、液相の組成は(C=0.005mol、Fe=0.995mol)である。
・T2:1500℃:温度が 1500℃まで下がると、1500℃の等温線が液相線と δ 鉄の固相線に交
差する。この時、液相と δ 鉄の割合は、0.07 / 0.93 と δ 鉄の割合が非常に多い。この時の δ
鉄の組成は、Fe=0.9962mol、C=0.0038mol で、炭素の最大固溶量に近い値を示す。液相の
組成は、Fe=0.9787mol、C=0.0213mol である。
・T3:1494.6℃:さらに、温度が降温し包晶温度に達すると、その直上の温度では液層が存
在するが、直後の温度ではこの液相は消失する。これは前述と同様に、あくまでも理論計算
による結果であり、現実の組織とは必ずしも一致しない。包晶温度直前になると液相+δ 鉄
→γ 鉄の反応が起こり、3 相が共存するが、理論計算上は、この温度では、液相と δ 鉄しか
存在しない。しかし、現実には、先述のように δ 鉄の周囲には、新しく生成する γ 鉄の組成
に近い液相が生成していると思われる。この時の δ 鉄の組成は、Fe=0.9957mol、
C=0.0043mol で、この δ 鉄には、炭素が最大量固溶しており、前述の包晶濃度の場合と同
じである。液相の組成は、Fe=0.976mol、C=0.024mol である。
Liquid(Fe=0.995molC=0.005mol)
T1:1550℃
T2:1500℃ T3:1494.6℃
liquid/δ鉄=1.0/0.0
Liquid/δ鉄=0.07/0.93
Liquid(Fe=0. 9787molC=0. 0213mol)
Liquid/δ鉄=0.04/0.96
Liquid(Fe=0.976molC=0.024mol)
δ鉄(Fe=0.9962molC=0.0038mol)
δ鉄(Fe=0.9957molC=0.0043mol)
δ鉄結晶
δ鉄結晶
γ鉄組成の液相
液相(liquid)
51
●上記の計算結果の概念図(包晶温度から 1400℃までの金属組織の説明)
・T4:1494.3℃:この温度は包晶点の温度より僅かに温度低い状態である。理論計算上は、
瞬間的に δ 鉄と γ 鉄に変化している。しかし、現実の冷却時間を考慮すると、前図の包晶点
温度の直後から、δ 鉄から排出された炭素原子とマトリックスの液相との間に γ 鉄に近い液
相が生成し、徐々に γ 鉄の結晶化に伴い、液相及び δ 相の一部から γ 鉄に変化していく。
この組成では、前述の包晶温度の場合と異なり、δ 鉄がかなりの量残存している。この時の
δ 鉄の組成は、Fe=9957mol、C=0.0043mol である。この温度で生成した γ 鉄の組成は、
Fe=0.9921mol、C=0.0079mol である。γ 鉄の組成は、γ 鉄の固相線によって決定されるの
で、γ 鉄の固相線より、γ 鉄の組成は、Fe=0.9921、C=0.0079mol と包晶濃度の場合と同じ
である。
・T5:1400℃:包晶温度より、さらに温度が低くなると、完全に γ 鉄のみの合金となる。こ
の時の γ 鉄の組成は、設定濃度と同じ、Fe=0.995、C=0.005mol である。
Liquid/δ鉄=0.23/0.77
γ鉄(Fe=0.9921mol
C=0.0079mol)
γ鉄(Fe=0.995mol
C=0.005mol)
Liguid/Solid=0.0/1.0
T4:1494.6℃
δ鉄/γ鉄=0.81/0.19Liguid/Solid=0.0/1.0
T5:1400℃
δ鉄(Fe=0.9957mol
C=0.0043mol)
δ鉄/γ鉄=0.00/1.00
δ鉄結晶
γ鉄結晶
52
●包晶温度で γ 鉄が δ 鉄を包み込むように成長する理由
以下の説明は「平衡状態図の基礎」を参考としている。前述の拡大状態図において、
C=0.005mol の組成線は、r と b の間にあるため、前述の包晶温度濃度と比較すると、組成
的に炭素量が少なくなっている点が大きく異なる。ここで、以下の左下図に示すように、δ
鉄の粒子が液相を消費して成長し続けると仮定する。この過程は包晶組成の場合と同じで
ある。このような条件では、δ 鉄は、結晶成長に伴って、その周辺の液相に炭素原子を排出
していく。δ 鉄の炭素の最大固溶量には限界があるため、δ 鉄の成長が止まると、δ 鉄と液
相の間に γ 鉄の組成に近い液の層が下右図のように形成される。この γ 鉄の層が δ 鉄と液
相の両方を消費して成長するため、δ 鉄の外側に、δ 鉄を包むように γ 鉄が成長することに
なる。
しかし、C=0.005mol では、δ 鉄の量が相当量あるため、包晶温度以下でも δ 鉄は存在し
ている。そのため、右下図に示すように、δ 鉄の間に γ 鉄が生成しているような組織となる。
ただし、これらの δ 鉄の炭素の固溶量は限界に達しているため、包晶組織では、液相から δ
鉄が再度結晶化することはない。この点が、γ 鉄と δ 鉄がラメラ構造となるような共晶組織
と大きく異なる点である。
δ鉄
γ鉄の生成
δ鉄
液相へ炭素原子の排出
δ鉄
δ鉄の結晶成長が抑制されるため、共晶組織にはならない。
液相 既存のδ鉄
53
課題 15:過包晶鋼(C=0.02mol)において、1550℃から 1350℃まで降温した時の
各相の変化を金属組織の変化として、その概念図を図示せよ。
●C=0.02mol で 1550℃から 1350℃まで降温した時の金属組織変化の概念図
・C=0.02mol における金属の組織変化の概念図を以下に示す。前述と同様に、あくまでも
理解を助けるための概念図であることに留意して欲しい。それぞれの合金により組織が異
なるので、このように単純組織とはならない。
●計算結果の説明(C=0.02mol で t1、t2、t3、t4、t5 の各温度における各相の
定量的変化)
・各温度における各相の割合は、List をクリックすると以下の表が得られる。
1.上段は液相の各温度における Fe と C のモル数を示す。また、液相の欄の上段は液相の
合金中におけるモル数、その下の段は液相の活動を示している。
2.中段は δ 鉄の各温度における Fe と C のモル数を示している。δ 鉄の欄の上段と下段は、
液相と同様に、δ 鉄のモル数と活動を示している。
3.下段は γ 鉄の各温度における Fe と C のモル数を示している。γ 鉄の欄の上段と下段は、
δ 鉄と同様に、γ 鉄のモル数と活動を示している。
C mol fraction 0.02 0.02 0.02 0.02 0.02P (bar) 1.01325 1.01325 1.01325 1.01325 1.01325
Phase DataBase T (C) 1400 1494.632 1494.632 1500 1550LIQUID RICT-Free mol (atom) 0 0.748714 0.794926 0.925941 1
Activity 0.976554 1 1 1 1Element C 0.056714 0.024051 0.024051 0.021295 0.02Element Fe 0.943286 0.975949 0.975949 0.978705 0.98
BCC_A2 RICT-Free mol (atom) 0 0 0.205074 0.074059 0Activity 0.987883 1 1 1 0.976553
Element C 0.008949 0.004297 0.004297 0.003803 0.004142Element Fe 0.991051 0.995703 0.995703 0.996197 0.995858
FCC_A1 RICT-Free mol (atom) 1 0.251286 0 0 0Activity 1 1 1 0.999257 0.973285
Element C 0.02 0.007929 0.007929 0.006948 0.00674Element Fe 0.98 0.992071 0.992071 0.993052 0.99326
T1T5 T4 T3 T2
液相
δ鉄
γ鉄
54
●上記の計算結果の概念図(1550℃から 1350℃までの金属組織の補足説明)
・T1:1550℃:温度が 1550℃では、前図と同様に、液相線と交差しないので液相のみであ
る。この時、液相の組成は(C=0.02mol、Fe=0.98mol)である。
・T2:1500℃:温度が 1500℃まで下がると、1500℃の等温線が液相線と δ 鉄の固相線に交
差する。この時、液相と δ 鉄の割合は、0.07 / 0.93 と δ 鉄の割合が非常に多い。この時の δ
鉄の組成は、Fe=0.9962mol、C=0.0038mol で、炭素の最大固溶量に近い値を示す。液相の
組成は、Fe=0.9787mol、C=0.0213mol である。
・T3:1494.6℃:さらに、温度が降温し包晶温度に達すると、その直前の温度では液相が存
在するが、直後の温度では液相が消失する。これは、前述と同様に、あくまでも理論計算に
よる結果であり、現実の組織とは必ずしも一致しない。包晶温度になると液相+δ 鉄→γ 鉄
の反応が起こり、3 相が共存するが、理論計算上は、この温度では、液相と δ 鉄しか存在し
ない。しかし、現実には、後述するように δ 鉄の周囲には、新しく生成する γ 鉄の組成に近
い液相が生成していると思われる。この時の δ 鉄の組成は、Fe=0.9957mol、C=0.0043mol
で、この δ 鉄には、炭素が最大量固溶しており、前述の包晶濃度の場合と同じである。液相
の組成は、Fe=0.976mol、C=0.024mol である。
Liquid(Fe=0.98molC=0.02mol)
T1:1550℃
T2:1500℃ T3:1494.6℃
liquid/δ鉄=1.0/0.0
Liquid/δ鉄=0.93/0.07
Liquid(Fe=0.979molC=0.021mol)
Liquid/δ鉄=0.79/0.21
Liquid(Fe=0.976molC=0.024mol)
δ鉄(Fe=0.9962molC=0.0038mol)
δ鉄(Fe=0.9957molC=0.0043mol)
δ鉄結晶
δ鉄結晶
γ鉄組成の液相
液相(liquid)
Liquid(液相)
55
●上記の計算結果の概念図(包晶温度から 1400℃までの金属組織の説明)
・T4:1494.6℃:この温度は包晶点の温度より僅かに温度低い状態である。理論計算上は、
瞬間的に δ 鉄液相は γ 鉄に変化している。しかし、現実の降温時間を考慮すると、前図の包
晶点温度の直後から、δ 鉄から排出された炭素原子とマトリックスの液相との間に γ 鉄に近
い液相が生成し、徐々に γ 鉄の結晶化に伴い、δ 鉄は消滅している。γ 鉄の組成は、固相線
によって決定されるので、Fe=0.9921mol、C=0.0079mol と包晶濃度の場合と同じである。
・T5:1400℃:包晶温度より、さらに温度が低くなると、完全に γ 鉄のみの合金となる。こ
の時の γ 鉄の組成は、設定濃度と同じ、Fe=0.98mol、C=0.002mol である。
γ鉄(Fe=0.9921mol
C=0.0079mol)
γ鉄(Fe=0.98mol
C=0.02mol)
T4:1494.6℃
Liquid/γ鉄=0.75/0.25
Liguid/Solid=0.0/1.0
T5:1400℃
δ鉄(Fe=0.9957mol
C=0.0043mol)
δ鉄/γ鉄=0.00/1.00
γ鉄結晶
液相
56
●包晶温度で δ 鉄が γ 鉄に包み込まれるように消滅する理由
以下の説明は「平衡状態図の基礎」を参考としている。C=0.005mol の場合と同様に拡
大状態図に C=0.02mol のラインを引くと、b と c の間になる。ここで、以下の図に示すよ
うに、δ 鉄の粒子が液相を消費して成長し続けると仮定する。その場合には、δ 鉄は、結晶
成長に伴って、その周辺の液相に炭素原子を排出していく。δ 鉄の炭素の最大固溶量には限
界があるため、δ 鉄の成長が止まると、δ 鉄と液相の間に γ 鉄の組成に近い液の層が形成さ
れる。この γ 鉄の層が δ 鉄と液相の両方を消費して成長するため、δ 鉄の外側に、δ 鉄を包
むように γ 鉄が成長することになる。
先述の包晶濃度の場合には、δ 鉄の組成と液相の組成がちょうど包晶濃度における γ 鉄の
組成となるため、δ 鉄は完全に γ 鉄に変化した。しかし、C=0.02mol では、包晶点温度以
下では、液相と γ 鉄しか存在せず、δ 鉄は消滅している。すなわち、一次凝固相である δ 鉄
は、下図に示すように、液相の炭素濃度が増加するため、徐々に自らの結晶が γ 鉄に変化し
ていく。その結果、包晶温度以下では、δ 鉄は完全に γ 鉄に変化し、液相と γ 鉄のみになる。
このように、δ 鉄が消滅してしまうため、液相から δ 鉄が再度結晶化することはなく、γ 鉄
と δ 鉄がラメラ構造となるような共晶系組織になることはない。
δ鉄
γ鉄の生成
δ鉄
液相へ炭素原子の排出
δ鉄
液相から鉄原子の供給はないため、共晶組織と異なる。
液相
液相
57
(Ⅲ)共析系状態図・・・・・・
課題 16:上記の状態図の中の共析系状態図について説明せよ。特に、横軸をモ
ル表示、重量%表示、グラファイト抜きで計算した重量%表示との比較を行え。
●計算結果の説明(横軸をモル分率表示した時の包晶系状態図)
・T1 は 911℃で、α 鉄から γ 鉄への転移温度である。
・T2 は 738℃で、共析温度である。この温度以下では、α 鉄と γ 鉄の組織から α 鉄のみに
変化する。
・T3 は共析温度で、組成は C=0.031mol である。この組成の温度で γ 鉄が α 鉄とグラファ
イトに変化する。γFe→αFe+グラファイトである。
・T4 は 1153℃で、共晶等温線の温度である
・T5 は前述の共析温度になる。
Fe-(x )C P=1.01325bar
CaTCalc
Mole fraction C
.1.08.06.04.02
Tem
pera
ture
(C)
1200
1100
1000
900
800
700
600
500
400
αFE(BCC_A2)
αFE(BCC_A2)+GRAPHITE
γFE(FCC_A1)+GRAPHITE
γFe(FCC_A1)
LIQUID+γFE(FCC_A1)
αFE(BCC_A2)+γFE(FCC_A1)
0.031mol
0.088mol0.0008mol
738℃
1153℃
911℃
T1
T2
T3
T4
T5
58
●計算結果の説明(α 鉄の単独存在領域の表示)
・α 鉄の安定領域を拡大して表示している
●計算結果の説明(横軸を重量%表示した時の包晶系状態図)
・Unit の項の mol を右クリックして mol から g に変換する。
・横軸を重量%に変化しても、α 鉄から δ 鉄の転移温度や共析温度は変化しない。
・α 鉄への最大炭素固溶量は 0.018%である。
Fe-xC P=1.01325bar
CaTCalc
Mass fraction C
.02.015.01.005
Tem
peratu
re (
C)
1200
1100
1000
900
800
700
600
500
400
BCC_A2+GRAPHITE
FCC_A1+GRAPHITE
FCC_A1
LIQUID+FCC_A1
BCC_A2+FCC_A1
BCC_A2
0.0068(0.68%)
0.020
(2.0%)0.00018
(0.018%)
738℃
1153℃
911℃
Fe-xC P=1.01325bar
CaTCalc
Mole fraction C
.001.0008.0006.0004.0002
Tem
pera
ture
(C)
1200
1100
1000
900
800
700
600
500
400
αFe(BCC_A2)+GRAPHITE
αFe(BCC_A2)
αFe(BCC_A2)+γFe(FCC_A1)
γFe(FCC_A1)
0.00083mol
738℃
59
●計算結果の説明(グラファイトを含まない系で計算し、横軸を重量%表示し
た時の包晶系状態図)
・Data ボタンクリックして、Data 画面にて、Phases の項の DIAMOND_A4 と GRAPHITE
の+を消去してブランクにする。
・共析系状態図において、DIAMOND_A4 と GRAPHITE を外して計算しても、共析温度
の炭素濃度がわずかに変化する程度で両者に違いはない。
・大きな相違点は、グラファイトの代わりにセメンタイト(M3X_D011)が表示されること
である。
●亜共析鋼、共析鋼、過共析鋼について
・共析点の組成を炭素濃度の重量%で表示すると 0.76%(0.034mol)となる。
・共析点での炭素濃度=0.76%(0.034mol)よりも、低炭素の炭素鋼は亜共析鋼と呼称され
る。
・共析点における組成の炭素鋼の場合は、共析鋼と呼ばれる。
・共析点組成の炭素濃度よりも高炭素の炭素鋼は、過共析鋼と呼ばれる。
Fe-xC P=1.01325bar
CaTCalc
Mass fraction C
.02.015.01.005
Tem
pera
ture
(C)
1200
1100
1000
900
800
700
600
500
400
BCC_A2+M3X_D011
FCC_A1+M3X_D011
FCC_A1
LIQUID+FCC_A1
BCC_A2+FCC_A1
BCC_A2
0.0076(0.76%)
0.020
(2.0%)
0.00019
(0.019%)
727℃
1148℃
911℃
60
課題 17:共析系状態図について、1000℃、800℃、600℃における、α 鉄、γ 鉄、
セメンタイトの各相の変化を図示せよ。
●計算結果の説明(1000℃での各相の割合の自動表示)
・以下の図は、計算結果の図をパワーポイントにコピーし、説明用に加工したものである。
・この計算は、DIAMOND_A4 と GRAPHITE を外して計算してあるので、グラファイト
の代わりにセメンタイトが表示されている。
・1000℃では、炭素量が 0.066mol までは γ 鉄が安定であるが、その後、徐々に減少してい
る。
・セメンタイトは C=0.066mol より生成し、その後、直線的に増加している。セメンタイト
(Fe3C)の炭素固溶量は C=0.25mol であるので、C=0.25mol の時に 1mol となる。
・DIAMOND_A4 と GRAPHITE を外さずに計算した場合、セメンタイトの代わりにグラ
ファイトが出現するが、その場合、横軸の C=1.0mol がグラファイトに相当するため、増
減の傾斜は緩やかになる。
Fe-xC T=1000C, P=1.01325bar
CaTCalc
C (mol)
.1.08.06.04.02
mol (a
tom
)
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
FCC_A1
M3X_D011
0.066mol
セメンタイト
γ鉄
61
●計算結果の説明(800℃での各相の割合の自動表示)
・α 鉄は C=0.0mol から C=0.016mol にかけて急激に減少している。
・γ 鉄は、反対に C=0.0mol から C=0.016mol にかけて急激に増加し、C=0.016mol から
C=0.039mol までは安定に存在している。その後、C=0.016mol から C=0.1mol にかけて直
線的に徐々に減少している。
・セメンタイトは C=0.039mol から出現し、C=0.1mol まで直線的に増加している。
Fe-xC T=800C, P=1.01325bar
CaTCalc
C (mol)
.1.08.06.04.02
mol (a
tom
)
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
BCC_A2
FCC_A1
M3X_D011
0.016mol
0.039mol
セメンタイト
α鉄
γ鉄
62
●計算結果の説明(共析温度(726.63℃)での各相の割合の自動表示)
・α 鉄は C=0.0mol から C=0.034mol にかけて減少している。C=0.034mol は共析点濃度で
あるので、これ以上の炭素濃度では α 鉄は消滅する。
・γ 鉄は、反対に C=0.0mol から C=0.034mol にかけて急激に増加し、共析点濃度である
C=0.034mol で最大に達する。γ 鉄は、この共析点濃度でのみ最大値をとり、それ以降の濃
度では減少する。
・セメンタイトは C=0.034mol から出現し、C=0.1mol まで直線的に増加している。
・共析温度でかつ共析点濃度では、γ 鉄→α 鉄+セメンタイトの反応が明確になる。
Fe-xC T=726.7C, P=1.01325bar
CaTCalc
C (mol)
.1.08.06.04.02
mol (a
tom
)
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
BCC_A2
FCC_A1
M3X_D011
γ鉄
α鉄
セメンタイト0.034mol
63
●計算結果の説明(600℃での各相の割合の自動表示)
・α 鉄は炭素濃度の増加に伴い直線的に徐々に減少している。
・セメンタイトは逆に徐々に増加している。
Fe-xC T=600C, P=1.01325bar
CaTCalc
C (mol)
.1.08.06.04.02
mol (a
tom
)
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
BCC_A2
M3X_D011
α鉄
セメンタイト
64
課題 18:共析系状態図において。1000℃、800℃、共析温度(726.7℃)、600℃に
おける α 鉄、γ 鉄、セメンタイトの各相の安定性について説明せよ。
・これまでの計算ソフトの使用方法では、グラファイトやセメンタイトは、溶体の自由エネ
ルギーの計算には表示されない。しかし、状態図では、グラファイトやセメンタイトは表示
される。この系の溶体の自由エネルギーの計算には、先ず、グラファイトとセメンタイトの
自由エネルギーを求めておく必要がある。ここでは、先述のように溶体の自由エネルギーを
自由エネルギーと記述する。
●計算熱力学ソフトの使用方法(状態図の表示のための事前入力法1)
1.グラファイトの場合
・Calculate 画面で、C(Graphite)の項の Value を 1 にする。
・Fe(BCC_A2)の項の Value を 0 にする。
・温度は 800℃を入力し、Individual Phase Engergies を選択。Calculate を実行すると下
記左の画面が現れるので、計算結果の中のグラファイトの自由エネルギーの値をメモして
おく。
2.セメンタイトの場合
・Calculate 画面で、C(Graphite)とFe(BCC_A2)の項を右クリックして Delete にて、画面
から両方を消去する。
・Data ボタンをクリックし、Phases リストから[M3X_D011]を選択する。
・Species リストにある[Fe3C]を右クリックし、Feed Species を選択する。
・右側下の”Feed Species for Calculation”に[Fe3C in M3X_D011]が表示されていることを
確認する。
・Calculate ボタンをクリックすると Phase の項に[M3X_D011]が表示されている。
・Value に 1 を入力、温度は 800℃で、Individual Phase Engergies を選択する。Calculate
を実行すると下記右の画面が現れるので、セメンタイトの自由エネルギーの値をメモして
おく。
65
●計算結果の説明(1000℃での各相の組成変化による自由エネルギー変化)
・ 前述したように、セメンタイト(Fe3C)は、結晶構造中に全く他の原子を固溶すること
はできない。グラファイトも同様である。
・このため、自由エネルギーとしては、液相や γ 鉄、α 鉄と異なり、セメンタイトの自由エ
ネルギー曲線ではなく、セメンタイトの炭素の固溶量である C=0.25mol のライン上に点と
して現れる。
・このセメンタイトの点から γ 鉄の自由エネルギー曲線に接線を引くと、その接点は
0.066mol となる。よって、C=0.066mol から C=0.25mol の間は、γ 鉄とセメンタイトの 2
相が安定に存在する。
・C=0.0mol から C=0.066mol の間は、γ 鉄の自由エネルギー曲線が最も小さい値を示すの
で、この間は γ 鉄のみが安定である。
Fe-xC T=1000C, P=1.01325bar
CaTCalc
C (mol)
.25.2.15.1.05
Gib
bs E
nerg
y (
kJ/
mol_
ato
m)
-42
-44
-46
-48
-50
-52
-54
-56
-58
-60
-62
-64
LIQUID
BCC_A2
FCC_A1
M3X_D011
0.066mol
セメンタイト液相
α鉄
γ鉄
66
●計算結果の説明(800℃での各相の組成変化による自由エネルギー変化)
・横軸の値が C=0.25mol では、個々の相の変化がわかりにくいので、横軸の最大値を
C=0.1mol に変更して拡大している。
・各相の安定性を議論するには、前述のように固相の自由エネルギー曲線と液相の自由エネ
ルギー曲線及びセメンタイトとの間に接線を引く必要がある。
・セメンタイトから γ 鉄の自由エネルギー曲線への接点は 0.039mol である。青色の接線で
表されている。セメンタイトの自由エネルギーの値は C=0.25mol なので、この図には現れ
ない。C=0.039mol から C=0.25mol の間は、γ 鉄とセメンタイトが安定である。
・C=0.016mol から C=0.039 mol までは、γ 鉄の自由エネルギー曲線が最小となるので、こ
の間は γ 鉄のみが安定である。
・C=0.0mol から C=0.016mol までは、γ 鉄の固相の自由エネルギー曲線と α 鉄の自由エネ
ルギー曲線の接線の接点である C=0.0006mol から C=0.016mol までは最も下側にあり、α
鉄と γ 鉄が安定である。
・C=0.0mol から C=0.0006mol の間は、この図からは微小すぎて判読できないが、α 鉄の
みが安定である。
Fe-xC T=800C, P=1.01325bar
CaTCalc
C (mol)
.1.08.06.04.02
Gib
bs E
nerg
y (
kJ/
mol_
ato
m)
-41
-41.5
-42
-42.5
-43
-43.5
-44
-44.5
-45
-45.5
-46
-46.5
-47
-47.5
-48
LIQUID
BCC_A2
FCC_A1
0.016mol
0.039mol
α鉄
γ鉄
液相
67
●計算結果の説明(共析温度(736.7℃)での各相の組成変化による自由エネル
ギー変化)
・共析温度では、セメンタイト、α 鉄、γ 鉄の 3 種の自由エネルギー曲線が同じ接線上に存
在する。これは不変反応の特徴である・
・不変反応の温度線上では、C=0.0mol から 0.034mol までは α 鉄と γ 鉄の自由エネルギー
曲線の接線が最も小さい値をとるので α 鉄と γ 鉄が安定である。
・C=0.034mol からセメンタイトの組成である C=0.25mol の間は、両者の接線が最も自由
エネルギー値が小さいので、この間は、γ 鉄とセメンタイトが安定である。
Fe-xC T=726.7C, P=1.01325bar
CaTCalc
C (mol)
.25.2.15.1.05
Gib
bs E
nergy (
kJ/m
ol_
ato
m)
-22
-24
-26
-28
-30
-32
-34
-36
-38
-40
-42
LIQUID
BCC_A2
FCC_A1
M3X_D011α鉄
γ鉄液相
セメンタイト
0.034mol
68
●計算結果の説明(600℃での各相の組成変化による自由エネルギー変化)
・600℃のように低温になると、高温で安定な液相や γ 鉄の自由エネルギー曲線は、セメン
タイトや α 鉄よりも大きな値をとるので、この温度では安定に存在できない。
・セメンタイトから α 鉄の自由エネルギー曲線に引いた接点が、自由エネルギーの値とし
ては最低値をとるので、この温度では、全域においてセメンタイトと α 鉄が安定である。
Fe-xC T=600C, P=1.01325bar
CaTCalc
C (mol)
.25.2.15.1.05
Gib
bs E
nerg
y (
kJ/
mol_
ato
m)
-14
-16
-18
-20
-22
-24
-26
-28
-30
-32
-34
-36
LIQUID
BCC_A2
FCC_A1
M3X_D011
α鉄
γ鉄
液相
セメンタイト
69
課題 19:共析系状態図において、1200℃から 400℃まで降温した時の
C=0.02mol(亜共析鋼)、0.0345mol(共析鋼)、0.06mol(過共析鋼)における
各相の変化を図示せよ。
●計算結果の説明(C=0.02mol の亜共析鋼で 1200℃から 400℃まで降温した
時の α 鉄、γ 鉄、セメンタイトの割合の直接表示)
・γ 鉄は 1200℃から 780℃までは、安定に存在しているが、共析温度である 726.63℃まで
温度が低下すると、0.57mol まで急激に減少し、共析温度よりさらに温度が低下すると完全
に消滅している。
・α 鉄は 1200℃から 780℃までの間は存在せず、780℃から析出する。その後、共析温度で
ある 726.63℃まで急激に増加して、共析温度以下では、400℃まで安定に存在している。そ
の時の存在量は 0.92mol である。
・セメンタイトは、1200℃から共析温度である 726.63℃までは晶出せず、共析温度より下
がると析出する。その時の存在量は 0.08mol である。
・780℃から共析温度である 726.63℃までの α 鉄と γ 鉄の割合は、先述の「テコの原理」か
ら求められるが、本ソフトを用いると、目的の温度のみを入力して計算すると、簡単に α 鉄
と γ 鉄の割合を求めることができる。
Fe-xC P=1.01325bar, X=0.02
CaTCalc
Temperature (C)
12001000800600400
mol (a
tom
)
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
BCC_A2
FCC_A1
M3X_D011
726.63℃
780.0℃
0.92mol
α鉄γ鉄
セメンタイト
0.57mol
0.08mol
0.43mol
セメンタイト
70
●計算結果の説明(共析組成である C=0.0345mol の共析鋼について、1200℃
から 400℃まで降温した時の α 鉄、γ 鉄、セメンタイトの割合の直接表示)
・共析点濃度による各相の温度変化は非常に特色あるパターンとなっている。
・γ 鉄は 1200℃から共析温度である 726.63℃までは、γ 鉄のみが安定であるが、共析温度
から少しでも低温になると急激に消滅している。
・α 鉄は、γ 鉄と逆に、共析温度までは、晶出せず、共析温度より僅かに低温にあると析出
している。共析温度以下での α 鉄の存在量は、0.86mol である。
・セメンタイトは、γ 鉄と同様に、1200℃から共析温度までは結晶化せず、共析温度よりわ
ずかに温度が低下すると析出する。共析温度以下での存在量は 0.14mol である。
Fe-xC P=1.01325bar, X=0.034
CaTCalc
Temperature (C)
12001000800600400
mol (a
tom
)
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
BCC_A2
FCC_A1
M3X_D011
726.63℃
0.86mol
α鉄 γ鉄
セメンタイト
0.86mol
0.14mol0.14mol
セメンタイト α鉄
71
●計算結果の説明(C=0.06mol の過共析鋼について 1200℃から 400℃まで降
温した時の α 鉄、γ 鉄、セメンタイトの割合の直接表示)
・γ 鉄は 1200℃から 942℃までは、安定に存在しているが、共析温度である 726.63℃まで
温度が低下すると、0.88mol まで急激に減少し、共析温度よりさらに温度が低下すると完全
に消滅している。
・α 鉄は、1200℃から共析温度である 726.63℃までは晶出せず、共析温度より温度が低下
すると析出する。その時の存在量は 400℃まで 0.76mol である。
・セメンタイトは 1200℃から 942℃までの間は晶出せず、942℃から析出する。その後、共
析温度である 726.63℃まで増加して、共析温度以下では、400℃まで安定に存在している。
その時の存在量は 0.24mol である。
・942℃から共析温度である 726.63℃までの γ 鉄とセメンタイトの割合は、先述の「テコの
原理」から求められるが、本ソフトを用いると、目的の温度のみを入力して計算すると、簡
単にγ鉄とセメンタイトの割合を求めることができる。
Fe-xC P=1.01325bar, X=0.06
CaTCalc
Temperature (C)
12001000800600400
mol (a
tom
)
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
BCC_A2
FCC_A1
M3X_D011
726.63℃ 942.3℃
0.76mol
α鉄
γ鉄
セメンタイト
0.88mol
0.24mol 0.12mol
γ鉄
セメンタイト
72
課題 20:共析系状態図の共析鋼(C=0.0345mol:共析点濃度)において、800℃
から 700℃まで降温した時の各相の変化を金属組織の変化として、その概念図
を図示せよ。
●C=0.0345mol で 800℃から 700℃まで降温した時の共析鋼の金属組織変化
・共析点の組成である C=0.0345mol における共析鋼の組織変化の概念図を以下に示す。前
述のように、あくまでも理解を助けるための概念図であることに留意して欲しい。それぞれ
の合金により組織が異なるので、このように単純組織とはならない。
●計算結果の説明(t1、t2、t3、t4、t5 の各温度における各相の定量的変化)
・各温度における各相の割合は、List をクリックすると以下の表が得られる。
1.上段は α 鉄の各温度における Fe と C のモル数を示す。また、液相度の欄の上段は液相
の合金中におけるモル数、その下の段は液相の活動を示している。
2.中段は γ 鉄の各温度における Fe と C のモル数を示している。γ 鉄の欄の上段と下段は、
α 鉄と同様に、γ 鉄のモル数と活動度を示している。
3.下段はセメンタイトの各温度における Fe と C のモル数を示している。セメンタイトの
欄の上段と下段は、α 鉄と同様に、セメンタイトのモル数と活動度を示している。
C mol fraction 0.0345 0.0345 0.0345 0.0345 0.0345P (bar) 1.01325 1.01325 1.01325 1.01325 1.01325
Phase DataBase T (C) 700 726.6341 726.6341 760 800BCC_A2 RICT-Free mol (atom) 0.864335 0.865065 0 0 0
Activity 1 1 1 0.987219 0.97689Element C 0.000675 0.000886 0.000886 0.00113 0.001478Element Fe 0.999325 0.999114 0.999114 0.99887 0.998522
FCC_A1 RICT-Free mol (atom) 0 0 0.99966 1 1Activity 0.984795 1 1 1 1
Element C 0.032794 0.034427 0.034427 0.0345 0.0345Element Fe 0.967206 0.965573 0.965573 0.9655 0.9655
M3X_D011 RICT-Free mol (atom) 0.135665 0.134935 0.00034 0 0CFe3 Activity 1 1 1 0.884876 0.769724
T1T5 T4 T3 T2
α鉄
γ鉄
セメンタイト
73
●上記の計算結果の概念図(800℃から共析温度までの金属組織の説明)
・T1:800℃:温度が 800℃では、等温線が両サイドの固相線と交差しないので γ 鉄のみで
ある。この時、γ 鉄の組成は、Fe=00.9655mol、C=0.0345mol である。
・T2:760℃:温度が 760℃まで降温されても、γ 鉄のみであり、γ 鉄の組成も変化しない。
・T3:726.634℃:温度が下降し共析温度に達しても、共析温度より僅かに高温の場合は、γ
鉄のみであり、組成も変化しない。これは、あくまでも理論計算による結果であり、現実の
組織とは必ずしも一致しない。共析温度より僅かに低温になると γ 鉄→α 鉄+セメンタイト
の反応が起こる。
Liguid/Solid=0.0/1.0 Liguid/Solid=0.0/1.0
T1:800℃
T2:760℃
γ鉄/α鉄/セメンタイト=1.0/0.0/0.0
γ鉄(Fe=0.9655molC=0.0345mol)
γ鉄(Fe=0.9655molC=0.0345mol)
γ鉄/α鉄/セメンタイト=1.0/0.0/0.0
T3:726.634℃
74
●上記の計算結果の概念図(共析温度から 400℃までの金属組織の説明)
・T4:726.634℃:この温度は共析点の温度より僅かに温度が低い状態である。理論計算上
は、瞬間的に α 鉄とセメンタイトに変化している。しかし、現実の降温時間を考慮すると、
前図の共析温度の前後から、γ 鉄から排出された炭素原子はセメンタイトの結晶核を生成し、
非常に薄い層状の形態で γ 鉄の粒界に析出する。また、炭素原子が排出した γ 鉄は、より
炭素濃度の低い α 鉄に変化し、セメンタイトと並列した状態で結晶化する。このような α 鉄
とセメンタイトが交互に析出した構造はパーライト構造と呼ばれている。この時の α 鉄の
炭素の含有量は 0.00089mol であり、γ 鉄に比較して非常に炭素の固溶量は少ない。
・T5:700℃(400℃):共析温度より低くなると、さらに、パーライト構造が明確になって
いく。
●共析反応と共晶反応の類似点と相違点。
・共晶反応では、液相→γ 鉄(固相)+セメンタイト(固相)、共析反応では、γ 鉄(固相)
→α 鉄(固相)+セメンタイト(固相)と両者の反応は熱力学的にはきわめて類似の分野で
ある。しかし、共析組織においては、二つの相は共晶組織よりも規則正しく配列する。これ
は、共晶組織では液相が存在するためである。また、固相中では拡散速度が液相よりも低い
ため共析混合物の層間隔が小さくなってしまう。
T4:726.634℃α鉄/セメンタイト=0.87/0.13
α鉄(Fe=0.99911molC=0.00089mol)
セメンタイト(Fe=0.75mol、C=0.25mol)
α鉄結晶
パーライト
セメンタイト結晶
T5:700℃α鉄/セメンタイト=0.86/0.14
α鉄(Fe=0.99933molC=0.00068mol)
セメンタイト(Fe=0.75mol、C=0.25mol)
α鉄(Fe=0.99999molC=0.00001mol)
400℃
75
課題 21:共析系状態図の亜共析鋼(C=0.02mol)ついて、800℃から 700℃まで
降温した時の各相の変化を金属組織の変化として、その概念図を図示せよ。
●C=0.02mol で 800℃から 700℃まで降温した時の金属組織変化の概念図
・C=0.02mol における亜共析鋼の組織変化の概念図を以下に示す。前述と同様に、あくま
でも理解を助けるための概念図であることに留意して欲しい。それぞれの合金により組織
が異なるので、このように単純組織とはならない。
●計算結果の説明(t1、t2、t3、t4、t5 の各温度における各相の定量的変化)
・各温度における各相の割合は、List をクリックすると以下の表が得られる。
1.上段は α 鉄の各温度における Fe と C のモル数を示す。また、液相の欄の上段は液相の
合金中におけるモル数、その下の段は液相の活動度を示している。
2.中段は γ 鉄の各温度における Fe と C のモル数を示している。γ 鉄の欄の上段と下段は、
α 鉄と同様に、γ 鉄のモル数と活動度を示している。
3.下段はセメンタイトの各温度における Fe と C のモル数を示している。セメンタイトの
欄の上段と下段は、α 鉄と同様に、セメンタイトのモル数と活動度を示している。
C mol fraction 0.02 0.02 0.02 0.02 0.02P (bar) 1.01325 1.01325 1.01325 1.01325 1.01325
Phase DataBase T (C) 700 726.634 726.6341 760 800BCC_A2 RICT-Free mol (atom) 0.922492 0.923272 0.430121 0.197006 0
Activity 1 1 1 1 0.994999Element C 0.000675 0.000886 0.000886 0.000731 0.000741Element Fe 0.999325 0.999114 0.999114 0.999269 0.999259
FCC_A1 RICT-Free mol (atom) 0 0 0.569879 0.802994 1Activity 0.984795 1 1 1 1
Element C 0.032794 0.034427 0.034427 0.024727 0.02Element Fe 0.967206 0.965573 0.965573 0.975273 0.98
M3X_D011 RICT-Free mol (atom) 0.077508 0.076728 0 0 0CFe3 Activity 1 1 0.999999 0.594451 0.406819
C_PotentialC kJ/mol -9.67703 -10.9306 -10.9306 -16.9364 -22.1323C_PotentialFe kJ/mol -40.4994 -42.2654 -42.2654 -44.5288 -47.3675
T1T5 T4 T3 T2
α鉄
γ鉄
セメンタイト
76
●上記の計算結果の概念図(800℃から共析温度までの金属組織の補足説明)
・T1:800℃:温度が 800℃では、前図と同様に、等温線は固相線と交差しないので γ 鉄の
みである。この時、γ 鉄の組成は、Fe=0.98mol、C=0.02mol と、設定濃度と同じである。
・T2:760℃:温度が 760℃まで降温されると、760℃の等温線が α 鉄と γ 鉄の固相線に交差
し、上図に示すように α 鉄が γ 鉄の粒界に析出する。この時、α 鉄と γ 鉄の割合は、0.20 /
0.80 である。共晶反応のように液相中に結晶化する場合は自由な形状を取り得るが、共析
反応では固相中に析出するため、結晶の粒界に析出する。この時の α 鉄の組成は、
Fe=0.9993mol、C=0.0007mol と、炭素の含有量は非常に少ない。γ 鉄の組成は、
Fe=0.9753mol、C=0.0247mol である。
・T3:726.632℃(共析温度):さらに、降温すると共析温度に達する。共析温度では γ 鉄→
α 鉄+セメンタイトの反応が進むが、上図は、γ 鉄が分解する直前の温度である。上図に示
すように、α 鉄の割合が 0.20 から 0.43 まで増加し、結晶粒界でも析出した α 鉄の結晶成長
が進むと予想される。これも、前述と同様に、あくまでも理論計算による結果であり、現実
の降温速度が異なる場合の組織とは必ずしも一致しない。
Liguid/Solid=0.0/1.0
Liguid/Solid=0.0/1.0
γ鉄(Fe=0.98molC=0.02mol)
T1:800℃
T2:760℃T3:726.634℃
α鉄(Fe=0.9993molC=0.0007mol)
γ鉄(Fe=0.9753molC=0.0247mol)
α鉄結晶
Liguid/Solid=0.0/1.0
γ鉄(Fe=0.9656molC=0.0344mol)
α鉄(Fe=0.9991molC=0.0009mol)
α鉄/γ鉄=0.00/1.0
α鉄/γ鉄=0.20/0.80α鉄/γ鉄=0.43/0.57
77
●上記の計算結果の概念図(共析温度から 700℃までの金属組織の説明)
・T4:726.634℃(共析温度):この図は共析温度より僅かに低い状態を示している。α 鉄は、
共析温度より低温でも安定であるので、そのまま、パーライトの粒界に結晶成長したα鉄と
して見られる。この時の α 鉄の組成は、Fe=0.99911mol、C=0.00089mol である。
・T5:700℃:共析温度より、降温すると、α 鉄に含まれる炭素量は徐々に少なくなり、400℃
では、ほぼ、ゼロに近い。
T4:726.634℃α鉄/セメンタイト=0.92/0.08
α鉄(Fe=0.99911molC=0.00089mol)
セメンタイト(Fe=0.75mol、C=0.25mol)
α鉄結晶
パーライト
T5:700℃α鉄/セメンタイト=0.92/0.08
α鉄(Fe=0.99933molC=0.00068mol)
セメンタイト(Fe=0.75mol、C=0.25mol)
α鉄(Fe=0.99999molC=0.00001mol)
400℃
78
課題 22:共析系状態図の過共析鋼(C=0.06mol)について、1000℃から 700℃
まで降温した時の各相の変化を金属組織の変化として、その概念図を図示せよ。
●C=0.06mol で 1000℃から 700℃まで降温した時の金属組織変化の概念図
・C=0.06mol における金属の組織変化の概念図を以下に示す。前述と同様に、あくまでも
理解を助けるための概念図であることに留意して欲しい。それぞれの合金により組織が異
なるので、このように単純組織とはならない。
●計算結果の説明(t1、t2、t3、t4、t5 の各温度における各相の定量的変化)
・各温度における各相の割合は、List をクリックすると以下の表が得られる。
1.上段は α 鉄の各温度における Fe と C のモル数を示す。また、液相の欄の上段は液相の
合金中におけるモル数、その下の段は液相の活動度を示している。
2.中段は γ 鉄の各温度における Fe と C のモル数を示している。γ 鉄の欄の上段と下段は、
α 鉄と同様に、γ 鉄のモル数と活動度を示している。
3.下段はセメンタイトの各温度における Fe と C のモル数を示している。セメンタイトの
欄の上段と下段は、α 鉄と同様に、セメンタイトのモル数と活動度を示している。
C mol fraction 0.06 0.06 0.06 0.06 0.06P (bar) 1.01325 1.01325 1.01325 1.01325 1.01325
Phase DataBase T (C) 700 726.634 726.6341 900 1000BCC_A2 RICT-Free mol (atom) 0.762059 0.762703 0 0 0
Activity 1 1 1 0.936914 0.927992Element C 0.000675 0.000886 0.000886 0.005085 0.00934Element Fe 0.999325 0.999114 0.999114 0.994915 0.99066
FCC_A1 RICT-Free mol (atom) 0 0 0.88137 0.972544 1Activity 0.984795 1 1 1 1
Element C 0.032794 0.034427 0.034427 0.054636 0.06Element Fe 0.967206 0.965573 0.965573 0.945364 0.94
M3X_D011 RICT-Free mol (atom) 0.237941 0.237297 0.11863 0.027456 0CFe3 Activity 1 1 1 1 0.857349
T1T5 T4 T3 T2
α鉄
γ鉄
セメンタイト
79
●上記の計算結果の概念図(800℃から共析温度までの金属組織の説明)
・T1:1000℃:温度が 1000℃では、前図と同様に、1000℃の等温線とそれぞれの固相線と
交差しないので γ 鉄のみである。この時、γ 鉄の組成は、Fe=0.94mol、C=0.06mol である。
・T2:900℃:温度が 900℃まで下がると、900℃の等温線が γ 鉄とセメンタイトの固溶体の
固相線に交差する。この時、γ 鉄とセメンタイトの割合は、0.97 / 0.03 と γ 鉄の割合が非常
に多い。セメンタイトは上図に示すように γ 鉄の粒界に析出すると予測される。
・T3:共析温度:さらに、降温し共析温度にまで達すると、その高温側と低温側では、金属
組織が全く異なる。共析温度より僅かに高温側では、セメンタイトの量が増加し、γ 鉄とセ
メンタイトの比は、0.88 / 0.12 となる。また、結晶粒界でも析出したセメンタイトの結晶成
長が進むと予想される。これも、前述と同様に、あくまでも理論計算による結果であり、現
実の降温速度が異なる場合の組織とは必ずしも一致しない。
Liguid/Solid=0.0/1.0
Liguid/Solid=0.0/1.0γ鉄(Fe=0.94mol
C=0.06mol)
T1:1000℃
T2:900℃ T3:726.634℃
γ鉄(Fe=0.9454molC=0.0546mol)
セメンタイト(Fe=0.75molC=0.25mol)
α鉄/セメンタイト=0.00/1.0
γ鉄/セメンタイト=0.97/0.03
セメンタイト結晶
Liguid/Solid=0.0/1.0
γ鉄/セメンタイト=0.88/0.12
セメンタイト(Fe=0.75molC=0.25mol)
γ鉄(Fe=0.9656molC=0.0344mol)
80
●上記の計算結果の概念図(共析温度から 400℃までの金属組織の説明)
・T4:726.634℃(共析温度):この図は共析温度より僅かに低い状態を示している。セメン
タイトは、共析温度より低温でも安定であるので、そのまま、パーライト構造の粒界で結晶
成長する。この時の α 鉄の組成は、Fe=0.99911mol、C=0.00089mol である。
・T5:700℃:共析温度より、さらに降温しても、α 鉄の組成の炭素量は徐々に減少するが、
α 鉄の固相線も C=0.0mol に非常に近い位置にあるため、400℃では、ほぼ炭素含有量がゼ
ロに近い値となっている。
セメンタイト結晶
T4:726.634℃
α鉄/セメンタイト=0.76/0.24
α鉄(Fe=0.99911molC=0.00089mol)
セメンタイト(Fe=0.75mol、C=0.25mol)
パーライト
T5:700℃α鉄/セメンタイト=0.76/0.24
α鉄(Fe=0.99933molC=0.00068mol)
セメンタイト(Fe=0.75mol、C=0.25mol)
α鉄(Fe=0.99999molC=0.00001mol)
400℃
81
(Ⅳ)共晶系状態図(鋳鉄)・・・・・・・・
課題 23:上記の状態図の中の共晶系状態図について説明せよ。特に、横軸をモ
ル表示、重量%表示、グラファイト抜きで計算した重量%表示との比較を行え。
●計算結果の説明(横軸を重量%表示した時の共晶系状態図)
・Unit の項の mol を右クリックして mol から g に変換する。
・純鉄に固溶される炭素の量が 2.0%以下であれば炭素鋼になる。2.0%以上になると鋳鉄と
呼称される。
・鋳鉄は炭素の固溶量が 2.0%から 4.3%までは亜共晶鋳鉄、共晶濃度の場合は共晶鋳鉄、
4.3%以上を過共晶鋳鉄と呼ばれている。一般的に、亜共晶鋳鉄はねずみ鋳鉄、共晶鋳鉄は
白鋳鉄と呼称されている。
・共晶温度は 1153℃である。この不変反応線を境に、液相→γ 鉄+グラファイトに変化す
る
・共析温度は 738℃である。上記と同様に不変反応線を境に γ 鉄は α 鉄に転移するが、グラ
ファイトは変化しない。
Fe-xC P=1.01325bar
Mass fraction C
.08.06.04.02
Tem
pera
ture
(C)
1600
1500
1400
1300
1200
1100
1000
900
800
700
600
500
400
αFe(BCC_A2)+GRAPHITE
γFe(FCC_A1)+GRAPHITE
LIQUID+GRAPHITELIQUID+
γFe(FCC_A1)
LIQUID
γFe(FCC_A1) 0.020(2.0%) 0.043(4.3%)1153℃
0.0068(0.68%)738℃
炭素鋼 鋳鉄
過共晶鋳鉄 亜共晶鋳鉄
共晶鋳鉄
82
●計算結果の説明(グラファイトを含まない系で計算し、横軸を重量%表示し
た時の共晶系状態図)
【設定条件】
・Data ボタンをクリックして、Phases リストの DIAMOND_A4 と GRAPHITE の+を
クリックしてブランクにする。その後、Calculate 実行する。
・グラファイトを含む計算と含まない計算では、共晶濃度以上の状態図は大きく異なる。
・セメンタイト(M3X_D011)は、炭素濃度が 0.669%の時が理想的な組成である。
・共晶温度は、グラファイトを含む場合は、1153℃であるが、グラファイトを含まない計算
では、1148℃となり、値が 5℃程度異なる。共晶点の炭素濃度には両者に大きな違いはない。
・共析温度は、グラファイトを含む計では 738℃であるが、グラファイトを含まない計算で
は 727℃と 11℃と大きく異なる。共析点の炭素濃度にはわずかな違いが認められる。
Fe-xC P=1.01325bar
CaTCalc
Mass fraction C
.08.07.06.05.04.03.02.01
Tem
pera
ture
(C)
1600
1500
1400
1300
1200
1100
1000
900
800
700
600
500
400
BCC_A2+M3X_D011
FCC_A1+M3X_D011
M3X_D011
+M7C3
LIQUID
+FCC_A1LIQUID+M3X_D011
FCC_A1
LIQUID
0.021(2.1%) 1148℃0.043(4.3%)
0.0076(0.76%)726℃
727℃
83
●計算結果の説明(横軸を mol 表示した時の共晶系状態図)
●計算結果の説明(グラファイトを含まない系で計算し、横軸を mol 表示した
時の共晶系状態図)
Fe-xC P=1.01325bar
Mole fraction C
.3.2.1
Tem
pera
ture
(C)
1600
1500
1400
1300
1200
1100
1000
900
800
700
600
500
400
αFe(BCC_A2)+GRAPHITE
γFe(FCC_A1)+GRAPHITE
LIQUID+GRAPHITELIQUID+
γFe(FCC_A1)
LIQUID
γFe(FCC_A1) 0.088 0.1741153℃
738℃
0.031
Fe-xC P=1.01325bar
CaTCalc
Mole fraction C
.3.25.2.15.1.05
Tem
pera
ture
(C)
1600
1500
1400
1300
1200
1100
1000
900
800
700
600
500
400
αFe(BCC_A2)+セメンタイト(M3X_D011)
γFe(FCC_A1)+セメンタイト(M3X_D011)
LIQUID
LIQUID+
FCC_A1
LIQUID+M3X_D011
γFe(FCC_A1) 0.1760.089 1148℃
0.034727℃
727℃
84
課題 24:共晶鋳鉄である白鋳鉄(C=0.176mol)を 1600℃から 400℃まで降温
した時の相の変化及び組成変化を図示せよ。
・白鋳鉄の降温プロセスでは、グラファイトよりも主にセメンタイトが析出する。しかし、
添加元素の種類や降温速度によって、複雑に変化する。熱力学の計算では、α 鉄、γ 鉄、グ
ラファイト、或いは、α 鉄、γ 鉄、セメンタイトの計算は可能であるが、グラファイトとセ
メンタイトの両方を含む計算はできない。そこで、グラファイトを含む計算結果も説明する。
●計算結果の説明(グラファイトを含んで計算した時の C=0.176mol における
各温度における各相の定量的変化)
・白鋳鉄の場合は、基本的にグラファイトは認めらないが、他の鋳鉄との比較のために以下
に説明する。
・1600℃から降温されて共晶温度に達すると、液相→γ 鉄+グラファイトの反応が起こり、
液相から γ 鉄とグラファイトが晶出する。
・共晶温度である 1153℃から共析温度である 738℃まで降温される過程では、γ 鉄とグラ
ファイトとなり、共析温度以下では、グラファイトと α 鉄に変化している。実際の白鋳鉄の
組織にはセメンタイトが析出しているので、セメンタイトを含んだ系を以下に説明する。
Fe-xC P=1.01325bar, X=0.176
CaTCalc
Temperature (C)
16001200800400
mol (a
tom
)
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
LIQUID
BCC_A2
FCC_A1
GRAPHITE
液相
グラファイト
α鉄 γ鉄
85
●計算結果の説明(グラファイトを外して計算した時の C=0.176mol における
各温度における各相の定量的変化)
・グラファイトを外して計算した場合、共晶温度は、1153℃から 1148℃に変化する。
・1600℃から降温して共晶点温度に達すると、液相→γ 鉄+セメンタイトの反応が起こる。
・共晶反応で生成する γ 鉄とセメンタイトの組織はレーデブラント構造と呼ばれる。レー
デブラント構造については課題 25 で詳しく説明する。
・1148℃から 727℃までの間の γ 鉄とグラファイトの量の変化は、テコの原理でもとめら
れるが、本ソフト用いると上記のようなグラフを得ることができる。
・グラファイトの計算結果と比較して、γ 鉄の量が多くなっているが、全体の炭素量は変化
しないので、グラファイトとセメンタイトの組成の違いである。
・共析温度である 727℃以下では、セメンタイトと α 鉄の量の変化はほとんど認められな
い。この温度以下では初晶のセメンタイトは組織的な変化はないが、初晶の γ 鉄は α 鉄と
セメンタイトから構成されるパーライト構造となる。
Fe-xC P=1.01325bar, X=0.176
CaTCalc
Temperature (C)
16001200800400
mol (a
tom
)
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
LIQUID
BCC_A2
FCC_A1
M3X_D011
α鉄
セメンタイト
γ鉄
液相
86
●計算結果の説明(グラファイトを外して計算した時の C=0.176mol における
各相の炭素の含有量変化)
・白鋳鉄に含まれる各相の炭素含有量を表示している。鉄の含有量は炭素の値を 1mol から
引いた値となるが、ここでは省略している。
・液相中の炭素量は、共晶組成の濃度と一致しているので C=0.176mol である。
・1148℃以下になると γ 鉄の量が減少するため炭素量も徐々に減少し、727℃の共析反応で
γ 鉄は消滅している。
・セメンタイトの炭素量は、共晶反応である 1148℃から徐々に増加して、共析反応である
727℃で、セメンタイトの炭素量は 0.176mol となる。
・この理由は、γ 鉄がセメンタイトと α 鉄のパーライトとなり、析出した α 鉄には炭素はほ
とんど含まれていないため、γ 鉄の炭素は、セメンタイトの析出に使用されたためと考えら
れる。
・以上にように、結晶相とその化学組成の変化を比較することにより、1600℃からの降温
プロセルを明確にすることができる。
Fe-xC P=1.01325bar, X=0.176
CaTCalc
Temperature (C)
16001200800400
mol (a
tom
)
.16
.14
.12
.1
.08
.06
.04
.02
C_LIQUID
C_BCC_A2
C_FCC_A1
C_M3X_D011
液相の炭素量
セメンタイトの炭素量
γ鉄の炭素量
87
課題 25:白鋳鉄(共晶点、C=0.176mol)の共晶凝固に関して状態図を用いて熱
力学的に説明せよ。
●共晶温度における γ 鉄とグラファイト(又はセメンタイト)の共晶凝固に関
する考察
これより説明する考察の項は「平衡状態図の基礎」をベースに鋳鉄の内容に合致するよう
に変更したものである。下図は先述の状態図の共晶点の組成近傍を拡大したものである。こ
こでは、セメンタイトの事例で紹介するが、白鋳鉄以外ではセメンタイトをグラファイトに
置き換えても良い。
・γ 鉄粒子の成長による炭素(C)の放出:共晶点組成の合金が液相状態から共晶温度(Te)
の温度より低い Tn の温度まで降温されたと仮定する。液相線(Ta)の延長線と Tn の温度
線との交点を 1 とする。この時の γ 鉄粒子の合金の組成は、共晶温度の時、mol 表示では、
Fe=0.912 mol、C=0.088mol、重量%表示では、Fe=98.0%、C=2.0%の組成に近い組成を有
するはずである。このことは、母相の液相の組成(mol 表示:Fe=0.826mol、C=0.174mol)
(重量%表示:Fe=95.7%、C=4.3%)よりもはるかに Fe に富んだものとなっている。この
ように Fe に富んだ γ 鉄の結晶が形成されると、炭素原子はその際に γ 鉄の結晶から排出さ
れることになる。この排出された炭素原子はすぐ隣の液相中に入らなければならない。した
がって、擬平衡状態においては γ 鉄粒子の周辺の液相では炭素の組成が増大した状態が保
持されるはずである。
e
j k l
Te
Tn
Ta Tb
XC
ΔTγFe
ΔTセメンタイト(グラファイト)
88
・γ 鉄粒子の成長の停止(組成的過冷度の減少):γ 鉄粒子がさらに結晶成長していくと、
周辺の液相中でのこのような炭素の過剰量は増加する。その結果として成長しつつある γ 鉄
粒子の周辺の液相組成は k から l に向かうことになる。このようなことが起こると、γ 鉄粒
子に関する組成的過冷度(ΔTγFe)は、液相まで延長した el との間に引いた垂線との距離に
等しいため、組成が l に向かうに従い ΔTγFeの値は減少し、γ 鉄粒子が結晶成長するための
駆動力は徐々に減少していく。組成が l 点に達すると γ 鉄粒子の結晶成長の駆動力はゼロと
なり、完全に γ 鉄粒子の結晶成長はストップする。
・セメンタイト粒子の成長(組成的過冷度の増加):γ 鉄粒子が成長するにつれて、周辺の
液相中に炭素原子が排出するために γ 鉄粒子の結晶成長はストップするが、セメンタイト
粒子については、組成的過冷度(ΔT セメンタイト)が e から l に向かって大きくなり、セメンタ
イト粒子にとっては成長するにはより好都合な環境となる。このように γ 鉄粒子の ΔTγFe
が徐々に減少するのに対して、セメンタイト粒子の ΔT セメンタイトは増加する。このような濃
度変化が進むと γ 鉄粒子の成長が減少する代わりに、セメンタイト粒子が安定的に成長す
ることができるようになる。
・γFe 結晶とセメンタイト結晶の交互成長:γ 粒子周辺の液相中では、セメンタイト結晶の
核生成が容易となり、セメンタイトが形成され結晶成長すると、短時間だけセメンタイトが
成長した後に、今度はセメンタイト相の界面には Fe 原子が排出され、セメンタイト粒子の
界面は Fe の濃度が高くなる。このようになると、今度は逆に ΔT セメンタイトが徐々に小さく
なり ΔTγFe の値が大きくなる。このためセメンタイト結晶の外側に γ 鉄の結晶が隣接して
成長するようになる。そして、このような過程が交互に繰り返される。この結果、共晶凝固
生成物はγ鉄相とセメンタイト相の二つの固相が交互に密着して混合したものとなる。
89
●共晶温度で白鋳鉄の組織がレーデブライト構造となる理由
すでに多く報告があるように、共晶系における 2 相では、多くの場合、交互に並んだ板
或いは層状構造を有する特異なラメラ構造となっている。板状や層状に結晶が成長する理
由としては、下図に示すように、①で示した γ 鉄が、先ず、最初に核生成したと仮定する
と、液相と複合固相との間には二次元的な拡散勾配が形成される。γ 鉄と液相の界面の近く
では、液相から先ず Fe 原子が減少し、C 原子に富むようになる。同時に、セメンタイトと
液相界面の近くでは、液相から C 原子が減少し、Fe 原子に富むようになる。このように液
相と固相の間に生じた濃度勾配は、固相―液相界面に垂直な方向ばかりでなく、拡散によっ
て下図に矢印で示したように横の方向にも拡散することができる。これによって、おのおの
の固相の成長先端において、他の固相が核生成する傾向が押さえられため、液相と複合固相
との界面に垂直な方向へ定常的に成長するための条件が整えられたことになる。この結果、
お互いに横方向へ長く伸びた層となって成長する。このような白鋳鉄のラメラ組織はレー
デブライト構造と呼称されている。
・レーデブライト構造の組織は、さらに共晶温度から共析温度である 727℃に達すると共析
反応により、γ 鉄(オーステナイト)は α 鉄(フェライト)とセメンタイトの共析組織とな
る。このような共析組織はパーライト構造と呼ばれている。
液相
Fe
Fe
Fe
Fe
γ鉄(Fe)
セメンタイト(C)
γ鉄(Fe)
γ鉄(Fe)
セメンタイト(C)
セメンタイト(C)
③
①
②
①
③
C
C
C
C
90
課題 26:亜共晶鋳鉄であるねずみ鋳鉄(C=0.1mol)を 1600℃から 400℃まで
降温した時の相の変化及び組成変化を図示せよ。
・ねずみ鋳鉄の降温プロセスでは、降温速度や Si や Mn 等の各種元素の添加によって、グ
ラファイトやセメンタイトが析出する。しかし、白鋳鉄の項で説明したように、熱力学の計
算では、α 鉄、γ 鉄、グラファイト、或いは、α 鉄、γ 鉄、セメンタイトの計算は可能である
が、グラファイトとセメンタイトの両方を含む計算はできない。そこで、白鋳鉄のケースと
同様に、グラファイト及びセメンタイトのそれぞれの計算結果について説明する。
●計算結果の説明(グラファイトを含んで計算した時の C=0.1mol における各
温度における各相の定量的変化)
・1600℃から降温されて 1356℃に達すると、1356℃の等温線と液相線が交差して、γ 鉄が
液相より晶出する。γ 鉄と液相の割合は、テコの原理で求められるが、本ソフトを用いると
簡単にグラフ化できる。
・初晶 γ 鉄は、結晶成長するに伴い、樹木の枝のような形状をしたデンドライトとなる。こ
の樹枝状結晶は降温に伴い共晶温度まで晶出し続ける。
・デンドライトは共晶反応の不変反応線上で、約 0.88mol に達し、さらに不変反応線上で
約 1mol まで増加し、ほぼ γ 鉄のみとなる。
・液相は 1356℃から急激に減少し、共晶温度である 1153℃で消失する。
・共晶温度である 1153℃から共析温度である 738℃まで降温される過程で、初晶である γ
鉄はグラファイトの析出により、徐々に減少する。
Fe-xC P=1.01325bar, X=0.1
CaTCalc
Temperature (C)
16001200800400
mol (a
tom
)
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
LIQUID
BCC_A2
FCC_A1
GRAPHITE
液相
γ鉄α鉄
グラファイト
1356℃1153℃738℃
91
●計算結果の説明(グラファイトを外して計算した時の C=0.1mol における各
温度における各相の定量的変化)
・グラファイトを外して計算した場合、共晶温度は、1153℃から 1148℃に変化する。
・1600℃から降温して共晶温度までは、この融体は γ 鉄と液相との固溶体を形成している。
・γ 鉄は 1356℃から晶出し、樹枝状形状をしたデンドライトとなる。デンドライトはグラ
ファイトを含む系で説明したように、急激に増加し、共晶反応時で最大に達する。
・共晶温度では初晶の γ 鉄のデンドライトと、液相から晶出した γ 鉄とセメンタイトのレ
ーデブライト構造が共存する。
・共晶温度である 1148℃から共析温度である 727℃までの間は、γ 鉄は減少し、セメンタ
イトは増加する。これらの量の変化は、前述のようにテコの原理でもとめられるが、本ソフ
ト用いると上記のようなグラフを得ることができる。
・共析温度と共析温度の間は、初晶の γ 鉄とレーデブライト構造からなる。
・727℃以下の共析反応では、初晶の γ 鉄から α 鉄とセメンタイトが析出しパーライト構造
となる。また、レーデブライト構造中の γ 鉄からも α 鉄とセメンタイトが析出し、パーラ
イト構造となる。
Fe-xC P=1.01325bar, X=0.1
CaTCalc
Temperature (C)
16001200800400
mol (a
tom
)
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
LIQUID
BCC_A2
FCC_A1
M3X_D011
液相
γ鉄α鉄
セメンタイト
1356℃1148℃727℃
92
●計算結果の説明(グラファイトを外して計算した時の C=0.1mol における各
相の炭素の含有量変化)
・ねずみ鋳鉄に含まれる各相の炭素含有量を表示している。鉄の含有量は炭素の値を 1mol
から引いた値となるが、ここでは省略している。
・液相中の炭素量は、共晶組成の濃度と一致しているので C=0.176mol である。
・1148℃以下になると γ 鉄に含まれる炭素量は徐々に減少し、727℃で、急激に消滅してい
る。これは γ 鉄が α 鉄とセメンタイトのパーライト組織となり、α 鉄にはほとんど炭素原子
が含まれないため、γ 鉄に含まれる炭素がほとんどセメンタイトに移行したことがわかる。
このように温度変化に伴う、生成相の変化を直接炭素量の変化としてグラフ化できる。
・セメンタイトの炭素量は、1148℃から徐々に増加して、727℃からはセメンタイトに含ま
れる最大炭素量は、0.176mol と、最初の設定モル数と一致する。
Fe-xC P=1.01325bar, X=0.1
CaTCalc
Temperature (C)
16001200800400
mol (a
tom
)
.1
.09
.08
.07
.06
.05
.04
.03
.02
.01
C_LIQUID
C_BCC_A2
C_FCC_A1
C_M3X_D011
液相の炭素含有量
γ鉄セメンタイトの炭素含有量
1356℃1148℃727℃
93
課題 27:過共晶鋳鉄の(C=0.2mol)を 600℃から 400℃まで降温した時の相の
変化及び組成変化を図示せよ。
・過共晶鋳鉄に関しても、降温速度や Si や Mn 等の添加元素によって、グラファイトやセ
メンタイトが析出する。しかし、白鋳鉄の項でも説明したように、熱力学の計算では、α 鉄、
γ 鉄、グラファイト、或いは、α 鉄、γ 鉄、セメンタイトの計算は可能であるが、グラファ
イトとセメンタイトの両方を含む計算はできない。そこで、グラファイト及びセメンタイト
のそれぞれの計算結果について説明する。
●計算結果の説明(グラファイトを外して計算した時の C=0.2mol における各
温度における各相の定量的変化)
・1600℃から降温されて 1190℃に達すると、1190℃の等温線とセメンタイトの固相線と液
相の液相線と交差してセメンタイトが液相より晶出する。セメンタイトと液相の割合は、テ
コの原理で求められる。セメンタイトは共晶温度まで晶出し続けて、共晶反応の不変反応線
上で、液相は消失する。
・1148℃から 727℃まで降温される過程では、γ 鉄とセメンタイトの割合は、前述と同様に
テコの原理で求めることができる。
・セメンタイトは 1148℃の共晶反応でセメンタイトと γ 鉄になる。さらに、727℃の共析
温度以下では、γ 鉄は、α 鉄とセメンタイトのパーライト構造になる。
Fe-xC P=1.01325bar, X=0.2
CaTCalc
Temperature (C)
16001200800400
mol (a
tom
)
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
LIQUID
BCC_A2
FCC_A1
M3X_D011
液相
γ鉄α鉄
セメンタイト
1190℃
1148℃727℃
94
●計算結果の説明(グラファイトを含んで計算した時の C=0.1mol における各
温度における各相の定量的変化)
・グラファイトを含んで計算した場合、共晶温度は、1153℃となる。
・1600℃から降温して共晶温度までは、グラファイトと液相から構成される。
・共晶温度ではグラファイトがそのまま初晶として残り、液相からは γ 鉄とグラファイト
が結晶化する。一般的には、液相からは共晶反応によって、γ 鉄とグラファイトが交互に積
層したラメラ構造となるが、添加元素や降温温度によって複雑に変化する。
・1153℃から 738℃までの間の γ 鉄とグラファイトの量の変化は、前述のようにテコの原
理でもとめられる。前述と同様に、降温温度や添加元素の量により異なるが、降温の過程で、
ラメラ構造中のグラファイトが結晶成長して、γ 鉄の粒界に析出する事例もある。
・共析温度である 727℃以下では、γ 鉄と一緒に結晶化した初晶のグラファイトはそのまま
合金中に残存するが、この状態図では、γ 鉄は共析反応でグラファイトと α 鉄のパーライト
になるが、一般的には、α 鉄とセメンタイトからなるパーライト構造に変化する。
Fe-xC P=1.01325bar, X=0.2
CaTCalc
Temperature (C)
16001200800400
mol (a
tom
)
1
.9
.8
.7
.6
.5
.4
.3
.2
.1
LIQUID
BCC_A2
FCC_A1
GRAPHITE
液相
γ鉄α鉄
グラファイト
1450℃1153℃738℃
95
●計算結果の説明(グラファイトを含んで計算した時の C=0.2mol における各
相の炭素の含有量変化)
・過共晶鋳鉄に含まれる各相の炭素含有量を表示している。鉄の含有量は炭素の値を 1mol
から引いた値となるが、ここでは省略している。
・液相中の炭素量は、1450℃までは共晶組成の濃度と一致しているので C=0.176mol であ
る。当然ではあるが、グラファイトの晶出に伴い、γ 鉄中の炭素は直線的に減少している。
・1450℃から 1153℃までは液相とグラファイトからなる。グラファイトが生成すると液相
の炭素量は減少していく。
・共晶温度である 1153℃では、初晶のグラファイト及び液相から結晶化したグラファイト
により、炭素量は増加する。γ 鉄も同時に液相から結晶化する。
・共晶点の 1153℃以下になると γ 鉄の量が減少するため炭素量は徐々に減少し、738℃以
下では、後述する理由により消滅している。
・共析温度である 738℃では、共析反応により γ 鉄は α 鉄とグラファイトに変化する。α 鉄
にはほとんど炭素原子が含まれないため、γ 鉄に含まれる炭素はほとんどグラファイトに移
行することになる。
・セメンタイト或いはグラファイトを含む系と含まない系のそれぞれの計算では、現実の組
織を正確に説明することはできない。両状態図を比較しながら、現実の組織を類推する必要
がある。
Fe-xC P=1.01325bar, X=0.2
CaTCalc
Temperature (C)
16001200800400
mol (a
tom
)
.2
.18
.16
.14
.12
.1
.08
.06
.04
.02
C_LIQUID
C_BCC_A2
C_FCC_A1
C_GRAPHITE
液相の炭素含有量
γ鉄の炭素含有量
グラファイト
1450℃1153℃738℃
96
●参考にした文献
1)上原邦夫他:“固体の熱力学”、コロナ社(1965)
2)山口喬:“入門化学熱力学”、培風館(1971)
3)平野賢一他:“平衡状態図の基礎”丸善(1971)