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【整番】FE-19-RP-011 【標題】配管系の簡易振動評価基準案 (SWRI ベース)
分類:流れ(流体振動)/種別:技術メモ 作成年月:H18.12/改訂:Ver1.1 (R2.5) 作成者:N.Miyamoto
FE-19-RP-011 配管類の簡易振動評価基準案(判定図ベース)を拡張し題名を変更[Ver1.1] 全 27 枚
(1/2)分冊
1.はじめに
プラント配管は脈動や流体振動あるいは関連設備の振動によって顕著に揺れることがあり運転者に
不安や不快を与え、更に疲労損傷に至ることがある。振動荷重の場合、繰返し回数は短期間で急激に
累積するので疲労破損に至るのは早い。従って振動が顕在化した時点で、それが許容できるレベルに
あるのか、改善を要するレベルにあるのかを判断し、運転継続の可否を決める必要がある。このため
解析によらない、次のような簡便な振動評価法が使用されている。
➀ SWRI の判定図あるいはノモグラフによる評価
➁ ASME OM-3 の振動カテゴリ-に準じた評価
➀は米国の研究機関 SWRI(Southwest Research Institute)が提案した方法で、特に判定図はよく
設計現場で使用されている。➁も簡易的な評価法が含まれておりかなり使用されている。
本 TS では下記の文献に基づいて、➀の SWRI の評価方法を紹介するとともに、その運用基準を
提案してみたい。
“ Controlling the Effects of Pulsations and Fluid Transients in Piping Systems”
Chapter Ⅵ Piping Vibration (SWRI ゼミナ-資料 Jan1987)
2. 判定図による配管振動評価方法
SWRI の判定図は、横軸の振動数、縦軸の振動振幅で定義された右下がりの曲線を用い 4 段階の振動
レベルを表わしたもので、計測された振動数と振動振幅だけでその振動状態を判定することができる。
その簡便さからプラント設備で広く用いられているが、判定図の解釈や運用については様々ではないか
と思う。ここでは運用に関してガイダンスなものを提案する。なおこの提案の背景/根拠などについては
本節の末尾でまとめて補足する。
[ 因みに SWRI は、簡易的な判定図による方法は多分に統計的で保守的であり不必要な補修や思わぬ
破損につながるので、可能であれば次章に示すような多面的なノモグラフによる方法を用いることを
勧めている。即ちともすれば安直な方法に流れる心理的傾向に対し Warning を出している。]
2.1 適用対象/範囲
もともとフィールドデータを整理したもので、その背景については明確に議論されていないと推察
される。従って適用対象などを限定するのは難しいが、配管振動の通念から次のように適用対象/範囲
を設定できるのではないかと思われる。
(1) SWRI 判定図は次の条件が全て満足されるとき、流体や流れ状態によらず適用できる。
・振動が安定して継続しているとき
・振動が梁モードの振動であるとき
・通常の構造を持った鋼製配管であるとき
(2) 次のいずれかの場合は適用除外(あるいは参考扱い)とする。
・著しい不規則振動/過渡振動があるとき
・振動モードが明らかに管断面のリング振動か、板シェル振動であるとき
・鋼以外の金属配管あるいは非金属配管であるとき
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・腐食環境下で使用されている配管であるとき
・200℃を越えるような高温配管であるとき
・判定図の上限 300Hz を越えるような高い振動数で揺れているとき
このような場合、別途基準即ち板シェル振動/不規則振動/過渡振動/音響振動等を対象にした評価法や
詳細な動的解析に基づく評価が適している。
2.2 配管振動の評価手順
振動の評価手順は、評価に対するエンジニアリング的なアクションを含めてチャート 1 が目安に
なると思う。判定図は絶対的なものではないので、協議や工学的判断がその節目となる。
チャート1 SWRI 判定図による配管振動評価手順
振動計測(振動数/振動振幅など)および振動状態の観察
協議
OK
判定図の適用性 別途評価基準の適用
y
評価パラメータ (振幅/振動数) 設定
SWRI 判定図読取り 図 1
振動レベル>”Danger”
n
y 振動レベル>”Correction” n
n EJ&協議 y
運転中止 運転継続(監視扱い) 運転継続(通常扱い)
y 振動レベル>”Marginal”
n
n EJ&協議 y
許容されず 許 容
原因とメカニズムの究明と対策立案 終了
(注記) ‟EJ&協議“ ➞ 別途評価/検討等に基づく工学的判断および関係者協議
運転継続不可
y
n
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2.3 振動計測の要点
(1) ある配管区域で振動が起きたらすぐ振動を計測し定性/定量的にその傾向をつかむ。計測ポイントは
当該の区域で 3 個所以上とし梁振動のプロポーションが略々推定できるような位置を選択する。当然
ながら、振動部分の最大の振幅を逃さないようにする。
(2) 計測は振動計(加速度計)による。配管の振動は 10Hz 未満の低周波もあるので出来るだけ低い振動数
が測れるものを用意する。また周波数分析機能付きの振動計が望ましい。加速度計は通常 2~3Hz 以下
の振動数計測では精度が劣り信頼性に欠けるので、この時は変位計計測または目視計測を行なう。目視
計測の場合はスケール/ゲージ/ストップウォッチなどを用い複数の計測者が交互にデータを採るなど
主観を排除する。
(3) 各計測ポイントで管軸直交 2 方位について計測する。この場合、原則的には
振動振幅 ➞ 振動計による等価 P-P 値(オーバーオール値)または FFT(*)による時間波形の P-P 値
振動数 ➞ 振動計によるオ-バ-オ-ル振動数または FFT(*)による卓越振動数の計測
波形の平均値(0.637xP-P)や実効値(0.707x0-P)は採らない。 (*)➞高速フーリエ変換
(4) 計測は通常、ハンド式で多数回繰り返す。対象物に直角に当てて密着させるなど、取扱説明書の指示
による。振動数や振動振幅が有意に時間変化するときはセンサを固定して長期計測する。
(5) 断熱/防音配管の板金表面における計測データはあくまでも参考値であって評価には使用できない。
設計施工段階で振動が予想されるなら、予め計測用の座板を取り付けておくかフランジ部分等を露出
させておく。最寄りのサポ-ト金具等を利用して計測してもよい。
(6) 計測に用いる振動計は、使用説明書が付いてキャリブレーション済みのものを用いる。
2.4 評価パラメータの設定
(1) 振動計測結果に基づいて以下のように判定図読取り用のパラメータ(振動数/振動振幅)を設定する。
(2) 計測ポイント/計測方向の振動振幅(P-P 値ないし 2x0-P 値)とその時の振動数をセットで扱う。評価
用の振動振幅δは次式で求める。
δ=(1/0.0254)[δx2+δy2 ]0.5 (単位:mil➞1000 分の 1 インチ)
ここで δ=評価振幅(mil)、δx,δy=管軸直交 2 方向の計測振幅の最大 P-P 値(mm)
もし長期計測データがあるときは平均化して扱う(例えば時間で重み付け)。また何らかの事情で
実効値(RMS 値)データなら、各データ値に 1.4142 を乗じ SRSS(二乗和の平方根)で近似値を求める。
(3) 評価用の振動数には、計測されたオ-バ-オ-ル値または周波数分析による卓越成分の振動数を
使用する。振動数表示のない振動計を使用したときは、次式で評価用振動数を設定する。
f= {1/(2π)}x{v/(0.5δ)}、f={1/(2π)}x{α/v} あるいはf={1/(2π)}x{α/(0.5δ)}0.5
ここで f= 評価用振動数 ( Hz )、 δ=P-P 振幅 ( mm )、v=速度( mm/s )、 α=加速度(mm/s2)
( δ,v,αはいずれもオ-バ-オ-ル値)
2.5 振動レベル/領域の評価
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(1) 振動レベルは SWRI の判別図( 図 1 ) によって判定する。図では次の 4 つのラインが定義される。
DESIGN: 設計目標レベル
MARGINAL: 設計裕度限界の振動レベル (これを越えると裕度が低下する)
CORRECTION:許容限界の振動レベル (これを越えるときは改善が必要)
DANGER: 破損限界の振動レベル (これを越えるときは破損の恐れ)
文献(3)では次のように解釈されている(標準的な解釈である)。
➀ Danger 領域(>Danger):
すぐに運転を中止し配管系を改造して振動値を減少させなければ危険な振動状態
➁ Correction 領域(Danger~Correction):
配管系を改造し振動値を減少させることが望ましい振動領域
➂ Marginal 領域(Correction~Marginal):
起こり得る振動値であるが若干大き目とされる振動領域
➃ Design 領域(Marginal~Design):
適切に設計された配管系であっても起こり得る振動領域
(2) 判定は、横軸に振動数、縦軸に全振幅変位(振動振幅)をとってその交点がどのレベルの領域に位置
するかを読み取って行なう。
もし、交点が DANGER を越えるなら配管損傷の恐れが強いので原則としてすぐ運転を中止して詳細
な検討を行なって改善工事を実施する。
交点が DANGER-CORRECTION の中間にあるなら、すぐ運転を中止する必要はない。ただし
重要度が高い配管や危険流体を扱う配管が揺れている場合、あるいは耐圧部(管継手/支持金具取付部
など)に高い応力集中部分(例えばソケット溶接)がある場合などはできるだけ早い機会に運転を停止す
べきである。なお、敢えて運転を続ける場合は、周期的な監視点検を行なうともに原因究明と対策立案
を行ない、停止後すぐ改善工事に移れるよう準備しておく必要である。
交点が CORRECTION-MARGINAL の中間レベルにくるなら強いて運転を中止し改善工事を施す
必要はない。しかし長期的にみて技術的な不安が残る場合あるいは顧客の設備維持管理の思想から逸脱
する場合は、前述と同様に詳細な検討を行ない必要に応じ運転を止めて改善工事を行なう。
交点が MARGINAL-DESIGN の中間レベルにくるなら通常、そのまま運転を継続し特に改善工事
を行う必要はない。
全般に SWRI 判定図以外の評価法(ノモグラフ/OM-3)も併用して総合的に判断するのが望ましい。
判定結果は振動計測結果と共に報告書にまとめて速やかに顧客に提出する。記載事項としては
・振動計測記録 (施行者、日時、使用計器、運転状況、計測場所/方位、測定データ 記載)
・判定記録 (判定図出典、評価データ、評価位置図、判定プロット図、判定結果)
状況にもよるが、現象の観察/考察 および原因の推定を記述するのがベターと思われる。
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【 判定図運用に関する補足説明 】
(1) 本章で使用されている振動関連用語は専ら TS 作成者の認識によるもので、その定義は次の通り。
梁振動: 配管は一種の梁であるから殆ど梁曲げによる振動が主体。
不規則振動: 再現性の乏しいランダム振動。
過渡振動: 流れの急変などで過渡的に発生しやがて収束する振動
リング振動: 円環状の断面に生じる板曲げによる振動
加速度計: 振動ピックアップで慣性量を測り電気変換するもの
変位計: 振動ピックアップで地球からの相対変位量を測り電気変換するもの
オ-バ-オ-ル値: 一般の振動計で計測される最大の変位/速度/加速度を指す。
周波数分析: 実波形を分解しその振動を構成する振動数とそのピーク値の成分を明らかにすること。
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全振幅変位: ピークからピークまでの変位範囲(P-P)を言う。判定図の‟振動振幅‟と同じ。
等価 P-P 値: 同じ大きさの実効値(計測瞬時値の 2 乗平均の平方根(RMS))を持つ正弦振動に
換算したときの変位範囲(P-P)。実質、オ-バ-オ-ル値に同じ(付図 3 参照)。
(2) SWRI 判定図の背景について。SWRI の判定図の背景はよくわからないが、文献等の記述から推定
して付図 1 のようなものがオリジナルとしてあるようである。この図は、
・まずフィールドの破損データを収集してこれをグラフ上にプロット(■マーク)し
・これを包絡する形で DANGER ライン(実線)をひき
・更に DANGER ラインの縦軸の振幅の値を 1/2.5 にとって CORRECTION ラインを引き
・更に逐次振幅の値を 1/2 にとって MARGINAL ラインと DESIGN ラインをひいて
作成されたものと思われる。つまり DANGER ラインのみが実体であって残りの4つのラインは逐次、
2.5 倍/2 倍の安全率を採って設定されているように思える。なおベースになっている破損データがどの
ようなものであったかわからないが、SWRI が古くから石油精製設備の脈動流れ問題に係わってきた
事実から考えて、API5L、5LX など炭素鋼や低合金鋼を用いた配管の脈動現象(振動現象)による破損
データが主体ではなかったかと思われる。DANGER ラインは、これら破損データの中で最悪のものを
安全包絡しているので、例えば LNG 配管のような重要度の高い配管にもそれなりの安全が確保されて
いると思われる。
(3) SWRI 判定図の傾向について。基本データとしての DANGER ラインは右下がりの減少関数である
(他の3つのラインも然り)。この傾向には次のように説明できる。
振動のポテンシャルエネルギ E は、ω=(k/m)0.5の関係を用いて
E=(1/2)ky2=(1/2)mω2y2=(2π2mf2y2 ➞ f・y={E/(2π2m)}0.5
ここで k=バネ定数、m=質量、ω=角振動数、f=振動数、y=変位(振幅)
この場合、破損に至るまでに蓄積されてゆく単位エネルギは同じ構造体では一定と考えられるので
f・y=C (一定) ➞ y=C/f になり、破損までの振幅と振動数の関係は減少関数になる。
以上の関係は 3.2 節で示される梁曲げ振動の式(下記 3 式)を用いるとより鮮明になる。
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(S/y)=(E/Eo)K(D/L2) -------------------------(a’)
yall=20.6(E/Eo)/(S/y) -------------------------(b’) 記号定義割愛
f=1000{λk/(2πL2)}(Eg/γ*)0.5 --------------------------(c’)
(a’)式は単位振幅当たりの応力(S/y)を示す。(b’)式は許容限界の振幅(yall)を示すもので左辺の 20.6
は限界応力値である。(c’)式はローカルな固有振動数を示すもので配管振動がローカルな固有振動数で
起きていると想定している。(a’)式を(b’)式に代入すると yall=20.6(1/K)(L2/D) となる。また
断面 2 次半径 k は 0.35D で近似できるので (c')式は f=(350λ/2π)(D/L2)(Eg/γ*)0.5 になる。yall式
と(c’)式から、寸法比(D/L2) を取り除くと、
yall=(350/2π) (λ/K)(Eg/γ*)0.5 Scr / f=C/f (但し Scr=限界公称応力 20.6) ----------(ⅰ)
この式は SWRI の DAGER ライン相当する(右辺の C は定数に近い扱かい?)。この場合 C 値が小さく
なると許容限界の振幅 yallは低下して疲労が起き易くなる。そこで
C=(350/2π) (λ/K)(Eg/γ*)0.5 Scr
の各パラメータを少し細かく見てみる。
まず(λ/K)について。λは振動係数、K は応力係数である。いずれも配管形状で変化するが、概ね
0.007~0.01 の範囲にあるのでそれほど大きな変化ではない。多分、判定図では 0.007 辺りになって
安全側になっているような気がする。
次に(Eg/γ*)0.5について。縦弾性係数 E が小さい程、見掛け比重量γ*が大きいほど(Eg/γ*)0.5は
小さくなるから、高温配管では E が小さくなり液体配管ではγ*が大きくなって、C は低下する。
しかし(Eg/γ*)0.5の低下とともに固有振動数 f も低下するので、結局、影響は生じない(無視できる)。
次に Scrについて。判定図では限界応力が最も低い低炭素鋼がベースにあって、安全側になって
いると思う。なお Scrは材料の限界応力(耐力限)を SCF で除したもの(いわば公称値)。
判定図は現場の破損データがベースになっており、そのデータが果たしてどれほどの(λ/K)値、
(Eg/γ*)0.5値、Scr値に帰結するかは更にスタディを要す(かなり安全裕度があるのは確かだが…)。
なお(ⅰ)式の [yall=C/f ] は、f・yall=C になるが、f=ω/2π、yall=a/2 なので、更にωa=4πC
になる。然るに ωa=角振動数 x片振幅=速度v なので、結局、振動速度は v=4πC=一定になる。
これは ASME OM-3 の考えに近い。しかし判定図では決してv=一定 にはなっていない。
(4) SWRI 判定図による振動対策について。(ⅰ)式は計測振動数 f に対する許容限界の振動振幅 yallを
与えるもので、実際には f 値を操作して大きな yallを引き出すことも考えられる(当然大きな yallは設計
的に有利)。端的には前述の yall式の導入過程で消去されたパラメータ(D/L2)の扱いである。任意の管径
D に対しスパン長 L を大きくすれば L の 2 乗ベースで、確かに固有振動数 f(=計測振動数)は変わり
次の変化が起きる。
➀ 固有振動数 f の低下で許容限界の振動振幅 yallのアップ
➁ f の低下で共振域から外れ応答倍率 r が低下し実際の振動振幅 y がダウン
➂ L の 3 乗ベースで静的撓み ysが増加し実際の振動振幅 y がアップ
➁➂は矛盾するが、r と ysを見積り y=rxysから実際に起きるであろう振幅が予測できる。更に
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y と yallを比較すれば、許容限界までの距離が推測できる。
一方、これとは逆にスパン長 L を小さくすれば、次の効果がでてくる。
➀ 固有振動数 f の増加で許容限界の振動振幅 yallのダウン
➁ f の低下で共振域から外れ応答倍率 r が低下し実際の振動振幅 y がダウン
➂ L の 3 乗ベースで静的撓み ysが減少し実際の振動振幅 y(=r・ys)がダウン
➀は好ましくないが、➁③の効果は大きい。恐らくサポートを増やしてスパンを縮める方が有利な
結果になるような気がする。これも計算である程度予測できる。
(5)「2.1 適用対象/範囲」について。先に述べたように判定図作成のベースになった破損データの明細は
わからないが、大半はノーマルな振動による疲労損傷であったと考えられる。従って特異な振動即ち
不安定で不規則なランダム振動や急激な運転立ち上げ/ブローダウン/水撃などで生じる過渡振動/衝撃
振動は一応除外した。ただ本判定に従って危険の度合いを見積る分には、不都合はないと思う。
また SWRI の判定図は梁振動モードを対象にしているのは確実なので、管断面のリング振動や大径
管やダクト壁に生じる板/シェル振動は除外した。
また SWRI の判定図は炭素鋼/低合金鋼配管がベースになっており成行きで鋼管(Steel Piping)全般
に 適用拡大されていると思う。ここでも Steel を対象し他の金属配管及び非金属配管は除外とした。
ただし金属配管であっても Steel 配管と同等以上の疲労限界強度を持っている場合は、安全側に本判定
図が使用できるはずである(∵振動配管の材料優劣は材料固有の疲労限界強度 Scrに依存)。
また一般に腐食があると疲労強度が低下することが多い。判定図のデータベースには腐食環境下の
高サイクル疲労破壊例も含まれていたのかもしれないが、腐食環境下の配管は一応除外しておいた。
また SWRI 判定図のデータベースには余り高温の配管は含まれていないと思われる。温度が高いと
疲労強度が低下する傾向が考えられるため 200℃以上の高温配管は一応除外とした。200℃の区切りに
した根拠は特にない。
(6) 「2.2 配管振動の評価手順」について。ここでは試運転/引渡し運転を念頭にしている。プラントの
運転をやっと立ち上げてから配管振動が起きると運転続行か停止か悩むところである。また、改善
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(振動源対策/振動緩和/耐振強度向上)の要否が必ずメ-カ-と顧客の間で議論になる。そこで運転続行
の可否、改善工事の要否も含めてその標準的なチャートを作った。むろん試運転以外の状態でも使用
できると思う。このチャートでは”EJ&協議”をキーポイントにしている。十分な検討ができないまま
確実度の低い判定によらざるを得ないとき、工学的判断と顧客/メ-カーの担当者による協議は重要で
ある。もちろん運転休止が可能ならばデータ分析/試験/解析などの手順を踏むべきである。
(なおチャートは判定図適用に限っているが、場合に応じて他の評価法に切り替えてもよい)
(7)「2.3 振動計測の要点」について。配管のような静的な梁構造物では、評価の実質的な対象は、振動
応力につながる振幅変位になると思う(加速度や速度は抽象的でイメージが浮かばず結局、変位に変換
することが多い)。たまに振幅だけ測って振動数がわからない事例があるが、これでは判定できない。
あくまでも振動変位と振動数はセットであつかうべきである。むろん振動配管の最大振幅変位が振動
評価の対象になるが、目視判断によるピーク探しは難しい。数ヶ所(数十ヶ所?) をハンド式振動計で
計測する必要がある。その場合、分岐部など複雑な配管では卓越振動数が違うことも考えられるので
注意する必要がある。なお配管内に温度揺らぎがあると安定したデータが得られなくなるので注意!
(8)「2.4 評価パラメータの設定」について。SWRI 判定図の縦軸は振動振幅となっているが、これには
振動計モードで測られたオーバーオール値が適していると思う。おそらく判別図の根拠になった現場
データは一般の振動計で測られたと思われるからである。
上図に種々の振幅変位の表現を図示する。図の右は調和振動(正弦振動)の場合を示す。波形の山谷の
差がピーク‐ピーク値(P-P 値)、その半分がピーク値(いわゆる0-P 値)、これを RMS 処理したものが
実効値、平均化したものが平均値である。図の左は不規則振動の場合を示す。P-P 値と 0-P 値は調和
振動と同じだが山谷が非対称になる。等価 P-P 値はこのランダム波形を時間積分して得られた実効値
と同じ量を持つ正弦波の P-P 値に相当する。不規則性が少ないときは、等価 P-P 値は実波形の P-P 値
に漸近するので、振動計で計測するときは等価 P-P 値(いわゆるオーバーオール値)を計測振幅にすれば
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よい。なお FFT で計測するときは時間波形(実波形)から得られる P-P 値を計測振幅にしてもよい。
評価用振幅は軸直交 2 方位(例えば x 方向/y 方向)の計測振幅を二乗和の平方根(SRSS)で合成する。
なお軸方向の振幅については梁撓みに直結しないので考慮する必要はないと思われる(ただ配管形状に
よっては安全側に考慮すべきものもあるかも知れない)。
評価に使う横軸の振動数もオ-バ-オ-ル値ということになるが、振動計では表示されないことも
ある。従ってここでは
・周波数分析を行なった場合: スペクトルの卓越変位(RMS 値)における振動数
・周波数分析を行なわない場合:オ-バ-オ-ル振動数ないしオ-バ-オ-ル値からの計算値(*)
( 判定図の場合、振動計による計測で十分で FFT による周波数分析は影が薄いが、振動状況の正確な
把握、振動原因の究明あるいは対策の立案には不可欠である。念為 )
(*) 振動テキストの調和振動の式を用いて、オ-バ-オ-ル振動数を計算する。即ち、
振幅:x=a・cos(ωt+θ)、速度:v=ωa・cos(ωt+θ+π/2)、 加速度:α=ω2a・cos(ωt+θ+π)
ここで a=片振幅変位(mm)(=δ)、 ω=角振動数(rad/sec)=2πf、 θ=位相角(rad.)
t=時間(sec)、f=振動数(Hz)
cos( )は最大 1 であり、その時のx、 v、α が振動計に表示される。従って
x=a、v=ωa、α=ω2a ➞ ω=v/x=α/v=(α/x)0.5 ➞ f=ω/2π
(9)「2.5 振動レベル/領域の評価」について。全般に振動評価に関してはプラントの設置環境/重要度/
危険度/法規制あるいは顧客の設備維持管理の思想などによってかなりヴァリエーションがでてくる。
場合によっては DESIGN レベルが振動レベルの目標値になることもあるし、DANGER レベルで
あっても運転が続行されるケースもありうる。チャートでもこれらのヴァリエーションを考慮した。
例えば CORRECTION を越える振動レベルで運転継続を続ける場合は、監視扱いとしている。通常
振動による破損は高サイクル疲労によって生じるが、クラックの進展は比較的緩やかなので危険性の
ない流体であれば監視扱い(リークの監視)は決して不可ではないと思われる。
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